249: 2015/02/10(火) 00:07:23.55 ID:6gryyAFV0
【オマケ編の次回予告】

八幡「YO!やはり俺のヒップホップは間違っている!!」

様々な困難を乗り越え高校を卒業し、数年が立つ
出したCDが売れに売れて、メジャーデビュー寸前まで話が進む。楽しくほのぼのと音楽活動を続ける毎日

その最中、八幡に異変が

※オマケ編は完全に蛇足だけど気が向いたら読んで下さい

256: 2015/02/17(火) 15:53:07.56 ID:MLYh54CH0
八幡(あれから色んな事があった)

八幡(楽しかった体育祭、終わりの悪い修学旅行、泥沼の生徒会選挙…そして奉仕部崩壊の危機)

八幡(正直ラップだけじゃどうにもならない事も沢山あった)

八幡(それでも俺は歌った)

八幡(その後、奉仕部は再生した。だが年明け、俺たちはまた試された)

八幡(三浦からの依頼を聞いて色々と奮起したり)

八幡(マラソン中に、葉山にラップバトルを仕掛けてみたり)

~回想~

八幡「ぜぇぜぇ…YO、YO。イェイ」ダダッ

葉山(は、走りながらラップをし始めた…!!?)ダダッ

~~~~

八幡(その後も色々あった。陽乃さんが、たびたび人の心をかき乱し)

八幡(更に難しい問題に直面して、辛く苦しい時期もあった)

八幡(それでも俺は歌った)

~~~~

八幡(そして様々な困難を乗り越えた俺たちは総武高校を卒業、大学に進学)

八幡(俺と由比ヶ浜は、卒業後は上京しフリーターになる覚悟を決めてたが、二人とも親の説得を受けて渋々と大学へ通う)

八幡(雪ノ下も大学に進学。この時点では共にプロを目指すか否か、決まらず悩んでいた)

八幡(小町は総武高校を卒業後、地元のメイド喫茶でアルバイト。つまりフリーターになる)

八幡(いつも小町に甘い両親だが流石に大反対だった。しかし小町の今まで見た事もない気迫の前に両親も根負けした)

八幡(そして、数年の時が立つ)

257: 2015/02/17(火) 15:56:14.13 ID:MLYh54CH0
【数年後…千葉・駅地下ライブハウス】

客「オオオオオオ!!!ヒューヒュー!」

サブレビXチ「みんな!やっはろー!今日は来てくれてありがとう!」凸

サブレビXチ「次の曲は『ステルス』!」

Mr.ボッチ「カモン、DJリトルタウン…ブリザード」

リトルタウン「イェイ!チェケラ!」

キュワキュワ、ドッドッド、ズンチャズンチャ

ブリザード「……」ススッ

~♪~♪

Mr.ボッチ(リトルタウンが流すリズムカルなトラック、ブリザードの美しいピアノ演奏が会場に響く)

Mr.ボッチ「YO…俺は一人でいるのが好きだ。放っておいてくれ、お前らのお望み通りステルスしてやるよ。俺は消えた存在」

~♪~♪

ド、ドドン、ドドンッド、ドド、キュワキュワ

Mr.ボッチ・サブレビXチ「YO、YO。イッツ、ステルスタイム」

Mr.ボッチ「皆から見えないその存在。姿も形も謎の形態。無視され続けて痛みに慣れたその心は鋼の抗体。誰にも見えないその薄き存在。それでも始めるぜ孤独ショのータイム。俺だけしか存在しない舞台」ミブリテブリ

サブレビXチ「YO、俺はきっと透明人間。俺が見えても周りの反応は冷たく陰険。くそリア充共は俺の因縁。だがその孤独こそ俺の信念。曲げないぜ茨の道をたどるその気持ちは真剣」ミフ ゙リテブリ

Mr.ボッチ・サブレビXチ「ステルス、ステルス!この世界から存在を捨てるっス!これが俺の存在証明!孤独に照らされるスポット照明!確かにある存在だが見えない存在の俺は透明!」

客「オオオオオオ!!」

258: 2015/02/17(火) 15:57:30.53 ID:MLYh54CH0
八幡(奉仕部での活動は終わった)

八幡(共に思い出を作った大切な仲間も、きっと卒業と同時に失うばかりだと思ってた)

八幡(そしていつか、その思い出を振り返って微笑み、失った事を悔やむとばかり思ってた)

八幡(だが44B(フォーシブ)は終わらなかった)

八幡(結論から言おう)

八幡(俺たちはミュージシャンになった)

259: 2015/02/17(火) 15:59:24.26 ID:MLYh54CH0
Mr.ボッチ(まあ色々あったけど、小町の夢を叶えてやれる事ができて良かった)

Mr.ボッチ(良かったんだが…)

~ライブ終了後~

サブレビXチ「みんな今日はありがとう!」

客1「ヒューヒュー!サブレビXチちゃん可愛いよぉぉぉ!!」

サブレビXチ「えへへへ///」

客2「リトルタウンちゃん!最高にキュートだったよ!結婚してくれぇ!!」

Mr.ボッチ「」ブチッ

リトルタウン「ありがとう!でも結婚はお兄ちゃんの許可がないと厳しいかな?」

客全員「wwwww」

客3「ブリザードちゃん!今日も最高にクールでビューティフルだったよぉぉ!!」

ブリザード「……」ノ

Mr.ボッチ(由比ヶ浜は愛想よく大きく手を振り、小町は観客を笑わせ、雪ノ下は黙って手を上げてステージから去る)

サブレビXチ・リトルタウン「みんなありがとう~~!!」ノ

Mr.ボッチ「良いのかよブリザード…サブレビXチとリトルタウンみたいに、もっとファンサービスしてやれよ」

ブリザード「そういう性格でない事くらい知ってるでしょ?アナタこそファンサービスしてきたら?」クスクス

Mr.ボッチ「お前ぜったい、嫌味で言ってるだろ?俺はお前らみたいに人気無いんだよ」

ブリザード「そういえばそうね。リーダーなのに人気が無い物ね。リーダーなのに。もしかして存在感がないのかしら?」

Mr.ボッチ「大事な事だからといって二回言わんでいい。あと分かりきってる事をいちいち再確認しないでくれるか」

客全員「44B最高!またくるからね~!!」

パチパチパチパチパチ

~~~

Mr.ボッチ(夢は叶い、人気グループとなったが…果たして音楽的には評価されてるのか?)

Mr.ボッチ(正直、客たちは全員ラップを聴きにきてるのか怪しい)

Mr.ボッチ(俺が見る限りファンのほとんどが、間違いなくアイドルオタクだ)

Mr.ボッチ(純粋なラップ好きは、観客全体の3割程度に過ぎないだろう)

260: 2015/02/17(火) 16:00:28.52 ID:MLYh54CH0
~ステージ裏~

八幡「俺たちはヒップホップを愛してる…そしてこの会場にいる観客もヒップホップファンなハズなのに…なんだろこの間違った感じ」

雪乃「私は44Bの音楽は好きだけど、ヒップホップは好きじゃないわ」

八幡「……そうでしたね」

ウオオオオオオオ!!!!

雪乃「物凄い歓声ね」

八幡「アイツらまだファンサービスしてるのか…」

~ステージ上~

サブレビXチ「みんな~ありがとう!それっ!それっ!」ナゲキッス


リトルタウン「それそれ~!大サ~ビス!」ナゲキッス

客全員「んほおおおおおお!!!」

クソ客1「サブレビXチちゃん!おっOい触らせてよ!」

クソ客2「脱いじゃえ脱いじゃえ!」

サブレビXチ「え…ちょ!へ、へへ、変な事言わないでよ!もうバカ!」凸

クソ客1、2「wwwww」

~~~

八幡「」ピキピキ

八幡(流石に注意しに行かないとな)クルッ

雪乃「……」パシッ

八幡「何だよ人の肩掴んで…」

雪乃「私も行くわ」

八幡「いや俺が」

雪乃「お願い」

261: 2015/02/17(火) 16:03:21.38 ID:MLYh54CH0
~ステージ上~

客1「あ、ブリザードちゃんとMr.ボッチがまたステージに出てきた」

Mr.ボッチ「……」テクテク

客全員「……」シーン

ブリザード「……」テクテク

客全員「うおおおお!ブリザードちゃん可愛い!!」

Mr.ボッチ「ご、ごほん。本日はご来館どうもありがとうございます…ただマナーのなってない客がいるのは残念ですね」

シーン

Mr.ボッチ(ああ分かってたよ。俺が喋るとこうなる事くらい)

客1「いつも黙ってるMr.ボッチが喋った」

客2「珍しい。つーかトークしてるの初めて見たな」

Mr.ボッチ「サブレビXチはああ見えて清らかな女なので。ウチの大切なメンバーに安易な発言で不快な想いを与えないで下さい。マナーを守った上での楽しいライブ参加を切に願います」

サブレビXチ「ボッチー…///」

客全員(無愛想なくせに無駄に礼儀正しいな)

Mr.ボッチ「あとうちの妹と結婚したいとか言った奴、後で楽屋こい。頃す。許してほしけりゃCD1000枚買って俺達に金を貢げ」凸

Mr.ボッチ「次に余計なことを言ったらテメェらその口を縫い合わすぞ。ファOク」q

Mr.ボッチ「帰る」テクテク

客全員「」

Mr.ボッチ「ほらマイク」ススッ

ブリザード「ええ」パシッ

262: 2015/02/17(火) 16:04:33.30 ID:MLYh54CH0
ブリザード「ごほん。由比ヶ…サブレビXチさんは私の親友よ」

ブリザード「さっきセクハラ発言した人は誰かしら?手を挙げなさい」ギロッ

クソ客1,2「ぅ…は、はい」ビクッ

ブリザード「……」無言の威圧

クソ客1、2「ゴ、ゴメンなさい!」

ブリザード「だ、そうよ?」クルッ

サブレビXチ「うん!許してあげる!」

ブリザード「まあ貴方達はファンであるから私も許してあげるわ。次からは気をつけなさい…彼女は私の親友よ」

サブレビXチ「えへへ、ゆき…じゃなくてブリのん!!」ダキッ

ブリザード「もう…」ナデナデ

客全員「んほおおおおおおお!!百合展開ktkr!!キマシタワー!!」

~ステージ裏~

八幡「……」

八幡「あんのアイドルオタクの豚共が…」

八幡「やはり俺のヒップホップは間違っている」

263: 2015/02/17(火) 16:05:25.79 ID:MLYh54CH0
【夜・宿泊先のホテル。八幡の部屋】

八幡「お、そろそろ時間だぞ」

雪乃「ええ、そうね…ランクインされてるかしら」ピッ

『それでは今週の順位を発表します』

『第20位…44Bのアルバム【ファOクリア充ワールド】』

小町・結衣「やったーー!!ランクインされた!!」

八幡「すげぇぇ…嘘だろ…」

雪乃「……」

結衣「ゆきのん?どうしたの、あんまり嬉しそうじゃないけど」

雪乃「屈辱ね。私たちの努力の結晶が20位、納得いかないわ」

八幡「いやいや、インディーズで20位は凄いぞ」

雪乃「目指すはランキング1位よ」

八幡「……相変わらず負けず嫌いだな」

雪乃「それに、アルバムチャート3位のヒップホップグループ『暴走反徒』…これって」

八幡「ああ、俺が過去に勝負したギャングチームのリーダー…ステージネーム『DQN』。彼が率いるグループ」

八幡「千葉の房総半島とかけたそのグループ名、その名に恥じぬ活躍をしてる。今や不良少年達のカリスマ的存在になってる」

結衣「む~~!!あの人達だけには負けたくない!」

雪乃「次は絶対に負けないアルバムを作るわよ」

264: 2015/02/17(火) 16:06:47.60 ID:MLYh54CH0
八幡(現在インディーズグループとして、初の全国ツアーを開催してる)

八幡(大学に入学してから、少しずつオリジナル曲を作り、デモCDをライブハウス、クラブハウスにて配布)

八幡(その地道な活動が功を奏して、俺たちの評判は少しずつ浸水していった)

八幡(非リア充を思わせるリリック、リア充への恨みを込めた呪詛(じゅそ)を思わせるラップ…)

八幡(その暗い印象に反して、メンバーにはアイドル顔負けの美女3人)

八幡(あらゆる面で、従来のヒップホップグループのイメージと一線を画する俺たちは、いつしか人気グループになっていた)

八幡(大学3年になる頃に、小町がフリーターとなり音楽活動に熱をいれ、俺たちも秋から就活開始がキッカケで、この頃よりプロになる為の本格的な活動を始める)

八幡(そしてインディーズとしての全国ツアーも終わり、いよいメジャーレーベルとの契約も済んだ)

八幡(最も、メジャーレーベルとの契約を結ぶまでは様々な困難があった)

