1: 2013/03/11(月) 03:16:41.42 ID:e9DypJzW0
貴音「大変楽しみです」
伊織「いらっしゃい、今夜はゆっくりしていって」
貴音「ええ、ええ、もちろんですとも。して、今宵はどのようなご馳走を振る舞って下さるのですか?」
伊織「気が早いわねぇ。そうね、控えめに言って超高級な」
貴音「超高級!」
伊織「ほっぺの落ちちゃうような」
貴音「ほっぺの落ちる!」
伊織「伊織ちゃん特製フルコースよ!」
貴音「面妖な」
伊織「あ、あら? ここは喜ばないの?」
貴音「面妖な」
伊織「いらっしゃい、今夜はゆっくりしていって」
貴音「ええ、ええ、もちろんですとも。して、今宵はどのようなご馳走を振る舞って下さるのですか?」
伊織「気が早いわねぇ。そうね、控えめに言って超高級な」
貴音「超高級!」
伊織「ほっぺの落ちちゃうような」
貴音「ほっぺの落ちる!」
伊織「伊織ちゃん特製フルコースよ!」
貴音「面妖な」
伊織「あ、あら? ここは喜ばないの?」
貴音「面妖な」
8: 2013/03/11(月) 03:22:09.41 ID:e9DypJzW0
伊織「まず一品目ね、畑の肉と海の幸を手間暇かけて凝縮した透き通るスープよ」
貴音「お吸物ですか」
伊織「海の幸を手間暇かけて凝縮した透き通るスープ」
貴音「確かに昆布を干すも鰹を節にするも大豆を醤にするも時間はかかりますが」
伊織「何よ」
貴音「なんでもありません、頂きます」
伊織「ど、どう?」
貴音「美味ですね、即席の味がいたします」
伊織「……」
貴音「美味ですよ?」
伊織「そう……」
貴音「お吸物ですか」
伊織「海の幸を手間暇かけて凝縮した透き通るスープ」
貴音「確かに昆布を干すも鰹を節にするも大豆を醤にするも時間はかかりますが」
伊織「何よ」
貴音「なんでもありません、頂きます」
伊織「ど、どう?」
貴音「美味ですね、即席の味がいたします」
伊織「……」
貴音「美味ですよ?」
伊織「そう……」
9: 2013/03/11(月) 03:31:01.69 ID:e9DypJzW0
伊織「二品目、太陽に照らされて育った野菜たちの生まれたままの運動会」
貴音「野菜すてぃっくというものですね。大根、人参、それにこちらは胡瓜」
伊織「命の神秘と菜種のエキス、生命の水久遠の果ての特製ソースで召し上がれ♪」
貴音「まよねぇずですか、ふむ……」
伊織「どうかしら」
貴音「大変美味です、生野菜を活かしましたね」
伊織「にひひ、当然よ」
貴音「ところで太陽に照らされず育つ野菜はあまり聞き及びませんね。運動会というのも何の比喩でしょうか?」
伊織「……」
貴音「野菜すてぃっくというものですね。大根、人参、それにこちらは胡瓜」
伊織「命の神秘と菜種のエキス、生命の水久遠の果ての特製ソースで召し上がれ♪」
貴音「まよねぇずですか、ふむ……」
伊織「どうかしら」
貴音「大変美味です、生野菜を活かしましたね」
伊織「にひひ、当然よ」
貴音「ところで太陽に照らされず育つ野菜はあまり聞き及びませんね。運動会というのも何の比喩でしょうか?」
伊織「……」
11: 2013/03/11(月) 03:39:20.57 ID:e9DypJzW0
伊織「三品目! せせらぎに生まれ大海を見聞きし故郷に錦を飾る魚のソテー!」
貴音「和、洋と来て焼き鮭でまた和に戻りましたね。いただきます」
伊織「美味しいでしょう!」
貴音「ええ、良い塩加減です。表面のお焦げの歯応えと皮のぱりぱりとした食感が口を飽きさせません」
伊織「ちょ、ちょっと焦げただけよ」
貴音「恥じることはありませんよ、これもまた美味です」
伊織「……」
貴音「和、洋と来て焼き鮭でまた和に戻りましたね。いただきます」
伊織「美味しいでしょう!」
貴音「ええ、良い塩加減です。表面のお焦げの歯応えと皮のぱりぱりとした食感が口を飽きさせません」
伊織「ちょ、ちょっと焦げただけよ」
貴音「恥じることはありませんよ、これもまた美味です」
伊織「……」
