2: 2022/03/05(土) 15:35:12.74 ID:xe7BWInI.net
1話『余は如何にして虹大学徒となりし乎』

~春~

ミア「ついに」

ミア「ついに……来た!」

ミア「今日からボクも虹大生!」

ミア「夢にまで見た理想のキャンパスライフがここから始まるんだ!!!」


~~

マモナク…バンセンニ…カマタユキガ…

ミア「わああああ!」

ドカドカドカッ

ミア「ひいい!」

ガタンゴトン...

「the next station is...Oimachi...」

ミア「降ろせ! 降ろしてくれ!」

ミア「うっぷ……朝のシナガワはcrazyだった…」

ミア「次は……」

ミア「こっちの電車は空いてるな、しかも座れる」

ミア(ようやく一息着ける……)

3: 2022/03/05(土) 15:37:21.43 ID:xe7BWInI.net
ガタンゴトン…

ミア「……」

ミア「入学テスト、難しかったな」

ミア「合格通知と一緒にスコアの開示が届いた」

ミア「外国語の試験はsuper easy」

ミア「でも数学と科学は半分も取れなかった……」

ミア(日本の入学テストは難しいよ)

ミア(あと漢字も勉強しなきゃなあ)

ミア「やることがいっぱいだ」


ガタンゴトン…

ミア「……東洋人の割に黒髪が少ないな」

ミア「近くにテレビ局があるとは聞いたけど、もしかして彼らは芸能人なのか?」

4: 2022/03/05(土) 15:38:59.90 ID:xe7BWInI.net
~虹ヶ咲学園大学前~

ミア「臨海線の虹ヶ咲学園大学前駅から出れば、正門はすぐそこだ」

ミア「……ついに来た」

ミア「今日からボクも……虹大生!」

ミア「夢にまで見たキャンパスライフが……って」

ミア「え!さっきのこいつらまさかみんな同じ大学生か!」


ミア「なんだなんだ、雑誌から抜き出てきたような格好の連中ばかり」

ミア「そ、そのバッグにテキストを入れるのは無理だろう……」

ミア「その爪でどうやってペンを握るんだ!!」

ミア「まるでPRADAを着たあとのハサウェイみたいだ……」

ミア「ボク以外ファッションの入学テストでもあったのか?……いやいや、受験会場にはこんな格好一人もいなかったぞ!」

ミア「……着古したパーカーとジーンズで来た自分が恥ずかしい」

ミア「くそ~、こういうことだったのか」

5: 2022/03/05(土) 15:40:52.69 ID:xe7BWInI.net
ワイワイガヤガヤ!

ミア「構内は部活やサークルの勧誘で大賑わいだ」

ミア「もうちらほら新入生たちでグループが出来上がってる……ボクは完全に出遅れてしまったみたいだ」

ミア「ボクも早く友人を作らなきゃ……」


ワイワイガヤガヤ!

ミア「……」

ワイワイ!ガヤガヤ!

ミア「……輪に入れない」

ミア「各地から入学者が集まるとはいえ、やっぱり元からの知り合いが多いのかな……」

ミア「それともSNSか! Facebookではそんなに見つからなかったんだけどな」

ミア「まずい……4年間ひとりぼっち学生生活はごめんだ……」


「「あのお~wすみませぇ~んw」」


ミア「むっ!? 新入生と思しき女学生の集団が!これはもしかしてチャンス!?」

6: 2022/03/05(土) 15:46:58.56 ID:xe7BWInI.net
「経済学部棟ってどっちかわかりますかぁ?? ウチら1年で、わかってなくてw」


ミア「ああ……その、実はボクも新入生だからよくわからないんだ」


「そうだったんですか~w」

「ちなみに学部どこなんですか??」


ミア「ボクは工学部。 工学部機械工学科だよ」


「あっw」「フフフw」

「そうなんだ~w」「なんかそんな気する!w」「ぽいねw」

「そういえば向こうの方にも工学部って言ってたチェックシャツの人いたよw」


ミア「あはは…」

ミア(もしかして今くっそバカにされてないか?!)

ミア(shit!!やっぱりランジュに言われた通りに服買いに行くんだった!!)

7: 2022/03/05(土) 15:49:33.39 ID:xe7BWInI.net
~ランジュの下宿先~

ランジュ「いらっしゃい」


ミア「意外と片付いてるじゃないか」


ランジュ「意外とは失礼ね……あなたのために昨日から大急ぎで片付けたんだから」


ミア「そうなのか? いやあ、世話になるね」ドカドカ


ランジュ「ちょっと! ここは土足禁止よ」


ミア「おっと……すまない」


ランジュ「あと靴を揃えて手も洗う! 大学生なんだからキッチリしなさい、キッチリと」


ミア「わかったわかった」

ミア「ゴチャゴチャうるさいなあ」

ミア「おや? ははは、こんなところに下着が落ちてるぞ? キッチリしてるなあ~」


ランジュ「っ! わざわざ引っ張り出さなくていいから!」カァァ

8: 2022/03/05(土) 15:51:34.66 ID:xe7BWInI.net
ミア「さ~てと……」バサッ


ランジュ「あら、もう予習してるの? 随分と殊勝じゃない」


ミア「予習じゃなくて復習さ、入学テストがギリギリだったからね……」


ランジュ「ふうん……そんなに悪かったの?」


ミア「悪かったっていうか……まあ受かったとはいえ良くはないね、邪魔でなければ場所取らせてもらうよ」


ランジュ「ま、別にいいんだけど……」


ミア「……何かあるのか?」


ランジュ「ん~……その……服でも買いに行かない?」


ミア「何だと!? あんなに持っててまだ欲しがるのか!? このいやしんぼめ!!」バァン!


ランジュ「ちーがーう! ランジュじゃなくてあなたのぶん!」


ミア「? ステイツから送った服、まだここに届いてないのか?」


ランジュ「それはもうあっちにしまってあるんだけど……あなたの服ちょっと……その、フレッシュ過ぎない?」


ランジュ「最近の子は派手だから、埋もれちゃうわよ?」


ミア「いやいいよ。それよりボクは勉強するんだ」


ランジュ「……そう、まあいいわ」

ランジュ「それとも勉強のほう教えてあげましょうか?」


ミア「いい! 虹大の入学テストは難しかったんだ」


ランジュ「ランジュは数学と理科は満点だったけど♪」


ミア「ゴチャゴチャうるさいな」

9: 2022/03/05(土) 15:54:10.72 ID:xe7BWInI.net
~~

ミア「……」(ランジュは……遠回しに服がダセェって指摘してくれていたんだ……)


「サークル決めた?」「まだ~w」「先輩に誘われてるとこいくつかあってw」


ミア「……」(ボクはそのことに全く気付かず……)


「さっき声かけてくれて仲良くなった男の子がさw」「仲良くなるの早~w」


ミア「……」(こうして早くも大学デビューどものマウンティングの餌食に……)


「実家青山とか超ヤバいじゃんw」

「そんなことないよw昔から住んでるだけw」「私田舎だから憧れる~w」

「ミアちゃんは出身どの辺なの?w」「足立区?w」


ミア「……w」


「「?」」


ミア「……ew York」


「「え?」」


ミア「ニューヨーク❗🗽マンハッタン❗❗ウォール街大暴落❗❗🇺🇸🇺🇸」ボゴォ!!!


「「ぎゃあああ!!」」


ミア「ふん」

10: 2022/03/05(土) 15:55:35.85 ID:xe7BWInI.net
ミア「やれやれ……タダでやられるわけにはいかないからね」

ミア「ん? 見るからにNerdなやつらがいるな」


「ヒヒヒ!w」「お値値が不等式の上下に押さえつけられて苦しそうでさぁなあ!」


ミア「こ、こういうのでいいんだよ」

ミア「だいたいさ、大学ってのは学問をするところなんだ」

ミア「物事に熱中したり興味を追究すればああなることもあるさ」

ミア「決してマウントを取りに行ったり、男を漁りに行く場じゃあないんだよ」

ミア(話しかけには行かないけど)


璃奈「ミアちゃん。来てたんだ。」


ミア「!」

11: 2022/03/05(土) 15:59:12.17 ID:xe7BWInI.net
ミア「その声は我が同胞にして理解者の璃奈! ボクはあんな遊び慣れてる女達じゃなくてキミに会いたかったんだ!」

ミア「早くも折れかけていたpassionが再び熱を帯びて燃えていくのを感じるよ」


璃奈「よくわからないけど大変そう。」


ミア「いやあ、ついさっきかしましいメスどもの洗礼を受けてしまってね……ところでそんなに紙を抱えて璃奈は一体何をしているんだ?」


璃奈「サークルの勧誘。はいこれ。」


ミア「ふうん……猫カフェサークル?」


璃奈「そう。 都内で猫と触れ合えるカフェを巡るサークル。」


ミア「そういえば璃奈は猫好きだったね。 でも猫カフェに行くくらいで集団を作らなくても……なにかイイことでもあるの?」


璃奈「ある。ここはインカレだから、他の大学の男の子ともたくさん出会えるしたくさん繋がれる。」


ミア「くぅ~!!」(血の涙を流す)

13: 2022/03/05(土) 16:02:27.62 ID:xe7BWInI.net
璃奈「あっちにかすみちゃんもいるよ。もうすぐしずくちゃんも来る。」


ミア「そうか、彼女たちも同じサークルだったね」


璃奈「スクールアイドル同好会とは別だよ。 いま私たちが配ってるのはインカレ非公認の猫カフェサークルのほう。」


ミア「3人ともどっちにも入ってるってわけか? ややこしいな」


かすみ「あれー? ミアちゃんじゃん!」スタスタ

しずく「入学おめでとう、ミアさん」コツコツ

ミア「あ、ありがとうございます……」トテトテ…

ミア(うわあ、綺麗だ……)


ミア(改めて上級生の3人を見れば、とても大人っぽくてお洒落なファッションをしていた。 ブランドとかはよくわからないけど……とにかく垢抜けてるってやつだ)

ミア(しかし……文系の二人はともかく、璃奈はボクと同じ工学部のはずだ)


璃奈「……?」


ミア(ボクより背丈も低いはずなのに、ちゃんと今風で、工口い。さぞモテるんだろうな……)

ミア(それに比べてボクは……)

15: 2022/03/05(土) 16:04:54.05 ID:xe7BWInI.net
ミア「……」

ミア「ガイダンスの後、服を買いに行こうと思うんだ……」

ミア「でも一人じゃわからないから……よければ付いてきてもらえないかな……」


璃奈「私は平気。二人は?」

しずく「だいじょうぶ、かすみさんはバイトあるんだっけ?」

かすみ「ううん、今日は無いから私も行けるよ」


ミア「みんな……ありがとう!」

ミア「その……ついさっきまでは思ってたんだ……大学は学問の場なのだから、ボクたちは自分を、世界を……言論でもって語り合うべきで……それ以外の表現方法など邪道だと」

「「??」」

ミア「ガワごときにボクたちの中身など語りえないって……でも、違ったよ」

ミア「意識的な言葉使いや態度をもってボクたちが自分自身を着飾って、表そうとするのと同じように……能動的にこしらえた外見というのもまた、己の表現のひとつで、重要なことなんだ」

「「は、はあ」」

ミア「まあとにかく、キミたちみたいにオシャレで、かつバリバリ勉強もできてしまう、ボクはそんな大学生になりたいんだ!」


かすみしずく璃奈「……」


ミア(どうしたんだろう? 黙りこくって)

16: 2022/03/05(土) 16:06:25.99 ID:xe7BWInI.net
~~

ミア「このパーカー男用だろ! このお店間違って置かれてないか?」


璃奈「いいから。」


ミア「太ももむき出しじゃないか!これじゃ露出魔だ!」


しずく「ミアさんは足細くて綺麗だからいいの」


ミア「なんだこのゴツいスニーカーは!まるでPAC-MANかSONIC THE HEDGEHOGだ!」


かすみ「わかったからちゃんと立って」

17: 2022/03/05(土) 16:07:29.95 ID:xe7BWInI.net
ミア「ははは、いいんじゃないかな!?」ピョンピョン


かすみしずく「う~ん」(なんかガキっぽいな……)


璃奈「なんか、アニメキャラみたいになっちゃったね。」ヒソヒソ

しずく「……スニーカーやめる?」

かすみ「ブーツは暑いし……ヒール履かせてみるか……」


ミア「ヒールは苦手なんだ、歩けないよ」


璃奈「ならウェッジソールサンダルにしよう。」

かすみしずく「ありかも!」


ミア「うおおお!! これ可愛い!!!」

18: 2022/03/05(土) 16:10:28.88 ID:xe7BWInI.net
ミア「いやあ、ありがとう」

ミア「似たような方向性で数セット買っちゃったから、着回しも簡単だね」ズシ


しずく「気に入ってくれて良かった♪」

かすみ「あとはネイルかあ……家まで戻れば私の貸せるんだけど」

しずく「部室に一式なかったっけ?」

璃奈「シールにしよう。 それなら百均で買えるしライトも要らない。」


ミア「ありがとう……何から何まで」

19: 2022/03/05(土) 16:15:38.75 ID:xe7BWInI.net
~翌日~

ミア「……ふふふ」

ミア「足取りも軽く、視界もとびきり明快だ! まるで世界が変わったみたいだ!」

ミア「背筋もついピンと張ってしまうよね、ガラスに写る自分がなんて可愛いんだ!」

ミア「オーバーサイズの春色パーカーにショートパンツの王道コーデ! サンダルだけどソールの厚いオープントゥなパンプスでネイルをチラ見せして大人っぽさをアップだ!」

ミア「歩き慣れたらヒールにも挑戦するぞ! 璃奈たちにはホント感謝しないとな」


「ヒヒヒ!w」「一般性ないな?」「必要十分だと言ってよ!命題さん!」


ミア「おや? 昨日のNerdどもだ……改めて見ると彼らはなんてヒドい格好なんだ」

ミア「かつての同類をああ思ってしまうなんて……やれやれ、ボクも"悪魔"、なっちゃったね____。」

ミア「これから毎日着こなすぞ!! ファッションも学問だ!うおおおおお!!!」


~基礎工学実験(工学部開講 必修)~

「さて、工学部では来週から早速実験が始まるのですが……服装に関していくつか注意点がございます」

「実験装置に巻き込まれる恐れがあるので紐やフードの着いたものは禁止です。それと素足が露出するので短ズボンは禁止です……。あ、サンダルも禁止ですね。それから……」


ミア「F*ccccck!!!!」

23: 2022/03/05(土) 16:33:50.85 ID:xe7BWInI.net
2話『されどわれらが留年の日々ー』

24: 2022/03/05(土) 16:34:30.38 ID:xe7BWInI.net
~確率・統計(経済学部開講)~

「どうだろ、こんな感じかな?w自信ないけどw」「私も同じになったw」

「確率ほんと苦手w」「ウチらなんでこの学部いるのw」


ミア(くそっ……こいつら、文系のクセに理系のボクより計算が早い……割り勘の計算も早かったし……経済学部、恐るべし!)


「ミアちゃん、どうかな?w」


ミア「あ、ああ……それで合ってると思うよ」(まだ計算終わってねー!)


「良かったw」「ウチらみんな文系だから~w理系のミアちゃん来てくれてマジ助かるw」


ミア「ははは……」

25: 2022/03/05(土) 16:38:17.81 ID:xe7BWInI.net
「じゃ、私これからサークルだからw」「ウチはバイトw」

「私はデートw」「うざw」

「「おつ~w」」

ミア「おつ~!」


ミア「ふう……」

ミア(あらゆる新歓をハシゴして、友人もできた、勉強は大変だけど……理想の学生生活を実現できているぞ!)

ミア(そして……授業後はサークルだ!)

ミア(それにしても……今朝のランジュ、思い出すだけでも腹が立つな!)

26: 2022/03/05(土) 16:40:49.21 ID:xe7BWInI.net
~自宅~

ランジュ「ええっ!」

ランジュ「他に興味あるサークルなかったの?」


ミア「もちろんあるよ、でもここに入ることはもう決めていたんだ」

ミア「それにランジュだって所属してるそうじゃないか、ボクには黙ってたみたいだけどね」


ランジュ「それはそうだけど……」

ランジュ「……」

ランジュ「悪いことは言わないからやめておきなさい、あそこは本当に根性の曲がったろくでなしの集まりよ」


ミア「……」

ミア「どうして彼女たちを悪く言うんだ!」バアン!


ランジュ「ひっ! え? ちょ、ちょっと」

ランジュ「ちょっとミア! どこ行くのよ~!」

27: 2022/03/05(土) 16:44:19.00 ID:xe7BWInI.net
ミア「って言われたんだ! まったく相変わらず失礼なヤツだよ」プンプン


愛「ぬはははw」

歩夢「まあ……当たらずといえども遠からずというか……」


エマ「まあまあ、それよりミアちゃんは大学はどう?もう慣れた?」グビ


ミア「いやあ、楽しいけど……己の無力さを実感する毎日ですよ」

ミア「周りみんながとっても賢く見えて……だからこそ頑張らなきゃ!ってmotivationが湧いてくるんだけどね」

ミア「あと、なんと言っても専門科目が楽しみかな! 今はほぼ教養科目しか受けられないから」

ミア「みんなは今日はどんな講義があったんですか!?」


歩夢「……」

愛「愛さんはね、今日はジシュ……休講だったんだ~」


ミア「それは残念……侑さんは?」


侑「……ミアちゃん、ところでさっきの話だけどさ、ランジュの言うことは気にしなくていいんだよ?」


歩夢・愛「!?」


侑「このサークルはね、親にも、世間にも、大学当局にも支配なんかされない……今ここが、世界で一番自由な場所だよ!」ドン!


ミア「なんと!」

歩夢愛「ええ……」

エマ「……」グビ

28: 2022/03/05(土) 16:46:08.26 ID:xe7BWInI.net
~自宅~

ランジュ「ねえ、やっぱり考え直さない?」


ミア「さない!」


ランジュ「あなたのためを思って言ってるのよ」


ミア「しつこいな、どこに入るかはボクの"自由"だ!ボクは"自由"に生きるんだ!!」


ランジュ「ああ、もう既に悪影響が……」


ミア「明日も忙しいんだ、放っておいてくれ」


ランジュ「もう……」


ミア「さて線形の復習、と……あれ?」

ミア「しまった、部室に置いてきた!」ダッ


ランジュ「ちょっとミア! 待ちなさい! こんな時間にどこ行くの!?」

29: 2022/03/05(土) 16:48:41.23 ID:xe7BWInI.net
~虹ヶ咲学園大学~

ワイワイガヤガヤ

ミア「夜遅いのに、まだまだこんなに人がいるんだ」

ジャーン!ドコドコ!

ボォーパァー

ミア「音楽サークルの練習も聞こえてくるね」

ギャハハ

ミア「並木道で酒盛りしてる人たちもいる」

ヒューヒュー!!

「あンの~虹を~渡ァって~♪」ジャカジャカ

ミア「弾き語りしてる女もいるな……」


ミア「まるで、毎日がfestivalみたいだ」

ミア「部室棟は……あっちか」


~サークル棟~

ミア「まだ明かりが点いてる部屋がたくさんある……ってことはウチもまだ誰かしら残ってるかもしれない」


エマ「……」パチン

歩夢「チー……」パチン

侑「……」パチン

愛「はいロン~w 裏は……なし、6400!」パタン

侑「かぁ~っ! 相っ変わらずコスい打ち方するね!愛ちゃんは!」ガシャ

愛「へへへ、こちとらこれで食ってますんでね……セコくなきゃ商いは務まりませんよう」ジャラジャラ

エマ「オタ風の2枚切れはツモ切りするよ~」ジャラジャラ

歩夢(危なかった……)ジャラジャラ


ミア「こんばんは……ってみんな、まだ残ってたんですね」

30: 2022/03/05(土) 16:50:30.14 ID:xe7BWInI.net
歩夢「どうかしたの?ミアちゃん」パチン

ミア「忘れ物をね……あれ、あると思ったんだけど……」

侑「緑と黒の本でしょ? さっきどこかにあったよ」パチン

愛「カナちゃんが来たとき本棚に入れてたと思う、ほら……あれ」パチン

エマ「……」グビパチン


ミア「ホントだ、助かった……」


歩夢「良かったね」パチン

侑「エマさん、それ私にも少しちょうだい」パチン

愛「あ、アタシも欲しい!」パチン

エマ「いいよ~」グビパチン


ミア「……」


ミア(こんな遅くまで酒を飲んでmahjongを……そんなに楽しいのかな?)

31: 2022/03/05(土) 16:52:03.35 ID:xe7BWInI.net
~品川駅~

ランジュ「もう! こんな遅くに出掛けるなんて!」


ミア「そんなこと言ったって、教科書が手元になかったらどうしようもないだろ?」


ランジュ「教科書ならランジュのを貸すのに……」


ミア「いいんだよ、それにこんな時間でもまだまだ沢山学生が残ってたよ」


ランジュ「日付変わってるじゃない! ……もういいから、はやくお風呂入っちゃって」


ミア「わかってるよ」

32: 2022/03/05(土) 16:53:18.80 ID:xe7BWInI.net
~自宅~

ミア(夜の大学もあんな感じなんだ)チャポン

ミア(ウチだけじゃない、きっと他のサークルでもあんな感じで人が集まって……)

ミア(虹大だけじゃない、国中のあらゆる大学のあらゆるサークルそれぞれで人が集まってそれぞれの活動をしているんだろうな)

ミア(大学生活は24時間年中無休、というわけだ)


ミア(それにしてもmahjongか……)ブクブク…

33: 2022/03/05(土) 16:54:26.03 ID:xe7BWInI.net
ランジュ「どうしたの、麻雀なんか調べて……」


ミア「ちょっと気になってね……やたらルールが細かいな」


ランジュ「線形代数やるんじゃなかったの?」


ミア「それもそうだけど今はこっちだ、ああ……役が多過ぎる!」


ランジュ「立直と混一色と食いタンだけ覚えとけばなんとかなるわよ」


ミア「いちいち口を出したがるんだな、ランジュは」


ランジュ「……」シュン

34: 2022/03/05(土) 16:56:30.18 ID:xe7BWInI.net
~~

「ミアちゃんそのカッコどうしたの?w」


ミア「今日は実験があってね……汚れてもいい服じゃないとダメなんだ」


「さすが工学部w」「大変そ~w」


ミア「ははは……」


ミア(こいつらと一緒に取れる一般教養や外国語の講義。 よりによって実験と同じ曜日だなんて……)

ミア(大教室でも服装でわかっちゃうよ、こいつは工学部だなって……なぜならオイルぶっ掛けられても喜びそうな格好してるのが工学部だからだ)


ミア(この日用のコーデでも考えるか……)

35: 2022/03/05(土) 17:00:52.38 ID:xe7BWInI.net
~英語科目(教養科目 必修)~

ミア(ねむ……英語の授業はダルいな……麻雀のルールでも確認するか……)


「うち英語は単位認定できるから実はこの授業切ってもいいんだよねw」「え、すごw」


ミア(単位認定……そんなシステムもあるのか)


「何点いるの?w」「800wたまたま取れたw」

「うち絶対無理だw」


ミア(立直メンツモ平和タンヤオ役牌一盃口チャンタ三色混一色……)

ミア(500、1000、2000、3900……1300、2600、5200!)


「ミアちゃんはTOEIC受けたことある?w」「何点?w」

「ミアちゃん満点取ってそうw」


ミア「……0」


「「え?」」


ミア「48000!!! 役満だ!!!」ボゴォ!!!!


「「ぎゃああああ!!」」

36: 2022/03/05(土) 17:02:30.85 ID:xe7BWInI.net
ミア「初回授業はたいてい早く終わる、授業方針や課題や試験の有無……そして成績の付け方が説明され、じゃあ来週から本格的に授業を始めます、というわけだ……暇になっちゃったし、ボクも部室に行くとしようかな」


「ミアちゃん誰と話してるのw」


~部室~

かすみ「一昨日炎上してたYouTuberのさあ」パチン

しずく「あ~knn kidsだっけ? 私あの人たち知らなかったんだよね」パチン

璃奈「あれ面白くないから知らなくて正解。」パチン

愛「そんなに?」パチン

かすみ「まあ……言われてみればそこまで面白くないけど」パチン


ミア「お、おはようございます」ガチャ


しずく「あ、ミアさん、おはよう」パチン

璃奈「毎回騒いでるだけだし、ロケ先で声出して走り回るだけの典型的な弱小配信者。」パチン

愛「手厳しいね~、ミアチおはよ~」パチン


ミア(麻雀だ!)ソワソワ

37: 2022/03/05(土) 17:03:52.51 ID:xe7BWInI.net
侑「あ、ほらあの子がミアちゃん」


彼方「この子?ミアちゃん、昨日は勝手に片付けちゃってゴメンね~」


ミア「いえ、こちらこそ置き忘れて……その……」


歩夢「近江彼方さんだよ」


ミア「彼方さん!」


彼方「おう、彼方さんだあ~! 近江彼方、5年生! よろしくね~」フンス


ミア「はい! こちらこそ!」(5年生? 院生かな?)


歩夢「あはは……」


エマ「……」グビ

38: 2022/03/05(土) 17:05:11.46 ID:xe7BWInI.net
ミア「今日は人多いですね!」


彼方「そうだねぇ、というより昨日がちょっと少なかったかな~」


侑「多分果林さんもそろそろ来るよ」


彼方「どうかなぁ、まだ寝てそうだな~」


ミア(愛さんも言ってたけど、昨日はいわゆる"全休"ってやつなのかな? なんて自由なんだ……!)


ミア「じゃあ皆さん今日は講義あるんですね!」


「「……」」


エマ「……」グビ


ミア「あれ……?」

ミア(昨日もこんなのがあったな……またボク何かやっちゃいました?)

ミア(ていうか、いま2限真っ最中のはずだよな? みんなそんなに時間割ガラガラなのか?)

39: 2022/03/05(土) 17:07:15.67 ID:xe7BWInI.net
愛「ロン!!!!12000!終局!!」パタッ


かすみ「ぎゃあーーっ!!!」ガシャ


しずく「唐揚げ弁当よろしくね♪」


璃奈「私ゼリーだけでいいよ。」


愛「愛さんは~……めんたいもちチーズもんじゃ!」


かすみ「無いです! そんなもの!」


侑「かすかす、あぶり焼きチキン丼お願い!」


歩夢「私もそれで」


かすみ「あなたたちは関係ないでしょー!」


エマ「ハツレバーつくねと芋ロック。 タレで」グビ


かすみ「もう何も言いませんからね」


かすみ「はーっ、ミアちゃんは……お昼何がいい?」

40: 2022/03/05(土) 17:08:31.49 ID:xe7BWInI.net
愛「ミアちゃんもパシらせちったね」


歩夢「悪い上級生だ」


侑「彼方さんは制限中?」


彼方「まあね~……金ない痩せなきゃ」

彼方「あ、果林ちゃんLINE来た、今起きたっつってる」


しずく「夜遅くまで撮影だったんですかね?」


彼方「昨日は打ち合わせだったらしいよ~、それもほぼ日付変わるまで!」


侑「ひゃ~そりゃ授業出られないわ」


歩夢「果林さん、ゼミもブラックなんですよね」


彼方「らしいね~」


エマ「……」グビ

41: 2022/03/05(土) 17:10:03.54 ID:xe7BWInI.net
~~

かすみ「ちくしょ~重い……」

かすみ「……ミアちゃんはこの後授業とかあるの?」


ミア「実験が3限からあるんですよ」


かすみ「あー、だからその格好……大変だね~」


ミア「工学部の実験のこと、知ってるんですか?」


かすみ「一応ね~、昔りな子がよく愚痴ってたからさ……確か必修なんだっけ」


ミア「そうか、璃奈もこの授業を受けていたのか……」

ミア「璃奈がこれまで取った授業を全部取ってみるのもいいな……」


かすみ「それ一年で単位追い抜いちゃうね……」


ミア「ん?」


かすみ「あいや、なんでもない」

43: 2022/03/05(土) 17:11:57.64 ID:xe7BWInI.net
エマ「ありがとーー!!」パアア

歩夢侑「ごめんね、ありがとう」


ミア「いえいえ、とんでもない」


かすみ「わざわざ氷まで買ってきたんですからね! 2人ともちびだから年確されちゃいましたよ」


璃奈「そっか、かすみちゃんもう20なんだっけ。」

エマ「えっ?かすみちゃんもう20なの?」グビ

かすみ「そーですよ! と言っても2ヶ月前ですけどね」

しずく「ていうか誕生日会やったじゃないですか」

彼方「まだ18の若造だと思ってたのに、時が経つのは早いね~」


ワイワイ


ミア(希薄な上下関係、でも強い信頼関係が感じられる、それは……学年を超えた友情と呼ぶべきものだろう)

ミア(どれもこれも、歳上が絶対という東洋宗教のイメージとは大違いだ)

ミア(上下関係ガチガチの軍隊式サークルも多いらしいが、ここのそれは……家族!)

ミア(1年生がボクだけなのは少し残念だけど……それでもここに居たい! ここの一員でありたい!という気持ちは微塵も揺るがない)

44: 2022/03/05(土) 17:14:32.02 ID:xe7BWInI.net
ミア(お昼の時間はあっという間に過ぎていった……もう3限開始ギリギリだ、これは走らなきゃ間に合わない)

ミア(果林さんって人には会えなかったな)


ミア「じゃあ、ボクは授業に行ってくるね」


かすみしずく「頑張って!」


璃奈「ふぁいと。」


みんな「「行ってらっしゃ~い」」


ミア「!」パアア

ミア「みんな、ありがとう!」ダッ

45: 2022/03/05(土) 17:15:25.88 ID:xe7BWInI.net
ミア(身体を撫でる風が気持ちいい、遅刻ギリギリダッシュなのになぜか楽しい。不思議な気分だ)


ミア(次は誰と話せるかな、まだ会ったことのない果林さんだろうか)


ミア(新しくルールを覚えたボードゲームで遊ぶのもいいな)


ミア(早く実験を終わらせて、あそこへ戻りたい!)


ミア(みんな、部室で待ってくれてるはずだから!)


ミア「……」

ミア「……ん?」


ミア「てかあいつら、授業は?」

60: 2022/03/06(日) 22:16:13.32 ID:z/JluSp0.net
2.5話『部室棟中膝栗毛』

61: 2022/03/06(日) 22:20:08.95 ID:z/JluSp0.net
ーーサークルとは?

