1: 2009/09/29(火) 21:13:31.46 ID:6DiPQLl80
思いのほか長くなった
割かし真面目に書いたので良かったら読んでくれ
以下、携帯から書き込み
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2: 2009/09/29(火) 21:16:28.02 ID:vbUB6mwpO
夜。
私は芝生の上で寝転がり、空を見上げる。
空にはびっしりと星が敷き詰められていた。
あれがデネブ、アルタイル、ベガ。
こんなやり取りをしたのはもう何年前のことだろうか。
私は空を見上げる。
それは二人の約束だから。
私の隣にもうキミはいない。
夜空はあの頃のままなのに、
私達があの頃のままでいることは出来なかった。
私は芝生の上で寝転がり、空を見上げる。
空にはびっしりと星が敷き詰められていた。
あれがデネブ、アルタイル、ベガ。
こんなやり取りをしたのはもう何年前のことだろうか。
私は空を見上げる。
それは二人の約束だから。
私の隣にもうキミはいない。
夜空はあの頃のままなのに、
私達があの頃のままでいることは出来なかった。
7: 2009/09/29(火) 21:21:18.85 ID:vbUB6mwpO
唯「またケンカ~?」
唯の声にハッと我に返る。
でも、ここまで来たらもう引き下がるわけにいかなかった。
澪「だって律が…」
律「はいはい、全面的に私が悪ぅございましたぁ。すいませんねぇ」
澪「なんだよその態度!」
律「謝ってんだろ。まだ何か文句あるのかよ」
澪「だからお前のそういう態度が…!」
最近、律の一言一句に腹が立つ。
いつからこうなったのだろうか。
梓「兄弟喧嘩は犬も食わないってよく言いますけど…」
紬「もう放っておくしかないわね…」
唯の声にハッと我に返る。
でも、ここまで来たらもう引き下がるわけにいかなかった。
澪「だって律が…」
律「はいはい、全面的に私が悪ぅございましたぁ。すいませんねぇ」
澪「なんだよその態度!」
律「謝ってんだろ。まだ何か文句あるのかよ」
澪「だからお前のそういう態度が…!」
最近、律の一言一句に腹が立つ。
いつからこうなったのだろうか。
梓「兄弟喧嘩は犬も食わないってよく言いますけど…」
紬「もう放っておくしかないわね…」
9: 2009/09/29(火) 21:26:21.12 ID:vbUB6mwpO
文化祭前、私達がケンカをした時、
本気で心配してくれていた梓も今では呆れ気味だ。
後輩に呆れられるとは、我ながら情けなく思う。
ムギも梓同様、以前はケンカを止めようと努力していたが、
最近は静観を決め込んでいる。
律「空気悪くするなよ、まったく」
澪「おまっ!」
…。
言いかけてやめた。
こいつと言い争ってても不毛だ。
意味がない。
どうせ、どちらも譲り合う気がないのだから。
私はムギの方を向いていつもの椅子に腰掛ける。
もう何ヵ月も正面を向いて座ってない。
私の正面に座る律も同様だった。
本気で心配してくれていた梓も今では呆れ気味だ。
後輩に呆れられるとは、我ながら情けなく思う。
ムギも梓同様、以前はケンカを止めようと努力していたが、
最近は静観を決め込んでいる。
律「空気悪くするなよ、まったく」
澪「おまっ!」
…。
言いかけてやめた。
こいつと言い争ってても不毛だ。
意味がない。
どうせ、どちらも譲り合う気がないのだから。
私はムギの方を向いていつもの椅子に腰掛ける。
もう何ヵ月も正面を向いて座ってない。
私の正面に座る律も同様だった。
10: 2009/09/29(火) 21:31:41.62 ID:vbUB6mwpO
唯「りっちゃん、あまりこっち見ないでよ~」
律「いいだろ~。私達親友なんだし」
「親友」を嫌に強調する。
嫌味な奴だ。
唯「それはそうだけど。うぅ、視線が気になる…」
梓「澪先輩も律先輩も姿勢が悪くなりますよ。ちゃんと座った方がいいと思います」
澪「ん…」
律「ちぇっ…」
