1: 2011/08/21(日) 20:54:37.02 ID:ihPXYSdAo
律梓
だめにゃんが律の誕生日に頑張るお話
だめにゃんが律の誕生日に頑張るお話
2: 2011/08/21(日) 20:55:52.19 ID:ihPXYSdAo
梓「……」
カレンダー:二十一日、律先輩バースデー!
梓「もう一週間切っちゃった」
梓「何か贈り物したいけど、私じゃ何もできないなぁ」
梓「はぁ、普段から家事習っておけばよかった」
チュン チュン
梓「たい焼きでも買ってあげればいいよね」
梓「いや、ここは奮発してハーゲンダッツにしてあげよう」
梓「うん、そうしよう。あの人ラムレーズン好きだし」ケッテー!
3: 2011/08/21(日) 20:56:48.92 ID:ihPXYSdAo
梓「……」
梓「…………」
――――――
律『あっずさ~、カレーできたぞ』
梓『わ~、いっただっきま~す!』
パクパク モグモグ
梓『おいしい! 律先輩のカレー大好き!』
律『それだけ美味そうに食べてもらえたら、作りがいがあるよ』
梓『甘口でコクがあって、優しい味です』
律『はは、そりゃどうも』
パク…
梓『……』
律『どした?』
梓『あの、律先輩』
律『んー?』
梓『いつも、ありがとうございます』
律『うん』
梓『律先輩のおかげで、一人のときも心強いです』
律『いいんだよ』
梓『……』
律『親がいない時は、私を頼れって言ってるだろ』
梓『……はい』
――――――
梓「……」
梓「自信ないけど、やってみよ」
梓「こんなときにしか恩返しできないもんね」
4: 2011/08/21(日) 20:57:23.93 ID:ihPXYSdAo
梓「誕生日といえばケーキだよね」
梓「よし、立派なケーキを作って律先輩を驚かしてやろ」
サンプン クッキング!
梓「……」
梓「ケーキってどうやって作るんだろ」
梓「とりあえず卵は温めるよね」
梓「う~ん、でも卵一個のためにお湯を沸かすのももったいないしなぁ」
梓「!」ピーン
梓「ここは電子レンジの出番だ」
梓「レンジなら時間もエネルギーも節約できるし。うん、何て地球に優しいエコだろ」ピッ
ウィーーン
チュドーーーン!!!
梓「……」
モクモクモク
梓「……」
5: 2011/08/21(日) 20:57:50.17 ID:ihPXYSdAo
「正午をお伝えします」
ピッピッピッ ピーーー
梓「……ケホ」
6: 2011/08/21(日) 20:58:19.36 ID:ihPXYSdAo
プルルルル… ガチャッ
「はい、平沢です」
梓「あ、憂?」
「梓ちゃん? どうかしたの?」
梓「あのさ、ケーキってどうやって作るの?」
「あ、もしかして律さんに?」
梓「ち、違うもん! ちょっと自分で作って食べたくなっただけで……」
「ふふっ、羨ましいなぁ」
梓「違うって言ってるのに!」
7: 2011/08/21(日) 20:58:46.93 ID:ihPXYSdAo
「う~い~、お昼ご飯まだ~?」
「もう少しだけ待ってね、お姉ちゃん」
梓「ごめんね、お昼作ってる途中だった?」
「ううん、全然気にしなくていいよ」
梓「また、かけ直そうか?」
「どうせお盆で私もお姉ちゃんも暇だし、大丈夫」
梓「そっか。それじゃ教えてもらおうかな」
「は~い」
8: 2011/08/21(日) 20:59:31.89 ID:ihPXYSdAo
「それで、どんなケーキを作ってあげるの?」
梓「へっ?」
「チーズケーキとかタルトとか。スポンジケーキでも、ココアとかモンブランとかショートケーキとか色々あるよ」
梓「……考えてなかった」
「う~ん、初めて作るならパウンドケーキがおすすめかな」
梓「パウンドケーキ?」
「ほとんど焼きっぱなしで大丈夫だから、比較的簡単なケーキなんだよ」
梓「うん、それにしてみる!」
「それじゃメモのご用意を」
梓「了解!」
「まずは薄力粉、グラニュー糖、卵を用意しまして……」
梓「薄力粉ってうどん粉じゃだめ?」
「だめ」
梓「グラニュー糖って何?」
「お菓子用の砂糖なんだけど、なければ普通の砂糖でいいよ」
梓「ふむふむ、メモメモ」
9: 2011/08/21(日) 21:00:14.31 ID:ihPXYSdAo
・
・
・
カキカキカキ
「……って、こんな感じかな」
梓「ふんふんなるほど」
「ごめんね、電話じゃ伝えきれないかも」
梓「ううん、すごく参考になった」
「後は律さんの好みに合わせてだけど、好き嫌いはあるの?」
梓「何でも食べるよ。雑食だし」
「そんな動物みたいに……」
梓「ムギ先輩のケーキはいつも美味しそうに食べてるよ」
「それじゃ大丈夫だね。まぁ、梓ちゃんが作ってあげたものなら何でも喜んでくれると思うけど」
梓「……」カァッ
「梓ちゃん?」
梓「な、何でもない!」
10: 2011/08/21(日) 21:00:49.39 ID:ihPXYSdAo
「こんな所かな」
梓「ありがと、色々教えてもらって」
「ううん、頑張ってね梓ちゃん」
「うい~~おなかとせなかがくっつくよ~~~」
梓「何か悲痛な叫びが聞こえるけど大丈夫?」
「お姉ちゃん、今行くから待って!」
「ごめんね、また何かあったら電話して」
梓「うん、ありがと」
ガチャッ
梓「……」
梓「よし、頑張るぞー!!」
11: 2011/08/21(日) 21:01:25.46 ID:ihPXYSdAo
梓「とりあえず、試しに作ってみよう」
梓「えっと、砂糖はこれぐらいかな」バッサァ