ミア「大学といえばサークルだ!」

ミア「サークルとは課外活動を行う団体のことであり、その活動形式はさまざまだ! 顧問の教員や外部コーチがいて、その指導の元に活動するところもあれば、学生自らが主導し管理運営するところもある」

ミア「それらは〇〇部、××研究会、△△同好会と呼ばれたりもする……これらの呼称に厳密な違いはあるのかもしれないが……"集まって何かをする"という理念は共通しているため、ここではその言葉遣いの差異は特に問題としない」


ミア「サークルには、大学に公式に活動を認められ、資金や部室の提供といった援助を受けている公認サークルと、そうでない非公認サークルとがある……後者は活動拠点から自力で確保しないといけないから大変だ」

ミア「とはいえ、活動の実態に有意な差があるかと聞かれたら、意外とそうでもない。 サークルのシステムは自主性が強く、結局はサークルによる……と言うよりほかはないだろう」


ミア「さて、着目すべきはその活動内容なのだが……」

62: 2022/03/06(日) 22:22:03.12 ID:z/JluSp0.net
ミア「例えば運動系サークル!スポーツで仲間と共に汗と涙を流し、熱く輝かしい青春の毎日を過ごす!」

ミア「野球サッカーバスケなどのおなじみの種目から、ゴルフやヨット、トライアスロンにパラグライダー、ダイビングなんかの大学ならではのサークルも……」

ミア「大学野球やラグビーや駅伝なんかは毎年メディアでも大きく取り上げられるね。 礼儀やド根性のアピールになるから……ガクチカに書けば就活のウケが抜群だ!」


ミア「技術系サークル! 研究機関としての大学を最大限に生かし、偉大なる先人やガチプロの知恵と己の機知を存分にふるい、テクノロジーの探究と限界に挑む!」

ミア「理系のボクにとっては、興味をそそられるところばかりだ! 有名どころのロボコンやソーラーカーや鳥人間からロケット、無線、自動車整備……どこも個人ではとてもかなわない規模の活動もできるのが魅力だ」


ミア「文化系サークル! これもまた学問の聖域ならではの活動だね」

ミア「資格取得やボランティア、社会問題、投資に企業……実学に興味のある意識の高い連中……」

ミア「あるいは文芸や美術、音楽、サブカルチャーなど各種文化に明るくあらゆる知識、バックグラウンドを持った連中と日夜語り合う!」

ミア「入学するまで一切出会わなかったような変人偏屈どもが大学にはゴロゴロ溢れているなんて……世界は広いものだ」

ミア「学祭を運営したり芸人や声優を呼ぶイベントを企画するサークルもここに含めておこうかな」
ミア「中には在学中に社会人もびっくりな成果を出したり、プロになる人なんかもいて……」

ミア「スクールアイドル同好会はここに属するみたいだね」


ミア「例えばゆるふわサークル!一見遊んでいるように見えるけど……人生の夏休みとはよく言うし、彼らだけの空間でコミュニケーションや人脈を増やすのもアリだろう」

ミア「お散歩サークルや猫カフェサークル……ボドゲサークル……ノリで作られてはすぐ消える、泡沫サークルも数多い……」

ミア「……スクールアイドル同好会はやっぱこっちかもしれないな!」

63: 2022/03/06(日) 22:23:54.57 ID:z/JluSp0.net
ミア「日本のアニメによると、それぞれのサークルにそれぞれの"物語"があるらしいね」


ミア「どこに入ってもきっと充実した毎日を送れるし、どこに入ったとしても違う未来を想像することになる」


ミア「ここの立て看板にも書いてあるね……"頑張った想い出は、きらめく青春の日々! 得られた仲間は、一生の友!"……だってさ」


ミア「忙しくはなるがサークル掛け持ちもアリかな……ま、ゆるふわなら忙しさもたかが知れているだろう……」


ミア「とりあえずは、手当たり次第に新歓や説明会に参加するものらしい……歓迎パーティや飲み会は、タダ飯にも有り付けるからね」

64: 2022/03/06(日) 22:28:15.41 ID:z/JluSp0.net
ーーさまざまなサークル

・法学サークル

「ここでは法学に興味のあるメンバーが集まり、法律の勉強会を行なっています! 具体的には週に2回の自主ゼミを行ったり定期試験や院試対策を行うという法学部生寄りのサークルではありますが……法律に興味のある、他学部学生も大歓迎です!」

「理工系だそうですね! うちの過去の理工系の部員では……法律のうちの知的財産法というものを専門的に扱う、弁理士の資格を取った方もいるんですよ!」

「理工系と特許は切っても切り離せないものですから……」ペラペラ


ミア(法曹か! それとも弁理士なったり知財法務部、就職しちゃおうか!?)


・研究会

「虹学祭で開催されるミスコンをご存知でしょうかぁ?w簡単に言えば私達はあれを運営しているサークルで~す!」

「先輩は美男美女でOBには女子アナも! お洒落さんばかりw」

「やるときはやる!wふざけるときはとことんふざける!wこんなに最高にバカできてハチャメチャなサークル、他にありません!w」


ミア(やばい! 部員も見学者もみんなギラついた"陽"のオーラが半端じゃない! 愛想笑いだけで精神がゴリゴリ擦り減る!)


「コイツ見た目に反してマジ頭イカれてるからw困ったことあったらコイツに聞くといいよw」

「とか言うコイツはもっとネジ飛んでてねw」

「エギ!」「エグいエグいエグいwwwエグいて!w」

ミア「ははは……」(内輪ネタがキツいのは陽も陰も変わらないんだな……)


・流しそうめん同好会

「流しそうめん体験会やります!! ぜひ食べに来てね!!」

ミア「うおおおおお!!!」


「……このような円環内の流れをHagen–Poiseuille流れと言い、これをNavier–Stokes方程式にしたがい解くと……その速度分布は……」


ミア(何言ってんだ? こいつら……)モグモグ

65: 2022/03/06(日) 22:33:09.69 ID:z/JluSp0.net
・コピーユニット A-RISE

ミア「あぎゃああああ!!」ジタバタ

「きみ……だ、大丈夫!?」

ミア「あああああ! 足攣った!!……し、氏ぬ……!」ゼエゼエ


・ロック研究会

「み~らいがァ~♪ キセキになるぅン~♪」ジャカジャカドコドコベンベンピロピロ


ミア「この曲いいな……へえ、オリジナル曲なんだ」

ミア「流石というか、演奏も上手くリフもカッコいいしギターソロも完璧だ! しかし……歌ってる男が氏ぬほど苦しそうだな……日本の男性Voは無駄にキーが高過ぎる……」


・DTM研究会

ミア「あのRICO*27が作ったサークルなのか!?」

ミア「すごいな……ちなみに27の曲の再生数はボクの昔作ったボカロ曲の100000倍!とんでもないことだ」

ミア「主にdiscord上で活動するので、普段は顔を合わせないそうだ……なんだか寂しいな」

ミア「姉妹サークルに、DJ研があるらしい! 行ってみるか!」


・DJ研究会

「「田んぼの様子が👏おかしい❗」」

「「「イェッタイガーーー❗❗❗👆👆👆」」」


ミア「DJ研、アニクラのクソオタクに乗っ取られてた……😭」

66: 2022/03/06(日) 22:39:34.01 ID:z/JluSp0.net
ーーサークルと新歓

ミア「今日も新歓で食べてくるから、ご飯は用意しなくていいよ」


ランジュ「そう……あんまりハメ外しすぎちゃ駄目よ? あなたそんなにお酒強くないんだから……」


ミア「わかってるってば」


ランジュ「ああ心配だわ……なんならランジュもついて行きましょうか?」


ミア「いいよ、そんなことしなくて」

ミア(家でつい飲み過ぎたとき、ランジュのおっOいにずっとしがみついて、バブバブして爆睡したらしい……まさか、このボクが本当にそんなことしたのか?)


「焼肉やります!」「焼肉食べ飲み放題!! 新入生は無料!!」

「焼肉!!!!安安の前に18時集合!!!」「🍖🍖🍖🍺🍺❗❗❗」


ミア「く、苦しい……」ゲップ

67: 2022/03/06(日) 22:42:52.33 ID:z/JluSp0.net
ーー危険!要注意サークル

「Scorpioと開発研とメディア研は特に要注意な、あと火薬部」

「印哲の連中もヤベーっすよ」

「そうだった、忘れてた! これが俗に言う虹学5大危険サークルだ」


ミア「何かやばいんですか?」


「Scorpioは天体観測という皮を被ったバケモン飲みサーでとにかく飲み方が下品でな……よく学生課から指導を受けてる」

「ちょっと前はもっと悪質で飲酒強要、急性アル中救急車はザラだったし、酒に薬混ぜてるなんて噂も合ったんだよ」


ミア「へ、へえ……」(怖過ぎだろ……)


「よくイキったサークルが氏人出して全国ニュースになったりするだろ? ああなるのも時間の問題だったな、最近はマシになった方らしいけどね」


ミア(ランジュが気を付けろってうるさく言うのはこういうのか……)


「開発研とメディア研は……どうだったかな、どっちかが極左でどっちかが新興宗教だったかな」


ミア(しかし新入生を酔わせてその……遊ぶなんて、大学にはとんでもない不届き者がいるものだ!)


「要するにゲバ棒もって暴れてるアレとカルトサークルさ」

「まあ、この二つに入ってる奴なんて聞いたことないし、どこに部室があるのやら……残ってるのかすらも怪しい、もはや都市伝説だよ」ペラペラ


ミア(やはり男はケダモノだ! 見つけ次第成敗してやる! 公安サークルとか治安維持サークルとか無いんだろうか?)

68: 2022/03/06(日) 22:45:52.15 ID:z/JluSp0.net
「サークルの名前変えてこっそり残ってたりするかもしれないっすね!」ガハハ


ミア「は、はあ……火薬部ってのは?」


「GHQに解体された、戦前からある研究会の残党だ! 爆弾製造して逮捕された奴がそこのサークルだったって言われてるけど……まあこれも現存するのか疑わしい、虹学の鉄板ジョークみたいなモンだな!」


ミア(テロ集団じゃないか……)


「……一方で印哲の連中はそこら辺をふつーに歩いてるから気を付けろよ。 勝手に占いや悩み相談を持ちかけては奇怪な文句で取り囲み……金をせびる極悪な連中さ」


ミア「そ、そんな四畳半に出てくるババアみたいな……」


「ははは! 言い得て妙だな! ただやつらの頭は美人で背の低い、巨乳の女らしい……そのせいか取り巻きは男ばっかでな……つまりはやつらこそ煩悩まみれってオチなんだよな!」ガハハ

69: 2022/03/06(日) 22:48:48.90 ID:z/JluSp0.net
~~

「ご覧ください! これがわが新聞部自慢の輪転機です! コピー機とは異なり……猛スピードで、そして大量に白黒印刷が可能です!」

「我々の刊行する週刊新聞だけでなく、他サークルの発行する出版物の校正や印刷も格安で請け負っているんですよ! そのため印刷研と呼ばれることもあります!」

「なにより……膨大なデータベースとあらゆる情報網を駆使し楽単情報や試験の過去問から……学内のゴシップまで……自由自在! 虹学1の情報屋と言えば我々です!」


ミア(情報屋……折原臨也みたいなモンか? ちょっとカッコいいかも!)

ミア「それじゃあ……聞いてみたいんですけど、開発研ってどんなサークルなんです?」


「ややっ!? 新入生からそんなコアなワードが飛び出すとは……あなたも相当なゴシップ好きのようですね……ぜひわが部への入部をお勧めいたします……」ペラペラ

「開発研というのは正しくは脳内開発研究会という、20年以上前突如として現れた、イマジナリーガールフレンドを研究し実践するキチガイ新興宗教サークルで……全盛期はとんでもない精神病患者を抱え政治屋も一枚絡むマジキチ団体だったのですが、とある事情により事実上解散させられました……というのも……おっと!これ以降は"禁忌"でした!」ペラペラ


ミア「ふ~ん、メディア研は?」


「あひい! それも"禁忌"でして……」ガタガタ

「ただひとつ言えることは、絶対に関わってはいけません!」


ミア(きな臭過ぎる……言論の自由は一体どこへ行ったんだ……)

70: 2022/03/06(日) 22:53:34.04 ID:z/JluSp0.net
~~

ミア「学内のどこを歩いていてもサークル活動は目につく! 」テクテク


「1! 2! 3! 4!」パンパン

ミア「デカいガラス張りがあればそこはどこでも、ダンスサークルの活動場所だ!」


「「ラーラーラーラー♪」」

ミア「右手の芝生では男女混合アカペラサークルが! こいつらが個人的には一番青春っぽい感じがするよ」


「ないすぅ~」

ミア「左手には物をポンポン投げ合ってはキャッチするジャグリングサークル! 全く器用な連中だね」


「ぬおおおお!!」ガーッ

ミア「うわあっ!!」

「ギャハハハハ!」ガーッ

ミア(構内をローラーブレードやスケボーで爆走する珍走団! 危険極まりない!……っておい!)


「ぎゃああああ!」ドカン!

ミア「ああ! 自動車部がキャンパス内を走行させてる自動運転の車にやつらが轢かれてしまった!」


ミア「言わんこっちゃない……」

「その通り、あれこそが"因果"なのです……」ブツブツ

ミア「!?」

「そこの貴女……占いに興味はございませんか……?」「ございませんか……?」ゾロゾロ

ミア(ヤベェ! 印哲の連中だ!)

「「永遠なる目的……梵我一如……アートマ・グラーハ……」」ブツブツ


ミア「万事休す! かくなる上は……」

ミア「三十六計逃げるに如かず!!」ドガン!


「「ぎゃあああああ!!」」


ミア「ハアハア……孫子の兵法は偉大だ……」

71: 2022/03/06(日) 22:55:18.93 ID:z/JluSp0.net
~~

ミア「実はスクールアイドル同好会ってとこに決めてて……公認らしいんですけど」


「知らないな……公認すら多過ぎるからな……あんまり把握してないんだよ、〇〇さん知ってます?」

「んあー、うちの学科のガラの悪い女が入ってるって聞いたな、若い女が腰振って踊ってる動画見て駄弁るだけのサークルだっつってた」

「あー、そういう系なんですね、ま……うちも似たようなもんか」


ミア「公認なのに……そういうもんなんですか?」


「文化系サークルは、実際そういうところも多いだろうな……うちだって学祭に向けて一応映画撮ったりはするが……それ以外は普段映画見てないしな……」

72: 2022/03/06(日) 22:59:43.39 ID:z/JluSp0.net
ーーサークルの意外なメリット

「部室持ってるとこには一つは入ったほうがいいよ。 うちの大学のサークル棟は24時間立ち入れるから。」

「どうしようもなく暇なときに部室に行けば、大抵誰かがいてくれる。」


ミア(ぼっち飯回避!ってやつか……人恋しい夜も安心だな)


「大学はあまりにも広大でこれまでの世界観や価値観は一瞬でひっくり返るし、なにより自由。……それゆえに社会との繋がりが希薄になったり自分を見失うこともある。」

「そういうとき、サークルという人間関係や場があれば、それだけで支えになるんだよ。」


ミア「なるほどなあ……いまいち実感湧かないけど……」


璃奈「まあ、ミアちゃんもいずれわかるときが来る。かも。」

73: 2022/03/06(日) 23:01:05.74 ID:z/JluSp0.net
~~

ミア「毎日毎日手当たり次第に周ったけど……とんでもなく疲労困憊だ……」

ミア「コピユニで肉離れ起こしかけるし……インドア極めたボクに運動部はやっぱしんどいのかな」

ミア「ロボコンとか鳥人間とか興味あったけど……技術系サークルは部費がとにかく高いし男ばっかなのがなあ……」


ミア「……」

ミア「とりあえずはDTM研と……」

ミア「……」

ミア「う~ん、スクールアイドル同好会かな……」


「……」サササッ


「ロケットサークルで~す! 火薬や爆薬、ミサイルに興味ある人はぜひ!!」

76: 2022/03/07(月) 18:27:22.31 ID:ZQd0//WQ.net
3話『虹ヶ咲パラダイス (進級は)赤信号』

77: 2022/03/07(月) 18:31:14.80 ID:ZQd0//WQ.net
~基礎工学実験 クラスα(工学部開講 必修)~

ミア(いよいよ初めての実験だ! 難しくて予習はあまり出来なかったけど)


教員「全員居ますかね……? ま、この科目は工学部なら自動で履修登録されるので、無関係の方はいないと思いますが」

「ウン、ウチのグループは全員揃ってるみたいですね、それでは簡単な座学から始めていきます」

「今回ウチのグループの実験内容は粘性です、おそらく講義ではまだ流れには触れていないので、皆さんには先取りという形になってしまって申し訳ないのですが……」


TA「先生、ちょっと……」

「? どうかしましたか?」


ミア(? なんだ?)

78: 2022/03/07(月) 18:33:34.42 ID:ZQd0//WQ.net
「〇〇先生から伺ったんですけど、連絡無しで来てない人が他の班にいるみたいで……班を間違えて参加してる可能性が……」

「それはそれは……うちは人数合ってますので多分大丈夫そうですね」


ミア(初回授業から実験をサボるなんて……工学部にもパンクなやつがいるものだ……)


「念のため確認しますか、その学生のお名前は?」

「その、テンノウジ……リナ? さんですね」

「ああ、はい。一応聞きますけどこの中にテンノウジさんはいませんよね?」


ミア(天王寺!?)

ミア(偶然……だよな?)


「学籍番号は……ですね」

「ん……? ああ3年生の……彼女は確か去年もいませんでしたね」


ミア(3年生!? やはり璃奈なのか!?)


「あと他にも……」


ミア(この後、行方不明者は3人いることがわかり、璃奈を含めた3人の不在確認のために30分近くを費やした。出席を雑に取っていた教員が多く、再度1人ずつ名前と顔と学籍番号を照らし合わせる羽目になったからだ)

79: 2022/03/07(月) 18:35:40.67 ID:ZQd0//WQ.net
ミア(実験内容は結局よくわからないままだった)

ミア(ボクらのグループはさらに小規模のグループに分かれ、それぞれ異なる溶質を担当して実験した。 所定の濃度の溶液を調合し、それらが毛細管を降下する速度を計測する。 その結果から算出した粘性率を濃度に対してプロットし、公式から導いた理論値と照らし合わせ、溶質の種類による粘性のふるまいを評価するのだ)

ミア(ボク達の担当はエタノールだった)

ミア「……」

メンバーA「なんか、地味……ですね」

ミア「そうだね……」ボケー

メンバーA「時間、かかりますね」

ミア「そうだね……」ボケー

メンバーA「……」

メンバーA「出身、どちらなんですか?」

ミア「ニューヨーク……キミは?」

メンバーA「すごいですね……僕は大宮です」

ミア「そうなんだ……すごいね」(オーミヤってどこだ?)

メンバーBC(どこがだ?)

メンバーA「……」

ミア「……」ボケー


ミア(メンバーBとCは一言も発しなかった。地味なのは実験内容だけじゃなかったようだ)

ミア(それにしても璃奈……キミは一体どこまでmysteriousなんだ……)

80: 2022/03/07(月) 18:42:32.71 ID:ZQd0//WQ.net
ミア「疲れた……」テクテク

ミア(高々3時間の作業時間と装置をただ眺めているだけの実験内容に比してどっと疲れてしまった……週末だからなのか、実験が期待外れに退屈だったからか、始めに余計な時間を取らされたからか、それとも……)

ミア「実験レポートも書かなきゃいけないのか……タスクが多いのは精神的に参るな……」


ミア「部室に、行こう……」


~~

ミア「……」テクテク


果林「……」スパー

果林「……」ボリボリ


ミア「ケホッ」(こいつ喫煙所の白線からはみ出してるぞ……治安悪いな……)


果林「……」ギロ


ミア「ひぃっ! ス、スイマセ……」(ヤニカス治安悪過ぎ!)

82: 2022/03/07(月) 18:45:23.95 ID:ZQd0//WQ.net
~部室~

侑「や~! それは厳しいな……」パチン

しずく「むむ……」パチン

彼方「なんのっ」パチン

エマ「強気だねぇ~」パチン


歩夢「えっ、これ無理無理無理無理!!」ピコピコ

かすみ「歩夢さん!右!右!右ちゃんと見て!!右来てる!!!」

歩夢「じゃあかすかすやってよ!」バッ

かすみ「え! ちょ、いきなり!」


ミア「……」ガチャ


侑「あ、おつかれ~」パチン

しずく「……」パチン

彼方「おつ~」パチン

エマ「彼方ちゃん通すねぇ……」パチン


歩夢「ほら! 氏んだじゃん!」バシン

かすみ「痛っ! 急に渡されたらそりゃ無理ですよ! あ、おかえりなさい」


ミア「ただいま……璃奈は?」(なんかヤニ臭いな……)


侑「そういえばいないね」パチン

しずく「くぅ~……!」パチン

彼方「これは通る……」パチン

エマ「……ツモ。……4000オール」パタン


歩夢「さっき愛ちゃんと出てったよ」バシン

かすみ「いたい! ……まあ見ててごらんなさい」ピコピコ


ミア「そうなのか……」

83: 2022/03/07(月) 18:48:41.00 ID:ZQd0//WQ.net
ミア「……」

ミア(なんだか疲れたな……)


歩夢「愛ちゃんはバイトだと思うけど……璃奈ちゃんも帰っちゃったのかな?」

歩夢「もしかして璃奈ちゃんに何か用事あったりした?」


かすみ「りな子今夜は男となんとか言ってましたよ」

彼方「ぴ?」

かすみ「や、なんか別の男」

彼方「ぴぃ~っww」ジャラジャラ

侑「かぁ~っ! あの繋がり厨め!」ジャラジャラ

しずく「侑さんは人のこと言えないでしょ……」ジャラジャラ


ミア「……」


歩夢「ミアちゃん?」

84: 2022/03/07(月) 18:50:38.62 ID:ZQd0//WQ.net
ミア「……zzz」


歩夢「あり? 寝てる……」

かすみ「疲れちゃったのかもしれませんね」


エマ「急に環境変わるとね~」パチ

侑「1年生結構大変だもんね~、学部にもよるけどさ」パチン

しずく「思い出すなあ、私も1年生のときほんと大変で……」パチン

彼方「彼方ちゃんはいまだに毎日疲労困憊だよ~」パチン
ミア「……zzz」


果林「うぃ~っす……じゃなかった、はぁ~い♡」ガチャ


「「あ~~っ! 果林さん(ちゃん)!!」」


ミア「……zzz」

85: 2022/03/07(月) 18:53:29.07 ID:ZQd0//WQ.net
~~

ミア(しまった! 完全に寝落ちしてた!)ガバッ

ミア(何時だ!? 部室にはもう誰も……)キョロ


エマ「おはよ、ぐっすり寝てたね」グビ


ミア「! え、エマさん……居たんですか」


エマ「ミアちゃん1人残すわけにはいかないからね~」グビ


ミア「ご、ごめんなさい……迷惑かけて」


エマ「いいのいいの、わたしもやることなかったし」


ミア「……」グキュルルル

ミア「げっ」


エマ「あはは、お腹空いたよね、ちょっと遅いけどご飯食べに行こっか」


ミア「は、はい!」

86: 2022/03/07(月) 18:55:38.37 ID:ZQd0//WQ.net
~焼き鳥屋~

ワイワイガヤゴヤ

ミア「すごい人だ、これが華金ってやつなのか」


エマ「ね~、みんなこんな時間まで飲み歩いてるんだね」

エマ「さ、食べて食べて」ガジガジ


ミア「いただきます……」

ミア(……焼き鳥は初めて食べるな……新歓は焼肉ばっかだったし)

ミア「はむ……」モグモグ(美味っ!なんだこれ!)

ミア「……」ガジガジ


エマ「……」カチャッ…ジュボッ…

エマ「……ふぅ~」スパー

エマ「あ……ごめんね、タバコ、平気?」


ミア「あいえ、ぜんぜん大丈夫です!」(吸ってから聞くのか……)

ミア「というかエマさん吸うんですね……」


エマ「いつの間にかね~」

87: 2022/03/07(月) 18:57:24.91 ID:ZQd0//WQ.net
ミア(焼き鳥の煙に客のヤニに換気が追いつかない)

ミア(せっかく美味しいのに……なんだかなあ、てかこれ旨っ!)ガジガジ

ミア(こんなに臭いつけて帰ったら、ランジュにまたなんか言われるかもな……)

ミア「!」(しまった!ランジュに連絡するの忘れてた!)


エマ「ランジュちゃんには私から連絡しといたよ」グビ


ミア「え? あ、ありがとうございます……またうるさく言われるところだった……」


エマ「あはは、ランジュちゃんも心配性だからね」


ミア(そう、ランジュはボクのことを過剰に心配し過ぎる)


エマ「芋ロックおかわりで」スパー


ミア(飲み過ぎじゃね……)

88: 2022/03/07(月) 18:59:04.02 ID:ZQd0//WQ.net
「「ギャハハハハ!!!」」


ミア(虹大の連中かな? どこのサークルだろうか)

ミア(馬鹿騒ぎしている虹大生たち、正直うるさい)

ミア(しかし元気だなあ……授業出てサークル行って飲み会……課題やバイトで忙しいはずなのに……底無しの体力か)

ミア(いや……こんな風に馬鹿騒ぎできるのも学生のうちだけだからかな……それこそ、休んでる暇はないわけだ)


エマ「……」モクモク


ミア(てかこいつ何吸ってんだ!? 灰皿からドブのような臭いがヤバ過ぎる……)

89: 2022/03/07(月) 19:01:57.42 ID:ZQd0//WQ.net
ミア(楽しそうにしている人たちを見ると、焦燥感というか……なぜだか焦ってしまう気分になる……気がする)

ミア(なんというか……この広い世界と過ぎ去っていく毎日の中で、この人たちは自分の居場所というものを見つけられていて、笑い合える仲間に巡り逢えているんだなって……)

ミア「……」

ミア(ボクだけがポツンと取り残されているような気がしてならない……もちろん、どこに行こうとか誰と話そうとか……目の前に無数の選択肢があるわけだけど……)

ミア(自分の居場所を持つ、高度なスキルを得る、人脈を作る、そして一生の思い出を手に入れる……あらゆる選択肢が、これら人生の目的へと複雑怪奇に絡み合っていて……正解を選び続けるのは容易ではない! ……いや、そもそもボクって何がしたいんだろう……?)

ミア(ここ最近で抱えていたそんな悩みがぐちゃぐちゃに混ぜ合わさって……がんじがらめにされたような気分だ……)


ミア「……」

ミア「はあ……」


エマ「? どうかしたの?」


ミア「あ、いえ……何でも」


エマ「もしかして……疲れちゃった?」


ミア「い、いえ! エマさんといるのがどうとかそういうわけじゃ……」

90: 2022/03/07(月) 19:03:16.38 ID:ZQd0//WQ.net
ミア(それから、エマさんと色々な話をした)

ミア(せっかくルールを覚えたのに麻雀をできなかったこと)

ミア(璃奈が何故か1年の実験科目を履修していて、来なかったこと)

ミア(ボクが部室で寝ている間に果林さんがやって来て、ボクが寝ている間に帰って行ったらしいこと)

ミア(そして……ボクがいままさに直面している若き迷いについてのこととか……)


ミア(でも、あまり記憶がない……いつもの半分くらいのアルコール量で潰れてしまった)

ミア(気が付いたらランジュが迎えに来ていて、気が付いたら自宅に帰っていた)

91: 2022/03/07(月) 19:04:58.29 ID:ZQd0//WQ.net
~車内~

ミア「zzz……」


ランジュ「……わざわざすみません、おいくらでしたか?」ブロロ…


エマ「いいよいいよ~私が勝手に連れてっただけだから」


ランジュ「でも……」


エマ「私もそうやってご馳走してもらったんだから。 ランジュちゃんもそうだったでしょ? だから、ミアちゃんにも後輩ができたときにはそうするように言ってあげて」


ランジュ「わかりました……」


エマ「あ、この辺で降ろしてもらえると助かるかな」

92: 2022/03/07(月) 19:06:45.25 ID:ZQd0//WQ.net
エマ「そうだ、せっかくだしさ」

エマ「うちでも歓迎会とかやろうよ、ランジュちゃんもどう?」


ランジュ「……あの子は来るんですか?」


エマ「そりゃ誘うけど……」


ランジュ「……じゃあ行かない」


エマ「そろそろ仲直りしたら?」


ランジュ「こっちの問題です……」


エマ「そっかあ……でもさ、ミアちゃんの歓迎会なんだしさ」


ランジュ「……わかりました、顔出すくらいになるかもしれないですけど」


エマ「いいよいいよ、それと送ってくれてありがとね」


ランジュ「はい……お疲れ様です、おやすみなさい」


エマ「は~い、お疲れさま、そっちも帰り気を付けてね」


バタン……ブロロ……

93: 2022/03/07(月) 19:07:50.07 ID:ZQd0//WQ.net
ランジュ「……」


ミア「zzz……」

ミア「むにゃ……」


ランジュ「……」


ミア「……うぅ~、じっくりじっくり仕上げたメンタンピン三色……そして海底、璃奈ぁ……ロンだ……その牌だあ……!」


ランジュ「?」

ランジュ「全く……どんな夢見てんだか」


ブロロ……

99: 2022/03/08(火) 18:37:39.66 ID:60qR4+sC.net
4話『シラバスを読んでない講義について堂々と語る方法』

100: 2022/03/08(火) 18:40:39.42 ID:60qR4+sC.net
侑「……」歩夢「……」エマ「……」グビ


愛「ち~っす」


侑「もう戻ってきた、早かったね」


愛「やべ~、無理な人居たからあの授業取れないw」


歩夢「あ~……でも2年経ったんでしょ? 向こうも忘れてるって」


愛「や~、ばっちり目が合っちゃった。てかなんであいつも落としてるんだよ~」


侑「何の科目?」


愛「オートマトン。ふつーにムズい」


歩夢「そっか~……そっちはただでさえ女子少ないから大変だね」(トマト……?)


