1: 2012/12/08(土) 20:37:11.66 ID:8NQEX2ssP
ミサト「シンジ君って癒し系よね」

シンジ「なんですか、それ」

ミサト「一緒にいると心が安らぐってことよ」

シンジ「はぁ」

ミサト「嬉しくない?」

シンジ「実感がありませんから」

ミサト「まぁ、自分自身じゃ分からないものよね」

シンジ「はい」
新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画(1) (角川コミックス・エース)

4: 2012/12/08(土) 20:39:17.80 ID:8NQEX2ssP
シンジ「でも、もし本当なら嬉しいな」

ミサト「そう?」

シンジ「はい。僕がいるだけで周りの人が安らいでくれるなら」

ミサト「そうねぇ……じゃあ、みんなのことを癒してみましょうか?」

シンジ「え?」

ミサト「癒し屋シンジ、開業よ!」

シンジ「え、え?」



ミサト(ついでに、ちょっちお小遣いを稼がせてもらいましょう)

6: 2012/12/08(土) 20:41:20.75 ID:8NQEX2ssP
リツコ「……癒し屋、シンジ?」

ミサト「いらっしゃい、リツコ」

シンジ「い、いらっしゃいませ」


リツコ「なにバカなことやってんのよ」

ミサト「あら、現代社会において、癒しは大事でしょ?」

リツコ「そうだけど、シンジ君に何やらせてるのって言ってるの」


シンジ「あ、僕なら平気です」

ミサト「ですってよ?」

リツコ「……」

7: 2012/12/08(土) 20:43:36.42 ID:8NQEX2ssP
ミサト「ね、ね、癒されてみれば分かるからさ、ものは試しに」

リツコ「……はぁ、一回だけよ?」

ミサト「やった! 料金先払い、30分500円になりまーす!」

リツコ「お金をとるの!?」

ミサト「当たり前でしょ?」

リツコ「あなたねぇ……」

ミサト「オプションもあるけど」

リツコ「有料なんでしょ?」

ミサト「もち」

リツコ「遠慮するわ。はい、500円。飽きたら帰らせてもらうからね」

ミサト「はいはい。それではお客様、ごあんなーい」

10: 2012/12/08(土) 20:45:22.55 ID:8NQEX2ssP
リツコ「なにここ」

シンジ「あっ、えーと、二人きりのがいいらしくて、ミサトさんが用意してくれました」

リツコ「ふーん」


シンジ「……」

リツコ「……」

シンジ「……」


リツコ「ちょっと」

シンジ「はい?」

リツコ「癒されるどころか、息が詰まって仕方ないんだけど」

シンジ「す、すいません」

11: 2012/12/08(土) 20:47:45.60 ID:8NQEX2ssP
リツコ「ミサトにやらされているんなら、ちゃんと反抗した方がいいわよ」

シンジ「いえ、別に……」

リツコ「あなただって、こんなオバサンと二人きり、嫌でしょ?」

シンジ「……そんなこと」

リツコ「?」



シンジ「―――そんなこと、ありませんよ!!」

リツコ「……!?」

12: 2012/12/08(土) 20:49:48.08 ID:8NQEX2ssP
シンジ「リツコさんは、すごく仕事が出来て、キレイで、カッコよくて」

シンジ「僕にとっては、理想の大人の女性っていうか」

シンジ「ここだけの話、ミサトさんって公私のギャップが激しいじゃないですか」

シンジ「リツコさんがいなかったら、僕は大人の女性に幻滅してたかもしれません」

シンジ「だから、一緒にいて嫌になるなんてこと、あり得ませんよ」



リツコ「……」

14: 2012/12/08(土) 20:51:32.97 ID:8NQEX2ssP
リツコ「……」

シンジ「リツコさん?」

リツコ「あ、あら……なにかしら?」

シンジ「いえ、なにかボーッとしてらしたので」

リツコ「そ、そんなことないと思うけど」

シンジ「お体の調子が悪いとか……?」


リツコ「……そういえば、最近まともな食事を摂ってなかったわね」

シンジ「本当ですか?」

リツコ「ええ」

シンジ「なら、僕が今度、お弁当を作ってきますよ!」

リツコ「……え?」

17: 2012/12/08(土) 20:53:59.70 ID:8NQEX2ssP
リツコ「駄目よ、そんなこと」

