1: 2011/04/29(金) 21:07:13.29 ID:lTmv2Zw6P
   夏休み、ハンバーガーチェーン店内

律「あちーよ、もう。異常気象だな、今年は」

澪「毎年言ってるだろ、それ」

律「でも、澪だって暑いだろ」

澪「・・・心頭滅却すれば火もまた涼しだ」

律「それはやせ我慢って言うんだよ。あーあ、早く秋にならないかな」

澪「夏は、まだ始まったばかりだぞ」


2: 2011/04/29(金) 21:09:16.57 ID:lTmv2Zw6P
   平沢家、リビング

唯「ういー、アイスー」 ごろごろー

憂「アイスばかり食べてると、お腹壊すよ」

唯「うーいー」

憂「はい、これ」 こぽこぽ

唯「アイス?」

憂「熱いほうじ茶だよ」

唯「真夏に飲む物でもない気がするけど。・・・あちあち」 ずずー

憂「どう?」

唯「ちょっと、気分がすっきりしたかも」

憂「うふふ♪」

3: 2011/04/29(金) 21:11:21.41 ID:lTmv2Zw6P
ピロピロピロ

唯「・・・ムギちゃんからメールだ」

憂「海外に行ってるんだよね」

唯「昨日帰ってきたみたい。・・・今すぐ駅前に集合だって」

憂「駅前」

唯「ギー太持参って書いてある」

憂「私、着替えの用意しておくね」

唯「どして」

憂「多分、合宿のお誘いだよ」

唯「そかな」

憂「お姉ちゃんは、ギー太の準備をお願い」

唯「分かったよ。でもその前に」

憂「アイスは、めっ」

唯「うーいー」

4: 2011/04/29(金) 21:13:21.15 ID:lTmv2Zw6P
   駅前

唯「お待たせー」

律「遅いぞー。というか、それなんだ?」

唯「着替えとタオルとお菓子と、後は水着と」

律「どうして」

唯「合宿だから」

澪「え?」

紬「せいかーい♪」

梓「えっ?」


5: 2011/04/29(金) 21:15:32.26 ID:lTmv2Zw6P
紬「大丈夫よ。一応、一通りの物は揃えてるから」

澪「どういう事だ?」

紬「お父様の知り合いが別荘でバンドの練習をしてたのだけど、予定を早めて戻って来たの。だからそこを使わせてもらうの」

梓「私、ギターしか無いんですけど」

紬「のーぷろぶれむ♪」

澪「私も、ベースだけだぞ」

紬「ゆーあー、うぇるかむー♪」

律「私なんて、スティックだけだ」

紬「ぐっ、じょーぶっ♪」

律「それは違うだろ」

7: 2011/04/29(金) 21:17:28.58 ID:lTmv2Zw6P
   特急電車内

がたん、ごとん、がたん、ごとん

律「お、段々緑が増えてきたな」

梓「山に行くって事か?」

紬「山というか、高原に近いかしら」

澪「もったいなくて、罰が当たりそうだ」

律「人間真面目に生きてれば、いつか良い事があるんだよ」

澪「それはもっともだが、お前が言うな」 ぽふっ

唯、紬、梓「あはは」


8: 2011/04/29(金) 21:19:17.31 ID:lTmv2Zw6P
律「でもちょっと、お腹空いてきたな。シェイクを飲んだだけだし」

唯「そうだろうと思って、じゃじゃーん」

梓「おにぎり、ですか」

唯「憂が握ってくれたんだ。一人に一つずつあるよ」

澪「本当に良く出来た妹だな」

律「じゃ、遠慮なく。・・・ナイスおかか♪」

梓「たらこラッキー♪」

紬「ゆかりデリシャス♪」

澪「普通に食べろよ。・・・おおっ。いくらグッジョブ♪」

唯「ういー、ありがとー♪」

がたん、ごとん、がたん、ごとん


9: 2011/04/29(金) 21:21:36.32 ID:lTmv2Zw6P
 がたん、ごとん

澪「・・・ああ、寝ちゃってたか」

律「うーん。重いよー、重いよー。澪が重いよー」 ぐー

澪「・・・嫌な寝言だな」

唯「おはよー」

澪「そこまで寝てないんだが。・・・ムギと梓も寝てるのか」

唯「ご飯食べたばかりだからね」

澪「唯は大丈夫か、乗り物酔い」

唯「薬飲んできたから。それに少し寝てきたのが良かったかも」

澪「準備万端だな」

唯「そういう事・・・」 くー

澪「お休み、唯」 くー


10: 2011/04/29(金) 21:23:19.91 ID:lTmv2Zw6P
