1: 2010/07/07(水) 19:31:03.03 ID:iAulYO2A0
律『ばいばい。澪』

澪『おい!なんでそんなこと言うんだよ!律!』

律『もう行かなくちゃいけないんだ』

澪『なんでだよ!いつまでも一緒にいようって言ったじゃないか!』

律『ごめんな…じゃあな』

澪『おい!律!待ってくれ…!私を一人にしないでくれ…!』

2: 2010/07/07(水) 19:32:02.11 ID:iAulYO2A0
澪「律っ!?」ガバッ

澪「…夢…か…よかった…」

唯「やだなぁみおちゃん!」

澪「!?」

3: 2010/07/07(水) 19:32:43.89 ID:iAulYO2A0
唯「…スイカ…イチゴ…」スースー

澪「寝言、か…」


紬「焼きそば…ゲル状…」スースー

梓「ペロ…ペロ…」スースー

澪「みんな日中目一杯遊んでたからな…」


澪「あれ…律、は…?」

澪「…まさか、夢じゃなかった…?」

澪「律…」

4: 2010/07/07(水) 19:34:07.19 ID:iAulYO2A0
律「…」スースー

澪「律…おい律!」

律「おわあっ!」ガバッ

澪「何やってるんだよ!心配したんだぞ!」

律「…良かった…夢か…」

澪「なんでこんなところにいるんだよ…探しまわったじゃないか…」

5: 2010/07/07(水) 19:34:55.84 ID:iAulYO2A0
律「…いや、そもそも今日の目的は天体観測だろ?」

律「みんな遊び疲れてたからさ。起こすのも悪いかと思ってな」

澪「そ、そうだよな…いきなり怒鳴ってごめん…」

律「いいって。心配掛けてごめんな」

澪「いつ頃からここにいるんだ…?」

律「うーんと、まだ30分くらいかな。澪もここ寝そべってみなよ」

澪「ああ。そうするよ」ゴロン

6: 2010/07/07(水) 19:35:39.31 ID:iAulYO2A0
  +     ゚  . +            . . .゚ .゚。゚ 。 ,゚.。゚. ゚.。 .。
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7: 2010/07/07(水) 19:36:22.64 ID:iAulYO2A0
澪「…すごい星…天の川こんなにハッキリ見たのは初めてだ…」