シンジ「どうしてですか?」

リツコ「シンジ君に無理言っているようで申し訳ないもの」

シンジ「無理なんて、そんな……僕がやりたいから、やらせてほしいんです」

リツコ「……そうなの?」

シンジ「はい、リツコさんの元気ない姿なんて、見たくありませんから」

リツコ「……」

シンジ「ちなみに、食べ物に好き嫌いとか、ありますか?」


リツコ「そうねぇ、私は―――」

21: 2012/12/08(土) 20:56:25.26 ID:8NQEX2ssP
ミサト「はーい、終了でーす。お疲れさまでしたー」


リツコ「……」

ミサト「どうだった?」

リツコ「まぁ、その」

ミサト「ん?」

リツコ「……悪くは、無かったわね」

ミサト「でしょー?」

24: 2012/12/08(土) 20:58:21.08 ID:8NQEX2ssP
リツコ「このお店は、いつやっているの?」

ミサト「営業は不定期で」

リツコ「そう」

ミサト「ちなみに、次からは30分1000円だから」

リツコ「何故!?」

ミサト「今回は初回サービス割引なのよ」

リツコ「ああ、そう……」


ミサト「お弁当は、シンジ君独断のアフターサービスってことで、無料だから」ボソッ

リツコ「……っ! 仕事に戻るわ!」スタスタ

25: 2012/12/08(土) 21:00:25.41 ID:8NQEX2ssP
ミサト「良い調子じゃない、シンジ君」

シンジ「本当ですか? 僕、癒せてますか?」

ミサト「バリバリ癒しまくりよ!」

シンジ「そっかぁ……」テヘヘ


ミサト「どんどんお客さん入れていくから、この調子でお願いね?」

シンジ「はい!」


ミサト(まぁまぁの商売になりそうだわ)グフフ

28: 2012/12/08(土) 21:02:22.32 ID:8NQEX2ssP
マヤ「えーっと、失礼します」

シンジ「いらっしゃいませ」

マヤ「きゃっ! ……シ、シンジ君?」

シンジ「はい」


マヤ「もしかして癒し屋さんっていうのは、シンジ君のこと……?」

シンジ「あ、一応そうなってます」

マヤ「まいったなぁ」

シンジ「……」

31: 2012/12/08(土) 21:04:35.24 ID:8NQEX2ssP
シンジ「僕、なにかしましたか?」

マヤ「え? ……あ、ごめんね、そうじゃなくて」

シンジ「……」


マヤ「あのね、私、男の人がちょっと苦手で」

シンジ「……」

マヤ「こんな薄暗い所で、こんな近くで……ってなると、ちょっと緊張しちゃうっていうか」

シンジ「……」


シンジ「待っててください」ガサゴソ

マヤ「?」

32: 2012/12/08(土) 21:07:00.30 ID:8NQEX2ssP
シンジ「こ、これでどうですか?」

マヤ「……!」


シンジ「ミサトさんが用意してくれたカツラ、なんですけど」

マヤ「……」

シンジ「これで、僕……じゃなくて、私は女の子ってことになりませんか?」

マヤ「……」

シンジ「えっと、その」


マヤ「―――ぷっ」

シンジ「!」

34: 2012/12/08(土) 21:09:33.61 ID:8NQEX2ssP
マヤ「あはっ、あははははは!」

シンジ「わ、笑わないでくださいよ!」

マヤ「だって、シンジ君、似合いすぎ! 女の子にしか見えない!」

シンジ「ええー……」


マヤ「うふふ、本当に可愛い」

シンジ「そうですか……?」

マヤ「シンちゃん、とかって呼んだ方が良い?」

シンジ「や、やめて下さいよ!」

37: 2012/12/08(土) 21:12:32.62 ID:8NQEX2ssP
マヤ「それに、女装とか関係なく、シンジ君は他の男の人とちょっと違うわ」

シンジ「本当ですか?」

マヤ「うん、なんだか安心するっていうか」

シンジ「……」


マヤ「も、もちろん! 癒し屋さんとしてってことだけどね!?」

シンジ「……? はい、ありがとうございます!」

42: 2012/12/08(土) 21:15:00.30 ID:8NQEX2ssP
シンジ「でも、嬉しいな」

マヤ「どうして?」

シンジ「こんなにマヤさんと話せたことって、ないから」

マヤ「仕事の関係上、あまりエヴァのパイロットと直接触れ合うことはないものね」

