1: 2016/02/04(木) 16:49:05.18 ID:iV5M849LO
主人公は高校二年生
季節は春からスタートします

キーンコーンカーンコーン

男「今日も終わった…」ガサゴソ

担任「ねぇ男くん、あの授業態度は酷いんじゃないかな?」

男「…俺も眠りたくて寝てないッスよ」

担任「中学生じゃあるまいし、睡眠不足は避けてもらいたいの。ここは県トップレベルの進学校なのよ?」

男「…そんなん知ってますよ」

担任「はぁ……ま、進路のこと少しは考えて勉強しといてね」

男「……うぃーっす」

2: 2016/02/04(木) 16:49:44.58 ID:iV5M849LO
幼馴染み「あ、男ー」

男「どした」

幼「週末さ、映画行かない?土曜に割り引きらしいんだ~」

男「あぁ、すまんバイトあるからパス」

幼「も~、最近バイトばっかじゃーん」

幼「じゃあさ、そろそろゴールデンウィークだからその時にしようよ!」

男「ゴールデンウィークはバイト代弾むからパス」

幼「え~…」

男「…今度余裕あったらにしようぜ」

幼「う~ん…わかった!」

男「じゃなー」


3: 2016/02/04(木) 17:20:22.11 ID:iV5M849LO
教室
幼「男おはよー」

男「んー」ガタッ

幼「あ、友くんおはよー」

友「おう!幼ちゃんおはよう!」

男「…」

友「…」

幼「さ、さーて今日も勉強頑張らなきゃ!」


キーンコーンカーンコーン
男「」Zzz

幼「男、男!」

男「ん?」

幼「もう授業終わったよ」

男「げ…」

幼「ノートあるけど見る?」

男「す、すまんな…写真だけ撮らせてくれ」

幼「2年になってからずーっと寝てるね男」

男「あー、そうかもなー…」カシャカシャ

幼「今日もバイト?」

男「ま、そうだな」

4: 2016/02/04(木) 17:24:19.35 ID:iV5M849LO
幼「ふーん…あ、後輩ちゃんだ!後輩ちゃーん」

後輩「幼先輩どうも。男先輩も」

男「おう、何か用か」

後輩「友先輩いますか?部について少し聞きたくて」

男「……あいつならもう部活にいったんじゃねーか」

後輩「そうですか。ありがとうございます」

後輩「では失礼しますね」

男「…さて、帰ろ」

幼「私も一緒に帰って良い?」

男「バイト先逆方向だから校門までだぞ」

幼「そ、そうなんだ~」

幼友「幼ー!」

幼「あ、幼友ちゃん!」

幼友「今日帰りにミ○ド寄ってこうよ」

幼「あ、良いね~!」

男「」スタスタ

幼友「新作が美味しそうでさー」

幼「ホントに!?」

5: 2016/02/04(木) 17:29:31.38 ID:iV5M849LO
同日校庭

後輩「友先輩」

友「ん?おお後輩か」

後輩「野球部はどうですか?」

友「今年は県大会制覇に向けて皆練習してるよ」

後輩「去年準優勝でしたもんね」

友「そうなんだよな~甲子園行きてぇよ」

後輩「友先輩エースですからね。頑張って下さい」

友「…本題はこんなことじゃないんだろ」

7: 2016/02/04(木) 20:45:42.13 ID:iV5M849LO
後輩「気付いてましたか。じゃあ率直に。男先輩は何故部活を止めたんですか?」

友「…俺も詳しくしらねぇよ。春休み前にいきなり止めるって言い出しやがって…」

後輩「説得したんですよね?」

友「ああ、去年は惜しかったけど、今年は絶対甲子園行こうぜって言ってたのに……」

友「今はバイトばっかだって聞いたしよ……アイツん家そこそこ金持ちだろ?バイト何てする必要ねぇのに…ふざけんなよ!」

後輩「…」

友「…すまねぇ、大声なんか出して」

8: 2016/02/04(木) 20:55:27.66 ID:iV5M849LO
友「俺は失望したぜ。アイツがあんなに金の亡者だったなんてよ」

後輩「そうだったんですね。お話しして頂いてありがとうございました」

友「いや、俺も愚痴みてぇにすまねえな」

後輩「いえいえ。では失礼しますね、友先輩」

9: 2016/02/04(木) 22:52:59.25 ID:iV5M849LO
中間テスト結果
ザワザワ


1位 女 (平均 96.8点)
2位 モブ (平均 94.6点)
3位 モブ (平均 94.4点)

男「…」

68位 男 (平均 78.9点)

