1: 2010/05/02(日) 21:25:33.82 ID:UGMzXJxM0
唯「あれっ、澪ちゃんなんでメガネかけてんの?」

風子「え、いや私は……」

唯「あっ、これ借りてた漫画!
  面白かったから続きも貸してね!」

風子「え、あの……」

2: 2010/05/02(日) 21:30:18.54 ID:UGMzXJxM0
唯「じゃね~澪ちゃ~ん!」たたっ

風子「いや私は秋山さんじゃ……
   あ……行ってしまった……」


風子「漫画を押し付けられてしまったけど……
   私から秋山さんに返した方がいいかな……
   今さら平沢さんの間違いを訂正しに行くのも気まずいし」

風子「そういやなんの漫画を貸し借りしてんだろ」がさごそ

『汁まみれ姉妹~もう止まれない~』

風子「え゛っ……」

3: 2010/05/02(日) 21:34:37.72 ID:UGMzXJxM0
風子「ま、まさかこんなのを読んでたなんて……
   秋山さんも平沢さんも、
   こういうのと縁遠い感じに見えたけど」

風子「これ秋山さんに返さないと……
   あ、いや……私にこれを見られたって分かったら、
   秋山さんきっと恥ずかしいよね……
   多分平沢さんとの間だけの秘密のやりとりなんだろうし」

風子「よし……すきを見て、
   平沢秋山両名にバレないように、
   こっそりと……秋山さんの机に入れておこう」

6: 2010/05/02(日) 21:38:30.78 ID:UGMzXJxM0
教室「わいわいがやがや」

風子「たしか秋山さんの席はここだったはず」

風子「よし、バレないように」

風子「こっそりと」

風子「……入れておこう」スッ

澪「あれ、何やってるの?」

風子「うゎっ!?」

7: 2010/05/02(日) 21:41:54.84 ID:UGMzXJxM0
澪「な……なにか私の机に入れなかった?」

風子「い、い、い、い、入れてな……
   いいいや入れたけど、あのそれは
   平沢さんから預かったというか……
   あ、中身は見てない、見てないから」

澪「唯からの預かり物……?
  なんだろう……」がさごそ

風子「あっ、ここで見ない方が……」

澪「えっと、しるまみれしまい……きんしんれず……
  って、なんだこれっ!」

8: 2010/05/02(日) 21:44:08.82 ID:UGMzXJxM0
風子「だから平沢さんからの」

澪「ゆ、唯がこんなもの私によこすわけないだろっ……!
  変な冗談はやめてっ」

風子「えっ、でっ、でも……」

澪「ほらっ、これ持ってって!
  もう二度と私にこんなの見せないでっ!」ぐいっ

風子「え、ええぇ~……」

10: 2010/05/02(日) 21:47:55.89 ID:UGMzXJxM0
風子「私の手元に戻ってきてしまった……
   謎の工口本が……」

風子「秋山さんはこれについて知らない感じだったな……
   もしかして平沢さんの間違いなのかな」

風子「よし、もう今のうちに平沢さんに返しに行こう……
   ついでに間違ってたことも説明しとこう、
   私の名前とこの工口本について……」

風子「こういうのは時間が経てば経つほど
   言いにくくなっちゃうからね……」

風子「あっ、平沢さ~……」

キーンコーンカーンコーン

先生「席について~」

風子「うっ……」

11: 2010/05/02(日) 21:51:12.15 ID:UGMzXJxM0
――

――――

――――――――

キーンコーンカーンコーン
先生「はい、今日はここまで~」

風子「はー、やっと終わった。
   よーし、こんどこそ平沢さんに……」

唯(う~、便所便所便所~!!)だだだだだだっ

風子「あっ、待って、平沢さん……!」がたっ

12: 2010/05/02(日) 21:55:29.23 ID:UGMzXJxM0
廊下「わいわいがやがや」

風子「うう、見失ってしまった……
   どこ行っちゃったんだろ」

憂「あっ、澪さん!」

風子「平沢さん!」

憂「ちょうど澪さんに会えて良かった~。
  あの、これお弁当なんですけど、
  渡しといてもらえませんか?」

風子「えっ……渡すって、誰に?」

憂「も~、そんなの分かりきったことじゃないですか~。
  じゃ、お願いしますね!」たたっ

風子「あっ、ちょっと平沢さんっ、どこ行くの……!
   私はあなたに返さなきゃいけないものが……ぁぁぁ」

14: 2010/05/02(日) 22:00:27.49 ID:UGMzXJxM0
教室。

キーンコーンカーンコーン
先生「授業始めるぞー」

唯「ふぃーすっきりすっきり」

風子「あ、平沢さん帰ってきた……
   もう、どこ行ってたんだろ……
   また話しそびれちゃったよ」

風子「私の手元にあるのは、
   謎の工口本と、誰かに渡さなきゃいけないお弁当……
   どっちも秋山さんと勘違いされて、
   平沢さんから押し付けられたもの……」

