1: 2013/03/27(水) 10:34:22.29 ID:Gq7lmdlw0
――深夜

ザアァァァァ…… ゴロゴロ……

-とあるバー-

マスター「……だいぶ降っているみたいですね」

のあ「……」

マスター「やれやれ……今日は貴女が最後のお客になるかな」

のあ「……」

マスター「……」キュッ キュッ コト…

――カランカラン……

P「……」グッショリ

マスター「おっと……いらっしゃい。そこにタオルあるでしょう?」

P「……どうも……」フキフキ

のあ「……」
3: 2013/03/27(水) 10:40:48.82 ID:Gq7lmdlw0
P「……」ギシッ

のあ「……」チラ

マスター「何にします?」

P「……スコッチか、ウォッカか……なんでもいいや、強いので」

マスター「……」コポコポ

P「……はぁ……」

マスター「……どうぞ」カラン

P「……ロックか」

マスター「嫌なことがあったら、ちびちび飲んだ方がいいんですよ」

P「はは……そういうもんですか」

マスター「ええ」

P「……」グイッ

のあ「……」

4: 2013/03/27(水) 10:47:13.36 ID:Gq7lmdlw0
P「ッげほ……もう一杯、お願いします」

マスター「……」コポコポ

P「んッ……あれ、今度は弱いな」

マスター「いきなり強いお酒ばかり飲んだら愚痴も言えなくなりますよ」

P「お気遣いどうも……でも、愚痴なんて言ったところで……もう……」ギリッ

のあ「…………言霊は人間の奥底に語りかけるもの。たとえその人が意識しようと、しまいと」

P「……?」

のあ「……雨の夜に一人酒も悪くないけど。貴方の話、お酒の味に嗜みを添えるくらいにはなるかしら?」

P「貴女は……?」

7: 2013/03/27(水) 10:55:23.58 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……私が誰か、貴方が何者かなんて些末なこと。私が興味あるのは、今にもその口から零れ落ちそうな想い。それとも本当に、くだらないこと?」

P「……ッ」

マスター「……」

のあ「……」

P「……夢を、一緒に追いかけていたんですよ。あるアイドルと」カラン…

のあ「……アイドル?」

P「ええ。俺、アイドル事務所のプロデューサーやってるんで……まぁ、マネージャー兼雑用の名ばかりプロデューサーですけど」

のあ「……」

P「でもまだ22の若造だし、それくらいなんでもなかった。なにより、彼女と一緒にトップを目指そうって思った時は、そんな苦労なんにも苦じゃなかった」

のあ「……彼女」

P「はは……○○っていうんですけど、そんなアイドル聞いたことないでしょう?」

のあ「ええ、一度も」

P「……はっきり言いますね。これでもメジャーデビューはしてたんだけどな」

のあ「同意を求めておいて、おかしなことを言うわね」

P「はは、違いない……ッ」グイッ

9: 2013/03/27(水) 11:06:25.99 ID:Gq7lmdlw0
P「とにかく、俺は初めて事務所に入って彼女を見たときから……絶対にこの人をトップアイドルにしてあげようって決めたんです」

のあ「……」

P「……でも、俺はまだまだ力不足で……全然彼女を売り出してあげることができなかったんです。それでも彼女はひたむきに努力して、ようやくデビューが決まったのに……」ブルブル

のあ「……マスター」

マスター「……」コポコポ

P「あ、どうも……」グビ

のあ「……それで?」

P「……なんなんでしょうね。俺は間違いなく彼女には才能があると思っていた。誰にも負けない実力を持っていると。でも……まぁ、現実って予想をはるかに超えてシビアなんですよね」

P「彼女は、とても真面目で、一途で、本物であろうと必氏で。だから、オーディションで何度落とされても、はいつくばってでも立ち上がって」

のあ「……」

P「俺もッ……支えてあげようと必氏だったのに……もう、俺のそばにはいられない、と……ッ」グイッ

のあ「……惚れてたのね」

P「……ゲホッ、ゲホッ! ええ……いや、本当は違うのかもしれない……」

12: 2013/03/27(水) 11:18:12.07 ID:Gq7lmdlw0
P「俺は彼女を支えるフリをして、本当はアイドルのそばにいる自分に酔っていただけなのかも……だから、愛想を尽かされたんでしょうね」

のあ「……」

P「でも……それでも、一緒に夢を叶えようとしていた人に逃げられるってのは悔しいもんで。なんか、信じていたもの全部に裏切られたみたいな感じがして……」

のあ「……」

P「もう……空っぽになってしまったんです。真っ暗でもうなんにも見えない。トップアイドルの夢さえ、今じゃ本当に幻だった気しかしなくて……」

のあ「……空っぽではないわ」

P「え?」

のあ「貴方が紡いだその物語は、確かに貴方の中に秘められた記憶のカケラ。捨てようとしても捨てられないはずのね……」

P「……」

のあ「……貴方は忘れたいだけ。無力な自分を、きらびやかな理想と異なる世界線があるという事実を。だから、空っぽの自分を演じようとしているだけ」

P「……いけませんか。忘れたいことを忘れることは」

のあ「さぁ……選択が正しいかどうか、そんなことはどうでもいいの。重要なのはその先に何を見据えているか……」ジッ…

P「え?」

14: 2013/03/27(水) 11:28:44.05 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……貴方の目は腐ってはいない。若く、小さな目で、曇り空の向こうにある星の煌めきを忘れていない」

P「……買い被りです。もう今の俺は……」

のあ「明日からすべてを諦めて、彼女との記憶も遠く彼方へ投げ捨ててしまう?」

P「そんなことは!! ……いや、その」

のあ「……」

P「……現実に勝てない人間ほど役に立たない奴はいません」

のあ「……貴方は役立たずのままで終わる人生。そう思って幕を自ら下すのは簡単だけれど……」

P「……!」

のあ「ふふ……」グイッ

P「……マスター、もう一杯」

マスター「……どうぞ」コポコポ

P「ッ……~~~ッ!」グイッ

16: 2013/03/27(水) 11:36:26.92 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……強がりね」

P「ほっといてくださいよ! もう一杯!」

マスター「少しお休みになった方が……」

のあ「飲ませてあげたら?」

マスター「やれやれ……知りませんよのあさん」コポコポ

P「んッ……~~~~~~ッ!!」

のあ「……」コク カラン…

――数時間後

マスター「本当に大丈夫なんですか?」

のあ「……気まぐれ。天気だって変わるわ」

P「ちくしょぉ……なんでうまくいかないんだよォ」

のあ「……」

P「うー、もういい、こんどはもっとすごいひとみつけてぷろでゅーすしてやっぞぉ!」

のあ「……こっちへいらっしゃい」

18: 2013/03/27(水) 11:44:03.12 ID:Gq7lmdlw0
-?????-

P「うー。なんだここ」

のあ「さぁ……どこだと思う?」

P「あーわかった、おれんちだ……あれ、じゃああなたはだれですか」

のあ「……誰だと思う?」

P「うい……すみませんぞんじてないです。でも……」

のあ「……」

P「あなたみたいなひとなら……こんなにきれいなひとをプロデュースできたらなぁ……」

のあ「……彼女のことを忘れられる?」

P「いや……ちがう。おれは、あなたの、もっときれいな姿が」

のあ「……そう」スルッ…

P「……?」

19: 2013/03/27(水) 11:55:38.00 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……私には、私自身の美しさはわからない。草木が自らの美しさを計れないのと同じ。私には私のありのままの姿しかわからない」パサッ

P「……」

のあ「……貴方にはわかるのかしら。私の……」

P「……わかります」

のあ「本当に?」

P「わかります。ただ……今の俺に、あなたの美しさを表現できる力がない」

のあ「……殊勝ね……嫌いじゃないわ」ギュッ

P「(ん……柔らかい。なんだこれ。甘い匂いもする)」

のあ「……貴方になら、期待するのもいいかもしれない。私を照らしてくれる人がいなければ、私も自分を見失ってしまう。月のように」

P「……あなたは、あなたのままで十分輝いてます」

のあ「無粋ね……逃げられたのはそのせい?」

P「……」

のあ「…………気まぐれよ。気にしないで」

20: 2013/03/27(水) 12:05:55.79 ID:Gq7lmdlw0
ザアァァァァ……

のあ「……止まない雨はないわ」

P「雨ばかりの日もあります」

のあ「なら……濡れてしまえばいい。存在の仕方は一つではないわ」

P「……なんで、こんな」

のあ「……気まぐれ。と言ってしまえば、雨も味気ないままだけれど」

P「……」

のあ「……貴方を抱きしめたくなった、というのは迷惑な言い分かしら」

P「……そんなことは」

のあ「……貴方のことはよく知らないけれど」ギュッ ナデナデ

P「……」

のあ「それもやはり、些末なこと。夢を見失ったのなら、もう一度夢のようなひと時に浸ればいい……」

P「……うっ、っく……」ポロポロ

のあ「……強がりね。おまけに、泣き虫」

P「うぐ……ううう……」

21: 2013/03/27(水) 12:14:17.67 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……んっ、ちょっと……」

P「……」

のあ「……甘えん坊」

P「……」

のあ「っ……ん、ぁ……んっ」

P「……」ギュッ

のあ「……?」

P「……Zzz」

のあ「……」

のあ「……少しだけ休みなさい。いずれ再び運命がめぐり合う時まで……」

23: 2013/03/27(水) 12:22:39.16 ID:Gq7lmdlw0
――数日後

-事務所-

P「――おはようございます」

ちひろ「おはようございますプロデューサーさん」

P「(結局、あの女性の名前すら知らないまま、何が起きたのかもほとんど覚えていないまま彼女はどこかへ行ってしまった)」

P「(起きたらホテルに一人で泊まっていた。あの人がずっと近くにいたような気がするが、それもよく覚えていない。変な間違いを起こしていないかといまだにちょっとびくびくしている)」

ちひろ「どうかしましたか? ぼんやりして」

P「あ、いや……」

ちひろ「……彼女のこと、まだひきずってます?」

P「……いえ、プロとしてここに来た以上は、もう引きずっていられませんから」

ちひろ「そうですか。あまり無理はしないでくださいね。……あ、そうそう」

P「?」

25: 2013/03/27(水) 12:31:57.25 ID:Gq7lmdlw0
ちひろ「今度、新しい候補生が所属することになったんですよ。高峯のあさんっていう」

P「そうなんですか」

ちひろ「ええ、プロデューサーさんにスカウトされたと……覚えていないんですか?」

P「俺がですか? うーん……」

ちひろ「今日すでに事務所に来てくれていますよ。応接室で、プロデューサーさんを待ってますから、行きましょうか」

P「はぁ……」

ガチャ

P「誰かスカウトなんてしてきたっけな……」

ちひろ「おまたせしました、高峯さん」

のあ「……お久しぶりね」

P「ファッ!?」ドタン!