男「はぁ…」

女「ちょっと!どういうことなのよ」

男「何がですか女様…」

女「何よその呼び方…ってかアンタ何?手抜きしたの?」

男「してねぇよ…」

10: 2016/02/04(木) 23:08:07.79 ID:iV5M849LO
女「嘘ね。入学から1年ずっとトップだったくせに」

男「手抜きする理由がどこにあんだよ…」

女「バイトばっかりしてロクに授業聞いてないじゃない」

男「わりぃかよ…」

女「中学も必氏に勉強した私が唯一追いつけなかったのよ?本気のアンタ倒さないと気が済まないのよ」

男「超本気の結果だぜ…」フッ

女「あー、もうなんなの…初めて1位取ってこんなにモヤモヤするなんて…」

男「素直に喜べよ」

幼「あ、男ー!」

女「いい?次は本気出しなさいよ」スタスタ

男「はいはいー」

11: 2016/02/04(木) 23:13:40.74 ID:iV5M849LO
幼「女さんと話してた?」

男「おう」

幼「あ…女さん1位になったんだ…」

男「みたいだなー」

幼「……ねえ男、バイトするのも良いけどさ、ちゃんと勉強してよ?」

男「釈迦に説法だ。そういうお前は何位なんだ~?」

幼「ぎくっ」

男「まさか順位が3桁だなんてことは無いよな~」ニヤニヤ

幼「むぅ~!男の意地悪ー!」←109位

12: 2016/02/04(木) 23:33:39.86 ID:iV5M849LO
担任「あら、幼さんに男くん」

幼「あ、先生、こんにちわー!」

男「…どうかしましたか?」

担任「…成績は大丈夫?男くん」

男「…」

担任「先生はバイトは凄く大事な経験ではあると思うけどね」

担任「あまり勉強を疎かにすると場合によってはバイト止めさせられちゃうよ?」

男「それについては従いたくありません」

幼「ちょ、男!」

担任「…何かあったの?」

男「何がですか?真面目にやってますよ」

13: 2016/02/05(金) 20:47:39.68 ID:HSYdT2+sO
担任「授業中は寝てるし、課題は出さないし、おまけにテストはこれ…」

男「68位は上位1/3に入ってますが。そこまで悪い順位でもないでしょ」

担任「1年の学年末から最も順位が下がったのは誰か知ってる?」

男「……さぁ」

担任「断トツで男くんよ…このままだと周りの子は勉強して、あなたはどんどん落ちると思うの」

男「…」

担任「まぁ良いわ。家庭訪問でしっかりお話するからね」スタスタ

男「……」

幼「男…」

14: 2016/02/05(金) 21:03:38.68 ID:HSYdT2+sO
放課後

後輩「え…先輩がですか?」

幼「そうなの」

幼友「男くん、入試も歴代最高点で期待の星だったからね~」

後輩「にしても勉強が疎かになる程バイトしてるのでしょうか…?」

15: 2016/02/05(金) 21:36:45.54 ID:HSYdT2+sO
幼「このままじゃ弁護士になるどころか大学まで怪しく…」

幼友「野球部も止めちゃったんでしょ?何かあったのかな?」

後輩「ちょっと深刻ですね…」ウーン

幼友(あ、男くん狙いがここにも…無理もないか、何でも出来てしっかりしてるし)

幼友「でも少し不自然よね」

16: 2016/02/05(金) 22:17:56.05 ID:HSYdT2+sO
後輩「家に行ってみますか?」

幼「でもバイトしてるんでしょ?いないと思うな…」

後輩「先輩のお父さんに話を聞きましょう」

幼友「じゃ、決まりね。今から行きましょ」

幼「うん」

17: 2016/02/06(土) 00:01:55.04 ID:2DeO8IGTO
男宅
ピンポーン
幼「ごめんくださーい」

後輩「いないんですかね?」

ガチャッ
糞女「男父さーん?って…誰?」

幼「あ、あの…男くんのクラスメイトの幼です」

後輩「男先輩、いますか?」

18: 2016/02/06(土) 00:22:30.64 ID:2DeO8IGTO
糞女「男……?よくわかんないけど、男父さんはまだ帰って来てないの」

後輩「は、はぁ…」

幼「す、すみません…じゃあまた来ます」

糞女「はーい」ガチャリ

幼友「だ、誰?」

後輩「男父さんの妹さんとかですかね…?」

幼「今日は帰ってまた今度来ようよ」

幼友「そうね…」

23: 2016/02/06(土) 20:09:46.41 ID:FRfE1nmOO
数日後
後輩「で、ここが噂の居酒屋ですか…」

幼友「バレないように隣町の居酒屋ってわけね…」

幼母「で、お母さんに付いて貰って調査ってわけよね♪幼ちゃーん」

幼「だって子供だけで居酒屋はちょっと…」

後輩「あ、先輩だ。厨房にいますね」

24: 2016/02/06(土) 20:12:15.96 ID:FRfE1nmOO
幼友「にしても結構忙しそうね」

店員「ご注文お願いしまーす」

幼母「これとこれと…」

後輩「すみません、ちょっと良いですか?」

店員「何でしょう!」

後輩「あそこの男性、毎日バイト入ってるんですか?」

店員「あぁー、男くんね!いやー職探しながらお金稼ぐためにって毎日来てるよ」

25: 2016/02/06(土) 20:17:02.82 ID:FRfE1nmOO
幼(男…)

店員「仕事バリバリ出来るし助かってるの!」

後輩「何時から何時まで入ってますか?」

店員「いつもは17時から0時までかな」

幼(0時…)

幼友(そりゃ眠くもなるわね…)

後輩「ありがとうございました」

店員「いえいえ!」

26: 2016/02/06(土) 20:22:58.09 ID:FRfE1nmOO
幼母「…ねぇ幼、どういうことなの?」

幼「私にもさっぱり…」

後輩「高校生であることを偽ってるみたいでしたね」

幼友「彼の両親は把握してるのかな」

幼母「ちょっと心配ね…」

27: 2016/02/06(土) 20:34:10.47 ID:FRfE1nmOO
数日後
幼友「で、これが私の情報網によって推測される彼のバイトリスト…」

幼「5時から居酒屋…1時から朝までコンビニ…休日はパチンコと宅急便まで…」

後輩「これだけしてると、さすがの先輩も身体が持たないですね」

幼友「さすがにやりすぎよ…」

幼友「…確か男くんって高校になる前に親が離婚してたわよね」

幼「そうそう…あのお母さん良い人だと思ってたけど不倫して、男の妹とお母さんは別の所で暮らしてるの」

後輩「あの頃の先輩、かなり憔悴してましたね…」

幼「それでも勉強だけはしっかりしてたのに」

幼友「男くんって妹いたのね」

後輩「私と同級生でしたよ。違う高校に入りましたけどね」

幼「私はたまに連絡取ったりしてるよ」

後輩「先輩のこと聞いてみませんか?」

幼「そうだ、何か知ってるかも!」

幼友「手がかりは妹ちゃんみたいね」

28: 2016/02/06(土) 20:44:11.27 ID:FRfE1nmOO
翌日
妹「お久し振り、幼ちゃん!」

幼「お久し振りー妹ちゃん。元気してた?」

妹「うん。色々あったけど…」

幼「妹ちゃんも大変だね~。男とはどう?話したりする?」

妹「いや、メールも知らないし…」

幼「そ、そうなんだ~…新しいお父さんはどう?」

妹「すっごく優しくて良い人だよ。…お母さんね、悪いことしたかもしれないけど今は幸せそうだし、私も幸せかな」

29: 2016/02/06(土) 20:53:51.33 ID:FRfE1nmOO
幼「良かったね妹ちゃん。…それと、男が最近調子悪いみたいなんだ~。何か声かけてあげてよ」

