1: 2009/12/22(火) 23:43:16.78 ID:N41YdGHV0
私たちがお父さんとお母さんから電話でそれを聞かされたのは昨日のことだった。

二週間後に引っ越すことにしたらしい。

なんでも本格的に出張先に腰を据えることにしたとか。

お父さんとお母さんは私と憂が卒業するまで私たちだけでここにいてもいいと言ってくれたけど、私たちは話しあってついていくことに決めた。

新居先はあまりにも遠くて気軽に行くことができないのだ。

今までも出張やら旅行やらで私と憂の二人きりになることは多かったけれど、それがずっととなると流石に躊躇せざるを得ない。

・・・今の私はひどい顔をしているだろう。

ほとんど眠れていない上に、今の生活と離別するという事実はまだ高校生には重すぎた。

3: 2009/12/22(火) 23:46:25.49 ID:N41YdGHV0
~朝

唯「おはよー・・・」

憂「おはようお姉ちゃん」

憂「お姉ちゃん目の下にくまがあるよ」

憂「だめだよちゃんと寝なきゃっ」

唯「うん・・・昨日は一晩中ギー太を引いてたからあまり寝てないんだ」

憂「もー ダメでしょ 体壊したら元も子もないんだよ」

唯「ごめんねー」

唯(憂は気づいてるよね 昨日私の部屋から音なんてしなかったこと)

4: 2009/12/22(火) 23:50:08.01 ID:N41YdGHV0
憂「そうだお姉ちゃん」

唯「何ー?」

憂「荷物の整理をそろそろはじめておいてよ」

唯「えっ・・・でもまだ二週間も先だよ?」

憂「だめだよ」

憂「先送りにしちゃうといっつも直前になってもやってないってことになっちゃうでしょ」

唯「うん・・・帰ったらやるよ」

5: 2009/12/22(火) 23:54:29.31 ID:N41YdGHV0
~通学中

唯「うぅ寒いねぇ」

憂「もう12月だからね」

唯「今年はうちでクリスマス会やれないね・・・」

憂「うん・・・」

憂「で、でもお姉ちゃんには私がごちそうつくるよ!」

唯「おー期待しているよ」

憂「任せてっ」

唯(憂はいつも通りだよ 辛くないのかな?)

7: 2009/12/22(火) 23:59:07.54 ID:N41YdGHV0
~2年教室

唯「りっちゃんムギちゃんおはよー」

紬「おはようございます」

律「おー唯、聞いてよ澪のやつがさー」

唯(みんなに伝えなきゃ)

唯(でも言いづらいよぉ)

律「でさー・・・って聞いてる唯?」

唯「ほえっ? き、聞いてるよりっちゃん!」

律「なんかぼーっとしてたぞ 風邪でもひいてるのか?」

唯「そんなことないよ」

律「ならいいけどな クリスマスライブまであと二週間もないのにこの時期に風邪なんてひくなよ」

唯「うん・・・気を付けるよ」

9: 2009/12/23(水) 00:04:05.56 ID:7PW+4cv80
律「ところで唯、ちゃんと勉強してきたか?」

唯「ん、勉強?」

律「あちゃー・・・やっぱりな」

律「今日は数学のテストで結果次第では冬休みに入るまでずっと補習なんだぞ」

唯「えっ・・・!! 忘れてた!!」

唯(引越しのことですっかり頭から吹き飛んじゃっていたよ~)

律「しかたないな・・・」

唯「! りっちゃん教えてくれるの?」

律「ああ、当然だろ ムギがな!」

唯「りっちゃん?」ジーッ

律「うっ・・・」

唯(テストのこともあるし、今は言わなくても良いよね)