 しゅー、がこんっ

唯「とーちゃーく」 すたっ

澪「・・・なんか、空気が違うな」 すー、はー

梓「本当、良い匂いがしますね」 すー、はー

律「澪の匂いがか?」

梓「なんですか、それ」

律「たはは、冗談冗談」

梓(全く、危ないとこだった) くんか、くんか


13: 2011/04/29(金) 21:25:22.13 ID:lTmv2Zw6P
紬「ここからは歩きなの。ちょっと遠いけど」

澪「贅沢は言わないよ。荷物はベースだけだし」

律「風も気持ち良いし、景色も良いし。ちょっとした散歩気分だな」

梓「本当、高原って雰囲気ですね。」

唯「あ、あずにゃーん」 よたよた

梓「はいはい。バッグの取っ手、片方貸して下さい」

唯「ありがとー」

梓「どう致しまして。さ、行きましょうか」 にこっ

唯「うんっ♪」 


15: 2011/04/29(金) 21:27:25.98 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ風別荘前

紬「えーと。・・・ここで間違い無いみたい」

梓「うわぁ・・・。ドラマに出てきそうな、まさしく高原の別荘ですね」

澪「裏手に小川が流れてて、正面が林か。スーパーも駅前にあったし、結構良い場所だな」

律「小鳥なんかさえずっちゃってさ。生きてる間にこんな思いが出来るとは思わなかったぜ」

唯「私はもう、この玄関先で満足だよ」

紬「まあまあ♪取りあえず、中へ入りましょうか」

カチッ



16: 2011/04/29(金) 21:29:38.68 ID:lTmv2Zw6P
梓「へぇー。内装も、外観のイメージ通りの素敵なコテージですね」

紬「お父様がフィンランドで見かけた家を、そのまま移築したんですって」

唯「遠くからようこそっ」 びしっ

律「いや。それは私達もだから」

澪「フィンランドでそのまま移築なら、もしかして?」

紬「勿論、サウナ完備でーす♪」

律「おいおい。私達は、一体どこの国のお姫様なんだよー」

梓「なんだか夢みたいな話ですね」

澪「それは良いけど、合宿という大前提を忘れるなよ」

律「真面目な奴め。なあ、唯。ん、唯?」


17: 2011/04/29(金) 21:31:29.38 ID:lTmv2Zw6P
唯「サウナは暑いから、私は良いよー」 ぐったり

澪「確かに、室温は100度になるらしいからな」

唯「・・・それって、入って平気なの?ねえ、りっちゃん」

律「私に振るなよ。その、なんだ。暑いと思うから駄目なんじゃないのか?」

梓「そういう精神論の問題でしたっけ」

唯「たるみきってる私達には、ちょっときついんじゃない?」

律「どうして私のお腹を見るのかな、平沢さん」


18: 2011/04/29(金) 21:33:31.05 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内スタジオ

唯「と-どけー♪」 じゃーん

律「んー。場所が違うと、音も違って聞こえるな」

梓「アンプやスピーカーも、すごいのが揃ってますからね」

澪「うん。久し振りに、良い演奏が出来た♪」

紬「そろそろ、夕ご飯の買い物に行く?」

澪「本格的に、合宿っぽくなってきたな」

唯「となると、私の出番が」

律「出前頼もうぜ、出前」

唯「りっちゃん、しどいよ」

澪、紬、梓「あはは」


19: 2011/04/29(金) 21:35:33.52 ID:lTmv2Zw6P
   駅前スーパー

律「結構普通に揃ってるな」

澪「後は、何を作るかだ」

唯「カレーじゃないの、カレー」

梓「合宿ですし、確かにそれが良いかも知れませんね」

紬「それと、デザートも買わないと」

唯「アイスー」

律「食べ物の事になると、途端に積極的だな」

澪「でも、アイスか。良いな、それ」

紬「大きいのを一つ買って、分けながら食べるのはどう?」

唯「うーいー♪」

梓(何故ここで、憂)


20: 2011/04/29(金) 21:37:30.22 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内キッチン