シンジ「そうですね。もっとこうして話せたらいいのに」

マヤ「……」


シンジ「マヤさん?」

マヤ「えっと、これって延長……とかってあるのかな?」

シンジ「大丈夫だと思います」

マヤ「じゃあ、その、お願いします」

シンジ「はい!」

48: 2012/12/08(土) 21:18:13.26 ID:8NQEX2ssP
ミサト「―――はーい、お客様―、ありがとうございましたー」


マヤ「……」

ミサト「延長料金とオプションサービスで1500円いただきまーす」

マヤ「あのー」

ミサト「え、え、なに!? やっぱり高すぎ!?」


マヤ「そうじゃなくてですね、このお店、次はいつやってるんでしょうか……?」

ミサト「……えーっと、一応不定期ってことになってて」

マヤ「不定期……」

51: 2012/12/08(土) 21:20:48.50 ID:8NQEX2ssP
マヤ「会員とかってないんですか?」

ミサト「会員……?」

マヤ「はい。営業日を連絡してくれるサービスがあったりとか」

ミサト「……まだ開店して間もないから、そういうのは追々にしようかなぁと……」

マヤ「そうですか」シュン


ミサト「でも、参考にして貰うわ! ありがとう!」

マヤ「あ、はい! 今後も利用させてもらいますね! それでは!」スタスタ


ミサト(男性が苦手な子をも……やるわね、シンジ君)

54: 2012/12/08(土) 21:23:04.84 ID:8NQEX2ssP
シンジ「いらっしゃいませー」

綾波「……」

シンジ「あ、綾波!?」

綾波「……」


シンジ「えーっと……綾波も、お客さんでいいのかな」

綾波「ええ」

シンジ「そっか、じゃあそこに座って」

綾波「ええ」ストン

57: 2012/12/08(土) 21:25:16.18 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」


シンジ(どうしよう、なにを話せばいいのか、分かんないよ)

シンジ(同い年のお客さんって、初めてだし)

シンジ(そもそも、お店じゃないところで、普通に話せるし……)


綾波「……」

60: 2012/12/08(土) 21:27:25.61 ID:8NQEX2ssP
綾波「碇君」

シンジ「な、なに?」

綾波「今日のお弁当も、美味しかったわ」

シンジ「……! 綾波がそう言ってくれて、嬉しいよ!」

綾波「そう」


シンジ「……」

綾波「……」

シンジ「……」

綾波「……」

62: 2012/12/08(土) 21:29:29.44 ID:8NQEX2ssP
綾波「そろそろ帰るわ」

シンジ「え、まだ来たばかりじゃないか」

綾波「この後、やることあるから」

シンジ「そっか……ごめんね、綾波。なにも出来なくて」

綾波「いいえ」

シンジ「え?」

綾波「十分、癒されたわ」

シンジ「……でも、僕はなにも」


綾波「なにもしてくれなくても、いいの」

シンジ「……?」

綾波「じゃあ」

シンジ「あ、うん。ばいばい、綾波」

66: 2012/12/08(土) 21:32:24.28 ID:8NQEX2ssP
冬月「お邪魔するよ」

シンジ「副司令!?」


冬月「どうした、声を荒げて」

シンジ「い、いえ……まさか副司令が来るとは思わなくて」

冬月「俺が来てはいけなかったか?」

シンジ「そんなことない、です」

冬月「そうか。では座らせてもらうよ」

シンジ「あ、はい、どうぞ」

71: 2012/12/08(土) 21:34:55.56 ID:8NQEX2ssP
シンジ「副司令は、どうしてここに?」

冬月「ああ、なんでも職員の間で流行っている店があると聞いてな」

シンジ「はぁ」

冬月「最近、少し疲れやすい。駄目で元々、癒されに来たというわけだ」

シンジ「なるほど」

冬月「して、どんな癒しを提供してくれるのかな?」

シンジ「それは……」

冬月「……」

シンジ「えっと、じゃあ、肩でもお揉みしましょうか?」

冬月「ふむ、それはいい。やってもらおうか」

シンジ「はい」

73: 2012/12/08(土) 21:37:34.36 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……」モミモミ