愛「それもあるっちゃあるけど、そもそもこれ2年生の科目だし」


愛「愛さんぼっちで辛いよ~~~」


侑「二人揃って再再履なの? もう運命でしょ」


歩夢「今度は二人で再再再履になっちゃうね」


愛「やだ~~~~!!!」

101: 2022/03/08(火) 18:47:58.37 ID:60qR4+sC.net
侑「私もこの前講義室覗いてみたら知ってる人誰もいなくてそのまま帰っちゃった」


愛「みんなもう就活してるもんね~」


歩夢「入学したときに仙人って呼ばれてた上級生の人、まだいて笑っちゃった」


愛「未来のアタシ達じゃ~~んw」


歩夢侑「イヒヒ!w」


愛「そうそう、それでさ! なんか授業一緒に取らない? みんなで協力したら取れそうじゃない?」


侑「あ~いいね」


歩夢「もう授業始まってから2週間経ってるけどね」


愛「ゆーて欠席2回か3回ならまだなんとかなるっしょ!」


愛「探そうよ、どこの学科のでもいいからさ」ペラペラ


侑「ぎゃあ! 授業案内の冊子3年ぶりに見た!」

102: 2022/03/08(火) 18:49:53.67 ID:60qR4+sC.net
かすみしずく「「う~っす」」ガチャ


かすみ「げっ、科目一覧だ」

しずく「……珍しいですね、皆さんどんな心変わりですか?」


愛「かくかくしかじかでね~」

しずく「かくかくしかじかですか~」


かすみ「私春学期始まる前学修案内と合わせて氏ぬほど読み込んだんですよ~……もう見たくもない」


歩夢「え、かすかす来年卒業できるの?」


かすみ「万が一なら……ワンチあるってとこですね……」


侑「しずくちゃんは?」


しずく「無理ですね」


愛「即答w」

103: 2022/03/08(火) 18:52:16.29 ID:60qR4+sC.net
パラパラ…

かすみしずく「「う~ん……」」


かすみ「……うちの学科のは課題もレポートも多いですし、楽して取れそうなのはそんなにないですね……ふつーに微分とか出てくるのありますし」

侑「げ~微分は高校以来だから厳しいや……かすかすそんなのやってるの?」

かすみ「私もやりたくてやってるわけじゃないですけどね」

愛「そっか~」


しずく「こっちは一限ばっかなので……私も皆さんも出られそうにないですね」

歩夢「わかる、うち無駄に一限多いよね」

しずく「学部の方針らしいですね、あれ」

愛「そっか~」


侑「そうだ、私教育実習行かなきゃいけないんだけど誰か一緒に行かない?w今年か来年w」


愛「1人で行け!w」

104: 2022/03/08(火) 18:56:58.19 ID:60qR4+sC.net
パラパラ…

愛「いいのないな~」

侑「やっぱ楽単がいいんだけどさぁ、みんなの言う楽単って私の楽単じゃないんだよね」

かすみ「まあ現に落としまくってるわけですからね……」


侑「授業出なくても試験だけで単位来るとか言われても……解けないし! みたいな」

愛「それな~」

侑「テスト無くて課題だけで単位来るとか言われても……課題多いしむずいし!みたいな」

愛「それな~」

侑「出席だけしてれば単位来るとか言われても……起きられないし! みたいなw」

愛「それな~w」


侑「試験なくて~」

かすみ「課題もなくて~」

しずく「出席もない講義」

愛「あるわけないんだよなあw」

歩夢「どうやって成績つけるんだ」

愛「ごもっとも。楽単は諦めて内容面白そうなの探そ!」

105: 2022/03/08(火) 18:59:16.82 ID:60qR4+sC.net
パラパラ…

しずく「これとか面白そうですね♪ 演劇の参考になりそうです!」


かすみ「表現論……? なんか文学とかそっち寄りなんですかね?」


歩夢「いや~、聞いたことないけどな……こんな授業あったんだ」


侑「小説とか映画とかそういうのかな? 授業中に読んだり観たりするのあるよね!」


愛「採用!」

106: 2022/03/08(火) 19:00:17.37 ID:60qR4+sC.net
パラパラ…

しずく「むむ……」


かすみ「どしたの? しず子」


しずく「またいいの見つけちゃった……これ、、アリじゃない?」


侑「……アルコール……いい響きだね! 酒カスの私達にはピッタリだ!」


愛「採用!」


歩夢「あでもⅡって書いてあるから夏学期だし続きものっぽいよこれ」


愛「まあでも採用!」

107: 2022/03/08(火) 19:06:53.23 ID:60qR4+sC.net
パラパラ…

璃奈「私のおすすめはこれ。」

愛「いきなり出てきたね~」

璃奈「高電圧工学。愛さん雷とか好きだし。」

愛「りなり~、そのことはもう勘弁してよ~っ」

璃奈「ふふふ。あのときの愛さん、面白かった。」

歩夢「あはは、なんかあったね」

愛「忘れて!」


しずく「なんか凄そうな名前だけど何やるの?」


璃奈「デカい電圧と電子のふるまい。例えば、通常では絶縁体として扱ってきた"空気"だけど、高電圧が印加された状態では絶縁破壊が生じる。この状況では、私達がこれまで扱ってきた線形回路とは異なるメカニズムで電流を議論することが必要となる。それは電子や電荷の発生や運動というという本質的な観点から電気を捉えることに他ならない。まずはストリーマ理論とタウンゼント理論から始まり……」ペラペラ


しずく「あ、もういいです、ごめんなさい」

歩夢「別に扱ってないし……そんなの取るわけないでしょ」


璃奈「……ま、文系じゃわからないか。この領域の話は……。」


歩夢「なに? こいつ」

侑「オタクちゃんさあ……」


愛「てかそもそも愛さん電子の気持ちに興味ないから無理~w」

璃奈「チッ」

かすみ(やり返されるのわかってるのになんで煽るんだろう…)


侑「そもそも私高校でも物理やってなかったし」 

かすみ「ガチガチの理数系は……私も無理だよ」

しずく「数学わからないし……」

愛「愛さんも0と1しかわかんなかった~w」


璃奈「チッ!」

108: 2022/03/08(火) 19:07:51.85 ID:60qR4+sC.net
歩夢「結局2科目だけか……」


かすみ「残りはおのおので取るしかないんですかね……」


しずく「それぞれの必修持ち寄るのが一番丸いのかな?」


愛「ん~……」

109: 2022/03/08(火) 19:10:09.73 ID:60qR4+sC.net
エマ「……」グビ


愛「エマっちなにか知らない?」


エマ「……」グビ

エマ「貸して」


愛「あ、はい」


エマ「どれどれ……」パラパラ


みんな「……ごくり」


エマ「……国文学B」パラリ

エマ「……メディア文化論……ロシア語bクラスⅠ~Ⅳ、マルクス経済学」パラリ

エマ「……ファッションと生活……近代政治史」パラリ

エマ「刑法概論は……保留かな……民俗学」パラリ


エマ「スポーツ実習科目はもう取った?」


愛「や……まだ」


エマ「じゃあそれも合わせて春夏学期は18単位だね……こんなものじゃない?」


みんな「「おおお!」」

110: 2022/03/08(火) 19:11:55.57 ID:60qR4+sC.net
侑「さすがエマさん!」


しずく「なんだか卒業できそうな気がしてきました!」


歩夢「気が早いよ……まずはちゃんと出なきゃ」


かすみ「それにしてもよくこんな授業の情報知ってましたね……学部の友達に聞いても多分誰も知らないですよ」


愛「やっぱ頼りになるのは年の功だね~!」


エマ「怒るよ?」


愛「ッヒィ~w」

111: 2022/03/08(火) 19:12:56.81 ID:60qR4+sC.net
愛「さてと……授業も決まったことだし……」


侑「お?」


愛「昼休み! ハッピーアワー行こ!!」


「「うおおおお!!!」」


かすみ(果たしてこんなんで単位取れるんだろうか私たち……)

126: 2022/03/09(水) 21:13:51.52 ID:ZAdYRZiF.net
4.5話『ども……りゅーねんっす』

127: 2022/03/09(水) 21:16:06.48 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「我がスクールアイドル同好会の部室は不夜城部室棟Cの3階に存在する」

ミア「文化系サークルが密集したこの建物には〇〇学部棟なんかよりはるかに人が居て……とりわけこのフロアはまさに魔境! カオス! コクリコ坂に出てくるカルチェラタンを連想させるね、……流石にあれほどじゃないけど」


ミア「ご近所は汚くてうるさい新聞部、くっさい漫研、廃墟同然の開発研……」

ミア「よくあることなのだが、隣同士のサークルとは仲が悪い……隣の騒音や振動が貫通してこちらまで響いてくるからね、安アパートみたいなものだ」


ミア「新聞部は輪転機室の音がとにかくうるさい! これは活動上仕方ないから諦めているけど……本部室の方でも毎晩毎晩飽きずに深夜まで何を早口でペチャクチャと議論しているんだか……と思っていたら最近はめっきり静かになった」

ミア「なんでも防音壁を導入したらしい、ボクらにもお金があればなあ……」


ミア「漫研は以前彼方さんが入っていたことがあるらしい……向こうも昼から夜までだらだら遊んで駄弁って、まあ大体うちみたいなところだよね……こちらは女、あちらは男しかいないけど」


ミア「開発研は雰囲気が明らかにヤバい……ホコリだらけで真っ暗でサークルの表札も看板も無く人の気配が一切ない……中に氏体があるとか夜な夜な殺人鬼が出入りしているとか……そんな噂が立つくらいの、もはや心霊スポットだね」


ミア「そんな中、スクールアイドル同好会はヤバくてムサいエリアに咲いた唯一の花園ってわけだ!」

128: 2022/03/09(水) 21:19:08.65 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「空きコマ、お昼休み、授業後や深夜……いつでもこの部室棟へ来て作業したり駄弁ったりできる」


ミア「つまり、部室は講義室よりもゼミ室よりも研究室よりも……大学で最も長い時間を過ごす場所となるかもしれないわけだ」


ミア「それゆえに部室内は作業場といえども、ある程度の生活感が求められてくる。最初から何でも揃っているわけではないので、部員でお金を出し合ったり私物を持ち込んで備品を揃えるのだ」


ミア「うちにも宿泊具に調理器具、PCを始めとした家電にドレッサーとメイクセットが置かれている。 そしてなにより……」

129: 2022/03/09(水) 21:21:03.24 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「麻雀! 花札! モノポリー! カタン!」


ミア「あるいは各種ゲーム機など……まさに時間を無限に溶かせるのがここの部室! というわけだ」


かすみ「なんか今日はすごい地味な局面ですね……」パチン

しずく「チー。 満貫以上誰も上がってないし……」パチン

璃奈「地味な展開は嫌いじゃない。」パチン

愛「あ~ツモ。 300-500……」パタン

ミア(ボクも麻雀やりたいな……)


彼方「月見花見で……あがり」ペシン

エマ「盃強過ぎじゃない?」

ミア(点棒の代わりにタバコとマッチ棒使ってる……)


歩夢「味方がクソ過ぎる……ラグいし塗らないし……」カチカチ

侑「それな……いや~塗ってよ~……」カチカチ

ミア(人撃って頃すゲームやってて楽しいのか!?)

130: 2022/03/09(水) 21:26:11.05 ID:ZAdYRZiF.net
~本棚~

ミア「本棚はサークルの顔と言っても過言ではない!」

ミア「歴代の部員がちまちまと活動のための書籍や文献を集め、保管する……そうして部室のあるサークルはだいたいどこも凄まじい量の書籍を保有することになる」

ミア「我がサークルの本棚も漫画やラノベ、オタクDVDのみならず、お堅い本も多数並んでいた」


ミア「プラトン、アリストテレス、デカルトの古典中の古典」

ミア「ホッブズ、ロック、ルソー、モンテスキュー、バーク……世界史で聞いたことあるような著作」

ミア「ホイジンガにカイヨワ……これは知らないな」

ミア「クリシュナムルティ……中身チラ見したけど一行目からわけわからん……」


ミア「アトキンス、シュライバー、マクマリーにキッテル、バーローなんかの物理化学やオライリーの情報系の教科書」

ミア「マルクス、エンゲルス、トリアッティにグラムシ……いい趣味してるなあ」

ミア「芦部、西田、佐久間……これは法学部の人かな?」


ミア「……誰か開いて読んでるところ見たことないぞ……」

131: 2022/03/09(水) 21:29:17.90 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「設置されている家具は、早い者勝ちのニトリの2人がけソファ、冬はコタツに変貌するちゃぶ台兼ボードゲーム卓(ニトリ)……酒とジュースとお菓子ばかり詰め込んだ冷蔵庫(ニトリ)、小さいレンジ(ニトリ)とカセットコンロ(ニトリ)……古いくせに無駄に場所を取るPC……」


ミア「ぶっちゃけ誰かの一人暮らしの部屋とさほど変わりないね」


かすみ「バイト行きたくないよ~」

しずく「ういーっぷ……」ヒック

エマ「……」グビ


ミア(まーた昼から酒飲んでる……)

132: 2022/03/09(水) 21:30:55.87 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「他にもデカいTVと再生機器があって、最近はボクもアニメを見ているよ……工学部のオタクに話を合わせるためにね」


璃奈「愛さんの戦い方ほんとに面白くない。ガン待ち。ワンパ。インキャ戦法。」イライライライラ


愛「対応できないのが悪いw」

愛「あれれ~?w 愛さんさっきから一歩も動いていないんだけどね?w」カチカチ


璃奈「……ッ」ギリィッ


ミア(ヒソカかな?)


ミア(対戦ゲームで、璃奈が愛さんに無慈悲にボコられている……。 缶とフリスビー使う犬のキャラに執拗に詰められていて、見てるこっちも可哀想に思えるくらい嫌らしくて愛さんらしい戦い方だ……)

133: 2022/03/09(水) 21:33:08.83 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「備え付けのロッカーも取り立てて説明することはない」


ミア「カバンやアウターを突っ込む場所、日用品がしまってある場所……そして使わないものを放り込む場所」


ミア「防災用のヘルメット、いつかの花火の残りや小さい望遠鏡……璃奈が作ったのか実装を諦めた電子キーの部品、AVや申し訳程度のアイドルのDVDとかのガラクタがまとめてぶち込まれている」


ミア「彼方さんがそろそろ整理しなきゃなーってよくボヤいているけど……スペースに困っている訳でもないのでそのまま放置されている……」

134: 2022/03/09(水) 21:34:11.12 ID:ZAdYRZiF.net
ミア「まあまとめれば、うちの部室にはうちの部を特徴づけるなにかがある訳ではない! 至って普通の……時間を無為に過ごすための部屋だからね……」


ミア「だからこそ、居心地がいいのかもしれなく……だからこそ、みんなここに集まってくるのかもしれないね」


エマ「ミアちゃ~ん、お酒飲む?」


ミア「飲む! 飲みます!!」

137: 2022/03/10(木) 18:30:09.46 ID:teaxqPFp.net
5話『恐るべき先輩たち』

138: 2022/03/10(木) 18:33:43.33 ID:teaxqPFp.net
ミア(今日中にレポート終わらせたいな……グラフも直さなきゃだし)


果林「……」スパー

果林「……」ボリボリ


ミア「……ケホッ」(このジャージビーチサンダル女、なんでいつもわざわざ白線からはみ出したとこで吸ってるんだ?)


果林「……」ギロリ


ミア「ヒッ!スミマセ……」(またつい謝ってしまった!? ヤニカスはホント治安悪いな!)

139: 2022/03/10(木) 18:35:29.50 ID:teaxqPFp.net
~部室~

ミア「う~っす……」ガチャ


彼方「その声は~……ミアちゃんだな??」


ミア「こんにちは!」(彼方さんだ!)パァ


ミア(彼方さんおっとりふわふわしてて優しいから好きなんだよな! 綺麗だし! あとおっOいでかいし!)


彼方「いきなりだけど~ミアちゃんこのあと麻雀やらない??」


ミア「え!」


彼方「果林ちゃんがね、やりたいって~もうすぐ来ると思うんだけど~あとエマちゃんも、メンツが一人足りなくてさ~」


ミア「やります! やります!」


彼方「元気いいな~、おけおけ~」

140: 2022/03/10(木) 18:37:23.40 ID:teaxqPFp.net
彼方「果林ちゃん遅いな~」


ミア(彼方さんは5年生の一人で、よく部室のお掃除をしたり炊き出しやったりしてる人だ)


ミア(不定期だがみんなの集まる金曜日は部室で鍋パを開催してくれるらしい!)


ミア(学部も家政学部……というところなのだが、繊維工学や栄養学なんかの科目ではがっつり理系的アプローチをしていてたまげてしまった、それって工学じゃね?と)


ミア(果林さんは……結局どんな人なんだろう??)ワクワク


ミア(なんでも学生ですでに事務所に所属していて……モデル業をやっているらしい! きっとメチャカッコよくてお洒落な人なんだろうな!)


ミア(ぜひファッションの参考にしなければ!!)

141: 2022/03/10(木) 18:41:27.41 ID:teaxqPFp.net
ガチャ

果林「うぃ~~~っす……」ノソノソ


ミア「!!?」

ミア(喫煙所のガラの悪い女!!! なんで!?)


彼方「お~」


ミア(げ!! 果林さんってまさか……まさか……!)ガクガク


彼方「ほら、新入生のミアちゃん」


果林「……」チラリ


ミア「……」ガクガク


果林「……あ~知ってる知ってる、先週爆睡してた子ね」ボリボリ

果林「喫煙所でもたまに見かけたわ、今日も……通りすがりにいつもガン飛ばしてくれる娘よね?」


彼方「なに~?ミアちゃんそんなことしてたの? やるね~」


ミア「し、してないですよ~…」ガクガクガク(ガン飛ばしてくるのはお前だろ! ついでに煙も! あとお前がいた場所は厳密には喫煙スペースじゃないんだよ!)

142: 2022/03/10(木) 18:47:54.07 ID:teaxqPFp.net
彼方「……メンツ揃ったしやるべ」

果林「うす」

エマ「は~い」

ミア「……!」ドキドキ


果林「デカピンでいい?」

彼方「バカだろ、そんな金ね~よ」

ミア「えっ」(……金!?)

果林「ふーん、じゃあテンピン」

彼方「賭け麻は二度とやらね~」

ミア(彼方さん、なんか急に口が悪くなったな……)


果林「……」

果林「……怖いのか」

彼方「お?」

果林「負けるのが、怖いのか?」

彼方「おお! ……やってやるよ」ベリベリ

ミア「ええっ!?」

ミア(ちょ、待ってくれ! 賭けるって何のことだ!)

143: 2022/03/10(木) 18:50:28.79 ID:teaxqPFp.net
彼方「後悔すんなよ……? ケツの毛まで毟ってやらあ……」ジャラジャラ


果林「うはは、VIO処理の金が浮いて助かるわね」ジャラジャラ


ミア(まずい……まずい! なんとかしてくれ! エマさん!)ジャラジャラ


エマ「……ミアちゃんがね、最近始めたばっかだから、まだお金とかはね……」ジャラジャラ


果林「ん」

彼方「健康だ」


ミア「なんかすみません……」(た、助かった……あと今後も賭ける気はないけどな……)

144: 2022/03/10(木) 18:51:54.23 ID:teaxqPFp.net
~東一局~

果林「……」パチン

彼方「……」パチン

エマ「……」パチン


ミア「……えと、え~と……」もたもた

ミア「これ……かな?」パチン


果林「……」パチン

彼方「……」パチン

エマ「……」パチン


ミア(あれ、どっちだろ……?)モタモタ

ミア「これ……かな?」パチン


果林「……」

145: 2022/03/10(木) 18:52:59.45 ID:teaxqPFp.net
果林「……」パチン

彼方「……」パチン

エマ「……」パチン


ミア「えと……」モタモタ

ミア「……これか」パチン


果林「……」パチン 彼方「……」パチン エマ「……」パチン


ミア「えと……えっと……あれ?」

ミア(自分の番が周ってくるのが早すぎる!)


果林「早く」


ミア「す、すみません」パチン

ミア(怖いよ~! ; ; )

ミア(こいつらいつもはもっと和気あいあいと雑談しながら打ってるのに~!)


果林「……」パチン 彼方「……」パチン エマ「……」パチン


ミア(彼方さんもエマさんもなんで今回は無言なんだよ~!!!)

146: 2022/03/10(木) 18:54:49.93 ID:teaxqPFp.net
ミア(これはいらないな……)パチン


果林「……ロン、12000」


ミア「!?」ビクゥ


彼方「……」

エマ「……」


ミア(高過ぎ!ダマでそんなに高いのか!?……いや高いからこそのダマなのか……)


果林「12000」


ミア「ひ……えと……や、役は……」


果林「言ったほうがいい?」


ミア「だ、大丈夫です……」カチャカチャ

ミア(ちくしょう、怖過ぎる!!)ガタガタ

ミア(役牌×2ドラ1のホンイツ……火力高過ぎ……!)

ミア(メンホンなんてありえね~!! しかし今さら果林さんの捨て牌を見てみれば、初めから明らかに染めてる気配だった……)

147: 2022/03/10(木) 18:57:43.35 ID:teaxqPFp.net
彼方「……」パチン

ミア「……あ、ロンっ……! リードラ……裏1で……3900です」

彼方「……ちぇ」

果林「……」


ミア「あれ、点棒多くないですか?」カチャカチャ

エマ「40符だから5200だし、流れ一本場だから5200は5500だよ」

ミア「あ、そうなんですか……」(わからん……)


果林「……」

果林「……」コツン


ミア(果林さんが無言でエマさんの河にある白を指差した)

ミア「?」


彼方「あ」

エマ「ありゃ……フリテンだね……」

ミア「!?」

彼方「助かる」カチャカチャ


ミア(え、これ白も待ちなの!?)

ミア(25索待ち……のつもりだったのだが、トイツの白に索子の22234という手牌では白も待ちのひとつで……白が捨てられたのはボクの立直後だったから、当たり牌の1つを見逃した事になり……つまり振聴になるらしい……ムズ過ぎ!)

148: 2022/03/10(木) 18:59:51.24 ID:teaxqPFp.net
~~

璃奈(わからない……)

璃奈「……」


果林「……各駅停車」ボソッ


しずく「……」

璃奈「……」パチン

彼方「……」パチン


しずく「う~ん……」

璃奈「むむむ……」


果林「……大阪駅と……天王寺駅って」

果林「いつも人身事故起きるわね」ボソッ


しずく璃奈「?」


彼方「……」

彼方「……むふっ」


しずく璃奈(どういうことだろう……?)

149: 2022/03/10(木) 19:02:16.87 ID:teaxqPFp.net
~~

かすみ「果林さんが怖い?」

しずく「果林さんかなりとっつきやすい方だと思うな」

璃奈「とても優しい人。 見た目アレだけど。」


ミア「ええ~っ!?」


かすみ「まあ……モデルだけあって美人だけどおっかない格好してるよね」

しずく「格好だけで言えば……湘南とか……川崎のドンキにあんな人いるよね、ダッシュボードモコモコの軽に乗ってレゲエかけて……」

璃奈「ふつーにDQNではある。」


ミア(果林さんは……学生の傍らで生意気にもファッションモデルなんて浮ついたことをやっていて……そのくせ大学ではジャージにサンリオのサンダルで、キャンパスをヤニをむしゃぶりながら我が物顔で闊歩する……学生寮を根城にしていて、昼に起きれば授業やゼミには寝巻きのまま来ちゃうような精神異常者! ま、顔の良さと巨乳は認めるが……)

150: 2022/03/10(木) 19:04:13.48 ID:teaxqPFp.net
ミア「彼方さんだって、もっとぽわぽわした人だと思ってたのに……」


かすみ「彼方さんもま~そういうとこあるよね」


しずく「あの人は実際ドンキ好きだから……」


璃奈「あのひとこそふつーにDQN。」


かすみ「たまにモラルやばくて笑っちゃうよね」


しずく「完全に松浦・小原の系譜だからね……」


璃奈「彼方さんの話す育ち悪いエピソード、好き。」

151: 2022/03/10(木) 19:05:50.56 ID:teaxqPFp.net
かすみ「最初? 歩夢さんがマジで怖かったよ」

しずく「あ~ね」

かすみ「まあもう慣れたけどさ……」


ミア「歩夢さんが? 何で?」


かすみ「何でって……どう見てもやばいでしょ、まあそのうちわかると思うけど」

しずく「侑さん絡みで定期的に情緒不安定になるから……あの人」

璃奈「病み系女子。」


ミア「そうなのかあ?」


「「いやほんとやばいから」」


ミア(なんと、3人が口を揃えてヤバいと評した……あの逆張り璃奈まで……)


ミア(歩夢さんが怖いのはあんまり想像付かないな……)

ミア(歩夢さんも侑さんも、ボクがここに来たときからよく気にかけてくれている、面倒見の良い人たちだ)

ミア(歩夢さんはお人形さんみたいな上品な顔立ちでガーリッシュとフェミニンの融合みたいなコーデを好み……侑さんは口リ系のキュートな顔でグランジファッションで身を固めたバンギャっぽいメイクの……毛色は違うけど、どちらも垢抜けててめちゃかわな……遊んでるタイプのキラキラJD!)

ミア(2人とも童顔だけど、男を取っ替え引っ替えしてる系の……そのギャップに憧れる! あと細いくせに乳がでかい)

152: 2022/03/10(木) 19:07:09.23 ID:teaxqPFp.net
~~

ミア(ある日のこと。 部室棟に近づいたとき、異変に気が付いた)


ズズズ……


ミア(な、なんだ……この身の毛もよだつような悪寒は……)


ミア(凝を使ったところ、ボクたちの部室を中心としてどす黒いオーラが発せられていた……まるで、この世の不吉全てを寄せ集めたような……)

ミア(プフの円を間近で見たノヴの気持ちが理解る!)ガタガタ


ミア(震える足でなんとか部室の前までやってくると……)

ミア(げっ……)


歩夢「……」ズズズズズ…

侑「だから誤解なんだってば……」


ミア(……帰ろ!)

ミア(思い返せばたしかにこの二人、なんか雰囲気やばいときあった気がしなくもなくもなくもなくも……)

153: 2022/03/10(木) 19:08:28.02 ID:teaxqPFp.net
愛「あーね、あーいうときはめんどくさいから近寄らないほうがいいよw」


ミア「……あの2人仲悪いのかな?」


愛「20年来の仲らしいけどね? 小中高大まで同じって言ってたし……まー2人だけのなんかがあるんでしょ」


ミア「ふ~ん……」


愛「よくあることだし、うちの風物詩みたいなもんだけど……」

愛「ぶっちゃけダルいときはダルいよね!」ワハハ


ミア(愛さんは地味な格好の一見普通のリケジョだけど……気さくでコミュ力も高く、彼方さんや果林さん達に真っ先に悪ノリするあたりに隠し切れないウェーイ系のオーラが垣間見える……ナチュラルメイクで、メガネかけたり露出や身体の線を隠すようなロングスカートを着ているのには深~いワケがあるらしい……しかし隠し切れない爆乳)

154: 2022/03/10(木) 19:09:45.08 ID:teaxqPFp.net
~自宅~

ランジュ「ミア~ご飯できたわよ~」


ミア「うおおおお!」ドタドタ


ランジュ「はい、召し上がれ♪」


ミア「……野菜多くない?」


ランジュ「あなた普段食べてないじゃない、野菜は健康に良いのよ」モキュモキュ


ミア「食べてるよ……ほら、バーガーにレタスとか挟まってるじゃないか」モグモグ


ランジュ「ダメよもっと食べなきゃ」モキュモキュ


ミア「はあ……」

155: 2022/03/10(木) 19:11:22.09 ID:teaxqPFp.net
ランジュ「ちょっと……まだお風呂入ってないの? 」


ミア「いま動画見てるから」


ランジュ「後ろがつっかえてるんだから早く入ってよ」


ミア「先に入ればいいじゃないか」


ランジュ「そうやってダラダラしてるからいつも夜遅くなっちゃうんじゃない……ちゃんと湯船に浸かって身体を芯まで温めて寝ないと次の日の朝が……」ネチネチ


ミア「ああもう……わかったよ」


ミア(ランジュは……いちいちしつこくていちいちうるさい信じられないくらいお節介で過保護な女だ。 ちょっと帰るの遅れたくらいでご飯いるのとか何時に帰るのとか毎日細かく聞いてくるし、人の食生活にケチつけてくるし……日付替わればすぐもう寝ろ寝ろ言ってくるし! 毎朝7時に起こされるし……いつの間に健康オタクになったんだ)


ミア(ヴィーガンや精進料理にハマられたときなんか、勘弁してくれ! って思ったね。肉を食わせろ! あと自分の得意分野になると勝手に捲し立てて……数学の話になるとそりゃもうネチネチネチネチと……1質問すれば100返ってくる……なお、おっOいはデカくて柔らかい)

156: 2022/03/10(木) 19:13:19.36 ID:teaxqPFp.net
~~

ミア「今更だけど、やっていけるか心配だな……怖いものは怖いんだよ、だって常に仏頂面じゃないか」


かすみ「果林さんあれ機嫌悪いんじゃなくて疲れてたり眠いの我慢してるんだと思うよ」


しずく「果林さんが怒ってるとこ見たことないよ?」


ミア「目つきヤバくないか? 人頃しの眼光だよ……」


璃奈「まあでも薄めの時は要注意。」


ミア「やっぱり!」


璃奈「近寄ると抱き枕か膝枕させられてそのまま熟睡してくる。重いから身体がへし折れる。」


ミア(疲れてて眠いだけなのか……)


しずく「お仕事とゼミと苦労してるからね……」


かすみ「ま、とにかくとっとと仲良くなっちゃえばいいんじゃない?」


ミア(こいつらといるときは居心地いいんだけどなあ……)

157: 2022/03/10(木) 19:14:12.41 ID:teaxqPFp.net
~~

かすみ「だるいだるいだるい……」ブツブツ


しずく「鬱病鬱病鬱病……」ブツブツ


璃奈「にゃ~~~~ん。」ブツブツ


かすみ「あ~~~大学爆破されないかな」ブツブツ


しずく「楽になりたいな……全部、全部燃えて灰になってさ……」ブツブツ


璃奈「人は焼けば必ず氏ぬ。苦しんで氏ぬ……。」ブツブツ


ミア(う~ん? やっぱこいつらも大概だな……)

162: 2022/03/11(金) 23:05:51.25 ID:qx4daIHd.net
6話『やさしい大学数学』

163: 2022/03/11(金) 23:09:36.41 ID:qx4daIHd.net
~自宅~

ミア「ええっ!? そうだったのか!?」

ミア「ぜ、全員……?」


ランジュ「……ええ、全員」


ミア「……璃奈も、か……?」


ランジュ「そうね……」


ミア「道理で……なんだか噛み合わないことがあったわけだ……」


ランジュ「……入るのは決めたんでしょう? ならもう隠すことでもないでしょうし……」


ミア(この間の実験での璃奈の件をランジュに話したところ、あっさり答えが返ってきた。 実は薄々勘付いてはいたのだが……まさかあいつらが……ていうかそんな異常なサークルが存在するなんて……)

ミア「みんな……みんな社会不適合者だったのか……?」


ランジュ「……まあ、人には色々事情があるのよ……あなたはそうならないように気をつけなさいね……」


ミア「……」

ミア「……なによりショックなのは、いつもボクにうるさく言うランジュまで留年してるってことだよ……」


ランジュ「えっ! 私はしてないわよ」


ミア「だってさっき"全員"って」


ランジュ「いやそれはわたし以外全員ってことで」


ミア「……なんてことだ、すぐランジュの母上にご報告しなければ……もしもし? ミアですが……娘さんのことで」ピポパポ


ランジュ「ちょっと! 違うってば! 言葉のあやなんだってばあ!」ドタバタ

164: 2022/03/11(金) 23:11:48.97 ID:qx4daIHd.net
~~

「え、ミアちゃんその格好オシャレだね」

「正直ちょっとアリかも……」「靴かわいい~!」


ミア「ははは、ありがとう」

ミア「これ実は安全靴なんだよ、鉄板が仕込んであるから車に踏まれても平気なんだ」


「そ、そうなんだ」「実験で怪我したらまずいもんね……」


「あ、あとそのサングラスとか……」


ミア「これはね、サングラスじゃなくてガス溶接ゴーグルなんだ」

ミア「これさえ掛けていれば顔面が骨まで溶けても、目だけは最後まで無事ってことさ!」


「へ、へえ~」「それ氏んでるよ……」

165: 2022/03/11(金) 23:15:40.67 ID:qx4daIHd.net
~確率・統計(経済学部開講)~

「え、何これさっぱりわかんないんだけどw」

「ミアちゃんわかる?」


ミア「いやあ……」


「今回あの人でもちょっと時間食ってたから今回多分相当難しいよw」

「そっか~……w」「とりあえず名前だけ書いとこw」


ミア(大学に入ってわかったことがある)

ミア(それは、授業は協力プレイで挑むべし! というもの)

ミア(大学の授業は難しく、独力でやっていくには時間もキャパもあまりにも足らない……それならば集団で受けて、おのおのの得意なものを分担し教え合うのがよろしい、まあ要するに適材適所ということだ)


ミア(しかし……例外というものはどこにでも存在するもので)

ミア(毎回の小テスト、誰とも相談しないソロプレイで、マジの爆速で解いて出ていく女がいる)

ミア(最後尾に座ってるから、そいつが解いた小テストを教壇まで出しに行くときの足音が教室に鳴り響く……もはやその足音のタイミングが問題の難易度を表す指標と言える)


ミア(中間試験ではなんと、30分もかからず解き終わって退室していった。ボク含め他の学生は90分使っても解き終わらない分量だったのに……)

166: 2022/03/11(金) 23:18:42.13 ID:qx4daIHd.net
~~

「突然失礼……フヒヒw ミアさん、圏論に興味はございませんか?」


ミア「圏論?」


「そうです、カ↑テ↓ゴリーです!」

「圏論は、いまや集合・位相と並ぶほど現代数学に欠かせない分野となっており……対象の構造を調べるのではなく、それが持つ関係に着目することでそれらを抽象的に取り扱うことができる、という数学の統一的試みです……圏と射によって普遍性が導かれてゆく様はまさに恍惚の境地!……例えばホ〇ロジー群は圏論の間の関手であり……実際この理論のなにが嬉しいかというと例えば……」ペラペラ


ミア(いきなり語り出したな……これだからNerdは……)

ミア「悪いけどボクにはまだ高度過ぎて手を出せないな……まずは代数から固めていくつもりだよ」

ミア(興味はなくはないが……ちんぷんかんぷんな上にランジュに知られたらシュバられそうだからな……いきなり「あなたのために自作問題作ってあげたわ!」とか持ってこられるのが目に見える)


「まことに残念……」

167: 2022/03/11(金) 23:21:06.19 ID:qx4daIHd.net
~基礎工学実験 クラスα(工学部開講 必修)~

「もう数学か物理の講義で取り扱ったとは思いますが……ひずみは二階テンソルで……各応力成分に対して……総和規約を用いてこう書けますわよね」カキカキ


ミア(習ってねーよ!!)


「というわけで……フーリエ変換を利用して解析してみましょう、ということです……フーリエ変換はもう習ったのかしら……? 大丈夫そうですわね」


ミア(いやいやいや……どこがだ! みんなの不安そうな表情を見てくれ!)


TA「先生……」ガチャ


「どうかされましたか?」


TA「それが、その……」


璃奈「……」


ミア(璃奈!? なんで今更!?)