妹「…良いけど、お兄ちゃんは昔から何でも出来るし、私が何言っても効果無いと思うよ?」

幼「そっか…ごめんね、時間取っちゃって」

妹「いえ、兄を宜しくお願いします」

幼「はーい!ってちょっと、妹ちゃ~ん!」

妹「幼ちゃんやっぱり面白い」アハハ

30: 2016/02/06(土) 21:27:10.62 ID:FRfE1nmOO
後輩「て、ことは特に収穫無しですね…」

幼「何で男はバイトしてるのかな」

幼友「そりゃ、お金が必要なのよ」

幼「でもこんなにバイトする必要ある?」

幼友「何か欲しいものがあるのかも…」

後輩「…何かおかしいですね」

幼友「もう一度行ってみる?男くんの家」

幼「でも今日は家庭訪問の日だし…」

後輩「では、解散しましょう」

31: 2016/02/06(土) 22:48:38.55 ID:FRfE1nmOO
担任(今日は男くんの家しか訪問しない予定だし、しっかり相談しよう)

担任「ごめんください」ピンポーン

担任「…」

糞女「はーい…って、どちら様?」ジロッ

担任「私、男くんの担任をしてる者ですが、本日は家庭訪問に参りました」

糞女「男…あぁ、少々お待ち下さい」ニコニコ

男父「いやー先生どうもどうも!」

担任「本日は家庭訪問なのですが、男くんは伝えてくれてましたか?」

男父「いやぁーさっぱりなんです」ハハハハ

男父「ここで話すのも何ですので中へどーぞ」

32: 2016/02/06(土) 22:53:02.65 ID:FRfE1nmOO
担任「お邪魔します」

担任(…男の親父さん、こんな人だったかな…?雰囲気が全然違う様な…)

男父「すみません、こんなものしかお出しできませんが…」

担任「いえいえ、ありがとうございます」

担任(高そうなケーキ…)

担任「本日は男くんの成績についてなのですが」

男父「アイツのことですから勉強面の心配はいらないでしょう!」ハハハハ

担任「いえ、彼の成績は急激に落ちてます」

男父「そうでしたか!」ハハハハ

33: 2016/02/06(土) 23:01:22.64 ID:FRfE1nmOO
担任「野球も止めてバイトに勤しんでるだとか…」

男父「ふんふん」

男父「アイツにもそういう時期はあるでしょうな」ハハハハ

担任「いえ、しかしですねお父様の方からご指導して頂かないと第一志望の法学部は厳しいかと…」

糞女「お仕事行ってきま~す」

男父「は~い」

担任「あ、あの男父さん?」

男父「良い女でしょう?現在の妻なんです。今年の春に入籍しましてね」

担任「は、はぁ…それはおめでたい限りです…」

34: 2016/02/06(土) 23:08:27.16 ID:FRfE1nmOO
男父「でも男とは合わなくてですね…アイツ、家を飛び出したんですよ」

男父「それ以来、何か書類にサインだのハンコだのってたまーに帰ってくるんですけどね」

担任「え?つまり男くんは、お父様と別居しているということですか?」

男父「御存じなかったんですか?てっきり男が伝えてたものだと…」

担任「我が校はなるべく独り暮らしさせない方針ですので、別居は避けて頂かないと…」

男父「と、言いましても何処に住んでいるかわかりませんので…」

担任「……」

担任「あの、家賃だとかはお父様が負担なさってるので…?」

男父「いえいえ、例え息子でも出ていったからには、びた一文もやりませんよ」

担任「…そ、そうでしたか。ですが、今度しっかりとお父様から勉学についてお話しして頂いて、彼に…」

男父「大丈夫ですよ!やれば出来る子ですからね!」ハハハハ

担任「…お、お時間頂いてすみません。そろそろ失礼させて頂きます」

男父「ええ。またいつでもいらして下さい」

35: 2016/02/06(土) 23:18:32.70 ID:FRfE1nmOO
担任「……」

担任(私は大きな勘違いをしてたってことね…)

担任「ここが男くんの住む家…」

大家「どうされました?」

担任「あぁ、いえ。こちらの男くんの担任をしてるのですが」

大家「……やっぱり。大学生にしては少し青いと思ってたら高校生でしたか」

担任「話はご存知無いのですか」

大家「大学生で独り暮らし、としか…まあ家賃払ってくれてますし、問題無いかと」

担任「ちゃんと家賃は払ってるんですね」

大家「家にいるとこを殆ど見ませんでしたが…」

大家「たまに休日の午前中に見ますかね…」

担任「お話ししてもらってすみません。ありがとうございました」

担任「男くん…」

36: 2016/02/06(土) 23:28:20.20 ID:FRfE1nmOO
休日
担任「ごめんください」ピンポーン

担任「………いないのかしら」

担任「空いてる…」ガチャッ

担任「男くん?いるの?」

男「」Zzz

担任「寝てるのね…」


男「あぁ~良く寝た」

担任「こんにちは男くん」

男「………」

男「ふ、不法侵入だ!」

担任「こら!騒がないの!」

37: 2016/02/06(土) 23:33:21.83 ID:FRfE1nmOO
ん~ちょっと続けるか迷いますね
要望あれば進めますがなければここで本日は終了です

