～時は流れて～


千川ちひろ「申し訳ありません。モバPは留守でして、いつ戻るかは・・・」

元嫁「別に良いわ。会いに来たわけじゃないし」

ちひろ「はい？」

元嫁「これ、入所申請」

ちひろ「あの？」

元嫁「写真は適当に撮っといて」

ちひろ「え、誰を撮れば」

元嫁「入れ替わりで来るから。それじゃ」

ちひろ「ちょっと！？」


ﾊﾞﾀﾝ


ちひろ「何なんですか・・・」

モバP「ただいま戻りましたー」

ちひろ「やっと帰って来た！Pさん、ちょっと」ﾁｮｲﾁｮｲ

モバP「？」

ちひろ「昼ごろ来た女性から、入所申請を渡されたんですけど」

モバP「いつもの事じゃないですか」

ちひろ「Pさんの知り合いみたいでしたよ。これ、その入所申請です」

モバP「俺の知り合い？事前にそんな話は聞いてな・・・」

ちひろ「？」

モバP「ちひろさん・・・入所予定の女の子はどこに？」

ちひろ「応接室で待ってもらってますよ」

～応接室～


少女が座っている

入所申請に書かれた名前を見て、息をのんだ。

最後に会ったのは何年前だったか。

私の顔など覚えていないだろう。


モバP「名前は？」

舌が上手くまわらない。

もっと優しく、柔らかく話そうとしても上手くできない。

「・・・仁奈、市原仁奈でごぜーます」

モバP「どうしてここに？」

違う。そんな事は奴に聞くべき事だ。もっと他に―

仁奈「ママが、ここでアイドルにしてもらうんだって、言ってたので」

仁奈「・・・だから、来たですよ」

モバP「ママは？」

仁奈「ママは、忙しいので、もう仕事に行っちまったです」

仁奈「・・・仁奈しかいねーです」

そんな馬鹿な。

奴の不倫相手は社会人だ。

自分が払っている養育費と合わせれば、

奴が忙しく働く必要に迫られるほど金に困るとは考えにくい。

まさか、不倫相手とも別れたのか。

モバP「パパは？」

仁奈「パパは・・・」

仁奈「仁奈のパパは、仕事で、海外に行ってやがります・・・」

何という事だ。

育ての父となるはずだった男は、娘どころか元嫁とも距離が出来てしまっているかもしれない。

娘の、仁奈の帰る家はあっても、そこには家庭が無い。


仁奈「あの・・・」

仁奈「仁奈は、アイドルやらねーといけねーですか？」

モバP「やりたくない？」

娘の帰る場所に家庭が無いというのなら、自分がすべき事は一つだ。

仁奈「アイドルって、よくわからねーです」

仁奈「なにするお仕事でやがりますか？」

モバP「歌ったり踊ったり」

他にもあるが、それは置いておこう。

とにかく、娘がアイドルに興味を持つ事を祈って言葉を選ぶ。

仁奈「へー・・・歌ったり、踊ったりするですか・・・」

仁奈「楽しいのかな？あ、キグルミも着れたりするですか？」

モバP「着たい？」

仁奈「キグルミは好きでごぜーます！」

仁奈「キグルミ着てるときは、みんなニコニコするですよ！」

仁奈「アイドルはキグルミ着られるですか？」

モバP「ああ、たくさん着られる」

仁奈「だったら、アイドルになってもいいですよ？」

仁奈「でも、淋しくさせたりしねーでほしいです・・・それでもいいですか？」

そうだ、淋しくなんかさせない。

たくさんキグルミも着られるし、ここなら一緒に過ごしてくれる人がたくさん居る。

今という瞬間から、父の務めを果たす時だ。

だから―


モバP「これからよろしくね」

仁奈「はい！！」






おわり

は？続きは？

よさげな設定なのにもったいねーですよ！