1: 2009/07/17(金) 23:18:16.89 ID:PpuSFUbr0
ジャジャッ ジャーン

律「よーし、今日の練習はここまでにするかぁ!」

梓「はい。お疲れ様です」
唯「おつかれさま~今日はいっぱい弾いたねっ!」

澪「皆お疲れ!」

澪(ふぅ今日は疲れたな…甘い物が食べたい気分)

澪(そうだ、今日は皆を誘って喫茶店に寄っていこうかな)
    
澪「なぁ皆、今日の帰りお茶でもしていかないか?」

3: 2009/07/17(金) 23:19:35.87 ID:PpuSFUbr0
唯「お茶?」

梓「あ…ごめんなさい。今日は私、唯先輩と用事があって…」

澪「えっあ…そ、そうなのか…」ズキ

唯「あぅ、ごめんね~澪ちゃん」
梓「すみません。それじゃお先に失礼します」ペコ

澪「いやっ、いいんだ気にするな!はは」

ガチャ、バタン

澪(行っちゃった…まぁいいや、律とむぎを誘えば…)

律「あ、そうだ……私も今日はむぎと一緒に買い物行く約束してんだよな」

澪「えっ」

4: 2009/07/17(金) 23:24:01.44 ID:PpuSFUbr0
紬「うふふ、可愛い雑貨を売ってるお店を見つけたの。澪ちゃんも一緒にどう?」

澪「え?あ……い、いや私は…今日はどうしてもパフェの気分なんだ」

紬「そうなの…残念。また今度一緒に行きましょうね?」

澪「うん」

律「そんじゃーまた明日なー澪ー」ヒラヒラ

紬「また明日ね、澪ちゃん」ペコ

テクテクテク…パタン

澪(………)

澪(私、一人だな)


ポツン


澪「……」

5: 2009/07/17(金) 23:25:58.71 ID:PpuSFUbr0
最近こういう事が増えていた

実は唯と梓は先月から付き合い始めたばかりのカップルで今が一番楽しい時期
しかも何となくだが近頃では律と紬も以前より親密な雰囲気を漂わせていたりいなかったりするそんな状況

別にそれで除け者にされるわけでも無いが、澪の性格上気が引けて自分から遠慮してしまうのだった
その日も結局一人で帰ることにした

澪(べ…別に寂しくなんかないぞ私は…)

澪(寂しくなんか…)

澪(…………)

澪「一人で喫茶店行こうかな…」ポソ

澪(……………)

澪(…やっぱやめとこう)

6: 2009/07/17(金) 23:28:49.79 ID:PpuSFUbr0
トボトボ…

和(あら?あそこにいるのは澪…?)

澪「……はぁ…」

和(溜息?…何だか落ち込んでるみたいね)

タタッ

和「澪、どうしたの一人で。珍しいじゃない」ポンッ

澪「へっ?…あ、和」

和「他の皆は?」

8: 2009/07/17(金) 23:31:21.03 ID:PpuSFUbr0
澪「いやー、それが皆して用事があるみたいでさ。暇なのは私だけなんだ、はは」

和「そうなの…じゃあ一緒に帰らない?私も一人なのよ」

澪「うん、帰ろう」ホッ

澪(いいやつだな、和)

テクテクテク

和「それで……何かあったの?」

澪「え?」

和「何だか最近元気がないじゃない?どうしたのかと思って」

澪「………」

澪(和、気にしててくれてたんだ…)

澪(和になら…話してもいいかもな)

9: 2009/07/17(金) 23:35:27.06 ID:PpuSFUbr0
話をするために近くの喫茶店へ入った二人は奥まった席に腰を落ち着けた
注文したアイスティーがテーブルの上に置かれたあと澪はこう切り出した

澪「悩みって程じゃないし、もう終わった事なんだけど」

和「うん」

澪「実は私……」

澪(言うの怖いな…でも和なら…大丈夫)

澪「わ、私……あっ梓の事が好きだったんだ…」

和「え…」

驚いた様子の和に澪は縮こまるように俯いた

澪(い、言っちゃった…言っちゃったぞ…)

10: 2009/07/17(金) 23:41:42.29 ID:PpuSFUbr0
和「………」

澪(のっ和…何か喋ってくれ……)ビクビク

反応待ちの間は不安だったが、やがて和は納得したように呟いた

和「そっか、道理で…」

澪「?」

和「だから元気が無かったのね。…唯と梓が付き合いだしてから」

澪「!」

澪(え…!まさか和、その頃から気付いてたのか?自分では態度に出してないつもりだったのに)

澪(…和って凄いんだな…)ジーン

11: 2009/07/17(金) 23:47:11.63 ID:PpuSFUbr0
和「じゃあ…やっぱり辛い?今の状況」

澪「そ…そんな事ない。梓の事は好きだったけど、今はちゃんと二人を応援してるんだ」

澪「それに律とむぎだって、仲良くなるのは悪い事じゃないしな!うん、それは寧ろ喜ばしい事だっ」ウンウン

和「…でもさっきは溜息ついてたわよね?」

澪「うっ……」

和「……」

澪「……そ、それはまぁ……」

澪「……やっぱり、ちょっと寂しいけどさ…」シュン

和「うん…」

12: 2009/07/17(金) 23:52:57.01 ID:PpuSFUbr0
和(そうよね……失恋したうえに親友も他の子と仲良くなってるんだもの)

和「ねぇ澪、ならこれからこういう時は私と一緒に帰らない?」

澪「!!い、いいのか和」パァァ

和「いいも何も、私達も友達なんだから当たり前じゃない」クス

澪「そ、そうだなっ。ありがとう和!」

澪(ホントにいいやつだな、和)ジーン…

13: 2009/07/17(金) 23:57:31.00 ID:PpuSFUbr0
雑貨屋の律と紬

律「お?何だこのぬいぐるみ!不っ細工だなー」ケラケラ

紬「ふふ、可愛いじゃない……まぁ、このティーカップ可愛いわぁ」ニコニコ

律「むぎはそういうの見るの好きだよな!……ん?」

紬「あら?」

律(こっちはアクセサリーコーナーか…結構種類あるんだなー)

律(髪飾りも…あ、このヘアピン可愛いじゃん)ジーッ

律(ちょっと欲しいような)

紬「りっちゃん、それ買うの?」ヒョコ

14: 2009/07/18(土) 00:01:04.45 ID:xaC3v/c90
律「へ!?あ、いや見てただけだぞ!私こういうの似合わないしなっ」

紬「そんな事ないと思うけど……」

律「ホントだよ。こういうのはむぎとかのが合ってるって」

紬「……」

紬(きっとりっちゃんにも似合うのになぁ…)

15: 2009/07/18(土) 00:04:01.59 ID:xaC3v/c90
紬「――あ、そうだわりっちゃん!何か澪ちゃんにプレゼント買ってあげたらどうかしら」