168: 2022/03/11(金) 23:23:29.65 ID:qx4daIHd.net
璃奈「ど、どうにかなりませんか……。」


ミア(何週目だと思ってるんだ……今から来始めても単位は無理だろ……)


「……一度でも欠席したら原則単位は差し上げられないことはシラバスでもガイダンスでも既にお伝えしているはずですわよね、そもそも貴女今まで全て欠席していてレポートも未提出……」ヒソヒソ


璃奈「その……追加で課題とか……。」


「いいえ、もはや論点はそこではないのです、貴女……欠席について、これまで私達になにか連絡をなさいましたか?」


璃奈「それは、その……。」

169: 2022/03/11(金) 23:25:26.53 ID:qx4daIHd.net
「学生実験では無断欠席と遅刻をしてはいけないことは今まででも散々指導しているつもりです
……」

「もし特別な事情なく……貴女の身勝手な判断と行動で班員や他の先生方に迷惑をかけ、そのことを気にも留めないのであれば……科目指導の枠を超えた、教育的観点からも見過ごすわけには参りませんわ」


ミア(ガチ説教されてる……1年生の前で、3年生が……)


璃奈「……」

璃奈「……」


「それでもなにか事情があったのなら……」


璃奈「……」

璃奈「ババア!!!!」


ミア・学生たち「「!?」」


ミア(おいおい……)


ミア(デカい声に鬼気迫る表情で絶叫する璃奈、なんて気迫だ……普段いつも綾波みたいに"どんな顔すればいいかわからないの。"みたいな風なくせに……)

ミア(璃奈は一言ブチギレたあと、踵を返してヒールをツカツカと鳴らしながら出て行った……璃奈の阿修羅のごとき形相と、教員の呆然とした、どこか泣きそうな表情が脳裏に焼き付いて離れない……)

171: 2022/03/11(金) 23:28:03.18 ID:qx4daIHd.net
~自宅~

ミア「意味がわからん……」イライラ


ランジュ「どうしたの?」ヒョコ


ミア「さっぱりわからん……なんなんだ」イライラ


ランジュ「ねえねえ、どうかしたの?」ヒョコヒョコ


ミア「……」イライラ


ランジュ「ランジュが何か力になれるかしら?」ヒョコヒョコヒョコ


ミア「……線形の課題だよ」イライライラ


ランジュ「あ~これね、これは置換の話でね……ふむふむ、なるほど……。 じゃあこの置換の全単射の性質を分かりやすくするためにちょっとしたあみだくじを描いてみましょ! ……するとほら! これが3次の置換に対応してるの!」ペラペラ


ミア「……」イライライライラ


ランジュ「……さてこれをN次に拡張したときに置換全体の集合が合成に関して群であることを示すのが次の問題で……あ、群ってわかる? ……他にも行列式を書き下すときに1を掛けたり-1を掛けたりするのはこの置換に符号を定義できるからで……」ペラペラ


ミア「……」イライライライライライライライラ

ミア「うるさいなあ! 聞いてもいないのにいちいち絡んでくるな!」バァン!


ランジュ「ひっ!」ビクゥ


ミア「聞いたぞ、そんなだからフラれたんだろ」


ランジュ「……」シュン

172: 2022/03/11(金) 23:33:34.92 ID:qx4daIHd.net
~微積分学(理系教養科目 必修)~

「わからなくても答案用紙に名前は書いてくださいね、名前を書くといいことがあります」


ミア(愛さんや璃奈の話によると、ボクたちの微積の教員は授業もテストも氏ぬほどムズい。課題や出席点の救済措置も無い。ハズレ教員を引いたと思いきや……)


璃奈『あまりにも問題が難し過ぎてほとんどの人が解けてない。だから解けなくても単位はくる。』

愛『テスト0点でも単位くれるって!』


ミア(なんなんだその授業……)


「名前が無いと流石に単位をあげられないので……」


学生たち「「ギャハハ!」」ドッ


ミア(必修なのに……もうめちゃくちゃだ……)


ミア(ボクは数学とどう向き合うべきなのか、なんだかわからなくなってきたよ)

173: 2022/03/11(金) 23:35:38.29 ID:qx4daIHd.net
~確率・統計(経済学部開講)~

ガタッ…コツコツ…


ミア(ああ、もう奴の足音が……ってことは今日のはそんなに難しくないわけだな……)カキカキ

ミア(あの女、相変わらず解くの早かったな……小テストRTAかよ……)カキカキ

ミア(……ややっ? この問題は!)カキカキ


~~

「経済やめた~いw」「わかる!そもそも私数学嫌いだしw」

「微積分マジ無理w高校からよくわかんないw」

「私なんて中1の数学で躓いてたw -1かける-1が1になるとこでw」

「早すぎ~w私はサインコサインかなw」


ミア「……」

175: 2022/03/11(金) 23:38:13.49 ID:qx4daIHd.net
ミア「……いや、そこに違和感を覚えるのはむしろ本質的かもしれない」


「「え?」」


ミア「ボクたちが普段扱ってる実数……この集合は体と呼ばれる代数的構造なんだけど」

ミア「負と負の積が正になるのはそう定義されてることでも自明なことでもなく……この体という構造で、ある演算規則が約束されているからなんだ……その規則というのは……」ペラペラ


「「そ、そうなんだ……」」「すごいね……」


ミア「他にもさっきの小テストで出てきた極限値も、限りなく近づく……という説明では厳密性に欠け、本来はε-Nやε-δ論法を用いた議論を適用することで……」ペラペラ


「「ミアちゃん……」」

180: 2022/03/12(土) 21:45:04.23 ID:N7/ejwSi.net
7話『燃え上がる果林のゼミ』

181: 2022/03/12(土) 21:48:32.82 ID:N7/ejwSi.net
果林「~というのがこの研究の目的です、次にその手法を……」


「ちょっとちょっと待って」


果林「……え?」


「いや、全然わからないんだけど」


果林「」


「だから何?」

「で?」

「はぁ~……うちの学生は日本語が通じないのかしらね」

「あんたねえ、私が聞いてなんっにもわかんないんだから、他の人はもっとわかんないよ」

「卒論発表はこんな甘くないんだけど!?」バン!


「来週までに直しといて。 来週また発表の時間取るから」


果林「……」

182: 2022/03/12(土) 21:51:35.31 ID:N7/ejwSi.net
~部室~

果林「……」ガチャ


彼方「あ、果林ちゃんおつか~」

果林「……」

彼方「お?」


果林「教授はガイジ♪あそれ!ガイガイガイガイガイガイガイガイ♪」ドタドタドタ


ミア「!?」

ミア(な、なんだいきなり!)


愛「うははははw」パシャパシャ

侑「出たぁ!! 果林さんのガイガイ音頭!」

ミシミシ…

歩夢「ちょ、本棚崩れますよ」


ミア(音頭なのにBPM高すぎだろ……)

ミア(怖い先輩が部室に来るなり変な踊りを踊り出す……なんなんだこの人)

183: 2022/03/12(土) 21:55:28.81 ID:N7/ejwSi.net
果林「ヒスババア! 更年期! でも学生イジめりゃ超元気!」ドスドス

果林「乳もなければ器(マ*コ)も小さい♪」ドスドス


彼方「がはは!」


ミア(下品過ぎる……)


エマ「……ああしないとね、果林ちゃんの心が砕けちゃうの」


ミア(そんなに深刻な儀式なのか……)


果林「あ~スッキリした……」ドスン


ミア「いてっ!」


果林「っと、ごめんね……小さくて見えなかった」


ミア「!」カチーン!

ミア(は??? やば笑笑 ぶつかっといて何???まぢぁりえないんだけど。。笑)

ミア(おっといけない、ボクの心の中に巣食う乙女がつい牙を剥いてしまったよ)イライラ

184: 2022/03/12(土) 21:57:14.51 ID:N7/ejwSi.net
~自宅~

ミア「ランジュ! 酒だ! 酒くれ!」


ランジュ「荒れてるわね……ビールならあるけど……」


ミア「かぁ~っ!!」グビ


ランジュ「果林さん?」プシュ


ミア「そう! どうして慕われてるのか理解できないよ😠」プンプン


ランジュ「ん~……」グビ


ミア「今日なんて自分からぶつかっといてボクのことをチビって!😠」グビグビグビ

ミア「タッパもケツも態度もデカくて度し難いことこの上ない!😡」グビグビグッビィ!


ランジュ「もう顔赤くなってる……」


ミア「あんなケツデカ女にビビってしまった自分が情けないよ!」プハァ!

ミア「おっと……悪口言ってたってことチクらないでくれよ……根性焼きとかされたくないからね」


ランジュ「しないわよ……」

185: 2022/03/12(土) 21:58:50.24 ID:N7/ejwSi.net
ミア「だいたいこの前もルール覚えたてのボクを麻雀でボッコボコにして!」


ランジュ「あなた……それ根に持つわね」


ミア「持つさ! エマさんが賭け無しにしてくれなかったら30万もぶん取られてたんだ!」ドン


ランジュ「どんなレートでやってたのよ……」


ミア「ボクみたいなか弱いカモを見つければたちまち食い物にする……狡猾な悪党だよ」


ランジュ「そんなに?」


ミア「ああ……ランジュの言う通りだった……少なくとも彼女はろくでもないやつだね」


ランジュ「ん~……」

ランジュ「果林さんはあなたに麻雀強いとこ見せたかったんじゃないかと思う……多分だけど」


ミア「どうだか! ありゃあこぎの権化だ」


ランジュ「ん~……」グビ

ランジュ「そ~ねぇ……あの人もあれで人見知りなとこあるから……あなたとどう仲良くなればいいか、きっと考えあぐねているだけなのよ」


ミア「いやに肩を持つじゃないか……そういうモンなのかぁ?」グビ

186: 2022/03/12(土) 22:00:32.17 ID:N7/ejwSi.net
~~

「……なんの図なのそれ」


果林「〇〇から引用した表です……」


「いやあんたの内容とどう関係があるの」


果林「いや……その」


「……表取ってきてグラフ作ってペッペッペって貼ってそれで終わり?」


果林「こ、これについては考察がまだ不十分で……」


「じゃあそんなもん載せんな!」バァン!

187: 2022/03/12(土) 22:02:35.72 ID:N7/ejwSi.net
~部室~

果林「ばーーーーーーーーーっか!!!!! くたばれクソババア!!!!!」


ミア「!?」ビクゥ


果林「4年じゃないし!? 卒業しないし!来年だって4年じゃないもん!」


かすみ「荒れてるね~、あしず子水取って」グビ


しずく「果林さん2留なの?」グビ


璃奈「3も濃厚らしい。」グビ


果林「い"き"た"く"な"い"!!ゼミい"き"た"く"な"い"!!」ドタバタ


彼方「こりゃ深刻だな~……だいじょうぶかぁ? 無理すんなよ~?」グビグビ


果林「仕事行って授業出てゼミ出て……ん"な"暇あるかっつーの!!!!!」


彼方「いやお前授業は出てね~だろw」

188: 2022/03/12(土) 22:05:12.60 ID:N7/ejwSi.net
~~

果林「この論文にはそう書いてあります……」


「あんたはどう思うのって聞いてんだけど」


果林「書いてありますから……そうなのかな、と」


「これまでのあんたの話と随分違うじゃない……私はそれ間違ってると思うんだけどね?」


果林「そうですね……違いますよね……」


「なら違うって言いなさいよ! 実際疑わしいって思ってんでしょ!?」バァン!


果林「はい……」


「論文は批判的に読みなさい! クソならクソって言っていい!」


「確かにその論文は査読が通ってるでしょうけどね、でもだからといって結果が!考察が!結論が! 本当に正しいかなんて誰にもわかんないでしょうが!」バァン!


果林「……」

189: 2022/03/12(土) 22:07:15.78 ID:N7/ejwSi.net
~部室~

果林「思うんだけどね」

果林「強い役、弱い役。 そんなの人の勝手」

果林「本当の雀士なら、好きな役で頑張るべき」


しずく「果林さん早くしてください」


果林「というわけで私は門前役をじっくりじっくり育てることにするわ」パチン


しずく「ロン。 タンヤオドラ3で8000です」


果林「ああああああ!! 喰いタンはマジモンのカス!」ガシャ


愛「ぬははははw」


かすみ「ちょっと果林さん何やってんですかぁ~……しず子に追いつけなくなるじゃないですかあ!」


ミア「……」

190: 2022/03/12(土) 22:08:31.49 ID:N7/ejwSi.net
歩夢「果林さん、長いですよ」


璃奈「早く切って。」


果林「や、ごめん……長考」


璃奈「……見て。朝霞駅で人身事故。」


彼方「ンヒヒw あれは復旧に時間かかるねえ~」


果林「ちょっと! 今回だけだから!」パチン


璃奈「はいそれ。 12000。」パタン


果林「うがああああ!!」ジタバタ


彼方「こら、ただでさえでけ~んだから暴れんな」


果林「ぎゃおおおん!!」ドタンバタン


歩夢「怪獣……」


ミア「……」

191: 2022/03/12(土) 22:11:19.06 ID:N7/ejwSi.net
果林「ひいっ……! ひいいっ……!」ブルブル

果林「ぐぎぎっ……! 駄目っ……! これは切れない……っ!」ポロポロ

果林「圧倒的……! 圧倒的絶望……! ……ぐっ……! あがっ……!」ポロポロ


彼方「てめ~いつまでガタガタやってんだ、はよ切れ」


果林「うぐっ……! 」パチン


侑「ロン! やったあ! 18000!」パタン


果林「ぐにゃあ~~~~!」ガシャ


璃奈「高く見ても3900。親リーに突っ張る手ではない。」


エマ「しかもまだ2シャンテンだし……」


果林「だって安牌なかったもん……!」


彼方「あるじゃね~かw」


果林「ほんとだ……気づかなかったあ~!!」グニャア


ミア(ガチでグニャってる……軟体動物かよ……)

192: 2022/03/12(土) 22:12:45.08 ID:N7/ejwSi.net
~~

果林「その……えっと」


果林「……」

果林「……」


「黙るな! わからないならわからないと言え! 考える時間がいるのならそう言いなさい! 質問されて何も答えず黙ってるのは最も失礼なことだって私は何度も何度も何度も……!」バァン!


果林「はい……」


「原稿やスライドに入れられる文字数は限られている! だから説明を省かざるを得ないのは仕方のないこと! だけどね!」


「そんなこと聴衆は知ったこっちゃない! 説明不足を! 論理の粗を容赦なく攻撃してくるわけ!」


「そういった質問をあらかじめ想定して全力でdefendする! それが発表なの!」


果林「……」

193: 2022/03/12(土) 22:14:32.41 ID:N7/ejwSi.net
~喫煙所~

果林「そうすると教授がね……」スパー


彼方「厳しいね~彼方ちゃんだったらふつーに登校拒否なるわぁ……」スパー


果林「……」

果林「まあ……熱が入り過ぎるところがあるだけかもしれない」


彼方「ほ~」


果林「私もね……先生がだらけてる私に発破をかけてるんだってこと、わかってるのよ」


彼方「愛って訳だなぁ」スパー


果林「そういうこと……それなのに私は文句言ってばかりで……受け身のままじゃなくて、先生にちゃんと歩み寄らなきゃなって思ったわけ」


彼方「成長したなぁ、お前さんよお~……彼方ちゃん泣けてきたぜ」ホロリ


果林「まあそういうわけで……まずは親しみを込めてクソって呼んでみる」


彼方「親しみ要素あるか?」

194: 2022/03/12(土) 22:16:18.15 ID:N7/ejwSi.net
~部室~

彼方「麻雀やんべ……」ジャラジャラ


エマ「あと1人、だれかやる?」ジャラジャラ


ミア「あ……ボク入ります!」


果林「あら……? マン毛も生えそろってないようなヒヨッ子が……ここに何か用かしら?」ジャラジャラ


ミア「むっ……今までのボクとは一味違いますからね……」ジャラジャラ


彼方「おやおや、ヒヨッ子がピヨピヨピヨピヨと……えらい自信たっぷりだね~」カチャカチャ


エマ「これはヒヨッ子のお手並み拝見かな?」


ミア(こいつら……!)


果林「師匠の私に挑もうなんて……10年早いわね」カチャカチャ


ミア「いつボクが弟子入りしたんですか……まあ見ててくださいよ」カチャカチャ

195: 2022/03/12(土) 22:19:40.02 ID:N7/ejwSi.net
果林「ポン! ポポォン!」


ミア「立直!」カラカラ…


エマ「……」パチン

彼方「……」パチン

果林「げっ! ……」パチン


ミア「ロン! メンタンピン一発裏1で……8000は8300!」


果林「ぐ……っ、いや~……そのね? 捨て牌的に14萬待ちかとね?」


エマ・彼方「え?」

ミア「え?」

果林「え?」


ミア「いやさっき自分で2萬ポンしてたじゃないですか……もう4枚切れだからそんな待ちありえないですよ」


果林「あ、そうだった……もう忘れてた」


彼方「偉そうな口ぶっ叩いた割には果林ちゃんイヒヒヒw どうしたよ、耄碌したかあ? おばあちゃ~ん」


エマ「看板開け渡さなきゃね、おばあちゃん」


果林「おばあちゃんじゃない~!!」ジタバタ


ミア「……はははは!」


ミア(ちょっと煽ったりからかい合ったりはするけれど……そうやってボクたちの隔たりは無くなっていく……こういうコミュニケーションも存在するのかもしれないな……)

196: 2022/03/12(土) 22:21:22.02 ID:N7/ejwSi.net
~部室~

ミア「誰もいない……ってことはソファを独り占めだ! ……むにゃ……」


果林「う~っす……」ガチャ


ミア「zzz……」


果林「……」


ドスンッ

ミア「痛!」


果林「あらごめんなさい、ちっちゃくて……見えなかったわ」


ミア「……果林さん……? わかったならどいてくださいよ……」


果林「あっ……急に睡魔が……そしていいところに抱き枕が」ガシィ


ミア「いたたたたた! 潰れる! てか折れる!」


果林「すやあ……」


ミア「ちょ、彼方さんみたいなこと言って……!」


果林「果林ちゃんすやぴだよ~……」


ミア「もう……!」

ミア「どいてください! ……そもそもこんなデカいケツにここのソファは無理ですよ!」


果林「ドチビが!」


ミア「ヒヒヒ!w」

198: 2022/03/13(日) 19:30:58.88 ID:QcpTY3o3.net
8話『やに酒飲み』

199: 2022/03/13(日) 19:32:25.53 ID:QcpTY3o3.net
かすみ「あああああ!」


ミア「!?」ビクゥ(こいつら唐突にキチゲ発散させるな……)


「どうしたの?」


かすみ「予約取るの完全に忘れてた!」


「かすかすのバ先でいいんじゃないの?」


かすみ「……それだけは本当に勘弁してください、次大暴れされたら今度こそ私クビになっちゃいますから」


「「がはは!」」


かすみ「いやほんと、そのせいでバイトリーダーなれなかったんですよ!」

かすみ「愛さん……11人だめですかぁ……?」


愛「え~っ?」

愛「え~~っ……?」


「すげ~嫌そうな顔w」


愛「うち隔離病棟じゃないんだけどなあ」


かすみ「そんなあ……」


愛「まあいいけど……他のお客さん来たらアタシはふつーにお店のほうやってるからね? あと飲み過ぎてアル中なっても外に放り出すだけだからね??」

200: 2022/03/13(日) 19:33:44.28 ID:QcpTY3o3.net
~基礎工学実験クラスα (工学部開講・必修)~

ミア「るん♪ るん♪」


「ミアさん楽しそうですね、何かあるんですか?」


ミア「聞いてくれ! 今日はサークルで飲み会があるんだ」


「それはそれは……」


ミア(あまりにもるんるんしていたところ、今回もペアになった大宮が話しかけてきた。こいつは律儀な奴で石橋叩き壊すのが趣味なんじゃないかってくらい入念で慎重だが……実験が上手く、データ整理もマメだから重宝するよ。 つまるところ全部やってくれる)

ミア「みんなでバカみたいに飲んで大暴れする予定なんだ!」


「大騒ぎじゃなくて大暴れですか……」


ミア「ぶっ倒れるまで飲んで……二次会は緊急搬送先の病院だ!」


「いやいや倒れるまで飲んじゃダメでしょ……なんだかヤバそうなサークルですね……」


ミア「ヤバいなんてもんじゃないよ! 普段からろくすっぽ授業にも出ず酒飲んで麻雀かパチンコばっか打ってる連中でさ! この間なんて…… 」ペラペラ


「は、はあ」

201: 2022/03/13(日) 19:35:31.26 ID:QcpTY3o3.net
~~

ザワザワ

「「遅いよ~」」

果林「え~、みんなわざわざ待っててくれてたの? ごめんなさい……」ドタドタ

ミア(ランジュ以外みんな揃った! 酒はいつも部室で飲んでるけど……こーいうとこで飲むお酒はやっぱ別だ!)

侑「早く挨拶挨拶! 部長だれ?」

果林「ミアちゃんやったら? 実質的な支配は私がやっとくから」ドサッ

ミア「そんな摂政みたいな……」

歩夢「ん~……じゃあ新部長のかすかす、よろしくね」

かすみ「え~!? 私なんですか!? 何で!?」

「「うおおおおおお!!」」

「「かすかす! かすかす!」」「新部長!」パンパン

かすみ「やれやれ、仕方ないですね~」ノソノソ

かすみ「んん~ん、……皆さま本日はお忙しいところお集まり頂きまことにありがとうごさいます……乾杯の音頭は僭越ながら私この中須が……」

「「長い!」」「「早よ済ませろ!!」」

「「誰だてめー! 引っ込め!!」」

かすみ「ざけんな!!」

かすみ「かーっ、協調性のない連中ですね! じゃあ行きますよ! ミアちゃんの歓迎と、我がサークルの今年度の躍進を願って! 乾杯!!!」

「「かんぱーい!!!」」ガチャガチャガチャガチャ

グビグビグビッ

「「ぷはぁ~っ」」

ミア「かぁ~っ!」

ミア(喉を、ごくごく通る! このビールが、うめ~っ!!)

202: 2022/03/13(日) 19:37:08.95 ID:QcpTY3o3.net
カチカチカチッ……スッパァ!

モクモクモックウ!


ミア「げっ!」

ミア(くっさ!!)

ミア(乾杯するやいなや、みんな続々と吸い出して……ヤニ研究会に改名しろ!ヤニカス共!)


エマ「……」スパー

果林彼方「ふぃ~」スパー

歩夢侑「まず油ひくんだっけ?」スパー

かすみしずく璃奈「そーそー、このなんか……ファンデブラシみたいなやつ使って」スパー


ミア(マジでボク以外全員吸ってやがる……昭和の非喫煙者はこんな気持ちだったのか……)


愛「飲みほーだいは今から120分ね~ラストオーダーはまあ……適当でいいや!」カチャカチャ


ミア(愛さんは吸わないのかな……?)

203: 2022/03/13(日) 19:38:48.43 ID:QcpTY3o3.net
果南「ふうう……やっと呼吸できた……息止めるの大変だったわ……あれ、歩夢iQOS辞めたの?」スパー

歩夢「プルームは持ち歩いてますよ、でも今みたいに灰皿があるときは紙巻ですね」スパー

果林「へ~、一本交換する?」

歩夢「じゃあ一本……あ、これフィルター長くて入らないんですね」

侑「私も! あ、これ重っ……」スパー

果林「彼方のはもっとキツいわよ」スパー

かすみ「28ミリはエグいですよ……しかもフィルターないし」

彼方「彼方ちゃんはもう10年はこれよ」スパー

歩夢「いつから吸ってるんですか……」スパー

かすみ「エマさんもそうですけど、両切りなんてよく吸えますね……前貰ったとき一発でヤニクラ起こしましたよ」スパー

彼方「吸い方がね~慣れるともう辞められなくてわろてまう」スパァ

しずく「エマさんのそれ、どこで売ってるんですか?」スパー

エマ「コンビニでは売ってないよね~」スパー

璃奈「置いてあるとこ、見たことない。」スパー

侑「同好会の上の人たちは変なタバコ吸いがち」スパー


ミア(煙やべ~……火災報知器平気かな)


璃奈「ミアちゃんも吸う? メンソールだけど。」

果林「吸いたいの適当に取ってっていいからね、一本30円で」

「どケチか!」「値段妥当だな~」


ミア「いや~……ボクまだ未成年なんで……」グビグビ

204: 2022/03/13(日) 19:40:17.61 ID:QcpTY3o3.net
ミア(空気はニコチンが薄過ぎて息できない、ヤニ吸ってようやく呼吸できる……というのはここのニコチン中毒者ド定番のクソおもんなジョークだ……果林さんだけでなく同好会みんなもよく言ってる)


ミア(こうして見ると、各々が飲む酒に好みがあるように、ヤニもなんでもいいという訳ではなく銘柄にこだわりがあるようだ……ヤニ吸う虫も好き好きといったところか)

ミア(歩夢さん侑さんはピンクやシアンといったパッケージからちょっとお洒落で、軽めのものを吸っている)

ミア(かすみとしずくは電子タバコだ、吸うたびにピカピカ光って煙じゃなく蒸気を出す)

ミア(璃奈は……意外にも紙巻きだ、歩夢さんと同じものを吸っているようだ)

ミア(過年度生組はもうアレだ……果林さんのはまだ普通だが、彼方さんのタバコはゴツい缶に入っているし、エマさんのは相変わらずすげー匂いがする……)


果林「愛~? ビール追加で」


愛「あ~、ピッチャー持ってくるから待ってて」ガチャガチャ

愛「ほいよ~」


「「お~!!」」


ミア(愛さんがビールの入ったデカいポットと刺身を持ってきた)


愛「とりあえずはこれで全部かな? 追加でなんか欲しかったら言ってね」スパー


ミア(お前もかい!)

205: 2022/03/13(日) 19:42:19.25 ID:QcpTY3o3.net
ミア「そうなんですよ! 課題課題課題で!」グビ

「「わはは!」」

ミア「おしゃれgirlsにめちゃめちゃマウント取られて!」グビィッ

「「うははは!」」

ミア「そしたら璃奈が教員にマジギレして……!」

「「がはははは!」」

璃奈「その話は……禁句!」グビ


ミア(刺身やたこわさをつまみながら飲むビールは旨い!!)

ミア(果林さんも怖くなくなった! それに今日の主役はボクだから、みんな優しくしてくれる!)グビグビ


侑「まだー?」ポケー

しずく「まだ生焼けですよ」

侑「むう~ん……歩夢ぅ~」

歩夢「いたたた、も~何? 侑ちゃんってば」

かすみ「侑さんペース早いですよ、お水」


ミア(もんじゃが焼き上がる前に侑さんの顔がすでに真っ赤に……)

206: 2022/03/13(日) 19:45:27.29 ID:QcpTY3o3.net
バクバク…

ミア(もんじゃの美味しさは……正直よくわからん! 少しずつしか食べられないし……焼いて削って、まとめて持ってきてくれればいいのに)モグモグ


かすみ「ミアちゃんあっちの方はどうなの? 工学部だし男の子沢山いるでしょ?」モグモグ


ミア「ヤですよあんなやつら! クネクネしてるし早口だし歩きも無駄に早いし! 動きが全体的に変なんだよ!」グビグビ


果林「ガイガイ音頭とどっちがマシ?」クネクネ


ミア「どっちもやだ!」

「「がはははは!」」


彼方「彼方ちゃんはね~彼ぴってわけじゃないけど……好きぴはいるよ~普段から一日中一緒にいて~……」


ミア(なっ……彼方さんにそんなヒトが!?)


彼方「一度火がついたら止まらないよ~……ずっとキスしてるかしゃぶってる」


ミア(それは彼ピでも好きピでもなくて缶ピだろ! ……でもその言い回しちょっと面白いな、今度使ってみるか……)

207: 2022/03/13(日) 19:46:35.14 ID:QcpTY3o3.net
果林「いっちょ"りゅうのまい"、やりますか! ……あそれ! 留年♪留年♪留留年……」ドタドタ


璃奈「やめて、ホコリも舞う。」


しずく「ちょっと迷惑ですよ! ……あとでやりましょう!」グビ


侑「あゆむ、あゆむあゆむ~……」


歩夢「ちょっと侑ちゃん、こぼれるから……うわあ!」ガシャン パリン


かすみ「あ~もう! 愛さん! 台拭きください! ちりとりも!」 ドタドタ


「愛ちゃんのお友達? ……元気だねえ」


愛「あはははw こいつら他の店全部出禁になっちゃったんですよ~w」グビッ

208: 2022/03/13(日) 19:47:52.49 ID:QcpTY3o3.net
ドカドカドカッ


ミア(誰が追加で頼んだのか……大量のもんじゃ生地! 焼きそば! お好み焼き!)

ミア「多過ぎだろ!」バクバク


歩夢「も~、頼んだの誰!?」バクバク


かすみ「しず子ですよ! この子いつもこういうことやるんだから!」バクバク


しずく「こんなに量多いなんて思わなかったも~ん!」バクバク


ドカドカドカッ

愛「まだ食うかい?」スパー


彼方「お腹いっぱい……だぜ……」


エマ(やばい……私も限界が)バクバク


愛「ほいよ、具沢山・アチアチ・焼きうどんね」ドカドカッ


「「うわああああ!!」」

209: 2022/03/13(日) 19:49:25.49 ID:QcpTY3o3.net
ミア(身内サービスなのか、普通の飲み放題とは比べ物にならないほどハイペースでお酒も提供され……一つしかないトイレは大混雑だ……たまに吐いてる音も聞こえるし)


かすみ「愛さんトイレ紙切れそうです」


愛「え~もう? 使いすぎんなし~」


しずく「おしっこ近くなるからしょうがないもん~」


愛「もー、はいこれ!」


歩夢「……え? ……何?」


愛「レッドペッパー!w」


「は?」


愛「トイレットペーパーの代わりに……レッドペッパー!w なんつてw」


「つまんなっ」「くっだらねえ……」「ギャグセン無下愛。」


果林「食べログに星1付けとくわ、店員の口からゲロみたいなギャグが飛ぶって」


愛「ね~wジョークジョーク!w ほんと勘弁してw」


彼方「んなもん塗り込んだらケツがヒリついてたまんね~や」

210: 2022/03/13(日) 19:51:55.04 ID:QcpTY3o3.net
かすみ「ちょっとこのハイボール度数強くないですか?」グビ

愛「面倒くなったら濃い目に入れてさっさとダウンさせるw かすかすの店でもやるっしょ?w」スパー

かすみ「やりませんよ……」グビグビ


「「うっぷ……しぬ……」」

ミア(愛さんの目論み通り、みんながベロベロに酔っ払った頃……)


ランジュ「う~っす……」ガラッ

ランジュ「何この空間……終わり過ぎでしょ……」


「「あ~っ!!ランジュ(さん)!!」」


彼方「おいランジュ! てめ~サークルサボりやがって!!!」ガバッ


ランジュ「活動なんもしてないでしょ」


彼方「てめえこの麻雀だぁ! 覚えとけよこの~!! あとで雀荘行くからなぁ!」


ランジュ「あら? また全財産捲られたいの?」


ミア「雀荘!? ボクも行くぞ! ……ぐえ!」


果林「ランジュ! お前のガキは預かった! 返して欲しくば……」グイ


ミア「いたたたた!!」ギリギリ


ランジュ「ちょっと! はあ……もう帰りたいわ」ドサッ


しずく「どうせ私たちのこと、どうしようもない駄目人間って思ってるんでしょ!?」ポロポロ


ランジュ「ま~た面倒なの起きてきた……別にそんなこと思ってないわよ……」


侑「すぴー……」zzz

211: 2022/03/13(日) 19:53:04.99 ID:QcpTY3o3.net
ミア「ゴチャゴチャ言ってないでいあから飲め!」ドン!