紬「梓ちゃんに注意されるなんて、あまり誇れることではないわ」
さすがのムギも私達の行動に堪忍袋の緒が切れそうな様子だった。
律「いいだろ~。私達親友なんだし」
「親友」を嫌に強調する。
嫌味な奴だ。
唯「それはそうだけど。うぅ、視線が気になる…」
梓「澪先輩も律先輩も姿勢が悪くなりますよ。ちゃんと座った方がいいと思います」
澪「ん…」
律「ちぇっ…」
紬「梓ちゃんに注意されるなんて、あまり誇れることではないわ」
さすがのムギも私達の行動に堪忍袋の緒が切れそうな様子だった。
12: 2009/09/29(火) 21:36:17.90 ID:vbUB6mwpO
律「先に澪がちゃんと座れよ」
澪「なんで私が先なんだよ。律が先」
律「嫌だよ。これは部長命令なの!」
澪「だから?」
唯「また始まった」
紬「もういいわ。私達はお茶を楽しみましょう。梓ちゃんもこっちにおいで」
梓「あ、はい」
大抵、私達があーだこーだ言ってる間に下校時刻となる。
したがって、最近はまともにバンド練習ができていない。
最悪。
澪「なんで私が先なんだよ。律が先」
律「嫌だよ。これは部長命令なの!」
澪「だから?」
唯「また始まった」
紬「もういいわ。私達はお茶を楽しみましょう。梓ちゃんもこっちにおいで」
梓「あ、はい」
大抵、私達があーだこーだ言ってる間に下校時刻となる。
したがって、最近はまともにバンド練習ができていない。
最悪。
13: 2009/09/29(火) 21:41:11.97 ID:vbUB6mwpO
私と律がケンカしていると、突然音楽室の扉が開いた。
入ってきたのはもちろん私達の顧問である。
さわ子「おいっす!」
唯「さわちゃーん。イラッシャーイ」
さわ子「はいはい。みんな今日はちゃんと練習してる?」
梓「いえ、今日も律先輩と澪先輩がこの調子で…」
律「」ムスッ
澪「」プイッ
さわ子「あんたたち相変わらずなの…せっかく今日はいい話を持ってきたのに」
入ってきたのはもちろん私達の顧問である。
さわ子「おいっす!」
唯「さわちゃーん。イラッシャーイ」
さわ子「はいはい。みんな今日はちゃんと練習してる?」
梓「いえ、今日も律先輩と澪先輩がこの調子で…」
律「」ムスッ
澪「」プイッ
さわ子「あんたたち相変わらずなの…せっかく今日はいい話を持ってきたのに」
14: 2009/09/29(火) 21:46:28.43 ID:vbUB6mwpO
唯「いい話って何々!?」
さわ子「慌てないことよ、唯ちゃん」
梓「ゴクリ」
紬「気になります…」
律「ふん…」
いい話ってなんだろう。
律の手前、唯のようにはしゃぐことはできないけれど、
私もすごく気になった。
さわ子「それはね…ふっふっふ。懸賞で温泉旅行が当たっちゃいましたー!」
さわ子「慌てないことよ、唯ちゃん」
梓「ゴクリ」
紬「気になります…」
律「ふん…」
いい話ってなんだろう。
律の手前、唯のようにはしゃぐことはできないけれど、
私もすごく気になった。
さわ子「それはね…ふっふっふ。懸賞で温泉旅行が当たっちゃいましたー!」
16: 2009/09/29(火) 21:51:18.44 ID:vbUB6mwpO
唯「さわちゃんすごい!」
さわ子「アハハ、もっと誉めて~!」
唯「男運がない代わりにくじ運はあるんだね!」
さわ子「そうそう、そりゃもう私の男運は地べたを這いつくばるが如く…って何言わせるの」
唯「えへへ。うまいこと言っちゃった」
えへへ、じゃないだろ…。
別にうまくもないし。
さわ子「アハハ、もっと誉めて~!」
唯「男運がない代わりにくじ運はあるんだね!」
さわ子「そうそう、そりゃもう私の男運は地べたを這いつくばるが如く…って何言わせるの」
唯「えへへ。うまいこと言っちゃった」
えへへ、じゃないだろ…。
別にうまくもないし。
17: 2009/09/29(火) 21:56:08.66 ID:vbUB6mwpO
明日は近場の温泉に一泊旅行。
楽しみ半分、律のことを考えると憂鬱半分と言ったところか。
恐らく、律も私と似たような精神状態だろう。
