1: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)01:57:15 ID:RpO
昔々、あるところに正直者で真面目で可愛く皆から愛されますが、不運な杏奈というアイドルがいました。

朝から晩まで、働けど働けど、毎月2~5本の新作のゲームを買っていたのでとても貧乏でした。





ある日のことです、とあるアイドルプロデュースゲームのシリーズ最新作の予約受付開始日が決まったことを知った杏奈は嬉々として貯金箱を割りました。

「...............」

しかし、貯金箱には1000MCしか入っていませんでした。

「...どうしよ......」

給料日まではあと20日、初回限定BOXは数量限定のためそこまで待てません。

4: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:02:24 ID:RpO
どうすることもできなかった杏奈は最終手段として神社でゲームもせずにお祈りしました。

すると、夕方暗くなったとき、一人の幸運そうな女性が目の前に現われ、こう言いました。

「あなたはこの神社を出るときに転がって何かをつかみます。それを持って西へ行くといいでしょう。」

6: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:07:33 ID:RpO
しかし、実際には神社を出るときに転びませんでした。

なので、杏奈は少し戻りゴロゴロゴロッと自ら転がり一本のわらを手にしました。

何の役にも立たないと思いましたが、杏奈は、わらを持って西へ歩いて行きました。

うさぎが跳んできました。杏奈はうさぎを捕まえると右前脚にわらをくくりつけ、また歩いて行きました。

8: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:12:57 ID:RpO
街にやってくると涙目になっている響に会いました。

「あ、杏奈!うさ江見なかった!?昨日おやつのニンジンを少し食べたら家出しちゃって……うぅ...心配だぞ…………ってうさ江!?うがーっ!心配したんだぞっ」

「......そっか...この子、うさ江だったんだ.........」

なんと、途中で捕まえたうさぎは響の家族であるうさ江だったのです。

「ありがとう杏奈!お礼と言っちゃ難だけど……はい!これザッハトルテ、さっき春香の家で作ってきたんだ!」

9: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:17:21 ID:RpO
響からザッハトルテを受け取った杏奈はさらに西へ歩いていきました。

しばらく行くと、脱力してベンチにもたれかかっている男がいました。

「…どうしたの……?」

杏奈は話しかけました。すると、男はこう答えました。

10: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:19:00 ID:RpO
「実は、お仕事が長引いちゃって長いことケーキが食べれてないんd...くんくん…なんだか甘い香りが…」

その甘い香りの正体はさっき響からもらったザッハトルテでした。

「…えと……ザッハトルテ、食べる………?」

「食べる!食べます!食べたいです!」

杏奈は男にザッハトルテを渡しました。

「もぐもぐ……うーん、おいしい!」

「あ、ありがとうございました♪うちのカフェのメモ帳なんですけどお礼にどうぞ!」

こうして、杏奈は男からメモ帳を受け取るとさらに西に歩いていきました。

11: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:20:49 ID:RpO
「うーん、こまりました…」

しばらく行くと、一人の探偵が右往左往していました。

「...どうしたの......?」

杏奈は話しかけました。すると探偵は答えました。

「実は…ある人を尾行中なんですが、メモ帳を落としてしまいまして…早く行かないと…」

そこで杏奈は持っていたメモ帳を差し出しました。

「......使う...?」

「え?いいんですか!ありがとうございます!!えと...お礼…そうだ、これオススメなんで読んでみてください!では、私はのあさんを追いかけなければならないので」

杏奈に探偵小説を手渡すと探偵は走っていってしまいました。

なんであの人は犬の格好してたんだろう...。杏奈は後になって思いました。

12: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:21:59 ID:RpO
探偵小説を貰った杏奈はさらに西へ歩きました。しばらく行くと百合子さんに出会いました。

「…百合子さん、はい…これ……」

「この本は…If there in bizarre incident which shook the Imperial City on the way to work. !?杏奈ちゃん…この本どうしたの!?」

百合子さんが聞いてきたので杏奈は今まであったことを話すことにしました。すると百合子さんは、

「そんなことが…あ、今何も持ってない!お礼はどうしたら…」

「…ううん……大丈夫、杏奈は…百合子さんにこの本を読んで……欲しかっただけ…だから」

「でも、それじゃあ杏奈ちゃんのゲームが…あっ!そういえば栞代わりに使っていたわらが!……けどそれじゃあ最初となにも変わらないよね…」

「…ありがと、ございます……杏奈はわらでもうれしいよ…?」

そう言って杏奈はわらを受け取りさらに西に歩き始めました。

13: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:22:42 ID:RpO
しばらく行くと、事務所につきました。すると、後ろから聞きなれた声がしました。

「ん?どうしたんだ?」

「......プロデューサーさん......おはよ、ございます..................」

14: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:23:30 ID:RpO
「ん......プロデューサーさん...手、出して.........」

「おう、何かくれるのか?」

そう言ってプロデューサーが手を差し出すと、杏奈は持っていたわらをプロデューサーの指に結びつけました。

「......んと...約束..........しよ.....................?」

そう杏奈が聞くと、プロデューサーは答えました。

「あっ、え、あ、うえっ?あ?杏奈、え、うん、する約束、約束、やくそくする!」

「......ありがと...です...............」

杏奈は一言お礼を言った後事務所へと消えて行きました。

「えと、これは、つまり、まとめると、えーと、うん、そうゆうことだよな……?」

杏奈がいなくなった後、プロデューサーは左手の薬指に巻かれたわらを見つめながら一人でブツブツ呟いていました。

15: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:23:51 ID:RpO
その日、「杏奈はとんでもないモノを盗んで行きました」「わたしの心です」と声に出してるプロデューサーが目撃され、事務所でちょっとした話題になりましたとさ。

めでたしめでたし

16: ◆wQSXY643Ks 2016/07/02(土)02:24:51 ID:RpO
「......プロデューサーさんとゲーム買ってもらう約束...しちゃった...............」

本当におしまい