ちひろ「? なに驚いてるんです?」

P「ちょ、ちょっとちひろさんは外で待っててください! 挨拶がすんだら戻りますから!」

ちひろ「は、はぁ……それじゃ」バタン

26: 2013/03/27(水) 12:38:07.63 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……あの」

のあ「何?」

P「いえ……その、お聞きしづらいんですけど。この前のことで」

のあ「……貴方、赤ん坊みたいだったわ」

P「!!」

のあ「……それだけよ。体を汚されたわけじゃないわ」

P「いや、その……ならいいんですけど。いやよくはないけど」

のあ「……その様子だと、なにも覚えていないようね」

P「申し訳ありません……」

のあ「あんなに私を口説いておいて……」

P「な、何を言ったんですか俺は……?」

28: 2013/03/27(水) 12:48:06.66 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……」スッ

P「!……あの、なぜいきなり顔を近づけるんですか」

のあ「……私の美しさを表現する力が自分にはない、と」

P「……」

のあ「裸の私を見てそう言ったわ」

P「! す、すみませ、え、じゃあ、ってことは!」

のあ「……勝手に脱いだのは私よ。貴方はお人形みたいに座ってただけ」

P「……そ、そうですか」

のあ「……貴方はどうしてほしい?」

P「え?」

のあ「……トップアイドル。育てたいんでしょう?」

P「…………はい」

のあ「私の力……貴方が引き出さなければ、それは私にもわからない。貴方が導く道に私は従うわ」

P「……なぜ、いきなり?」

31: 2013/03/27(水) 13:00:16.49 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……私の為に、私を照らしてくれる人。貴方がそうだと思ったからよ」

P「でも、俺は……」

のあ「私の為に仕事をする気にはならない?」

P「そんなことは! あなたならきっと最高のアイドルに……!」

のあ「……なら、答えは出ているんじゃなくて?」

P「……」

のあ「くだらないことに興味はないの。私は私の本当の姿を照らす存在……そんな人が私には必要なの」

P「……」

のあ「……私は誰かの代わりにはなれないけれど」

P「……俺は」

のあ「……」

P「他でもない、のあさんが。のあさんを見ていたい。前のことはよく覚えていませんが、きっとただそう感じたんだと思います」

のあ「……」

34: 2013/03/27(水) 13:09:31.21 ID:Gq7lmdlw0
P「俺はまだ若造です。力不足で、貴女を明るく照らす役にはなりきれないかもしれない……もしかしたら、彼女のように失望させてしまうかもしれない」

のあ「……」

P「それでも俺を頼ってくれるなら、あなたの為に働きます。あなたを輝かせるためになんだってやります」

のあ「……そう」

P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……ふふっ」

P「!? な、なぜ笑うんです」

のあ「……貴方の泣き顔を思い出したら、少し」

P「な……わ、忘れてくださいそういうことは!」

のあ「……ガッカリさせないでね」

P「……善処します」

44: 2013/03/27(水) 14:12:28.94 ID:Gq7lmdlw0
保守ありがとうです。
続き描きます。

45: 2013/03/27(水) 14:18:58.88 ID:Gq7lmdlw0
P「ところで、どうやってこの事務所にいると?」

のあ「……財布から名刺を覗かせていただいたわ」

P「……」

のあ「胸を触られた代金としては安いでしょう」

P「え……す、すみません!」

のあ「触らせたのは私……それと」ガチャ

ちひろ「うひゃぁ!?」

P「!?」

のあ「……盗み聞きされるのは嫌いよ」

ちひろ「あはは……いや、ちょっと入りづらくて」

P「ちひろさん……あの、他言は無用でお願いします。本当に……」

のあ「……」

46: 2013/03/27(水) 14:26:49.22 ID:Gq7lmdlw0
P「(――あれ以来、ちょっと他人には言いづらい関係のままで俺は、のあさんの担当となったわけだが)」

-レッスンスタジオ-

のあ「……」キュッ キュッ

トレーナー「す、すごいですね。一度見た振りつけを完璧に……! 以前何かやっていらしたんですか?」

のあ「……ご想像にお任せするわ」

トレーナー「は、はぁ」

P「(そういえば、のあさんの経歴って履歴書にも特に変わったところがないな)」

のあ「……P」

P「あ、はい?」

のあ「……貴方は私の力を完璧に把握している必要がある。よそ見しないで私を見ていなさい」

P「は、はいすみません」

48: 2013/03/27(水) 14:36:31.15 ID:Gq7lmdlw0
トレーナー「高峯さん、もう少し表情を柔らかくできませんか? 笑顔がちょっと足りないというか……」

のあ「……アイドルが笑顔を振りまくのはただの通説。必ずしも作り笑顔がその本人に似合うとは限らないわ」

トレーナー「そ、それは……まぁそうなんですけど」

のあ「……それとも、貴方もそう思うかしら、P?」チラ

P「え? うーん……」

のあ「……」ジー

P「……」ジー

トレーナー「……えーと」

P「……いや、のあさんは無理に笑顔を作る必要はありません。ただ、あんまり顔つきが鋭いとみんなこわがっちゃうので」

のあ「……そんなつもりはないのだけれど」

P「気持ち、相手を優しく包んであげるような感じで行きましょう。のあさんなら大丈夫ですよ」

のあ「……あの夜みたいに?」

トレーナー「え?」

P「ご、ゴホン! じょ、冗談ですから、トレーナーさんもお気になさらず!」

50: 2013/03/27(水) 14:46:54.88 ID:Gq7lmdlw0
-某TV局オーディション会場-

審査員「――それでは、24番『高峯のあ』さん。何か自己アピールしてみてください」

のあ「……」スッ ツカツカ

審査員「? な、なんです?」

のあ「……」ジー

審査員「(か……顔が近い。なんだこの人は)」

のあ「……ふふっ」

審査員「!?」

P「(のあさん!? なぜいきなり審査員の顔を撫でて……!)」

のあ「……高峯、のあよ。覚えておいてね」

審査員「あ、は、はい……!」ドキドキ

のあ「……」スタスタ

審査員「! お、おほん! で、では次の審査は――」

52: 2013/03/27(水) 14:58:57.89 ID:Gq7lmdlw0
P「……」

のあ「……どうしたの? ちゃんとオーディションに合格したのに……嬉しくなさそうね」

P「いや、その……改めて、のあさんのすごい存在感がわかりました」

のあ「……どういう意味?」

P「普通は、大人の人でも最初のオーディションで失敗するものなんです。緊張して、振り付けや歌詞を忘れたりして」

のあ「……」

P「それを……あんな大胆なことまでして、しかも一分の失敗もなくパフォーマンスを披露できるなんて……正直度肝を抜かれました」

のあ「……慣れないものではあったわ」

P「それは当たり前です。それでも、おそらくここのディレクターの人たちは皆のあさんの顔を今日一日で覚えてくれたと思いますよ。ものすごい素質です」

のあ「……それはプロデューサーとしては喜ばしいこと……なのに、まるで浮かない顔ね」

P「すみません……ちょっと、複雑で」

のあ「……?」

P「ああいや、こっちの話です。せっかくの初オーディション合格なんですから、もっと張り切っていきましょう」

のあ「……」

53: 2013/03/27(水) 15:07:28.95 ID:Gq7lmdlw0
-LIVEバトル会場-

ワアァァァァ……

P「……惜しかったですね。でも、最初はこんなものです。あまり気落ちせずに……」

のあ「……勝敗に興味などないわ」

P「そ、そうですか」

のあ「……私、どうだったかしら」

P「とても綺麗でしたよ。やっぱり俺の見込みは正しかったみたいです」

のあ「……そう思えてよかったわね」

P「……どういう意味です?」

のあ「……さぁ。私も、思っていたより楽しめたわ……行くわよ」

P「……」

55: 2013/03/27(水) 15:18:08.03 ID:Gq7lmdlw0
-事務所-

のあ「……グラビア撮影……?」

P「まぁ、これもアイドルの大事な仕事です。のあさんは……つまり、魅力的な体ですから、なおさらファンも欲しがっているでしょう」

のあ「……Pもそういうのが見たいのね」

P「……見たくないといえば嘘になります」

のあ「……いいわよ。やってあげる」

P「ありがとうございます」

のあ「貴方、仕事を選ぶってことしないのね」

P「これでも選んでいるつもりですよ。のあさんはそれだけ優秀ってことです……」

のあ「……」

P「……? なにか?」

のあ「その顔、好きじゃないわ。……自分の中だけで暗闇を抱え込もうとする顔」

P「……そう、見えますか」

のあ「貴方を最初に見たときの顔と同じよ」

63: 2013/03/27(水) 15:55:09.02 ID:Gq7lmdlw0


P「……前に話したアイドルのこと覚えてますか?」

のあ「……」

P「彼女、とても真面目だったので。もっと仕事を選りすぐりしてたんですよ。本物のアイドルでなければ、生き残っていけないことを知っていたので」

P「俺が担当する以前にも、アイドルをやっていたそうなんです。だから、俺よりも業界の厳しさを肌で知っていた。シビアな現実に打ちのめされた後だった」

P「彼女は努力家で、一途で、負けず嫌いだった。彼女を尊敬していました。だから俺も必氏に追いつこうとして、彼女の言う通りレベルの高いオーディションをたくさん受けさせた。現役だったころとは時代が違う彼女には、実力で勝負することしかできなかったから」

P「レッスンのし過ぎで、体を壊すこともありました。でも彼女は絶対にくじけなかったんです。アイドルはみんな努力していたけど、彼女はその何倍も努力していたと思います。現役の若い子たちが売れていく中で、焦りもあったんでしょう」

P「……それでも、彼女が本物として認められることはありませんでした。何度も何度もオーディションに落ちて……あ、この前みたいな初心者向けのではなくて。もっと高レベルなアイドルを排出している番組の」

P「最後の方は、彼女はもう混乱気味でした。俺もわかりませんでした。こんなにがんばっても認めてもらえないなら、どうすれば認められるんだって……」

P「彼女には間違いなく、誰にも負けない技術があった。なのに、いったい何が足りないんだろう、と」

P「でも……のあさんを見ていると、なんとなくわかってしまう気がするんです。貴女には……アイドルとしての、人に与える強いオーラがある」

57: 2013/03/27(水) 15:28:15.51 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……そうなのかしら」

P「今までの結果が物語っていますよ。この前のLIVEでは負けこそしたけれど、場数を踏んでいけばもうあんなのは敵じゃない……貴女を見ていると、それが確信めいてくるんです」

のあ「……」

P「もちろん、今の俺にとってはとても嬉しいんです。ただ……彼女のことを思い出すと」

のあ「自分が嫌になる?」

P「もっと彼女の魅力を引き延ばす方法があったんじゃないかとか。彼女の努力が報われる場所はもっとたくさんあったはずだとか」

のあ「……」

P「そんな……終わったことばかり考えてしまって……すみません、今は、のあさんのことをしっかり見ていなくちゃいけないのに」

のあ「……私にも努力が必要みたいね」

P「え?」

のあ「早く仕事に行きなさい……私の水着姿が見たいんでしょう?」

P「べ、別にそのために仕事をするわけでは……じゃあ、いってきます」

のあ「……」

60: 2013/03/27(水) 15:39:13.26 ID:Gq7lmdlw0
P「(のあさんのアイドルとしての知名度は、それから飛躍的に伸びていった)」

-アイドルサバイバル・ハロウィン会場-

P「流石に大きなイベントだと会場が広いな……」

のあ「……」

P「緊張してますか?」

のあ「……」ギュ

P「……広い場所で手を握らないでください、誤解されます」

のあ「……緊張しているのは貴方の方みたいね」

P「……こんな大口の仕事に割り込めたのは初めてなんで」

のあ「……どうしたの。今更改まる貴方ではないはず。私たちにしか成し得ないことを成すために……すべきことをする、それだけ」

P「……俺たちにしかできないこと、か」

のあ「……ふっ。堅く考える必要はないわ。さぁ、行きましょう……」

64: 2013/03/27(水) 15:59:22.24 ID:Gq7lmdlw0
ここから>>60の続きです。

-LIVE会場-

のあ「……トリック……オア……トリート……?」

お前ら『うおおおおお!! のあさんんんんんん!!』

P「(すさまじい盛り上がりだ……ファンの数こそ彼女の時ほどじゃないが、あの時はこんな盛り上がりは見られなかった)」

P「(って、ダメだダメだ。今は、のあさんの方に集中しないとな)」

のあ「……」

のあ「貴方たちと一つになることで生まれる私を……見て欲しい」

お前ら『うおおおおおおお!! 一つになりたいいいいいい!!』

P「(それにしてもすごいな……あのオーラはいったいどこから湧いてくるんだろうか……)」

のあ「……」チラ

P「……?」

のあ「……」ウインク

P「! おお……」

お前ら『うおおおおお誰だ今ウインクされたのは!!俺だ!いや俺だあああああ!!』

65: 2013/03/27(水) 16:12:42.27 ID:Gq7lmdlw0
――アイドルサバイバル終了後

P「お疲れ様です。すごかったですよ、観客の熱気!」

のあ「……」

P「? 疲れましたか? 何か飲み物でも――」

グイッ

のあ「……また、嫌いな顔をしていた」

P「……」

のあ「……P、貴方でなければ駄目な理由を、探しなさい」

P「え?」

のあ「私の空白は……貴方が埋める……貴方に足りぬ力は……私が授ける……P、私たちの関係はそういうもの……覚えておいて」

P「のあさん……」

のあ「……」ウインク

P「!」ドキッ

のあ「……帰るわよ」

P「……は、はい」

69: 2013/03/27(水) 16:23:10.82 ID:Gq7lmdlw0
ザアァァァ…… ゴロゴロ…

のあ「……また雨、ね」

P「LIVEの時に降り出さなくてよかったですよ。一本だけ傘借りたんですけど、車にもう一本あるので取りに――」

のあ「待ちなさい」

P「は、はい?」

のあ「貴方の傘に二人で入れば問題ないわ……」

P「そりゃまあ……でもいいんですか?」

のあ「……共に一つの夜を過ごした相手に、今更な質問ね」

P「……それ、本当に外では言わないようにしてください。誰が聞いてるかわからないんで」

のあ「嘘ではないわ」

P「嘘じゃなくてもです! ……行きますよ、濡れないようにして下さい」

74: 2013/03/27(水) 16:32:10.41 ID:Gq7lmdlw0
ザアァァァ……

P「……のあさんは、俺がプロデューサーで満足していますか?」

のあ「……気になる?」

P「そりゃ、プロデューサーとしては大切なことですから……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……私は貴方と過ごす時間を面白く思っている。……それが答えよ」