律「西洋ではさ、あれは女神の流した母乳だって言われてるんだって」

澪「へえ…だからミルキーウェイっていうのか」

律「うまく考えたもんだよな」

澪「…なんだかいい詞が浮かんできそう…」

8: 2010/07/07(水) 19:37:06.64 ID:iAulYO2A0
澪「こんなに素敵なものが見られるなんてな」

律「本当にムギには感謝しないとな」

澪「ああ。急に『七夕天体観測したい!』ってなったのに、すぐ別荘を手配して送迎までしてくれたんだから…」

律「いっつもなにからなにまで悪いよなぁ…」

律「そういえば、唯とムギと梓は?」

澪「あいつらは日中しゃぎ過ぎだったからな…まだ起きてくる気配はなかったよ」

律「じゃあそれまでこの星空は二人占めってわけね」

澪「そういうこと」

9: 2010/07/07(水) 19:37:49.42 ID:iAulYO2A0
澪「今日は織姫も彦星も良く見えるな」

律「あ、最近知ったんだけどさ」

澪「うん」

律「織姫と彦星って『恋人』じゃなくて『夫婦』らしいぜ?」

澪「…もう結婚してるのか」

律「らしいよ…なんか結婚してるって知ると色々見方が変わってくるよなぁ」

10: 2010/07/07(水) 19:38:42.67 ID:iAulYO2A0
澪「そうか?確かにちょっとびっくりしたけど」

律「いや、一年に一回しか会わないから夫婦として上手くいってるのかな、とかって」

澪「ああ。なるほど…まあ別居してるようなもんだからな」

律「なんだか急に身近な話になった気がするよな」

澪「はは、そうだな。でもあの二人の間には愛はあると思うよ。きっと」

律「なんでそんなこと言い切れるんだよ?」

澪「…あの二人は私達が生まれるはるか昔から夫婦なんだぞ?」

律「だから?」

澪「だからつまり…そういうことだよ」

律「…そういうことねぇ」

澪「そう。そういうこと」

11: 2010/07/07(水) 19:39:34.11 ID:iAulYO2A0
律「…今日は三日月なんだな」

澪「月見もいいけど、月光で星が見えなくなっちゃうから丁度よかったな」

律「そうだな。月の観賞会はまた十五夜にでもやろうよ」

澪「いいな、それ」

12: 2010/07/07(水) 19:42:44.23 ID:iAulYO2A0
律「…子供の頃さ」

澪「うん」

律「夜歩いてると、月が後ろから着いてきてる!って思わなかったか?」

澪「あったあった。走ったりフェイントで曲がってみたりしてもついてきて来るようにみえるんだよな」

律「わたしそのうち怖くなってきちゃってさ、満月の夜はなんとなく不安だったなぁ」

澪「…私は逆に安心したな。月に見守られてる気がしたよ」

律「そうなの?」

澪「うん。なんていうかさ…月の光はお母さんみたいに優しくて、淡くて…すごい安心できたんだよ」

13: 2010/07/07(水) 19:43:26.37 ID:iAulYO2A0
律「なるほどねぇ…あ、満月の時、月の模様は何に見えてた?」

澪「?ウサギしかないだろ」

律「あたしは蟹だった」

澪「…どう見たらそうなるんだ?」

律「ウサギの耳の部分を蟹のハサミと見るんだ」

澪「それ、律だけじゃなくてか?」

律「違うよ!他にもロバとか本を読む男とか、他にも見方があるんだぜ?」

14: 2010/07/07(水) 19:44:21.86 ID:iAulYO2A0
澪「へぇ…昔の人は色々考えたんだな」

律「まぁ結局月にウサギはいなかったけどな」

澪「…宇宙にウサギはいなくても、どっかに宇宙人はいるよ。きっと」

律「そうかねぇ?」

15: 2010/07/07(水) 19:45:04.99 ID:iAulYO2A0
澪「宇宙は凄いんだぞ?何千億と星があるんだから、きっといるさ」

律「うーん…」

澪「何か不満なのか?」

律「そういうわけじゃないけどさ。地球にいると、いまいち凄さがわかんないけどな」

澪「ふむ…あそこにさ、赤い星が見えるだろ?」

律「ああ、結構明るいな。あれは何て言う星?もしかして火星?」

澪「いや、アンタレスだよ。さそり座の代表的な星だ」

律「へー。あれが…」

澪「あの星は明るいし大きいけど、月よりは小さく見えるだろ?」

