マネ「山王に勝った湘北高校だって、次の試合で愛和学院にウソのようにボロ負けしたじゃないですか」

マネ「私達に出来ないことはありません！」

中堅「そうだな！ミラクルラッシュで奇跡を呼び込め！」

マネ「一回戦の相手、倉賀野・郡裏・萌間は自力で何とかしましょう！」

マネ「そして二回戦までのあいだに白糸台と新道寺の情報を全力で集めて、何とか打開策を見出す」

マネ「そしてそれを元に、何とか失点を最小限に抑えつつ２位に滑りこむ！」

マネ「さすれば自ずともう１校の相手も何とかなっているはずです！！」

主将「よーしっ！やってやろまい！！苅安賀ーっ、ファイッ・オーッ！！」

～インターハイ・５日目～


主将「初戦はなんとか通過できた・・・やばかったけど・・・かなりギリギリだったけど！」

主将「でもここからが本番だ」

佐藤「さあ、インターハイ５日目。ついにシード校のうち２校が登場。この２回戦生き残るのはどの高校なのか？」

佐藤「実況は私、佐藤裕子。解説は去年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞した気鋭の若手、戒能良子プロです」

戒能「グッモーニン。どうぞよろしくです」

佐藤「さて、戒能プロ。この試合の見所はどの辺りでしょう？」

佐藤「そうですね。マストアテンションは、もちろん白糸台高校でしょう」

戒能「特に先鋒にコンバートされた宮永選手と、ポジションを継いだ大星選手がどんな闘いを見せてくれるか楽しみです」

佐藤「白糸台は本大会でも本命を絶対視されていますが・・・対抗となる存在としては、やはり新道寺女子でしょうか？」

戒能「イエス、後半のパワーは白糸台とはいえ侮れないでしょう。去年のリヴェンジを誓っているはずです」

戒能「ですが、苅安賀・栢山学院も決してイージーな相手ではありません。特に苅安賀・・・」

戒能「正直ノーマークだったですが、彼女たちの目はやるだけのことはやってきたという自信に満ちていますね」


ザッ！


主将（そう、私達はやるだけのことをやってきた！）

～回想・先鋒戦ミーティング～


マネ『いきなりラスボス登場です』

中堅『ジュニアユース編のカール・ハインツ・シュナイダーみたいだな』

マネ『去年のインターハイ個人・団体２冠チャンピオン、宮永照』

次鋒『あの荒川憩をして人ではないと言わしめたとか。まあ私らからしたら、同じようなもんだけど・・・』

先鋒『なんで今回先鋒来とるんだろ・・・。どうせなら個人戦に集中しとればええのに・・・』

マネ『反対に新道寺の先鋒、花田煌は全くの無名選手です』

先鋒『団体戦のメンバー入りは今年から。個人戦の成績もパッとしませんね』

マネ『鶴姫・シローズが大将・副将に入っていることからも、新道寺のオーダーは後半型とみて間違いないでしょう』

マネ『ですが、何かしらの条件付きで能力を発揮するタイプかもしれません』

マネ『注意は怠らないでください』

先鋒『了解です。というか、元からそんな余裕ありません』

マネ『さて、本題の宮永対策です』

マネ『牌譜はもちろん、彼女が過去に受けたインタビュー記事やテレビ映像を片端からチェックしました』

マネ『その結果、一つの事実を突き止めたのです。宮永照は・・・』

先鋒『宮永照は・・・？』ｺﾞｸﾘ

マネ『お菓子に弱い』

前半戦・東1局一本場


照「ロン・1000は1300」ﾊﾟﾗﾗﾗﾗ

佐藤「宮永選手、平和のみの一翻手を手堅く和了りました。さあ、連続和了の始まりでしょうか」

戒能「オンファイア、ですね」

照（鏡で見た限り新道寺の人はちょっと特殊みたいだけど、他の二人はそれほど気になるところは無かった）

照（あとはいつも通り出来る限り稼ぐだけ。なるべく平らに削っ・・・て・・・？）

照「ロン・2000」

煌「すばらっ！」

先鋒「・・・・・・・・」

照「ロン・・・3200」

栢山先鋒「ウギャー」

照「・・・ロン・・・・・・えーと、親だから5800点です」

煌「大すばらっ！！」

