1: 2013/02/15(金) 22:44:42.63 ID:Eeo4HAWj0
<事務所で仕事に励む、小鳥が一人>

小鳥「……」カタカタ


小鳥「……」カタカタ



小鳥「……ふー」

小鳥「こんなもんかな?」

小鳥「はー、今週も仕事頑張ったなー…」


小鳥「それじゃあ、書類片付けて上がろうっと…」



小鳥「……」

小鳥(渡せなかったな、今年…)

2: 2013/02/15(金) 22:49:11.35 ID:Eeo4HAWj0
<思い返すこと、昨日>

小鳥(一応用意はしておいたけど…)

小鳥(どう渡せばよいのやら)


P「おはようございます!」

小鳥「あ、プロデューサーさん。おはようございます!」

P「いやー、今日も寒いですねー」

小鳥「そうですねー…」

小鳥(渡すなら、まだだれも来ていない今しか…!)


小鳥「あの、プロデューサーさん?」

P「はい?なんです?」


TLLLL…

P「あ、すいません、小鳥さん。…はい、もしもし?」


小鳥「……」

3: 2013/02/15(金) 22:53:31.48 ID:Eeo4HAWj0
春香「おはよーございまーす!」

千早「おはようございます。」


響「だからー、そうじゃなくって、枝豆は大豆なんだよ、貴音」

貴音「はて…しかし、納豆は緑色ではありませんよ、響」

響「いやだからそうじゃないんだってばー…あ!おはようございます!」

貴音「おはようございます」


小鳥(プロデューサーさんが電話をしている間に、みんな来てしまった…)


P「はい、よろしくお願いいたします!」


P「ふー。あ、みんなおはよう!」

春香「んっふっふ→?プロデューサーさん?」

P「どうした春香?そのキャラは違うぞ?」


春香「じゃじゃーん!プロデューサーさん、チョコレート!もらってね!」

5: 2013/02/15(金) 22:59:41.04 ID:Eeo4HAWj0
P「おお、ありがとう。どうしたんだ、これ?」

春香「えー?わかってたくせに、とぼけちゃってー」

千早「今日は、バレンタインデーですね」


P「あ、あー…今日ってもう14日だったんだ…」

P「気持ち的に節分ぐらいだった」


春香「しっかりしてくださいよ?改めまして!日頃の感謝を込めて、です!」

千早「私は別に良いと思っていたんですけど、春香がしつこかったので。私からもどうぞ」


響「自分、昨日頑張って手作りしたぞ!でもちょっとたくさん作りすぎたから、皆にも配るんだ!」

貴音「響。では、これは頂いてもいいのですね?」

響「ちょ貴音!全部はダメだって!みんなで分けるの!」

貴音「そうですか…」シュン


響「う…」

響「は、半分くらいなら、いいかもしれないけど…」

6: 2013/02/15(金) 23:04:45.15 ID:Eeo4HAWj0
小鳥「プロデューサーさん、今日はお菓子に困らなさそうですね?」

P「あはは、からかわないでくださいよ、小鳥さん。」


春香「あれ?小鳥さんからはないの?」

小鳥「…あ、あはは…。ま、まあ私は気にしなくていいんじゃないかな?」

春香「なんですか、それー?あ、響ちゃん、私も食べていい?」

響「いいけど、貴音みたく全部食べちゃダメだぞ?みんなにもわけるんだから!」

春香「私はそんなには食べられないわよ…」


千早「……四条さん、こんな朝からチョコレートを一気に食べたの?」

貴音「美味です」モグモグ


千早(鼻血出ないといいけど…)

8: 2013/02/15(金) 23:10:22.48 ID:Eeo4HAWj0
小鳥(その後、やよいちゃん、あずささん、雪歩ちゃんに亜美真美姉妹…)

小鳥(もちろん美希ちゃんからも特大のチョコレートをゲットしてたプロデューサーさん)

小鳥(今日一日、事務所の中では、一躍大モテのアイドルです)