ランジュ「何?この酒……」


愛「愛さん特製のばくだんならぬばけもん酒! エタノールの代わりにメタノール混入してあるから……トべるよ!」


ランジュ「バカでしょ、そんなもん飲んだら違う世界にトブわ」グビ


「「行ったあああ!!!」」


ランジュ「ぐわあああ! まっず! 度数高すぎ! ほぼ消毒液じゃないのこれ!」


歩夢「メタノールって何?」


璃奈「飲んだら氏ぬやつ。」


歩夢「えっ……じゃあなんでランジュちゃん生きてるの……?」


ランジュ「あなたも酔ってるの? 本当に入ってたらやばいでしょ」


璃奈「愛さんならサイコパスだからやりかねない。」


愛「ちょ、りなり~w」


しずく「すぴ~」zzz

212: 2022/03/13(日) 19:53:56.42 ID:QcpTY3o3.net
ミア「ランランランジュの! ちょっといいとこ見てみたい! それイッキ! イッキ! イッキ! ……って早っ!」


ランジュ「はあ……ふんっ!」グビグビグビィ


かすみ「うわすご……」


歩夢「行ったね~……」


ランジュ「ぶっはぁ! ナメんじゃないわよ……てかばけもん酒マジでまず過ぎる……」


果林「……何入れてんの? あれ」


愛「ただの甲類焼酎w」


エマ「よく飲めるね……」グビ


彼方「リッチかぁ? てめ~ら……普通に飲むだろぉ……」

213: 2022/03/13(日) 19:55:37.08 ID:QcpTY3o3.net
璃奈「ランジュ飲んでなくない?wow wow」パンパン


ランジュ「あなたもだいぶキマってきたわね……この世の終わりみたいなのやめなさい」


璃奈「飲み会は……コールが命。从[´・֊・]从」


愛「でもりなり~陰キャオタクだからコールそれしか知らないじゃんw」


「「がははは!!!」」ドッ


ミア「わはははは!」


璃奈「……」

璃奈「宮下愛、まじで嫌い。 二度と話しかけるな。」


愛「り、りなりー?w、冗談だって~w」

214: 2022/03/13(日) 19:57:28.10 ID:QcpTY3o3.net
~~

愛「かすかす~ちょっと洗い物手伝ってくんない?」ガチャガチャ

かすみ「あ、いいですよ」バタバタ


ミア(ラストオーダーどころか、日付も閉店時間もとっくに過ぎてるけど……ボクたちは特別にたむろさせてもらっていた。 当然お酒は自分達で買い出しに行かないと飲めないけど……)

ミア(起きてる連中は、片付けをしている愛さんとかすみさん……ランジュと歩夢と璃奈と……3年生。 普段眠そうにしてるけど、みんな夜は意外と強いんだな……いや、だから普段眠いんだろうな……)


ランジュ「それはないわ……」


ミア(ランジュが歩夢さんとふつーに話している……もしかしたらランジュは、うちに馴染めてないから普段来ていないのかと思ってたけど……杞憂だったようで安心したよ)


歩夢「この間侑ちゃんと4人でしたときもね……」

ランジュ「またそんな……よくやるわ……」


ミア(恋愛事情の話題になった。 歩夢さんがところどころナチュラルにエグいトークをぶっ込むが、ランジュは平然と聞いている……)

ミア(くそっ……! ランジュのやつ、普段位相がどうとか訳の分からないことばっか言ってるくせにいっちょまえにこういう経験値があるのか……!)

ミア(ボクは処Oでまともに恋愛経験もないから会話に入れん! 愛さんの部屋にあった漫画を読みながらひそかに聞き耳を立てることしかできないのであった……)

215: 2022/03/13(日) 19:59:03.86 ID:QcpTY3o3.net
愛「ガス抜きのやり方わかる?」カチャカチャ

かすみ「あ、一応わかりますよ 」ブシュン


歩夢「朝起きてからもね……私達すぐに……」

ランジュ「いやいやいや……」


ミア(歩夢さん……お、女の子ってそんなことまでしなきゃいけないのか……!///)


果林「……若くて元気ねえ」チビチビ

彼方「わしらも気力があればのお……」トクトク…

エマ「なに言ってるの。 2人ともまだまだ若いでしょ」グビ


璃奈「とで繋がるネットワーク。」

璃奈「電マ改造したら一瞬でイけた。 逝き過ぎて気絶してた。」

歩夢「あれすごかったよね……」

ランジュ「バカじゃないの……」グビ


ミア(やめてくれ……璃奈……璃奈の口からそんな下ネタを聞きたくなかった……)

ミア(……いや、ボクはまだ18だ! 仙道も言ってるじゃないか…… まだ慌てるような時間じゃない)

ミア(ボクは貞操≪ディフェンス≫に定評のあるテイラーだ!……てかこの漫画ネットスラング使い過ぎだろ……作者はインターネット大好きか?)

216: 2022/03/13(日) 20:00:37.96 ID:QcpTY3o3.net
~~

ミア(飲み過ぎた……身体が動かない……)

ミア(お店の締め作業をしてる2人、爆睡してる衆、無理やりマットを敷いて麻雀を打ち始める者……そしてボクに忍び寄る影……)


歩夢「ミアちゃん……」

ミア「……なに」

歩夢「こっち向いて……お顔見せて」


ミア「ん……」(なんか触れ方がやらしいな……普通人の首筋とか触るか……? ってあれ? え!? 歩夢さんってそういう……!?)


歩夢「……私ね、ミアちゃんのこと……ちょっといいなって思ってるの」グイ


ミア「えっ? ヒヒヒヒ……w ぼ、ボクにはまだそういうの早いんじゃないかなって……」(まずい! 身体が動かん!)

ミア(助けてくれランジュ! ……ってお前! なに麻雀やってんだ!)


ランジュ「……」チラッ

ランジュ「……左8ね」コロコロ


ミア(おいこら! ランジュ!? なんで!)

217: 2022/03/13(日) 20:01:58.44 ID:QcpTY3o3.net
歩夢「ね? ミアちゃんは女の子とするの……興味ない? ……それとも傷物の女の子は……嫌い?」グイ


ミア「待って! その……ボクは……!」

ミア「ちょっ! どこ触ってん……! むぐぅ……!?」ガシィ


歩夢「ほら……怖がらなくていいんだよ? 力抜いて……目を閉じてごらん? どうせ朝になっちゃえば……全部、全部忘れるんだから……」


ミア「ま、まって……うわ、うわああああ!」

ミア「……」(あっ……)


歩夢「……」

ミア「……」


ミア(はじめてのキスは……あたたかくて、柔らかくて……ふんわりと甘いお酒の香りがした……)


愛「見てかすかす、ばっちり撮れてない? 活動写真にこれ使おうよw」

かすみ「使わないですよ……」


エマ「今日は凄く平和な飲み会だね~」パチン

果林「まあもう私達……暴れ回れるほどの体力ある歳じゃないからねえ……」パチン

彼方「若い衆にはもっと元気にやってほしいけどなあ~……」パチン


ランジュ「別にこの子達もそんなに若くないけどね…… ツモ。メンピンドラ3で……6000オール」


「「うがああああ!!」」ドタンガシャンバタン

221: 2022/03/14(月) 20:48:41.28 ID:OApvvp2r.net
8.5話『バイトロス!』

222: 2022/03/14(月) 20:52:13.59 ID:OApvvp2r.net
~自宅~

ランジュ「らんらららん♪らんらららん♪」

ランジュ「ららんらん♪らららら~ん♪」 

ランジュ「らん♪らん♪ランジュで……」


ミア「……」


ランジュ「……」


ミア「……ポケモンか?お前は」


ランジュ「そ、そういうつもりじゃないから! っていうかいつ帰ってきてたの!?」カアア


ミア「ミッミー!? ミミッミミアミミア!」


ランジュ「ね~え~! 違うの!」

223: 2022/03/14(月) 20:54:21.29 ID:OApvvp2r.net
~~

かすみ「全部室棟一斉点検でいま部室入れないんですよ。危険物とかの監査がはいるとかなんとか……」

璃奈「新聞部とか凄い慌てた。とんでもない勢いでシュレッダー回してた。」

しずく「漫研とか口リコン雑誌抱えてどっか出てってましたからね」

ミア「開発研は……相変わらず廃墟だったね」


ランジュ「そういえばそんなメール来てたわね……あなた達なんかやらかしたの?」


かすみ「違いますよ!」

しずく「ロケットサークルが火災事故かなんか起こしたらしいですよ」


ランジュ「また? あそこ年に一回は炎上してるわね」


かすみ「まあそんなわけで部室にはしばらく立ち寄りできないです」

しずく「ですから誰かの家で宅飲みしたいなーって話してて」


ランジュ「人の家を勝手に……しずくか璃奈の家でいいじゃない」


しずく・璃奈「片付けてない……。」


ランジュ「……まあいいわ」


かすみ「ランジュさんもどうですか? 一杯」

224: 2022/03/14(月) 20:55:34.54 ID:OApvvp2r.net
ランジュ「お生憎さま、私これからバイトなの」

ランジュ「あなたたちだけだから問題ないとは思うけど……あんまり散らかしたりしないでよね」ガチャ


「「は~い」」


しずく「ランジュさんってどこでバイトしてるんだっけ?」

ミア「そぐそこの松屋。 あとなんか中国語の添削もやってるね」

かすみ「あー、なんか思い出した! みんなで行った!」

璃奈「あったね。 大暴れしたやつ。」


ミア「牛丼屋のどこに暴れる要素があるんだよ……しかしバイトか、友達もみんなバイトしてるんだよな……見習ってボクも早くエコノミックアニマルにならなきゃなあ……」


しずく「バイトしたことあるの?」


ミア「ティッシュ配りをね。 二日で辞めたけど……飲食とか興味あるんだよね」


璃奈「決まったら教えてね。 みんなでバ先に応援行くから。」


ミア(ぜって~呼ばね~!)

225: 2022/03/14(月) 20:56:42.70 ID:OApvvp2r.net
ミア「かすみさんは居酒屋でしたっけ?」


かすみ「そ~だよ、洋風居酒屋。 キッチンもホールも両方やってる」


ミア「なんか前、そこにもみんなで襲撃に行ったとか聞いたけど……」


かすみ「あー!」


しずく「かすみさんの誕生日にね、部員全員成人記念パーティやる予定だったんだけど、かすみさんシフト入れられちゃって……」


璃奈「代わりにバ先突撃してどんちゃん騒ぎした。」


ミア「楽しそうだな~!」


かすみ「どこが! 皿何枚弁償させられたと思ってんだ……」

226: 2022/03/14(月) 20:57:46.01 ID:OApvvp2r.net
ミア「しずくさんは?」


しずく「私はね……実はあまり長続きしなくて……単発のバイトを転々としてるの」


ミア「お小遣いとか困らない?」


しずく「うんまあ……その代わりというか……港区でパパと会ってご飯食べて……そこでお小遣い貰ってるかな」


かすみ「それほんと羨ましい!」


ミア「ええっ!」

ミア(そ、そんな……あいつらもよくパパ活どうこう言ってるから、女子大生なんてそんなもんなのかと麻痺してたけど……)


しずく「成績のこととか実家出てからの生活習慣のこととか……卒業後の進路のことでいつも怒られてる……」


ミア「マジモンのパパかよ」

227: 2022/03/14(月) 21:02:08.71 ID:OApvvp2r.net
グビグビ…

ミア「璃奈は?」


璃奈「ネットビジネス。 サイトに貼って収入得てる。 今はやってないけどね。」


ミア「ハイテクだなあ……でも個人サイトでPV稼ぐのって大変じゃないの?」


璃奈「検索結果のアルゴリズムを悪用すればPVは簡単に稼げる。」


ミア「悪用って……」


璃奈「流行りの芸能人の出身高校とか恋人とかをタイトルにして中身薄いコピペ記事を乱立して、似たような記事と相互参照させまくる。 すると検索結果の上の方に出てきやすくなる。 ……いかがでしたか?」


ミア「あのキュレーションサイト作ってたのお前か! 調べた結果……なにもわからないんだよ!」

228: 2022/03/14(月) 21:03:09.64 ID:OApvvp2r.net
ミア「他の人たち何やってんだろう……知ってます?」


しずく「愛さんは自営だし……お給料いいのかな? 雇ってもらおうかな……」


璃奈「普通。 たまにヘルプ行くけどお駄賃1000円/1hくらい。」


かすみ「ま、そんなもんか……」


璃奈「ちなみに愛さんは実質時給400円くらいらしい。」


しずく「可哀想! バイトの方が高いんだ!」


かすみ「まあ……切実だけどよくある話だよね」

229: 2022/03/14(月) 21:04:16.32 ID:OApvvp2r.net
グビグビ…

ミア「果林さんとかはどうなんだろう、やっぱ稼いでるのかな?」


かすみ「あ~それがそんなに甘くないみたい。 月に10万稼げればかなり良い方で……実質収入0の月もザラだってさ」


しずく「この前彼方さんのバ先のスーパーで一緒にバイトしてたよね。 すぐヤニ休憩で抜け出すって彼方さんボヤいてた」


璃奈「そうなんだ。 芸能界も楽じゃないんだね。」


ミア「意外とカタギなんだな……てっきり2人は女衒とか博打の胴元とかやってるのかと」


かすみ「彼方さんは工口漫画描いて50万近く稼いだことあるらしいよ」


ミア「器用な人だな……」


ミア「……その、エマさんは?」


「「知らない……」」


ミア「そ、そうなんだ」

230: 2022/03/14(月) 21:05:26.95 ID:OApvvp2r.net
グビグビ…

かすみ「ゆうぽむさんの2人は塾講やら家庭教師でしょ、まだやってんのかな」


ミア「あの人たちが家庭教師とか、一番駄目だよ……生徒が心配になってくる」


璃奈「侑さんは家庭教師先の子にご褒美として、おっOい触らせたりとかしてたらしい。」


しずく「その話ほんと好き!」


ミア「初っ端からエピソードがAVじゃないか……てか犯罪だろ……」

231: 2022/03/14(月) 21:06:35.11 ID:OApvvp2r.net
しずく「歩夢さんも似たような話あったよね」


璃奈「いやどうだったかな。 ……ある教え子が髪も顔も声も女の子みたいで、名前も中性的で性別どっちかわからなかったんだって。」


かすみ「あ~いるもんね、キラキラネームとか……私たちの世代にも普通に」


璃奈「そこの塾では男の子はくん付け、女の子はさん付けするって決まってるらしくって。」


しずく「それは困るね……間違えたらご両親からクレーム来たりしそう」


ミア「それで?」


璃奈「どうやってもわからなかったから、最終的におちんちんで判別したらしい。」


「「うはははは!」」


ミア「結局ちんちんじゃないか!」

240: 2022/03/15(火) 20:23:11.62 ID:nnXxASwC.net
9話『ドラゴン栞』

241: 2022/03/15(火) 20:26:04.49 ID:nnXxASwC.net
~附属図書館~

かすみ(レポートの参考図書を探しに図書館までやって来た私たち)


しずく「何借りたの?」

かすみ「プロ倫」ドヤァ

しずく「なにそれ?」

璃奈「ピ口リン?」


かすみ「え~っ? りな子はともかくしず子まで知らないの~? それでも文系??」


しずく「むかっ!」

璃奈「それで、結局なに?」


かすみ「『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。ナカス・ペディアによると、マックス・ウェーバーの著作でプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神について書かれているらしいよ」


しずく「中身スカスカの説明だなあ……」

璃奈「ナカスカスカ・ペディア。」


かすみ「いいの!これから身に付けるんだから!」

かすみ「ああ! 知のバケモンになっていく自分が怖いよ~!」


しずく「知のバカモン……」

璃奈「知能バカモン?」


かすみ「おい!」

242: 2022/03/15(火) 20:29:47.03 ID:nnXxASwC.net
栞子「……」カリカリ

かすみ「……ん?」

栞子「……」カリカリ

かすみ「……赤本だ」

しずく「え?」


かすみ「ほら、あれ……隠してるけどあの人」ヒソヒソ

栞子「……」カリカリ

しずく「受験生って入れたっけ?」ヒソヒソ

かすみ「わかんないけど学生証ないとここ入れないくない?」


璃奈「……あれは」

璃奈「……あれは仮面浪人ってやつだと思う。」


しずく・かすみ「か、仮面浪人?」

244: 2022/03/15(火) 20:31:49.40 ID:nnXxASwC.net
璃奈「そう、仮面浪人。」

璃奈「ただの浪人ではない。大学に在籍しながら、他の大学を受験する人のこと。」


しずく「どうしてそんなまた」


璃奈「人には様々な事情がある。在学中に急に他の学問に目覚めて……などの前向きな動機もあるけれど……実際のところ、受験生時代に行きたい大学や学部に落ちて別の大学に入学したけど……やっぱり諦めきれない、自分はこんな大学に甘んじる人間のはずがない、といった学歴コンプ所以であることが多い。」


かすみ「普通に浪人すればよくない……? ほら、駿台とかさ」


璃奈「成功した場合、取得した単位の一部を新しい大学の単位と互換できる。あとなんと言っても、無職でなく学生である、というのがデカい。」

璃奈「身分は大学生だから割引が効くし、もしふたたび入試に失敗しても……元の大学にそのままの取得単位状況で在籍し続けられるというメリットがある。」

245: 2022/03/15(火) 20:33:03.63 ID:nnXxASwC.net
しずく「そんな方法があるんだね……」


璃奈「途中で諦めたり……今の大学と折り合いがつけば、そのまま通い続けることもあるだろう。」

璃奈「ついには叶わなかった、なおもギラギラと眩しく光り続けるかつての志望大を横目に……。」


璃奈「極端な話、普段一緒に授業を受けてキャンパスを歩いていたはずのあの子が……4月になって急に「じゃあ私今日からこんなとこじゃなくて別の大学だから! さよなら!」みたいなこともあるかも。その姿はさながらそれまでずっと仮面を被って生活しているようである、ということ。」


かすみ・しずく「はあ……」(やけに詳しいな……)


璃奈「璃奈・ペディアは人間の陰鬱な感情やそれに由来する行動については詳しい。」


かすみしずく(説得力あるな~)


栞子「……」カリカリ

246: 2022/03/15(火) 20:35:09.29 ID:nnXxASwC.net
栞子「……」

栞子(また、同じ問題を解けない……)


栞子「……」

栞子(私はいったい)

栞子(いつまで高校の勉強を)


栞子「……」

栞子(高校同期はもう大学3年生)

栞子(それぞれの大学で、好きな学問をして……サークルやアルバイトをこなして……友達を作って遊んで……)

栞子(インスタやTwitterは高校同期たちのサークルやバイト先のお洒落な写真や体験で溢れ……新しい友達や先輩後輩……彼氏と旅行先での楽しそうな笑顔で埋め尽くされている)


栞子(一方で私にはsnsに上げられる画像などなにひとつない……バイトだってしたことがない、高校を卒業してから旅行にも行ったことがない、恋人どころか……新しくできた知り合いすら私にはいないのだから)


栞子(……)

栞子(私だけが、ずっと受験に……あのころの後悔と劣等感に囚われている)

栞子「……!」ベキッ!


かすみ・しずく「!?」ビクッ

247: 2022/03/15(火) 20:38:35.79 ID:nnXxASwC.net
栞子「あ……すみません」

かすみ「いえ……」

しずく「……」

璃奈「……」

栞子「……」

かすみ・しずく「……」(気まずっ!)


璃奈「……それ、東大の?」

栞子「!」


かすみ(こいつよく話しかけられるな……)

しずく「ちょっと璃奈さん、邪魔しちゃ悪いよ」ヒソヒソ

璃奈「……」


栞子「……はい、こんなところで目障りだったでしょうか……すみません」

248: 2022/03/15(火) 20:41:23.62 ID:nnXxASwC.net
~~

ーーなんで私が虹大に!?

栞子(教えてあげます! 東大はガチでムズい)

栞子(父親は東大、祖父や親戚も軒並み東大や旧帝。 母親は……なんかその辺の私立女子大。そんな家庭に産まれ、多感な若者に学歴コンプレックスを煽るマッチポンプ受験産業とエリート意識蔓延るこの大都会東京で育った私も例外ではなく中受からの受験戦争に放り込まれ、学歴至上主義たる現代日本の歪な社会構造に否応なく組み込まれることになった……)


TV「東大! 代ゼミ! 京大! 代ゼミ! 東大京大虹大! 代ゼミ!」

TV「いつやるか? 今でしょ!」

ネット「〇〇大第一志望の受験生、0人説!」

ネット「【悲報】日本の大学、東大以外はF欄だった……」

栞子「はえ~……」


栞子(とにかくいい大学に入り、いい企業に就職する。私の周りも、そんな意気込みの家庭ばかりだったからなにも疑問に思わず受け入れていた)

栞子(姉が高三だった頃の我が家の、針のむしろの緊張感……姉の勉強の環境のために家族総出で毎日最大限の気配りとサポートをし……そんな姉が東大に落ちたときのどん底のような暗澹たる空気……当時中学生だった私もよく覚えている)


栞子(残された私は母親に、まるで姉の仇を取るかのように、東大合格を頼み込まれたけれど……)

栞子(結局私も……三船姉妹は、二人揃って失敗。)

栞子(高校生活の青春をほぼ全て勉強に捧げたはずなのに……)

栞子(こんな挫折は初めてです……)ヘナヘナ


「……親戚の〇〇ちゃん、東大受かったんだって」ヒソヒソ

「うちの子はなんで2人とも東大行けなかったの……?」ヒソヒソ

「何でって……そりゃバカだったからだろう……」


薫子「……」

栞子「……」

249: 2022/03/15(火) 20:43:08.06 ID:nnXxASwC.net
~~

璃奈「そんなに行きたかったの。 両親の期待にこたえるため?」


栞子「いや、まあ両親がどうこうは正直どうでもいいんです、実際気にしてませんし、もう何も言ってこないです」

栞子「……どうしてでしょうか、今でも私が拘っている理由は自分でもよくわかりません。 ただ……」


璃奈「ただ?」


栞子「……高校のとき、私生徒会やってたんですけどそのとき生徒会長をやっていた先輩で……とても憧れてる人がいたんです」

栞子「不自由で、課題だらけの毎日だったけれど、その人を眺めたり……たまにお話しする時間はとても大好きで、ささやかな幸せのひとときでした」

栞子「その人の卒業後は連絡が一切取れなくなって……いまどうしてるのかはわからず……」

栞子「とても優秀で成績も良かった人でしたので……きっと東大に行ってるんじゃないかって……東大に行けばまた会えるんじゃないかって」


栞子「……笑っちゃいますよね、私の中でのきっかけは、多分そんな程度でした」

栞子「灰色の高校生活の中で、多分……それだけをモチベーションに毎日必氏に勉強したんですけど……まあ、その結局」


栞子「……後期でここに引っかかって入学したんですけど、悔しさが積もって、やはり諦められなくて」


かすみ(ここの後期受かるとかバケモンだな……)

250: 2022/03/15(火) 20:44:31.06 ID:nnXxASwC.net
栞子「正直……もう無理だとわかってはいるんです、学力でもそうですけど……気力もなくて、ただ意地だけでこんな真似をしているだけで……」

栞子「……恥ずかしい話ですけど実は留年もしているんです」


かすみ「お、おう」

しずく「まあ……」

璃奈「……留年は、珍しいことではない。」


栞子「でも、留年といっても一留じゃなくて二留なんです……。 3年生なのにまだ10単位くらいしか取れてないですし……1年前期の実験科目、今年も落単確定してるので……」


璃奈「私も。」

栞子「え」

璃奈「私も3回落とされた。だから、私も留年確定してる。 なんなら……2留するかもしれない。」


栞子「そう、だったんですか」


かすみ(りな子2留かよ……)

しずく(璃奈さん私よりやばいんだ……)

251: 2022/03/15(火) 20:45:19.59 ID:nnXxASwC.net
璃奈「……さっきの話で」


栞子「?」


璃奈「憧れの人が行った大学に行きたいって話。 おかしくなんかないよ。 私もそうだった。」

璃奈「高校生の頃大好きで片想いしてた人が虹大に行ったから、私も虹大行こうって決めた。 結局フラれちゃったんだけど。 一緒だね。」


しずく(えっ!? 二人ってそういう!?)

かすみ(ああ……なんか全てが繋がった気が……)


栞子「わ、わたしは別にフラれたとかそういうわけでは……」ワタワタ

252: 2022/03/15(火) 20:46:39.00 ID:nnXxASwC.net
璃奈「実はね。 後ろの二人も留年だよ。」

栞子「えっ」


しずかす「ど、ど~も~……留年してま~す」

しずかす(勝手にバラすな! ……いやまあ別にいいけど)


栞子「そうだったんですか……その……みなさんはどういった関係の集まりなんですか……?」


璃奈「サークルの同期。 私たちのサークルは、そんな人達ばかりが集まってるから。」


栞子「そ、そんな怖ろしいサークルが……? そんなに熱心に何らかの活動とかを……」


璃奈「ううん。 サークルだけど、私達は何かに打ち込んだり何かを研究したり、そういうことはしない。」

璃奈「うまくやっていけないあぶれ者が何故かうちに集まって……だらだら過ごしながらただ傷を舐め合う。 うちはそんな人たちの最後の拠り所。」


栞子「あぶれ者……拠り所……」





栞子(楽しそう……ですね)

253: 2022/03/15(火) 20:47:32.17 ID:nnXxASwC.net
「ちょっと……他の利用者様のご迷惑になるから……喋るなら館の外でお話しなさい」ポコン


しずく「痛っ……あっ……すみません、もう出ます」

かすみ「ほら、はやく出ないと……」(怒られちゃった……職員って学生には高圧的だよなあ、あの人なんか私より背ちっちゃいのに……)

栞子「す、すみません」

璃奈「すぐ出ます。」


~~

栞子「こんなに人と話したのは初めてです……私、この大学に知り合いとか一切居なかったので……」


栞子「その……」

栞子「その……もう少しお話を聞きたい……なんて、迷惑ですよね……すみません」


璃奈「……その言葉を聞きたかった。」


栞子「!」

254: 2022/03/15(火) 20:48:57.51 ID:nnXxASwC.net
璃奈「だけど……私たちは怠惰と堕落を極めた反社会性ゆえ、先ほどのように大学当局から睨まれている。 簡単に連れて行くわけにはいかない。」


栞子「ど、どうすれば」


璃奈「こちらで案内人を用意する。」

璃奈「文学部棟中庭の喫煙所にいる女に「火を貸して」と話しかけて。」

璃奈「そのあと「アプリコットを」って頼むといい。そうすれば、案内してくれる。」

璃奈「その先は……貴女次第。」


しずく「うちってそんな秘密結社みたいな集団なの?」ヒソヒソ

かすみ「……どーだろ?」


栞子「わかりました……文学部棟中庭の喫煙所ですね」


璃奈「そう。赤い髪のメンヘラみたいな格好の女。」


かすみ「メンヘラて」


璃奈「訂正。メンヘラビXチ精神病の女。 では、健闘を祈る。」グッ


しずく「怒られるよ……まあ間違ってないけど」


栞子「は、はあ」

255: 2022/03/15(火) 20:50:27.38 ID:nnXxASwC.net
~文学部棟~

栞子(文学部棟こんなところにあったんだ……私は自分の大学のことすらなにも知らなかったんですね)

栞子「赤い髪……メンヘラ、精神病……おそらくあの人でしょうか」ドキドキ


歩夢「……」


栞子「……」

栞子「あの……火を貸してもらえませんか?」


歩夢「……」スッ


栞子(たばこを吸うのは初めてです……)カチッ

栞子(悪いことをしているみたいでちょっとテンション上がります……とっくに20だけど)

栞子(あれ? 点かない……)カチッカチッ


歩夢「……吸いながら点けるんだよ」


栞子「そ、そうなんですか……ゲフッガホッ!」


歩夢「……」


栞子「失礼……あの、それで……"アプリコット貰えますか?"」


歩夢「……ついて来て」


栞子「!」ドキドキ


たまたま居合わせた人(なんだ? こいつら……)

256: 2022/03/15(火) 20:51:28.16 ID:nnXxASwC.net
~~

ミア(お菓子と酒を使いっ走りさせられて、部室に戻ってきたところ……)


彼方「……」スゥー


ミア(お……おい! 鼻からストローで……粉を!?)

ミア「ちょっ……彼方さん、なにやってるんですか」


彼方「あ"あ"~っ……効く"ゥ~~っ」ブルブル


ミア(彼方さん……とうとう薬物に手を出してしまったのか😭)

ミア(彼方さんは大変世話になった先輩だが……だからこそボク自らの手で引導を渡してやる……さて110番と……)


彼方「これ? 嗅ぎタバコだよ」

彼方「普通は親指の付け根にある解剖学的嗅ぎタバコ入れを使うんだけどね……スニッファーで鼻から直接吸うこともあるのさ」


ミア「なんでまたそんな紛らわしいものを……」(解剖学……なに?)


彼方「え、なんか雰囲気出るかなって思って」


彼方「おっと、来客のようだねーー。」

257: 2022/03/15(火) 20:52:46.55 ID:nnXxASwC.net
歩夢「……さ、入って」


栞子「お、お邪魔します……」


彼方「……やあ、ようこそスクールアイドル同好会へ(´・ω・`)」


栞子「……」ドキドキ


彼方「このテキーラはサービスだから飲んで落ち着いてほしい(´=ω=`)」


栞子「は、はあ、いただきます……ぷへぇっ!?」

栞子「けほっ!けほっ! ……すみません、お見苦しいところを」(ジュースじゃなかった……)


彼方「ぬははは、そう緊張しないでいいよ~」

259: 2022/03/15(火) 20:54:36.48 ID:nnXxASwC.net
栞子(私の経緯を説明した。 留年したことも……。だからなのか、皆さんは頷きながら優しく聞いてくれた。)


侑「後期!? へ~すごい、頭良いんだね!」


栞子「なんとか滑り込めました……」


歩夢「そっか~、東大か~」

歩夢「懐かしいなあ、私も最初は東大目指してたな」


侑「……」


栞子「そうだったんですか?」


歩夢「や、でも私も文三の判定はBかCずっとうろうろしてて受かるか怪しかったけどね」


侑「……B判定なんて一回だけじゃなかった? ふつーにE判定も取ってたし」


歩夢「……」


彼方「彼方ちゃん模試とかいうの受けたことないw」

260: 2022/03/15(火) 20:56:24.79 ID:nnXxASwC.net
歩夢「侑ちゃんがね、どうしても私と同じとこ行きたい~って言うから私も虹大に出願したの」


侑「……」

侑「歩夢のそういうとこ、ほんとめんどくさいなって思う。歩夢の動機に私がどうこうとか関係ないじゃん」


かすみ「まあまあまあ」


歩夢「だって本当のことだし。 そうやって決めたでしょ」


彼方「そかそか~」


侑「捏造しないで、言ってないよそんなこと」

歩夢「……いや言ったよ」

侑「歴史修正主義」

歩夢「は?」


彼方「もう2人黙ってなよ~」

しずく「ほんとですよ、だいたいいつまで受験の話してるんですか。 結局2人仲良く留年してるのに」


栞子(え、急に何この空気……コミュニケーションはやはり苦手です……)


侑「……」

歩夢「言ったもん……」ブツブツ


ミア(うははは、早くもうちの同好会の洗礼を受けてるな、怯えるルーキーを見るのはこんなに愉快なのか)

261: 2022/03/15(火) 20:57:56.72 ID:nnXxASwC.net
彼方「それでさ……どうかな?」


栞子「そ、そうですね……」

栞子「……同じ境遇の方々がいらっしゃるというのはすごく、心強いです」

栞子「でも、3年生にもなった私が今更サークルに入って……お邪魔になってしまうのではないでしょうか……普通は1年生のうちに入るものなのでしょう?」


彼方「そんなことないよ!」

彼方「留年が決まるのってほら、成績が出たり、学年が上がるはずのタイミングでしょ? だからみんな入部時期はバラバラなんだよ~」


栞子「なるほど……」


彼方「そもそもうちは新歓やってないし……むしろ1年生の最初のうちからミアちゃんみたいにうちに入部する人は珍しいかな~」


ミア(確かに……)


彼方「ま、ゆっくり考えてみてね」

彼方「私たちには時間が無限にあるからね~……それもこれも留年生の特権よ!」


「「わははは!!」」


栞子「わかりました……ふふふっ」

栞子(考えるふりをした……でも、答えはもうとっくに決まっていた)

262: 2022/03/15(火) 20:59:34.35 ID:nnXxASwC.net
栞子(私の失った青春……落ちてからの彩りのない2年間……それももう終わり)

栞子(私のずっと先を行ったみんなのように、バイトして遊びに行ってサークルに明け暮れて……恋人とか作っちゃったりして……!)

栞子(今からでも遅くないのかな)


栞子「……」

栞子(その日、家に帰って私は参考書と赤本をまるごとBOOKOFFに売り飛ばした……全部で150円だった……私の数年間が、150円……)ヘナヘナ


栞子(でも、缶チューハイを1本買えた。 たばこの値段もお酒の値段も……今日まで知らなかった世の中の常識)


栞子「……」グビ


栞子(帰り道に氷結をあおってタバコを咥えてケッタを飛ばして……ポリ公に鉢合わせしてマジでビビっちゃいました……でも何も言われなかった)


栞子(……ようやく私の大学生活が始まった気がします! それも皆さんのおかげです……)

264: 2022/03/15(火) 21:01:47.22 ID:nnXxASwC.net
ーーなんで私が虹大に!?