ことこと

澪「・・・良い感じになってきたな」

律「シーフードだから、あまり煮込まない方が良いだろ」

紬「ご飯炊けましたー♪」

梓「サラダも出来ました♪」

唯「スプーン、持ちましたー♪」

律「気が早い」 ぽふっ

澪、紬、梓「あはは」


22: 2011/04/29(金) 21:39:31.22 ID:lTmv2Zw6P
唯「ごちそうさまー」

律「あー、食った食った」

梓「私、食器洗いますね」

紬「だったら私も。唯ちゃん達は休んでて」

唯「では、お言葉に甘えてー」 ごろーん

律「豚になるぞ、お前」

唯「ぶひぶひ」

律「わっ。唯が豚になったっ」

澪「あはは、何だそれ」

唯、律「たははー」


23: 2011/04/29(金) 21:41:30.29 ID:lTmv2Zw6P
   キッチン、シンク前

たははー

紬「みんな、楽しそうね」 カチャカチャ

梓「その。今更ですけど、色々とありがとうございます」 カチャカチャ

紬「私こそ、ありがとう。急に誘ったのに、こんな遠くまで来てくれて」

梓「そんな」

紬「本当はちょっと心配してたのよね。誰か一人でも来られなかったらどうしようって」

梓「え?」

紬「それだと来られない人も寂しいし、来た人も寂しいじゃない。やっぱり、5人が全員揃わないとね♪」

梓「はいですっ♪」


26: 2011/04/29(金) 21:43:30.74 ID:lTmv2Zw6P
梓「でも結局、いつも通りって気がしますけど」

紬「そう?」

梓「唯先輩はふにゃふにゃしてて、律先輩は突っ走っちゃって、澪先輩は真面目で。ムギ先輩はみんなを見守ってくれてて」

紬「梓ちゃんも、普段通りに過ごしてる?」

梓「え、ええ。まあ」

紬「私はそれで良いと思うのよ。どこに行っても、変わらず過ごせるのは」

梓「変わらない、ですか」

紬「そう。いつものようにくつろいで、みんなで仲良くしてくれる。私はそれが、一番嬉しいわ♪」

梓「ムギ先輩♪」


むひゃーっ


梓「・・・向こうは何してるんでしょうね、もう」

紬「うふふ♪」


27: 2011/04/29(金) 21:45:30.89 ID:lTmv2Zw6P
   同時刻、リビング

澪「律はテーブルを拭いて。唯は雑誌を片付けて。ほら、早く」

唯「澪ちゃんは、合宿に来ても真面目だね」

澪「これが普通なんだ。何より私達は、ムギのお世話になってるんだぞ。その事も踏まえて行動をしないと」

唯「田舎のお祖母ちゃんちに来たみたいにくつろぐのは?」

澪「どこにお祖母ちゃんがいるんだ」

律「小姑はいるかもな」

澪「お前という奴は。・・・唯、ちょっと押さえてろ」

唯「りょーかいです」 がしっ

律「ひ、平沢さん?あ、秋山さん?ほら、テーブル。テーブル拭かないと」

澪「問答無用。言っても分からないなら、体で教え込んでやる」 もみもみ

律「ば、馬鹿っ。ちょっと、本当っ。やだってっ♪」

唯「二人とも、仲良いねー」

律「そ、そういう状況かっ。むひゃーっ」


30: 2011/04/29(金) 21:47:40.84 ID:lTmv2Zw6P
梓「片付け終わり・・・。律先輩、どうしたんですか?」

律「穢された。穢されちゃったよ、中野さん」 ぐったり

梓「良く分かりませんけど、汚れたならお風呂に入ったらどうですか」

紬「お風呂は命の洗濯っていうものね♪」

唯「サウナはともかく、お風呂は楽しみだー♪」

澪「だったら今日はお風呂に入って、早めに寝るとするか」

唯「あずにゃん、あずにゃん。洗いっこしようか」

梓「しませんよ」

唯「だったら、アララーイって叫ぼうか」

律「どこのローマ人だよ、お前は」


31: 2011/04/29(金) 21:49:31.62 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ離れの温泉