10: 2009/12/23(水) 00:08:32.20 ID:N41YdGHV0
紬「ここは~を代入して~」

唯&律「ふむふむ」

紬「ここには~を使って~」

唯&律「ほぉー」

紬「これで終わりです♪」

唯「ムギちゃんありがとー 助かったよ!」

律「悪いなムギ ムギも一緒に受けるのに」

紬「いえいえ~ 私も確認になりましたし」

紬「それじゃあみなさんがんばりましょうね」

11: 2009/12/23(水) 00:12:37.57 ID:7PW+4cv80
~1年教室

梓「おはよう憂」

憂「おはよう・・・」

梓「? いつもより元気がないみたいだけどどうかした?」

憂「そんなことないよ!」

梓「ならいいんだけど・・・」

憂「昨日はお姉ちゃんと夜更かししちゃったから」

12: 2009/12/23(水) 00:17:15.20 ID:7PW+4cv80
憂「そうだ梓ちゃん」

梓「なに?」

憂「お姉ちゃんのことどう思う?」

梓「どうって?」

憂「部活でのお姉ちゃんってどんな感じなのかなって」

梓「練習してください、いろいろありますがまず言いたいことはこれです」

憂「あぅ~やっぱり」

梓「でもね、憂」

梓「唯先輩は素敵なところもたくさんあるよ」

13: 2009/12/23(水) 00:22:30.53 ID:7PW+4cv80
憂「素敵なところ?」

梓「うん」

梓「いつもはお茶飲んでるし、ケーキ食べてるし、抱きついてくるし、ボーッとしてるけど、本気になったときに見せるあの表情はとても好きです」

梓「あっ! 好きと言っても尊敬出来るって意味で決して恋愛対象と言うか独占したいって意味じゃ・・・///」

憂「うふふ 梓ちゃんもお姉ちゃんのことが大好きなんだね」

梓「うぅ///」

梓「で、でもいつもが不真面目過ぎます もう少しやる気になって欲しいです」

15: 2009/12/23(水) 00:30:27.51 ID:7PW+4cv80
憂(もし私がここで引越しのこと言っちゃったら大変なことになっちゃう気がするよ)

憂(お姉ちゃんが自分で言うのがいいのかな・・・)

憂(それに・・・)

梓「どうしたの憂?」

憂「えっ・・・なんでもないよっ」

梓「本当に何かあったらちゃんと私に言ってね」

梓「私は憂の親友なんだから」

憂「うん・・・ありがとう」


20: 2009/12/23(水) 00:37:30.44 ID:7PW+4cv80
~放課後

唯「ほげー」

律「ぐでー」

澪「・・・で、テスト駄目だったと」

紬「いえ、補習には引っかからなかったのよ だけどなんでも頭を使いすぎたみたいで・・・」

唯「頭パンパン~」

律「もう無理だ~」

澪「はぁ・・・」

梓「先輩たちらしいですね・・・」


24: 2009/12/23(水) 00:45:26.55 ID:7PW+4cv80
唯「今日は休憩にしようよ~」

律「そうだそうだー」

澪「ダメだダメだ! 本番まであとわずかなんだぞ!」

唯(っ! そうだよ、みんなとやれる最後のライブなんだよ・・・)

唯「れ、練習しよっ!」

律&澪&紬&梓「・・・!!??」

唯「ん?」

26: 2009/12/23(水) 00:52:01.37 ID:7PW+4cv80
唯「みんなどうしたの?」

紬「いえ・・・」

律「唯が・・・」

澪「自分から練習しようだなんて・・・」

梓「言うとは思わなかったんです・・・」

さわ子「偽物ね」

唯「ひ、ひどいよみんな!!」

27: 2009/12/23(水) 01:01:15.73 ID:7PW+4cv80
梓「唯先輩にしても憂にしても今日はなんだか変です」

唯「! 憂も・・・?」

梓「はい なんだか授業中もボーッとしていて上の空というか・・・」

紬「真面目な憂ちゃんらしくないわね」

律「おおかた二人で夜更かししてまでゲームでもしてたんだろ」

唯「違うよ! 昨日は・・・」

澪「昨日は?」

唯「・・・うん、憂とずっとゲームやってたよ」

律「なんだそりゃ」

梓「もー唯先輩だけならともかく憂まで巻き込むのはやめてくださいよ」

唯「ごめんね~」

唯(言うとしたら今だったのに言えなかったよ・・・)

28: 2009/12/23(水) 01:08:26.12 ID:7PW+4cv80
澪「あーところでだ」

澪「唯も練習しようって言ってるんだし残るはお前だけだぞ」

律「ちぇ~ それじゃあやるぞみんな ポジションにつけぇーーー!」

澪「今更仕切るなっ」ゴチン

律「ヒドスギマセンカ」

29: 2009/12/23(水) 01:15:42.70 ID:7PW+4cv80
~帰り道

律「それにしても今日はよかったな」

紬「はい 特に唯ちゃんからはすごい熱意が伝わってきたわよ」

梓「いい意味でいつもの先輩じゃなかったです」

唯「そ、そうかな? 別に普通だよ~」

澪「これからもこの調子で頼むぞ!」

唯「うん・・・」

32: 2009/12/23(水) 01:23:32.19 ID:7PW+4cv80
唯「そういえばあそこのアイス屋新製品だしたんだよ」

澪「それじゃあ今日はみんな頑張って練習したことだしアイスでも食べに行くか」

律「え~ この寒い中アイスかよー」

唯「わーい あずにゃん、三段アイス挑戦しよー」

梓「この寒いのに三段はないです」

紬「あらあら」

澪「すっかりいつもの唯だな」

34: 2009/12/23(水) 01:32:53.20 ID:7PW+4cv80
~平沢家

唯「アイスおいしかったなー」

唯「今度は憂と行こ」

唯「・・・」

唯(結局みんなに言えなかったよ)