律「へ?み、澪に?」

紬「うん。きっと澪ちゃん喜ぶよ」

律「……そ、そうだな…何か買ってってもいいかなーなんて…はは」

紬「うふふふふふ」

律「あははははは」

紬「大好きな澪ちゃんの為にプレゼントを選ぶりっちゃん…素敵だわぁ」キラキラ

律「あははははは」

律(………はぁ///)

この二人が最近仲良くなった理由
それは律が澪のことを好きだと気付いた紬が話を聞いたりアドバイスするようになったからだった

18: 2009/07/18(土) 00:07:39.43 ID:xaC3v/c90
律「でも、何買えば良いんだろなー…」ウーン

紬「あら、澪ちゃんの好みはりっちゃんがよく知ってるはずよ」

律「つってもさ、いきなり私がプレゼントなんてやってもビビられるだけじゃねーかぁ?」

紬「大丈夫よきっと喜んでくれるわ…あ、このストラップなんてどう?」

律「ん?どれどれ」

紬が指差しているストラップは緑色のハートで四葉をかたどった飾り付きのものだった

19: 2009/07/18(土) 00:12:12.71 ID:xaC3v/c90
紬「恋愛成就のお守りにもなってるんですって…素敵」ポッ

律「れっ、恋愛成就とな!?」ドキッ

律(そんなあからさまなモン渡しちまってもいいのか…?///)

紬「うふふふふふ」

悩んだが、結局は紬に後押しされて律はそのストラップをペアで買うことにした

律「サンキュなむぎ!買い物付き合って貰っちゃってさ」

紬「ううん、私は凄く楽しかったからいいのよ……あ、そうだりっちゃん」ゴソゴソ

律「?」

21: 2009/07/18(土) 00:15:37.45 ID:xaC3v/c90
紬「あのね…さっきこれ買ったんだけど…」スッ

律「えっ、何かくれんのか?」ガサッ    

律(……ってこれは…)

律「むぎ、これ………」

袋の中から出てきたのは先程律が店内で眺めていたヘアピンだった

紬「りっちゃんによく似合うと思うの。良かったら使って?」

22: 2009/07/18(土) 00:17:47.26 ID:xaC3v/c90
律「…お、おう……ありがとな」

紬「ふふ、それじゃまた明日ねりっちゃん」

律「ああ、また明日なー!」ブンブン

律(……私がこんな可愛いヘアピンなんて笑っちゃうって…)

律(……むぎのやつ…)

律「…今度、つけてみようかな」ポソ

23: 2009/07/18(土) 00:21:13.45 ID:xaC3v/c90
ある日の教室

キーンコーンカーンコーン

澪(次の授業は数学…)ゴソゴソ

タタタ

クラスメイト女子「ねーねー秋山さん!」

澪(んっ)

澪「うん、何?」クルッ

女子「あのさ、秋山さんって彼氏いる?」

澪「ぶっ!??」ガタタッ

澪「なっっ、何いきなりっ」アタフタ

24: 2009/07/18(土) 00:23:59.70 ID:xaC3v/c90
女子2「あのねっ今度○○高の男の子達と遊ぶ約束したんだけど」

女子「秋山さんも一緒にどうかなと思って。彼氏いるって聞いた事ないし」

澪「ま、まぁいないけど…(これは…)」

どうやら合コンの人数合わせで声をかけられたようだ
澪は困惑しながらどう断ろうか悩んでしまう

澪(私はそういうのはちょっとな…苦手だし…)

澪(そもそもまだそういう気になれないんだよ…まだ一ヶ月位しか経ってないのに)

頭の隅にちらりと梓の顔が浮かぶ

澪(駄目だ。気が乗らないし断ろう)

25: 2009/07/18(土) 00:26:59.42 ID:xaC3v/c90
澪「ご…ごめん、折角だけd」

和「澪が行くなら私も行こうかしら」

澪「えっ」
女子「えっ」
女子2「えっ」

澪「のっ和…(いつの間に後ろに)」

女子2「えっ真鍋さんも行ってくれるの??」

女子「真鍋さん真面目だからそういうの行かない人かと思ってたよー」

澪(ほ、ホントに意外だ)

27: 2009/07/18(土) 00:30:12.15 ID:xaC3v/c90
和「うん…でもたまには息抜きっていうか、気分転換するのも良いかと思って」チラ

澪(!!…もしかして和、私のために?)

澪(最近の私が元気ないから…それで気を遣ってくれたのかも)

女子「秋山さんいい?」

澪「う、うん…和が行くなら私も行ってみよっかな」

女子1・2『やったー』

こうして澪は和、クラスメイトと一緒に合コンに参加することになった

澪(はぁぁ……でもやっぱり不安だ…)

29: 2009/07/18(土) 00:35:31.72 ID:xaC3v/c90
そして合コン当日某カラオケ店
言うまでもなく、澪はガッチガチに緊張しきっていた

○○高男子生徒『よろしくーーーー』

女子1・2『あははよろしくー♪』

澪「よ、よろよろ…よろしくお願いします…」カチコチ

和「ちょ、ちょっと澪…大丈夫?」

男子1「ははっそんな緊張しなくていいってー」

男子2「遠慮とかしなくていいからさ!フレンドリーフレンドリー!」

澪「は…はい…」

澪(そっそうだよな…別に遊ぶだけなんだから気楽にいけばいいんだよな…)ブツブツ

和(澪……顔引き攣っちゃってるな…)

30: 2009/07/18(土) 00:38:07.21 ID:xaC3v/c90
和(ていうかこの人達、思ってたのと随分違うわね)

和(○○高の生徒っていうからもう少し真面目っぽいのかと思ってたけど…)

和の予想とは違い、対面のソファに並んだ面々はいわゆるチャラい系ばかりだった

和(これじゃ澪が怖がるのも無理ないわね…失敗したかも…)

男子3「澪ちゃんっていうんだ。可愛いじゃーーっん」

澪「あははははははは」カタカタカタ

和(これは……駄目そうね)ガクッ

32: 2009/07/18(土) 00:41:26.02 ID:xaC3v/c90
それでもしばらくはクラスメイト女子と男子達中心に和気あいあいとした雰囲気で合コンは進んでいた
澪の緊張は以前解けないままではあったが

男子4「澪ちゃんて髪すげ綺麗だねーー触っていい?」

澪「はい!?いやっ、そそそそそんな」

男子4「あはは冗談冗談!そんなキョドんないでよーー」ゲラゲラ

澪「は、はは…ははは…」

澪(や、やっぱ来なきゃ良かった…逃げたいよぉ…)

和「ごめん澪、私ちょっとトイレ」ヒソ

澪(え!?)