P「……そう、ですか」

のあ「……不安?」

P「まぁ、二の舞にはさせたくありませんから」

のあ「……私が貴方についていくと決めたのは、私の意志。そして仮に離れるとしても、それは同じ巡り合わせの先にある結末……」

P「……」

のあ「願う心こそが……力。貴方が望めば、夢は地上に舞い降りる……私が貴方を、貴方が私を助けるから」

76: 2013/03/27(水) 16:41:11.60 ID:Gq7lmdlw0
P「……ありがとうございます」

のあ「……礼を言うのは少し早いんじゃなくて?」

P「いつ巡り合わせがあるかわからないので」

のあ「そう……ふふ」



――後日

-事務所-

のあ「……」ガチャ

ちひろ「あ、のあさんおはようございます」

のあ「……Pはまだかしら?」

ちひろ「プロデューサーさんですか? ちょっと外回りに出ていますよ。昼過ぎには帰るかと」

のあ「そう……」

雪美「……」

のあ「……?」

雪美「……」チラチラ

80: 2013/03/27(水) 16:53:52.89 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……こっちへいらっしゃい」

雪美「! ……P、は?」キョロキョロ

のあ「……帰社は午後だそうよ」

雪美「そ、そう……」

のあ「……」

雪美「…………誰?」

のあ「……高峯のあ」

雪美「…………仲間?」

のあ「貴女がここのアイドルなら、仲間だと思っていいんじゃないかしら」

雪美「…………」トテテテ

のあ「……子猫みたいね、貴女」

81: 2013/03/27(水) 17:00:29.26 ID:Gq7lmdlw0
雪美「……猫……好き……?」

のあ「……嫌いではないわ」

雪美「…………そう……」シュン

のあ「……でも、子猫は好きよ」

雪美「!」キラッ

のあ「……おいで」

雪美「………♪」トテテテ

のあ「……お名前は?」

雪美「……佐城……雪美……」

のあ「そう」ナデナデ

83: 2013/03/27(水) 17:03:09.95 ID:Gq7lmdlw0
雪美「……のあ、は……いつからいた……?」

のあ「少し前」

雪美「…………綺麗……すごく……」

のあ「ありがとう……貴女も可愛いわよ」ナデナデ

雪美「……♪」

ちひろ「(なんかあそこだけ世界が違うんですが……)」

85: 2013/03/27(水) 17:10:40.40 ID:Gq7lmdlw0
P「――すみません、のあさん遅くなって……」

雪美「Zzz……」

のあ「……迷い子猫よ」

P「いつの間に雪美と……起こすのもかわいそうだしこのままでいいか」

のあ「何か、貴方と私の夢をつなぐ橋となるような仕事はとれたかしら?」

P「そんな大げさなものじゃないかもしれませんが……また以前と同じ、アイドルサバイバルの出場権を賭けたオーディションが取れました」

のあ「そう……」

P「ただし、今回は特別のスペシャルゲスト枠です。他にも精鋭アイドルたちがこの枠を狙ってくると思います」

のあ「……厳しい戦いになる、と言いたい?」

P「……のあさんの今の実力なら、十分に狙えると思っています」

のあ「なら、そんな顔をするのはやめなさい。不穏な空気は細やかでも感染するもの……」

雪美「……うにゅ……」

のあ「……ほらね」

P「……すまん、起こしちゃったな雪美」

87: 2013/03/27(水) 17:21:32.44 ID:Gq7lmdlw0
雪美「P……? Pと……のあ……友達?」

P「俺は、のあさんのプロデューサーもやってるから」

のあ「……この子も担当しているというのは初耳ね」

P「ああ、担当といっても今は細かい方針決定とかだけです。前までは全面的に受け持っていたんですけど、今は別のプロデューサーに」

雪美「……Pじゃないと……少し……さびしい……」

のあ「ずいぶんと懐かれているじゃない」

P「いや、俺も猫が好きなんで……そのせいかと」

のあ「……そうなの」

雪美「Pの手は……大きいから……落ち着く……」ギュウ

P「わかったわかった……お仕事にはちゃんと行ってるか?」

雪美「うん……」

P「そうか。偉いな」ナデナデ

のあ「……」ジー

90: 2013/03/27(水) 17:31:32.40 ID:Gq7lmdlw0
P「? ああすみません。で、これからはそのオーディションに向けてトレーニングに励むことになります」

のあ「……」

P「のあさん?」

のあ「貴方……いえ、なんでもないわ」

P「え?」

のあ「なら早速レッスンに励むとするわ……子猫ちゃん、またね」

雪美「あ……うん……またね」フリフリ

のあ「その子には手を出しちゃダメよ、P」バタン

P「んな……! ふぅ、あの人はミステリアスなんだか、からかってるだけなんだか」

雪美「のあは……きっと……優しい人……」

P「……ああ、知ってるよ。よく知ってる……」ナデナデ

雪美「……♪」

91: 2013/03/27(水) 17:38:48.38 ID:Gq7lmdlw0
-レッスンスタジオ-

ベテラントレーナー「ハイ、正確なリズムをとって! ワンツースリーフォーワンツースリーフォー!」

のあ「……」キュッ キュッ キュッ

ベテトレ「ふむ、完璧だな! 流石のあさんだ、ダンスに関しては特に問題ありません」

のあ「……ダンス以外には?」

ベテトレ「現時点ではダンス以外の問題も特にない。最高の仕上がりと言っていいだろう」

P「……」

ベテトレ「しかし……問題は、他のアイドルたちもこれくらいのレベルまでなら上り詰めてくるだろうということだ」

P「でしょうね……」

ベテトレ「とはいえ、今のままでも十分なクオリティのパフォーマンスは披露できるだろう。トレーニングの期間もある程度限られている」

ベテトレ「ここからさらにワンランク難易度を上げたトレーニングに移るのも不可能ではないが……そうだな、そのあたりの調整はそちらで話し合って検討してほしい」

P「わかりました」

ベテトレ「だが技術面に関しては、比べて見劣りするようなアイドルはそうそういないだろう……いや、待てよ」

のあ「……?」

94: 2013/03/27(水) 17:46:38.85 ID:Gq7lmdlw0
ベテトレ「しばらく前にアナタが受け持っていたアイドル……何と言ったかな」

P「!」

ベテトレ「あまりにレベルの高いパフォーマンスを目指しているものだから、うちの姉を専属トレーナーとしていた人がいてな」

のあ「……」

ベテトレ「私のプランでは納得がいかないと言って、とんでもなく高度なレッスンを要求してばかりだった。最近になって顔を見なくなったが……」

P「いや……彼女はその……」

ベテトレ「おっと……いや、事情があるなら仕方ない。確かな実力はもつ子だったから、その後が少し気がかりでね」

P「はは……」

ベテトレ「まぁ、なにもそこまで世界レベルのトレーニングを強要するわけではない。自分たちの今の実力と照らし合わせて考えてみてほしい」

P「……わかりました」

のあ「……」

97: 2013/03/27(水) 17:55:36.46 ID:Gq7lmdlw0
――同日、帰り道

ザアァァァ……

P「また雨か……最近多いですね」

のあ「……雨男ね、貴方」

P「はは……本当にそうなのかも」

のあ「……」

P「…………気にしてないつもりだったんですけどね」

のあ「……」

P「大丈夫です。今は後悔とかよりも、のあさんを支えることで頭が一杯ですから」

のあ「……つまらない意地は相手を失望させるだけ。……本音を言いなさい」

P「ぅ……かないませんねやっぱり……」

のあ「……私は、ひとつの仕事が失敗しても構わない。観客が……Pが私を見て満足できるならば」

P「……」

のあ「けれど貴方は……目指す先が違うのでしょう……ならば、私が力を授ける。不安になることはない」

100: 2013/03/27(水) 18:04:12.57 ID:Gq7lmdlw0
P「のあさんには……助けられてばかりだ。本当なら俺が、のあさんを助けなきゃ、いけないのに……」

のあ「……P、貴方は良い眼をしているわ」

P「俺がですか?」

のあ「私には……P、貴方のような夢がなかった。星空を眺めては、遠い先にあるその輝きを、地上から見上げるだけの些細な存在だった」

のあ「……私自身が星になれることを教えてくれたのは、他でもないP……貴方のおかげよ」

P「……」

のあ「自信を持ちなさい。でなければ……私を輝かせる者がこの地上にいなくなってしまう」

P「……すみません、いつも泣き言ばかり」

のあ「……泣き虫なのは知っているわ」

P「それは言わない約束でしょう……」

TATSUYA『――気鋭のサイバネティックナンバー、高峯のあ! NEWシングル近日リリース予定!』

P「おっ……はは、噂をすれば、のあさんのCDが宣伝されてますよ」

102: 2013/03/27(水) 18:13:15.01 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……改めて自分の宣伝を見ると、変なものね」

P「慣れない最初だけですよ。そのうちああいう風にじっと宣伝を見てくれる人を見るとうれ……し……く」

??「……」

のあ「……P?」

P「……あの……瞳子、さん?」

??「え? ――あっ……プロ、デューサー?」

P「やっぱり! 久しぶりじゃないですか!」

服部瞳子「……ええ……あれ? 貴女って……」

のあ「……こんにちは」

P「あ、その……今は彼女の担当をやってるんです」

瞳子「そう……よかったわね、成功して。それじゃ……」クルッ

P「え? あの、ちょっと――」

グイッ

瞳子「ッ!?」

104: 2013/03/27(水) 18:22:04.73 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……いきなりごめんなさいね。この人、ずいぶん貴女とお話ししたがってたの」

瞳子「……」

P「の、のあさん……」

のあ「少しだけのお時間も取れないかしら……? 立ち止まっていたのだからそんなに急ぎでもないでしょう」

瞳子「……わかりました。では、少しだけ」

P「えっと……すみません、突然」

瞳子「いえ、構わないわ……」

のあ「……私はお邪魔でしょうからここで失礼するわ。……瞳子さん? その人をよろしく」

瞳子「……」

P「あ、のあさん……行っちゃったよ。えっと、とりあえずそこの喫茶店にでも」

ザアァァァァ……

のあ「……」

のあ「……ッ……」バシャ…

106: 2013/03/27(水) 18:30:24.84 ID:Gq7lmdlw0
-喫茶店内-

P「……」

瞳子「……」

P「……お元気でしたか?」

瞳子「それなりには。プロデューサーも、相変わらず頑張っているのね」

P「ええ。ホントに偶然あの人と出会って……」

瞳子「高峯のあ、ね。一目でわかっちゃうくらい印象強い人ね」

P「はじめて見たときは、酔っててそんなこと思ってなかったんですけど。改めて見るとすごい人を見つけられたと思います」

瞳子「……」

P「……瞳子さんをはじめて見たときも、感じるものがあったんです。この人は強い力を秘めていると、直感したというか」

瞳子「結果的には買い被りだったけどね」

P「そんなことはありません! あれは……俺が未熟で、貴女の本当の力を引き出せなかったから……」

瞳子「……本当にそう思ってるの?」

110: 2013/03/27(水) 18:43:51.36 ID:Gq7lmdlw0
P「……少なくとも、俺がもう少し上手くプロデュースできたら違っていたんじゃないかと思います」

