3: 2010/10/03(日) 17:29:29.88 ID:8rTkRBlBO
私の一日の始まり。

自分の机まで全力疾走、そして邪魔なカバンをスラムダンク。

「姫ちゃん、おはよう!」

おはよう、の挨拶がわりに全力でハグ。

くんかくんか。唯クン、シャンプー変えたね。

5: 2010/10/03(日) 17:36:02.07 ID:8rTkRBlBO
この小動物は平沢唯。隣の席の可愛いペット。

「うむぅー、姫ちゃんくすぐったいー」

構わずにくせっ毛頭をワシャワシャ。

あらら、必氏に直そうとしてますね。苦労してセットしたんだろうな。

あきらめたまえ。君が可愛すぎるのがいけないんだ。

6: 2010/10/03(日) 17:39:19.56 ID:8rTkRBlBO
「もぉー、姫ちゃんの意地悪」

そうさ、私はイジワルさ。

イジワルだから、こんなことだってしちゃう。

「いはいいはいー、ひっはらないれー」

何言ってるかわからないからスルー。そしてほっぺフニフニ。

10: 2010/10/03(日) 17:47:30.15 ID:8rTkRBlBO
ほっぺを楽しみながら髪をくんかくんか。最高の贅沢だね。

今日のキミはレモンの香り。キミにぴったりだよ。ラベンダーも捨てがたいけどね。

「ひめひゃん、やめへよぉー。ふぇえ……」

あらら、涙目。そろそろ離してあげますか。

半泣きでほっぺを戻そうとする唯。あはは、変な顔。可愛いけど。

12: 2010/10/03(日) 17:52:28.66 ID:8rTkRBlBO
「もう姫ちゃんなんか、知らない」

ふくれっ面でそっぽを向く唯。

そういう仕草の一つ一つが罪なんだよ。わからないかなぁ。

「姫ちゃんなんかあっち行け!」

はいはい、行きますよ。もうすぐホームルームだから、すぐ戻ってくるけどね。

15: 2010/10/03(日) 17:56:40.01 ID:8rTkRBlBO
一時間目がスタート。

古文は嫌いだな、受けたくないな。

あれれ、唯ったらどうしたの。カバンをごそごそして。

「姫ちゃん……教科書見せて」

前言撤回。古文最高です。たまらないです。

17: 2010/10/03(日) 18:03:21.40 ID:8rTkRBlBO
あれれ?でも唯、さっきなんて言ったっけ。

「うぅ……教科書、見せて下さい」

そんな言葉を聞きたいんじゃないよ。

「姫ちゃんのこと……だ、だ、だいひゅ……だから、見せて!」

よし、合格だよ。

20: 2010/10/03(日) 18:08:37.42 ID:8rTkRBlBO
古文の先生は熱心です。わかりやすく教えてくださります。

でも先生、ごめんなさい。私は光源氏よりも、隣で半分寝ている子に夢中なんです。

唯の頭がグラグラ。見ているこっちはクラクラ。

ほらほら、机から落ちちゃうよ。

その前に私が抱き止めてあげるけど。

21: 2010/10/03(日) 18:14:06.94 ID:8rTkRBlBO
あまりにも無防備な唯の寝顔。奪っちゃうよ?いろいろと。

試しにヘアピンに手を伸ばす。カナリアイ工口ーのチャームポイント。

前髪に手がふれる。天使にふれたよ。今天使にふれちゃったよ私。

「立花ー、この問題解いてみろ」

ヤバいです。

22: 2010/10/03(日) 18:17:49.60 ID:8rTkRBlBO
「どうしたー、解いてみろ」

ごめんなさい先生、聞いてませんでした。いじめないで下さい。

みんなの視線が集中する。止めてそんな見ないで。

自然と私は下を向く。顔が熱いよ恥ずかしいよ。助けて唯助けて。

「三番です」

23: 2010/10/03(日) 18:21:36.44 ID:8rTkRBlBO
私の斜め向かいの子が助け舟を出してくれた。

「ありがとう真鍋。立花、もういいぞ」

ありがとう真鍋さん。クールビューティー眼鏡さん。

さすがに唯の乳母なだけはあるね。

安心して。あとは私が完璧に育て上げてみせるから。

25: 2010/10/03(日) 18:24:14.76 ID:8rTkRBlBO
休み時間です。

「もぉー、トイレくらい一人で行けるよぉ」

ダメダメ、途中で迷子になったらどうするの?

「自分で歩けるよぉ。歩きづらいから離してよぉ」

ダメダメ、転んだらどうするの?

27: 2010/10/03(日) 18:28:35.49 ID:8rTkRBlBO
「止めて下さい!唯先輩が嫌がってるじゃないですか!」

おやおや、お邪魔虫のご登場です。

この子は中野梓。厄介な二年の黒猫クン。

「いい歳して誰かに抱きつくなんておかしいです!離して下さい!」

キミ、さりげに唯を非難してないかい?

28: 2010/10/03(日) 18:33:24.48 ID:8rTkRBlBO
「あーずにゃーん。へるぷみー」

唯が腕の中でパタパタする。ソフトボール部員の私に勝てるかな?

「ほら、困ってるじゃないですか!」

おやおや、ジェラシーかい小さな黒猫クン。

「なっ……そんなんじゃありません!」

40: 2010/10/03(日) 19:44:24.34 ID:8rTkRBlBO
あれあれ、顔が真っ赤だよ?ウブで可愛いなあ。

「照れてるあずにゃん可愛い~」

唯がするっと腕から抜け出て、黒猫クンに抱きつく。

ダメだよ唯。黒猫は不吉だよ。

縁起が悪いよ。すぐに離れなさい。

41: 2010/10/03(日) 19:48:53.66 ID:8rTkRBlBO
「もう、みんな見てますよ!」

そうそう、みんな見てるから離れなきゃ。

っていうか黒猫クン。何でまんざらでもない顔してるんだい?