P「あはは…どうしよう、これ」

小鳥「机の上がチョコレートだらけだなんて、マンガだけかと思ってましたけど」

P「仕事場で鼻血を出さないようにがんばります…」


律子「それに喜んでられるのもつかの間ですよ。来月はきーーーーっちりお返ししないと。ねぇ…?」ニヤニヤ

P「うっ…」

律子「まあ、私はそこらへんの勘定鑑みて、あ・え・て、渡してないだけですから」

律子「あ、でももらうものは喜んでもらいますから。そこは適度に気を使ってくださいね♪」

P「ちゃっかりしすぎだろ…」


律子「ほらほら。モテモテ男演出するのはいいけど、書類とか、チョコレートで汚さないでよね?」

律子「冷蔵庫、空きがあるから適当に使って。さ、仕事仕事!」

10: 2013/02/15(金) 23:15:18.88 ID:Eeo4HAWj0
小鳥(はぁ…すっかりタイミング逃しちゃったな…)

小鳥(まだ、チャンスはあるかな…)


ガチャッ

伊織「ただいまー…って、事務所すごい甘ったるい匂い!」

小鳥「あ、伊織ちゃん。お帰りなさい」

伊織「まったく、今日はどこもかしこもチョコレートね!」

小鳥「あはは…。」


小鳥「そういえば、伊織ちゃんはプロデューサーさんにあげてないわね?」

伊織「はあ?あげないわよ、あげるわけないじゃない」


伊織「そもそも私、バレンタインデーってあまり好きじゃないのよ」

伊織「なんだか下手に出るみたいで。それに、あげるに値する相手もいないしね」

小鳥「さすがね…。」

11: 2013/02/15(金) 23:21:37.27 ID:Eeo4HAWj0
伊織「でもまあ、好きではないけど、否定はしないわ」

小鳥「え?」

伊織「こういうのがきっかけで、後押しされる女の子もいるってことでしょうし」

伊織「それはそれで、イベントを有効活用してほしいと思うわ」

小鳥「な、なかなかに深いわね、伊織ちゃん」


伊織「有効活用、してほしいと思っているんだけど?」

小鳥「…え?」


伊織「はーーーー。まったく、あんたは…」

伊織「辞めた。おせっかいよね」

小鳥「???」


伊織「でも、そんな微妙な顔して過ごさないほうがいいわよ」

小鳥「び、微妙な顔とは、失敬な」

伊織「それにしても、匂いで胸が焼けそうなくらいねー。やれやれよ。……」

13: 2013/02/15(金) 23:26:25.94 ID:Eeo4HAWj0
<日も暮れて…>

TLLL…

小鳥「はい、765プロです」

P『あ、お疲れ様です、小鳥さん』

小鳥「プロデューサーさん。お疲れ様です。どうしました?」


P『ちょっと真のほうなんですけど、長引きそうなんですよ。』

小鳥「珍しいですね。何かあったんですか?」

P『それがその…おびただしいほどのチョコレートが…』

小鳥「………」


小鳥(我が事務所の誇るイケメンアイドルの真価が発揮されたか…)


P『今日、事務所には戻ろうと思ってたんですけど、そのまま直帰したいと思ってますので。』

小鳥「…。はい、わかりました」

14: 2013/02/15(金) 23:31:47.29 ID:Eeo4HAWj0
P『……。小鳥さん、そういえば…』

小鳥「なんですか?」


P『……。いえ、なんでもないです。それじゃ、お疲れ様です!』

小鳥「…?えっと、お疲れ様です!そちら、頑張って下さいね?」


ガチャン…

小鳥(……)


小鳥(プロデューサーさん、本日直帰)


小鳥(小鳥、ゲームオーバー…か。)

15: 2013/02/15(金) 23:37:33.23 ID:Eeo4HAWj0
<そして、今に至る>

小鳥(今日もプロデューサーさん、遅いって言ってたな…)

小鳥(でも、もう1日過ぎちゃってるし…。今更渡してもね…)

小鳥(これは、持って帰って、私が食べよう)