「広大なキャンパス」と「55にも及ぶ幅広い学部学科」。圧倒的に「自由」な校風。


境遇、志を共にした仲間。遅れて入ったサークルの雰囲気も私にぴったりでした。


ありがとう、虹ヶ咲学園。

272: 2022/03/16(水) 19:26:06.12 ID:5mW0H/PT.net
10話『Doctor StrangeYohane』

273: 2022/03/16(水) 19:28:56.42 ID:5mW0H/PT.net
~部室~

善子「……」ゴソゴソ


ミア「……お、おはようございます」


善子「? おはよう……」


ミア(部室に行ったら白衣をまとった見知らぬ女がいた。そしてPCの配線周りをいじくっていた……)

ミア(誰だこいつ?みたいな顔しやがって! それはこっちのセリフだ不審者め! 怪しい人には大きな声で挨拶だ!)


ミア「……」

善子「……」ゴソゴソ


ミア(ラズベリーパイのケーブルを引っこ抜いては突っ込んで……何やってんだ?)


善子「ぬう~……」


ミア(てかめちゃめちゃ美人な人だな!)

274: 2022/03/16(水) 19:31:29.47 ID:5mW0H/PT.net
善子「……ん~、動いてはいるのか……?」ゴソゴソ

善子「いやわっかんないな……」


善子「ねえキミ」


ミア「は、はい……?」


善子「宮下か……いや璃奈の方がいいかな。 天王寺って今日来る?」


ミア「多分来ると思いますけど……」


善子「そう」


ミア(ボクの知らない上級生か……少なくとも4年生以上か?)

ミア(白衣ってことは化学とか生物系の学生っぽいな……)

275: 2022/03/16(水) 19:32:58.74 ID:5mW0H/PT.net
善子「わからん!」

善子「ふ~~~っ……」ドカッ


ミア「……」

ミア(ふかふかのソファのど真ん中に両腕を広げて我が物顔で座る上級生。ボクがそこに寝転がりたかったのに~!)

ミア(てか気まずいな……さっさと帰るかなんか話題振るかしてくれよ……)


ミア「……」チラッ

善子「……」

ミア「……」チラッ

善子「ふぁ……」


ミア(すっぴんだし、欠伸しててもバカみたいに顔面が良い……何?こいつ)

276: 2022/03/16(水) 19:35:11.92 ID:5mW0H/PT.net
~~

善子「そもそもこのPCもネットに繋がってないのよね」

璃奈「ん~……」

ミア(そんなこんなで璃奈がやってきて、この人の代わりに配線をごちゃごちゃいじくり始めた)


善子「どう?」

璃奈「通電はしてるけどping通らないから認識されてない。でもmicroSDもLANケーブルも生きてるから……おそらくラズパイの内部が物理的に壊れてる。静電気か、誰かの電源の抜き差しによる負荷か……。」チラッ


善子「や……ごめん……ほんと申し訳ない」


璃奈「まあでも善子さんの話が本当ならだいぶ前から壊れているようですし、単にこの子の寿命かも。」


善子「今度生協で新しい子買ってくるわ……あでも設定とか面倒なんだっけ? ルビィ呼んできた方がいいのかな……」


璃奈「私もちゃんと見てないからルビィさんがどんな設定したのかはわからないです。けど結局学内のWi2拾ってこのPCに回してるだけだから……新しくしてもすぐネットには繋げられるはず。」


善子「あ~ね……それって前みたいに外からアクセスできたりする?」


璃奈「えっvpn鯖なんか立ててたんですか? 」


善子「いやわかんないけど……」


璃奈「うちのPCにそんな外からアクセスするようなのあったかな。」


ミア(ルビィって人もいるのか……)

277: 2022/03/16(水) 19:37:37.70 ID:5mW0H/PT.net
善子「あ~……その、ま……動画なんだけど、家で見られなくてさ」


璃奈「……」

璃奈「えOちなやつ?」


善子「も含まれる」


ミア(なんだこの人……)


璃奈「それは……」

璃奈「……由々しき事態。」


ミア(!?)


善子「でしょ?」


璃奈「でも必要なのコピーして持っていけばいいのに。 しかもいま普通にAVのサブスクありますし……ああでも販売停止するやつもあるか。」


善子「いや工口動画だけってわけじゃないんだけど……ここで撮影したアホな動画とか……エンコしないままそのまま放り込んでるからファイルバカデカくてさ」


璃奈「そういえばやたらパンパンに詰まったHDDあった気が。 まあ必要なら鯖の立て方も教えます。」


善子「かたじけない!」

278: 2022/03/16(水) 19:40:58.78 ID:5mW0H/PT.net
善子「うちのPC触ってないの?」


璃奈「だいぶ前に組まれたぽんこつだから使う機会があまりない。 私も最近は全然管理してなかった。」

璃奈「ラズパイも……不調なときは私もコマンド使わず直接抜き差しして再起動させてただけだし。」


善子「おい」


善子「そっか~……、いやありがとね」


璃奈「パーツ買ってくれてもいいんですよ。」


善子「え~……何円くらい……?」


璃奈「マザボから替えなきゃだから、マザボCPUメモリ4枚で9万。グラボ5万であとUPSも欲しい。OSとOfficeは大学で貰えるかな。 総額15万。」


善子「……金ない!」


璃奈「ですよね。」

279: 2022/03/16(水) 19:42:07.82 ID:5mW0H/PT.net
璃奈「ルビィさん最近元気?」


善子「や、私も知らない」


善子「てかあいつTAやってるんでしょ、授業で璃奈の方が会ってるんじゃないの?」


璃奈「その……私、情報コース行けなかったから……。」


善子「あ、そうなの」


璃奈「成績悪くて……。」


善子「進振り熾烈な学部は大変ね~」

280: 2022/03/16(水) 19:43:23.85 ID:5mW0H/PT.net
彼方・果林「うぃ~~~す」ガチャ


彼方「え! 善子さん! ちょ~久しぶりじゃないっすかぁ~!」


善子「おす」


果林「生きてたんですね……修論はどうなったんですか?」


善子「教授がほとんど書いてくれてなんとかなったわ! そして発表会でボコボコにされた!w」


ミア(院生……しかも博士課程なのか!)


善子「あんたたちは……いっつも忘れちゃう、いま何年なんだっけ?」

281: 2022/03/16(水) 19:45:11.60 ID:5mW0H/PT.net
善子「えーっ、あんたたちまだ卒業してないの? バカでしょ」


彼方・果林「ヒヒヒヒヒ!w」


善子「……てっきり院進でもしたのかと思ったわ」


彼方「まだまだ学部生っすねw」

果林「まだ、というかこれからもですけどw」


ミア(どストレートなdisにゲラゲラ笑っている……仲良しなのかな?)


「今年も卒業できませ~んw」


善子「ええ……」


「私たち松浦・小原スピリッツを受け継いでるんでw」


善子「んなもん継がんでええわ」

282: 2022/03/16(水) 19:46:45.77 ID:5mW0H/PT.net
善子「や~ほんと、私も留年はしたけどさ~……とにかく卒業はしといた方がいいよ」


ミア(お前もかい……)


「や~キツいっす」


ミア(松浦さんと小原さんというのは、ボク達の話題にもたびたび挙がる、果林さんや彼方さんよりずっと上の代のOGのことで……)

ミア(いわく、とんでもない武闘派で、歴代でもぶっちぎりの問題児だったらしく、この部を今の部たらしめた決定的な存在だったらしい)

ミア(気に入らない教官カチコミかけてシバいただとか……ムカついたサークルを焼討ちにしただとか……4留したあげく、2年次にもなれずに中退しただとか……彼方さんや果林さんなど比較にならないくらい治安が悪かったのだという)


ミア(尾鰭がついて周り、この無法者たちについての詳細は璃奈たちすらよくわかっていないのだが…)

283: 2022/03/16(水) 19:47:58.86 ID:5mW0H/PT.net
善子「誰か院行く人いないの?? 文系って院進するのかわからんけど」


彼方「文系の院はな~」


善子「……理系いないんだっけ?」


果林「ミアちゃん理系ですよ、そこの」


善子「そうなの?」


ミア「は、はい……工学部1年のミア・テイラーです……」


善子「ツシマ・D・ヨハネ。"D (Ph.D)の意志を継ぐ者"よ。 よろしくね」ギラン


ミア「は、はあ……よろしくお願いします」

ミア(善子じゃなくてJohannesって……岡部とか蘭子みたいなやつだな)


ミア「なんの研究されてるんですか?」


善子「言ってもわからんと思う。 触媒とかそういう系。……機械か~、就職楽なんでしょ? 私も行けば良かったな~」

284: 2022/03/16(水) 19:50:13.35 ID:5mW0H/PT.net
「「うはははは!」」


善子「あ~楽しかった……それじゃまた、さらば!」ガチャ


ミア(彼方さんたちとちょっと話して、善子さんは研究室へ戻っていった。 自分の実験の他に、論文を読んだり後輩の実験をレクチャーしたりしなきゃいけないという。 研究は大変そうだ……)


~別の日~

ミア「あっ」ガチャ

善子「おいす~」ゴロン


ミア「ども」(またいる……)


善子「えーと……一年生の子だっけ?」


ミア「そうですよ」


善子「いいわねえ、今一番楽しい時期でしょ」


ミア「どうなんですかね……? 」


善子「羨ましいわあ……私もまた一年生やりたいなあ……」


ミア「へへへ、また入り直してみたらどうですか?」


善子「いや~今受けてもぜったい入試解けないわ……」

285: 2022/03/16(水) 19:51:29.32 ID:5mW0H/PT.net
善子「というよりはさ……まあ、なんていうか。 私が学部生だったときの、みんないたあの頃に戻りたいなーって。 だから仮にまた入り直してB1やってもね……」


ミア「なるほど……当時も面白い人たちたくさんいたんですね」


善子「そりゃ~もう! 今のコたちと同じくらい元気なのがたくさんいてさ……」


善子「……」

善子「ああっ!あっ、うぐっ!ぐぎぎっ!!」ジタバタ


ミア「!?」


ミア(邪気眼が発動したのか急に悶えだした、突然の発作と発狂はこのサークルの血筋か……)


ミア「ど、どうしたんですか……」


善子「ぐああ! 想い出に溺れる! 溺れています! ぶくぶく……ごぽごぽ……」


善子「ぶくぶくぶく……」

善子「ばたり……」


ミア(なんだこの人……)

286: 2022/03/16(水) 19:53:36.57 ID:5mW0H/PT.net
善子「なんかさ、昔のことを思い出したときにさ、こう……つらくなるときってあるじゃない?」


ミア「わかりますよ、嫌なこととかムカつくこととか思い出して今でも腹が立つこと」


善子「う~ん、それがね……楽しい思い出でもこう、すっごい胸が苦しくなるのよね」


ミア「……」


善子「古い写真とか昔の通学路の景色とか見たら……目の奥とか鼻の奥がじ~ん……ってなったりしない? 今となってはなんだったかも思い出せないような懐かしい香りとか匂いに包まれた気になってさ……そういうの感じるのよ……昔の写真や動画を見たり、この部室来るとね……」


ミア「切なくて辛い、みたいな……?」


善子「そ~ね、でもなんか来ちゃうのよね……来るたびに記憶の中のみんなの笑顔とか笑い声とか、日常のぼわ~っとした景色なんかを思い出して……ああ、とうに過ぎ去ってしまった過去なのに! ってなるのにさ。」

善子「そんで、勝手に胸が詰まって、息が詰まって……呼吸ができなくなるくらい苦しくなるの。 なんでなんだろうね」


善子「やっぱりいまの毎日がそんなに上手くいってないからなのかな……いや当時も全然上手くなんていってなかったけどさ……まあとにかく、私はこのことを"想い出に溺れる"って呼んでるわけ」


ミア「……」

287: 2022/03/16(水) 19:54:36.33 ID:5mW0H/PT.net
善子「飲み会とかさ、合宿とか……あとなんか部室にたむろしてるだけとかさ……あなたにもこの先いっぱいあるんでしょ? いいなあ……」


ミア「一緒に行きましょうよ、人多い方が楽しいですし」


善子「そういうんじゃないのよね……まあでも呼んでくれるならいつでも行くわ!」スクッ


ミア(研究はいいのかな……)


善子「ごめんね、こんな話して……老害の戯れ言と聞き流して頂戴」


ミア「はあ……」


善子「ふふふ……あまり楽しい思い出作らないほうがいいよ……私みたいに昔の思い出に取り憑かれた亡霊になっちゃうから……ぶくぶく……ごぽごぽ……。 あっ……心臓止まった……ばたり」


ミア「ええ……」

288: 2022/03/16(水) 19:56:02.40 ID:5mW0H/PT.net
善子「うー! えーん! ……さみしいよお……」


善子「果南さんとか鞠莉さんとかいま何やってんのかな~~~会いたいな~~会いたいよ~~~……」ジタバタ


善子「梨子さんとかさ……ようちかさんとかさ……ずら丸とか……いまどこに居るのかな~~……うえ~ん……」


ミア(見てるこっちが切なくなってくるな……)


~~

ミア「お疲れさまでした~……」ガチャ


エマ「ミアちゃん、もう帰り?」


ミア「あ、エマさん! そうなんです、レポートと課題やらなきゃいけなくて……」


エマ「そっかあ、入れ替わりだね」


ミア「そうですね……あとなんかいま部室に善子さんいますよ」


エマ「善子ちゃんが? そうなんだ」カチャ


善子「あーっ! エマさん! 久しぶりです!」


エマ「善子ちゃん! 久しぶり~!」


ミア「……」

289: 2022/03/16(水) 19:56:44.51 ID:5mW0H/PT.net
ミア(想い出かあ……ボクにもこの日を懐かしむ日が来るんだろうか)


ミア「それにしても博士課程……恐ろしいところだ……」ブツブツ


ミア「……ん?」


ミア「善子……ちゃん?……エマ……さん?」

295: 2022/03/17(木) 21:39:38.19 ID:P8ZpC9a5.net
10.5話『SANY○ならびにマ○ハンの管理』

296: 2022/03/17(木) 21:41:12.73 ID:P8ZpC9a5.net
「かーみかざり! 強く結び直して!」


キュインキュイン

彼方「あああああ!!!」

栞子「うわああああ!!!」ガシャガシャ


彼方「設定ばぐってらあ! やべーだろこの台!!!」

彼方「右打ち! 右打ちしろ!」


栞子「右打ち! は、はい!!」ジャラジャラ


「髪飾りチャーーンス!」キュイイン


彼方「あああ! この後の抽選が……ってあああああ!!」

栞子「あああああああ」ジャラジャラ


栞子(マルハンに開店凸し彼方さん指導の元で新台の決意を打ち始めたところ……即確変突入! からの無限にRUSH継続! 箱をドカドカ積んで……周りの視線が痛いくらいです! ハマり?天井? 何それ美味しいの状態です!!)


栞子(激アツです!!脳汁やばいです!!)ドクドク

297: 2022/03/17(木) 21:42:52.81 ID:P8ZpC9a5.net
「カナリアターイム!!」


「強い!思い!今に響け!」キュイキュイキュイイイン


栞子「ああああああああ」ジャラジャラ

彼方「ぬわああああああああ」


栞子(スロでも一瞬でカナリアチャンス突入確定! 勝手に絵柄が揃う揃う!)ポッポッポッ

栞子(BIGばかりでもはやREGのREGってなんですか!)


栞子「今日はツイてます! まだ行きますか!? 多分行けます! だって来てる!! あぎゃああああ!!」ジャラジャラジャラ


彼方「あああああああ!! ぬわあああああ……!! 駄目だ引けえ! ここらで撤退だぁ!!」


栞子「でも!!」


彼方「抑えろぉ!! BBに対してRBが少な過ぎる……! この台はたまたま当たってるだけだ! 」


栞子「なら最後に一発台やりたいです!! かの悪名高いひっさつ八重歯も今なら!!」


彼方「駄目だ! 八重歯はガチの沼だ!! 引け!!」

298: 2022/03/17(木) 21:43:46.54 ID:P8ZpC9a5.net
栞子「か、カップ麺二年分……!!」ホクホク


彼方「ばか! 金だよ! GOLDに換えるんだよお!!」ボカッ


栞子「なんと!!」


栞子(軍資金1万からパチンコとノリで打ったスロを合わせて+10万!)


栞子(一緒に抽選券に並んでくれた同好会の皆さんへのギャラを差し引いて……残りを彼方さんと7-3で分配!)


栞子「さて、皆さんにはおいくらずつ渡しましょうか……」スパー


彼方「にしし……」スパー

299: 2022/03/17(木) 21:44:49.84 ID:P8ZpC9a5.net
栞子「ええ! でも皆さんのお駄賃が……!!」


彼方「約束は飯代だろぉ!? そんなもんカップ麺でいい!」


栞子「それは流石に申し訳ないですよ! あんなに朝早くから起きて並んでくれたのに!」


彼方「かあーっ! じゃあ~! 奮発して天一だぁ!」


栞子「天下一閃!?」


彼方「ちがう! 一発台は忘れろ!」

300: 2022/03/17(木) 21:46:45.50 ID:P8ZpC9a5.net
~部室~

ミア(早起きして並ばされて報酬はカップ麺ひとつか……)ズルズル

エマ「ずず……」ズルズル

しずく「なんで天下一品?」ズルズル

かすみ「しょっぱいギャラですね……」ズルズル

侑「勝てた?」ズルズル

彼方「いやあ~残念ながらさあ……」

歩夢「残念でしたね……」ズルズル

璃奈「せっかく一桁の整理番号当てたのに。」ズルズル

彼方「ドハマりしちゃってさあ~入っても単発で終わるし」

栞子「パチンコはもうこりごりです……」ズルズル

果林「ま……そういうこともあるからね」ズルズル

彼方「なはははは、彼方ちゃんが付いていながら面目ねえ~」ズルズル


栞子(うう……心が痛いです……)ズルズル

301: 2022/03/17(木) 22:02:52.41 ID:P8ZpC9a5.net
~~

栞子「初心者とはいえかすみさん達と打った徹麻で一万近く負けてしまいました……」


栞子「焼き鳥、祝儀が痛い……門前にこだわり過ぎて赤ドラタンヤオを見くびっていたのが敗因です……」


栞子「パチにスロットに麻雀に競馬! 覚えることが沢山です!」


栞子「……3連単は順列……3連複は組み合わせ……ダービーまでにしっかり頭に叩き込まないと……」


栞子「麻雀で負け越した上にあれから八重歯に3万飲み込まれてしまったので、予算がなくボックスじゃなくてフォーメーション買いです……トホホ……」


栞子「しかし、女子大生の遊び……とても奥が深いです!」

302: 2022/03/17(木) 22:05:21.64 ID:P8ZpC9a5.net
栞子(台のスペックはしっかりチェックしないと……この前は遊タイムのシステムに気付かずハイエナされてしまいました……)ガシャガシャ


栞子(保留も知らずに打ち続け、玉を浪費してしまったこともあります……)ガシャガシャ


栞子(この時間帯ではいい設定の台はおそらく全部取られているそうです……でもまずはリールの回転速度を身に染み込ませないと……)ポッポッポッ


栞子(左リールにBARを狙って……チェリーを入賞させる!)ポッポッポッ


栞子(中段チェリー……初めて見ました)パシャ


栞子(結果はわずかにプラスでした……でも一人で打って、初めての黒字!)


栞子(この栞子奮闘記録を誰かと共有したいです……でも言ったらこの前ピンハネしたことまでバレちゃう……)


栞子「そうだ! あそこなら……」

303: 2022/03/17(木) 22:05:52.20 ID:P8ZpC9a5.net
~~

「また栞子ちゃんの投稿だ……最近よく更新されてるな……」


「なんだそれ? お前のTL変なのいねえ?」


「高校の友達なんだけどさ……すごい真面目な子だったんだけど……」


「インスタにパチとスロと麻雀競馬ばっかって……どんな女だよ……そいつやべーだろ……」

310: 2022/03/18(金) 20:46:00.23 ID:yNOxt4e4.net
11話『午前7時の脱走計画』

311: 2022/03/18(金) 20:49:15.99 ID:yNOxt4e4.net
果林「先生、これお願いします……」


「何? ……あんた学部の授業は受けないわけ?」


果林「ほ、ほら、時代はリベラルアーツとも言いますし……学部間の横断履修は我が大学でも認められている制度なわけで……」


「はあ……うちの大学はそこがおかしいのよね、訳の分からないバカな総合科目を必修にしたりして。そんなことよりまず専門科目でやることあるでしょう、と。だから最近の学生はろくな専門知識も持たずに……あんたもそう思うでしょ?」ブツブツ


果林「どうなんですかね……」(私に言われても困るんだけど……)


「あんたのことよ……で、見せなさい」


果林「あ、はい」ピラ


「……」

「……ふうん、こんなの取るの?」


果林「駄目ですかね……へへへ」


「……まあいいわ、しっかりやりなさい」


果林「え? ありがとうございます……?」(やけにあっさり通されたわね……てっきりネチネチ反対されるかと)

312: 2022/03/18(金) 20:50:51.37 ID:yNOxt4e4.net
~~

「ちょっと喫煙所寄っていい?w」「何~タバコ吸い始めたのw」「最近ちょっとねw」


ミア(やめとけやめとけ! タバコは身体に悪いんだ……なぜ大学生はタバコを吸ってしまうのか?)


「そんでさ~!」スパー「あ~ね!」ペチャクチャ


果林「……」ギロリ


「あ、その……すみません……」ビクビク


ミア「果林さん」(ま~たすぐガン飛ばして……)


果林「あら」スパー


ミア「息をするようにメンチ切らないでくださいよ……ボクの友達が怯えてるじゃないですか」


果林「やだ、そんなに目つき悪かったかしら……ほら、ヤニの吸い過ぎで目ヤニ溜まっちゃってね」


ミア(何言ってんだ)

ミア「……また研究室から抜け出してきたんですか?」


果林「そうなのよ……あ、しんどくなってきた」

果林「こういうときは……ガイガイ音頭、行きます!」ピキィッ


「「!?」」ビクゥッ


ミア「ほんとやめて」

313: 2022/03/18(金) 20:52:16.14 ID:yNOxt4e4.net
ミア「ほら! サボってないで戻ってください」グイグイ


果林「やだ! やだぁ!!」ズルズル


ミア「やれやれ……」


「ミアちゃんすごい……」「あんな怖い人を……」


ミア(別に……ボクは仲の良い先輩と話してただけだが?w)

ミア(こいつらも、最近はボクに一目置くようになってきたな!)


「じゃあウチら、講義あるから……」トボトボ


ミア「おつ~! じゃまた!」

314: 2022/03/18(金) 20:54:36.60 ID:yNOxt4e4.net
~部室~

かすみ「誰か今年の活動申請書って出しました?」


「知らな~い」


かすみ「学生課からなんかメール来てて」


歩夢「来たってことは誰もやってないんでしょ」


かすみ「そりゃそうでしょうけど」


ミア「……」


かすみ「えー! また私がやるんですか??」


侑「だってかすかす部長だし……」


かすみ「わたし去年部長じゃないんですけど!」


かすみ「は~……」

かすみ「……」チラッ

かすみ「ミアちゃ~ん」トテトテ


かすみ「部長命令♡」


ミア「げっ」

ミア「仕方ないなあ…わかったよ」

315: 2022/03/18(金) 20:55:40.62 ID:yNOxt4e4.net
ミア「氏名と学籍番号と所属学部と緊急連絡先……」


かすみ「これ埋めて顧問のサイン貰うだけだから」


ミア「はいはい……」


かすみ「あ、うちのサークル正式名称スクールアイドル同好会じゃないんだよね、なんでしたっけ」


ミア「え~っ?」


歩夢「メディア……なんとか研なんだよね、たしか」


「てかスクールアイドル同好会って誰が言い出したの?」


ミア「ややこしいな」(……? なんかどっかで聞いた気がするな……)

316: 2022/03/18(金) 20:56:34.57 ID:yNOxt4e4.net
ミア「このPC重すぎだろ……璃奈は何やってんだ?」


かすみ「それもう古いからね~……予算もないし組めないってりな子嘆いてたよ」


ミア「……去年のやつとかデータ無いんですか?」


かすみ「デスクトップにない? ……あ、それそれ」

かすみ「あ、去年はスクールアイドル同好会って書いてた、だから今年もそれでいいよ」


ミア「はあ……」

ミア「ん? このデータホントに去年ので合ってます?」


かすみ「うそ? ファイル名昨年度になってるでしょ?」


ミア「いやだってほら、中身の年度一昨年だし」


かすみ「ウケる! 去年もコピペして出したんだった!」


ミア(杜撰だなあ、そしておそらくそれ以前からコピペだな……みんな入部時期がズレてるから同輩なのに学年バラバラだし、善子さんに至っては学部生のままだし……)


かすみ「まあ今年もそのまま印刷して出しちゃっていいと思うよ」


ミア「いいわけないでしょ、そういうとこだよ……はあ、書き直しますよ」(めんどくせ~!!!)

317: 2022/03/18(金) 20:59:25.03 ID:yNOxt4e4.net
ミア「1年はボクだけ、2年はなし、3年はしずかす璃奈しお。合ってますね?」

かすみ「ちょ、呼び捨て……」

ミア「何?」

かすみ「いやなんでもないです……」


ミア「次は4年か……ランジュとかもう書かなくていいですか? どうせあいつ来ないだろ」

侑「いいんじゃない? 留年、してないし」

かすみ「あ~、一応書いてあげて」


ミア「はいはい……中川ってのは?」


かすみ「ん? その人4年だよね……? 私も会ったことないから……」


歩夢「菜々さんでしょ? 中川菜々」


侑「え! 菜々ちゃんってここ入ってたんだ?」


かすみ「みたいですけど……」


歩夢「しかもだいぶ古参だよ」


侑「てか菜々ちゃんって大学辞めたって聞いたんだけど……」


歩夢「そうなの?」


侑「まあ、人づてに聞いただけだから知らんけど」


歩夢「ふ~ん」


侑「……」


かすみ「……」


ミア「……」

ミア(いや結局どうすんだよ!)

318: 2022/03/18(金) 21:00:34.97 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々(今日の講義はこれで終わり)


菜々「……」


菜々(こっちから帰ろう)


菜々(部室棟を避けるように通る。 練習音を聴くと……脳裏から消し去りたい記憶、思い出したくない記憶が呼び起こされるからだ)

319: 2022/03/18(金) 21:01:55.21 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々「私たちのバンドではオリジナル曲をやりましょう! 曲は私が書いてきます!」

菜々「期待の大型新入生が入ってきた!って先輩たちをびっくりさせちゃいましょう!」


菜々「みなさん、もっと練習してください!」

菜々「そんなの甘えですよ! パワーコード弾くだけじゃないですか! こんなの誰でもできますよ!」


「中川、それくらいにしときなって」


菜々「でも!」


「そういう人もいるんだ……サークルってさ、こういうもんなんだよ……」


菜々「何しに入ったんですか? 興味があるって言って入ったのに練習もしないなら、それは興味ないってことじゃないですか!」


「もうお前には付いていけない……」


菜々「どうして……」


菜々「……」


「どうした菜々? 話聞こうか?」


菜々「個人練習やらないと上手くなりっこないのに……」


「俺は菜々のことわかってあげられるよ」


菜々「〇〇さん……私……」

320: 2022/03/18(金) 21:02:45.62 ID:yNOxt4e4.net
「中川、ちょっと……」


菜々「私……あなたの彼女じゃなかったんですか?……そんな……酷いです……!」


「ふざけんな菜々! お前が○○に送ったLINE全部知ってんだよ!」


「氏んでやる! ロッ研のクソ女どもは皆んな*ね!!」


「〇〇は……あいつは辞めたって。中川も災難だったね……早く忘れなよ」


「ごめん菜々……私勘違いしちゃって酷いこと言っちゃった」


菜々「……」


菜々「……いいんですよ、もう」

321: 2022/03/18(金) 21:03:27.12 ID:yNOxt4e4.net
菜々「……」


菜々「……そうですか」


「私たちも止めたんだけどさ……あっちについて行くんだろうね……」


菜々「私のせい……ですよね」


「……そんなことないよ、みんな誤解だってわかってるから……それにあとは二人の問題だからさ」


菜々「……」

322: 2022/03/18(金) 21:05:03.97 ID:yNOxt4e4.net
菜々(総スカンを食らって、追い出されるように辞めていったあの人)

菜々(それを追いかけサークルの人間関係を自ら切って飛び出していったあの人)

菜々(サークルに唯一残った当事者で、腫れ物扱いされる私)


菜々(でも、あの二人は……)


「あーなんかあいつら、二人でまた音楽始めた らしいよ」

「そーなんだ……ま、もうウチらには関係のないことだけど……」


菜々「……」

菜々(なんで……?)


菜々「……」


男「どしたん? 話聞こか?w」

「どしたん?w」「話聞こか?w」「ど話聞?w」ゾロゾロ


菜々「う、う……」


菜々「うるさ~~~~い!!!」ドガァン!!


「「わあああああ!!」」

323: 2022/03/18(金) 21:06:22.82 ID:yNOxt4e4.net
菜々(こうしてまた、私はひとり)


菜々(……でも)

菜々(私はこういうひとが、そばにほしかったのかな?)


菜々(自分のことがますますわからなくなる)


~~

菜々「よ、よろしくお願いします!」


バ先の店長「さすが虹大生、物覚え早いし要領いいね~」


菜々「お、恐れ入ります……!」


「菜々! オーダー詰まってるからキッチンヘルプ行って!」


菜々「は、はい!」バタバタ


「菜々! カクテル手伝ってくれ!」


菜々「はい!」バタバタ


「菜々ちゃん可愛いからってお客さんからも人気だよ」

「オーダーもハキハキと元気だし料理もパンチが効いてるって」


「ほら店長もさ、家ではいつも菜々ちゃんいい子だ、来てくれて助かってるって話しててね~」


菜々「ありがとうございます……! これからも頑張ります!」

324: 2022/03/18(金) 21:07:30.55 ID:yNOxt4e4.net
「お姉さ~ん、LINEとか教えてよ~w」


菜々「あはは……ごめんなさい、私いま携帯壊れてて……」


「菜々ちゃん彼氏とかいるの?w」


菜々「な、内緒です!」カアア


「おっOい大きいね~w 大学生? どこの大学なの?w」


菜々「……っ! ……もう! 酔っ払っちゃったんですか? お冷持ってきますからね……!」(いまお尻触られた……)


「菜々最近元気ないね? 少し心配だな」


菜々「そ、そうですかね……?」


「そうだ、今度うち遊びに来なよ」


菜々「……でも店長、奥さんに悪いんじゃ……」


「ああ、この日あいつはいないから」


菜々「……ごめんなさい、最近授業が忙しくて……」


「じゃあ飲みに行くだけ! ちょっとだけでいいからさ」


菜々「うう……それなら」

325: 2022/03/18(金) 21:08:17.13 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々(たくさん勉強して入学した虹大の、大学生活)

菜々(学業だけじゃなく、サークルにバイトに。そこそこ充実してたんだと思う、客観的にもそう見えるだろう……でも)


菜々(私の居場所は、いつも壊れていく。それは自分のせいで……そして、周りをも巻き込んで……)


菜々(私の傲慢さで、振り回されたバンドのメンバーは音楽を嫌いになっただろうか)


菜々(私の愚鈍さで、引き起こされた恋愛沙汰に巻き込まれたロック研のみんなは……二人はどうなっただろうか)


菜々(私の浅はかさで、裏切られた奥さんは……路頭に迷うことになった店長は……あれからどうなっただろうか)

326: 2022/03/18(金) 21:09:08.41 ID:yNOxt4e4.net
菜々(世の中を知らず……無知で不器用だった私は、あっという間に心も身体も蝕まれて……)

菜々(人の心を分からず……短慮で無神経だった私は、周りみんなに不幸をばらまいて……それで)


"頑張った想い出は、きらめく青春の日々!"
"得られた仲間は、一生の友!"


