1: 2014/02/06(木) 23:55:30.53 ID:tz2KadgO0
春香「という夢を見たわけ」

真「それでボクにどうしろっていうのさ……」

5: 2014/02/07(金) 00:21:11.57 ID:oSmJk7mY0
春香「私、プロデューサーさんのこと好きなのかな?」

真「そんな夢を見たんだから、気になってはいるんじゃない?」

春香「えへへ、そうなのかな」

真「春香はどう思うのさ」

春香「うーん…真は?」

真「えっ」

春香「プロデューサーさんのこと。好き?」

7: 2014/02/07(金) 00:30:31.46 ID:oSmJk7mY0
真「わっ、え、ちょっと待って!」

春香「仕事の合間とか、空いた時間に遊びに行ったりしてるでしょ」

真「あ、あれは女の子扱いして貰ってるだけだよ!」

春香「いいなープロデューサー、真とデートか」

真「暇な時に、僕が王子様をお願いしてるだけだよ」

春香「そう?」

真「そ、それより!春香だってそんなに気になるなら、プロデューサーとデートしてくればいいんだよ」

春香「…ああ、そっか。そうだよね!」

8: 2014/02/07(金) 00:36:25.07 ID:oSmJk7mY0
真「へ?」

春香「夢に出てきたってことは、これは何かの暗示なんだよ!」

真「あの、春香?」

春香「そして、プロデューサーさんに『春香、結婚しよう!』って言わせちゃえば良いんだよ」

真「急な話だなぁ」

春香「きっとその時は、私の気持ちもはっきりしてると思うし!」

真「えっ」

春香「真、ありがとう!私も負けてらんないな」

9: 2014/02/07(金) 00:47:51.06 ID:oSmJk7mY0
春香は嬉しそうに鼻唄を歌いながら、次の仕事へ向かってしまった

真「はぁ…」

ソファに寄りかかる。
事務所の天井の、どこでもない一点を眺めながら、色々考える。

真「僕にとってプロデューサーは、王子様なのかな?」

仕事の合間。
たまに時間が空くと、僕はプロデューサーを引っ張って買い物や食事をして過ごす。
もちろん、いつもちょっとしたお姫様待遇で。
プロデューサーも手慣れた感じて返してくれる。

真(でも…)

さっき、つい「王子様役をお願いしてる」と言ってしまった。
なんでこんな言い方をしたんだろう?

真(素直に王子様じゃダメだったのかな?)

11: 2014/02/07(金) 00:57:31.73 ID:oSmJk7mY0
真「うーん」

棚の上から、あのぬいぐるみを降ろす。
くまの背中を顔に押し付けて、ソファにごろんと寝転んだ。

真「あーもう、なんだよ」

春香が変なこと言うから、デートという言葉の意味が変わってしまった気がした。
プロデューサーが王子様?
いつか誰かたった1人、僕を女の子扱いしてくれる…。

真(それが、もう見つかってたとしたら)

早合点すぎる?