小鳥(プロデューサーさん、戻るかもしれないけど、戸締りして帰ろう)


ガチャッ

小鳥(鍵よし、っと)

小鳥(さてと、帰りますか…)


小鳥(はぁ…。せっかくの週末なのに、気分が上向かないなぁ…)

小鳥(ちょっと寄り道して帰ろう)


小鳥(どこか面白いところ、あるかな…)

19: 2013/02/15(金) 23:43:56.89 ID:Eeo4HAWj0
小鳥(なんだか半分道に迷った感じだけど…)

小鳥(たどり着いたのは、小さいけど、おしゃれなバー)


小鳥(ここで会ったのも何かの縁、ちょっと入ってみよう…)


カランカラン…

小鳥(…ちょっと高そうかも)

バーテンダー「いらっしゃいませ」

小鳥「あ、どうも…」


バーテンダー「カウンター席へどうぞ」

小鳥「はい…」

小鳥(き、緊張するなぁ…)

20: 2013/02/15(金) 23:49:58.30 ID:Eeo4HAWj0
小鳥「うわっ…」


小鳥(お酒の名前?だろうけど…全然わからない…)

バーテンダー「いかがなさいますか?」

小鳥「え、えっと…お任せで、お願いしよう、かな?」

バーテンダー「かしこまりました」


小鳥(あ、質問とかはないんだ…。)


バーテンダー「どうぞ」

小鳥「これは…?」

バーテンダー「ピエール・コリンズ。ブランデーベースのカクテルです」

小鳥「へぇ…」

小鳥(レモンがワンポイントか…かわいい)


小鳥(…後味は甘いけど、カクテルにしては結構辛いかな)

21: 2013/02/15(金) 23:54:55.78 ID:Eeo4HAWj0
小鳥(週末だけど、客入りはおとなしい)

小鳥(隠れ家って感じがぴったりのお店…たまにはこういうのもいいかも)

