1: 2011/10/23(日) 01:04:42.16 ID:ykQw1NUP0
律「昨日ヘッドホンつけてラジオ聴いてて思ったんだよ。ドラムがいいバンドって、それだけでかっこいいんだよなー」

澪「へぇ」

律「普段聴かないジャンル……あ、もちろんバンドサウンドな?とにかくいつもは聴かないような曲聴いてるとさ。なんか違うんだよ」

澪「その言い方じゃ、邦楽のポップスとかか?それはいつも律が聴いてるのとは違うだろ」

律「うん、まぁ。でもなんつーのかな、例えばサビ前の崩し方とかさ、″その発想はなかった!″って驚かされるんだよ。私の引き出しにはないドラムなの、あれ」

澪「うんうん」

律「他にもさー、ハイハットの置き所とか、″そのタイミングで8分二連打かよ!″って……なんか新発見ばっかりでさ」

澪「良かったな、思わぬところで間口が広がったんじゃないか」

律「だなー。なんか、ドラムひとつ違うとサウンドって全然違うんだなって実感したよ。グルーヴ感つくるのってドラムの仕事だよなー」

澪「は?」

4: 2011/10/23(日) 01:12:51.94 ID:ykQw1NUP0
澪「い、いや……いやいや律」

律「逆にいうとさ、ドラムが下手だとバンド全体のサウンドがダメんなっちゃうよな。ボーカルが上手くても、ギターが良くても、ドラムが良くなきゃ上滑り」

澪「え……」

律「そう思うとHTTはいいよなーなんたってこのりっちゃんがドラム叩いてんだから☆」

澪「……」

律「なー、澪?」

澪「……」

律「……澪しゃん?」

澪「……ったぞ」ぼそ

律「?」

澪「……見損なったぞ、律ぅ!!」

律「」びく

6: 2011/10/23(日) 01:16:23.92 ID:ykQw1NUP0
律「な、なんだよぅ澪」

澪「思い上がるな、ばか律っ!お前のドラムがHTTのグルーヴ感をつくってるって?あんなに走るドラムがか?独りよがりなプレーがか?」

律「……ゔ」

澪「それになんだよ、″ボーカルが上手くても、ギターが良くても″って……」

律「……」

澪「ベースはどこにいったんだよ!」

律「……は?」

7: 2011/10/23(日) 01:23:26.15 ID:ykQw1NUP0
律「い、いや……いやいや澪」

澪「私の日頃の苦労をなんだと思ってるんだよ……お前の変なリズムに合わせたり、ギターやボーカルとの音量バランス常に意識して……」

律「え……」

澪「お前、演奏中にソロパート以外で私の音聴いたことあるのか?!」

律「ぐ……それは」

澪「そんなので自分がグルーヴ感作ってるだなんて、やめてくれよ」

律「澪……」

澪「HTTでグルーヴ感つくってるのは私だろ」

律「……はン?」

9: 2011/10/23(日) 01:29:26.93 ID:ykQw1NUP0
澪「律に乱されたリズムのなかでもきっちり裏拍当てて、全体の進行のメリハリつけて。音だって、柔らかい低音をしっかり聴かせるっていうこだわりがあるんだ」ふんす

律「へー、そりゃすごい。……まっ私は聴いてなかったけどなその低音がイイっていうベース」

澪「それはお前の耳がダメなだけだろ!あとなに開き直ってるんだよお前?!」

律「へいへい、悪ぅござんした。……じゃあ澪、お前がグルーヴ感をつくってるっていうなら」

澪「?」

律「他のメンバーに確認とるぜ?いっつもお前のベース聴いてンのかどうか、ってな」

澪「……いいよ、聞けよ」




16: 2011/10/23(日) 01:39:06.18 ID:ykQw1NUP0
澪「なぁ、唯」

唯「んー?どしたの澪ちゃんりっちゃん」

律「唯はさ、澪のベースってどう思う?」

唯「澪ちゃんのベース?かっこいいよねぇ」

澪「唯!わかってくれるか!」

唯「なんか″木!″って感じがしてねぇ」

澪「うんうん……え?」

唯「お渋ーいかんじの色合いがベースっぽくていいよねぇ。ギターは派手だったりお洒落で可愛かったりしていいけど、ベースはなんていうかこうどどーん!とした感じといいますか」