梓「ラム酒はこんなぐらい?」ドバァ
梓「……」
梓「何かすごいにおいするけど……ま、いっか」
ベチャア
梓「……全然こねられない」
梓「とにかく焼いたら何とかなるよね」
12: 2011/08/21(日) 21:01:59.47 ID:ihPXYSdAo
・
・
・
梓「どうにか焼き上げたけど」
グチャァ
梓「……」パクッ
梓「うっ……ぱっさぱさで甘ったるくて、正直まずい」
梓「……」
梓「うん、誕生日までには何とかなるよね」
梓(多分)
13: 2011/08/21(日) 21:02:32.84 ID:ihPXYSdAo
―公園―
ミーンミンミンミーン
シャワシャワシャワシャワシャワ
律「あぢ~~」
梓「日陰じゃないですか」
律「日陰だろうがベンチの上だろうが、暑いものは暑いだろ」
梓「だからこそかき氷が美味しいんです」シャクシャク
律「それは同感」シャクシャク
14: 2011/08/21(日) 21:03:12.83 ID:ihPXYSdAo
梓「ふんふ~ん♪」
律「何かご機嫌だな」
梓「久しぶりの部活でしたから。家練よりみんなと合わせる方がやっぱり楽しいです」
律「だよな、家じゃ弟がうるさいって騒いでさ」
梓「それに、律先輩と二人きりになるのも久しぶりですし」
律「っ……」
律「ひ、久しぶりっても一週間ぶりぐらいだろ」
梓「一週間なら十分久しぶりです。だから、嬉しくて」
律「うっ……」
梓「……」シャクシャク
律「わ、私も梓と二人きりになるのが……」
梓「あぅ、きたきた」キーン
律「……」
梓「かき氷の醍醐味はこれですよね。あれ、何か言いました?」
律「何でも」プイッ
梓「?」
15: 2011/08/21(日) 21:03:45.47 ID:ihPXYSdAo
梓「やっぱりかき氷は氷あずきに限ります」
律「たい焼きといい、お前はあずきが好きだなぁ」
梓「だってあずきとあずさって似てるじゃないですか」
律「関係あんの?」
梓「ぜーんぜん」
律「何だよそれ」
梓「それにしても、律先輩がブルーハワイなんて似合わないです」
律「な、何だとー!」
梓「スイ、とか言って砂糖水かけてそうなのに」
律「お前の中で私はどんなイメージなんだ」
16: 2011/08/21(日) 21:04:15.54 ID:ihPXYSdAo
ジジ・・ ジジ・・ ミーンミーン
梓「ふ~、かき氷食べて頭すっきり、体ひんやりです」
律「大分涼しくなってきたな」
黒猫「ニャーン」
梓「あ、猫だ! おいで~」
黒猫「ニャーオ」
チリンチリン
律「あっぶね、自転車にひかれそうになったぞ」
梓「ずいぶん間が抜けた猫ですね」
黒猫「……」テクテク
律「暑そうな色してるな」
梓「この子のせいじゃないですよ。ほら、ちっち」
黒猫「……」プイッ
梓「あれ?」
黒猫「ニャーン!」ピョン
律「ととっ、危ないだろお前」
黒猫「♪」ゴロゴロ
梓「むー……」
律「嫌われたらしいな」
梓「ふんだ」
17: 2011/08/21(日) 21:04:42.82 ID:ihPXYSdAo
律「こら、お前」
黒猫「?」
律「もっと周りに注意を払え。いつか轢かれちまうぞ」
梓「まあまあ、猫は気ままな方がいいんですよ」
律「梓みたいに?」
梓「私は猫じゃありませんっ」
律「猫みたいに甘えん坊のくせに」
梓「むっ」
律「今日はいつもみたいに甘えてこないんだな」
梓「む~~……」
律「膝は占領されちゃったけど、私の肩は空いてるぞ」
梓「別にいいもん」
律「ふぅん、いいんだ」
梓「……」
律「……」
梓「……」ピチッ
律「素直でよろしい」
梓「うるさいです」
黒猫「……」ニヤニヤ
18: 2011/08/21(日) 21:05:24.43 ID:ihPXYSdAo
梓「……」ジー
黒猫「……」ジー
梓(もしかして、この子も律先輩のことが好きだったりして)
黒猫「」フニャァ
梓(律先輩は私の恋人なんだからね)
梓(絶対にあげないよーだ)
黒猫「?」
梓(でも、今だけ律先輩の膝の上は貸してあげる。いつもは私の特等席だけど)
黒猫「ファーア…」
梓(ね、何だかほっとするでしょ? 私も大好きなんだ、その場所)
黒猫「」ゴロゴロ
梓(何だか君には親近感が湧いてくるよ)
梓(同じ人が好きな者同士、惹かれ合っちゃうのかな)
律「何ぼ~っとしてんだ」
梓「何でもないですよ」
律「こいつと会話できるのか?」
梓「まさか」
黒猫「ニャッ」
19: 2011/08/21(日) 21:05:51.15 ID:ihPXYSdAo
シャワシャワシャワシャワシャワ
梓「もうすぐ私はじゅうななさい♪」
律「あれ、誕生日いつだっけ」
梓「十一月です」
律「まだ三ヶ月も先じゃん」
梓「三ヶ月なんてあっという間ですよ」
律「その頃には涼しくなってるだろうな」
梓「涼しいどころか、もう秋になって寒くなってますよ」
黒猫「zzz」
律「……そうだな」ナデナデ
20: 2011/08/21(日) 21:06:18.76 ID:ihPXYSdAo
律「何か雲が多くなってきたな」
梓「涼しくて結構じゃないですか」
律「けど、こりゃ雨が降るぞ」
梓「あ、天気予報でそんなこと言ってましたね」
律「洗濯物、取り込んでおかないと」
21: 2011/08/21(日) 21:06:45.65 ID:ihPXYSdAo
ジージージージージー
律「そっか、梓は十七歳になるのか」
梓「律先輩と同じ十七歳です」
律「私はもうすぐ十八になっちゃうよ。明日の日曜日にさ」