小鳥「ふぅ…」


カランカラン…

バーテンダー「いらっしゃいませ」

?「久しぶり、マスター。儲かってる?」

バーテンダー「…見ての通りです」

?「ま、いいんじゃない?これはこれで、マスターのお店らしいわよ」

?「いつものお願いね」

バーテンダー「かしこまりました」


?「……あれ?」

?「小鳥?」


小鳥「え?」

23: 2013/02/15(金) 23:59:44.62 ID:Eeo4HAWj0
?「随分懐かしい顔に会っちゃったわね」

小鳥「あなたは…日高、舞さん?」


舞「小鳥もこのお店、よく来てたんだ?」

小鳥「いえ…私は今日が初めてで」

舞「なるほどね…。隣、いいかしら?」

小鳥「え、ええ…」


舞「女一人がこんなお店になんて、寂しいじゃない」

小鳥「そ、そんなことは…舞さんだって…」

舞「私は、月何回か来てるのよ。たまにはひとりの時間が欲しくってね」

小鳥「あはは…たまには、か」

25: 2013/02/16(土) 00:02:35.92 ID:4Rq9Odub0
舞「まだ、事務員やってるんだ」

小鳥「まだ、っていわれても…。働かないと、生活できないですから」

舞「もういい年なんだし、早く旦那さん見つけて奥様になればいいのに」

小鳥「そんな簡単には…」


舞「内勤の事務員じゃ、出会いもない?」

舞「ここのマスターとか、どう?」

小鳥「ええ!?」


舞「冗談よ。マスターには素敵な奥様がいるもの。ね?」

バーテンダー「……」


舞「もうちょっと、喋れるといいのにねぇ…。らしいといえばらしいんだけど。」

26: 2013/02/16(土) 00:06:51.64 ID:4Rq9Odub0
小鳥「娘さん、もうだいぶ大きくなったんですよね?」

舞「13歳。中学生よ。笑っちゃうわ。つい最近までよちよち歩いていたのに」

小鳥「もう…そんなに経ったんですね」

舞「時間は平等に、確実に通り過ぎていくってわけね。」


舞「生意気にも、今はアイドルの真似事まで始めてるし。」

小鳥「噂には訊いてます。石川社長の876プロに所属したって」

舞「あの社長も変わり者だからねー。でも、人を見る目はあるから。心配はしていない」

舞「でも、基本的には私も何もしない。きっと、愛も嫌がるだろうし」

舞「子供なんて、親の知らない間に勝手に大人になっていくものなのね」

舞「ちょっと寂しい気もするけど、振り返れば、私もそんな感じだったわ」


小鳥「舞さんは…どうして、あんな急に、アイドル辞めてしまったんです?」

小鳥「もしかしたら、今だって…現役でやっていける実力があるのに」


舞「…面白いことを訊くのね、小鳥」

29: 2013/02/16(土) 00:14:04.38 ID:4Rq9Odub0
舞「ま、今となっては、私にもよくわからないってところも、正直あるわ」


舞「当時の私は、それなりにいろいろ考えていたところはあるけれど」

舞「アイドル時代の私なんて、勢いで生きていたところがあるし」

舞「…でも別に、それだけが人生じゃないでしょ?」


小鳥「私、今でも思うんですけど…あれだけ人気があって、期待もあって」

小鳥「ちょっと勿体ないなって…」


舞「勿体ない?ふふっ、小鳥からそんな言葉が出るなんて…」


舞「マスター!私と小鳥におかわり!」


舞「その言葉、きっちりそのまま、小鳥に返してあげるわ」

小鳥「え?」

30: 2013/02/16(土) 00:18:48.95 ID:4Rq9Odub0
舞「小鳥はなんというか、自分を小さく見すぎてるのよね」

舞「名前が“小鳥”だからかしら」

小鳥「そんなことは…」


舞「私の立場からいうべきではないのかもしれないけど」

舞「人生って、案外うまく回るものなのよ」

小鳥「それは、確かに舞さんの立場から言うことじゃないですね…」


舞「私は私で、苦労してたのよ?」

舞「いろいろあって運が良かったから、いいほうに目立っていたけど」

舞「私なりに努力したし、色々なこと、当時の私なりに、ずっと考えてた」


舞「小鳥は、どうかしら?」

小鳥「……」

31: 2013/02/16(土) 00:23:55.87 ID:4Rq9Odub0