風子「お弁当はあとで秋山さんに渡せば良いか……
   工口本は平沢さんに返して、
   ちゃんと間違いを説明しないとなあ」

先生「こら高橋、何を一人でブツブツ言っとる」

風子「あっ、す、すいませ……」

15: 2010/05/02(日) 22:03:35.27 ID:UGMzXJxM0
キーンコーンカーンコーン

風子「昼休みか……」

おさげ「風子~、お昼食べよ」

風子「あ、うん」

おさげ「? ……なんでお弁当が二つもあるの?」

風子「誰かに渡さなきゃいけない……らしいの」

おさげ「……らしいって?」

風子「私にもよく分からない……
   ちょっと待ってて」

おさげ「うん」

16: 2010/05/02(日) 22:05:47.59 ID:UGMzXJxM0
律「澪唯ムギ和~、昼飯食おうぜ~」

和「もうおなかペコペコだわ」

紬「数学の時間ってお腹すくわよね」

澪「はは、確かに」

唯「あれー、おっかしいな……
  お弁当がないよ~」

和「忘れてきたんじゃない?」

唯「多分そうかも」

澪「おっちょこちょいだな、唯は」

風子「あのー……秋山さん」

18: 2010/05/02(日) 22:12:03.37 ID:UGMzXJxM0
あーちょっとミスった
>>16は無しで

19: 2010/05/02(日) 22:18:46.12 ID:UGMzXJxM0
律「澪唯ムギ和~、昼飯食おうぜ~」

和「もうおなかペコペコだわ」

紬「数学の時間ってお腹すくわよね」

澪「あ、私、購買でパン買ってくる」

律「いってら~」

唯「あれー、おっかしいな……
  お弁当がないよ~」

和「忘れてきたんじゃない?」

唯「多分そうかも」

紬「おっちょこちょいね~」

風子「あの~……」

20: 2010/05/02(日) 22:22:56.57 ID:UGMzXJxM0
律「ん? 澪、学食行ったんじゃないのか?」

紬「もう戻ってきたの?」

唯「財布忘れたとか」

和「ていうか、なんでメガネかけてるの?」

風子(なんでこの人たちはクラスメイトの顔を覚えていないの……)

律「あれ、弁当持ってんじゃん澪」

風子「ああ、これは……
   秋山さんに渡そうと……」

律「何いってんだよ、秋山はお前だろ~」

風子「いや、あのね、私は……」

21: 2010/05/02(日) 22:28:18.76 ID:UGMzXJxM0
唯「あっ! それ私のお弁当じゃん!」

和「へ?」

風子「え? ええそうよ、
   これはもともと平沢さんが持ってたやつで……」

唯「なんで私のお弁当を澪ちゃんが持ってるの?
  返してよ!」

風子「えっ、いや、だから私は……」

律「おい、澪……お前、唯の弁当を……」

風子「あ、いや違うの、盗ったとかじゃないの、
   平沢さんが私に渡してきて……」

唯「渡したりなんかしてないよ!
  わけわかんない嘘つかないでよ、澪ちゃん!」

風子「だから私は~……」

23: 2010/05/02(日) 22:34:56.60 ID:UGMzXJxM0
和「澪、素直に自分の非を認めて謝った方がいいわよ」

紬「そうよ、澪ちゃん……今なら許してもらえるわ」

風子「もう……私の話を聞いてよ……」

唯「聞きたくないよ、澪ちゃんの話なんか」

和「唯……」

唯「もうどっか行ってよ!
  澪ちゃんなんか大嫌い!!」

風子「わ……分かったわよっ……!」たたっ

24: 2010/05/02(日) 22:41:22.41 ID:UGMzXJxM0
廊下。

風子「ああーもうダメだ、
   私のせいであらぬ誤解を産んでしまった……」

風子「秋山さんに謝っとかないと……
   どこ行ったんだろう……食堂かな」

憂「あ、澪さん。何やってるんですか、こんなとこで」

風子「平沢さん……平沢さんこそどうしたの……
   教室でお昼食べてたんじゃ……」

憂「? そうですけど。
  なんで知ってるんですか?」

風子(なんで敬語なんだろ、しかもなんかそっけない……
   あ、さっき私が怒らせちゃったから距離をとってるのか……
   まず謝って誤解を解かないとね……)