33: 2009/07/18(土) 00:47:00.92 ID:xaC3v/c90
和「すぐ戻るから。ちょっと待ってて」スッ…

ガチャ

バタン

澪(のっ和行っちゃったぞ…わわ私はどうすれば)オロオロ

和がいなくなって空いた澪の隣の席に誰かが座ってきた

男子1「ねね!そういや澪ちゃんて軽音やってるんだって?」

澪「はっ!はい、や、やってます」

男子2「マジで?かっちょいー」

男子1「結構うちの学校でも評判だし。桜高のギャルバンがイケてるって」

澪「そっ、そうなんですか!?」

澪(う、嬉しいかも…)ポワ

思いがけず褒められ澪は喜びかけたが、次の台詞に凍り付いた

34: 2009/07/18(土) 00:51:09.64 ID:xaC3v/c90
男子1「特に去年の文化祭とか超伝説になっててさー」

男子2「ああ、ボーカルの女がパンチラサービスしてたってやつだろ?」

澪「!!!!!」

澪(な、な、な、な……)

男子1「っつかあれ?アレって…もしかして澪ちゃんじゃね?」

男子2「は?…あーあーそうかも!てかそうだよな?ほら、俺写真持ってるし」ゴソゴソ

ピラッ

澪「なっ……」

澪(何でそんなの持ち歩いてんだよおおおぉぉ)

35: 2009/07/18(土) 00:53:57.35 ID:xaC3v/c90
男子1「おー!じゃ歌とかめちゃめちゃ上手いんじゃね?歌ってみせてよ」

男子2「そうそうまだ歌ってないの澪ちゃんだけだし」

澪「えっでも…」

澪(こ、こんなとこで歌うなんて無理だよぉ…恥ずかしい…)

男子1「なんならパンチラ披露してくれてもいいよーアハハナンチャッテ!」

澪「………!」

37: 2009/07/18(土) 00:56:20.44 ID:xaC3v/c90
男子1「ほら~早く歌ってよ!!」
男子2「歌わないと盛り下がっちゃうよー?」
男子1「はい!澪ちゃん歌いまーーす!」  

澪「………」ジワ

澪(もうやだ…)

女子「ちょっ、ちょっとやめなよー…」

澪「………」

しつこく迫られ少し涙目になった澪に気づいたのか女子達も困惑顔になる
澪は俯いたまま男子達を無視していたが、無反応の澪に白けたのか男子達は溜息を吐いた

男子2「なんだよ…折角話しかけてんのに無視とか」

男子1「……マジ萎えるわ…ちょっとは空気読めよ…」

澪「……!!」

39: 2009/07/18(土) 01:01:39.95 ID:xaC3v/c90
ポツリと呟かれた言葉
それは澪の胸を抉るには十分過ぎるくらいの一言だった

ガタンッ

ダッ

女子「あっ秋山さん……」

クラスメイトの声が聞こえたが、澪はそのまま部屋を飛び出していった

ドンッ

和「きゃっ!?」

和「み…澪?どうし――」

澪「の…のどか…」ブワァッ

和「!!み…」

41: 2009/07/18(土) 01:06:17.34 ID:ju2GjyfO0
澪「うっ」


澪「うわあああぁぁぁぁぁぁぁんん!!」ダッ


ダーーーーーーッ 
バタバタバタ…


和「澪っ!?」


澪(ううっ、もう最悪だ…)グスグス

澪(なんか最近の私、なにひとつ良い事がないぞ)

澪(こんなの意地悪過ぎるよぉ神様…)グスッ

42: 2009/07/18(土) 01:09:33.67 ID:ju2GjyfO0
タタッ

和「澪っ!大丈夫?」

カラオケ店の外では一人壁に向かって膝を抱え込んでいる澪の姿があった

澪「の…のどかぁ…」ウル

和「話聞いたわ。ごめんね、私が席を離れてる間に…」

澪「和は悪くないよ…」

和「ううん、こんなのに来させた私が馬鹿だった」

和(まさかここまで悪い相手とは予想してなかったけど)

和(澪にこんな思いさせちゃうなんて、何の意味もないじゃない…)

43: 2009/07/18(土) 01:14:45.11 ID:ju2GjyfO0
澪(和…?怒ってる…のかな…)

いつになく厳しい表情の和に澪は戸惑う
が、澪へ向けられる顔はとても気遣わしげな優しいものだった

和「嫌な思いさせてごめんね」

澪「うっ、ううん良いんだ!和が謝る必要ない。それより……早く戻んなくちゃ…」

和「戻らなくていいわ。このまま帰りましょ。彼女達にもそう言ってきたし」

澪「へっ!?え、でもそんな。お会計だってまだなのに…」

和「奢らせればいいじゃない。不快な思いさせられてお金出す義理なんてないもの」

澪「そ、そうか」

澪(…和って……クールだな…)

46: 2009/07/18(土) 01:18:37.49 ID:ju2GjyfO0
和「ほら、行きましょ」

澪「あ、うん」

和の差し出した手に掴まり澪は立ち上がる

テクテク

澪「和、ありがとう…」

和「いいのよ」

テクテク

澪(……)

澪(和は優しいよな…)ギュウ

和(澪…よっぽど不安だったのね)…ギュッ

48: 2009/07/18(土) 01:23:44.32 ID:ju2GjyfO0
お互いにしっかりと手を握り合って歩いていく
澪は和の横顔を見つめながら微かに胸が高鳴ってくるのを感じていた

澪(…なんでだろ。何だか和が凄く頼もしく思えるよ)

澪(変だよな、こんな風に思ったりして…同級生の女の子相手なのに。でも……)

澪(和といるとホッとする。さっきまでの嫌な気持ちも、消えちゃった)

澪(…和…)

自分の中に芽生えた新しい感情に澪は高揚する心を抑えられずにいた
そしてその日から澪は和を強く意識するようになり、二人で過ごす時間は自然と増えたのだった


50: 2009/07/18(土) 01:29:18.68 ID:ju2GjyfO0


放課後部室
律は部室の前で行ったり来たりを繰り返していた

律(どうすっかな…何か変に緊張してきちまったぞ…)

律「いや、自然に…あくまで自然に入っちまえばどうってこと…」ブツブツ

律(いつも通り…いつも通りに行けばいいんだろ…)

律(ええいっグダグダ悩むなんざ律様じゃねぇっ!いざっ――)

ガチャ

51: 2009/07/18(土) 01:32:39.75 ID:ju2GjyfO0
紬「あらりっちゃん」

律「わあああぁぁぁっ!?」ドキーーッ

入ろうとした瞬間に中から顔を出した紬に律は飛び上がった
そんな律に紬もびっくりして息を飲む

紬「り、りっちゃんどうしたの?」

律「あ、いや!何でもないちょっとビックリしただけだ!あはははー」

スタスタスタスタ

紬(?……  あっ)

53: 2009/07/18(土) 01:39:22.76 ID:ju2GjyfO0
紬「りっちゃん、それってもしかして」

律(……)ドキッ

紬「私があげたヘアピン……つけてきてくれたのね」

律(……///)

照れてそっぽを向く律の横髪にが小さな花飾りのついたヘアピンが光っている。

律「あはは!折角貰ったしつけてみたんだけどさ、やっぱ全然似合わねーよなぁ!」

紬「ううん!そんな事ないっ…やっぱり凄く似合ってるわ!」

律「そっ、そうか??」

54: 2009/07/18(土) 01:44:15.41 ID:ju2GjyfO0
紬は目をキラキラさせながら律に顔を近付けてじっと見つめてくる

紬「素敵…プレゼントして本当に良かったわぁ」ジーッ

律(な…何か顔が近いような気が)

