千早「それにしても珍しいですね」

Ｐ「ん？」

千早「竜宮の躍進で焦っていた時以来じゃないですか？ダブルブッキングなんて」

Ｐ「あ～今回は俺のミスじゃなくて律子なんだ。やってもらうのはあずささんの代役だ」

千早「律子が？それはそれで珍しい気がしますけど」

Ｐ「あず散歩がいつもとは違う曜日に収録が入ったことを忘れていたらしい」

千早「ちょっと待ってください。流石にあず散歩の代役は無理ですよ？」

Ｐ「あの番組はあずささんの空気感あっての番組だからな」

千早「そうです」

Ｐ「だから千早に行ってもらうのはゲスト出演のバラエティのほうだ」

千早「バラエティ……ですか」

Ｐ「やっぱ駄目か？」

千早「いえ、先ほども言いましたが助け合うのは当然です。少し不安はありますが」

Ｐ「大丈夫、お笑い色が強い番組じゃないから。出演者もアイドルがほとんどだ」

千早「どんな番組なんですか？」

Ｐ「アイドルの悩みを聞いてそれを解決するって番組なんだけど知ってるか？」

千早「もしかして前に春香が出てた土曜のゴールデン番組ですか？」

Ｐ「そうだ。知ってるなら話が早いな。千早は悩みを打ち明けるメインゲストだ」

千早「私にそんな大役が務まるのかしら…」

Ｐ「いつも通りの千早を出せば大丈夫だよ」

千早「プロデューサー……」

Ｐ「俺も現場に居るからな。ははっ、何もできないかもしれないけど」

千早「…いえ、心強いです」

Ｐ「それで相談する悩みなんだが」

千早「あ、はい。アンケートか何かあるんでしょうか？」

Ｐ「既に向こうに伝えてある」

千早「は？」

Ｐ「３日後だからな。流石にもう悩みを伝えてるし、解決法も番組の大まかな流れも決まってるよ」

千早「でも代役が私に決まったのって今ですよね？」

Ｐ「あぁ、だからあずささんの悩みをそのまま使ってもらう」

千早「え？」

Ｐ「ちなみにその悩みは『胸が大き過ぎて男の人の視線が少し恥ずかしい』だ」

千早「くっ…晒しものじゃないですか！」

Ｐ「いや、さらしを巻くという解決法ではなくて」

千早「そんな話してません！悩みの変更は出来ないんですか？」

Ｐ「解決法が『巨Oのアイドルたちと話し合って苦労を分かち合う』なんだよ」

Ｐ「既にその巨Oアイドル達のスケジュールもおさえてるから変更は難しい」

千早「ま、ますますみじめに……嫌です！私は収録にいきません！」

Ｐ「事務所の皆で助け合うのは当然って言ったじゃないか！」

千早「じゃあその地獄絵図から私を助けてください！」

千早「…四条さんに変わりに行ってもらうのはどうでしょうか？」

Ｐ「貴音は響のやってる『とびだせ！動物ワールド』のロケにゲストで参加だ」

千早「交代しましょう！私が代わりに我那覇さんのロケに行きます」

Ｐ「いや、スペシャル特番で海外ロケなんだよ。千早はパスポート持ってなかったよな？」

千早「くっ……」

Ｐ「それにさっきも言ったがスケジュールが空いていたのは千早だけなんだ」

千早「そ、想像してみてください！巨Oアイドルの前で胸が大きくて困ってると言う私を！」

Ｐ「……見てみたいな」

千早「バカにしてるんですか！？」

Ｐ「それで相談に乗ってくれるアイドルは３人だ」

千早「話を進めないでください！」

Ｐ「１人目は８７６の水谷絵里さんだな」

千早「…水谷さんをメインゲストにしたらいいのでは？」

Ｐ「先週の放送が『来週は７６５のあの方がメインゲストです』って引きだったから無理だな」

千早「そ、そんな……」

Ｐ「２人目は東豪寺プロの三条さん…の予定が向こうでも何かあったらしくて東豪寺麗華さんに変更」

千早「え？東豪寺さんってパッ…」

Ｐ「パッ？」

千早（プロデューサーは知らないのかしら？ほぼ公然の秘密と化してる東豪寺さんがパッドってこと）

