乾杯はビールで。
　律子や春香は苦いから止めた方がいいと言ってくれたのだけれど、長年の憧れのようなものがあって、ちょっとだけ飲んでみることにしました。
　結果、何とかコップ一杯は飲みきったものの、それ以上自分から進んで飲もうとは思えませんでしたね。
　その内美味しく感じるようになるのよ、とは事務の女性と某お姉さんの言葉でしたが……本当にあれを美味しいと思う日が来るのかしら？

　二杯目からは、お酒初心者組の声を参考にしながら、美味しく頂けそうなものを。
　みんなの飲んでいるものを少し分けてもらったりしながら、自分の好みを探っていくというのは、なかなかに楽しいものでした。
　今のところ分かったのは、甘過ぎず、適度に酸味があって、少し苦味も感じられるようなお酒が好きなのかな、ということ。
　あまり甘くない梅酒や、生グレープフルーツサワーを昨日は特に美味しく頂いていました。


　お酒を飲めるようになったとはいえ、それも初めての経験で、自分がどの程度アルコールに耐性があるのか分かりません。
　だから少し不安な気持ちもあったのだけれど、ふふ、お節介な某眼鏡や某王子が少し離れた所から私を見張ってくれているのが分かったので、そんなに自分の心配をすることもなくお酒の席を楽しむことができました。
　たまには素直に感謝してあげようかしら、なんて。ありがと。

　一方、我らが春香さんさんですが、相変わらずお酒が入るととても陽気になってうざ……賑やかになります。
　お酒に対する興味・憧れが人一倍強かったようで、彼女は誕生日を迎えて二十歳になるとすぐにお酒を飲むようになりました。
　あまり強くはないのだけれど、以前試しにジュースをお酒だと言って飲ませたら酔っ払って楽しそうにしていたので、多分彼女なりに幸せなんだと思います。

　我那覇さんは、普段はあまりお酒を飲まないみたいですが（家に家族もいますしね）、こういう場で飲むとかなり強いのが分かります。
　流石は沖縄の血、といったところでしょうか。
　氷を溶かしながら泡盛を飲んでいる姿は、とても私と同い年には思えません。
　飲んでもあまり変わらないように見えるのですが、四条さんによると、ある程度を越えると甘えん坊になるのだとか。
　是非いつか見てみたいものです。

　萩原さんは……一言でいえば、酒豪ですね。
　昔のイメージで行けばお酒なんて飲まなそうな彼女ですが、もうみんなご存知の通り、うちの中でもあずささんと並ぶ酒飲みさんです。
　彼女が好むのは専ら日本酒。ＣＭにも出ているぐらいですからね。
　私には分からないのだけれど、割と味にもうるさいらしいです。
　まさか萩原さんがあんなにお猪口の似合うアイドルになるなんて、一体誰が想像できたでしょうか？


　美希や水瀬さん、高槻さんに、真美、亜美のまだお酒の飲めない組は、もちろんジュースでの参加でしたが、それでも十分楽しそうにしてくれていました。
　私もそうだったから分かるのだけれど、お酒の場の空気って、自分がお酒を飲めなくても結構楽しく感じるものなのよね。
　身近で分かりやすい非日常、というか。クリスマスとか大晦日とか、そういう普段とは違うワクワクするような空気を、規模を小さくしてもっと簡単に味わっている感じ。
　当然、他人に迷惑をかけるようなお酒の飲み方をする人がいないこと、これが絶対条件なのだけれど……
　幸い、７６５プロに勤める方の中にそういう人はいませんし、何より、うちには女王がいますからね。
　これは私を含め普段からそうなのですが、多少気持ちが大きくなっている時でも、あずささんに一言たしなめられれば、自然と背筋が伸びてしまいます。
　加えて、律子や真、最近では萩原さんもいますから、彼女たちのお陰で美希たちも安心して参加できるのかな、と思います。

