269: 2015/11/23(月) 22:20:58.63 ID:y4KXJWGf0
組織女(やっぱり、だめだ)

組織女(あのバカ犬の為にこの2年間、色々頑張ってきたけどよ・・・)

組織女(やっぱり、こいつだけは殺せねえな。何があっても)

組織女「・・・なぁ、男・・・お前、本当に何があっても、『騎士団』を抜ける気はねえんだな」

男「ああ。それ以上はしつこいぞ、組織女よ」

組織女「はっ、そうだな。これ以上聞くのはあたしらしくもねえや」

組織女「じゃあ、今日はもう解散するとしようや。明確に敵同士になった以上、一緒に居るのは良くねえからな。街に戻ったら、あたし達はもう、敵だぜ?」

男「・・・おう・・・(組織女がこうなった以上、あとは団長殿と女を説得するしか、戦闘を回避する方法はないか・・・しかし、何も作戦が思いつかねえが・・・一体どうしたら)」

男(そう言えば、『戦争』については・・・あいつが詳しいって確か組織女が言ってたな・・・とりあえず相談してみるか・・・)

スマホポチポチ。

組織女「おい、あたしの前でスマホいじんな。お前知ってるだろ?あたしがスマホっつーかケータイ電話全般嫌いなの」

男「・・・ああ。わりぃ。ちょっと急用思い出してな・・・しかしお前も、現代に生きる人間としていい加減持ったらどうだ?電話機能だけの奴とか、探せばあるぞ」

組織女「うっせーな。嫌なんだよ。目の前にいる人間ないがしろにしてポチポチすんのもされんのもよ。あたしも大人になったら必要になるんだろうが、それまでは持つ気はねぇ」

男「・・・は、一本気なお前らしいな。じゃあそろそろ行くか」

組織女「おう・・・あ、男。お前、背中に汚れがあるぞ」

男「え?どこだ?」

組織女「そこのもっと下・・・ちげえよもっと右だ!ああ、もうこっち来い!あたしが取ってやる!あたしの敵になる男が、みっともねえ格好すんな!」

男「お、おう・・・すまねえな。じゃあ頼むわ」

組織女「・・・ああ」

男「ククク・・・」女(こいつ・・・ただ者じゃないみたいね・・・)【前編】
270: 2015/11/23(月) 22:22:10.09 ID:y4KXJWGf0
トンッ(男の首に手刀を叩き込む組織女)

男「え・・・あっ・・・?な、な・・・?」

ズサッ(その場に倒れこむ男)

組織女「・・・このパターンは初めてだろ?男。ていうか、こうやるとマジで失神するんだな・・・いや、『能力者』になって身体能力が上がったから出来た芸当か・・・」

組織女「よし、じゃあ担いでっと・・・わりぃな、男。お前にはしばらく眠ってて貰うぜ。あたしはお前に氏んで欲しくねえんだよ」

組織女「一週間くらい適当な場所に閉じ込めさせて貰うぜ、男。あたしがその間に片を付けといてやるからよ・・・メシは・・・組織部下女にでも運ばせるか」

組織女「さて、と・・・じゃあどうするかな・・・とりあえずアジトに――うっ」

組織女(なんだ、急に頭が痛く・・・)

――ドクンッ

組織女(この、気配・・・は!?『召喚の儀』で呼ぶはずの獣・・・に似てるが・・・違うッ!もっと凶暴で・・・オドロオドロしい気がする・・・)

組織女(クソっ、頭痛がどんどんひどくなってきやがる。頭が、割れそうだ・・・!いや、頭だけじゃねえ、全身がバラバラになっちまいそうだ・・・!)

――ドクンドクンッ!

組織女(クソっ、なんだこれ!なんだこれ!獣を召喚する時の、多少なりとも体力を持っていかれる感覚に似ているが・・・これはその数倍、いや数十倍の疲労感と、今までにない痛みがともなって・・・)

組織女「ああああああ!」

組織女(チキショウ、どうなってんだよこれッ!ふざけん・・・――ッ!?)

――ドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!

組織女(な、んだこの気配は・・・!?機関のお嬢のバカでけえ兵器と対峙した時より、騎士団長の剣が頭スレスレをよぎった時より、寒気が走るこの、感覚はっ・・・!)

組織女(だめだ、頭いてえ・・・意識が保て・・・な・・・)

271: 2015/11/23(月) 22:23:00.46 ID:y4KXJWGf0
女「は、はぁ・・・?『組織』のアジトが崩壊して、メンバーも全滅って・・・何言ってるの?あたし達『騎士団』はこの通り何もしてないし、『機関』だってこの『戦争』からは降りたはずよ・・・そんな事起きる訳ないじゃない!」

組織部下女「はい・・・その通り・・・その通りなんですけど・・・でも、この子は今まで誤情報を伝えた事は一回も無いのに・・・って、あ・・・」

連絡用の鳩「クック―・・・クック・・・ク・・・」

組織部下女「消えた・・・消えちゃった・・・」

女「なんとなく事情を察するに・・・その獣が消えたってことは・・・」

組織部下女「・・・はい、この獣を召喚して、私に連絡をくれた人も・・・恐らく・・・いや確実に・・・氏んでしまいました・・・そんな・・・どうして・・・こんな・・・ほ、本当に・・・?」

騎士団長「・・・ああ、どうやらその獣が伝えた情報は、何も間違っていないようだぞ、女、組織部下女・・・来るぞ」

女「・・・団長?」

組織部下女「・・・どういう事です?」

ドスン・・・ドスン・・・ドカッ・・・ドカッ・・・ドカッドカッ・・・ドカカッ!ドカカッ!ドガガガガッ!!

女「え、なにこの音は・・・!?」

ヒュゥゥゥゥ・・・・!!(なにかが空から落ちてくる音)

騎士団長「――ッ!上だっ、上から来るぞッ!二人共この場から飛べッ!」

ドッガァァァァァァァァ!!(バカでかい何かが、女達3人の近くの落ちた音)

女「なっ――!?」

組織部下女「っ!?――くっ、来なさい、私の獣ッ!」 

バッ!バッ!(騎士団長と女が地面を蹴って跳躍した音)

バサァ!(組織部下女の鷹型の獣が出現し、組織部下女を拾った音)

ズンッ・・・ザアアアアアアアアアアアアッ!(バカでかい何かが着地し、その衝撃音)

騎士団長(く、着地しただけでこの衝撃かっ!一体どんな化物が来たというのだ・・・!舞い上がった砂埃と煙で全く見えん・・・!)

272: 2015/11/23(月) 22:24:49.23 ID:y4KXJWGf0
騎士団長「女、それからついでに組織部下女!無事か!」

女「はい!団長が忠告してくれたおかげで・・・!」

組織部下女「ついでは余計ですが無事です!」

騎士団長「ならばよし――そう言えば男と組織女はッ!?」

組織部下女「っ!私、二人の安否を確認します!」

騎士団長「待て!勝手に動く・・・」

騎士団長(・・・いや、今日一日一緒に居て、組織部下女は少なくとも男に敵意を持っていないことはわかったし、まさかこの状況で男を襲ったりはしないはず・・・ならば任せた方が適任か)

騎士団長「よし、ならば任せた!ただし男に手を出したらただじゃおかないぞ!」

組織部下女「しませんよそんな事!」シュビッ

騎士団長「行ったか・・・さて」

ドドドドドドドドドドドド・・・!!

女「・・・団長、一体なにが飛んできたんです?」

騎士団長「わからない・・・が、生易しいものじゃない事だけは、この気配が証明してくれてるな・・・煙が晴れるぞ・・・さぁて、鬼が出るか蛇が出るか・・・」

???「・・・あぁー、シャバに出るのは久しぶりだなぁ、おい」

女「なっ・・・ライオンと山羊と蛇の顔・・・顔が・・・3つ?こういうの、キメラっていうんだっけ・・・しかも喋ってるし・・・」

騎士団長「これはまた面妖な・・・」

キメラ「・・・・・・オレを呼んだのは、お前らか小娘ども?」

騎士団長「(なんだ、普通に喋りかけてきたぞ)・・・いいや、違うが」

キメラ「そうか。違うか。いやーすまんすまん。早とちりしてしまった。教えてくれてありがとう素敵なお嬢さん」

女「なんか・・・友好的・・・ですね」

騎士団長「・・・だな。私達の敵ではない・・・のか?」

キメラ「・・・ところで」

騎士団長「うん?どうし――なっ!」

ヒュン!(一瞬前まで騎士団長が居た場所にバカでかい尻尾を叩きつけるキメラ)
シャ!(ギリギリで回避する騎士団長)

騎士団長「な、何をする!」

273: 2015/11/23(月) 22:25:59.59 ID:y4KXJWGf0
キメラ「あ?何をする、じゃねえよ。ボケが。なに人間如きがこの俺にタメ口聞いてんだ?あ?舐めてんのか。頃すぞ。あ?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドッ・・・!

女「団長・・・なんか、奴の力というか威圧感が上がってきてませんか・・・?」

騎士団長「私もそう思っていた所だ・・・この威圧感・・・お嬢の『兵器』と対峙した時とそっくりだな・・・いや、恐らくそれ以上か」

キメラ「せっかくいい気持ちで眠ってたのによぉ・・・人の寝起き起こしといて出迎えもないってどういう事だコラ、あ?あまりにムカつくから、その場に居た人間全員ぶっ頃したんだが・・・お前らもそうなるか?ん?」

女「!団長、こいつ・・・!」

騎士団長「ああ、こいつが『組織』のアジトを襲ったんだろう・・・だが、このレベルの獣となると相当な『能力者』なはず・・・少なくとも『組織』の一団員に呼び出せるレベルじゃない」

女「という事は、組織女か組織部下女のどちらかが・・・?」

騎士団長「いや、それにしたっておかしい。ここまでコントロール出来ない獣を召喚したって何の意味もないだろう。恐らくは・・・」

キメラ「なにシカトぶっこいてんだてめぇラァ!!!!」

ドッッ・・・ガッシャアアアアアアアアアアアアア!!(目にも留まらぬ早さで前足で二人に襲いかかるキメラ)

騎士団長「くっ、ええい、話は後だ!とりあえずこいつを倒す事に集中しろ!」

女「は、はい!」

キメラ「倒す?倒すだとコラ?人間如きが随分偉そうな口叩くようになったな、おぉ?決めたぜ、てめえらなぶり頃しだ。生き地獄を味あわせてやるよ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!

女「な・・・キメラの周りの空間が歪んでる・・・!?」

騎士団長「・・・怒りだけで、空間に影響を与えるほどの力を持った獣か・・・しかも色々と未知数・・・厄介だ・・・厄介だが・・・かと言って黙って殺される訳にも行くまい」

騎士団長「いいか、弱気になるな女。我々が今までにかいくぐってきた修羅場を思い出せ。それに君だって確実にレベルアップしている。堂々と戦いたまえ」

女「・・・はい!」

騎士団長「ふっ、それに我々には、秘密兵器がいるだろう?彼があの程度の衝撃で氏ぬはずがない。すぐに戻ってくるさ。彼が来れば、状況は覆る・・・そう確信しているのは、私だけかな?」

女「・・・ふふふ、団長。私もです」

騎士団長「ならばよし!さぁ戦闘開始だ。今までのように人間が操ってない以上、かなり不規則な動きをしてくるだろう・・・奴の一挙手一投足から目を離すな!」

女「了解!!」

女(・・・男)

女(・・・色々思う所はあるけど、あんたは言ったわよね。『戦争』が終わるまでは信じろって)

女(だから・・・信じてるから、早く来なさい)

女(それで、いつものあの何か企んでるような笑いで、私の不安を吹き飛ばしてよね)

女(・・・信じてるから)

274: 2015/11/23(月) 22:26:48.48 ID:y4KXJWGf0
???「とこさん・・・とうりょ・・・きて・・・きてく・・・起きて・・・さい!!」

男(・・・なんだ、誰の声だ?・・・これは組織部下女の声・・・?)

男「う、ううん・・・」

組織部下女「あっ、男さん!気が付いたんですね!」

男「あ、あぁ・・・(確か俺は・・・組織女に首をトンと手刀で・・・)」

男「はっ、組織女は!?」

組織部下女「隣で気を失っています・・・とりあえず二人共無事みたいでよかったです」

男「ああ・・・って、なんだこの砂埃っていうか煙は!?なんかペット霊園もぐちゃぐちゃに破壊されているし・・・何があった!?」

組織部下女「はい、実は・・・」

組織女「・・・ぐっ、あぁ・・・」

男「組織女! 目を覚ましたか!」

組織部下女「頭領!大丈夫ですか!?」

組織女「ぐぅぅ・・・頭が痛え・・・ってなんだこりゃあ・・・!」

組織部下女「・・・今、ご説明します」

275: 2015/11/23(月) 22:27:38.29 ID:y4KXJWGf0
組織部下女「・・・それで、外で今、暴れている獣がここに来たんです。私は失神してる二人を発見して、とりあえず安全な場所に非難させようと、奴が到着した時の衝撃で出来た、岩場の影に二人をお連れしたんです」

男「・・・そうか。ん?というか、なんで団長と女がこんな所にいるんだ?」

組織部下女「え、え~っと・・・なんか二人で出掛けてたみたいですよ!?それで、私もそこで偶然出会って、戦闘になる所で、あの獣が降ってきて・・・って感じです」

男「なるほど・・・」

組織女「・・・いやつーかちょっと待てよ組織部下女!?アジトが壊滅で、組織の仲間も全滅!?んな訳あるかよ!!てめえフカシこいてんじゃねえだろうな!?」

組織部下女「・・・いえ、残念ながら・・・恐らく事実かと・・・原因は、恐らく今暴れている、あの巨大な獣かと思われます・・・」

組織女「・・・くっ・・・」

男「・・・原因はなんなんだ?組織部下女。『組織』の人間じゃなきゃ、あんな獣呼び出せないだろう。ていうかあの獣、操れないのか?」

組織部下女「誰が呼び出したのかはわかりません・・・獣は基本、呼び出した人間には従順なんですが・・・」

組織女「・・・あたしだ」

組織部下女「え?」

組織女「呼び出したのは恐らく、あたしだ。呼び出したと言っても恐らく無意識にだろうけどな。さっき、少しの間だけどよ、獣を召喚する時みたいな感覚があったし」

男「ど、どういう事だ?」

組織女「言ったろ?『召喚の儀』で強力な獣を呼び出す事に成功したってよ。だけど・・・恐らくどっかで、ミスっちまったんだろうな・・・何らかの手違いで、あの獣を呼び出しちまったんだ・・・」

組織女「いや、勝手に出てきたから、召喚にもなってねえのか・・・?あたしの言う事なんざハナから聞く気配すらねえし、無理矢理召喚されて、怒り狂ってるって感じか・・・はっ、あたし一人の失敗で・・・全部ぶっ壊しちまった・・・クソ・・・クソがッ!!」

男「落ち着け組織女!お前はそんな失敗をするような奴じゃねえだろう!?なにか他に原因があるんじゃないのか?」

組織部下女「そうですよ!頭領はあれだけ慎重に『召喚の儀』をやっていたじゃないですか!頭領が本気で真剣に取り組んでいたのは、私が一番良く知っています!失敗なんて考えられません!」

276: 2015/11/23(月) 22:29:21.12 ID:y4KXJWGf0
組織女「お前ら・・・確かに、言われて見れば・・・あの時・・・そう、ちょうど組織部下女と男を接触させて、帰ってきた時・・・一瞬だけ、人の気配がしたような気がするが」

組織部下女「じゃあ、恐らくそいつの仕業です!『召喚の儀』に何か細工をしたんです!頭領は悪くありませんよ!」

組織女「・・・かもしれねえ」

男「・・・落ち込む気持ちは、分かる。だが、今はとりあえずあいつを止めない事には事態は収まらない、違うか?組織女」

組織女「・・・だろうな」

男「だろう?だったら・・・」

組織女「でも・・・あたしはもう、だめだ」

組織部下女「・・・頭領?」

組織女「・・・今のあたしは役立たずだ。あの外で暴れている獣に体力を持って行かれて、歩く事すら難しい。ましてや獣を召喚するなんて事、出来やしねえ。今のあたしは使いものにならないクズだ」

男「・・・そんなことはないだろう。何か出来る事が一つくらいは・・・」

組織女「じゃあ何が出来んだよ!!言ってみろ!?あ!?そういう事言うなら、あたしがあの獣を止められる方法を並び立ててみやがれってんだ!!適当な事言うなてめえ!!」

男「・・・」

組織部下女「と、頭領・・・」

組織女「大体てめえだってあたしがいなきゃあ何にも・・・いや、何でもねえ、忘れてくれ・・・すまん、言い過ぎた」

男「いや・・・」

組織部下女「・・・」

組織女「・・・ともかく、おい組織部下女」

組織部下女「・・・はい」

組織女「男を連れて逃げろ」

組織部下女「は、はぁ?」

277: 2015/11/23(月) 22:31:22.35 ID:y4KXJWGf0
組織女「あの獣は正式に召喚された訳じゃねえ。多分一日、持っても二日くらいすれば勝手に消えていくだろう。ちょうどお前の獣はスピード特化型だし、上手くすりゃ逃げきれんだろ。頼んだぜ、これは命令だ」

男「・・・」

組織部下女「・・・頭領はどうするんです?」

組織女「あたしは・・・もういいんだよ。疲れちまった。それに原因があたし以外にあろうと、『召喚の儀』を進めてきたのはあたしだ。その責任を取って・・・あの獣の前に踊り出て、生け贄として食われてやるさ。呼び出したあたしをぶっ殺せば、あいつの気も少しは収まるだろうよ」

組織部下女「そ、そんなのダメです!そんな責任の取り方は誰も望んでなんか!」

組織女「うるせえ!!あたしの命令が聞けねぇのか!!」

男「・・・」

組織部下女「でも・・・!!」

組織女「早く行け!!さもねーと殴るぞ!!いいからさっさと・・・!!」

男「・・・ふっ」

組織女「・・・男?」

組織部下女「男さん?」

男「ククク・・・全く、貴様ら・・・ここにいるのを誰だと思っている?この俺、御刀虎だぞ?逃げるなど絶対に御免こうむる・・・それにしても残念だよ組織女・・・まさかお前が戦う前から逃げる事を選択するほど、ヤキが回ってしまっていたとはな」

組織女「・・・あぁ?」

男「俺の知っている組織女は、そんな奴ではないと思っていたのだが・・・残念だ、至極残念だ・・・が、まぁお前の気持ちは分かる。まぁここはこの御刀虎にまかせてお前はじっくり休んでおけ」

組織女「・・・てめえさっきからなに言ってんだ?じゃあてめえが戦うってのか!?あの獣と!?」

男「ふむ、そう聞こえるように言っているのだが・・・理解してくれたようでなによりだ・・・ククク・・・」

278: 2015/11/23(月) 22:32:26.14 ID:y4KXJWGf0
組織女「・・・てめえ妄想もいい加減にしろよ!!」

ドガッ(組織女が立ち上がり、男を思いっきり殴る)

組織部下女「お、男さん!頭領!やめてください!」

組織女「うるせえ!!このバカ野郎の目を覚まさせてやってんだ!!引っ込んでろ!!」

組織部下女「ひっ!」

ドガッドガッ(倒れた男に馬乗りになって、殴る)

組織女「いいかよく聞けこの野郎!!組織部下女の報告を聞く限り、あの獣のせいであたしら組織の仲間は全滅しちまったんだ!これがどういう意味か分かるか!?二年も続いてきた『戦争』を、これまで生き残ってきた優秀な奴らが一瞬で蹴散らされたんだぞ!?」

組織女「それだけであの獣がどれほど強いか、バカなてめえでも嫌ってほど分かるだろうが!?」

バキッ(顔面を殴る)

男「ぐっ・・・がっ・・・た、確かにな・・・」

組織女「はぁはぁ・・・だろうが!?ましてやてめえは・・・ええいこの際はっきり言ってやる!!てめえは無能力者で、何の力もねえただの一般人だろうが!!」

組織部下女「・・・え?」

男「・・・・・・」

組織女「はぁはぁ・・・だいたいてめえがあの獣の前に立って何が出来る!?紙みてえに吹き飛ばされて終わりだおまえなんか!!だから、だからあたしはお前を守ってやろうと、お前を安全な場所に隔離して、お前を『戦争』から降りさせる為に、さっきてめえを気絶させたんだよ!!」

男「・・・そ、そうだったのか・・・」

組織女「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・ああそうだ!!それなのにてめえはまだ戦うとか寝ぼけた事言ってんのか!?いい加減その妄想をやめろ!!現実を直視しやがれ!!分かったらさっさと・・・組織部下女と・・・逃げ・・・!」

バタン(怒鳴りと殴りで体力が切れて、倒れる組織女)

組織部下女「頭領!」

279: 2015/11/23(月) 22:33:09.60 ID:y4KXJWGf0
組織女「あたしの事は・・・気にしなくていい・・・いいから・・・さっさとそのバカ連れて・・・逃・・・」

男「・・・おー痛え・・・だが、いつもの鉄拳の威力はないな・・・ククク・・・なぁ、組織部下女よ」

組織部下女「・・・は、はい?」

男「やはり組織女は、少し気が動転しているようだ。ここはじっくりと休ませてあげようではないか・・・なにせ、この暗黒の邪王、滅亡の神翼、灼眼の堕天使、紅き虎帝の御刀虎が無能力者などと、訳のわからぬ事を口走るのだからな」

組織女「てめぇ・・・まだそんな世迷い言を・・・!」

男「ククク・・・なぁ、組織女よ。お前は今、一つ大事な事を忘れているぞ」

組織女「あ?」

男「今日のお前は、とても可愛らしい女の子だと言う事だ」

組織女「あ、あぁ・・・?」

男「駅での待ち合わせで、遅刻したと思って一生懸命こちらに走ってくるお前は可愛かった」

組織女「・・・て、てめ、な、なに言って」

男「慣れない服装で、ちょっとぎこちない動きをしているお前は、オタク言葉で言うなら萌え萌えだった」

組織女「は、はぁ?」

男「イルカにエサをやっているお前は、無垢な少女なようで実に可愛らしかった」

組織女「て、てめえ!口を閉じろ!」

280: 2015/11/23(月) 22:34:02.65 ID:y4KXJWGf0
男「ハンバーグを俺にあーんしてくれたお前は、まるで俺のお姉さんのようで、俺は一瞬安らぎに似たような物を覚えた・・・男に取って貴重なのだ。こちらを甘やかしてくれる女性は」

組織女「だ、だからさっきから何を・・・!」

男「映画で、ちょっと怖いシーンで手を握ってきたお前に、俺の心臓は高鳴ったぞ」

組織女「・・・・・・っ」

男「そして、犬が氏んだ事を話してくれたお前の、とても悲しげな表情・・・お前のような可愛らしい女の子を生け贄に差し出して、逃げるだと?このアホが。んな事氏んでも出来る訳ねぇだろうが」

組織女「・・・男・・・」

男「まぁ、それにお前は俺を殴ったり怒鳴ったりする事で体力使い果たして、本当に一歩も動けないようになってしまったからな。それでお前もあの獣の前に生け贄として躍り出るなんてバカな事出来ないだろう・・・ククク・・・」

組織女「てめぇ・・・そこまで考えてたのか?」

男「さぁ、何の事かな?・・・ククク・・・という訳で悪いが、お前の指示には従えん。なぁに案ずるな。あの程度の獣など恐るるに足りん・・・と言えれば格好よいが流石に俺一人では少々厳しいやもしれん・・・故に組織部下女、手伝ってくれるか?」

組織部下女「は、はい!勿論です!『組織』のみんなの仇を取ります!」

男「うむ。ありがとう・・・ではちょっと、外に出るタイミングを図ってくれるか?」

組織部下女「はい、わかりました!」ダダッ

281: 2015/11/23(月) 22:34:34.70 ID:y4KXJWGf0
組織女「・・・てめえ・・・本気、なのか」

男「ああ」

組織女「何も出来ねえくせに・・・」

男「・・・そんな事はないだろう。何か一つくらいは出来る事があるはずだ。それに俺がこういう時、じっとしていられない性格だって知っているだろう?」

組織女「・・・チッ、そうだな。すっかり忘れてたぜ」

男「それに、時代錯誤な考え方かも知れんが、お前らは女だろう。女が戦ってる時に尻尾まいて逃げるなど・・・俺の中の男が許せん。例えそうする方がいいと分かっていてもな」

組織女「・・・は、利益とか損得とか・・・そういうのおめえの頭の中にはねぇのか?本当にバカだぜてめえはよ」

男「ククク・・・知らなかったのか?高校生にもなって、こんな妄想を撒き散らす人間、バカでしかありえんだろうよ」

組織女「・・・ふふっ」

男「ククク・・・」

組織部下女「男さん!今なら外に飛び出ても大丈夫です!・・・って、二人して何を笑っているんですか?」

男「ククク、なんでもないさ・・・では、行くぞ組織部下女よ!」

組織部下女「はい、男さん・・・あ、でもちょっと待って下さい!」

男「うん?」

組織部下女「・・・頭領!」

組織女「あ?」

組織部下女「その、私・・・今までの頭領の頑張りとか、そういうの絶対に無駄じゃないと思いますし、無駄って思わせませんから・・・えっと、それを証明しろとか確証しろと言われたら困りますけど・・・でも、私は頭領のお役に立ちたくて・・・だから・・・だから・・・」

組織女「何が言いたいかさっぱりわかんねえぞお前・・・」

組織部下女「う、うぅ・・・すみません」

男(正直俺もそう思ったな・・)

組織女「・・・まぁ言いたい事はなんとなくわかったからよ・・・まぁ、なんだ。サンキューな」

組織部下女「は、はい!では行きましょう男さん!」

男「おう・・・組織女よ。お前はそこで頭領らしく、どんと構えていろ。じっくり休んで、俺たちの帰りを待っているがいいさ。さぁ、化物退治と洒落込もうか・・・カカッ!」

組織女「・・・」

282: 2015/11/23(月) 22:35:32.71 ID:y4KXJWGf0
組織部下女の鷹型の獣「・・・ピューヒョロロロー・・・」

男「よぉ、一週間振りくらいか?またよろしく頼むぜ」

組織部下女「・・・男さん。戦場へ行く前に一つ聞く事があります」

男「ん?どうした組織部下女よ?」

組織部下女「・・・先程組織女さんが言いましたよね。あなたは無能力者だと」

男「お、おぉ。言ってたな・・・ったく、あいつも大分まいってたみたいだな、あんな訳の分からん事を言い出すとは・・・気持ちは分からんでもないが」

組織部下女「私、失礼ながらさっきから男さんの力を実は探っていたんですが・・・男さん、あなたは本当に何の力もないただの一般人ですね」

男「く、ククク・・・何を言い出すかと思えば・・・まぁそう勘違いするのも無理はないさ・・・なにせ、俺の隠形術は超高レベルだからな。そう判断してもしょうがな・・・」

組織部下女「・・・正直に言って下さい」

男「ククク・・・何を正直に言えと?俺の血筋か?隠された力か?それとも俺の過去の闇に触れたいのか?カカッ、残念ながら、いくら今から共に戦場へ向かうお前であってもそれをペラペラ喋る訳には・・・」

組織部下女「・・・」

男「あの・・・組織部下女さん・・・?なんで俺を睨んで仰る・・・?」

組織部下女「・・・」

男「・・・なんか、喋ってくれ・・・その・・・そういう無言のプレッシャーには俺、弱くてだな・・・それにほら、早く戦場に行かないと団長と女が・・・」

組織部下女「・・・本当の事を喋るまで、私の獣の背中に乗せませんよ」

男「・・・ええい!分かったよ言ってやる!ああ、そうだ。俺は無能力者。どこにでもいる普通の学生だ。だからなんだ。今更危険とか言うなよ?」

組織部下女「・・・ええ。今更何も言いません。むしろ無能力者なのにこの『戦争』に関わってなお堂々としているその勇気に、惚れなおしまし・・・」

男「・・・うん?なに、最後まで言ってくれ」

組織部下女「こ、コホンコホン!なんでもありません!ともかく、それが確認したかったんです!それに今、私は自分の願いが間違っていない事を改めて確信しました・・・あと、『騎士団』のお二人には黙っておいてあげますから」

組織部下女(今日一日一緒に居て、あの二人はかなり勘違いしてるってわかったしね)

男「・・・そうしてくれると、助かる。ここまで来たらもう、俺は戻れんのでな。とことん突っ走るつもりでいるさ」

組織部下女「はい、わかりました。私もとことん男さんの手助けをさせてもらいますね」

男「・・・お前には、いつも助けてもらってばかりだな」

組織部下女「いいえ、そんな事は」

男「この戦いが終わったら・・・また今度一緒にメシでも食おうぜ」

組織部下女「い、いいんですか?二人っきりで?」

男「いや、別に二人っきりとは言ってないが・・・まぁ組織部下女がそうしたいっていうのなら俺は構わんぞ」

組織部下女「・・・はい!二人っきりでぜひ行きましょう・・・!よし、それじゃあ私の獣の背中に乗って下さい!行きますよ!」

283: 2015/11/23(月) 22:36:27.88 ID:y4KXJWGf0
女「・・・このぉ!くらいなさい!」

ブォン!(女が剣を振るう音)
シュ!(キメラが難なく女の剣を避ける)

キメラ「ヒャハハハハ!!どこ狙ってんだ!遅いんだよこの鈍亀ぇ!!」

グォン!(キメラの尻尾が女の体に襲いかかる)

女「きゃぁ!」

騎士団長「女!・・・くっ・・・おぉ!」

ブォォン!(騎士団長が剣を振るう音)
シャァ!(キメラが危なげなく剣を避ける)

キメラ「止まって見えるぜぇ!この雑魚どもがぁ!」

ゴォォ!(キメラの前足が騎士団長を強襲する)
ギィン!!(それをなんとか剣で受け止める騎士団長)

騎士団長「ぐっ・・・くぅぅぅ・・・!(なんという力ッ・・・受け止めらているだけで精一杯だ!)」

キメラ「へぇー、やるねぇ。俺の攻撃を受け止められる奴なんてそうそういないんだが・・・」

騎士団長「ふんっ・・・この程度・・・どうってことないッ!」

キメラ「ひゃはは。いいねぇ、がんばるねぇ・・・だから、敬語使えっつってんだろうがこのボケがァッ!!」

ヒュン!(尻尾が騎士団長の氏角である背中から襲いかかる)

騎士団長「ガッ!・・・くっ、クソ・・・」

キメラ「あー・・・その悔しそうな表情、そそるわぁ。すげえ興奮するっ!ヒャッハハハハハハー!!」

女「・・・・・・っ!!」

ギィン!!(物陰から奇襲をかけた女の剣を前足で受け止めるキメラ)

キメラ「!っとぉ!へへっ、危ねえ危ねえ。おいおいまだまだ元気一杯だなぁ姉ちゃんよぉ。だけど、そういう人間ほど嫐り頃す甲斐があるぜェ!!!」

ヒュン!シャ!(キメラの攻撃を跳躍してかわし、空中で一回転しながら着地し、騎士団長の隣に並び立つ女)

女「はぁはぁ・・・団長!私達はまだやれますよね!?」

騎士団長「・・・ふふ。強くなったな、女。肉体的にも精神的にも、な。ああ、そうとも。まだまだやれるさ!」

女「はい!」

284: 2015/11/23(月) 22:37:41.50 ID:y4KXJWGf0
騎士団長(それにしても、あの尻尾がやっかいだな。あれさえなんとか出来れば・・・)

キメラ「あーあ。俺、そういう気丈な顔が絶望に変わっていくのが好きなんだよな・・・楽に逝けると思うなよお前ら!!ハハハハハ・・・ん?」

ヒュゥゥゥゥゥ!!(なにかが飛んで来る音)

???「女!!団長殿!!手を!!」

キメラ「あ?」

女「この声は・・・!?」

騎士団長「男!?」

男「その通り!!拾い上げるから手を上に伸ばせ!!女!!団長殿!!」

バッバッ(手を上に伸ばす女と騎士団長)
ガシッ(その手をがっしりとつかむ男)

男「よし、掴んだ!一旦引いて体制を立て直すぞ組織部下女!」

組織部下女「了解です!!」

ブォォォッ・・・!!(とりあえずキメラから距離を取る組織部下女)

キメラ「・・・てめえら!!俺が逃がすとでも思ってんのかカス共かァ!!」

ドガガガガッ!!(追いかけてくるキメラ)

組織部下女「鬼ごっこですか・・・!言っておきますけど、私の獣は『組織』の中でも速さだけなら頭領の獣にも負けませんからね!スピード全開でお願い!!」

組織部下女(なるべく、頭領から離れた場所へ誘導しよう・・・!)

