1: ◆yz988L0kIg 2017/11/04(土) 20:47:38.68 ID:ihQBD9UG0
初期Rの雪美ちゃんがPのことをあなたって呼んだり呼び捨てしたりする理由についてのお話です。
2300文字ぐらいのとても短いお話です。
2300文字ぐらいのとても短いお話です。
2: 2017/11/04(土) 20:49:08.55 ID:ihQBD9UG0
雪美をスカウトして一週間が経った。
未だに、私と雪美は奇妙な距離感で接している。
『アイドル………私が……。あなたが……私を……。……うん。……約束、して…………手、つないで……。……これで…大丈夫……迷わない……から。』
雪美と出会った日、いきなりこう言われて面食らったのを今でも覚えている。
まるでどこかで出会ったことのあるような口ぶりだった。
だから、というわけではないが私は思わず彼女をスカウトしたのだった。
「レッスン……終わった………」
仕事の休憩がてらぼーっと天井を見ているといつの間にか雪美が目の前に居た。
未だに、私と雪美は奇妙な距離感で接している。
『アイドル………私が……。あなたが……私を……。……うん。……約束、して…………手、つないで……。……これで…大丈夫……迷わない……から。』
雪美と出会った日、いきなりこう言われて面食らったのを今でも覚えている。
まるでどこかで出会ったことのあるような口ぶりだった。
だから、というわけではないが私は思わず彼女をスカウトしたのだった。
「レッスン……終わった………」
仕事の休憩がてらぼーっと天井を見ているといつの間にか雪美が目の前に居た。
3: 2017/11/04(土) 20:50:26.00 ID:ihQBD9UG0
シュレディンガーの猫という思考実験の話を前に聞いたことがある。
詳しくは知らないのだけれど箱をあけるまで猫が生きてるか氏んでるかわからないといったような話だった気がする。
雪美はなんとなくそんな感じだ。
私が雪美の声に反応して雪美を観測するまでここに雪美は居なかったのではないかと思うことが多々ある。
決して華がないとか存在感がないというわけではないのだが、なぜか気づいたらそこに居るような不思議さがあるのだ。
「………………?」
じっと雪美を見つめていると、微笑んで可愛らしく小首を傾げる。
暖かみのある瞳に人形のような透き通った肌が表現する美しさにドキリとしてしまう。
「びっくり…した………?」
「ちょっとだけね、どうしたの?」
「…………………………」
詳しくは知らないのだけれど箱をあけるまで猫が生きてるか氏んでるかわからないといったような話だった気がする。
雪美はなんとなくそんな感じだ。
私が雪美の声に反応して雪美を観測するまでここに雪美は居なかったのではないかと思うことが多々ある。
決して華がないとか存在感がないというわけではないのだが、なぜか気づいたらそこに居るような不思議さがあるのだ。
「………………?」
じっと雪美を見つめていると、微笑んで可愛らしく小首を傾げる。
暖かみのある瞳に人形のような透き通った肌が表現する美しさにドキリとしてしまう。
「びっくり…した………?」
「ちょっとだけね、どうしたの?」
「…………………………」
4: 2017/11/04(土) 20:52:30.50 ID:ihQBD9UG0
今度は口をへの字にして何かを訴えかける。
目は口ほどに物を言うという言葉があるが、雪美ほどこの言葉が似合う人間も居ないだろう。
彼女は口数が少ない代わりに目で訴えてくるのだ。
初めてあったときもそうだった。
ひたすらに口を閉ざして目だけで私に語りかけてきたのだった。
今は一体何を言っているのだろう。
この瞳は何を語りかけているのだろう。
じっと雪美の瞳に耳を傾ける。
「何も無くてもこっちに来たいこと、あるよね」
「………………ふふっ」
今度は目を細めて本当に嬉しそうに笑った。
「そっちのソファでお話しようか」
「………うん」
5: 2017/11/04(土) 20:53:01.36 ID:ihQBD9UG0
