4: 2009/09/06(日) 02:09:33.85 ID:Cfvoz1Zx0
3月、旅立ちの季節――

卒業式、桜高軽音部の5人は春からそれぞれの道を歩んでいくことになった。

わたし、澪ちゃん、りっちゃんはそれぞれ東京、京都、大阪の大学に進学、ムギちゃんはアメリカに留学、

まだ2年生だったあずにゃんはもう1年桜高で学ぶことになる。

6: 2009/09/06(日) 02:10:33.99 ID:Cfvoz1Zx0
「これからなかなか会えなくなりますね」

「うん…でもあたしと澪と梓は同じ関西だから!まだ会えるかな~」

「そうだね…」

同級生の3人とは3年間、あずにゃんとは2年間、たくさんの思い出を残した。


10: 2009/09/06(日) 02:11:49.00 ID:Cfvoz1Zx0
「あたし絶対唯先輩と同じ大学行きます!だから待っててください!」

「あはは、ありがとう。あずにゃんのこと1年間待ってるよ~」

「はい!がんばるです!」

「ムギとはなかなか会えなくなるな~」

「そうね、でも帰る時は絶対連絡するわ」

「おう!卒業してもみんなで集まろうな」

「唯も休みになったらこっち帰ってこいよ?」

「うん!」

14: 2009/09/06(日) 02:13:00.00 ID:Cfvoz1Zx0

「じゃあな!また会おう!」

「うん…」

「なんだよ澪~どうした?」

「だって…これから…みんなに…会えなくなると思うと…」

「バカ……泣くなよ~あたしだって…ずっと…我慢……してたのに…」

「わー!りっちゃん澪ちゃん泣いてる~!」

16: 2009/09/06(日) 02:14:01.53 ID:Cfvoz1Zx0

「どうしたのあずにゃん?」

「なんか澪先輩と律先輩が泣いてるの見たら…あたしも…」

「よしよし…いい子いい子」

「唯先輩……元気で…いてくだ……さいね…」

「…唯ちゃん…みんな……」

「もームギちゃんまで泣いてるじゃん!」

17: 2009/09/06(日) 02:14:55.46 ID:Cfvoz1Zx0
卒業してみんなバラバラになっちゃうけど、そんなに悲しいわけじゃなかった。
だって私たちはこんなに固い絆でつながってるんだ。
どこに住んでるかなんて関係ない。
私たちはいつまでもずっと最高の友達だ。

20: 2009/09/06(日) 02:17:42.29 ID:Cfvoz1Zx0
4月になり、東京に引っ越した。
はじめての一人暮らし…不安と喜びでいっぱいだ。

大学で友達できるかなぁ…いっぱいできるといいな、ギターも続けたいな

それから…彼氏も…

21: 2009/09/06(日) 02:18:46.11 ID:Cfvoz1Zx0


東京に出てきてから2か月、たくさんの友達ができた。
いつも一緒にいる友達は私を含めて5人。

和ちゃんも東京に出てきているので、よく連絡を取った。
二人で遊びに行くこともたびたびあった。

22: 2009/09/06(日) 02:21:25.60 ID:Cfvoz1Zx0
上京してはじめての夏休み、りっちゃんや澪ちゃんと連絡を取って地元に帰る予定を立てた。

りっちゃんと澪ちゃんはどんな大学生活を送っているんだろう?

地元に帰ったら聞いてみよう。

24: 2009/09/06(日) 02:25:54.46 ID:Cfvoz1Zx0
そして夏休み

ムギちゃんを除いた元軽音部のメンバーで集まることになった。

「どうなんだ東京って!?」

「うーん別に普通だよ、大阪はどうなの?」

「大阪はやっぱりお笑いの町だよ!」

「へぇ~、でもりっちゃん面白いから大丈夫だね」

「なんでやねーん!!」

「いや、ぼけてないよりっちゃん!」

「あはははは!」

25: 2009/09/06(日) 02:33:11.59 ID:Cfvoz1Zx0
高校の友達と会うと楽しいなぁ

大学の友達とは違って全部の話が懐かしい

え…?懐かしい…?