鷹型の獣「ピュー!!!」

285: 2015/11/23(月) 22:38:26.63 ID:y4KXJWGf0
男「女、団長殿!怪我は!?」

騎士団長「・・・ふふ、なぁに、まだまだ元気一杯さ。しかし毎度毎度、登場が遅いぞ男」

男「カカッ、それは申し訳ない。だがまぁ、それも我が宿命。世界の主人公たる俺は、いつだって登場が遅れるものなのである、ククク・・・」

女「私の傷もかすり傷程度よ!あんな奴、何百匹いようが問題ないわ!」

男「ほほう、強気だな女よ・・・成長したな」

頭撫で撫で。

女「ちょ!?なにするのよぉ!?」

男「いやなに。前回助けに来た時は涙目だったからな。それに比べれば雲泥の差だ。たくましくなったと思ってつい・・・いやだったか?」

女「い、いやとか・・・そういうんじゃなくて・・・単純に恥ずかしいっていうか・・・あんたが来るって信じてたから大丈夫だったていうか・・・その・・・///」

男「なんだ?声が小さくて聞こえん。もう一度言ってくれ」

女「あう・・・あの、だからぁ・・・ああもう!いいから辞めなさい!恥ずかしいから!」

男「お、おう・・・さて、では作戦を建てようか・・・って、どうした組織部下女に団長殿、こちらを睨んで・・・」

騎士団長「・・・君はいい加減、もう少し自分の言動を改めたまえ・・・」

組織部下女「う、うぅ、男さんの天然ジゴロ!」

男「???」

女「ま、まぁともかく、あのすごい形相でこっちを追っかけて来てる化物の対策を考えましょう!ね、団長!」

キメラ「待ちやがれテメエらぁ!!頃す!!ぶっ頃す!!マジでぶっ頃す!!頃す頃す頃す頃すゥ!!!!」

騎士団長「・・・うむ。そうしよう・・・男、あとで私の家に来たまえ。じっくり説教してくれる」

男「は、はぁ・・・」

286: 2015/11/23(月) 22:39:14.33 ID:y4KXJWGf0
騎士団長「さて、とりあえず問題なのはあの尻尾だ。勿論彼奴自身のパワーもスピードも凄まじいが、あれがあるせいで常に氏角から攻撃されるのが一番きつい」

組織部下女「逆に言えば、あの尻尾さえ押さえればなんとかなるという事ですか?」

女「そこまで単純には上手く行かないと思うけど、今までの戦闘よりは大分マシになるとは思うわ」

組織部下女「なるほど」

男「・・・ふむ」

騎士団長「・・・そう言えば今更だが組織女はどうした?」

組織部下女「頭領は・・・実はあの獣、頭領が意図せず呼び出してしまったみたいなんです。ただそのせいで、体力を奪われて・・・とても戦闘出来る状態ではないので隠れてもらっています」

騎士団長「そうか・・・奴の獣にあの化物を引きつけてもらって、尻尾を断ち切ろうと言う案が浮かんだのだが、その案は出来そうにないな」

女「ですね・・・男。あんたは何か案が浮かぶ?」

男「・・・一撃・・・二撃・・・いや三撃くらいなら行けるか・・・?」ブツブツ

女「男?」

キメラ「逃げれば逃げるほど、てめえら全員の苦しみは増す!八つ裂きくらいじゃ済まさねえぞゴルァ!!!犯して頃してもう一回犯して食ってやらぁ!!」

男「なぁ、女、団長殿。奴は登場してからずっとあんな言動をしているか?」

騎士団長「・・・そうだな。さっきから喋る度に物騒な言葉ばかり並び立てているよ」

女「急に起こされて怒る気持ちは分かるけど、普通あんなに怒りは継続しないでしょうし、まぁあいつの元からの性格が暴力的なんでしょうね。それがどうしたの?」

男「・・・ふむ、ならばやれるか」

女「あんた・・・何をする気なの?」

男「まぁ黙って見ておけ・・・組織部下女。ちょっといいか?」

組織部下女「はい?」

男「俺をこの鷹から下ろしてくれ。俺が囮になって引き付ける」

287: 2015/11/23(月) 22:40:16.02 ID:y4KXJWGf0
女「は、はぁ!?あんた何言ってんのよ!?」

組織部下女「そうです!だめですよそんなの!!」

騎士団長「・・・」

男「別に、先ほどまで組織女にやらせようとしていた案を俺を引き受けるだけだ。何の問題もあるまい?」

女「そ、そうだけど・・・でも!」

組織部下女「私も反対です男さん!だって・・・だって、あなたは・・・」

男「組織部下女よ、さきほどとことん手助けしてくれると言っただろう?あの言葉は嘘だったのか?」

組織部下女「いえ、嘘じゃありません・・・ですが・・・でも・・・!」

男「ならば信じてくれ。何とかしてみせる。それにお前ともさきほど約束しただろう?俺は約束は守る男だ。心配はいらん」

組織部下女「・・・はい」

女「・・・ちょっと待ちなさい!あんた、『機関』との戦闘で、私達を助けてくれた時の獣は!?あの子を呼び出せばいいじゃない!」

男「あいつは・・・実はあいつを呼び出すには制約があってな。一ヶ月に一回しか呼び出せんのだ。あいつの力故に、それだけの期間を置かなければならん・・・それに囮くらい、あいつの力を借りずとも俺一人で遂行できるさ」

女「・・・じゃあ、囮には私が行くわ!!危険な役目は、この中で一番弱いであろう私がやるべきよ!!組織部下女はこの獣を操ってるし、団長は私より当然上で、あんただって私より強いに決まってるわ!私が1番適任よ!そうでしょう!?」

男「残念ながら、危険な役目を女性に押し付けて平気でいられるほど、上等な教育をされなかったものでな。悪いがこの役目は譲れん」

騎士団長「・・・」

女「ダメ!とにかくダメよ!!あんたにもしもの事があったら・・・わたし、わたし・・・」

男「女よ。お前は俺の保護者か?この御刀虎を心配・保護しようなどと百年早いわ。カカッ」

女「でも、でも・・・!!」

騎士団長「・・・女。君はもう少し男を信用したまえ。君は彼を心配する余り気づいていないのかもしれないが、さっきから君の言葉は彼を信用出来ないと言っているのと同義だぞ?」

女「・・・団長・・・・・・そう、ですよね・・・すみません」

騎士団長「・・・任せて良いのだな?」

男「ああ。全て一任してくれて構わない。団長殿達は尻尾をぶった斬る事に全神経を注いでくれ」

騎士団長「わかった」

男「では組織部下女、頼んだぞ」

組織部下女「・・・分かりました」

女(・・・男・・・)

288: 2015/11/23(月) 22:40:58.99 ID:y4KXJWGf0
シュタ(男が地面に降り立つ)

キメラ「おっ?」

男「よぉ。鬼ごっこはそろそろおしまいにしようぜ。俺たちゃあもうそんな年じゃねえ。そうだろう?」

キメラ「ひゃっはは。そうだなあおい。で、お前は?鬼に捕まった生け贄って訳か?女の為に自分を犠牲にって?かっくいいねぇ」

男「別に、そんなんじゃねえよ。ただ逃げる事に飽きただけだ」

男(でけぇ・・・いや、それより、こいつには凄まじい力を感じる。無能力者の俺でも分かるくらいビンビンに)

男(こぇぇ・・・)

キメラ「カッカッカ。そうだな。お前はただ見捨てられただけだぜあの女どもに。可哀想だなぁ~おい。見逃してやろうか?全裸で土下座して「お願いします。どうかこの命を奪う価値もないゴミクズをお見逃し下さい」って言ったらだけどな、アッハハハハ!!!」

男「・・・ふっ、中々魅力的な提案だな。たかがそんな程度で命が助かるのなら安いもんだ」

男(こいつの前に立ってるだけで、キン◯マが縮み上がりそうだ。正直今にもチビっちまいそうだぜ・・・)

男(・・・けどな)

キメラ「ブ・・・ヒャヒャヒャヒャ!!!んだてめえ!!かっこつけてる癖にとんだヘタレじゃねえか、マジウケるんだが、ブフフフフ、やべっ、腹いてぇ~。いいぜ。マジでそうしたらてめぇだけは見逃してやるよ」

男(いつもいつも、口先だけはかっこいい事言って、その実、他人の力ばっかり頼ってるクソ野郎はだれだ?)

男「本当か?やっぱりな。あんたは話の分かる奴だと思ってたぜ」

男(敵であった時のメイドに情けをかけられて見逃されたり、組織女に『戦争』から遠ざけてあげようなんて思われるほど、無力すぎるどうしようもない無能はだれだ?)

キメラ「プッ・・・こいつやべぇ。マジ終わってる。アルティメットヘタレだなてめえ。そこまで終わってるとおもしれえよ。ほら、早くしろ。俺様の気が変わらねえ内にな、アッハハハハ!!」

男「ああ、今すぐやるよ・・・あ、その前に一つだけいいか?」

男(いつもいつも、女の子ばっかり敵の矢面に立たせてる男の風上にも置けねえクズ野郎はだれだ?)

キメラ「あぁ?んだよてめえ。早くしねえと頃しちゃうぞ?」

男(・・・そう考えたらよ、やっぱりこの役目は誰にも譲れねえ。これは俺の仕事で、俺の役目だ。今までに溜まってきた俺の所業のツケ。それを今、払うべきだ)

男「ああ。悪い。すぐ終わるから」

男(大丈夫だ。俺は御刀虎。暗黒の邪王、滅亡の神翼、灼眼の堕天使、紅き虎帝・・・俺なら出来るさ・・・ククク・・・)

289: 2015/11/23(月) 22:41:58.76 ID:y4KXJWGf0
男「あのさ、お前って――絶対、生まれついての負け犬だろ」

キメラ「・・・あ?」

男「だってそうだろ?なんか言ってる事一々下品で幼稚だし、そもそも怒り狂ってる動機が勝手に起こされたからって・・・全く、なんという器の小ささだ」

キメラ「・・・」

男「笑い方にも知性をまるで感じん、そこらの猿の方がまだ上品に笑うぞ?大体俺に対する要求も、相手を辱めて自分が上に立とうとする、劣等感丸出しの奴だったし・・・何か悩みがあるのなら相談に乗るぞ?」

キメラ「・・・」

男「大体、貴様のような品性下劣な言動をする奴は大抵ただの雑魚でやられ役だしな。それが分かっていながらそういう言動をしているのなら、つまり自らやられ役、負け犬に徹しているという事だが・・・そういう趣味なのか?」

キメラ「・・・」

男「まぁ、流石にそこまで屈折した趣味を持つ人間などいないと思うから、お前は生まれついての負け犬だと言ったのだが・・・あ、それともやはり、キメラのようなお前と人間では感性が違――」

キメラ「てんめぇええええ!!!頃してやる!!!!ぶっ頃してやる!!!欠片も残さねえ!!!氏ねオラァ!!!!」

男(来る。攻撃が来る)

男(ここの所、何故か不良と絡む・・・いや、そう言えば中学の時から絡まれていたな。まぁそんな事はどうでもいい)

男(ともかく、最近、ようやくこういう人種の攻撃のパターンがわかってきた・・・ので、それを活用する。あの不良達には感謝せねばなるまい)

男(ただ、それだけでは心もとない。なので怒らせた。こうすれば、怒りでさらに攻撃は単調となるからな)

男(そして怒った人間が狙う箇所は、大抵、顔。顔面だ。威嚇の為か無意識か。何でもいいが、顔を狙ってくる)

男(人間相手ならば、首をひょいと動かすだけで済むが、こいつはでかい。故に大きく身を屈めて――)

ブオオォォォォ!(キメラの攻撃)

男(――かわす!)

キメラ「てめえ!!避けんなオラァ!!」

男(かわせた。髪の毛が数本持って行かれたが問題ない)

男(そしてもう一度顔を狙ってくるので・・・今度は首を後ろに傾けつつ後ろに飛べは――)

グォオオォォォ!!(キメラの攻撃)

男(かわせる!!)

男(キメラの攻撃がかすった頬から血が出ているがだからどうした。女や団長殿、それにお嬢もメイドも組織女も組織部下女だって今までの『戦争』で血ぐらい幾度と無く流しているだろう。男の俺がこれくらいで悲鳴を上げる訳にはいかない)

男「・・・ふぅ。やれやれ。全く乱暴だな。そんなに怒るな。高血圧で早氏にするぞ」

キメラ「黙れ!!二度とその生意気な口叩かねえようにしてやる!!」

290: 2015/11/23(月) 22:42:36.87 ID:y4KXJWGf0
女「男、すごい!攻撃をギリギリでかわしてる・・・!」

騎士団長「ふっ、だから言ったろう?彼なら心配いらないと・・・さぁ、我々はキメラの背後に静かに近づこうではないか」

組織部下女「・・・はい」

組織部下女(すごい、確かにすごいけど・・・男さんは無能力者。ならばすぐに体力切れになるはず・・・だとしたら今の行為だってジリ貧)

組織部下女(男さんだってバカじゃない。それくらい分かってるはず・・・でも、もし体力が切れたら・・・男さんは・・・)

組織部下女(いや、男さんは信じろって言った。なら、きっと何か秘策があるはず・・・なら・・・なら・・・私に出来る事は一刻も早く、男さんの体力が切れる前に奴の尻尾を『騎士団』の二人に斬らせて、一刻も早く男さんを回収すること)

組織部下女(・・・大丈夫ですよね。男さん?)

297: 2015/11/29(日) 03:05:54.61 ID:tBBPnlM60
グォン!!グォン!!(キメラの攻撃)
シュ!シャ!(男がかわす音)

男(今ので6撃目くらいか・・・)

男(思ったよりは遥かにかわせている)

男(例え攻撃がいかに早かろうと、来る場所が分かるならば、避ける事は案外容易い)

男(ただ――)

キメラ「あああああああああああああああああああああああ!!もういい!!てめえは焼き頃す!!骨の髄まで灰にしてやらぁ!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!(キメラの口の中に炎が溜まりだす)

男(こういう全体攻撃というか・・・不可避の攻撃となると・・・俺にはどうしようもない・・・それに体力も、もう限界に近いしな)

男「ククク・・・この灼眼の堕天使に炎を効くとでも?」

キメラ「黙ってろボケが!!!」

男「ククク・・・」

男(せいぜい出来るのはこうやってニタニタ笑って、奴の気を俺に引き付ける事くらいだ)

男(・・・女達は上手くやっているのだろうか・・・いや、大丈夫だろう。ここまで来たら信じるしかない)

男(親父、母さん。先に逝く不幸を許してくれ)

男(組織部下女、組織女を支えてやってくれ。お前ら二人とも、いつも俺を助けてくれたな。二人共最高に良い奴だったよ)

男(お嬢、メイド。遊べなくて申し訳ねえ。あの世で先に待ってるから、遊びのプランをそれこそ氏ぬほど考えておくから、いつかまた会えたら、その時は氏ぬほど遊

ぼう)

男(・・・団長殿。あなたとの鍛錬は実に楽しかった。貴方とは同好の士になれたかもしれないと思うと、実に残念だ。来世で、もしファンタジーの世界とかに生まれ

変われたら、その時は互いにアホみたいに長い技名言いながら、剣舞でも繰り広げましょうや)

男(・・・そして、女。お前に、今までの俺の洗いざらいを全部喋ったら、その可愛い顔は、どんな表情を浮かべるのだろな?騙していて申し訳なかったが・・・それ

でも、こうして少しでも役に立つ事で罪滅ぼしになるかな?)

キメラ「氏ねえええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

ブオオォォォォ!!!(男に迫り来る炎)

男(・・・お別れか)

男(色んな奴との約束も破っちまったし、悔いは残る・・・が、ここまできたらジタバタせずに、真正面から受け止めてやる!最後くらいはせめてかっこつけてな!)

男(・・・さよな――)

???「――全く、相変わらず無茶苦茶しますね、ご主人様は」

バシッ!(誰かが男をお姫様抱っこして、炎からギリギリの所で逃れる)

男「・・・え・・・あ、お、お前は・・・メイド!?」

メイド「はい。あなたのメイドです、ご主人様――助けにきましたよ」

298: 2015/11/29(日) 03:06:49.48 ID:tBBPnlM60
キメラ「あ?」


組織部下女「よし、男さんが引きつけてくれてる今です、二人とも!」

女「ええ、行きましょう団長!!」

騎士団長「ああ、尻尾をぶった斬る!!


ザッ!!ザザンッ!!(女がキメラの尻尾に切り口をつけて、そのあと団長が見事に尻尾をぶった斬る)


キメラ「ああ!?」


ヒュゥゥゥ……(どこからか、巨大な物体が飛んで来る音)


???「闇に飲まれよ、ですわあああああああああああああああ!!!」

ドガラッシャアアアアアアアアア!!!!(巨大な物体が当たって、キメラがぶっ飛ぶ音)

キメラ「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」



ウィーン(『兵器』のコックピット面が開く音)

機関女「おーっほっほっほ!男さん、かなりお困りのようでしたわね?助けに来てあげましたわよ!!」

シュタ(機関女の『兵器』の肩の上に男を抱えて降り立つメイド)

メイド「お嬢様・・・やはりその笑い方はないと思いますが・・・」

機関女「お、男さんの好きそうな漫画とかアニメを見ていたら、大抵私のようなキャラはこのような笑い方をしていたんですもの!仕方がないでしょう!」

メイド「別に真似する必要はないと思いますが・・・」

機関女「う、うるさいですわね!いいじゃありませんの!!」

男「お前ら・・・一体・・・?」

299: 2015/11/29(日) 03:08:13.22 ID:tBBPnlM60
メイド「いえ、急に『戦争』についての連絡をよこして、そのあと一切連絡が取れなくなり、それに強烈な能力の気配を感じれば、嫌でも心配になるというものでしょ

う?」

男「・・・確かに、それは済まなかったな・・・でも、どうしてここが?」

機関女「ふふっ、『組織』の科学力を持ってすれば、男さんのスマホから位置情報を割る事など容易いですわ」

男「こええよお前ら!?でもいいのか?お前らはもう『戦争』から降りたんだろ?なんで俺を・・・」

機関女「それは・・・」

シュゥゥゥ・・・(組織部下女の獣が男達に近づいてくる音)

組織部下女「男さん、無事ですか!?・・・って、ええ!?『機関』!?」

騎士団長「っ、貴様らっ、まだ・・・!」

女「っ、男!離れなさい!何をされるかわかったもんじゃ・・・!っていうかなんであんたメイドにお姫様抱っこされてんのよ!?」

男「ええいお前ら落ち着け!こいつらは助けに来てくれたんだよ!!

女「・・・え?そうなの?」

組織部下女「・・・本当ですか?」

メイド「ええ、わざわざ嘘をつきにこんな危険な事までしないでしょう」

騎士団長「しかし・・・一体なぜ?」

機関女「男さんは友達ですからね・・・友達を助けるのに理由がいるので?」

男「・・・は、はははっ!!いいぞお前ら!!やっとわかってきたな俺のノリが!!」

女(・・・なんかまた、男の回りに女が増えそうな・・・)

騎士団長(友達・・・友達を見る目か?あの目が?特に機関女の方はまだしも、メイドの方はいつまで男をお姫様抱っこしているのだ・・・特にメイドの男を見る目が

、私を見つめる後輩の女子達に似ている気がするぞ・・・)

組織部下女(うう、またライバルがぁ・・・)

男「どうしたお前たち、変な目で俺を見て・・・」

騎士団長「いや・・・」

女「別にぃ・・・」

組織部下女「なんでもないですよーだ・・・」

300: 2015/11/29(日) 03:08:46.60 ID:tBBPnlM60
男「???・・・って、何度目だこの流れは。なぁ、なんでか分かるかメイド?」

メイド「さぁ、ご自分の胸に聞かれたらいかがです?ご主人様」

女・騎士団長・組織部下女「「「ご、ご主人様ぁ!?」」」

男「あー・・・というかお前、なんで俺の事ご主人様って呼ぶんだよ。まぁそりゃあこの暗黒の邪王をご主人様と崇めたくなる気持ちは痛いほどわかるが・・・」

メイド「ふふ。さぁ、どうしてでしょう?秘密です♪」ニコッ

女(団長団長、なんかメイドのキャラが違くないですか?あんな笑うキャラでしたっけ?)ヒソヒソ

騎士団長(いいや、前はもっとテンションの低い無表情系な人間だと思ったが・・・)ヒソヒソ

男「というか、お嬢よ。この『兵器』は大丈夫なのか?またエネルギー不足で、回りの人間を取り込んだりはしないのだろうな?」

機関女「ええ。一応、何かあった時の為に改良して、暴走が怒らないように理論的に改造しましたので大丈夫ですわ。またエネルギー源も従来のものに戻しましたの。

ただそのせいでパワーや機動力も前回の『兵器』よりかは正直、見劣りするのは否めませんが」

男「そうか・・・なら良かったぜ・・・ところで、今日はいつもと髪型が違うんだな」

機関女「ええ、メイドがこの髪型にセットしてくれたんですの」

メイド「お嬢様はとても美しいので、おめかしさせるのが楽しくてしょうがないです」

男「ほう、仲良き事は美しき哉ってな。お嬢、良く似合っているぞ」

機関女「あ、ありがとうございます・・・お世辞として受け取っておきますわ・・・//」

男「?いや本心だが」

機関女「・・・メイドが毎日、男さんの話をする理由が分かる気がしますわ」

メイド「お、お嬢様、毎日ではありませんよ!週に7日くらいしかご主人様の事は話してません!それとご主人様・・・お嬢様まで落とすつもりですか?」

男「何の話をしてるんだお前は・・・」

女「あんた達、ここが戦場だって事を忘れてないでしょうね・・・」

キメラ「て・・・んめえらああああああああああああああああああ!!」

ガラガラ・・・ズアアアアアアアアアア!!(瓦礫に埋もれたキメラが起き上がってくる音)

301: 2015/11/29(日) 03:09:12.49 ID:tBBPnlM60
キメラ「舐めやがってこのクソ人間どもがァァ!!!てめえら全員氏ぬよりもつらい目に合う覚悟は出来てんだろうなぁァ!?」

メイド「まぁ、下賤な言葉を使う方ですね。お里が知れます」

機関女「メイド。ゆめゆめ油断なさらぬよう。アレは強いですわよ」

騎士団長「・・・流石だなお嬢。この短時間であいつの実力を把握しているか」

機関女「まぁ、嫌でも感じますしね・・・正直、私達の加勢もあってようやく五分五分と言った所でしょう。私達が来たからと言って皆さん、気を抜いてはダメですわ

よ!」

女「そうね。気を抜きたくても、抜けそうにないわね、この感じ・・・」

キメラ「皆頃しだこのクソビXチどもがッ!!!女に生まれてきた事を後悔させてやるからなこのクソアマどもォ!!!」

ブオオォォォォ!!!(全員に迫り来る炎。さきほどよりも威力、勢いが上がっている)

組織部下女「ッ!?騎士団長さん、女さん!!私の獣に捕まって下さい!!」

騎士団長「っ!」

女「くッ!」

機関女「下がりますわよっ!」

メイド「はいお嬢様!男さん、しっかり捕まって下さいね!」

男「申し訳ないがそうさせてもらう!!」

ババババババッ!!(全員散開する音)

騎士団長「お嬢!メイド!そして男!悪いが正面を頼むっ!我々では火力不足だっ!隙をついてこいつの体力と力を削っていく!悪いが頼ん――」

キメラ「んな思い通りにやらす訳ねえだろアホがあああああああああああああああああああああ!!」

ズッドガッ!!(キメラの前足が、組織部下女の鷹型の獣に当たる)

鷹型の獣「ぴょ!?・・・ヒュゥゥゥ!」

組織部下女「大丈夫!?くっ、よくもっ!」

女「落ち着きなさい組織部下女!!冷静さを失ったら負けよ!ここは一旦引くのが正解だわ!」

組織部下女「・・・悔しいですが、ですね!」

組織女「とりあえず意図は伝わりましたわ騎士団長さん!!やれるだけやってみます!!」

騎士団長「頼んだぞっ!!」

騎士団長(『冥府落し』は・・・出来ない訳じゃない、が・・・アレは詠唱をするのに集中力と邪魔されない時間が必要だし、なによりあのように暴れまわられては、

狙いを付けるのも困難だ・・・くっ)

騎士団長(なにより、組織女は士気を落とさせない為に5分5分と言ったんだろうが、実質、尻尾を斬って加勢して貰った上で、ようやく4対6と言った所だろう・・

・どうする・・・いや、考える時間はない・・・戦うしかないか!)

騎士団長(全く、厄介な物を呼んでくれたものだ、組織女め・・・)

302: 2015/11/29(日) 03:09:54.52 ID:tBBPnlM60
組織女(・・・外からでけえ音がする)

組織女(今頃ドンパチやってんのか・・・)

組織女(男も、組織部下女も、それからまぁ、『騎士団』の奴らも、戦っている以上、無事だといいが・・・)

組織女(・・・はっ、情けねえなぁ・・・元々の原因があたしなのによ、あたしだけ蚊帳の外か)

組織女(一体いつから、あたしは自分のケツも自分で拭けねえような人間になっちまったのかね・・・)

組織女(ああ、ったく。それにしたって、男も、組織部下女も、バカだな・・・)

組織女(あたしの失敗の尻拭いを、わざわざ命がけでする大馬鹿どもだ・・・)

組織女(はっ)

組織女「ダセえなぁ、あたし・・・」

組織女(こうやって愚痴ってることが、さらにダセえ・・・)

組織女(でも、マジで一歩も動かねえんだよ、指先ひとつ、動いてくれねえんだよ)

組織女(ちくしょう・・・お願いだ・・・誰か、力を貸してくれ・・・)

組織女(・・・はっ、無意識の内に誰かや何かにすがるようじゃ、あたしももう終わりだな)

組織女(いつだって、自分の拳と力で、切り開いていくのがあたしだってのによ・・・)

組織女(・・・あいつら、無事なのかな)

組織女(あいつらが負けちまったら、どうなるんだろうか)

組織女(・・・当然、あたしは食われるか)

組織女(・・・へ、何を今更わかりきった事を)

組織女(・・・)

組織女(・・・せめて、戦って氏にてえ。やられるがままなんてまっぴらごめんだ。例え相手が神様だろうが、気に入らなかったらぶん殴るのがあたしだ)

組織女(だからせめて、戦える力がほしい)

組織女(勝たせろなんて贅沢言わねえ。勝たせてもらうなんざつまらねえ)

組織女(勝利ってのは自分の拳一つで引き寄せるもんだ)

組織女(だからせめてまともに戦えるくらいの力を、誰か貸してくれ)

組織女(本当に、たった一発だけでいい。全力でぶん殴れる力を、全身全霊をぶつけるだけの力を、誰か・・・)

303: 2015/11/29(日) 03:10:25.10 ID:tBBPnlM60
ドッガアアアアアアアアアアアア!!!(キメラの攻撃)

機関女「くっ、激しい攻撃ですわね・・・ああ、せっかく私の友達(メイド)が結んでくれた髪の毛が乱れて・・・許しませんわよ、あなた!」

バババババッ・・・ブオオオオ・・・バアアアアアアアアアアアン!!(『兵器』のレーザー銃を乱射したあと、エネルギー弾を溜めて、キメラに向けて撃つお嬢)

ズ・・・ザアアアア!!(それをギリギリでかわすキメラ)

キメラ「へっ、おせえおせえ!!んなおっっっっせえ弾が当たるかダボハゼがぁ!」

機関女「・・・いいえ。それでいいんです。でしょう、お二人?」

キメラ「・・・あ?」

女「――お嬢の言う通り!」

騎士団長「隙ありだな」

キメラ「あがあああああああああああああああ!!??」

・・・ザンッ!・・・ボトッ・・・ボトッ(エネルギー弾をかわした先で『騎士団』の二人に斬りつけられ、キメラの山羊と蛇の顔の部分が落ちる音)

キメラ「・・・こ、んのぉ!!クソどもがあああああああああ!!思いつく限りの残虐な方法、全部てめえらで試してやるからな!!覚悟しろやぁ!!」

組織部下女「よし!じゃあ私の獣で逃げますよお二人!!」

キメラ「てめえら、さっきからちょこまことォ・・・よし、こんどこそ捕まえ・・・」

メイド「――させませんよ」

シュッ(メイドの投げたナイフが、キメラが伸ばした前足にいつのまにか生えている)

キメラ「ちっ、クソがァ!」

スカッ(痛みに一瞬動けなくなり、その隙に騎士団長達に逃げられる)

304: 2015/11/29(日) 03:11:30.08 ID:tBBPnlM60
男「・・・メイドよ、お前が初めて戦う所を見たがすごいんだな」

メイド「ふふっ、メイドの嗜みですよ。それよりご主人様、攻撃はあたっていませんか?大丈夫です?」

男「まぁお前が守ってくれているからな・・・というか、お前はいつまで俺をお姫様抱っこしているんだ。いい加減下ろしてくれ」

メイド「・・・いえ、出来ればずっとこうしていたいんですけどね」

男「はぁ?」

メイド「いいものですよ、文字通り自分の手で誰かを守れるというのは」

男「・・・まぁ、それはなんとなくわかるが・・・」

メイド(・・・自分が憎からず思っている相手なら特に、ですね)

男「ところで、このまま行けば押しきれるんじゃないのか?アイツの顔も、残る所ライオンの顔一つだけだしよ」

ウィーン・・・ガシャン・・・(二人の近くに降り立つ機関女の『兵器』の音)

機関女「・・・いえ、男さん。恐らく、奴はここからです」

男「なんだと・・・?」

キメラ「あぁー・・・もういいわ。完璧にキレたわ。これやると抑え効かなくなって氏ぬほど疲れっからやりたくなかったんだけどよぉ・・・俺は悪くねえぜ?テメエ

らがわりぃ・・・」

・・・ズズズズズズズズズズ・・・

女「なんか・・・キメラの能力というか、オーラみたいのが、増してきてる?」

騎士団長「・・・」

鷹型の獣「ピエー・・・ピュー!」

組織部下女「どうしたのそんな声を出して・・・怯えているの?・・・団長さん!ひょっとしてあいつ・・・!!」

305: 2015/11/29(日) 03:11:56.43 ID:tBBPnlM60
騎士団長「・・・!!まずい!!全員攻撃しろ!!恐らく奴は今、力を溜めている!!変身か、変異か、なんだかわからないがこのまま行くとともかくまずい!!全力

で攻撃しろ!!!」

組織部下女「はい!!お願い、今だけでいいから、勇気を出して攻撃して・・・!!」

女「了解!!」

メイド「了解です!!」

機関女「了解ですわ!!」

ズドドドドドドドドガガガガガガガッガガガガガッババババババッ!!!!(全員で攻撃している音)

騎士団長「やったか!?」

スゥー・・・(舞い上がった砂埃から、変身したキメラの姿が見える)

キメラ「カッカッカ・・・あー、この姿になるの、数百年ぶりか?・・・くくっ、あー体が軽い。気分がいいわー・・・まぁせいぜい俺を楽しませて見ろやクソビXチ

。そうすりゃ俺の奴隷として生かしてやってもいいぜ?クヒヒッ」

女「なっ、傷が全部回復して、斬り落とした顔も尻尾も、復活してる・・・!?」

騎士団長「しかも奴の体力も士気も同じく、だな。ただパワーだけは大幅に上昇しているようだが・・・くっ!」

鷹型の獣「ピエーッ!ピエーッ!」

組織部下女「・・・大丈夫!大丈夫だから!落ち着いて、ね!?」

機関女「これは・・・ちょっと想像以上ですわね・・・」

メイド「ご主人様・・・一旦、下ろします。どうやら片手間で処理できる相手ではなくなりましたようなので・・・」

男「・・・ああ。どうやら、そのようだな・・・」

男(どうする・・・どうする!?)