26: 2010/05/02(日) 22:46:44.16 ID:UGMzXJxM0
風子「実はね……私、秋山さんじゃないの。
   顔はよく似てるけど、別人なんだ。
   ほら、生徒手帳」

憂「えっと……高橋、風子さん……
  あ、そうだったんですか~。
  すみません、間違えちゃって……
  メガネかけてるからおかしいなーとは思ったんですよ」

風子「あはは……」

憂「いやーそれにしてもホントそっくりですね」

風子「それと、さっき渡されたお弁当も間違いだから」

憂「あ、そっか……
  ごめんなさい、意味分かんなかったですよね、
  いきなりお弁当押し付けられて」

風子「いいのよ、気にしないで。
   誤解が解けたなら、もうそれでいいから」

27: 2010/05/02(日) 22:52:19.11 ID:UGMzXJxM0
憂「はい、すみませんでした」

風子「あ、そうだ、友達にも教えといてあげて。
   私と秋山さんは別人だって」

憂「へ? はあ……」
 (友達……って梓ちゃんたちかな?
  なんで教える必要があるんだろ)

キーンコーンカーンコーン

風子「あら、もう昼休み終わり?」

憂「今週は昼休み短縮週間で、いつもより20分短いんですよ。
  じゃあ私、もう行きますね!」たたっ


風子「えっ、教室は向こうなのに、どこ行くんだろ……
   まあいっか、間違いは正されたことだし」

風子「あ、工口本のこと言うの忘れてた……
   後で言えばいいか……」

28: 2010/05/02(日) 22:55:49.49 ID:UGMzXJxM0
教室。

風子「ふー、間に合った」

おさげ「なにやってたの?
    軽音部の子たちと喧嘩してたみたいだけど」

風子「ああ、あれはもういいの、
   誤解は解消されたから」

おさげ「ふうん?」

風子「あ、そういやお昼ごはん食べそこねちゃった」

おさげ「授業中に食べれば~?」

風子「無理だよ、あはは」


風子(心に引っかかっていたものが
   ひとつ無くなっただけでこんなにもスッとするなんて……
   あとは工口本を返せばもう全部おしまいね……)

30: 2010/05/02(日) 23:01:20.22 ID:UGMzXJxM0
――

――――

――――――――

キーンコーンカーンコーン

澪「あー、やっと放課後か。
  唯、ムギ、律、部活行こう」

唯「……」

澪「唯?」

律「おい、澪……
  あんなことがあったのに、何を気軽に……」

澪「あんなことって?」

紬「昼休みのアレよ、忘れたの?」

澪「昼休み? 昼休みは私はずっと購買に……」

31: 2010/05/02(日) 23:05:46.74 ID:UGMzXJxM0
律「は? なにバカなこと言ってんだよ、
  購買行ったと思ったらすぐ戻ってきたじゃねーか」