唯(明日こそは話さないとなぁ)

唯(・・・あれ)

唯(そういえばあずにゃんは私に何も言ってこなかったよ?)

唯(もしかして憂も言えてない?)

36: 2009/12/23(水) 01:41:30.43 ID:7PW+4cv80
唯「ういー」

憂「何お姉ちゃん? ごはんならもう少し待っててね」

唯「うん!・・・じゃなくて憂」

憂「ん?」

唯「憂は引越しのことあずにゃんに言わなかったの?」

憂「うん・・・」

唯「憂も言いづらいんだ・・・」

憂「そうじゃなくてねお姉ちゃん」

唯「ほえ?」

憂「私はお姉ちゃんがみんなに言うまで言わないことにしたの」

37: 2009/12/23(水) 01:51:49.71 ID:7PW+4cv80
唯「えっ?」

唯「どうして・・・?」

憂「だってお姉ちゃんは優しいからみんなのこととか考えちゃって言えないと思ったの」

憂「だから私が先に言っちゃって梓ちゃん経由でみんなに伝わっちゃうのはいけないかなって」

唯「ダメだよ!」

憂「お姉ちゃん?」

唯「私のことばかりじゃなくて自分のことも考えなきゃっ」

38: 2009/12/23(水) 02:00:28.19 ID:7PW+4cv80
唯「それにあずにゃんが憂が上の空だったって言ってたよ」

憂「梓ちゃんが?」

唯「憂・・・辛かったら私に抱きついてもいいんだよ?」

憂「そんなことないよ! 私は全然平気だよ」

唯「それでも」

憂「お姉ちゃんが良ければ私も良いの」

唯「でも」

憂「あっ お鍋吹きこぼれちゃう! 本当に大丈夫だから心配しないでね」ダダダ

唯「憂・・・」

39: 2009/12/23(水) 02:11:03.63 ID:7PW+4cv80
~夜

唯(憂はああ言ってたけどやっぱりつらいはずだよね)

唯(私がもう少ししっかりしていれば)

唯(・・・)

唯(明日・・・みんなに言おう)

唯(それじゃあ寝よう)

唯(おやすみ)

唯「zzz」

42: 2009/12/23(水) 02:21:11.21 ID:7PW+4cv80
憂(やっぱり梓ちゃんにはわかっちゃったのかな・・・)

憂(ううん、私がここで弱音を吐いたらお姉ちゃんが安心してライブできなくなっちゃうもん)

憂(いつも通りいつも通り)

憂(うん、大丈夫)

憂(大丈夫・・・)

憂(寝よう)

憂(・・・)

憂(・・・ごめんね)

憂「zzz」

43: 2009/12/23(水) 02:33:31.15 ID:7PW+4cv80
~翌日

憂「お姉ちゃん起きて」ユサユサ

唯「んん・・・」

憂「そろそろ起きなきゃ遅刻しちゃうよ」

唯「!」ガバッ

唯「おはようういー」

憂「おはようお姉ちゃん」

44: 2009/12/23(水) 02:45:49.52 ID:7PW+4cv80
モグモグ
ゴクゴク

唯「ふぅ~ ごちそうさまー」

憂「そうだお姉ちゃん」

唯「なに?」

憂「引越しのことなんだけどね」

唯「うん」

憂「クリスマスライブ終わるまで言わなくてもいいかなって思うの」

憂「だって今言っちゃったら練習自体が上手くいかなくなっちゃうかなって」

唯「・・・」

憂「ご、ごめんね でしゃばっちゃって」

憂「今の話は忘れて お姉ちゃんがみんなのことよく知ってるんだもんね」

唯「うん・・・」

45: 2009/12/23(水) 02:53:38.20 ID:7PW+4cv80
唯(憂もこう言っているし、まだ言わなくてもいいのかな)

