1: 2011/03/29(火) 03:35:47.37 ID:kWovXzpmO
鈴木家。

純「今日さ、夜桜見物にでも行かない?」

憂『えっ、今日?』

純「そうそう」

憂『もしかして駅前の?』

純「そうだよ」

憂『うーん。どうしようかなぁ』

純「明日から学校だし、春休み最後の思い出作りに。
  梓も呼ぶからさ」

3: 2011/03/29(火) 03:37:11.54 ID:kWovXzpmO
憂『じゃあ、いいよ』

純「おっ、やったー。それじゃあ、八時に駅前ね。遅れちゃダメだよ」

憂『うん。分かった』

純「またあとでね」ピッ

 「よし、次は梓に」

プルルルル、プルルルル、ガチャ

梓『はい』

純「よー、梓」

梓『純、何か用?』

純「今、暇?」

梓『まぁ、暇かなぁ』

純「じゃあさ今日、夜桜見物にでも見に行かない?」

5: 2011/03/29(火) 03:38:03.36 ID:kWovXzpmO
梓『夜桜見物?』

純「駅前の近くでやってる、桜の通り抜けだよ」

梓『あぁ、そういや何かやってたね。でも、なんでまた』

純「思い出作りだよ」

梓『はい?』

純「春休み、私達あんまし遊んでないじゃん」

梓『まぁ、先輩達の準備に付き合ってたからね』

純「そうなんだ」

梓『憂も一緒だったよ』

純「……ごめん。泣いていい?」

梓『はっ?』

6: 2011/03/29(火) 03:38:49.06 ID:kWovXzpmO
純「いや、なんでもない」

純(誘っても断られた理由はそれか!)

純「それで、どうする?」

梓『うーん……まぁ、いっか。私も純と遊びたかったし、これからの部活についても』

純「それは明日でよくない?」

梓『こういうのは早い方がいいんだよ』

純「あっそ……んじゃ、八時に駅前ね。遅れないでよ」

梓『それはこっちの台詞だよ。じゃ、またあとで』

純「あいよー」ピッ


純「よし、これでいいや」

母「純、ご飯よー」

純「はーい」

7: 2011/03/29(火) 03:40:06.68 ID:kWovXzpmO
―――

駅前。

純(さて、まだ憂と純が来てないワケだけど……
  にしても、相変わらず人が多いなぁ。梓は小さいから今頃、人の波に飲まれてたりは……ないよな)

憂「純ちゃーん」

純「あっ、憂」

憂「こんばんは」

純「はーい。よく来たねぇ」

憂「あれ、梓ちゃんは?」

純「誘ったんだけど、まだ……」

梓「お待たせ」

純「おっ、来たな」

8: 2011/03/29(火) 03:42:47.38 ID:kWovXzpmO
梓「あれ、もしかして私が最後」

純「まっ、そうなるかな」

梓「ふーん」

純(えっ、何?)

憂「梓ちゃん、こんばんは」

梓「あっ憂、こんばんは」

純「よし。とりあえず揃ったから、夜桜見物に行きますか」

憂「そうしよう」

梓「そうだね」

9: 2011/03/29(火) 03:43:52.86 ID:kWovXzpmO
―――

通り抜け会場。

憂「人が多いね」

純「毎年こんなもんだよ」

憂「毎年来るの?」

純「家族とね。夜店とか出てるから」

憂「賑わってるね」

純「憂、焼とうもろこし買ってくるね」ダッ
憂「あっ、純ちゃん。また夜店に行った」

梓「夜桜見物なのか……夜店見物なのか……はっきりしてよ」パクパク、モグモグ

憂(綿飴食べてる梓ちゃんが言っても)