いい歳して人に抱きつくのはおかしいんだろ?唯にもきつく言いなよ。

公約は守ろうよ。某国の大統領じゃあるまいし。離れなさい。離れてよ、ねえ。

42: 2010/10/03(日) 19:54:10.67 ID:8rTkRBlBO
キーンコーンカーンコーン。

チャイムの音が、目の前の悪夢に終止符を打ってくれました。

「ほら、休み時間終わりましたよ」

「あずにゃん分補給完了~」

ちょっと待った。姫ちゃん分の補給がまだだよ。

45: 2010/10/03(日) 20:01:40.22 ID:8rTkRBlBO
二時間目です。英語は苦手です。

何故か唯がプルプル震えてます。頬がほんのり赤くて、可愛いことこの上ない。

あれれ?もしかしてこれから告白時間(タイム)?

「ひ……姫ちゃん、あの……」

何?何?言ってみ?準備はできてるよ?

49: 2010/10/03(日) 20:11:30.52 ID:8rTkRBlBO
その時、無粋な声が教室に響き渡りました。

「えー、32ページを声に出して読んで下さい」

先生は空気を読んで下さい。

周りがいっせいに下手な英語を唱えはじめます。これじゃあ、告白ムードも台無しです。

「……ジョー……ベン……」

51: 2010/10/03(日) 20:15:59.51 ID:8rTkRBlBO
おや?唯が内股をこすりあわせています。とても色っぽいよ、唯クン。

……じゃなくてじゃなくて。これは明らかに何かのメッセージ。考えろ私。

「……ベン……ジョー……」

閃いた。

先生、唯がトイレに行きたがってまーす。

54: 2010/10/03(日) 20:19:50.31 ID:8rTkRBlBO
みんながいっせいにこっちを見ます。

唯の色気にメロメロ?でもダメだよ、保護者兼お姫様は私なんだから。

顔を真っ赤にしてトイレに駆け込む唯。

今にも泣き出しそうだけど、私の思いやりに感動しちゃったかな?

ほっぺにチューくらいは許してあげる。

57: 2010/10/03(日) 20:25:31.97 ID:8rTkRBlBO
その後、唯は授業が終わるまで帰ってきませんでした。

サボリかな?小悪魔ちゃんめ、お仕置きしてあげなくちゃ。

でもその前に、ほっぺにキ……。

「姫ちゃんのバカ!大っ嫌い!」

え?

58: 2010/10/03(日) 20:28:24.90 ID:8rTkRBlBO
唯は泣きそうです。どうやら冗談とかツンデレの類ではなさそうです。

……嘘だよね?嘘だって言って。

嫌だよ唯。そんなの嫌だよ。

私の何がいけなかったの?謝るから、改善するから許して。お願い許して。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。好きって言って。好きって言ってよ唯。

61: 2010/10/03(日) 20:32:00.78 ID:8rTkRBlBO
気がついたら私の目から何かが溢れていました。

きっと心の汗です。私の心が冷や汗をかいているんです。それだけです。

「ご、ごめんね姫ちゃん、泣かないで!」

泣いてなんかないもん。汗だもん。

「嘘だよ!嘘だから!私姫ちゃんが大好きだから!」

62: 2010/10/03(日) 20:33:40.54 ID:8rTkRBlBO
本当?

「ほんとだよ!姫ちゃん大好き!」

もう一回言って。

「姫ちゃんが大、大、大好き!ほら、むぎゅーっ」

……えへへ。

68: 2010/10/03(日) 20:39:58.49 ID:8rTkRBlBO
その後の授業はまったく覚えてません。

気がついたらお昼の時間です。

唯、私、乳母兼私の救世主の真鍋さん、その他。

みんなで机をくっつけます。

もちろん私は唯のとなり。

71: 2010/10/03(日) 20:46:45.30 ID:8rTkRBlBO
コンビニのアルバイトってのはいいものです。

期限がヤバい菓子パンやおにぎりをまわしてくれます。

今日はメロンパンとクリームパン。

おや?

唯がこちらをじっと見ています。

75: 2010/10/03(日) 20:49:04.73 ID:8rTkRBlBO
なんだい、そんなに目を輝かせて。

もしかして、私に惚れ直しちゃったかい?困ったなぁ。

「姫ちゃんのパン、おいしそう。一口ちょうだい」

おのれ菓子パン、妬いちゃうぞ。

嫉妬の炎でカリカリに焼いちゃうぞ。

82: 2010/10/03(日) 21:11:20.92 ID:8rTkRBlBO
とは言っても、目をキラキラさせる唯はたまりません。

そんなにほしいのかい?でもあげないよ。

私は意地悪なキミのお姫様だからね。ほれほれ、取ってみたまえ。

「んー……むー!」

ぱくっ。

83: 2010/10/03(日) 21:16:34.17 ID:8rTkRBlBO
え?あら?

一瞬、何がおこったのかわかりませんでした。

メロンパンが半分近く消滅してるとか、そういう問題じゃなくて。

確か今、私の指が唯の可愛らしいお口の中へ……。

私の意識はそこで途切れました。

86: 2010/10/03(日) 21:21:28.56 ID:8rTkRBlBO
「ちょ、ちょっと立花さん!」

……おお、わが友よ。救世主よ。

どうやら私はお花畑にトリップしていたようです。危ないところでした。

「唯、謝りなさい!」

いえいえ。いいんですよお義母さん。どうか娘さんを叱らないでやって下さい。

87: 2010/10/03(日) 21:25:03.46 ID:8rTkRBlBO
「ごめんなさい、姫ちゃん……」

ああ、そんなにしおらしい目をしないで。上目づかいで見ないで。

ああもう、可愛いなぁ。全然反省してないじゃないのさ。

「おわびに私のお弁当のパセリあげるね」

それはさすがにNO Thank you!