先鋒「・・・・・・・」

佐藤「宮永照、快調に和了を重ねていますね、戒能プロ？」

戒能「・・・妙ですね。宮永選手の意識が、どうも苅安賀にだけ向いていません」

戒能「それにコンセントレーション自体が段々散漫になってるです」

戒能「ハートここにあらずといった風ですが・・・」

先鋒「・・・・・・・・・・」ｺﾛｺﾛｺﾛ

照（苅安賀の人がさっきから上家と下家にコロコロ転がしているあれ・・・）

照（・・・間違いない。ロッテコアラのマーチ、それもご当地パッケージバージョンだ・・・）

先鋒（ほーら、甘くて美味しいよ～。３つか？３つ欲しいのか？このいやしんぼうめー）ｺﾛｺﾛｺﾛｺﾛｰ

照（エビフライコアラさんも入ってるかな？くっ、対面でいまいち見えにくい・・・）ﾁﾗｯﾁﾗｯ

先鋒（名古屋の東山動物園は日本で初めてコアラが来たところ。コアラの扱いはお手のもんだで！）

先鋒（そして・・・くらえ、チャンピオン！！）ｺﾛｺﾛｺﾛｺﾛｰ

照（・・・！ようやく私の方にコアラのマーチが！しかもこれは・・・マユ入りコアラ！？）

竜巻「ヒュンヒュンヒュン・・・ヒュンヒュン・・・・ヒュウウウン・・・・ンン・・・・・・・」

先鋒「それだ！ロンです、5200は5500！」

佐藤「宮永選手、今大会都予選を通じて初の振込みです！」

戒能「人は予想をオーバーしてきますね」

その後も先鋒は他校（主にすばら）に照の被害を押し付けつつ
白糸台の親番では、レアコアラを使って直撃を取っていった。


ビーッ


佐藤「先鋒戦終了ー」


白糸台：121000　新道寺：73000　苅安賀：117000　栢山：89000


佐藤「白糸台宮永選手、さすがの貫禄を見せてトップでバトンタッチ」

佐藤「しかし苅安賀も健闘を見せました」

戒能「チャンピオンが団体戦の区間で1人浮きをプロテクツされたのは2年振りですね」

テクテクテク


照「ごめん、菫。あまり稼げなかった・・・」

菫「そう気にするな、２万点もプラスなら十分だ。それにトップ通過には変わりないんだからな」

菫「私としては今までで一番満足気な顔をして帰って来たように見えたのが、勘違いだとわかっただけで十分だ」

菫「・・・・・・勘違いなんだよな？」

照「もひろん、ほうらよ」ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ

菫「せめてそれ食べ終わってから話せよ・・・。まあいい、いつもお前に頼りきりじゃ不甲斐ないしな」

菫「あとは私たちに任せておけ」



主将「よっしゃ！一番のバケモノは何とかやり過ごした！！」

マネージャー「まだこれからですよ、油断せんでいきましょう」

次鋒「任せといて。SSS対策はバッチリお任せだでー」

～回想・次鋒戦ミーティング～

マネ「続いても大物です。主将の弘世菫、去年の優勝メンバーの一人でもあります」

次鋒「狙った相手は必ず射抜く、ついたアダ名が白糸台のシャープシューターですか。怖っ！」

マネ『こちらもプレイ中の様子を何度もスロー＆ズーム再生して見比べました』

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

菫『・・・・・・・・・・』ﾋﾟｸｯ

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

マネ『ストップ』ﾋﾟｯ

マネ『よく見てください。彼女は相手を射抜こうとするとき、右手が数ミリ後ろに動きます』

マネ『そしてこの動きの直後に弘世の視線がわずかに泳ぐ。その視線の先が狙われた相手です』

次鋒『なるほど、そしてそのあとに射撃が来るってわけですね』

マネ『はい、ですからその瞬間を見極め・・・』

次鋒「イナバウアー！！」ﾋｭｳﾝｯ

佐藤「ああーっと、なんでしょうかっ！？苅安賀次鋒！突然真後ろに仰け反ったっ！！」

マネ『物理的にかわしてください』

菫（私の射撃がかわされた！？偶然か否か、もう一度引き絞って・・・）ｷﾞｷﾞ･･･ﾋﾞｯ!

