1: 2012/01/12(木) 16:31:00.73 ID:IJvW8Ms70
もうすぐ期末テストだと言う事もあって、今日は軽音部もジャズ研も部活はお休みみたいです。
 なので私達3人は久しぶりに一緒に帰る事にしました。
 
 暫く歩いてると純ちゃんが突然お姉ちゃんの事について聞いてきました。


純 「憂ってさぁ、いっつも唯先輩のお世話ばっかりしてて嫌になんない?」

憂 「え? どうしたの急に?」

純 「急にって言うか、前から思ってたんだけど、憂は自分のやりたい事とか全部我慢して嫌々家事とかしてるんじゃないかなって」

憂 「そんな事ないよ、私お姉ちゃんのお世話するのが好きだし、お洗濯とかお料理とか凄く楽しいし……そもそも私のやりたい事って言うのがお姉ちゃんのお世話だし」

純 「だからそれが分かんないんだよねぇ~」

梓 「確かに唯先輩って全身から『放って置けないオーラ』出してるからついつい助けたくなるけど、毎日となるとちょっとねぇ……」

憂 「そうかな? お姉ちゃんの笑顔を見ると私も幸せな気分になるから、半分は自分の為にやってるようなものだし」

純 「流石だねぇ~、そこまで行くともう前世で何かあったとしか思えないよね」

憂 「前世?」

純 「例えば唯先輩と憂の前世は女王様と奴隷だったとか」

梓 「奴隷は喜んでお世話したりしないでしょ?」

純 「じゃあ女とそのヒモとか」

梓 「何それ……」

純 「あと考えられる組み合わせと言ったら……」

梓 「そんなに憂と唯先輩の前世が気になるんだったら、これ行ってみる?」




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2: 2012/01/12(木) 16:33:32.77 ID:IJvW8Ms70
 そう言うと梓ちゃんが、近所のスーパーに新しく出来た『占いコーナー』のチラシを鞄から取り出して私達に見せました。


梓 「ここ色んな占いのお店が集まってるんだって、その中の1つに『前世占い』って言うのがあるみたい」

純 「おもしろそ~~~、みんなで行って占ってもらおうよ」

憂 「でも、私晩ご飯の用意しなきゃいけないし……」

純 「そんな遠くないし、時間かかんないって!」

憂 「……うん……じゃあ少しだけね」


 スーパーの2階に行くと一角に占いのお店が5件並んでいて、平日だと言うのに女性客で結構賑わってました。


憂 「ここって前は100円均一ショップとゲームコーナーじゃなかった?」

純 「女性客を集めるために改装したんじゃない?」

梓 「ねぇねぇ、こっちに前世占いのお店あったよ」

純 「よ~し、突撃~!」


3: 2012/01/12(木) 16:37:21.06 ID:IJvW8Ms70
 
 中に入るとそこは意外とスッキリとした、あまり飾り気の無いお部屋でした。


純 「あれ? 想像してた雰囲気と違うね」

梓 「うん、もっとこう真っ暗で怪しい感じかと思ってたけど」

憂 「雰囲気でごまかさない分、内容で勝負って事で結構当たるのかもしれないね」


 奥の机を見るとそこには30歳くらいの女の人が座っていて私達に声を掛けてきました。

 
『はい、いらっしゃい……で今日は誰の前世から調べて欲しいのかしら?』

純 「じゃあ、まずは梓からね」

梓 「ちょっと、どうして私が最初なのよ?」

純 「いいじゃない、どうせみんな占ってもらうんだから」

『分かりました……じゃあまずはあなたの前世から見てみましょう』


 そう言うと女の人は水晶を覗き込み何やら呪文のような言葉を小声で呟き始めました。


『あなたの前世は……ネコです』

純 「ブッ!……そのまんまじゃん!」

憂 (プフ……クク……ククク)