265: 2015/02/17(火) 16:08:33.46 ID:MLYh54CH0
~メジャー契約の交渉の場~

結衣「はぁぁ!?ヒッキーを解雇して、44Bをアイドルグループにする!?」

大手社長「ああ、キミたちには専属のプロデューサーをつける。でも曲のジャンルはヒップホップにしてもらうようにお願いするから心配いらない」

大手社長「あと比企谷君はスタッフでもやってもらうから大丈夫」

八幡「……俺は構わん。小町の夢を叶えるのが俺の目的だ。小町を夢の舞台へとステップアップできるなら喜んで俺は解雇されt」

小町「ダメ!!そんなの小町は絶対許しません!お兄ちゃんと共に音楽をやりたいんです!」

結衣「アイドルは素敵だけど、私たちはラッパーとして活躍したいんです!それとヒッキーを解雇なんて嫌です!」

雪乃「この契約は破談ですね。それでは」ガタッ

大手社長「あ…待っ、待ってくれ!」ガタッ

小町「こんなふざけた内容で契約なんて出来ません!一昨日きやがれです!」

小町「それからプロデューサー役は、この比企谷小町…いやDJリトルタウンですから!!専属プロデューサーなんて要りません!ファOク!!」凸

結衣「ヒッキー無しの44Bなんて嫌です!ファOキュー!!」凸

八幡「お、おい…お前ら…一応ここは交渉の場なんだぞ…」

雪乃「比企谷君をバカにする権利があるのは私たちだけです。こんな下劣極まりない契約内容に同意は出来ません」

~~~~

八幡(その後も、色んなレーベルと交渉しにいくたびに、様々な要望と『比企谷八幡を解雇』との条件が必ず付いてきた)

八幡(メンバーでもない人間から、解雇を言い渡されるのは不愉快だが、俺が抜けることで、44Bの為になるならそれで良い思った。だがメンバーはそれを許さなかった)

八幡(そしてやっとの想いで融通の聞くレーベルと契約を交わし、俺はメンバーと共に頑張ることを決意した)

八幡(それから時が経ち大学を卒業。メジャーデビューの為のファーストアルバムを作成する)

266: 2015/02/17(火) 16:09:21.85 ID:MLYh54CH0
【数ヵ月後・スタジオ】

小町「はーい皆さーん!午後の三時なのでブレイクタイムしましょう!」

雪乃「……」ススッ

八幡(そういうと皆、テーブルを囲むようにイスに座る。雪ノ下は紅茶入りポットを出して、カップに注いでいく)

結衣「ん~!紅茶の香りたまんない!」

八幡「アルバムは9割方は完成したか?」ゴクッ

小町「うん。後はもう一回聴きなおして、気になる点があったら修正して終わり」


八幡(トラックメイキングは小町と雪ノ下が担当して、俺と由比ヶ浜がラップ作り担当)

八幡(俺が前もって作ったリリックと歌を、最終的に由比ヶ浜と話し合い編集していく)

八幡(俺はライブの時よりも、スタジオに篭もって曲作りに励んでる時が一番楽しい)

八幡(そして何よりも)


結衣「あ、クッキー作ってきたよ!」ススッ

雪乃「今日は命日ね」

小町「お兄ちゃん…まだ小町は氏にたくないよ…だから先に食べて?」

八幡「俺に毒見させる気満々かよ」

結衣「みんな酷いし!?」


八幡(何気なく進む、ほのぼのとした空間)

八幡(あの奉仕部の時の空気が今でも継続できている事が、何よりも嬉しかった)

267: 2015/02/17(火) 16:09:59.15 ID:MLYh54CH0
【アルバム完成して数週間後】

八幡「明日から、メジャーに移行してから初の全国ツアーか」

八幡「今日は夕方からラジオ出演もあるしな…俺は出てもあまり意味がないけど」

八幡「本屋に行って新刊でも買ってくるか。明日からはずっと忙しいだろうし」

~~~

ガチャ

八幡「……ん?誰かが家の前に」

折本「よっ」

八幡「お、折本?」

折本「久しぶりじゃん」

八幡「おう。どうした」

折本「お茶しようよ」

八幡「は?俺は忙しいんだ…」テクテク

折本「忙しくなるのは明日からじゃないの?」

八幡「っ!!」

折本「ちょっと付き合ってよ」

268: 2015/02/17(火) 16:12:08.65 ID:MLYh54CH0
【喫茶店】

折本「驚いたよ、アンタが本当にプロのラッパーになってたなんて」ススッ

八幡(そういって折本は俺に音楽雑誌を見せつけてくる。表紙には俺達が載っている)

折本「高校の時に再会した時も、アンタがラッパー化しててマジで笑ったけどさ…」

八幡「それを言いに来たのか?」

折本「まあ何だかんだでアンタ有名人な訳だし?」

八幡「俺は人気ナンバー4なんだけどな」

折本「プッ…それって一番下じゃん、ダサッ!」

八幡「もう帰って良いか?」

折本「あ、待ってよ!」

八幡「んだよ」

折本「……初日は千葉でライブだよね?」

八幡「ああ」

折本「チケットはもう買ってるから」

八幡「お前…」

折本「CD2枚とも買ったよ。インディーズのと、メジャーになってからの」

折本「いちおう、応援してるから」

八幡「そうか」

~~~~

八幡「んじゃあな」

折本「あ、待って」

八幡「?」

折本「……」

折本「その…中学時代は、ごめん」

八幡「……は?」

折本「アンタが書いた歌詞を見たけどさ、まさかあんな苦しんでたとは思わなくて」

八幡「………あのな、俺は別に中学時代の奴らに謝罪をして欲しくてあんなリリックを書いたわけじゃねぇよ」

八幡「ただ応援してくれてる事は感謝してる」

折本「そっか」

八幡「お前の事を歌った曲は多々あるけど、止めて欲しいならライブで歌うの止めても良いぞ?」

折本「別に良いよ。本名が晒されてる訳じゃないし…まあ何、あのトラウマの日々は曲を作る為の、私からのプレゼントって事で」

八幡「……嫌なプレゼントだな」

269: 2015/02/17(火) 16:12:47.80 ID:MLYh54CH0
折本「所でさ」

八幡「ん?」

折本「結局アンタ、誰と付き合ってるの?」

八幡「いや、おれは彼女いないけど」

折本「じゃあ、あの二人のどっちが好きなの?」

八幡「っ」ビクッ

八幡「俺は…」

八幡「…………」

八幡「帰る」テクテク

折本「あ!ちょっ!待ってよ!」

八幡「そういう話は…苦手だから」

折本「何それ、もう!」

八幡(……)

――ヒッキー!

――比企谷君

八幡「……はぁぁ」

270: 2015/02/17(火) 16:14:08.06 ID:MLYh54CH0
八幡(折本の気持ちは嬉しかった)

八幡(謝ってくれた事も、俺たちを応援してくれる事も)

八幡(おれは高校の頃、ギャングチームのリーダーとラップバトルをした)

八幡(俺は勝利し、そのギャングチーム一同から賞賛された。初めてあんな大人数から認められた)

八幡(でも嬉しくなかった。大して俺の事知らないくせに、さも全てを知ったような顔して賞賛されても嬉しくなかったからだ)

八幡(でも折本は違う。俺の惨めな部分も相当知っている。知った上で認めてくれた。望んではいなかったが謝ってくれた。だから嬉しかった)

八幡(もっとも折本の場合、高校の時も多少関る事もあって、既にあの時から多少なり不快な思いは消えていたが…それでも嬉しかった)

271: 2015/02/17(火) 16:17:09.88 ID:MLYh54CH0
【午後・ラジオ局】

Mr.ボッチ(午後からのラジオ生放送。俺たちはこれで3回目のラジオ出演の訳だが)

Mr.ボッチ(俺はこれまで一度として、司会者から質問されたことない)

Mr.ボッチ(まあ目立つのイヤだから良いけど、あまりに露骨に無視してくるものだから、これはこれで傷つく…)

司会「今日は44Bの皆さんです!」

サブレビXチ・リトルタウン「やっはろーー!!」

ブリザード「どうも」

Mr.ボッチ「うっす」

~~~

司会「メジャーデビューおめでとうございます!」

リトルタウン「えへへへ、どうもどうも」

司会「明日からの全国ツアー期待してます」

サブレビXチ「いやー照れちゃうな~あははは」

Mr.ボッチ(質問に答えるのは大体、小町か由比ヶ浜。雪ノ下は質問されれば答える)

Mr.ボッチ(俺は隅っこでよそ見してる事がデフォ)

~~~

司会「えーここで質問ですが、リトルタウンさん以外の3人は同級生と聞いてますが」

サブレビXチ「はいそうです!」

ブリザード「はい」

Mr.ボッチ「そっすね」

司会「なるほど、それでサブレビXチさんとブリザードさんは昔から友人だったんですか?」

Mr.ボッチ(そして露骨に俺を無視するという流れ。さすがステルスヒッキー)

サブレビXチ「あたしとボッチーとブリのんは部活が一緒で…それからは、ブリのんとはずっと親友です!」ダキッ

ブリザード「ええ、彼女とは親友です」ナデナデ

Mr.ボッチ(はいはいキマシタキマシタ。コイツらラジオ出演のたびに惚気てるな)

サブレビXチ「……でも同時にライバルでもあるかな。ね、ブリのん?」

Mr.ボッチ「ん??」

ブリザード「ええ、私も彼女に負けられない闘いがあるわ」

サブレビXチ・ブリザード「……」チラッ

Mr.ボッチ(な、何で俺を見るんですかね…)フイッ

272: 2015/02/17(火) 16:18:34.24 ID:MLYh54CH0
司会「それで…失礼ですが。私はずっとリーダーが、リトルタウンさんかサブレビXチさんだと思ってたんですが…」

Mr.ボッチ(おいおい司会者、そういうのは前もって調べとけっつーの!)

リトルタウン「ああウチの兄、名ばかりリーダーなんで。実質リーダーの役目を担ってるのはブリザードさんで、リトルタウンがプロデューサー的な立ち位置にいます!」

Mr.ボッチ(妹よ、人にリーダー役職を押し付けておいてよく言うぜ)

Mr.ボッチ(あと歌やリリック作ってるのは俺だからな!)

司会「ふむ、そんな名ばかりリーダー・Mr.ボッチさんの事をメンバーの皆さんはどう思ってますか?」

Mr.ボッチ(この司会者、俺に喧嘩売ってんのか?つーか未だに質問の一つもせずに名ばかりリーダー呼ばわりして来やがったし)ピキッ

Mr.ボッチ(結局、ミューシャンになっても世間からの俺の扱いは対して変わらんな)

リトルタウン「う~ん。重度の中二病で、その癖に変な所で高二病で…そうだ。二人とも、兄の事どうおもいます?」

サブレビXチ「捻くれてて、いつも屁理屈ばかりいうし…あと独り言多いし、笑い方キモいし」

ブリザード「そうね。あと根性が腐ってて、目が腐ってて…あと頭がおかしい」

Mr.ボッチ「お前ら少しは思いやりの心を持てよ、結構傷つくんですが」

ブリザード「しょうがないじゃないボッチ君、事実なのだから」

サブレビXチ「現実を受け入れるのだボッチー!」

Mr.ボッチ「現実は常に非常だ」

司会(このリーダーはよっぽど人望がないんだな…)ジロッ

司会「でもそんな残念なリーダーと共になぜ音楽活動をやっているのですか?」

Mr.ボッチ(いちいち一言多いんだよこの司会者は!絶対喧嘩売ってるだろ)

273: 2015/02/17(火) 16:19:31.20 ID:MLYh54CH0
ブリザード・サブレビXチ「……」ガタッ

リトルタウン「お、このパターンは」ニヤニヤ

Mr.ボッチ「……?」

司会「ん?」

ブリザード・サブレビXチ「……」テクテク

ブリザード「失礼するわボッチ君」ストッ

サブレビXチ「ちょっと狭くなるけど我慢してね」ストッ

Mr.ボッチ「なんだよ二人とも、いきなり隣に座ってきて」

ブリザード「司会者さん…私は学生時代、ボッチ君に救われてきたんです」

Mr.ボッチ「!?」

Mr.ボッチ(ふと雪ノ下の方に向くと、頬を赤らめながらコチラに視線を向ける)

司会「は?救われた?」

ブリザード「ええ、何度も…」

ポンッ

Mr.ボッチ「ちょ、おい!?人の肩に頭を預けるな!……良い匂い」

ブリザード「私が苦しかった時、いつも彼は私も救ってくれた」

ブリザード「彼を尊敬してます…私が出来なかったことを彼はやり遂げてしまう」

ブリザード「だからボッチ君に、いや比企谷君に私の命を預け、人生捧げようと…胸に決めました」

司会「」

Mr.ボッチ(おい。人生を捧げるって何?その言葉は誤解を生むぞ。よ、よし、まず落ち着け。コレはあれだ。雪ノ下がつい失言してしまったパターンだ。特に深い意味はない…はず)

274: 2015/02/17(火) 16:21:01.34 ID:MLYh54CH0
サブレビXチ「あ、あたしも!ボッチーに何度も助けられて来ました!」

ゴン!

Mr.ボッチ「痛っ!!ちょ、おま何をする!!」

Mr.ボッチ(由比ヶ浜も俺の肩に頭を預けてきたが、勢いを付けすぎて俺のアゴに由比ヶ浜の頭部が激突する)

サブレビXチ「あ、ごめんボッチー!///」

Mr.ボッチ「痛ぇよ!あとお前も自分の頭を、俺の肩に乗っけてくるな!……い、良い匂い」

サブレビXチ「やだ!」

サビレビXチ「司会者さん!あたしはボッチーから高校生のときにラップを教わりました!」

サブレビXチ「それから…ブリのんとボッチーと多くの思い出を作ってきました!」

サブレビXチ「リトルタウンちゃんの為に、プロを目指したボッチーの役に立ちたかった!それがあたしのプロを目指した一番の理由です!」

サブレビXチ「ね!ボッチー!」

Mr.ボッチ「そんなことより二人ともいい加減、俺の肩から頭を離してくれませんかねぇ…?」ドキドキ

サブレビXチ「やーだ!///」スリスリ

ブリザード「ごめんなさい、それは無理」スリスリ

Mr.ボッチ(……つーか、いつから俺にこんなスキンシップ取るようになった?高校まではこんなんじゃなかったのに)ドキドキ

リトルタウン「よーし!リトルタウンも混ざっちゃっおう!背後からハグしちゃう!」ダキッ

Mr.ボッチ「妹よ愛してる」


司会(なにこのグループ)

275: 2015/02/17(火) 16:22:49.16 ID:MLYh54CH0
【一週間後・空港】

八幡(千葉で2件、都内で4件ライブを終え、今日は北海道へと移動する為に空港に来ている)

八幡「そういえばツアー中の世話になるスタッフの連絡先を知らんな。もしもの時の為に知っておかねば」

八幡「よし、まずは目の前にいる二人の女性スタッフさんに……あの」キョドッ

女スタッフ1・2「っ!?」ビクッ

八幡(何この反応。あれ?トラウマが蘇る。デジャブ?)

八幡「あの…ツアー中は世話になるので、連絡先を」

女スタッフ1「えー…でも他のメンバー方々の連絡先は知ってるんで、別に交換する必要ないじゃないですか」

八幡「えっと…いちおう俺、リーダーなんで」キョドッ

女スタッフ1「……はい。連絡先です」ススッ

八幡(なにその面倒くさそうな顔)ススッ

女スタッフ2「あ、じゃあ私のは交換する必要ないですよね?それじゃ」

八幡(どうしてそういう流れになる…もう良いよ連絡先など入らん)