唯(そうだよ もし今言っちゃったらライブが失敗しちゃうかもしれないよ)

唯(最後なんだから成功して終わらせたいもん)

唯(ライブ終わってからでいいよね)


唯(これで良いんだよね)

46: 2009/12/23(水) 03:02:30.28 ID:7PW+4cv80
~放課後

紬「今日はモンブランよ~」

唯&律「わーい」

澪「まったくおまえらは・・・」

梓「そう言いながらも澪先輩もちゃっかり席についてるじゃないですか」

澪「!!」

唯「おやおや澪ちゃん~」

律「これはいったいどういう事なのかな~」

澪「う、うるさいっ!」

47: 2009/12/23(水) 03:11:43.69 ID:7PW+4cv80
ガラッ
さわ子「入るわよ」

唯「さわちゃんだ~」

紬「ホットミルクティーで良いですか?」

さわ子「それは後でもらうとしてちょっと唯ちゃん来てくれる?」

唯「ほえ? 私?」

律「また何かしたのかねぇこの子は」

梓「大方成績のことじゃないですか?」

唯「がーん ちょっと行ってくるよ~」

唯「私のモンブラン食べないでねっ」ダダダ

梓「唯先輩じゃないんだから食べる人なんていませんよ・・・」

73: 2009/12/23(水) 12:52:43.92 ID:7PW+4cv80
トテトテ
唯「それでどうしたのさわちゃん?」

さわ子「どうしたもこうしたもじゃないでしょ!」

さわ子「あなた転校するってどうして私に言わなかったの!」

唯「あっ・・・」

さわ子「担任の先生から知らされてびっくりしちゃったわよ」

唯「そっか・・・先生はわかっちゃうんだ」

さわ子「! あなたまさか・・・」

さわ子「他の子には言ってないのね」

唯「うん・・・」

74: 2009/12/23(水) 12:56:50.59 ID:7PW+4cv80
さわ子「はぁ・・・困った子ね」

唯「ごめんなさい・・・」

さわ子「まあいいわ 唯ちゃんも考えた末の先延ばしなんだろうし」

唯「はい・・・」

さわ子「唯ちゃん、一つ約束すること」

唯「なんですか?」

さわ子「絶対に引っ越す前に言う事」

さわ子「このまま黙って引っ越しちゃうのだけは許さないからね」

唯「はいっ」

さわ子「よし それじゃあ練習に戻ること」

75: 2009/12/23(水) 13:01:13.41 ID:7PW+4cv80
ガラッ

唯「ただいま~」

律「おかえり 案外はやかったな」

梓「てっきりこってり絞られるのかと思っていましたよ」

唯「そんなぁ~ それに成績のことじゃなかったから安心してくださいっ」

律「それじゃあなんのことだったんだ?」

唯「ほえ・・・っとクリスマスライブの事だよ!」

澪「それならみんなの前で言えばよかったのにな」

77: 2009/12/23(水) 13:06:29.57 ID:7PW+4cv80
唯「さわちゃんからダメ出しを受けてたんだよ」

澪「ダメ出し?」

唯「そ、そう こうもっとギュイーンっとやった方がいいって」

律「確かに唯はまだまだだしな」

唯「ひっひどい わたしだってがんばってるんだよ~」

唯「と言うわけでムギちゃん紅茶!」

紬「はいはい~」

澪「練習しろっ!」

79: 2009/12/23(水) 13:14:04.11 ID:7PW+4cv80
~数日後の夜

ピンポーン
憂「はーい」ガチャ

和「こんばんは」

憂「和さん こんな時間にどうしたんですか?」

和「ちょっとね 唯いる?」

憂「お姉ちゃんならリビングでゴロゴロしていますよ どうぞ入ってください」

和「お邪魔するわ」

80: 2009/12/23(水) 13:19:36.17 ID:7PW+4cv80
憂「お姉ちゃん、和さんが来たよ」

唯「ごろごろー」

和「はぁ・・・全くこの子は」

唯「あー和ちゃんだー」

唯「どうしたのこんな時間に?」

和「唯、あなた私に何か言うことない?」

唯「ほえ? ・・・はっ!」

唯「ごめんね、この前のケーキ代返すの忘れてたよ!」

81: 2009/12/23(水) 13:24:13.27 ID:7PW+4cv80
和「そ・う・じゃ・な・く・て!」

唯「えと・・・怒ってる?」

和「ええ、怒ってるわ」

唯「こ、こわいよ」ブルブル