27: 2009/09/06(日) 02:36:18.77 ID:Cfvoz1Zx0
私、もう高校時代が懐かしいんだ…

いつまでも最高の友達だと思ってた4人

その4人に会うのが懐かしいんだ

時の流れって嫌だなぁ…

28: 2009/09/06(日) 02:43:26.39 ID:Cfvoz1Zx0
「でも残念だったな軽音部」

「うん…」

「すみません…部長の私が情けなくて…3人まで集まったんですけど…」

「でもバンドは続けてるんだろ?」

30: 2009/09/06(日) 02:53:17.84 ID:Cfvoz1Zx0
「はい、友達と組んでやってるんです。HTTの曲とかもやったりしてるんですよ」

「えぇ!?あの曲まだやってるのか?あたしたちのバンドはロック一筋だから!」

「あたしも一応音楽サークル入ってるんだ。じゃあ今度律のバンドと梓のバンドと対バンやろうよ」

「おう!メンバーに話つけてみるよ!」

31: 2009/09/06(日) 03:07:09.06 ID:Cfvoz1Zx0
えっ?みんな他のバンド組んでるんだ…音楽続けてないのは私だけ…?

「唯もバンド組んでるだろ?」

「えっ?うん!もちろん!」

「東京だからなぁ、唯もそっちで頑張れよ!」

「うん、ありがと…」

34: 2009/09/06(日) 03:25:11.09 ID:Cfvoz1Zx0
私はもう何か月もギターを弾いていない。

放課後ティータイムは最高のバンドだった。他のバンドを組む気にならないほど。

ギー太は東京に持って行ったものの埃被って押入れに眠っている。

軽い気持ちで弾こうとしても高校時代を思い出して感傷に浸ってしまうからだ。

これが燃え尽き症候群ってやつかな?

35: 2009/09/06(日) 03:27:38.58 ID:Cfvoz1Zx0
みんなもう放課後ティータイムのことは思い出になっちゃったのかな
嫌だ…  嫌だ…
楽しいはずの軽音部の集まりだった
しかしそれは、昔の恋人が今どんな恋愛をしているか聞かされているようで苦痛なものでしかなかった

37: 2009/09/06(日) 03:31:59.35 ID:Cfvoz1Zx0
東京に戻ってからはあまり高校時代のことは思い出さないようになった

私自身もうそのことを考えたくないのかもしれない

こっちでの生活も楽しいんだ

38: 2009/09/06(日) 03:33:02.17 ID:Cfvoz1Zx0
高校時代のことを思い出すのは地元に帰る時だけでいい

みんなそうなんだ

放課後ティータイムのことはもう思い出なんだ

40: 2009/09/06(日) 03:34:13.29 ID:Cfvoz1Zx0
そんな中一本の電話が掛かってきた

「もしもし唯先輩…?」

「あずにゃん!?」

41: 2009/09/06(日) 03:36:05.16 ID:Cfvoz1Zx0
そうだ!来年になったらあずにゃんがこっちに来るじゃん!

そしたらまたあずにゃんとバンドやろう

高校時代の放課後ティータイムはもう戻ってこない

でもあずにゃんとバンド組めばまたあの頃の情熱が戻ってくるかもしれない

そんなことを考えていた

42: 2009/09/06(日) 03:40:51.05 ID:Cfvoz1Zx0
「あ、あずにゃん、あのさ!あずにゃんが東京に来たら…」「あたし…東京……行けません」