10: 2011/03/29(火) 03:45:07.90 ID:kWovXzpmO
純「おまちどー。はい、憂の分」

憂「えっ、いいの?」

純「気にしないで、付き合ってくれたお礼だよ」

憂「ありがとー」

梓「純、私のは」モグモグ

純「梓は綿飴食べてるでしょ」

梓「これは、自腹だし」パクパク

純「厚かましい奴だなぁ」

梓「……」ムシャコラ

11: 2011/03/29(火) 03:46:34.41 ID:kWovXzpmO
―――

梓「そういや、夜桜見物なんてしたことないなー」

純「ないの?」

梓「大抵ウチは、昼間とかだし」

憂「私もないかなぁ。夜はあんまり、出歩かないから」

純「ふーん」

憂「でも、夜桜見物もいいもんだね」

梓「うん。なんてゆーか、昼間見るよりも綺麗に見える」

純「ライトアップされてるから?」

梓「そういう言い方はどうかと思う」

12: 2011/03/29(火) 03:47:51.41 ID:kWovXzpmO
―――

梓「なかなか終点が見えて来ないね」

純「まぁ、まだ先だからね。もしかして、疲れた?」

憂「うーん、ちょっと」

梓「人の数が多いからね」

純「じゃあ、あそこのベンチで休もうよ」



憂「ふぅー、疲れたー」

梓「なんかいつもより疲れる」

憂「同じく」

純「じゃあ私、三人分の飲み物買って来てあげるよ」

憂「いいの?」

13: 2011/03/29(火) 03:49:38.60 ID:kWovXzpmO
純「そんなに疲れてもないし。だから私が行く。それで、何がいい? 私の奢りじゃないけど」

梓「私、オレンジジュース。はい、これ」

純「憂は?」

憂「じゃあ、グレープフルーツ。はい、お金」

純「あいよ。ちょっと待っててね」ダッ

憂「純ちゃん。なんか張り切ってるね」

梓「春休みの間、一度も遊ばなかったから、寂しかったんじゃない?」

憂「そうかもね。私達、お姉ちゃん達の準備を手伝ったりしてたから」

14: 2011/03/29(火) 03:50:32.35 ID:kWovXzpmO
梓「まっ、これから一緒の軽音部だし。一緒の時間もたくさん増えるよ」

憂「でも今年、受験だけどね」

梓「……そうだね」



純(とりあえず二人の分は買った)

純「私は何にしようかなぁ」

 「よし、サイダーにするか」

ガコン!

純「ふぅー」

ヒュー

純「風が出て来たかな?」



梓「純、遅いなぁ」

憂「自販機が見つからないとか?」

15: 2011/03/29(火) 03:52:11.73 ID:kWovXzpmO
梓「人が多いから並んでるとか?」

憂「売り切れとか?」

梓「道に迷って泣いて……」

純「はーい、お・ま・ち・ど・う!」

ピタッ!

二人「冷たーい!」

純「わっはっはー」

憂「純ちゃん!」

純「どう、驚いた?」

梓「驚くよ!」

純「ちょっとした私からのサプライズ」

梓「そんなのいらないし!」

16: 2011/03/29(火) 03:53:32.04 ID:kWovXzpmO
純「じゃあ、このジュースもいらないんだね?」ニヤニヤ

梓「いやいや、その解釈はおかしい」

純「冗談だよ。ほい、梓」ポイッ

梓「わっ、と」

純「憂」ポイッ

憂「よっ」

純「じゃあ、みんなで飲む前に……梓」

梓「?」

純「明日から新しい軽音部の部長になるんだから、なんか一言お願いします」

梓「えっ」

純「ほらほら」

憂「梓ちゃん、頑張って」

17: 2011/03/29(火) 03:55:21.97 ID:kWovXzpmO
梓「えー、明日から軽音部の部長になる中野梓です。よろしくお願いします」

純「なんか固いなぁ」

憂「リラックスしてよ」

梓「うぐっ! と、とりあえず頑張って新歓ライブを成功させ、新入部員を多く獲得します!」

憂「いいよー、梓ちゃん」

梓「じゃあ、かんぱーい!」

二人「かんぱーい!」

プシュー!

梓(なんか、飲み会みたいだ)ゴクゴク

憂「おいしーい!」

純「サイダー選んだのミスった」

18: 2011/03/29(火) 03:56:15.55 ID:kWovXzpmO
梓「それと明日からみっちり練習するから、覚悟しといてね」

憂「はい、頑張ります!」

純「お手柔らかに」

梓「純、憂。マジで期待してるから」!