和「それと憂」

憂「はいっ」

和「このことはあなたにも関係あります!」

82: 2009/12/23(水) 13:29:18.77 ID:7PW+4cv80
唯「なんで私たち正座してるの?」ボソボソ

憂「しかたないよ 和さんすごく怒っているみたいなんだもん」ボソボソ

和「ねえ唯、憂」

唯「はいっ」

憂「なんでしょう」

和「あなた達私に隠してることあるわよね?」

唯&憂「・・・っ!」

和「お引越しのことよ!」

84: 2009/12/23(水) 13:36:51.55 ID:7PW+4cv80
唯「な、なんで和ちゃんがこのことを・・・?」

和「なんでもなにも唯達のご両親から直接聞いたのよ」

唯「お父さんたちから?」

和「ええ 数日前に私の家に電話があったのよ」

和「そこであなた達が引越しすることを聞いたわ」

和「長年お世話になりましたって最後言われちゃった」

唯「でも、そのことは学校では言ってなかったじゃん」

和「私は当然あなた達から言ってくるものだと思っていたのよ」

和「それなのにもう数日たってるのに何も言ってこなかったわよね」

唯「うぅ・・・」

憂「ごめんなさい・・・」

85: 2009/12/23(水) 13:43:23.31 ID:7PW+4cv80
和「だからこのまま何も言わないままいなくなるんじゃないかと思って来たの」

和「そんなの寂しいじゃない・・・」ヒグッ

唯「和ちゃん・・・」ギュッ

憂「和さん・・・」

86: 2009/12/23(水) 13:52:34.57 ID:7PW+4cv80
和「そういえばこのことを軽音部には?」

唯「あうぅ」

和「言ってないのね」

唯「うん・・・」

憂「お姉ちゃんは悪くないんです!」

憂「私がクリスマスライブ終わるまで言わない方がいいって言ったから」

唯「憂、違うよ 私も」

和「唯、憂 いつ言うかはあなた達に任せるわ」

和「みんなに心配掛けたくなくてライブが終わってからってのも良いと思う」

和「でもね、どうせ知ることになるのなら早い方が良いと思うわ」

唯「和ちゃん」

和「それじゃ私は帰るわね」

和「こんな時間に家に押しかけてごめんなさい」

89: 2009/12/23(水) 14:06:01.02 ID:7PW+4cv80
和「それじゃあまた明日学校で」

和「ちゃんと明日までに結論だすのよ」バタン

憂「お姉ちゃん・・・どうする?」

唯「うん・・・ 一晩考えさせて」

憂「わかった」

唯「それじゃあおやすみ」

憂「おやすみなさい、お姉ちゃん」

90: 2009/12/23(水) 14:15:51.76 ID:7PW+4cv80
~翌日

唯「おはよー」

憂「おはようお姉ちゃん」

唯「憂、私決めたよ」

唯「やっぱりライブ後に言うことにする」

憂「お姉ちゃん」

唯「軽音部でのライブを私は守りたいんだ」

唯「だから・・・ごめんね」

憂「ううん お姉ちゃんが決めたことなんだもん」

憂「それじゃあ朝ごはん食べよっ」

92: 2009/12/23(水) 14:24:48.38 ID:7PW+4cv80
~通学中

唯「のーどーかーちゃーん」ガバッ

和「ちょっと唯、いきなり抱きつかないでよ」

唯「えへへ~ 目の前に和ちゃんがいたんだもん」

和「まったく」

唯「そうだ、和ちゃん 私決めたよ」

唯「やっぱり言うのはライブ終了後にする」

和「わかったわ」

唯「反対しないの?」

和「唯たちが考えついた結論なら私はそれを尊重するわ」

和「でもなにかあったら私にすぐ頼るように」

唯「うん! ありがとう!」

93: 2009/12/23(水) 14:33:20.52 ID:7PW+4cv80
こうして、時間は流れた。

私は朝学校へいく、昼憂のお弁当を食べる、放課後練習する、夜荷造りと練習のサイクルを繰り返した。

あれ以来毎日和ちゃんは家に来てくれて、アルバムを広げて思い出を語ったり、荷造りを手伝ってくれたりした。

一緒に夕飯を食べもした。

うちに泊まってもくれた。

一緒にお風呂・・・は断られた、和ちゃんのけち。

和ちゃんはときおり何か言いたそうな顔をしていたが、私と憂はあえて気づかない振りをしていた。

そうして、ついにクリスマスライブの前日へと時は進んだ。