12: 2013/03/11(月) 03:44:32.38 ID:e9DypJzW0
伊織「四品目、牛の細切れステーキ」
貴音「単純、故に力強い塩胡椒の味付けですね。肉と脂の焼けた匂いがたまりません」
伊織「食べたければ食べればいいじゃない」
貴音「美味ですよ、水瀬伊織」
伊織「ふんっ」
貴音「ええ、とても美味です」
伊織「……」
貴音「単純、故に力強い塩胡椒の味付けですね。肉と脂の焼けた匂いがたまりません」
伊織「食べたければ食べればいいじゃない」
貴音「美味ですよ、水瀬伊織」
伊織「ふんっ」
貴音「ええ、とても美味です」
伊織「……」
14: 2013/03/11(月) 03:51:25.05 ID:e9DypJzW0
伊織「五品目、ハーゲンダッツのバニラ……」
貴音「こってりとした食事の後にぴったりですね、良い構成です」
伊織「貴音」
貴音「美味しいものを食べられてわたくしは幸せです」
伊織「……文句ぐらい、言いなさいよ」
貴音「はて」
伊織「楽しみにしてたんでしょ。美味しい料理をいっぱい食べられるって思ってたんでしょ」
貴音「はい、そう思っておりました」
伊織「なら、怒りなさいよ! インスタントのお吸物飲まされて、料理なんて呼べない野菜スティック囓らされて!」
貴音「……」
伊織「塩鮭に牛の切り落とし! それも火を通しただけ! 美味しいわけ、ないじゃない……!」
貴音「こってりとした食事の後にぴったりですね、良い構成です」
伊織「貴音」
貴音「美味しいものを食べられてわたくしは幸せです」
伊織「……文句ぐらい、言いなさいよ」
貴音「はて」
伊織「楽しみにしてたんでしょ。美味しい料理をいっぱい食べられるって思ってたんでしょ」
貴音「はい、そう思っておりました」
伊織「なら、怒りなさいよ! インスタントのお吸物飲まされて、料理なんて呼べない野菜スティック囓らされて!」
貴音「……」
伊織「塩鮭に牛の切り落とし! それも火を通しただけ! 美味しいわけ、ないじゃない……!」
21: 2013/03/11(月) 04:02:27.38 ID:e9DypJzW0
貴音「水瀬伊織、料理は心です」
伊織「屁理屈こねたって不味いものは不味いわよ!」
貴音「ええ、料理自体は美味とは言えませんでした。しかし、わたくしの為にと心を尽くしてくれたことが何より嬉しく、美味なのです」
伊織「っ、わけわかんない」
貴音「美味とは、美しき味と書きます。大切な友がわたくしの為にと作ってくれた味、これが美しくなければ世に美しきものなどありません」
伊織「……」
貴音「その手の傷を見るに、使い慣れない包丁で野菜の皮を剥いたのでしょう。跳ねた油で痛い思いもしましたね?」
伊織「……ん」
貴音「誰かの為に痛みを我慢出来るのは、まこと、美しいものです」
伊織「何よ、それ」
貴音「わたくしの持論、とでも言いましょうか。御役目を妹に押し付けた後悔なのかも知れません」
伊織「……?」
伊織「屁理屈こねたって不味いものは不味いわよ!」
貴音「ええ、料理自体は美味とは言えませんでした。しかし、わたくしの為にと心を尽くしてくれたことが何より嬉しく、美味なのです」
伊織「っ、わけわかんない」
貴音「美味とは、美しき味と書きます。大切な友がわたくしの為にと作ってくれた味、これが美しくなければ世に美しきものなどありません」
伊織「……」
貴音「その手の傷を見るに、使い慣れない包丁で野菜の皮を剥いたのでしょう。跳ねた油で痛い思いもしましたね?」
伊織「……ん」
貴音「誰かの為に痛みを我慢出来るのは、まこと、美しいものです」
伊織「何よ、それ」
貴音「わたくしの持論、とでも言いましょうか。御役目を妹に押し付けた後悔なのかも知れません」
伊織「……?」
23: 2013/03/11(月) 04:16:59.82 ID:e9DypJzW0
伊織「あの『食通の四条貴音』が夕食を食べに来るって聞いて、今朝の内にみんな修行に出ちゃったわ。新しい人を雇う間もなかったし」
貴音「それで伊織自ら?」