憂「う、うん」

純「過度の期待は、禁物かなぁ」

梓「今の私が頼れるのは二人だけだから、お願いします!」

二人「……」

19: 2011/03/29(火) 03:57:36.45 ID:kWovXzpmO
純「よっしゃ! 私に期待しなさい!!」

憂「私も梓ちゃんの力になれるよう、頑張るよ!」

純「だから梓は大船に乗ったつもりで……」

梓「泥船じゃないよね」

純「違うやい!」

憂「もぉー、梓ちゃんたら」

梓「ふふっ」

梓(ありがとう憂、純)



純「今何時だっけ?」

梓「九時だね」

純「そろそろ終点に行く?」

憂「うーん。もうちょっと、三人で話そっか」

梓「そうだね」

純「梓、なんかお題出して」

20: 2011/03/29(火) 03:59:00.12 ID:kWovXzpmO
梓「えー、なんで私が」

純「部長だから。別になんでもいいよ」

梓「えーと……じゃあ、桜が綺麗だね」

憂「うん!」

純「そだね」

三人「……」

梓「もっと何か答えてよ!」

純「分かったよ。憂、どうぞ」

憂「えーっと、桜……夜桜」

純「四重奏?」

梓「……」

21: 2011/03/29(火) 04:00:12.08 ID:kWovXzpmO
憂「会話が続かないね」

梓「なんか、お題出した自分が恥ずかしい」

純「じゃあ次は憂。もう自分の決意とか悩みとか好きに言っちゃえ」

梓「また大袈裟な……酔ってる?」

純「お酒なんか飲んでないから」

憂「分かった。えっとね……お姉ちゃんがいなくなって寂しいです!」

純「えっ?」

梓(そう来たか)

純「酔ってる?」

梓「えっ?」

22: 2011/03/29(火) 04:02:21.84 ID:kWovXzpmO
憂「こういうのじゃ、ダメかな?」

梓「……ダメじゃないよ。だって、憂の気持ち分かるもん」

純「まぁ、唯先輩が修学旅行に行った日も憂、帰って来ないって気付いたら涙目になってたもんね」

憂「あ、あれは!」

純「夏フェスの時とかどうしてたの?」

憂「あの時は、別に……も、もう寂しくないから! お姉ちゃんがいなくても平気だもん!」

純「ありゃー、拗ねちゃったか」

憂「ふーんだ!」

梓「だったら私、たまには憂の家に泊まりに行くよ」

憂「いいの!」

梓「うん。だって、軽音部の仲間じゃんか」

23: 2011/03/29(火) 04:04:47.60 ID:kWovXzpmO
憂「ありがとう、梓ちゃん!」ダキッ

梓「ちょっ、憂!」

憂「梓ちゃんが来てくれたら、嬉しいよー」

梓(可愛いなぁ、おい)

純「うぅー、だったら私も泊まりに行く! 私だって軽音部の仲間だもん!
  いいよね、憂!」

憂「うん。その時は、美味しい料理用意して待ってるからね」

純「了解」

梓「じゃあ、次は純だね」

純「私か……私はねぇ」

憂「うんうん」


純「みんなと楽しい思い出をたくさん、作れたらいいなぁ」


梓「思い出?」

憂「思い出かぁ」

24: 2011/03/29(火) 04:05:50.56 ID:kWovXzpmO
純「三年生になったら、進路や受験とか色々あるけど、そんな中でも私は楽しい思い出を作りたいんだ」

梓「……」

純「そしてそれが、自分の宝物になるくらい大切なモノにしたい」

憂「……」

純「って、気取り過ぎかな?」

梓「ううん。そんなことないよ」

憂「私も、思い出は大切にしたい」

梓「いい考えだと思うよ」

純「そっか……だったら憂、梓。これからもよろしくね」スッ

梓「よろしく」ギュッ

憂「私も、よろしくね」ギュッ

純「ありがとう」

25: 2011/03/29(火) 04:07:38.36 ID:kWovXzpmO
梓「そろそろ帰ろっか」

憂「そうだね。明日から学校だもんね」

純「じゃあ、缶を捨てて」

ヒュー!