真「わあああああ…」

くまに表情を押し付けて、僕はそのまま目を閉じてしまった。

12: 2014/02/07(金) 01:05:36.73 ID:oSmJk7mY0
真「ん…」

蛍光灯の刺すような白い光で目を覚ます。

P「おっ、起きたか」

真「ぷづ、プロデューサー!?」

P「昼寝か?しっかり休養取らないと仕事に響くぞ」

言われて壁の時計を見る。
もう夜6時。2時間近くも眠ってしまった。

P「仕事終わりで良かったな。寝坊なんかしたら大変なんだから」

真「あっ、あの」

P「ん?」

真「は、春香は?」

15: 2014/02/07(金) 01:15:06.51 ID:oSmJk7mY0
最初に思い出した単語が出てきてしまった。

P「春香なら、さっき駅まで送ってきたぞ」

真「なん、何か言ってました?その…」

P「さあ?春香と喧嘩でもしたのか?」

真「いや、全然。そう…ですか」

どうしたんだ僕は。
プロデューサー相手に、なんでこんなに噛み噛みなんだ。

P「お前も送ってくから、時間になったら言えよ」

コーヒー片手に、プロデューサーはデスクに着いた。
またいつもみたいにスケジュール表とのにらめっこが始まるんだろう。

真「あの、プロデューサー」

P「どうした?」

17: 2014/02/07(金) 01:22:54.07 ID:oSmJk7mY0
口は開いたが、中身は特に考えてなかった。

真「本当に、何にも言われてないですか?」

P「春香に何かあったのか?」

真「いや、そんなんじゃないんですよ!トラブルとかじゃ」

なんでパニクってるんだよ。

真「大体、伊織じゃないんですし。春香と僕はちゃんと仲良しですよー!」

P「はいはい、なら良いんだ」

嘘はついてない。
僕は765のみんなが好きだし、みんなが居れば、アイドルとして出来ないことは無いんじゃないかって、本気で思う。
でも。

真「はぁ…」

抱えたままのくまを見下ろす。

20: 2014/02/07(金) 01:32:16.11 ID:oSmJk7mY0
今はちょっとだけ、春香が憎らしい。
半日前は、明日も撮影の帰りにクレープのひとつでも奢って貰おうかとか考えてたのに。
そういう「デート」が、気軽に出来なくなってしまった。

真(あの日以来、プロデューサーはたまにだけ、僕の王子様だ。それは事実だ)

真(でも、じゃあプロデューサー以外の男の人が僕を女の子扱いしてくれたら、その人も王子様?)

漫画の中の、端麗な青年を思い出す。
実在したらきっと、僕やJupiterなんか目じゃないくらいカッコいいんだろう。
多分、プロデューサーよりも断然。

真(でも…)

ファイルの棚の向こうで仕事に打ち込む、眼鏡の青年をそっと覗きこむ。

真(違うよなぁ)

24: 2014/02/07(金) 01:43:36.05 ID:oSmJk7mY0
あの人に白馬なんて似合わないし、サーベルなんてもっての他だ。
見た目は整ってるほうだとは思うけど、眼鏡に地味なスーツ。そっけない黒髪。
それでも理想の王子様より、遥かに惹かれる何かがある。

真(困ったなぁ)

事務所に二人きり。
小鳥さんは社長と商談のお手伝いで今朝からいない。
普段の僕なら、力いっぱい駅まで歩くなり、夕飯をご一緒に!とでも声を掛けているだろう。

真「プ、プロデューサー」

そうだよ、その手があったか。

P「ん?」

真「あの、えと、良かったらご飯…」

直後、デスクから携帯の振動音。

P「あ、待ってろ…お電話ありがとうございます、765プロダクションです」

プロデューサーは手帳をもって、そそくさと階段へ向かっていく。

真「…ちぇ」

25: 2014/02/07(金) 01:55:08.36 ID:oSmJk7mY0
長い電話のようだった。
しばらく経つとドアの軋む音がして、プロデューサーが帰ってきた。

P「…ああ、わかった。週末な。じゃあ」

真「仕事ですか、プロデューサー」

P「お前にだぞ真、オーディション番組の審査員だってさ」

真「本当ですか?」

P「ああ、参加者のダンスの評価をやってほしいそうだ。ちょっとしたお披露目も出来るかもな」

真「へへ。やーりぃ」

P「最近はバラエティなんかでも、真の需要は増えてるぞ。ダンスの技術とか、歌唱力とか」

真「照れるなぁー」

P「俺も嬉しいよ。王子様以外の真が、受け入れられてるってことだろ?」

真「ん…」

27: 2014/02/07(金) 02:04:30.29 ID:oSmJk7mY0
そうなのかな。
ちょっと違う気もする。
ダンスも歌も、仕事は大体楽しいけど。
行き着くところ、求められてるところはまだ「カッコいい」なんじゃないかな?

