1: 2014/06/27(金) 01:38:02.60 ID:0HOYFfXVo

真「これは、ボクがお父さんから聞いた話なんだけどね」

春香「う、うん」

真「晴れた昼下がり、ある青年が道を歩いていると」

春香「……怖い話?」

真「違うよ、笑い話。……前の方から、赤い洗面器を頭に乗せた男の人が歩いてきたんだ」

あずさ「……」コソコソ
2: 2014/06/27(金) 01:38:33.01 ID:0HOYFfXVo

春香「ふむふむ。それで?」

真「洗面器の中には水が入ってて、男の人はそれをこぼさないようにゆっくり歩いてたんだ」

春香「なんでお水……」

真「青年は勇気を出して、『すいません』って声をかけた」

あずさ「……っ」

律子「あずささーん」

3: 2014/06/27(金) 01:39:43.18 ID:0HOYFfXVo

あずさ「は、はいっ」

律子「ちょっと良いですか? 確認したいことがあって」

あずさ「分かりました」

真「あれ、あずささん。そこに居たんですか?」

あずさ「ええ、休憩をしていて」

春香「お疲れ様です、あずささん!」

4: 2014/06/27(金) 01:40:18.94 ID:0HOYFfXVo

真「お疲れ様でーす!」

あずさ「ありがとう、春香ちゃん、真ちゃん。ところで」

真「えっ?」

律子「あずささーん!」

あずさ「ああ、急がなくちゃ……ごめんなさい、なんでもないわ」

真「は、はい……?」

5: 2014/06/27(金) 01:40:47.72 ID:0HOYFfXVo

律子「OKです。それじゃあ、伊織を迎えに行ってきます」

あずさ「はい、気をつけてくださいね」

律子「ありがとうございます。一緒に来ますか?」

あずさ「え、えっと……いえ、今日は」

律子「ですよね、疲れてるかと思いますし。夜は生放送ですから、よろしくお願いしますね」

あずさ「はい」

7: 2014/06/27(金) 01:41:18.04 ID:0HOYFfXVo

真「――って!」

春香「あはは、なにそれ! すごく面白いっ」

真「でしょでしょ!」

あずさ「……あの、真ちゃん?」

真「あっ、どうしました?」

8: 2014/06/27(金) 01:41:49.99 ID:0HOYFfXVo

あずさ「そのお話、最初から聞かせてもらっても良いかしら」

真「もう、気になってたんですか?」

春香「あずささんも聞いてれば良かったのにー」

あずさ「隣ですごく面白そうなお話をしていたから、気になって」

真「しょうがないなぁ。トクベツですよ?」

9: 2014/06/27(金) 01:42:22.59 ID:0HOYFfXVo

ガチャ

P「真、いるか!」

真「ある晴れた……って、どうしたんですか、プロデューサー?」

P「大変だ、今日は1時から遊園地のステージの仕事が入ってたんだ!」

真「えっ!? もうすぐお昼ですよ!」

P「悪い、完全に俺のミスだ……春香も来てくれ!」

10: 2014/06/27(金) 01:42:55.40 ID:0HOYFfXVo

春香「え、私もですか!?」

P「申し訳ないけど、2人必要なんだ」

春香「分かりました、頑張ります!」

真「ごめんなさい、あずささん。また今度で良いですか?」

あずさ「ええ、頑張ってきてね、ふたりとも」

11: 2014/06/27(金) 01:43:33.85 ID:0HOYFfXVo

真「行ってきます!」

春香「行ってきまーす」

P「あずささん、事務所をよろしくお願いします」

あずさ「はい、気をつけてきてくださいね~」

ガチャン

12: 2014/06/27(金) 01:44:07.76 ID:0HOYFfXVo

あずさ「……洗面器を頭に乗っけた、男の人」

【青年は、勇気を出して男の人に問いかけました】

あずさ「それから先は、どうなるのかしら?」

13: 2014/06/27(金) 01:44:53.81 ID:0HOYFfXVo

あずさ「インターネットで調べても、出てこないわねぇ」

あずさ「ふたりが帰ってくるまで、しばらくかかりそうだし」

ガチャ

小鳥「ただいまでーす」

あずさ「そうだ!」ガタッ

14: 2014/06/27(金) 01:45:30.57 ID:0HOYFfXVo

小鳥「あれ、あずささんだけですか?」

あずさ「はい。おかえりなさい、小鳥さん」

小鳥「ただいまです。トイレットペーパーが安くて、買いすぎちゃいましたよぉ」

あずさ「ところで、小鳥さん」

小鳥「はい?」

15: 2014/06/27(金) 01:46:06.19 ID:0HOYFfXVo

あずさ「赤い洗面器の男の人の話、ってご存知ですか」

小鳥「赤い洗面器……?」

あずさ「真ちゃんが喋っていて」

小鳥「……ああ! 知ってますよ」

あずさ「本当ですか! あの、話してくれませんか」

16: 2014/06/27(金) 01:46:51.80 ID:0HOYFfXVo

小鳥「ええ、分かりました。それにしても珍しいですね」

あずさ「えっ?」

小鳥「あずささんが、笑い話を聞きたがるなんて」

あずさ「やっぱり、笑い話なんですね」

小鳥「やっぱり、って?」

17: 2014/06/27(金) 01:47:29.93 ID:0HOYFfXVo

あずさ「春香ちゃんが大笑いしていたんです。
    それで、私も聞いてみようと思ったら、ふたりとも急なお仕事で」

小鳥「そっか、それでプロデューサーさんがメールを」

あずさ「メール、ですか?」

小鳥「はい。プロデューサーさんからメールをもらったんですけど、
   手がふさがっていたからまだ読めてないんです」

あずさ「お仕事のことかもしれないですね」

18: 2014/06/27(金) 01:48:00.93 ID:0HOYFfXVo

小鳥「まあ、いいや。それじゃあ、お話しますね」

あずさ「はいっ」

小鳥「ある青年が道を歩いていると、
   向こうの方から赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いてきました」