瞳子「プロデューサーの腕も、確かにあのころはまだ頼りなかったわ。おかげで私の好きにやらせてもらえたんだけど」

P「……すみません」

瞳子「もう、責めているわけじゃないわ……もしかして、私がアイドルを辞めたのは自分のせいだと思ってるの?」

P「それもそうですが……なにより、自分の力不足が原因で貴女の夢を助けてあげられなかったことが……自分で情けなくて」

瞳子「……お互い、時期が悪かったのかしらね。こんな出戻りアイドルの担当をさせられて、ほとんど成果も上がらないまま夢を諦めてしまって」

P「……悔しくて情けなくて、でもなにより瞳子さんがいなくなってしまったショックが大きかったですよ」

瞳子「ごめんなさい。でも……自分で決めたことだから。最後のチャンスを活かしきれなかったのは、私の責任。貴方が背負い込む必要はないわ」

P「……」

瞳子「むしろ、謝らなくちゃいけないのは私の方よ。私のわがままにプロデューサーを巻き込んでしまってごめんなさい」

P「そんな……」

瞳子「でもね、一つだけ言わせて。最後までかっこわるいまま辞めちゃったけど、あそこまで粘って、頑張り続けられたのは貴方のおかげなの」

112: 2013/03/27(水) 18:56:06.11 ID:Gq7lmdlw0
瞳子「もう日の目を浴びることのないからって、ふてくされてた私を見つけて声をかけてくれたのは、貴方。成功するかどうかとか、そういうことも関係なしにもう一度頑張ってみようと思えたのは」

P「……」

瞳子「プロデューサー、貴方が私の魅力を見つけてくれたから。だから、最後の最後まで、倒れてしまうまで頑張れたの」

P「……俺は、そんな努力家の瞳子さんを尊敬してました。俺も、瞳子さんを照らす手伝いをしたいと……」

瞳子「ありがとう。貴方がそうやって私を支えてくれていたから、私アイドルを辞めたいまも全然後悔なんてしてないの」

P「……そうなんですか」

瞳子「そうよ。だから、貴方ももう昔のことで悩まないで。貴方と一緒に最後に頑張れたこと、ずっと覚えてるわ」

P「……」ポロ

瞳子「あら……もう、貴方そんなに泣き虫だったかしら?」

P「……のあさんにもよく言われるんですよ。どうも、なんだか。すみません」

瞳子「……あの人は、きっと私とは違うと思う」

P「?」

瞳子「私は、自分のわがままに貴方を付き合わせてばかりだったけど。高峯さんは、きっと貴方のことを大切に思ってくれているんじゃないかしら」

P「そ、そうですか……なんでわかるんですか?」

瞳子「女の勘。アイドル辞めたら、こればっかり鋭くなっちゃってね。ふふ」

115: 2013/03/27(水) 19:04:41.78 ID:Gq7lmdlw0
――翌日

-事務所-

P「おはようございます」ガチャ

ちひろ「おはようございますー。あら、今日はなんだか顔色が良いですね?」

P「そうですか? それじゃあもうドリンクを買う必要はないかな」

ちひろ「あ、やっぱり顔色最悪ですね。ピッコロ大魔王みたいです」

P「もはや緑色じゃないですか……のあさんはまだ来てないですか?」

ちひろ「ちぇ……のあさんですか? 今朝早くきて、そのままレッスンスタジオに行ったみたいですけど……」

P「もうですか? おかしいな、事務所で打ち合わせする予定だったのに……仕方ない、じゃあ俺も行ってきます」

-レッスンスタジオ-

P「こんにちは。うちの高峯のあは……」

マスタートレーナー「おお、来たかプロデューサー殿」

のあ「……早くいらっしゃい」

P「……え?」

127: 2013/03/27(水) 19:29:14.80 ID:Gq7lmdlw0
P「貴女は確か……ベテさんの」

マストレ「うむ、奴の姉だ。何度か見たことがあるだろう」

P「どうして貴女が……のあさん、もしかして勝手に」

のあ「レベルの高いレッスンを受けたいと言ったら、この人と代わってもらうことになったわ」

P「……わかってます? この人のトレーニングは世界的なアーティストからお呼びがかかるくらい高度な内容なんですよ?」

のあ「……彼女、瞳子さんは……その訓練を受けていたのよね?」

P「え? ま、まぁそれはそうですが……」

のあ「なら、私も同じレベルの訓練を受けるわ……でないと」

P「?」

のあ「……いいえ……完璧でなければ面白くないわ。貴方のために歌い、踊るのなら」

P「そんな……だからって無茶は」

のあ「可能かどうかを検証する前に御託を言うのはおよしなさい」

P「……わかりました。では、のあさんを頼みます」

マストレ「うむ。期間はけっして長くはないが、できるところまで完成させよう。なに、私に付いてくることができれば何も問題はないさ」

132: 2013/03/27(水) 19:42:28.54 ID:Gq7lmdlw0
マストレ「違う、そこの拍子はそんな腑抜けた表情ではない!」

のあ「ハァ……ハァ……」

マストレ「高峯、キミの売りはミステリアスな雰囲気なのだろう? ならば、姿を見せたその瞬間からステージを降りる時まで、一時も自分の空気を乱すな! 後半のフレーズで息の荒さがにじみ出ている」

のあ「……わかったわ……」

マストレ「もう一度先ほどのフレーズからだ」

P「(なんて細かい指導だ……俺が目にとめても気にならない程度の表情部分まで、徹底的に見抜いて修正させるとは)」

マストレ「完璧なパフォーマンスをしたければ、焦るな! そして気を抜くな! 自分に対して一片の妥協も許すな!」

のあ「ッ……」キュッ

マストレ「動きが鋭すぎる! 肩の力を抜いて、そのまま自分の力で流れるように体をコントロールしろ! 振り付けに振り回されるな!」

のあ「フッ……!」キュッ

マストレ「そうだ、そのまま一瞬も気を抜くな! まだ後半の追い上げが残っている」

P「(のあさんがあんなに息を切らせて本気で集中している姿、初めて見た……)」

134: 2013/03/27(水) 19:53:02.04 ID:Gq7lmdlw0
マストレ「……今日のところはこれくらいで終わりにしておく。もう脚が動かないだろう」

のあ「ハァ……ハァ……ええ……」

P「……お疲れ様です。正直、息をのむ内容でした。どうですか、のあさんは?」

マストレ「うむ……彼女はできるだけ体の疲労を少なくできるよう無意識にセーブをかけている節がある。とはいえ、さほど見た目には悪い影響を与えない程度の楽の仕方だったのだろう。いままで妹たちが気づいても見逃していたのも仕方あるまい」

のあ「……ふぅ」

マストレ「しかし、その癖を意識的に叩き潰していけば、あとは余計な手を加える必要もないだろう。全体的には非常に実力があると自信を持っていい」

P「そうですか。よかった……」

マストレ「後は……そうだな、より細かい部分は直接高峯に指導するとしよう。プロデューサー殿は外で待っていてくれたまえ」

P「わかりました。今日はありがとうございました」バタン…

マストレ「……さて、高峯」

のあ「……なにかしら?」

マストレ「まずはこのドリンクを飲め。疲労の回復が早くなる」スッ

のあ「……。……いただくわ」

マストレ「……キミ、何か悩み事はあるか?」

138: 2013/03/27(水) 20:05:18.62 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……」

マストレ「いくらキミが寡黙な性格でも、体の動きは正直だ。キミのダンスを日常的に見ているわけではないが……今日の動きにはずいぶんと力が入っていなかったか?」

のあ「……そう、かしらね」

マストレ「成人とはいえ、私から見ればまだ年頃の女子だ。他人に言いづらい悩みの一つは持っていて当然だろう……が、完璧なパフォーマンスにおいて、心の迷いは大きな障害だ。取り除いておけるならばそれに越したことはない」

のあ「……」

マストレ「やはり、言いづらいことか? 第三者にならば多少なり相談しやすいと思ったのだが……」

のあ「……信じていたいものを信じられないがために、確かな形で絆を証明しようともがく……」

マストレ「ん?」

のあ「信じることでしか証明できないことを知っているのに……自分で己が滑稽に思えてくる。それを、『悩み』だなんて高尚な響きに包んでしまっていいのかしら」

マストレ「……なんだかよくわからんが。要は、自分を信じられずに苦しんでいる、ということか?」

のあ「……初めての経験なのよ。誰かのためになど……考えたこともなかった……自分自身すら……些末な存在だと思って生きてきたから」

マストレ「……。なるほど、やはりよくわからんが……わかった」

のあ「……」

142: 2013/03/27(水) 20:18:48.78 ID:Gq7lmdlw0
マストレ「安心したまえ。少なくともあのプロデューサーの目に映っていたのは、まぎれもなくキミだ。高峯」

のあ「……」ピクッ

マストレ「キミは思ったより回りくどい女のようだな。いいか、アイドルとはいえキミたちは女なのだ。男が振り向かないなら、意地でも自分の姿を魅せつけてみろ」

のあ「……私、を」

マストレ「キミはなぜアイドルになった? 誰のためかはわからないが、完璧でありたいならば初志貫徹することだ。面倒なことはそのあとでも構わんさ。人生は長いのだから」



――後日

-事務所-

P「さて、今日はアイドルサバイバル委員会の打ち合わせ会議だな……のあさんのトレーニングには付き添いできないか」

のあ「……」

P「それじゃ、のあさん今日もレッスン頑張って――」

のあ「……P」

P「はい?」

のあ「……仕事が終わったら……スケジュール、空けておいて」

P「え? あ、あぁ……わかりました」

144: 2013/03/27(水) 20:30:29.41 ID:Gq7lmdlw0
-某所会議室-

P「(空けておいて、か……なんだろう。あんな風に誘われたのは初めてだ)」

P「(……よからぬことを想像すると、どうしてもあの日の夜のことを思い出してしまう。あの時本当に俺は、のあさんの胸をさわったりしたのか……? だとしたら結構やばくないか? 今の環境って……)」

P「(いやいやいや。そういうことがあったからこそもう変な気は起こすわけにはいかん。じゃあ、普通に晩御飯に誘われたとか……? しかし、のあさんに限ってそんな平凡な理由でわざわざ約束をとりつけるだろうか……うーん)」モヤモヤ

P「(……)」

P「(そういえば、のあさんが自分から積極的に仕事に乗り気になったのも初めてなんだよな……何か、あったんだろうか)」

P「(やる気になって頑張ってくれるのはいいことだ。でも、打ち合わせをすっ飛ばしてまでレッスンを強化したのには、何かワケがあるんじゃ……いやでも、案外単純に完璧さを追求したいだけなのかも)」