まぁ、律のことはどうでもいい。
もう寝ちゃおう。
次の日、唯は出発時刻を過ぎてから集合場所に到着。
今日はさわ子先生が運転するレンタカーで行くことになっていたから、
問題ないと言えばないのだが…
唯「えへへ~、みんなごめんね~」
いつもの唯スマイルのおかげで、怒る気も失せてしまった。
楽しみ半分、律のことを考えると憂鬱半分と言ったところか。
恐らく、律も私と似たような精神状態だろう。
まぁ、律のことはどうでもいい。
もう寝ちゃおう。
次の日、唯は出発時刻を過ぎてから集合場所に到着。
今日はさわ子先生が運転するレンタカーで行くことになっていたから、
問題ないと言えばないのだが…
唯「えへへ~、みんなごめんね~」
いつもの唯スマイルのおかげで、怒る気も失せてしまった。
18: 2009/09/29(火) 22:01:13.78 ID:vbUB6mwpO
さっそく私達はバンに乗り込む。
私が助手席、中列に梓とムギ。
最後列が唯と律という案配だ。
道中、さわ子先生お気に入りのメタルを聴きながら目的地へと向かった。
さわ子先生はノリノリだったが、
私達からすれば、こんな曲を聴きながら数時間も車に乗らなければならないと思うと気が重い。
バックミラーを覗くと、唯と律が何かコソコソ話し合って笑っている。
曲のせいもあって二人の会話を聞き取ることはできなかった。
少し前まで、唯の位置にいたのは私なのに、
と思った瞬間、顔が熱くなった。
何を嫉妬しているんだ、私は。
私が助手席、中列に梓とムギ。
最後列が唯と律という案配だ。
道中、さわ子先生お気に入りのメタルを聴きながら目的地へと向かった。
さわ子先生はノリノリだったが、
私達からすれば、こんな曲を聴きながら数時間も車に乗らなければならないと思うと気が重い。
バックミラーを覗くと、唯と律が何かコソコソ話し合って笑っている。
曲のせいもあって二人の会話を聞き取ることはできなかった。
少し前まで、唯の位置にいたのは私なのに、
と思った瞬間、顔が熱くなった。
何を嫉妬しているんだ、私は。
20: 2009/09/29(火) 22:06:27.72 ID:vbUB6mwpO
さわ子「澪ちゃん、りっちゃんとはまだ仲直りできないの?」
澪「まぁ…」
さわ子「何があったかまで聞くのは野暮だろうから聞かないわ。でもあなたたちらしくないわよ」
澪「それはわかってますけど」
さわ子「前はあんなに仲良しだったじゃない。澪ちゃんとりっちゃんは軽音部を引っ張る存在なんだから、いつまでもそんなことじゃダメよ」
澪「…」ムスッ
私は律が素直になれば、いつでも仲直りするつもりだけど、
あいつがあんな態度だから…。
澪「まぁ…」
さわ子「何があったかまで聞くのは野暮だろうから聞かないわ。でもあなたたちらしくないわよ」
澪「それはわかってますけど」
さわ子「前はあんなに仲良しだったじゃない。澪ちゃんとりっちゃんは軽音部を引っ張る存在なんだから、いつまでもそんなことじゃダメよ」
澪「…」ムスッ
私は律が素直になれば、いつでも仲直りするつもりだけど、
あいつがあんな態度だから…。
21: 2009/09/29(火) 22:11:17.08 ID:vbUB6mwpO
ケンカの原因は実にくだらないものだ。
確かあれは、1ヶ月前。
律「ほげ~」ダラー
唯「アハハ~りっちゃん、両さんみたい」
律「なんだ唯。あんなつまらないドラマ見てんのかよ~」
唯「つまらなくないよ!シンゴくん格好いいもん」
律「慎吾は格好いいけど、脚本が…ね」
唯「ぶー、りっちゃんのくせに…」
律「おいこら」
確かあれは、1ヶ月前。
律「ほげ~」ダラー
唯「アハハ~りっちゃん、両さんみたい」
律「なんだ唯。あんなつまらないドラマ見てんのかよ~」
唯「つまらなくないよ!シンゴくん格好いいもん」
律「慎吾は格好いいけど、脚本が…ね」
唯「ぶー、りっちゃんのくせに…」
律「おいこら」
24: 2009/09/29(火) 22:16:17.67 ID:vbUB6mwpO