梓「あ、そっか。誕生日でしたね」
律「みんなには言ってないから、忘れられちゃってるだろうけど」
梓「みんなちゃんと覚えてますよ」
律「別にいいよ、誕生日なんか」
梓「何でですか、年に一度の大切な日なのに」
律「一つ歳をとるだけじゃん」
梓「そんなことないですよ。みんなでお祝いしたり、親に感謝したりする日です」
律「ふぅん、そんなもんかなぁ」
梓「私が律先輩をお祝いしてあげます!」ズイッ
律「そ、そっか」
梓(あれ? 何か引っかかるような)
22: 2011/08/21(日) 21:08:07.48 ID:ihPXYSdAo
梓「……」
律「梓?」
梓「…………」
梓「あっ!!」
黒猫「!?」ビクッ
律「ど、どうした急に」
梓「ごめんなさい、用事を思い出しました!」
律「え? あ、そうなの?」
梓「失礼します!」
ピュー
律「お、おい梓」
ステーン
律「あ、転んだ」
黒猫「……」フッ
律「おーーい! だいじょうぶかー?!」
「だいじょうぶでーーす!!」
ピューー
律「……変なやつ」
黒猫「ニャーゴ」
23: 2011/08/21(日) 21:08:52.73 ID:ihPXYSdAo
梓(しまった、すっかり忘れてた)
梓(律先輩にケーキ作ってあげようと思ってたのに!)
梓(今から間に合うかな……いや、間に合わせよう)
梓(いつもお世話になってる律先輩のためだもんね)
梓(よぉーーし! ファイト、私!)
24: 2011/08/21(日) 21:09:15.44 ID:ihPXYSdAo
ワォーン オンオン
梓母「梓、台所占領して何するの?」
梓「ひみつ」
梓母「花嫁修業でもするわけ?」
梓「違う!」
梓母「……その材料からするとケーキかしら。この前も作ってたし」
梓「」ギクッ
梓母「そういえば明日って……」
梓「ちょっと黙ってて!」
梓母「はいはい」
25: 2011/08/21(日) 21:09:51.86 ID:ihPXYSdAo
梓「えっと、バターをよく練って砂糖を入れて……」
梓母「ちょっと、量はちゃんと量ったの?」
梓「そんなの適当だよ」
梓母「だめだめ、入れすぎたり足りなかったりしたらまた失敗するわよ」
梓「うっ……」
梓母「この前のパサパサケーキ、後の処理が大変だったんだから」
梓「もう、分かったよ」
梓母「はい、大さじ」
梓「……」
梓母「どうしたの?」
梓「大さじって何グラム?」
梓母「……」
26: 2011/08/21(日) 21:10:17.43 ID:ihPXYSdAo
梓「で、砂糖を入れたら白っぽくなるまでよく混ぜて」
梓「……」
『ここでよ~~く混ぜたら、ふっくらと仕上がるんだよ』
梓「よ~~し」グイッ
梓「やぁやぁやぁ!!!」シャカシャカシャカ
梓母「……」
梓「たぁたぁたぁ!!」シャカシャカ
梓母「それじゃ格闘してるみたいよ」
梓「ふんふん!」シャカシャカ
梓母「……」
梓母(ま、女の子にとって好きな人のために料理するのは、格闘みたいな真剣勝負なのかもね)
梓「う~~~!!」シャカシャカ
梓母「……」ニヤニヤ
27: 2011/08/21(日) 21:10:47.31 ID:ihPXYSdAo
梓「溶いた卵をちょっとずつ加えて混ぜるっと」
梓「む~~~!!」シャカシャカシャカ
梓母「……」
梓「なじむまで混ぜたら、薄力粉類を入れてゴムべらで切るようにこねる」
梓「よいしょ、よいしょ」グッグッ
梓母「……」
梓「ふぅ、こんな所かな」
梓母「もっと混ぜなきゃ。ダマになってるじゃない」
梓「あ、ホントだ」
梓母「ちょっと貸してみなさい」
梓「だめ! 余計なお世話!」
梓母「何よ、せっかく手伝ってあげようとしてるのに」
梓「へ、へたでも自分で作りたいの!」
梓母「へぇ」
梓「そりゃ、私不器用だし……」
梓「今まで料理なんてやったことないから……上手くできないかもしれないけど」
梓「その方が……喜んでくれると思うから」
梓母「」キュン
梓「お母さん?」
梓母「……はっ」
梓母(わが娘ながら可愛いじゃない……不覚)
28: 2011/08/21(日) 21:11:14.77 ID:ihPXYSdAo
梓「溶かしたチョコとラム酒を加えて」
梓母「あら、ラム酒なんてお洒落ね」
梓「友達に教えてもらったんだ。アクセントになるんだって」
梓母(それでこの前のアレはやけにアルコールの香りがした訳か)
梓母「入れ過ぎちゃだめよ」
梓「分かってる」
梓「……」ソー
29: 2011/08/21(日) 21:11:59.37 ID:ihPXYSdAo
梓「そして生地につやが出るまでこねる」
梓「やぁ! やぁ! やぁ!」グイッグイッ
梓母「……」ソワソワ
梓母(だ、大丈夫かしら……? 危なっかしくて見てられない)
梓「ふん! ふん!」
梓母「……」ジー
梓母(でも、娘の頑張る姿は見たい……複雑だわ)
30: 2011/08/21(日) 21:12:25.99 ID:ihPXYSdAo
梓「最後に律先輩の好きなラムレーズンを加えて、生地はできあがり!」
梓母「お疲れさま、割と上手くできたんじゃない?」
梓「焼き上がるまで分からないけど、自信はある」
梓母「きっと美味しいわよ。じゃ、オーブンにかけましょう」
梓「うん!」
31: 2011/08/21(日) 21:12:56.92 ID:ihPXYSdAo
~~一時間後~~
梓「……」ソワソワ
ジーーーーー
梓「……」ワクワク
梓母(あの子ったら、ずっとああして)
梓「後五秒……四、三、二、一」
チーン!