次鋒「シロノワール！」ﾋｭﾋｭﾝｯ

菫（・・・・・偶然ではないのか）


中堅「フフフフ、上手いこといったな」

主将「簡単なように見えるけど、弘世のクセが分かれば誰でも出来るというわけじゃない」

副将「次鋒先輩は、競技かるたで将来の永世クイーンを確実視されている目と反射神経の持ち主」

主将「しかも伊藤みどりや浅田真央を育てた名古屋のスケートリンクで子供の頃から滑っている」

主将「未だにイナバウアーを仰け反る技だと勘違いしとるけど、あの柔軟性は伊良子清玄と同等だがや！」

菫「・・・・・・・」ﾋﾞｯ

次鋒「ストイコビXチ！」ﾄﾞﾋｭｳﾝｯ

菫「・・・・・・・・・・・・」ﾋﾞﾋﾞﾋﾞｯ

次鋒「アロンゾ・パウエル！」ﾋﾟｼｭﾝﾋﾟｼｭﾝﾋﾟｼｭﾝ!

菫（・・・射線が取れない。背もたれのない椅子にしたのも、このためか。・・・やるな）

菫（仕方がない、標的は他の２校に変更だ。今回は、点数を稼ぐことに専念する！）



・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ビーッ


佐藤「次鋒戦終了ー」


白糸台：148000　新道寺：66000　苅安賀：115000　栢山：71000

佐藤「白糸台弘世選手、手数で圧倒！」

佐藤「時折り見せる苅安賀次鋒の不思議な動きにも惑わされず、大きくリードを拡げました」

戒能「アクロバティックなアトラクションでしたね」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

美子（全然和了れんかったと・・・。もし次があるなら新しい打ち方で挑んでみんと・・・）

菫（まあこんなところか、しかし私のシャープシュート（物理）も精度が落ちたかな？）

菫（次の試合でリアクションいいのがいたら、調整がてら集中して狙ってみよう・・・）

次鋒「腰が・・・痛い！！！」

中堅戦

前半戦南一局　白糸台：147200　新道寺：67400　苅安賀：113500　栢山：71900


佐藤「中堅戦は静かな立ち上がり。前半戦東場が終わって、点数移動は殆どありません」

戒能「しかし、このままフィニッシュとは思えませんね。渋谷選手はオーラスに特大の爆弾をおモチです」

中堅（ここまでは親の連荘なし。いい流れだ・・・）


～回想・中堅戦ミーティング～


マネ『永水・薄墨と並ぶ今大会の役満クイーン、渋谷尭深の能力は積み込みです』

主将『そんなん反則だがね』

マネ『防ぎようがないという点で、実際かなり厄介ですよ』

中堅『で、要するにどういうこと？』

マネ『例えるなら種まきと収穫』

マネ『東１～南３局までの渋谷の第一打の捨て牌が、オーラス配牌時に全て戻ってくるのです』

中堅『つまり連荘や流局が多ければ多いほど有利になるってこと？』

マネ『これまで例はありませんが、オーラスまでに14局費やしていれば天和・地和も可能かもしれません』

主将『うは～、バードもビックリだがね。“アガってんなあ”って一度でいいから言ってみたいわ』

中堅『それで対策は？』

マネ『普通に打ってください』

中堅『それでいいの？みすみす相手に大物手プレゼントすることになるけど』

マネ『順を追って説明します。まずこれは、渋谷のオーラス成績です』


消費局数８　 和了率51％　平均和了点：18000点　期待値：9180点

消費局数10　和了率60％　平均和了点：20500点　期待値：12300点

消費局数12　和了率68％　平均和了点：24000点　期待値：16320点

マネ『見ての通り、オーラスまでの消費局数と期待値は比例関係にあります』

マネ『まさに驚異的な数字ですが、それでも一局増えるごとに上昇する得点期待値は平均して約1800点』

マネ『一方親でこちらが和了れば1翻30符の最低でも1500点です』

マネ『親での流局も、点棒移動を考えれば本来聴牌していたのを放棄するのは得策ではないでしょう』