律「まあそうだな」

澪「そうなんだ。ましてや太陽とは比べるまでもない大きさだ」

律「うん」

16: 2010/07/07(水) 19:45:50.63 ID:iAulYO2A0
澪「でもな、アンタレスの本当の大きさは太陽の230倍の大きさなんだそうだ」

律「そんなにデカイのか!?」

澪「ああ。そして本来の明るさは太陽の1万倍なんだって」

律「1万倍の明るさとかもう訳が分からないスケールだな…ここからはあんなに小さく見えるのに…」

澪「地球とアンタレスは600光年離れてるからな…今見える赤い光も、600年前のものだ」

律「600年前っていうと…えーっと、日本は室町時代あたりかな」

澪「ああ。そして、アンタレスが今発した光が地球に届くのは2610年だ」

律「壮大すぎるな」

17: 2010/07/07(水) 19:46:32.12 ID:iAulYO2A0
澪「…もしかしたらアンタレスという星はもう消えてしまったのかもしれない」

澪「光だけが…今も一人宇宙を旅しているのかもしれないんだ。もう元の星はないのに…」

律「…不思議な気分になってくるな」

澪「自分がちっぽけな存在に思えてくるよ…」

律「…」

18: 2010/07/07(水) 19:47:21.57 ID:iAulYO2A0
澪「…律はさ」

律「うん」

澪「人が氏んだらどうなると思う?」

律「…どうしたんだよいきなり」

澪「いや。なんとなく気になってな」

律「うーん。やっぱり天国とか地獄に行くんじゃないか?」

澪「そうか…実はさ」

律「うん」

澪「律が遠くへ行ってしまう夢を見たんだ」

19: 2010/07/07(水) 19:48:03.71 ID:iAulYO2A0
律「…」

澪「今見てるような星空の中へと律が消えていく…そんな夢だったんだ」

律「!」

澪「子供の頃さ、パパ…お父さんに、氏んだ人は星になるって教えられたんだ。だからそんな夢を見たのかもしれない」

律「…おいおい、勝手に殺さないでくれよ」

澪「ごめん…ただ起きたら律がいなかったからさ…本気で焦ったよ」

律「それであんなに慌てていたんだな…こっちこそ心配掛けてごめんな」

澪「いいって。律が無事でよかった」

20: 2010/07/07(水) 19:48:45.93 ID:iAulYO2A0
律「…あのな」

澪「うん?」

律「さっき澪が私のことを呼んだ時にさ、少し夢を見ていたんだ」

澪「…それってもしかして」

律「ああ。澪と離れ離れになる夢。私が泣き叫ぶ澪を置いて空に昇っていく夢さ…こんなことってあるんだな」

澪「…何かの予兆かな?」

律「なーに言ってんだよ!そんな夢を見たからって私が氏ぬと思ってるのか?」

澪「いや、そんなこと思いたくないけど…」

律「だったらこの田井中律様を信じなさい!絶対大丈夫だから」

澪「そうだな…たかが夢程度でビビってちゃいけないよな…」

律「おうともよ」

21: 2010/07/07(水) 19:49:34.50 ID:iAulYO2A0
澪「…でも、もし」

律「どうした?」

澪「もし…本当に律が氏んでしまったら…」

律「だから氏なないって」

澪「最後まで聞いてくれ…律が本当に氏んでしまった時は…」

澪「私の事を…見守っていてくれるか?」


律「…なにかと思えばそんなことか」

澪「そ、そんなことって言い方ないだろ!…こっちは真剣なんだよ…」

律「そういわれてもなぁ…」

澪「将来のこと…軽音部のみんなとのこと…それを考えると凄く…不安になるんだ…」

律「…あのな、澪?それはそもそも前提が間違ってると思うぞ」

22: 2010/07/07(水) 19:50:17.42 ID:iAulYO2A0
澪「え?」

律「だって氏んだら「見守る事」しか出来ないじゃないか」

律「私はいつでも澪のことを思っているし、力になりたい、辛い時には支えてあげたいと思っている」

澪「律…」

律「それは澪だけじゃない。私は唯もムギも、梓の事も同じように大切に思ってる」

23: 2010/07/07(水) 19:51:05.24 ID:iAulYO2A0
律「氏んでからなんてまどろっこしいこと私は考えてないぞ。いつでも現世でみんなの力になるつもりだ」