紬(…やっぱり、りっちゃんは可愛いなぁ)

ソッ…

律「む…むぎ…?」

紬「え?」

律に見惚れてボンヤリしていた紬はいつの間にか律の頬に手を添えていた

55: 2009/07/18(土) 01:47:29.92 ID:ju2GjyfO0
紬「あ、あら?ごめんなさい私ったら…」パッ

律「…いや、いいけど…」

律(あーでもビックリしたな…///)

紬「………」

紬(……嫌だわ、私ったらこんな…)

紬(りっちゃんは澪ちゃんが好きなんだから…私がこんな事しちゃ駄目よね)

紬(…でもりっちゃんの髪さらさらで、ほっぺたもスベスベだった…って)

紬(駄目よ駄目駄目!何考えてるの私っ…///)フルフル

56: 2009/07/18(土) 01:51:30.37 ID:ju2GjyfO0
紬は自分の中の雑念を振り払うと、気を取り直すように明るく言った

紬「そっ…そういえば、もう澪ちゃんにプレゼント渡せたかしら?」

律「あ!そういやまだだった」

紬「もう、りっちゃんたら…じゃあ今日こそ渡せるといいね」ニコ

律「ああ、そうだな…」

ガチャ

澪「お、早いじゃないか律、むぎ」

紬「澪ちゃん、いらっしゃい」

律(うおっ、噂をすればほにゃらぱぱだな…!)

紬「りっちゃん、チャンスよ!」ヒソッ

59: 2009/07/18(土) 02:00:05.78 ID:ju2GjyfO0
律「え!ちゃ、チャンス?」ヒソ

紬「うん、まだ他の二人は来てないもの。私が席を外すからその間に」ヒソヒソ

律「ん、んないきなり言われたって…」アセッ

澪「おーい、二人とも。何をコソコソ話してるんだ?」

ギクッ

紬「あ、わ…私ちょっとその…お手洗い行ってくるね」タタッ

律「おいむぎっ…(行っちまった)」

60: 2009/07/18(土) 02:05:51.09 ID:ju2GjyfO0
澪「…?どうかしたのか律?」

律「へ!?あーいや、何でもないよんっ!」

律「と…ところでさー澪?」

澪「なに?」

律「ちょっとさ、澪に渡したいものが…」

律(………)

ガサゴソと鞄の中を探る手が途中で止まった
律は鞄の中で二つのストラップを見つめたままぼーっと考え込む

律(何でだろ…なんかあんまり気が進まないな…折角買ったのに)

61: 2009/07/18(土) 02:10:12.48 ID:ju2GjyfO0
律(これは澪のために買ったんだからさっさと渡しちまえばいいのに…でも…なんで…)

律(なんで……さっきからむぎの顔が浮かんでくるんだろ…)

律(私は澪の事が好き…だったんじゃないのか?何で渡せないんだ…)

澪「りーつー?さっきから黙り込んでどうした?」ヒョイ

律「!!」バッ

律「…あはは悪い!はいこれ!やるよっ」

澪「え…?」

律「………」

澪「………」

62: 2009/07/18(土) 02:12:28.26 ID:ju2GjyfO0
律「う、嬉しいか?澪っ」

澪「……いらない」

律「えっ」

澪「こんなのいるわけないだろ馬鹿律。なんでよりによって赤点の答案用紙なんだよ」

律「あははは律様の直筆サイン入りだぞーレアだぞー」

澪「ばか。早く準備するぞ」

スタスタ

律「あっうん」

律「………」

律(結局、渡せなかったな………)

手のひらに握り締めたストラップをもう一度鞄の中に放り投げ、律も準備を手伝い始めた

106: 2009/07/18(土) 17:48:28.04 ID:0kniTDag0


放課後

澪(ペンケース忘れちゃった…多分教室にあるよね)

ガララ

澪(あれ?誰かいる…)

澪「…ってもしかして和?」

下校時間で無人のはずの教室には和が一人ポツンと座っていた
しかもどうやら机の上に突っ伏して寝ているらしかった

澪(何やって…ってああ、今日日直だったのか。日誌書いてる途中みたいだ)

107: 2009/07/18(土) 17:52:50.50 ID:0kniTDag0
澪(それにこれは…生徒会で使う書類?)

澪(大変そうだな和も…寝ちゃうってことはやっぱ疲れてるんだな)

和「……」スースー

澪(それにしても珍しいよな、和が居眠りなんて初めて見たぞ…)

澪「………」ジー

澪(綺麗な肌だなー羨ましい…睫毛も長いな。それに唇も…)

ドキ

澪(って…何だ?何で私今ドキッてしたんだ寝顔見てるだけなのに変だよでも)

澪(でも…見てるだけでドキドキする…)

108: 2009/07/18(土) 17:56:04.52 ID:0kniTDag0
澪「………」

カタ…

澪は和の寝顔を見つめたまま、吸い込まれるようにゆっくり顔を近付けていく

澪(和……)

和「……んっ」パチ

澪「うわああああぁぁぁっ!!!」ズササササ

もう少しで唇が触れそうになった瞬間、タイミングを計ったかのように目を開ける和
澪は漫画のような動きで盛大に後ろへ後ずさった

和「ひっ!?…って澪か、驚かせないでよ」

澪「あ、あはは…はは…///」カァァァ

109: 2009/07/18(土) 17:59:14.77 ID:0kniTDag0
澪(わ、わ、私は今何を…!)

和「やだ、寝ちゃってた私?もう帰んなくちゃ…一緒に帰りましょう?」ガタッ ゴソゴソ

澪「そっそうだな!」

澪(とりあえずバレてないみたいだな…ホッ)

澪(い、いやバレるって何が!わ、私は別にそんな…)フルフル

和「……?澪、早く行かないと校門閉まっちゃうよ」

澪「あ、うんっ!」

パタパタ

慌ててペンケースを鞄に入れ和のあとを追いかける

澪(…私は……)

112: 2009/07/18(土) 18:04:50.86 ID:0kniTDag0

帰り道

テクテクテク…

和「でね、その時先生が…」

澪「へ、へぇそ…そうなのか…」

先程の事を何も気にしてない様子で話しかけてくる和
逆に澪は意識し過ぎてギクシャクしてしまっていた

澪(…さっきの私は一体何しようとして…和は友達なのに)

澪(もし目が覚めなかったら…私はあの時和に…)

澪(きっ、キ……を…)

澪「……///」

思わず唇を手で押さえ俯いた時、和が小さく声を上げて立ち止まった

和「あっ…」

131: 2009/07/18(土) 21:36:02.03 ID:0kniTDag0
遅くなりました…



澪(ん?どうした和……って)

和が唖然と見つめている方向を視線で辿って澪も気付いた
前方で信号待ちをしている人の中に見覚えのある人物がいたのだ

澪(あ、あの人…この前の合コンにいた…)

思い出すと同時に、澪の中に苦い感情が甦る

キュッ

和(!澪……)