澪「……外見の……話?」

21: 2011/10/23(日) 01:42:33.64 ID:ykQw1NUP0
澪「ぐすっ。唯なんてきらいだ」

律「ハハハ、私は唯と結婚したくなったよ」

澪「やめろばかぁっ!!」

律「おう、なんだよ……いきなり怒るなよ」

澪「ふんだ」

律「はぁ……わけわからん。ほれ、梓ならもうちょいハナシになるだろ。梓んとこ行くぞ」

24: 2011/10/23(日) 01:49:57.67 ID:ykQw1NUP0
律「なー、梓ぁ」

梓「はい」

律「えーっとその、なんだ……澪のベースって、梓的にはどう?」

梓「澪先輩のベースですか。好きですよ。勉強してるなぁっていうか、知識とか尊敬するベースとか、目標に裏打ちされたサウンドって感じがすごい好きです」

澪「あ、梓ぁ……」じわり

律「へ、へー……ちゃんと聴いてんだなぁ……」

梓「あとあれです、力強い感じがしますよね」

澪「……ぇ」

梓「低音の武骨な音も尖っててかっこいいですけど、何より私はスラップのはじけるみたいな音が痛快で好きですよ。澪先輩のベースはゆったり流れる感じというより、パワー押しの迫力が目立つタイプだと思いま……あれ、澪先輩?」

澪「……あずさのばか」

梓「……えっ、えぇっ?!」

25: 2011/10/23(日) 01:56:25.02 ID:ykQw1NUP0
律「ヨーシ梓、帰りにアイスおごってやるよアイス!ところで、私のドラムってどう思う?」

梓「いや寒いのでアイスは要りませんけど……そうですね、まずはリズムキープしっかりしてください」

律「……」

梓「一つ一つの音をもっと大切にしてください。なんとなしにスティックを降り下ろすだけじゃいい音は鳴りませんよ。一つ一つの楽器をちゃんとした音で鳴らすことを意識すれば自然とリズムも……ってあれ律先輩?」