菜々「……」

菜々「……」


菜々「…………」


菜々(もはや自分がどうして苦しいのかもわからない)


菜々(涙は……きっと感情の潤滑剤だったんだ)

菜々(流す涙もとっくの昔に枯れ果ててしまったいま、錆び付いたこころの軋む音だけが……胸の奥に響く)


菜々(私は、家から出なくなった)

327: 2022/03/18(金) 21:10:50.69 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々(入学して3年が過ぎようとしていたある日、学科主任の教授からメールが来た)


菜々(というのは、あまり正確ではない。本当は前々から定期的に来ていた。私が無視していただけで……)


菜々(面談希望というタイトルと……その日時の候補が本文に……淡々と、無機質に並べられていた)


菜々(締め切った部屋の中、本を読んで……アニメを見て……まとめサイトを眺める毎日)


菜々(どういった心の揺れ動きか、そのとき偶々、なんとかしたいという気持ちがわずかに揺れ動いたのだと思う)


菜々(私はこの日初めて返信をした)

328: 2022/03/18(金) 21:12:29.45 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々「……」


「なるほどね」

「色々と事情はわかりました……話したくないこともあっただろうに、教えてくれてありがとう」


「……とりあえずは、朝起きて学校に来ることを目標にしてみなさい」

「図書館で過ごすとか……散歩したあとに生協でコーヒーを一杯飲んだり……そういうのだけでもいいからね」

「授業は……焦って一度に取りすぎなくてもいい、できる範囲で履修すれば構わないから」


菜々「はい……」


「私の担当している講義が専門と第二外国語にあるから……それらを取るのもいいでしょう、キミは普段の成績は良いようだから……多少の欠席は融通してあげられる」


菜々「ありがとうございます……」


「キミは散々悩んで……迷った末に、もう一度卒業を目指すと決めた……無理はしなくていいからね、ゆっくりと落ち着いてやっていきなさい」


菜々(学科主任は面談に来てくれて良かったと、安心したと言ってくれた)


菜々(正直驚いた。今までずっと返信を怠っていたのだ、怒られると思っていた)

329: 2022/03/18(金) 21:13:18.31 ID:yNOxt4e4.net
菜々(家に帰って、久々に学修案内を読んだ)


菜々(すでに独語は取ってたから……実質第3外国語かな、ふふ)


菜々(昔取らなかった授業もいくつかあるもんね)

菜々(これとこれと……これも取れるかな)


~確率・統計(経済学部開講)~

ガヤガヤ

菜々(みんなグループ作って受けてる……1年生向けだから当然か)


菜々(みんなの邪魔にならないよう、なるべく目に付かないように後ろの方に座ろうかな……)

330: 2022/03/18(金) 21:14:43.81 ID:yNOxt4e4.net
~~

ボォーパァ–

菜々「久しぶりに……」

菜々(真っ暗だけど……お酒飲んでるあの人達とか聴いてくれるかもしれない)


菜々「……」スゥー

菜々「っ!……開け放した窓に~♪」ジャカジャカ


「おっ?」「なんだなんだ?」


菜々「繰り返す日々に♪ 何の意味があ~の♪」ジャカジャカ

「ヒューヒュー!」「上手いぞ!」


~~

「お姉さん上手だね~!」「今度いつやるの?」


菜々「恐縮です……次は……気が向いたら、ですかね」


「そっか~」「ま、がんばって」


菜々「ありがとうございます……」


菜々「……」

菜々(明日になれば、きっと誰もが忘れる)

菜々(何かが始まったり……出会えたり……そんなことは起こらない)


菜々(でも、それでいいんだ)

菜々(それで……いいのかな)


菜々(明日も、頑張ろう)

331: 2022/03/18(金) 21:27:21.00 ID:yNOxt4e4.net
~マルクス経済学(経済学部開講)~

「やれやれ、急に履修生が増えたわね……それも他学部の過年度生が……どこかで私の講義が楽単だという情報が出回ったのか……まあ構わないけど……」


「「がっはっは!」」


菜々(先生の講義、急に治安悪そうな人たちが増えた……)


「この講義で扱う内容は現代ではもはや下火で必修からは外され……さほど重要ではないどころか、時代遅れの誤った理論と一蹴する先生方も多い……だから、というわけではないけど私の講義でも……いたずらに難易度を上げ、君たちの単位を落とすようなことはしない」


「最低限出席し、最低限の課題を出せば単位は保証しましょう」


「「やったあああ~↑」」


菜々(騒がしい人たちだな……)


「とはいえ、他の学生の邪魔になるようなら……容赦なく教室から追い出すから、そこのところの節度は守りなさい」


「「はぁ~い」」

332: 2022/03/18(金) 21:28:28.91 ID:yNOxt4e4.net
菜々(先生の講義を取ることにした私は、授業後に先生と軽くお話することが習慣になっていた)


菜々(夜に眠れているか、とか身体の調子はどうだ、とか……少しお勉強のことも)


菜々(今日もお話しようとしたけれど、先生は……さきほどの集団とお話していた)


菜々「……」

菜々(帰ろう……)


~ロシア語bクラス Ⅰ(第二外国語科目)~

「また君たちか……大方いわゆる"楽単"を狙い撃ちにされてるみたいね」

「私もいよいよ成績の付け方を考え直さなきゃいけないのかしら……」


「「わはははは!」」


菜々(治安悪い人たちがこっちにも来た……嫌だなあ)

333: 2022/03/18(金) 21:29:32.18 ID:yNOxt4e4.net
「……だから私の他に、君たちの学科長の捺印がいるんだよ……無駄に長く在籍してるくせにどうしてそんな事も知らないんだか」


「「がははは!」」「知ってたら留年してませんw」


菜々「……」


「私、学科の他にコース主任もいるんですけど。どうすればいいですか。」


「そんなこと自分で調べなさい、君たち自身のことなんだから」


菜々「……」


「全く……次回までに急いで用意しなさい、確か期限が決められているでしょう? 教務課に遅れたら私ではもうどうにもしてあげられないからね」


「「は~い」」


菜々「……」

菜々(帰ろう……)


「……あ、ちょっと」

334: 2022/03/18(金) 21:30:25.14 ID:yNOxt4e4.net
~確率・統計(経済学部開講)~

菜々(なにこれむっず……いやどこかで見た覚えある……)

菜々(あ、これ私の代の理系の入試の使い回しだ……虹大史上最凶難易度って言われた数学の……理系って大変だな……)

菜々(解ける人いるのかな……あ、でもいけそうかも)

菜々(違ってそうだな……まあいいや)ガタッ…スタスタ


~確率・統計(経済学部開講)~

菜々(今回は期待値の極限か……また入試の使い回しだ、しかも今年の……検索すれば答え出てくるかな)

菜々(あった……予備校の解答そのまま書いちゃお)


菜々(今日は……先生とお話しできるかな)ガタッ…スタスタ

335: 2022/03/18(金) 21:31:45.53 ID:yNOxt4e4.net
~マルクス経済学(経済学部開講)~

「……だから各講義ごとに申請しなきゃいけないに決まってるでしょうに……何がしたいんだか」


「「ええ!?」」


「はあ……あら、キミだけは持ってきたみたいね……」


「私はちゃんとしてますので。 甘やかすから良くないんですよ。 この子たち一度痛い目見た方が良いですよね」


「私もそんな気がしてきたわ……あら、キミは法学部の矢澤先生のところのゼミなんだね」


「ご存知なんですか?」


「ええ、彼女は大学時代の同期でね……どう、厳しいでしょう?」


「そりゃもうほんと……鬼です、鬼」


菜々「……」

菜々(……帰ろう)


「……あ、ちょっと中川」


菜々「!」


「君たち、用が済んだならさっさと出て行きなさい、ほらあっち行った行った」バシバシ


「「うわああああ!」」ドタドタ


歩夢「いたた……あれ、菜々ちゃん?」


菜々「?……!」

336: 2022/03/18(金) 21:33:05.00 ID:yNOxt4e4.net
~~

ミア「失礼します……」


「は~い」


ミア「機械科一年のテイラーです……先日ご連絡したサークルの活動申請の件で……」


「どうぞ~」


ミア「こちらが……申請書になります」


「は~い、あら? 今年はちゃんと書いてあるんですね」


ミア「うはは……その節は大変申し訳ございませんでした……」


「いやいや褒めてます! しっかり記載されていますね……ふふふふ、昔は空欄どころか……出してすらいない時期もあったんですよ~」


ミア(書式を守っているだけで褒められるなんて……うちの先輩達がご迷惑をおかけしてほんとすみません……😭)


「はいっ! 書けたので持っていってください」


ミア「ありがとうございます!」


ミア(こんなサークルの顧問だし、マウント取りたgirlsもやべ~先生って噂して敬遠してたけど、ほんわかしてて優しい人だったな……)

337: 2022/03/18(金) 21:34:41.51 ID:yNOxt4e4.net
~部室~

彼方「悪いねえ、焼酎しかなくてさ」グビ


菜々「お構いなく……」

菜々(治安の悪い人達に一方的に絡まれて、結局なされるがままに連行されてしまった……)


菜々「……」

菜々(懐かしいなこの部屋、ずいぶん昔に数回だけ来たことがある……私部員にされてたんだ、入るって言った覚え無いんだけど……)

菜々(授業に出ず昼からお酒飲んで麻雀打ってたりAV見てたり、とにかくずっと遊んでる人たちで、合わないなって思って行かなくなったけど……ここの人たちまだこんなことしてたんだ……)


菜々(勿論知らない人の方が多いけど……上原さんとか、近江さんとか、朝香さんとか……覚えてる人はなんとなく覚えてる)

菜々(あとずっとお酒飲んでた留学生の人とか……とんでもない美人だけどすっごく痛いオタクの先輩とか……同人誌読んでニタついてた異様な雰囲気の先輩とかいた気がするけど……流石にもう卒業しちゃったかな)


菜々(……うん、確かにこんなことがあった、面白いほど記憶から完全に抜け落ちていた……私にとって心底どうでもいい存在だったんだろうな……この人達には申し訳ないけど)

338: 2022/03/18(金) 21:35:39.98 ID:yNOxt4e4.net
しずく「新入部員ってことですか?」

かすみ「や、なんか前から入ってるんだってさ」


菜々(入ってないってば……)


菜々(私こういうときにいつもはっきり断れないんだよね……駄目なのに……またこの人達に迷惑かけちゃう)


果林「見たことあるようなないような……ごめん、私は覚えてない」

彼方「彼方ちゃんも全然気付かんかったわ~」


菜々(でもなんだろう……今まで私の周りにいた人たちとなにかが決定的に違う……勝手でデリカシーがないというか……図々しいというか……なのに堂々としている)

339: 2022/03/18(金) 21:36:37.84 ID:yNOxt4e4.net
ミア「なんだなんだ! ボクが使いっ走りさせられてる間に何やら楽しそうなことやってるじゃないか!」バァン!


菜々「……」


ミア「あ……ども」ペコリ


菜々「どうも……」


菜々(この子も知ってる……一限の講義で見かける、目立つグループの中心にいる子だ)


ミア(気まずいな……てかなんでこの人が?)


かすみ「ミアちゃん知ってるの?」ヒソヒソ


ミア「うん、経済の授業でいつも小テストでspeed runしてる人って有名だよ」ヒソヒソ

ミア「今日も結構な難易度だったけど0分針で……」ヒソヒソ


菜々(うそ、目立ってたんだ……そんなつもりなかったのにな……)

340: 2022/03/18(金) 21:37:45.85 ID:yNOxt4e4.net
侑「う~っす」ガチャ

侑「あ、菜々ちゃん連れてきたんだ?」


菜々(え"っ……高咲さんだ……なんでこの人が……)


愛「ゆうゆも知り合い?」

侑「そーそー。 この子ロック研でさ、私もロック研ちょっと入ってた時期あったからさ、ね! 菜々ちゃん!」


菜々「そ、そうですね……」


菜々(すごく可愛い顔の人なんだけど、一人だけなんて選べない!とか言って何股もかけて……修羅場作っては裏でほくそ笑んでた悪魔みたいな人だ……私が起こした騒動のときも一人だけゲラゲラ笑ってて……)


愛「あ~、ゆうゆイキってた頃ねw」

侑「ええ!? そ、そんなことないよ~!」

歩夢「いまも大概イキってるけどね」ボソッ

侑「……何?」

歩夢「何も」


菜々(怖っ……やっぱこの人苦手だ……他の人たちは平気なのかな……)


ミア(いま侑さんピキってるピキってるw)

341: 2022/03/18(金) 21:39:13.50 ID:yNOxt4e4.net
栞子「ど~も~」ガチャ


栞子「え!!?? 」

菜々「えっ!?」


菜々(更に現れたのは高校のときの後輩……可愛いけどすごくお堅くて品行方正を地で行くような子だったのに、こんなところにたむろする不良になっちゃったんだ……今もガニ股でズンズン入ってきて……)


菜々(虹大だったんだね……それと告白のお返事もできないままだったな……ちゃんと断らないと……)


栞子「な……な、な、なんで……ここに菜々さんが!?」


菜々(私の台詞だよ……)


栞子「な、菜々さんも東大落ちたんですか!?」


菜々「受けてすらいませんけど……」


栞子「なんでもいいです! 私……私ずっとあなたに……」ボロボロ


菜々「ええっ……!?」


彼方「良かったなあ! 栞子ちゃん虹大で! 東大落ちて!」


栞子「はい! 落ちて良かったです! ……嘘ですやっぱ東大行きたいです!」ポロポロ


菜々(この子こんなに声デカかったっけ……それにこんなノリ合わせられる子だったんだ……)


しずく「え? この人が例の栞子さんの?」ボソボソ


璃奈「そうみたい。運命的だね。」ボソボソ

342: 2022/03/18(金) 21:40:24.15 ID:yNOxt4e4.net
侑「いやね、毎日ダラダラ過ごしてたらさ~w」


歩夢「……」


菜々「そ、そうだったんですか」


菜々(私2年の途中から引きこもってたのに……この二人私より単位少ないんだ……)


菜々(それに栞子さん16単位? 嘘でしょ、この3年間であなたに何があったの……?)

343: 2022/03/18(金) 21:41:36.84 ID:yNOxt4e4.net
菜々(歓迎します! とか言われても……)


菜々(どうしよう、入る気なんてまるで無いのに……どんどん外堀を埋められている気がする)


栞子「菜々さん……! 私と失った青春を取り戻しましょう! 貴女にはこのサークルの適性があります!」


菜々(失礼にも程があるよ……いや、否定はできないんだけどね……)

菜々「どうなんですかね……昼から焼酎とかは私にはちょっと……」


栞子「私のときはテキーラでした!」


菜々(聞いてないよ……)


かすみ「そういえばミアちゃん、申請どうしたの? 菜々さんのところとか」


ミア「ああ、入れたまま出しましたよ……まいっかって思って」


菜々「ええ……」(いいわけないでしょ……そういうとこだよ……)


ミア(やべっ……この人の連絡先欄デタラメに埋めたままだった)

344: 2022/03/18(金) 21:42:56.02 ID:yNOxt4e4.net
~~

菜々(結局言われるがまま、入部してしまった……正確には継続だけど)


菜々「はあ……」


菜々(断るのもなんだか面倒になっちゃって)


菜々「……」


菜々(あの人たちは、来るもの拒まず去るもの追わず!って言ってたけど……それはきっとどこのサークルも同じ)


菜々(その中での個別の人間関係が上手くできなかったから、私はいつもはじき出されていたんだろうな)


菜々(でも……あのサークルは向上心とか恋愛感情とかとは違う、もっとなにか不思議な連帯で繋がっていて……)


菜々(その違いが、今度こそ私の居場所になりうるのだろうか……今はまだわからないけど)

345: 2022/03/18(金) 21:44:33.50 ID:yNOxt4e4.net
~確率・統計(経済学部開講)~

「いやいや無理でしょこれ~w」「ミアちゃん……どう?」


ミア「……お手上げ……_(┐「ε:)_」


「「そっかあ~……」」


ミア「……」


「ミアちゃん??」


ミア「あ、あの……」

ミア「今日の小テスト、教えてくれませんか?」


菜々「!……いいですよ、合ってるかどうかわかりませんけど」


菜々「……この場合だとこの式を適用できるので……」


ミア「なるほど……」(わからん……)


「「ミアちゃんすごい……」」


ミア(ん?w まーたボクなんかやっちゃいました?w)

356: 2022/03/19(土) 21:21:29.81 ID:jas5JKoz.net
11.5話『単位はめぐる』

357: 2022/03/19(土) 21:24:24.52 ID:jas5JKoz.net
「え~っ! ミアちゃんパヨちんの授業取るの~!?」


ミア「そうだけど……」


ミア(夏学期、どの教養科目を取るかの話でgirlsと盛り上がっていたボク達。 ところがボクが取ろうとしている科目、つまり同好会のみんなで受けるつもりの科目はどうやら悪評が…… )


「やばいって噂だよ! 」


ミア(確かにそういう授業ある、とはよく聞くよな……先生の思想と合わないレポート書いたら問答無用で不可!とか)

ミア(しかしここまで反対されるとは……最近の子はリベラルな思想には食傷気味なのか、なんだか保守的な子が多いな……)


「一緒の授業取ろうよ! 憲法とか社会学とかさ!」


ミア「う~ん……刑法概論なら候補なんだけど……」


「それも絶対やめた方がいいって言われてるよ! 去年は受講者半分以上落とされたんだって!」


ミア「う、それは困るな……」

358: 2022/03/19(土) 21:27:05.74 ID:jas5JKoz.net
~有機化学Ⅱアルコール・アルケン(工学部化学工学科開講 必修)~

「みなさんおはようございます……大学生活はもう慣れましたか?」

「この科目は化学工学科の1年なら必ず取らなきゃいけないやつでね……春学期のアルカンの……有機化学Ⅰの続きってわけすよ」

「じゃあⅡの科目名のアルコールってなんだよって言ったらまあ……例えば皆さんの大好きなお酒ですよ」


「さてこの中でお酒大好きな人!」


栞子「!」ピクッ


「 ……ってみなさんはまだ18か19だから飲んでねえか! つまりいま反応しちまったやつは……バレねえようにな!」ワハハ


「「わははは!!」」ドッ


栞子「……」

栞子(やめてください! ここにハタチ超えの留年生がいます!)

栞子(心がいたい! いたいです!)

359: 2022/03/19(土) 21:28:28.49 ID:jas5JKoz.net
「まあとりあえず、これだけは知っててくれよって、そういう構造と反応機構だけこの授業でわかってくれればいい」


「卒業して社会に出て働いたときに……虹学出ててお前らこんなことも知らねえのか!って言われちゃうからね」


「ていうか向こうはそれ言いたくて言いたくて仕方ねえんだな!」


「「わはははは!!」」


「今日は春学期の復習だな、オクテット則と混成軌道からE2反応までまずはざっとおさらいしていこう」

360: 2022/03/19(土) 21:30:06.12 ID:jas5JKoz.net
~~

しずく「小テストの分量多くないですか?」カキカキ

侑「春学期の内容一通り入ってるってさ……意味わかんないし……や~めた!」

ミア「相変わらず命名法がややこしいな……」カキカキ

璃奈「部室のマクマリーかボルハルトショワー持ってくれば良かったね。」カキカキ

彼方「ジアステレオマー、エナンチオマー……うちの学部でもなぜかやった覚えあるな~……」カキカキ

栞子「共鳴構造からあやふやなので求核置換反応がさっぱりです……SN2反応とか2年ぶりに聞きました……」


善子「ちょっと、早く出してくれないと私帰れないんだけど……てかなんであんたたちいんの?」


愛「善子さんTAやってたんだ! 答え全部教えて!」


栞子「お知り合いなんですか?」ヒソヒソ

かすみ「そーだよ、化学工学のいま院生の人。 善子さん」


善子「ども! ツシマ・D・ヨハネよ。 "D"の意志をry」


栞子「どうも……その……学部も虹大なんですか?」


善子「あんたいきなりワカッテTVみたいなこと聞くのね……ロンダじゃなくて普通の内部進学だけど……」

361: 2022/03/19(土) 21:34:00.98 ID:jas5JKoz.net
~特別講義 表現論(理学部数学科代数コース開講)~

「それでは次の命題です、"有限群Gの規約表現Vは有限次元である。" ……次にその証明を書いていきます」カキカキ

「∀v∈V,≠0、{gv | g∈G}で張られる部分空間Uは有限次元でゼロでない不変部分空間となるのでV=Uであり、有限次元。……証明終わり。……それでは次は定義です……」カキカキ


歩夢「???」

しずく「???」

侑「???w」

愛「???w」

ミア「???w」


かすみ(これ絶対私たちが思ってたのと違うやつだ……理系の愛さんとミアちゃんまで……ていうか無感情で淡々とし過ぎでしょ……)


かすみ「りな子、わかる?」ヒソヒソ

璃奈「……ごめん。 さっぱり。」ボソボソ


~自宅~

ミア「ランジュ……わからないところがあるんだ……」


ランジュ「なにこれ……あなた表現論なんてやってるの?」


ミア「みんなで同じ講義取ろうって話になってさ……これは映画観る系の表現技法の授業なんじゃないかって誰かが言い出したらしくて……」


ランジュ「バカね……」

ランジュ「確かテスト一発勝負の科目だし……一応過去問もあるけど……丸暗記する?」


ミア「何語だよこれ……いや、履修をやめとくよ……」

362: 2022/03/19(土) 21:35:52.66 ID:jas5JKoz.net
~スポーツ実習(一般教養科目)~

菜々(抜ける……!)キュッ!ダムダム

愛「えっ上手っ!?」

パシュッ

ミア「すげー……」


「おっ! いいね~! そっちもファイトファイトだよっ」


ミア(三つ編みのお下げのいかにもな文学少女が、油断していたとはいえあの愛さんをフェイクであっさり抜かしていった……)

ミア(菜々さんって引きこもりなのにめちゃめちゃ運動神経良いんだな……綺麗なシュートフォームも持ってるし……おっOいも大きいし……)


菜々「ドリブルはチビの生きる道……ですよ!」


愛「くそ~……」ダムダム


ミア(あんなに悔しそうな愛さん初めて見たな)


侑歩夢「わあああ!」ポーン

しずくかすみ「ぎゃふん!」ポーン


ミア(運動神経悪い組……)

363: 2022/03/19(土) 21:37:11.63 ID:jas5JKoz.net
~ファッションと生活(家政学部開講)~

「生活必需品が全く足りない戦後の暮らしの中、女性は自分達で洋服を仕立て上げる必要に迫られたのです! さらに夫を戦争で失った女性たちの自立の手段となったのが洋裁文化で……」

「この人たちが素材、仕立て、型紙を学ぶためにこぞって洋裁学校や洋裁雑誌と深く関わるようになりました!」ピーチクパーチク

「文化服装学園の出版した『装苑』や大橋鎭子の『スタイルブック』は……」ピーチクパーチク


しずく(私!?)


ミア(コシノジュンコみたいな格好の人が……変な声で……この教員はデザイナーらしい。 変わった人だなあ)


ミア(家政学部は不思議なところだ。 栄養学や服飾、住居デザインなどの全く異なる学科が集まって構成され……美学や化粧品化学、ファンタジー論などの奇抜な講義があると思えば、プログラミングや化学、数学科目が必修だったりする。 入試も少し異質で学部の中でもとりわけ異彩を放っている……)

364: 2022/03/19(土) 21:39:06.13 ID:jas5JKoz.net
「正田美智子さんと皇太子のご成婚でミッチーブームが起こり……自由で白紺を基調としたそのスタイルは白黒テレビの普及と相まって……」ピーチクパーチク


ミア(教員も研究の傍ら、栄養士や一線級のデザイナーだったりして、その講義は具体例や実学のエピソードに基づくお話が多く、スライドを眺めているだけで楽しい!)


ミア(授業を受けてる人もなんか装いが違う……。 サンドイッチとスムージー飲み食いながら授業受けてたりするし、授業中の学生の挙手からの意見質問の機会も多い……工学部ではありえない光景だ)


彼方「彼方ちゃんこの講義取ったことあったわ……」グビ


果林「こんな授業だったら……いくらでも受けられるのよ」グビッ


ミア(スムージーに紛れて堂々と酒を飲むな!)

365: 2022/03/19(土) 21:40:23.26 ID:jas5JKoz.net
~国文学B(文学部日本文学科開講)~

「勘違いしてる人もいるようですが……あらかじめ言っておきます、この授業は決して楽ではありません。」

「予習としてテキストを通読してもらいますし、毎回小レポートを課します。 期末レポートは5000字以上! 一つでも出し忘れた場合は単位を出しません。」


みんな「「ええ~っ?」」


侑「話と違くない? 私漢文とかもう忘れちゃったよ……」ヒソヒソ

歩夢「う~ん……」ヒソヒソ


「そこ静かに。 次私語をしたら教室から出て行ってもらいますよ。」


侑歩夢「は、はい!」


~部室~

愛「エマっち~ どういうこと?!」


エマ「大丈夫大丈夫、善子ちゃんとか2年後に自作ラノベ書いて出しても単位来てたから」

366: 2022/03/19(土) 21:43:57.32 ID:jas5JKoz.net
~民俗学~(文学部人類文化学科開講)

「未開社会の神話や伝承を『金枝篇』にまとめたフレイザーはな~、文化人類学の先駆けと言われてるんよ。 日本では明治末期に柳田がな~」


かすみ(やばい……寝そう)コクン


「ダーウィンの『進化論』を自然科学だけでなく文化の発展にも適用しようとしてな、その考え方はいかにも自民族中心的やん? って批判されたんよ」


しずく(面白そうな内容だけど、先生の喋り方が……とにかく眠い!)カクン


「柳田のフィールドワークを重視した研究ではな~、昔話や方言なんかを具体的にな~」


璃奈(起きてるのはすでに私たちだけ。 ……だから先生もこっちガン見で寝るに寝られない……。)カックン


彼方「むにゃ……」zzz...

果林「んがぁ……」zzz...


「……」

「……じゃ次は性行為……の伝承について話そかな~」


みんな「!」ガバッ


ミア(こいつら……男子高校生かよ)


菜々「……///」

368: 2022/03/19(土) 21:48:14.15 ID:jas5JKoz.net
~近代政治史(社会学部 政治学科開講)~

「……大日本帝国の植民地支配、侵略戦争に反対すべく義兵闘争のなか伊藤博文を射頃した安重根は、国際法ではなく日本の法によって氏刑にさせられたわ……」

「東学農民革命の対処を理由に日本は朝鮮政府の要請もないまま派兵……日本の傀儡政権の大院君と対立した閔妃は三浦梧楼の指示によって暗殺されてしまうの……これらは『坂の上の雲』では殆ど触れられていない事実で……」


「先生! その歴史解釈は極めて恣意的です!」バン!


ミア「!!?」


かすみ「出た出た……」ボソッ

しずく「なになに……? どうしたの?」ヒソヒソ


「あれは侵略なのではない! 植民地政策を広げる欧米列強からの解放のため、アジア諸国は東亜として一丸となり対抗する必要があったのだ!」

「田中智学の八紘一宇は人道の普遍的思想であり……大東亜戦争はABCD包囲網への自衛である!」


「日本がアジアで行った数々の侵略戦争を正当化するのか!? ポツダム宣言には侵略戦争と判定されていて、それが国際的な認識だ!」ガタッ!


ワーキャー!!


ミア(教員の発言を発端に、講義中に左寄りと右寄り……というか共産党と靖国派の学生たちの間で突然激論が始まった! おいおい……大丈夫か……?)


「全ては戦勝国の都合であろう! 正しい評価はより後世の歴史家のみが判断する!」


「そうやって戦争責任を曖昧にしてきたから今日に至るまで……!」


「そっちこそ非現実的な理想論を並べた挙句破防法対象のテロ集団と成り下がるのだから本末転倒!」


ワーキャー!!


栞子「ケンカですか!?」ワクワク

璃奈「こんなこと本当にあるんだね。」

369: 2022/03/19(土) 21:49:32.68 ID:jas5JKoz.net
歩夢「いや~大変だったね……次はメディア文化論か……」


侑「その教員うちのサークルの顧問なんだっけ? どんな人なの?」


ミア「ぽわぽわしてて優しそうな人でしたよ! だからきっと授業もほんわかしてるんじゃないかな?」


愛「ちょ~楽単だといいね!」


~メディア文化論(一般教養科目 社会学部開講)~

「これはメディアやジャーナリズムに対する威嚇効果が極めて強く! 国民の表現の自由と知る権利を著しく害します!」バン!


「したがって現政権には問題があると思っています!」バアン!


ミア「ああ……"パヨ"ちんだった……」

379: 2022/03/20(日) 23:46:27.39 ID:sXSjAhUe.net
12話『津島軍団の人びと』

380: 2022/03/20(日) 23:49:49.51 ID:sXSjAhUe.net
~秋葉原~

善子「トゥットゥルー♪ よっしぃ☆でーす!」


璃奈「岡部なのかまゆりなのかはっきりして。」


菜々(シュタゲだ……!)


ミア(朝から異様にテンション高い先輩に呼び出され、向かった先は……かつてのオタクタウン、秋葉原!)

ミア(AKBカフェ! SEGA2号館! アドアーズ!……ちなみに善子さんのあれは外行き用の白衣らしい……コスプレ喫茶の客引きと勘違いされそうだな……)


善子「この集まり、なにかわかる?」

ミア璃奈「理系……ですか?」

菜々「私は文系ですね……」

歩夢「私も……」


璃奈「ああそうだった。」

381: 2022/03/20(日) 23:51:05.72 ID:sXSjAhUe.net
善子「それはね! オタク! ってこと!」

ザワザワ…

ミア「声デカいですよ……」

璃奈「みんな見てるから。」


歩夢「わ、わたしってそんなにオタクっぽく見えますか……?」


善子「いや? でもこのヨハネ・アイにかかれば……なんでもお見通しよ!」


ミア(ギアス発動時のような仕草で、片目に仕込んだ赤いカラコンを光らせる痛いオタク……)


善子「お洒落さんであっても……隠れオタなのはバレバレユカイ! ってね!」


ミア(それ言いたいだけだろ)

382: 2022/03/20(日) 23:52:06.98 ID:sXSjAhUe.net
善子「なんかさ、果南キッズとか松浦小原スピリッツって言うでしょ? ああいうの私も欲しいのよね!ヨハネ軍団とか!」


ミア「売れ始めて調子に乗った芸人じゃないんだから……」


善子「う~ん……ヨハネ軍団…………津島一派……」

善子「!決めた! 今日からあんた達は、世界を大いに盛り上げるための津島……じゃなくて聖ヨハネの団! 略してSOS団よ!」


璃奈「無理矢理が過ぎる。」


菜々「善子さん……ハルヒ読んでたんですか……!?」


善子「世代も世代よ! 映画も見に行ったし、一生出ない驚愕をずっと待っててね……私のオタク趣味はハルヒらきすたひぐらしけいおんと始まったの……」

善子「それからというもの……みんながピチレモンとか買ってる中、私ひとりアニメディアを買い漁って……」ペラペラ


菜々「わ、私も実はラノベとか好きで……!」


善子「うおーー!!」


歩夢(ピチレモン……懐かしい……)

383: 2022/03/20(日) 23:53:12.09 ID:sXSjAhUe.net
ミア(数名の隠れオタクに火が付いて、さっそくボクのわからないオタクトークが始まった……善子さんがラノベの影響を受けて、ダラーズみたいな会員制サイト作ってみたり、レールガンの自由研究したり……異世界のなんちゃら魔法学院に召喚される二次創作を書いたり……などなど)


璃奈「ラノベと言えばキノ、イリヤ、され竜、フルメタ。」


善子「めちゃめちゃ手堅いわね……てか古……」


善子「ん、……スレイヤーズは?」

璃奈「……」

善子「スレイヤーズ」

璃奈「……」

善子「スレイヤーズは?」


璃奈「……アニメなら見ました。」


善子「璃奈=インバース!!?」

ザワザワ…

璃奈「ほんと黙って。それ言いたいだけでしょ。」カアア


ミア(クソオタクのクソみたいなイジりに璃奈の顔が真っ赤に……。 この流れいつもやってくるらしい)


菜々「私はSAOとかはまちとか好きです……! あ、歩夢さんはどういうの読んでたんですか?」


歩夢「私? ああ、うん……その」

歩夢「みーまーとか……」


璃奈・菜々(読んでそう……)

384: 2022/03/20(日) 23:54:32.09 ID:sXSjAhUe.net
~ビッグエコー~

歩夢「Break the system……減少するentropy……♪」


菜々「わあ!」パチパチ


璃奈「エントロピー……Shannon情報量……」ブツブツ

ミア「熱力学の定義しか知らないな」

璃奈「熱力・統計と情報でそれぞれあるよ。」ボソボソ


ミア「へえ……ん? エントロピーが減少するってことは自発的には起こり得ない反応で……」

璃奈「いや、孤立系でなければあり得る。」ヒソヒソ

ミア「そっか! Break the systemはつまり系(System)が孤立じゃなくなったってことか!」

璃奈ミア「HAHAHAHA!!」


歩夢(いちいちうるさいな……これだから理系オタクは……)


善子「エントロピーってなんだっけ?w」

385: 2022/03/20(日) 23:55:33.00 ID:sXSjAhUe.net
善子「やっと回ってきたわね~!」ガタッ


ミア(どうせ変な曲歌うんだろうな……)


善子「強姦だ! 布団の中で! 5+5! 簡単だ!」


ミア「え、うまっ……」


善子「渡来! ⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン たあーん! あぁ~ん!」


ミア「……」

ミア(しまった……! 美麗な歌声横顔と綺麗なまつ毛に身惚れそうになってしまった! 落ち着け、この人は痛い痛いクソオタクだ!)