キメラ「行くぜオラァ!!!」

306: 2015/11/29(日) 03:12:32.78 ID:tBBPnlM60
組織女(いくら願っても、助けてくれる誰かは来ねえ・・・分かってた事だけどな・・・)

組織女(男・・・組織部下女・・・)

組織女(役立たずだな、あたし・・・)

組織女(・・・バカ犬)

組織女(会いてえなぁ・・・お前に。もう一度会いてえよ、バカ犬)

組織女(お前に会う為に、あたしたくさん頑張ったんだぜ?お前みたいなバカの為によぉ・・・)

組織女(氏んだら、会えんのかなあ・・・)

???「ォオーン・・・」

組織女「・・・あ?」

???「クゥーン・・・・・・クゥーン・・・・・・」

組織女「てめえは・・・ケルベロス・・・?」

ケルベロス「ワオンっ」

組織女「なんで、てめえまで勝手に出てくんだよ・・・ああ、あの外で暴れてる奴が勝手に出てきたせいで、召喚に何らかの変化があって無意識に出てこれたって感じ

か?」

ケルベロス「ワオン!」

組織女「・・・そうか。まぁ出てきてくれたのは嬉しいけどよ・・・わるいが、今のあたしには何も出来ねえ・・・むしろ普段散々こき使ってんだ。日頃の恨みを晴ら

してくれてもいいんだぜ?」

ケルベロス「クゥン?」

組織女「とは言っても、あたしら召喚した奴と獣は繋がっている以上、そんな事する元気は今のお前には無えか・・・」

ケルベロス「・・・ペロペロ」

組織女「ぷっ、あはは、くすぐってえっての。顔舐めんな、バカ」

307: 2015/11/29(日) 03:13:44.59 ID:tBBPnlM60
ケルベロス「・・・ペロペロ」」

組織女「おい、いつまで顔舐めてんだ。慰めてくれてんのか?わりぃけど、今はそういうのいいからよ」

ケルベロス「・・・ペロペロ」

組織女「お前、だからやめろって・・・お前顔が3つもついてんだからよ、顔中ベタベタになるわ・・・」

ケルベロス「ペロ・・・ペロペロ・・・ペロペロ・・・」

組織女(・・・この、あたしが暗かったり落ち込んでたりすると、アホみたいに顔を舐めてくるこの感じ。こいつ、バカ犬にそっくりだな)

ケルベロス「クゥーン・・・クンクン・・・ペロペロ・・・ペロ・・・」

組織女(ていうか、こいつ鳴き声もそっくりだし・・・額についてる傷跡もそっくりだ・・・)

組織女(まさか・・・まさかな・・・)

組織女「・・・おい、バカ犬。お手」

ケルベロス「ワオン!」

ぽんっ(組織女の頭に手を置くケルベロス)

組織女(・・・お手って手を出すと、いつも肩とか足とかに、あのバカ犬は手を乗せてたっけ)

組織女(あとあたしがガキの頃で、バカ犬と背丈が一緒くらいの時は、よく頭に手を乗っけられてたな・・・)

組織女(ひょっとして・・・ひょっとして・・・いや、でも獣ってのはあの世だがどっかから、氏んだ人間や獣をベースに呼び寄せてるって氏んだ『組織』の元リーダーが言ってたような気がするな・・・)

組織女「なぁ・・・お前、ひょっとして・・・バカ犬の転生とか、生まれ変わりとか、そういうのなのか・・・?」

ケルベロス「ワオン!!」

組織女「・・・へ、マジかよ・・・んだよ、てめえ、知らねえ内に、あたしの傍にいたのかよ・・・氏んでからも、あたしの事を覚えてたのかよ、バカの癖に」

ケルベロス「ワオオン?」

組織女「・・・へ、分かってんだが、分かってねえんだか、よく分かんねえ顔しやがって・・・あのバカ犬らしいぜ。いや、ひょっとしたらてめえは、バカだから自分

が氏んだ事に気付いてねえのか?」

ケルベロス「・・・ワン?」

組織女「そう言えばてめえ、初めて召喚した時、やけに嬉しそうだったよな・・・んで召喚した瞬間からあたしに懐いてやがった・・・それはつまり、そういう事だったのかよ・・・?」

ギュゥ(組織女がケルベロスを抱きしめる)

ケルベロス「ワオン?」

組織女「ははっ、お前がバカ犬だって・・・気付かなかったあたしの方がバカかも知んねえな・・・あーあ・・・」

ケルベロス「オオン・・・ペロペロ・・・」

組織女「あーもういいって。舐めなくていい。大丈夫だ。なんか元気湧いてきたからよ」

ケルベロス「ワン!」

組織女「へへ・・・へへへ・・・・・・なぁ、バカ犬。今よ、あたしの好きな男と、こんなあたしを気遣ってくれる可愛い後輩が戦ってんだ・・・なぁ、あたしの事、手伝ってくれるか?」

ケルベロス「ワオーン!!」



???「・・・・・・」

308: 2015/11/29(日) 03:14:32.13 ID:tBBPnlM60
キメラ「ダラッシャアアアアアアアアアア!!!」

グワアアアアアアアアアア!!(キメラの体当たりが組織女の『兵器』を襲う)

組織女「くっ・・・うぅぅ、ダメージは深刻、ですがこの距離ならばっ!」

バアアアアアアアアアアアン!!!!ドォン!!!(『兵器』のエネルギー弾が当たる)

キメラ「グアアオ!?・・・へ、へへ、効いたぜ。変身する前の俺だったら氏んでたかもな。変身する前の俺なら、な!」

ブォン!!グォン!!(物陰から密かに狙っていた女を尻尾を叩き落とし、前足で『兵器』を攻撃する)

女「かはっ・・・ぅぅ・・・!!」

組織女「きゃああああ!!」

騎士団長「女!貴様ァ・・・!」

メイド「よくもお嬢様を、この下郎!」

シュ!シャア!!(剣で斬りつける騎士団長とナイフで襲いかかるメイド)

キメラ「だから・・・おせえっつってんだろうがこの低脳どもがあああああああああ!!!」

ドーン!!(吹き飛ばされる二人)

騎士団長「ごほっ!」

メイド「がっ・・・!」

キメラ「ヒャハハハハハハハハハ!!!あーやっぱこうなった俺は無敵だ!!気持ちいいいいいい!!!カス共を蹂躙すんの最高おおおおおおおおおおおおおおお!!

うっひひひひひ!!!」

組織部下女「お、男さん。ダメです。この子が怯えちゃって、あの獣に近づいてくれません!!」

男「そうか・・・」

男(あいつの攻撃の衝撃で俺と組織部下女は吹き飛ばされて、ちょうど近場にあった物陰から様子を伺っていたが・・・嘘だろ・・・あっという間に4人がやられた・・・クソ、どうする・・・どうする・・・!?)

男(・・・いや、どうするもクソもねえか・・・結局、俺に出来る事なんか、いつだって限られている。能力者でもなんでもねえ俺は、俺に出来るベストをやるだけだ。ビビってる場合じゃねえ)

男「ならばちょうどいい、組織部下女。女と団長殿と機関女とメイド連れて逃げろ」

組織部下女「は、はぁ!?男さんはどうするんですか!?」

男「俺は残る。なぁに、さっきの様子からするに、俺でも5分ぐらい時間稼ぎは出来るだろ」

309: 2015/11/29(日) 03:15:50.39 ID:tBBPnlM60
組織部下女「そ、それはダメです!!だって男さん、今度こそ本当に氏んじゃいますよ!!!あの獣、さっきまでとはスピードも力も段違いなんですから!!瞬殺されてしまいます!!」

男「・・・まぁ、お前があの4人を確保して逃げる時間くらいは何とか作る。だから逃げろ」

組織部下女「・・・いや、嫌です!だって、だってそれじゃあ結局変わらないじゃないですか!組織女さんを見捨てない代わりに男さんを見捨てる事になっただけです!!意味がありません!!!」

男「そんな事はねえ!!意味なんかどうでもいいからさっさと逃げろ!!」

組織部下女「嫌です!!逃げません!!」

男(畜生、どうしてこう、俺の回りの女は、誰も彼も自分の事を大事にしない奴ばっかなんだ)

男(どいつもこいつも、良い奴すぎるんだよ・・・)

男「いいから逃げろ!!そうこうしてる間にも、キメラがこの場所に来るかも知れねえんだぞ!」

キメラ「ん?呼んだか?」

男・組織部下女「!?」

キメラ「てめえらバカだろ?あんな大声で叫んだら誰でも気付くわ。おいそこのお前、さっき散々バカにしてくれやがったよなぁ・・・?」ビキビキ

男(やべえ・・・本気でブチ切れてる・・・こりゃあ氏んだな・・・俺。だったらせめて、組織部下女だけでも・・・)

男「ふ・・・だったらどうした?むしろお前がそれを覚えていた事に驚愕するぞ、一応それぐらいの頭脳はあるのだな」

キメラ「あぁ・・・!?」

ズズズズズズズズズズ・・・!(怒りでさらにオーラが増すキメラ)

鷹型の獣「ピ、ピエーッ!!」

シュゥゥゥーッ!(鷹型の獣がキメラを恐れて逃げる音)

組織部下女「あっ・・・!ま、待って!!男さんが・・・!!」

男(よし、とりあえず組織部下女を逃がす事だけは成功したが・・・流石に、もう助かる手立てが思いつかねえ・・・)

キメラ「今度こそ氏ねやオラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ブヒョウ!!!(キメラの前足が、男を襲う音)

男(今度こそ、氏んだ――)

310: 2015/11/29(日) 03:16:47.24 ID:tBBPnlM60
???「人の男に、手を出してんじゃねええええええええええええええ!!!!!!!」


ズッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!(巨大な物体が当たって、キメラがぶっ飛ぶ音)


キメラ「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?!?またかあああああああああああああああああ!?!?!?!?」


???「ふぅー・・・厨房の頃を思い出すぜ・・・男が族に捕まった時、単車一つ、あたし一人で族のアジトに乗り込んだ時をよぉ・・・」

???「グオオオオオオオオオオオオオ!!!」

男(超でかい犬・・・の頭が3つあるバージョン・・・ケルベロスと・・・この声、この口調は・・・)

男「お、お前は・・・組織女!?どうして・・・もう動けないはず・・・」

組織女「ああ?この中じゃお前があたしの事1番知ってんだろ?今じゃ化石扱いの女ヤンキー、レディース、女番長だぜ?んで、気合と根性で世の中なんとかなると思ってる大馬鹿女だ」

組織女「それにあたし頭悪いからよぉ、ダチがピンチな時に体力が無いとか自分じゃわかんねえんだ。だから気合入れて根性出して助けに来てやったぜ、男」

男「・・・ふっ、ククク・・・クククククク・・・全く、お前という奴は・・・この御刀虎の灰色の脳細胞を持ってしても、計算外の女だ。カカッ、最高の女だよ、お前はっ!!」

組織女「さ、最高の女って・・・そりゃあまぁ、あたしがいつだって最高なのはいつもの事だし・・・///」モジモジ(ケルベロスの毛をイジイジ)

男「?」

組織女「ゴホンゴホンッ!とにかく、今はあいつに集中だろ? というか、他の奴らは?」

男「それが・・・奴が予想以上に強くてな。全員やばい状態なのだ・・・」

組織女「んだと?・・・っていうか、よく見れば『機関』のお嬢とメイドまで居るじゃねえか・・・」

男「ああ。あいつらも助けに来てくれてな・・・お前まで来たことで『機関』『組織』そして『騎士団』の主要メンバーが全員揃ったという訳だ」

組織女「・・・へっ、そんなに人数集まって、あんなキモい獣一匹に負けちまったらかっこ悪いよなぁ・・・おいよく聞け、『機関』のお嬢とメイド!それから『騎士団』の団長さんと女!!それから組織部下女よぉ!!」

組織女「てめえら!!!『戦争』に関わった連中がこんだけ雁首揃えてんのに、何あんな訳わかんねえちょっとデカくてキモい奴に手間取ってんだ!!情けねえぞ!!気合が足りねえよてめえら!!!」

組織女「あたしを苦戦させた奴らが、あんなキモい獣一匹に負けるなんて許さねえぞ!!根性見せろ根性!!!!オラ・・・うっ!!」

バタンっ(体力の限界が来て、倒れる組織女)

男「組織女っ!!」

組織女「へっ、言ってる本人が・・・体力切れじゃあ世話ねえな・・・でもよ、見ろ。今がチャンスだ・・・思いっきりぶん殴ってやったから、よ・・・畳み掛けろ・・・勝つチャンスは、今しか、ねえぞ・・・!!!!」

311: 2015/11/29(日) 03:17:32.58 ID:tBBPnlM60
機関女「全く・・・根性だの気合だの・・・時代錯誤も甚だしいですわ・・・」

メイド「ええ、何の証拠も確証もない精神論ですが・・・ふふっ、なぜでしょうね、体が動いてしまうのは」

騎士団長「あの女は相変わらずめちゃくちゃな事ばかり言う・・・」

女「別に、あいつに言われるまでもなく、私は立ち上がれましたし!!」

組織部下女「頭領・・・体がボロボロなハズなのに・・・ねえお願い、もう一度だけ立ち向かわせて!」


ウィーン・・・ガチャン!(『兵器』の駆動音)

ザッ・・・ダダダダダ!(立ち上がり、キメラの方へ凄まじい速度で疾走するメイド)

シュ!シュ!(姿さえ視認出来ないほどのスピードで、キメラへと襲いかかる騎士団長と女)

シュゥゥゥーッ!(エグい角度で、急降下攻撃を仕掛ける鷹型の獣)


機関女「全エネルギーを注ぎこみます!!これ撃ったら『兵器』は機能停止ですけど、知った事じゃありませんわ!!」

キュゥゥゥ・・・バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!(『兵器』が今までで1番威力のあるエネルギー弾をキメラに撃つ音)

キメラ「ガァッ!?」

メイド「『機関』特製、『禍学爆弾』です。先程までは狙いが付かず、使用出来ませんでしたが、今なら・・・!!これはあなたの体内で爆発します。ちなみに威力は、高層ビルがこれ一発で木っ端微塵になるほどです。お嬢様のエネルギー弾と一緒にご賞味下さいませ!」

ズッ・・・グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!(くぐもった爆発音が辺りを劈く音)

キメラ「グファオォ!?」

組織部下女「お願い!!私の体力も全部使っていいから、あなたの持てる力を全てあいつにぶつけて!!」

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ、ズバッ!!!(全力で体当たりした後、爪でキメラの目潰しをする鷹)

キメラ「アガアアアアっ!?目がっ目がああああああああああ!?」

女「あんたの下品な言葉遣い、もう二度と聞きたくないわ!!!今のあたしの全力の剣技をくらいなさい!!!」

スパッ・・・ズッシャアアアアアアアアアア!!!(首筋に太刀筋を入れたあと、噴水のように血が吹き出す音)

キメラ「グゥ・・・カハァッ・・・アアアアアアア・・・この、クズ、ども、ガッ・・・いい加減にっ・・・」

女「団長、あとはお願いします!」

騎士団長「任せたまえ・・・奥義・旋紅蓮七覇黒風万王羅刃影蒼剣星焔散殺裂斬!!!!」

キメラ「てめえ、ら・・・」

ズシャ・・・ズル・・・バアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!(キメラの首と胴体がずれ、完全に首と胴体が離れた音)


組織女「へへっ・・・んだよ、やりゃあ出来んじゃねえか・・・だから言ったろ・・・気合と・・・根性・・・だって・・・」

312: 2015/11/29(日) 03:18:18.93 ID:tBBPnlM60
???「うりょう・・・とうりょう・・・!」

組織女(誰だ・・・?)

???「おい、組織女起きろ!」

組織女(この、声は・・・)

組織部下女「あっ、頭領!やっと目を覚ましてくれたんですね!良かった・・・私、心配で心配で・・・!」

組織女「お前は・・・組織部下女・・・」

男「やれやれ、やっと目を覚ましたか・・・全く、2週続けて眠り姫に遭遇する事になるとはな」

組織女「男・・・」

騎士団長「目覚めたか」

組織女「団長さんか・・・って、あのキモい獣は!?あいつはどうなったんだ!?」

機関女「あの獣なら無事、倒しましたよ。姿が消えたので、間違いないでしょう。全く、とんだ物を呼び出してくれましたわね」

組織女「・・・ああ、お前らにも迷惑掛けたみたいだな・・・おい、『騎士団』の団長さんと女と『機関』の二人よぉ」

女・騎士団長・機関女・メイド「「「「?」」」」

組織女「その、なんだ・・・・・・サンキューな。あたしのポカが原因なのに、助けてくれてよ」

女・騎士団長・機関女・メイド「「「「・・・!?」」」」

女(ど、どど、どういう吹き回しですかね団長!?あの組織女が私達にお礼を言うなんて!?)ボソボソ

騎士団長(さ、さっぱりわからん・・・私はてっきり、『てめえらがいなくてもあたし一人で排除出来た。邪魔しやがってこの野郎』くらいの事は言われると思ったぞ)

機関女(組織女さん、どこかに頭をぶつけたんですの?)ボソボソ

メイド(何気にひどい事言いますねお嬢様・・・)ボソボソ

組織女「なんだお前ら、コソコソしやがって」

女「い、いいえ別に。なんでもないわ!」

騎士団長「・・・というか男にはお礼はないのか?いくら旧知の仲といえど、親しき仲にも礼儀ありというだろう」

組織女「いや、それはよ・・・まぁ、あ、後でな・・・男・・・///」

男「?おお、わかった・・・」

313: 2015/11/29(日) 03:19:26.28 ID:tBBPnlM60
女「・・・そう言えば、男って、最後の方はなにしてたの?あのキメラの攻撃を完璧に読みきってたのはすごかったけど・・・」

男「お、おう・・・あ、ああ、それはだな・・・えーっとその・・・」

組織女「・・・こいつはよ、体力が完璧にゼロになったあたしを介抱してくれてんだ。だから最後の攻撃には参加出来なかった。そうだろ、男」

男「う、うむ。その通り・・・俺もあいつをブチのめしてやりたかったが・・・まぁお前らだったら大丈夫だろうと信用していたのだ・・・ククク、それにこの御刀虎が本気で攻撃したら、奴が余りにも可哀想だからな、俺にも慈悲の心はあるのだ、ククク・・・」

女「そうだったの・・・ま、倒せたし、今更だけどね」

組織女「・・・で、だ。団長さんよぉ。一つ聞きたいんだが」

騎士団長「なんだ?」

組織女「・・・なんで、あたしを頃してねえ?無防備だったはずだぜ?あたしを数十回は殺せるくらいよぅ・・・組織部下女だって、『騎士団』が総掛かりで攻撃すればぶっちゃけ余裕で倒せるはずだろうが」

組織部下女「頭領、それは・・・」

騎士団長「・・・ふっ、聞くと思ったよ。我々はこれでも一応『騎士団』だからな。騎士の名誉と誇りにかけて、敵の寝込みを襲うような真似は氏んでも出来ん」

組織女「・・・はっ、あたしの根性論くらい、甘い考えの騎士道精神だなぁ、おい」

騎士団長「ふん、別に今更だ。お前こそいいのか?正直、今この場で襲いかかられたら、私は完璧に対処出来るとは言いがたいぞ。戦闘により疲れもストレスも、極限にまで高まっているしな」

組織女「襲う、ねぇ・・・はっ、んな事、出来る訳ねぇだろ」

女「?なぜ?」

組織女「なぜって・・・そりゃあまぁあたし達、もうダチだろ?ダチを襲う理由があるか?」

女「・・・はぁ?」

男(出た・・・組織女の、この感じ)

機関女「・・・メイド、組織女さんは一体何を言ってらっしゃいますの・・・?」

メイド「お嬢様、アレです。・・・マンガやアニメでよくある、殴りあったあとに、土手に寝そべって『お前つえーな・・・』『へっ、お前だって大したもんだぜ・・・』的なアレです」

機関女「な、なるほど・・・現実でそんな事している方を見た事ありませんでしたが・・・それが今まさに、ここに顕現するのですわね!?」

男(それは微妙に間違っているぞ・・・まぁ、ともかく。組織女の中では、一度でも共闘した事ある奴は全員ダチっていう定義らしい・・・それは中学の時からそうだったしな)

女「ダチって・・・たった一回、必要に迫られて共闘しただけよ・・・?」

組織女「ダチになる理由なんて、それだけで十分だろ?ましてや、それがただの殴り合いじゃなく、命を掛けたモンなら尚更だろうが」

騎士団長「・・・今時、一本気な女性なのだな、組織女」

314: 2015/11/29(日) 03:20:11.71 ID:tBBPnlM60
組織女「はっ、別にそんなんじゃねえが・・・ともかくそう思ったからよ、さっきはお前らにサンキューって言ったんだ・・・それによ」

チラッ(目線をケルベロスに向ける)

組織女「あたし、実はもう願いが叶ってたんだよな」

女「は、はぁ?そうなの?というか、叶ってた、というのは?」

組織女「いや、その内容が何かは流石に言えねえけどよ。恥ずかしいしな。だからあたしはもう、いいんだ。んで、あたしはダチになった奴らになら、殺されてもいいと思ってる。あたしにとってダチってのはそれぐらいの存在だからよ。だから、てめえらに襲われても文句は言えなかったんだが」

騎士団長「・・・本当か?」

男「団長殿、旧知の仲の俺が保証しますが、組織女は壊滅的に嘘が下手なんでね。嘘は言ってないと思いますぜ?」

騎士団長「ふむ、それはまぁなんとなく雰囲気で察する事が出来るが・・・」

組織女「・・・だけどよ、組織部下女。お前がどうしても叶えたい願いがあるってんなら、あたしはお前の為に戦う。お前がさっき、あたしの為に戦ってくれたようにな。どうする?」

組織部下女「いえ、私もその・・・」チラっ(男の方を見る)

男「?」

組織部下女「私の願いも、ある意味もう叶っているので・・・頭領が戦わないというのなら、それに従います。それにあの獣を倒した事で『組織』の皆の仇も取れましたし!」

組織女「・・・だとよ。団長さん」

女「え、って、ことはじゃあ・・・!」

組織女「ああ、この『戦争』あたしらは撤退する」

騎士団長「い、いいのか?ほ、本当に?」

組織女「ああ、いいさ。ダチと喧嘩する事はあっても、戦争まではしねーだろ?」


組織女「この『戦争』、あたしらの負けでいいぜ」

315: 2015/11/29(日) 03:20:58.15 ID:tBBPnlM60
――フワッ・・・


男(組織女がそう言った瞬間、一瞬俺たちの回りに光が差したように見えた)

男(そして、ふと空を見上げると、そこには何か布のような物がヒラヒラと落ちてくるのがわかった)

騎士団長「あれが、聖遺物という・・・奴なのか?」

女「みたい・・・ですね」

男「聖骸布、か・・・?」

メイド「流石ご主人様、名称には詳しいですね」

機関女「ただの布にしては、神々しく見えますもの。間違いないでしょう」

組織女「へぇー・・・アレが願いを叶えてくれんのか・・・まぁ興味ねえけどな」

組織部下女「ですね、私も、あまり・・・なにか物凄いパワーみたいなものを感じますけど・・・」


――フワッ・・・フワッ・・・ヒラリ・・・


男(そして、それは、ゆっくりゆっくり舞い降りてきて・・・やがて、団長殿の両腕に収まった)

男(この街に引っ越してきてから、色々あったが・・・)

男(女と出会って、団長殿とも出会って・・・『戦争』に巻き込まれて・・・)

男(この一ヶ月ほどは・・・長いようであっという間だった・・・とても濃い時間だったと思う。それもようやく終わるのだと思うと、感慨深い)

男(俺も、これでやっと『戦争』から降りられると思うと・・・正直ほっとする)

男(もう、正直。命のやり取りは懲り懲りだ・・・まぁ、俺の妄想が実現したみたいで楽しかったが、それでも俺はやはり一般人。組織女が言ったように、まともに立ち会えば紙みたいに吹き飛ばされて終わりだ)

男(だから、これがちょうどいい塩梅、引き際という奴なんだろう)

男(正直、これ以上はボロが出る気がする。何せ味方以外の全員に、俺が無能力者だとバレてるという冷静に考えたら意味わからん状況だし・・・)

男(それにこれ以上『戦争』に関わったら、マジで命がいくつあっても足らんしな)

316: 2015/11/29(日) 03:21:54.24 ID:tBBPnlM60
男「ふっ、これで大団円という奴か・・・我が御刀虎の出番も、今回はここまでのようだな」

女「ふぅ、そうね・・・やっと終わりね・・・長いような短いような2年間だったわ・・・」

騎士団長「ああ・・・改めて女、そして男。礼を言う。ありがとう・・・至らぬ団長だったと思うが・・・私を信じてついてきてくれてありがとう」

女「いいえ、団長は立派なリーダーでした。いつも気丈で頼りがいがあって・・・最高の団長でしたよ」

男「女の意見に同意ですな。謙遜する必要はありませんぜ。堂々と胸を張っていいと思いますが・・・」

騎士団長「二人とも・・・ふふっ、ありがとう・・・ぐすっ・・・くっ、私とした事が・・・人前で涙など・・・」

組織女「あー・・・その、あたしら邪魔か?だったらどっか行ってるが」

騎士団長「い、いや。大丈夫だ。ちょっと気が緩んだだけだ。気を使わんでいい。『組織』も『機関』も、この戦争の当事者だろう。最後まで関わる権利がある」

機関女「そう言って頂けるならありがたいですわ。『機関』は代々『戦争』に関わってきた家系ですもの。『機関』の当代として、最後まで見届けようと思いますわ」

メイド「お嬢様がそう仰るなら、私はそれに従います」

組織女「・・・ま、ここまで関わったら最後まで見てやるか」

組織部下女「ですね。あんな布がどういう風に願いを叶えるのか気になるますし・・・あの布に願いを言ったら、神様でも現れるんですかね・・・?」

組織女「確かに気になるが・・・まぁ、見てたらわかんだろ」


女「・・・ねぇ、男」ボソッ

男「うん?どうした女」ボソッ

女「あんたはどんな願いを叶えるの?」ボソッ

男「・・・どうした急に?」ボソッ

女「いや、ふと気になってね。団長の願いは、同姓だし、団長の事みてれば何となくわかるけど、あんたのは想像もつかないしさ」ボソッ

男「別に、順番で回ってくればあと数分で分かる事だろう?」ボソッ

女「いいじゃない、気になるのよ。あたしにだけ先にこっそり教えなさいよ」ボソッ

男「・・・」

男(願い・・・願いか・・・)

男(そう言えば考えた事もなかったな・・・)

男(俺の願い・・・望み・・・夢・・・)

男(それは・・・)

317: 2015/11/29(日) 03:22:28.70 ID:tBBPnlM60
騎士団長「ふふっ、全く。なんだか皆の前で願いを言うのも恥ずかしいが・・・まぁここまで来たら些細な事か」

男(それは・・・)

騎士団長「では言おう。私の願い。それは私を、お――」



――――ブスリ。



騎士団長「ひ・・・・・・あ、・・・・・え、・・・・?、??」



???「ククク・・・待っていたぞ、この時を・・・騎士団長、貴様が気を緩める所、油断をするその瞬間を、な」


女「え・・・え・・・?」

男「団長・・・ど・・・の?」

男(気が付けば、音もなく、『ソレ』は、団長殿の胸から生えていた)

男(白く光る、細長い鋭利なもの)

男(それは剣。そして、それが突如として胸から生える道理はなく・・・)

男(道理は、なく・・・)

男(つまり、団長が・・・何者かに刺された・・・?)