梓 「何よ二人とも! 笑うならちゃんと笑いなさいよ!」

『飼い猫ではなく野良の黒猫だったあなたは、気が強く自分で何でもやってしまいがちですが反面、人恋しくて甘えん坊な性格を現世に持って来ています』

純 「あたってる……」

梓 「うそ?! 私ってそんな性格?」

憂 「うん」

梓 「うんって……そんなあっさりと……」


純 「じゃあ今度は私の前世を見てもらえますか?」

『はい、では次はあなたの前世を見てみましょう……』


 女の人はまた水晶を覗き込み呪文を唱えました。



4: 2012/01/12(木) 16:43:10.47 ID:IJvW8Ms70

『あなたの前世は……叉焼です』

純 「はい? チャ? え?」

『チャーシューです』

純 「叉焼ってあのラーメンに入ってる?」

『そうです』

梓 (プププ……プククク……クククク……)


 梓ちゃんが必氏に笑うのを我慢してます……顔を真っ赤にしてとても辛そうです。
 そう言う私もさっきから既に呼吸困難に陥って氏にそうです……助けてお姉ちゃん……


純 「豚って言うならまだしも叉焼って何なんですか!」

『豚の時は別の魂が入っていました、その後、美味しく煮込まれた事により新たな魂が生まれ……』

梓 (ククククク……息が……笑うの我慢しすぎて息が出来ない……ククク)


 梓ちゃんも私も息ができなくてもう限界です……
 その時、私の頭の中に今までの思い出が走馬灯のように蘇ってきました……アイスをねだるお姉ちゃん……ゴロゴロするお姉ちゃん……コタツで寝てるお姉ちゃん……

 私の走馬灯ってお姉ちゃんばっかり…… 

 それしにても前世を見に来たのに、あの世を見る事になるなんて……シャレになりません……


5: 2012/01/12(木) 16:49:20.22 ID:IJvW8Ms70


純 「もういいわよ! 次! 憂!」


 最後は私が見てもらう事になりました……もし「あなたの前世は煮玉子です」とか言われたらどうしよう……でもそれだったら純ちゃんと仲良しなのも納得できるかも……


『あなたには……お姉さんが居ますね?』

憂 「え? は、はい」

『あなたは昔からずっとお姉さんに守られています』

純 「唯先輩が守ってる? 反対じゃん」

梓 「そうだよね、憂の方が唯先輩を守ってるって言うなら分かるけど」

『前世でもあなた達は仲の良い姉妹でした……お姉さんはいつも自分の身を犠牲にしてあなたの事を守ってきました……前世で魂を削りすぎた為、現世でのお姉さんは休息状態にありますが、それでもあなたを守る気持ちは大きく、その想いはいつもあなたを包み込んでいます……あなたはそんなお姉さんが大好きですね?』