中堅『そんなら、気にせんで和了ればいいってこと？』

マネ『まさにこの点がこの能力の厄介なところなのです』

マネ『仕組みが分かっていたとしても自陣営の利益を追求する限り、連荘や聴牌を放棄することは滅多にない』

副将『結果渋谷の収穫を止められなくなってしまう・・・か』

マネ『ですが、一方でオーラス時の手牌はかなり透けています』

マネ『防御に徹していれば、振込を回避するのはそれほど難しくはありません』

マネ『それに今回の我々の仮想敵はあくまで新道寺』

マネ『ラス親でも無い限り、基本ベタオリしてください』

マネ『新道寺が役満親被りしてくれれば、むしろ儲けものです』

中堅『おおっし！いっそのこと氏ぬまで保留したるよ！！』

後半戦南4局　白糸台：161000　新道寺：69800　苅安賀：110000　栢山：59200

佐藤「さあ、中堅戦も大詰めです」

佐藤「白糸台渋谷選手、前半戦で和了った役満の貯金で悠々のリード」

戒能「相当の“優先度”ですね。彼女のオーラスを止めるのは、プロでもデフィカルトでしょう」

中堅（なんとかかんとか、ここまできた・・・）

中堅（今回の渋谷の捨て牌は、全て索子の４・４・２・６・赤５・２・４・３・６）

中堅（清一色にドラや一盃口を含めた複合役、あわよくばスーアンやオールグリーンを狙う多段構えか・・・）

中堅（前半戦の役満ツモは栢山が被ってくれたけど、今回は私の親。出来れば和了っておきたい・・・）

中堅（幸い配牌はいいし、索子以外は通りやすい状況。ギリギリまで和了を目指す！）ﾀﾝｯ

仁美「～♪」ﾀﾝ

中堅（新道寺の河にも索子が無い。渋谷の収穫に気づいてのオリか、それかたまたま・・・？）ﾀﾝｯ

仁美「ブドウばかりに気を取られとると、近くのグァバジュースに気づかんこともある・・・」

中堅「え？」

仁美「その牌や。ロン・ピンフ・三色・ドラドラ・８０００」ﾊﾟﾗﾗﾗﾗ

中堅（・・・！三巡前から既に張っていた？それも手牌の中で索子を使い切ってる！）

中堅（この点差で三色確定の多面待ちでも、あえてリーチをかけず・・・出あがり狙いにハマった！）

仁美「なんもかんもマスコットのしんどうくんが悪い」ﾄﾞﾝｯ




中堅「最後の最後でスマン・・・」

副将「気にせんでください。私がなんとかしますから！」

主将「副将、アンタにかかっとる。相手は本物のエース、用心しやー」

副将「はい！」

～回想・副将戦ミーティング～


主将『白水哩か・・・』

マネ『対新道寺において、最大の難関といってもいい相手です。素の強さも厄介ですが・・・』

副将『二人の和了りがリンクしてるっていうあれですか』

マネ『ただリンクしている時と、していない時の違い、その法則性がいまいち掴めませんでした』

マネ『しかしひょっとしたら、というものが出てきました。これを見てください』

主将『今年の春季大会の映像か』

マネ『はい。理牌後一度伏せるという動作が毎回入りますが、重要なのはそのあとです』


～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

哩『・・・・・・・・・・』ﾁｬｯﾁｬｯﾁｬｯﾁｬ

哩『・・・・・・・・・・』ﾌｰ､ﾊﾟﾀﾝ

哩『・・・・・・・・・・！///』ﾋﾞﾋﾞｸﾝ!

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～


副将『あっ、ビビクン！ってなった！！』

マネ『このビビクン時の局に絞って調べると、白水の和了った局では鶴田も必ず和了っていました』

マネ『翻数も概ね倍で推移しています』

マネ『一方で和了を逃した局では鶴田の和了率は、一翻手で５％程。二翻以上の手に至っては聴牌さえゼロです』

副将『完全に沈黙してくれるわけですか』

マネ『この瞬間を見逃さなければ、正真正銘のエースを出し抜くことも可能です』



副将戦前半：東２局

哩（リザベーション２！）ﾋﾞﾋﾞｸﾝ!

