地丹「ちょっと羽美ちゃん！羽美ちゃん！」ツタタタタタッ


部長「あら地丹くん。どうしたの血相かかえちゃって」

地丹「一週間前、羽美ちゃんが僕の消しゴムを無断で使ったんですよ！買い直すって言ってからもう一週間ですよ一週間！！」キシャー

改蔵「相変わらず人間、ちっちぇえなぁ……」

部長「ちっちゃいわねぇ……」


羽美「そうよ！もうそんなの……」




羽美「『時効』じゃないのよ」




改蔵「ひいぃぃぃっ！」ガクガクガクガクガクガクガクガク

羽美「って……いきなりどうしたのよ改蔵」

改蔵「来る……あいつが来るぞ……」ガクガクガクガクガクガクガクガク

羽美「『あいつ』？」

羽美「なーにアホなこと言ってるんだか改蔵は……」

ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポー

地丹「近所で事件ですかね」

部長「羽美ちゃん、お迎えよ」

羽美「ちょっと部長！サイレン聞こえただけで『お迎え』ってどういう意味ですかっ！」

部長「だって……ねぇ？」

改蔵・地丹「ねぇ」

キキーッ

羽美「ん？」

カツカツカツカツカツカツカツカツカツ

羽美「ん？ん？」

ガラッ！

羽美「ん？ん？ん？ん？」


「名取！名取羽美は居るかァァ！！！！！！」

羽美「え……えええええっ！？」

部長「だから言ったじゃない」

改蔵「来たああああ！！！来てしまったぞ羽美ぃぃぃ！！！！！！」

羽美「な！な！なによ！」

羽美「中学校での一件か……それとも幼稚園の……」ぶつぶつ

地丹「……覚えはあるんだ」

羽美「ちょっとちょっと！あんた、誰なのよ！」

男「時効警察！時効警察だ！」



羽美・地丹「じ、時効警察ぅ？」

改蔵「ひゃああああああっ！！！！！！」
改蔵「ああ！ついに、ついに天才塾行政コース、時効警察官のムカツキくんが来てしまったぁ！！！」

羽美「む、ムカツキくんって……」

部長「名前の割に、男なんだ」

男「『時効』を調べにやってきたぞ！っと、改蔵、久しぶりだなぁ……なあ？」

改蔵「ど……どうも………」ビクビク

部長「確か時効警察って、時効になった事件をほじくり返す話よね」

地丹「まさか羽美ちゃんの過去をほじくり返しに来たとか…」

羽美「あ゛ぁあ゛あ…………？」ギロッ

男「ち、違う！違います！違いますから！そんな怖い顔しないでくださいよ！」

男「私は『時効』かどうかを取り調べる為にやってきたのだ！」

羽美「はぁ？時効もなにも、他人の消しゴム使うくらい、犯罪でもなんでもないじゃない」

男「ですから全ての事象の『時効』が、本当に時効かどうか、取り調べさせていただくのです」

部長「つまり、犯罪だけじゃなくて、生活全般で使われる『時効』の正当性を調べるってことじゃないの」

羽美「な、なんじゃそりゃ！」

改蔵「しかも……おそろしいことに」ガクガクガクガク

改蔵「ムカツキくんに『時効』の正当性が認められなかった場合、ノン時効スタンプをおされ……」

改蔵「一生そのことについて言われ続けるのだ！」ガクガクガクガクガクガクガクガク

改蔵「おかげで僕も、３年前母親に自作のちょっとエOチなライトノベルが見つかったことが時効とみなされず、ことあるごとにその話を出され、こき使われ続けているのです！」