憂「風が!」

純「ちょっと強いね!」

梓「あっ、見て」

ヒラヒラ、ヒラヒラ

憂「うわぁー、桜吹雪だよ!」

梓「綺麗だねぇ」

純「おぉー、なんかいいもん見れた気がする」

梓「明日、いいことありそうだね」

憂「クラス。一緒だといいね」

純「そうなれば最高だよ」

26: 2011/03/29(火) 04:09:08.37 ID:kWovXzpmO
梓「純、今日は誘ってくれてありがとう」

憂「私もありがとう」

純「いやー、照れるなぁ」

梓「あっ、純が照れてる」

純「わ、私だって照れることくらいあるよ!」

憂「ふふっ、そうだね。じゃあ、行こっか」



純「ねぇ」

憂「何?」

純「来年また、ここの夜桜見に来ようよ」

梓「そうだね。今度入る新入部員や」

憂「お姉ちゃん達も一緒に、お弁当や飲み物持って」

純「うん」

27: 2011/03/29(火) 04:09:59.31 ID:kWovXzpmO
―――

終点。

梓「じゃあ、帰ろっか」

憂「うん」

純「あぁー、しまった!」

梓「ど、どうしたの純!?」

憂「急に大きな声出して」

純「思い出作りに誘ったのに、その写真撮るの忘れた!」

梓「携帯で撮ればいいじゃん」

純「そりゃ分かってるけど、夜桜をバックに撮りたいんだよ!」

梓(また細かいことを……)

28: 2011/03/29(火) 04:10:54.08 ID:kWovXzpmO
憂「二人ずつ撮るのは?」

純「三人一緒がいい!」

憂「合成する?」

純「味気ない!」

梓「我が儘だなぁ」

純「あーあ、誰かいないかなぁ。写真撮ってくれる人」

「あらあなた達、何やってるの?」

純「えっ……あー、あなたは」

梓「さわ子先生!」

さわ子「こんばんはー」

憂「こんばんは。先生は何やってるんですか?」

さわ子「私は友達と夜桜見物よ。このあと、知り合いの居酒屋に行くけど、あなた達も来る?」

29: 2011/03/29(火) 04:12:08.24 ID:kWovXzpmO
梓「いえ、行きません。明日から学校ですから」

さわ子「あらそう。私も学校あるんだっけ?」

梓(おいおい)

純「さわ子先生!」

さわ子「あらえっと、鈴木さんだっけ?」

純「そうです。あの、お願いがあります」

さわ子「何かしら? お金以外の相談なら乗るわよ」

純「携帯で私達の写真を撮って下さい!」

さわ子「……はい?」



さわ子「ほら、ニッコリ笑って……梓ちゃん、もっと笑顔……そうそう。よし、いくわよ。ハイ、チーズ」

ピ口リン!

さわ子「撮れたわよ」

純「ありかどうございました!」

30: 2011/03/29(火) 04:12:56.58 ID:kWovXzpmO
―――

帰り道。

梓「じゃあ、私と憂は向こうだから。明日、遅れないでね」

純「分かってるよ」

梓「ベースもいるからね」

純「分かってますよ!」

憂「じゃあね純ちゃん、おやすみ」

梓「おやすみ」

純「はい、おやすみ。また明日ねー」



純「ふわぁー。さてと、帰りますか」

31: 2011/03/29(火) 04:16:47.52 ID:kWovXzpmO
どーも、鈴木純です。

今日、新しい思い出が一つ増えた。

三人で夜桜見物に行けて、本当に良かったよ。

さわ子先生に撮影して貰った写真だけど、
結構、良い感じに撮れてたよ。

待ち受けしようとか冗談言ったら、梓に怒られちゃった。


さて明日から私達は三年生になるけど、梓や憂と同じクラスになれてるかな。新入部員来るかな、受験は大丈夫か!?


まぁ色々と未来に不安はあるけど、今それを考えても仕方ない。


純「とりあえず今日はぐっすり寝るぞー!!」



おしまい

34: 2011/03/29(火) 04:24:15.13 ID:dXWPbl5l0
おもしろかったよ乙

35: 2011/03/29(火) 05:04:27.36 ID:LRdCGfT20
いいね、こういう爽やかなの。

引用元: 純「夜桜見物に行こう」