~~~~~

ファン全員「ウオオオオオオオ!!!きたきた!!!」

結衣「あ、ファンの皆だ。やっはろー!」凸

小町「やっはろー!」凸

ファン全員「やっはろーー!!!」凸凸

結衣「ほら、ゆきのんも一緒に挨拶しよ?」

雪乃「え…?ご、ごほん…ご、御機嫌よう」ノ

ファン全員「んほおおおお!!ブリザードちゃん今日も綺麗だよ!!」

雪乃「は、はぁ」

小町「ほらお兄ちゃんも挨拶!」

八幡「え、おう」

八幡(とりあえずラッパーらしく、ジェスチャーしとくか)

八幡「YO」ミブリテブリ

ファン全員「……」ギロッ

八幡「え」

八幡(おい、なにこの反応の差は。てか睨まれてる?)

ファン1「アイツさ、先週のラジオで女メンバー全員とイチャイチャしてたよな」ヒソヒソ

ファン2「マジありえねぇ、氏ね」ヒソヒソ

ファン3「何がミスターボッチだよ、全然ボッチじゃねぇし」ヒソヒソ

八幡「ぇぇー……」

276: 2015/02/17(火) 16:24:25.40 ID:MLYh54CH0
小町「ごめんお兄ちゃん!まだ時間あるから、ファンの人達と即席サイン会してくるから」

八幡「おう」

雪乃「あら、貴方はいかないの?」

八幡「サイン会に参加したら俺がどんな目に合うか、分かってんだろ。無駄な質問しないでくれ」

雪乃「あらわからないわよ?貴方を慕ってくれる虫に出会えるかもしれないわ」

八幡「無視されるって言いたいんだろ。虫だけに」

~~~

八幡「……出発時間まだかな」

八幡「ん?」

DQN「おう」

不良1~3「久しぶり」

ビXチ全員「知り合い?」

DQN「ああライバル」

ビXチ全員「ふーん」

八幡(見るからに男好きっぽそうなビXチ集団と、メンバーを引き連れて現れるDQN)

八幡「相変わらずモテモテのようで」

DQN「まあな。んでお前のメンバーは?」

八幡「あっち」

DQN「凄い人気だな」

八幡「アンタだって人気じゃないっスか。異性からもファンからも」

DQN「お前だってプロになったんだから、モテて女には困らないだろ?」

八幡「俺に彼女はいないし、アンタみたいに女を侍らせてる事すらしてませんよ」

277: 2015/02/17(火) 16:28:06.46 ID:MLYh54CH0
【機内】

八幡「プロのミュージシャンになれば女にモテるだと?そんなの幻想だ」

八幡「……別に良いんだ。俺はそこらの下半身脳丸出しの連中と違って、妹の夢追いの手伝いしてるだけだ」

雪乃「なにをブツブツと独り言いってるの?」

結衣「ヒッキー!先に機内向かわないでよ!」

八幡「お前らがサイン会なんてするからだろ」

雪乃「……失礼するわ」

結衣「よっと」

八幡(二人が間を挟むように、俺の右隣に雪ノ下が、左隣に由比ヶ浜が座る)

小町「小町は後ろにいるからね!」

八幡「はいはい」

結衣「……」ジーッ

八幡「んだよジロジロ見て」

結衣「ヒッキーはさ、やっぱりミュージシャンになってもヒッキーはヒッキーだね」

雪乃「そうね。いつか誰かが言ってたけど、人間そうそう変わらない物ね」

八幡「るっせぇな、ほっとけ」

ギュッ

八幡「……っ」ドキッ

八幡(俺の両手から、人肌の体温を感じる)

八幡(手のほうへ目をやると、俺の両手の甲に、手が置かれていた)

結衣「私は…ヒッキーの事見捨てないからね///」ギュッ

雪乃「貴方を理解できる人間なんて、そうそういない物ね…でも私は理解してるわ、比企谷くん」ギュッ

ポンッ

八幡「っ」ドキッ

八幡(今度は二人が俺の肩に、頭を預けてくる…先週のラジオ放送の時の様に)

結衣「ずっと一緒だよヒッキー…//」ドキドキ

雪乃「あまりに哀れだから、側にいてあげるわ比企谷くん」スリスリ

八幡「ぅ……」ドキドキ

小町「……」ニヤニヤ

278: 2015/02/17(火) 16:28:58.25 ID:MLYh54CH0
八幡(この時の俺は全く気付いてなかった)

八幡(折本の謝罪が皮切りに…俺の中の『ある物』に小さなほころびが、何かの崩壊が始まっていたことに)

八幡(メンバーとのほのぼのとした音楽活動の中で、その何かが崩壊を加速させていく)

288: 2015/02/25(水) 02:19:52.85 ID:+E/XSL0+0
【札幌ライブ終了後・打ち上げ飲み会】

小町・結衣「お疲れ様でーす!かんぱーい!」

全スタッフ「かんぱーい!」

女スタッフ1「ぷはぁ…ビール上手い」

女スタッフ2「あれ?何で今日はウーロン茶なんですか?」

小町「雪乃さんから今日はお酒禁止令が出てまして…はぁぁ、ライブ後にウーロン茶って何か微妙…」ゴクゴク

結衣「ゆきの~ん、お酒飲みたいよ~」ゴクゴク

雪乃「ダメよ。ここ3日間は泥酔状態だったじゃない。毎日あんな調子じゃ体に毒よ」

八幡「体に悪いって人間いつかは氏ぬんだから、いちいちそんな事気にして禁酒してられるかよ…」

八幡「あーあ、カルーアミルク飲みたい」

雪乃「そうね、比企谷君は元々氏んでるからお酒をいくら飲んでも平気かもね」

八幡「遠まわしに俺をゾンビって言うの止めてくれない?」

雪乃「ゾンビと言えどメンバーなのだから、グループ内の規律は守ってもらうわよ。ゾンビ谷くん」

八幡「はいはい…はぁぁ、お酒飲みたい」

雪乃「……我慢して、アナタには長生きして欲しいの」

ポンッ

八幡「っ」ドキッ

雪乃「フフ」ウットリ

八幡「おい…俺の肩に頭を預けるな」ドキドキ

全スタッフ「」

女スタッフ1「雪ノ下さんってよく比企谷さんの悪口言うけど、いつも必ず比企谷さんの隣にいるよね…まさか…」ヒソヒソ

小町「ええ、察しの通りです」ニヤニヤ

女スタッフ2(あんな凄い美人なのに…何であんなネクラそうな人を)

女スタッフ1(確かに…)

結衣「……むぅ~~~っ!」ガタッ

結衣「あのスイマセン、失礼します!」ススッ

八幡(由比ヶ浜が小走りで、俺の隣にいるスタッフを押しのけて強引に割り込んでくる)

結衣「ヒッキー!!アタシも!!」ピタッ

八幡「お前も止めろよ…早く元の席に戻れ」ドキッ

結衣「いや!」

八幡「……っ」ドキドキ

女スタッフ1・2「」

小町「二人とも兄に救われて、その人柄に惚れ込んでるんですよ」ニヤニヤ

小町「ただあれだけスキンシップして、未だに勝負を決する決定的な事をしていないんですよね…」

289: 2015/02/25(水) 02:21:03.92 ID:+E/XSL0+0
八幡(その後も全国各地を回った)

八幡(メンバーと共にほのぼのと、充実した音楽活動を行った)

八幡(……充実?あれ?この単語を使うと何故か不愉快な気持ちになるんだが何故だ。まあいいや)

【秋田ライブ終了後】

サブレビXチ「みんな今日もありがとう!!またね~!」凸

客全員「うおおおおおお!!!」

~~

結衣「お疲れみんな!!」

小町・雪乃「お疲れさま」

八幡「お疲れ」

結衣「……」ジーッ

八幡「ん?どうした」

結衣「あの、ヒッキーさ」

八幡「なんだよ」

結衣「歌い方少し変わった?」

八幡「……は?」ポカーン

雪乃「そういえば少しだけ違う感じがしたわね」

八幡「そ、そうか?」

結衣「上手くは言えないけど、いつもと雰囲気が違う感じがしたよ」

290: 2015/02/25(水) 02:22:39.95 ID:+E/XSL0+0
【とある大会場】

八幡(今日はヒップホップイベントに参加)

八幡(多くの有名ラッパーたちがこの会場に集結している)

司会者「イェェ!盛り上がっているか!」

客全員「オオオオオオオ!!!」

八幡「久しぶりのフリースタイルだな」

結衣「決勝で会おうねヒッキー!」

八幡「おう。できたらな」

雪乃「決勝までいくのはこの私よ」

八幡「……とりあえず雪ノ下はあれだ、体力を決勝まで温存しとけ」

小町「小町はDJバトルの方に出るからラップバトルは参加しないけど、見守ってるね!」

八幡「おう、精一杯楽しんでくる」ミブリテブリ

小町・雪乃・結衣「??」

八幡「何だよ…そんな不思議そうな顔して」

小町「いや…なんでもない」

雪乃・結衣「……」

~~~

司会者「続いては…44Bメンバー!MC!ミスターボッチ!」

客全員「オオオオオ!!」

Mr.ボッチ「っ!?」ビクッ

Mr.ボッチ(何だ何だ!?いつもより俺のファンが多い!?)

小町「そっか。今日はヒップホップイベントで、コアなラップファンが多いんだよね」

結衣「え、いつものお客さんって、ラップファンじゃないの!?」

雪乃「どちらかと言うと見てると、ラップファンよりもアイドル好きな人の方が多いわね」

Mr.ボッチ(あんま客の声援には慣れてないんだよな…落ち着かん…)

291: 2015/02/25(水) 02:24:07.62 ID:+E/XSL0+0
~数分後~

司会者「えー…集計結果…」

司会者「勝者!Mr.ボッチ!!」

客全員「オオオオオオオオオ!!!」

客全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

Mr.ボッチ「っ」ビクッ

Mr.ボッチ(や、やっぱ慣れねぇな…)