梓「できたー!」
梓「あつ、あつっ」
梓母「あら、いい香り」
梓「紙をそっと外して冷まし、冷蔵庫に入れて一晩置く」
梓母「ねえねえ、ちょっと味見してみない?」
梓「食いしん坊だなぁ」
梓母「この前の失敗作食べてあげたじゃない」
梓「いいよ、ちょっとだけだからね」
梓母「わーい」
32: 2011/08/21(日) 21:14:03.53 ID:ihPXYSdAo
梓母「」パクッ
梓「……」
梓母「……」モグモグ
梓「ど、どう?」
梓母「うん、すごく美味しい」
梓「ホント!?」
梓母「これならきっと、りっちゃんも喜んでくれるわ」
梓「うん! ……ってお母さん!」
梓母「あれ、りっちゃんにあげるんじゃないの?」
梓「うぅ……」
梓母「真っ赤な顔しちゃって」
33: 2011/08/21(日) 21:14:29.84 ID:ihPXYSdAo
梓「ラップして一晩置いて、あっちで切ればしっとり仕上がる」
梓「そしてメッセージカードを添えて……できあがり!」
梓母「何て書いたの?」
梓「み、見ちゃだめ!!」
梓母「いいじゃない、減るものでもないし」
梓「それでもぜぇっったいだめ!!」
梓母「もう、分かったわよ」
34: 2011/08/21(日) 21:15:22.91 ID:ihPXYSdAo
カッチコッチ カッチコッチ
梓母「あら、もうこんな時間」
梓「ホントだ」
梓母「片付けは明日でいいから、もう寝なさい」
梓「はーい」
35: 2011/08/21(日) 21:15:52.87 ID:ihPXYSdAo
―梓の部屋―
梓「ふぅ、どうにか完成してよかった」
携帯「ピッピッ」
梓「あ、携帯チェックしてなかった」パカッ
梓「……」
梓「律先輩から電話あったんだ」
梓「今からかけ直すのは失礼だよね」
梓「うん、明日にしようそうしよう」
梓「……」
梓「ふふ、律先輩褒めてくれるかなぁ」
36: 2011/08/21(日) 21:16:21.67 ID:ihPXYSdAo
パラ… パラパラ…
梓「……雨?」
梓「そういえば、夜から降るって言ってたなぁ」
梓「明日には止んでたらいいけど」
梓「年に一度の、律先輩の大事な日だもんね」
梓「お天道さま、お願いします。律先輩のためにも雨を降らせないでください」
梓「……」
梓「おやすみ」
37: 2011/08/21(日) 21:17:26.41 ID:ihPXYSdAo
チュンチュン
梓「ん~、いい天気……でもないか」
梓「曇りのち雨ってところかな」
プルルルル… プルルルル…
ピッ
「ん~~、あずさぁ?」
梓「もしかして、寝てました?」
「……うん」
梓「もうお昼ですよ、律先輩のねぼすけ」
「うるせーし。夏休みぐらい寝かせろ」
梓「昨日はごめんなさい、電話に気づかなくて」
「それはいいけど、一体何の用?」
梓「お誕生日、おめでとうございます」
「……ん、ありがと」
梓「それで、今から律先輩の家に行きますんで。プレゼントがあります」
「えっ、何くれんの?」
梓「内緒です」
「ちぇっ、それじゃ後のお楽しみに」
梓「ダッシュで行きますんで、二度寝なんかしちゃダメですよ」
「はいよ。車に気をつけろよ、鈍くさいんだからお前」
梓「むっ……言われなくても」
「じゃ、待ってるから」
梓「はーい」
ピッ
梓「よし、準備しますか」
38: 2011/08/21(日) 21:17:54.66 ID:ihPXYSdAo
梓母「気をつけてね。あ、折りたたみ傘持って行きなさい」
梓「はぁい」
梓母「……梓」
梓「何?」
梓母「グッドラック」グッ
梓「……うん!」
39: 2011/08/21(日) 21:18:21.55 ID:ihPXYSdAo
テクテク テクテク
梓「せ~んろはつづく~よ~ ど~こま~で~も~♪」
黒猫「ニャー♪」
梓「あ、昨日の猫ちゃん。こんにちは」
黒猫「ニャッ」
梓「また会えるなんて奇遇だね」
黒猫「……」クンクン
梓「もう嗅ぎつけたの? ずいぶん鼻が利くんだ」
黒猫「……」ジー
梓「だめだよ、まずは律先輩に食べてもらうんだから」
黒猫「……」シュン
梓「……君も一緒に来る?」
黒猫「?」
梓「律先輩と、お祝いするんだ。そこで食べよ」
黒猫「ニャッ」
梓「よしよし、ちゃんとついてくるんだよ」
黒猫「ニャー」
40: 2011/08/21(日) 21:18:47.78 ID:ihPXYSdAo
ポツリ… ポツポツ…
梓「あっちゃ~、雨降ってきちゃった」
梓「傘持ってきてよかった。ケーキが台無しになっちゃうもんね」
黒猫「……」テクテク
梓「君も入りなよ、濡れちゃうでしょ」
黒猫「ニャア」
梓「ふっふ、猫を従えるなんて何だかいい気分」
41: 2011/08/21(日) 21:19:15.86 ID:ihPXYSdAo
ザーー ザーー
梓「雨が強くなってきたね」
黒猫「ニャー」
梓「でも、もう少しで律先輩の家」
梓「えへへ、律先輩どんな反応するかな」
梓「いっぱい喜んでくれるかなぁ」
梓「頑張って作ったケーキ……見てくれは悪いけど、気に入ってくれたらいいな」
42: 2011/08/21(日) 21:19:45.54 ID:ihPXYSdAo
黒猫「……」ピュー
梓「あ、ちょっと走っちゃだめだよ!」
黒猫「」ピュー
梓「猫ちゃんってば!」
梓「はぁ、はぁ……これじゃ私が猫に従ってるみたい」
梓「お~~い、待ってよ~~」
黒猫「ニャー!」
梓「も~~、勝手な猫」
43: 2011/08/21(日) 21:20:52.71 ID:ihPXYSdAo
黒猫「……」トテトテ
梓「……あっ」
梓「だ、ダメだよ! 赤信号だよ!」
黒猫「ニャッ?」
44: 2011/08/21(日) 21:21:35.61 ID:ihPXYSdAo
プーーーーーーーーッッッ!!