紬「そしてその手には唯ちゃんのお弁当が」

澪「はあ? さっきから何の話をしてるんだよ?
  私は今日のお昼休みはずっと購買でパンの争奪戦をしてたんだよ。
  唯のお弁当なんて知らないよ」

律「お前こそ何の話をしてるんだ!
  私たちは確かに見たんだよ!
  昼休みに、この教室で、お前を!
  なあムギ、唯」

唯「うん」

紬「見たわ」

澪「はあ~?」

36: 2010/05/02(日) 23:12:06.91 ID:UGMzXJxM0
律「和も見たよな?」

和「ええ、ばっちり見たわ。
  澪、言い逃れようとしたって無駄よ。
  謝るなら今のうちなのよ」

澪「何言ってるんだ、みんな……
  冗談にしちゃタチが悪いよ……」

律「冗談なんかじゃないよ」

紬「そうよ澪ちゃん」

澪「そうか……分かったぞ……
  みんなで私をはめようとしてるんだろ……
  はは、そうはいかないぞ……」

律「み、澪?」

澪「わ、私はお前らの策なんかにはハマらないからな……
  私を陥れようとしたって、無駄だからなっ……!」だだだっ

律「おい、澪!! まてっ……!」

38: 2010/05/02(日) 23:17:21.48 ID:UGMzXJxM0
紬「……行っちゃったね」

和「はあ、素直に謝ればいいものを」

律「うーん、澪はこうなると頑固だからなあ……
  どうしたもんか」

紬「とりあえず部活行きましょ」

律「そうだな……唯はどうする?」

唯「ん……後で行くよ」

律「そっか……じゃあ先行ってるな」

紬「急がなくていいから、後で来てね、唯ちゃん。
  おいしい紅茶を用意しとくから」

唯「うん……」

42: 2010/05/02(日) 23:21:35.45 ID:UGMzXJxM0
唯「……」

唯「……」

唯「……はあ」

唯(なんで澪ちゃんはあんなことしたんだろ……
  私のお弁当を盗むなんて……)

唯(ただの悪ふざけなんかじゃないよね……
  もしかして、私のこと嫌いになったのかな……
  私、なんか嫌われるようなことしたかな……
  澪ちゃん……)

風子「平沢さん!」

唯「!」

45: 2010/05/02(日) 23:27:37.30 ID:UGMzXJxM0
風子「あー、よかった。
   やっとゆっくり話できるよ……」

唯「あ……みんながいなくなるの待ってたの?」

風子「うん、そうなの。
   まあみんながいるとこでは話しづらいというか」

唯「え……な、なに?
  謝ってくれるんなら……
  別にみんなの前でも……」

風子「謝る? なんで?
   昼休みのことはもうお互いに誤解を解いたじゃない」

唯「はっ!?」

風子「実はね、これを……」

唯「なにこれ、本?」

風子「たしかに渡したから。
   自分で返しといてね、じゃあね~」たたっ

唯「…………は?」

46: 2010/05/02(日) 23:33:46.26 ID:UGMzXJxM0
唯「え、どういうこと?
  お互いに誤解は解いたって……
  昼休み以降まともに澪ちゃんと話してもいないのに」

唯「それに、この本……
  なんなんだろう……」がさごそ

『汁まみれ姉妹・もう止まれない~』

唯「え゛っ……なにこれ……
  みんながいるとこでは話しづらいって……
  こういうこと?」

唯「どういうつもりなんだろ、澪ちゃん。
  私のお弁当盗って、謝る気もなくて、
  あげくこんな本を私に押し付けて」

48: 2010/05/02(日) 23:38:18.92 ID:UGMzXJxM0
唯「本当に私のこと……
  嫌いになっちゃったのかな……」

唯「きっとそうだよね、
  嫌いな相手じゃなきゃこんなことしないよね」

唯「何か嫌われるようなことしたかな……
  最近はちゃんと練習もしてるし、
  澪ちゃんのお菓子は勝手に食べたりしてないし、
  借りてた漫画は今朝ちゃんと返したし」