　二十歳。
　一般的に、大人として扱われるようになる年齢です。
　私も、二十歳を区切りに大人になるんだ、と考えていた節があります。
　けれど、実際に誕生日を迎えてみて、十九歳の時と何か大きく変わったのかと言われると、特別にそのようなこともなく。
　それどころか、例えば高校に通っていた時と比べても、自分が大人になったという実感はあまりありません。
　もちろん、あの頃より能力的にも環境的にも出来ることは確かに増えているのだけれど、それがイコール大人になるということではないような気がします。


　賑やかで楽しいパーティーを終え、今日は実家に帰りました。
　父と母は私の帰りを待ってくれていたようで、久しぶりに、ゆっくりと話をすることができました。
　少しずつ大人になって行けばいい、とそんなことを言われました。自分たちも、その最中なんだ、と。
　なるほど。
　私は大人というものを一つのゴールのように考えていたのだけれど、違ったみたい。
　『今、大人になる道の途中』
　かつて私も歌ったことのある詞ですが、多分、そういうことなのかな、って。



　如月千早。
　二十歳。
　アイドル。
　まだまだ、道の途中。

　これからも、見守っていただけますよう。
　どうぞ、よろしくお願いいたします。

1.春香さん
　千早ちゃーん
　お誕生日おめでとーーーーー
　これで一緒にお酒飲めるね！
　私もあんまり大人になったって感じしないなー
　でも、千早ちゃんの言う通り、これから少しずつ大人になれるといいな！


2.ミキなのー
　千早さん、お誕生日おめでとうございます、なの！
　うー、ミキも早く大人になりたいのー
　あ、でも、いつまでも千早さんにお世話される子供でもいたいかも…
　これはとても難しい問題なの…


3.響
　ちょっと！
　貴音のやつ、何言ってるんだよ！
　千早も千早だぞ、こんな所に書かなくてもいいだろ！
　うがー。
　もう！　誕生日おめでとうだぞ、千早！


4.名無しの双子姉
　ハタチおめー☆
　これで千早お姉ちゃんも大人の仲間入りか…
　昔から知ってる分、真美の感動もひとしおだＺＥ
　でも、千早お姉ちゃんは自分を大人だって思ってないんだね。
　真美から見たら十分大人なんだけどなー？


5.萩原雪歩
　千早ちゃん、二十歳のお誕生日おめでとうございます。
　そういえば、私も、あんまり大人になった気はしないな。
　少しは成長してると思うんだけど、小さい頃に見てた大人の人たちには全然追いついてないな、って。
　私たち、これからあんな風になれるのかな？
　一緒に、がんばろうね。

6.名無しさん
　千早ちゃんの１げと


7.名無しさん
　１


8.名無しさん
　千早ちゃんが二十歳になったと聞いて


9.名無しさん
　>>6-8
　今日もお勤めご苦労様です

　千早ちゃん誕生日おめでとう！
　これからもずっと応援してるよ！


10.名無しさん
　ビールはなぁ…
　暑い日にめっちゃ汗かいて身体が水分欲しがってる時に飲んだら最高に美味いんだけど


11.名無しさん
　千早ちゃんがお酒飲めるようになったんだもんなぁ
　月日が流れるのは本当に早い…


12.名無しさん
　>>10
　ビールじゃなくても最高に美味い定期


13.名無しさん
　相変わらず千早ちゃんは律っちゃんとまこりんの扱い雑だよねｗあと春香さんもかｗ
　そういう関係正直憧れるわ


14.名無しさん
　春香さんさんｗ
　俺も雰囲気で酔っちゃうところあるからすげー分かるｗｗ


15.名無しさん
　千早ちゃん誕生日おめでとう！


16.名無しさん
　甘えん坊の響ちゃんとかなにそれ超見たいんですけど

17.正体不明のお姉さん
　千早ちゃん、誕生日おめでとうございます。
　ようやく千早ちゃんとビールで乾杯できてしゅわわせでした。
　長年の夢が叶いました。
　これから私と日本酒を二本週に飲みましょう。
　お猪口にちょこっとずつでいいですよ。