88: 2010/10/03(日) 21:28:58.73 ID:8rTkRBlBO
長い長い午後の授業。

唯はお昼寝の時間のようです。

腕を枕にするのはいい。しかしこっちに寝顔を向けるのはいけませんね。

おかげで今、先生が何を話しているのかさっぱりわかりません。

……ノート真っ白でも、この時間がバラ色ならよくね?

91: 2010/10/03(日) 21:33:40.83 ID:8rTkRBlBO
……将来、か。

卒業後、私はどうなるんだろ。

親は大学には入っておけって言うけど、あまり乗り気になれません。

かといって就職のアテがあるわけでもないし。むむむ、どうしよう。

……ああ、最後の手段があるじゃないですか。唯に永久就職。

92: 2010/10/03(日) 21:37:32.05 ID:8rTkRBlBO
放課後です。

私はカバンを二つに唯のギターを持って、音楽室に向かいます。

「助かるよぉ~。姫ちゃん力持ちだねぇ~」

ソフトボール部をナメてもらっちゃ困るね、お嬢ちゃん。

本当ならキミをおぶっていきたいとこさ。

93: 2010/10/03(日) 21:44:55.30 ID:8rTkRBlBO
「いらっしゃい」

軽音部のメンバーは全員そろったようです。

音楽室にいる人数は六人。だけどイスの数は五つ。

これが意味することは一つ。

「唯、私の膝に座りなさい」

94: 2010/10/03(日) 21:48:13.43 ID:8rTkRBlBO
「ち、ちょっと待って下さい!」

おやおや、また会ったね生意気な黒猫クン。

「立花先輩は軽音部じゃないでしょう!なんで平然と座ってるんですか!」

そうはいうがキミ、紅茶もケーキもちゃんと六人分用意されているよ。

「ど、どういうことですかムギ先輩!」

95: 2010/10/03(日) 21:53:21.58 ID:8rTkRBlBO
そういうことさ。

「だいたい立花先輩は、ソフトボール部じゃないですか!そっちの練習はどうなったんですか!」

高三の運動部員は、だいたい今の時期に引退するのさ。わかったかね世間知らずの子猫ちゃん。

「なら大人しく勉強してて下さいよ!」

さらっと人の悩みを口にしてくれたね、これだからお子様は。

106: 2010/10/03(日) 22:40:29.79 ID:8rTkRBlBO
唯を膝に乗せてのティータイムは実に素晴らしいです。

目の前に唯の後ろ頭、腕は唯のお腹に、そして膝の上に唯のお尻。

これほどの歓びが他にあるでしょうか。

しかし、この至福の時間にも弱点が。

「姫ちゃん、食べないの?」

107: 2010/10/03(日) 22:43:37.64 ID:8rTkRBlBO
食べたいです。すごく食べたいです。

ですがそれは許されないのです。

二人の関係が生んだ、あまりにも悲しい結末。悲劇です。

「じゃあ、姫ちゃんに食べさせてあげる。あーんして」

ふえ?

109: 2010/10/03(日) 22:48:33.14 ID:8rTkRBlBO
唯が膝から滑り降りて、ケーキにフォークを突き刺して。

「ち、ちょっと何をやろうとしてんですか唯先輩!」

そうだよ唯先輩。エイプリルフールには早いよ。

冗談きついって。そんな無垢な笑顔でフォークを差し出さないで。

……マジ?

111: 2010/10/03(日) 22:56:04.16 ID:8rTkRBlBO
「はい、あーんして。あーん」

……だ、ダメだよ唯。冗談キツいって。

だ、だって私たち、まだ正式な関係じゃないし。お互いの両親にも会ってないし。

ふ、ふ、不潔だよ唯。後でお仕置きしなくちゃ。ああああでも顔がまともに見れないよ。

ヤバいどうしよ絶対顔真っ赤だよ。唯に全部見られちゃってるよすごい恥ずかしいよ。助けて真鍋さん助けて……。

112: 2010/10/03(日) 23:02:06.41 ID:8rTkRBlBO
「た、立花さん立花さん!」

「あらあら大変」

……はっ。

危うく三途の川を渡り終えるところでした。危ない危ない。

「唯……とりあえず謝っとけ」

113: 2010/10/03(日) 23:04:17.60 ID:8rTkRBlBO
「姫ちゃん、……またまたごめんなさい」

まったく、罪な女の子だよ。許してあげない。

「おわびに演奏、聞いてくれるかな」

え、演奏してくれるの!?

「……食いついてきた」

115: 2010/10/03(日) 23:10:44.25 ID:8rTkRBlBO
ギターを持った私のペット、何度見ても惚れ惚れしちゃう。

一つ癪なのは、あのギターが唯にベッタリなこと。

ギー太なんて名前つけられて、さりげなく胸に密着しおって。この工口ギターめ。

「えー、こんにちは。今さらな紹介ですけど、放課後ティータイム、ギターの平沢唯です!」

もちろん割れるような拍手を送る。

116: 2010/10/03(日) 23:13:07.41 ID:8rTkRBlBO
「ベースの秋山澪です」

「私が部長、ドラムの田井中律だぜ!」

「キーボード担当、琴吹紬です~」

「……中野梓。担当は唯先輩と同じです」

ごめん、あまり興味ない。

120: 2010/10/03(日) 23:25:13.30 ID:8rTkRBlBO
そういえば私、軽音部のライブって見たことなかったなぁ。

学祭の時は部の出し物で忙しかったし、新歓はまさに戦争だったし。

だからうちの軽音部の生演奏見るの、ちょっと楽しみかも。

お、どうやら唯がボーカルみたい。

「聞いて下さい。……ふわふわ時間!」

122: 2010/10/03(日) 23:28:13.54 ID:8rTkRBlBO
「……キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI」

……え?

「揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ」

え?え?

「いつもがんばるキミの横顔、ずっと見てても気づかないよね」

125: 2010/10/03(日) 23:36:26.68 ID:8rTkRBlBO
ち、ちょっと待って。何このサプライズ?

この歌詞、もしかして唯が私のために?……違うよね?だって今まで、あれだけ抱きつかれるの嫌がってたもん。

でも事実、こんな恥ずかしい歌詞を歌ってくれてるよ?てことは、今までのは全部ツンデレだったってこと?

あああ落ち着け私。現実を素直に受け入れろ。歌詞に身を任せろ……!

「夢の中なら二人の距離縮められるのにな~」

127: 2010/10/03(日) 23:43:07.34 ID:8rTkRBlBO
「あぁ、カミサマお願い二人だけのDream Timeください☆」

「お気に入りのうさちゃん抱いて」

「今夜もオヤスミ♪」

「ふわふわ時間、ふわふわ時間、ふわふわ……」



ホウホウホウホウホウホーウ!

128: 2010/10/03(日) 23:46:02.37 ID:8rTkRBlBO
「ほ?」

「た、立花さん?」

……作ろう!

今すぐ二人だけのDream Time作っちゃおう!

「あ、こら!唯先輩をどこに連れて行く気ですか!」

129: 2010/10/03(日) 23:51:42.54 ID:8rTkRBlBO
「へ?あ、あれ?うわぁー、みんなー!」

「た、大変だ!姫子がなんか重大な勘違いをしてるぞ!」

「こらー!待てー!」

……その時の私は、何でもできる気がしました。

通りすがりのポニーテールの少女から、痛烈な一撃を腹にくらうまでは……。

130: 2010/10/03(日) 23:54:20.23 ID:8rTkRBlBO
……秋山さんが、この作詞をしたと。

「はい、そうです」

唯専用のボーカル曲ではないと。

「その通りです」

……氏にたい。

133: 2010/10/03(日) 23:58:14.54 ID:8rTkRBlBO
あの中野梓さんが、思いっきり笑いをこらえてます。

……笑いたきゃ笑いなよ、黒猫クン。

勝手に勘違いして舞い上がって、プライドをズタズタに引き裂かれた惨めな女をさ。

……私の人生って、何だったんだろ。

「姫ちゃん」

134: 2010/10/04(月) 00:02:31.06 ID:5P1tSQg+O
……何よ、人の純情を弄んでおいて。なぐさめなんかいらないんだから。

「よくわからないけど、要するに姫ちゃんは、勘違いしちゃうほど私が好きなんだね」

ああそうだよ、そうですよ。悪かったね。

「大丈夫。私も同じくらい、姫ちゃんが大好きだから」

……ふえ?

138: 2010/10/04(月) 00:12:05.80 ID:5P1tSQg+O
「もし私と姫ちゃんが逆だったら、私もきっとおんなじようなことしちゃうと思うんだ」

「そうだぜ。これが唯だったらどんな大惨事になってたことか」

「正直な話、この程度ですんでよかったよ」

「ね?みんな姫ちゃんが大好きなんだよ。もちろん私も大、大、大好き。だから姫ちゃん、自分を責めちゃダメだよ」

……うるさい。

139: 2010/10/04(月) 00:18:26.29 ID:5P1tSQg+O
「え?」

うるさいうるさいうるさい!これでもくらえ!

「ひゃん!?み、耳!耳いじっちゃダメぇ!」

あんたが、あんたがあんな曲さえ演奏しなけりゃ、ボーカルなんかやらなきゃこんな思いはせずにすんだのに!

これからどう接したらいいかわかんないじゃんか、唯の……唯のぶぁかあぁ……!

141: 2010/10/04(月) 00:22:04.85 ID:5P1tSQg+O
「お願い、耳は止めてぇ!ヘンになっちゃうよぉ……!あぁん!」

「……さて、邪魔者は帰りますか」

「そうね」

「やれやれです」

「……なあ、あれほっといていいのか?」

145: 2010/10/04(月) 00:27:11.63 ID:5P1tSQg+O
私の一日の始まり。

自分の机まで全力疾走、そして邪魔なカバンをスラムダンク。

「姫ちゃん、おはよう!」

おはよう、の挨拶といっしょに全力でハグされる。

……今日の私はちょっと違うよ。気づくかな。

146: 2010/10/04(月) 00:31:59.47 ID:5P1tSQg+O
「お、姫ちゃんシャンプー変えたね!レモンの香りがするよ!」

正解。唯のといっしょにしたの。

「へへー、姫ちゃんは今日も可愛いね。むぎゅーっ」

今すぐ止めないと頭ワシャワシャするよ。

「きゃー、助けてー!」

149: 2010/10/04(月) 00:34:17.90 ID:5P1tSQg+O
私はイジワルなおさわり姫じゃなくなってしまった。

今じゃすっかり唯のオモチャ。

悔しい。でもちょっと嬉しい。

「ひーめにゃんっ♪」

にゃっ!?