唯、律「ほげ~」ダラー
澪「おい律。もう文化祭終わって1月経つぞ。この1ヶ月間全然練習してないじゃないか」
律「いいのいいの。どうせ後は来年の新歓まで何もないんだから」
澪「だからって毎日こんなにダラけてていいわけないだろ!」
梓「そうです!最近は私と澪先輩とムギ先輩でしか合わせてないんです!そろそろ真面目にやりましょう」
紬「さすがに私もみんなと合わせて練習したいわ」
律「なんだよ~みんなして。でもこっちにはダラケ女王唯がいるもんね~!」
澪「おい律。もう文化祭終わって1月経つぞ。この1ヶ月間全然練習してないじゃないか」
律「いいのいいの。どうせ後は来年の新歓まで何もないんだから」
澪「だからって毎日こんなにダラけてていいわけないだろ!」
梓「そうです!最近は私と澪先輩とムギ先輩でしか合わせてないんです!そろそろ真面目にやりましょう」
紬「さすがに私もみんなと合わせて練習したいわ」
律「なんだよ~みんなして。でもこっちにはダラケ女王唯がいるもんね~!」
27: 2009/09/29(火) 22:21:11.93 ID:vbUB6mwpO
唯「でも私もそろそろギー太に触りたいかな~。コードも忘れちゃうし」
律「えー…」
澪「後はお前だけだぞ律」
律「む~…じゃあ明日!明日から本気出す!それでいいだろ?」
澪「本当だな…?じゃあ、明日はみっちり練習だからな」
梓「やっと普通に部活ができるです」
紬「良かったわね梓ちゃん」
唯「よーし!明日に向けて今日は帰るぞー!おー!」
一同「おいおい…」
律「えー…」
澪「後はお前だけだぞ律」
律「む~…じゃあ明日!明日から本気出す!それでいいだろ?」
澪「本当だな…?じゃあ、明日はみっちり練習だからな」
梓「やっと普通に部活ができるです」
紬「良かったわね梓ちゃん」
唯「よーし!明日に向けて今日は帰るぞー!おー!」
一同「おいおい…」
30: 2009/09/29(火) 22:26:29.75 ID:vbUB6mwpO
そして次の日。
予想通りと言えば予想通りだったが、練習直前、
また律がゴネ始めた。
律「今日は筋肉痛でさー。あいたたた」
一同「…」
さすがの私も堪忍袋の緒が切れた。
ここで甘やかしたら、またこいつは付け上がる。
ならば、幼馴染みとして渇を入れてやらねばなるまい。
バシン!
乾いた音が音楽室に響く。
私以外、一瞬何が起きたかわからないようだった。
予想通りと言えば予想通りだったが、練習直前、
また律がゴネ始めた。
律「今日は筋肉痛でさー。あいたたた」
一同「…」
さすがの私も堪忍袋の緒が切れた。
ここで甘やかしたら、またこいつは付け上がる。
ならば、幼馴染みとして渇を入れてやらねばなるまい。
バシン!
乾いた音が音楽室に響く。
私以外、一瞬何が起きたかわからないようだった。
31: 2009/09/29(火) 22:31:22.79 ID:vbUB6mwpO
律「へ…?何…」
律は右頬を赤く染め、困惑している。
澪「いい加減にしろバカ」
最初に状況を理解したのは意外にも唯だった。
唯「み、澪ちゃんいくらなんでもツッコミ激しすぎだよ~。りっちゃんがギャグできなくなっちゃう」
唯は少しでも場の空気を和らげようとしたのだろう。
心優しい唯らしい。
だが、それは無駄に終わってしまった。
律「いったいな!急に何すんだよ!」
律は右頬を赤く染め、困惑している。
澪「いい加減にしろバカ」
最初に状況を理解したのは意外にも唯だった。
唯「み、澪ちゃんいくらなんでもツッコミ激しすぎだよ~。りっちゃんがギャグできなくなっちゃう」
唯は少しでも場の空気を和らげようとしたのだろう。
心優しい唯らしい。
だが、それは無駄に終わってしまった。
律「いったいな!急に何すんだよ!」
32: 2009/09/29(火) 22:35:45.04 ID:vbUB6mwpO
澪「お前が約束を守らないからだろバカ」
律「何だよさっきからバカバカって!」
澪「バカだからバカって言ったんだ。何か間違ってるか?」
バシン!