男「だ・・・団長殿おおおおおおおおおっ!!!!?」

325: 2015/12/05(土) 08:56:56.17 ID:BDw3p8bw0
???「――男、女、お前らも氏ね」

シュッ(団長を襲った人間が姿も視認出来ないスピードで、二人に襲いかかる)

男・女「――――」←団長が襲われたショックで動けない。

メイド「ご主人様、危ない!!」

組織部下女「女さんっ!!!」

だっだっ(メイドが男に抱きつき、組織部下女が女に抱きつく)
しゅ(メイドが男に抱きつき、組織部下女が女に抱きついて体勢が崩れた事で、騎士団長を襲った凶刃が男と女、双方の頭のギリギリ上を通過する)

???「チッ!!邪魔を・・・――っとぉ!」

タァンッ!(機関女が服の中に隠し持っていた銃で禍学弾を撃つ音)
キィン!(それを剣で防ぐ)

???「へっ、いきなり撃つとは乱暴だな、機関女よぉ」

機関女「私の友達を襲っておいて乱暴とは、随分と素晴らしい教育を受けたようですわね」

???「教育ぅ?どっちかっつーと、あたしは今、教育を教え――」

組織女「――おいコラ」

ドッガアアアアアアアアッ!(ケルベロスの前足が襲う音)
シュッ(それをかわす音)

???「おいおい、誰も彼も血の気が多いなぁ。お前らはもう『戦争』から降りた身だろうが?あたしと戦っても一銭の得にもなりゃしないぜ?冷静に考えろよ冷静によぉ」

組織女「誰だよてめーは。いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーぞ」

???「誰だと・・・そうだなぁ、あたしは誰なんだろうなぁ、ククッ・・・」

組織女「あぁ?」

男(俺は、目の前で悪意ある・・・いや、悪意百パーセントの笑顔を浮かべる人物を知っていた)

男(いや、知っていたが、一瞬見間違えだと思ったのだ。俺が知っている人物とは余りにも・・・余りにも、表情や口調、そして雰囲気が違っていたから・・・)

男「せ、先生・・・?」

女「どうし・・・て・・・先生が・・・」

先生(?)「ククク・・・大正解だぜ、お二人さん!」

326: 2015/12/05(土) 08:58:02.14 ID:BDw3p8bw0
組織部下女「先生って・・・男さんと女さんの担任の先生なんですか!?」

メイド「どうして、その方がこのような事を・・・見た所、『組織』にも『騎士団』にも所属していないようですが――」

先生(?)「ククッ・・・おいおい、あたしがそんな事、悠長に説明してやるとでも思ってんのか? 世界はお前らを中心に回ってる訳じゃねえんだぜ?」

組織女「ムカつく野郎だな・・・てめえ、舐めてねぇか?いくらあたしら全員が手負いだろうが、てめえ一人でこの人数相手に勝てるとマジで思うのかよ?」

先生(?)「その自信も無くもないが・・・流石に100%勝てるとは言い切れねえわな。それに元々、さっきの奇襲で一気にカタ付けるつもりだったしよ・・・だから念の為に、保険を掛けておいた」

騎士団長「・・・っ・・・ぁ・・・」

女「団長!?生きてるんですか!?今助け――」

先生(?)「おっとぉ・・・そうはさせられねえなぁ!」

だっ、ギィン!(先生(?)が騎士団長を聖骸布ごと担ぎ上げる、その際に騎士団長を助けに行こうとした女の攻撃を剣を防ぐ)

男「団長殿・・・!」

女「団長・・・団長ぉ・・・!あんた、団長をどこへ連れて行く気!?」

先生(?)「――この街に、でっかいタワーがあんだろ?あそこの屋上で待つ。女、男。お前ら二人だけで来い。他の勢力の奴らを一人でも連れてきたら騎士団長は頃す。正々堂々勝負しようぜ?」

機関女「・・・人を後ろから刺しておいて、どの口が正々堂々と言いますのっ・・・!(騎士団長さんに当たる事を考えたら、禍学弾は打てませんか・・・!)」

機関女「卑怯もんが!!(ケルベロスで攻撃したら団長を巻き添えにしちまう・・・)」

先生(?)「おいおい、win-winの提案だろ?あたしは今すぐ騎士団長の喉元を掻っ切ってやってもいい所を、わざわざ待って勝負してやるって言ってんだからよ。それとも『騎士団』の二人はあたしに勝てる気がしないと?」

女「・・・ッ!上等よッ!やってやるわ!!首を洗って待ってなさい!!」

先生(?)「ククッ、威勢だけはいいなぁ。いつも男と騎士団長におんぶに抱っこの雑魚がよォ。てめえが頼りになった事が一度でもあったか?あぁ?」

女「なんですってぇっ!?」

男「よせっ、奴はお前を挑発してるんだ!あの団長殿が全く気付かぬ内に刺されたんだぞ!?それだけで奴がどれほどの実力が分かるだろう!!焦ったら、落ち着きを無くしたら負けだ、その隙を確実に突かれる!落ち着けっ!」

女「くっ・・・!あ、いや・・・なら!」

先生(?)「?」

女「私の願いはそこのそいつを消し去ることよ!!聖骸布!!願いを聞き届けなさい!!」

327: 2015/12/05(土) 08:58:42.40 ID:BDw3p8bw0
・・・・・・

女「な、なんで!?何で何も起こらないの!?」

先生(?)「はっ、てめえ成績は優秀な癖にバカだな。何も起こらない理由はてめえの小さな脳味噌で考えろ。じゃあ――」

騎士団長(くっ・・・せめて、これだけでも・・・残さねば・・・頼んだぞ、女、男・・・)

先生「――な。お前ら。待ってるぜ」

シュンッ(先生が姿も見えないスピードでその場から立ち去る音)
カラッ(何かが落ちた音)


男「行った・・・か・・・先生、なんで・・・」

女「どうして・・・どうして、こんな事に・・・」

機関女「・・・とりあえず一旦落ち着いたらどうかしら、男さん、女さん。焦りすぎると、勝てる戦いも勝てなくなりますわ」

組織女「今、頭の中訳わかんなくてグルグルしてんだろ?正直あたしも訳わかんねえしよ、状況を整理しようぜ?」

男「女・・・とりあえず組織女と機関女の言う通りにしよう。焦りは禁物だぜ?無策で突っ込んでも恐らく勝てる相手じゃないだろう?みんなで考えよう・・・団長殿を助ける方法を、な・・・」

女「・・・男・・・そうね。一旦、そうしましょうか・・・」

328: 2015/12/05(土) 08:59:40.57 ID:BDw3p8bw0
組織部下女「とりあえず、あの人は何者なんですか?お二人の知り合い・・・というか担任の先生だったんですよね?そういう素振りはあったんですか?」

女「いえ・・・特徴はせいぜい美人ってくらいの、普通のどこにでもいる先生だったはずよ・・・口調も雰囲気ももっと柔らかくて、『戦争』の事なんか、びた一文知ってそうになかったわ」

男「俺も女に同意だな・・・最近彼氏にフラれて、自暴自棄になっていたくらいしか知らな・・・いや、待てよ」

メイド「?何か、最近変な事でもあったのですかご主人様?」

男「ああ、一回だけだが・・・変な先生を見た気がする・・・遠目から見てもひどく悪酔いしてるとわかった先生が路地裏に入ったと思って、自殺でもされちゃたまらんとその路地裏を見たら、忽然と姿を消していたが・・・」

組織女「予兆はその頃からあったって訳か・・・でも、それだけか?それとも、アレがその先生って奴の本心だったのか?」

男「そうとも思えんがな・・・普通の、誰にでも優しくしてくれる先生だったと思ったぞ・・・(俺みたいな妄想野郎にすら優しかったしな・・・)」

機関女「・・・そう言えば・・・確か聞いた事がありますわ」

メイド「知っているのですかお嬢様!?」

機関女「ええ。通常、『能力者』は能力を得た瞬間にその自覚を持ち、『戦争』に否応なく身を投じる事になるのですが・・・稀に今回のようなケース・・・与えられた『能力』が強力すぎ、それに『能力者』が耐えられなかった場合、『能力』自身がその人間の体を媒体として意思を持ち、『能力者』を操り人形とするという事が起きるらしいですわ」

組織部下女「『能力』自身が意思を持つって・・・そんなのありえるんですか?」

組織女「・・・まぁ、ありえねえ話じゃなさそうだわな。あたしだって、さっきまでみんなで戦ってたキモい獣・・・キメラって言うんだっけか?あいつがあたしを頃してた場合も、形的にはそういう感じになるんだろう?」

機関女「ええ。だと思います。過去に一例だけ、そういう形になった『戦争』があると存じあげておりますわ・・・ただ、本当にそのケースは稀だと思いますの。恐らくその彼氏さんに振られ、心の均衡が崩れたのが乗っ取られた最大の原因でしょう。まぁアレは恐らく『能力』自体もかなり悪質だと思いますが・・・」

男「なるほどな・・・名称を付けるならば先生(悪)ってところか・・・」

女(・・・心の均衡・・・か・・・)

女「なるほど・・・ていうか、何であたしの願いは聞き届けられなかったのかしら」

329: 2015/12/05(土) 09:00:33.10 ID:BDw3p8bw0
機関女「・・・奴は何らかの勢力に加担、あるいは奴一人で勢力だったのでしょう。奴が騎士団長を刺した事がその証拠ですわ」

メイド「ですね。本来、一般人がどんな武器を持とうと、私達に傷を付ける事は不可能ですから。それがどんな名刀であろうと、です。奴もまたこちら側だったという事でしょう」

男「つまり、『戦争』はまだ続いているという事か・・・でも、それだったらおかしくないか?あの聖骸布が降りてきた=『戦争』終結って事じゃないのか?」

機関女「・・・あるいは、この『戦争』の行方を判定している某か・・・それが聖人なのか、宇宙の意思なのかあるいは神様なのか・・・それはわかりませんが・・・そう言った存在すらも、奴は上手く騙し仰せたという事なのでしょうね」

組織部下女「ずっと、自分の実力や『能力』をひた隠しにし、自分が有利になるよう工作して、この機会を伺ってたという事なのですね・・・」

組織女「・・・そういう事なんだろうな。あたしだって『召喚の儀』に細工されてるとは夢にも思わなかったしよ」

男「団長殿も『冥府落し』とやらに使う聖剣に、いつの間にか傷を付けられたと言っていたな・・・なんという卑劣漢だ・・・いや、あいつは女だけども」

女「そう言えば前。私と男が二人で帰ってた時も、一瞬、さっきのアイツのような気配を感じた気がするわ」

機関女・メイド・組織女・組織部下女「・・・」

女「な、なによあんたら!変な目で私を見て!・・・でも今思えば、アレも威力偵察って奴だったんでしょうね。さっきも1番手強い騎士団長をナンチャラって言ってたし・・・ったく、舐められたものね」

男「だが、奴の下した判断は悔しいが間違っていないだろう。俺たちの実力は団長殿を下回っている事は事実なのだ・・・残念ながら、な(というか、俺は最弱なのだが・・・)」」

女「・・・まぁ、それは否定出来ないけど・・・でも、やるしかないでしょう?というか、どうしたの?そんなに弱気で。いつものあんたらしくないじゃない」

男「・・・そう、だな。俺らしくなかった・・・所で、作戦はどうする?」

女「そうね・・・奴がタワーの屋上に居るからこっそり近づく事も出来そうにないし、、なおかつ団長も人質に取られている以上・・・結局、正面から戦いを挑むしかないのかしらね」

男「・・・それしかない、か・・・ん?なぁ、女よ。ところでアレは・・・」

キラッ(落ちている何かが光る)

女「え?あ、アレは・・・聖剣!きっと、団長が置いていったのよ!これで『冥府落し』が出来るわ!これならきっと、あいつに勝てるわよ!」

男「ふむ、一縷の希望を残していってくれたか・・・流石だな、団長殿は・・・」

女「よし、じゃあ早速あいつの所へ・・・!」

組織女「少しは落ち着けてめーは。心配なのは分かるが、さっきから急いだってしょうがねえって何回も言ってんだろうが」

機関女「そうですわよ女さん。人質として団長さんの身を拘束した以上、すぐに頃しはしないでしょう。それにあなた方『騎士団』は身体能力の高さが売りではないですの?そう簡単にあの団長さんが氏ぬとも思えませんわ。少しくらい休んだらいかが?」

メイド「休憩なさるという事でしたら、瞬間移動装置を使って、お屋敷からお飲み物でもお持ちします。少々お待ち下さい」

組織部下女「あ、じゃあ私も付いていきます。何か出来る事があればお手伝いさせてください」

女「・・・あんた達・・・そうね、そうさせてもらうわ」

男「・・・」

330: 2015/12/05(土) 09:01:18.06 ID:BDw3p8bw0
メイド「女さん。飲み物です。どうぞ」

女「ん・・・ありがとう。メイド」

メイド「・・・あと、こちら血や汚れを吹くタオルです。よかったら」

女「・・・あんた、気が利くわね・・・流石メイドって感じね」

メイド「いえ、言われるほど・・・そういえば男さんは?」

女「トイレに行ったわよ?」




男「ふぅー・・・ああ出た出た・・・我が汚れが外に出て行く・・・」

男「なーんて、言ってる場合じゃないな・・・」

男(二人だけで来い、か・・・正直、女一人が行った方がいいだろう。流石にもう今回は、いつもの他力本願やハッタリもとうとう期待出来そうにないしな)

男「・・・どうしたもんかね」

組織部下女「・・・男さん」

男「うおぉ!?って組織部下女か、どうした?」

組織部下女「聞きたい事があって、来ました」

男「聞きたい事?」

組織部下女「ええ・・・男さん。あなたは怖く、ないんですか?」

男「・・・怖い、とは?」

組織部下女「言わなくても分かるでしょう?」

男「・・・」

組織部下女「さっきのキメラの時だって・・・私を呼んで頭領の元へ来た時も、恐らく機関女さん達と戦っていたのでしょう?」

男「・・・(ご名答、だな)」

組織部下女「無能力者なのに、何度も何度も命がけで行動して・・・それに今もまた、あんな奴と・・・今度こそは、本当に氏んじゃうかもなんですよ?」

男「・・・」

331: 2015/12/05(土) 09:02:29.48 ID:BDw3p8bw0
組織部下女「ねえ、男さん。私と一緒に逃げませんか?」

男「・・・!?お、お前。何言ってんだ!」

組織部下女「だって、もう十分じゃないですか。無能力者の男さんが、2年続いた『戦争』の最後の一ヶ月だけとは言え、その期間を生き残ったのは、誰にでも出来る事じゃありません。男さんはすごく頑張りましたよ」

男「・・・」

組織部下女「もう、いいんじゃないですか?」

男「・・・」

組織部下女「本当は・・・怖いんでしょう?」

男「・・・ああ、正直に言おう。怖えよ・・・氏ぬほど怖え・・・キメラに立ち向かった時だって、正直ションベンちびりそうだったぜ・・・」

組織部下女「!だったら・・・」

男「――でもな・・・組織部下女よ、心配してくれるのはありがたいがな・・・でも、俺は・・・それでも、俺は戦わなければならんのだ・・・何よりここで逃げては・・・」

組織部下女「・・・男が廃る、ですか?」

男「・・・!!」

組織部下女「男さんだったらそう言うと思ってました。もう・・・男さん。どこまで意地っ張りなんですか、貴方は。今時、そんな男の矜持に拘ってる人、この世のどこにもいませんよ?」

男「・・・そう言われてもな、本心なんだよ。ビビってるのも、ここで逃げたら男が廃るっていうのも、どっちもな。さっきまで、命を掛けたやりとりなんてもうこりごりで、命がいくつあっても足りねえなんて思ってたのに、今じゃここで逃げたら男が廃るの方がギリギリ勝ってる・・・だから逃げねえ、立ち向かうしかねえんだよ。一回きりの人生、後悔を残したくねえんでな。それにここで逃げたら俺のプライドに傷が付く・・・それだけは・・・」

組織部下女「・・・男の人は、大変ですね。プライドなんて言う目に見えないものに振り回されて、怖い思いして痛い目見て、それでもソレを守ろうとするなんて」

男「ああ、男ってバカなんだよ・・・だけど、俺はこうする以外には知らねえんだ・・・あーあ・・・逃げちゃえば楽なのによ・・・」

組織部下女「・・・ふふっ、その通り、逃げてしまえばいいのに・・・本当におバカさんですね」

男「う、うっせえ!俺はな――」

ぎゅうぅ(組織部下女の胸に男の顔が埋まる)

組織部下女「・・・でも私、そういう人の方が好きですよ」

男「んんー!?んんー!?」←胸に顔が埋まって呼吸が出来ない。

組織部下女「男さん。†卍 刹那・神龍・X・アルファルド卍†さんの本、読み終えましたよ。この戦いが終わったら、一緒に語り合いましょうね」

男「・・・っぷはぁ!なにすんだお前いきなり・・・!」

組織部下女「あ、ごめんなさい・・・何だか私の前で弱気になった男さんが急に愛おしくなったので・・・つい・・・元気になれるように、と」

男「お、お前なぁ・・・た、確かに元気になったけど・・・!」

組織部下女「ふふっ、男さん、可愛い・・・また、してあげましょうか?」

男「い、いらんわ!アホっ!何考えてんだ、こ、こ、この痴女めっ!!あっち行け!!」

組織部下女「そうですか・・・残念です・・・あ、それと男さん」

男「まだ何かあんのか!?なんだよ!?」

組織部下女「私、男さんの事、大好きです。一目惚れでした。男さんが帰ってきたら、またちゃんと告白しますから・・・それじゃあ、また(ニコッ)」

男「は、はぁ!?ちょっ、ちょっとおま・・・どういう・・・行っちゃったよ・・・え、えええええ・・・!?」

332: 2015/12/05(土) 09:03:43.08 ID:BDw3p8bw0
男「・・・女ってのは意味がわからねえ・・・一目惚れって・・・マンガやアニメの中の物だけじゃなかったのよ・・・意味わかんねえ・・・意味わかんねえ・・・」

メイド「お帰りなさいませ、ご主人様」

男「おう・・・あれ、女は?」

メイド「女さんは詠唱の確認と、集中力を高めたいから一人にして欲しいということで、人気の無い所へ行きました」

男「・・・全くあいつめ、少しは休めばいいものを・・・機関女と組織女は?」

メイド「お嬢様は『兵器』の整備をしに、組織女さんはペット霊園の方へ行きました。あと、組織部下女さんが、顔を真っ赤にしながら、鷹型の獣に乗ってあっちへフラフラこっちへフラフラしているのですが・・・何かご存知です?」」

男「い、いや知らんな・・・あいつも連戦で疲れているんじゃないのか?」

メイド「確かに・・・そうかもしれませんね。ところでご主人様、これを・・・」

男「うん、これは・・・?」

メイド「はい、人間だろうが、鉄だろうがダイヤだろうが、何でもスッパスッパ斬れる、『機関』の科学と禍学を注ぎ込んだ・・・禍学刀でございます。ライトセーバーの日本刀バージョンと考えて頂ければわかりやすいかと」

男「お、おう・・・わかりやすい例えだなおい・・・でも、渡してくれるのはありがたいが・・・あんた、俺の運動神経の悪さを知ってるだろ? 正直俺はこれを渡されても、俺はあいつと互角に戦うどころか、1秒で斬り捨てられる自信があるぜ・・・?」

メイド「心配には及びませんよご主人様。ご主人様の運動音痴っぷりは計算に入っております。その刀には相手の動きに対して、自動的に超反応する装置がついており、相手の太刀筋や斬撃を一瞬で計算し、相手の攻撃を防ぎ、隙をついて攻撃する機能までついております」

メイド「故にその禍学刀ならば、ご主人様でも、先ほどの方と互角に戦えるほどの実力はつくかと・・・」

男「マジか・・・すげえ・・・いや、マジでありがてえわ。助かるぜ・・・団長殿を助けに行くのに、女の足手まといはごめんだったからな」

メイド「はい・・・ただ、その禍学刀を先ほど持ってきていれば、恐らく騎士団長さんもあんな事にはならずに済みましたのに・・・申し訳ありません」

男「それは・・・まぁ今更言ってもしょうがねえよ。まさかあんな事が起こるなんて、誰も思わねえさ・・・しかし、すげえな機関の禍学は・・・ていうか、なんでこんなの作ったんだ?あんたの武器か?」

333: 2015/12/05(土) 09:04:21.99 ID:BDw3p8bw0
メイド「いえ、ご主人様が私達のお屋敷に遊びにこられた際には、それでチャンバラごっこでもして遊ぼうかと・・・」

男「危険だわ!氏ぬわ!あんた一体なに考えてんだ!」

メイド「いえ、やはり男の人の遊びと言ったらチャンバラごっこかと思いまして・・・ならばなるべく本格的な物を作ろうかと」

男「アホか!!大体この年じゃあもうチャンバラごっこなんかやんねえわ!!」

メイド「そうなのですか?申し訳ありません。私もお嬢様も、周りに殆ど女性しかいない、温室育ちの純粋培養で育ったものですから、男の人の遊び事情に詳しくなくて・・・」

男「詳しくないにも程があるわ!!そこまで俗世間に触れずによく今まで生きてこれたらあんたら!」

メイド「・・・フフフ、やはり、ご主人様と喋っていると、面白いです」

男「・・・カカッ。そうだな・・・俺も氏地に出向く前に、お前のその可憐な笑顔が見れてよかったさ。ありがとうよ、メイド。これで足手まといにならずに済む」

メイド「いえ、お礼を言われるほどの事では・・・あ、ご主人様。申し訳ありません。もう一つ渡し忘れていたものがありました」

男「うん?なん――」

チュッ(唇同士)

男「――だ・・・?って、ええ?今・・・メイド・・・メイドさん?・・・う、うぅん・・・?」

メイド「・・・忘れ物は、これですよ」

男「・・・いや、あんた・・・その、今のは・・・えーっと、ど、どういう意味・・・なの、かな・・・?」

メイド「ふふ、どういう意味でしょうか? 答えは・・・帰ってきてからお教えしますよ、ご主人様(ニコッ」

男「お、おぉ・・・」

メイド「・・・ですから」

ぎゅう

メイド「必ず、生きて帰ってきてくださいね」

男「・・・」

メイド「ご主人様はいつもいつも、己の身を顧みず、無茶ばっかりするんですから・・・私、いつだってご主人様の事が心配です・・・でも、私が止めても、ご主人様は行くのでしょうけど・・・」

男「ふん、よく分かっているじゃないか・・・そうだ。一メイド如きがこの俺、暗黒の邪王である御刀虎の心配など百年早いわ・・・だから・・・お前はお前のご主人様が帰ってくるのを信じ、ただ待っていれば良いのだ。余計な心配するな」

メイド「はい・・・」

334: 2015/12/05(土) 09:05:19.01 ID:BDw3p8bw0
男(その後、3分ほど抱きついていたメイドは、急にハッとした表情になると、顔を赤くして何やら慌てた口調で、お屋敷に忘れ物があるとか早口で行って、瞬間移動装置で消えてしまった・・・)

機関女「あ、男さん・・・一人ですの?」

男「おう、なんか知らんが一人になってしまった・・・『兵器』の整備は終わったのか?メイドからそうしていると聞いたが」

機関女「はい、今終わりました・・・先ほどのキメラ戦で、全エネルギーを注ぎ込んだのは早計だったのかも知れませんね・・・某かの余力を残していれば、騎士団長さんが刺されたのを防げたかと思うと・・・」

男「それは・・・いいよ。今更だ。未来の事なんて、誰にも分かりゃしないんだからよ。逆にお嬢があそこで余力残すような事してたら、キメラを倒しきれなくて氏んで

たかも知れんのだし。お嬢が気に病む事じゃねえさ」

機関女「はい・・・未来は誰にも分からない、ですか・・・そうですわね」

男「?」

機関女「ところで男さん。戦いの前に暗い話では士気が下がってしまいますから・・・明るい話をしてもいいですの?」

男「うん?なんだお嬢」

機関女「じ、実は・・・私、一週間後が誕生日ですの」

男「・・・ほう、そうなのか。それは知らなかった。すまんな・・・うむ、ならば誕生日プレゼントを用意せねばな、俺のオススメの超邪気眼で超中二病な小説100冊とかでいいだろうか?」

機関女「い、いえ結構ですの・・・ただ、メイドがその日、私の誕生日パーティーを開いてくれるらしいですの。今まではメイドがケーキやプレゼントを用意するだけのささやかな物でしたが・・・あ、いえ。それも当然嬉しかったのですが・・・今年は華やかにやろうと言い出しまして」

男「・・・そうか、いいじゃないか。お前ら二人が仲いいと、なんか俺も嬉しいぞ」

機関女「ええ、貴方には感謝していますわ・・・ただ、パーティーと言っても私とメイドの二人だけじゃ寂しいものがあるでしょう?」

男「まぁ、だな。というか、それはパーティーと言えるのだろうか・・・」

機関女「で、ですわよね?ですわよね?ですから、その・・・男さんも来て貰えませんか?そ、そっちの方がメイドも喜ぶと思いますし・・・私も、男さんには改めて、メイドとの仲を取り持ってくれたお礼を言いたいですし・・・」

男「うむ・・・それならば、『騎士団』のみんなも『組織』のみんなも呼んで、盛大にやろうではないか」

機関女「・・・え」

335: 2015/12/05(土) 09:06:10.20 ID:BDw3p8bw0
男「なんだ不満なのか?人数が多い方が盛り上がるだろう?」

機関女「い、いえ。そうではないですの・・・ただ、私は男さんだけに・・・!」

男「寂しい事言うな。さっき組織女も言ってただろう?もうダチだって。それともお嬢はそう思っていないのか?」

機関女「そう・・・いう訳では・・・」

男「だったらいいじゃないか。『戦争』終結祝いも兼ねてパーッとやろう。みんなでビンゴとかしたり、二つ名を考えあったりな・・・ククク、楽しいぞ?」

機関女「・・・」

機関女(・・・まぁ、別にそれでもいいですわね。私も、友達を男さんとメイドの二人だけに限定するつもりはありませんし・・・)

機関女「・・・・・・ふふ、わかりました。ただ、『機関』家当主である私の誕生日パーティーなのですから、楽しくしてくれないと怒りますわよ?それと、2つめの遊びはやりませんけど」

男「なんでだよ!!楽しいのに!!・・・ふっ、まぁ分かったよ。お嬢との誕生日パーティーがあるのなら、氏ぬ訳にはいかんなぁ」

機関女「ええ、氏んだら許しませんわよ。約束は必ず守っていただきますわ」

男「あいよ・・・全く、氏ぬ事も許されんとは・・・ふっ、これも我が御刀虎の宿命と言う奴か」

機関女「ええ、未来は誰にも分かりませんが、それだけは貴方の力を使って確定事項として下さいな、暗黒の邪王さん?」

男「ふっ、分かったよ・・・未来の出来事に干渉するのは偉く骨が折れるのだぞ?全く、ワガママなお嬢様だ・・・ククク・・・」

機関女「ええ・・・で、では貴方のその労力に対して、ご、ご、ご褒美を差し上げますわ・・・!」

男「ほう、ご褒美だと?ふふっ、金塊100トンを積まれても、口角がピクリとも動かん事で有名なこの俺、御刀虎に対して褒美な――」

チュッ(男のほっぺに)

男「ど・・・?え・・・?、??」

機関女「い、一応言っておきますが、これは親愛の印ですわ!!決して恋愛感情とか、そういうのじゃありませんので、勘違いしないで下さいまし!!」

男「は、はぁ・・・」

機関女「お、お、おおっとぉ私、『兵器』の整備でやり残しを急に思い出しましたわ!ではこれにて失礼致しますわっ!!ごめんあそばせ!!」

男「・・・」

男「主従揃って、同じような言い訳を・・・いや、主従だからか・・・」

336: 2015/12/05(土) 09:06:58.53 ID:BDw3p8bw0
男(女はまだ帰ってこないのか・・・お、アレは・・・)

組織女「よぉ、どうしたお前、神妙な顔してよぉ?」

男「いや、別に・・・ところでペット霊園の方に行ったと聞いたが、もう用事は済んだのか?」

組織女「あぁ、あたしのバカ犬の墓が破壊されてねえか、確かめに行ったんだが・・・まぁものの見事に破壊されててな・・・というかペット霊園自体がもう完全にグチャグチャになってたわ」

男「・・・そうか」

組織女「まぁしょうがねえから、管理人に連絡しといた。あと、たまたまあたしのバカ犬の骨だけはかろうじて見つかったから、このケルベロスに穴掘らせて埋めて即席の墓を作ったんだよ」

ケルベロス「ワン!!」

男「・・・お疲れさん」

組織女「おう、とは言ってもまぁこのケルベロスが、バカ犬の生まれ変わりっていうか、転生っぽいんだけどな」

男「・・・マジか!?」

組織女「おう、マジだぜ。とは言ってもこいつバカだから、自分が転生した生まれ変わったとか、そういうの理解してねえみたいだが・・・」

ケルベロス「ワン!!」

男「おお、そうか・・・いや、そうかぁ・・・バカ犬とお前との間にある絆が本物だったって事だな・・・よかったな・・・」

組織女「へ、絆とか、なに青臭え事抜かしてんだよ。たまたまだよ偶然だ。無理してコメントしなくていいっての」

男「ふっ・・・だな・・・」

組織女「・・・」

男「・・・」

組織女「・・・」

男「・・・」

組織女「はっ、なんだよ。なんか言ってほしそうな顔してよ」

337: 2015/12/05(土) 09:07:53.35 ID:BDw3p8bw0
男「いや・・・ただ、まぁなんだ。多分これが本当の最終決戦だと思うと、なにか言ってくれるものかと思って、つい」

組織女「へ、ばーか。今更、あたしとてめえとの間に、言葉なんかいらねえだろ?」

男「・・・カカッ、そうだな。俺とお前との間に言葉は不要であった」

組織女「だろ?それに、心配すんな。てめえの悪運の強さは、このあたしが保証してやる。てめえは何が起きても、そうやすやすと氏ぬタマじゃねーよ。だから、いいか?」

スッ(組織女が拳を突き出す)

組織女「ちゃっちゃとあの変な奴、ブチのめしてこい。見る限り、『機関』の連中から武器も貸して貰ったみたいだしよ。てめえの悪運と、妙な所で回る頭がありゃ、なんとでもなる。大丈夫だ」

男「・・・ふっ・・・そうだな。変に弱気になっていた。ありがとう組織女」

スッ(男も拳を突き出す)
ゴッ(拳と拳がぶつかる音)

組織女「は、そうそう。弱気なお前なんて見たくねーし、なにより似合わねえよ。てめえはいつも何か企んでるみたいな感じでニヤニヤしてりゃいいんだ。それよりよぉ・・・」

男「?なんだ組織女よ」

組織女「いや、よ・・・あたしまだ、さっきのキモい獣を倒して貰ったお礼をお前にしてなかったなぁ・・・ってよ・・・」

男「いいよ、そんなの。いらんいらん。今更そんな他人行儀だろうが。別にお前にお礼をしてもらいたくてやって貰った訳じゃないんだからよ。気にすんな」

組織女「あ、あたしの気が済まねえんだよ!!」

男「ど、どうした急に大声出して・・・」

組織女「あっ、わりぃ・・・つい・・・でもよ。感謝してんのは本当なんだぜ?」

男「おう・・・まぁそれはわかった。気持ちだけ受け取っておく事にするよ」

組織女「ざけんな。気持ちだけじゃあたしの気が済まねえんだよ」

男「?んじゃ、どうするんだ?」

組織女「いや・・・なんだ・・・その・・・お前って・・・ど、童Oか?」

男「・・・ど、ど、童Oな訳がなかろうこの俺が!!童Oな訳ないだろう淫魔であるサキュバスすらもかしずかせるこの御刀虎が!!!ど、ど、童Oちゃうわ!!というか急に何を言い出すんだお前は!!」

組織女「うっせえ!!察しろ!!察しろよこのバカ!!ちなみにあたしは処Oだぞ!!」

男「お前本当に急に何を言い出すんだよ!?どうした!?どっかに頭打ったのか!?」

組織女「なんでそうなるんだよ!!失礼だなお前!!!色々と分かるだろうが今の流れで!!」

男「さっぱり分かんねえよこのバカ!!ちゃんと一から説明してくれ!!」

338: 2015/12/05(土) 09:08:42.19 ID:BDw3p8bw0
組織女「い、一からって・・・なに抜かすんだこのスカタン!!ていうか分かんねえてめえが意味わかんねえよ!!!てめえ本当についてんのか!?タマ無しなんじゃねえだろうな!?」

男「何だとこの野郎!!ちゃんと付いてるわ!!いいからわかりやすく説明しろ!!」

組織女「ああ!?てめえ本当に鈍いなこのバカ!!よーしわかりやすく説明してやらぁ!!」

男「おう、説明しろ!!!」

組織女「・・・っ!///」

男「どうした!!早く説明しろ!!」

組織女「・・・わ、わかった・・・わかったから・・・いいか、すげえバカのお前にも一目で分かるような行為をしてやる・・・!!」

男「おぉ!!御託はいいから早くしろ!!」

組織女「っ・・・よし。い、行くぞ・・・・・・一応・・・言っておくけどな、処Oどころか・・・まだ、キスもした事ないんだからな、あたしは・・・///」

男「・・・っ? お、おぉ・・・?」

組織女「これでも、あたしは・・・そこそこモテんだぞ・・・電車に乗ってたらナンパとかしょっちゅうされるし・・・知らねえ奴に告白された回数だって結構あるし・・・」

男「あ、あぁ・・・?何の話をしてんだお前は・・・?」

組織女「だ、だからぁ・・・ありがたく拝めっちゅー話をしてんだ・・・目に焼き付けろよ・・・」

しゅるっ・・・しゅるしゅるしゅる・・・(ブラウスとスカートに手をかけ、脱いでいく組織女)

男「うわああああああああああああああ!?なに脱いでんだお前はぁ!?」

組織女「・・・なんだよぅ・・・///」

男「なんだよぅ、じゃねえんだよ!は、早く服を着ろ!!」

組織女「嫌だ・・・1番わかりやすく、あたしがお前にしたいお礼を説明してやってる・・・最中・・・だろうが・・・///」

男「とりあえず外で脱ぐな!いいかお前!!!これが女や他の女性陣に見つかったらなんて説明したらいいか・・・!」

女「ふぅー・・・やっと詠唱の確認と、集中力を極限にまで高める事が出来たわ・・・待たせたわね男。さぁ、行くわ・・・っ!?!?!?」

男「・・・」

組織女「・・・」

女「・・・」

339: 2015/12/05(土) 09:10:06.07 ID:BDw3p8bw0
10分後。
男と女が先生(悪)の元に乗り込むという事で、全員が集まる。

メイド「ご主人様、女さん。お忘れ物はないですか?それとちょうど、瞬間移動装置はあのタワーの近くに取り付けてありましたので、それを利用して下さいませ」

男「ああ、大丈夫だ。おう、使わせて貰うぜ」

機関女「女さん、もう集中も、詠唱の確認も大丈夫なんですの?それと男さん、約束を破ったら許しませんわよ?」

女「ええ、バッチリよ。心配いらないわ」

男「ああ、心配するな。俺は約束は守る男だ」

組織女「お前ら、気合入れて行ってこい。氏に水は取ってやるから安心しな・・・それと・・・女よ。お前に一つ訂正があるぜ。さっきの剣捌きを見て少し思ったが・・・てめえはもう木っ端なんかじゃねえよ。力量だけで言ったら、騎士団長に大分近づいてきてるぜ、自信持っていけよ」

女「え?そ、そうかしら・・・」

男「ふっ、組織女は口下手だし、口調も荒いが・・・嘘は付かん女だ。そのまんま受け取っていいと思うぞ、女よ」

女「・・・わかったわ。うん、あんたに言われたら、ちょっとは自信付くかも」

組織部下女「が、がんばってくださいね!!何も出来ませんけど、心から応援していますから!!」

女「ふふっ。ありがとう。それじゃあ行くわよ、男!!」

男「ああ!!」

シュビ!(瞬間移動装置を使って、二人が消える音)


組織部下女「あのー・・・」

組織女「ん?なんだ」

組織部下女「いえ、単純な疑問なんですが・・・なんで戦う前なのに、男さんの顔に、紅葉のような跡があったんですか・・・まるで誰かに思いっきりビンタされたみたいでしたけど・・・?」

組織女「・・・いいか、組織部下女。世の中には知らなくていいってもんがあるんだよ・・・!!!」

組織部下女「は、はぁ・・・」

メイド「それにしてもお嬢様・・・勝てるのでしょうか。あの二人は」

機関女「さぁ、それはわかりませんわ・・・今はただ信じましょう、勝利を」

メイド「・・・はい」

組織女「だな」

組織部下女「ですね・・・」


第二部『組織女と組織部下女』編、完ッ!
そして・・・物語は最終章へと突入する・・・ッ!!