154: 2010/10/04(月) 00:44:32.66 ID:5P1tSQg+O
実は最近、こっそり秋山さん、もとい澪さんに詞を教わってる。

思いを込めた詞をプレゼントするために。

ねえ唯、いつか必ず完成させるから。

その時は、笑わずに受け止めてね。

私の本当の気持ち。



おしまい

157: 2010/10/04(月) 00:53:54.44 ID:5P1tSQg+O
終わりです
スレを提供してくれた方に支援してくださった方ありがとう
姫子と梓が唯の家でお泊まり対決、なんて展開も考えたけど止めました

とある姫ちゃんのセリフは、トランすゐマーさんとこからパクってきました。ごめんなさい

164: 2010/10/04(月) 01:31:15.59 ID:5P1tSQg+O
ぎゃあああ
姫ちゃんの進路の伏線回収するの忘れてたorz

183: 2010/10/04(月) 08:00:57.41 ID:5P1tSQg+O
私のお気に入りの時間。

音楽室まで全力疾走。そして邪魔なカバンをスラムダンク。

「姫にゃん、いらっしゃい!」

歓迎の言葉と共に唯の強烈なハグ。うむ、至福至福。

でも姫にゃんは止めようか。

184: 2010/10/04(月) 08:08:06.07 ID:5P1tSQg+O
私は立花姫子。ソフトボール部だったけど、わけあってここ軽音部に入り浸ってる。

「んー、今日の姫にゃんはキンモクセイの香り~」

この可愛い生き物は平沢唯。私をオモチャにする困ったちゃん。

「もう、暑苦しいから離れてください!」

この小さな黒猫クンは中野梓。嫉妬深くていやんなっちゃうよ。

186: 2010/10/04(月) 08:14:08.54 ID:5P1tSQg+O
「もう、立花先輩は軽音部じゃないでしょう!」

そうはいうがキミ、紅茶にケーキが六人分あるばかりか、今や私専用のイスまで用意されているのだがね。

わかったかい?ヤキモチ焼きの子猫ちゃん。

「ヤキモチなんか焼いてないです!」

それなら唯からもう少し離れてくれよ。いや離れてください。

188: 2010/10/04(月) 08:19:59.02 ID:5P1tSQg+O
「だいたい立花先輩は、受験勉強は大丈夫なんですか?」

ぐさり。

相変わらずストレートに人の悩みを突いてくるね。

進学か就職か。私はいまだに決めていなかった。

進路調査書に、唯に永久就職って書いてら怒られるかなあ?

191: 2010/10/04(月) 08:25:51.52 ID:5P1tSQg+O
そろそろ本気で考えないと。うーむ。

「ひーめーにゃん」

ひゃうっ!?……じゃなくてじゃなくて、なんだね平沢唯クン。

「姫にゃんに悩んだ顔は似合わないよっ!ほら、笑って笑って!」

……でへへ。唯の髪をくんかくんかしていられるなら、将来なんかどうでもいいや。

194: 2010/10/04(月) 08:33:03.80 ID:5P1tSQg+O
「お二人さん、いっそ結婚しちゃったらどうだ?」

「な、何を言ってるんですか律先輩!」

そうですよ律先輩。唯がお婿さんで、私がお嫁さん。最高じゃないですか。

「いいじゃんいいじゃん、二人だけのDream Time作っちゃえよ」

さらっと心の傷を抉らないでください。

196: 2010/10/04(月) 08:39:45.82 ID:5P1tSQg+O
「でも、姫子が来てくれてよかったよ。唯も真面目に練習するようになったし」

そうでしょう澪さん。さすが私。婿をここまで育て上げるとは。

今の軽音部は、学祭に向けて毎日頑張って練習してます。

ちなみに今やってる曲は、「ごはんはおかず」。唯作詞のラブソングです。

「姫子はおかず」にしてもよかったのにな。

197: 2010/10/04(月) 08:45:43.86 ID:5P1tSQg+O
そんなこんなで、私の充実した一日もおしまい。

みんなで帰り支度をします。

「……あのさ、姫にゃん」

なんだい唯、思いつめた顔をして。キミは笑った顔のが可愛いよ。

「あの……明日なんだけど、うちに泊まりに来てくれないかな」

ほえ?

199: 2010/10/04(月) 08:54:31.09 ID:5P1tSQg+O
「明日、妹が友達の家に泊まりに行っちゃうんだ。私のうち、両親いないから……」

……ほええええ!?

まさかそんな、いや、そんなバカな!

だって私たち、まだチューもしてないんだよ?お互いの両親にご挨拶もしてないんだよ?

不潔よ唯、不潔よ!見損なった!キミには失望した!

201: 2010/10/04(月) 09:02:41.09 ID:5P1tSQg+O
「なんだよ唯ー、私も混ぜろ!」

「ダメー、姫にゃんがいいの!」

その一言に引導を渡される私の理性。

気がついたら私は、未来の婿に熱烈なハグをかましていました。

「うにゅー、やーめーてー」

202: 2010/10/04(月) 09:04:34.78 ID:5P1tSQg+O
ごめん講義

211: 2010/10/04(月) 11:03:03.22 ID:5P1tSQg+O
構わずに全力でほっぺたぷにぷに。。

またヘンな声だして、誘ってるの?

キミはどこまで私を壊す気なの?

急いで帰って支度しないと。ごめん唯、もう限界。これ以上ここにいたら、私……。

「ダメです!」

213: 2010/10/04(月) 11:07:40.91 ID:5P1tSQg+O
「あずにゃん?」

「ダメです、立花先輩が泊まるなら私も泊まります!」

おいおい、何を言い出すんだい黒猫クン。大人の世界に首を突っ込むのは止めたまえ。

「この人、唯先輩に何するかわかりません!監視役が必要です!」

まあ、キミの言ってることは正しいよ。二人でナニするか決めてないからね。

215: 2010/10/04(月) 11:12:37.54 ID:5P1tSQg+O
どうか私を下品な子って思わないでください。まだ混乱してるんです。

それにしても、そんなに必氏になっちゃって。そんなに寝取られるのが嫌なのかい?