またしても小気味いい音が響いた。
殴られたのが私という違いはあったが。
澪「――――!」
律「これでおあいこだバーカ」
律「何だよさっきからバカバカって!」
澪「バカだからバカって言ったんだ。何か間違ってるか?」
バシン!
またしても小気味いい音が響いた。
殴られたのが私という違いはあったが。
澪「――――!」
律「これでおあいこだバーカ」
46: 2009/09/29(火) 23:27:09.89 ID:vbUB6mwpO
梓「あぅ…」
紬「ちょっと二人とも…」
澪「そんなに無責任ならもう部長なんてやめろ!」
律「文句あるならお前がやめればいいだろ!」
澪「こいつ…!」
私は律の頬にもう一発くれてやろうと手を振り上げた。
唯「た、タイムタイム!タイムアウト!」
私と律の間に唯がわって入った。
紬「ちょっと二人とも…」
澪「そんなに無責任ならもう部長なんてやめろ!」
律「文句あるならお前がやめればいいだろ!」
澪「こいつ…!」
私は律の頬にもう一発くれてやろうと手を振り上げた。
唯「た、タイムタイム!タイムアウト!」
私と律の間に唯がわって入った。
48: 2009/09/29(火) 23:33:27.63 ID:vbUB6mwpO
唯「ね、練習しよ?ね?」
澪「…」
律「ちっ…」
唯の機転で久しぶりに5人で合わせて演奏したが、もう最悪。
1ヶ月ぶりということもあるだろうが、
音も気持ちもバラバラだった。
その後はみなさんの知る通りである。
回想終わり。
思い出したらまた腹が立ってきた。
そうこうしているうちに、私達が今日泊まる温泉宿に到着した。
澪「…」
律「ちっ…」
唯の機転で久しぶりに5人で合わせて演奏したが、もう最悪。
1ヶ月ぶりということもあるだろうが、
音も気持ちもバラバラだった。
その後はみなさんの知る通りである。
回想終わり。
思い出したらまた腹が立ってきた。
そうこうしているうちに、私達が今日泊まる温泉宿に到着した。
49: 2009/09/29(火) 23:38:20.37 ID:vbUB6mwpO
さわ子「それじゃあさっそく温泉かしら!行くわよ唯ちゃん!」
唯「いえっさ!」
紬「私も楽しみ♪」
梓「先輩達元気いいですね…私なんてあの曲と車の揺れで疲れが…」
澪、律「私も…」
澪「…」
律「…」
唯「いえっさ!」
紬「私も楽しみ♪」
梓「先輩達元気いいですね…私なんてあの曲と車の揺れで疲れが…」
澪、律「私も…」
澪「…」
律「…」
50: 2009/09/29(火) 23:39:54.92 ID:vbUB6mwpO
やり直し
さわ子「それじゃあさっそく温泉かしら!行くわよ唯ちゃん!」
唯「らじゃあ!」
紬「私も楽しみ♪」
梓「先輩達元気いいですね…私なんてあの曲と車の揺れで疲れが…」
澪、律「私も…」
澪「…」
律「…」
さわ子「それじゃあさっそく温泉かしら!行くわよ唯ちゃん!」
唯「らじゃあ!」
紬「私も楽しみ♪」
梓「先輩達元気いいですね…私なんてあの曲と車の揺れで疲れが…」
澪、律「私も…」
澪「…」
律「…」
52: 2009/09/29(火) 23:43:24.59 ID:vbUB6mwpO
唯「りっちゃん、サウナだよ!露天風呂だよ~!GOGO!」
律「待ってましたぁ!…ふぅ」
梓「疲れてるなら疲れてる顔すればいいのに。律先輩は素直じゃないです」
律「むっ、そんな生意気な事を言うのはこの口かー?うりうり」
梓「やめふぇくらはいー」
紬「♪」
律と梓のやり取りを見ながらムギはうっとり顔をしている。
私と律以外は平和だ。
律「待ってましたぁ!…ふぅ」
梓「疲れてるなら疲れてる顔すればいいのに。律先輩は素直じゃないです」
律「むっ、そんな生意気な事を言うのはこの口かー?うりうり」
梓「やめふぇくらはいー」
紬「♪」
律と梓のやり取りを見ながらムギはうっとり顔をしている。
私と律以外は平和だ。
55: 2009/09/29(火) 23:48:22.62 ID:vbUB6mwpO
唯「みんなで露天風呂に入るのは初めてだね」