あずさ「うんうん」

19: 2014/06/27(金) 01:48:45.64 ID:0HOYFfXVo

小鳥「なんとその洗面器、水が大量に入っているではありませんか!
   青年は勇気を出して、『あの』と男を呼び止めました」

あずさ「うんうん!」

小鳥「『あの、すみません。どうして貴方は頭に、赤い洗面器を乗せているんですか?』」

あずさ「そ、それでどうなったんですか!」

20: 2014/06/27(金) 01:49:21.45 ID:0HOYFfXVo

小鳥「すると」プルルル

あずさ「あっ……」

小鳥「はい、765プロです。……社長! どうされたんですか?」

あずさ「……」ソワソワ

小鳥「えっ、大変じゃないですか! 分かりました、すぐに連絡します」ガチャン

21: 2014/06/27(金) 01:50:13.08 ID:0HOYFfXVo

あずさ「あの、小鳥さん。どうされたんですか?」

小鳥「社長の話だと、フェアリーのみんなのお仕事が、急にキャンセルになったみたいで」

あずさ「そ、そんな……961プロですか!?」

小鳥「まだ分かりませんけど、ちょっとメールをしてみます」カタカタ

あずさ「分かりました……」

22: 2014/06/27(金) 01:50:43.45 ID:0HOYFfXVo

『星井美希の! シューティング☆スター!』

あずさ「あら、美希ちゃんのラジオの時間ね」

『ラジオネーム、リボン大戦争さんからのお便りなの。
 美希ちゃん、こんにちは。こんな笑い話を知っていますか?』

あずさ「えっ……」

23: 2014/06/27(金) 01:51:14.91 ID:0HOYFfXVo

『うーん、ミキは知らないなぁ。でも、とりあえず読んでみるね』

あずさ「っ!」

『ある男の人が道を歩いていると、目の前に赤い洗面器を頭に乗っけたおじいさんが歩いてきた』

あずさ「間違いないわ、あのお話ね」

『男の人は気になって、おじいさんに尋ねたんだって』

24: 2014/06/27(金) 01:51:50.07 ID:0HOYFfXVo

『すみません、貴方はどうして、赤い洗面器を頭に乗せて歩いているんですか? ってね』

あずさ「それで、それでどうなったの……!?」

『するとおじいさんは、こう答えたんだって。……あはっ、これ面白いの!』

あずさ「どう答えたの、教えてっ、美希ちゃん」

『それは君の……あっ、ここでニュース速報が入ったみたいなの!』

25: 2014/06/27(金) 01:52:33.92 ID:0HOYFfXVo

あずさ「え……?」

『ここで臨時ニュースをお伝えします。アメリカの経済政策……』

あずさ「ど、どうしてオチが聞けないのかしら?」

小鳥「もしもし、765プロの音無と申します。はい、はいお世話になっております……」

26: 2014/06/27(金) 01:53:05.62 ID:0HOYFfXVo

 ――

伊織「何よ、そんなことで悩んでたの?」

あずさ「だって、誰もオチを教えてくれないから……」

伊織「全く。生放送の前に浮かない顔をしてると思ったら」

亜美「あずさお姉ちゃんらしいよね」


27: 2014/06/27(金) 01:53:41.00 ID:0HOYFfXVo

あずさ「ふたりとも、知っているの?」

亜美「亜美は知らないなー」

伊織「知ってるわよ、それ」

あずさ「本当!? 話してもらっても良いかしら?」

伊織「仕方ないわね。モチベーション上げるためなんだからね」

28: 2014/06/27(金) 01:54:15.49 ID:0HOYFfXVo

あずさ「ええ」

亜美「亜美も聞きたい!」

