1: 2016/03/30(水) 02:37:11.38 ID:2p6wHKW80
書き溜めあります。


2: 2016/03/30(水) 02:39:06.26 ID:2p6wHKW8o
-厳戸台分寮 ロビー-

男「お届けものです。天田さん、いらっしゃいますか?」

天田「はーい!誰からだろう?差出人は・・・!!ちょっと、あの、すいませんこの荷物は・・・あれ、もういない」

3: 2016/03/30(水) 02:40:13.09 ID:2p6wHKW8o

-ベルベットルーム-

エリザベス「お力になれましたでしょうか」

キタロー「ああ、本当に助かった」

エリザベス「確実に皆様のお手元に届くように、私手ずからそれぞれを配達してもよかったのですが」

キタロー「そこまでエリザベスに頼むのは悪い。
こうやって僕を、ベルベットルームに来られるようにしてくれただけでもありがたいんだ。
それに、天田は頼みを無視することなんてない。ちゃんと、やってくれるさ」

エリザベス「今もなお、お仲間を信頼していらっしゃる。絆の力、でございますか?」

キタロー「絆、か。そうかもしれない。エリザベスはいい言葉を使うね」

エリザベス「ありがとうございます」

4: 2016/03/30(水) 02:41:52.64 ID:2p6wHKW8o
-巌戸台分寮 4F-

わたしは、対シャドウ特別制圧兵装七式アイギスと申します。
みなさんからは、簡単に「アイギス」とか、「アイちゃん」と呼ばれています。
今日は、天田さんに呼ばれて、久々に厳戸台の学生寮に来ています。
シャドウワーカーとして一緒に活動している、というか私の上司にあたる美鶴さんと共に。
天田さんが人払いをしたのか、寮には天田さんしかいないそうです。

美鶴「この作戦室に入るのも久しぶりだな」

そう。この作戦室に入るのは、大規模シャドウ制圧作戦に明け暮れたあの日以来です。

5: 2016/03/30(水) 02:45:47.82 ID:2p6wHKW8o
ガチャ
ゆかり「先輩おそーい!」

風花「桐条先輩、アイギス、こんばんわ」

順平「遅いっすよー!」

天田「すいません、美鶴さん、アイギスさんも急に」

美鶴「かまわないさ。しかし、待たせてしまったか?約束の時間には間に合っているはずだが」

ゆかり「もー、変わってないなあ先輩は。早く来て、一緒に女子トークとかするんだっていいじゃないですかー」

順平「みんなそろわないと、話を進めないって天田少年が強情はるんで、もう待ちきれなかったんすよ!」

風花「順平くん、1時間も前から来てたって言ってたもんね」

この作戦室で和気あいあいと話をする雰囲気、あの頃に戻ったようで懐かしいです。

6: 2016/03/30(水) 02:48:18.10 ID:2p6wHKW8o
美鶴「それは済まなかったな。しかし全員、か。明彦は日本にいないんじゃないのか?」