ラッパー「負けたよ、Mr.ボッチ握手してくれ」アクシュ

Mr.ボッチ「おう」アクシュ

司会者「二人に拍手!!」

客全員「オオオオオオオ!!ヒューヒュー!!」

パチパチパチパチ

Mr.ボッチ「あー楽しかった…フリースタイルは良い物だ」

~~~

八幡(その後も奮闘するも、俺はベスト4で終わった)

結衣「あ~あ、アタシはベスト8で終わっちゃった」

雪乃「同じくベスト8…なぜかしら、徹底的に叩いたハズなのに」

八幡「たしかに叩き方は凄いけど、おまえのフロウはいちいちエレガント過ぎるんだよ…歌い方がお上品っていうか…」

雪乃「そういうアナタも随分、攻め方が変わったわよね」

結衣「あ、ゆきのんも思った?」

八幡「……?どういう意味だ。前もそんな事言ってたけど」

雪乃「うーん…どう表現すればいいのかしらね」

結衣「うん、ただ凄く楽しそうっての伝わってたよ」

雪乃「そうね。悪くは無かったわ」

八幡(……なら問題ないか)

292: 2015/02/25(水) 02:25:35.87 ID:+E/XSL0+0
~イベント終了後~

八幡「今日はなかなか充実した一日だった」

八幡「……しかし充実って単語使うとなぜこんなにイライラするんだ」ピキッ

DQN「よお」

八幡「あ、本日のチャンピオンじゃないっすか」

DQN「惜しかったな、もう少しで決勝で闘えたのに」

八幡「ま、世の中そうそう上手くはいきませんよ」

DQN「……でもまあ、いまのお前じゃ俺には勝てん」

八幡「でしょうね、アンタはいまや日本で最強のラッパーと呼ばれてるし」

DQN「いやそうじゃない。お前、歌い方が変わったよな」

八幡「メンバーにもそれ言われたんですが…」

DQN「なんつーか…すげぇ楽しそうには歌ってる。リズムの取り方も歌い方も昔より格段にレベルアップしてる。それは良いんだ」

DQN「ただ、気迫が減ったよな」

八幡「え」

DQN「俺と駅地下でラップバトルした時は、今と比べてラップスキルは未熟だったが、その気迫は凄かったぞ?」

DQN「いまはスキルアップはしてるけど、勢いが減った」

八幡「……」

DQN「でもまあ、ラッパーとしての実力は一流クラスだと思ってる」

DQN「あんま気を落とすな」

八幡「……」

八幡(気迫が減った…か)

293: 2015/02/25(水) 02:26:45.97 ID:+E/XSL0+0
【ある日、宿泊先ホテル・八幡の部屋】

八幡(打ち上げ終了後、俺と雪ノ下で二次会的な晩酌を行っている)

八幡・雪乃「……」ゴクゴク

八幡・雪乃「……」

八幡(ツアー中は、3日に1回は2人で晩酌をしていた)

八幡(社交的な性格の、小町と由比ヶ浜はスタッフたちと2次会、3次会は当たり前に参加するが、俺たちは1次会で帰ってしまう)

八幡(そんなある時、雪ノ下からの誘いでパンさんDVDを寝る前に二人で鑑賞した事が、晩酌を始めるキッカケになった)

八幡・雪乃「……」

八幡(特に会話も無く淡々と酒を飲む。奉仕部で2人きりだった時の様に静かに過ごす)

雪乃「……」

ギュッ

八幡「ど、どうした手を握ってきて」ドキッ

雪乃「……何となく」カァァ

八幡「そ、そうか」

雪乃「今日もパンさん鑑賞会に付き合ってくれて感謝してるわ」

八幡「ああ」

雪乃「……比企谷くん、アナタ変わった?」

八幡「歌い方の事か?」

雪乃「声質が変わったわけでもないのに…」

雪乃「無意識に歌い方が変わると言う事は、何か心に変化があったとしか思えない」

八幡「心に変化ね…」

294: 2015/02/25(水) 02:29:05.66 ID:+E/XSL0+0
八幡「……つーかお前も変わっただろ。いや一番変わったろ4人の中で。色々と」

雪乃「フフ、そうね。初めて会った頃の私ならアナタに触れたいなんて思わなかったもの」

八幡「だろうな。割と本気で軽蔑してたし」

雪乃「でも、いまはそんな事ない」ギュッ

八幡(その白い手は綺麗な細い指で、俺の指と絡め、俺をしっかりと見つめる)

雪乃「私達メンバーの関係も…変わるのかしら」

八幡「いつかは変わるかもな…どんな形かは知らんが」

八幡・雪乃「……」

雪乃「比企谷くん」ドキドキ

八幡「雪ノ下」ドキドキ

コンコン

八幡「ん?誰だこんな夜中に?」ムクッ

八幡「はい」ガチャッ

結衣「やっはろー!」

八幡「……あれ?二次会にいったんじゃ」

結衣「小町ちゃんがいきなり『インスピレーションが閃きました!』って言い始めて、早くヒッキーの部屋に行けって言われて…」

八幡「アイツ何を言って…」

結衣「あ、あれ、ゆきのん!?」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

結衣・雪乃「……」

結衣「ヒッキー」

八幡「お、おう」

結衣「あたしも晩酌付き合う!良いよね?」

八幡「……」チラッ

雪乃「ええ、構わないわ」ニコッ

八幡(雪ノ下も一瞬、呆気に取られた表情を浮かべるも、笑顔で由比ヶ浜を引き入れる)

~~~

結衣「ほら、ゆきのん。ワインついであげる!」

雪乃「ありがとう」ニコッ

八幡「……」

八幡(俺たちはきっと、しばらくは3人…いや4人だな)

八幡(この日以降、3日に一辺の晩酌会は2人から3人で行われる事となる)

295: 2015/02/25(水) 02:31:01.50 ID:+E/XSL0+0
【ツアー後半・沖縄】

八幡(ツアーも大詰めで、今日は沖縄に来てる)

八幡(ライブは明日から2件。その後は千葉に帰ってツアー最終日のライブ)

八幡(今は海水浴に来てる。海水浴シーズンは終わっていて、俺たちしかいない)

結衣「ヒッキーほら!」バシャバシャ

八幡「ちょ、おい!冷てぇよ!」

雪乃「アナタは元々冷たいじゃない」

八幡「……人を遠まわしにゾンビ扱いしてるお前の心こそ冷たいだろ」

雪乃「あら、私は真実を伝えてるし寧ろ慈しみの思いで接してると思うのだけれど?」

八幡「お前の道徳観念は間違っている」

小町「みなさーん!スイカ割りしましょう!」

~数時間後~

八幡(泳ぎ疲れた俺たちは、パラソルの下で休憩中)

結衣「あれ、小町ちゃんは?」

八幡「さっきメールで『疲れたからホテル戻る』っ来た」

八幡(妹よ、また余計なマネを…)

八幡「……」チラッ

結衣「?」

八幡(左隣にいる由比ヶ浜の、水色ビキニから見える二つのメロンが、俺の鼓動を速める)ドキドキ

結衣「ちょ…ヒッキー、そんな見られると恥ずかしい…//」

八幡「す、すまん」フイッ

八幡「……」ジーッ

雪乃「……」

八幡(右隣に雪ノ下の白いビキニ姿。大きくないが、そのスレンダーな体型はやはり俺の鼓動を速める)

雪乃「そ、そんなに見られたら…恥ずかしいわ…」

八幡「わ、悪い」フイッ

八幡「……」

八幡(煩悩を消す為に何か…そうだ、久々にリリックを書こう)

296: 2015/02/25(水) 02:31:37.86 ID:+E/XSL0+0
八幡(鞄の中から、メモ帳を取り出しペンを取り出す)

八幡「……」

八幡「……」カキカキ

八幡「……ダメだ。何か納得いかん。ボツだ」カキカキ

ポンッ

雪乃・結衣「zzz…」

八幡(二人は寝てしまったのか、同時に俺の肩にもたれ掛かって来る)

八幡(……)ドキドキ

八幡(以前、俺は言われた…『気迫が減った』)

八幡「なんか最近、ふぬけてるのだろうか」

八幡「だがラップ自体は好きだ。歌ってて楽しいしな」

八幡「……だけど、確かに以前と感覚が変わってきたのは分かる」

八幡「録画されたライブのDVDを見直しても、それは日に日に分かり易く変化していた」

297: 2015/02/25(水) 02:35:17.73 ID:+E/XSL0+0
【深夜・八幡の部屋】

八幡「……」ゴソソッ

八幡(俺は小中学時代のアルバムを開く)

八幡(なんでこんな物をツアー中に持ち歩いているか、それには理由がある。あの時を振り返る為だ)

八幡「俺がプロを目指したキッカケは小町の夢追いの手伝いだ」

八幡「だがラップを歌う時の原動力は、音楽への愛と…」

八幡「トラウマだった」

八幡「あのトラウマの日々が…俺の音楽性を決定付けるといっても過言じゃなかった」

八幡「上手く人と話せず、友達ができず、無視され、嘲笑され…」

八幡「『俺たち友達だろ?』と言われ掃除を押し付けられ…」

八幡「女の子からのメール返事が来なかったり、失恋を暴露されたり…」

八幡「俺はおかげで孤独が好きになっていた」

八幡「だからラップでもこのトラウマを武器に変えようと思った」

八幡「あの中学時代の憎しみ、悲しみ、妬み、怒りは…俺の財産だ。負の遺産だ」

八幡「いつも胸の奥に染み付いてて離れる事がなかった。どんな時もだ」

八幡「……」ペラッ

八幡(俺はアルバムを見る。過去を振り返る)ペラッ

八幡(それなのに)ペラッ

八幡「……」

八幡「憎しみも、悲しみも、妬みも、怒りも…湧かない」

八幡「昔の俺なら、いちいちアルバムなんて見なくても、勝手にトラウマが蘇っていたのに」

八幡「……」ガリガリ

八幡(頭をかきむしる)

八幡「ダメだ…」

八幡「あの憎きリアルに充実した連中を罵る事ができない、何故だ」

八幡「新曲が…作れない…」

八幡「またボッチになれば、前の感じに戻れる?」

八幡「……」

八幡「それだけはイヤだ」

298: 2015/02/25(水) 02:37:43.28 ID:+E/XSL0+0
【機内】

結衣「ヒッキー、リリック考えてるの?ペンが止まってるけど」

八幡「……」

雪乃「さっきからノートを見つめっぱなしのようだけど…ノートに恋をしてしまったのかしら?」クスッ

八幡「……」

雪乃「?」

結衣「ヒッキー?」

八幡「過去に受けてきたトラウマ…それらをテーマにしたリリックはすでに書き尽した」

八幡「これまで書いてきたリリックは約1500曲以上。その内の4分の1が過去のトラウマをテーマにした物だ」

八幡「それでも以前ならいくらでも掘り下げて、トラウマを元に曲を作れた」

八幡「それが最近出来ない」

雪乃「スランプ…かしら?」

結衣「でも1500曲も作ってるんじゃ別に良いんじゃ」

八幡「1500曲の内、8割が下らない内容だ。だから捨て曲が多いと言っていい。採用する気も無い」

八幡「それでも自信作を含め、あとアルバム4枚分は作れるとは思うが…」

八幡「……」ガリガリ

八幡(無造作に髪をかきむしる)

八幡「その気になれば、相手をディスるワードなんていくらでも思いつく」

八幡「ただ釈然としない。こんなの書いても意味ないと思ってしまう。滑稽と思ってしまう。何故かは知らんが」

八幡「あれだけ憎かったリア充が、トラウマの日々が…近頃、意識が薄れてきた」

299: 2015/02/25(水) 02:42:01.72 ID:+E/XSL0+0
八幡「ラップはディスってなんぼだろ」

八幡「ディスる対象が分からなくなってきた」

八幡「何を表現すれば良いか分からん」

雪乃「……」

結衣「ヒッキー…」

八幡「ただ一つ言える事がある」

雪乃・結衣「……?」

八幡「1人でいるのは好きだ。だけどお前たちと離れたくない」グスッ

雪乃・結衣「…っ」ドキッ

八幡(何だよ…何を涙ぐんでるんだ俺は)グッ

八幡「正直言おう。俺はお前たちとの関係は高校までだと思ってた」

八幡「それでも今日まで関係を続ける事ができた」

八幡「……お前らとの音楽活動の日々が楽しくて仕方ないんだ」

八幡「不覚にも俺は昨日、またボッチになればあの時の怒りを取り戻せると…一瞬、考えてしまった」

八幡「だけど、孤独に生きた日々には戻りたくない」

八幡「ずっと側にいてほしい。かけがえのない本物だからだ」

ギュッ

八幡(両手から人肌の体温を感じる。雪ノ下と由比ヶ浜が俺と手を重ねてくる)

雪乃「私も人と距離を取る事ばかりしてたけど…アナタと、それとこのメンバーは特別。離れたくない」

結衣「あたしも皆と一緒にいたい。ずっと一緒にいたい」

小町「小町もだよ!」ノ

八幡(後ろの座席から、小町が声が聞こえる)

300: 2015/02/25(水) 02:43:27.94 ID:+E/XSL0+0
【ツアー最終日・打ち上げ会場】

結衣「それじゃ全国ツアーお疲れ様でした!」

全員「かんぱーい!!」

八幡(由比ヶ浜が連絡を回して、懐かしい顔が集まっている)

平塚「お疲れ、久しぶりだな」

八幡「うす、久しぶりっス」

陽乃「比企谷くん、雪乃ちゃん、ひゃっはろー!」

雪乃「あら姉さん」

八幡「うす」

葉山「やあ比企谷、雪乃ちゃん。久しぶり」

八幡「葉山…」

雪乃「久しぶり葉山くん」ペコッ

葉山「キミ達もすっかりスターになったな」

八幡「何の冗談だ。雪ノ下はともかく俺は不人気ラッパーだ。人気者はお前だろ」

葉山「いやいや。キミだってミュージシャンであり有名人だろ」

材木座「八幡!久しぶりだな相棒よ!」

八幡「なんだ来たのかよ…」

戸部「おう兄弟!久しぶり!」

八幡「おう44Bファンクラブ副会長。元気そうだな」

戸塚「はちまーん!」

八幡「戸塚ぁぁぁ!!!44Bファンクラブ会長!!会いたかった!!」

戸塚「久しぶりだね、千葉でのライブは全部見たよ!」

~~~

結衣「んじゃカラオケタイムと行きましょう!!」

オオオオオ!!

八幡「おいおい…ライブ終えたばかりなのに、また歌うのかよ」

雪乃「フフ、由比ヶ浜さんもタフね」

八幡「いいのか?せっかく和解した陽乃さんや葉山と話さなくて。久しぶりに話して来いよ」

雪乃「それも良いけど…そもそもアナタのおかげだし」

八幡「お前と陽乃さんと葉山が、お互いに向き合ったからだよ。俺は大した事してない。言って来いよ」

雪乃「……アナタの側にいさせて」

八幡「……お前がそういうなら」ドキッ

いろは「私もいますよ先輩?」

川崎「……私もいる」

八幡「今日はありがとな来てくれて」

いろは「先輩の為ならドコへでも行きますよ?//」

川崎「……別に、暇だったし//」

301: 2015/02/25(水) 02:45:36.90 ID:+E/XSL0+0
結衣・三浦「~~~!」

八幡(由比ヶ浜と三浦が一緒に、Jポップの曲を歌ってる)

八幡「……」

結衣「ぜぇぜぇ…98点だって!やったね優美子!」

三浦「さすが結衣、歌唱力あんじゃん」

ワイワイ、ガヤガヤ

八幡(かつてはボッチで、自分の周りには人なんていなかった)

八幡(俺は不人気だけど…でも、それでも)

八幡「なんか、幸せだな」

雪乃「え」

結衣「え?」

全員「……!?」クルッ

八幡「な、なんだよ…一斉にこっち向いて…」

結衣「いや…ヒッキーがそういう事を言うキャラだったっけ?って思って」

雪乃「確かに驚いたわ」

八幡「そ、そうか…」

八幡(幸せ…確かに、高校の時の俺だったらそんな事言わなかったよな…)

302: 2015/02/25(水) 02:46:25.66 ID:+E/XSL0+0
【自宅】

八幡「……」

八幡「ツアー…楽しかったな…」

八幡「次のツアーはいつだろうか…」

八幡「……」

八幡「新しいアルバムも作らないとな…」

八幡「でも…どうしようか…」

八幡「……」

八幡「とりあえずゲームでもしよ。休暇中だし」