「えっ?」

「おばあちゃんの具合が悪くて…母が毎日介護で大変なんです…」
「そんな母を置いてあたし一人だけ東京には…」

43: 2009/09/06(日) 03:42:38.19 ID:Cfvoz1Zx0
「…」

「だからこっちで澪先輩の大学に進もうと思ってます」
「約束守れなくて……ごめんなさい…」 



「…」

44: 2009/09/06(日) 03:45:15.77 ID:Cfvoz1Zx0
「唯先輩?」



「唯先輩…」

「そ、そっか…ざ、残念だなぁ。しょうがないよね…」

「はい…」

「じゃあ勉強頑張ってね!」

「はい…それじゃあ失礼します…」

46: 2009/09/06(日) 03:58:19.03 ID:Cfvoz1Zx0
はぁ…私は何で東京なんかに来ちゃったんだろう…

私も関西に残ってれば放課後ティータイムを解散することなんてなかったのに

東京での生活がつまらないわけじゃない

47: 2009/09/06(日) 03:59:31.01 ID:Cfvoz1Zx0
でも高校時代が忘れられない

みんな新しい道に進んでるのに私だけいつまでも…

そして私は東京で変わり映えのない無機質な生活を続けていった

48: 2009/09/06(日) 04:01:02.66 ID:Cfvoz1Zx0
卒業式で私だけ泣かなかったのは

私だけまだ高校生だったからかな…

私は…未だに放課後ティータイムから卒業できないでいる…

49: 2009/09/06(日) 04:11:40.20 ID:Cfvoz1Zx0
みんなは泣くことで高校時代を「思い出」にして次のステージに進んだんだろう

高校卒業と同時に放課後ティータイムも卒業したのだろう

自分の未練がましさに腹が立ってくる

もし彼氏ができても「重い」なんて言われて、振られたあともストーカーになるのかな
ははは、笑えないや…

52: 2009/09/06(日) 04:34:27.01 ID:Cfvoz1Zx0
それから私は高校時代のことを思い出すことはなくなった。

休みのたびにりっちゃんから誘いのメールが来たがお茶を濁して断り続けた。

和ちゃんとも連絡を取らなくなった。

気がつくと地元に帰るのは正月とお盆だけになっていた。

憂は悲しむけど「バイトが忙しいからしょうがない」と理由をつけて

67: 2009/09/06(日) 12:26:22.27 ID:Cfvoz1Zx0
就職活動も本格的になってきた大学3年の夏、一本の電話が掛かってきた

「もしもし唯?」

和ちゃんだった。

「久しぶりね、2年ぶりくらい?」

「うん…久しぶりだね~」

69: 2009/09/06(日) 12:38:50.11 ID:Cfvoz1Zx0
「就職とか決まった?」

「まだ…でもこっちで就職するよ。和ちゃんは?」

「私は地元に帰るわよ。その前に一回会わない?」

「う…うん」

「じゃあ来週の土曜日の12時に○○ってところで」

「わ、わかった」

70: 2009/09/06(日) 12:44:27.36 ID:Cfvoz1Zx0
久しぶりに高校の友達と話した

私のことなんか気にかけてないと思ってた

でも幼稚園からの幼馴染、やっぱり和ちゃんは大親友だ

71: 2009/09/06(日) 12:45:42.91 ID:Cfvoz1Zx0
そして待ち合わせの当日

そこには思わぬ人物がいた

「おいーっす唯」

りっちゃんだった

「え!?りっちゃん…?」

73: 2009/09/06(日) 12:58:37.85 ID:Cfvoz1Zx0
「東京って人多いんだな~心斎橋とか梅田より全然人多いよ、さすが渋谷だな!」

「うん…和ちゃん…どういうこと?」

「あんた全然軽音部の人たちと会ってないらしいじゃない?律から連絡が来たのよ、唯と会いたいって」

就職活動を始めたからか、二人とも小奇麗な印象を受けた

74: 2009/09/06(日) 13:08:28.59 ID:Cfvoz1Zx0

「あたし一応こっちの会社も受けるんだ」

「だからそのついでに唯に会いにきた」

嘘だ…りっちゃんは前絶対一人暮らしなんて無理、関西から離れる気はない、って言っていた

だからこっちの会社の面接を受けに来たなんて…嘘だ

75: 2009/09/06(日) 13:25:28.10 ID:Cfvoz1Zx0
「だって唯全然連絡くれないんだぜ~?帰ってきたらちゃんと連絡しろよ~」

「働き始めたらもっと会えなくなるんだからさ~」

京都に帰ってないわけじゃなかった。でも軽音部のメンバーにそれを伝えたりはしなかった


「うん…ごめん…バイト忙しくて」

結局りっちゃんにも憂と同じ嘘をついてしまった

76: 2009/09/06(日) 13:39:40.25 ID:Cfvoz1Zx0
沈黙が続く

「そうだ!梓のこと知ってる?澪と同じ同志社行って澪と同じバンドに入ったんだって~」


あずにゃん…澪ちゃんと同じ大学に入ったのは憂から聞いていた

あたしがもう一回バンド組みたかったのに

「ムギはアメリカで音楽の賞とかもらってるみたい、すげーよな」

ムギちゃん…そういえば高校卒業してからムギちゃんには一度も会ってない

「あたしのバンドもさ、大学の中だけだったら結構有名なんだぜ?」



「唯は今どうしてるの?」

78: 2009/09/06(日) 13:44:04.86 ID:Cfvoz1Zx0
私は…


私は何もない


自分の現状を聞かれるのも軽音部のメンバーと会うのをためらった理由でもある

「私は…何もしてない…」

「そう、残念だなぁ」

82: 2009/09/06(日) 14:08:25.12 ID:Cfvoz1Zx0
「私は…他のバンド組む気ない」

ここで初めてりっちゃんに思いの丈をぶつけてた

高校卒業して以来バンドも組んでいなければギターも弾いてないこと


未だに放課後ティータイムに未練があること

今まで何も長続きしなかった私が初めて真剣に取り組んだ軽音楽

そんな軽音楽で出会った仲間とまたやりたい、他の人とは考えられない

ということ

85: 2009/09/06(日) 14:45:44.02 ID:Cfvoz1Zx0
りっちゃんだったら受け止めてくれる、また再結成の話をみんなにしてくれると思った