41: 2016/02/07(日) 18:49:04.61 ID:JTnKd+TxO
男「何か用ですか…というか何でここがわかったんですか」

担任「昨日、家庭訪問だったのよ」

男「…」

担任「話はだいたい把握したわ。それで伝えたいことがあって…」

担任「ごめんなさい。男くん。私は人間としてどうかしてたわ」

男「…」

担任「生徒の成績ばかり気にして事情も知らないで…」

男「…別に良いッスよ」

42: 2016/02/07(日) 20:38:26.74 ID:JTnKd+TxO
担任「こんな生活、いつからしてるの?」

男「そろそろ5ヶ月ってとこすかね」

担任「ねぇ、男くん。学費はともかく生活費を稼ぐのにそんなに働かないと苦しいの?」

担任「何か引っ掛かるのよ…優秀な君が授業がおろそかになるまでバイトなんて…」

男「…そこまで話す義理は無いでしょ」

担任「男くん、私もサポートしたいの。償いとかじゃなくて純粋に君の力になりたくて」

男「大丈夫ッスよ。バイト減らしますから」

担任「定期的に見に来るわ。それと、このことは…」

男「誰にも言わないで下さい」

担任「で、でも」

男「特に友には絶対にですよ」

担任「お、男くん…」

男「良いんですよ先生、俺もヤワじゃないんで。テストも頑張りますから」

男「どんなに遠くても辿り着きます」

担任「…わかったわ。無理は禁物ね。辛くなったらすぐ言いなさいよ?」

男「じゃそろそろバイトなんで…」

担任「…」

44: 2016/02/09(火) 00:16:15.07 ID:xl0RcV0wO
夏休み前


幼「そろそろ夏休みだね~」

男「お前、休みのことしか頭にねーのかよ…」

女「ねぇ、アンタ」

男「にしても幼ん家って良いよな~。中学の頃良く行ったけどクーラーが快適すぎるぜ」

幼「あれ?男の家もクーラーあるじゃん」(ちょっと面白いから乗ってみよ)

女「ち、ちょっと」

男「…お、俺ん家はあれだよ、最近エアコン壊れて扇風機なんだよ」

幼「じゃあ今度家に来る?」

女「ち、ちょっとーー!!」

男「な、なんだよ女」

女「アンタもだけど、幼さんも意地悪ね…」

幼「えへへ…」

47: 2016/02/09(火) 21:42:24.90 ID:/p+VZSSZO
女「何で照れてんのよ…夏休み、ちゃんと勉強しなさいよ?」

男「ああ。しないとマズいからな流石に」

幼「じゃあウチでやろうよ!」

女「私が教えるから私の家でやるのよ」

男「え、えっと…」

後輩「先輩、私の家でやりましょう?…二人っきりで」

女「ちょ…!ここ2年の教室よ!?」

後輩「何だか面白い会話が聞こえたので」

幼「後輩ちゃん、それは却下だよ!男はウチのクーラーがお気に入りなんだよ?」

後輩「クーラーなら家にもありますけど…」

男「クーラーなんてなんでも良いしな」

幼「う…」

後輩「お昼も晩も用意しますよ?先輩。もちろん私の手作りです」

男「て、手作り……ゴクッ」

48: 2016/02/09(火) 21:52:33.33 ID:/p+VZSSZO
女「で、でも!私がいなきゃ勉強わからないんじゃない?」フフン

後輩「む…確かに2年生の勉強はわからないですね…」

幼「私の家でやるのー!」

男「えっと、独りでやるという選択肢は…」

三人「「「無いよ!(わよ!)(です)」」」

男「そ、そうですよね~」トホホ

男「わ、わかった…女の家にしよう…」

女「で、今どの程度の状況なの?」

男「英語は大丈夫だ。元々喋れるから」

後輩「先輩羨ましいです…私、英語苦手で」

女「…なんかムカつくわね」

49: 2016/02/09(火) 22:09:20.13 ID:4/iSbkEQO
男「ヤバイのは国語と物理で、数学はある程度ならってとこかな」

後輩「史学は大丈夫なんですか?」

男「歴史系は覚えることが中心だろ?国語はともかく物理はそうもいかないんだよ」

幼「私も物理嫌い…」

女「何で物理取ったのよ…文系だったら化学と生物で良いじゃない」

幼「え、それは…その…」

後輩(なるほど、幼さん策士ですね…)

50: 2016/02/09(火) 22:25:28.01 ID:4/iSbkEQO
女「ま、良いわ。じゃあまず8月後半にしましょう」

幼「そんな遅くに?もっと早くからやろうよ」

女「私は夏期講習があるし、男もそこまでバイト埋ってんでしょう?」

男「まあな。てか、まずってことは複数回やるハメになんのかよ…」

幼「そりゃ、一回じゃ意味無いよ…予定開けといてね」

男「わかったよ…」

女「じゃ、解散ね」

幼「私も帰るね。男は今日もバイト?」

男「おう。じゃなー」

51: 2016/02/09(火) 22:33:19.20 ID:4/iSbkEQO
放課後

(祝)野球部甲子園出場決定


男「昨日の決勝、勝ってたのか」

男「やったな、友。おめでとう」

友「…」

男「俺の分まで戦ってくれよ」

友「…辞めたこと、後悔してるか?」

男「……さぁな」

友「まぁいいけどな。辞めたのはお前だ」

男「…………」

友「じゃな。俺も練習とかあるし」

男「……はぁ」

52: 2016/02/09(火) 22:42:56.95 ID:4/iSbkEQO
夏休み
男「ふぅー……最近まともに寝てねぇな…」

男「お蔭でかなり稼げてるし、良いか」

男「にしても暑い。さて、一旦帰るか…」

TV『期待の2年生エース、友選手のピッチングですが…』

男「お、甲子園か…」

男「あれ?もう準決勝?すげーじゃん友のやつ…」

男「俺も負けてらんねぇな……」

男(泣かねえぞ畜生…まだ諦めてねぇからな)