唯「はあ……澪ちゃん……
  せめて私のどこが嫌いか、
  言ってくれればいいのに……」

唯「部活行こ……」

50: 2010/05/02(日) 23:44:23.34 ID:UGMzXJxM0
昇降口。

風子「ふー、心残りは全部解消されたーっと」

憂「あ、高橋さん!」

風子「あっ、平沢さん、早いわね、
   さっき教室で話してたとこなのに……」

憂「教室で話し?」

風子「そうよ、話してたじゃない。
   あの本も返したし」

憂「本って?」

52: 2010/05/02(日) 23:48:48.55 ID:UGMzXJxM0
風子「あの本よ、あの本」

憂「なんのことですか?」

風子「もう、とぼけないでよ。
   あれを言わせる気……?」

憂「言ってもらわないと分かんないんですけど」

風子「えー、もう、言いたくないわよ、
   あんな恥ずかしいタイトル……」

憂「言ってくださいよ、まわりに誰もいませんから」

風子「えー、じゃあ言うわよ……
   確か、えっと……
   『汁まみれ姉妹~もう止まれない~』
   ……だったかな……もう、なんてこと言わせるのよ」

憂「ちょ、ちょっと待ってください……
  なんでその本を知ってるんですか……」

風子「え? だから、平沢さんが私を
   秋山さんと間違えて返してきたんじゃない」

54: 2010/05/02(日) 23:54:39.06 ID:UGMzXJxM0
憂「…………」

風子「いやー、でもまさか平沢さんと秋山さんが
   あんな趣味だったとは思わなかったわ」

憂「……」

風子「あっでも安心して、
   このことは誰にも言ってないし、
   私は趣味で人を見る目を変えたりしないから」

憂「……ひとつ、聞いてもいいですか」

風子「何?」

憂「私が高橋さんにその本を渡したとき……
  私は髪をくくっていましたか」

風子「そういえばくくってなかったわ。
   ていうか何でくくったりほどいたりしてるの?」

憂「……わかりました」

風子「なにが?」

憂「全てが」だだっ

風子「ちょ、平沢さん!?」

55: 2010/05/02(日) 23:59:26.28 ID:UGMzXJxM0
女子トイレ。

澪「はあ……
  なんなんだよ、みんな……
  私のことをハメようとして……」

澪「私……嫌われちゃったのかな。
  そうだよな、
  私なんて好かれるわけないよな……」

澪「服装も髪型もダサいし、
  お喋りも下手だし、
  そのくせ暴力的……」

澪「ははっ、よく考えたら嫌われる要素ばっかりだな……」

澪「もう部活辞めよう……
  さよならみんな……」

和「あっ、澪」

澪「の、和……」

56: 2010/05/03(月) 00:03:59.94 ID:HNzrL9RJ0
和「どうしたのよ、澪。
  ただでさえ暗いのに余計暗くなって」

澪「酷いな……」

和「ちゃんと唯に謝った?」

澪「謝るも何も……私は何もしてないんだ」

和「まだそんなこと言って」

澪「ほんとなんだよ、和!
  私はなんにもやってない!
  みんなこそ、私を陥れようとしてんだろ!
  そうなんだろ、私のことを嫌いで……!」

和「ちょ、ちょっと落ち着いて。
  陥れようとなんてしてないわよ……」

澪「で、でもっ……
  私は何もやってないのにっ……」

和「分かった、分かったから。
  何もやってないって言うんなら、
  ちゃんと唯たちにそれを説明した方がいいわ」

59: 2010/05/03(月) 00:07:23.55 ID:HNzrL9RJ0
澪「でも聞いてくれるわけないよ……」

和「とりあえず話だけでもしてみなさいよ。
  お互いの言い分を話した上で、
  そこからミゾを埋めていくことが大事なのよ」

澪「うう……」

和「ほら、音楽室に行きなさい。
  まともに話を聞いてくれないようだったら、
  生徒会室に来て私を呼びなさい、
  一緒に行ってあげるから」

澪「うん……ありがとう、和。
  行ってみるよ……」

和「頑張ってね。
  仲直りすることを祈ってるわ。
  喧嘩してるあんなたたちなんて、
  見ていたくないからね」

澪「うん……」

61: 2010/05/03(月) 00:11:28.52 ID:HNzrL9RJ0
音楽室。

ガチャ
唯「……」

律「お、唯」

紬「よかった、来てくれて」

梓「こんにちは、先輩」

唯「うん……」

梓「? なんかあったんですか?」

律「まあ、澪と……ちょっとな」

梓「喧嘩ですか、珍しいですね。
  早く仲直りしてくださいね」

唯「もう絶対無理だよ」

梓「えっ」

紬「ど、どしたの唯ちゃん」

唯「仲直りなんて出来ないよ……
  澪ちゃん私のこと絶対嫌いだもん」

63: 2010/05/03(月) 00:15:03.72 ID:HNzrL9RJ0
梓「な、なんでいきなり嫌われてんですか」

唯「それが分かんないんだよ、
  ホントにいきなりだよ、いきなり」

梓「はぁ」

唯「まずお昼休みにね、
  澪ちゃんが私のお弁当を盗ったの」

梓「なんで澪先輩が盗ったって分かったんですか」

唯「澪ちゃんが手に持ってたから」

梓「……はあ?」

唯「いや、本当なんだよ。
  まるで見せびらかすみたいに持ってたの。
  そうだよね、りっちゃん、ムギちゃん」

律「ああ、そうだな」

紬「隠す気なんて全然なさそうだったわね」

梓「へえ」

64: 2010/05/03(月) 00:20:33.58 ID:HNzrL9RJ0
唯「それで理由を問い詰めてもわけのわかんない言い逃れして、
  全然話にならなかったの」