澪「…ありがとう」

律「いいって。氏んだ時のことなんて、氏んだ時考えればいいんだよ」

澪「そうか…そうかもな…ごめんな?へんなこと言って」

律「気にするなって。それに、澪のことを大切に思っているのは私だけじゃないぞ」

澪「え?」



唯「お~い!」



律「お、噂をすれば…」

25: 2010/07/07(水) 19:51:51.11 ID:iAulYO2A0
唯「澪ちゃーん、りっちゃーん」

梓「先輩、そろそろ離れてくれませんか…?」

唯「え~。もうちょっとだけ二人羽織ごっこしようよ~」

梓「歩きにくいんですよぉ…」

紬「風が気持ちいい~」

澪「みんな…」

律「よ。やっと起きたのか」

唯「もう、酷いよりっちゃん。起こしてくれたってよかったのに」

律「はは、ごめんごめん。みんな気持ちよさそうに寝てたからさ」

26: 2010/07/07(水) 19:52:38.69 ID:iAulYO2A0
梓「どのぐらいここにいるんですか?」

澪「…もうかれこれ1時間くらいかな」

紬「あら、体冷えてない?」

澪「そういえば少し…風にあたりすぎたかな」

律「へっくし」

唯「あ、じゃあこのタオルケットつかうといいよ」バサッ

梓「やっと解放された…」

律「へへ、悪いね。ほら、澪も入んなよ」

澪「ああすまん。そうさせてもらうよ…みんなも寝転がりなよ。星がよく見えるぞ」

紬「ええ、そうさせてもらうわ♪」

27: 2010/07/07(水) 19:53:29.41 ID:iAulYO2A0
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唯「ふわあ~!すごいねぇ!」