千早「いえ、なんでもないです」

Ｐ「それで３人目が美希だな」

千早「スタジオに美希がいるんですか！？」

Ｐ「うおっ！？急に大きな声を出さないでくれよ」

千早「美希にメインゲストやってもらいましょう！それなら問題ないですよね？」

Ｐ「それが来週のメインが美希だから２週連続は流石に…」

千早「じゃあ来週のメインを私がやります！」

Ｐ「う～ん、それなら大丈夫かな？ちょっと確認をとってみる」

千早「全力でお願いします」

Ｐ「大丈夫みたいだ」

千早「それは良かったです」

Ｐ「じゃあ千早は相談を受ける巨Oアイドルということで」

千早「何故！？他の事務所の人でいいじゃないですか！」

Ｐ「７６５の穴を他で埋めてもらうわけにもいかないよ」

千早「くっ…メインじゃないだけマシと思うしかないのかしら」

Ｐ「それじゃ頼んだよ、千早」

千早「……最悪の一日になりそうね」

千早「そいうえば、美希の悩みってなんだったんでしょうか？」

Ｐ「もうアンケートに答えた後らしいぞ」

千早「え？それじゃあ」

Ｐ「あぁ、来週は美希の悩みを千早が代わりに言うことになるな」

千早「……嫌な予感しかしないんですけど、美希は何て言ったんですか？」

Ｐ「詳しくは聞いてないけど夜に眠れないとかなんとか」

千早「…昼寝のしすぎでしょう。まぁそれなら大丈夫ですね」

収録当日、テレビ局


千早「……憂鬱です」

Ｐ「そう言うなって。ん？あそこでスタッフに頭下げてるのって」

千早「水谷さんのプロデューサーの８７６の人ですよね？」

Ｐ「尾崎さんだな。正確には８７６じゃなくてフリーの人らしいが」

千早「こっちに来ますね」

Ｐ「何かあったのかな？あれ？横に居るのって…」

尾崎「すいません！絵里が体調を崩してしまって」

Ｐ「それで急遽代役ですか。それは良いんですけど……えっと」

涼「…今日はよろしくお願いします」

千早（目とオーラが氏んでる……）

Ｐ「すいませんが彼女、というか彼って先週男であることをカミングアウトしたばかりの…」

尾崎「はい、秋月涼です。収録はカミングアウトの前だったということで押し通します」

千早（な、何の解決にもなっていない…）

Ｐ（あ、憐れすぎる…これの放送のころには世間も完全に男と認識しているはずなのに）

尾崎「それでは本番でよろしくお願いします。さぁ次に行きましょう」

涼「…はい」

千早（しかしこれはまずい事態なのかもしれない）

千早（胸が大きくて困ってると言う美希に対して貧にゅ……私、パッド、男が共感をする）

千早（その場面を想像するだけで寒気がするわ）

千早（水谷さんに注目が集まるように立ち回って影を薄くするつもりだったのに…）

千早（１人に注目を集めようとしても、この３人なら押し付け合いになるに決まっているわ…）

千早（その結果、ひと括りにされて『滑稽な３人組』として視聴者の記憶に残ってしまう）

Ｐ「お～い、時間だからスタジオに行くぞ」

千早（くっ…なにも策が浮かばない）

千早「……わかりました」

番組放送後


千早「律子が放送以後すごく優しくしてくれるんですが」

Ｐ「良かったじゃないか。番組も高視聴率だし、すごい話題になってるぞ」

千早「アイドル番組としてではなくシュールなコント、シリアスな笑いと評価されてますけど…」

Ｐ「スタッフの人たちも一時はどうなるか心配してたらしいけど、お礼の電話まで貰ったよ」

千早「全くもって本意ではないです」

Ｐ「今週も悩みが悩みだけにとても楽しみにしていると」

千早「ちょ、ちょっと待ってください！美希の悩みは夜眠れないことじゃなかったんですか！？」

Ｐ「そうだぞ。『大切な人を想うと体が熱くなって夜眠れない』という悩みだ」

千早「」


おわり

以上です。支援等ありがとうございました。

乙