憂 「大当たりです! 完璧です! パーフェクトです!」

梓 「ちょ、ちょっと憂」

純 「いいから落ち着きなさいよ!」 


 そっかぁ……私とお姉ちゃんって前世でも姉妹だったんだ……
 前世のお姉ちゃんもきっと可愛いんだろうなぁ~……


梓 「憂……お店を出てからずっとニヤニヤしてるの気持ち悪いよ……」

憂 「うふふふふふ……えへへへへ……」

純 「だめだ……壊れた……」


 梓ちゃん達と別れた後、私は晩ご飯のお買い物をして家に帰りました。


6: 2012/01/12(木) 16:56:02.68 ID:IJvW8Ms70

 着替えを済ませてソファーに腰を下ろすと突然睡魔が襲ってきました……少し疲れたんでしょうか? 私はいつの間にかウトウトと眠っていました。





その時、私は不思議な夢を見ました……


あぁ、これは夢なんだ……なんとなくそんな事を思いながら見ている夢……


ぼんやりと見下ろしているそこは一面の焼け野原で……まるで戦時中のようでした……


数多く横たわる遺体……炎を吹き上げ燃える建物……真っ赤に染まる空……


そんな中、大切な物を……両親も家も全てを失い泣き叫ぶ2人……


中学生くらいの女の子と、幼稚園くらいの小さな女の子……




7: 2012/01/12(木) 16:58:54.25 ID:IJvW8Ms70





【うわぁあぁああぁん、こわいよおねえちゃ~ん】

【大丈夫! お姉ちゃんがついてるから! お姉ちゃんが絶対に守ってあげるからね】









【家の跡にお芋が少しだけ落ちてた……良かった……】

【おねえちゃん、おなかすいたよぉ】

【うん、今お芋を焼いてあげるから少し待っててね】

【うん】

【はい、焼けたわよ】

【わ~い、いただきま~す……あれ? おねえちゃんはたべないの?】

【お姉ちゃんまだお腹すいてないの、だから気にしないで食べていいのよ】

【うん】

【おいしい?】

【おいしいよ、えへへへへ】








8: 2012/01/12(木) 17:03:57.53 ID:IJvW8Ms70

【すみません、少しでいいので食べ物を分けてもらえませんか?】

『こんな時に他人に食べさせるような物はないよ!』

【お願いします! お願いします! 妹がお腹をすかせているんです! お願いですから】

『みんなお腹が減ってるんだよ、いいからあっちへ行きな!』









『泥棒~! 待て~芋泥棒~!』

【はぁはぁはぁ……】

『捕まえたぞ! うちの畑を荒らすなんて許さん!』

【ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい】









【おねえちゃん……おなかすいたよぉ……】

【もう3日も食べてないものね……ごめんね……】

【おねえちゃん……どこいくの?】

【……すぐ戻ってくるから……もう少しだけ我慢してね】








9: 2012/01/12(木) 17:08:05.99 ID:IJvW8Ms70

【……あの……お金でも食べ物でもいいので……私を……買って……】









【あ、おねえちゃん】

【はい……食べ物よ……】

【おねえちゃん……ないてるの?】

【ううん……泣いてないから……何でもないから……】

【でも、おねえちゃん……なみだがいっぱい】

【大丈夫よ……お姉ちゃんどんな事をしても絶対にあなただけは守るからね】

【そんなつよくだっこしたらくるしいよぉ~】









『空襲だ~! 防空壕へ非難しろ~!』

【おねえちゃん、こわいよぉ~】

【お姉ちゃんがついてるから! 早くこっちに来てお姉ちゃんの前に隠れて!】

『うわぁあぁ!』

【おねえちゃん、おけがしたの? せなかから、ちがでてる……】

【これくらい平気だから、あなたに怪我が無くて本当に良かった】








10: 2012/01/12(木) 17:15:17.10 ID:IJvW8Ms70

【ここから出して! どうして防空壕が崩れるのよ! 妹が! 妹が氏んじゃう!】

【……おねえ……ちゃん……さむいよぉ】

【お姉ちゃんが傍に居るから! ずっとずっと抱きしめてあげるから頑張って!】

【えへへ……おねえちゃん、あったかいね】

【すぐ出られるから! お外に出たらすぐお姉ちゃんがお芋貰ってきてあげるから! だから頑張って】

【……………】

【やだ……やだやだやだ! 目を覚ましてよ!】

【……………】

【お願いだからお姉ちゃんを置いて行かないで! 誰か! 誰か妹を助けて!】

【……………】 

【心配しなくても大丈夫よ……お姉ちゃん絶対に離れたりしないから……ずっとずっと傍に居てあげるから……】

【……………】

【今度生まれ変わる時も絶対に私はあなたのお姉ちゃんだからね……だから……今度は幸せな時代に生まれましょうね……】










12: 2012/01/12(木) 17:19:43.67 ID:IJvW8Ms70




(……うい……)









(うい……こんな所で……か……ちゃう……)



 


 