スポンサー「――ということで、我々の予算案に賛同していただける方は挙手を」

P「(うーん……考えてみたら、のあさんのことをよく知らない気がする。いや、そもそもよくわからないのが彼女の性格なわけだから、ある意味俺は一番慣れて……?)」

スポンサー「CGプロの方、何か意見がおありですか?」

P「……え? あ、いや、私は特に何も!」

165: 2013/03/27(水) 21:17:52.48 ID:Gq7lmdlw0
――同日、夜

P「(いかんいかん、のあさんのことが気になってまったく集中できなかった)」

P「(……のあさんのことが? いや、いきなり誘われたからだろう……ん、メールだ)」

『スタジオまで迎えにきなさい』

P「……わかりましたよ」



-レッスンスタジオ前-

のあ「……遅いわ」

P「場所が離れてるんですから仕方ないでしょう。乗ってください」

マストレ「ふむ……では、しっかりな高峯」

のあ「……えぇ」

P「? 何かあったんですか?」

のあ「早く出しなさい」

P「……はい」ブロロロロ……

169: 2013/03/27(水) 21:27:01.06 ID:Gq7lmdlw0
P「で、どこに食べに行くんですか?」

のあ「……お腹が空いたの?」

P「え? いや、まぁ……晩御飯を食べに行くんじゃ?」

のあ「……貴方のそういう純粋さは嫌いではないわ。でも……少しは女心を知りなさい」

P「……すみません」

のあ「……星が観たい」

P「星ですか……じゃあ、山の方でも行ってみますか」

のあ「……Pにしては気の利いた返事ね」

P「どれだけ子ども扱いしてるんですか。瞳子さんと結構長く一緒でしたから、大人の女性に対する扱いくらい」

のあ「……前言を撤回するわ。やはり、女心をもっと知りなさい」

P「(なんだってんだ……)」

のあ「……馬鹿」

174: 2013/03/27(水) 21:35:07.64 ID:Gq7lmdlw0
――キッ ガチャ

P「着きましたよ。この辺りなら、車に乗ったままでも星空が見えますから」

のあ「……」

P「星空を見るの好きなんですか?」

のあ「ええ。……だから、雨の日は嫌い」

P「最近は雨ばかりでしたけどね。あ、俺のせいか?」

のあ「……Pの顔は晴れた」

P「へ?」

のあ「最近……いえ、瞳子さんに会ってから……貴方、私が嫌いな顔をしなくなったわ」

P「……そう見えますか?」

のあ「……何を話したのかは、私が知るべきことではない。ただ…………」

P「ただ?」

のあ「……私では癒せなかった貴方の心の曇りを、別の人が小さな風を起こしただけで払い去ってしまった」

P「……瞳子さんが、ですか。まぁ、確かに、悩みの種はあの人と話してスッキリとしましたから……」

177: 2013/03/27(水) 21:46:56.99 ID:Gq7lmdlw0
のあ「私は……結局、Pにとっても些末な存在にしかなりえないのかしら」

P「そんなことあるわけないじゃないですか……らしくないですよ」

のあ「……」

P「正直……あの時のあさんが彼女を引き留めてくれなかったら、また中途半端なまま終わってたと思うんです。あれ以上、俺が踏み入るべきじゃないと思って、一瞬遠慮してしまったんです」

のあ「……余計な世話を焼いたと思っていたわ」

P「いえ、助かりましたよ。おかげで瞳子さんときちんと話ができて、踏ん切りがつきました。彼女は今でも後悔していないと言ってくれたので」

のあ「……惚れていたんでしょう」

P「……なんでそういうことばかり覚えてるんです。……確かに惚れてはいましたけど、今となっては彼女の才能に惚れたのか、本当に彼女自身に惚れていたのか……自分でもよくわかりません」

のあ「ひどい男ね」

P「若造だったんです、本当に……最初にのあさんに愚痴ったときの言葉が全部真実なんでしょう。あの人には申し訳ないことをした」

のあ「……そんなに大切な人?」

P「そりゃあ……忘れることはできないでしょう。向こうもそう思ってくれてるみたいですし」

のあ「……そう」

178: 2013/03/27(水) 21:52:31.07 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……不躾な質問かもしれないんですが」

のあ「……なに」

P「ホント、お門違いだったらすみません……もしかして……その、つまり」

のあ「……なによ」

P「……妬いてます?」

のあ「……」

P「自惚れだったら目も当てられないんですが……のあさんがトレーニングを自ら強化しに行ったのも、瞳子さんの話題を出す度ちょっと機嫌が悪くなったりするのも、それなら合点がいくような気がしなくもない」

のあ「……。…………ハァ……」

P「ぅ……すみません、とんだ見当違いですよね……」

182: 2013/03/27(水) 22:00:02.00 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……脚をマッサージしなさい」

P「え」

のあ「ハードなトレーニングの直後だから痛いのよ」ヌギヌギ

P「え、はぁ、ここでですか?(うわ、のあさんの生脚が俺の膝に……)」

のあ「……」

P「わかりましたよ……痛かったら言ってください」モミモミ

のあ「……」

P「……まだ熱もってますね。相当キツイんですか」

のあ「……」

P「……返事くらいしてくださいよ」

のあ「……」

グイッ

P「えっ、ちょ、のあさん……!? 顔近いですって……!」

187: 2013/03/27(水) 22:13:03.23 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……そうよ。……嫉妬してるの」

P「……のあ、さんッ……」

のあ「最初に会った日の夜……貴方の内に宿った消え入りそうな熱が、儚くて……貴方を抱きたいと思ったわ。……言葉通りの意味で」

P「……近いです、近すぎます、のあさん……」

のあ「そう思って邪な気持ちで近づいたら、逆に私が手籠めにされたわ……貴方に興味を持ったのは、初めはそれがきっかけ」

P「頼みますから……離れてください」

のあ「……でもやはり貴方の心は、別のところ……あの暗い顔が嫌だと言った理由なんて、建前……本当は嫉妬していただけ。貴方が囚われている一人に……」

P「顔が……近い、ですッ……」

のあ「……貴方が私以外の人で良くても、私は……貴方でなければならない。そう……その理由を探しなさいと、言ったわよね」

P「のあさん……ダメですから、これ以上は」

のあ「……私では……ダメなの……?」スッ

P「……お願いします。お願いします、取り返しがつかなくなる前に離れてください、のあさん……」グググ…

のあ「……。……わかったわ……」

190: 2013/03/27(水) 22:22:13.28 ID:Gq7lmdlw0
P「すみません、少し……外の空気吸ってきます」ガチャ バン

のあ「……えぇ」

のあ「……」

のあ「(……嫌な女)」

のあ「(……こんなことを思うのも、初めて……)」

のあ「(……ダメね、やっぱり。こういう時、どうすればいいのかわからない……)」

P「……」ガチャ バン

のあ「……」

P「……すみません、今日は、一度、帰らせてください」

のあ「……えぇ」

P「……のあさんだから、ということで甘える形になってしまいますけど。どうか、今は俺の心中を察してください」

のあ「………………ごめんなさい」

P「謝るのは俺の方です。すみません、俺にはまだ……自分の気持ちと、責任とを天秤にかけて選ぶ勇気がない」

193: 2013/03/27(水) 22:35:30.00 ID:Gq7lmdlw0
P「一つだけ、今はっきり言えるのは」

のあ「……」

P「今の俺は……ほかの何を捨てることになっても、貴女だけは絶対に見捨てない。もし貴女が、アイドルを辞めることになっても」

のあ「…………あ、貴方は……」

P「すみません、今の俺に言えるのは……これだけです。今日は帰りましょう」

のあ「……わかったわ」


――数日後

-レッスンスタジオ-

マストレ「……止めだ。どうした高峯、今までで最悪の動き方だぞ」

のあ「……」

マストレ「やれやれ、人間だから気持ちの整理ばかりは他人がどうこうできん……まぁ、幸いにも後は最後の調整だけだ。今日は早く帰って休め」

のあ「……」

マストレ「……。わからないことは、わからないものだ。利口な高峯ならわかるだろう。人の気持ちは、わからないならそのままで受け入れた方がいい」

のあ「……わかっているわ……そんなことは……」

のあ「(それでも……知りたいと願うなんて……おかしな話……)」

195: 2013/03/27(水) 22:42:28.94 ID:Gq7lmdlw0
-事務所-

のあ「……」ガチャ

ちひろ「あら、お帰りなさいのあさん。今日はレッスンじゃないんですか?」

のあ「……えぇ。Pは?」

ちひろ「今日も営業回りですから……帰るのは夜遅くになりそうですねぇ」

のあ「……そう」

のあ「……」トスン

のあ「……」

のあ「……」

のあ「……はぁ……」

雪美「……」コッソリ

のあ「……」チョイチョイ

196: 2013/03/27(水) 22:46:55.46 ID:Gq7lmdlw0
雪美「……のあ……久しぶり……会えた……」トテテテ

のあ「そうね……」

雪美「……少し……元気、ない……?」

のあ「……。……そうかもね」

雪美「……じゃ……そばにいてあげるから……元気……出して」チョコン

のあ「…………ありがとう」ナデナデ

雪美「……♪」

のあ「……子猫ちゃんは……Pのことが好き……?」

雪美「うん……やさしい……Pは暖かい……」

のあ「……」

雪美「あと……よく泣く……」

のあ「……そうね」

198: 2013/03/27(水) 22:51:48.90 ID:Gq7lmdlw0
雪美「……のあも……Pのこと……好き……?」

のあ「…………ええ。好き」

雪美「大好き……?」

のあ「……。……ええ。大好き」

雪美「じゃあ……みんな幸せ……」

のあ「そう思う……?」

雪美「……Pも……のあが好き……そう言ってた……から……」

のあ「……そう」

雪美「みんな……大事な……仲間……」

のあ「……」ナデナデ

雪美「えへへ……のあの手も……冷たい……気持ちいい」

200: 2013/03/27(水) 22:57:48.47 ID:Gq7lmdlw0
――同日、夜

-事務所前-

P「(ふぅ……だいぶ遅くなっちゃったな)」

のあ「……」

P「うわっ!? ……外で何してんですか、のあさん」

のあ「……星」

P「あぁ……でも、今日曇りですよ」

のあ「えぇ……一抹の希望を抱いて待っていたけれど……晴れないわ」

P「……。今日、時間ありますか?」

のあ「……」

P「少し、飲みたい気分なんで。ちょっとだけ付き合ってください」

203: 2013/03/27(水) 23:06:48.93 ID:Gq7lmdlw0
-とあるバー-

カランカラン……

マスター「いらっしゃ……おお、のあさん。と……」

P「その節はどうも……」

のあ「……ご無沙汰ね」

マスター「どうぞ……今日は何を?」

P「ウイスキーのロックを」

マスター「今日は、ちびちびと?」

P「はは……きちんと飲みます。のあさんは……」

のあ「……アレで」

マスター「はい」

P「アレ?」

のあ「テキーラよ」

P「……なるほど」

209: 2013/03/27(水) 23:16:59.17 ID:Gq7lmdlw0
マスター「しかし、のあさんがアイドルやってるなんてね……見たとき驚いたよ」

のあ「あの夜、口説かれたのよ……」

P「口説いたつもりはなかったんですが……」

マスター「素敵じゃないですか、アイドル……この一杯は、のあさんの新たな人生に私から捧げますよ」

のあ「……ありがとう。サインでも置いていった方がいいかしら……?」

マスター「ぜひとも。釣られてお客さんが寄ってくるんでね……ははは」

P「……では、アイドル高峯のあに」

カキン……!