「うーん、確かに今の姫子は何をしでかすかわからないな」

え。

「先日の件もあるからなぁ」

216: 2010/10/04(月) 11:15:38.82 ID:5P1tSQg+O
ち、ちょっと待った澪さんに部長の人。

私たち夫婦の新婚生活に、猫を飼う予定なんかないよ?

「梓ちゃん、しっかり二人を見守ってね。あと報告書もお願いね」

「はい、任せてください!しっかりと監視しますから!」

ね、猫を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ……。

218: 2010/10/04(月) 11:26:48.08 ID:5P1tSQg+O
すっかりテンションが下がってしまいました。

これでは新婚気分も半減です。

黒猫が前を横切ると不幸になるというのは、どうも本当のようです。

「姫にゃーん、元気ないよ?」

……ああでも、やっぱり可愛いなあ。

219: 2010/10/04(月) 11:35:09.57 ID:5P1tSQg+O
すがすがしい土曜のお昼すぎ。

準備万端、コンディションはバッチリ。時間も問題なし。

……あ、お土産持ってった方がいいよね。

田舎から送られてきたリンゴを持っていこう。確か来客用のクッキーもあったよね。

お見舞い用のメロンもあったっけ。花瓶のバラも持ってこっと。ちょっとキザっぽく決めてみたいし。それからそれから……。

220: 2010/10/04(月) 11:40:54.97 ID:5P1tSQg+O
気がついたら荷物が倍近く増えていました。

肩と両腕にけっこうキます。

だけど私はくじけない。ソフトボール部とコンビニのバイトで鍛えられてるから大丈夫。

ゆーいちゃーんのたーめならえんやこーらー。ふんすっ!

ビリッ。

221: 2010/10/04(月) 11:45:20.60 ID:5P1tSQg+O
「あー、姫にゃんおそいよー。どうしたの?」

言えません。

お土産の紙袋が破れたせいで、玄関先にメロンをぶちまけちゃったなんて口が裂けても言えません。

「レディを待たせるなんて、なってませんね立花先輩」

出たな疫病神。

223: 2010/10/04(月) 11:49:02.02 ID:5P1tSQg+O
「すごい荷物だけど、どうしたの?」

よくぞ聞いてくれました。

はいこれ、全部キミへのささやかなプレゼントだよ。

「ふあぁああ……。ありがとぉー、姫にゃん!」

言葉も出ないか黒猫クン。これが立花流物量作戦だよ。

224: 2010/10/04(月) 11:55:37.65 ID:5P1tSQg+O
無邪気な笑顔を浮かべる唯クン。こんなものでそんなに喜んでくれるとは、キミは欲がないね。

だけど本命はコレだよ。情熱の赤、棘の痛みの歓び。どうぞこのかぐわしき花を……。

ありゃ、散ってる。

「なんでこのメロン、わざわざカットしたんですか?」

追い討ちをかけるな黒猫クン。

247: 2010/10/04(月) 16:30:30.31 ID:5P1tSQg+O
「さあ、いらっしゃい。姫にゃんは初めてだよね」

ええ、初めてです。初体け……あれ?黒猫クンも初めてだよね?

「私は何回も来てますよ。それがなにか」

荷物がやたらと重いです。でも私の心はもっと重いです。

先を越されるなんて、悔しい。

249: 2010/10/04(月) 16:37:16.28 ID:5P1tSQg+O
「あずにゃんは、憂と同じクラスだからね」

……なんだ、コネですか。七光りですか。それってノーカンだよね。

ところで、憂さんってどんな方?

「憂?家事万能でよくできた妹だよ」

きっと唯みたいに、優しくてあったかい子なんだろうなぁ。暴力とは無縁の、天使みたいな子。

251: 2010/10/04(月) 16:43:01.14 ID:5P1tSQg+O
ひとまず平沢家のリビングに集合。

きちんと整理されてて、快適なお部屋です。

床もピカピカ。汚れたルーズソックスで上がるのが申し訳ない気分。

「私、夏はいっつも床の上ゴロゴロしてるんだ~。涼しいんだよ」

三十分ほどゴロゴロしていいですか?

254: 2010/10/04(月) 16:55:49.40 ID:5P1tSQg+O
「じゃあ、私のお部屋にご案内~」

ああ、この日を待っていたんです。

唯のお部屋です。桃源郷です。エデンの園です。

「そんなにたいしたことなかったですよ」

なんで入ってるんだ、キミは。この泥棒猫。

255: 2010/10/04(月) 16:57:43.07 ID:5P1tSQg+O
「どう……かな」

大丈夫、すっごく綺麗だよ。

「恥ずかしいよぉ……」

閉じちゃダメ。もっとよく見せて。

「入り口で何をしてるんですか」

256: 2010/10/04(月) 17:05:31.31 ID:5P1tSQg+O
唯の部屋はきちんと整理されていました。

もっとこう、服や下着が散らばってる光景を期待していたのに。

「憂に整理してもらいましたね。昔はめちゃめちゃだったもん」

なるほど、シーズンオフってわけか。

そして黒猫クン。さっきからうらやましくて氏にそうだよ。

258: 2010/10/04(月) 17:14:21.25 ID:5P1tSQg+O
実に素敵な午後でした。

ベッドにダイブして枕の香りをかいだり、ぬいぐるみをペロペロしたり。

ゴミ箱の中身のチェックもしました。

本棚に並べられた漫画のページの隙間に挟まった髪の毛をこっそりポケットに入れました。

気がついたら夜になってました。

260: 2010/10/04(月) 17:18:01.43 ID:5P1tSQg+O
晩ご飯です。

憂さんのカレーを食べながら、ケータイカメラであちこちパシャパシャ。

「姫にゃん、楽しそう。誘ってよかったよ」

「私が唯先輩についててよかったです」

聖地巡礼、最高……!