梓「神秘的です…」

紬「織姫と彦星も良く見えるわね!」

28: 2010/07/07(水) 19:54:11.17 ID:iAulYO2A0
梓「今夜は二人にとって絶好のデート日和ですね」

唯「ねえあずにゃん、織姫と彦星ってどれ?」

梓「ええっと、あそこの青白いのがアルタイルです」

紬「で、天の川を挟んで白く輝いてるのが織姫よ」

唯「結構近いんだね!」

澪「…」

29: 2010/07/07(水) 19:54:55.17 ID:iAulYO2A0
梓「織姫の白い光は「純白」の定義にされてるんですって」

唯「ほぇ~。あ、じゃあウエディングドレスが純白なのは織姫さんを見習ってるのかな?」

梓「うーん、多分違うんじゃないですか…?」

紬「ウエディングドレス、唯ちゃんに似合いそうね」

唯「ほんと?一回でいいからきて見たいなぁ…」

梓「二度も三度も着るものじゃあないですよ」

紬「結婚式には呼んでね♪」

唯「もっちろん!」

澪「…結婚か…」

30: 2010/07/07(水) 19:55:49.48 ID:iAulYO2A0
律「あ、ゆいー、知ってるか?織姫と彦星って夫婦なんだぜ?」

唯「ええ!?恋人じゃなかったの?」

律「どうやら違ったらしい…私達は騙されていたんだよ!」

唯「な、なんだってー!?」

紬「なんだって~」

梓「誰が騙したんですか…でも、その差は小さいようで大きいですね…」

律「だろ?だからさっき澪とさ、あの二人に愛はあるのか?って話をしてたんだよ」

31: 2010/07/07(水) 19:56:45.11 ID:iAulYO2A0
紬「はーい!私は愛し合ってると思いまーす!」

唯「私もそう思う!」

梓「そうですかね?やっぱり惰性とか、そういうものもあるんじゃないですか?」

澪「なんて冷めた事をいう後輩なんだ…」

紬「ジェネレーションギャップね!」

律「これが年齢の差か…」

梓「一年違うだけじゃないですか。まあ、そういう考えもあるってことですよ!」

澪「…」

32: 2010/07/07(水) 19:58:23.56 ID:iAulYO2A0
唯「あ。ねえ、流れ星ってどこ?」

澪「どこかに定まってるものじゃないぞ…流れる星なんだから」

唯「あ、そういえばそうだよねぇ…じゃあ頑張って見つけようっと」

梓「そうそう見つかるものでもないですよ?」

唯「でも頑張ります!」

紬「何かお願い事するの?」

唯「うん!でもまだ内緒!」

律「はは…がんばれよ」

33: 2010/07/07(水) 19:59:08.67 ID:iAulYO2A0
律「…それにしても、思えば色々あったなぁ…軽音部」

澪「いきなりどうしたんだ?」

律「星を見てたらさ、なんかちょっとセンチメンタルっていうの?色々振り返りたくなったんだよ」

澪「そうだな…」

梓「律先輩も感傷に浸ることがあるんですね」

律「はは、まあな。だってもう私達三年生だぜ?」

紬「本当にあっという間だったわね」

35: 2010/07/07(水) 19:59:51.34 ID:iAulYO2A0
律「一から部活立ち上げてさ…よくここまで来たもんだ」

澪「ふふ…まあ一時はどうなる事かと思ったけどな」

律「ムギも唯も梓も。よく入ってくれたよ」

唯「うん…」

紬「いえいえ。こちらこそ誘ってくれてありがとうね」

梓「私も、軽音部に入って良かったと思います…」

律「二人ともありがとうな」

澪「本当に色んなことがあったな…ギー太の為にバイトしたり」

36: 2010/07/07(水) 20:00:50.30 ID:iAulYO2A0
律「やったやった…海で合宿したり…」

澪「毎回のティータイムといい今回の事といい、ムギにはお世話になりっぱなしだな…」

紬「気にしないでね。私もすっごく楽しんでるから」

梓「学園祭では唯先輩がギー太を忘れたり…」

律「その前の学祭では澪がパンツ見せたり」

澪「お、おい!それはもういいだろ!」

律「いや、あれも含めて軽音部の活動だからな」キリッ

澪「は、恥ずかしいからその思い出は忘れてくれ…」カアア

紬「あらあら」

37: 2010/07/07(水) 20:01:44.58 ID:iAulYO2A0
律「本当に色々あって今ここにいるんだなぁ…なぁ澪?」

澪「…今度は何?」

律「身構えるなよ…軽音部がここまで来れたのも、最初に澪が私のわがままを聞いてくれたおかげだと思ってる…」

澪「律…」

律「私のわがままを聞いてくれてありがとうな」

澪「…いいって。私も軽音部が大好きだ。こちらこそ、最初に軽音部に誘ってくれてありがとう」

律「ムギも唯も梓も、軽音部の大切な仲間たちだ。これからもよろしくな」

紬「こちらこそよろしく♪」

梓「よろしくお願いします!」

唯「うん…」

38: 2010/07/07(水) 20:02:44.68 ID:iAulYO2A0
梓「といっても私は後一年あるんですけど…」

律「そうだよなぁ…来年こそは新入部員見つけないとな」