でも…りっちゃんが言った言葉は私が思っていたものと違った

「そっか…」

「だからさ、もう一回バンドやろうよ!あたしも京都戻るから!京都でもう一回バンドやろうよ!」

88: 2009/09/06(日) 14:56:39.41 ID:Cfvoz1Zx0
「ごめん…」

「えっ?」

「あたし…もう放課後ティータイム組み直す気はない」

「…」

「あれはさ…もう高校時代のいい思い出じゃん?もうみんな別々の道進んでるんだよ…」

「そう…だよ…ね、もう…あの頃に戻るなんて無理だよね…」

「…うん」

「わかった…私…もう帰るね」

89: 2009/09/06(日) 15:00:14.27 ID:Cfvoz1Zx0
その場をそそくさと立ち去ろうとする

結局、私はこのもやもやを抱え続けたままだ

「唯!待てよ!」

「…」

90: 2009/09/06(日) 15:02:25.14 ID:Cfvoz1Zx0
「唯はもうバンドのメンバーじゃないよ!でも…でも友達だろ!?」

「高校3年間一緒にすごした親友じゃんか!」

「…」

「京都帰ってきたら絶対連絡しろよ!!」

りっちゃんの言葉を最後まで聞かないうちに私は店を飛び出した

りっちゃんに言えばどうにかなると思ってた

でもならなかった

りっちゃんはもう軽音部の部長じゃないんだ…

96: 2009/09/06(日) 15:28:01.92 ID:Cfvoz1Zx0
はぁ…もう…嫌だ

今年はお盆も京都に帰るのはやめようかな

今年はバイト増やそう

ふぅ…憂になんて言い訳しよう

そんなことを考えていると、夏休みの時期になった

98: 2009/09/06(日) 15:36:59.11 ID:Cfvoz1Zx0
そんななか一通のメールが届いた
「田井中律」

りっちゃんだ

「8月21日夜7時 桜高の音楽室に来て ギターも持ってきてね」

8月21日…?今は8月10日だ

「ごめん、今年は京都に帰る暇ない、っと」

嘘だ、結局バイトは増やさなかった。逆に夏まで頑張ったからと言って2週間も休みをもらっていた

102: 2009/09/06(日) 15:43:29.85 ID:Cfvoz1Zx0
ブーブーブー
「そんな嘘つかなくていいよ いいから来て」

どういうつもりなんだろう・・・


「まだいけるかわかんない、っと」

ブーブーブー
「とにかく来いよ 部長命令だから」

………

そして8月20日、わたしはギターを持って東京駅にいた

108: 2009/09/06(日) 15:56:55.52 ID:Cfvoz1Zx0

8月21日…?何の日だろう

そんなことを考えて新幹線に乗る

3時間後、新大阪駅についた

110: 2009/09/06(日) 16:01:03.78 ID:Cfvoz1Zx0
やっぱりギターを持ちながらだと目立つなぁ…なんだか恥ずかしい

高校の時は毎日ギターを持って登下校してたんだ

あの頃は人の目なんて全然気にならなかったのに

それから在来線の電車をいくつか乗り継いで実家の最寄駅まで行く

駅から歩くと20分かかるので憂に車で迎えにきてもらった

112: 2009/09/06(日) 16:06:06.96 ID:Cfvoz1Zx0
関東に住んでるのにわざわざ関西の大学に行ったりしないだろ?

それ以外に他意はないです

113: 2009/09/06(日) 16:08:47.11 ID:Cfvoz1Zx0
「お姉ちゃ~ん、こっちこっち!」

「憂~ただいま~あれ?ちょっと大人っぽくなった?」

「えへへ、そうかなぁ?」

相変わらず姉妹の仲は良い。あんまり帰って来ないけど帰って来た時はいっつも憂と出掛けていた。

115: 2009/09/06(日) 16:11:01.47 ID:Cfvoz1Zx0
「ギター持ってきたんだ!」

「うん」

それ以上憂がギターについて触れることはなかった

みんな知ってるのかな?りっちゃんから全部聞いたのかな

117: 2009/09/06(日) 16:12:44.86 ID:Cfvoz1Zx0
「そうだ!アイス買ってく?」

「いいよ、私今ダイエット中だから」

「お姉ちゃん食べても太らない体質じゃなかったっけ?」

「ううん、なんか体質変わったみたいで。リクルートスーツ一着しかないからあんま太れないんだ」

「そうなんだぁ…」

119: 2009/09/06(日) 16:16:24.20 ID:Cfvoz1Zx0
「就活は大変?」

「うん…でも楽しいよ、いろんな発見があるからね!」

「こっちに戻ってくる気はないの?」

「うーん…」

「別に京都じゃなくてもさ!大阪なら家からでも通えるよ?」

「うん…考えておくよ」

それ以上の会話はなかった。

126: 2009/09/06(日) 16:50:48.97 ID:Cfvoz1Zx0
正月以来の実家。懐かしい。

両親は相変わらず不在で今は憂も一人暮らしの状態だ。

夕飯は憂の手料理。

私も料理はするけど週の半分はコンビニ弁当だ

128: 2009/09/06(日) 16:53:52.51 ID:Cfvoz1Zx0
「久しぶりだな~憂の手料理!!」

「うふふ、いっぱい食べてね!」

「いただきま~す!」

ん?あれ?憂の料理ってこんな味だっけ…?

これなら私が作った方がおいしい…

129: 2009/09/06(日) 16:56:22.76 ID:Cfvoz1Zx0
「どう?」

「すごくおいしいよ!!やっぱ憂は料理の天才だね!!」

「そんな~天才だなんて恥ずかしいよぉ」



…罪悪感に駆られずにはいられなかった

130: 2009/09/06(日) 17:00:48.42 ID:Cfvoz1Zx0

食事が終るとすぐに部屋に戻った

持ってきたギターを見る

そういえばもう何年も弾いてないなぁ

りっちゃんもしかして再結成しよう!なんて言うのかなぁ

よっしゃ!こうなったら一夜漬けで練習だ!!

133: 2009/09/06(日) 17:09:06.56 ID:Cfvoz1Zx0
あれ?んと…こうだったけ?