のあ「……」

P「ふぅ……仕事上がりの一杯はいいな」

のあ「……」

P「……のあさん、アイドルは楽しいですか?」

のあ「……そうね……Pのおかげ。いや……貴方のせいと言うべきか……」ジー

P「そんな目で見ないで下さいよ。楽しいならいいじゃないですか」

214: 2013/03/27(水) 23:28:41.53 ID:Gq7lmdlw0
のあ「……貴方、からかい甲斐があるから」

P「やっぱりからかってたんですか……よくわかんない人だな」

のあ「……貴方は……私をアイドルにして……私の為に働いて、よかったと思ってる……?」

P「そりゃもちろん。こんな素晴らしい女性を発掘できりゃ、アイドルプロデューサーとしては本望ですよ」

のあ「……嫌な男」

マスター「ふふふ……」

P「……まぁ……後悔がないわけでもないですよ。のあさんをアイドルとして連れて行ったことは」

のあ「……」

P「職業柄、やっぱり普通の人と違う見られ方をするもんですから……その人が普通の女性として生きていたら、どんな風になっていたのか、と……考えることがあります」

のあ「……」

P「……瞳子さん、アイドル時代と比べて……すごく穏やかな表情になっていたんです。必氏になって頑張っていたときは、あんなに落ち着いた瞳をしていなかった」

のあ「……」コク…

P「あぁ……気を悪くしないでくださいよ、のあさん……俺が言いたいのはこの先ですから」

218: 2013/03/27(水) 23:41:10.39 ID:Gq7lmdlw0
P「その時思ったんですよ。もしこの人が普通に誰かと結婚して、普通に静かな暮らしを送っていたら……きっと俺は、彼女に会っても何にも感じなかったと思うんです」

のあ「……なぜ、そう言い切れる?」

P「この前会った瞬間わかったからですよ。『この人は、もしかしたら普通の女性であり続けた方が幸せなのかもしれない』と」

P「俺は長く一緒にいたからこそ彼女の心境に心傾いたりしたけれど、それはどちらかというと、彼女の努力に対する尊敬と愛着に近いものだったと思うんです」

のあ「……愛着」

P「そう。確かに大事だけれど、それ以上のもの……執着のある恋慕ではない。だから俺は、途中で彼女の私的な生活を優先することを考えられたんだと思います」

のあ「……私に対しては、違う……そう言いたいのかしら」

P「……のあさんとも結構深く付き合ってますから、もちろん愛着はあります。でも、なんというか……たまに思うんですよ」

のあ「……」

P「もし……貴女がアイドルじゃなかったら……俺がプロデューサーじゃなくてただの会社員だったら。もっと素直に動くこともできただろう、と」

のあ「……貴方にしては回りくどい言い方ね。素面なの?」

P「まだ酔ってはいませんよ……回りくどいのが嫌なら率直に言いましょうか」

のあ「……言えるものなら、どうぞ」

222: 2013/03/27(水) 23:51:45.39 ID:Gq7lmdlw0
P「ですから……つまり……プロデューサーがアイドルを勧誘する時なんて、もうほとんど口説いているのと変わりないわけですよ」

のあ「……貴方がそれを言う?」

P「うぐ……と、とにかく。見た瞬間に『この人の輝く姿を見たい!』なんて思うのはつまり……もはや一目惚れだといってもいい」

のあ「……」

P「立場が少し違えば、愛の告白みたいなものなんです。ですから、もし……ああもう、何て言えばいいのかな」

のあ「……ふふっ」

P「!」

のあ「もう……言葉は要らないわ。P、それが貴方と私でしょう」

P「……」

のあ「人の姿や心なんて移りゆく無常なもの……貴方は私のことをよくわからないと言うけれど、私にも貴方のことはよくわからない」

のあ「……けれど、それでいい。それが私たちのあるべき在り方。……それを知っている貴方だから、私は貴方に身を預けることができる」

P「のあさん……」

224: 2013/03/28(木) 00:01:27.37 ID:3fQ8byVI0
のあ「一つ……わかるとすれば……貴方は泣き虫で、根性なし」

P「……ヤケ酒に走っていいんですか」

のあ「またあの夜みたいなことを期待して……かしら?」

P「ち、違いますよ!」

のあ「ふふ……」

P「……俺ものあさんのことなら一つくらいわかりますよ。意外と意地悪だ」

のあ「……悪くないわね。こういう空気、Pのおかげかしら」

P「……どうだか」

のあ「……ふふふ」

マスター「……のあさん、いい笑顔をしますね」

P「そうですか? 嫌な笑い方ですよ」

マスター「今まで、この人が笑ってる姿を見たことがないものでして。いやはや貴方がいると、のあさんも輝いて見えます」

のあ「……そういう話は本人のいないところでするものよ」

P「どうして?」

のあ「…………恥ずかしいわ」

228: 2013/03/28(木) 00:10:37.98 ID:3fQ8byVI0
――後日

-アイドルサバイバルオーディション会場-

P「……流石に、みんなレベルの高い演技だ」

のあ「……」

P「……余裕ですか?」

のあ「……ご想像にお任せするわ」

P「さいですか……で、本当のところは?」

のあ「……平常運転」

マストレ「高峯の言うとおりだ。彼女は普段から緊張しないタイプのようだから、実力は出し切ってくれるだろう」

P「しかし、少し前まであまり調子が良くなかったと……」

マストレ「どういうわけか、ある日からまた自信を取り戻せたようでな。まぁ詳しくは知らないが……プロデューサー殿も一役買ったおかげだろう」

P「俺が? トレーニングには特に関与していないですけど……」

マストレ「……高峯が苦労するわけだな。キミも女心を勉強したまえ」

P「トレーナーさんにまでダメだしされるとは……」

230: 2013/03/28(木) 00:21:37.61 ID:3fQ8byVI0
のあ「……P」

P「はい、なんです?」

のあ「……私を……魅せてあげる。貴方が引き出してくれたくれた、私の力で……しっかりと見ていなさい」

P「……言われなくても、ちゃんと見てますよ」

のあ「……」

P「どうしました? やっぱり緊張しますか?」

のあ「……居心地がいいとは、こういうことなのかしら、P。……感謝する」

P「……」

『――それでは最後の方。高峯のあさん、どうぞ!』



――……あぁ、P、例えば貴方が輝く星を手に入れたいのならば、私の力できっと叶えてみせるわ……それが、私の………

240: 2013/03/28(木) 00:42:32.59 ID:3fQ8byVI0
――数ヶ月後

-事務所-

P「――ふぅ……ただいま戻りました」ガチャ

のあ「……帰ったわね。……お茶が入っているわ。飲むでしょう?」

P「…………」

のあ「……何を固まっているの。掛けたらいいわ。誰もそれを止めはしない。……私が斯様な衣装を着るのも……また同じことよ」

P「いや……その場合止める人間がいなかったというべきか……ていうかどこにあったんですか、そのメイド服」

のあ「衣装倉庫にあったのよ……誰も私を咎めはしなかった」

P「いえ、ですからその場合……」

雪美「……」クイクイ

P「ん、なんだ。雪美もいt……」

雪美「……のあ……今は……私の……メイド……」

P「……そうか」

243: 2013/03/28(木) 00:53:22.42 ID:3fQ8byVI0
P「……なるほど、雪美は今は黒猫お嬢様なんだな」

雪美「うん……Pは……お父さん……役」

P「そうかそうか」ナデナデ

のあ「お帰りなさいませ……ご主人様……。……P、満足?」

P「ええ満足です。というか、結構楽しんでるでしょ貴女?」

のあ「さぁ……私がメイド服を着ることに意味があるか、それとも気まぐれなのか……其処に意味を見出すのはP、貴方次第よ」

P「(……今度仕事に使えるか検討してみるか)」

P「ああ、そうだ。この間の雛祭りサバイバルの写真集。とうとう再販決まったみたいですよ」

のあ「……笑わないわ。モデルの仕事よ?」

P「インパクトが尋常じゃないって評判でしたからね。あの仕事の影響はかなり大きいみたいです」

のあ「……そうね。私たちにとっても、大きな影響があったわ」

P「……ま、まぁそうですけど」

のあ「……ふふ」

248: 2013/03/28(木) 01:05:14.76 ID:3fQ8byVI0
――時は数ヶ月前、アイドルサバイバル当日

P「のあさーん、準備はできましt……うお!」

のあ「……担当アイドルの晴れ着を見て喜ぶ時の感嘆ではないわよ、今のは」

P「い、いや。思ってたよりものすごいインパクトなんで。でも、なんだろう。のあさんらしいですよ」

のあ「……Pといると私も知らない私に出会うわ。……貴方は私のどこを見ているの?」

P「……俺は、のあさん本人を見つめているだけです」

のあ「そう……ふふ、これが貴方の才能なのね……そう、導く力。……私独りでは決して届かなかった高みへ……」

P「……行きましょう。一緒に」

のあ「ええ……」

251: 2013/03/28(木) 01:13:39.00 ID:3fQ8byVI0
――LIVE終了後

お前ら『うおおおおおお!!! のあ様は何処だぁぁああああ!!!』ドドドドドド

P「み、みなさん落ち着いてください! 高峯は只今、衣装を着替えておりますので――」

お前ら『なんだとおおおおお!!! あの衣装をもう一度俺たちに見せてくれよおおおおお!!!』

P「そ、そんな無茶な……」

のあ「……いいわよ」スッ

P「の、のあさん!」

のあ「三分間……それが貴方たちにあげられる最後の時間よ」

お前ら『うおおおおおウルトラノア様の降臨だああああああ!!!』パシャッ パシャッ

P「の、のあさんいいんですか!?」

のあ「……貴方をあのまま怒号の危険に晒すよりは、ね」

P「ぅ……あ、押さないで押さないで!!」

255: 2013/03/28(木) 01:24:02.16 ID:3fQ8byVI0
P「……ふぅ、やっと群衆が引いた……すみません、着替えてたのに無理させてしまって」

のあ「構わないわ。……ファンの為……全力を尽くす。そう私に教えたのは……貴方」

P「それはまぁ……ま、いいか。俺も最後にちゃんと見れたし」

のあ「……もっとあのままでいて欲しかった?」

P「少しは。でも、俺はいつものままのあさんが好きなんで」

のあ「……」

P「あ、今の好きは単純に言葉通りの意味というか……うーん」

のあ「わかってるわよ……」

P「そう、ですか」

のあ「……Pの前では……メイクを落として、カラコンも外して、衣装も脱いだ素の私で居られるわ。それを知るのは、貴方だけ……光栄に思いなさい」

P「ははぁー。光栄であります」

のあ「……近頃少し生意気になってきたわね」

P「俺も大人になってきたんですよ」

260: 2013/03/28(木) 01:36:36.48 ID:3fQ8byVI0
のあ「……だったら、あの時の返事を言ってもらえる?」

P「……一応、言えることは言ったつもりですけど」

のあ「根性なしは相変わらず……」

P「言えばどうにかなる問題なら俺だって素直に答えますよ。でも……俺はまだ貴女にアイドルを続けてほしい。だから、俺の口から言うわけにはいかない」

のあ「……変なところで強情なのね」

P「誠実と言ってください」

のあ「……何が起きても、貴方と私という二人の人間の絆が変わらなければ、大した問題ではない。……そうは思わない?」

P「……信念には同意します。しかし現実の問題は別の話です」

のあ「貴方……クールね。もっと単純かと思ってた」

P「貴女ほどではないにしろ、多少なり複雑な心は持ち合わせていますよ」

のあ「……私の心が複雑だと思うか、それは貴方の自由。でも……」ツカツカ

P「?」

262: 2013/03/28(木) 01:44:46.00 ID:3fQ8byVI0
のあ「女の心など、いつ気まぐれに揺れ動くかわからないもの。特に私のは……意外と単純かもしれないわよ」

グイッ

P「んむっ!?」

のあ「ん……」チュウウウ

P「むっぐ……! ぷはっ! な、なにするんですかいきなり!?」

のあ「貴方が前に進めないなら……私が押しあげるしかない。予約を取り付けるのは反則かしら?」

P「よ、予約とか、そんな……! だ、誰にも見られてないでしょうね!?」

のあ「大丈夫……それとも、そんなに今のが気に入らなかった?」

P「き、気に入るかどうかの話じゃなくて! 順序ってものを無視しすぎですっ!」

のあ「最初に私の胸を触った貴方が言えること……?」

P「ぐ……ず、ずるいですよ! のあさんはいつも俺の都合なんて無視して、自分のペースで物事を勝手に進めて……!」

266: 2013/03/28(木) 01:56:15.18 ID:3fQ8byVI0
のあ「……そう。Pがそんなに我慢しているとは……気づけなかった、私の責任ね……」