~~~~

コンコン

小町「お兄ちゃ~ん!結衣さんと雪乃さんが来たよ!」

八幡「おう」

結衣「やっはろー!」

雪乃「こんにちは比企谷くん、今日は一段と目が腐ってるわね?目がいやらしいわ」

八幡「ほっとけ」

結衣「なんのゲームやってるの?女の子が画面に映ってるけど」ヒョコッ

小町「あれれ、もしかしてギャルゲー?」

八幡「ああ」

結衣・小町「…………」

八幡「なぜだろう、俺は画面しか見てないのに軽蔑の視線を感じる」

雪乃「私はアナタが何のゲームをやっていようが気にしないけど、あまりに堂々としてるから呆れたわ」

結衣「ヒッキーまだそういうゲームをやってるんだ…」

八幡「ばっかお前。このゲームは俺達の曲が、主題歌として抜擢されてる奴だぞ」

303: 2015/02/25(水) 02:49:00.11 ID:+E/XSL0+0
結衣「え、本当!?コレが!?」

小町「へぇぇ、これが私達の曲が抜擢された例のゲームだったんだ~」

雪乃「それなら折角だし、私達も一緒にこのゲームを参加させて貰いましょう」

八幡「え、これ1人用のゲームなんだが」

小町「1人に付き30分で交代して、ヒロイン攻略を進めるってのはどうですか?」

雪乃「異議は無いわ」

結衣「うん!それで良いよ」

八幡「俺の拒否権は無いんですね…」

ppppp

八幡「ん?スマホから連絡が」

八幡「はい、もしもし」

八幡「…………はぁ。わかりました」

結衣「誰から?」

八幡「社長から」

小町「何だって?」

八幡「今度、俺とサシで話がしたいから来いってさ」

304: 2015/02/25(水) 02:54:45.78 ID:+E/XSL0+0
【数日後】

八幡「お久しぶりです社長」

社長「いやいや全国ツアーお疲れ様。はいマックスコーヒー」

八幡「あざっス」グビグビ

八幡「それで話って?」

社長「ああ…次のアルバムについてだが」

八幡(やっぱりその話だったか…)

八幡「ええ、その話をされると思って、用意してきました」

社長「おお流石だね…なになに、タイトルは『絶対に許さないノート』?」

八幡「はい。俺が学生時代に書いてた日記です。それを元に次のアルバムを作成しようと思いまして」

社長「……」

社長「比企谷くん…そろそろ違った試みに挑戦しないか?」

八幡「どういう意味ですか?」

社長「より幅広い層に評価される曲を作るんだ」

八幡「幅広い層…つまり、一般大衆にうけそうな曲を作れと」

社長「勿体無いんだよ、君達の実力を知ってる身として」

社長「キミと結衣ちゃんのラップスキル、そして雪乃ちゃんと小町ちゃんが作るハイセンスなトラック…」

社長「彼女達の容姿においては言うまでも無い。曲もビジュアルも全てが一級品と言って良い」

社長「それなのに何故いつも半端な評価のされ方なのか?」

社長「ファーストアルバムだって17位で、その前に出した4枚のシングルも15位から20位で留まっていた」

八幡「……俺が作るリリックがあまりにも大衆向けじゃないからですか?」

社長「君達が出したシングルCDの曲名…『※going going alone way』『青春とは嘘であり悪である』『俺の友達の友達の話』『氏ねリア充』」

社長「正直、君が作る曲はオタク層向けなのは明らかだね」


※元ネタ…八幡のキャラソン

305: 2015/02/25(水) 02:55:57.65 ID:+E/XSL0+0
八幡「まあそうですね、俺としても一部のマニアに受けてくれればそれで良いと思ってました」

八幡「……ただ、コアなラップファンよりアイドルオタクが多いのは気になりますが」

社長「キミが作ってきた歌詞を否定するつもりはない、寧ろこれはこれで良い」

社長「この『絶対に許さないノート』を元にアルバムを作っても良いと思う」

社長「だがそれは原点回帰の時にでもやってくれ。次回作は趣向を変えて欲しい」

八幡「……」

八幡(社長には返しきれない恩義がある)

八幡(数々のレーベルと交渉に行く度に『比企谷八幡の解雇』を提案され続けてきたが、この社長だけはそんな事を言わなかった)

八幡(そしてギャルゲーの主題歌に抜擢してもらったり、深夜アニメの主題歌に抜擢してもらったり…その恩は多々ある)

八幡「わかりました。どうにか幅広いそうに受けそうな曲を作りましょう」

社長「感謝する」アクシュ

八幡「うす」アクシュ

306: 2015/02/25(水) 02:58:07.96 ID:+E/XSL0+0
八幡「んじゃ、俺はこの辺で…」

社長「ところで、ライブDVDを見させてもらったが」

八幡「ああ、この間のツアーの?」

社長「ああ…キミ、歌い方変わったかい?」

八幡「そうですね。周りからも言われてるし、自分も初めは気がつかなかったけど、途中から自覚してます」

八幡(昔はラップバトルやる時は、俺はカースト最下層だがラップだけは誰にも負けないと決意してたが…だが最近はラップを純粋に楽しむ事ばかり考えてた)

社長「以前までは、『呪詛ラップ』なんて言われてて、暗くて毒々しい感じだったが、ライブを重ねるごとにクリーンになっていって」

社長「ツアー最終日になる頃には、正統派ラッパーになってたね」

八幡「正統派ラッパーって…俺のラップはこれまで正統なラップじゃなかったんすね…」

社長「何かあったのかい?」

八幡「強いて言うなら…そうっスね」

八幡「キッカケは俺に最大級のトラウマを植え付けた女が、44Bを応援し始めた事…」

八幡「それから高校の頃からの付き合いのメンバーと、今日まで楽しく音楽活動ができた事…」

八幡「それが嬉しくて幸せで、いつしかトラウマが消えかかってきていて」

八幡「いつ間にかラップの歌い方にまで影響を及ぼしてたみたいですね」

307: 2015/02/25(水) 03:00:30.18 ID:+E/XSL0+0
【自宅】

八幡「ただいまー……って、何でお前らいるの」

結衣「あ、ヒッキーやっはろー!見てみて!ヒロイン攻略したよ!」

八幡「ちょ、おま!俺が攻略しようと思ったのに!」

小町「結衣さん、何だかんだで一番このゲームにハマってますね」

雪乃「由比ヶ浜さん、エンディングを見終えたら次は私がプレイする番よ」

~~♪~~♪

結衣「私達が作った曲が流れてる!エンディングの曲も抜擢されてたんだね!」

~♪~♪

小町「あ、エピローグです!ヒロインがウエディングドレス着てますよ!」

結衣「わぁあ…綺麗…アタシもいつか…」チラッ

雪乃「そうね、私もいつか…」チラッ

雪乃・結衣「……」ジーッ

八幡(何で俺を見るんですかね…いや、気のせいだ。そうに決まってる)


八幡(それにしても…新曲はどうしようか…)

八幡(幅広い層に受け入れられる曲ね…)

キャッキャッ、ワイワイ

八幡(ま、後で考えるか。いまはコイツらとほのぼのしてツアーの疲れを取りたい)

ppppp

八幡「んだよ、またスマホから連絡が…だれだ?」

八幡「はい、もしもし」

『おう比企谷、私だ』

八幡「平塚先生…?」

312: 2015/03/01(日) 22:47:51.51 ID:gKWqF4wQ0
【ファミレス】

八幡(いきなり呼ばれた俺たちは、ファミレスで会う事に)

八幡「いきなりファミレスに呼び出してどうしたんですか」

平塚「突然すまない。大事な話があってだな」

結衣「大事な話?」

雪乃「お言葉ですが、先日の打ち上げ会の時に言ってくれても良かったのでは?」

平塚「あの時の主役はお前たちだ。私が出しゃばっていけないと思ってな」

小町「出しゃばるって…何をですか?」

平塚「ご、ごほん」

八幡「何をそんなにかしこまって…」

平塚「……」

平塚「このたび、私は結婚する事になった」

313: 2015/03/01(日) 22:48:46.24 ID:gKWqF4wQ0
結衣・小町「」

八幡「ん?いま幻聴が」

雪乃「おかしいわね…私も幻聴が聞こえたわ。比企谷菌のせいかしら」

八幡「何でもかんでも俺のせいにするの止めてくれない?」

平塚「……おいお前たち、私は本気で言ってるんだぞ」

八幡「マ、マジッすか?」

雪乃「その信じられませんが…ご結婚おめでとうございます」

結衣「先生やっと夢が叶ったんですね…ご結婚おめでとうございます!!」グスッ

小町「おめでとうございます!」

平塚「ああ…本当、本当に長かった…」グスッ

八幡「んで、お相手は?」

平塚「私と同じ位の年齢で…まあ気が合ったというか、なんというか」

平塚「付き合ったのは2年前位からだな」

八幡「2年前…丁度、俺たちが学生でインディーズでの活動を本格的に始めた頃か」

八幡(そうか…先生も夢を叶えたのか…)

平塚「ああ、それで」

平塚「今年度で私は教師を退職する」

ズキッ

八幡「」

314: 2015/03/01(日) 22:50:02.75 ID:gKWqF4wQ0
雪乃「ついに退職される日が来たんですね」

結衣「って事は、これからは専業主婦をやるんですか?」

平塚「ああ、子育てに専念する。バンバン子供生むぞ!」

八幡「……」

平塚「……比企谷?どうした」

八幡「えっ?」

平塚「顔色が悪いようだが」

八幡「いや…そんな事無いです」

平塚「?」

八幡「……先生」

平塚「なんだ」

八幡「その…もう教師は完全に引退するんですか?」

平塚「ああ、完全引退だ」

八幡「」ズキッ

八幡「そうっ…すか…」

雪乃・結衣・小町「?」

平塚「来月には籍を入れる」

平塚「平塚の名も…今月までだ」

315: 2015/03/01(日) 22:51:10.77 ID:gKWqF4wQ0
【帰り道】

八幡「……」

結衣「ヒッキー」

八幡「……」

雪乃「比企谷くん」

八幡「……」

小町「お兄ちゃん!」

八幡「……あ?」

結衣「ねぇ…さっきからどうしたの?ちょっと変だよ」

八幡「……」

小町「もしかしてお兄ちゃんって、平塚先生の事、好きだったとか?」

雪乃・結衣「え…!?」

八幡「いや。平塚先生に対する感情はそういうのとは違う。確かに綺麗だし、性格も…まあ重いけど良い人だが。そういうのとは違う」

八幡「ただ…」

雪乃・結衣・小町「……?」

八幡「もう…あの人は、俺たちの先生じゃないんだって事を思っただけだ」

雪乃「今更何を」

八幡「ああ…本当、今更だよな…」

八幡「それにしても…結婚か…」チラッ

雪乃・結衣「……」チラッ

八幡「……」ドキッ

八幡(なぜか雪ノ下と由比ヶ浜の方を向いてしまい、目が合ってしまった)

雪乃・結衣「……」ドキドキ

316: 2015/03/01(日) 22:52:22.81 ID:gKWqF4wQ0
八幡「なあ、俺から提案がある」

雪乃・結衣・小町「?」

八幡「平塚先生に結婚祝いって事で」

八幡「新曲…作るぞ」

雪乃「平塚先生に向けた曲を?」

八幡「ああ、後でリリック書いてくるから」

結衣「良いね!作ろう作ろう!」

~~~~

八幡(それから割と短い期間で平塚先生に向けた曲を作成した)

平塚「なんだと…私の結婚式に向けて曲を作った?」

八幡「はい」

平塚「お前たち…また粋なマネを」グスッ

雪乃「それで今度、プロモーションビデオの撮影があるので、付き合って頂けますでしょうか?」

317: 2015/03/01(日) 22:53:40.80 ID:gKWqF4wQ0
【PV撮影初日・総武高校】

八幡「撮影に来たのは良いけど…」

結衣「ここ総武高校だよね」

監督「いや、恩師へ送る曲というならやはり母校で撮影すべきだと思うんだ」

八幡「えっとアレですか?回想シーン的な撮影ですか?」

監督「そうそう…って訳で、平塚さん。ヨロシクお願いします」

平塚「はい」

監督「それでは本番まで…3,2、1」

~~~

平塚「小僧…屁理屈を言うな」

八幡「小僧って…確かに先生の年齢からしたら俺はk」

平塚「ふん!!」

ブンッ!