冬月「……」


シンジ「あの、どうでしょうか?」

冬月「悪くない」

シンジ「それは良かったです」

冬月「孫に労わられている気分だ」

シンジ「……」


冬月「変なことを言ったな」

シンジ「いえ、その……僕なんかでいいなら」

冬月「そうか」

シンジ「はい」

75: 2012/12/08(土) 21:39:44.25 ID:8NQEX2ssP
冬月「おや、その箱はなんだ」

シンジ「これですか? えっと、オプションらしいです」

冬月「オプション?」

シンジ「はい。よく分からないけど、色んな服とか、オモチャとかが入ってます」

冬月「ふむ」

シンジ「これなんて、けっこう色んな人が要望くれるんですよ。ただのカツラなんですけど」カパッ


冬月「……っ!!」

シンジ「……?」

78: 2012/12/08(土) 21:42:42.33 ID:8NQEX2ssP
シンジ「どうかしましたか?」

冬月「……いや、なんでもない。とてもよく似ていただけだ」

シンジ「似ていた?」

冬月「……」


シンジ「もしかして、母さんにですか?」

冬月「ああ」

シンジ「そうか、副司令は母さんのこと、知ってるんだ」

冬月「……」

シンジ「あの、良ければ、聞かせてもらえませんか?」

冬月「……」

81: 2012/12/08(土) 21:44:39.33 ID:8NQEX2ssP
冬月「ダメだ」

シンジ「……えっ」

冬月「今はその時ではない」

シンジ「……」

冬月「しかし、いずれ話す時が来るだろう」

シンジ「本当ですか?」

冬月「ああ」

シンジ「そうですか……」


冬月「……とりあえず、それは取ってもらえないか。なんというか、それは……よくない」

シンジ「あ、はい」カパッ

83: 2012/12/08(土) 21:47:05.27 ID:8NQEX2ssP
冬月「今日は、これで失礼させてもらうよ」

シンジ「わかりました」

冬月「有意義な時間だった。感謝する」

シンジ「いえ、こちらこそ」


冬月「最後に言っておくが」

シンジ「はい?」

冬月「……碇を、恨まないでやってくれ。奴も不器用なだけだ」

シンジ「……」

冬月「ではな」

シンジ「はい、ありがとうございました!」

85: 2012/12/08(土) 21:49:22.47 ID:8NQEX2ssP
ミサト「お客様ー、ありがとうございましたー」

冬月「……」

ミサト「ボディタッチとカツラのオプションで2000円いただきまーす」

冬月「それは構わんが、ひとつ聞かせてもらう」

ミサト「な、なんですか?」

冬月「こうして金をとっていること、彼は知っているのか?」

ミサト「えーっと……それは、どうでしょう? あはは」

冬月「……」

ミサト「ははは……」


冬月「ほどほどにしておきたまえよ」スタスタ

ミサト「は、はい……」


ミサト(こわー)