P「う……」

のあ「ごめんなさい……もう……貴方に不用意に近づくのは……止めておくわ」

P「い、いや別にそういう意味で言ったんじゃ……! 別に近づくだけなら、構いませんから」

のあ「……本当に?」

P「本当です」

のあ「そう。言質は取ったわ」チュウウウ

P「んむぅ!? むーんーー!!」グイグイ

のあ「もう……口がゼロ距離まで近づいただけでしょう」

P「こ、この人はッ……! 少しは抑制できないんですか!」

のあ「……忘れたの? 私、最初は貴方の体目当てで近づいたって言ったでしょう」

P「……。帰ります。身の危険を感じるので」

のあ「……ベルトの堅すぎる男は、嫌われるわ」

P「じゃあ、のあさんは俺が嫌いってことですね」

269: 2013/03/28(木) 02:04:13.76 ID:3fQ8byVI0
のあ「……いいえ。P、私は貴方を愛している」

P「ッ……なんてタイミングで、そんなことを……」

のあ「伝えるべきことは、できるときに伝えるの……いつ運命の巡り合わせがくるかわからないから……」

P「……」

のあ「安心なさい……返事を期待して言ったわけではないわ」

P「……俺だって」

のあ「ぇ……」

P「俺だって……のあさんを……愛しています。だから、不用意なことで台無しにしたくない。俺はまだ若いから」

のあ「…………ありがとう」

P「いえ……」

のあ「……」

P「……今日も一杯、付き合ってもらえますか」

のあ「……いいわよ。私はその後の巡り合わせを……期待するけれど」

P「期待しないでください!」

271: 2013/03/28(木) 02:13:38.70 ID:3fQ8byVI0
――数ヶ月後

-事務所-

のあ「――結局、私の期待通り……貴方は私を導いてくれたけど」

P「だ、だからあの日は酔っぱらってそのまま寝ちゃっただけじゃないですか。絶対に間違いは起こしてませんから」

のあ「さぁ……そう思うことで貴方が救われるというのなら、それも一つの真実かもしれない」

P「……いや、俺は確かに朝まで寝ていた。確かにまたホテルに一人取り残されてはいたけど間違いないはずです」

のあ「……でも、事実は時として残酷に人の運命を変えてしまうわ……」

P「……え?」

のあ「実は……デキたのよ。……お腹、わかるでしょう?」

P「!!!!!!!???????」

P「(い、言われてみれば……なんだか妙にお腹がポッコリと出ている気が……! いやまさか! しかしこれはどう考えても……!)」ワナワナ

272: 2013/03/28(木) 02:19:19.95 ID:3fQ8byVI0
のあ「ふふ……」

雪美「のあ……枕……どこー……?」

P「ゆ、雪美……! ちがうんだ、これは……いや、ダメだ現実を受け入れないと……!」ガタガタ

のあ「ここにあるわよ」ガボッ ポフッ

雪美「おお……のあ……お腹から……枕……ドラえもん……?」

P「……………………あ?」

のあ「……大人の猫はなんでもできるのよ」

雪美「すごい……!」キラキラ

P「……あの」

のあ「……」

P「……」

のあ「…………にゃん」

P「オイてめぇコラ高峯ェ!!」



おしる

273: 2013/03/28(木) 02:20:22.53 ID:80TdjSRa0
最後が見えな……なんだおわりじゃないな良かった

305: 2013/03/28(木) 10:19:25.51 ID:3fQ8byVI0
――とある日

-事務所-

P「…………」カタカタカタカタ

P「……疲れた」

のあ「……お疲れ様」ヌッ

P「うおっ、びっくりした。いたんですか」

のあ「さっきからそこにいたわ……子猫ちゃんと一緒に」

雪美「……P……すごく……頑張ってた……」

P「はぁ。それで……またネコミミなんかつけてるんですか」

のあ「……貴方、猫が好きだと聞いたけれど」

P「ええ……え、それでわざわざ?」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」プイ スタスタ

307: 2013/03/28(木) 10:28:35.18 ID:3fQ8byVI0
雪美「のあ……怒った……?」

P「……もしかして、構ってほしかったのかな? のあさんたまにそういうとこあるから……」

雪美「……猫……気まぐれ……時々……構ってほしくなる……」

P「……」

雪美「P……最近……忙しい、から……のあも…………さびしい……かも」

P「……明日って、のあさんオフだったな」カタカタ

P「うん……たまには気分転換した方がいいかな俺も。いい加減休み取らないと怒られるし」

のあ「殊勝な心がけね……」ヌッ

P「わぁ! いつの間に背後に……!」

のあ「……最近退屈してるの。……Pがとってきた仕事だから、仕方なくこなしてるだけ」

P「仕事なんですからいろいろあって当たり前でしょう……わがまま言わないの」

のあ「……」

309: 2013/03/28(木) 10:37:34.73 ID:3fQ8byVI0
P「しかし、休日か……何をすればいいのか自分でもわからない。のあさんて、休みは何をしているんです?」

のあ「プライベート、知りたい? 何の為に?」

P「何のためって…………なんとなく、知りたいからですよ」

のあ「……知りたいと願うなら、知る者に従うこと……わかる?」

雪美「………………デート?」

P「え?」

のあ「……おませな子猫ちゃんね」ナデナデ

雪美「……♪」

P「……ちゃんと変装はしてくださいよ。ただでさえオーラがにじみ出てるんだから」

のあ「……わかったわ」

P「(いきなり機嫌良くなったような……気のせいかなぁ)」

311: 2013/03/28(木) 10:45:19.29 ID:3fQ8byVI0
――翌日

チュン チュン……

P「Zzzz……zzz」

Prrrrrrrrrrrrrr!!

P「ッ!? わ、は、はい! CGプロの者でございます!」ピッ

『……』

P「……? も、もしもし?」

『……○○公園前』プツッ

P「へ? あ、もしもし? ……切れた」

P「……あ、のあさんじゃねーか! 今何時…………」

P「……まだ5時だ……早すぎるだろ……はぁ」

312: 2013/03/28(木) 10:53:37.96 ID:3fQ8byVI0
――○○公園前

チュン チュン…

P「……おはようござ……ふぁあぁ~……」

のあ「……遅刻」

P「超特急で来たんですから許してくださいよ……まさか約束した『明日の朝』が明け方だとは……~あふぁ、眠い」

のあ「……おまじない、いる?」

P「あぁ、なんでもいいです目が覚めるなら……んむぐ!」

のあ「んー……」チュウウウ

P「ッストップストップ!! ダメだって何回言えばわかるんですか! しかもこんなとこで!」

のあ「目、覚めたでしょう」

P「……もういいです……」

のあ「……ついてきなさい」スタスタ

313: 2013/03/28(木) 11:01:46.71 ID:3fQ8byVI0
チュン チュン…

P「……早朝って静かなんですね」

のあ「……」

P「休みはいつもこんな早くから?」

のあ「……えぇ。……前日に飲んでいなければ」

P「……俺は昨日の深夜まで残業してたんですけどね」

のあ「……お疲れ様」

P「せめてあと一時間くらい寝かせてほしかったですよ……っくあぁ~……」

のあ「…………早く」

P「はい?」

のあ「……早くPに会いたかった……なんて」

P「……そうなんですか?」

のあ「似合わない役を演じるものではない、か……フッ」

314: 2013/03/28(木) 11:08:15.25 ID:3fQ8byVI0
P「俺は、のあさんに早く会いたかったですよ」

のあ「……仕返し?」

P「別に……じゃなきゃ眠いのに急いで走ってきたりできませんよ」

のあ「……。……いくわよ」グイッ

P「わかりましたって……」



-小さな喫茶店-

P「こんな早くからやってる喫茶店もあるんですね」

のあ「……」

店員「はいどうぞ、モーニングセットです」

のあ「……ありがとう」

P「……まだ注文してなかったですよね? 常連?」

のあ「……ご想像に」

P「任されました……いただきます」カチャ

316: 2013/03/28(木) 11:17:08.34 ID:3fQ8byVI0
P「コーヒー美味い……ふぅ」

のあ「……」モグモグ

P「……。そういえば、のあさんが食事してるところってほとんど……いや、今まで全く見たためしがないぞ。なんでです?」

のあ「……無防備なところを晒すのは、好きじゃない」

P「……いま、晒してますけど」

のあ「…………Pだからよ」ニコッ

P「!……そ、そうですか」ドキドキ

のあ「……」

P「……外からの音がほとんどしない。人通りも少ない。そんな場所で普通に朝食を食べる……不思議な時間だ」

のあ「そうね……」

P「悪くない」

のあ「…………ふふ」カチャ…

318: 2013/03/28(木) 11:26:47.94 ID:3fQ8byVI0
アリガトウゴザイマシター

P「しかし……眠いものは眠い」

のあ「……そんなに?」

P「いい時間にお腹を満たしたらなおさらですよ……あぁ、このまま一眠りしたいなぁ」

のあ「……。こっちへいらっしゃい、P」

P「はぁ……なんです?」

のあ「……」ストン

P「……? ベンチに座れ、と?」

のあ「……膝」ポンポン

P「……。いや、気持ちはうれしいですけど……バレたらまずいんじゃ」

のあ「……まずいことなんてない」

P「理由になってませんよ……じゃあ、ちょっとだけですよ」ストン

のあ「ふふ……」

P「(うわ、やわらか……やばい、寝てしまう……)」

324: 2013/03/28(木) 12:21:52.63 ID:3fQ8byVI0
のあ「……」ナデナデ

P「……今日はノーメイクなんですね」

のあ「……貴方の前で、だけよ」

P「公衆の目もありますよ、ここは」

のあ「構わない……私は貴方の為に、貴方は私の為に……いるのだから」

P「……うー、寝そう……いかんいかん」

のあ「……」ナデナデ

P「ご機嫌……ですね……」

のあ「……そう思う?」

P「…………Zzz」

のあ「……」

328: 2013/03/28(木) 12:38:23.05 ID:3fQ8byVI0
――数時間後

ブロロロロロ…… ピピー ガヤガヤ

P「――……ん……あれ」パチ

P「!!」ガバッ

のあ「……」

P「す、すみません! 完全に寝入っちゃっ……て」

のあ「……zz」スゥスゥ

P「……」

P「……これは、なかなか……うん」

P「……」パシャッ パシャッ

のあ「……。…………」パチ…

P「あ……おはようございます」パシャッ

のあ「……撮影料を徴収する」

P「あとで払います」パシャッ パシャッ

334: 2013/03/28(木) 12:48:47.71 ID:3fQ8byVI0
P「いやー、しかしいいものが撮れた」

のあ「……」スタスタ

P「寝起きでぼんやりしてるのあさんも結構いいですね、かわいくて。今度新しいCMにこういうコンセプトの」

のあ「……P、うるさい」

P「いいと思いません? 普段クールな感じの人がこういう無防備なところ見せてくれる……これはイケますよ。そうだ、前に登用してもらったあの会社に」

のあ「……」ピタ

P「おっと……どうしました?」

のあ「…………デート中に、仕事の話は禁物」

P「……すみません、ちょっと珍しいものが見れてテンションが……」

のあ「……!」

猫「にぁ~」ヒョコ

猫2「……」ノソノソ

のあ「……」スタスタ

335: 2013/03/28(木) 12:52:16.74 ID:3fQ8byVI0
P「いや、でものあさんの自然な表情って、仕事でつくるようなものじゃないんですよね。より自然に……いっそのこと寝てから撮影するのもアリ……か」

P「……アレ? のあさん? のあさーん?」キョロキョロ



――路地裏

のあ「……」

猫「な~」

猫2「……」

猫3「……」カシカシ

猫4「にゃお」

のあ「……にゃん」

猫5「にゃ」

340: 2013/03/28(木) 13:02:49.41 ID:3fQ8byVI0
――夕方

アホー アホー…

のあ「……」

猫s「……」

のあ「……」

――のあさーん! のーあーさーん!?