八幡「」

平塚「次に年齢の事を言ったら当てるからな?」

八幡「しゅ、しゅみませんでした…」

平塚「……よし、ちょっと付いてきたまえ」

監督「カット!」

平塚「お疲れ比企谷」ニコニコ

八幡「何でそんなに嬉しそう何ですかね…コッチはあの時の恐怖をまた味わってるんですけど…」

平塚「懐かしいな、もうあれから随分経つんだな」

八幡「…っそうすね」

~~~

八幡「しかし何だ、お前たちは制服着ても全然違和感ないな」

雪乃・結衣「え?」

八幡「全然変わってないっつーか…」

雪乃「そ、そう。ありがとう…アナタのその腐った目も相変わらずね」ドキッ

結衣「確かに」

八幡「ほっとけ」

雪乃「平塚先生もあまり変わってないわよね」

八幡「ああ、そうだな」

~1時間後~

監督「はい、今日はここまで」

八幡「え、もう終わりですか?」

監督「いや、撮影は後日また取る。今日の分は終わり」

八幡「はぁ…?」

八幡(だがその後PV撮影の続きの予定が入らないまま、平塚先生の結婚式が開かれる)

318: 2015/03/01(日) 22:54:23.71 ID:gKWqF4wQ0
【結婚式当日・披露宴】

八幡「ん?」

?「……今日はヨロシクお願いします」

小町・静「コチラこそ」ペコッ

八幡「なあ小町、あの見るからに怪しそうな黒装束の集団は何だ?」

小町「ん、さあ?挨拶してきたから何となく返しただけ」

静「私の知り合いだ。結婚記念の動画撮影を担当してくれる」

八幡「……先生の知り合って変わった人が多いんですね」

~~~~~

司会者「えー続いては、○○静さんの元教え子だったヒップホップグループ・44Bの皆さんから祝辞を」

パチパチパチパチ

雪乃「旧姓・平塚静先生。ご結婚おめでとうございます」ペコッ

八幡(俺は隅っこの席に座りながら、顔を壁の方へとそっぽ向く)

雪乃「――――」

八幡(メンバーが次々と祝辞の言葉を述べる)

結衣「先生!ご結婚おめでとうございます!!」

八幡「……」

小町「ちょっとお兄ちゃん、何そっぽ向いてるの?ちゃんと前を向かなきゃダメだよ」ヒソヒソ

八幡(……)ググッ

小町「……?」

319: 2015/03/01(日) 22:56:43.56 ID:gKWqF4wQ0
司会者「最後に、リーダーのミスターボッチこと比企谷八幡さんから祝辞を」

パチパチパチパチ

八幡「……」ペコッ

八幡「……」

八幡「あー…その」

結衣「ちょっとヒッキー、そっぽ向いてないで先生の方みて話さないとダメだよ」ヒソヒソ

小町「お兄ちゃん、前を向いて話して」ヒソヒソ

八幡「……」プイッ

八幡「あー…言いたい事を他のメンバーに言われてしまい、言葉が見付かりませんので」

夫「は、ははは…変わった教え子だね」

静「すまん…捻くれ者でな。根は良い奴なんだ」

八幡「ただ」

八幡「この後、44Bで旧姓・平塚静先生の為に作ってきた新曲を披露するので、俺たちのショーを見てって下さい」

八幡「自分からいう事は特にありません」

雪乃・結衣・小町「!?」

ザワザワ…ザワザワ…

客人1「ねえ…何あれ?」

客人2「あれはないわ」

小町「ちょ、ちょっと!お兄ちゃん!」

結衣「ヒッキー!」

雪乃「全くアナタって人は…」

静(比企谷…こんな場面で何をいきなり捻くれ始めてるんだ)

320: 2015/03/01(日) 23:02:04.21 ID:gKWqF4wQ0
>>319(訂正)
司会者「最後に、リーダーのミスターボッチこと比企谷八幡さんから祝辞を」

パチパチパチパチ

八幡「……」ペコッ

八幡「……」

八幡「あー…その」

結衣「ちょっとヒッキー、そっぽ向いてないで先生の方みて話さないとダメだよ」ヒソヒソ

小町「お兄ちゃん、前を向いて話して」ヒソヒソ

八幡「……」プイッ

八幡「あー…言いたい事を他のメンバーに言われてしまい、言葉が見付かりませんので」

八幡「自分からいう事は特にありません」

雪乃・結衣・小町「!?」

ザワザワ…ザワザワ…

客人1「ねえ…何あれ?」

客人2「あれはないわ」

夫「は、ははは…変わった教え子だね」

静「すまん…捻くれ者でな。根は良い奴なんだ」

小町「ちょ、ちょっと!お兄ちゃん!」

結衣「ヒッキー!」

雪乃「全くアナタって人は…」

八幡「ただ」

八幡「この後、44Bで旧姓・平塚静先生の為に作ってきた新曲を披露するので、俺たちのショーを見てって下さい」

静(比企谷…こんな場面で何をいきなり悪態をついて)

321: 2015/03/01(日) 23:03:18.69 ID:gKWqF4wQ0
八幡「いくぞお前たち」ガタッ

雪乃「比企谷くん、一体どういうことかしら?なぜあんな態度で」

八幡「お前の怒った声、久々に聞いたな」プイッ

雪乃「ちゃんとコッチを向きなさい。さっきから何故、目線を合わせようとしないの」

八幡「……」プイッ

雪乃「ちょっといい加減に…」ズイッ

雪乃「……っ」ビクッ

八幡「バカヤロウ。見んじゃねえよ」

雪乃「……」

結衣「ゆきのん…?どうしたの?」

雪乃「……それぞれの持ち場に行きましょう。曲を披露するわよ」

結衣「え?うん…」

小町「……?」

八幡「……」

322: 2015/03/01(日) 23:04:27.97 ID:gKWqF4wQ0
結衣「えーそれでは皆さん!やっはろー!今から歌う曲は先生の為に作ってきました!」

結衣「この曲を作ろうと言い始めたのは…そこの態度の悪いリーダー・Mr.ボッチこと比企谷くんです!」

ザワザワ、ザワザワ

客人1「え、あの態度悪い彼が?」

客人2「??」

Mr.ボッチ「……」スッ

Mr.ボッチ(そっとマイクを口元まで持って来る)

ブリザード「……」ススッ

~♪~♪

Mr.ボッチ(雪ノ下のピアノの伴奏が始まる)

Mr.ボッチ(堪えろ…耐えろ…我慢しろ…)ググッ

Mr.ボッチ(俺は必氏の思いで、顔面の表情を固定させながら、ゆっくりと先生へと視線を合わす)

静「……!」

ザワザワ、ザワザワ

Mr.ボッチ(俺が先生と目線を合わすと、会場中の人間がざわつき始める)

サブレビXチ(……?みんなヒッキーを見てる?)チラッ

サブレビXチ(っ!!)

サブレビXチ(ヒッキー…)

Mr.ボッチ(由比ヶ浜も俺の顔を覗き込むように見つめて来るが、お構い無しに口を開く)

323: 2015/03/01(日) 23:05:53.03 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「YO…いつもリア充をディスってるけど今日は違う。どうか末永く爆発してくれ先生。アンタにこの歌を送る」

Mr.ボッチ「タイトルは『だから俺達は、恩師の幸せを願っている』」

リトルタウン「……」ススッ

ドッドッドッドッ
キュワキュワキュワ

~♪~♪

八幡(雪ノ下のピアノの伴奏に続き、小町のターンテーブルからトラックが流れ始める)

Mr.ボッチ・サブレビXチ・ブリザード「YO、YO」

Mr.ボッチ「さえないその日常、孤独は俺の一定、現実は常に非情、アンタの対応は異常、俺のボッチ哲学アンタは怒り、孤独に満足した俺を叱り、そして導いてくれたあの光」

サブレビXチ・ブリザード「YO、奉仕部」

Mr.ボッチ「イェイ、初めは戸惑ったぜ」
 
Mr.ボッチ「方針に理解できない概要、曰く人助けと言う謎の活動内容、それでもこれ以上の居場所はないよう、謎の部活にボッチの俺を強制採用、怒れたアンタの対応はまさにサイコ、でもアンタが俺にくれた居場所は最高」

Mr.ボッチ「YO」ウルッ

~~~

324: 2015/03/01(日) 23:06:30.45 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「―――――」

Mr.ボッチ(途中からの記憶が曖昧だ)

Mr.ボッチ(由比ヶ浜も雪ノ下も歌声が聞こえたから、懸命に歌ってくれてたのは分かるが)

Mr.ボッチ(俺は感極まってしまい)

Mr.ボッチ(ずっと我慢してたが涙腺が崩壊してしまった)

Mr.ボッチ(理性の化け物と呼ばれた俺だが、この時ばかりは感情むき出しで歌ってたに違いない…まあ歌ってる時はいつもそうだけど)

Mr.ボッチ(こんなに涙を流したのはいつ振りだろうか…)

Mr.ボッチ(俺は何故、涙を流してるのか分からない)

Mr.ボッチ(返しきれない恩義を思い起してるのか、恩師の幸せに感動しているのか、教師を止めてしまう事実に悲しんでるのか)

Mr.ボッチ(それとも全ての感情が合わさってるのか、自分自身よく分かってない)

Mr.ボッチ(とにかく俺は、ただひたすら必氏に歌った)

325: 2015/03/01(日) 23:07:55.88 ID:gKWqF4wQ0
メンバー全員「YO、アンタは素晴らしい教師、ずっと永久に俺の恩師、忘れない永遠の恩人、尊敬すべき存在の尊師、あの部活の活動を通し、めぐり合えた素晴らしい今日に、そんなアンタに幸あれ、どうか価値ある幸あれ、この想い願いはガチだぜ」

Mr.ボッチ「YO…返しきれない恩がある。だからこそ言うぜ。アンタの幸せを願ってる。チェック」

静「……」ボロボロ

夫「良い教え子じゃないか」グスッ

Mr.ボッチ「……」ポロポロ

客人全員「……」ガタッ

パチパチパチパチパチパチパチ

Mr.ボッチ「ぅぅ…くっ…ぅ…ぅぅ…」グスッ

Mr.ボッチ(歌い終えると、客人たちは全員立ち上がり、拍手を送ってくれてた)

Mr.ボッチ(先生はウェディングドレス姿で、ゆっくりとした歩調で、俺の目の前まで歩いてくる)

静「比企谷」グスッ

八幡「ぅぅ…ぅ…先生…ぅぅ…」ボロボロ

静「……」ポンッ

八幡(先生はそっと俺の頭に手を置く)

静「泣きすぎだ」

八幡「ぐっ…ぅぅ…」ボロボロ

静「でも感謝してる」

八幡「ぅぅ…先生…」

八幡「ご結婚、おめでとうございます」グシグシ

326: 2015/03/01(日) 23:08:39.65 ID:gKWqF4wQ0
八幡(泣きすぎたな…これは恥ずかしい)

?「はいカット!」

八幡「?」クルッ

監督「いやーお疲れさん。素の状態であれだけのシーンが取れるとは思わなかった」

雪乃・結衣「!?」

八幡「え、なんでPV撮影の監督さんがここに…?」

静「いやー比企谷、お前、本当は真実を知ってたんじゃないか?奇跡としか言い様の無い表現っぷりだったぞ」

小町「んじゃそろそろネタばらしをしますか」テクテク

八幡「どういうことだ小町?」

小町「えっとね、実は…お兄ちゃんと雪乃さんと結衣さん以外の人は。全員分かってるんだけど」

小町「この結婚式をPVの撮影に使う事になってたの」

八幡・結衣・雪乃「!!?」

小町「黙っててごめんなさーい!」テヘペロ

雪乃「小町さん…そういう大事な事を何故黙っていて…」

小町「えっとですね、変に意識して演技するより、自然体の方が良いって監督さんに言われたので」

小町「あ、小町は一応メンバー代表って事で、前もって教えてもらってました!」

八幡「えっと…って事は」

小町「お兄ちゃんのボロ泣きシーンは確実に世に出回るね!」b

八幡「」

327: 2015/03/01(日) 23:09:32.26 ID:gKWqF4wQ0
【数日後・自宅】

『ぅぅ…ぅ…先生…ぅぅ…ご結婚、おめでとうございます…』ボロボロ

八幡「うわあああああああ!!止めてくれぇぇ!!」ジタバタ

八幡(ニューシングルの予告として、俺達のPVがテレビで公開されている)

八幡(画面には回想シーンとして、学生時代の俺と先生のやり取りを小刻みに映し出されながら)

八幡(式での悪態の挨拶から、曲を終えたあとも尚も涙止まらない俺、先生に頭を撫でられる瞬間までバッチシ公開されていた)

八幡「あああああ!!!」ジタバタ

結衣「は、はは…なんか凄いインパクト大きいPVになったね」

雪乃「良く取れてるじゃない。比企谷くんの泣き顔とか」

八幡「もうイヤだ…グスン」

雪乃「ただ今回の曲がどういう風に評価されるかよね」

八幡「……確かに、今まではリア充をディスった内容だったり、ボッチを肯定する曲ばっかりだった」

~~~

八幡(そして翌週、俺達は目を疑った)

八幡(44Bの新曲はPVのインパクトも強かったせいか)

八幡(その後、2週連続でシングルチャートで1位に輝いた)

八幡(負けず嫌いな雪ノ下が歓喜したのは言うまでもない)

八幡(ディスるだけでなく、感謝を込めた正の感情で歌うのも悪くないな…)

328: 2015/03/01(日) 23:12:27.58 ID:gKWqF4wQ0
八幡(結婚…か、平塚先生は言っていた。『専業主婦となり、バンバン子供を生み、子育てに専念する』と)

八幡(俺の場合もし結婚したら、目指した専業主夫以外の選択肢なら、男は働かなければならない)

八幡(だが女はどうだ?本人に意志があるなら出産もある)

八幡(勿論、生んでからも働く女性は大勢いるが…これがもしミュージシャンならどうだ?)