261: 2010/10/04(月) 17:24:30.60 ID:5P1tSQg+O
「立花先輩、さっきからご飯ばっかり食べてますね」

「姫にゃんいいの?もっとカレーあるよ?」

いえいえ、これでいいんです。

カレーちょっぴり、ライスたっぷり。私はすっかりHTTに毒されてました。

ちなみに私は、福神漬けよりはラッキョウ派です。

262: 2010/10/04(月) 17:49:42.62 ID:5P1tSQg+O
「ごちそうさまでしたー!」

「私、お風呂入れてくるね」

さて、食器を洗いたいと思います。

いっちょいいところを見せてあげま……。

ガラガラ、ガチャン。

264: 2010/10/04(月) 17:54:52.45 ID:5P1tSQg+O
「あっ……あーあ、やっちゃいましたね立花先輩」

平沢家の食器が粉々になってしまいました。

黒猫クンがまるで水を得た魚です。

「こりゃ、ただじゃすみませんね。唯先輩、悲しむだろうなーあ」

……はは。

265: 2010/10/04(月) 17:59:02.21 ID:5P1tSQg+O
……考えてみたら、私っていいとこないですよね。

勝手に勘違いして暴走するし、失敗ばかりだし。

進路もいまだに決まってないですし。

こんな私、唯には相応しくないですね。

黒猫クン、あとは任せたよ。

266: 2010/10/04(月) 18:02:41.77 ID:5P1tSQg+O
「……わーわー、立花先輩!ごめんなさいごめんなさい!もう泣かないでください!」

泣いてなんかないもん。心の冷や汗だもん。

「私もいっしょに唯先輩に謝りますから!ほら、いっしょに片付けましょう!」

黒猫クンが私の目元を布巾で拭ってくれます。

ありがとう、キミっていいとこあるね。でも布巾は止めて。

267: 2010/10/04(月) 18:10:16.60 ID:5P1tSQg+O
「ありゃりゃ、大変」

唯が戻ってきました。

ごめんなさい、私がやりました。本当にごめんなさい。

「あの……すみませんでした!」

「いいのいいの~。二人とも怪我はなかった?」

270: 2010/10/04(月) 18:21:43.38 ID:5P1tSQg+O
唯は怒りませんでした。私の心配をしてくれました。

「姫にゃん、意外に泣き虫さんなんだよね~」

泣いてないってば。

「私もよく失敗するんだ~。今もお風呂の栓閉め忘れたままお湯入れちゃってるし」

いや早く閉めてこようよ。

271: 2010/10/04(月) 18:25:58.54 ID:5P1tSQg+O
紆余曲折ありましたが、入浴タイムです。

黒猫クン、先に入りたまえ。私と唯で後から入るから。

「ダメですよ!私と唯先輩で入りますから、立花先輩がお先にどうぞ」

「一人ずつじゃ、ダメなのかなぁ?」

これは珍しい、唯のツッコミです。

274: 2010/10/04(月) 18:31:36.63 ID:5P1tSQg+O
結局三人で入ることにしました。

おや?キミたち、バスタオルは?

「ほえ?なんで?」

「バスタオル巻いて入浴なんて、おかしいでしょう?」

え?……ええええぇー!?

275: 2010/10/04(月) 18:36:08.95 ID:5P1tSQg+O
いやいやいや、バスタオル巻いて入浴なんて当たり前でしょ?

だって小学校の林間学校では、みんなそうしてたよ?

見えちゃうでしょ?見えちゃうから!

見えちゃうから目の前で脱がないで!ああああ、一糸まとわぬ唯が目の前に、無理無理無理!

ていうか私も脱ぐの?ごめんなさい無理です、心の準備が!うあああ唯止めて、せかさないで!うわあああ……。

277: 2010/10/04(月) 18:42:06.73 ID:5P1tSQg+O
「……姫にゃん、どうして壁の方を向いてるのかな」

「ほっときましょう。そういう年頃なんですよ」

聞けば軽音部の合宿でも、みんな無防備に入浴しているのだとか。

キミたち、汚れてるよ。フケツだよ。

若者の性は乱れてるよぅ……。

282: 2010/10/04(月) 18:48:58.60 ID:5P1tSQg+O
「あずにゃん、お背中流したげる~」

「どうもです」

なんてうらやましい。いやちっともうらやましくない!

「後で姫にゃんのお背中も、流してあげるね」

にゃあああああんっ!?

284: 2010/10/04(月) 18:56:14.47 ID:5P1tSQg+O
……私にはソフトボールで鍛えた足がある。大丈夫、きっとうまくいくさ。

「はい、終わったよ~。次は姫にゃん!」

逃げろっ!

「あ、こら!あずにゃん捕まえて!」

わ、こら何をするんだ黒猫クン!止めろ、止めるんだ!お願い止めて、許して!いやあああぁぁぁ……。

286: 2010/10/04(月) 19:01:21.67 ID:5P1tSQg+O
「姫にゃんったら、照れ屋さんなんだから」

モウ、オヨメニイケナイ……。

「子供なんですよ」

幼児体型のキミには言われたくないよ。

「はい、コーヒー入れたよ」

287: 2010/10/04(月) 19:04:03.62 ID:5P1tSQg+O
「姫にゃん、砂糖とミルクは?」

いらない。

「ブラックかぁ~。大人だねぇ~」

「無理してるだけじゃないですか」

うるさいな、子猫のキミはミルクでも飲んでなさい。

289: 2010/10/04(月) 19:07:47.72 ID:5P1tSQg+O
ねえ、唯。

「んー?」

唯は進路どうすんの?