律「あー、くつろぐー」

澪「手足を思いっきり伸ばせるのは気持ち良いな」

梓「少しぬるめで、ずっと入っていられますね」

紬「冬だと雪がちらついて、とても綺麗なのよ♪」

梓「それは風情がありそうですね。・・・唯先輩?」

唯「ういー、アイスー」 ぐったり

律「早いよ、お前は」

澪、紬、梓「あはは」


32: 2011/04/29(金) 21:51:30.85 ID:lTmv2Zw6P
   翌早朝

澪「・・・朝か」 のびー

梓「澪先輩、おはようございます」

澪「ああ、おはよう。みんなは、・・・まだ寝てるみたいだな」

梓「昨日は結構疲れましたからね」

澪「起こす時間でもないし、散歩にでも行こうか」

梓「はいです」


34: 2011/04/29(金) 21:53:30.80 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ周辺、散策路

   ちゅん、ちゅん

澪「少し寒いくらいだな」 ぶるっ

梓「昨日までの暑さが信じられませんね」

澪「全くだ。・・・あれ、ウサギか?」

梓「あ、本当にっ。野生のウサギなんて、初めて見ましたよ」

澪「ウサギはウサギで頑張ってるんだな」

梓「え?」 びくっ


35: 2011/04/29(金) 21:55:31.14 ID:lTmv2Zw6P
澪「・・・ちょっとはしょりすぎたか。つまり普段なら、私達はまだ寝てる時間だろ」

梓「確かに、そうですね」

澪「でもウサギはこんな朝早くから起きて、食べ物を探したり敵から逃げたりしてるんだ」

梓「ああ、なるほど」

澪「なかなか真似が出来ないというか、色々勉強になるよ」

梓「澪先輩は、本当に真面目ですね」

澪「そ、そうか?」

梓「はいですっ♪」


36: 2011/04/29(金) 21:57:29.92 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内リビング

紬「澪ちゃん、梓ちゃん。おはようー♪」

澪「おあ。ムギ、おはよう」

梓「ムギ先輩、おはようございます。・・・唯先輩と律先輩は?」

紬「朝ご飯作ってるわよ」

梓「唯先輩が?」

澪「律は料理得意だし、大丈夫だろ。ふぅ-」 ぱたん

紬「澪ちゃんは、まだ眠そうね」

澪「駄目だな、私は。ウサギを見習わないと」

紬「あらあら、寝言なんて言っちゃって♪」

梓(起きてますよ、多分)


38: 2011/04/29(金) 21:59:31.95 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内、スタジオ

唯「とっまっら、なーい♪」 じゃーん

律「ひー、疲れた」

紬「朝ご飯を食べてから、ずっと練習してたものね」

澪「でも、これが普通だぞ」

律「それはそれ、これはこれ。今日はもう、終わりにしようぜー」

唯「さんせー」

澪「私はあまり賛成出来ないんだが」

紬「だったら澪ちゃんは、アルカリ性ね♪」

澪「え、なんで?肌質の事?」

梓(素で分かってないな、澪先輩)

39: 2011/04/29(金) 22:01:31.46 ID:lTmv2Zw6P
律「・・・なんか、音がするな」

唯「そう言われてみると、確かに。今まで楽器の音で気付かなかったよ」

紬「コテージの後ろに、川が流れてるの。泳げるような深さではないけど、十分に遊べるわよ」

唯「川遊びなんて、それっぽいかも」

律「おー、なんかテンションが上がってきたぞ」

唯「私、水着に着替えてこよーっと」

律「なんだとー」

紬「新品の水着も用意してあるから、りっちゃんもそれに着替えてみる?」

律「おう。私のダイナマイトバディを見せつけてやるぜ」

紬「うふふ♪」

澪「・・・ああ、酸性とアルカリ性って事か。あははははは」 じたばた

梓(一周回ってぼけてくるな)


40: 2011/04/29(金) 22:03:29.88 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ裏手 川原

梓「綺麗な川ですねー」

澪「川に山が映り込んで、その中を魚が泳いでる。これは感動すら覚えるな」

律「いちばーん」 じゃばーん

唯「りっちゃん、ずるいー」 じゃばーん

梓「・・・情緒も何もかも、吹き飛びましたね」 びっしょり

澪「まあ、これも夏の思い出だ」 びっしょり

紬「自然にいると、気持がおおらかになるものね」 びっしょり
 

42: 2011/04/29(金) 22:05:30.79 ID:lTmv2Zw6P
律「みお、みお。みー、おー」 じゃば

澪「そう。自然とは、おおらかな気持に」 ざばっ

唯「みおちゃん、みおちゃん、みーおー、ちゃーん」 じゃば

澪「おおらかな」 ざばっ

律、唯「イャッホーイッ」 じゃば、じゃば

澪「・・・何だろう、この気持。心の底から沸き上がる、体が震えるような感覚は」 ぶるぶるっ

唯「多分それは、心の底から楽しいって証拠だよ」 にこっ

梓(えーっ?)