澪「後輩がトンちゃんだけっていうのは哀しすぎるからな…」

梓「あ、でも。もし来年新入部員が入らなかったら、純が軽音部に入ってくれるっていってました」

律「おー、ジャズ研のあの子か…よかったじゃないか」

澪「それ本当か?」

梓「嘘をつく子じゃないと思いますけど…」

39: 2010/07/07(水) 20:03:33.02 ID:iAulYO2A0
紬「じゃあなんにせよ来年梓ちゃんは一人じゃないのね」

律「ああ。心配してたんだぜ。一人寂しく活動するハメになるんじゃないかーって」

梓「なんかすいません…」

律「気にすんなって。後輩の問題は私達の問題だから」

紬「それに、いざとなったら大学でまたHTTを結成すればいいんじゃないかって話もしてたの」

梓「そうなんですか」

律「おう!ずっとみんなでバンドやってきたいからな!」

澪「…ほんとうに出来るのかな」

40: 2010/07/07(水) 20:04:22.73 ID:iAulYO2A0
律「澪?」

梓「どういうことですか?」

澪「ああ、いやごめん…こうやって、星を見ているとさ」

律「うん?」

澪「すごく寂しくなってくるんだ」

律「そうなのか?」

梓「なんとなく分かります…」

42: 2010/07/07(水) 20:05:05.63 ID:iAulYO2A0
澪「…宇宙はさ、空気もなくて真っ暗で」

律「うん」

澪「星と星の間も、気が遠くなるくらい離れてる」

律「…うん」

澪「孤独な数千億の星達は、何を考えてるんだろうな。暑がったり、寒がったり、寂しくなったりしないのかな…」

紬「澪ちゃん…」

澪「それに、星座っていうのも、実際は孤独なものなんだ」

梓「…」

43: 2010/07/07(水) 20:05:50.94 ID:iAulYO2A0
澪「星座を作っている星達も。本当は何の関係もないんだ」

澪「ただ、この地球からから見て近くにあるように見えたというだけなんだ」

澪「孤独な光を人間が地球で受け取って、勝手に星座を創り出した」

澪「織姫と彦星だって、本当は何光年も離れてる。見かけはあんなに近いのに…」

唯「…」

澪「…私達だって、この星達と同じようなものなのかもしれない」

44: 2010/07/07(水) 20:06:46.14 ID:iAulYO2A0
律「え?」

澪「今はこうしてみんなで軽音部をやっているけれど…」

澪「これから受験して、大学に行って、就職して、結婚して…みんなの距離はどんどん離れて行ってしまうかもしれない…」

澪「…いつか私達も何も関係なくなってしまうんじゃないかって、思うんだ」

澪「星が発した光が宇宙の一点で交わって…それきりなんの関係もなく通り過ぎてしまうように」

澪「いつか…軽音部のみんなのことを忘れてしまう日が来るのかもしれない…」

澪「そうはなりたくない…でも」

澪「でも、ちっぽけな私に出来ることなんて何もないんじゃないかと…この星達をみて思うんだ」

45: 2010/07/07(水) 20:07:29.63 ID:iAulYO2A0
律「澪…」

梓「先輩…」

澪「みんな…私、みんなとずっといっしょに…いたい」ポロポロ

46: 2010/07/07(水) 20:09:08.14 ID:iAulYO2A0
紬「…大丈夫よ、澪ちゃん」ナデナデ

澪「…」

紬「軽音部のこのメンバーが集まったのは偶然かもしれないけれど」

紬「私達のこれからは、私達が自分で作っていけるわ」

澪「ムギ…」

紬「覚えてる?私最初合唱部に入ろうと思ってたの」

紬「でも澪ちゃんとりっちゃんの二人をみて、とっても楽しそうだから軽音部に入ったのよ」

紬「軽音部での活動はとっても楽しくて、毎日が新鮮だった。これからもそんなみんなと楽しくバンドをやっていきたい…」

紬「…私達は確かに、星に比べたら小さな存在かもしれないけれど」

紬「だからこそ…お互いに影響を与えあい、助け合って…一緒にいることが出来るわ」

47: 2010/07/07(水) 20:09:52.05 ID:iAulYO2A0
梓「ムギ先輩の言うとおりです」

澪「梓…」

梓「私達は星とは違います。自分の生き方を、自分で決められるんです」

梓「私だって軽音部のみんなと離れたくありませんよ…」

48: 2010/07/07(水) 20:10:33.65 ID:iAulYO2A0
律「二人の言うとおりだ。離れ離れになんかなるもんか」

澪「…そうかな」

律「そうともさ。ムギも梓も、軽音部が大好きなんだ」

律「それに、この前唯もいってたじゃないか。ずっとバンドやろうって」

律「なあ、唯?」


唯「…」


律「…唯?」

49: 2010/07/07(水) 20:11:15.80 ID:iAulYO2A0
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50: 2010/07/07(水) 20:12:08.54 ID:iAulYO2A0
唯「よっしゃ!」