天田「いや、メールをしたら、すぐ帰国するから、って…聞いてないんですか?」

美鶴「ああ、連絡なんて滅多に寄越さないからな。全く明彦のやつめ…」


美鶴さんは、真田さんに怒り口調ですが、口調とは裏腹に、口角が上がり微笑んでいるようです。いつもながら不思議だなー。

7: 2016/03/30(水) 02:51:08.76 ID:2p6wHKW8o
ガチャ
コロマル「ワンワン!」

明彦「すまない、遅れてしまったか」

天田「真田先輩!」

ゆかり「うわー、真田先輩、なんというか…」

風花「ワイルド、だね…上半身裸にマントって」

順平「どこの世界で戦ってきたんだあの人は」

コロマルさんは、真田さんを玄関で待っていたそうです。
そういえばコロマルさん、今やこの寮に最も長く住んでいる住人になるんですね。

8: 2016/03/30(水) 02:53:48.71 ID:2p6wHKW8o
みんなが揃いましたが…天田さんに緊張の反応がみられます。


天田「えーっと、皆さん、本日は急にお呼びして申し訳ありません」

順平「んだよー天田少年!どうした急に改まってー!宿題か?わからないところでもあるのか?」

ゆかり「だったら順平は呼ばれないでしょ?まあ私もビミョーだけどさ」

天田「えっと、まあ勉強だったらそうかもですが」

ゆかり「え、やっぱ私もそうなんだ、ちょっとショックなんだけど」

風花「まあまあゆかりちゃん」

明彦「で、用件はなんだ?天田が突然にみんなを呼び出すなんてことは尋常じゃないからな。タイミング良く、帰りの飛行機がとれてよかったが」

天田「ちょっと、ある手紙をいただいたんで、読みます」

美鶴「手紙?」

9: 2016/03/30(水) 02:55:41.06 ID:2p6wHKW8o
「天田乾様

突然にみんなと別れてしまったことをとても残念に戻っている。

君には面倒をかけてしまうが、特別課外活動部の先輩の最後の我が儘と思って、協力して欲しい。

きっと、厳戸台分寮に住み続けているのは、君だけだろうから、君に頼むのが一番適切だと思う。

この封筒の中に、みんなに宛てた手紙が入っている。

すまないが、この手紙をみんなに渡してほしい。

キタロー」

12: 2016/03/30(水) 02:59:30.60 ID:2p6wHKW8o
「「「「「!!!!!」」」」」


美鶴「な、なんだと!?」
ゆかり「ちょっと、天田くんホント?」
風花「リーダー・・・」
明彦「信じられん」
順平「アイツ、まじかよ!?」

信じられません。そして次の瞬間、咄嗟に声と手が出てしまいました。
「天田さん、その便箋、貸していただけますか?」

13: 2016/03/30(水) 03:02:50.43 ID:2p6wHKW8o
美鶴「アイギス?」

微かに、便箋に染みる皮脂。確かに、彼の指紋と一致します。信じられない。
一体、これは!?

天田「と、とりあえず、皆さんへの手紙、お配りします!」


皆さん、天田さんからそれぞれ自分宛の封筒を受け取ると、早速開いています。

私も早速・・・。

14: 2016/03/30(水) 03:03:49.18 ID:2p6wHKW8o
「アイギスへ

君がずっと僕のそばにいてくれて、心強かったし嬉しかった。

ありがとう。


君と離れることになってとても残念だ。

ただ、僕の命は目に見えるものではないけど、まだ存在しているんだ。

アイギスだけに伝える。僕は、ずっと君を見守っているよ」

15: 2016/03/30(水) 03:06:22.61 ID:2p6wHKW8o
気がつくと、涙が出ていました。
涙を流しているのは私だけでなく、ここにいる全員でしたが。

ここにいるみんなは、特別課外活動部の大切な仲間です。
そのリーダーであるキタローさんは-仲間、以上の感情を持った方もいましたが-
私たちの太陽であり星であり・・・、まさにワイルドカードでした。


「最後の戦い」を終えたしばらく後、学校の屋上で、キタローさんは私の膝の上で、眠りにつきました。
永遠の、眠りに。

そのキタローさんが「まだ存在して、見守ってくれている」!
キタローさんはなぜ、そのことを私だけに教えてくれたのでしょう。

16: 2016/03/30(水) 03:07:26.74 ID:2p6wHKW8o
この寮で、キタローさんを一番慕っていたのが、私だったから?
それとも、キタローさんが私に好意を寄せていたから?
「人間」の理解を超えた事を言っているから?

うーん、考えたって、わかることではないのです。
でも、私だけに教えてくれる、ということが嬉しい。
この記憶は、プロテクトをかけて、最もセキュリティの高い層に保存することにします。

17: 2016/03/30(水) 03:11:37.59 ID:2p6wHKW8o
「皆さんの手紙にはどんなことが」

と声を出してみましたが、誰からも反応がありません。
感動的な内容の手紙に夢中で、私の声が耳に入らない、ということかと思ったのですが、
よくよく部屋を見渡すと、時間がとまり、静寂と、動かない、動けない皆さんがいます。
影時間?とも思いましたが、ここにいる皆さんは影時間の適性があるから、そんな筈はありません。

もう一度部屋を見渡すと、青白く光るドアがあります。
明らかに、本来はこの部屋に無い筈のドア。何者かの悪意によって作られたギミックだったら危険ですが、
意を決して、ドアを開きました。この雰囲気には覚えがありました。
そして私は行かなければならない、そんな気がしたのです。

18: 2016/03/30(水) 03:12:32.28 ID:2p6wHKW8o
ギィーッ

エリザベス「あら、イレギュラーなお客人。私、驚きを隠し切れません」

キタロー「アイギス!?」


信じられません。キタローさん!?