黒猫「?」
梓「あぶないっ!!!」
キィーーーーーーーーッッッ!!!
ドサッ
45: 2011/08/21(日) 21:22:12.25 ID:ihPXYSdAo
ザー シトシト… ザー
梓「……」
「お、おい大丈夫か! おい!」
梓「猫ちゃん、大丈夫……?」
黒猫「ニャッ、ニャー?」
梓「そ。よかった」
黒猫「」スリスリ
梓「もー……急に飛び出しちゃ、ダメじゃん」
黒猫「ニャー…」
梓「律先輩にも、注意されたでしょ」
黒猫「……」
梓「ホントにもう、この……」
……ばか猫。
――
――――
――――――――
46: 2011/08/21(日) 21:22:41.70 ID:ihPXYSdAo
――――――――
――――
――
カッチコッチ カッチコッチ
律「……」チラッ
律「……」
律「……」ウロウロ
律「……」チラッ
聡「何やってんだよ、うっとうしい」
律「うるさい殴んぞ」
聡「誕生日なのにカリカリしてるなぁ」
律「……」
47: 2011/08/21(日) 21:23:17.46 ID:ihPXYSdAo
カッチコッチ カッチコッチ
律「……遅い!!」
聡「」ビクッ
律「いくら何でも遅すぎ! 何やってんだあのバカ!」
聡「ちょ、落ち着けって」
律「あ~~~もう、連絡ぐらい寄こせってのっ!」
聡「こっちからすりゃいいじゃん」
律「……」
聡「知ってんだろ? 連絡先」
律「……」ポンッ
48: 2011/08/21(日) 21:23:44.88 ID:ihPXYSdAo
プルルルル… プルルルル…
律「……」
プルルルル… プルルルル…
律「」グリグリ
聡「イテテッ、苛つくのは分かるけど俺に当たるなよ」
律「黙れ」
聡「」
49: 2011/08/21(日) 21:24:49.75 ID:ihPXYSdAo
プルルルル… ガチャッ
律「!? おい梓お前今どこいんだよふざけんな!」
「もしもし、梓の母です」
律「」
「あ、りっちゃん? ごめんね、あの子携帯忘れたみたいで」
律「す、すいません。失礼しました」
「梓はもう着いたかしら」
律「いえ、それがその」
「まだなの?」
律「……はい」
「おかしいわね、もう一時間以上前に出てるんだけど」
律「本当ですか!?」
「え、ええ」
律「何してんだよあいつ……」ギリ
「もしかして、何か……」
律「!」
律「すいません、私ちょっと探してきます!」
「えっ? りっちゃん?」
律「失礼します!」
ピッ
律「聡、というわけだ」
聡「ん。俺も探そうか?」
律「お前は留守番。何かあったら電話しろ」
聡「りょーかい。ねーちゃんも、こっちの電話ちゃんと出てくれよ」
律「分かってる」
聡「マナーモードちゃんと切っとけよ! ……って、行っちゃった」
50: 2011/08/21(日) 21:25:19.24 ID:ihPXYSdAo
―玄関先―
唯「じゃ、じゃあ私が押すよ」
紬「うぅん、ここは私が」
澪「お~い、二人とも」
唯「あ、澪ちゃんだ」
紬「こんにちは」
澪「ここにいるってことは、律に?」
唯「うん! 憂と一緒にクッキー作ったんだ」
紬「私はマドレーヌ。澪ちゃんも?」
澪「私は手作りとかじゃないけどな」
唯紬「何?」
澪「参考書。ちゃんと勉強するようにってさ」
唯「おお、流石澪ちゃん。目の付け所が違いますなぁ」
唯「りっちゃん、誕生日だって教えてくれないんだもん。憂が言ってくれなきゃ忘れるところだったよ」
紬「私はちゃんと覚えてたわ。先月のお返しをしないといけないもんね」
澪「……何というか、あいつは幸せ者だなぁ」
51: 2011/08/21(日) 21:25:46.01 ID:ihPXYSdAo
澪「で、どうして玄関先に?」
唯「だって、ほら……」
紬「ねぇ……」
澪「?」
唯「多分、あずにゃんは真っ先にりっちゃん家に着いてるよね」
澪「まあ、そうだろうな」
唯「玄関を開けて、りっちゃんとあずにゃんがお取り込み中だったら困るじゃん」
紬「そうそう」
澪「いやないから」