348: 2015/12/12(土) 13:28:21.68 ID:q8oQxg8s0
シュビ!(タワーの近くに出現する男と女)

女「本当に、一瞬で移動出来るのね・・・すごいわ、この装置」

男「うむ・・・」

女「タワーまであと数百メートルって所ね・・・行きましょう男」

男「おう・・・ククク・・・タワーとは・・・最終決戦の舞台に相応しいステージだ」

女「まぁそうね。夜の街によく映えているもの。嫌味なくらいに・・・ところで男」

男「ん?」

女「あんたが持ってるそれ、なに?剣じゃなくて、刀みたいだけど・・・」

男「・・・!?あ、ああ・・・何。最終決戦という事でな。俺もいよいよ本気を出さなくてはならん・・・故に我が刀、菊一文字小烏丸獅子王を顕現させたという訳だ。本当は俺も剣が良かったのだが、俺の中に流れるサムライの血がどうしても刀でなくては受け付けなくてな・・・」

男(メイドめ・・・どうせ作るなら剣にしといてくれれば良かったものを・・・まぁ多分、俺の二つ名・御刀虎の「刀」の部分に合わせて、わざわざ刀で作ってくれたんだろうから感謝こそすれ、文句は言えんが)

女「ふーん、そっか。あんたって、本当に特別っていうか・・・未だに底が知れないわよね。今まで刀を使う騎士団員なんていなかったし」

男「ククク・・・・そういう常識や普通の枠に囚われないのが俺・御刀虎なのだ・・・」

女「ふふっ、そうだったわね・・・それにしても、まさか先生があんな事になるなんて思いもしなかったわね」

男「・・・ああ、確かにな・・・しかし先生も不幸というか、不運だな・・・彼氏に振られ、さらに『能力』に自身まで乗っ取られてしまうとはな・・・」

女「ええ・・・でも私も、一歩間違えたら・・・先生みたいになっていたのかもしれないわ」

男「・・・お姉さんの事、か?」

女「うん・・・しかもお姉ちゃんは私をかばって氏んじゃったから、尚更ね・・・流石に私も、その時はもうどうしようもなくへこんだわ。お姉ちゃんの事が本当に大好きだったから・・・正直、お姉ちゃんの後を追おうかなって、真剣に考えたもの」

男「・・・」

女「でも、そんな時、団長は懸命に私を励ましてくれたわ・・・『何の為に君のお姉さんが君を守ったと思っている!!君の事が大好きだったから、生きていてほしいから、笑っていて欲しいからに決まっているだろう!!君がしようとしている事は何よりもお姉さんへの冒涜だ!!』・・ってね」

男「ふっ・・・その頃から凛々しく、かっこいい女性だったのだな、団長殿は」

349: 2015/12/12(土) 13:29:40.92 ID:q8oQxg8s0
女「ええ、本当にね・・・その言葉を聞いて、私はなんとか元気を取り戻せた・・・その後も、事ある毎に団長は私を気にかけてくれてね・・・食事や遊びに幾度と無く誘ってくれて、戦闘面でも一体何回助けられたか・・・団長は恩人よ。あらゆる意味でね」

男「・・・そうか」

女「うん。だからなんとしてでも先生を倒す。そして団長を助ける。今までの恩返しをしなきゃね・・・なんとしても。敵が何であろうと、ビビってなんかいられないわ」

男「ふむ。いい覚悟だ・・・ふっ、それなら俺も安心してお前に背中を預けられるというものだ」

男(・・・先生も、団長殿のような人が居ればあるいは・・・心の均衡、か・・・)

女「ううん・・・こんな覚悟が出来るのは、あんたのお陰よ」

男「ん?」

女「・・・あんたがいるから、私達は生き残ってこれた。あんたがいるから、私はあいつに立ち向かえる・・・一人であいつと戦えって言われたら、正直無理ね・・・私一人じゃ勝てる相手ではないと思うわ」

男「・・・女よ、やけに弱気だな?」

女「弱気とかじゃなくて・・・本心よ。さっきは団長が刺された怒りで、あいつに強気な発言も出来たけど・・・あんたの言ってた通り、奴の実力は相当な物だと想うわ。あの時感じた、奴の『能力』の気配の濃さは団長と同じか・・・もしくはそれ以上だったもの」

男「・・・」

女「でも、それでもあたしが立ち向かえるのは、あんたが隣にいるからよ。あんたはいつも欲しい時に、欲しい助けを私にくれた・・・本当に、感謝してるわ」

男「ど、どうした女?やけに素直というか・・・女らしくないぞ?」

女「な、なによ!私だって、素直になる時くらいっていうか、普通に感謝する事くらいあるわよ!ていうか、私が珍しく素直なんだから、私の言葉をそのまま受け取りなさいよ!」

男「その自覚はあったのだな・・・」

女「う、うっさいわね!もう!!最後の戦いになるんだろうから、私だって最後くらいは素直になるわよ!」

男「うむ。素直になるのはいいことだ。なんだったらこの暗黒の邪王の胸の中に飛び込んで甘えてもいいぞ?お前のその本音を思う存分ぶちまけるがいい。俺の器はこの広大な宇宙よりも広いからな・・・お前の全てを受け止めてやろう・・・ククク」

女「だ、誰がそんなこと・・・っ!」

350: 2015/12/12(土) 13:30:22.32 ID:q8oQxg8s0
女(でも・・・自分で言ってて気付いたけど、本当にこれが恐らく最後なのよね・・・)

女(だったら・・・最後くらいは・・・)

女「・・・そ、そうね・・・これで最後になるかも知れないんだし・・・そ、そうさせて貰うわ」

男「へ?」

ぽすっ(女が男に抱きつく音)

男「・・・お、おう?」

女「・・・な、なによ・・・抱きついてこいって言ったのは・・・あんたの方でしょ?」

男「・・・そうではあるがな・・・本当に来るとは思わなかったので、つい・・・」

女「私だって・・・甘えたい時くらいあるわよ・・・」

男「そ、そうか・・・」

女「・・・もっと、強く抱きしめなさい」

男「・・・こうか・・・?」

女「・・・もっと」

男「・・・」ぎゅう

女「・・・そうね、それくらいでいいわ」

男「う、うむ・・・」

女「・・・私、不安よ・・・すごく、怖いわ・・・」

男「・・・そうか」

女「負けたらどうしよう、勝てなかったらどうしようって考えるだけで・・・足が震えそうになるわ・・・いつも的確な指示をくれた団長もいないもの・・・」

351: 2015/12/12(土) 13:31:44.27 ID:q8oQxg8s0
男「・・・」

女「だけど・・・大丈夫よね、男・・・?私達、きっと勝てるわよね・・・?あんたが居れば、きっと・・・きっと・・・お願いだから、大丈夫って言って・・・」

男(・・・・・・)

男「・・・なぁ、女よ」

女「なに・・・?」

男「さっきから、抱きついてくれて嬉しいはずなのだが・・・その、お前の胸の辺りの感触が非常に寂しいのだが・・・」

女「・・・っ!!う、う、うるさいわね!!こんな時になに言ってんのよこのバカッ!!」

ばしーん!(男を叩く女)

男「ゴフッ!?・・・こ、この短時間で2度目のビンタは・・・きついぜ・・・」

女「あんたが悪いんでしょ!?人のコンプレックス刺激して、こんな時なのに、まったくもうっ!!」

男「く、ククク・・・ああ、確かに俺が悪かった・・・だが、いつもの強気なお前が戻って来てくれて、俺は嬉しいぞ・・・」

女「・・・!」

男「戦う前から弱気になっていたら、勝てるものも勝てないからな・・・・・お前に気力を取り戻して欲しくて、ついそういう事を言ってしまった、許してくれ」

女「男・・・」

男「ククク・・・それに、俺とお前は約束していただろう?この後に遊ぶと、その時ならば、存分に甘えていいぞ?先ほどまでのお前は、中々に庇護欲が刺激されて新鮮だったからな・・・」

女「・・・あ、あんた・・・覚えててくれたの?正直、この連戦で私自身忘れかけてたし、お流れになると思ったのに・・・」

男「ふっ、覚えているのは当然だ。俺は約束は守る男だからな・・・だから、先生をぶっ倒して、団長を取り戻す。そしたら遊ぶぞ。連戦のストレスと鬱憤を晴らす為に、朝までどんちゃん騒ぎしようではないか・・・カカッ」

女「・・・うん!」

男「ククク・・・やっと笑ったな。女、お前の笑顔は、やはりいつ見ても素晴らしい。元気が出るよ、本当にな」

女「~~~っ!・・・う、う、うるさいわね、こ、この・・・バカ・・・///」

男「・・・ところで女よ。『冥府落し』とやらについて、説明してもらっていいだろうか?俺も断片は知っているが、この期に及んで認識の齟齬や理解不足で失敗など、笑い話にすらならんからな。悪いが頼む」

女「そう言えば、一度も説明した事なかったわね・・・オッケー。この際だから、全部説明してあげるわ」

・・・・

男「なるほど・・・そういう原理か・・・ククク」

女「ええ、だから、作戦としては・・・・・・・・・・って感じになるわ・・・毎度毎度、あんたにそういう役目を押し付けて申し訳ないけど・・・勿論、そうなる前に

先生を倒せれば1番いいんだけどね」

男「だな・・・まぁ、もし俺がそういう役目を担う事になっても、お前は気にしなくていい。そういうのは、俺の役目だ」

女「・・・うん。悪いけど、お願い・・・それとさ、男・・・結局あんたって・・・」

男「?何か言ったか、女よ?」

女「・・・ううん、なんでもないわ!さぁ行きましょ!最終決戦よ!」

男「・・・おう!」

男(約束・・・か・・・)

352: 2015/12/12(土) 13:32:44.66 ID:q8oQxg8s0
 タワーの屋上。

バーン!(タワーの屋上の扉が開く音)

男「団長殿!!助けに来たぞ!!どこだ!!」

騎士団長「・・・ぅ・・・ぁ・・・」

女「団長・・・!タワーのてっぺんに縛られて・・・今、助けます・・・って、先生は・・・!?」

男(わざわざ場所を指定した・・・しかも、相手は無防備で油断した団長殿を後ろから刺すような奴・・・そんな奴が真正面から待つ・・・訳がねえわな!)

男「女、危ねえ!!」

ギィン!!ギィン!!(剣と刀がぶつかり合う音)

先生(悪)「ほう・・・今のを察するか・・・ククッ、流石だな男・・・」

男「そりゃあどうも・・・女、早く、団長殿を・・・!!(マジで体が勝手に反応した・・・ありがてえぜ、メイド・・・これで少なくとも、戦いの体は保つ事が出来そうだ・・・)」

女「うん、任せて・・・キャッ!・・・ちょ、ちょっと何よこれ!一定の距離以上、団長に近づけない・・・!?なんで!?」

男「・・・結界か?」

先生(悪)「ご名答・・・騎士団長に復活されてもらっては、流石のあたしも少々厄介だからな・・・あたしを倒すまで、騎士団長さんには近づけないぜ?」

男(適当に言ったら当たってしまったが・・・結界とは・・・こいつ、なんでもアリだな・・・?)

女「・・・っ!なら、さっさとあんたを倒すわ!!そうすれば問題ないもの!!やぁぁぁ!!」

シュッ、サッ、ギィン、シュッ!(女の剣を交わし、防ぎ、そして逆に攻撃する先生(悪))

女「この・・・!?うっ・・・!?」

ツー・・・(剣がかすり、頬から出血する女)

女「舐めてたつもりはないけど・・・やるわね、あんた・・・」

先生(悪)「教え子に褒められても嬉しくはねぇわな・・・この際だ。世の中はてめえの思い通りにならねえって事だらけの現実ってもんを教育してやるよ、糞ガキ」

女「結構よっ!!」

男「女に同意っ!」

ズザッ、シュッ(踏み込み、袈裟斬りに斬りかかる女、と刀に操られ、女と同様の動きをする男)
スゥ・・・(先生の手前で、女の剣が勝手に止まる)

353: 2015/12/12(土) 13:33:17.50 ID:q8oQxg8s0
女「なっ、また結界!?こんな小さな領域の結界もあるの!?」

男「なんというっ」

先生(悪)「ああ、その通・・・りっ!」

ザシュッ(女の腹に思いっきり蹴りをいれる先生(悪))

男「女っ!」

女「ぐぅぅ・・・こ、このぉ・・・!」

先生(悪)「へっ、わりぃなぁ。あたしは汚え大人だからな、つい言い忘れてたわ、スマンスマン」

ギィンギィン(男と先生(悪)が剣と刀を打ち合う音)

男「くっ・・・おぉぉぉ!!」

男(頼むっ、禍学刀よ。俺の体力なんてどうでもいいから、もっと早く、もっと強く、俺の体を動かしてくれ・・・!)

ギギギッギギギィン!!

先生(悪)「!・・・へぇっ。やるねぇ。良い剣技だ・・・流石、今まで騎士団の癖して、一回も剣を振るわなかったくらい隠し通してただけの事はある」

女「呑気に論評しているとは、随分余裕ねっ!?」

ギィィィイギギンギンギギギギッィンっ!!(男と女の激しい剣捌きの音)

先生(悪)「うおぉ・・・っとぉ・・・これは、流石のあたしでも、ちょっと厳しい・・・か?・・・っく・・・」

男「結界の展開が間に合わなくなってきているな、今なら・・・!」

女「そこ、はぁぁぁぁぁ!!」

――ザシュッ(先生の右腕が宙に舞う音)

354: 2015/12/12(土) 13:33:55.68 ID:q8oQxg8s0
先生(悪)「ガッ・・・あが・・・く、うぅぅ・・・」

男「はぁはぁ・・・や、やったな。女・・・!!」

女「・・・ふ、ふふっ、二体一とは言え、意外と決着はあっさりついたわね。あんたって実は、案外弱いんじゃない・・・!不意打ちや奇襲、それに結界とか、剣技に磨きを掛けないで、中途半端な事ばっかりした結果がこれよ!あんたに現実を教えてあげたのはどうやら私達のほうみたいねっ!」

男「そうだ、先生・・・さっさと降参してくれ。そうすれば命までは取らない。どうやら俺たちの戦いっぷりを密かに観察していたようだし、俺たちの言葉に嘘はないと分かるだろう?」

先生(悪)「はっ・・・がっ・・・ククッ、そうだな。確かにてめえらは甘ちゃんだからよ。そうしないのは知っている・・・」

女「だったら・・・!」

先生(悪)「・・・ククッ。だから言ったろ。世の中てめえの思い通りにならねえ事だらけってよ」

――ズボボボっ(先生の右腕が再生する音)

女「なっ、腕が再生して・・・な、何よそれ。意味わかんないわ!再生能力なんて聞いた事ないっ!」

男「・・・ひょっとして、聖骸布の力、か・・・?」

先生(悪)「はっ・・・てめえ本当に察しがいいな。その通りだよ」

ボアァァ・・・(先生(悪)の服の中にある聖骸布がぼんやりと光る音)

先生(悪)「これはマジで計算外だったが、どうやら聖骸布は、今現在の所有者であるあたしを暫定的にではあるが、『戦争』の勝利者として認めているらしくてな。力が流れ込んでくるのが、微かにわかる。どんどんあたしはパワーアップしていくっぽいぜ?・・・オラ、ぼさっとしてんじゃねえぞ!!」

シャッ!(先生(悪)が剣で男に襲いかかる)
しゅっ!(男が禍学刀につられ、それをなんとか避ける)
ガギギィン!!(次に女を襲った先生(悪)の剣を、女が受け止める音)

男「くっ・・・!」

女「そんな・・・今まで一生懸命頑張ってきたのは、私達なのに・・・!!」

355: 2015/12/12(土) 13:37:06.42 ID:q8oQxg8s0
先生(悪)「ククッ。本当、世の中理不尽だよなぁ。今まで散々血も涙も流して仲間も失ったお前たちが願いも叶えて貰えず、横取りしたあたしが恩恵を受け取るなんてよぉ・・・でも世の中なんてそんなもんだぜ?また一つ勉強になった・・・なぁ!!」

男「ぐほっ・・・」

女「う、ぐぅ・・・!」

ドダーン!!(どんどん早く、力強くなる攻撃に対処しきれず、剣を押さえつける間に飛んで来る拳撃や蹴撃に吹き飛ばされる二人)

先生(悪)「オラオラァ!!もう終わりかぁ!?ああ!?だっせえなぁおい!!ええ?さっきあたしの事中途半端だなんだ、って言ってくれたよなぁ!?剣技に磨きをかけないから負けただのなんだの、その磨かれた剣技の結果がこれか!!ああん!?」

先生(悪)「これが現実だボケ!!どんな不条理や筋違いな事さえも、力さえありゃあそれで押しきれんだよ!!そして力のない雑魚は、今のお前らみたいに這いつくばるしかないんだよ!!わかったか糞ガキども!!」

男(・・・女よ・・・生きてるか・・・?)ボソボソ

女(・・・男。ええ、大丈夫よ・・・なんとかね)ボソボソ

男(結局、『冥府落し』を使うしかないようだな・・・)ボソボソ

女(・・・そうね・・・中途半端に傷つけても、再生されちゃ意味ないし・・・恐らく、結界の展開スピードや結界自体の防御力も上がるでしょう・・・なら、『冥府落し』で消し飛ばすしかないわ)ボソボソ

男(ああ、だな・・・それと、俺は俺で先生に揺さぶりを掛けてみる・・・では、手はず通りに頼んだぞ)ボソボソ

女(揺さぶり?・・・ともかく分かったわ・・・あんたも頼んだわよ)ボソボソ

男(ふっ、俺を誰だと思っているのだ?余計な心配はするな・・・お前は『冥府落し』に集中しろ)ボソボソ

女(ふふっ、そうね・・・了解)ボソボソ

男「・・・うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

先生(悪)「おっ?」

ギィンギィンギィンギィンギィンギィン!!(すごい勢いで先生(悪)に斬りかかる男)

先生(悪)「へっ、んだよ・・・まだまだ元気一杯じゃねえか!」

男「ああ、若さだけが取り柄なのでな・・・さっきから言っている世間の厳しさや辛さやらを知らない若造に、ぜひそう言った事のご教授をお願いしたいね」

先生(悪)「・・・へへっ、いいぜ。教えるのは得意だ。なんせ教師だからよぉ・・・ついでだ、力のねえ雑魚が、お上に逆らったらどうなるかも教えてやるよ!!」

女(よし、先生が男に気を取られてる今の内に・・・詠唱する!!)

ズッッザアァァァ・・・!(大きく跳躍し、距離を取る女)

女「滲み出す混濁の紋章・・・不遜なる狂気の器・・・湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる・・・爬行する鉄の王女・・・絶えず自壊する泥の人形・・・結合せよ反発せよ・・・地に満ち己の無力を知れ・・・」ブツブツ

356: 2015/12/12(土) 13:37:47.67 ID:q8oQxg8s0
男「・・・ところで、先ほどから聞く限り、貴様は先生の乗っ取りに完全に成功した訳ではないようだな?俺たちに対する言動の随所に、先生の影響が色濃く残っている・・・ならば先生。俺は微かに残っているであろうあなたに喋りかけよう」

先生(悪)「ああ!?」

男「・・・先生!!よく聞け!!我こそは御刀虎!!アカシックレコードの記録者!!選択の果てに生まれた新たな世界の観測者!!・・・ククク、先生。俺は確か、こんな感じでいきなり貴方にそうぶちかましたな。いや、もうちょっと穏やかな言い方だったかも知れんが、それはさておいて・・・」

先生(悪)「・・・はっ、てめえマジで痛々しいぜ。気持ちワリィ・・・」」

ギィンギィンギィンギィン!

男「(先生を乗っ取った奴が何か言っているが・・・無視をする)なぁ、先生・・・俺は彼女が出来た事がないし、好きな人も出来た事ないからよくわからんのだが・・・いいか先生、よく聞けよ・・・!男なんて星の数ほどいる!どうせ『能力』に乗っ取られた原因なんてそれくらいだろう!さっさと彼氏の事は忘れて次の恋愛に行け!!以上だ!」

先生(悪)「・・・」

ギィン!ジャ!(剣と刀の打ち合いの末、男が軽く斬りつけられる)

男「グフッ・・・な、何故だ先生・・・俺の心からの言葉に、何故反応してくれん・・・」

先生(悪)「おめえよ、あたしが言うのもなんだが、励まし方がありきたりすぎるだろ・・・」

男「・・・く、ククク・・・そうかも知れん・・・まぁそもそも、先生とは正直言って縁も薄い。大したエピソードもないしな・・・」

先生(悪)「はっ、じゃあもうあたしの中に残っている先生とやらに喋りかける作戦はもうおしまいか?」

男「いいや・・・ここからだ・・・なぁ、先生・・・大人は毎日、大変だよな」

ジャ!・・・スゥ・・・(男の禍学刀が斬りかかるも、結界に邪魔されて勝手に動きが止まる)
ズサッ、シャ!(男の動きが止まったのを見て、凄まじいスピードで首を斬ろうとするも、禍学刀のおかげでなんとか避ける男)

357: 2015/12/12(土) 13:38:54.95 ID:q8oQxg8s0
男「毎日毎日、決まった時間に起きて、やる気がなかろうが体調が悪かろうが決まった時間に出勤して、大して好きでもない奴らにでも人間関係を円滑に保つ為に気を使って・・・常に全力で仕事して、でも結果出せなきゃバカにされて笑われて・・・それでも毎日、仕事は降り掛かって・・・」

男「そりゃあ夢も希望もありゃあしないよな・・・俺みたいな、四六時中妄想野郎なんか軽蔑の対象だろう。現実の見えていないどうしようもないダメ人間だろう・・・でも、それでもあんたは、俺に優しくしてくれたな」

ギィンギィン・・・!!

男「それが仕事上の事とは言え、それでも俺はちょっと嬉しかったですぜ?先生。何せ、小学校の頃から・・・担任の先生や回りの大人には、そんな妄想やめろとか、現実見ろとか、さっきのように気持ち悪いと言われ続けてきたからな・・・」

先生(悪)「・・・ふんっ。んでアレか・・・優しくしてくれて好きになっちゃいまちた~ってか?」

男「はっ。そんなんじゃねえよ・・・先生に対してリスペクト、尊敬の念を覚えたって奴さ・・・さっきからお前が言っている理不尽だの、どうしようもない現実だのを一通り味わって、それでも俺みたいな邪気眼持ちにも優しく出来る人間・・・」

男「そういう大人に初めて出会えたもんでな・・・カッコいいじゃねえかよ、先生。俺はあんたの事を心から尊敬しますぜ」

先生(悪)「・・・だから、どうした・・・!!」

ギギギンギンギギギギッィン!(激しくぶつかり合う、二人の剣と刀)

男「なぁ、先生・・・それがあんたの仕事に対する姿勢って奴なんだろ?どんな生徒にも優しく平等に接する・・・それがあんたの矜持なんだろ!?違うのかよ!」

先生(悪)「・・・だ、まれ・・・!!」

男「男にフラレて、辛いのは分かる・・・落ち込んでる所を付け込まれて乗っ取られたのだって、先生の責任じゃねえ・・・でも、それでも頼む先生!!『能力』による乗っ取りと戦って欲しい!!そしてあんたの矜持を!!あんたの誇りを取り戻してくれ!!他の誰でもない、あんた自身の力で!!きっとそうでなきゃ意味がねえから!!」

先生(悪)「・・・っ・・・!」

男「世間は冷たいだの、現実は理不尽だの・・・そんなありきたりな言葉聞きたくねえ・・・!!あんただって、そんな事をわざわざ子供に教える為に大人になったんじゃ、先生になったんじゃないでしょう!?そんな現実や世間に負けないような生徒を・・・って!俺みたいな不出来な奴に対しても優しくして変な道に行かないよう導いてやろうって・・・そんな事を思ってたんじゃねえのかよ!!」

先生(悪)「・・・ぁ」

男「答えてくれよ、先生・・・!!あんたの想いは、情熱は、矜持は、そんな訳の分からねえ『能力』程度に負ける程度のものだったの――」

先生(?)「――・・・黙、りな・・・さい。男くん」

男(!・・・男くんって俺を呼ぶのは、今現在・・・一人だけだ!)

358: 2015/12/12(土) 13:39:43.57 ID:q8oQxg8s0
男「先生!元に戻ったのだな!?よし、これで――」

先生(?)「・・・鬱陶しいのよ!あなたは!」

男「・・・え?せ、先生?元に戻ったんじゃ・・・?」」

先生(?)「ええ、あなたがうるさいおかげで・・・ちょっと表に出てこれたわ・・・でもね、もう私は疲れたのよ・・・なにもかもどうでもいいの・・・放っておいてよ!!」

ズガガガガガガッ!!!(先生(?)の凄まじい猛攻)

男「・・・くっ!」

先生(?)「あなたの言う事で、状況が変わると思った?・・・誰かの想いだけで、言葉だけで、人は、世の中は変わらないわ!そんな簡単な世の中だったら、もっと世界は上手く回ってる!!毎日毎日憂鬱で、自分に出来ることは本当に小さな事で、仕事と家事をするだけ、自分の生活を守るだけで精一杯、それが大人なのよ!!子供のあなたには分からないでしょうけどね!!」

ギィィィガイギギンギンギギガガガガギギッィン!(剣と刀がとんでもない速度でぶつかり合う音)

男「・・・っ・・・!(なんつー速さだ・・・!)」

先生(?)「私だって彼氏にフラレて、ただ自暴自棄になった訳じゃないわ!婚活パーティーとかにも行ったりしたわよ!!でもつまらなくて・・・私は捨てられたんだって思ったら、もう全部が虚しくて・・・もう私の人生、どうなったっていいのよ!!全部めちゃくちゃにしてやるんだから!!」

ズッシャアアアア(とてつもないスピードの先生(?)の剣に、禍学刀が間に合わず。男の腕が斬りつけられる)

男「ガァ!?・・・ぐっ・・・痛え・・・!」

先生(?)「私なんかもう、誰にも愛されてないのよ!!誰にも必要とされてないのよ!!だから、だからもういいの!!私なんかいらない!!早くこの世から消えてなくなりたいのよ!!お願いだから、私の前から姿を消して男くん!!あなたのせいで、せっかく消えてなくなりかけてた私が出てきちゃったじゃない!!早くいなくなってよ!!!わた、私なんか・・・私は・・・もう・・・私はもう、氏にたいのよ・・・!!」

男(涙を流し、声を詰まらせ、自分自身を制御出来ずに、思った事をそのまま口に出しているようなその様・・・自分でも自分が何を喋っているか、何をしているか訳も分からず暴れているその様子は・・・それはまるで・・・まるで・・・)

男「・・・まるで幼い子供だな・・・」


359: 2015/12/12(土) 13:40:42.32 ID:q8oQxg8s0
男(・・・いや、違うか・・・考えてみれば、大人だってみんな元々は子供だったんだ・・・普段は社会人として、世間体を考えて大人としての自分を持っているが・・・大人なんて一皮剥けば、案外こんなもんなのかも知れんな・・・)

男(ならば今、先生に必要なのは、大人染みた理論的で論理的な計算高いものじゃねえな・・・もっと単純で、子供にも分かるような確かな安心・・・それは・・・)

先生(?)「だ、だ、誰が子供よ!!!高校生にもなって妄想染みた事を言っている男くんに言われたくないわ!!」

ギッィィィン!!(横薙ぎの剣を禍学刀で受け止める音)

先生(?)「大体、何が優しくしてもらって嬉しかったよ!私、その後フラれた腹いせに男くんに冷たく当たったでしょう!?それで私に幻滅したでしょう!?いい加減な事言わないで!!」

男「ククク・・・さて、そんな事あったかな?すっかり忘れてしまったよ・・・なにせこの俺、御刀虎はそんな些事を一々根に持つほどつまらない男ではないのでな・・・まぁ一つだけ覚えているのは、綺麗な女性というのは怒っていても綺麗だと言う事だけだが」

先生(?)「な、なによ急に!!そんな事言ってご機嫌取り!?これだから男は最低だわ!どうせみんな口先だけじゃない!!男なんて・・・男なんて・・・!!」」

男「・・・ふっ、そうだな・・・俺の場合は、特に口先だけだ・・・だが、目の前で泣いてる女を前にして、何もしない男はもっと最低だと俺は思う・・・だから、だから先生!!いいかよく聞けよ!!」

ギギギギギギィン!!(男が一気に攻勢に出る)

男「あんたを振った男は、あんたにふさわしくない男だったんだ。だから、いつまでも落ち込むな!!あんたにはもっと相応しい男がいくらでもいる・・・あんたの優しさや美しさにホレ込む男がきっと現れる・・・だけど、それでも見つからなかったら・・・俺があんたを、嫁に貰ってやる!!」

先生(?)「・・・はぁ!?」

男「だから安心してくれ、先生!!とは言っても一応言っておくがな、俺は頭は悪いし運動神経だってひどい!!言動は知っての通り痛々しい!!回りを見渡しても中々いない程の低スペックっぷりだ!!わかったか!?こんな男の嫁になりたくなかったら、さっさとフラれた事を忘れて――」

先生(?)「・・・ほ、本当・・・?」

男「?」

先生(?)「・・・本当に・・・お嫁さんにしてくれるの・・・?」

男「ああ!!お嫁さんにしてやる!!まぁ俺はまだ結婚出来る年じゃないし、先生もあと2~3年経ってどうしても見つからなかったら、だけどな!!分かったらどうか、先生、戻ってくれ・・・!!」

先生(?)「・・・っ!」

男「先生・・・!!」

先生(?)「・・・クッ、がァァぁッアッ!!」

360: 2015/12/12(土) 13:41:45.59 ID:q8oQxg8s0
男「!?」

ギギギギギガガガァン!!(それまで防戦一方だった先生が、勢いを取り戻して攻撃してくる)

男「グッ・・・せ、先生・・・!!正気を取り戻したんじゃあ・・・!?」

先生(悪)「ッ・・・ハァハァ・・・!!すっ込んでろてめえは・・・!!願いを叶えるのは、このあた・・・シィ・・・!!クキキッ・・・クカッ・・・クカカカカカッ・・・!!」

男(ッ!?なんだこの寒気は・・・さっきより、さらに力が増してきたというか・・・ドス黒いオーラみたいのが出て無えか・・・!?口から出る言葉も、意味をなしてねえし・・・!!)

先生(悪)「オオオオッッ!!!」

ギギガガガガギギッィン!(無茶苦茶に剣を振り回す先生に、なんとか対応する男の禍学刀)

男「ガッ・・・くっ・・・うぅ・・・!!」

男(畜生、俺のやった事がどうやら裏目に出たみてえだな・・・!!恐らくだが先生の意識と、『能力』の乗っ取りが均衡した結果、お互いの意識が混ざり合って収集が付かなくなっちまったみてえだ・・・!!クソっ!!)

先生(悪)「氏ね氏ね氏ね氏ね氏ねエエエエエエエエエエエエエ!!」

ガガガガガガ!!!!(目にも止まらぬ速さの攻撃)

男「グッ・・・おぉ・・・ガァ!!」

男(このままだと・・・やべえ・・・女・・・まだか・・・!!)


女「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大な汝の名において 我ここに闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを・・・!」ブツブツ・・・

ボアァン・・・(女が持つ聖剣に、光が宿る)

女(・・・凄まじい力を感じる!よし、成功ねっ!!これなら、きっと先生の結界もぶち敗れるわ・・・!)