舞「小鳥って、相応のものを兼ね備えているのに」

舞「バッターボックスには、立たないわよね」

小鳥「バッターボックス?」


舞「思い出して、小鳥。あなたのこれまでの人生」

舞「ターニングポイントとなるチャンスは、たくさんあったはず」


舞「チャンスが巡るだけ、それだけでも幸運だというのに」

舞「その勝負の場面に、自ら望んで、真っ向から立ち向かったってこと、ある?」


小鳥「……」

小鳥「…私は、そういうのじゃないから…」

舞「ほら、過小評価」


舞「ま、今日こんなもの持ち歩いている時点で、言わずともがな、よね」

小鳥「あ…!?」

34: 2013/02/16(土) 00:29:21.27 ID:4Rq9Odub0
舞「DEMELのチョコレートか…なかなか通じゃない。私も好きよ」

舞「ちょっと奮発したチョコレート…まさか、売れ残りのセール品を安く買ったわけじゃないでしょう?」

小鳥「……」


舞「小鳥の精神年齢は、うちの愛といい勝負ね…」

舞「どうするつもりだったのよ、これ?」


小鳥「…家に持って帰って、一人で…食べる…」グスッ

舞「わーわーわー、泣くな泣くな!」

舞「よしよし、どうどうどう…」


舞「って、お前小学生か!」


舞「はー…。チョコも気持ちも渡せずに、モヤモヤして一人酒か…よくないなー」

舞「自分の中で溜め込んでないで話しなさいよ。壁に向かって話しかけるよりは効果あるわよ」


舞「多少はおごるから。マスター!追加ね、追加!」

36: 2013/02/16(土) 00:36:25.01 ID:4Rq9Odub0
<小一時間後…>

小鳥「う~ん…う~ん…」


舞「やば…。飲ませすぎたか…」


舞「小鳥?大丈夫?ケロケロしそう??」

小鳥「う~ん…大丈夫…れす…」


舞「この娘、こんなにお酒弱かったかしら。慣れないお酒でもあったのかな」

小鳥「舞さん…なんれ私、こんななんれしょうね……」


舞「…さっきも言ったけど、小鳥は自分から何かしようとしてないじゃない。」

舞「結果は何かをすることで生まれるものであって、何もしなければ当然結果も返らないわよ」

小鳥「れも……。失敗したら辛いじゃないれすか……」


舞「ま、私が思うに、小鳥は失敗という失敗はないんじゃないの?」

41: 2013/02/16(土) 00:43:07.95 ID:4Rq9Odub0
舞「たぶん、小鳥の思っている失敗の類は、小鳥が自分でうやむやしたという失敗」

舞「ここにあるチョコレートがいい証明ね」


舞「失敗とは、これを渡して、こっぴどく断られて、揚句に投げ捨てられるくらいのことを言うのよ」

舞「小鳥はいわば不戦敗よ」


小鳥「そのチョコレート、食べてもいいれすよ……」

舞「こら。そんなこといっていじけないの」

小鳥「私なんて…」


舞「小鳥」

舞「もうそろそろ、自分を信じて、本気出してもいいんじゃないの?」


小鳥「私の本気なんて…」

45: 2013/02/16(土) 00:51:55.96 ID:4Rq9Odub0
舞「いつまでもキャピキャピの生娘じゃいられないでしょ」

舞「無理をした翌日は肌荒れが目立つし、今時期はカサカサ肌だし、お肉の張りも緩くなり…」

小鳥「やめてくらさい…やめて」


舞「いい、小鳥。もっと危機感をもって」

舞「私のほうがちょっと年上だけど、つまるところ、小鳥ももはやアラサー…」

舞「今ここで本気出さなかったら、もう出せる本気もなくなるのよ?」

舞「判断誤って、手遅れの状態から必氏になっても、見苦しいだけなの!」

舞「もう後がないの、小鳥!!」


舞「後無小鳥よ!!!」


小鳥「!!!」ガーン

48: 2013/02/16(土) 00:55:56.52 ID:lEpsvsn80
うまいこと言いますな

49: 2013/02/16(土) 00:56:56.27 ID:E02F7ZEQ0
後無小鳥ワロタ

50: 2013/02/16(土) 00:57:16.34 ID:4Rq9Odub0
小鳥「舞さん…わかりました…後がないのは、これ以上なく、よくわかりました…」