伊織「ある大学生が道を歩いていると、遠くから老人が歩いてきたの」

亜美「ほう」

伊織「その老人は、水が満杯に入った洗面器を頭に乗せて、ゆっくり歩いていたわけ」

29: 2014/06/27(金) 01:54:47.10 ID:0HOYFfXVo

亜美「なんで?」

伊織「だから、そこがジョークのオチなの。ちゃんと聞いてなさい」

亜美「りょーかい!」

伊織「大学生はすごく気になって、老人を呼び止めた」

あずさ「……」

30: 2014/06/27(金) 01:55:16.08 ID:0HOYFfXVo

伊織「『すみません。どうして赤い洗面器を頭に乗せて、歩いているんですか』って聞いたのよ」

亜美「うんうん」

あずさ「それで、どうなったの!?」

伊織「食い付くわね……。老人は指をピンと立てて、こう答えたのよ。『それは君の』」

ガチャッ

AD「竜宮小町さん、スタンバイお願いしまーす」

31: 2014/06/27(金) 01:55:45.72 ID:0HOYFfXVo

伊織「あっ、はーい」

あずさ「もう本番の時間?」

亜美「よーし、頑張ろう!」

あずさ「え、ええ……」

伊織「続きはまたあとでね、あずさ、亜美」

32: 2014/06/27(金) 01:56:36.27 ID:0HOYFfXVo

亜美「気になるけど、しょうがないよね」

あずさ「そ、そうよねぇ……」

伊織「さぁ、新曲『キミ*チャンネル』の初披露よ!」

亜美「765プロ、ファイトっ」

「「「オー!」」」

 ――

33: 2014/06/27(金) 01:57:16.66 ID:0HOYFfXVo

あずさ「ふぅ」

律子「お疲れ様です、あずささん」

あずさ「ありがとうございます……」

律子「……なにかお悩みでもありますか? すごくモヤモヤした表情ですよ」

あずさ「笑い話のオチが聞けなかったんです」

34: 2014/06/27(金) 01:57:44.66 ID:0HOYFfXVo

律子「はい?」

あずさ「赤い洗面器の笑い話、です。真ちゃんも、小鳥さんも、美希ちゃんも、伊織ちゃんも話してくれたのに」

律子「どうしてオチが聞けなかったんです?」

あずさ「ちょうどお仕事が入ったり、電話だったり、ニュース速報で」

律子「あはは、なんですかそれ」

35: 2014/06/27(金) 01:58:27.71 ID:0HOYFfXVo

あずさ「律子さんはご存知ですか、その笑い話?」

律子「ええ、一応知ってますよ」

あずさ「それじゃあ、話していただけたり……?」

律子「え? ああ、良いですよ、分かりました」

あずさ「本当ですか、ありがとうございます!」

36: 2014/06/27(金) 01:58:59.02 ID:0HOYFfXVo

律子「あ、でも確か、プロデューサーがもっと詳しく知っていた気がします」

あずさ「プロデューサーさんが?」

律子「ええ。……すみません、プロデューサー。ちょっと良いですか?」

P「おう、どうした?」

37: 2014/06/27(金) 01:59:28.02 ID:0HOYFfXVo

律子「実は……って、え…………?」

P「ん、なんだよ」

あずさ「あ、あのっ、プロデューサーさん」

P「はい?」

あずさ「どうして……その、頭に赤い洗面器を乗せているんですか?」

 おわり

39: 2014/06/27(金) 02:01:44.19 ID:EmSxBwV1o
乙です

40: 2014/06/27(金) 06:29:58.81 ID:JiAf+YDDo
古畑任三郎でした

41: 2014/06/27(金) 12:47:58.33 ID:JNshRgXAO
なつかしいなぁ

引用元: あずさ「赤い洗面器?」