男「そうだ、スコアは幾つかな……」









buj
a4f - 5g



男「……って、あれ?何だこのスコア」

男「あれ…なんか景色……」

54: 2016/02/12(金) 20:10:04.75 ID:EbqX39SYO
医者「家族でもない方に教えるのは特例ですが…事情も事情なのでね」

担任「彼は熱中症で倒れただけなんですよね?」

医者「彼は…」



ガラガラッ‼
幼「男ぉ!」

男「おお、何だ幼か…後輩と女も」

後輩「心配しましたよ先輩…いきなり駅前で倒れるなんて」

男「いやぁ、すまんすまん」

女「…ねぇ、ただの熱中症なのよね?」

男「…」

幼「男!どうなの!ねぇ!!」

後輩「幼先輩、気持ちはわかりますけど落ち着いて下さい。ここは病院ですし」

55: 2016/02/12(金) 20:19:54.44 ID:EbqX39SYO
男「…半年」

後輩「……え?」

男「半年後の生存率はほぼ無いらしい」



医者「かなり進行した肺癌ですね。若い人程進行が速いとは言いますが、このレベルで生活してたのが信じられませんね」

医者「相当苦しかったでしょう…」

担任「…手術は出来ないのですか?」

医者「治療しても完治する確率は極めて低いですね」

担任「そんな…」

医者「ご家族をお呼びして頂けますか?」

担任「…わかりました」

56: 2016/02/12(金) 20:29:17.23 ID:EbqX39SYO
幼「…」グスッ

女「う、嘘でしょ…なんで倒れるまでバイトなんか……」

後輩「……」

女「ねぇ、後輩ちゃん」

後輩「…なんでしょう」

女「素直に泣いて。ここは泣くところだと思うわ」

後輩「…」

女「泣いたところで何も始まらないのもわかる。でも、ここで泣かずにいつ泣くの?」グスッ

後輩「…私は信じてます。先輩の癌が完治すること」

女「強いわね、あなた…とても強かよ。誇りなさい」ボロボロ

女「わ…私は無理よ……耐えられない…不安で不安で……」ボロボロ

幼「女ちゃん…」

担任「あなた達…」

幼「せ、先生…」

女「先生、教えてください…アイツ…いや、男はどうして…」

58: 2016/02/12(金) 21:37:07.20 ID:EbqX39SYO
ガラガラ
担任「お、男く……」

男「…」

妹「私のために身体壊して…あと半年しか生きられない…?」

妹「お兄ちゃんの馬鹿!!」

男「す、すまん」

妹「大馬鹿…」ボロボロ

妹「どうしてくれんのよ…昔から限度を知れないのは分かってたけど…」ボロボロ

担任「……今日はあたなたちも帰りなさい」

三人「……」

59: 2016/02/12(金) 21:44:49.84 ID:EbqX39SYO
男父宅
男父「え……?なんだって……??」

妹『だから男が今日倒れて検査したら……って、聞いてるの?お父さん!!』

男父「そ、そんなこと……」ボトッ

妹『もしもし!?お父さん!?』

男父「俺のせいだ……」

糞女「どうしたのー?男父さーん。早く一緒におふ」

男父「…すまん、俺の通帳出してくれないか」

糞女「え?どうしたの~男父さ~ん」

男父「早くしてくれ!」

糞女「」ビクッ

糞女「は、はい…」スッ

男父「残高はそこそこあるな…」

糞女「ねぇ男父さ~ん…どうしたのか教えてよ」

男父「……男が癌を患った。半年後の生存率は低いみたいだ…」

糞女「男……?あぁ、でも男父さん、今更男くん?のことどうこうしようって…ちょっと待って」

60: 2016/02/12(金) 21:54:08.77 ID:EbqX39SYO
男父「なんだ?」

糞女「もしかしてその中身全部使うの!?」

男父「…ああ。もし足りなければ物売ってでも借金でもするぞ」

男父「こんなことでしか息子にしてやれないなんて…クソ親父だな。父親失格だ……」

糞女「ちょっと待ってよ!そしたらあたしはどうなるの!?」

男父「何とでもなるだろ」

糞女「ならないわよ!!貧乏生活なんて絶対ゴメンよ私は!!」

男父「こんな時にそんなことを良く言えたな…お前」

男父「じゃあ良いぞ。出ていけ」

糞女「なによ!!すぐそうやって女を捨てるの?最低ね!!」

男父「ああ。最低の親父だ俺は。そんな男を見抜けずに金に目が眩んだ女は最低以下だろうがな」

糞女「ふざけんじゃないわよ!!もういいわ!!!」バタン

男父「確か知り合いの繋がりで癌のエキスパートがいたはず…」

男父「もしもし?私だが。あぁ、少し話があってな…」

62: 2016/02/12(金) 22:03:06.74 ID:EbqX39SYO
男「…」ボー

妹「…」ガラガラ

男「おー、妹か」

妹「ねぇお兄ちゃん、今のパパが出来るだけ協力するって」

妹「確率なんて気にしないで一生懸命治そうよ!きっと治るよお兄ちゃんなら…」

男「妹、お前は数学も医学もわからんだろうが、現在の高度な医学の分析によって導き出された確率なんだ」

男「いっそ吹っ切れた方が…」

妹「そんなのダメだよ…治るよ!絶対に!」

男「でもさ、抗癌剤治療で辛い思いをして、助かりませんでしたー…なんてことになったら」

男「俺、何のために生まれたのかわかんねえよ」

妹「…お兄ちゃんの馬鹿」ダッ

男「…」

男「少し寝るか…」

63: 2016/02/12(金) 22:14:18.33 ID:EbqX39SYO
幼「男ー?」ガラガラ

女「あら、寝てるわ」

後輩「疲れてたでしょうからね。昨日の今日ですから」

男「んん…」

女「あら、おはよう」

後輩「先輩、ニュース見ましたか?」

男「いや、朝から寝てたからな…」

幼「友くん優勝したんだよ」

男「ほ、ホンとか!?」

後輩「ええ。見事な完封勝利でした」

男「そっか……」

幼「…先生がね、友くんに明日伝えるんだって」

男「伝える?何を?」

女「アンタの状態に決まってんでしょ」

男「…」

幼「ねぇ男、話は全部聞いたんだけどさ…」

幼「なんで私達を頼ってくれなかったの…?」

後輩「…」

女「…」

男「いや、やっぱり家のことだし…言い辛かったんだよ」

幼「そっか…」

後輩「先輩、これから治療しますよね、もちろん」

男「…迷ってるんだ、正直」

女「迷う必要なんて無いじゃない」

男「助かる保証は無いんだろ…?」

幼「でも、治療しないと助からないよ!」

男「……そりゃそうだけど」

後輩「私は幼先輩の意見に賛成ですけど、決定権は先輩にあると思いますよ」

女「私もやるべきだと思うわ…諦めるなんてらしくないじゃない」

男「…」

ガラガラ
担任「あなた達、そんなに男くんを問い詰めないであげて」

三人「…」

担任「男くん、また明日来るわね」

男「すみません…」

64: 2016/02/12(金) 22:38:09.39 ID:EbqX39SYO
翌朝
TV『素晴らしいピッチングで完封勝利を収め、見事優勝を果たしました…』