52: 2011/08/21(日) 21:26:15.37 ID:ihPXYSdAo
澪「ほら、雨も降ってるんだし早く入ろう」スッ
律「」ガチャッ
澪「!?」
唯「あ、りっちゃん!」
紬「お誕生日おめでとう!」
唯「おめでと~」
律「み、みんなっ?」
澪「私たちがいるって分かったのか? 超能力者か」
律「あ、いやその……」
唯「はい、これ私と憂から」
紬「私からもこれ」
律「あ、あの」
澪「どうした、律」
律「ご、ごめん! ちょっと出かけなきゃいけないから!」
唯「ほぇっ?」
律「すぐ戻るから、家上がってて!」
紬「それはいいけど……」
澪「何かあったのか?」
律「本当にわりぃ!」
澪「お、おい律」
タッタッタッタッタッ
澪「雨降ってるぞ……って、行っちゃった」
唯「りっちゃん、どうしたのかなぁ」
紬「すごく慌ててたみたいだけど」
澪「……さぁ」
53: 2011/08/21(日) 21:26:56.62 ID:ihPXYSdAo
タッタッタッタッタッ
律「ぜぇ……ぜぇ……」
タッタッタッタッタ
律「はぁ……はぁ……」
律「何でこんな日に限って雨降ってるんだよ」グショ
律「誕生日ぐらい、晴れにしてくれよ」
「ねぇ、ママ。何であの人傘さしてないの?」
「こら、人に指さしちゃダメでしょ!」
律「……」
律「あ、あの!」
「な、何ですか?」
律「女の子見ませんでしたか?」
「女の子?」
律「高校生なんですけど、身長は私よりちょっと低いぐらいで」
「え、ええっと」
律「あ、黒髪でツインテールにしてます!」
「ごめんなさい、ちょっと分からないわ」
律「そうですか……すいません」
「あの、私たちはこれで」
律「……はい、ありがとうございます」
律「……」
律「あ、すいません! ちょっといいですか?」
54: 2011/08/21(日) 21:27:25.70 ID:ihPXYSdAo
律「……」
律「何てことしてる間に梓の家に着いちゃったよ」
律「……」
ピンポーン
「はーい」ガチャッ
律「あ、こんにちは」
梓母「あら、りっちゃん。今日誕生日だったわよね、おめでとう」
律「あ、ども……」
梓母「びしょ濡れじゃないっ、大丈夫!?」
律「はい、大丈夫です……それで」
梓母「梓からは……連絡来てないわ」
律「そう、ですか」
梓母「まさか本当に、何かあったのかしら」
律「……」
梓母「ねぇ、これって警察に連絡……」
律「私もう一度だけ探してきます!」
梓母「えっ?」
律「梓の行きそうな所、いくつか心当たりありますんで。警察にはそれからでも……」
梓母「……うん、わかった」
55: 2011/08/21(日) 21:27:54.56 ID:ihPXYSdAo
律「……」
律「何してんだよ、こんなに心配かけてさ」
律「……あのバカ」グスッ
56: 2011/08/21(日) 21:28:25.04 ID:ihPXYSdAo
ザァー… ザァー…
律「……」
バシャッ バシャッ
律「はぁ……はぁ……」
律「……」
ピーポー ピーポー
律「今日は救急車が多いなぁ」
ピーポー… ピー…ポー…
律「……」
律「そんなの止めてくれよ、梓」
57: 2011/08/21(日) 21:28:50.99 ID:ihPXYSdAo
―駅前交番―
プップー
律「……」
律「あの、すいません」
警官「うん? 君、傘ささなくて大丈夫なのか?」
律「ちょっとお聞きしたいことが」
警官「聞きたいこと?」
律「はい……」
58: 2011/08/21(日) 21:29:19.70 ID:ihPXYSdAo
・
・
・
律「そう……ですか」
警官「探している人でも?」
律「はい、まぁ」
警官「協力要請出そうか」
律「あ、大丈夫です。ちょっと待ち合わせしてただけなんで……」
警官「? ならいいんだけど」
律「はい……ありがとう、ございました」
59: 2011/08/21(日) 21:29:46.26 ID:ihPXYSdAo
パシャ… パシャ…
律「……」
パシャ…
フラッ
律「……あっ」
ストン!