律「あれはひどかったなー」

唯「あ、なんか話してたらムカムカしてきた……
  ムギちゃん、紅茶!」

紬「はいどうぞ」

唯「そして極めつけが、さっきだよ」

律「さっき? 何かあったのか?」

唯「りっちゃんとムギちゃんが部活行った後、
  澪ちゃんが教室に戻ってきて
  私に話しかけてきたの」

律「ふん」

唯「そしたら何て言ったと思う?
  『昼休みのことはもうお互いに誤解は解いた』とか言うの!
  こっちは謝られも説明されてもいないのに!」

紬「澪ちゃん、どこまで頑固なのかしら」

梓「頑固にもほどがあるでしょう」

65: 2010/05/03(月) 00:28:14.16 ID:HNzrL9RJ0
唯「そして、挙句にこれだよこれ!」ばんっ

律「なんだこの本」

梓「汁まみれ姉妹、……ぶ――――っ!!」

紬「まあまあまあまあまあまあまあまあまあまあ」

唯「澪ちゃんったら、私にこんな本を押し付けてきたんだよ!
  ほんとにありえないよ!」

梓「ま、まさか澪先輩がこんなアレな……」

律「いやーでも、澪がこんな本を持ち歩くかあ?
  表紙見ただけで卒倒しそうだが」

唯「でも実際に持ってきたんだから!」

梓「うーん……」

唯「どう思う? あずにゃん」

梓「えー……うーん、
  にわかには信じがたい話ではありますね」

唯「信じてくれないの?」

66: 2010/05/03(月) 00:34:11.21 ID:HNzrL9RJ0
梓「はあ、まあ……
  あの澪先輩が、そんな子供じみた悪戯を
  するとは思えません」

唯「でもホントにされたんだよ!」

梓「あ、そうだ……憂から聞いたんですけど、
  澪先輩のソックリさんがいるらしいですね」

律「なんだそりゃ」

梓「ホントに澪先輩と瓜二つらしくて……」

ガチャ
澪「……」

紬「あ、噂をすれば」

唯「……澪ちゃん」

澪「ゆ、唯……
  ちゃんと私の話を聞いてくれ」

唯「やだよ」

梓「聞いてあげましょうよ、唯先輩」

唯「…………あずにゃんがいうなら……」

67: 2010/05/03(月) 00:41:34.89 ID:HNzrL9RJ0
澪「あ、あのな、唯……
  昼休みは私は、購買に行ってた。
  教室にはいなかった。
  だから唯のお弁当を盗ったりしてない。
  以上だ。オーケイ?」