八幡(全国をまたにかける女性ミュージシャンは…結婚による出産=ほぼ引退に繋がる)チラッ

雪乃・結衣・小町「……?」

八幡(この中で、そんな自体が起きれば誰かが引退を余儀なくされる)

八幡(俺はこのグループ全員と音楽がしたい。誰一人抜けてほしくない)

八幡(それは恐らく、皆同じだと思う)

八幡(それでもいつか、このメンバーとも別れなければならない時が来るのだろう)

八幡(そして、人の命がいつか尽きるように、どんなに有名になったミュージシャンたちも栄枯盛衰してきた。いつかは時代に見放され、人々から忘れ去られる)

八幡(俺達も例外じゃない)

八幡(俺たちの場合もし、1人でも抜けるなら…解散してしまう気がする。なんとなくだが)

八幡(グループの解散…世間じゃ色々な理由がある)

八幡(『音楽性の方向の違い』なんてのもあるが、実際は人間関係の問題が多いらしい)

八幡(俺達も学生時代、奉仕部が崩壊しかけた事が何度かあったが、そのたびに向き合い修復してきた)

八幡(現在の俺達は上手く機能している。どのグループよりも遥かに上手くいってる自信がある)

八幡(だがしかし俺以外のメンバーが全員女性だ)

八幡(もしも雪ノ下が、由比ヶ浜が、小町が…止む終えず引退だなんて考えたくない。想像したくない)

八幡(それでも終わりはいつか来るのだろう…多分)

329: 2015/03/01(日) 23:13:29.81 ID:gKWqF4wQ0
八幡(……………)

八幡(現状、俺は少なくとも…2人の事が…いやあの2人以外は考えたくないと言うべきか)

八幡(昔の俺はこんな人に執着するタイプじゃなかったんだけどな…人間強度がガクッと下がったな俺)

雪乃「比企谷くん、どうしたのかしら?」

結衣「ヒッキーどうしたの?難しい顔して」

八幡「……いや、ちょっとな」

八幡(………後で考えよう、いつかは何かしら選択し答えを出さなければならないが)

八幡(いま、俺がすべき事は……)

330: 2015/03/01(日) 23:16:18.47 ID:gKWqF4wQ0
【数週間後・スタジオ】

八幡(休暇期間を終え、とりあえず全員をスタジオに集める)

八幡(まあ休暇期間中も、俺の部屋がたまり場化してたが)

八幡(俺なりに密かに作業を進めていた)

小町「それではミーティングを始めまーす!」

雪乃「まあ新曲はずっと前に、平塚先生へ向けた物を作ったのだけれど」

雪乃「それで比企谷くん、今回のアルバムだけれど実は…」

八幡「それならもう出来てる」

雪乃「えっ」

結衣「もう出来てるの!?」

八幡「ああ。リリックは俺が17歳の時に書いた物で、歌の録音は休暇中に」

雪乃・結衣・小町「……」

八幡「な、なんだよ」

雪乃「アナタがスランプに陥ってる様子だったから、私たちで密かにリリックを書いて、歌も録音してきたのだけれど」

八幡「え…?」

結衣「ツアー中にヒッキーさ、『何をディスれば良いのかわからん』って言ってたから、今度はあたし達がリリックを書いて歌を作ろうって話してたの」

八幡「そうだったのか。なんかすまん…俺が不甲斐ないばかりに」

八幡「でもスランプって言っても、平塚先生への曲を書いたの俺なんだがな…」

~~~~

八幡(それから雪ノ下と由比ヶ浜、小町が作ってきてきてくれた、歌のみのデモCDを聞く。色々な曲があった)

八幡「代表的な曲は※雪ノ下が作った曲は『雪解けに咲いた花』、由比ヶ浜は『Smile Go Round』、小町は『ヒマワリGood Days』」

八幡(雪ノ下は終始、顔を赤くしていた。俺も聞いてて何故かドキドキしてしまった)

八幡「全体的になかなか良い曲作って来てるな。だが由比ヶ浜、お前の曲のタイトルは雪ノ下辺りから助言貰ってるだろ」

結衣「う、うっさいし!あたしだって、ヒッキーがスランプだって聞いてたから一生懸命つくったんだからね!」

※元ネタ…雪乃、結衣、小町のキャラソン

331: 2015/03/01(日) 23:17:14.67 ID:gKWqF4wQ0
雪乃「さて次は、比企谷くんが作って来た曲を聞かせて貰おうかしら」

八幡「おう」ゴソソッ

八幡(俺はタイトルが書かれたデモCDと、歌詞カードを渡す)

雪乃「タイトルは…『奉仕部』」

結衣「奉仕部…コレを17歳のときに?」

八幡「元々このリリックは世に出すつもりは無かった」

八幡「俺の音楽の方向性はトラウマを武器に、世のリア充を罵る事をテーマにやって行こうと考えていたからだ」

八幡「だが社長から呼び出し喰らって、次回作はより大衆向けの曲作りを目指してくれと申されてな」

八幡「んで色々考えてる時、平塚先生の結婚式の話が出てきて…今までに無いタイプの曲を作ってみて」

雪乃「あのような曲を作るのも悪くないと…思ったのかしら?」

八幡「ああ、こういう曲もアリなんだって思った」

八幡「んじゃ、後はじっくり聴いててくれ。曲数も多いし」

八幡「おれは1時間ほど散歩してくる」ガタッ

結衣「え、ちょっヒッキー!?」

ガチャン

八幡「……」

八幡(アイツらどんな反応するんだろうな…)

八幡(俺が17歳のとき、書いてきたあの曲は…)

八幡(高校二年のとき、俺が奉仕部で経験してきた事ばかりだ)

八幡(そしてアイツらに対する想いや、感謝の言葉が書かれた物だ)

八幡(なんつーか…恥ずかしい。ドン引きされてるかもな)

332: 2015/03/01(日) 23:19:21.47 ID:gKWqF4wQ0
【1時間後】

八幡「ただいまー」ガチャッ

八幡(さてどんな悪口を言われる事やら)

雪乃・結衣「ぅぅ…ぅ…」ボロボロ

八幡「!?」

小町「あ、お帰りお兄ちゃん!」ダキッ

八幡「おう…なあ、なんでアイツら泣いてるんだ?さてはあまりに曲が酷すぎて泣いてしまったのか」ギュッ

小町「ううん。みんな感動しちゃってるんだよ…小町も含めてね!」スリスリ

八幡「感動…?」ナデナデ

結衣「ヒッキーの気持ちが凄く伝わったよ…悲しかった時も、楽しかった時も、辛かった時も、嬉しかった時も…ヒッキーの必氏な想いが」ボロボロ

雪乃「当時のアナタは今よりも更に捻くれてたわね…でも、その切なる想いが伝わってきたわ」

雪乃「あんなリリックが書けるとは思わなかったわ…本当に17歳の頃に書いたの?今よりもずっとクズだった当時のアナタが」

結衣「別な人が書いたのかと思ったよ!」

八幡「まあ日記感覚で書いた物だったし。こんな恥ずかしい物を出すつもり無かったが」

八幡「とりあえず今回のアルバムは、今までのリア充へのディスりとは違う」

八幡「……っとは言うものの、お前たちが作ってきた曲はどうしようか」

八幡「俺が作って来た物は、次回作にしようか?」

雪乃「いえ、今回は比企谷くんが作って来たものを優先させましょう」ガタッ

結衣「うん!絶対そうすべきだと思う!」ガタッ

テクテク

八幡「おい何だよ」

ダキッ

八幡「!!?」

八幡(俺の右腕を雪ノ下が、左腕を由比ヶ浜が抱きしめてくる)

雪乃「比企谷くん…過去最高のトラックを作って見せるわ。アナタの気持ちに答える為に」ギュゥゥ

結衣「ヒッキー!アタシも一生懸命歌うからね!//」ギュゥゥ

小町「最高のアルバムを作ろうねお兄ちゃん!」ギュゥゥ

八幡「あ、ああ…」ドキドキ

333: 2015/03/01(日) 23:21:33.87 ID:gKWqF4wQ0
八幡(その後、数ヶ月かけてゆっくりとレコーディングが始まった)

八幡(俺はライブよりもレコーディングの方が好きだ。メンバーと色々話し合い手がける曲作りは楽しい)

八幡(そして月に一度づつ、シングルを発表していった)

八幡(小町に向けた曲『マイラブリーシスター、DJリトルタウン』)

八幡(由比ヶ浜には2曲…『優しい女の子は嫌いだと言ったがあれは嘘だ』と『リア充のお前と非リア充の俺』)

八幡(雪ノ下にも2曲…『本物』と『閉じた幸福』)

八幡(平塚先生への曲も含めて、俺たちが出し続けた計6枚のシングル曲は)

八幡(全て初登場1位に輝いた。雪ノ下が一番、歓喜したのは言うまでもない)

八幡(その後、出したセカンドアルバム『奉仕部』も初登場1位に輝き)

八幡(俺たちは日本を代表するヒップホップグループになってしまった)

~しばらくして~

小町「皆さん聞いてください!ついに武道館でのライブが決まりました!」

結衣「やったー!」

小町「それが終わったら次に大阪城ホールでのライブもあります!」

雪乃「ついに来たわね」

八幡「まさかあんなに売れるとは思わなかった…」

結衣「あんまり嬉しそうじゃないね」

八幡「いや、小さなライブハウスで、ほそぼそとやってるぐらいが好きだったんだがな…」

334: 2015/03/01(日) 23:22:57.63 ID:gKWqF4wQ0
【武道館ライブ前】

小町「武道館とうちゃ~く!」

結衣「わぁぁ!大きい!!」

八幡「こ…こんな所でやるのかよ…」ガクガク

雪乃「堂々としなさい、私たちは日本を代表するグループになったのよ」

ファン全員「あ、きた!!ウオオオオオオオ!!!!」

結衣「ファンの人達だ。やっはろー!」凸

小町「やっはろー!」凸

ファン全員「やっはろー!!!」凸

雪乃「ごきげんよう」ノ

ファン全員「んほおおおおお!!!ごきげんよう!!」ノ

八幡(この様子だと、初期からのアイドルオタクみたいなファンも離れてないみたいだな)

八幡(セカンドアルバムは、非リア充向けの曲ではないから、初期のファンが離れるか不安だったが…杞憂だったな)

八幡(ま、不人気の俺には関係ないか。俺は先に控え室に向かおう)テクテク

ファン1「あれMr.ボッチは?」

小町「お兄ちゃんなら…あ、あそこにいます!」

結衣「おーいヒッキー!」

八幡「ん?俺は先に控え室に…」

雪乃「ファンがお呼びよ」

八幡「……?」

ファン全員「……」

八幡「うす…今日はどうも」

ファン全員「ウオオオオオオオ!!!!」

八幡「!!?」ビクッ

335: 2015/03/01(日) 23:24:25.77 ID:gKWqF4wQ0
八幡(な、なんだ…何が起きて…)ビクビク

ファン全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

ステーン!

八幡「痛っ!!」

八幡(ビビッて尻餅ついてしまった…)ガクガク

小町「お兄ちゃんの人気が上がってる…!」

八幡(前まで俺の評判は最悪だったのに、一体なにがあったんだ)ガクガク

ファン1「Mr.ボッチ!俺はアンタを見直したよ!!」

ファン2「過去のアルバムも評価してたけど、今回は特に凄かった!」

ファン3「メンバーの美女3人が、アンタを慕ってる理由が良く分かったよ!」

ファン4「恩師に宛てた曲のPVはガチで泣けた。あれ演技じゃなくて素の状態だったんだろ?」

ファン5「俺達もMr.ボッチに一生付いてくぜ!!」

ファン全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

八幡「」

小町「やっと…やっとお兄ちゃんが本当の意味で認められた…小町嬉しいよ」グスッ

八幡(お兄ちゃん、こういうの慣れてないから怖いんだけど…)ガクガク

336: 2015/03/01(日) 23:25:36.87 ID:gKWqF4wQ0
【控え室】

八幡「本番まで…あと2時間か…」ガクガク

コンコン

結衣「はいはーい!」ガチャッ

結衣「あれ、確か…」

折本「比企谷いる?」

八幡(やべー武道館こえーもっと小さい所でライブしてー)ガクガク

折本「おーい」ポンポン

八幡「うわぁ!?折本か、よく控え室までこれたな」

折本「関係者だって言ったら通してくれた」

八幡「ザル警備過ぎるだろ…んで?どうした」

折本「武道館に来た訳だけど…実は来てるの私や千佳だけじゃないんだ」

八幡「どういう意味だ?」

折本「実は前に同窓会があってね。その時、アンタの話題になって」

八幡「ふーん、俺呼ばれてないけどね。まあ呼ばれても絶対に行かないけど」

折本「私が比企谷がラッパーになったって話したらみんな驚いて」

八幡「だろーな」

折本「んで、今度みんなでライブに行こうって計画してて」

八幡「おい、まさか」

折本「うん、中学の同級みんな来てるよ」

八幡「」

折本「アンタのメールを無視した女の子も、掃除を押し付けてきた奴らも、アンタを笑った奴ら全員ね」

八幡「……あー折本、もう一度言うがな、俺は普通のミュージシャンと違って社会的地位とかに興味ないんだよ」

八幡「俺がミュージシャンになった一番の理由は妹が原因だしな。普通のミュージシャンと動機が一般的に異なる」

八幡「俺を笑った連中を見返したいとか、偉くなって見下したいとかそんな想いは無い。まあ怒りはあったけど」

八幡「だから、そういうお節介は」

折本「…私は44Bが凄いって事を伝えたかっただけ、別にアンタ個人を立場を考えて同級生達を誘った訳じゃないから」

八幡「……」

折本「ライブ楽しみにしてるから」

八幡「おう」

337: 2015/03/01(日) 23:27:44.55 ID:gKWqF4wQ0
【本番前・舞台裏】

八幡「いよいよか」

結衣「それじゃ先に行って来るね!」

小町「んじゃ、またステージの上で!」

雪乃「後からは来る時、しっかり頼むわよ比企谷くん」

パチッパチッパチッ

八幡(俺はメンバー全員とハイタッチした後、その背中を見送る)

ウオオオオオオオ!!!!

八幡(凄い歓声だ。さすが武道館。今までとレベルが違う)

八幡(今回は初めの2曲は俺なしで、由比ヶ浜と雪ノ下に歌わせる)

八幡(俺は後から登場する演出になっている)

~♪~♪

八幡(小町のターンテーブルから流れるトラック、雪ノ下のピアノ伴奏と美しい声のラップ、由比ヶ浜のキレのあるラップが聞こえてくる)

~~~~~

八幡(そろそろ2曲目が終わる)

八幡「くそ…緊張する…」ガクガク

――ほら行くぞ

八幡「……OK。イェイ」

Mr.ボッチ「YO、YO。もう開き直ってくしかない。大会場だろうが何だろうが関係ない」

女スタッフ1「はい比企谷さん、マイク」

Mr.ボッチ「え?ああ…どうも」

女スタッフ1「頑張ってくださいね!」バシッ

Mr.ボッチ「痛っ!」

Mr.ボッチ(背中叩いて激励してきた…?あの悪態ついてた女性スタッフさんが?)