小鳥「でも、具体的に、どうすればいいのか…」


舞「そこまで訊いちゃうのー?精神年齢幼すぎでしょ…」

小鳥「はい…すいません…」


舞「まー、まずは、このチョコレートは、ちゃんと渡しなさい」

舞「一人で開封して食べちゃうとか、許さないから」


舞「事情は説明すること。いいわね」

小鳥「はい…」


舞「大事なのは、最後まで逃げない事。結果を見届けること。目をそらさない事」

舞「それができれば、小鳥に怖いものなんて、絶対に無いのよ」



舞「…昔から、ね」

55: 2013/02/16(土) 01:01:27.22 ID:4Rq9Odub0
・・・

『日高。音無小鳥って知っているか?』

『音無…?いえ、初めて訊く名前ですが…』

『まだデビューはしていないそうだが…』

『とあるルートから、彼女のデモテープを手に入れたんだ。ちょっと聴いてくれるか』

『はい』


『♪~~~』


『この人は、いったい…』 

『不思議だろう?こんな逸材が、世の中には眠っているんだ』

『今は知名度の点で、日高のアドバンテージがあるが、彼女が世に知れたら、間違いなく強力なライバルだ』

『これから、もっと大変になると思うが、ついてこれるか、日高?』


『…はいっ!頑張ります!』

59: 2013/02/16(土) 01:08:10.34 ID:4Rq9Odub0
『え?音無小鳥が…オーディションを断念した!?』


『よくわからない。詳しい情報はつかめていないのだが…』

『とある情報筋によると、ほかのオーディションもキャンセルしているらしい』

『一部では、デビュー自体諦めたのではないかという噂もある』

『そんな……。』

『まあ、日高にとってはラッキーだったな。』

『現役のアイドルで、日高の敵になるようなレベルの人間はもはやいない』

『そもそも、音無小鳥自体、今の日高には脅威ではなかったのかもしれないな』


『………』


『これまで、日高には無理させて悪かった。体も大分きついだろう?』

『スケジュールを調整して、万全の態勢で仕事に臨めるようにしていこう』

『日高の魅力は、いまや量ではなく質で勝負できる段階に来ている。最高のものを、ファンに提供しよう。』

『…はい』

61: 2013/02/16(土) 01:13:05.07 ID:4Rq9Odub0
『♪~~~~』


(…この人には、私の持っていないものを持っている)


(努力や場数だけでは絶対に得ることのできない、天性の歌声…)


(どうして、こんな恵まれた人がいるのに、私なんかが目立っているのだろう)


(この先、私は何を目指していけばいいんだろう)


(私は…今、何を目指して、どこに向かっているんだろう…?)

62: 2013/02/16(土) 01:16:07.89 ID:4Rq9Odub0
『きみが、今を時めくトップアイドル、日高舞君か』

『はじめまして!高木プロデューサー!日高舞です!』

『しゃきっとして、礼儀も正しい。素晴らしい人間性だね。ピンとくるよ!』

『ありがとうございます!』


『音無君も、挨拶したらどうだね?』

『は、はい…』 

『え、音無…さん!?』


『おや、知人かね?』

『い、いえ…まさか…私は、初対面です』

『実は、近々独立して事務所を設立しようと思ってね』

『音無君は、事務面でサポートしてくれる予定なのだよ』

『生真面目な仕事をしてくれる娘だからね。事務所も、早く軌道に乗せたいと思っている』



(どうして……)

64: 2013/02/16(土) 01:20:23.19 ID:4Rq9Odub0
・・・

舞(不思議な娘ね…)

舞(まるで、出会った頃から、時が止まっているかのよう)


舞(小鳥を見ていると、そんな昔の私も、つい思い出してしまうわ)