43: 2011/04/29(金) 22:07:30.89 ID:lTmv2Zw6P
澪「そういう事に、しておくか。・・・えいえいっ」 じゃばじゃば

唯「ひゃー」

律「つめてーよー」

澪「あははー」


梓「本当ですかね、今のは」

紬「それが自然の良い所。夏休みの楽しい所じゃないかしら」

梓「・・・なんだか、分かるような気もします」

律「おーい。ムギと梓も早く来いよー」

澪「ムギー、水が冷たくて気持良いぞー」

唯「あずにゃーん、カニさんがいるよー。カニさんがー」 ちょきちょき

紬「はーい、今行きまーす。梓ちゃん♪」 きゅっ

梓「ムギ先輩♪」 きゅっ

紬、梓「えーいっ♪」 じゃばーん


45: 2011/04/29(金) 22:09:30.66 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ、玄関前

律「うー、結構冷えたな。ムギ、サウナ借りるぞー」

紬「ええ。温度を調節するから、ちょっと待っててね」

律「唯はパスとして、澪は?」

澪「私はお昼の用意をするよ。大して冷えてもないし」

律「そっか。梓、行くぞ」 すたすた

梓「え?あ、あの。律先輩?」 とたとた


48: 2011/04/29(金) 22:11:31.76 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ裏手、サウナ入り口

紬「・・・だいぶ温まってきたし、そろそろ良い具合かしら」

律「ムギは?」

紬「私もお昼の用意をするわ。お二人はごゆっくり」

律「おう。梓、行くぜっ」 カチャ

梓「はぁ」


49: 2011/04/29(金) 22:13:30.67 ID:lTmv2Zw6P
   サウナ内

律「あちー、あちーよ。なんだよ、これ」

梓「サウナですよ」

律「本当にお前は醒めてるな。あちーっ」

梓「・・・でも良いんですか?私達だけ入ってて。それに、ムギ先輩の事も」

律「澪もだけど、お前も本当に真面目だよな」 くすっ

梓「はぁ」

律「まあ二人きりだし、ここでなら良いか。あちーっ」

梓(変な事する気じゃないだろうな) びくっ


50: 2011/04/29(金) 22:15:34.42 ID:lTmv2Zw6P
律「私達はムギに呼ばれて来てるんだから、少しは遠慮しろって事だろ」

梓「まあ、ニュアンスとしては」

律「それもそうなんだけど、私は逆に考えてるんだよな」

梓「はぁ」

律「呼ぶからにはもてなしたい。楽しんでもらいたいって思う人もいる訳さ」

梓「・・・ムギ先輩の性格としても、ですか?」

律「そういう事。だったらむしろ遠慮しない方が、ムギにとっては嬉しいんじゃないかな」

梓「確かに、言われてみるとそうかも知れません」

律「結局、私の勝手な解釈だけどな。・・・あちー、あちーよ。サウナって何だよ。意味分かんないよっ。あちーっ」

梓(もしかして律先輩、無理して入ってるのかな)

律「あちー、あちーっ。誰だよ、サウナを発明した奴はっ」


51: 2011/04/29(金) 22:17:33.60 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内、リビング