和「大丈夫、話しかける必要ないし知らんぷりしてればいいんだから」

思わず和の服の袖を掴んだ澪に耳打ちしてにこりと笑う
澪はコクンと頷き、二人は静かに信号待ちの列の中にに立ち止まった

132: 2009/07/18(土) 21:42:44.62 ID:0kniTDag0
男子学生は数人の集団と一緒に下校中らしく、喧しい程の賑やかさで談笑している

男子「そういえばさー、俺こないだ桜高の女と合コンしてきちった」

澪「!?」

澪(よ…よりによって今その話題かよ…)

和「………」

友人「マジで!?あそこ結構レベル高いだろ」

友人2「うっらやますぃーーなオイ!純情そうなのばっかだから簡単にお持ち帰りできたんじゃん?」

男子「いやー、俺もそう思って行ったんだけどさ。駄目、全然駄目。マジ最悪だったわ」

友人「何?何かあったん?」

133: 2009/07/18(土) 21:45:46.09 ID:0kniTDag0
男子「秋山澪とかっていたじゃん?黒髪でさ」

澪(げっ…私の名前…)

友人「だれ?」 友人2「パンチラの人じゃね?」 友人「あーあれか!」

澪(それで通じるのかよ!!)

澪(やだな……何でこんな…)

ギュッ

澪(あ、和……)

和(……)

俯く澪の手を和が強く握り締める
無言でも励ましてくれている、味方だと言って貰えてるようで澪はほっと息を吐いた
しかし、男子達の会話は止まらずに加速していった

135: 2009/07/18(土) 21:48:35.02 ID:0kniTDag0
男子「あいつ、折角わざわざ話しかけてやってもガン無視でさー」

男子「いかにも男慣れしてませんて感じでビクビクしてるし。バンドやってパンチラまでするようなのが今更純情ぶってんじゃねーって」

和「……!」ピク

男子「挙句金も払わずにばっくれちまいやがってなー。完っ全にコケにされた気分だわ」

友人「そりゃひでーな」

男子「ま、ああいうのに限って裏で何やってっかわかんねーけどな」

澪(…やだ…聞きたくない…)

男子「どうせ男とっかえひっかえヤリまくりのビXチだろ。大体男に飢えてなきゃ合コンなんてこねーしな」

ゲラゲラゲラ…

136: 2009/07/18(土) 21:52:55.93 ID:0kniTDag0
澪(………っ)ギュウ

和「……」

スッ

和「―――ちょっと、貴方」

男子「はぁ?」クル

澪(えっ?のど…)

バシィィィン!!

澪「………!!!!」

男子・友人「ぬぁ…っ!?」

驚きのあまり澪は大きく目を見開いた
まさか、和が男子に平手打ちを喰らわせるなんて思ってもみなかったからだ
向こうの集団も突然の登場によほどビックリしたのか言葉を失っている

和「それ以上澪を貶める発言をしたら許さない」

男子「はぁ……!?」

澪「の、和……」

137: 2009/07/18(土) 21:56:40.58 ID:0kniTDag0
和「他人の事をよく知りもしないでそんな事を言う人間はたかが知れてるわ…恥を知りなさい」

和「澪はとってもいい子なの。勝手な憶測で汚さないで」

男子「あっ!お、おま、秋山み」

バシーーンッ

男子「へぶす」

和「貴方の口から澪の名前が出るだけでも嫌気が差すわ…早く消えて」

和「もう金輪際澪の事を口にしないで。姿も見せないで」

友人「な、なんだこの女…」

140: 2009/07/18(土) 22:01:53.48 ID:0kniTDag0
男子「…ざ、ざけやがっ…」ギリッ

友人「おっおい馬鹿、女殴る気かよ」

友人2「いいから早く行こうぜ男子…」

男子「……くそっ」

信号が青になり行きかう通行人達の視線にいたたまれなくなったのか友人が男子を促す
男子は悔しそうに和を睨みつけていたが、中身はへたれだったらしく素早く逃げていった

ダーーーーッ ドタバタバタ…

澪(逃げた)

和「ふぅ…良かったわ、さっさと行ってくれて…やれやれね」

澪「やっ…やれやれじゃないだろ!危なかったじゃないか…アイツすっごくキレてたぞ!?」

143: 2009/07/18(土) 22:04:30.01 ID:0kniTDag0
和「私のほうがブチ切れたわよ。…澪の事をあんな風に言って…」

澪「和……」

和(……)

和「澪、ちょっと公園寄らない?」ニコッ



公園内ベンチ

和「さっきはごめんね。どうしても抑えられなくって…」

澪「うっううんいいよ。和が怒ってくれたのは私のためだろ…」

和「うん…」

澪「私嬉しかったよ、和がああ言ってくれて…でも…」

和「でも…何?」

澪「……な、何でさ、和はそこまでしてくれるんだ?私の事なんかであんなの…危ないよ」

ギュっと制服の裾を握り締めて俯く澪
そんな澪を和は優しい目で見つめる

144: 2009/07/18(土) 22:06:18.86 ID:0kniTDag0
和「馬鹿ね。"私の事なんか"じゃないのよ…澪の事だから、私は怒ったの」

澪「………えっ?」

ドキッ

顔を上げた澪は心臓が跳ねるのを感じた
予感を込めて和を見つめると、和もまっすぐに澪を見つめ返してこう言った

和「私は澪の事が好きなのよ」

澪「―――!」

和「…最初はね、同じクラスだし寂しそうにしてたからってほっとけなかっただけなの」

和「澪はしっかりしてるようでちょっと不安定なところがあるから目が離せないって思ってた」

和「だけど今は…そうじゃなくて、目を離したくないって思ってる」

和「私は…澪が好きよ」

澪「……和…」

146: 2009/07/18(土) 22:09:56.78 ID:0kniTDag0
和の言葉に澪は深く俯く

―――嬉しい、そう思った

心のどこかでそう言われるのを望んでいたみたいに、喜びで胸が震える
こんな気持ちになるのはきっと自分も和が好きだからだろう

澪「わっ、わた…」

私も――そう言おうとして口を開いたが、途中で止まる
和の顔をまっすぐ見つめた途端に嫌な感覚が胸を過ぎったのだ

澪「あ…わ、私は…」    

澪「私は……」

和(…澪……)

150: 2009/07/18(土) 22:13:36.13 ID:0kniTDag0
どうしても言葉が詰まり、焦った澪は泣きそうに顔を歪める
それをどう受け取ったのか和は少し目を閉じ、そして小さく首を振りながら微笑んだ

和「いいのよ、無理しなくて…ごめんね、私が変な事言ったせいね」

澪「ち、ちが…」

和「今言ったのは忘れて。それで明日からもまた…仲良くしてくれると嬉しい」

澪「………」

友達として、という言葉が最後に聞こえたような気がした
そのまま澪は何も言えないまま和と別れた
思い気分を抱えたまま澪は帰り道を歩いていく

151: 2009/07/18(土) 22:15:04.46 ID:0kniTDag0
澪(どうして言えなかったんだ…私は…私も和が…)

澪「好き…って……」

澪(言えればよかったのに、それだけ言えれば、それで…)

ぐるぐると混乱する頭の中を占めているのは和の顔
そして最後にちらっと浮かんだのは梓の顔だった

澪(………)

澪「…私の馬鹿…」グス

152: 2009/07/18(土) 22:18:59.28 ID:0kniTDag0

数日経ったある日
部活終了後

皆『お疲れ様―!』

梓「それじゃお先に失礼します」
唯「また明日ねぇ~」

澪「ああ、また明日な!」

パタパタパタ バタン

澪(今日も二人で遊びにでも行くのかな…?)