来客用のソファに横並びで腰掛ける。
話をするといっても私はただパソコンで作業を続けるだけだし、雪美は本を読むだけだった。
「………ふふ。…うふふっ」
私がパソコンを開くのをみて、雪美は嬉しそうにカバンから本を取り出す。
今日の本は長靴を履いた猫だった。
大きな本を小さな手で持ち上げるようにして掲げて読む。
膝に置けばいいのにと思ったが本を食い入るように見ている様がとてもかわいらしかったので言わないことにした。
「あなた……私…………見てる………。どうして……?」
いつの間にか雪美と目があっていた。
「あっ、えっ、いや、なんでもないよ」
笑ってごまかしてパソコンに視線を移す。
なんとかごまかせたみたいだ。
安堵して作業の続きを始める。
話をするといっても私はただパソコンで作業を続けるだけだし、雪美は本を読むだけだった。
「………ふふ。…うふふっ」
私がパソコンを開くのをみて、雪美は嬉しそうにカバンから本を取り出す。
今日の本は長靴を履いた猫だった。
大きな本を小さな手で持ち上げるようにして掲げて読む。
膝に置けばいいのにと思ったが本を食い入るように見ている様がとてもかわいらしかったので言わないことにした。
「あなた……私…………見てる………。どうして……?」
いつの間にか雪美と目があっていた。
「あっ、えっ、いや、なんでもないよ」
笑ってごまかしてパソコンに視線を移す。
なんとかごまかせたみたいだ。
安堵して作業の続きを始める。
6: 2017/11/04(土) 20:53:45.79 ID:ihQBD9UG0
「本…………読みたい………?」
作業が興に乗ってきたころ、雪美がずいっと私に詰め寄って視界に本をねじ込んできた。
雪美は妙なところで強引というか大胆なところがある。
彼女自身に言ったことはないがアイドルとして大事な要素だと思っている。
もちろん、自身のプロデューサーの邪魔をすることに活かさなければだが。
「ううん、大丈夫」
「………………………………」
彼女の瞳が視線の外でうるさいほどに猛抗議をしていた。
「ちょっとだけ、読みたいかな」
諦めたようにソファにもたれかかった時、視線の端に雪美の笑顔が見えた。
作業が興に乗ってきたころ、雪美がずいっと私に詰め寄って視界に本をねじ込んできた。
雪美は妙なところで強引というか大胆なところがある。
彼女自身に言ったことはないがアイドルとして大事な要素だと思っている。
もちろん、自身のプロデューサーの邪魔をすることに活かさなければだが。
「ううん、大丈夫」
「………………………………」
彼女の瞳が視線の外でうるさいほどに猛抗議をしていた。
「ちょっとだけ、読みたいかな」
諦めたようにソファにもたれかかった時、視線の端に雪美の笑顔が見えた。
7: 2017/11/04(土) 20:56:10.86 ID:ihQBD9UG0
◆
「じゃぁ、ここで見てるから。撮影頑張ってね」
「うん…私…………頑張る……。………約束…だから」
彼女はよく約束という言葉を口にする。
実のところ私にもよくわかっていない。
ただなんとなく、初めてあったあの日に私と雪美は契約を交わしたような気がする。
どんな契約かはわからないが、なんとなくそんな気がするのだ。
それを雪美は”約束”と呼んでいるのかもしれない。
だからこの仕事は約束を果たすための第一歩なのだ。
私にとっても、おそらく雪美にとっても。
だからこそ雪美の好物であるイチゴのCMを一番始めに選んだ。
雪美の紺青の髪はイチゴがよく映える…私の中ではかなり自信があった。
スポットライトに照らされた雪美とイチゴを、黙って見守る。
「じゃぁ、ここで見てるから。撮影頑張ってね」
「うん…私…………頑張る……。………約束…だから」
彼女はよく約束という言葉を口にする。
実のところ私にもよくわかっていない。
ただなんとなく、初めてあったあの日に私と雪美は契約を交わしたような気がする。
どんな契約かはわからないが、なんとなくそんな気がするのだ。
それを雪美は”約束”と呼んでいるのかもしれない。