18.名無しさん
　出たぞー


19.名無しさん
　囲めー


20.名無しさん
　であえであえー


21.名無しさん
　わーわー


22.名無しさん
　お姉さん絶好調だなｗｗ


23.名無しさん
　そら、ずっと千早ちゃんと飲みたがってたし、毎年使ってたビールで乾杯がようやく叶ったわけだからな


24.名無しさん
　同窓会とかで集まると、結局まだまだみんな子供なんだなって思う
　難しいよね、大人って


25.名無しさん
　千早ちゃんの誕生日がめでたいから俺も昨日も今日も飲んでる！


26.名無しさん
　どうせその前もその後も飲んでんだろｗ


27名無しさん
　千早ちゃんがご家族といい関係を続けていることが分かって自分のことのように嬉しい


28.名無しさん
　>>27
　それな
　マジで


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ある日の如月家の光景


千早「ただいまー」

千種「おかえりなさい。意外と早かったわね」

如月父「おかえり。どうだ？　飲み過ぎて体調悪かったりしないか？」

千早「うーん、大丈夫みたい。お節介な子たちが目を光らせてくれてたから」

千種「そう。とりあえずシャワーでも浴びて来たら？　あ、湯船に浸かっちゃ駄目よ？　お酒飲んだ後は危ないから」

千早「はーい」

千早「ふぅ、さっぱりした……」

如月父「……千早」

千早「うん？」

如月父「……その……だな」

千早「うん」

如月父「……頭がふらついたりとかはしないか？」

千早「ええ」

如月父「……気持ち悪かったりも、しないか？」

千早「大丈夫」

如月父「……そ、そうか……その、」

千種「あー、もう、じれったい。あのね、千早。お父さん、お酒に付き合って欲しいんですって」

千早「私に？」

千種「ええ。千早と一緒にお酒を飲むって、夢だったみたいよ」

如月父「……か、母さん」

千種「ほら、ちゃんと自分の口から言う」

如月父「……あー、その、な？　……まだ大丈夫なようなら、千早、一杯だけ、付き合ってくれないか？」

千早「……うん、お父さん。私も、お父さんとお酒を飲んでみたい」

如月父「そ、そうか……」

千種「ふふ。もちろん、私もね」

千早「このお酒……」

如月父「覚えてるか？　あの日……千早が俺に歩み寄ってくれた……父の日だったな……その時にくれたウィスキーなんだ」

千早「え？　その、まだ残ってたの？」

如月父「はは、まさか。とうに飲みきってしまったけど、どうにも忘れられなくてなぁ。今では一番好きな酒になったよ。……まぁ、普段飲みにはちょっと値が張るから、たまの贅沢だけど」

千種「棚に大切に飾ってね。記念日とか、お祝い事とか、そういう時に飲んでるのよ」

千早「そうなんだ……」

如月父「……炭酸か、甘いのが良ければコーラかジンジャーエールで割れば今の千早でも飲めるだろう」

千種「ふふ、あなたのために、ちゃんと用意してあるのよ。お父さん、珍しい物を買って来たと思えば、ね」

如月父「……どうする、千早」

千早「それじゃあ、最初はジンジャーエールで飲んでみようかしら」

如月父「……よし。見てろよ、千早。まず氷を入れて、だな？　すぐに酒は注がないで、こうやってグラスの中で氷を回して……」

千早（ふふ、お父さん、何だか嬉しそう）

千種（あらあら、嬉しそうにしちゃって。まぁ、それもそうよね。仲直りしたあの日から、ずっと、この時を夢見て来たのだから……）

以上です。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
楽しんでいただけたのなら、幸いです。
千早誕生日おめでとう！
愛してる！

おつ！