女「男!!『冥府落とし』の準備が出来たわ!!急いでそこを離れなさい!!」

361: 2015/12/12(土) 13:42:26.74 ID:q8oQxg8s0
男(女の声が聞こえた・・・ならば、作戦は9割成功だな・・・よし、あとは上手く離れ――――いや)

先生(悪)「ガアアアアアアアアアアアアアッ!!」

ギギギッギギギィンガアアギギズシャアッ!(とてつもない速度の剣の連続攻撃)

男「ゴッ・・・!ガッ・・・!」

男(先ほどから、どんどん力と速さが増してきている・・・!!果たして・・・『冥府落しは』・・・ちゃんとこいつに当たるのか・・・!?)

男(さっきから、殆ど俺からの攻撃は見切られている・・・!防御され、避けられている・・・!この距離の、このスピードで当たらない物が・・・きちんと当たるのか

・・・!?)

女「どうしたの男!?早く離れなさい!!巻き添えになるわよ!!急いで!!」

男「・・・」

男(確証はないだろう・・・もし、外れたら・・・俺たちは・・・)

先生(悪)「ゴォオオオオオオオオオオオオッッ!!」

ギィンギィン・・・!!!

男(ふっ・・・躊躇している暇はないか・・・俺の体力も、そろそろ限界に近い・・・これ以外の方法はないみたいだな・・・)

女「男!!聞こえないの!?早く、早く離れなさいってば!!!」

男「ふっ、女よ・・・聞こえているぞ」

女「男!もう、やっと返事した!!もう一度言うわ!!今から『冥府落し』を撃つから、早くそいつから――――」

男「・・・女よ!!俺に構うな!!さっさと『冥府落し』を撃て!!」

女「・・・は、はぁ!?何言ってんのよ・・・!?それじゃああんた、巻き添えで氏んじゃうじゃない!!」

男「ああ、それでいい・・・!!分かってる・・・全部理解した上で、俺はもう一度言う・・・俺ごと撃て!!女・・・!!!」

371: 2015/12/24(木) 19:36:09.70 ID:pokMPvGe0
男(『冥府落とし』とは、今までこの『戦争』で散っていった人たちの能力や想いの残滓をかき集め、その全てを剣に乗せる・・・その威力は凄まじく・・・文字通り相手を冥府へと落とす・・・それが『冥府落し』だと女は言っていたな・・・)

男(ならばちょうどいいだろう。俺のような嘘つきの行く所など、どうせ冥府にきまっているのだからな・・・遅かれ早かれどうせ行く・・・その時が来ただけの事だ・・・そして俺を冥府へと誘う技名が『冥府落とし』とは・・・ふふっ、これも我が運命という奴だろう・・・ククク・・・)

男(・・・はっ、マジで病気だな。俺のこの中二妄想も・・・氏ぬ寸前だってのに・・・自分で自分に呆れるぜ・・・)

女「あ、あんたごと撃て・・・って・・・ねぇ男!!訳わかんない事言ってないで、早くどきなさい!!本当に撃っちゃうわよ!?」

男「あぁ、それでいい。それで構わない。さっさと撃て・・・!!」

女「・・・あんた、さっきから正気!?氏にたいの!?なんで離れないのよ!!」

男「・・・俺がこうして引き付けてる間なら、確実に『冥府落とし』は当たる!!そうするのが1番いい!!だからそうしているだけだ。躊躇などいらん!!」

女「ば、バカ言わないで!!あんた、あたしが信用出来ないの!?大丈夫だから、ちゃんと当てるから!!さっさと、距離を取りなさい・・・!!」

男「信用とかそういう話ではないさ。これは確率の問題・・・そして、俺とお前との約束、盟約を果たすためだ」

女「約束・・・って」

男「言っただろう?お前を守ると・・・この方法が1番確実にお前を守れるんだ」

男「俺は約束を守る男・・・お前もそう言ってくれただろう?俺を約束一つ守れないような男にしないでくれ」

女「・・・あんた・・・なに、言ってんのよ・・・」

男「ただ、この後お前と遊ぶ約束は守れそうにないが・・・まぁアレだ。お前を守る約束をした方が早かったし、なによりここでどちらとも氏んでしまったら意味がないからな・・・しょうがないと思って諦め――」

女「――だから・・・さっきからあんた、なに言ってんのよ!!!」

男「・・・」

女「なんで・・・なんでそんな事言うのよ・・・ねぇ、さっきからあんたの言ってるそれは何かの前振りでしょ?何かの作戦なんでしょ?それとも、敵を騙すにはまず味方からって奴?そうなんでしょ?ねぇ・・・」

男「・・・悪いが、違う」

女「嘘よ!!私には思いつきもしない作戦をもう考えついてるのよね!そうでしょう!?」


372: 2015/12/24(木) 19:37:12.98 ID:pokMPvGe0
男「・・・なぁ、女よ」

女「分かったわ!実は今まで私達に見せてこなかった究極の技とかを隠し持ってるんでしょう!?今、実はそれの発動準備をして、私を驚かそうとしてるんだわ!!ふふっ、もうバレちゃったわよ男!!だからその演技を辞め――」

男「女よ・・・期待に添えなくて申し訳ないが・・・お前が今言ったような作戦も、技もない・・・・本当にそれしか、お前を守る方法が思いつかないのだ・・・すまん」

女「・・・嘘!嘘!お願いだから嘘って言ってよ・・・ねぇ・・・!!」

男「・・・」

女「あんた言ってたじゃない!!神拳がどうとか瞳術がどうとか・・・それでなんとかしなさいよぉ・・・!!」

男「・・・女よ・・・すまん・・・実は俺は・・・最初からそんなものなど・・・俺は持っていなかったのだ・・・ぐぅぅっ!」

ガキィン!!ガキィン!!(剣と刀がぶつかり合う音)

女「・・・うそ・・・」

男「俺は、お前らを騙していたのだ・・・本当の俺は・・・ただの一般人。何の力もない、ただの無能力者だ・・・今まで、騙していて、悪かったな・・・」

女「・・・そんなの、うそよ・・・」

男「いいや、本当だ・・・まぁ騙す気は無かったのだが、お前らにそう打ち明けるのが怖くて、今まで何か『能力者』の振りをしていたのだ・・・すまなかった・・・」

女「・・・いや、いや!そんな話聞きたくないわ!!お願いだから、そんなウソ聞きたくないの!!ねぇ、それもウソなんでしょう・・・!それもまたウソなんだって言ってよ・・・お願い・・・お願いだから・・・!!だって、今だってそんな刀持って戦ってるじゃない!!その刀が『能力者』の証よ!!そうでしょ!?」

男「・・・すまんが、全て真実なのだ、女・・・この刀は『機関』のメイドから借りたものだ・・・残念ながらな」

先生(悪)「オゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

男「ぐぶぁ!?」

ギィィッィン・・・ざしゅ!!(斬りつけられる男。浅くはない傷が付き、血が男の身体を染めていく)

女「男っ!!」

男「ふっ・・・女よ・・・悪いが、そろそろ体力の限界が近づいてきている・・・だから頼む・・・撃ってくれ・・・!!」

女「・・・そんなっ・・・そんなのって・・・だって・・・あたしは・・・あたしは・・・」

373: 2015/12/24(木) 19:37:43.35 ID:pokMPvGe0
女(・・・男は突然、私の前に現れた。無愛想で、不気味な笑みを浮かべて、意味深な事ばかり呟いて・・・最初は正直、いい印象は抱いていなかった)

女(でも、男は私と同類だった。新たな仲間だった)

女(そして男は言った。お前は俺が守る、と)

女(・・・そんな事を言ってくれた男の人は初めてだから、すごくドキドキしたのを昨日のことのように覚えている・・・)

女(そして男はその言葉通り、私を助けてくれた。名前を呼んだらその人が来て助けてくれるなんて、まるで夢物語みたいな事を、男はしてくれた)

女(その後も、男はいつだって私を気にかけ、私を守ろうとしてくれた)

女(気付いたら、私はいつだって男の事を考えるようになった・・・)

女(笑顔が可愛いって言ってくれたり、頭を撫でてくれるだけで、私の心は嬉しすぎて蕩けてしまいそうになった)

女(だからかも知れない。男に守られているというこの安心感に浸りたくて、ずっとこの関係を続けたくて・・・男の正体、彼が一体何者であるかを深く知ろうとしなかったのは)

女(勿論、男自身が知られたくなさそうというのもあるけど・・・胸の奥に宿った小さな疑問は見なかった事にして無理矢理かき消していた・・・と思う)

女(そんな事あるはずがないって、自分にずっと言い聞かせて・・・いつか、向き合う時が来る・・・だからその時までは・・・って)

女(でも、まさか・・・こんなタイミングで・・・なんて・・・!!)

374: 2015/12/24(木) 19:38:37.80 ID:pokMPvGe0
男「女よ・・・いいのだ、これで・・・お前も今、俺に幻滅したであろう?今まで散々くっちゃべってきた俺の言葉の殆どは妄想だったのだ・・・俺のような嘘つきとなど・・・金輪際関わりあいになりたくないであろう?」

女「・・・」

男「だから、この状況はちょうどいい塩梅、嘘つきに相応しい結末という奴なのだ。今まで騙してきた奴の手によって俺は氏ぬが、代わりに『戦争』は終わり、団長殿も助かり、そしてお前は俺のような妄想野郎との関わりが切れる・・・」

女「・・・」

男「お前が俺を巻き込んで『冥府落し』を撃つ事は、プラスになることはあっては、マイナスになる事は一切ないのだ。気兼ねすることはない。わかったら早く『冥府落とし』を――」

女「・・・いやよ・・・」

男「・・・女っ!まだ俺が何かを隠しているとでも思っているのか!?わかってくれ!俺は本当に何の能力もない、ただの・・・」

女「違うわ・・・ごめん、男・・・私本当は、心のどこかでわかっていたの・・・本当は気付いていたの・・・」

男「・・・!?」

女「だって、ヒントは沢山あったものね・・・あんたは決して、私達の目の前で戦おうとはしなかった・・・キメラの時だって、かわすだけで攻撃はしなかったし・・・不良にだって、力があるとは言え、あんな殴られっぱなしになる訳がないもの・・・それにあんたは怪我の回復も遅かったし・・・」

女「あんたが無能力者って事、私本当はわかってた・・・だけど、そんな事あるはずないって・・・その疑問を握りつぶしてたの・・・だって、あんたは・・・私の心の支えだったから・・・」

男「・・・俺が、心の支え・・・・」

女「あんたが居たから、戦ってこれた・・・あんたが居たから、私は強くなれた・・・それにあんたは自分の事を嘘つきって言うけど、何度も私達の事を助けてくれたじゃない!!」

女「お嬢との戦いの時はギリギリの所で来てくれたし、キメラの時なんか、あんた無能力者なのにあんな化物に丸腰で立ち向かったじゃないの!!」

375: 2015/12/24(木) 19:42:07.41 ID:pokMPvGe0
男「それは・・・お嬢の時は、組織女に力を貸してもらった、いわゆる他力本願って奴で・・・キメラの時だって、俺がやった事は囮と時間稼ぎだ・・・大した事じゃあ――」

女「それだけでも十分すごいわよ!!そうやって助けにきてくれるあんたの姿が、どれだけ嬉しかったか・・・威風堂々と敵に立ち向かう男の背中に・・・私がどれだけ勇気をもらったか、あんた全然分かってないわ・・・!!」

男「・・・女・・・」

女「それにあんたは、日常においても、私を励ましてくれたじゃない。あんたのその不敵な笑みや、自信満々の雰囲気が、どれだけ私を安心させてくれたか・・・だから、私は・・・あんたが・・・そんなあんたの事・・・が・・・!!」

先生(悪)「グオラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

男「ガッ・・・ぐ、ぅぅっ・・・!!」

ズシャアアアアア!!(また男が斬りつけられる。額に傷が付き、男の顔に血が垂れていく)

女「男ぉ・・・!!」

男「・・・女よ、すまないが・・・もってあと一分といった所だ・・・このままではいずれにしろ先生(悪)の剣を捌ききれなくなる・・・そうなったら何の意味もなくなる・・・だから、頼む・・・」

女「いや・・・いやよ・・・そんなの・・・」

男「女よ・・・後生だ・・・!!嘘つきだった俺だが、お前を守るという約束だけは守りたいのだ・・・それに女の為に氏ぬというのは、男にとって最高の名誉だ・・・だから・・・」

女「いやいや!!絶対にいやよ!!私、そんな事絶対にしない!!そんな事するくらいなら・・・あんたと一緒に氏んだ方がマシよ・・・!!」

男「女よ・・・俺を困らせないでくれ・・・頼む」

女「いや、いやああああああああ!!」




???「――もう、あんたはいつまで経っても泣き虫ね」

376: 2015/12/24(木) 19:42:58.89 ID:pokMPvGe0
――シュゥゥゥ・・・オン!(突然、女のペンダントが光り出し、やがてそこから人影が出現する)


女「!?・・・え?この、声は・・・お、お姉ちゃん・・・!?」

女姉「はーい。あんたの愛しのお姉ちゃんよ。元気だったかしら?」



女「え、ええええええええ!?ど、ど、どうしてお姉ちゃんが!!え、えぇ・・・!?本当にお姉ちゃん・・・!?」ベタベタ

女姉「うん本物よ。妹のピンチにお姉さまが参上って訳・・・って、女。あんたさっきから、ベタベタ触りすぎだってば」

女「だ、だって・・・お姉ちゃん・・・氏んだはずじゃあ・・・ゆ、幽霊・・・!?」

女姉「幽霊だったら触れないでしょう?・・・あのね女。『冥府落とし』はこの『戦争』で亡くなった人の思いや能力の残滓をかき集める技でしょ?・・・それで、私も引き寄せられてね・・・それにあんたがずっと身につけてくれてたそのペンダントがあるでしょ?」

女「う、うん・・・」

女姉「私、それにちょっと細工をしててね・・・あんたが本当にピンチの時に、少しだけ手助け出来るような細工をね・・・だけど『冥府落とし』のおかげで、肉体ごと生き返る事が出来たのよ。もっとも身体があるのは『冥府落とし』発動中だけだけどね」

女「そ、そうなの・・・?」

女姉「まぁ普通はこんな事はあり得ないらしいんだけど・・・あんたがずっと私を思い続けてくれた事、そのペンダントを肌身離さず持ってた事で、あたしが出てこれたみたい・・・あんたの思いが、奇跡を起こしたんだよ・・・まぁそういう細かい事情は置いといて・・・後は――お姉ちゃんに任せなさい」

女「お、お姉ちゃん?なにする気!?」

女姉「ふふっ。決まってるでしょ。私の大事な妹と、その彼氏くんをいじめてる悪者退治♪」

女「か、彼氏じゃないもん!!・・・まだ・・・だけど・・・///」

女姉「あら、そうなの?まぁとりあえず彼氏候補くんを助けに行きますか♪」

377: 2015/12/24(木) 19:43:53.03 ID:pokMPvGe0
スタスタ(戦っている男と先生(悪)に近づく女姉)

ギィンギィンギィンギィン!!!

先生(悪)「ウガオエイエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

男「ぐぅ・・・ガァッ・・・!(まじい・・・マジで、本気で・・・限界だ・・・氏ぬ・・・!)」


女姉「――はい。お疲れ様。男くん。よく頑張ったわね。後はおねーさんに任せなさい」


ジャッギィィィン!!!(男と先生(悪)との間に割って入た女姉の剣が、先生(悪)との剣とぶつかる音)


男「おあ!?な、なん・・・!?誰だあんた!?」

女姉「ふふっ、ごめんごめん。自己紹介がまだだったわね。私、女姉。女のお姉さんよ。よろしくね」

男「はぁ・・・!?女のお姉ちゃんは氏んだはずじゃ・・・って、丁寧に俺に自己紹介してる場合じゃねえぞ、危ねえ!!」

先生(悪)「でぇりぃやああああああああああああああああ!!!!」

ブォン!!(先生(悪)の剣が女姉を襲う)
ガシッ!!(難なくその攻撃をガードする女姉)

女姉「おっとっと・・・ふぅ、危ない危ない、さーて散々私の妹とその彼氏候補くんを可愛がってくれた、そのお礼参りと行こうかしら!」

ズガガガガガガ・・・ズガッ!!(とてつもない速度で攻撃を繰り出す女姉)

先生(悪)「オガッ!?・・・ズゥ・・・!!」←その攻撃に耐え切れず、一旦距離を取る先生(悪)

男(動きが速え・・・つ、強え・・・ひょっとしてこの人、団長殿と同じくらいの強さなんじゃねえか・・・?)

女姉「男くん・・・ここは危険だから、離れて、ね?お姉さんがやっといてあげるから」ボソボソ

男「・・・い、いや・・・女性にそんな事をさせる訳には・・・」

女姉「へぇ・・・紳士なのね。でもね、大丈夫。男くんのがんばりは、ちゃんと私分かってるから、早く女の所に行って、安心させてあげて、ね?」ニコッ

男「は、はい・・・(すごい色っぽいお姉さんだな・・・)」ドキドキッ

女姉「ふふっ、素直でいい子ね・・・・さーて、久々の戦闘で血が騒ぐわぁ・・・ふふふっ」

378: 2015/12/24(木) 19:44:23.77 ID:pokMPvGe0
女「男・・・!!」

男「女・・・何だか事態がよく飲み込めんのだが・・・アレは本当に、お前のお姉さんなのか・・・?」

女「ええ、そうみたい・・・私にもよくわからないけど・・・ねぇ、それよりも男」

男「うん?・・・って、え?」

がばっ(男に抱きつく女)

女「この・・・バカ・・・お姉ちゃんが来てくれなかったら・・・あたし達、どうなってたか・・・」

男「あ、ああ・・・色々すまん・・・」

女「バカ・・・バカ・・・うっ・・・ぐすっ・・・」

男「ああ・・・本当に、ごめん・・・」

ぎゅぅぅ(女が男に抱き返す音)



十秒後

女「ご、ゴホンゴホン!ねぇ男・・・そろそろその、いいんじゃないかしら?色んな意味で・・・」

男「お、おう・・・そうだな・・・」

すぅ・・・(二人が離れる音)

女「・・・い、一応言っておくけど!」

男「・・・おう?」

女「今の十数秒間は、何も無かったから!」

男「・・・えっ」

女「・・・何よその気のない返事!何も無かった、そうでしょう!?ていうか何かしてるような時と場合じゃないでしょ今は!?」

男「そ、そうだな・・・うん、何もなかった・・・ただ、自分から抱きついてきたような・・・」←最後だけボソッと

女「う、うっさいわねもう!」

男「う、うむ・・・すまん・・・というか、それより戦況はどうなっているのだ?」

379: 2015/12/24(木) 19:45:04.50 ID:pokMPvGe0
女姉「へぇ、結構強いのね、あんた・・・でも、力に振り回されているみたい。隙が多いわよ?」

ザシュッ!(女姉の剣が先生(悪)を斬りつける音)

先生(悪)「らがぁあがぁ!?」

女姉「ふふっ、さぁガンガン行っちゃうわよ!!」



男「・・・結構容赦ないな・・・女のお姉さんは」

女「うん、お姉ちゃん、敵と見なした相手には本気でエゲツないから・・・どんな相手でも強気だしね」

男「うむ・・・ふふっ」

女「?なに笑ってんの?」

男「いや、なに・・・ここまで性格が似ている姉妹も珍しいと思ってな・・・それに美人な所もそっくりではないか」

女姉「え・・・そ、そうかしら・・・ありがとう・・・///」

女「あ、あんたねぇ・・・故人まで口説く気!?」

男「何の話をしてるんだ、何の・・・それよりもせっかくお姉さんが敵を引きつけておいてくれてるんだ。俺たちはしっかり狙いを定めるべきだろう」

女「そ、そうね・・・とことん、あんたは女に対して天然なのね・・・」


女姉「ふっ・・・力はすごいけど・・・こうしてちょっとフェイントを入れてやれば・・・ヤァァ!!」

ズシャ!!(先生(悪)の剣を持った方の腕を切り落とす音)

先生(悪)「ガァ!?!?」」

女姉「ふふっ・・・『冥府落とし』を撃つ前に、勝負が付いちゃったかしら・・・うん?」

先生(悪)「ウウ・・・アアァ・・・!!」

ズズズズズズズズズズ・・・!!!(先生(悪)の服の中の聖骸布が光りだす)

女姉(凄まじい力を感じる・・・これは・・・)

女姉「っ!?」

先生(悪)「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

ドドドドドドドドドッッ!!(先生(悪)の服の中の聖骸布がすごい光を放つ)

380: 2015/12/24(木) 19:46:10.55 ID:pokMPvGe0
ズウウウウウウウン・・・

女「なっ・・・先生(悪)が・・・きょ、巨大・・・化・・・!?」

男「で、でけえ・・・!!クソっ・・・これもまた聖骸布の力って奴か・・・!?」

女姉「落ち着きなさい二人共!!これはチャンスよ!!この大きさなら確実に『冥府落とし』が当てられるわ!!」

男・女「「!!確かに・・・!!」」

女姉「それに単純な大きさとか力に頼るってのは、もうそれ以上何も思いつかなくて追いつめられてるっていう証拠よ!!思いっきりぶちかましてやりなさい!!」

女「うん、お姉ちゃん・・・!!」

先生(悪)「ズオオオオオオオオオオオオオラアアアアアアアアアアアアアアアアア」

ドドドドドッ・・・!!(迫り来る巨大な先生(悪)の掌)

女姉「人の妹に、これ以上手を出さないでもらえるかしら・・・!!」

しゅたっ・・・ギィィィンっ!!(跳躍し剣で受け、掌が落ちてくるスピードを減速させる女姉)

女姉「一応言っておくけど、『冥府落とし』を撃ったらあたしがまた消えちゃうとか、そんな事考えて躊躇しちゃだめよ女!むしろ躊躇したらぶっ飛ばすわよ!!あんたが今ここで『冥府落とし』を撃っても撃たなくても、どっちにしろ『冥府落とし』が集めたエネルギーによって存在してるあたしは一時間と保たずに消えるの。だから何も気にせず撃つこと、いい!?」

女「・・・うん・・・わかってるわ、お姉ちゃん・・・」

女姉「ならよし・・・大丈夫よ、あんたはあたしの氏くらい、簡単に乗り越えられる・・・それくらいの力を持ってる子だもの。お姉ちゃんの分まで生きて・・・なんて言わないわ。あんたは、あんたの人生を、しっかり生きなさい!そして幸せになるのよ!!例え姿形が見えなくてもお姉ちゃんはいつでもあんたの事を見守ってる!わかった!?」

女「・・・うん・・・うん・・・!」

女姉「それから男くん!!」

男「お、俺か・・・!?」

女姉「ええ、そうよ。君よ・・・妹をよろしくね。手間のかかる、素直じゃない面倒くさい子だけど・・・それでも、私の可愛い妹で・・・本当はとってもいい子だから・・・あたしの代わりに、男くんが支えてあげてね」

男「・・・ふふっ、ああ。案じずとも大丈夫ですよ、お姉さん。誰に言われずともそうしますぜ」

女姉「ふふっ。その言葉を聞いて安心したわ・・・それとね、男くん。君の活躍はペンダントを通じてなんとなく感じてたわ・・・それで、君は自分をウソつきだって言ってたけど・・・私の妹との約束を守ろうとしたその気持は本物だと思うわ」

男「・・・!」

女姉「だから、自分の事を嘘つきだなんて卑下せずに・・・もっと自信を持って生きなさい・・・いいわね!」

男「・・・はい・・・!」

女姉「・・・よし、言いたい事は、全部言ったわ・・・あとは『冥府落とし』を撃つだけよ!!いい加減この『戦争』に、ケリを付けましょう・・・!」」

381: 2015/12/24(木) 19:47:01.05 ID:pokMPvGe0
先生(悪)「ンヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアア!!!」

女姉「ふんっ、軽いのよ・・・!私の妹への思いに比べたら、あんたの重さなんか、へでもないわ!!」

ズッ・・・ズ・・・ズッズズズッ・・・!!(先生(悪)の巨大な掌と一進一退の攻防を繰り返す女姉)

女「・・・もう、お姉ちゃんったら・・・恥ずかしい事言って・・・!」

男「いいじゃないか・・・俺には兄弟も姉妹もいないから、羨ましい限りだが」

女「・・・まぁね、私も恥ずかしいけど・・・いやじゃないわ・・・それに氏んだお姉ちゃんにもう一度会えたんだもの・・・きっと私、世界中の姉がいるどんな人よりも、幸せだと自分でも思うし・・・だから・・」

男「うむ・・・うん?」

男(女の『冥府落とし』用の聖剣を持つ手が震えている・・・そうか・・・口では大丈夫と言っても・・・再会した上での再度の別れは・・・尚辛いよな・・・自分が撃つ事で、消えてなくなるとすれば尚更だ・・・ならば・・・)

ギュッ(男が『冥府落とし』用の聖剣を持つ女の手を掴む)

女「・・・え?」

男「ここまで来たんだ・・・俺も一緒に撃つ・・・最後まで一緒だ。いいだろ?・・・お前がやめてというのなら、手を離すが・・・」

女「・・・ううん・・・あ、ありがとう・・・」

男「ならよかった。なに、心配するな。大丈夫だ、お前には俺がいる・・・とは言っても、俺は無能力者だ・・・お前に対して出来る事など何も出来ないかも知れんが・・・それでも・・・俺はな・・・」

女(・・・)

女「・・・ねぇ、男?」

男「な、なんだ?」

女「せっかく一緒に撃つんだからさ、なんかカッコいい技名、つけてよ」

男「え?」

女「ほら、お得意の妄想生かしてさ・・・『冥府落とし』もかっこいいとは思うけど、もっと何か長ったらしくてかっこいい奴・・・最終決戦を終結させるに相応しい技名・・・あるんでしょ?」

男「い、いや急に言われても・・・」

女「いいから、早く考えて」

男「ちょ、ちょっと待て・・・!!5秒、5秒くれ・・・!!猛烈にカッコいい技名、考えるから・・・!!」

382: 2015/12/24(木) 19:47:49.66 ID:pokMPvGe0
女「ふふん、分かったわ・・・ごー、よーん・・・」

男(な、なんで急に・・・!?この場面で・・・!?畜生何にも思いつかねえ・・・!!)

女「さーん、にーい、いーち・・・」

男(くっ・・・出てこい・・・何でもいいから、出てこい・・・!!)

女「ぜーろ。はい、技名言って」

男「・・・瞬裂幻電霊護荒右麗下円回昴神嵐極上刹重斬・・・!!」

女「・・・」

男(ど、どうだ・・・!?)

女「・・・ぷっ」

男「・・・え?」

男(ふ、吹き出した・・・?)

女「ぷっ・・・あっはっはははは・・・長いし・・・もう何の必殺技かさっぱりわかんないし・・・あーあ、今思えば、なんで最初に出会った時とか、勘違いしちゃったんだろうな、私・・・ぷっくっくっく・・・」

男「・・・あのー」

女「なんか、あんたと出会ってからの私を客観的に思い返せば、一つのとてつもなく長い、勘違い系のコントとか喜劇をずっと繰り広げてたみたいな感じに見えるのかもしれないわね・・・ぷぷぷ、あーおっかしい・・・ふふふっ・・・」

男「お、女さん・・・?」

女「ふふふふっ・・・あー笑った笑った・・・ふふっ、こんなに笑ったの、お姉ちゃんが氏んで以来、初めてかもしれないわね・・・くくっ・・・」

男「あの・・・すみません・・・さっきから、置いてけぼりなんですけど・・・」

女「ふふふっ、そうよね・・・だから、私が言いたいのはね・・・あんたは、こんなにも私を笑わせる事が出来るって事。何も出来ないなんて、そんな事ないわ。そんなに自分を貶めなくていいわよ」

男「・・・女」

女「ふふっ、それにさっきお姉ちゃんに言われたでしょ?自分を卑下せず、自信を持って生きろって。だったらいいじゃない。あの上から目線で、変な口調で、根拠のない自信に満ちた、いつものあんたで。それがきっと1番いいのよ」

男「・・・そうかな」

女「そうよ。それに、そういうオドオドしてるあんたも可愛いとは思うけど、やっぱり私は、普段のあんたの方が好きかも」

男「・・・そうか」

男「・・・」

男「く、ククク・・・全く、さっきから誰に向かってそんな口を聞いているのだ?我こそは暗黒の邪王。御刀虎だぞ?全く、偉そうに・・・」

女「ふ、ふふっ・・・そうそう・・・あんたはやっぱりそうでないとね」

男「ふん・・・全く、生意気な奴め。実はさっきまでの態度はお前を試す演技だったのだ・・・この暗黒の邪王への忠誠心をな・・・」

女「はいはい・・・ふふっ・・・ふふふっ・・・」

男「ククク・・・アハハハハハ・・・」

383: 2015/12/24(木) 19:48:51.89 ID:pokMPvGe0
女「さて――じゃあ撃つわよ男。準備はいい?」

男「ああ、いつでもいいぞ。ククク・・・女よ。お前は気づいてないかも知れないが、実はここまで全てこの俺、御刀虎の筋書き通りだったのだ・・・ククク・・・」

女「ふふっ、そう・・・なら聞いてもいいかしら。この『戦争』の結末は?」

男「カカッ・・・決まっている・・・この『冥府落とし』が無事に決まり・・・我々『騎士団』の大勝利で幕を閉じる!!完全無欠のハッピーエンドだ!!ハーハッハッハッハ!!!」

女「そっか。ふふっ・・・あんたの言葉を聞いて安心したら、いい感じに肩の力が抜けたわ・・・――行くわよ、男!!」

男「おうッ!!」

ぎゅ、ぎゅ(二人で光を放っている聖剣を掴む)

女姉「準備は出来たようだしもう私がこいつの攻撃を抑えておかなくても、大丈夫ね。思いっきりぶちかましてやりなさい!!」

女「ええ!!」

ズウ・・・ズオオオオオ・・・!!!(聖剣を振り上げると切っ先に、光が集中していく)

男(すごい力を感じる・・・これなら・・・例え先生(悪)がどれだけ強大であろうと・・・)

先生(悪)「オガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

ズアアアアアアアアアアアア・・・!!(迫り来る巨大な先生(悪)の掌)

男(ぶっ潰せる!!)

女「よし!!じゃあ聖剣を振り下ろして・・・『冥府落とし』を撃つわよ男!」

男「おう!!全ての因果に決着を付ける時だ!!カカッ!!」

ブォン!!(男と女が同時に聖剣を振り下ろす)



ズッ・・・ドガラッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!(聖剣から凄まじい質量を持った光が、先生(悪)を襲う)


先生(悪)「おああああああああああああああああああああああああああああああ!??!?!?!?」

ドガガガガガガ・・・・!!


先生(悪)「――――あっ」


・・・――ズバンッッッ!!!!!(光が先生(悪)の身体のド真ん中に大きな穴を開けた音)


先生(悪)「・・・ズオッ・・・アッアッ・・・あぁぁぁ・・・」



ドスン・・・!!(先生(悪)が倒れる音)

384: 2015/12/24(木) 19:49:33.48 ID:pokMPvGe0
女「・・・やった!!やったわよ!!男!!」

男「・・・ああ!!やったぞ!!!倒した!!俺たちが、勝った・・・!!」


ズズ・・・ズズン・・・!!(男達が戦っていたタワーが揺れる音)


女「えっ、なにこの音は・・・!?」

男「ひょっとして・・・この衝撃でタワーが・・・崩れんのか・・・!?」

ゴゴ・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・ッッ!!(音を立てて崩れ落ちるタワー)

女「やばい!急いで団長の元へ行って縄を解いてあげないと!!しかも気付いたら戦闘で団長から離れた所に来ちゃってるし・・・早くしないと!!」

男「っ!!団長殿っ!!」ダッ!!