副将（来たっ！ビビクン！）ﾀﾝ

誠子「ポンッ！」

副将（ビビクンを確認したら、その局は白水の和了を潰すことを再優先）ﾀﾝ

誠子「チーッ！」

哩（簡単に鳴かせ過ぎやっと・・・釣り人さんの特徴を知らんわけでもなかろに・・・まさか、ワザとか！？）

副将（白糸台亦野の鳴けそうな牌を切りまくる。幸い私は上家だ、ガンガン切って・・・）ﾀﾝ

誠子「チーッ！」

副将（その一方で亦野の現物を貯めこむ。三鳴き後はベタオリすれば、数巡後には・・・）

誠子「ツモ！700・1300です」

副将（今白糸台は早く局を消化すればそれでいい点差。最悪振り込んでもそれほど怖くはない）

副将（早和了に徹した亦野を私がサポートすれば、いかな白水といえどそう簡単には和了れん！）

哩（・・・・・新道寺のエースば、見くびるなよ・・・）

誠子「ツモ！！1000・2000」


後半戦南4局　白糸台：175000　新道寺：83000　苅安賀：97000　栢山：45000

副将（他の局で白水に大物手何度か和了られたのは痛かったけど、ここまでビビクンの局は完封）

副将（なるべくたくさんリードを保って主将につなげる！）

哩（リザベーション時に限ってあからさまなコンビ打ち・・・）

哩（理由は分からんが、苅安賀に私のクセば読まれとるのは確かみたいやね）

哩（点差は詰めたが、リザベーションはここまで四度とも未達・・・）

哩（こんままでは、姫子も苦戦はまぬがれんやろ・・・）

哩（あらゆる動きを制限して、オーラスは何としても成功させてみせる！）

哩（これは新道寺主将としての意地やけん！）

哩（・・・・・・）ﾁｬｯﾁｬｯﾁｬｯﾁｬ

哩（配牌は良好・・・・いかる・・・）ﾌｰ､ﾊﾟﾀﾝ

哩（リザベーション４！）ｶｯ!

哩（・・・くるっ！凄いのきちゃうううっ！！でも・・・私は負けないっ・・・！）ﾋﾞﾋﾞｯ･･･ﾋﾞｯ･・ﾋﾞ･･･

哩（・・・・・・・というか、これはこれで、いい・・・）ﾋﾞ･･･ﾋﾞ･･･

戒能（かすかなエクスタシーの波動を感じます・・・が、これを今解説で言うのはフェアでは無いですね）

副将（よしっ、張った。最後はさくっと和了って終了だ！）

哩「ツモ！トイトイ・白・赤１！2000・4000！」

副将（・・・！トイトイのシャンポン待ちで、栢山のロン牌を見逃しての白ツモ和了！？）

副将（翻数を上げるため、まさかビビクンが入ってた？これが、真のエース・・・！）

哩「ハァッ、ハァッ・・・あとは任せたとよ、姫子・・・」

哩「勝ってホテルに帰って新しいプレイも試したかけん・・・」

誠子（・・・なんか、妙な卓だったな。この鳥肌は一体・・・）



佐藤「さあ、いよいよオーラスです。白糸台圧倒的なリードは変わらず」

佐藤「一方２位争いは熾烈さを増してきています。また栢山はかなり厳しい状況に追い込まれました」

戒能「最後までリグレットしないよう、頑張って欲しいですね」

マネ「ついにここまで来ましたね・・・」

主将「うん、みんなのおかげだで」

マネ「あとは頼みましたよ、頑張ってください主将！」

主将「ああ、任せとけ！」ﾄﾞﾝｯ!