「私は進学にする。N女子大に決めた」

……そっか、唯も進学するんだ。

293: 2010/10/04(月) 19:16:04.79 ID:5P1tSQg+O
大学で何を勉強するの?将来は何?

「んー、決めてないや」

……何それ。

「私、軽音部のみんなとずっといっしょにいたいんだ。だからみんなで同じ大学を進路ににしたの」

ふぅーん、いいなあ。……ニガっ。

299: 2010/10/04(月) 19:33:36.36 ID:5P1tSQg+O
それからいっぱいおしゃべりしました。

気がついたら夜中の一時。そろそろ寝ないと。

居間に布団が三つ。今日は唯もいっしょに寝るようです。

……って黒猫クン。何で唯の隣の布団を取ってるんだ。

「悪いですか?唯先輩のボディガードです」

300: 2010/10/04(月) 19:37:21.62 ID:5P1tSQg+O
そんなおいしいポジションを、キミに譲るわけにはいかないな。

「あなたは何をするかわかりませんから」

お忘れのようだが、私はキミの先輩だよ?

「こんな時ばかり先輩風吹かせないでください!」

「あーもー、私が真ん中の布団にするからケンカしないの!」

302: 2010/10/04(月) 19:42:47.68 ID:5P1tSQg+O
草木も眠る丑三つ時。

眠れません。

ブラックコーヒーが予想外に効きました。

隣の唯を見ると、もうすやすや寝息をたてています。

やっぱり寝顔、可愛いなぁ。写真撮っちゃおうかなぁ。

303: 2010/10/04(月) 19:46:16.75 ID:5P1tSQg+O
おや?

よく見ると、黒猫クンが唯の背中に抱きついているではありませんか。

寝ぼけたフリしてるけどバレバレ。バッチリ起きてます。

負けてたまるか。私は正面からガバッと、

「……むにゃ、あーいーすぅー……」

304: 2010/10/04(月) 19:49:43.23 ID:5P1tSQg+O
ふおおー!?

なんと唯が自ら抱きついてきました。こら、私はアイスじゃないよ。

てか顔近いって。ちょっと唯、ダメだよ。

ヤバいって。これ以上はヤバいって!まだ心の準備ができてないのに!唇が、唇がああぁぁあ!



私の意識は、そこで途切れた。

308: 2010/10/04(月) 20:32:17.82 ID:5P1tSQg+O
翌朝。とってもいいお天気です。

なんだか素晴らしい夢を見た気がします。

黒猫クン、おはよう。爽やかな朝だね。

おや、目が真っ赤に腫れてるよ。どうしたんだい?

「……知りません。もう知らない……」

310: 2010/10/04(月) 20:35:24.90 ID:5P1tSQg+O
ほえ?

「唯先輩のばかあぁー!フケツです、最低です!」

何を言ってるんだ、この子は。

「みんな大嫌いだああぁぁあ!わああぁぁああん!」

やれやれ、年頃の女の子はこれだから困る。

311: 2010/10/04(月) 20:39:47.94 ID:5P1tSQg+O
楽しい一日はあっという間に終わります。

気がつけばもう帰る時間。

ちなみに黒猫クンは、泣きながら先に帰ってしまいました。

「またいつでも遊びに来てね、姫にゃん!」

ありがとう、とても楽しかったよ。

312: 2010/10/04(月) 20:43:34.88 ID:5P1tSQg+O
「お姉ちゃん、ただいま!」

へえ、あなたが憂ちゃんか。本当に唯にそっくり。可愛いなあ、はじめまして。

「あら……あなたがお姉ちゃんの言ってた立花姫子さんだったんですか……」

ざわり。

何故でしょう。一瞬、凄まじい寒気と恐怖に襲われました。

313: 2010/10/04(月) 20:51:10.56 ID:5P1tSQg+O
……

私のお気に入りの時間。

音楽室まで全力疾走。そして邪魔なカバンをスラムダンク。

「姫にゃん、いらっしゃい!」

歓迎の言葉と共に唯の強烈なハグ。うむ、至福至福。

あのね、唯。今日はキミにお知らせがあるんだ。

315: 2010/10/04(月) 20:58:12.03 ID:5P1tSQg+O
「何かな、姫にゃん?」

あのね……私も目指すことにしたんだ、N女子大。

「ほんと?やった!これでみんないっしょだね!」

それでね、もしいっしょに入学したら、……HTTに入れてほしいの。サックスとかどうかな?

「もちろん、大歓迎だよ!今から楽しみになってきたよ!」

317: 2010/10/04(月) 21:02:53.46 ID:5P1tSQg+O
「盗らぬ狸の皮算用ですよ、二人とも。まずはしっかり勉強しないと」

わかってるよ、黒猫クン。これでも唯よりは勉強してるから大丈夫さ。

「むむ、負けないよ!」

「さて、そろそろ練習しますよ」

待って、もう一つ。

318: 2010/10/04(月) 21:12:29.61 ID:5P1tSQg+O
一瞬、澪さんと目が合う。小さくうなずいてくれた。

ねえ唯、完成したよ。

私の思いを込めた詞。

受け止めてくれるよね。

溢れんばかりのこの気持ち。



終わり

319: 2010/10/04(月) 21:17:10.16 ID:G89it+pAP

320: 2010/10/04(月) 21:20:25.10 ID:kWeoJiqq0
おっつー

323: 2010/10/04(月) 21:29:46.50 ID:5P1tSQg+O
今度こそ終わりです。
ほんのおまけのはずが、予想外に長い話になりました。
伏線回収できて、没エンドも生かせてよかったです。

てかこんなん姫子ちゃうわ。

引用元: 唯「隣の席のおさわり姫」