87: 2012/12/08(土) 21:51:58.21 ID:8NQEX2ssP
マリ「やっほー、わんこ君!」

シンジ「げっ、真希波」


マリ「ちょっと、『げっ』はなくない?」

シンジ「ごめん……」

マリ「泣いちゃう」シクシク

シンジ「嘘泣きでしょ?」


マリ「分かる?」ケロッ

シンジ「何十回もやられてれば分かるよ!」

89: 2012/12/08(土) 21:54:34.29 ID:8NQEX2ssP
マリ「で、で、癒しってなんなの?」

シンジ「正直、僕にもよく分かってない……」

マリ「えー、こんなに人気出てるのに?」

シンジ「そんなに話題になってるの?」

マリ「今はもう予約ないとダメだって」

シンジ「いつの間に、そんな……」

マリ「ようやく順番回ってきたんだからさぁ、ちょっとはサービスしてよ」

シンジ「どうすればいい?」

マリ「んー……あ、オプションってどれ?」

シンジ「この箱」

マリ「どれどれ」ガサゴソ

91: 2012/12/08(土) 21:56:31.41 ID:8NQEX2ssP
マリ「あ!」

シンジ「なに?」

マリ「犬耳!」

シンジ「えっ」

マリ「つけてつけて!」

シンジ「僕が……?」

マリ「当たり前じゃん」

シンジ「うう……」カパッ


マリ「わっ、可愛い!」

シンジ「恥ずかしいよ……」

マリ「写メ、写メ」パシャパシャ

シンジ「撮らないで!」

94: 2012/12/08(土) 21:59:49.19 ID:8NQEX2ssP
マリ「わんこ君、わんこ君」

シンジ「ん?」

マリ「お手」

シンジ「……」

マリ「お手っ!」


シンジ「……はい」ポフッ

マリ「『はい』じゃなくて『わん』でしょー?」

シンジ「……わん」ポフッ


マリ「かわいいー!!」ナデナデ

シンジ「やめてよ!」

95: 2012/12/08(土) 22:02:20.29 ID:8NQEX2ssP
マリ「お持ち帰りはないの?」

シンジ「そんなサービスないよ」

マリ「残念」

シンジ「はぁ……」


マリ「そうだ、ポッキーがあるんだ」

シンジ「だから?」

マリ「餌付けしたい」

シンジ「餌付けって」


マリ「ほい、あーん」

シンジ「……あーん」パクッ

98: 2012/12/08(土) 22:04:27.41 ID:8NQEX2ssP
マリ「そのまま、咥えててね」

シンジ「?」


マリ「あーん」パクッ

シンジ「!?」


マリ「……」ポリポリ

シンジ「ん、ん!?」

マリ「……」ポリポリ

シンジ「んー!!」


シンジ「んんっ!!」ポキッ

マリ「ありゃ」

101: 2012/12/08(土) 22:06:23.08 ID:8NQEX2ssP
マリ「なんで折っちゃうのさ―」

シンジ「当たり前だろ! だって……」

マリ「だって?」

シンジ「あのままじゃ、口と口が……くっついちゃうじゃないか」

マリ「そうしようとしたんだけど」

シンジ「元からそのつもりかよ!」


マリ「じょーだん、じょーだん。流石の私でも、そこまでしないって」

シンジ「ほんとかなぁ」

マリ「初めて、する時は……もっとちゃんとしようね? わんこ君?」

シンジ「……!」

106: 2012/12/08(土) 22:08:45.02 ID:8NQEX2ssP
マリ「わんこ君、わんこ君」

シンジ「……なんだよ」

マリ「顔、真っ赤」

シンジ「み、見ないでよ!」

マリ「あはは」


マリ「はー、癒された。というより、楽しかった―」

シンジ「ううう……」

マリ「また来るね、わんこ君」

シンジ「もう来ないでいいよ!」

107: 2012/12/08(土) 22:10:44.91 ID:8NQEX2ssP
マリ「それ、本気で言ってる?」

シンジ「えっ」

マリ「だとしたら、ちょっと悲しい」

シンジ「えっと……」


シンジ「……」

マリ「……」


シンジ「次、真希波が来るの……楽しみに、してる」

マリ「ん! りょーかいっ!」

108: 2012/12/08(土) 22:12:23.49 ID:8NQEX2ssP
シンジ「ふあぁ……」

シンジ「っと、いけない、仕事中なのに」

シンジ「……」

シンジ「ちょっと疲れた、かな」

シンジ「でも、僕がこうしてるだけで、みんなが癒されてくれるんだ」

シンジ「頑張らないと」


シンジ「それに、最近はこの仕事にも慣れてきたし」

シンジ「もう、どんな人が相手でも、大丈夫だ」

シンジ「……」

111: 2012/12/08(土) 22:14:31.29 ID:8NQEX2ssP
―――コツコツ



シンジ「お客さんだ」

シンジ「あ、いらっしゃいま――」




ゲンドウ「……」




シンジ「と、父さんっ!?」

117: 2012/12/08(土) 22:16:18.88 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……」

ゲンドウ「……」

シンジ「……」

ゲンドウ「……」



シンジ(どんな人が相手でも大丈夫なんて、やっぱり嘘だった)

シンジ(父さんが相手じゃ、なにしたらいいか、全然分かんないよ)

シンジ(そもそも、父さんはなにしに来たんだろ)

シンジ(癒されに……?)