唯「オーケイなわけないよ!
  何その言い訳!
  もっと納得できるように言ってよ!」

澪「納得できるも何もこれで納得してもらわないと、
  これが事実なんだから!」

唯「じゃあ私の言ってることは嘘だっていうの?」

澪「少なくとも私にとっては嘘だ!」

唯「もう、ふざけないで!
  私のこと嫌いなんでしょ?
  それなら最初からそう言いなよ!」

澪「はあ? 何いってんだ、何でそういう話になる!
  今は嫌いとかどうとか関係ないだろ!」

唯「関係あるよ!
  澪ちゃんが私のこと嫌いだから
  あんなことしたんでしょ!?」

律「落ち着けふたりとも……」

69: 2010/05/03(月) 00:47:29.96 ID:HNzrL9RJ0
唯「あとこれ! 返すから!」ばんっ

澪「な、何だこの本」

唯「澪ちゃんが私に押し付けたんでしょ!」

澪「こ、これって……
  高橋さんが持ってた本じゃないか!」

紬「高橋さん?」

澪「同じクラスの高橋さんだよ!
  高橋さんが、今朝、私の机にこれを押し込もうとしてたんだ」

律「高橋さんなんていたか?」

紬「んー、名前だけなら聞いたことあるかも」

梓「クラスメイトくらい把握しておきましょうよ……」

澪「そうか……全部高橋さんの仕業だったんだな……
  彼女、何が目的で……!」

唯「あっ、今度は人のせいにするの!?」

澪「だから私はやってないって――――」

70: 2010/05/03(月) 00:50:40.40 ID:HNzrL9RJ0
ガチャ
憂「どっせい!」

風子「はあはあ、平沢さん、走るの早いよ……ん?」

唯「えっ」
律「なっ」
紬「まっ」

風子「平沢さんが……2人!?」

唯「澪ちゃんが……」
律「澪が……」
紬「澪ちゃんが……2人!?」

澪「なんだこいつら……」

梓「あ、この人ですか。澪先輩のソックリさん」

72: 2010/05/03(月) 00:53:52.78 ID:HNzrL9RJ0
唯「な、なんで澪ちゃんが2人もいるの!?」

律「ドッペルなんたらってやつか!」

紬「ええっ、ドッペルゲンガーを見たら氏んでしまうって……」

澪「落ち着けお前ら!
  この人が高橋風子さんだっ!
  それより、高橋さん! 一体どういうことなのか説明してくれ!
  なんでこんなことをしたんだ!」

風子「え? え? え?
   何を怒ってるの? 私にも何がなんだか……!
   それになんで平沢さんが2人も……」


梓「とりあえず、いったん落ち着きましょうか……」

73: 2010/05/03(月) 00:59:11.26 ID:HNzrL9RJ0
10分後。

梓「やっと混乱が収まりましたね」

唯「落ち着きはしたけど、分からないことだらけだよ。
  なんで澪ちゃんが2人もいるの?」

風子「それはこっちのセリフよ、
   なんで平沢さんが2人もいるのよ」

憂「あ、私は平沢唯の妹で、平沢憂です」

風子「い、妹?」

澪「それで、この人は高橋風子さん……
  私たちのクラスメイトだ」

風子「あ、高橋風子です」

律「いたっけ、こんな人」

紬「さあ、私りっちゃん達以外とは関わらないから、
  クラスメイトのことはよく分からないの」

唯「私もそうだよ」

梓「……」

75: 2010/05/03(月) 01:05:06.67 ID:HNzrL9RJ0
澪「……まあ、察するに、
  唯たちが高橋さんを私と間違え、
  高橋さんが憂ちゃんと唯を間違え、
  色々こんがらがってこうなったということか」

梓「でしょうね」

唯「あれっ、私が漫画を返したのは澪ちゃんだよね?」

風子「それ私」

憂「私がお姉ちゃんのお弁当を預けたのは高橋さんでしたね」

風子「うん、で、そのお弁当を渡しに行ったら……」

律「……盗んだと誤解されたってわけか」

紬「ごめんなさい……」

唯「……ごめんなさい。澪ちゃんもごめん……」

澪「いや、もういいんだよ、誤解が解けたんなら」

風子「あ、昼休みに廊下で私が誤解を解いたのは……」

憂「ああ、あれ私でした」

風子「そうよね、髪くくってたし」

77: 2010/05/03(月) 01:10:54.03 ID:HNzrL9RJ0
唯「あれっ、放課後、私に謝りに来たのは……」

風子「あれも私よ。
   今考えたらむちゃくちゃな会話だったわね……
   ごめんなさい」

唯「ああうん、誤解が重なってこうなったんだから、
  仕方ないよ。気にしないで」

風子「ありがと」

律「いやー、でもこれで一件落着かあ」

紬「ふー、良かったわ。
  一時はどうなることかと」

唯「あれ、でも……なにかひとつ、忘れてるような」

澪「あ、そうだ!
  この本だよ、この本!!」

憂「!」

唯「おー、忘れてた」

78: 2010/05/03(月) 01:16:31.78 ID:HNzrL9RJ0
澪「そもそも高橋さんはなんでこんな本を
  持ち歩いていたんだ!?
  しかもそれを私や唯に押し付けたりして……!」

風子「ち、違うのよ!
   それはもともと平沢さん……平沢唯さんが持ってたの!」

唯「私こんなの持ってないよ!」

風子「今朝、私に漫画を返したでしょ?
   あれがこの本だったのよ」

唯「ええっ、なんでこんな本が……!?」

澪「……それを私の机に入れようとしてたのは……?」

風子「いやー……面と向かって渡すのは恥ずかしかったし……
   秋山さんのものなら机に入れとけば間違いないかなって」

唯「なんで私に押し付けたの?」

風子「秋山さんに返しそびれちゃったから……」

唯「ふーん……」

律「ていうかなんで唯はこんな本持ってたんだよ」

唯「し、知らないよっ!」

79: 2010/05/03(月) 01:21:13.55 ID:HNzrL9RJ0
風子「隠さなくったっていいのよ、平沢さん、秋山さん……
   私は趣味で人を差別したりしないから」

紬「そうよ唯ちゃん澪ちゃん、素直になって……ハアハア」

澪「なんで私もなんだよっ!」

唯「私はほんとに知らないよ、こんな工口本!」

憂「まあまあまあ……落ち着きましょう」

梓「憂?」

憂「聞けば、残った問題はこの工口本ひとつだけ……
  こんな些末なことでいつまでも揉め続けるのは
  まったくもって時間の無駄……そうでしょう」

澪「え、ああ……」

風子「そうねえ」

憂「ということでここはひとつ、
  この工口本、私が責任を持って処分いたします。
  それでもう工口本は無かったということにして……
  ここで平和的解決と、参りましょう」