羽美「そ……それは根本的にあんたのとこの母親が悪いって言うか………」

男「と、言うわけで！あなたの『時効』、取り調べさせていただきます！ジーッ

羽美「………」ゴクリ
男「………」ジーッ
羽美「………」ゴクリ
男「………」ジーッ
羽美「…………」ゴクリ
男「………」


ポンッ


『ノン時効』


羽美「ちょ、ちょっとぉ！？」


部長「あーあー……これで羽美ちゃん、消しゴムの件一生地丹くんに言われるわよ」

地丹「返せ！返せ！消しゴム返せ！」キシャー

羽美「いやあああああああっ！！」

男「ちなみに、あなたのメガネを取ったら美男子設定もごんぶと設定もノン時効です」ポンッ

地丹「そ、そんな設定、自分自身だって覚えてないのに！」

男「そうそうアナタの元電脳アイドル設定と内巻き……」

部長「………」ギロッ


男「じ、時効で！」

羽美「ちょっと、なんなのよアイツ！ムカつくっ！！」

地丹「そうですよ！あんまりですよ！」

改蔵「そう、時効があるから時効警察がいる！」

改蔵「いっそ時効さえ、時効さえなければこんな思いしなくていいんだっ！」

部長「……論点、そこなのかしら」

改蔵「そうですよ、犯罪はもちろん、時効なんて言ったって実際時効でもなんでもないケースばっかりなんですよ！」



それ、本当に時効ですか？

女Ａ「もう時効だから話すけど、私の初体験の相手、あなたの上司なのよ」

男Ａ「　」


…それ、本当に『時効』ですか？


女性芸能人「中学校の時に万引きしましたけどもう時効ですよね」


…それ、本当に『時効』ですか？


お笑い芸人「親が生活保護貰ってましたくど売れる前でしたから時効ですよね」


…それ、本当に『時効』ですか？


？？？「隣の国の人、さらっちゃっいましたけど何十年も経つから時効ですよね」


…それ、本当に『時効』ですか？


？？？「戦争のうやむやで他の国の領土奪っちゃいましたけど、時効ですよね」

本当にそれ、『時効』ですか？

・過去の犯罪自慢
・ミュージシャンのお薬
・２４時間テレビのあの一件
・イケメンアナウンサーの変態メール
・アリシアさんの結婚
・「今日はマクロスの歌は歌いませーん」
・放屁
・いいとも
・中学時代の赤裸々なメール
・あの未解決事件
・中国のあの事件
・ロシアのあの事件
・小学館
・ケツ丸出し
・俺をいじめたアイツとアイツとアイツ……