澪「おい、律。大丈夫か?」

律「平気平気。元気溌剌・・・」 ぐったり

梓「ちょっとはしゃぎ過ぎました」

紬「楽しんでもらえたみたいで、何よりだわ♪」

唯「そんなに楽しいなら、少しだけ入ってみようかな」

澪「だったらこれを食べた後で、入りに行くか」

紬「それなら私も♪」

唯「りっちゃんは?」

律「私はもう、一生分入ったよ」 ぐったり

梓(今の見た目はあれだけど、ちょっと恰好良いな。それに、お風呂上がりの良い匂いがするし♪) くんかくんか


53: 2011/04/29(金) 22:19:46.41 ID:lTmv2Zw6P
  1時間後

律「・・・あー、よく寝た」

紬「りっちゃん、おはおう」

律「おう。唯と澪は、完全に寝てるか」

紬「サウナの効果はてきめんね」

梓「私、夕ご飯の買い出しに行って来ます」

律「慌てるな、慌ててるな。梓も少し休めよ」

紬「そうそう。ほら、こっちきて♪」 ぽんぽん

律「太ももなのに、膝枕とはこれいかに」

紬「そう言われてみると、案外不思議ね-」

律、紬「あはは」

梓「はぁ」 ごろん


54: 2011/04/29(金) 22:21:30.83 ID:lTmv2Zw6P
紬「梓ちゃんも少し疲れたんじゃない?」

梓「そんな風に見えますか?」

紬「少し寝てから、みんなで買い物に行きましょうね」

梓「はぁ」 こくりこくり


律「・・・寝たか」

紬「梓ちゃんは自分一人が後輩だから、気疲れする面もあるのかしら」 撫で撫で

律「澪と同じで、真面目だしな。ま、それも梓の長所って奴さ」

紬「そうね」 くすり

梓「やってやるですっ」 すかー

律「何をだよ、何を」

紬「うふふ♪」 撫で撫で


55: 2011/04/29(金) 22:23:30.68 ID:lTmv2Zw6P
梓(・・・妙に柔らかくて、良い匂い♪) くんかくんか

唯「おはよー」

梓「唯先輩。・・・でもさっきは、ムギ先輩の膝枕だった気が」

唯「ムギちゃんもよく寝てたから、今度は私の膝枕で寝てもらったの」

梓「失礼しました。皆さんは、良くお休みですね」

唯「起こすのもなんだし、私達だけで買い出しに行こうか」

梓「はいです」


57: 2011/04/29(金) 22:25:30.17 ID:lTmv2Zw6P
   駅前、スーパー

梓「皆さん寝起きですし、軽めの物にしましょうか」

唯「そうめんなんてどうかな?ちゅるちゅるのうまうまだよ」

梓「そういう擬音、得意ですね。でも作るのも簡単だし、良いかも知れません」

唯「総菜コーナーで天ぷらを買えば、天ぷらそうめんにもなるしね」

梓「それも良いかもです。出汁は、市販のを買いますか」

唯「思い切って、チョコそうめんは?」

梓「やりませんよ」

唯「だったら、流しチョコそうめん?」

梓「もう、唯先輩は」 くすっ

唯「たはは」


58: 2011/04/29(金) 22:27:30.63 ID:lTmv2Zw6P
   コテージへ続く山道

梓「日も傾いてきましたね」

カナカナカナ

唯「ひぐらしが鳴いてるよ。綺麗だけど、切ない鳴き声だね」

梓「ええ」

カナカナカナ

唯「何か寂しくなってくるな。・・・憂、どうしてるかな」

梓「唯先輩が帰ってくるのを、楽しみに待ってますよ」

唯「そかな」

梓「ええ。私が憂なら、絶対そう思ってますから」

唯「ありがと、あずにゃん♪」


59: 2011/04/29(金) 22:29:30.32 ID:lTmv2Zw6P
   カナカナカナ

唯「遠くに来て寂しく感じると、いつも思うんだ。私は幸せだなって」

梓「寂しく感じると、ですか」

唯「うん。そう感じるのは、帰る場所。待ってる人がいるからだもん」

梓「・・・そうですね。私もそう思います」

唯「寂しければ寂しい分、私は幸せなんだっていつも思うよ」

梓「唯先輩らしい発想ですね」

唯「そかな」

梓「ええ、そうですよ。今度は憂も誘って出かけましょうよ」

唯「和ちゃんも純ちゃんも、さわちゃんも一緒にね」

梓「はいですっ♪」


60: 2011/04/29(金) 22:31:30.22 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ内、キッチン