シンジ(いや、まさか、そんな……)チラッ

ゲンドウ「……」

122: 2012/12/08(土) 22:18:27.45 ID:8NQEX2ssP
シンジ「と、父さん」

ゲンドウ「なんだ」

シンジ「父さんは……癒されに、きたんだよね?」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「じゃあ、僕はどんなことしたら、いいかな?」


ゲンドウ「……」

シンジ「……」

ゲンドウ「……」

シンジ「……」


シンジ(なにも言わない……お前に任せるってことなのかな……)

124: 2012/12/08(土) 22:20:59.04 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……父さん!」

ゲンドウ「なんだ」


シンジ「肩でも揉もうか?」

ゲンドウ「いや、いい」

シンジ「オプションで、僕がちょっと面白い服着たりとか、するんだけど」

ゲンドウ「しなくていい」

シンジ「……オモチャ、とか」

ゲンドウ「いらん」


シンジ「……」

ゲンドウ「……」

129: 2012/12/08(土) 22:23:00.76 ID:8NQEX2ssP
シンジ(全然ダメだ、ダメじゃないか)

シンジ(これまでちょっと上手くいってたから、調子に乗ってただけなんだ……)


シンジ(本当の癒し屋さんなら、こんな時、どうするんだろ)

シンジ(いや、本当の癒し屋さんなんていないか……)

シンジ(そもそも癒し屋さんってなんだよ!)


シンジ(って、そんなこと考えてる場合じゃ……)



ゲンドウ「……」

136: 2012/12/08(土) 22:25:26.14 ID:8NQEX2ssP
ゲンドウ「シンジ」

シンジ「……! な、なに?」

ゲンドウ「学校は、どうだ?」

シンジ「学校?」

ゲンドウ「ああ」


シンジ「えっと、すごくいい所だよ」

ゲンドウ「……」

シンジ「友達もいて、色んなことが勉強できて、楽しいよ」

ゲンドウ「そうか」

シンジ「うん」

142: 2012/12/08(土) 22:27:53.74 ID:8NQEX2ssP
ゲンドウ「NERVは、どうだ」

シンジ「もちろん、いい所だよ」

ゲンドウ「……」

シンジ「みんな、とても良くしてくれる。父さんの息子だからってことじゃなくて、僕自身を見てくれて」

ゲンドウ「……」

シンジ「普通じゃ絶対に経験できないようなことが出来て、嬉しいよ」

ゲンドウ「……」


シンジ「……父さん。僕ね、父さんに感謝してるんだ」

ゲンドウ「……」

150: 2012/12/08(土) 22:31:12.24 ID:8NQEX2ssP
シンジ「最初は、そりゃ恨んだよ。なんで、わけも分からないまま、命をかけて戦わなきゃならないのさって」

シンジ「いや、今だって、分からないことはいっぱいなんだけどね」


シンジ「でもね、今はみんながいる。学校や、NERVに……友達や、信頼できる人たちがいる」

シンジ「みんなに出会えて、一緒にいられて……そういう風になれたのは、こうしてこの場所にいるからなんだ」

シンジ「辛いことも沢山あるけど……でも、それでも僕は、この場所にいられることが幸せなんだ」


シンジ「だから、この場所に呼んでくれた父さんには、ありがとうって、伝えたかったんだ」



ゲンドウ「……」

153: 2012/12/08(土) 22:33:25.99 ID:8NQEX2ssP
シンジ「ごめんね、長々と」

ゲンドウ「いや、いい」


シンジ「……」

ゲンドウ「……」

シンジ「……」

ゲンドウ「……」


ゲンドウ「……仕事に戻る」

シンジ「あっ、うん」

156: 2012/12/08(土) 22:35:33.53 ID:8NQEX2ssP
シンジ「ありがとうございましたー」

ゲンドウ「……」ピタ

シンジ「……?」


ゲンドウ「シンジ」

シンジ「なに?」

ゲンドウ「良い、癒しだった」

シンジ「!」


ゲンドウ「……」スタスタ

シンジ「……」


シンジ「……ありがとう、ござい、ました……」

161: 2012/12/08(土) 22:38:27.28 ID:8NQEX2ssP
リツコ「ねぇ、ミサト」

ミサト「なに?」

リツコ「次の私の番はいつ?」

ミサト「んーと、三日後」

リツコ「まだ三日もあるの!?」

ミサト「ごめんねぇ、大人気だから」

リツコ「まったく。私はお客第一号なんだから、もっと大事にしなさいよ」

ミサト「……リツコも、すっかりハマっちゃったわねぇ」

リツコ「現代社会に潜む闇の影響ね」

ミサト「なぁーに言ってんだか」

165: 2012/12/08(土) 22:40:26.41 ID:8NQEX2ssP
マヤ「あのー……」

ミサト「ん?」

マヤ「これ、シンジ君に服を作ってきたんですけど」

ミサト「ああ、いつも悪いわね」

マヤ「いえ……そ、それでですね」


ミサト「分かってるって、順番、早めておくから」

マヤ「ありがとうございます!」


ミサト(ううむ、良い笑顔するようになったわねぇ……)