真「だと、いいんですけど…」

王子様だって、今はやるのが嫌な訳じゃない。
でも、僕が求めてる女の子らしさは、やはりアイドルとしたは求められてないような気がする。

真「もうちょっと、違う需要も欲しいなぁ」

P「そうか?大丈夫だよ、真なら」

プロデューサーが、ポンと頭に手を置いてくれた。

真「え、えあ、え」

思わず顔が固まる。
なんなんだ今日の僕は。

P「いつかきっと、お姫様の真が見たいって流れもくるさ」

28: 2014/02/07(金) 02:13:17.45 ID:oSmJk7mY0
頭の中が滅茶苦茶になってきた。
僕は誰に、お姫様として扱って欲しかったんだっけ。
アイドルになって、いつの日か女の子らしくなって。その先には?
父さんに育てられたいまの自分を変えたかったから?
それともファンの人たちに、可愛いと愛されたかったからだっけ?

真「プロデューサー」

それとも、この人にお姫様として扱って貰いたいから?

真「僕…」

P「どうした?」

混乱から、涙が浮かんできた。
落ち着きたい、今すぐに。
僕は目の前の男性のワイシャツに、潤んだ瞼を押し付けた。

29: 2014/02/07(金) 02:21:58.60 ID:oSmJk7mY0
P「おい、真」

こんなの菊地真じゃない。
意味不明に涙目になって、子供みたいに泣きじゃくって。
僕にすら僕らしくないとしか言いようがない。

P「大丈夫か」

真「なんか、わかんないんです」

口を動かしながら、話を1から思い出す。

真「僕が何で泣いてるのか、僕がわかんなくて」

P「いいから、座れって」

なんだっけ?
カッコいい仕事は嫌じゃないけど
女の子らしさは求められてなくて
春香にデートが云々で

P「誰に、何されたんだ?」

真「…あ」

元はといえば、春香の夢に出てきたプロデューサーが悪い。

真「プロデューサーです…」

P「はぁ…?」

30: 2014/02/07(金) 02:32:35.28 ID:oSmJk7mY0
真「大丈夫です…ぐずっ」

この人が悪いんだい。
お姫様なんて、もっと遠い目標の方が良かったのに。

P「よく分からんが、すまなかった」

ほんのちょっとだけど、プロデューサーに叶えられてしまったから。

真「そうですよ。プロデューサーが悪いです。僕にお詫びしてください」

P「またデートか?そうだなぁ、明日の撮影終わりなら…」

真「ブー、違います」

P「え?」

真「今度は、プロデューサーがオフの時に、僕がお姫様になってあげます」

P「なんだよそれ」

真「だから、エスコートさせてあげるんですよ」

32: 2014/02/07(金) 02:42:41.63 ID:oSmJk7mY0
P「それじゃあいつもと一緒じゃないか。何が違うんだ?」

真「違いますって!今度は僕も、プロデューサーを王子様にしてあげるんです」

なるようになっちゃえ。
隣に座るプロデューサーの腕に、僕はがばっと抱きついた。

P「じゃあ、真が何かしてくれるのか?」

真「お姫様ですから、もちろん!」

P「あのなぁ」

真「これで、正式に"デート"ですよねっ?」

さらに、ぐいっと近づく。
プロデューサーの顔が、本当に目と鼻の先にあるくらい。


P「…どういう意



真「プロデューサー」

真「へへ」

34: 2014/02/07(金) 02:47:16.40 ID:oSmJk7mY0
翌日。

春香「おはようございまーす」

P「」

春香「プロデューサーさん!?どうしたんですか?」

P「」

美希「なんかハニー、朝からずーっと熱いの」

響「風邪でも引いたのかなぁ」

雪歩「お薬、買ってきましょうか?」

P「…いや、いい。ありがと」

35: 2014/02/07(金) 02:58:44.86 ID:oSmJk7mY0
真「おっはようございまーす!!!」

P「…ああ、まこと」

真「さあプロデューサー!仕事ですよ!起きて!」

美希の真似して、プロデューサーの腕を引っ張る。

美希「真クン」

春香「真、どうしたの?」

真「なんでもないよっ」



階段を降りて、車に乗り込む。
どこか惚けた感じのプロデューサーは、それでも僕に小さく「二度とやるなよ」と叱ってきた。

真「はーい」

今日も王子様、頑張ります。