小鳥「すー…すー…」


舞「もう限界?ほら、こんなところで寝たら風邪ひくわよ」

小鳥「う~ん…?ここはぁ…?」

舞「ほら、起きる起きる!…もう、これじゃまるで親子ね」


舞「マスター、お愛想ね」

舞「ほら、立てる?小鳥」


小鳥「う~ん…ありがとう、舞さん…」


舞「………。こちらこそ」

67: 2013/02/16(土) 01:26:23.18 ID:4Rq9Odub0
小鳥「…なんだか、すっかりフラフラで…もうしわけなれす…」

舞「いいのよ」


舞「話の内容は随分幼稚だったけど、小鳥と久しぶりに話せて、楽しかった」

小鳥「私は…舞さんに説教されて、ちょっと辛かった」


舞「ごめんなさいね。どうも、小鳥みてると、娘見てるみたいでおせっかい焼きたくなっちゃうのよ」


小鳥「…私、もうちょっと、頑張ってみますね」

舞「そうだ。音無小鳥は、今、頑張ることが必要だ!」


舞「違うわね。小鳥はいつも頑張っているから…」

舞「自分を信じることが、必要なのよね」

舞「あまり自分を卑下にするものじゃないわよ。小鳥は、そんな女じゃないんだから」



舞「こんな立派な胸を持っているというのに」モミモミ

小鳥「ピヨォ!?」

69: 2013/02/16(土) 01:29:30.40 ID:4Rq9Odub0
小鳥「ややや、やめてくらさいよ舞さん!セクハラれすよ!?」

舞「あはは、気にしない気にしない」

小鳥「お嫁にいけなくなっちゃうじゃないれすか……」

舞「だったら、早く行きなさいよ、お嫁に」


舞「母親経験者として、いろいろと教えてあげるから、そこは安心して!」

舞「…ま、13歳でアイドル目指しちゃうような、ひねくれた子供になるかもしれないけどね」


舞「あ、そうだ!せっかくだし、アドレス交換しようよ、小鳥!」

小鳥「あー、いいれすねぇ、いいれすよぉ……」

70: 2013/02/16(土) 01:32:30.00 ID:4Rq9Odub0
小鳥「今はやりのすまーとふぉんにしたんれすけどねぇ…」

小鳥「アドレス交換の方法が、よくわからないんれすよ…」


舞「ちょっと貸してくれる?」


ピピピ…

小鳥「はー、舞さんはすごいれすねぇ…こういう機械も使いこなせるんれすか…」


舞「…えーっと、これでいいかな?」

----------------------------
To: プロデューサーさん
件名:小鳥です

夜分遅くにすいません。

大事なお話があるので、
明日、お会いできませんか?
----------------------------


小鳥「!!!!!?????」

74: 2013/02/16(土) 01:36:17.73 ID:4Rq9Odub0
小鳥「ちょ、ちょちょちょちょ…!!?」

舞「はい、送信ー」


小鳥「ああああ…」

舞「ま、これくらいしないと、小鳥は本気出さないでしょ?」


舞「っていうか、本当に生娘なのねぇ…」

舞「電話帳見回しても、明らかな男性が高木さんとこの人しかいないじゃない」

舞「大丈夫なのかしら…逆に不安だわ」


舞「あれ?もしかして、こっちじゃなくて高木社長の愛人ってこと…?」

小鳥「ち、違いますよ!」

舞「じゃあ、大丈夫じゃない♪あした、頑張ってね?」


小鳥「どどど、どうすれば…」


ヴヴヴ…

小鳥「ひぃ!電話がかかってきた!」

76: 2013/02/16(土) 01:40:08.85 ID:4Rq9Odub0
小鳥「あれ?知らない番号…」

舞「これは私の番号。アドレスは、今度ショートメールで送るわね」


舞「まー、相手から文句言われたら、私に折り返してもらっていいわよ。」

舞「私から直々に、お話ししてあげるのも満更ではない」

小鳥「もーー!ひどいれすよぉ、舞さんっ!」


ヴヴヴ…

小鳥「また…?」

小鳥「わ、わ、わ…!今度こそプロデューサーさんだ…っ!ど、どうしよう、どうしよう!?」


舞「じゃ、小鳥。また一緒に飲みましょ?次は、いい近況、訊かせてよね!」

小鳥「ま、舞さん!ちょっとーー!!?」

小鳥「で、電話出ないと…」

78: 2013/02/16(土) 01:45:25.03 ID:4Rq9Odub0
小鳥「あ、あの!ごめんなさい、プロデューサーさんっ」

小鳥「実は今ちょっと…その…友達と飲んでて、友達が悪ふざけを…」


小鳥「そ、そんなたいそうなことではないんですけど、でもちょっとお話ししたいこともあるかなって…」

小鳥「その……。えっと…。」


小鳥「明日とか、時間、空いてますか…?」




舞(小鳥の魅力…その人に伝わればいいわね)


舞(気持ちが本気だからこそ、不安や失敗を恐れる気持ち、よくわかる)

舞(その気持ちを退路にせず、前向きに走る自分の力に変えて。あとちょっとの勇気だけで十分)


舞(小鳥なら、絶対にできるから…)



<おしまい>

79: 2013/02/16(土) 01:45:49.97 ID:otEDFfL/0
最後が読めない

80: 2013/02/16(土) 01:46:20.89 ID:h3na1bIdT
待てよ

81: 2013/02/16(土) 01:49:31.95 ID:tEQvaFfQ0
これは後日談でも良いから書くべきピヨ

引用元: 小鳥「チョコ渡しそびれたし、週末だから一人酒」