うわ―…ブランクって怖いなぁ…
全然弾けないや…

くそーっ!
ジャカジャカジャカジャカ

134: 2009/09/06(日) 17:12:57.35 ID:Cfvoz1Zx0

コンコン
「お姉ちゃん…あっギター弾いてた?」

「憂、どうしたの?」

「えっ、あの…久しぶりだからもっとお話したいなぁって…邪魔してごめんね!」

「ううん!邪魔じゃないよ!今下行くから待っててね!」

何やってるんだろ私…これから再結成するんだったら嫌でも練習するじゃん
今は憂との時間大切にしよう

136: 2009/09/06(日) 17:34:29.83 ID:Cfvoz1Zx0
「それでさ~」
「あははははは~」

会話が止まる

「あのさ…お姉ちゃん」

「ん?」

「ギターの調子はどう?」

「う~ん、まぁまぁかな!」

「そっか…そうだ!ギターの練習しなよ!」

「えっ?もうお話はいいの?」

「うん!ほら、早く早く!」

「わかった~ありがとう」

憂は優しいなぁ

「お姉ちゃん…」

139: 2009/09/06(日) 17:43:33.85 ID:Cfvoz1Zx0
とりあえず一晩中練習した結果、ふわふわ時間だけはなんとか完璧に弾けるようになった

まぁ眠れなくて一晩中弾いてたんだけど

これで大丈夫だ…

また新しい曲とか作るのかなぁ

141: 2009/09/06(日) 17:47:02.64 ID:Cfvoz1Zx0
そして約束の時間の30分前

「憂~!ちょっと出掛けてくるね!」

「うん!ご飯はいらないの~?」

「大丈夫~じゃあ行ってくるね~」

バタンッ

「……お姉ちゃん」

143: 2009/09/06(日) 17:50:24.08 ID:Cfvoz1Zx0

懐かしいな、この道

よく通ったな~

そういえば二年生の学園祭の時ギター家に忘れて走って戻ったっけ

あの頃みたいに戻れるのかな…

144: 2009/09/06(日) 17:55:30.92 ID:Cfvoz1Zx0
――6時55分、学校の校舎の前

やっと着いた

ここで…ここで過ごした3年間…

その3年間を忘れらなくて今ここにいる

そして失ったその後の3年間を…取り戻したい!

147: 2009/09/06(日) 17:57:57.46 ID:Cfvoz1Zx0
――音楽室前

ふぅ…ここを開ければ…

みんなに会える!