だからいつか、僕も報われますように。

真「よしっ」

僕は帽子を深く被って、鍔の下でくすっと笑ってみた。

おわり

38: 2014/02/07(金) 03:15:10.27 ID:oSmJk7mY0
どうしよう
やっぱり春香スレにしたかった

41: 2014/02/07(金) 03:30:22.85 ID:oSmJk7mY0
>>25の外で電話から分岐

P「…はい、かしこまりました、菊地の方にも…はい。確認させていただきます。折り返し…はい、それでは。失礼いたします」

電話を切る。
民放の人気番組から真にお声がかかったようだ。

P「よしっ」

うまく行けばレギュラーを取れるかもしれない。
今や慣れたことかもしれないが、こうやってウチの事務所にオファーが掛かるのはやはり嬉しい。

P「さてと」

そろそろ真の奴を送ってやらないと、等と考えていると、再び携帯が震えた。
背中のディスプレイにはEメールのアイコンと春香の名前が輝いていた。

42: 2014/02/07(金) 03:37:12.10 ID:oSmJk7mY0
春香『お疲れさまです!ところでプロデューサーさん、今ちょっとお話出来ませんか?忙しくなくて、お仕事の邪魔にならないならでいいんです。お返事お待ちしてます!』

P「んー…」

時計を見る。
18:20ちょっと。長くならないならいいか?



P「…、もしもし」

春香『あっ、プロデューサーさん?』

P「おう。どうした?」

春香『えと、どうしよう。そんなにすぐに話せるとは思ってなくて』

P「なんだよそれ」

春香『う、えーっと、…こんばんわ』

43: 2014/02/07(金) 03:43:16.83 ID:oSmJk7mY0
P「ああ、こんばんわ」

春香『…』

P「どうしたんだ?」

春香『あの。』

P「うん」

春香『なんていうか…言っても怒らないですか?』

P「言われないと怒れない」

春香『あっ、そうですよね!』

P「うん」

春香『えーっと。プロデューサーさん、今度オフの日とかありませんか?』

44: 2014/02/07(金) 03:50:33.94 ID:oSmJk7mY0
P「今はなぁ…丸々1日オフというのは、あんまり無いかもな」

春香『ですよね…』

P「みんな売れっ子になったからな」

春香『ですよね!』

P「とにかく、律子や音無さんに合わせないと難しいかも」

春香『すみません…』

P「でも、何で俺のオフなんか聞くんだ?」

春香『"へへっ、デートですよっ!デート!"』

P「似てないぞ」

春香『あはは、ですよね』

47: 2014/02/07(金) 03:57:24.82 ID:oSmJk7mY0
P「どっか遊びに行きたいのか?社長に休みを出して貰おうか」

春香『いや別にそういうわけじゃ』

P「まぁ、考えとくよ。仕事に出すぎるのもアイドルとしては良くないしな」

春香『ありがとうございます…』

P「まぁ、日曜に収録で会えるしな。その時にでも話そう」

春香『はい!楽しみにしてます!』

P「…ああ、わかった。週末な。じゃあ」

50: 2014/02/07(金) 04:09:26.30 ID:oSmJk7mY0
春香「はぁ」

電話、切られちゃった。
真みたいにストレートに誘って見たかったんだけどな。

春香「うまく行かないな」

美希みたいに、プロデューサーさんに素直に甘えてみたら変わるのかな?
そんな勇気は私にはないけれど。

春香「"春香、結婚しよう!"だって…」

言葉にすると冗談みたいだけど、覚えてるような夢というのは大抵生々しいもので。
ドームコンサートの側、夜風の通る道の真ん中で、プロデューサーさんが私の左手を取って、あのちょっと頼もしい顔であの台詞を言うのだ。

52: 2014/02/07(金) 04:20:46.31 ID:oSmJk7mY0
架空の体験なのに、薬指には指輪を填められた圧の感触が残ってる。
それが、気色悪い。

あの夢の私は、背骨の奥から頭の中を吸いとられるような感涙の感覚のあと
トップアイドル天海春香として、プロデューサーさんの最愛を受け入れるのだ。

春香「いいなあ、私」

独り言が勝手に出てくる。
あんな夢を見せられたら誰だって憂鬱になるんじゃないかな?