のあ「……」

P「……! のあさん! なんで急にいなくなったんですか!」

のあ「……にゃん」

P「にゃん、じゃなくて! 携帯もつながらないし、いきなり消えないでください! 何時間も探し回ったんですよ!」

のあ「……。圏外だったみたいね……心配した?」

P「……正直のあさんだから大丈夫だろうとは思いましたけど。でも、心配になります! まったくもう……せめて連絡ぐらいつく場所にいてくださいよ」

のあ「……」

341: 2013/03/28(木) 13:08:12.62 ID:3fQ8byVI0
のあ「…………こんな場所に流れ着いても……貴方は、私を見つけてくれる」

P「へ?」

のあ「信じてよかったわ……P、貴方のこと」

P「……」

のあ「……感謝する。他に言うことはある? P」

P「……あります」

のあ「?」

P「『勝手にいなくなってごめんなさい』は?」

のあ「…………勝手にいなくなってごめんなさい」

P「……はい、じゃあ、もういいです。そろそろ暗くなりますから、通りに出ましょう」

のあ「……にゃん」

P「猫はもういいですから……」

のあ「……かわいくないかしら?」

P「かわいいですかわいいです」

347: 2013/03/28(木) 13:20:27.91 ID:3fQ8byVI0
P「でも、なんであんなとこにいたんです?」

のあ「気まぐれ……猫のような、ね」

P「……のあさんは完璧に猫タイプですからね」

のあ「貴方は……さしずめ主人に忠実な犬、かしら」

P「そういう言い方されると嫌だな。社畜なのは事実ですけど」

のあ「……私の犬に、なってみる?」

P「これだけ振り回されてたら、もう犬みたいなもんでしょう」

グウゥ~…

P「……そういえば昼ごはんすっ飛ばしてましたね。ていうか、今日特に何もしていませんけど……」

のあ「何かを成し遂げたかどうか……それは人それぞれの心の内で異なるもの。貴方と、私も」

P「のあさんが満足したなら、俺はいいですけど。いつも休日はこんな感じなんですか?」

のあ「そう思うも自由、思わないも自由……日々起こりうるあらゆる事象を、一つの可能性にのみ頼って想像するのは……つまらないことだわ」

P「……要するに、気まぐれなんですね」

のあ「……フッ」

349: 2013/03/28(木) 13:31:37.01 ID:3fQ8byVI0
P「晩御飯はどうします?」

のあ「……それは、私の希望をPが叶えてくれると?」

P「叶えられる範囲なら、なんでもいいですよ」

のあ「……では、Pの塒に案内しなさい」

P「お、俺の部屋ですか? 流石にそれは」

のあ「……胸を触ってキスもしておいて、今更な言い訳ね」

P「……もう、のあさんに逆らわない方がいいのかな俺」

のあ「馬鹿ね……初めから貴方の選択権は私が握っている……そう、私の選択権を貴方が握っているように」

P「もう降参です……ただし、俺は100%変なことをする気はありませんからね」

のあ「さぁ、どうなるかしら……ふふ」

P「ぐぬぬ」

351: 2013/03/28(木) 13:41:04.91 ID:3fQ8byVI0
-Pの部屋-

P「……」

のあ「……」

P「……よく考えたら、朝急いで出てきたまんまだから……当然ぐっちゃぐちゃなんですよね……」

のあ「……汚れたら、掃除する。そうすれば穢れは消える……何も問題はない」

P「すみません、ちょっと待っててくださいね」

のあ「……手伝う」

P「いや、いいですって。洗濯物とか見られんの恥ずかしいですから」

のあ「私は貴方に裸を見られているわ……」

P「……もう好きにしてください」ショボン

のあ「……ブリーフ派?」ピラァ

P「ちょ……福袋に入ってたやつです。履いてませんからね!」

のあ「……そう」ショボン

P「残念そうにする意味がわからない」

354: 2013/03/28(木) 13:47:26.63 ID:3fQ8byVI0
のあ「……」キョロキョロ

P「あらかじめ言っときますが、如何わしい雑誌はありませんよ」

のあ「……」ガサガサ

P「あーもう、手伝ってくれるんじゃないんですか! あれこれ出さないでください!」

のあ「……瞳子さんの写真ね」

P「! そ、それは……仕事の記録です」

のあ「ふーん……ずいぶんと綺麗に……スクラップされているわね。細かい記事まで」

P「……プロとしては1から200まで、担当アイドルを把握していないとダメですから」

のあ「……」パラパラ

P「……。ちゃんと直しといてくださいよ」

のあ「……そんなに大事なもの?」

P「昔の自分の活動記録ですからね。おろそかにはできませんよ」

のあ「……それだけ?」

P「……しつこい」

のあ「……そ」ガサガサ

357: 2013/03/28(木) 13:53:15.29 ID:3fQ8byVI0
P「……」ゴソゴソ

のあ「……」

P「……」ゴソゴソ

のあ「……夕食を作る」

P「え? 作ってくれるんですか?」

のあ「……」ジロ

P「……お願いします(何も睨まなくても……)」

のあ「……ほとんどモノがない」ガパッ

P「一人暮らしなんてそんなもんです。何か買ってきましょうか?」

のあ「いいわ……これだけで」

P「のあさんって、料理もできるんですか」

のあ「……どっちがいい?」

P「そりゃ……美味しいものは食べたいです」

のあ「…………ニブチンね」

358: 2013/03/28(木) 13:59:27.11 ID:3fQ8byVI0
P「……ふぅ、片付いた」

のあ「……」トントントントン

P「何か手伝います?」

のあ「座っていなさい」

P「さいですか……」

のあ「……」グツグツ パコン

P「(……しかし、瞳子さんのファイルか。最近見てなかったな……どれ)」

P「……」パラパラ

P「(懐かしいなぁ。まだこのときは地味な仕事に回ってた頃か)」

のあ「……」セッセ

P「(……頑張ってたなぁ。何も考えずに、突っ走ってばっかり……)」パラパラ

のあ「……」チラ 

360: 2013/03/28(木) 14:06:34.87 ID:3fQ8byVI0
P「……」パラ…パラ…

P「……うん……」

のあ「……」

のあ「………………」ジワッ ツー…

P「のあさん、ご飯そろそ――え、ど、どうしたんですかッ?」

のあ「え……?」

P「いや、なんでいきなり泣いて……?」

のあ「……!」ゴシゴシ

P「ゆ、指でも切ったんですか?」

のあ「な、なんでもない…………玉ねぎのせい」

P「そ、そうなんですか? ……あれ、でも玉ねぎなんて確か……」

のあ「いいから、座ってなさい」

P「……わかりました」

365: 2013/03/28(木) 14:14:05.38 ID:3fQ8byVI0
のあ「……できたわよ」

P「どうも……お、オムレツとスープ。すごい美味しそうだ」

のあ「……嫌いじゃなかった?」

P「好きですよ、オムレツ。では、いただきます」

のあ「……」

P「うん……形だけじゃなくて味も最高ですよ」モグモグ

のあ「……そう。……よかった」

P「オムレツってどう頑張ってもただの炒り卵になっちゃうんですよねー……こんな風に中に具を入れるなんてとても……」

のあ「……」

P「……。元気ないですね」

のあ「……ごめんなさい」

P「いきなり謝るなんて……のあさんらしくないなぁ。もっと、自由でいいんですよ貴女は」

367: 2013/03/28(木) 14:20:57.96 ID:3fQ8byVI0
のあ「自由でいたいと願っても……捕えられてしまった心は、自分では動かしようのないもの」

P「……瞳子さんのこと、どうしても気になります?」

のあ「……いえ……」

P「そうですか……」モグモグ

のあ「……」

P「……のあさん、ちょっとこっちへ」

のあ「……」ストン

P「このめちゃくちゃ積みあがってる書類やらファイルやらの塊、なんだかわかります?」

のあ「……仕事の書類でしょう」

P「ええ。全部のあさんの関連書類と、販売商品の切り抜きとかです」

のあ「……これが、全部?」

P「はい。改めて見るとすごい量でしょう。もう一年以上経ってますから」

369: 2013/03/28(木) 14:33:53.52 ID:3fQ8byVI0
P「これを見せてどうにかしようってつもりではないですけど……もう、ね。のあさんのことは、俺の生活の一部なんですよ」

のあ「……」

P「仕事だから当たり前だって言われたらそれまでですけど……やっぱり俺も、のあさんのファンなんですよ。誰にも負けないファン第一号」

P「ここに帰ってきたら、俺と……のあさんが一緒に重ねてきた軌跡を見てニヤニヤする。別に変な意味じゃないですよ。充足感があるって意味です」

P「理由なんか抜きにして、明日ものあさんと一緒に頑張るぞ、と。そう思ってしまうんですよ。仕事じゃなくても、きっとそう思ってしまう」

のあ「……」

P「だから……なんだろうなぁ。そばにいるのが当たり前で。もうどうしようもなく……のあさんが好きみたいです、俺」

のあ「…………言ったわね、やっと」

P「言葉通りの意味ですよ。だから今の状況を変えたいとか言うつもりはありません」

のあ「……そうね。貴方がそうするというのなら……私もそうする。それが、私と貴方……」

P「気がついたら一蓮托生の間柄ですから、不思議なものです」

のあ「……番、といってもいいくらい」

P「……結婚とかはまだできませんけど」

371: 2013/03/28(木) 14:39:50.75 ID:3fQ8byVI0
のあ「結婚以外なら……」

P「エOチなこともダメです!」

のあ「……貴方、母親みたいね」

P「のあさんがフリーダム過ぎるから、ブレーキ役くらい必要でしょう」

のあ「そう……確かに、それくらいでないと……張り合いがない」

P「だから、俺はずっとこのままです」

のあ「釣れないわね……」

P「……ご飯、早く食べないと冷めますよ。せっかく美味しいのに」

のあ「……ええ」

373: 2013/03/28(木) 14:45:52.61 ID:3fQ8byVI0
P「ごちそうさま」

のあ「……お粗末様」

P「……」

のあ「……今日は晴れているわ」

P「星、観ますか?」

のあ「見える?」

P「電気消せば、そこそこは」パチ パチ

のあ「……そこそこね」

P「街中ですからね」

のあ「ま、いいわ……月が綺麗だから」

P「満月ですね」

のあ「……」

376: 2013/03/28(木) 14:54:11.60 ID:3fQ8byVI0
…………

P「……よく、アイドルは太陽。プロデューサーは月。みたいな言われ方をされるんですよね」

のあ「……なぜ?」

P「アイドルは、みんなを明るく照らす表舞台の太陽。で、みんながいなくなった時間を支えているのが、裏方の月だ、と」

のあ「そう…………私は、そうは思わない。むしろ、真実はその真逆」

P「なぜ?」

のあ「月は……太陽がないと輝けない。太陽は自ら輝くことができるけれど……月は自分だけではなんの力も持たない」

P「……」

のあ「私は月……自分で輝く方法を知らない。でも、裏から私を照らしてくれる太陽……Pがいるから、私は輝き……人々の目に留まることができる」

P「なるほど……それも、確かにその通りだ」

のあ「初めはただのかわいい坊やだったのに……P、負けたわ。貴方は私の力を引き出し、アイドルとして完璧にプロデュースし、そして……」

P「……」

のあ「そして私の心を……」

377: 2013/03/28(木) 15:02:27.19 ID:3fQ8byVI0
P「……撮影料、まだ払ってませんでしたよね」

のあ「え……? っん……ッ!」

P「……」

のあ「……っ……は……」

P「……これで、チャラにしてください」

のあ「……まだ……足りないわ」

P「え」

のあ「私を勝手に撮影した料金は……私が頂点に立ったときの貴方の喜びを足して、ちょうどといったところ」

P「……なるほど」

のあ「……P、私とあなたの夢、叶えましょう? きっと行けるわ」

P「ええ……きっと。二人なら」

のあ「……ふふ」



おしり

378: 2013/03/28(木) 15:03:02.96 ID:iOrQ+SQS0
お、おう

379: 2013/03/28(木) 15:03:20.85 ID:cKokiJMp0
なるほど今からのあさんのお尻が見れるのか

382: 2013/03/28(木) 15:07:10.53 ID:3fQ8byVI0
この後Pの尻が掘られたかどうかは、ご想像にお任せするわ
ではさようなら。

383: 2013/03/28(木) 15:09:52.36 ID:2h0/uP1T0

引用元: 高峯のあ「……お久しぶりね」モバP「ファ!?」