律「ああ、そうだな。工口本なんてどうでもいいし」

澪「うん、問題が減るならそれで」

81: 2010/05/03(月) 01:25:57.68 ID:HNzrL9RJ0
憂「ではこの工口本は私が引き取ります」

梓「えらいね、憂」

憂(はーよかった、無事に回収できた……
  行方不明だと思ってたらお姉ちゃんのとこに行ってたのか……
  この前の古書整理の時に紛れちゃったのかな……
  まあ何にせよ誰にもバレずに戻ってきて良かった)

律「あー、じゃあこれで全部解決だな!」

風子「私のせいでお騒がせしました」

律「いやいや、高橋さんは悪くないよ」

唯「そうだ、ふーこちゃんもここでお茶していきなよ!
  解決の記念に!」

風子「えっ、いいの?」

紬「ええ、構わないわ。人数が多いほうが楽しいもの」

澪「ああ、そうだな」

風子「えへ、じゃあお言葉に甘えて……」

梓(今日も練習はできなそうだな)

82: 2010/05/03(月) 01:29:20.33 ID:HNzrL9RJ0
紬「どうぞ、紅茶とケーキよ」

風子「ありがとう」

律「しっかし、見れば見るほど澪にそっくりだな」

風子「そ、そうかな……
   髪型とかも微妙に違うと思うけど」

唯「いやーそっくりだよ。
  でもふーこちゃんのほうがちょっと優しそう!」

澪「私は厳しいってか……」

律「はは、合ってんじゃないか」

風子「でも、平沢さん姉妹だってそっくりよ」

唯「そうかな~」

憂「まあ、似てるとは昔からよく言われますけど……
  髪をくくった状態で間違われたのは初めてですよ」

84: 2010/05/03(月) 01:33:04.75 ID:HNzrL9RJ0
風子「あはは、でもホントに似てたからさ」

紬「憂ちゃん、ちょっと髪おろしてみて」

憂「いいですよ……んしょっと」ふぁさっ

風子「おお、ホントに瓜二つ……」

梓「律先輩も、カチューシャ取ったら唯先輩みたいになりますよね」

澪「あー、そういえばそうだな」

律「よーし、唯3号だぜ!」ばっ

風子「あはは、本当に見分けつかないわ」

唯「ふーこちゃんもメガネ取ってさ、
  澪ちゃんと並んでみてよ!」

風子「うん、いいよ……こんな感じ?」

澪「似てるか?」

唯「あはは、似てる似てる!」

律「鏡みたいだ! あははは!」

85: 2010/05/03(月) 01:37:19.36 ID:HNzrL9RJ0
澪「ふふっ、鏡みたいだって」

風子「あはは、なんか照れるね」

澪「た、高橋さん……あのさ」

風子「何?」

澪「これも何かの縁だし……
  私と、友達になってくれないかな」

風子「うん、勿論いいわよ。よろしくね、秋山さん」

唯「あ、澪ちゃんだけずるーい!
  私もふーこちゃんと友達になるー!」

律「はいはい、私も友達になりまーす!」

紬「私もいいかしら~」

梓「あ、わ、私も……」

憂「私もなりたいです」

風子「うん、みんな友達になろう!」


こうして軽音部のみんなに新しい友達ができたのだった。

87: 2010/05/03(月) 01:41:33.81 ID:HNzrL9RJ0
和「澪、ちゃんと仲直りできたかしら。
  また喧嘩になってたりして……心配だわ。
  音楽室に行ってみましょう」



音楽室。

和「澪~、大丈夫……?」
ガチャ

澪「あっ、和。
  紹介するよ、クラスメイトの高橋……」

和「……」

澪「和?」

和「そ、そ、そ、そんな!!
  唯が3人に澪が2人もいるなんて!
  一体どういうことなの!!
  何が起こったの!! 誰か説明してええええええ!!」

澪「もうええわ」



   お   わ   り

89: 2010/05/03(月) 01:43:05.21 ID:HNzrL9RJ0
これでおしまい

モブキャラの中で姫子ちゃんをネタにしたSSはいくつかあったけど
風子ちゃんのSSはなかったので書いた

引用元: 唯「澪ちゃん澪ちゃん澪ちゃ~ん!」風子「え?」