168: 2012/12/08(土) 22:42:35.63 ID:8NQEX2ssP
ミサト「くふふ……一、十……っと」

ミサト「笑いが止まらないわぁ、まさかここまで繁盛するとは」

ミサト「恐るべきは、シンジ君の癒しパワーってところかしら」


ミサト「その分、私は毎日、家でシンジ君の癒しを補給可能!」

ミサト「勝ち組過ぎてお酒が美味い!」

ミサト「あは、あははははははは!!」




アスカ「……」

172: 2012/12/08(土) 22:44:47.39 ID:8NQEX2ssP
シンジ「あ、次が最後のお客さんだな」

シンジ「んー、今日もいっぱい癒したなぁ」

シンジ「ふわぁ……」


シンジ「……っと」

シンジ「欠伸なんてしてたら、退屈なのかって思われちゃう」

シンジ「シャッキリしないと」パンッ


シンジ「よし」

シンジ「お客様―、いらっしゃいませー」

174: 2012/12/08(土) 22:46:52.81 ID:8NQEX2ssP
アスカ「しけた場所ね」

シンジ「えっ、アスカ!?」

アスカ「……なによ」

シンジ「いや、だって」

アスカ「私が来たらいけないの?」

シンジ「そんなこと、ないけど……」

アスカ「じゃあ、いいじゃないのよ」

シンジ「う、うん」


アスカ「……」

シンジ「……」

177: 2012/12/08(土) 22:48:24.24 ID:8NQEX2ssP
アスカ「ちょっと」

シンジ「なに?」

アスカ「このまま黙ってるだけなのが癒し屋なの?」

シンジ「違うけど……」

アスカ「なんかしなさいよ」

シンジ「えっと……アスカはなにかしたいこと、ないの?」

アスカ「私?」

シンジ「うん」

アスカ「……」

181: 2012/12/08(土) 22:50:21.59 ID:8NQEX2ssP
アスカ「なら、膝枕」

シンジ「膝枕!?」

アスカ「ダメなの?」

シンジ「だ、ダメじゃないけど……」

アスカ「……」


シンジ「えっと」

アスカ「……」

シンジ「じゃあ、こっちに来てもらえるかな……?」

アスカ「……」

189: 2012/12/08(土) 22:52:21.15 ID:8NQEX2ssP
アスカ「違うわ」

シンジ「えっ?」

アスカ「膝枕をするのは、私」

シンジ「アスカが?」

アスカ「ええ」

シンジ「でも……」

アスカ「いいから、こっち来なさいよ」

シンジ「あっ、うん」

192: 2012/12/08(土) 22:54:24.02 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……」ポスッ

アスカ「……」


シンジ「あの」

アスカ「なによ」

シンジ「僕は、ここからどうすればいいのかな」

アスカ「どうもしないで」

シンジ「え、ええー」

アスカ「黙って寝転んでりゃいいのよ」

シンジ「そんなぁ」

アスカ「……」

195: 2012/12/08(土) 22:56:27.26 ID:8NQEX2ssP
シンジ(アスカ、なにを考えてるんだろ)

シンジ(綾波や、父さん以上に分かんないや)


シンジ(でも、なんかちょっと落ち着くな)

シンジ(心が安らぐっていうか)

シンジ(そうか、これが……)


シンジ(……あ、どうしよう、眠くなってきちゃった)

シンジ(寝たらまずいよね、やっぱり)

シンジ(でも……何もするなって……言ってたし……)