春香「トップアイドルになったら、実現するかな?」

そんな気も、いまいちしない。

54: 2014/02/07(金) 04:30:38.48 ID:oSmJk7mY0
P「真美とやよい、春香!そろそろ行くぞ!貴音、4時までに必ず美希を起こしてくれ」

日曜日。
芸能人にとっては、平日より遥かに忙しい1日。

真美「はるるん、どったの」

春香「はぇ…?」

やよい「しゅーろくですよ春香さん!」

春香「ああ、うん。ごめんねやよい」

階段を降りる最中、真美に小突かれた。

真美「さてははるるん、年頃のお悩みですな?」

春香「そんなんじゃないよ、真美」

真美「気になるメンズがきゅーせっきかな?」

春香「逆だと思う」

真美「ふぇ…?」

56: 2014/02/07(金) 04:43:22.35 ID:oSmJk7mY0
春香「"眠り姫"満員御礼です!すっごく面白いので、是非見に来てください!」

真美「見ないとやよいっちのうっうー炸裂だYO→!」

番宣コーナー。
無事終わったけれど、ディレクターさんから暗いと叱られてしまった。

やよい「春香さん、大丈夫ですか?」

春香「ごめんね、ちょっと寝不足みたい」

やよいの心配が嬉しいけれど、今私が沈んでるのは、あんな夢をみた私のせいなのだ。
誰が悪いというわけではない。プロデューサーさんも…。

57: 2014/02/07(金) 04:51:24.86 ID:oSmJk7mY0
車の中でも、私は結局あの幻想に俯いていた。

春香「…」

真美「そこで亜美が思い付いたのが、いおりんのウサちゃんを寝ているあずさお姉ちゃんのグレープフルーツに…」

やよい「シャルルだよ、真美」

P「ははは。それ、よく起きなかったな!なぁ?春香、」

春香「…」

P「春香?」

春香「…zzz」

真美「おりょ、はるるん熟睡中?」

やよい「しっ。起こしちゃダメだよ」

真美「わかってるよう、やよいっち。真美だってレディだよ」

やよい「?」

58: 2014/02/07(金) 04:56:30.79 ID:oSmJk7mY0
P「なぁ春香」

春香「はい」

P「もしトップアイドルになって…いや、なりきっちゃったら、どうする?」

春香「えええ!?そんなの分からないですよ…」

P「だよな。女優や歌手に転向したり、タレントやったり」

春香「…アイドルって、いつでもそうあれるものじゃないんですよね」

P「だな」

春香「本当に目指す先がなくなっちゃったら…どうなるんでしょうか」

59: 2014/02/07(金) 05:06:41.30 ID:oSmJk7mY0
P「誰かのお嫁さんとかも、立派な選択肢だよな」

春香「え?」

P「だってそうだろう?日本中の男がお前をお嫁さんに欲しがると思うぞ」

春香「あ、アハハ!そうですね。そうだと、…いいですね」

日本中かぁ。きっと幸せものだろうな、夢の私は。
現実には目の前の1人すら落とせないのに。

春香「そうだと、いいなぁ」

62: 2014/02/07(金) 05:18:25.84 ID:oSmJk7mY0
春香「プロデューサーさ…」



P「おう、起きたか。そろそろ駅だぞ」

車の中だった。
私は後部座席に寝そべり、シートに寝汗を吸わせていた。
肩には真美の使っていたタオルケットが掛かっている。

春香「あれ、二人は?」

P「事務所で降ろしたよ。亜美を待つそうだ」

春香「そっか。そうですね」

P「春香」

春香「はい」

P「…ちょっと待ってろ」

車がコンビニの駐車場に入る。

春香「あ」

P「待ってろ」

63: 2014/02/07(金) 05:25:03.73 ID:oSmJk7mY0
しばらくして、プロデューサーさんはコンビニからチキンと飲み物を買ってきてくれた。