148: 2009/09/06(日) 17:59:55.30 ID:Cfvoz1Zx0
「おーっ!唯!」

りっちゃん…

「来たか~唯!」

澪ちゃん…

「お久しぶりね、唯ちゃん」

ムギちゃん…

「唯先輩…」

あずにゃん…

168: 2009/09/06(日) 20:39:23.94 ID:Cfvoz1Zx0
「みんな…またあの頃みたいに戻れるんだね!?」

「残念だけど…それはできない」

「えっ?じゃあなんで今日はここに?」

171: 2009/09/06(日) 20:47:06.63 ID:Cfvoz1Zx0
「今日は…唯の卒業式だ」

「卒業式?」

「悪いけどあたしたちは唯の期待に沿えることはできない…」

「だから放課後ティータイムは今日で正式に解散だ!」

「正確には一日だけ復活して解散だ」

「唯ちゃんはギターだけじゃなくてボーカルの才能だってあるんだから…音楽続けなければもったいないわ」

173: 2009/09/06(日) 20:54:16.15 ID:Cfvoz1Zx0
「卒業…式…」

「唯?」

「そんな…そんなことにために呼び出したの!?嫌だよ!!」

「そんなことって…今日のためにムギはわざわざアメリカから来てくれたんだぞ?」

「関係ないよ!そんなの嫌だ!!」

本当は嫌じゃなかった、私だっていい加減にふっ切りたかった

でも私の中の、高校生の私が最後の抵抗をした

176: 2009/09/06(日) 21:02:20.14 ID:Cfvoz1Zx0
「私…帰るね」

「唯!」

「唯ちゃん…」

素直になれない自分が本当に嫌だ

「待ってください!」

177: 2009/09/06(日) 21:09:44.40 ID:Cfvoz1Zx0
「梓…」

「梓ちゃん…」

「私が…悪いんです……私が全部悪いんです…唯先輩に期待させておいて…」
「結局約束も果たせなくて…」

「だから恨むなら私だけにしてください!」

178: 2009/09/06(日) 21:14:39.38 ID:Cfvoz1Zx0
「恨んでなんかいないよ…だから顔をあげて?」

私は最低だな…あずにゃんが悪くないのなんてわかってる

それにあずにゃんだって最近おばあちゃんが亡くなって悲しいはずなのに

「みんな…ありがとう…卒業式……やってくれる?」

181: 2009/09/06(日) 21:20:39.78 ID:Cfvoz1Zx0
「よっしゃー!!じゃあ始めるか!」

「でも卒業式って何するの?」

「私たちは軽音部だぞ?演奏するんだよ演奏」

「何か演奏したい曲ないのか?唯」

そういえばいろんな曲があったなぁ…
でも今の私にできるのはあの曲しかない

「じゃあふわふわ時間!」

憂が気遣ってギターの練習させてくれたのはこの為だったんだね…

185: 2009/09/06(日) 21:37:30.27 ID:Cfvoz1Zx0
「じゃあ行くぞー!1,2,3,4!!」

放課後ティータイムとしての最後の演奏

わたしは力いっぱい歌って弾いた

3年ぶりだから高校時代みたいにうまくはいかなかった

他の4人もそうみたい

もうこの歌を歌うこともないんだろう