梓「にゃっ!?」

律「!?いきなりどうした?」

唯「今流れ星が通ったんだよ!」

梓「本当ですか?」

紬「どこどこ?」

唯「もう通り過ぎちゃったよー」

紬「あら残念。お願い事したかったのに…」

唯「へへーん。私はできたもんね」フンス

51: 2010/07/07(水) 20:12:56.99 ID:iAulYO2A0
澪「何をお願いしたんだ?」

律「あ…ひょっとして『軽音部のみんなが一緒にいられるように』…とか?」

唯「え?全然違うよ?」

52: 2010/07/07(水) 20:14:05.63 ID:iAulYO2A0
唯「私の願いはね!『アイスをお腹いっぱい食べられますように』だよ!」

梓「え…」

律「ちょ…」

紬「あらあら」

澪「 」

53: 2010/07/07(水) 20:15:00.62 ID:iAulYO2A0
唯「…あれ、みんなどうしたの?」

梓「先輩…少し空気を読んでください…」

唯「へっ?なんの空気?」

律「唯、お前今までの話聞いてなかったのかよ…」

紬「そういえば途中から空返事だったような…」

唯「でへへ…流れ星を探すのに集中してたもんで…すいやせん」

梓「しっかりしてください…」

54: 2010/07/07(水) 20:15:50.88 ID:iAulYO2A0
澪「…」

律「澪、大丈夫か?」

澪「ああ…なんとか」

唯「何の話をしていたの?」

紬「…澪ちゃんがね、軽音部のみんなはこれからどうなるんだろうっていう話をしていたの」

律「そうそう…大学に行ったり結婚したりして、みんな離れ離れになるんじゃないか、ってな」

澪「…星を見ていたら…寂しくなってきちゃってな」

55: 2010/07/07(水) 20:16:48.49 ID:iAulYO2A0
唯「…えっとさ。澪ちゃんはさ、みんなといつまでもバンドやっていたいんだよね?」

澪「ああ。当たり前だ」

唯「みんなもそう思う?」

律「おうとも」

紬「もちろん♪」

梓「ずっとこのメンバーといっしょでいたいです!」

56: 2010/07/07(水) 20:17:35.82 ID:iAulYO2A0
唯「そうだよね…じゃあきっと大丈夫だよ」

唯「みんながそう願うなら…流れ星におねがいしなくても、私達はいつまでも一緒にいられるよ」

唯「だって私達は、軽音部だもん。私達なら大丈夫だよ」

57: 2010/07/07(水) 20:18:48.01 ID:iAulYO2A0
梓「その自信はどこから来るんですか…」

唯「だって私達だもん!」

澪「…ふふ。そんなに自信満々に言い切られると、そうかもって気がしてくるから不思議だよ」

律「だな。なんかこう、上手く言えないけど…安心できるんだよな」

唯「だって私達ここまでやってこれたじゃん。これからもきっと大丈夫だよ!」

58: 2010/07/07(水) 20:19:44.35 ID:iAulYO2A0
澪「…なんだか吹っ切れたよ…みんなごめんな?暗い話しちゃって」

紬「いーえいえ♪」

梓「悩んでる時はお互い様です」

澪「本当にありがとう。みんなも困った時は言ってくれよ」

澪「私も…みんなと同じくらいみんなのことが好きだから」

59: 2010/07/07(水) 20:21:25.93 ID:iAulYO2A0
律「きゃー♪澪に告白されちゃったー♪」

澪「なっ…!?いや、軽音部のみんなが好きって意味だ!」

唯「りっちゃんおめでとう!」

梓「お似合いですよ」

紬「結婚式には呼んでね♪」

澪「みんなもノるなぁっ…!」

60: 2010/07/07(水) 20:22:17.38 ID:iAulYO2A0
梓「それにしても…さっき唯先輩が自分の願いを言った時、ちょっと時間が止まりまりたよね」