女スタッフ2「あ、比企谷さん、ライブ終わったら連絡交換しましょう!」

Mr.ボッチ「……??は、はぁ」

Mr.ボッチ(なぜこのタイミングで…つーか、なんでいきなり俺に優しくなってんだ)

338: 2015/03/01(日) 23:28:58.56 ID:gKWqF4wQ0
【ステージ上】

サブレビXチ「みんなーー!!やっはろーー!!」

ファン全員「やっはろーー!!!」

サブレビXチ「武道館ライブ来てくれてありがとう!」

サブレビXチ「えーとね、最初の2曲は私のワガママで、ブリのんと私だけでラップパートやらせて貰いました!」

サブレビXチ「さあ!みんなでボッチーを呼ぼう!!」

サブレビXチ「せーの…Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

ファン全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

~ステージ裏~

Mr.ボッチ(観客の声援が聞こえる)

Mr.ボッチ(俺は静かにマイクを口元に持っていく)

Mr.ボッチ「YO…」

YO…YO…

Mr.ボッチ(自分の声が会場中に響く)

Mr.ボッチ「これは」

これは…これは…

Mr.ボッチ「俺の友達の友達の話だ」

俺の友達の友達の話だ…俺の友達の友達の話だ…

ウオオオオオオオ!!!!

339: 2015/03/01(日) 23:30:24.06 ID:gKWqF4wQ0
【ステージ上】

Mr.ボッチ(『俺の友達の友達の話』歌い終える。意外と人気曲でライブでは定番化してる)

ファン全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

Mr.ボッチ「」ビクッ

Mr.ボッチ(危ない…危うくまた尻餅をつく所だった)ガクガク

サブレビXチ「えーここで、ボッチーのトークが始まりますので注目!」

Mr.ボッチ「ご、ごほん」ススッ

ファン1「お、Mr.ボッチがトークとは珍しい」

ファン2「基本、Mr.ボッチとブリザードは喋らないからな」

Mr.ボッチ(由比ヶ浜にライブ前、トークしろと命令され仕方なくやる事に)

Mr.ボッチ「あー…歌う事には慣れてるんですがね…」チラッ

折本「比企谷ファイト!」

同級生全員「」アゼン

Mr.ボッチ(あの中学の同級生共…よりによって最前列にいるとは…)

同級生1「まさか本当にラッパーになってたとは…」

女同級生1「でも相変わらずネクラそうだね。でも周りにいる子達…」

同級生2「周りの女メンバー全員レベル高すぎだろ。アイドルにしか見えねーし。なにちゃっかりハーレムしてんだアイツ」

同級生3「比企谷の癖に生意気な」

340: 2015/03/01(日) 23:33:55.77 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「えーどうも、人気ナンバー4のMr.ボッチです」

Mr.ボッチ(落ち着け落ち着け。いつも人前で歌ってるじゃないか)ガクガク

Mr.ボッチ「そ、その、小さなライブハウスで、コアなファンとほそぼそとやるのが好きだったんですがね」

Mr.ボッチ「こんなに売れるとは思ってませんでした」

Mr.ボッチ「…………」

ファン全員「……」ジーッ

同級生全員「……」ジーッ

Mr.ボッチ(いかん。トークを続けないと)

Mr.ボッチ「この前に出したアルバム『奉仕部』が売れまくったおかげで…金も入ったので」

Mr.ボッチ「ちょっと高価な物を買いました。ありがとう」

ファン全員「おおお」

Mr.ボッチ「中古の原付バイクですが」

ファン全員「wwwwww」

ファン1「普通の新車を買えよwww」

Mr.ボッチ「俺はそこらのスターと違い、外車とか高級車を乗り回す趣味はありません。似合わないし」

Mr.ボッチ「ボッチの名にかけて俺は中古バイクを貫きます」

Mr.ボッチ「でもまあ…結婚する時がきたら、まともな車買うと思います」

サブレビXチ「ヒッキー!カッコいい車買ってね!期待してるよ!//」

ブリザード「比企谷くん。燃費と安全性を考慮した物を選びなさい。私をしっかりエスコートしてね」

Mr.ボッチ「」

ファン全員「wwwww」

Mr.ボッチ「ご、ごほん!ライブ中はステージネームで呼んでくれ…」

Mr.ボッチ「えっと…その…あー…」

Mr.ボッチ「と、とりあえず!ここでメンバー紹介をします」

341: 2015/03/01(日) 23:36:40.68 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「まずは…見た目ビXチ、中身は清純。こんなに優しい奴は世の中探してもきっといない。MC・サブレビXチ」

サブレビXチ「やっはろー!!」凸

ファン全員「ウオオオオオ!!!」凸

サブレビXチ「ファンのみんな大好きだよ!あ、ブリのんもリトルタウンちゃんも!

サブレビXチ「……あとボッチーも///」

Mr.ボッチ「ご、ごほん!次」カァァ

Mr.ボッチ「口を開けばとんでもない毒舌女。だが気高く、美しく、常に正しくあろうとする彼女に俺は憧れてる。MC兼ピアニスト・ブリザード」

ブリザード「ごきげんよう」ノ

ファン全員「ウオオオオオオ!!!」

ブリザード「以前、雑誌やラジオでも話したけど、初めはラップが嫌いだったわ。でもサブレビXチさんに徐々に感化されて行って…」

ブリザード「何よりボッチくんの事を考えると、嫌いだったヒップホップもいつしか嫌いでは無くなっていたわ」

ブリザード「私はアナタを尊敬してるわボッチくん。今日までありがとう」カァァ

同級生全員「」アゼン

ファン1「Mr.ボッチ顔赤いぞ!」

Mr.ボッチ「ご、ごほん…次!」カァァ

Mr.ボッチ「世界中探してもこんなにキュートなDJはドコにもいない。俺の妹!!DJリトルタウン!!」

リトルタウン「やっはろー!!」ミブリテブリ

ファン全員「ウオオオオオオオ!!!」ミブリテブリ

リトルタウン「みんな大好きだよ!だけどお兄ちゃんはもっと好きです!!あ、今のリトルタウン的にポイント高い!!」

Mr.ボッチ「愛してるぜリトルタウン!!」

同級生全員(どんだけシスコンなんだ…)

342: 2015/03/01(日) 23:39:39.76 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「えー…続いて、メンバーじゃないけど…この会場の何処かに俺の恩師がいるはずです」

観客全員「おおお…あのPVに出てた人か…」

Mr.ボッチ「あの恩師がいなければ、俺はサブレビXチやブリザードと会う事もなかった。つまり今の44Bもなかった」

Mr.ボッチ「この会場にいる俺たちの恩師、旧姓・平塚静に拍手」

パチパチパチパチパチパチパチ

静「比企谷…」グスッ

夫「……」パチパチ

Mr.ボッチ「そして」チラッ

同級生全員(こっちを見た!気付いてるのか?)

Mr.ボッチ「さきほど控え室で聞かされましたが」

Mr.ボッチ「俺に中学時代、トラウマを植えつけてきた同級生達もこの会場にいるらしいです」

ファン全員「おおお…全ての元凶…」

同級生全員「……」

343: 2015/03/01(日) 23:40:49.32 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「クソ同級生達よ…お前らには武道館に来て欲しくなかったが聞いてくれ」

Mr.ボッチ「インディーズの頃に出したアルバムと、ファーストアルバム聞いたか?」

Mr.ボッチ「まあ改めて言わせて貰うけど、俺はお前らが憎くて仕方なかった」

同級生全員「……」

Mr.ボッチ「おかげで人間関係に対し期待を持つのを止めた。目に映るもの全てが灰色だった」

Mr.ボッチ「だがあのトラウマのおかげで、先生に奉仕部へと連行され、ブリザードこと雪ノ下に、サブレビXチこと由比ヶ浜に出会えた」

Mr.ボッチ「嫌な事も沢山あったけど…おかげでかけがえの無い仲間と出会えた」

Mr.ボッチ「『トラウマ』を武器にラップを歌う事も出来た…今の武器は『メンバーへの想い』だが」

Mr.ボッチ「この会場にいる皆さん、どうか俺の中学の同級生達に拍手を」

パチパチパチパチパチパチパチ!!

同級生全員「!?」

同級生1「あいつ…」

344: 2015/03/01(日) 23:42:37.13 ID:gKWqF4wQ0
Mr.ボッチ「俺からは以上です。サブレビXチ、トークの進行を頼む」

同級生1「おう比企谷!言うようようになったなお前!!」

女同級生1「比企谷くん!相変わらずキモいね!でも昔よりカッコよくなったから応援してあげる!」

女同級生2「いまなら毎晩メールしてあげても良いよ!」

折本「頑張れ比企谷!じゃなくてMr.ボッチ!」

ファン全員「Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!Mr.ボッチ!」

Mr.ボッチ「ひっ」ビクッ

ステーン!

Mr.ボッチ「痛てて…また尻餅ついた…」

観客全員「wwwww」

サブレビXチ「大丈夫ボッチー?」ススッ

ブリザード「全く…何回倒れてるのよアナタは」ススッ

Mr.ボッチ(小走りで向かってきた雪ノ下と由比ヶ浜に、俺の体を起こしてもらう)

Mr.ボッチ「いかん…まだ膝が笑ってやがる…」ガクガク

ブリザード「頑張って。アナタは日本を代表するMCなのよ」

Mr.ボッチ「代表かどうかは知らんが…まあ頑張る」

345: 2015/03/01(日) 23:47:45.11 ID:gKWqF4wQ0
サブレビXチ「それじゃ次の曲は『奉仕部』行くよ!」

リトルタウン「OK!」ススッ

キュワキュワ

ブリザード「……」ススッ

~♪~♪

ブリザード「YO、YO!」

Mr.ボッチ「YO、YO!」

観客全員「ウオオオオオオオ!!!」

Mr.ボッチ(俺は自分がカースト最下層を誇りに思ってたし、同時にラップの誇りだけは誰にも負けない思いで歌ってきた)

Mr.ボッチ(だが気がついたら自分が底辺の人間じゃなくなった事に、ようやく自覚した。ずっと目を背けてきたが)

Mr.ボッチ(アンチリア充をテーマにしてきたのに…随分と目的が変わってしまった)

Mr.ボッチ(ま、何だっていい)

Mr.ボッチ(俺はヒップホップが好きだ。それで充分だ)

Mr.ボッチ(いつか、このメンバーとも別れる時が来るかもしれないが)

Mr.ボッチ(どうか最後まで仲良く、このメンバーと音楽を続けたい)

リトルタウン「YO!チェケラ!」

Mr.ボッチ「YO…カモン!」


終わり

346: 2015/03/01(日) 23:52:38.76 ID:gKWqF4wQ0
随分ダラダラ続けてきたけど以上で終了です
リア充に対するアンチをテーマに歌い続けた八幡、その結果、自分がそのリア充なってたというオチです

この後、八幡たちはどうなったのか

更にアルバムを2枚ほど出した後、雪乃か結衣どちらかと結ばれ、小町も誰かと結ばれ、人気絶頂の最中ファンに惜しまれつつ、メンバー全員と最後まで仲良く笑顔で解散していったのか

はたまた、メンバーとの仲を更に深め(ハーレム状態)その後も、ミュージシャンとして長く活躍したのか

それは各々、読み手側の脳内補完という形でご想像任せます
(一応ルート的な物も考えたけど、あくまでヒップホップをテーマにしたSSなので止めました)

ノリで立ててしまったこのSSを今日まで読んでくれて本当に感謝してます
個人的な趣味嗜好をぶち込んだこの作品はこれで終わりです

では…チェック!
八幡「YO!やはり俺のヒップホップは間違っている!!」

347: 2015/03/01(日) 23:58:05.61 ID:gQQHTSmfo

川崎さんの方と新作も楽しみにしてます

348: 2015/03/02(月) 00:00:53.98 ID:Ee5fZIWrO
長い間乙でした
同じく川なんとかさんの続きを待ってます

引用元: 八幡「YO!やはり俺のヒップホップは間違っている。ファOク!!」