だからこの仕事は約束を果たすための第一歩なのだ。
私にとっても、おそらく雪美にとっても。
だからこそ雪美の好物であるイチゴのCMを一番始めに選んだ。
雪美の紺青の髪はイチゴがよく映える…私の中ではかなり自信があった。
スポットライトに照らされた雪美とイチゴを、黙って見守る。
8: 2017/11/04(土) 20:58:53.30 ID:ihQBD9UG0
撮影は思いの外滞りなく進んでいった。
監督も「ここまで仕草や表情で語れる10歳は初めて見た」と褒めてくれ、手応えの感じる撮影だった。
撮影の後、挨拶周りをし、着替えの済んだ雪美を連れて車に乗る。
「今日は初めての撮影だけど、どうだった?」
「イチゴ……………おいしかった…………」
「そう、それはよかった」
「また……イチゴ………………食べたい…」
「じゃぁまたイチゴの仕事とってこなきゃね」
真っ先にイチゴの話が出てくるのを聞いて、雪美もまだ10歳なんだなぁと再認識する。
雰囲気というか話し方が10歳らしくないのでこういうときに改めて気づいたりする。
私のこともあなたって呼ぶし。
しかし、どうして私のことをあなたと呼ぶのだろう。
赤信号で停車したところで、私は雪美に聞いてみることにした。
監督も「ここまで仕草や表情で語れる10歳は初めて見た」と褒めてくれ、手応えの感じる撮影だった。
撮影の後、挨拶周りをし、着替えの済んだ雪美を連れて車に乗る。
「今日は初めての撮影だけど、どうだった?」
「イチゴ……………おいしかった…………」
「そう、それはよかった」
「また……イチゴ………………食べたい…」
「じゃぁまたイチゴの仕事とってこなきゃね」
真っ先にイチゴの話が出てくるのを聞いて、雪美もまだ10歳なんだなぁと再認識する。
雰囲気というか話し方が10歳らしくないのでこういうときに改めて気づいたりする。
私のこともあなたって呼ぶし。
しかし、どうして私のことをあなたと呼ぶのだろう。
赤信号で停車したところで、私は雪美に聞いてみることにした。
9: 2017/11/04(土) 21:00:14.15 ID:ihQBD9UG0
「そういえばさ、雪美ちゃんはなんで私のことはあなたって呼ぶの?」
「ママ………パパ………呼ぶとき…………あなた…って………いう………」
「なるほど」
「………………………いや?」
「うん、やっぱり名前で呼んでほしいかな」
「わかった………………。………名前………………何………?」
「えぇ!?」
「冗談……だよ……。忘れるわけ…ない……………」
「びっくりした」
名前を知らないのかと思ってびっくりしたが、冗談を言ったりするということもびっくりした。
きっとまだまだ雪美の知らない部分があるんだろうな。
「これからも………よろしくね………」
雪美は私の名前を口にして、それからふふっと笑う。
「こちらこそよろしくね、雪美ちゃん」
これからも雪美との約束を守っていこうという決意を込めて、私はアクセルを踏み出した。
終わり
「ママ………パパ………呼ぶとき…………あなた…って………いう………」
「なるほど」
「………………………いや?」
「うん、やっぱり名前で呼んでほしいかな」
「わかった………………。………名前………………何………?」
「えぇ!?」
「冗談……だよ……。忘れるわけ…ない……………」
「びっくりした」
名前を知らないのかと思ってびっくりしたが、冗談を言ったりするということもびっくりした。
きっとまだまだ雪美の知らない部分があるんだろうな。
「これからも………よろしくね………」
雪美は私の名前を口にして、それからふふっと笑う。
「こちらこそよろしくね、雪美ちゃん」
これからも雪美との約束を守っていこうという決意を込めて、私はアクセルを踏み出した。
終わり
10: 2017/11/04(土) 21:04:12.78 ID:ihQBD9UG0
引用元: 【デレマスSS】雪美が名前を呼ぶまで
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