律「あずさのばか」

梓「えっ、えぇっ?!」

26: 2011/10/23(日) 02:05:07.38 ID:ykQw1NUP0
~~~~ほうかご!~~~~

律「えー、本日は練習を休止し、ミーティングを行いたいと思います」

唯「ほぇ、なんでー?」

澪「一度、みんなでそれぞれの音楽性ってやつをはっきりさせとこうと思ってな」

梓「……あの、私のせいですか、そうなんですか」

律「いや梓、お前のせいじゃあないさ。遅かれ早かれ話し合わなきゃいけないことだし、避けては通れない通過点だからな」

紬「私、お茶とお菓子もってくるわね」

澪「いや、いいよ。それじゃいつもみたいにお喋りで終わっちゃうし……ちょっと真剣な話だから」

唯「えー、お菓子ないのー?」

律「……悪いな唯、今日だけ我慢してくれるか」


30: 2011/10/23(日) 02:14:08.41 ID:ykQw1NUP0
律「んじゃ……ずばり単刀直入に聞くぞ。HTTのグルーヴ感をつくってるのは誰だっ?!せーので指させ!せーのっ……!」



律→自分
澪→自分
梓→あぅあぅしてから自分
唯→律
紬→誰も指差さず



34: 2011/10/23(日) 02:21:16.30 ID:ykQw1NUP0
律「よし……じゃ順番に理由を言っていってもらうか」

澪「じゃあ、最初は律からな」

律「わかったよ。……私は、基本的にどのバンドでもドラムこそがサウンドの要だと思ってるんだ。ドラムがダメなら他の演奏がどんなにすごくても音楽として二流……だから私は主張したいんだよ、リズムキープとか、周りの音を聴くよりもまず、自分の音をつくりたいんだ」

律「崩し方も、一つ一つの音の置き所も、こだわってやってる。別に他のみんながこだわってないとか、そういう話じゃない。だけど、私は自分のドラムに対する姿勢には自信がある……だから、HTTのグルーヴ感も、私がつくってると確信してる」

澪「……わかった。次は私か」

36: 2011/10/23(日) 02:29:52.17 ID:ykQw1NUP0
澪「ドラムは静のリズム、ベースは動のリズムをつくるっていってな。ベースにはベースにしかつくれないリズムがあるんだ。
でも、リズム隊としての役割だけじゃなくて、ベースはそこにメロディを載せられる。ソロになれば、ギターみたいに主役にだってなれる。ベースはなんにだってなれるんだ」

澪「私だって、私なりにこだわってベース弾いてるんだよ。ただ音を鳴らすだけじゃない、ただ強弱を、抑揚をつけるだけじゃない……最近はさ、弾いててやっと、自分らしいベースってのが分かった気がするんだ。
技術的な面じゃなくて……もっと根本の、ベース観みたいなものが固まってきたと思うんだ」

澪「だから、私はHTTの音は私が中心、くらいに考えてるよ。私にしか弾けないベース、それを掴みかけてきた私が、HTTをリードして、グルーヴ感をつくってる……と思ってる」

律「ふぅん……そんじゃ次、梓」

39: 2011/10/23(日) 02:37:05.45 ID:ykQw1NUP0
梓「……私は、結局皆さん独りよがりなんだと思います。個人でこだわりがあるのはいいですけど、それをバンド全体の売り物にするのはおかしいですよ。
個人技があるのも、個人技を磨くのも大切だしいいことです。でも、それはそれ、グルーヴ感をつくるのとは違うと思うんです……」

律「……で?梓はなんで自分を指差したんだ?」

梓「迷ったんですけど……バンドを客観ししたときに一番自信あるのが自分のギターだったから……」

律「なんだよそれ、どっちが独りよがりだか」

梓「……!」


43: 2011/10/23(日) 02:45:19.51 ID:ykQw1NUP0
律「ホントに客観視できてるかどあかも怪しいな」

梓「むっ……周りがまったく見えてない人に言われたくないです」

澪「まったくだ」

梓「澪先輩も澪先輩ですよ!」

澪「え」

梓「なんだかんだ言っても、自分の楽器にこだわりが強いってことはそれだけ意固地ってことなんですよ?さっきは自分のベース観、なんて話してましたけど、結局それが独りよがりなんです。
律先輩に″自分はドラムに合わせてる″みたいなこと言ってましたよね、それって技術的な面以外でもそうだと言えますか?ちゃんとドラムのやり方に歩み寄ってるんですか?」

澪「な、なんだよお前……自分のこと棚にあげて……」

47: 2011/10/23(日) 02:48:40.69 ID:ykQw1NUP0
澪「だいたい律が……!」

律「そもそもお前が突っかかって……!」

梓「私の話ちゃんと……!」


唯「……うぅ」

紬「……やめてよ」



紬「……やめてよっ!!」

律澪梓「!!」びく


48: 2011/10/23(日) 02:52:12.89 ID:ykQw1NUP0
紬「みんな思い出してよ……なんでみんなでバンドやってるのか、思い出してよ……」

唯「みんな、さっきから怖いよ……いつもの澪ちゃん、りっちゃん、あずにゃんじゃないよ……」

梓「……」

澪「……」

律「……ごめん。熱くなりすぎた」

澪「……そうだな。少し、冷静になろう」

梓「ごめんなさい、後輩のくせに偉そうにして……」

51: 2011/10/23(日) 02:58:57.40 ID:ykQw1NUP0
紬「……やっぱり私、お茶淹れてくるわね。それまでにみんな……バンドを始めたきっかけ……けいおん部に入ったきっかけ。思い出して」

律「きっかけ、きっかけかぁ……」

澪「私、最初は文芸部に入りたかったんだけど」

梓「え、そうだったんですか?」

律「あー、そうだったっけなあ。でも、軽音部が廃部寸前だって知って、今入れば部長になれると思ったから、私が部員集めるために澪呼んで」