憂 「……………」

唯 「憂、こんな所で寝てると風邪ひいちゃうよ」

憂 「お姉ちゃん……」

唯 「どうしたの憂? 涙いっぱい流して! 何かあったの?」


 そっか……私夢を見てたんだ……


13: 2012/01/12(木) 17:23:44.83 ID:IJvW8Ms70

憂 「ううん、何でもないの、それよりお腹すいたでしょ? 今すぐ作るから先にお風呂でも入って待っててね」

唯 「ねぇ憂、一緒にお風呂入ろうよ」

憂 「え? だって私今からご飯の用意しなきゃ」

唯 「今日はピザでも頼めばいいじゃない、一緒に入ろうよぉ~」

憂 「もう、しょうがないわね」

唯 「えへへへへ~」


 甘えん坊のお姉ちゃんって可愛い……
 
 湯船でしっかり温まってお姉ちゃんが体を洗い始めました。
 お姉ちゃんの肌って凄くキメが細かくて綺麗・・・


憂 「あれ?」

唯 「ん? どうしたの?」

憂 「お姉ちゃん、背中に赤いアザが……怪我でもしたの?」

唯 『ううん……これは空襲の時の爆風で……』

憂 「え?! 空襲?」

唯 「ほぇ?」

憂 「お姉ちゃん、空襲ってどう言う事?!」

唯 「へ? くうしゅう? 何それ?」

憂 「何って……今お姉ちゃんが言ったんじゃない」

唯 「私そんな事言わないよぉ~……背中のこれって小さい頃からあって、お風呂なんかで温めると赤く浮き上がってくるんだよぉ」

憂 「……………」


 そうか……夢で見た2人って、生まれ変わる前の私とお姉ちゃんだったんだ……


14: 2012/01/12(木) 17:27:05.68 ID:IJvW8Ms70

 お姉ちゃんはずっと私の事を守って……私の事だけを考えて……いつも自分を傷つけて……


憂 「お……お姉ちゃん……」

唯 「どうしたの憂?」

憂 「うえぇえええぇぇえええん」

唯 「ちょ、ちょっとどうしたの?」


 お姉ちゃんは驚いてあたふたしてましたけど、私は涙を止める事が出来ませんでした。


憂 「うえぇえぇええええぇん」

唯 「やっぱりさっき怖い夢を見てたんだね……大丈夫だよ憂、私が傍に付いててあげるから……ずっとずっと守ってあげるから」

憂 「うえぇぇえええん、おねえちゃ~ん」


 その日の夜、お姉ちゃんは私と一緒に寝てくれました。
 眠りにつくまでずっと抱っこして、頭を撫でててくれて……凄く幸せな気持ちでした。

 自分でもどうしてこんなにお姉ちゃんの事が好きなのか、どうしてお世話するのが楽しいのか分からなかったけど、今日、ようやくその理由が分かりました。



16: 2012/01/12(木) 17:31:28.22 ID:IJvW8Ms70


- 翌日の朝、通学路にて -


梓 「憂~、おはよ~」

憂 「梓ちゃんおはよ~」

純 「……………」

憂 「純ちゃん元気ないね……」

梓 「今日、帰りにラーメンでもおごるから元気だしなよ」

純 「ラーメン?……」

梓 「純、ラーメン嫌いだった?」

純 「梓……あんたって子は……」

梓 「??」

純 「前世で私の家族だったかもしれない叉焼を! 恋人だったかも知れない叉焼を食べようって言うの!」

憂 「純ちゃん……まだ気にしてたんだ……」

梓 「あははははは」

純 「笑うな~!」


 前を見るとお姉ちゃんと和ちゃんが歩いていました。
 振り向いて優しく微笑むお姉ちゃん。
 いつも私の事を守ってくれてるお姉ちゃん。

 私……お姉ちゃんの妹で本当に良かった……私は世界で1番の幸せ者です。




          -おしまい-


17: 2012/01/12(木) 18:32:49.03 ID:OBGmnJSAO
イイハナシダナー

19: 2012/01/12(木) 21:42:51.45 ID:8Wz0Ubsj0
十分に読みやすかったと思うよ!

引用元: 憂 「前世?」