律「ああ…澪が能面みたいに無表情になったからな…」

澪「ちょっと恥ずかしいんだけど…正直、悩んでいる自分に酔ってた部分が少しあったんだ…それが一辺に冷めた」

律「ははは…ですよね~」

紬「まあまあ、それも含めて唯ちゃんらしいじゃない?」

62: 2010/07/07(水) 20:24:27.75 ID:iAulYO2A0
唯「えー?だってアイス食べたいじゃん!」

律「食欲の権化だな」

唯「…それにね、ほら。さっきりっちゃんが言ってた願い事があったでしょ?」

律「えーっと、『軽音部のみんなが一緒にいられるように』か?」

唯「そう!そういうお願いは自分たちで叶えるものだと思うし、私達なら叶えられると思ったんだ。だからお願いしなかったの」

律「…唯ってさ、たまに本当にスゲーと思う時ってあるよな」

梓「私もそう思います…」

唯「え?なんで?」

紬「あらあらうふふ」

64: 2010/07/07(水) 20:26:00.73 ID:iAulYO2A0
梓「もう夜が白んできましたね」

律「夏の夜は短いよなぁ」

澪「星が消えていくな…」

唯「織姫と彦星、また来年も会えるといいね!」

澪「…そうだな!」

65: 2010/07/07(水) 20:27:00.04 ID:iAulYO2A0
律「さーて、そろそろ帰りますか」パンパン

梓「睡眠時間がズレまくっちゃいましたね…」

澪「ここで寝ると生活リズムを立て直すのが難しそうだな」

唯「お腹空いたよぉ…憂のご飯が食べたいよぉ…」

紬「じゃあちょっと斎藤を呼んでくるわね」

唯澪律梓「よろしくお願いします」

66: 2010/07/07(水) 20:27:48.82 ID:iAulYO2A0
律「あ、そうだ…唯」

唯「なになに?」

律「帰ったらアイス奢ってやるよ」

澪「あ、私も」

梓「右に同じく」

唯「ええっ!?なんで!?」

律「いやまあなんというかな、唯がいてよかったなーって思って」

梓「そうですね。流石唯先輩というかなんというか…」

澪「ああ。私からも感謝の気持ちを込めてな」

唯「え~?私そんなにありがたられることしてないよ?」

律「いいからいいから。気にするなって」

67: 2010/07/07(水) 20:28:41.00 ID:iAulYO2A0
紬「電話してきたわ。もう少しで来るわよ…って、唯ちゃん?そんなにニコニコしてどうしたの?」

唯「あのね、みんながアイスを奢ってくれるんだって!私早速願いが叶いそうだよ!」ニコニコ

紬「…あぁ!なるほど!唯ちゃん、私も奢るわ♪」

唯「ホントに!?流れ星ってすごいね!」

律「あーあ。私も何か願い事しときゃあよかったかな…」

68: 2010/07/07(水) 20:29:27.47 ID:iAulYO2A0
斎藤「お嬢様、お迎えにあがりました」

紬「ありがとう。さ、みんな帰りましょう」

澪「あ、そうだ。ちゃんと言っておかないと」

唯「?」

69: 2010/07/07(水) 20:30:33.48 ID:iAulYO2A0
澪「…みんな、これからも、よろしくな」

唯「うん!」

律「もっちろん!」

紬「こちらこそよろしく♪」

梓「よろしくです!」





澪「ふふ…みんな、ありがとう」

70: 2010/07/07(水) 20:35:57.95 ID:iAulYO2A0
終わりです。
ありがとうございました

数日前に
澪「織姫は彦星に出会えた」
律「彦星は織姫に出会えた」 
 を投稿しましたが
どーしても納得がいかなかったので(あの話の流れで澪と律が付き合う、律が氏ぬ等)
今回二つを統合したこれを投稿させてもらいました
話のおおまかな流れは澪のと同じですが、いちおう上記二つとは別物です

あと
律「彦星~」
は宮沢賢治の 「銀河鉄道の夜」
とラーメンズの「銀河鉄道の夜のような」
を元ネタにしています
前回書くのを忘れていました。すいません。

引用元: 澪律「星に願いを」