19: 2016/03/30(水) 03:14:18.63 ID:2p6wHKW8o
キタローさんは、「最後の戦い」でニュクスを封印するために体を擲ち、結果的には命を落としてしまいました。、
エリザベスさんのご尽力で、こちらの世界で、多少の時間であれば、活動できるようなったそうです。
この部屋、この世界における時間の概念は、私には理解できませんでしたが。

キタロー「しかし、驚いた。アイギスがここに来るとは」

エリザベス「ベルベットルームにいらっしゃるお客人は、必ず、故あってここにいらっしゃいます。
・・・これも絆の成せる技、でございましょうか」

20: 2016/03/30(水) 03:17:13.29 ID:2p6wHKW8o
絆・・・私と、キタローさんの、絆・・・
本当はずっとずっと、離れないで一緒にいたかった、私とキタローさんの絆。
寸断されてしまった、と思いましたが、繋がっていたんですね。

キタロー「そうだね。ずっと、繋がっていた。そしてこれからも」

エリザベス「えー、宴もたけなわではございますが、キタロー様、そろそろニュクスのところに戻っていただかないといけません」

キタロー「ああ、そうだね。アイギス、逢えて嬉しかった」

エリザベス「あの、お客人もそろそろお戻りになられてはいかがでしょうか。
無理にとは申しませんが、あなたの世界も、そろそろ動き出す頃合いかと存じます」


確かに。寮の皆さんからしたら、私は瞬間的に消えている、失踪しているような状態で、
ご心配をかけてしまう。名残惜しいが、寮に戻らなくては。

21: 2016/03/30(水) 03:18:05.49 ID:2p6wHKW8o
エリザベス「ドアから出れば、あなたの帰るべきところに繋がっている筈です。
もし次にあなたがいらっしゃる時があれば、私ではなく、きょうだいがご対応させていただくかもしれません。
出来の悪いきょうだいですが、その際にはどうぞよろしくお願いいたします」

こちらこそ、と軽く一礼し、私はドアを開きました。

22: 2016/03/30(水) 03:22:24.87 ID:2p6wHKW8o
-再び、厳戸台分寮 4F-

ガチャッ

美鶴「アイギス、どこへ行っていたんだ?」

順平「アイちゃん、気がついたらいないから心配したぜ!」

明彦「せっかくみんな集まったから、一緒に晩飯でもどうかと話していたんだ、アイギスはどうだ?」

ゆかり「真田先輩発案だから、残念ながらうみうしのテイクアウトなんだけどね・・・」

風花「ゆかりちゃん、残念ってことはないよ。アイギスもうみうしは行ったことあるし」

天田「へー、そうなんですか?でもアイギスさん固形物って食べれないんじゃ」

順平「アイちゃんは、牛丼、つゆだけで、だからな!」
アッハッハ

皆さん、きっとさっきまで、手紙を読んで涙していた筈です。
しかし、キタローさんを思えばこそ、泣いていても仕方ない、ということにもすぐ気付かれたのでしょう。
その気持ちを吹き飛ばすように、気丈に振舞っているのは一目瞭然です。

キタローさんとの絆が繋がっているのは、私だけではないようです。
そして、キタローさんと一緒に紡いだ、皆さんとの絆。これからも大切にしていきます。

23: 2016/03/30(水) 03:23:56.67 ID:2p6wHKW8o
エピローグ
-ベルベットルーム-

エリザベス「しかし、あのお客人はいったいどうやって・・・」

テオドア「姉上、只今戻りました」

エリザベス「テオ、遅いではありませんか。して、復刻版のおでんジュースは入手したのですか?」

テオドア「いえ、天田様への配達の後、あちらこちら探し回ったのですが、おでん缶しか見つからず」

エリザベス「全く、だらしのない。もう結構です」

24: 2016/03/30(水) 03:25:27.75 ID:2p6wHKW8o
テオドア「すいません、姉上。・・・・あの、姉上、ところでベルベットルームにお客人はいらっしゃいませんでしたか?」

エリザベス「ええ、いかにもいらっしゃいましたが、どうしてそれを知っているのです?」

テオドア「お恥ずかしいのですが」

エリザベス「ええ。あなたのような愚弟を持って、私は日ごろから恥ずかしく感じています」

テオドア「ええー・・・、あ、いえ。実は慌てて街に行った際に、ドアを消し忘れまして、
うっかり、来るべきでないお客人が来ていないかなー、なんて思ったのですが、いらっしゃいましたか・・・」

エリザベス「成程、あなたの仕業でしたか。まぁ、あの方がここに来るのも必然だったのでしょう」

テオドア「そうでしたか、それはよかっ
エリザベス「しかしドアを消し忘れるとは言語道断、別問題、許されることではありません。
覚悟なさい。メギドラオン!」

テオドア「ひぃぃぃっ!」

エリザベス「これが私とテオ、あなたの絆です!」

25: 2016/03/30(水) 03:26:42.21 ID:2p6wHKW8o
以上になります。

お読みいただきありがとうございました。

26: 2016/03/30(水) 05:14:18.05 ID:MD207tbAO


よかった

引用元: アイギス「あの人の手紙」【ペルソナ3】