男「ホントに優勝したんだな…」

男「…片や優勝投手、片や余命半年」

男「雲泥の差ってのはまさにこれか…」

バンッ!
友「はぁっ…はぁっ…」

男「と、友…?」

友「…は、話は聞いたぞ…」

男「え?でも先生はまだ…」

友「妹ちゃんから昨日連絡があったから急いで西宮から戻ってきたんだ…」

友「てめぇ、何で黙ってたんだ」

男「…俺が言ったらお前も部活やめたろ…そしたら今みてえに優勝どころか野球も満足に出来ねえと思ってな」

男「幼や後輩に言ってもいずれお前にバレるから、あいつらにも黙ってたんだ」

友「…言いたいことはそれだけか?」

男「は?」

友「優勝と親友の命…どっちが大事か比べるまでもねぇんだよ!!!!!」

男「!!!」

65: 2016/02/12(金) 22:55:21.73 ID:EbqX39SYO
友「ざっけんなよてめぇ……甲子園行けないどころかキャッチボールすら出来なくなるじゃねーかよ!!!」ボロボロ

友「ざっけんなよ…」ボロボロ

男「…」

友「こんなことになるなら……止めるって言い出したときに殴ってでも理由聞くべきだった……」ボロボロ

妹「友くん…」

男「妹… 」

妹「ごめん、聞こえちゃった…」

友「…それで、これから治療するんだろ?」

男「…まだ決めてねえよ」

友「おう、それも聞いたよ」

男「妹…」

妹「だって友くんすっごく怖くて…」

友「妹ちゃん責めんな。治療受けろよ」

男「だからまだ決めて…」

友「治療しねえのか?なら俺が屋上まで連れてって突き落としてやる」

妹「!」

66: 2016/02/12(金) 23:09:33.66 ID:EbqX39SYO
男「な、なんてこと言うんだよお前…」

友「お前が言ってんのはそういうことだぞ」

男「…」

友「治療しろ。どうせお前の両親もそう説得するしな」

男「…わかったよ」

妹「と、友くん…」

友「乱暴言って悪かったな…もう大丈夫だぜ妹ちゃん」

男「…」

友「じゃ、俺は帰るわ」ガラガラ

67: 2016/02/12(金) 23:23:42.22 ID:EbqX39SYO
病室の外


後輩「そんな強引な…友先輩らしいですけど…」

友「…もしこれであいつが助からなかったら、俺は立ち直れねぇだろうな」

女「ちょっと!何てこと…」

友「だから助かる助からねぇじゃなくて、俺達で助けるんだよ、あいつを」

幼「良かった…」

友「どうした幼?」

幼「男、今まで沢山辛い思いしたかもしれないけど…こんなに良い人達に囲まれて……」

後輩「…そうですね」

女「私も家ぐるみでフォローするし、学校の先生方も…」

幼「私のお父さんやお母さんも協力してくれるって」

友「野球部の奴等も監督も協力してくれるからな。これもあいつの力なんだろうな」

医者「君達だけじゃないよ」

友「うわっ!!ビビったぜ」

医者「彼の父親に頭を下げて頼まれてね…私も知り合いの名医達に頼んでみたよ」

医者「総力を挙げて治療をしよう」

友「うぅっ……ありが、とう…ござ……います」ボロボロ

医者「さて、なら少し急いで進めようか…」

68: 2016/02/12(金) 23:37:21.35 ID:EbqX39SYO



男「おぉぉ…」

後輩「先輩、耳掻きしてるのに動いたらダメですよ」

幼「新しい帽子編んだから被って」

男「マジか。サンキュー!」

幼友「大分落ち着いたみたいね」

男「気分悪い日は凄かったけどな。毎日色んな人が来てくれるから助かった」

後輩「でも私は本当に抗癌剤打ってるのかって疑いましたよ」

幼「そうそう。ケロっとしてるんだもん」

男「そ、そうか?かなりしんどかったぞ…」

幼友「そうだそうだ、女ちゃんが志望を医学部にしたらしいの」

幼「凄いよね~模試でも偏差値78とか…科目によっては全国1位だって」

男「流石だなー」

男「でも何でまた医学なんだろう…あいつのもともと理学部志望だったよな」

幼友(相変わらず鈍い…)

69: 2016/02/13(土) 00:08:57.08 ID:M25RRtKwO
後輩「先輩も頑張って治したら勉強ですね」

幼「男になら3ヶ月くらいで追い抜かれそう…」

男「おいおい…」

幼友「後輩ちゃんは進路どうするの?」

後輩「私ですか?そうですねーまだ決まってませんけど、大学は多分行くと思います」

幼友「へぇ~。幼は大学行かないんだっけ?」

幼「私はお母さんが看護師だから看護学校かな~」

男「進路か~友もプロ入り濃厚なんだろ?」

後輩「スーパーエースって注目浴びてますよ」

男「メジャーとか行くんだろうか…」

幼友「日本でやっていくって。メジャーも良いけどやっぱり日本で活躍してみたいらしいよ」

男「プロデビュー戦は是非特等席で見せてもらおうか」

幼友「ふふっ。言っておくわ」

70: 2016/02/13(土) 01:56:01.45 ID:M25RRtKwO
1ヶ月後


男「いよいよ手術だなー」

幼「緊張感無いね…」

後輩「女さんも友先輩もしばらくしたら来てくれるみたいです」

男「お、そうなんか。ありがたい」

幼「二人とも忙しいからね」

男母「男!」

男「…母さんか」

妹「お兄ちゃん、癌に負けないでね!」

男父「男なら出来る。堂々としてれば良い」

医者「そろそろ始めるからね、男くん」

男「はい」

幼(神様…どうか男を…)