95: 2009/12/23(水) 14:44:41.39 ID:7PW+4cv80
~クリスマスライブ前日

澪「いよいよ明日だな!」

紬「ええ」

紬「なんだかドキドキしてきたわ」

律「そんなことよりなんでうちの学校はクリスマスまで授業があるんだよ」

澪「明日は授業がないようなものだろ」

澪「それに終業式の後に体育館を使わせてもらえることになってるんだから文句言わない」

96: 2009/12/23(水) 14:52:45.58 ID:7PW+4cv80
澪「ところで唯はどうした?」

紬「それがHRの時にあとで来てくれと先生に・・・」

律「こんどこそ成績の問題だな」

澪「ほぉ よく律が呼ばれなかったな」

律「ひどっ」

紬「そういえば梓ちゃんもまだ来てないわね」

98: 2009/12/23(水) 15:02:20.46 ID:7PW+4cv80
~職員室前

梓(うー遅くなっちゃったです)スタスタ

梓(ん、あれは唯先輩と憂の声だ)ピタッ

梓(二人揃って呼ばれるなんてどうしたんだろう)

梓(ここからだとよく聞こえないなぁ)

梓(ところどころ単語が聞こえる)

梓(てんこう ひっこし?)

梓(・・・)

梓(・・・っ!!)

100: 2009/12/23(水) 15:12:11.96 ID:7PW+4cv80
~数分後

ガラッ
唯&憂「失礼しました」

梓「唯先輩! 憂!」

唯「わっ!」

憂「梓ちゃん?」

梓「どういうことですか、説明してくださいっ!」

憂「えっと?」

梓「だから転校とか引越しとかのことです!!」

唯「っ!」

101: 2009/12/23(水) 15:22:11.18 ID:7PW+4cv80
唯「聞こえちゃってたんだ・・・」

梓「盗み聞きについては謝ります でもそれより先に説明をお願いします」

憂「うぅ・・・」

唯「・・・わかったよ」

憂「お姉ちゃん!?」

唯「でもそれは音楽室についてから話すよ 憂も一緒に来て」

憂「うん・・・」

103: 2009/12/23(水) 15:32:49.92 ID:7PW+4cv80
唯「・・・」スタスタ

憂「・・・」スタスタ

梓「・・・」スタスタ

ガラッ
律「遅かったなーってどうしたんだみんなそんな顔して?」

紬「ホットミルクティーでいいかしら? 憂ちゃんも飲んで行ってね」

澪「? どうしたんだ? そんなところで立ち止まってないで席に座りなよ」

律「おや? 口を開けば練習練習の澪がお優しいことで」

澪「前日なんだから無理にやらせるよりは適度に休んだ方がいいと思ったまでだ」

梓「・・・着きましたよ お願いします」

唯「あのね、みんな」

唯「私たち引っ越しするの」

106: 2009/12/23(水) 15:41:55.33 ID:7PW+4cv80
律&澪&紬「へっ?」

梓「・・・」

律「こんなときに冗談言うなよ唯~」

澪「そうだぞ みんな本番前でナーバスになってるんだから」

紬「唯ちゃんでも本番前は緊張しちゃうのね」

律「ムギ、その言い方はひどいぞ」アハハ

憂「あのっ!」

憂「本当なんです・・・」

全員「・・・」

107: 2009/12/23(水) 15:51:56.81 ID:7PW+4cv80
律「・・・いつだ?」

唯「・・・え?」

律「いつ引っ越すのかって聞いてるんだよ!」ガタッ

唯「ひっ」

澪「おい律! そんな大声出さなくたって」

律「だってそんな・・・っ!」

紬「それで唯ちゃん、憂ちゃん いつ引っ越しちゃうの?」

唯「・・・」

憂「明日・・・です」

108: 2009/12/23(水) 16:02:38.60 ID:7PW+4cv80
梓「明日って・・・明日はライブじゃないですか!」

唯「うん・・・」

唯「で、でも出発は明日の夜だからライブには十分間に合うよっ!」

律「ふざけんなよっ!!!」ドン

唯「きゃっ」

澪「おい律!」

紬「りっちゃん!」

梓「律先輩!」

律「だいぶ前からわかってたんだろ!? なんで今まで私たちに言わなかったんだよっ!!」

憂「すみません! みなさんに心配かけないようにって私たちで!」

律「心配かけたくないからってか? 笑わせんな!!」ガチャ バタン!