シンジ(なに、も……)スゥ

198: 2012/12/08(土) 22:58:27.53 ID:8NQEX2ssP
シンジ「……」スゥ

アスカ「バカシンジ?」


シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「……」


アスカ「寝た、か……」

シンジ「……」

アスカ「ったく、最近疲れた顔してると思ったら、こんなことやってたのね」

206: 2012/12/08(土) 23:01:18.36 ID:8NQEX2ssP
アスカ「癒し屋、なんて」

シンジ「……」

アスカ「それで、自分が疲れてて、どうすんのよ」

シンジ「……」


アスカ「まぁ、お人好しのアンタらしいけど」

シンジ「……」

アスカ「だからって、私は許さないわよ」

シンジ「……」

211: 2012/12/08(土) 23:03:33.86 ID:8NQEX2ssP
アスカ「女の子みたいな寝顔」

シンジ「……」

アスカ「髪の毛、柔らかい」ナデ

シンジ「……」


アスカ「ふふっ」

シンジ「……」

アスカ「おやすみ、バカシンジ……」

シンジ「……」

214: 2012/12/08(土) 23:06:34.37 ID:8NQEX2ssP
エピローグ


ミサト「すいませんでしたー」ドゲザッ


アスカ「まったく、子供を使ってお金儲けなんて、最低よ」

ミサト「最初は小金を稼ぐだけのつもりだったんですけど……魔が差して……」

アスカ「中毒になってたのは、客だけじゃなかったってことね」

ミサト「もう、こんなことはいたしません……」


アスカ「バカシンジも、なんとか言ってやんなさい」

シンジ「僕?」

アスカ「被害者はアンタなんだから、当り前でしょ」

シンジ「えっと……」


シンジ「ダメですよ、もうこんなことしちゃ」コツン

ミサト「あうっ、シンジくぅん!」

219: 2012/12/08(土) 23:08:43.67 ID:8NQEX2ssP
アスカ「そんなんでいいわけ?」

シンジ「うん」

アスカ「お人好し、ここに極まれりね……」

シンジ「あはは」


アスカ「で、稼いだお金はどうするの? アンタが好きにしていいんでしょ?」

シンジ「うーん」

アスカ「ん?」

シンジ「……お店に来てくれた人たちに、返そうと思ってるよ」

アスカ「はぁ!?」

221: 2012/12/08(土) 23:10:51.44 ID:8NQEX2ssP
シンジ「変かな?」

アスカ「変よ!」

シンジ「どうして?」

アスカ「方法はともかく、アンタが働いて得たお金じゃない、報酬はあって当然でしょ!」


シンジ「……癒し屋やってて、思ったんだ」

アスカ「なにをよ?」

シンジ「色んな人と、色んなこと話して……癒されてたのは、お客さんだけじゃなくて、僕の方もなんだなって」

アスカ「……!」

223: 2012/12/08(土) 23:12:59.67 ID:8NQEX2ssP
アスカ「そう」

シンジ「うん」

アスカ「じゃあ、悪かったわね」

シンジ「え?」

アスカ「アンタが楽しんでたなら、無理にやめさせない方が良かったでしょ?」

シンジ「あー……でも、お金をとるのは、やっぱりちょっとね」

アスカ「……まぁ、そうね」

シンジ「うん、それにさ」

アスカ「?」

224: 2012/12/08(土) 23:14:53.33 ID:8NQEX2ssP
シンジ「今度からは、お金を取ったり、お店の形をとらずに、僕個人で色んな人と話そうと思う」

アスカ「ふーん」

シンジ「今回の件で仲良くなれた人もいるし、分かりあえた人もいるし……僕自身も、少しは変われたと思うから」

アスカ「ま、いい考えじゃない?」


シンジ「……アスカが、僕に優しくしてくれたのは、一生忘れられなさそう」

アスカ「あ、アンタねぇ!」

シンジ「あはは」

226: 2012/12/08(土) 23:16:39.07 ID:8NQEX2ssP
シンジ「癒しかぁ」

アスカ「なに?」

シンジ「最初はよく分からなかったけど、今なら分かるよ」

アスカ「ふぅん」



シンジ(誰かに優しくして、誰かに優しくされて)

シンジ(それはたぶん、きっと)


シンジ(僕が一番欲しかった、温かさだと思う)



終劇

227: 2012/12/08(土) 23:17:18.44 ID:y3o2yWaJ0
終わっちゃった

228: 2012/12/08(土) 23:17:23.81 ID:zUnz0GId0

229: 2012/12/08(土) 23:17:32.29 ID:Hj/EOxGe0

引用元: シンジ「癒し屋シンジ?」