澪「なんだっけ、the whoのライブDVD観たときに約束したんだっけな。いつかバンド組もう、って」

律「そうそう。それでその後、合唱部の見学に来たムギを強引に勧誘したら」

澪「″面白そうだから″って……入部してくれたんだっけな」

54: 2011/10/23(日) 03:03:24.97 ID:ykQw1NUP0
律「面白そう、かぁ。なんか今思えば、ムギらしい理由だよな」

澪「らしい理由っていえば、唯もだろ」

唯「んぇ?」

梓「そういえば、唯先輩がけいおん部に入部したのって……」

唯「えへへ。軽音っていうから、軽い音楽しかやらないと思って……楽そうだからとりあえず入部してみたんだけど」

梓「ぷっ」

澪「な?唯らしい理由だろ」

律「あはは、確かになぁ。でも私達、何を勘違いしたんだか分かんないけど唯をすっげー上手いヤツだと思い込んでて」

澪「唯、最初は謝って帰ろうとしただろ」

唯「えへへ」

56: 2011/10/23(日) 03:06:48.46 ID:ykQw1NUP0
律「でもこっちも部員欲しさに必氏でさ、じゃあ演奏だけでも聴いていってくれないかって」

こと

紬「お茶、 淹れたわ。……ふふ、あのとき唯ちゃん、私達の演奏聴いたあとなんて言ったかおぼえてる?」

唯「うっ」ぎく

澪「別に今更怒らないよ。いいから言ってみな」

唯「あ……″あんまり上手くないですね″って……」

梓「ぷぷっ」

律「ひでーよな、ただの素人がそんな正直に言いやがって」

57: 2011/10/23(日) 03:11:35.73 ID:ykQw1NUP0
唯「でもね」

梓「?」

唯「あの演奏を聴いて、楽しそうだな、私にもできるかなって……ワクワクしたんだ。だから私、けいおん部に入部したんだよ」

梓「楽しそう、だから……」

律「そういえは梓ぁ。私、まだ梓がうちに入部した理由ちゃんと聞いてないなぁ」にや

梓「へっ、えっ?!そ、それはあれですよ!両親が音楽好きで、私も昔からギターやってましたし……」

澪「違う違う。そうじゃなくて、入部の決め手だよ」

紬「音楽やりたいなら、ここじゃなくても出来るものね」

梓「それは……」



梓「楽しそうだったから、です……」

唯「ふふ」

58: 2011/10/23(日) 03:16:24.60 ID:ykQw1NUP0
律「そっか、そうだ……」

澪「私達、」

梓「″楽しい″から……」

唯「うん。楽しいから、けいおん部にいて、HTTやってるんだよね」

紬「……ありがとう、思い出してくれて」

律「こっちこそありがとう、ムギ。おかげで思い出せたよ、何が大切なのかってことを」

澪「初心忘れるべからず、ってやつだな……。こんな単純なことなのに、忘れてたなんて」

梓「楽しくなかったら、音楽やってなかったんだ、私……」


59: 2011/10/23(日) 03:24:35.14 ID:ykQw1NUP0
律「ふふ、ふふふ」

澪「うわなんだ律、気持ち悪いな」

梓「そういう澪先輩もにやけてますよ」

律「あー!ちくしょ、今すっげぇ演奏したい!!なぁみんな、なんかやろうぜ!!ヘタでもなんでもいいよ、なんか一曲やろう!!」

唯「りっちゃん隊員!ギタースタンバイおっけーです!」ふんす

梓「こっちもいけます、チューニングあんまり合ってませんけど」

澪「気にするな、私だって全然合ってない!」

紬「それでもいいわよね、たまには……!」

律「よっしゃあ!じゃあ″ふわふわ時間″、やるぜー!!……ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」

60: 2011/10/23(日) 03:26:32.92 ID:ykQw1NUP0
じゃーん……



律「……ぷっ」

澪「ははっ」

梓「……あはは」

紬「……くす」

唯「……あんまり、上手くないね」

澪「ああ、まったくだ」

律「……でも」

梓「楽しかった」

紬「うん」

64: 2011/10/23(日) 03:33:17.76 ID:ykQw1NUP0
律「……あれっ?そういえば唯」

唯「ん?」

律「さっき、誰がHTTのグルーヴ感をつくってるか指させって言ったとき……なんで私を差したんだ?」

唯「え?だってHTTっていうグループをつくったのはりっちゃんだよね?」

梓「ぷっ」

澪「あ、あははは……」

紬「あらあら、ふふ」

律「くっくっく……」

唯「えー?みんな、なにがそんなに楽しいのー?」




おわり

65: 2011/10/23(日) 03:33:47.47 ID:U1zSgD6e0
おもしろかった乙

66: 2011/10/23(日) 03:35:31.49 ID:p74DJboHP
紬ちゃんの見せ場なしかと思ったけど、ちゃんと役割があって良かった

70: 2011/10/23(日) 03:41:01.12 ID:ykQw1NUP0
見てくれた方はありがとうございました。
楽器はなんにもできませんが、まがりなりにも音楽やっている身です(学生サークルの規模ではありますが
こんな風に真っ正面から衝突することはないでしょうが、バンド組んだときにありがちな問題、みたいなのを気がついたら書いていました
バンドの方向性とかメンバーの意見思想とか考えることばっかりで、お前ら何しに音楽やってんだよって人が周りにけっこういるんだよなぁ

にしても青春しすぎたなんだこれ中学生日記じゃあるまいし……
こんなベッタベタなハナシ書くつもりじゃなかったんですが楽しんでいただけたのなら幸いです。

ではまた

引用元: 律「グルーヴ感つくるのってドラムの仕事だよなー」 澪「は?」