澪「ひぐらし?ああ、そういえば鳴いてたな」

紬「風情があって良いわよね」

唯「むー」

律「ミンミンゼミやアブラゼミとは、ちょっと違うよな。というか、あいつらこそなんなんだ?」

紬「でも、頑張ってるって気はするわよ」

唯「むー」

澪「なるほど、そういう解釈もあるのか。・・・唯、どうかしたのか?」

唯「ひぐらしの鳴き声を聞いた後から、喉がかゆくてね。むー」 ぽりぽり

澪「マジで止めろ」


62: 2011/04/29(金) 22:33:30.40 ID:lTmv2Zw6P
律「あー、食った食った」

紬「そうめんだけでも、結構お腹一杯になるわね」

梓「私、後片付けします」

澪「よし、みんなでやるか」

律「おう、頑張れよっ」

澪「お前もやるんだ」 ぐりぐり

唯、紬、梓「あはは」


64: 2011/04/29(金) 22:35:36.02 ID:lTmv2Zw6P
   キッチン、シンク前

澪「大体終わったか。全員でやるとはかどるな」

律「今日も一日、よく働いたぜ」

唯「なんだか、充実してるよね」

紬「今夜は寝かさないわよー♪」

梓(唐突に、何?) びくっ


65: 2011/04/29(金) 22:37:31.03 ID:lTmv2Zw6P
紬「今夜は流星群が見られるのよ」

梓「ああ、そういう事ですか」

澪「へぇ。面白そうだな」

律「なんかワクワクして来たぜ」

唯「流星群って事は、流れ星?」

紬「ええ、そうよ」

唯「だったら、お願い事しないとね」

律、澪、紬、梓「おおっ♪」


67: 2011/04/29(金) 22:39:30.83 ID:lTmv2Zw6P
   コテージ前の庭

律「まずはブルーシートを敷いて、その上に毛布を敷いてと」

澪「なんだか、良い感じになってきたな」

紬「後はお茶の用意もしてと。冷えて来たら、ホットを飲んでね」

梓「蚊取り線香も準備出来ました」

唯「薄闇の中でこの匂いが漂ってくると、夏だなーって思うよ」

澪「うん、うん。分かる分かる♪」

唯「金鳥の夏、日本の夏だよ」

律、澪、紬「あーっ♪」

梓(何才なんだろう、この人達) 


68: 2011/04/29(金) 22:41:30.15 ID:lTmv2Zw6P
紬「流れ星はどの方角でも見られるそうだから、このまま寝転がった方が良いかも」 ごろーん

律「じゃ、お言葉に甘えて」 ごろーん

澪「自然の中で夜空を見ながら寝るなんて、感動すら覚えるな」 ごろーん

梓「天の川が見える事自体、街中では考えられませんからね」 ごろにゃーん

唯「本当、ムギちゃんのお陰だよ」 ごろーん

梓「そんな。梓ちゃんにも言ったけど、みんなが来てくれて私も本当に嬉しいの」 

律「この、可愛い奴め。・・・これからはたまに、全員で誰かの家に泊まったりするか」

唯「その時は私が、全力でおもてなしするよ」

律「憂ちゃんが、だろ」

唯「もう、りっちゃんのいじわる」

澪、紬、梓「あはは」


69: 2011/04/29(金) 22:44:03.75 ID:lTmv2Zw6P
   きらっ☆

梓「あっ。今見えましたよ」

律「梓、願い事だ。願い事っ」

梓「え、えと。あの、その。もっとギターが上手く・・・。消えちゃいました」

唯「むーん、残念。あずにゃん、惜しかったね」

澪「何をお願いするか、初めから決めておいた方が良さそうだな」

紬「瞬発力と計画性が重要ね」 

澪「慌てず騒がず、平常心で挑めば……。あ、見えた」

紬「澪ちゃんっ」

澪「え、えと。あの、その。もっとベースが上手く・・・。消えちゃった」

律「切なすぎて、突っ込む気にもなれん」


71: 2011/04/29(金) 22:46:00.73 ID:lTmv2Zw6P
   きらっ☆

唯「あ、見えた」

梓「唯先輩、早くっ」

唯「えーと、憂に早く会えますように。会えますように。会えますように」

律「・・・色々言いたいが、願いは願いだからな」

澪「でも、意外と落ち着いてるな」

唯「私は、やれば出来る子なんです」

紬「うふふ♪」


73: 2011/04/29(金) 22:48:02.52 ID:lTmv2Zw6P
   きらっ☆

唯「あ、また見えた」

梓「唯先輩っ」

唯「あずにゃんのギターが上手くなりますように。上手くなりますように。なりますように」

律「何気にすごいな」

澪「唯、才能あるぞっ」

律「何の才能だよ、おい」



74: 2011/04/29(金) 22:50:01.65 ID:lTmv2Zw6P
   きらっ ☆

唯「あ、また」

梓「唯先輩っ」

唯「澪ちゃんのベースが上手くなりますように。上手くなりますように。上手くなりますように」

律「本当、ここまで来ると才能だな」

澪「ちょっと尊敬してきたかも知れない」

紬「目が良いのかしら。それとも、見る角度?」

梓「もしくは、変な電波を受信してるかですね」

唯「もう、あずにゃんったら。・・・あ、また」

梓「え?」


77: 2011/04/29(金) 22:52:18.55 ID:lTmv2Zw6P
唯「りっちゃんのドラムが上手くなりますように。上手くなりますように。上手くなりますように」