女「ま、待ちなさい男!!あんた一人じゃ危険・・・っ!?」

ガラガラ!!(タワーの一部が落ちてきて男と女の間に突き刺さって女の行く道を塞ぐ)

女「ああ!!この、邪魔よ!!」

ボカッ!(剣でそれを破壊する女)

女「よし、これで・・!・・・!?!?」

ドガッドガッドガガガガガガ!!!(次々と落ちてくるタワーの一部)

女「ああ、もう鬱陶しい・・・どうしよう、これじゃ助けに行けない・・・男、団長ぉ・・・!!」



騎士団長(・・・)←意識を失っている

ズドドドドドドド・・・!!(タワーが崩壊する音)

385: 2015/12/24(木) 19:52:02.75 ID:pokMPvGe0
騎士団長「・・・っ!?な、なんだ・・・何の音だ・・・!?」

騎士団長(・・・確か、私はいきなり後ろから刺されて・・・それで、意識を失って・・・いや、確かその直前に女達に聖剣を託したはず・・・)

騎士団長「ならば・・・ここは一体・・・なっ、縛られている・・・!?しかも、縛られている建物が崩壊中・・・!?な、なんだこの状況は・・・!?」

騎士団長「ともかく早く抜け出さないと・・・くっ・・・クソっ・・・なんて頑丈に縛ってあるんだ・・・こ、このままでは・・・・!!」

騎士団長(・・・そう言えば、薄らぼんやりとだが、男と女が助けに来てくれたような記憶が・・・)

騎士団長「男ー!!女ーー!!私はここだーー!!」

シーン・・・

騎士団長「くっ、返事がない・・・」

ズドドドドズドズドドドドドドド・・・!!(タワーの崩壊が進行している音)

騎士団長(・・・これぐらいの高さなら、落ちても身体は無事だろうか・・・いや、心臓付近を刺され、その影響で体力もかなり落ちている今の私なら、あっけなく氏んでしまうだろう・・・その上、何百キロもある瓦礫が私の上に落ちてきたら・・・その中に埋もれたら・・・確実にアウトだ)

騎士団長(そして、今、この状況から逃れる術は・・・ない・・・)

騎士団長「万事休す・・・か・・・ふっ、これで終わりとは・・・何ともまぁあっけないものだ・・・いや、人生とは往々にしてそういうものか・・・」

騎士団長(ところでさっき私を刺した奴はどこに行ったのだろう・・・『戦争』は一体どうなったのだ・・・?それだけが心のこりだ・・・我々は勝ったのだろうか・・・?)

騎士団長(いや、きっと大丈夫だろう・・・女は最近、私に追いつくレベルでメキメキと腕を上げているし、何より男・・・彼が付いているのだ・・・心配いらないか)

騎士団長(・・・人生に、悔いはないと言ったらウソになる・・・思い残した事・・・女は、私がついていなくてももう大丈夫だろう。彼女は随分成長した・・・後は)

騎士団長(・・・男)

騎士団長「ば、バカッ!!なぜここで彼の顔が浮かぶのだっ!!」

騎士団長「・・・誰に言っているのだ、私は・・・全く・・・」

騎士団長(・・・でももっと積極的に、彼に対するこのもどかしい感情を衝動のまま、彼に対して素直になっておけば、という想いもある)

騎士団長(初めてだったからな・・・褒められるだけで、頭全体がぼーっとしてしまうほど嬉しくなったり、他の女と楽しそうにしているだけで胸がざわつく異性というのは)

騎士団長(彼の正体以上に、私は・・・この胸の中にある、彼に対しての気持ちの正体を知りたかった・・・)

騎士団長(でも、それももう・・・)

騎士団長「・・・っ!」

騎士団長(だめだ。そう思うと・・・急に胸が苦しくなってきた・・・)

騎士団長(忘れよう・・・何もかももはや、叶わぬ、届かぬ夢なのだ・・・)

騎士団長「夢・・・願いか・・・」

騎士団長(私の願い・・・『戦争』開始から、ずっと叶えたかった願い・・・先ほど手に掛けて、されど手からこぼれ落ちてしまったもの・・・それは・・・)

???「団長殿おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

騎士団長「!?」

386: 2015/12/24(木) 19:53:23.46 ID:pokMPvGe0
男「ハァハァ・・・!!助けにきたぞ!!!」

男(やべえ・・・団長殿がピンチということで、頭に血が登って何も考えずにかけ出してしまった・・・後からついてくると思った女も何故か来ないし・・・!!)

男(でも、畜生。こうなったら俺一人で、何とかしてやる・・・!!)

騎士団長「お、男!!来て、くれたのか・・・!!」

男「ククク、待ちわびたか団長殿・・・!?今、助け・・・ッ!?」

ズズズズズズズズズズ・・・!!!(大きく揺れるタワー)

男「ぐっ・・・!」ずたっ(揺れに耐え切れずずっこける男)

騎士団長「だ、大丈夫か!?かなり疲れているようだが・・・」

男「へへっ、これくらい平気ですぜ団長殿・・・ちょっと先ほどの戦闘体力を消耗していただけで・・・ぬお!?」

ボカッ!(落ちてきたちょっとした瓦礫が男の顔に当たる)

騎士団長「お、男ぉ!?か、顔から血がっ・・・」

男「・・・こ、これくらいなんともないですぜ・・・今、そっちに行きますよ団長殿・・・!!」

騎士団長「む、無理するな!止血してからでいい!!それじゃあ目に血が入って――」

男「刺された団長殿の痛みに比べたらこんなもの、蚊に刺されたようなもんですぜ。なぁに血なら拭いながら行きますよ、心配ご無用でさぁ・・・!!」

騎士団長「お、男?どうしてそんなに必氏なのだ?いつものクールな君はどうした・・・?君の持つ力なら、私一人助けるくらい、余裕であろう?そんなに急がなくても・・・」

男(そうか・・・団長殿は知らないのか・・・ええい、この際だ。言ってしまえ)

男「・・・なぁ、団長殿・・・俺には、そんな力がないって聞いたら、あなたはどうします?」

騎士団長「は・・・?い、今更何を言っているのだ君は・・・そんな事ある訳・・・」

男「いいや、団長殿・・・悪いが本当なのだ・・・残念ながらな・・・こうやって・・・」

べたっ・・・ズッズッ・・・(柱に両手を回し、両足でしがみついて、タワーのてっぺんへと少しづつ進んでいく男)

騎士団長「な、何をしているのだ、君は!?そんな効率の悪い助け方があるか!!もっとこう、一気にジャンプして縄を剣で断ち切るとかだな・・・!」

男「いいや。俺にはそんな芸当は出来ませんぜ、団長殿。こんなふうにしがみついて、かっこわるく進むしか縄に縛られているあなたへ近づく方法がないのが、その証拠だ・・・今までずっと、騙していた・・・すまなかったな団長殿・・・」

騎士団長「・・・そ、そんな・・・本当・・・なのか・・・」

男「ああ・・・申し訳ない、団長殿・・・全て事実ですぜ・・・」

騎士団長「・・・そう、か・・・確かに言われて、思い起こして見れば・・・思い当たるフシはある・・・そう、だったのか・・・君は・・・」

男「ええ・・・」

387: 2015/12/24(木) 19:54:20.47 ID:pokMPvGe0
騎士団長「・・・」

男「・・・」

騎士団長「・・・」

男「・・・で、でも安心してください!!団長殿だけは何とか・・・」

騎士団長「・・・いや、ならばいい。さっさと君は逃げたまえ」

男「っ!?な、何を言い出すんですか団長殿!?」

騎士団長「・・・君は無能力者、なのだろう?確かに君は私達を騙していたのかもしれないが・・・でも、無能力者で一般人の君を巻き込んでしまった、私達にも責任がないとはいえない・・・ましてや無能力者の君に助けられた事だってある・・・ならば、その恩返しと責任を取らなければならないだろう?」

騎士団長「だからいいのだ。ましてや君はその怪我だ・・・本当は今すぐにでも倒れこんでしまいたいくらい、体力的にも限界であろう・・・?」

男「・・・っ・・・」

騎士団長「・・・ほら、早く逃げたまえ・・・もたもたしていると本当に氏んでしまうぞ・・・?」

男(・・・)

騎士団長「ふふっ、振り返ってみれば・・・君にはいい夢を見させて貰ったよ・・・稽古も楽しかった・・・君といると、他の人では得られないような、ドキドキやワクワクや、不思議な胸の高鳴りも得る事が出来た・・・それだけで、私はもう十分だ。だから――」

男「・・・」

ズッズッ(タワーを登り始める男)

騎士団長「・・・お、おい。何してるんだ、君は!私の言葉が聞こえなかったのか!?さっさと逃げろ!!さもないと本当に・・・!!」

男「・・・」

騎士団長「おい!!聞こえないのか!!」

男「・・・なぁ、団長殿」

騎士団長「・・・聞こえているじゃないか!!早く逃げたまえ!!」

男「・・・あなたは知らないと思いますが、世間一般では俺のような奴を中二病とか、邪気眼って言うんですぜ」

ズッズッ(タワーを登る音)

騎士団長「な、何の話だ・・・?」

388: 2015/12/24(木) 19:55:43.92 ID:pokMPvGe0
男「俺はずっと頭ん中で、この『戦争』みたいな妄想をしてました。超常の力を得て、謎の『組織』や『機関』と命がけの戦いをする妄想をね」

騎士団長「・・・だから、なんだ!?それが今、この状況と何の関係がある!?」

男「大ありですよ、団長殿。さっきあなたは巻き込んでしまったっ仰っていたな。その責任を取ると・・・そんな責任取らなくていい。なぜなら、俺は感謝してるんです。この事態に巻き込まれた事に」

騎士団長「な、何を言ってるんだ君は・・・!?頭がおかしいのか!?こんな命がけの『戦争』に巻き込まれて・・・感謝だと・・・!?訳の分からない事を言うな!!」

男「本当ですぜ。団長殿・・・まぁ確かに、命がけで、本当に怖くてチビリそうなった事も何回もありましたけど・・・それでも、退屈な日常を送るよりかは、何千倍も刺激的でしたぜ?俺にとって巻き込まれた事はプラスであれど、マイナスじゃあ決して無かった・・・!!」

騎士団長「・・・っ、き、君という人間は・・・理解不能だ・・・イカれているぞっ・・・!!というか、そんな御託はいい!!早く逃げないと本当に手遅れになる!!命が惜しくないのか!?」

男「いいや、命は惜しい・・・惜しいですが・・・でもね。ここで貴方を見捨てて拾う命に、俺はちっとも価値を感じない・・・何より、こんな事に巻き込んでくれた貴方を見捨てるなど、それこそ氏んでも出来そうにない!!」

騎士団長「・・・っ・・・」

男「貴方の事は、俺の命に代えても必ず助ける・・・!!!それに今、あんたはその場から動けないだろう!?いわば囚われのお姫様だ!!!だからもうゴチャゴチャ言うな!!!お姫様はお姫様らしく、黙って俺に助けられてろ!!!」

騎士団長「・・・お、お姫様って・・・ば、バカっ・・・///」

男「ククク・・・いいぞ、団長殿。やっとお姫様らしくなってきたな・・・あと少しだ・・・待ってろ団長――」

グラララララ・・・!!!(タワーが激しく揺れる音)

男(っ・・・この、揺れは・・・まずい・・・)

ズ・・・ガッ!!!(ちょうど、タワーのてっぺんにいる騎士団長がいるところだけがぽっきりと折れる音)

騎士団長「え・・・?」

男「な・・・っ!?」

ズシャアアアアアアアアアア!!!(それが登っている男に向かって落ちてくる音)

騎士団長「あああああああ!?」

男(あっ。やべえ・・・氏――)

???「もう、世話が焼けるわね。男くん」

男(・・・この、声は・・・)

ガシッ(柱にしがみつく男を捕まえる音)

男「女姉さん!?」

ボスン!(落ちてきた団長を受け止めた音)

騎士団長「き、君は・・・女姉・・・!?何故、一体どうして!?」

389: 2015/12/24(木) 19:57:05.67 ID:pokMPvGe0
女姉「あはは、久しぶりね。団長。でもごめんね。説明してる暇はないの。タワー全体が崩れちゃうみたいだから・・・それに私自身も、あと少しで消えちゃうみたいだしね・・・とりあえず安全な場所まで運ぶからあとは妹と、男くんから聞いてね」

ダッ!(その場から男と騎士団長を抱えて飛び降りる女姉)

騎士団長「・・・久方ぶりに会えたのに・・・もう、消えるのか・・・寂しいな」

女姉「そうね、私もよ・・・私が居なくなったあと、妹を可愛がってくれてありがとうね。感謝してるわ。あの子、寂しがりやだから」

騎士団長「なに、大した事じゃないさ・・・でも、また君と一緒に服を見たり、ランチをしたりしたかったな・・・それだけが心残りだよ」

女姉「くすっ・・・そうね・・・それは私も心残りだわ・・・あ、じゃあ一つ提案。男くん。私の代わりに団長さんとそういう事をしてくれる?」

男「え?」

騎士団長「は、はぁ!?なぜそうなるのだ!?」

女姉「いいよね、男くん。団長にとびっきり可愛い服を選んで、この固い顔が蕩けるくらい美味しい料理をご馳走してあげて。勿論その時は、お姫様みたいにエスコートしてあげてね。年上のおねーさんからのお願い、聞いてくれる?」

男「は、はい・・・」

男(女姉さんの色っぽさに惑わされ、つい言われるがままにうなずいてしまった・・・)

女姉「よしよし、素直でいい子♪」

騎士団長「ちょ、ちょっと待て!!私の意見はどうなる!?そ、そ、それではまるで・・・デ、デートではないか・・・!!」

女姉「なぁにー?イヤなのー?妹を可愛がってくれたお礼のつもりで提案してあげたのにー」

騎士団長「い、イヤではない!!いやではないが・・・でも、その・・・だな・・・///」

女姉「ならいいじゃない。あなたもそろそろ、誰かに頼られるだけじゃなく、誰かに頼って誰かに可愛がられる時よ。貴方はそんなに綺麗なんだから、そろそろ女の子としての幸せを味わうべきだわ」

騎士団長「・・・///」

女姉「ふふっ、それにしても男くん・・・さっきの君はカッコ良かったよ。堅物の団長をお姫様扱いなんて、君は女心っていうものが分かってるね。私も生き残ってたら君のハーレムの一員になってたりしたのかな?なんてね」

騎士団長「は、ハーレムだと・・・?」ギロッ(男を睨む)

男「いや、あのー・・・すみません・・・何の事だか・・・さっぱり・・・」

女姉「ふふっ、そうよね。君は朴念仁みたいだし・・・でも、そうやって理屈も計算も打算も抜きで、自分よりも他人を優先して助けに行ける・・・そういう所をきっと、あの子は好きになったんでしょうね・・・そして多分、他の皆も」ボソボソ

男「・・・女姉さん、何か言いましたか?」

女姉「ううん、なーんでも」

女「お姉ちゃーん!!男ーー!!団長ーー!!」

女姉「あっ、妹が見えたわ。女には先に降りて安全な場所を確保してもらってたの。今行くわー!!!」

390: 2015/12/24(木) 19:58:13.09 ID:pokMPvGe0
シュタ(女姉が降り立つ音)

女姉「ふぅ・・・やっと着いたっと・・・」

女「男・・・団長ぉ・・・!!」

がばっ(二人に抱きつく女)

騎士団長「・・・すまなかったな、女。戦いに参加出来なくて」

女「いいんです!団長が無事なら、それで・・・!」

男「俺も結局、女姉さんが居なかったらどうにもならなかった・・・お前に心配かけただけだったな。すまん」

女姉「あら、そんな事ないわよ?男くんの叫び声で私は団長の居場所が分かったしね」

女「そうよ。あんたが帰ってきてくれただけで私は嬉しいんだから、何にも気にしないの・・・」

ぎゅうぅ・・・(さらに強く二人を抱きしめる女)

男「お、おう・・・」

女「お姉ちゃんもありがとうね。二人を助けてくれて」

女姉「妹を助けるのが姉の役目だもの、気にしないの・・・さーて。それじゃあ私の役目は終わりかな・・・というより、もう身体が消えかかっているしね」

スゥー・・・(女姉の身体が足元から消えていく)

女「・・・お姉ちゃん」

女姉「さっきはじっくり見れなかったけど・・・少し背が伸びて・・・綺麗になったわね・・・」

ぎゅぅぅ・・・(女姉が女を抱きしめる)

女「お姉ちゃぁん・・・」

女姉「もう、泣かないの・・・あんたはいくつになっても、泣き虫なんだから・・・あんたはいくつになっても私の可愛い自慢の妹よ・・・それを忘れないで」

女「うん・・・さようなら・・・ううん・・・またね、お姉ちゃん・・・」

女姉「ええ、またね。あの空の向こうで、気をなが~くして待ってるわ」

ぱっ(離れる女姉と女)

騎士団長「・・・さらばだ、君との再会を、きっと私は忘れない・・・というか、忘れようもないな、こんな事は・・・」

女姉「ふふっ、そうね・・・ええ、団長。私もあなたの事忘れないから・・・」

騎士団長「うむ・・・また会う日まで、だ」

男「・・・ククク・・・輪廻の果てで、また会おうぞ女姉よ・・・というか、貴方がいなかったら本当に氏んでました・・・ありがとうございます・・・」

女姉「お礼なんていいわ。そうね・・・また、どこかで会えたら・・・君と一緒に過ごす毎日は、きっと楽しいでしょうね・・・妹が羨ましいわ、ちょっとだけね」

スゥー・・・(首から下までが完全に粒子になって消える音)

女姉「あっ・・・」

男「・・・!」

騎士団長「・・・っ」

女「お姉ちゃん!」

女姉「・・・さようなら。あなた達の未来が素晴らしいものである事を願っているわ」

スゥー・・・(女姉の身体が完全に消えていく)

391: 2015/12/24(木) 19:59:15.76 ID:pokMPvGe0
男「・・・」

騎士団長「・・・消えた、か・・・」

女「・・・っ・・・」

男「・・・女・・・」

ポン(女の肩に手を掛ける男)

女「・・・大丈夫よ。男・・・本当に大丈夫なの。お姉ちゃんは姿形が見えなくてもいつも見守ってるって言った。ちょっと見えなくなっただけだもの・・・お姉ちゃんにいつまでも心配かけたくないから、大丈夫」ニコッ

男「・・・そうか」

騎士団長「・・・うむ。いい心構えだ。女」

女「えへへ。ありがとうございます・・・ところで、あの団長」

騎士団長「む、どうした。改まって」

女「あの・・・私さっき団長達が降りてくる間に考えていたんですけど・・・ひょっとしたら私達の願いは叶わないかも知れないです・・・」

男「・・・」

騎士団長「ん・・・?どういう事だ・・・?そう言えば聖骸布や、私を刺した奴はどうなったのだ?」

女「今、説明します・・・」

392: 2015/12/24(木) 19:59:58.23 ID:pokMPvGe0
女「・・・っていう感じで、私と男と、『冥府落とし』を撃ったんですけど」

騎士団長「ふむ」

女「冥府落としを撃った事で、巨大化した先生の胸に大きな穴を開けたのはいいんですが・・・」

騎士団長「ふむふむ・・・」

女「多分、ちょうどそこに先生は聖骸布を持っていたと思うので・・・」

騎士団長「う、うむ・・・」

女「もしかしたら聖骸布も、『冥府落とし』によって消し飛んじゃったかも知れないです・・・」

騎士団長「・・・そ、そうか・・・」

・・・・

女(ど、どうしよう男・・・騎士団長がっくり来ちゃってるよぉ・・・)ボソボソ

男(まぁ、そりゃあな・・・こんだけ苦労して、何のご褒美もなくちゃあ・・・落胆どころの話じゃないだろ・・・)ボソボソ

女(な、何とか誤魔化せないかしら・・・願いは叶わないけど、これまで送ってきた日々は私達にとってそれ以上の宝物なんじゃないですか、団長!?とか言って)ボソボソ

男(今時中学生が考えたストーリーでも、そんなありきたりなセリフでシメないぞ女よ・・・)ボソボソ

騎士団長「・・・なぁ、男、女、こっちへ来たまえ」

男・女「は、はい!」

スタスタ(騎士団長の元へ歩いて行く男・女)

男・女(何されるんだろう・・・)ドキドキッ

騎士団長「君たち・・・」

男・女「・・・」ドキドキッ

ぎゅう(二人を抱きしめる音)

騎士団長「・・・実はな、私の願いは叶っているんだよ」

男・女「え・・・?」

騎士団長「私の願いはな・・・お姫様扱いされることだったんだ。なにせ昔から何かと集団のリーダー役や、頼りにされる事が多かったからな・・・だから囚われた私を、助けに来てくれた二人を見た瞬間に、私の願いは叶っていたのだ・・・なにせ、まるで憧れていた囚われのお姫様のようだったからな・・・」

393: 2015/12/24(木) 20:00:37.77 ID:pokMPvGe0
女「団長・・・」

男(ああ、だからさっきお姫様だって言ったら照れた顔を・・・)

騎士団長「助けに来てくれてありがとう。嬉しかったよ」

ちゅっ(女の頬にキスをする騎士団長)

女「わ、わぁ!?団長、何を・・・///」

騎士団長「なに、囚われのお姫様は、助けられたらお礼のキスをするものだろう?」ニコッ

女「・・・団長、それ。他の女の子には絶対にやっちゃダメですよ・・・?百合の道に落ちちゃいますからね・・・」

騎士団長「?何の話だ・・・では、男。君にもだ」

男「え、は、はい・・・///(なんか、こうキスするって宣言された後にキスされると照れるな・・・)」

ちゅ・・・(男の口にキスをする騎士団長)

女「あ・・・ああ!?」

男「え・・・あれ、なんで口・・・」

女「ちょ、ちょっと団長・・・!?」

騎士団長「・・・ふふ、その意味は自分でよく考える事だな・・・では・・・後は色々と・・・任せたぞ・・・女、よ・・・」

ドサッ(倒れる騎士団長)

女「え、ええ・・・団長、どうしたんですか・・・!?」


騎士団長「すまない・・・まだ負った傷を完全に治療する為に横になって眠りたい・・・というか、体がそう言っているのだ・・・ちょっと寝かせてもらうぞ・・・」

女「は、はぁ・・・とりあえず・・・ええとせめて、私の上着を枕にしてください団長・・・!」

男「団長殿、では俺の上着も良かったら掛け布団代わりに・・・」

騎士団長「うむ・・・二人共ありがとう・・・では、遠慮無く・・・」

・・・zzZZ(静かに眠り始める騎士団長)

394: 2015/12/24(木) 20:01:19.76 ID:pokMPvGe0
女「あっという間に寝ちゃったわね・・・」

男「まぁ・・・普通の人なら確実に病院行きだろうに、寝てるだけで回復するのは『能力』持ちの特権だろう・・・というか、俺も限界だ・・・」

ふらっ(女の胸元へ倒れる男)

女「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこへ倒れてるのよぉ!?」

男「もう我慢出来ない・・・無理だ・・・」

女「が、我慢出来ないって・・・そんな・・・こ、こんなシチュエーションで・・・やだ・・・まだあたし、心の準備が・・・///」

男「・・・すまん・・・俺も体力が限界みたいだ・・・そもそも、俺今日、団長殿の朝5時からの訓練に付き合う為に・・・朝4時に起きて・・・そんで、この連戦と・・・禍学刀に振り回されて・・・精神的にも体力的にも・・・もう、リアルガチの体力切れだ・・・」

女「あ、そ、そういう事・・・びっくりしたわ・・・うーん、上着は団長に貸しちゃったから枕に出来そうなのないし・・・じゃあ、ほら、私の膝にゴロンしなさい。膝枕してあげる」

ストン・・・ぽすっ(女も地面に座り、男の頭を膝に乗っける)

男「すまん・・・」

女「・・・いいって。あたしがしたくてしてる事だもの。気にしないでいいわ」←男の頭を撫でながら

男(・・・頭、撫でられるの気持ちいいな・・・これなら・・・すぐ・・・寝れそう・・・だ)

男「お前の手、柔らかいな・・・心地いいよ」

女「そ、そうかしら?・・・ところであんた、結構派手に顔に傷が付いてるわね・・・痛くない?」

男「ふっ・・・皆を守る為の傷ならば、どんな深手だろうとかすり傷だよ」

女「・・・はいはい。中二乙・・・いっぱい、こんなに傷だらけになるまで・・・みんなの為に頑張ってくれたんだね・・・ありがとう」ニコッ

男「・・・ッ」ドキッ

男(その女の笑顔は・・・本当に綺麗で・・・その笑顔一つだけで・・・今までの苦労が全部報われたような・・・そんな気がした)

男「か、カカッ・・・まぁなんだ・・・うむ、その御礼は素直に受け取っておこう・・・ふぁあぁ・・・」

395: 2015/12/24(木) 20:02:07.93 ID:pokMPvGe0
女「くすっ、眠かったら寝ていいよ。知ってるでしょ?私ら『能力者』は身体能力が強化されてるから、あんた程度の頭の重さなら、何時間乗せててもしびれないし」

男「ふっ、そうだったな・・・なら、悪いが・・・お言葉に甘えさせてもらおう・・・」

女「うん、おやすみ」

男「うむ・・・」

女「・・・あ、でもさ男・・・ちょっとその前にいいかしら」

男「・・・うむ?」

女「・・・考えてみるとさ、あんた以外の人間の願いって全員叶っているのよね。あたしの願いはもう一度お姉ちゃんに会う事で、団長はさっき聞いた通り。組織女も組織部下女も、気付いたら願いが叶っていたって言ってたし、機関女もメイドも願いを叶えていたっぽいしさ」

男「・・・お前、あの『兵器』との戦闘が終わった後の、お嬢とメイドとの会話を聞いてたのか?」

女「うん、まぁ眠る前に薄らぼんやりとね・・・」

男「・・・そうか。というか、組織部下女の願いってなんだ・・・?」

女「あー・・・(あの子の願いは、多分、あんたの役に立つ事なんだろうけど・・・)まぁそれは本人に聞いてあげれば?あたしはなんとなく察しがつくけど、確定してる訳じゃないし」

男「うむ・・・それもそうか」

女「でさ、そう考えてみると、あんたの願いだけ叶ってないのはちょっと可哀想じゃない?あんただってあんなに頑張ってきたのにさ・・・それにさっきも聞きそびれちゃったし・・・」

女「だから結局、あんたの願いってなんなの?」

男「俺の願いか・・・」

男(よく考えてこなかったな・・・俺の願い、夢、望み・・・それは・・・・)

男「・・・」

女「・・・」

男「・・・」

女「・・・男?」

男「・・・zzZZ」

396: 2015/12/24(木) 20:02:33.07 ID:pokMPvGe0
女「・・・って、寝てるし・・・まぁいいけど・・・」

男「・・・zzZZ」

女(・・・)頬ツンツン

男「ンガッ・・・zzZZ」

女「・・・ふふ・・・寝顔は可愛いわね・・・」

女(でも、振り返ってみれば・・・色んな事があったわね・・・この2年間で)

女(特に男が現れてからは激動の日々だったわ・・・何回命の危機にあったか・・・)

女(そう考えたら・・・本当に男は、よく生き残ってこれたわね・・・)

女「・・・」

女「ねぇ、男・・・」

女「あんたは無能力者だったけど・・・敵を味方に・・・そして味方には力を与える・・・こう気力とか勇気とかモチベーションとか、そういうのね・・・それがあんたの

『能力』だったのかもね・・・」

男「・・・zzzZZZ」

女「・・・それとね、男」

女「あんたは自分の事、嘘つきって言ってたでしょ」

女「だけど、それ私が訂正・・・ううん、一つだけその前に付け加えてあげる」

女「あんたは私にとって――世界一かっこいい嘘つき、だったわ・・・」

ちゅっ(寝てる男の唇に、そっと唇を重ねる女)

397: 2015/12/24(木) 20:03:15.29 ID:pokMPvGe0
???「男さーん!!!男さーん!!!氏んじゃいやですううううううううう!!男さーん!!!」

男(・・・んあ?なんだこの涙声は・・・)

???「男さーん!!起きてーー!!!氏なないでー!!!!男さーん!!!!」

???「どう考えても氏んでねえだろ、落ち着けおめーは」

???「まぁ、心配する気持ちはわからないでもないですが・・・」

???「というか、結果はどうなったんですの?」

男(・・・人の声が・・・沢山聞こえる・・・この声達は・・・」

男「・・・んああ・・・ああ・・・えーっとここは・・・?」

組織部下女「ああ!!男さん起きたー!!良かったー!!!!!」

ぎゅっ(組織部下女が男に抱きつく)

男「うおっ!?」

女「ふぎゃ!?」

ゴロゴロゴロ(組織部下女が抱きつく勢いで女も巻き添えで組織部下女と男の下敷きになる)

男「ああああああ!?なんだなんだ!?」

組織部下女「男さーん!!男さーん!!男さん男さん男さーん!!!」

女「あー!!もー!!おーもーい!!おーもーいったらー!!!

398: 2015/12/24(木) 20:04:14.88 ID:pokMPvGe0
5分後。

組織部下女「うぅ・・・良かった・・・男さんが生きていて本当に良かった・・・うぐ・・・私、心配で心配で・・・あとついでに女さんも騎士団長さんも生きていて本当

に良かったです・・・」

女「ついでなのね、私達・・・」

騎士団長「もう少し本音を抑えたまえ君は・・・」

組織女「つーかお前らよぉ、タワーが崩壊したから様子が気になって来てみりゃあ全員寝てるって・・・おめえらもうちょっとこう気を引き締めるっていうかなんていうか・・・ピクニックじゃねえんだからよぉ」

女「う、うっさいわねぇ!こっちは連戦で疲れてんのよ!しょうがないでしょう!?ていうか私らに掛ける最初の言葉がそれ!?もっとこう・・・労りなさいよ!!」

男(どうやら女は、俺を膝枕しながら自身もうつらうつらしていたらしい)

組織女「まぁあたしゃあ別に、どうせお前らが勝つって分かってたから、別に来なくてもよかったのによぉ、組織部下女が行こう行こううるせえから仕方なく来ただけだし、別に・・・」

組織部下女「・・・何言ってるんですか、頭領が1番心配してた癖に・・・」

組織女「て、てめえ!!ふざけんな!!んな事あるか!!!あたしは別に・・・!!