律「……」ボー
60: 2011/08/21(日) 21:30:22.31 ID:ihPXYSdAo
シトシト… シトシト…
律「……」
律「…………」
律「梓の、ばか」
61: 2011/08/21(日) 21:30:53.81 ID:ihPXYSdAo
――――――
『今日の交通事故?』
律『はい、特にその……人身事故があったか教えてください!』
『分かった。ちょっと待ってね』
律『……』
『お待たせ』
律『! あの、どうでしたっ?』
『今日はまだ一件も起きてないよ』
律『……!』
『雨の日は事故が多いんだけどね』
律『……』
『いつもこれだけ平和ならなぁ』
律『……』
62: 2011/08/21(日) 21:31:51.68 ID:ihPXYSdAo
――――――
律「……」ハァ
律「事故じゃないみたいでよかった」
律「こんな真っ昼間に誘拐ってのも考えられなくはないけど、可能性としては低い」
律「なら、あいつは一体どこ行ったんだ……!?」
律「家でもない、学校でもない、商店街にもいない」
律「じゃあ、後は……」
律「……公園?」
律「こんな雨の日に?」
律「……」
律「考えていてもしゃあねえ、行ってみよう」
律「そこにいなかったら……」
シトシト… シトシト…
律「……」
63: 2011/08/21(日) 21:32:21.21 ID:ihPXYSdAo
シトシト… シトシト…
梓「……」
黒猫「ニャーゴ」
梓「……」
黒猫「ニャッ」
梓「……君のせいだよ、もう」
黒猫「ニャ?」
梓「うぅん、何でもない。落としちゃったのは私だしね」
梓「……」ジー
梓「……はぁ」
グチャ
梓「とっさに、思いっきり放り投げちゃったもんなぁ」
64: 2011/08/21(日) 21:33:05.67 ID:ihPXYSdAo
梓「……」
梓「喜んでもらおうと思って頑張ったのに、上手くいかないもんだなぁ……」グスッ
ボロボロ
梓「……」
梓「せっかく作ったのに……」
梓「完全に崩れちゃってるし、こんなのプレゼントできないや」
梓「……」
黒猫「ニャー」
梓「慰めてくれるの?」
黒猫「……」スリスリ
梓「うん、ありがとね」
65: 2011/08/21(日) 21:33:52.78 ID:ihPXYSdAo
黒猫「!」
梓「どうしたの?」
黒猫「」ピュー
梓「あ、どこ行くの猫ちゃ……」
黒猫「ニャー♪」スリスリ
梓「……」
律「よっ」
梓「りつ……先輩」
66: 2011/08/21(日) 21:34:22.80 ID:ihPXYSdAo
律「こんな所で何やってんだ」
梓「……」
律「傘もささずにベンチに座り込んで」
梓「……」
律「あーあー、すっかり濡れてるじゃねえか」
梓「……」
67: 2011/08/21(日) 21:36:10.19 ID:ihPXYSdAo
梓「律先輩こそ、何でそんなびしょ濡れになって……」
律「ああ、ある奴を探してたらすっかり雨に濡れちゃってさ」
梓「……」
律「そいつってばよりにもよって携帯忘れやがって」
律「そのくせ、親にも恋人にも連絡の一つ寄こさないと来てる」
梓「……」
律「そいつの母親はあんまり心配になって、警察に連絡しようとさえしたんだ」
梓「……!」
律「私もさ、交通事故にでも遭ったんじゃないかって思って、そこら中探し回った」
梓「……」
律「おい梓、聞こえてないのか?」
梓「……」フルフル
律「……心配したんだぞ、この大馬鹿野郎!!!」
梓「」ビクッ
68: 2011/08/21(日) 21:36:38.23 ID:ihPXYSdAo
律「」ズイッ
梓「」タジタジ
律「逃げんな」
梓「……」
律「目、つぶれ」
梓「……」キュッ
梓(殴られるっ……)
69: 2011/08/21(日) 21:37:18.77 ID:ihPXYSdAo
律「……」ギュッ
梓「……?」
律「心配かけんなよ、ばか」
梓「……」
律「お前に何かあったらって、生きた心地しなかったんだぞ……」グスッ
梓「……ごめんなさぁい」
律「……」
梓「ごめんなさい……律先輩、ごめんなさい……」ポロポロ
律「……うん」
梓「心配かけて……ごめんなさい」ポロポロ
律「泣くなよ」
梓「だって、だってぇ……」
律「ホントに梓は、泣き虫だな」
梓「……」グスッ
律「よしよし」
梓「……」
70: 2011/08/21(日) 21:37:52.30 ID:ihPXYSdAo
黒猫「ニャー♪」グルグル
律「……」
梓「……」
71: 2011/08/21(日) 21:38:31.44 ID:ihPXYSdAo
律「こらお前、ぐるぐる回るな」
黒猫「ニャ?」
律「うっとうしいだろっ」
黒猫「……」グルグル
律「回るなってのに!」
梓「……ぷっ」
律「おっ」
梓「くすくす」
律「泣いたカラスがもう笑ってやがる」
梓「だって、おかしくって」ヒック
律「……」
梓「」ヒックヒック
律「ぷっ、しゃっくり止まらなくなってやんの」
梓「う、うるさいです!」
梓「」ヒック
律「うぷぷ」
梓「律先輩!」
72: 2011/08/21(日) 21:39:01.42 ID:ihPXYSdAo
パラ… パラ…
律「それで、何でこんな所にいたんだ」
梓「……それ」
律「うん? この箱のこと?」
梓「……はい」
律「あっちゃ~、雨と泥でぼろぼろじゃん」
梓「……」
律「もしかして、私に?」
梓「……」コクリ
律「何が入ってんだ」パカッ
梓「……」
律「ケーキ」
梓「……」
73: 2011/08/21(日) 21:40:10.72 ID:ihPXYSdAo
梓「その猫ちゃん、助けようとして」
梓「車に轢かれそうになったのを助けようとして、放り投げちゃったんです」
律「……」
梓「それでグチャグチャになっちゃって」
律「そっか」
梓「……」グス
律「ケガはなかったのか?」
梓「はい、不思議と」
律「そっか、よかった」ギュッ
梓「あっ……」
律「それが一番のプレゼントだよ」
梓「……律先輩」
74: 2011/08/21(日) 21:41:18.82 ID:ihPXYSdAo
律「」ジー
梓「それ、もう捨てちゃいましょうか」
律「何で。もったいないじゃん」
梓「だって」
律「幸い泥はついてないみたいだぞ」
梓「……」
律「ラップしてたおかげで、雨にもあんまり濡れてないみたいだし」