109: 2009/12/23(水) 16:11:24.22 ID:7PW+4cv80
澪「わ、私は律を追いかけてくる!」ガチャ

紬「私も!」バタン

唯「・・・」

憂「・・・」

梓「・・・ヒッグ」

唯「あずにゃん・・・」

梓「グスッ 先輩たちはひどいです エッグ」

梓「そんな重要なことを・・・相談すらしてくれないで・・・ グスッ」

唯「ごめんねあずにゃん!」ギュッ

梓「唯・・・先輩・・・!」

唯「私が・・・みんなに言う事から逃げてたのっ!」ボロボロ

112: 2009/12/23(水) 16:22:45.96 ID:7PW+4cv80
憂「それを言うなら私もだよ! 私も・・・逃げてた・・・」

憂「お姉ちゃんに任せるだなんて・・・」

憂「つらいことを全部押し付けちゃって・・・」ポロポロ

憂「ごめんね・・・ごめんねお姉ちゃん・・・!!」

梓「憂」

唯「憂・・・あずにゃん」

「「「うわぁあああああぁああああああああああぁああああん!!!」」」

113: 2009/12/23(水) 16:33:47.85 ID:7PW+4cv80
梓「・・・ひとしきり泣いたら少しすっきりしました」

唯「うん」

憂「お姉ちゃん、律先輩たちのところに行かないと・・・」

唯「うん・・・」

ガチャッ
唯「あ、ムギちゃん」

紬「ごめんなさい・・・中での告白は全部聞いちゃったわ」

紬「でも、そのおかげで私も唯ちゃんと憂ちゃんの本音が聞けることができたわ」

紬「あとはりっちゃんと澪ちゃんにも向きあわないとね」

澪「唯・・・」

律「・・・」

114: 2009/12/23(水) 16:43:09.59 ID:7PW+4cv80
唯「りっちゃん澪ちゃん・・・あのね」

律「聞いてたよ」

律「悪かったな」

唯「えっ?」

律「そりゃ言いにくいよな~」

律「それに一番辛いのは唯たちなのに私ってば飛び出しちゃってさ」

律「でも・・・でもさ それでも私は引っ越すことがわかったらすぐ言って欲しかったんだ」

唯「りっちゃん・・・グスッ」

律「ゆいーーーーーーっ!」ガバッ

唯「!」

律「いつもは唯から抱きついてくるのにな・・・」

唯「グスッ・・・ありがとうりっちゃん」

115: 2009/12/23(水) 16:54:13.38 ID:7PW+4cv80
澪「よしっ、それじゃ練習するぞ」

唯「澪ちゃん」

律「澪・・・」

澪「私たちは軽音部なんだ」

澪「だから音楽が最高のコミュニケーションだろ?」

唯「そうだね!」

紬「明日のライブは最高のものにするわよ」

梓「はいですっ」

116: 2009/12/23(水) 17:00:44.52 ID:7PW+4cv80
唯「憂」

憂「うん、お姉ちゃん 私は先に帰ってるね」

唯「憂には明日最高の私たちを見せてあげるね!」

憂「うん、がんばってね!」

憂「今日はお姉ちゃんの大好物にして待ってるね」

唯「うん!」

117: 2009/12/23(水) 17:08:53.29 ID:7PW+4cv80
その日はそれからずっと練習した。

これほどまでに完全下校時間が恨めしく思えたのは初めてのことだろう。

途中でさわちゃんが来てそれから珍しく最後まで残ってくれた。

もちろんティータイムは行われた。

これがなければ桜高軽音部ではないだろう。

あずにゃんに抱きついては練習、りっちゃんとさわちゃんといっしょに澪ちゃんをからかっては練習、ムギちゃんにおねだりしては練習。

帰りは下駄箱のところで和ちゃんと一緒になってそのままみんなで下校した。

和ちゃんは生徒会の仕事が長引いて偶然と言ってたけれど、抱きついたときには体が冷え切っていたのでしばらくそこで待っていたのだろう。

他愛のない話をし、行きつけの店をまわり、それぞれの家へと別れて行く。

いつも通りで、でもいつもとは少し違う一日を過ごした。

でも、まだ今日でお別れじゃない。

明日がまだあるのだ。

118: 2009/12/23(水) 17:15:14.42 ID:7PW+4cv80
私たちのライブは大成功だった。

強制参加ではないこのライブで帰る生徒は数えるほどしかいなかった。

どうやら私たち軽音部は思ってた以上に存在感を持っていたようだ。

ライブ前のMCで私は観客に転校することを告げた。

そうしたら観客からソロで何か弾いてという要望を逆に告げられ、何も思いつかなかった私はとっさにチャルメラを弾いた。