機関女「大変でしたのよ?タワーの方に向かおうとする組織女さんを抑えつけるのは・・・私のお屋敷から戦闘アンドロイドを50台は呼びましたもの」

組織女「て、て、てめえら・・・!!!」

メイド「私、人が人を思うと、こんなにも理屈に合わない事をするのだと感動致しました」

組織女「こ、こ、この野郎・・・!!!んな事言ったらてめえらだって、アホみたいにあたふたしてたじゃねえか!!お嬢はいつでも駆け付けられるようにと、『兵器』にパワーを補充しようとして、何回もおんなじようなミスしてたし、メイドに至ってはご主人様が心配ですうううう!!って泣きわめき散らしてたじゃねえか!!」

メイド「んなっ・・・!!」

機関女「そ、そんな事はありませんのよっ!?」

399: 2015/12/24(木) 20:05:02.69 ID:pokMPvGe0
騎士団長「ほぅ・・・」

女「へぇー・・・」ニタニタ

メイド「な、なんですかあなた達は・・・!」

機関女「そ、そうですわ!!変な含み笑いをして・・・何か言いたい事があるのならはっきり言ってはどうですの!?」

女「別に、なんにもないですよね?団長」

騎士団長「うむ、その通り・・・ふむふむ・・・あの君たちがねぇ・・・」

メイド・機関女「・・・っ・・・///」

男「あー・・・そのー・・・君たち・・・ところで・・・」

女「なに?」

騎士団長「なんだ、男?」

組織女「んだよ?」

組織部下女「なんですか?」

機関女「なんですの?」

メイド「なんです?ご主人様」

男「そんなにベタベタくっつかれると、そのー・・・身動きが取れないのだが・・・」

男(そう・・・さっきからここにいる全員・・・無闇やたらと俺の近くに居た・・・近くというか・・・ほぼ全員が俺の体のどこかに触れていたのだが・・・)

女「ダメなの?」

騎士団長「イヤなのか?」

組織女「わりぃのか?」

組織部下女「だ、ダメですか?」

機関女「なにか問題でもありますの?」

メイド「ご主人様は目を離すとすぐ危険な事するんですから、近くで見張っておりませんと」

コクコク(メイドの意見にうなずく女、騎士団長、組織女、組織部下女、機関女)

400: 2015/12/24(木) 20:05:43.93 ID:pokMPvGe0
男「なんだその理由・・・あのな、俺は赤ちゃんじゃねーんだぞ・・・離れてくれ・・・単純に暑いから・・・」

メイド「赤ちゃん・・・ご、ご主人様・・・そういうプレイがお好きなのですか・・・分かりました。それでは早速ガラガラと哺乳瓶を購入してまいりますので」

男「買うな・・・購入しなくていいから・・・ともかく離れろ・・・そ、そうだ・・・そ、そうだそれより聞いてくれお嬢!!もしかしたら聖骸布が消し飛んだかも知れんのだが、その場合でも願いは叶うのか?お前が1番詳しいだろうから、お前に聞くのだが」

機関女「せ、聖骸布が消し飛んだって・・・どういう事ですの?」

女「・・・あー、その私達・・・『冥府落とし』で先生の胸に大きな穴を開けちゃったから・・・確か先生そこらへんに聖骸布持ってたし・・・もしかしたら、聖骸布も消し飛んだかも・・・って感じなのよ・・・」

メイド「なっ・・・」

組織女「お前ら・・・マジか?」

組織部下女「勿体無い・・・」

女「わ、私だってそうしたくてそうした訳じゃないわよ!?」

騎士団長「まぁまだ確定した訳じゃないだろう?とりあえず探してみては?」

男「うむ・・・最後の方は巨大化してたし、探そうと思えばすぐ見つかるだろう、探そうではないか」

男(よし、これでとりあえずベタベタくっつかれるのからは解放され・・・)

女「よし、それじゃああっちを探すわよ男」

騎士団長「あっちがきな臭い、行くぞ男」

組織女「おい、てめえ疲れてんだろ?あたしのケロベロスに乗ってのんびり探そうぜ」

組織部下女「男さん、まずは私の獣に乗って風を感じて気分をリフレッシュしてから探しませんか?」

機関女「男さん?私の『兵器』の内装とか知りたくありませんの?あなたの知的好奇心を呼び起こす事間違いなしですわよ?『兵器』に乗って探しませんこと?」

メイド「ご主人様、とりあえず優雅にティータイムと行きませんか?時間制限がある訳でもないですし、ゆっくり休憩してから探しましょう」

男「・・・」

男以外の全員「・・・」ジー(睨み合う)

男(なんなんだよこの空気)

401: 2015/12/24(木) 20:06:38.21 ID:pokMPvGe0
男(・・・その後)

男(結局、いくら喋っていても埒が明かず全員で探す事になった)

男(なんとも効率の悪い探し方だが、まぁ別に急いでいる訳でもないので、みんなに事の顛末やらなんやらをくっちゃべりながら探していると・・・)

男「お・・・アレ・・・先生じゃないか・・・?」

ポツーン(地面に倒れている先生)

女「!確かにあの姿は先生ね・・・でも巨大化から元の身長、元の雰囲気に戻っているわね・・・つまり先生に取り付いていた『能力』は去ったって事でいいのかしら?」

騎士団長「恐らくそうだろう。私が刺された瞬間に感じた禍々しいオーラを感じないし」

男「・・・というか、先生、生きてるのか・・・?確認するの怖えな・・・」

組織部下女「!私、確認してきます!」

メイド「ご主人様、私が確認します」

組織部下女「メイドさんは大丈夫ですよ?私が確認します。男さんの役に立つのは私ですから」

メイド「いえ、ご主人様のご要望に答えるのがメイドの役目ですから。これは譲れません」

組織部下女「・・・」

メイド「・・・」

・・・ジー・・・(睨み合う二人)

男「あー・・・お前ら、そんな事で争うな。面倒くさい・・・」

組織女「あー、もういい。あたしが確認する・・・お、普通に心臓動いてる。息もしてる。気を失ってる・・・ていうか、寝てるだけだな。放っときゃその内目を覚ます感じだぞ」

男「・・・ふぅ、ならよかった」

機関女「あっ、近くに聖骸布もありますわよ?」

女「ほんとだ・・・じゃあ男、拾いなよ。あんたが1番最初に願い、叶えてもらえば?」

男「お、俺か?」

騎士団長「うむ。私もそれで異論はないよ。君はある意味、1番の功労者だからな」

男「そ、そうか?では・・・」

ひょい(聖骸布を拾う)

男「えーっと・・・じゃあ俺の願いは・・・って、ああ!?」

さらさらさらさら・・・(聖骸布がボロボロになって、崩れていく音)

402: 2015/12/24(木) 20:07:26.05 ID:pokMPvGe0
女「あっ・・・」

騎士団長「どうやら、『冥府落とし』の威力に耐え切れなかったようだな・・・」

機関女「お、男さん!!早く!!今ならまだ間に合うかもしれませんわよ!?」

男「え、え!?えーっと!!そのー・・・!!」

メイド「ご主人様・・・何にも考えていなかったのですね・・・」

組織部下女「普段はあんなに妄想垂れ流しなのに・・・」

組織女「おい、金持ちでもモテモテでも何でもいいからともかく早く言えよ男!本当に消えちまうぞ!!」

男「ちょ、ちょっと待ってくれよ!!急に言われても・・・!!ああでもないしこうでもないし・・・って、あ・・・ああああ!?」

サーッ・・・(聖骸布の全てが崩れ落ち、砂になった音)

女「あーあ・・・」

騎士団長「・・・完全に消えてしまったな」

機関女「も、も、勿体無いですの・・・」

組織女「バカだなー・・・あいつ・・・」

メイド「まぁ、ある意味ご主人様らしいと言えばご主人様らしいですが・・・」

男「・・・」←ショックの余りぷるぷる震えている

組織部下女「お、男さん!えーっとその・・・さっきあたふたしてた男さん!とっても可愛らしかったです!」

組織女「何のフォローだよそれは・・・」

男「・・・」

女「ショックの余り言葉も出ないみたいね・・・」

騎士団長「お、男・・・気にするな・・・!!いいか、例え願いが叶わなくても、だ・・・私達のこれまではの全ては!願いが叶う以上の価値があるものだったのではないか!?」

女(今更中学生が考えた物語でもシメに使わない言葉を言ったー!?)

403: 2015/12/24(木) 20:09:01.37 ID:pokMPvGe0
男「・・・ふ、フフフ・・・ククク・・・!」

組織女「あ、復活した」

男「く、ククク・・・団長殿の言うとおり・・・そう。俺はかけがえのない思い出を手に入れた・・・!!それに比べれば、願いなど叶っても叶わなくても大して違わん!

!そう、夢や高みは誰の力も借りず一人で上り詰めるからこそ意味がある!!聖骸布などに頼るなど邪道!!そんなものに頼っては人間が腐る・・・故に、さっきのは全て計算済みの行動だったのだ・・・フハハハハハハハ!!!」

メイド「ご主人様・・・無理をして・・・」

組織部下女「まぁ、元気が出たようで何よりです・・・」

女「くすっ、そうね・・・きゃっ」

びゅー!!(一陣の風が吹く音)

キラキラ・・・キラキラキラ・・・

騎士団長「あっ・・・崩れて砂になった聖骸布が・・・吹かれて・・・煌めいている・・・!」

キラキラキラ・・・キラキラキラ・・・

組織女「綺麗、だな・・・」

組織部下女「ですね、頭領・・・まるでイルミネーションみたい・・・」

機関女「・・・美しいですわね」

メイド「ええ、お嬢様」

騎士団長「ふっ、まるで聖骸布が『戦争』が終わった事を、祝福しているみたいだな」

女「ふふっ、そうですね団長・・・本当に綺麗・・・ね、男?」

男「ああ・・・戦闘は夜だったというのに、いつの間にか夜が明けているしな・・・朝焼けと相まって・・・まるでファンタジーの世界にいるようだ・・・」

キラキラキラ・・・キラキラキラ・・・

男(本当に、綺麗だ・・・ずっと眺めていられるだろう・・・)

男(多分、俺はこの景色をずっとずっと・・・何十年経っても覚えている・・・そんな気がした)

404: 2015/12/24(木) 20:09:39.80 ID:pokMPvGe0
10分後

女「あ、消えていく」

キラキラ・・・キラ・・・キラ・・・キ・・・ラ・・・・・・

騎士団長「・・・完全に、消えたな」

組織女「だな」

組織部下女「でも、本当に綺麗でしたね」

機関女「ですわね・・・世界のどんな美景、絶景にも負けない素敵な眺めでした」

メイド「はい、お嬢様・・・」

男「うむ。長き戦いに幕を下ろすのに相応しい光景であったな・・・」

男(これで『戦争』も終わりか・・・何だか、あの騒がしくて、命がけの日々も終わってみると寂しいもんだな・・・では、さて・・・この後は・・・)

組織部下女「あの、男さん」

男「うん?なんだ組織部下女よ」

組織部下女「なんだじゃないですよぅ・・・もう、忘れたんですか?騎士団長を救いに行く前の事・・・///」

男「うむ・・・?あっ」

『私、男さんの事、大好きです。一目惚れでした。男さんが帰ってきたら、またちゃんと告白しますから・・・』

組織部下女「ふふっ、思い出しました?」

男「お、おう・・・」

組織部下女「それじゃあ、皆の前だと恥ずかしいので、あっちへ・・・」

組織女「・・・おい、おめー。男をどこへ連れて行く気だ?」

組織部下女「と、頭領・・・」

組織女「おい、男・・・元はと言えば、お前とあたしのデートの途中でこんな事になってんだ。いわばデートの途中だ。だから再開するぞ、デート」

男「で、デートだったのか?え、というかマジでか・・・?」

組織女「んだよ、イヤなのか?・・・大体、さっきのお礼もまだだしよ・・・///」

男「さ、さっきのお礼ってお前・・・」

405: 2015/12/24(木) 20:10:43.23 ID:pokMPvGe0
メイド「ちょっとお待ち下さい、組織女さん。ご主人様は大変お疲れなのです。まずは私達のお屋敷でマッサージをして疲れを取って差し上げた方がいいかと・・・」

男「おい、メイドよ・・・」

組織女「おい、メイド。てめえ調子に乗ってんじゃねえぞ?あたしがデートしてたんだ。てめえは口出すんじゃねえ」

メイド「いいえ、ご主人様の事だけは譲れません。安心してくださいご主人様。マッサージは私が担当して、ご主人様の体の隅々までケアして差し上げますから・・・」←妖艶に微笑むメイド

機関女「ふふっ、では男さん。ついでに我がお屋敷自慢の広大なお風呂もオススメ致しますわ・・・も、もし良かったら私がお背中を流しても良くってよ?男さんは私の大事な友だちですもの・・・その、裸の付き合いという奴も、男さんがどうしてもしたいのなら、わ、私は構いませんが・・・」

男「おい、お嬢、お前な、そういう誤解を招くような表現は・・・」

騎士団長「・・・ほう・・・随分モテモテだな、男よ・・・」

ゴゴゴゴゴゴッ・・・(鬼のような雰囲気を纏う騎士団長)

男「だ、団長殿・・・!?

組織女(やべえ、一瞬このあたしがマジでビビっちまったぜ・・・)

男「えっと・・・怒ってらっしゃる・・・か?団長殿・・・」

騎士団長「いや・・・別に私は何も怒っていないぞ・・・?何を勘違いしているのだ・・・?変な勘ぐりはやめたまえ」

男「いや、でもどう見ても怒って・・・」

騎士団長「怒っていないと言って・・・!!・・・いや、正直に言おう・・・私は君に怒っているぞ・・・色んな女性に迫られている君にな」

男「は、はぁ」

騎士団長「だが、それは私の君を見る目が間違っていなかったという事だろう?英雄色を好むというしな・・・流石は私の見込んだ男だ・・・だ、だからだ・・・どうせなら初めての口付けだけでなく、その先も・・・」

男「あの、団長殿・・・何を言って・・・」

女「・・・ちょっと男!あんた、この後あたしと遊ぶって約束してたでしょ!?」

男(やばい・・・女まで来てしまった・・・)

406: 2015/12/24(木) 20:11:15.03 ID:pokMPvGe0
男「う、うむ・・・そう言えばそうだったな・・・まぁ約束の順番的に言えば、優先度は女が先になる・・・のかな・・・?」

女「かな?じゃなくてあたしでしょう!?二人っきりで遊ぶって、あんた約束したじゃない!!ずっと前から!!」

男「・・・そ、そうだったな・・・では、皆。悪いがまた後ほど・・・」

女「ふふん、そうよ男。それでいいの!ねぇ男、あたしショッピングしたい・・・新しい可愛い下着が欲しいの、選んでくれる・・・?///」

男「お、おう・・・」

騎士団長「待ちたまえ女。抜け駆けはズルいぞ!」

組織女「そうだ女!それにまだあたしの話は終わってねえぞ!」

組織部下女「そうですよ男さん!私の話も聞いてください!」

メイド「お嬢様、こうなったら実力行使です。『兵器』を起動させましょう!」

機関女「そうですわね、メイド・・・恋となんとかはあらゆる手段が正当化されるという名言もありますしね。ふふっ」

ワイワイワチャワチャ(男を中心に場がもみくちゃになる)

男「・・・ええーい!!!離れろ貴様ら!!この俺を誰だと思っているのだ!?やかましい!!暑っ苦しい!!離れろ!!いいから離れ・・・」


――――フッ。


男「・・・え?」

騎士団長「な、なんだ?さっきまで朝日が出てたはずなのに・・・一気に暗く・・・」


407: 2015/12/24(木) 20:11:41.85 ID:pokMPvGe0
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・!!!!(地鳴りの音)


組織部下女「じ、地震・・・!?それもかなり大きい・・・!!」


ピシャッ!!ゴロゴロゴロ!!!ピシャッゴロゴロゴロピシャッ!!!!(雷の音)


メイド「なっ、一気にとんでもない雷雲が立ち込めて・・・凄まじい規模の雷が・・・!!」


ビュォオオオオオオオオオ!!!(すごい勢いの風)


組織女「お、おい・・・!?バカでけえ竜巻が・・・あっちこっちに・・・一体どうなってんだ!?」

女「もー!!今度は何よ!?」

男「なんだこりゃ・・・!?天変地異・・・!?」

機関女「・・・ひょっとして・・・これは・・・」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!


騎士団長「なっ・・・なんだこの寒気がするほどの・・・凄まじい怒気・・・殺気は・・・!?一体どこから!?」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!


機関女「・・・っ!?皆さん、空をご覧になって!!!」

女「空って・・・空には別に何にも――」

男・女・騎士団長・組織女・組織部下女・メイド「――――っ!?」


???「貴様ら・・・よくも我の褒美を無下にしてくれたな・・・」


ズズーン・・・!!(空に杖を持った仙人のようなとてつもなく巨大な人影)

408: 2015/12/24(木) 20:12:21.63 ID:pokMPvGe0
組織女「な・・・んだありゃあ・・・!?バカでけえ・・・人・・・!?」

組織部下女「きょ、巨人・・・?」

メイド「・・・お嬢様、アレは・・・一体・・・?」

機関女「恐らく・・・ですが・・・」


機関女「神・・・ですわ・・・」


女「か・・・」

騎士団長「神!?」

男「・・・マジ、か?」


神「――いかにも。我は貴様ら人類がそう呼ぶ者だ」


男(・・・普通ならば、自分で自分の事を神と呼ぶなど、鼻で笑って終わりだが・・・なぜだか聞いた瞬間に、ああ、こいつは神だと納得してしまった)

男(それだけの神々しさ、威厳を持っていたのだ。今、空の上に浮かんでいる者は)


機関女「・・・考えた事はありませんか?常人ならばあり得ない力を得て、同じく超常の力を持った同士を戦わせた後、さらに願いがなんでも叶うなどという、まるでバトル漫画のような荒唐無稽なこの『戦争』、それを誰が開始し、誰が管理し、誰が判定しているかを・・・」

組織女「・・・そりゃあ・・・考えた事がなかった訳じゃねえが・・・」

機関女「私の一族が、永くこの戦争と関わっている事は知っていますね?私の一族はそういう宿命の故、膨大な資料と思考の末、『戦争』の管理者は人ならざる者であるという結論に達しておりました・・・故にそこから連想して、空にいる者の答えを想像したのですが・・・まさか、本当に神とは・・・」

神「ふん。私の正体など、どうでもいいだろう。それより貴様ら、分かっているのか・・・?己の罪の重さが」

騎士団長「罪・・・?私達が何をしたというのだ!!」

神「人間ごときが我の趣味の結果に水を刺した事。それ自体が罪だ。そんな事も分からんのか」

女「趣味・・・この『戦争』があんたの趣味だって言うの!?」

神「ああそうだ。同種族なのに願いが叶うという謳い文句だけで、頃しあえる人間どもを見ているのが我の暇つぶしだったというのに・・・協力しあったあげく、我の中の貴様ら人間に対する、本当に僅かな慈悲すらも、貴様らは踏みにじったのだ!」

組織女「・・・慈悲?」

組織部下女「さっきの聖骸布がバラバラになってしまった事ですかね・・・?」

神「そうだ・・・もう許さぬ。貴様らは我の怒りを買ったのだ!!」

409: 2015/12/24(木) 20:13:12.19 ID:pokMPvGe0
ドドドドドドドドドドドドドガアアアアアアアアア!!!

組織女「冗談だろ、おい。凄むだけでこの威圧感かよ・・・ちっ、足が無意識に震えやがる・・・」

メイド「これは・・・規格外にもほどが・・・」

神「ああ、もういい。貴様ら人間を見ているのも飽きてきた所だ・・・この際だ。この星ごと滅ぼしてくれる」

騎士団長「んな!?」

神「行けい、我が下僕たちよ!!世界を破壊し尽くすのだ!!」

ズアアアアアアアアアアアアアア!!!(神の杖から巨大な獣が無数に生まれ、バラバラにすごい勢いで散っていく)

組織部下女「な、なんてことを・・・『能力者』の私達ですら、キメラ一匹でもあんなに苦労したのに・・・そんなのがたくさん世界中に散ったら・・・本当に世界が滅亡してしまいますよ!?」

組織女「野郎・・・!!」

女「・・・あんた、神様なんでしょう!?なんでこんなことを・・・正気なの!?」

神「言ったであろう。飽きた、と。そして我は神。故に我のやることなすことは全て正しい。我が意にそぐわぬ世界などいらぬと我が思った。故に滅ぼす。それだけの事だ」

女「んな・・・ふざけないで!!そんないい加減な理由で・・・!!」

神「――黙れ」

ズアアアアアアアアアアアアアア(男達の目の前に、底が見えないほどの大きく深い穴が開く)

全員「っ!?」

神「我に逆らうな。我は神。我は正しい。我こそが正義、我こそが全だ。我を楽しませなくなった人間は不要・・・貴様らはもういらん。まぁもっとも我は慈悲深いから、貴様らを頃すのは最後にしてやる。光栄に思え、最後の瞬間まで、その生を噛み締める時間くらいは与えてやろう」

女「そんな・・・」

組織部下女「こんなのって・・・」

組織女「・・・っ(畜生、さっきから冷や汗が止まらねえ・・・クソっ、このあたしがブルっちまってる・・・情けねえ・・・)」

騎士団長「クっ・・・!(駄目だ・・・彼奴に全く勝てるイメージが・・・何一つ沸かない・・・)」

メイド「ここで、終わりなのですか・・・」

機関女「・・・これでは一体・・・私達は何の為に・・・」

男「・・・」

410: 2015/12/24(木) 20:15:01.18 ID:pokMPvGe0
男(・・・奴は、さっき言ってた。自らの趣味の結果に水を刺したと。自分の思惑通りのものが見られなかったと)

男(だが、それならばおかしいだろう。神・・・いわゆる全知全能の神ならば、そんな結果にはならないはずだろう。全て自分の思い通り、それこそが神のはずだ)

男(ならば、奴はひょっとして・・・)

男(・・・)

男「なぁ、お嬢」ボソボソ

機関女「!?な、なんですの、男さん?」ボソボソ

男「奴がさっき杖から出していた獣達・・・あれってどうやったら消えると思う?」ボソボソ

機関女「え・・・?さ、さぁ?それは多分・・・あの空に浮かんでいる自称神を、倒せば自然と消えるのでは?確証はなにもないですが・・・恐らく・・・」ボソボソ

男「うむ、お嬢もそう思うか・・・ありがとう、俺の見解と一緒だ」ボソボソ

機関女「は、はぁ・・・」ボソボソ

男「・・・」

男(・・・よかった。問題は至ってシンプルだ)

男(ここに来て登場した真のラスボス・・・神だが仏だが知ったこっちゃないが・・・ともかくあいつを倒せば話は収まる訳だ)

男(ならば・・・)

男「・・・俺は・・・」

男(どうせここに居ても、いずれ氏ぬのならば・・・俺は・・・俺は・・・!!)

男「・・・・・・よし・・・・・・!」

411: 2015/12/24(木) 20:15:55.18 ID:pokMPvGe0
男(こうなったら・・・やってやる・・・!氏ぬまで・・・この心臓の鼓動が停止するまで・・・!御刀虎として生き続けて・・・やる!!)

男「・・・ふふっ」

男(へっ・・・笑いがこみあげてきやがった・・・考えてみれば、あまりに無策、あまりにも無謀・・・だが、それしかないのだからしょうがない・・・それに考えてみれば、この状況は、俺が望んだ通りのものだ・・・!)

男「・・・カカッ!」

男(いいね・・・いいねぇ、いいねぇ!!そうだ!!そうとも!!!俺は今、『神』に挑もうとしているのだ!!!仲間と共に!!!世界の命運を掛けて!!)

男「ハハハ・・・ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!」

女「お、男・・・?」

組織女「てめえ、とうとう気が狂ったのか・・・?」

男(幼い頃は、画面や本の向こうにしかなかった・・・現実を知ってからは、そんな状況自体ありはしないのだと知ったものが今、ここにある・・・!! なんという僥倖ッ!!なんという幸運ッ!!なんというシチュエーションッ!!男として生まれついて、俺として生まれついて・・・これ以上の幸せは、ないッ!!)

男(そう、この状況こそが俺の願い!俺の望み!俺の夢!俺は今、俺として、最高に生きている・・・ッ!!)

男「何を震えている、我が同士達よ!!!!我らのこの戦いは、確実に歴史に残るであろう!!俺たちは今、伝説となる真っ最中である!!!各々、勇ましく戦え!!歴史に我らの名を刻もう!!言っておくが、英雄としてではない!!勇者としてでもないぞ!!俺たちはそんな上等なものではない!なにせ俺たちは、どう考えても勝てる訳がない、『神』に立ち向かった大馬鹿野郎共となるのだからな!カカッ!どうだお前ら!!笑えるだろう!?神に勝利するという、人類史上最大の不可能に挑んだ地球一の大馬鹿野郎共として、世界に、宇宙に俺たちの名を轟かせてやろうではないか!!」

・・・ポカーン・・・(男を見て全員口をポカーンと開けている)

男「おいわかってんのかよお前ら!?世界を救うチャンスなんざ、例え人生が100万回あろうがこの機を逃したら絶対来ねえ!!どうすんだよお前ら!どうすんだよおい!そ

れでも震えてんのか!?勝てる訳がねえってビビってんのか!?ああ!?」

男「子供の時に妄想した、仲間と共に、世界を救う夢物語!!それが今!目の前にあるぞ!!」

412: 2015/12/24(木) 20:17:06.87 ID:pokMPvGe0
女「っぷ・・・あっはははははは!!!」

女「あはははははは・・・あーおっかしい・・・!!あんた、マジでただ者じゃないわね・・・この絶望的な状況で、よくもまぁそんな事を・・・!ぷっ・・・ぷぷぷっ・・・!いいわ、分かったわ男。あたしも戦ってあげる。一緒に世界を救いましょ、ふふっ」

男「ククク・・・流石は女だ・・・俺と1番最初に邂逅した『戦争』の関係者なだけの事はある・・・俺のノリがよーく分かっているではないか・・・ククク・・・」

騎士団長「ふっ・・・男よ。私も戦うとしよう・・・君と居るといつも新鮮な気持ちになったり、気分が高揚したりで・・・全く、とことん飽きさせないな、君は・・・」

男「団長殿・・・!」

組織女「・・・はっ。ったく、バカしかいねえなぁ・・・全く・・・おい、男」

男「うん?」

組織女「しょうがねえ、あたしも戦ってやるよ。考えてみりゃあよ、神様相手に喧嘩するなんざ、武勇伝としては最高のネタになるしよぉ・・・はっ、テンション上がってきたぜ、おい・・・!!」

組織部下女「あ、男さん・・・私も戦います!!男さんの役に立ちたいので・・・それに、神様が相手なのに、臆する事なく喧嘩を売るなんて・・・やっぱり男さんは、宇宙一カッコいいです・・・惚れ直しました・・・一生付いていきます、男さん・・・///」

男「組織女・・・組織部下女・・・ははっ、いいぞ!!いいぞお前ら!!」

メイド「・・・お嬢様、私達はどう致しましょう?」

機関女「・・・ふふっ、決まっているでしょうメイド?大事な友達が共に戦おうと言ってくれているのですよ・・・?答えは勿論、一つですわ」

メイド「ふふ、ですね、お嬢様・・・どこまでもお供いたします、お嬢様・・・そして、ご主人様」

男「お嬢、メイド・・・ふ、ふふ・・・フハハハハハハ!!」

413: 2015/12/24(木) 20:18:04.62 ID:pokMPvGe0
神「・・・バカな!!人の身で我に逆らおうと言うのか!!」

男「カーッカッカ!!!残念だったなぁ神よ!!この俺と出会ったのが貴様の運の尽きだ!!この俺の出現によって貴様の計画は既に破綻した!!俺と出会ってしまった己の不運を呪うがいい!!ククク・・・!!」

神「なにぃ・・・!?」

組織女「おーおー・・・今めっちゃ気持ちよくなってんなーあいつ・・・」

メイド「すごい生き生きしてますもんね・・・子供みたいな顔をして・・・全く、男の人というのはいつまで経っても・・・ふふっ」

男「ククク・・・なぁお前ら。さっき奴は言っていたな。自らの趣味の結果に水を刺したと。自分の思惑通りのものが見られなかったと。それこそが奴が全知全能の神ではない証拠だ・・・そしてそう言った綻びがあるのならば、必ず勝機は見えてくるはずだ・・・ククク・・・」

組織部下女「!な、なるほど流石男さん・・・うん、ちょっと勇気が湧いてきました・・・!!」

先生「・・・う、ううん・・・・・・ええと、ここは・・・・・・は?え、な、なにこれ・・・どうなってるの!?え?え?お、男くん・・・?女さん・・・え、ええ・・・!?」

女「先生・・・このタイミングで起きましたか・・・」

先生「お、女さん・・・この状況は・・・一体・・・!?」

男「ククク・・・先生はそこで見といてくれ。あんたの生徒が世界を救う所をな」

先生「はっ・・・?世界を救う・・・?男くん、あなた一体何を言って・・・」

神「――貴様ら・・・!!調子に乗るな!!所詮は我の掌の上で蠢く下等動物が!!神の力を思い知るが良い・・・!!」

グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・!!!(神の凄まじい怒気、殺気が男達を襲う)

男「カカッ・・・これぐらいの脅しで今更引く我らではない!!そうだろ我が同士達よ!!」

女「ええ、全然余裕ね、こんなの!!」

騎士団長「ふっ、私は武者震いがしてきたよ」

組織部下女「右に同じく、です!」

メイド「お嬢様、『兵器』の準備はよろしいですか?」

機関女「いつでもOK、ですわ!!」

組織女「おい、男。てめえにまたこいつ、貸してやるよ。こいつもなんか、お前の事が気に入ったっぽくてよ」

ボンッ!(獣が一匹現れる音)

虎形の獣「グルルルル・・・!」

男「おお、一週間振りだな・・・元気してたか?また、頼りにさせてもらうぜ」

虎形の獣「オオンッ!!」

414: 2015/12/24(木) 20:19:18.72 ID:pokMPvGe0
男「ククク・・・準備は万端、と言った所か・・・では」

先生「・・・ちょっと待って男くん・・・」

男「・・・先生?」

先生「なんだかよく分からないけど・・・生徒ががんばろうとしてるのに、先生が頑張らない訳にはいかないでしょ!!私も戦うわ!!」

男「先生・・・でも・・・」

先生「いいのよ!なんだか、薄らぼんやりとだけど戦いの記憶も覚えているし・・・それを頼りに戦ってみるわ。あと、君が言ってくれた言葉も覚えているわ・・・まぁ、冗談半分で受け取っておくけど・・・でも、先生、本当に嬉しかったよ。ありがとね」(笑顔でウィンク)

男「は、はい(ドキッ)でもいいんですか、先生?こんな危険な事に巻き込んで・・・」

先生「いいのよ!だって、世界を救うなんて・・・婚活パーティーの何倍も楽しそうじゃない!!」

騎士団長「ふっ・・・婚活パーティーと、これからの戦いを比べるか・・・まぁなんというか、色んな意味で頼りになりそうな仲間が増えたな」

女「またあんたは、敵だった人を仲間にして・・・ふふっ、なんでかしらね・・・こんな状況なのに、なんかワクワクしてきたわ」

男「ククク・・・女よ、奇遇だな。俺もだ・・・では、皆・・・準備はいいか?」

コクッコクッ(笑顔で頷く皆)

男「よし、ならば行こう!――みんなで!世界を!救おうぜ!!!」

女「ええ!」

騎士団長「ああ!!」

組織女「おうっ!!」

組織部下女「はいっ!!」

機関女「行きますわよみなさん!!」

メイド「はい、お嬢様、ご主人様!!」

先生「うん、行こう!!」



男(ふっ・・・人生というのは本当に不思議なものだ・・・まさかこんな事になるなんて思いもしなかった・・・事実は小説よりも奇なり、というのはまさにこの事か・・・はっ、笑えるぜ、おい)

男(そしてもう引き返せないな、ここまで来たら・・・なにせ神様に喧嘩を売っちまったんだ・・・本当の意味で・・・一般人じゃなくなってしまうだろう、こうなったら、な・・・)

男(ならばもう男という名は、捨てる・・・!!さらばだ。平凡な一般人だった俺よ・・・男よ・・・!)

男(我が名は・・・御刀虎・・・ククク、我こそは暗黒の邪王、滅亡の神翼、灼眼の堕天使、紅き虎帝・・・!!)



御刀虎「さぁ――伝説の始まりだ・・・ククク・・・カカッ・・・フフフ・・・アハハ・・・!!! ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」




415: 2015/12/24(木) 20:20:33.44 ID:pokMPvGe0






最終章『世界一かっこいい嘘つき~そして伝説へ~』







完ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!






417: 2015/12/24(木) 20:27:57.24 ID:pokMPvGe0
これにてこの物語は終わりです。
くぅ~疲れましたw

本当は最初のシーンしか考えておらず、故に色々とチグハグな印象は否めないと思います・・・
色々と氏に設定(領域とか・・・)矛盾とか、キャラ設定がブレブレだったりとか、本当に穴だらけ、突っ込みどころ満載の作品だと思いますが、それでも読んでいただけて、さらには楽しんでいただけたら幸いです・・・

毎回毎回レスをくれた方、レスはしないけど読んでいたよ、という方。
改めてお礼を言わせていただきます。正直、自分一人で書いていたらとっくの昔に投げ出していたと思います。書き続けられたのは皆さんのお陰です(本当に)
もしよろしかったら、どのキャラが好きだったか、もっとこういう展開だったら良かった、というのも一言だけでもいただけたらと思っております・・・

それでは、最後にもう一度。
ありがとうございました。また何か、作品を思いついたら投稿しようと思いますので、その際はまたぜひ、よろしくお願い致します。
メリークリスマスイブ!!

418: 2015/12/24(木) 21:03:38.40 ID:mt+/efDJ0
後日談は?

424: 2015/12/25(金) 12:52:14.00 ID:W/RBnhGh0
乙!


引用元: 男「ククク・・・」女(こいつ・・・ただ者じゃないみたいね・・・)