善子「ふう……どうだった?」


ミア「よ、良かったです……お歌上手なんですね……」


善子「ありがと」ニコッ


ミア「きゅん……」

ミア(やべっ! この人は痛いオタクオタク……)

386: 2022/03/20(日) 23:56:25.98 ID:sXSjAhUe.net
ミア(フリータイムで取ったのに早々にカラオケを追い出されたボク達。 そんなこんなで善子さんに無線やらPCパーツが立ち並ぶエリアに位置する、これまた薄暗い雰囲気の牛丼屋へ連れて行かれた)


菜々「ほんとにあの通話禁止の張り紙が……」パクパク


ミア(味は別に普通だな……)ムシャムシャ


善子「上京して初めて食べたのがここのサンボなのよ!」


善子「そのあともうきうきで秋葉原回ってね! ラジ館の階段で写真撮ったりして!」スタスタスタ


ミア「ちょっと、どこ行くんですか!」ガタッ


璃奈「行ってらっしゃい。」モグモグ

387: 2022/03/20(日) 23:57:21.96 ID:sXSjAhUe.net
善子「ラブライブ!のキャラの真似して昌平橋で黄昏てみたり!」


善子「神田明神の階段ダッシュしたりとか!」ダダダダダ


善子「2期4話に出てきた肉のハナマサ! 移転後だから実はここ自体は聖地でもなんでもなかったんだけど……知らずに何枚も撮っちゃったのよね!」ダダダダ…


歩夢「うっぷ……」ゼエゼエ


ミア「はぁ……はぁ……」(牛丼食った後に階段ダッシュさせるな!!)


菜々「ひ、引きこもりにはつらいです……」(でも楽しい……!)

388: 2022/03/20(日) 23:58:28.41 ID:sXSjAhUe.net
璃奈「お疲れ様。 ……だいぶ走ったみたいだね。」


ミア「璃奈……。 氏ぬほどキツかったよ……ところで待ち合わせの"はす向かい"って何?」


璃奈「交差点に面する建物の"向かい"という指定では場所が2通りある。 でも"はす向かい"と指定すれば一意に定まる。 つまりユニーク。」


ミア「なるほどね……」

歩夢(イチイ……?)

菜々(長門有希ちゃん……?)


善子「あ……璃奈、ジャンク通りのお店寄らなくてよかった?」


璃奈「……うん。 ディアステ行こうかなって思ったんですけど、この時間開いてないし。……それにPC NETも三月兎ももう無くなっちゃったから。」


善子「ふ~ん」


ミア(どことなく哀愁漂う顔だ……秋葉原は璃奈にとっても思い出の場所だったんだろうか)

389: 2022/03/20(日) 23:59:18.68 ID:sXSjAhUe.net
~~

ミア(休憩を兼ねて、全国チェーンの喫茶店に入ったところ、再び始まるオタクトーク……。ローゼンやらスクールデイズやらDtBにデスノート……お前ら一体何歳なんだ!?)


ミア(女の嗜みなのか、銀魂の話になるとこいつらの声がデカくなる……秋葉原とはいえ恥ずかしい……)


菜々「ジャンプマンガも大好きです……! ヒロアカワートリハイキュー斉Ψとか!」


善子「いいよね~! 私もpixivでとどいずゆうおさ影日のss書いてたわ! めっちゃ酷評されたけど!」


璃奈「逢魔ヶ刻動物園リリエンタール四ツ谷先輩勇者学……。」


善子「なっつ! あんたよく覚えてたわね!」


ミア「まーた逆張りばっかして……」


璃奈「あとは鍵人。ねこわっぱ。」


歩夢「……それほんとに読んでた?」


菜々(うう、その辺りの打ち切りマンガ……刹那で忘れちゃいました……)

390: 2022/03/21(月) 00:00:01.09 ID:VrT/gl4R.net
~京浜東北線~

善子「あ~楽しかった……あ、そうだ、私のTwitterとかインスタの垢もあるからよろしくね!」


ミア「そーなんですか」


菜々「フォローしておきます……!」


璃奈「しない方がいい。」

歩夢「人前で開けなくなっちゃうよ……」


善子「え~っ、なんでよ!」


ミア(この人やたらフォロワー多いな……)

ミア「え! 27とフォローフォロワーなんですか!?」


善子「そうなの! なぜかフォロバ貰っちゃって!」


ミア(何故だ……くそ、羨ましい……!)

391: 2022/03/21(月) 00:00:45.14 ID:VrT/gl4R.net
~自宅~

ランジュ「おかえり。 夜ご飯はもう食べた?」


ミア「いや、まだ食べてない」


ランジュ「そ、じゃあ今温めてあげるわね♪」


ミア「ん」


ミア(家に帰ってから善子さんのツイ垢を眺めてみた)

ミア(鳴き声が如くアニメと生放送の実況……RTは誰もやらない癖に絵師には人気のソシャゲのイラストとか、アニメ画像4枚貼り付けて一言添えるアルファツイッタラーの投稿……おまけにふぁぼ欄は工口イラストで溢れ返ってるこの垢をなぜ27は……)


ミア(ごく稀に投稿するマジで可愛い自撮りでフォロワーを繋ぎ止めているのか……?)


ミア「……」

ミア「あ……善子さんの今日の自撮りだ……」


ミア「……」

ミア「きゅん……」

405: 2022/03/23(水) 06:53:53.32 ID:tegdBPJG.net
12.5話『理学部戦線異常なし』

406: 2022/03/23(水) 06:59:58.14 ID:tegdBPJG.net
~基礎工学実験 クラスα(工学部開講 必修)~

ミア「それでさ……酔った勢いで先輩に……強引にキスされちゃってね……」


「そ、そんな……ミアさん……か、彼氏ですか……?」ガタガタ


ミア「彼ぴっていうか……好きぴかな。 でも一度火が着いたら止まらなくなってさ……」


「あ……ああ、あ……」ガタガタ


ミア「ずっと舐めてるか……しゃぶってたよ」


「🤯🤯🤯」


ミア(ヒヒヒヒヒ!w)

407: 2022/03/23(水) 07:03:16.71 ID:tegdBPJG.net
~~

ミア(工学部は男が多いし、その上宇宙人みたいなオタクばかり……)

ミア(理学部、工学部ともに女子があまりにも少ない! そのためか、理系の女子学生同士には極めて強いシンパシーがある……こと理学部工学部においてはお洒落ガールズも喪女も運命共同体だ!)

ミア(あの後、なんとあの慎重なはずの大宮が5000万円もする走査型電子顕微鏡を操作ミスによりぶっ壊してしまい……実験は続行不能、簡単な宿題だけ課されて授業は終了した……。 ちなみに修理代には300万ほどかかるらしい。 何やってるんだか……)


ミア(そんなこんなでやることもなくなり暇になってしまったボクが、飛び入りで天体観測サークルの観測会とやらに顔を出してみたところ……そこにいたのはデカい望遠鏡を隅に放置して、ひたすら酒あおって歌って踊っての、どんちゃん騒ぎに終始する連中)


ワイワイ!!ギャハハハ!!


ミア(星見てないじゃないか……)


ミア(その中でただ1人、酒も飲まずにぽつんと夜空を見上げている女の子がいた。 線形とか力学とか生物とか……理系教養科目で見かけたことのある子だ)

408: 2022/03/23(水) 07:04:24.32 ID:tegdBPJG.net
ミア(実は一度も喋ったことはなかったけれど……今日はなんとなく、話しかけてみたくなった)


ミア「コーヒー、いる?」コツン

すみれ「?」

ミア「夜とはいえ暑いからさ、水分補給にどうかなって」

すみれ「ありがとう」プシュ

ミア「……」

すみれ「……」

ミア(とはいえネタがないな……)


すみれ「……あれがデネブ、アルタイル、ベガ」

ミア「は、はあ」(西尾維新のオタクか?)


すみれ「西の方に沈んでいくのがアークトゥルス、デネボラ、スピカ。 南の方に見えるのが、いて座、てんびん座、さそり座……」

ミア「へえ……よく知ってるね」


すみれ「……」

すみれ「星はすばる……ひこぼしゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。」


ミア「?」

409: 2022/03/23(水) 07:06:17.96 ID:tegdBPJG.net
すみれ「枕草子の一節よ。 平安時代から人は夜空に心を打たれていたのね」


ミア「ふうん……」


すみれ「あの頃は手を伸ばして思い馳せるだけの星が……月が……ボストーク1号に乗ったガガーリンが、無重力の世界へ初めて到達して……」

すみれ「そして50年前のこの時期、人はついに月面に降り立った。 アポロ11号のアームストロングとオルドリンよ」


ミア「なるほど……詳しいんだね……星とか宇宙とか好きなの?」(西尾維新じゃなくて天体のオタクだった……)


すみれ「うん」

すみれ「……叶うなら、宇宙に行きたい」

すみれ「とはいえ宇宙に行っても、まだあの星々に私たちは手を伸ばすだけで届かない。 それでも……人類はあの輝きへと少しずつ近付いていっている。 そんな世界を私もこの目で見てみたいの」


すみれ「……この大学で博士まで進んで、JAXAに行くかアカデミアに残るか……次の宇宙飛行士の募集が何年後になるのかはわからないけど……」


ミア「今は民間でも行けるらしいし……ゾゾタウンとか作って売り飛ばしたら?」


すみれ「このまま理学部で宇宙物理やるか……工学部に移って航空工学やるか……迷ってるのよね」


ミア(スルーされた……ボケが雑過ぎたかな)

410: 2022/03/23(水) 07:07:07.60 ID:tegdBPJG.net
ミア(それにしても一年生にしてちゃんとキャリアプランを考えているんだな……偉過ぎる……)


ミア(この女から摂動方程式とか軌道移行とか……宇宙船のランデブーがどうのとか……正直よくわからない色んな話を聞いた、というか勝手に話し出した)


ミア(こういうのを聞くとボクはいつも「これだからオタクは……」とか言ってた覚えがあるけれど、今日はそんな気にならなかった)


ミア(ボクと歳の変わらない女の子が、これほど真っ直ぐな眼差しで地球の外側の、肉眼では見えないはずのずっと遠くの銀河の……さらにその向こう側を見つめていたからだろうか……)


ミア(やりたいこと、かあ……)

411: 2022/03/23(水) 07:08:01.85 ID:tegdBPJG.net
~基礎工学実験 クラスα(工学部開講 必修)~

千砂都「よろしくね! あ、きみ……確かミアちゃんだよね?」


ミア(実験でペアになった女は、いつぞやのダンス系サークルの体験練習でペアになった女だった。 なんと理学部なのにわざわざ工学部の実験科目を受けているという……酔狂な子だ)


千砂都「数学のさ、幾何やりたくて理学部入ったんだけどね~」


ミア(やばい! 数学科の中でも幾何専攻はド変態中のド変態だから決して近寄るなって誰かが言ってた! 実際ボクの家にもサンプルが一人いる!)


千砂都「でも入ってみたら土木面白そうだなって思ってね、それで転学科するつもりだから工学部の講義も受けてるんだ」


ミア「なるほど」(それなら平気か……建築や土木環境は根強い女子人気があるからね)


千砂都「最近はコンクリートの研究室ずっと見に行ってるよ!」


ミア(やっぱどこか尖ってる気がするな……)

412: 2022/03/23(水) 07:09:19.74 ID:tegdBPJG.net
千砂都「ざっくりとした説明でごめんだけど……それでClausius–Clapeyronの式が導出できるでしょ?」


ミア「ああ……」


千砂都「……またまたざっくりとだけどこれでGibbsの相律の式……F=C-P+2が導けて、さっき作った水の状態図はこれに従ってると……」

千砂都「相は固体と液体の2つだからF=1で……圧力を定めれば融点が一つに定まる、これがレポート課題2の答えかな」

千砂都「二元系の場合はC=2だけど大気圧に固定してるから+2のところが+1になって、F=3-Pで二相共存領域では温度と組成を定めるとてこの法則から……」


ミア「う、うん……」


ミア(最近は学業にやる気が出ず……予習も復習もおろそかで、この実験が何をしたいのかも理解していなかった……理論から実践までほぼ1から10までこの門外漢のはずの女の子に教わりながら作業をしていた。 我ながら恥ずかしい……)


千砂都「相律のWikipediaに書いてあったEulerの多面体定理との関連は……私も文献漁って調べてみたんだけど、よくわかんなかった!」


ミア「確かになんか式似てるよね……」(講義資料だけじゃなくて論文までも自分で調査してるのか……)

413: 2022/03/23(水) 07:10:41.45 ID:tegdBPJG.net
~線形代数(理系教養科目 必修)~

かのん「藝大行くか数学科行くか直前まで迷ってて……こっち来たんだ」


ミア「げ、藝大!?」

ミア(直前まで迷うくらい両方とも高められるなんて……こういう人もいるんだな……ボクにもそんなこと言えるくらい学問と音楽の才能があれば……( ; ; ))


かのん「ちぃちゃんの影響で工学部も気になっててね! 今は音声制御に興味あって勉強してるんだ!」

かのん「いまちぃちゃんは土木の講義の方に潜ってるから私が代返してるってわけ!」

かのん「その代わり私が音楽史や制御の講義潜るときは代わりに出てもらってるんだよね……ズルだけど」アハハ


ミア「そんなことないよ、すごく高い志だよ……」


ミア(他の講義に潜るための代返だなんて……寝坊したりサボったりパチのために代返するボクらとは大違いだ……)

414: 2022/03/23(水) 07:11:54.11 ID:tegdBPJG.net
ミア「う~ん……」


かのん「難しいよねそこ……教えようか?」


ミア「助かるよ……」


ミア(話によると、先の"土木のちーちゃん"とは幼馴染で、小学校から大学の学科まで全て同じらしい……)

ミア(理系科目に全振りのちーちゃん。 対してオールラウンダーのかのん。 いつでもお互いに足りないものを補い合ってここまで来たのだという)


ミア「すごいね……よくわかるね……」


かのん「私も相当躓いたし、いまでも全然よくわかってないよ……でも固有値も行列式も、制御で頻出だからさ」


ミア(わからないのレベルが絶対違う)


ミア(ランジュもボクと同じ学年だったら、こんなふうに競い合って励まし合ったりしたんだろうか……いや無理か、入学して思い知ったけどあいつは頭の出来がボクとはまるで違うからな……)

415: 2022/03/23(水) 07:13:10.35 ID:tegdBPJG.net
~生命科学概論(理系共通・必修)~

可可「可可は工学部デス!」


ミア(なんだろう、お洒落さんなんだけど確かに工学が似合う……ダイジョーブ博士みたいな口調のせいか?)

ミア(同じ工学部機械工学科なんだけど、実験のクラスはボクと違っているからまともに話すのは初めてだ)


ミア「う~ん……この問題、わかる?」

可可「これはデスね………これらのDNA配列から制限酵素が切断するヌクレオチドの配列……いまの場合だとGAATTCデスね、を見つけマス!」

可可「……すると切断されるのがこの2本のDNAだけデスから、この2つが結合し、組み替えが起こりマス!」


ミア「なるほど!」カキカキ


ミア(電子工作やプログラミングを好むこの女の子だけど、生物の知識についても明るい……というか熱意を持って学習している)

416: 2022/03/23(水) 07:14:50.91 ID:tegdBPJG.net
可可「標的配列を持つDNAとプライマーとヌクレオチドとTaqポリメラーゼを混ぜて熱しマスとDNAが乖離して……冷やしマスとプライマーと塩基対を作り、相補鎖が形成され……」

可可「これを繰り返しマスと、標的領域が2^n倍に複製されるのデス!」


ミア「なるほど……」(わからん)


ミア(この子も留学生だから、講義のみならず日本語に英語も勉強しているんだよな……加えてお洒落ファッションもチェックして……なんてキャパシティだ!)


可可「それがpolymerase chain reaction……頭文字を取るとウイルス検査とかに使われマス、あのPCRなのデス!」


ミア「ああ、あのPCRね……」(あの!とか言われても……聞いたこと無いな……)


ミア(生物学なんて入学前にやってなかったからできなくて当たり前! なんて言い訳してた自分が情けない……)

417: 2022/03/23(水) 07:15:58.85 ID:tegdBPJG.net
~虹学教養プロジェクト(教養科目 必修)~

ミア(これは我が虹大でリベラルアーツを名目に設置された謎の総合科目で、あらゆるフィールドのゲストの講演を聞いて感想書いたり、グループワークで趣味や最近読んだ本について発表し合う、という目的も効果も曖昧な授業なのだが……恐ろしいことに全学共通で必修!)


ミア(まあ、毎回のようにテーマから脱線してただのお喋り会となる。 そんなある回で葉月とかいう理学部の女の子が紹介してくれたのが『篁物語』。)


恋「ここ読んでみてください……ふふっ、えOちですよね……」


ミア(初対面のボクにいきなり古典の近親相姦エピを紹介し出して……なんなんだこいつ……)


ミア「……」(えOちだ……)


恋「小学校の頃から国語が好きで……本をよく読んでいましたね」

恋「理学部から文学部の学科へ振り分けできると思ってたんですけど、出来ないみたいで……転学科したいですね……」


ミア(当たり前だろ……こいつは何しに理学部来たんだ?)

418: 2022/03/23(水) 07:17:16.25 ID:tegdBPJG.net
~第一食堂~

ガヤガヤ

かのん「あ、恋ちゃん、ミアちゃん」

千砂都「2人知り合いだったんだ?」


ミア(授業後、食堂でこのスケベなアホ女と猥談していたところ、かのんと土木のちーちゃんが合流してきた。 理学部繋がりのこの3人は既に友人であるようだ)


かのん「春学期の成績どうだった?」

恋「GPAが2を切ってました……」

千砂都「え!? なんで?」

恋「文学部の講義潜ってて……出席点だいぶ引かれちゃいましたし、ふつーに試験も悪かったですね」


ミア(工口本ばっか読んでるからだよ……ちなみにボクは2をなんとか上回った。 英語科目をとー悪化で認定したおかげだ)


恋「みんな賢くて尊敬ですよ、ついていくのが大変です」

419: 2022/03/23(水) 07:18:38.84 ID:tegdBPJG.net
ミア(かのちぃにクゥすみは間違いなくボクよりGPA高いだろうな……)

ミア(だからボクより成績悪いやつがいて安心したよ。 やれやれ葉月クン……理系科目をおろそかにしていたらダメなんだぞ?)


かのん「あの理学部首席の恋ちゃんがねえ……」

千砂都「ねー」


ミア「!?」


ミア(今年の理系の入試の開示では……理学部の誰かがぶっちぎりの得点率を叩き出していて……てか理学部と医学部は二次試験に国語もあるから……)

ミア(医学部を差し置いて文句なしの首席じゃないか……こいつがウチの総代だったのか……)


恋「やめてくださいそんな昔のことを……恥ずかしいです、運が良かったですよ」


千砂都「またまたぁ~」


ミア「……」

ミア(調子乗ってすみませんでした……)

471: 2022/03/27(日) 22:42:54.72 ID:jP5dfc0V.net
13話『留年はしたけれど……?』

472: 2022/03/27(日) 22:43:44.29 ID:jP5dfc0V.net
ランジュ「あの……なんとかなりませんか」


ランジュ「出願の要件は満たしていたはずです……なんなら二次募集でも……」


ランジュ「……」


ランジュ「はい……はい……そうですか」


ランジュ「……」ガチャ


ランジュ「……」

ランジュ「……」


ランジュ「あ"あ"あ"あ"~!!!!!!」ブワッ

473: 2022/03/27(日) 22:44:55.81 ID:jP5dfc0V.net
~部室~

ミア(夏学期の講義が終わり、試験も終わり……怒涛の8月上旬はあっという間に過ぎていった!)


ミア(教員達はもっとてんやわんやだろうな……期末試験やレポートの採点に大学院入試の実施……)


ミア(ボクらも締切ギリギリのレポートや、過ぎた課題の対処に追われるという……まあでも珍しく部室で有益な作業をしている)


「試験あったやつ1つも取れてる気しないんだけど……」

「それな~」

「渋過ぎて澁谷かのんになった……」

「課題出しました?」「放置してる~」

「まだひとつも出してないw」


ランジュ「……」ガチャ


「えっ?」「あれ?」

「ランジュさん?」

474: 2022/03/27(日) 22:46:58.44 ID:jP5dfc0V.net
ランジュ「……」


ミア「珍しい来客、いや帰郷だな……院試はどうなったんだ?」


ミア(普段この部室に顔を出すことのないランジュがいきなり入ってきて……呆然と立っている)

ミア(口をぱっくりと開け、目元はウサギメイクのように赤い……やがて蚊の鳴くような声でぽつりと呟いた……)


ランジュ「……」

ランジュ「私……留年、する……」


「え」

「「ええっ!?」」


ミア(落第が生活の一部となっているこいつらも流石にどよめく。 それもそうだ……GPAが4のランジュがまさか……)


ミア「おいおい……マジか……! 一体何が……!?」


ランジュ「……受けられなかった」


ランジュ「寝坊して……院試受けられなかった……」ボロボロ

475: 2022/03/27(日) 22:47:55.34 ID:jP5dfc0V.net
~~

ランジュ「ここがスクールアイドル同好会ね!」


ランジュ「え? アイドルの動画見るんじゃないの? 若い女の子が腰振って踊ってる動画って……それAVじゃない!」


ランジュ「麻雀楽しいわね!……でもみんな、いいの? 講義出ずに遊んでばっかで……」


ランジュ「え、ええっ! お昼からお酒を!?」


ランジュ「ダメよあなた達! 授業にはちゃんと出ないと!」


ランジュ「ほら侑も!」


ランジュ「……」

ランジュ「そ、そんなんだから単位落とすんじゃないの!?」


ランジュ「……ッ!」

ランジュ「わ、私は……」


ランジュ「……私は4年で大学卒業してやるって言ってんのよ!」

476: 2022/03/27(日) 22:48:56.80 ID:jP5dfc0V.net
~自宅~

ランジュ「……」


ピロン

ランジュ(教授からのメール! 見るのが怖い……)カチッ

ランジュ「……」


「大学院入試を受験できなかったこと、その理由がやむを得ない事情ではなく本人の責に帰すべき事情によること、〇〇先生からも伺いました。 このような知らせを聞くのは、まことに残念です。」

「今後の予定を話し合いましょう。 このメールを確認し次第、すぐ返信して下さい。」


ランジュ(ああ……たった一発で……今までちゃんとやってきたつもりでも……たった一度で"こちら側"へ陥ることもあるのね……)フラフラ


ランジュ(し、しにたい……)


ランジュ「……」

477: 2022/03/27(日) 22:49:28.81 ID:jP5dfc0V.net
ランジュ(……返信がめんどくさい)


ランジュ(いまどうにかしたところで……もう一度院試を受けられるわけじゃないもの……)


ランジュ(力が入らないわ……)


ランジュ「……」

478: 2022/03/27(日) 22:50:21.14 ID:jP5dfc0V.net
~~

「私には無理だよ……大学入ってからわかったよ、私勉強苦手だったんだ」


ランジュ「そんなことないわよ……」

ランジュ「出席して……課題出せば単位来るじゃない……」


「もう期限切れてるもん……」


ランジュ「今からでもきっと受け付けてくれるわよ、メールで送れば……」


「どうしてもやる気が出ないんだよね~……」


ランジュ「本当に留年しちゃうわよ……?」


「危機感もないもん、ここで焦る人だから単位取れるし卒業できるんだろうけどさ」


ランジュ(やさぐれてしまった……どうして……)

479: 2022/03/27(日) 22:51:08.23 ID:jP5dfc0V.net
「やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいとか言うけどさ、あれ逆だよね」


「やらないで失敗した方が言い訳できるもん……できなかったんじゃなくて、私はやらなかっただけだって」


「目標とかもないの。 大学入って何するかとか、なにも考えてきてなかったから」


「わかってるよ、こうしてても何も解決しないってこと。 でも、だめなんだよ」


「こうしてないと耐えられないんだよ」


「ランジュ(ちゃん)には多分わからないんだろうね」


「アドバイスはありがたいけどさ、別にそんなのわかりきってるし、求めてないから……」


ランジュ「……」

480: 2022/03/27(日) 22:52:50.17 ID:jP5dfc0V.net
ランジュ(留年は、珍しいことではないらしい。 虹大でも4年で卒業出来る人は全体の8割で……私の学部でも2~3割近くが留年あるいは中退をする)

ランジュ(高校生の留年率は1パーセント。それと比較すれば、大学生の留年というものは個人の失敗や態度だけに原因があるわけではなく、大学のシステムの側にもこれらを生み出す問題がある、という推論に異論はない……)

ランジュ(ましてやこの子たちは小学校中学校、高校の教育課程で知識を順当に積み上げ、入試科目を高いレベルまで仕上げ、合格点を取ってきた。 周りになんら劣っているわけではなく……むしろやれば出来るはずの子たちであることには間違いないなのだ)


ランジュ(競争社会の価値観を刷り込まれた末に抱いた己の能力への不信感と無力感、学修への自信と興味、アイデンティティの喪失、先行きの見えない未来からの逃避と孤独……やがてそれらは留年という具体的な障害を伴って、より深刻な失調を呼び寄せて……更なる負のスパイラルに陥らせる)

ランジュ(こんな私がやっても無駄だと……こんな私がなれるものなど何も無いと……そうして自己嫌悪は延々と、果てなく続いていく。 ……だからこそ、このスパイラルから抜け出すために、無理にでもやってのけてみせて、その結果から自信を獲得しなければならないのに……)

ランジュ(彼女たちがすべきことは……同士で集まって自分達の無力さを肯定し合うことではないはずなのに……)


ランジュ(……いや、彼女たちの言ったことはきっと正しい。 そこには彼女たちの苦しみと迷いがある。 そして私は、それらを、それらが絡み合って生まれた更なる負い目を……どれ一つ取っても本心から分かってあげられない……ゆえに私が出来ることなど、私が寄り添うことなど……余計なお世話以外の何物でもない……)


ランジュ「そうね……確かに私のお節介だったわね……」

ランジュ「でもね……」

ランジュ「……」


ランジュ「いいえ、なんでもないわ……」

ランジュ(もう、ここへは来られない)

481: 2022/03/27(日) 22:54:23.75 ID:jP5dfc0V.net
~~

ミア「ど、どうするんだ……就活するのか」


エマ「ほ、他の大学の大学院とか……今からでも、探してみたら? 専攻は変わっちゃうかもだけど……秋とか冬にも募集してるとこ、あるはずだよ……?」


ランジュ「……」

ランジュ「親とも話したわ……」

ランジュ「教授とも、話した……」

ランジュ「他大の院も……秋就活も……考えた」


ランジュ「でも……」

ランジュ「でもやっぱり私、ここの院に行きたいの……」


ランジュ「だから留年して……来年もう一度院試受けるの……」ポロポロ


みんな「……」

482: 2022/03/27(日) 22:55:28.48 ID:jP5dfc0V.net
ミア(空気が重い……こいつらのことだからこういうときゲラゲラ笑い飛ばしてくるのかと思ってたけど、そうでもないんだな……)


ランジュ「……」


みんな「……」


ミア(涙を流して語るランジュから視線を外して、みんなはそれぞれ俯いていた……)

ミア(もしかしたら、かつて自分がこうなってしまったときのことを、そのときの気持ちを……思い出しているのかもしれない)


ランジュ「……」グスグス


ミア(それにしてもランジュ……この前まで受験番号が素数なことに喜んでいたり、数学科の院に進学することを、入院!入院するのよ! とか呼んでケラケラ一人でウケてたのに……あの時のランジュの笑顔が思い浮かんできてボクも悲しくなってくるな……ていうかなんで寝坊したんだ?)

483: 2022/03/27(日) 22:56:14.22 ID:jP5dfc0V.net
ランジュ「ひっく……えぐ……」


かすみ「1年空白になっちゃいますけど……なにか活動すればキャリアに傷付きませんって! ほら、短期留学とか……」

しずく「そ、それいいかも! 私もこの機会に劇団に専念してみよっかな~……」


栞子「時間あるなら東大に仮面浪人するとか……」

璃奈「……」ボカッ

栞子「痛っ!」


ランジュ「親に顔向けできないし……なによりこの先が不安で不安で……」


愛「げ、元気だそ?」

歩夢「1年間好きなことできるし……」

菜々「そうですよ……好きな本読み漁って過ごす一年とか、今思えばそれはそれで楽しかったですよ……」

484: 2022/03/27(日) 22:56:45.13 ID:jP5dfc0V.net
彼方「人生長いんだしさ~、一年くらいなんとかなるっしょ……」

果林「ほら、ね? 私たちなんか3留しそうなんだから……それと比べたら一留なんて……ストレートもストレートよ!」


ミア(励ましをかける部員たち……その内容はあまりにもぺらっぺらだ……それもそうだ、だってなんとかなる、というのは慰めというよりは本人たちの願望でしかないし……実際なんとかなっている訳ではない!)


ランジュ「うう……うう……」グスグス

485: 2022/03/27(日) 22:57:44.27 ID:jP5dfc0V.net
ミア(そんな中、重い空気を破ったのはランジュとギスギスしていたあの侑さんだった……)


侑「ランジュ……」


ランジュ「……なによ」


侑「その……私が言えることなんてこれくらいしか無いんだけどさ……」

侑「えっと……ひとつだけ」


みんな「……」


ランジュ「……」


侑「え!? たった4年で大学卒業を!!?」


みんな「!!?」


ランジュ「くぅ~…………!!」

ランジュ「できラぁ!!!」ポロポロ


「「うお……!」」

「「うおおおおおおお!!!!」」

487: 2022/03/27(日) 22:58:56.60 ID:jP5dfc0V.net
ミア「うはははは!!」


璃奈「Welcome to Undergraduate...」ボソッ


しずく「さあさあ、そんなこと飲んで忘れましょ!」


果林「暇になっちゃったんだし、たくさんいろんなとこ行けるじゃない?」

菜々「今だからできること、考えられること、たくさんあるはずです……!」

彼方「遊びまくるかバイトしまくれ!! この一年は天からのプレゼントだぁ!」

栞子「ダブって良かったって思えるくらい楽しんじゃえば勝ちですよ!」


歩夢「辛くなったらいつでも私たちもいるし……ゆっくりやって行こうよ」


エマ「そうそう!ここにはランジュちゃんの他に12人も留年生いるんだから!」


「「がははははは!!」」


ランジュ「うう~っ!!」ポロポロ


かすみ「ちょっとお! 私はまだ留年回避ありますからね!」


愛「無理だろ~w」


ミア「ははは!」

488: 2022/03/27(日) 23:00:01.62 ID:jP5dfc0V.net
ミア(夏学期の講義が終わって、試験も終わって……課題はあるけど、待ちに待ったボクらの夏休み! ランジュは1年夏休みが続くし……)


ミア(サークルではきっとこれからもダラダラグダグダと楽しいことが盛り沢山だ! トキメキが止まらない!!)


ミア「……ん?」

ミア(……ランジュの他に12人だろ? エマさん、果林さん、彼方さん……愛さん、歩夢さん、菜々さん、侑さん……璃奈、しずく、かすみ、栞子……あと1人)


愛「ほらほらハッピアワー! 今ならギリギリ間に合うよ!」


「「うおおおおおおお!!」」


ミア「おい! ボクを勝手に留年にカウントするな!!」


ドタドタドタ…

489: 2022/03/27(日) 23:01:23.43 ID:jP5dfc0V.net
ありがとうございました
この春入学される方は、おめでとうございます

引用元: 【SS】「虹ヶ咲学園大学留年同好会」