医者「無事、終わりました」

男父「本当ですか!?」

医者「ええ。後は回復を待ちましょう」

友「やった!!手術成功だ!!!」

幼「はあぁぁ…」

妹「良かったね!幼ちゃん!」グスッ

女「勝ったのね…」

男父「本当にありがとうございました」

医者「いやいや、まだこれからですから」

担任「でもひとまず良かったわ…」

後輩「これからも回復をサポートしましょう」

友「ひとまず、今日はおじさんとおばさんに任せるか」

男父「皆さんにはこれまで多大な迷惑をお掛けしました…これも全て私の責任です。これからも息子のこと、どうぞ宜しくお願いします」

妹「私からもお願いします」

73: 2016/02/19(金) 23:16:24.36 ID:If9TYWcCO
正月
友「かんぱーい!!」

担任「改めて、退院おめでとう。男くん」

男「どうも。先生には感謝してもしきれないくらいです」

女「3学期から来れるんでしょ?勉強見てあげるわ」

男「げ…」

後輩「先輩、何から食べますか?」

男「お、おう!そうだな、後輩の作ったのはどれも旨そうだな~」

女「ちょ、ちょっと!」

幼友「あはははは」

幼「何はともあれ、男もこうして退院出来てよかったよ~」

友「髪の毛も生えてきてるしな!」

男「生えなかったら大変だろ…」

幼「もう無理したらダメだよ?男」

男「ああ」

男「そうだ、友」

友「お?どしたー?」

男「キャッチボールしようぜ」

74: 2016/02/19(金) 23:18:41.77 ID:If9TYWcCO
友「久々すぎてちゃんと投げれないんじゃないか?」

男「おいおい、関西一の強肩だぞ?」

友「はいはい。お、でもちゃんと投げれてるな」

男「にしても、今日は冬にしては暖かいな」

友「15℃近くになるらしいなー。正月とは思えねーわ」

男「おっとと、そういえば球速はどれくらい出るんだ?」

友「甲子園で一番良かったのが148km/hかなー」

男「うへえ、そんなん捕れるかな…」スッ

友「お、おい、しゃがむのはちょっとまだ無理なんじゃねえか?」

男「俺はキャッチャーだぞ?いいから投げろ」

友「じゃ、まず肩慣らしからな」

男「っ!」バシッ

男「おぉ…すげえ、優勝投手のボールだ…」

友「またお前に投げれて嬉しいよ」

75: 2016/02/19(金) 23:22:12.00 ID:If9TYWcCO
男「一年の頃から大分コントロール良くなったな」バシッ

友「あぁ。お前に指摘されてから冬から春は走り込んで下半身鍛えたんだ」

男「やっぱり良くなったろ?お前って変化球も投げれるし、球も速いからな」バシッ

友「…温まったけど、ホントに良いのか?」

男「おうよ、ドンと来やがれ」

友「いくぞっ!」シュ

男「っ!!」バシン!