そう思うと自然と涙が止まらなかった

186: 2009/09/06(日) 21:42:53.53 ID:Cfvoz1Zx0
♪あぁ神様お願い 二人だけの…ドリ…ム…タイ…ム………くだ…さ……

「唯!泣くのは終わってからにしろ!」

うん…ありがとう…
そう言ってくれないと今すぐ泣きそうだ

188: 2009/09/06(日) 21:51:27.89 ID:Cfvoz1Zx0
♪ふわふわタイム ふわふわタイム ふわふわタイム


終わった…

アンコールもなければ観客もいないただの音楽室

そこで一つのバンドが終わった

「りっちゃん、澪ちゃん、、ムギちゃん、あずにゃん…ありがとう」

「おう!これであたしたち友達だな!」

「うん……」

「お、どうした唯?泣きそうか?」ニヤニヤ

「か、からかわないでよ~」

「唯先輩…泣いていいですよ」


「…あず…にゃん…あずにゃ~ん…」

「いい子いい子…」

190: 2009/09/06(日) 22:00:33.79 ID:Cfvoz1Zx0
あずにゃんの胸で私は10分以上泣き続けた

泣いた後はすがすがしい気持ちになった

「でもなんで8月21日なの?」

「お前薄情もんだな~あたしの誕生日だよ!」

「あぁ、そうだっけ!」

192: 2009/09/06(日) 22:09:43.24 ID:Cfvoz1Zx0
その後りっちゃんの誕生会のためにお店に移動した

憂やさわちゃんも呼んでみんなで盛り上がった

ムギちゃんは明後日アメリカに戻るため先に帰っちゃったけど…

193: 2009/09/06(日) 22:18:25.96 ID:Cfvoz1Zx0
みんなが酔いつぶれて眠った後に酔っ払ったりっちゃんが話しかけてきた

「あたしが東京に会いに行ったことあったじゃん?あれホントは就活のためなんかじゃないんだ」

「知ってた、だってりっちゃん関西離れる気ないんでしょ?」

「ばれてたか…でもさ、唯があんなこと考えててびっくりしたよ。」

「…」

「もっとさ…私たちに頼れよ…?」

「うん…」

「唯が全然連絡くれなくてさ、みんな落ち込んでたんだよ?」

「うん…」

「悲しいことがあったら電話くれよ、こっち帰って来いよ」

「ありがとう…」

「あーやべ!泣きそうだからあたしも寝るわ!おやすみ~!!」

「うん…おやすみ…」

197: 2009/09/06(日) 22:56:02.76 ID:Cfvoz1Zx0
その後東京に戻った私はまたギターを始めることにした 

まだバンド組む気はないけどいずれは組みたいと思ってる

長期の休みは必ず地元に帰りみんなと会うようにしている

だってみんな友達だもん!

終わり

198: 2009/09/06(日) 23:02:09.45 ID:zYOogavzO

199: 2009/09/06(日) 23:06:22.80 ID:pT0zmkmaO

203: 2009/09/06(日) 23:19:32.82 ID:Cfvoz1Zx0
ここまで反応が少なかったのは初めてでした
たくさん保守してくれた方ありがとう
完璧オXXーだったみたいですね

引用元: 唯「そつぎょう!」