P「鶏肉を食べると、気分が幸せになるらしいぞ」

春香「どこのバラエティでやってたんですか?」

P「やよいの受け売りだ。お隣失礼」

後部座席に乗り込んでくる。
私とプロデューサーさんは二人並んで、揚がったチキンを食べ始めた。

P「うまい、うん、結構…」

あまりに美味しそうに食べるので、私もかじってみた。
その瞬間、プロデューサーさんの気遣いが見に染みた気がして、鼻の奥が痛くなった。

65: 2014/02/07(金) 05:32:21.82 ID:oSmJk7mY0
P「え!?」

肉をかじっただけで泣き出すとは想定外だった、という表情でプロデューサーさんはわたわたと手を振った。

P「春香、なに、大丈夫か?」

春香「ごめんなさい、ごめんなさい…」

何で泣いているんだろう私は。
仕事や将来に不満不安はない。
恋愛だって…まだ片思い未満のはずだ。
そうだ、夢にいきなり、あなたが現れたから。

春香「でも…プロデューサーさんのせいです」

P「はぁ?」

やっぱりこの人が悪い。

66: 2014/02/07(金) 05:43:43.71 ID:oSmJk7mY0
春香「げほっ、はぁ。いきなり…卑怯なんですよ」

P「何が、何が。俺が?」

春香「全部です!」

P「えええ…」

女の涙に困る男の人って、こういうシチュエーションなんだ。
体感しちゃった。

春香「プロデューサーさんには、夢で酷い目に会ったんです」

P「そんなところまで責任持てないよ…」

春香「いいえ。プロデューサーさんは、アイドルに悪夢を見せる駄目な人です」

だから。

春香「だから、仕返しします。今から、プロデューサーさんに」

急がばまっすぐ進んじゃえ。

68: 2014/02/07(金) 05:51:37.20 ID:oSmJk7mY0
P「ちょっと、待っ、春香」

プロデューサーさんを座席の端へ追い詰める。

泣き腫れた顔じゃ、普段以上に可愛くないかも知れないけど
ちょっとくらいなら、身勝手に怒ってもいいよね。

P「止めろ、はる…

射程圏内。
私は両の指をかけて、ついに実行した。




P「あれ?」

71: 2014/02/07(金) 06:08:30.51 ID:oSmJk7mY0
P「前が…おい…」

プロデューサーさんの眼鏡をひょいと掲げて、私はニタリと笑いかける。

春香「眼鏡の命が惜しかったら、"崇め奉りなさい"、ですよ?」

P「なんだよ、春香ぁ」

春香「さぁ、さぁ!」

P「わかったよ…ん、"ははーっ"」

なんだか、貴音さんのコーナーの亜美と真美みたい。

春香「よかろう。いいですよ、顔を上げても」

子犬のようにこちらに顔を向けたプロデューサーさんに、眼鏡をかけ直す。

眼鏡の先端を怖がって、彼が瞼を閉じるのを確認すると、私は顔を近づけて、そっともうひとつの仕返しをした。

P「あっ、おm馬鹿…


ここから、駅まですぐだ。
私は帽子をかぶって車から逃げるように降りると、真っ赤になった顔でこう言い放ってから、すぐに駆け出した。

春香「プロデューサーさんのバーカ!」

おわり

72: 2014/02/07(金) 06:09:47.19 ID:oSmJk7mY0
今度こそおわる
こんなのはるるんじゃないや…
はるるんはもっと恥じらい深くて俺のお嫁さん
おやすみなさいませ

74: 2014/02/07(金) 06:41:37.44 ID:i7ZlxpIO0
良いじゃないか

引用元: P「春香!結婚しよう!!」