男「うわすげぇ!!最後に捕ったときから一年経ってねえのに」

友「悔しくて頑張った結果だ」フフン

友「てか、それ捕れるお前のがすげえよ。結構本気で投げたぞ」

男「サンキュー!頑張れよ来年も」

友「お前はどうすんだ?」

男「わりぃけど勉強だな。俺はプロになれそうにないからやっぱ弁護士目指すわ」

友「そっか、そっちも頑張れよ」

76: 2016/02/19(金) 23:40:27.62 ID:RBffq+PXO
後輩「先輩、何してるんですか」

男「うわっ!びっくりした!」

後輩「見てましたよ。本当に何で捕れるんですか…結果的に捕れて良かったですけど」

男「かなり速かったけど、そこまで衰えてねえよ」

友「てか見てたんなら何で止めなかったんだ?」

後輩「止めても投げますよね。先輩も捕りますよね」

男・友「「…はい」」

後輩「ふふっ。でもかっこよかったですよ」

男「そうだな。なんたって優勝投手だからな」

友「お前ってやつは…」ハァ

後輩「わかってましたけど…」

男「???」

女「あ、ここにいたのね」

77: 2016/02/19(金) 23:43:57.14 ID:RBffq+PXO
幼友「皆で写真撮りましょ」

友「なら俺が真ん中だな!」フフン

幼「友くん、撮ってね」

友「おい!扱い酷くね?!」

担任「はいはい。私が撮るわ」

担任「はい、チーズ」パシャ


78: 2016/02/20(土) 00:06:05.17 ID:o9xoe2j1O
新学期
友「うー寒ぃ…」

幼友「今日も部活?」

友「おう。幼ちゃんはどーした?」

幼友「先に行ったわ」

友「そうか」

女「あら、おはよう幼友さんに友くん」

友「お!おはよう女さん」

幼友「女ちゃん、今日の物理テストなんだけど…」

女「教えてあげるわよ」

幼友「ありがとー♪」

友「調子良いやつだな…」

女「まったくね…」

79: 2016/02/20(土) 00:11:48.98 ID:o9xoe2j1O
教室
友「おっはよー」ガラガラッ

幼「…」

幼友「おはよー幼。どしたの?」

幼「男の席……無い」

女「……え?」

友「なに?」

担任「…」ガラガラッ

担任「皆さんには話すことがあります」

担任「男くんは…退学しました」

80: 2016/02/20(土) 00:36:21.83 ID:o9xoe2j1O
手術前
医者「骨髄に転移してるね」

医者「はっきり言おう、もう現代医学では救出不可能だ」

男「そ、そうですか…」

男父「……」

男「じゃあ医者さん、俺の頼みを聞いてくれ」




医者「…なるほど。わかった、善処しよう。本当にすまないね…私達では救えなかった…」

男「良いんすよ。そのうちすっげえ医者が出てきますから…」

医者「そうか。私達も負けられないよ」

医者「本当に良く頑張ったね。最後までちゃんと面倒見ることを約束するよ」

男父「うっ……うっ……」ボロボロ

医者「あなたも前を向きなさい。この少年はもう前を向いてるよ」

男父「……はい」

男「妹には言っといてくれよ」

医者「妹さんには私が言うよ」

男「?いや、でも」

医者「まぁ任せなさい」

81: 2016/02/20(土) 00:42:05.11 ID:o9xoe2j1O
医者「すまないね、妹さん。私が大きなミスをしてしまって……」

医者「本当は助かるはずだったのに…もう彼は助からない」

妹「先生!そんなの嘘ですよね!何とかして下さい!!」

医者「すまない…もう手遅れになってしまった…私のせいだよ」

妹「そ、そんな……」ボロボロ

医者「私が言うのも何だが、彼を支えてほしい。彼も不安だろうからね」

妹「そんなの……あんまりだよ……」ボロボロ

医者「……すまないね」

男「……」




男「まさか、あいつに責任感じさせないために…」

医者「…そういうことだね」

男「無茶するしますね…訴えられたらどーすんですか…」

医者「その時はその時さ」

男「…」スクッ

医者「ん?トイレかい?」



男「今まで、本当にありがとうございました!!!」

医者「やめたまえ。私は当たり前のことをしてるんだ」

医者「そんなこと言われたら泣くことを我慢出来なくなってしまうよ…」

男「あなたには沢山お世話になりました」

男「残り少ないですが、宜しくお願いします」ポロポロ

医者「君は強がりなのかい?」

男「ええ。それはもう」

82: 2016/02/20(土) 01:03:04.91 ID:o9xoe2j1O
現在(新学期初日)


バンッ!
友「男!」

男「…あぁ、…友か」

友「おい、なんだよこれ…」

男「なんだ……授業どした…」

友「そんなことはどうでも良いんだよ!お前、手術成功したんじゃねえのかよ!!」

男「へ、へへ……」

幼「男!」

女「……嘘でしょ」

男「……おぉ、お前等か…」

男「病院だから…静にな……」

後輩「…先輩、こんなのあんまりですよ……」

男「後輩…か。すまねえな…俺の最後の我儘、通して貰ったんだよ……」

友「じゃあこの前のキャッチボールは……」ポロポロ

男「へへ……わかんなかったろ。でも…最高の思い出だ……」

後輩「…」グスッ

女「こんなの…あんまりじゃない……」ポロポロ

幼「ばかぁ……」ボロボロ

83: 2016/02/20(土) 01:13:18.25 ID:o9xoe2j1O
男「ん…もうこんな時間か…」

女「医者から聞いたわ」

友「…」

幼「…」

後輩「…」

幼友「…」

男「そっか…お前等、沢山…迷惑かけたな……」

担任「男くん!」ガラガラッ

男「……先生か。親父に…母さんに妹もいるみたい…だな」

妹「ねえお兄ちゃん」

男「どした…妹」

妹「私、お兄ちゃんが私のお兄ちゃんで良かったよ。私のために身体壊すまで……」グスッ

妹「私、馬鹿だよ。もっとお兄ちゃんと話したかった…」

妹「お兄ちゃんは私の誇りのお兄ちゃんだよ…今まで……」ポロポロ

妹「今までありがとう……お兄ちゃん」ポロポロ

男「おう…お前も俺の…自慢の妹だ」

友「男…俺、必ず日本一の投手になる」

友「ありがとうな、男…あんな風に一時期なっちまったけど……」

友「後にも先にもお前は俺の正捕手だからな!」ボロボロ

男「あったりめーよ……」

友「小学のときから汗も涙も笑顔も共有して……最高の親友だ…」

友「辛いとき、嬉しいとき、悲しいとき、楽しいとき……お前を思い出して頑張るからな…」ボロボロ

男「…」スッ

男「こうやって…昔はよく拳を合わせて約束したろ…」

友「ああ……約束だ…………」コツッ

84: 2016/02/20(土) 01:19:41.51 ID:o9xoe2j1O
女「ア…男、もうこうなったら私も割り切るわね」

女「初めて存在を知ったのは中学最初のテスト。男は一番だった」

男「あぁ…懐かしいな……」

女「あれから必氏に努力した。それでも勝てなくて…いつか勝つって目標にしてたの」

女「最後まで勝てなかったわ………でも私は努力を続ける。必ず夢を叶えるから」

女「本当にありがとう。ここまで頑張れたのはあなたのお蔭よ…」グスッ

男「お前なら何にでも…なれると思うぞ…」

後輩「先輩…」

後輩「先輩とは中学野球部から知り合って…」

後輩「マネージャーでしかも後輩の私にも声をかけてくれて……優しくて…強くて…」

後輩「沢山お世話になりました……私は何も出来なくて…」

男「そんなことねえよ…可愛い後輩が…応援してくれて俺も頑張れた……」

後輩「ふふっ。こんな…ときまで……先輩は相変わらずですね…」グスッ

後輩「先輩、お疲れ様でした……」ボロボロ

男「あぁ…ありがとうな……」

85: 2016/02/20(土) 01:24:12.95 ID:o9xoe2j1O
幼「男…………」ボロボロ

男「なんだよ…しょうがねーやつだな……」

幼「私……ここまで来てもやっぱヤダ…氏んでほしくない」ボロボロ

男「俺も…氏にたくねえ……」

幼「ねえ男……私ね…毎日幸せだったよ…男と一緒にいた毎日が……」ボロボロ

男「そうか……勉強会の約束…破って悪かったな……」

女「ううん………ねえ、男」グスッ

男「…どした」

女「今まで本当にありがとう。ずっと…ずっと男のこと忘れないからね」

男「あぁ……俺も幸せだった…」

男「なぁ…ちょっと眠いから………寝ても良いか?」

女「うん……いいよ。…おやすみ」ボロボロ

男「おう……そうだ、皆今まで本当にありがとう…」





男がそれ以来目を開けることはありませんでした
あれから皆で泣いて、お葬式をして……それぞれの未来に向かって歩き出しました



男、ありがとう

さよなら

86: 2016/02/20(土) 01:29:10.81 ID:o9xoe2j1O
おわりです。胸糞注意って書けばよかった
ぶっちゃけ設定とか細かいところは気にせずやったし、出来が悪すぎて途中心折れたけどなんとか書けた
まぁこういう救いのないものもたまにはアリかと。投げやりっぽくなってすまんな

87: 2016/02/20(土) 03:18:26.23 ID:CT1XMdXAo
おつ
エピローグはよ

引用元: 男「ん…もうこんな時間か…」