伊織「仕方ないじゃない。お客様を呼んでおいてやっぱりご飯はありません、なんて言えないもの」
貴音「なるほど、背負うもの故ですか」
伊織「嫌がっても私は水瀬だしね、最近は別に嫌でもないけど……それで急いで調べてやってみたけど、結果はあのザマよ」
貴音「美味でしたよ?」
伊織「それは分かったわよ。で、なんとかフルコースの形だけでもって考えたらスープとデザートは出来合いのになっちゃったし……はぁ」
貴音「落ち込むことなどありませんよ、これから練習して作れるようになればいいだけのこと。わたくしはいつでも待っていますよ」
伊織「……え、あんたまた来る気なの?」
貴音「なんと、もう呼んではいただけませんか」
伊織「いや、別にそれはいいんだけど。今の言い方だと、また私の料理を食べたいみたいな」
貴音「食べたいです、伊織ちゃん特製ふるこぉす」
伊織「……」
貴音「食べたいです、食べたい」
伊織「なんなのよ、あんたはもうっ」
貴音「それで伊織自ら?」
伊織「仕方ないじゃない。お客様を呼んでおいてやっぱりご飯はありません、なんて言えないもの」
貴音「なるほど、背負うもの故ですか」
伊織「嫌がっても私は水瀬だしね、最近は別に嫌でもないけど……それで急いで調べてやってみたけど、結果はあのザマよ」
貴音「美味でしたよ?」
伊織「それは分かったわよ。で、なんとかフルコースの形だけでもって考えたらスープとデザートは出来合いのになっちゃったし……はぁ」
貴音「落ち込むことなどありませんよ、これから練習して作れるようになればいいだけのこと。わたくしはいつでも待っていますよ」
伊織「……え、あんたまた来る気なの?」
貴音「なんと、もう呼んではいただけませんか」
伊織「いや、別にそれはいいんだけど。今の言い方だと、また私の料理を食べたいみたいな」
貴音「食べたいです、伊織ちゃん特製ふるこぉす」
伊織「……」
貴音「食べたいです、食べたい」
伊織「なんなのよ、あんたはもうっ」
27: 2013/03/11(月) 04:28:51.09 ID:e9DypJzW0
伊織「はい、紅茶。これ飲んだら帰りなさいよ? そろそろ夜も遅いし」
貴音「おや、泊めてくれるのではないのですか?」
伊織「もう好きにして……」
貴音「ん……とても良い香りですね、これはあなたが?」
伊織「え? ええ、まぁ料理よりは慣れてるつもりよ。レディの嗜みとして少し前からメイドに習ってるの」
貴音「ふふ、水瀬伊織。あなたの料理の腕はあっという間に上達しますよ、わたくしが保証します」
伊織「何を根拠に……はぁ、聞かないわ。あんたがそう言うならそうなんでしょうね」
貴音「楽しみにしていますよ、伊織ちゃん特製ふるこぉす」
伊織「っ、恥ずかしいから何度も言わないでよ!」
伊織がお抱えのシェフたちに料理を習い、貴音を唸らせる程の腕前になるのはまだ、もう少しだけ先のお話……。
おわり
貴音「おや、泊めてくれるのではないのですか?」
伊織「もう好きにして……」
貴音「ん……とても良い香りですね、これはあなたが?」
伊織「え? ええ、まぁ料理よりは慣れてるつもりよ。レディの嗜みとして少し前からメイドに習ってるの」
貴音「ふふ、水瀬伊織。あなたの料理の腕はあっという間に上達しますよ、わたくしが保証します」
伊織「何を根拠に……はぁ、聞かないわ。あんたがそう言うならそうなんでしょうね」
貴音「楽しみにしていますよ、伊織ちゃん特製ふるこぉす」
伊織「っ、恥ずかしいから何度も言わないでよ!」
伊織がお抱えのシェフたちに料理を習い、貴音を唸らせる程の腕前になるのはまだ、もう少しだけ先のお話……。
おわり
28: 2013/03/11(月) 04:30:26.70 ID:yqICat8T0
乙乙
よかった
よかった
29: 2013/03/11(月) 04:30:51.86 ID:2g2nrj3m0
こういうの増えるといいな
乙
乙
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