律「いや。ありがたいんだけどさ。唯」

   きらっ☆

唯「あ、また」

紬「あの、そろそろ自分の」

唯「ムギちゃんのキーボードが上手くなりますように。上手くなりますように。上手くなりますように」

律「あちゃー。いや、あちゃーじゃないけど」

紬「あちゃー、よね♪」 くすり


78: 2011/04/29(金) 22:54:18.53 ID:lTmv2Zw6P
澪「唯。人の事も良いんだけど、自分の事もお願いしろよ」

唯「え?ああ、そかそか」

梓「でもそういう所って、唯先輩らしいです」

唯「褒めてるの、それ?」

梓「さあ」

唯「もう、あずにゃんは」

律、澪、紬「あはは」


79: 2011/04/29(金) 22:56:23.64 ID:lTmv2Zw6P
律「ともかくだ。一番自分がお願いしたい事を頼もうぜ」

唯「そだね」

澪「私はそれ以前に、流れ星が見られるようお願いしたい気分だな」

紬「うふふ♪」

梓「夜は長いですし、ゆっくり待ってればいつか見られますよ」

唯「私はその前に寝ちゃいそうだけど」

梓「その時は寝れば良いんですよ」

唯「そんなもの?」

梓「はい、そんなものです」 にこっ

唯「そかそか」 にこっ


81: 2011/04/29(金) 22:58:23.31 ID:lTmv2Zw6P
   きらっ☆

澪「あ、見えた。え、えと。あの、その。・・・消えた」 しゅん

律「慌てるな、慌てるな。見えたら指をさせ。その方向を全員で見れば、誰か一人はお願い出来るだろ」

紬「軽音部、一致団結ね」

律「そういう事だ。宇宙がどれだけ広くても、私達には敵わないぜ」

澪「どこまですごいんだよ、私達は」 くすっ

紬「うふふ♪まずはお茶を飲んで、一服しましょうか」




82: 2011/04/29(金) 23:00:23.69 ID:lTmv2Zw6P
律「みんなでこうして集まって。ムギのお茶を飲んで、星を眺めて。全く、贅沢な話だぜ。本当、良い夏休み・・・」

   きらっ☆

律「あっ」 びしっ

澪「いっ?」 びしっ 

紬「うっ」 びしっ

梓「えっ?」 びしっ

唯「おーっ」 びしっ


83: 2011/04/29(金) 23:02:10.03 ID:lTmv2Zw6P
律「いつまでもっ」

澪「みんなとっ」

紬「一緒にっ」

梓「いられますようにっ」

唯「え、えーと。和ちゃんと、純ちゃんと、さわちゃんと、憂もねっ」 

 きらっ☆


85: 2011/04/29(金) 23:04:00.53 ID:lTmv2Zw6P
律「・・・なんか、全員被ったな」

澪「それでこそ、私達だ」

紬「やっぱり考える事は、みんな一緒なのね♪」

梓「唯先輩のは、字余りだった気もしますけど」

唯「たはは。ちょっと、欲張りだったかな」

梓「そんな事無いです。とっても唯先輩らしかったですよ」

唯「それ、褒めてるの?」

梓「さあ」

唯「もう、あずにゃんの意地悪」

律、紬、澪「あはは」


86: 2011/04/29(金) 23:06:14.54 ID:lTmv2Zw6P
   同時刻、平沢家テラス

   きらっ☆

憂「あ・・・。・・・お姉ちゃん達が、いつまでも笑顔でいられますように。笑顔でいられますように。笑顔でいられますように」


87: 2011/04/29(金) 23:07:16.31 ID:lTmv2Zw6P
唯「憂♪」

憂「お姉ちゃん♪」



唯、憂「お休み♪」



  終わり


88: 2011/04/29(金) 23:08:16.02 ID:lTmv2Zw6P
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
テーマとしては「夏」ですね。


89: 2011/04/29(金) 23:08:57.54 ID:vM5AUm1g0
乙!
面白かったし和んだよ
律梓と紬梓もいい感じ

引用元: 澪「夏は、まだ始まったばかりだぞ」