みんな笑っていた、私も笑っていた。

そこにあった笑いは決して悪意や皮肉は込められていなく、私はここで演奏が出来ることに改めて嬉しさを感じた。

さわちゃんが今日の日のために寝る間も惜しんで作り上げた衣装とともに私たちは持てる限りの力を使って最高の演奏を創り出した。

多少のミスもあったし、リズムが揃わなかったところもあったけれど、私はこれが桜高軽音部最高の演奏だと思った。

最後の曲が終了しても、もう一回のコールは何度も鳴り響き、結局時間をオーバーしてしまって最後の最後まで和ちゃんには迷惑をかけてしまった。

120: 2009/12/23(水) 17:25:38.72 ID:7PW+4cv80
ライブが終わり、片付けも終わり、下校時間となって私たちは5人で帰路についた。

もうすでに他の生徒の影はなく、そこには私たちだけの世界が広がっていた。

いつもよりうんと遅めのペースで歩きながら。

122: 2009/12/23(水) 17:34:01.81 ID:7PW+4cv80
私はりっちゃんに軽音部を作ってくれてありがとうと言った。

りっちゃんは私にこれやるよって自分のしていたカチューシャをくれた。

カチューシャを外したりっちゃんは本当にわたしにそっくりで、誰からともなく双子みたいだねと言われた。

そして、部長命令だ、私は休部なんだと言われた。

私は何時までもこの学校の軽音部員なんだと。

125: 2009/12/23(水) 17:39:43.05 ID:7PW+4cv80
私は澪ちゃんに素敵な詩をありがとうと言った。

澪ちゃんは私に素敵な声をありがとうと言ってくれた。

そして、新曲用の詩を私にくれた。

これは今の軽音部を想定して作ったのだから私が抜けたら完成しないと。

だからこの曲を完成させるためにもいつかまたいっしょにやろうと。

127: 2009/12/23(水) 17:44:51.61 ID:7PW+4cv80
私はムギちゃんにいつも美味しいお菓子と紅茶をありがとうと言った。

ムギちゃんは私に無言で微笑みかけてくれた。

私もムギちゃんににっこりとスマイルを見せた。

私たちの笑顔には無理やり笑っているなどという感じは一切なかった。

それだけで十分だった。

128: 2009/12/23(水) 17:49:05.46 ID:7PW+4cv80
私はあずにゃんに師匠兼ライバルでいてくれてありがとうと言った。

あずにゃんは私に抱きついた。

いつも抱きついてくるお返しですなんて言いながら、大好きですと言いながら。

私は桜高軽音部のギターを任せると言った。

あずにゃんは任せてと言ってくれた。

桜高軽音部の将来は安定だろう。

132: 2009/12/23(水) 17:54:20.21 ID:7PW+4cv80
そして、私は軽音部にありがとうと言った。

私に打ち込めるものを提供してくれて。

私に音楽の魅力を教えてくれて。

私に最高の友人を持たせてくれて。

この部に出会わなければ私の高校時代もほどほどで終わっていただろう。

私はこの経験を生かすと約束した、絶対にここでのことは無駄にはしないと。

そして私はこの街から旅立った。

133: 2009/12/23(水) 18:00:31.94 ID:7PW+4cv80
~1月某日

えっと、私平沢唯といいます!

たいらのひらに、さんずいに尺のさわに、唯一のゆいで平沢唯です。

って黒板に書いてあるからわかるよね!

今日からよろしくおねがいします。

前の学校では軽音部に所属していて私はそこでギターをやっていました!

見てくださいっ、これが私のギー太です!

ガタッ
―平沢さんっ!

ほえっ!? な、なんでしょう・・・?

―うちの学校でも軽音部があるんですが、部として成立するにはあと一人足りなくて、ちょうどギターがいないんです・・・
 だから平沢さん、転校初日で悪いんですけど是非とも軽音部に入ってください!

・・・うん! 今日からよろしくね!



~fin~

135: 2009/12/23(水) 18:02:50.03 ID:7PW+4cv80
というわけで終わりです ちなみに初ssでした
読んでくれた人、保守してくれた人ありがとう
途中でもらったレスは真摯に受け止めるぜ
それじゃあノシ

141: 2009/12/23(水) 18:35:05.51 ID:7bbb9CT6O

引用元: 唯「ひっこし!」