主将「・・・・・・・・・」

マネ「・・・・・・・・・」

主将「・・・・・・・・・」

主将「・・・・・・それだけ？」

マネ「何がですか？」

主将「いや、ほら・・・さ。ここら辺で毎回対策の回想入るけど、私のがまだ無いなって・・・」

マネ「対策は、ありません」

主将「え・・・」

マネ「大星の五向聴縛りは、私ら善良な一般人が卓上でどうこう出来るものじゃありません」

マネ「鶴田のビビクンも一度入ってしまえば同じです。ですから・・・」

主将「ですから・・・？」

マネ「頑張ってください主将」ｸﾞｯ

主将「お、おう！まかせとけ！！」


後半戦南２局　白糸台：179000　新道寺：104800　苅安賀：94200　栢山：22000


主将（・・・・ダメじゃん！思い切り逆転されてるじゃん！！）

先鋒「ダメですね」

中堅「ダメだったか・・・」

副将「大星は完全に流してるんですが、鶴田が予想以上に強いですね・・・」

マネ「ここまで少なくとも3局はビビクン失敗補正が掛かってるはずですが・・・」

次鋒「新道寺のダブルエースは伊達じゃないってことなんか」

主将（そして、またもやカス配牌・・・）ﾁｬｯﾁｬｯﾁｬｯ

主将（ああー、ラス親も南１で早々に流れたし、ここまでだったか・・・）

主将（まあ個人戦の代表も1人も入っとらせんのに、よう頑張ったわ）

主将（あとは東京観光でもして帰ればええが・・・）

主将（スカイツリー登って、やっぱりテレビ塔より高いなーなんて土産話を作って・・・）

主将（イチマルクで買い物もしてみたいな・・・）

主将（・・・・でも、やっぱり勝ちたかったなあ・・・）

主将（皆であんなに色々研究したのに、そんでここまで食い下がったのに）

主将（それもこれも新道寺がこんなにしつこいからいかん）

主将（そうだよ、こいつら名門の強豪のくせに泥臭く粘り過ぎなんだよ・・・）

主将（・・・・・・新道寺も白糸台も栢山だって、みんな勝ちたいんだな・・・）

主将（それぞれが色んなもん背負って、負けられんと挑んで・・・それなら分かる。そんなら・・・）

主将（そんなら、私らと同じだがね！）



主将（流れも悪けりゃ実力も大してない！しかも相手は名門のエースたちだ！）

主将（それでも麻雀の勝負はまだ分からん！持ってない者のしぶとさ見せたらすわ！）

淡（フーン、カリヤスガの気配がちょっとマシになったかな）

淡（私も混ざりたいとこだけどさー。アレ使ったら菫先輩に怒られちゃうし・・・）

淡（まっ！これくらいならいいよ、ねっと！）

淡「リーチ！」

姫子（大星の親リー！次の局はリザベーション未達やから和了っときたかところやったけど、まだ二向聴・・・）

姫子（無理はできん。こん局はオリや・・・）

主将（”例のリーチ”は途中で暗槓が入るはず・・・それが来ないなら、まだ望みはある！）

～十数巡後～

淡（ありゃりゃ、結局ツモれずか。まっ、たまにはこういうのもいいよね）ﾀﾝ

姫子（大星のラスヅモは終了。こん局は流局やね・・・）ﾀﾝ

主将（フーッ・・・）ﾀﾝ

佐藤「南２局は流局です、これから１本場に・・・」

戒能「ノーウェイ・ノーウェイ。もう一度、よく河をウォッチしてください」

佐藤「河・・・ですか？」

姫子「苅安賀の捨て牌が全部ヤオチュー牌！・・・しまった！」

主将「・・・流し満貫です。2000・4000」

淡「・・・わお♪」

後半戦南３局　白糸台：174000　新道寺：102800　苅安賀：103200　栢山：20000


佐藤「苅安賀これで僅差ですが2位に浮上しました！」

戒能「大星選手の影響で、今回は特にヤオチュー牌が配牌時から大量にありました」

戒能「それを逆に利用した執念、グッドスピリットですね」

主将（ダメ元でやったけど、上手くいった・・・ラ、ラッキィー！）

主将（ひょっとしたらオーラスではビビクンが来るかもしれん。何とかこの局も和了ってリード拡げんと！）

主将「リーチ！」

佐藤「苅安賀、三面待ちの満貫手を聴牌。リーチをかけます！」

戒能「大星選手の暗槓で二度待ちがブランクしながらの張り替え、見事です」

戒能「・・・ですが・・・」

姫子「ポン！」

主将「！」

姫子（リザベーション未達くらい、なんやっと！）

姫子（部長と一緒に戦える最後の年、ここで負けるわけにはいかん！）

姫子「ツモ！タンヤオ・300・500！」

佐藤「めまぐるしく変わる2位争い。新道寺、再度逆転です！」

主将「くっ・・・・だが、まだオーラスがある！」

姫子「苅安賀、あんたはようやった・・・。そいぎ、準決勝に進むのは私ら新道寺やけん！」

姫子「オーラス・・・おいでませ、倍満キー！」

・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


佐藤「二回戦終了。オーラスは新道寺の鶴田選手が5巡での親倍和了でアガリやめ」

佐藤「準決勝進出は白糸台高校と新道寺女子です！」

戒能「グッドルーザー・グッドウィナー、とても良い試合でした」

戒能「またいつか、この組み合わせで見てみたいですね」

佐藤「実況は私、佐藤。解説は戒能良子プロでお送りました」

佐藤「それではまた明日この時間にお会いしましょう」

マネ「主将・・・・」

主将「・・・・ごめんな。負けてまったわ・・・・」

次鋒「いいえ、最高の試合でした・・・」

先鋒「絶対、絶対に来年もまた来ます！そんで今度こそベスト８に入ります！」

中堅「いや、そこはせめて決勝進出にしとこまい！」

副将「なんでみんなそんな奥ゆかしいんですか！目標なんだから、優勝でええでしょ！」

主将「よっし！それならお腹も空いたで、後輩たちの優勝前祝いに今からパーッと出かけよか！」

主将「スガキヤより美味いラーメン屋があるか、確かめるが！」

全員「「おおうー！」」


21世紀、世界の麻雀人口は数億人を突破。日本でも毎年1万人以上の
高校生の中から選ばれた雀士たちが、頂点を目指して覇を競いあっていた。
これはそんな天才たちの影に隠れながら、刹那の輝きを放った少女たちの軌跡。



積（カン）！

以上です。支援ありがとうございました

乙
描写されない高校にもこういう物語があると思うと胸熱ですね