澪(……最近ズキってしなくなってきたな)    

澪「………」

澪(それは私が…今は和が好きだから…)

澪(なのに私は……はぁぁ…)ガクリ

154: 2009/07/18(土) 22:22:16.31 ID:0kniTDag0
タタッ

紬「りっちゃんりっちゃん」コソッ

律「んっ?」

紬「この間はどうだった?澪ちゃん喜んでくれたかしら」

律(ああ、ストラップの事か)

律「あ、いや実は…」ヒソヒソ

紬「えっ…!渡さなかったの?どうして…?」

律「どうしてって……まぁ、なんとなくなー」

律(むぎが気になってたからとは言えねぇよな…)

155: 2009/07/18(土) 22:24:11.20 ID:0kniTDag0
律「やっぱさ私のガラじゃないじゃん?お揃いのストラップーとかってさ」

紬「そんな事ないよ。きっと澪ちゃん喜んでくれるのに」

律「いやーもういいって」

紬「でも……」

律(何だよ…別にいいじゃん、渡しても渡さなくても私の勝手だろ…)

律を見る紬の目は心配そうに揺れている
気を遣ってくれているのが分かる分、律は余計にもやもやと苛立ちを感じるのだった

律(っつかプレゼントとか言って盛り上がってんのむぎだけだし、私は最初からそんな気無かったって)

律(いや…何考えてんだ。むぎは私と澪のためを思って言ってくれてんだからさ)

律(……私と澪のため、って何だ?むぎは私と澪がくっつけばそれで満足なのか?)

律(それだけ……なのか……?)

ズキン…

157: 2009/07/18(土) 22:26:19.14 ID:0kniTDag0
紬(…どうしたんだろうりっちゃん…急に険しい顔で黙り込んで…)

紬「ねぇりっちゃん、澪ちゃんと何かあったの?」

律「何にもないよ…」

紬「でもりっちゃん――」

律「何でもないって言ってるだろ!!!」

紬「……!!」

今日に怒鳴り声をあげた律に紬は顔を強張らせる
澪も何事かと驚いた表情で二人を見つめた

164: 2009/07/18(土) 23:00:21.90 ID:0kniTDag0
さるさん…


律「いつもいつも余計なお世話なんだよ!私の事なんかほっとけばいいだろ!」

律「大体さ心配するふりして面白がってるだけじゃねーのか!?普通他人が誰とどうなろうとどうでもいいだろ!」

紬「そ…そんな他人なんて…私は」

律「他人じゃなかったら何だよ!お前は…むぎはっ…」

律(―――私の事をどう思ってるんだよ!?)

紬「わ、私は…」

紬「私は、りっちゃんも澪ちゃんも大事な友達だから…だから…二人に幸せになって欲しくて」

律(…………友達…か…)

律(そっか………)

168: 2009/07/18(土) 23:05:37.75 ID:0kniTDag0
律「…あっそ。もう良いよ分かった…じゃあこうすれば良いんだろ」

紬「……えっ?」

スタスタスタ

澪「律…?」

グイッ

律「澪、付き合おう」

澪「なっ…」

紬(……!!)

律「私はずっと前から澪の事が好きだったんだ」

澪「何言って…」

律「澪だって私の事嫌いじゃないだろ?付き合ってみても悪くないって」

まるで吐き出すように言われる言葉に澪も紬も唖然とする

173: 2009/07/18(土) 23:13:31.62 ID:0kniTDag0
澪「律…お前…」

クル

律「これで満足かよ、むぎ…」ボソッ

紬「!!」

紬(……りっちゃん…何でそんな…)

紬(そんな大事な言葉…そんな風に言うためのものじゃないのに……)

紬(なんで……)

紬「―――りっちゃんの馬鹿っ!」

ダッ

ガチャッ バタン!

澪「むっ、むぎっ!?」

律「……!」

174: 2009/07/18(土) 23:22:21.40 ID:0kniTDag0
律(何だよ馬鹿って…むぎは私にこうして欲しかったんだろ?なのにどうして…)

律(どうして、あんな泣きそうな顔するんだよ…)


――ゴチンッ!


律「ぎゃっ」

澪「ばかりつ。ホンット馬鹿だよお前は」ギリギリ

律「いだいいだい!!…って何でだよ!私はホントに澪の事がっ…」

澪「好きだっていうのか?」

律「………」

澪「本当にそうなのか?律も本当は分かってるんだろ、自分が誰を好きなのか」

律「…何言ってんだよ…」

澪「分からないっていうなら私が言ってやる」

澪「お前はむぎが好きなんだ」

181: 2009/07/18(土) 23:29:26.53 ID:0kniTDag0
律「!!」

澪「それにきっと、むぎも律が好きだよ」

律「な…」

澪「最近二人は仲が良いだろ…私が気付いてないと思ってたか?」

律「………」

澪「好きなら好きっていえばいいじゃないか。何で喧嘩なんてするんだよ」

律「………るさいな…」ボソ

澪「えっ」

律「うるさいうるさい!何だよさっきから偉そうに!そんな事言うならお前はどうなんだよ澪!!」

澪「なっ……私が何だっていうんだ」

律「お前と和の事だよ!!そっちこそ私が気付いてないって思ってただろ!?」

澪「……!」

183: 2009/07/18(土) 23:35:44.48 ID:0kniTDag0
律「見てりゃ全部分かんだよ!お前が和に惚れてんのもっ、それに…」

律「まだ梓に未練が残ってるってのもな!!」

澪「な……っ」

律「そんなんで人の事言えるのかよっ!?」

澪(……っ)

澪「ちっ…違う!私は…」

律「違う?違うって何がどう違うんだよ!」

澪「違うよ…私は…私は……」

澪「私は和が好きなんだっ!!!」

律(……!)