部長「……例によってちょっと暴露になってない？」

羽美「たしかに、許されたと勘違いして、勝手に『時効』って言葉使う人、いそうよね」

改蔵「アムロがララァを間違って殺めてしまった件といい、シャアがハマーンをふってしまった件といい、小説でハサウェイがクェスを撃ってしまった件といい……」

改蔵「何年経っても世の中時効にならない事が多いこと多いこと！」


羽美「あんたはガンダムでしか例えられないんかい」

部長「置いてきぼりになってる人もいるでしょうに」

改蔵「じゃあサンデーつながりで、パトレイバーで例えると南雲隊長の不倫とか……」

部長「さらに置いてきぼりになってる人、増えてると思うんだけど」

改蔵「ククルス・ドアンの作画の件はもう時効ですけど、パトレイバー２の『あの』シーンだけは後藤隊長と南雲隊長の中の人が許しても僕は絶対に許しません！」

部長「そう言えば、あれがきっかけで声優と監督の仲が悪くなったんだっけ。仲直りしたみたいだけど」

羽美「部長まで参加して、どんどん話をズラさないで下さいよ……」

山田「そうそう、それで攻殻の適役の声優が………」

羽美「や、山田さんまでいつの間に……」

改蔵「とにかく！勝手な思い込みによる『時効』なんてたまったもんじゃありませんよ！」

部長「まあ、そうねぇ……確かに、こっちはまだ心の傷が残ってるにも関わらず自己完結されちゃうとね……」

改蔵「時効なんてないほうがいいんだ！いいんだ！」

羽美「でも一概には言えないんじゃない？」

羽美「時効が無さすぎても、他人に優しく出来ないし、許し合うことだって人間大切でしょう。」

部長「確かに、時効って概念自体がなくなれば、変に粘着する人が増えて、ちょっとギスギスしすぎちゃうわよね。」

部長「それに羽美ちゃんのあの件もあの件もあの件も許されなくなっちゃうだろうに」

羽美「え゛っ………」

部長「結局、まあ、問題としては、時効を使う側がいかに自分を客観視できるのかってことと、使われる側の器の大きさなんじゃない」

地丹「うーん……でもその辺りをいちいち考えるのも難しいですよね………」

部長「そんな地丹君にお得なお知らせが」

地丹「えっ！」

部長「『免罪符』。これさえあればどんなことも許されるから、時効なんて考えなくっても済むわよ」


地丹「それはいい！買います！買います！」

地丹(これでもう、下っ端扱いされずに済むぞぉ………)ｸﾞﾌﾌﾌﾌﾌｯ

地丹「免罪符っ！」バーン

男「う、うぬぅ！！」

地丹「符っ！符っ！符っ！」

男「ぐうう……ノン時効は取り消しだ………」

地丹「おおっ！」

地丹「なるほどなるほど！これで僕は、時効なんて気にせずに自由に暮らせるわけですねぇ！」カーッカッカッカッ

改蔵「し、下っ端のクセにズルい！」

羽美「部長、私にも免罪符くださいよ！あの事もあの事もあの事も許されるんでしょう！」

部長「まあ、いいけど、あんまり無闇に持つもんじゃないわよ」

羽美「どういう意味です？」

部長「そのうち分かるわよ」

―――――――

地丹「手始めにスカートめくってやる！めくってやる！女人の肌着をまるだしにしてやる！」

ピラっ！！！


山田さん「キャアアアアアアッ！！！」

しえちゃん「スカートめくるなんて最低！」

地丹「ぐへへへ！これを見ろ！」バーン


山田さん「め………免罪符」

しえちゃん「仕方ないわね……」

地丹「かーっ！かっ！かっ！かっ！かっ！」

『恋人のように親身になってお貸しします』

地丹「お金も借り放題！！！」

ヤクザ「オラオラ返せ！！！！！！」

地丹「免罪符！」バーン

ヤクザ「ぐぅ………」

ヤクザ「すいません……」

地丹「かーっ！かっ！かっ！かっ！かっ！ヤクザが俺に謝ってるよ！」

地丹「謝ってるよ！！！」

【レストラン】

店主「お待たせしました、フルコースです」ゴトッ

地丹「食べ放題！！！！！！もっと運んでこい！！！」

店主「あの……お客様一旦お会計を……」

地丹「あ？払わねーぞ！！！」

店主「く……食い逃げだ！」

地丹「免罪符！」バーン

店主「うぅ………」

地丹「かーっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！かっ！」

地丹「ツイッターで犯罪自慢してやるぞ！してやるぞ！」

地丹「飲酒運転なうっと……」カタカタカタカタ

※実際には飲酒運転はしておりません



[1]名無い・ミゲル [sage] 2012/07/11(水)
免罪符があるなら仕方ないか……

[2]名無い・ミゲル [sage] 2012/07/11(水)
仕方ないな……



免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！免罪符！




地丹「俺は何をやっても許される！歩く時効だ！！！！！！」

ガラッ

地丹「やあやあ、みんな！」


改蔵「………あっ」サーッ

羽美「………お、おはよう」サーッ


地丹「やあやあ！」

山田さん「う、うん……」サーッ

しえちゃん「いこいこっ……」サーッ


地丹「あれ、なんだか皆よそよそしいな………」


地丹「ケッ！しけた奴らめ！」ペッ


部長「………」

地丹「また金を借りに……」

ヤクザ「すいませんお金は貸せません」

地丹「えっ！ちょ、ちょっとまってよ！」

ヤクザ「どうせ貸しても返してくれないでしょ」バタン

地丹「ケッ！別にいい！どうせタダ飯し放題だしね！」


レストラン店主「すいませんご案内できません」

地丹「なんでだよ！空いてるじゃないか！」

レストラン店主「すいません」


地丹「ケッ！こうなったらネットでこの店の悪口書いてやる！！！！！！」カタカタカタカタ


……………



地丹「あれ、なんの反応もない」

地丹「こうなったら…………」バッ


　　　　　　　裸っ！　　　　　　


地丹「愚民共よ！俺の裸をみろ！裸をみろ！裸をみろ！」


男「……………」プイッ

女「……………」プイッ


地丹「なぜだ！なぜだ！裸だぞ！裸だぞ！剥き出しだぞ！！！」



部長「鎌倉時代、徳政令という法律で幕府は武士の借金をチャラにする政策をとったところ、結局誰も武士にお金を貸す人がいなくなって、より武士の生活は貧しくなったそうよ」

地丹「ぶ……部長！」くるっ

地丹「なんとか！なんとかしてくださいよぉ！」


部長「残念ながら免罪符の効果を免罪する免罪符は、この世には存在しないのよ」



地丹「　」サアアアッ






こうして、地丹は誰にも許されなくなった……

浮浪者地丹「………」

小学生「おじさん……どうしてこんな生活してるの？」

浮浪者地丹「うん？そうだなぁ、昔、許されないようなことを散々したからかな……」

浮浪者地丹「でも俺も散々苦労したし……」




浮浪者地丹「もう『時効』かな……って」ふっ



―完―

乙
久米田そろそろ新しいの描けよ

【おまけ】


羽美「部長、アシスタントの声優気取りはもう時効ですかね」

部長「時効も何も、覚えてる人間自体があんまりいないでしょうに」

改蔵「セルフ時効ですね」

これ本人だろ

お付き合いありがとうございました
ちなみにいつもの人ではないです。
あと、く、く、久米田先生では決してありません
ありがとうございました。

おつ