梓「……」
律「確かにちょっと潰れちゃってるけど、これなら食えるよ」カプッ
梓「あっ」
律「」ムシャムシャ
梓「……」
律「うん、すごく美味しい。香りが良くて、私の好きなラムレーズンがたっぷり入ってて」
梓「ほ、ホントですかっ?」
律「私のために、一生懸命作ってくれたんだろ?」
梓「……」コクリ
律「それじゃ、美味しいに決まってるじゃん」
梓「……」
律「ありがとな、梓」ナデナデ
梓「はい、私も嬉しいです」
梓(大好きな人に喜んでもらえて)
75: 2011/08/21(日) 21:42:02.40 ID:ihPXYSdAo
律「それから、ちゃんとメッセージももらったよ」
梓「へっ?」
律「ケーキの下に挟まってた奴」
梓「……あっ!!」
律「『律センパイ大好き』ってか。私も大好きだぞー?」ニヤニヤ
梓「あ、あうぅ……」
律「何だよ、自分で書いたんだろ」
梓「そ、それはそうですけど。よくよく考えてみると……恥ずかしくて」
律「じゃ、梓は私のこと嫌いなんだ」
梓「そんなはずないじゃないですか!」
律「……」
梓「はっ」
律「」ニヤニヤ
76: 2011/08/21(日) 21:42:29.99 ID:ihPXYSdAo
梓「……好きですよ」
律「えっ?」
梓「好きって言ったんです!」
律「」キーン
梓「もうっ」
律「へへ、ありがと」
梓「……」ボッ
黒猫「ファーア」
77: 2011/08/21(日) 21:42:58.43 ID:ihPXYSdAo
梓「あれ、律先輩のポケット光ってますよ」
律「へっ? あ、やべ! 全然携帯見てなかった」
梓「……気づきましょうよ」
律「マナーモードにしっぱなしだったんだよっ」
梓「律先輩らしいです」
律「うわ、着信十数件!? 澪に唯にムギに聡に……」
梓(あんなに慌てて。さっきまですごく格好良かったのになぁ)クスッ
78: 2011/08/21(日) 21:43:25.73 ID:ihPXYSdAo
「あ、おい律! お前今まで何してたんだよ!」
律「ごっめ~ん! 全然気がつかなくて」
「梓は大丈夫なのかっ?」
律「うん、一緒にいるよ」
「なら早く連絡しろよ……聡から事情聞いて、みんなでお前たちを探し回ってたんだぞ!」
律「へっ?」
「唯は泣いて収拾つかないし、ムギは捜索隊出動させようとするし」
律「ま、まじですか?」
「たくっ、とにかくすぐ家に戻ってこい。話はそこで聞くから」
律「りょ、りょうかいっ」
79: 2011/08/21(日) 21:43:51.74 ID:ihPXYSdAo
律「……ふぅ」
梓「何だか、大変な事になってたみたいですね」
律「だな」
梓「色んな人に迷惑かけちゃいました」
律「そうだぞ。澪に唯にムギに聡に、それからお前の母親に」
梓「一人一人、謝っていくしかないですね」
律「私にも責任あるし、一緒に謝っていこうな」
梓「はいっ!」
黒猫「ニャッ」
律「お前はいいよ」
黒猫「?」
梓「……くす」
80: 2011/08/21(日) 21:44:31.81 ID:ihPXYSdAo
律「じゃ、帰ろっか」
梓「了解です。傘あるけどどうします?」
律「もういいんじゃね? 小降りだし、こんだけ濡れちゃったし」
梓「それもそうですね」
律「ということで、濡れて帰ろう」
梓「おー!」
黒猫「ニャー!」
律「って、お前も来るのかよ」
梓「あ、私が一緒に行こうって約束したんです」
律「猫と約束って」
梓「いいじゃないですか、ねー?」
黒猫「♪」
81: 2011/08/21(日) 21:45:57.19 ID:ihPXYSdAo
梓「律先輩、手つなご」
律「はいはい」
梓「せ~んろっはつっづく~よ~ どっこっまっでっも~♪」ブンブン
律「ちょ、手ふんなって」
梓「いいじゃないですか、誕生日なんだから少しぐらいワガママしても」
律「いや私の誕生日だし」
梓「細かいことは気にしない」
律「気にするわっ」
82: 2011/08/21(日) 21:46:44.53 ID:ihPXYSdAo
梓「あ、そうだ律先輩!」
律「うん?」
梓「まだちゃんと言ってませんでした」
律「……?」
梓「お誕生日、おめでとうございます!」
83: 2011/08/21(日) 21:48:47.98 ID:ihPXYSdAo
律先輩は、滅茶苦茶になったケーキでもすごく美味しそうに食べてくれました。
そして、満面の笑顔で褒めてくれました。
大好きな人にここまで喜んでもらえると、とても嬉しいです。
こういう人だから、私は好きになったんだろうな。
あの後、私と律先輩はたくさんの人に怒られました。
でも、みんなすごく心配してくれて。
大切にされてるんだなと、改めて実感しました。
律先輩の誕生日パーティーは本当に楽しくて、時間を忘れるほどでした。
今度は私の誕生日にパーティーを開いてくれるそうで、今からとても楽しみです。
今日は本当に色々なことがあって、疲れちゃいました。
けど、今日の思い出はこれから先、きっとずっと記憶に残ると思います。
今日、八月二十一日は律先輩の誕生日。
私の大切な、大好きな人の大事な日です。
Fin
85: 2011/08/21(日) 22:00:33.80 ID:ihPXYSdAo
りっちゃん誕生日おめでとう!
何とか間に合った
キャラスレでも本スレでも盛り上がってよかった
隊員の工作力には相変わらず脱帽です
余裕があれば、あずにゃんの誕生日にでも続編が書けたらなあ
ここまでお読みいただきありがとうございました
りっちゃん本当におめでとう!
何とか間に合った
キャラスレでも本スレでも盛り上がってよかった
隊員の工作力には相変わらず脱帽です
余裕があれば、あずにゃんの誕生日にでも続編が書けたらなあ
ここまでお読みいただきありがとうございました
りっちゃん本当におめでとう!
87: 2011/08/21(日) 22:03:49.81 ID:PNifUUBR0
面白かったよ乙
りっちゃん誕生日おめでとう
りっちゃん誕生日おめでとう
89: 2011/08/21(日) 22:32:24.76 ID:k95qqVcSO
いいね
乙
乙
引用元: 梓「大好きな人の大事な日」
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