189: 2009/07/18(土) 23:40:24.03 ID:0kniTDag0
澪「…梓は好きだったけど今はもう大切な後輩としか思ってないよ…今は和が…」

澪「和だけが好きなんだ…好きって言って貰えて、やっとちゃんと分かったんだ…」

律「な…好きって!まさか告られたのかっ!?」

澪の発言に律は動揺を隠せず狼狽した
澪は小さくこくっと頷きその場にゆっくりとへたり込む

律(ま、マジかよ…)

律「…でっ、で、どうしたんだよ。付き合う事になったのか?」

律はさっきまで言い争ってた事も忘れて慌てて澪に駆け寄っていく
微かに涙目になった澪は力無くふるふると首を横に振った

律「えっ…なんでだよ?」

澪「私がまだ…和に好きって言えてないから…」

191: 2009/07/18(土) 23:45:47.59 ID:0kniTDag0
律「な、何で言わないんだ」

澪「だって……怖くなっちゃったんだもん…」

律「怖いって何がだよ、両思い…なんだろ?」

澪「……でも、さっき律も言ってたじゃないか」

律「へ?何か言ったっけ」

澪「梓に未練があるんじゃないかって…」

律「!あっ……あれは別にそんな…」

澪「いいよ、分かってるもん私だって…ちょっと前までは梓の事好きだったとか言ってさ」

澪「もう和を好きになってるんだもんな。何だか…軽い気持ちって思われちゃいそうで…でもそんなの嫌で…怖いよぉ」

そう言って澪は顔を伏せる
小さく肩が震えているのは、泣いているようだった

195: 2009/07/18(土) 23:50:23.85 ID:0kniTDag0
律「澪……」

律(そっか、そうだったのか)

律(…私って…ホントに馬鹿だ…)

スッ

ポンポンッ

律は自分の吐いた台詞を反省し、澪に寄り添って軽く背中を叩いてやった

澪「律……?」グスッ

律「わ、私は澪の気持ち…わかるぞっ」

澪「?」

律「だって私もさ……私も前までは別に好きな奴がいたからな!」

澪「えっ…う、嘘だろ?」

律「嘘じゃないって、いたんだ。ホント…好きだった」

じっと澪の顔を見つめる律
澪は誰?と言いたげにしていたが、律は少し苦笑してかぶりを振った

199: 2009/07/18(土) 23:56:52.10 ID:0kniTDag0
律「でも、違うんだよな。今大事なのはそんな事じゃないんだよな…」

律「今の私はもうそいつ以上に好きになったやつがいる。それは隠す事でも恥ずかしがる事でも…怖がる事でも無いんだろ?」

澪「律……」

律「いい加減認めるよ、私はむぎが好きだ…誰よりもな」

律「でもだからって前のやつがどうでもいいとか、そうなるんじゃない。形は違っても、そいつはずっと大切なんだ」

澪「………」

律「澪だって同じだろ。そういうので良いんじゃないか?」

律「それに……和なら、分かってくれるだろ。澪の事」

澪(……律……)

しばらく二人は無言でいたが、律はある事を思い出しハッとして鞄を探った

律「澪っ!これやるよ!」

澪「え?」

澪の前に差し出されたのは二つの小さなストラップ
目の前で揺れるそれを見つめて澪は不思議そうに瞬きをした

202: 2009/07/19(日) 00:01:14.36 ID:9B5N192G0
澪「律…これは?」

律「恋愛成就の効果がある有難~いストラップだ!これを澪にやる!」

澪「えっ…」

律「それからもう一つは…」

律は澪の手を取り、そっと手のひらの上にストラップをのせた

律「和の分。それ渡して、ちゃんと好きだって言ってやれよ」

律「澪はずっと私の大切な幼馴染だ。だから…誰よりも応援してるからな」

澪「…律ぅ……!!」グスッ

律「はは、泣くなっつの!早く和んとこ行ってこいよ」

澪「う、うん…」ズズッ

204: 2009/07/19(日) 00:05:28.34 ID:9B5N192G0
鼻をすすって涙を拭いたあと、澪は小さく笑って言った

澪「――律も、な」

律「………うん、分かってるって」ポリ

律「急がなくちゃな…寄らなきゃいけない場所もあるし…」

澪「何?」

律「いや――こっちの事!それじゃ澪…頑張れよ」

澪「ああ、律も頑張れ。…また明日な」

律「おう!」

そして二人は別々の方向へ駆け出していった
同じように晴れやかな気持ちで


206: 2009/07/19(日) 00:11:20.17 ID:9B5N192G0

紬は一人で公園に来ていた
ベンチに座ったまま、出てくるのは大きな溜息ばかり

紬(私…どうしてあんな事を……思いっきり馬鹿なんて言っちゃって…)

紬(りっちゃん怒ったかな…でも…りっちゃんも酷いよ、あんな事言うなんて)

紬(…ううん違うわ…りっちゃんがああ言ったのは、あんな風に無理やり言わせたのは…私じゃない…)

紬「…………」

ポロポロ

紬(なのに…何でこんなに胸が痛いの……あんな言葉聞きたくなかったって、私…)

紬(りっちゃんに幸せになって欲しいなんて言ったくせに…私は…私はりっちゃんが…)


律「―――-むぎっ!!」

遠くから声が聞こえた
びっくりして立ち上がると向こうから律が駆けて来るのが見えた

207: 2009/07/19(日) 00:15:36.15 ID:9B5N192G0
紬(えっ…!?ど、どうして…)

律「はぁ、はぁ…やっと見つけたーっ」

紬「り、りっちゃん…」

紬(やっと、って…?それじゃりっちゃん今まで私の事を…?)

紬「ど、どうして……澪ちゃんは?」

律「澪なら帰ったよ」

紬「えっ……」

紬(え…?何で?どうして……りっちゃんは澪ちゃんに告白したのに…)

律「何か…むぎは分かってないだろうから言うけど、私が好きなのは澪じゃないから」

紬「え!?」

律「正確にいうと、それはもう過去の事で……今は別のやつが好きなんだよ私は」

紬「えぇ!?」

214: 2009/07/19(日) 00:19:06.95 ID:9B5N192G0
律「……」

律(これ絶対自分の事って分かってないよな…)

紬「そ…そんな…」

紬(じゃあ、じゃあ私が今までりっちゃんにしてきたのは…全部、迷惑なことだったの……?)

紬(一人で勝手に思い込んで…勝手に押し付けて……)

紬(私がしてたことは…全部りっちゃんを傷つけてたの……?)

律「むぎ、私は…」

紬「ごめん……なさい…」

律「え?」

215: 2009/07/19(日) 00:25:50.62 ID:9B5N192G0
紬「私…りっちゃんの気も知らないで澪ちゃん澪ちゃんて…いつもそればっかりで」

律「いや、あのさ」

紬「きっと知らずにりっちゃんを傷つけてたんだよね?…りっちゃんが好きな人…にも……悪い事してたのね…」

律「あのなむぎ…」

紬「本当にごめんなさい。おまけにさっきは馬鹿なんて言っちゃって…いくら謝っても足りな」

律「だーー!もう良いから黙って聞けよ!」ガシッ

紬「!??」

ギュウッ

紬(えっ……)

紬「り…りっちゃん…?」

220: 2009/07/19(日) 00:30:06.49 ID:9B5N192G0
律「何で他人の事には鋭いくせに自分の事だとそんなに鈍いんだよ…ずるいだろ、そんなの…」

紬「え……えっ…!?ど…どういう事なのりっちゃん…」

律「…こうやって抱き締めてんだから分かるだろ。これで分かんないとか言うなよなっ」

紬(うそ……そ…それって…)

律「――ってちゃんと言わなきゃ私もずるいよな……なぁ、むぎ」スッ

紬「えっ…?」

一度体を離した律は少し深呼吸をして、そして言った

律「私はむぎが好きだよ」

紬(………!!)

律の告白に息をのんで口元を押さえた紬は、そのまま真っ赤な顔で瞳を潤ませた

226: 2009/07/19(日) 00:35:13.86 ID:9B5N192G0
紬「り、りっちゃん……それ本当?本当に……私なんか…」

律「なんかって言うなよ」

律「私はさ…私が辛い時や落ちてる時に気持ちを察してくれて、傍にいてくれて話を聞いてくれたむぎが…大好きになったんだ」

紬(……っ)

紬「わっ私も…」

紬「私もりっちゃんが好き…ずっと好きだったの…でもっ…りっちゃんを幸せにできるのは私じゃないって…ずっと…」

律「むぎはいつも私を支えててくれたじゃないか。私は隣にむぎにいて欲しい…いてくれなきゃ嫌だよ」

紬(りっちゃん……)

紬「――うんっ!」

律「……///と、そうだ…むぎ、これ」

紬「…?…え…これ…」

230: 2009/07/19(日) 00:40:46.12 ID:9B5N192G0
紬(あの時澪ちゃんに買ったストラップ……じゃないわ、これはピンク色…)

紬「りっちゃんこれは…?」

律「こっ、これは私とむぎの分だ!せっかく恋人になったんだからお揃いで付けようぜ!」

紬「恋人……そうね、そうだね…!」

律「……ああ///」

紬「有難うりっちゃん……ねぇ、私からもひとつ良い?」

律「ん?何だ…」

ギュッ…

紬「ふふ……私からも抱き締めてみたかったの…大好きなりっちゃんを…」

律「なっ何だよそれ……///」

紬「うふふっ…///」

律はそれ以上何も言わずに、同じように紬を抱き締め返す
夕陽の中で抱き合う二人の影はゆっくり伸びていった

234: 2009/07/19(日) 00:45:52.47 ID:9B5N192G0

同じ頃、学校の屋上

澪「………」

澪(メールで呼び出しちゃったけど…和、来てくれるかなぁ)

澪(もし来なかったら……ううん、きっと来てくれるよ、和は…信じなきゃ)

澪「………」

キィ

ぎゅっと両手を握り締めた時、背後で物音がした
振り返ると待ち侘びた相手――和が立っているのが見えた

澪「和…」

和「澪、どうしたの?何か用事?」

澪「あっ…えっと…わ、私…」

いつもと全く変わらない様子の和に澪は逆に戸惑ってしまう
そんな澪に和は優しく笑いかける

和「もしかして…この間の事…かしら?」

236: 2009/07/19(日) 00:50:45.86 ID:9B5N192G0
澪(!!)ドキッ

澪「う…うん、実はそうなんだ。その事で言いたいことがあって」

和「………」

和は無言のまま歩み寄り澪の隣に立ち止まった

澪「…あ、あのさ、私……」

和「待って」

澪「えっ?」

和「澪の言いたい事は何となく分かるわ…」

澪「えっ」

澪(和…分かってくれてるのか…でも…)

澪「う、うん…でも私ちゃんと自分の口から」

和「駄目」

澪「えっ」

238: 2009/07/19(日) 00:55:47.61 ID:9B5N192G0
和「ごめん、聞かせないで…澪の気持ちはちゃんと分かってるから、だから言わなくていいわ」

澪(え………)

澪(ちょっと待って、何かおかしくないか…?)

澪(私の気持ち分かってるなら、何で…そんな悲しそうな顔をするんだよ…)

澪「なぁ、和…?」

和「もういいのよ。澪の気持ちが私に無い事なんて分かってるもの…」

澪(な………)

澪「ち、違うよ和!!私はっ」

和「ううん無理しないで…私は友達でいてくれるならそれで十分――」

澪(!!そんなの…)

241: 2009/07/19(日) 01:02:41.21 ID:9B5N192G0
澪「そんなの!私が嫌なんだよ……っ」

グイッ

和「…!?」


チュッ


顔を逸らそうとする和の腕を掴み澪は精一杯のキスをした
すぐに顔は離したが、澪は真っ赤な顔で和を見つめる


澪「だって私も…私は和が好きなんだ」


澪「だから友達でいいなんて言わないで……私と…恋人として一緒にいてほしい」

和「澪……」

244: 2009/07/19(日) 01:06:57.23 ID:9B5N192G0
澪「…和が好きだよ……!!」

ギュウ

涙声で言ったのと同時に、澪は和に抱き締められた
すぐに抱き締め返すとそのまま和は澪の頭を優しく撫でた

和「私も澪が好きだよ」

澪「……!」

澪(和……)

和「だから……」

澪「…?」

和「…ごめんね、からかったりして」  

澪(………)

澪「から、かう…って…?」

和の言葉に澪はポカンとする
和は少し間を置いた後、こう言った

246: 2009/07/19(日) 01:09:49.56 ID:9B5N192G0
和「実は……さっきここに来て澪の表情見て分かってたのよ、澪の返事が」

澪「……?私が和を…好きって事…がか?」

和「そう。澪は結構顔に出やすいから、すぐ分かったわ」

澪「は……」

澪「じゃ、じゃあ何であんな事言ってたんだ?友達で良いとかなんとか」

和「……ごめんね、ちょっと意地悪したくなっちゃったの」

澪「えっ」

和「澪、この間私が告白した時…私が梓の事気にするとでも思ってたんじゃない?」

澪「えっ…そ、それは」

和「私がそんなの気にするわけないのに。信じて貰えなくてちょっぴり悔しかったから」

澪「………」

249: 2009/07/19(日) 01:15:48.97 ID:9B5N192G0
和「でもまさか、キスまでして貰えるとは思わなかったから…」

和「ふふっ、ラッキーだったわ」

澪(ラッキーじゃないいいいぃぃぃっ!!)

澪(わた、私の涙は一体…)

嬉しそうに微笑む和に澪はがっくりと脱力する
和は笑顔のまま隣にしゃがみ澪の背中を撫でた

和「ごめんね澪、怒った?」

澪「……」ムッ

和「そんな顔しないで…許して」

澪「やだ……」
和「……」

和は澪の顔を覗き込む
澪の顔は真っ赤で、膨れたまま上目遣いに和を見つめて呟いた    

澪「キスしてくれなきゃやだ…」

和は嬉しそうに笑うと澪の頬に手を添えた
そして二人はお互いの気持ちを確かめ合うようにゆっくりと唇を重ねた


おわり

250: 2009/07/19(日) 01:16:42.43 ID:9B5N192G0
ここまで読んでくれた人有難う御座いました
色々と端折ってたりgdgdだったりでしたが支援や保守が励みになりました有難う!

252: 2009/07/19(日) 01:20:38.54 ID:hto0OCaJO
いちおつ

引用元: 澪「寂しくなんか…」