律「今年の合宿は露天風呂なかったもんな」
律「あの時は唯の言葉で澪が照れ…」
律は何かを言いかけて、口を閉じた。
唯「澪ちゃんがなんだって~?」ニヤニヤ
律「うるさい!なんでもないよ!」
律「今年の合宿は露天風呂なかったもんな」
律「あの時は唯の言葉で澪が照れ…」
律は何かを言いかけて、口を閉じた。
唯「澪ちゃんがなんだって~?」ニヤニヤ
律「うるさい!なんでもないよ!」
58: 2009/09/29(火) 23:53:21.70 ID:vbUB6mwpO
さわ子「もう、あんたたち仲直りしたら?」
紬「せっかく一緒にお風呂に入ったことだしこのまま水に流してしまいましょう♪」
唯「うまい!」テレッテー
梓「割と使いふるされたネタのような気が…」
澪「私はもう別に…」
律が素直になって、練習もちゃんとしてくれるなら。
律「私も…」
律「…」
律「のぼせた!もう出る!」
唯「ちょっ、りっちゃん!」
紬「せっかく一緒にお風呂に入ったことだしこのまま水に流してしまいましょう♪」
唯「うまい!」テレッテー
梓「割と使いふるされたネタのような気が…」
澪「私はもう別に…」
律が素直になって、練習もちゃんとしてくれるなら。
律「私も…」
律「…」
律「のぼせた!もう出る!」
唯「ちょっ、りっちゃん!」
60: 2009/09/29(火) 23:58:28.45 ID:vbUB6mwpO
さわ子「素直じゃないんだから…」
紬「溝は深いですね…」
澪「あいつのああいう所が嫌なんです。自己中だし、自分の思い通りにいかないとすぐ拗ねる」
唯「私が言うのも何だけど、りっちゃんは子供っぽいところがあるから…」
澪「だろ?唯もそう思うよな?」
梓「でもいきなりひっぱたくのはどうかと思います」
澪「それはあいつが言ってもわかってくれないから…」
唯「りっちゃんは澪ちゃんなら、言葉がなくても自分のことを理解してくれると思ったんじゃないの~?」
紬「溝は深いですね…」
澪「あいつのああいう所が嫌なんです。自己中だし、自分の思い通りにいかないとすぐ拗ねる」
唯「私が言うのも何だけど、りっちゃんは子供っぽいところがあるから…」
澪「だろ?唯もそう思うよな?」
梓「でもいきなりひっぱたくのはどうかと思います」
澪「それはあいつが言ってもわかってくれないから…」
唯「りっちゃんは澪ちゃんなら、言葉がなくても自分のことを理解してくれると思ったんじゃないの~?」
61: 2009/09/30(水) 00:03:23.94 ID:XeW1jTZKO
紬「そうかもね。それだけ長く一緒にいたら何も言わなくてもお互い理解できたりするもの。私も…」
澪「え?何?」
紬「ううん、なんでもない」
唯「私も和ちゃんが何を考えているかわかるよ時あるよ~!」
梓「幼馴染み、親友ってそういうものですよね」
紬「澪ちゃんは今りっちゃんが何を考えているかわかる?」
澪「それは…」
わからないわけがない。
あいつも私に謝りたくて仕方がないんだ。
ああ見えて律は不器用だから、どう切り出していいのかわからないのだろう。
澪「まったく、厄介な幼馴染みを持ったものだな」
澪「え?何?」
紬「ううん、なんでもない」
唯「私も和ちゃんが何を考えているかわかるよ時あるよ~!」
梓「幼馴染み、親友ってそういうものですよね」
紬「澪ちゃんは今りっちゃんが何を考えているかわかる?」
澪「それは…」
わからないわけがない。
あいつも私に謝りたくて仕方がないんだ。
ああ見えて律は不器用だから、どう切り出していいのかわからないのだろう。
澪「まったく、厄介な幼馴染みを持ったものだな」
63: 2009/09/30(水) 00:08:15.47 ID:XeW1jTZKO
紬「そういう割には嬉しそうな顔をしているわ」
澪「ん?そう?」
梓「いつもの澪先輩です」
澪「うん。私もちょっと意地になってたところがあった。ここは私が折れてやるか」
唯「やっといつもの軽音部かー。もー毎日肩凝ったよ~」
梓「嘘ばっかり」
唯「へへ、バレた?」
澪「ごめんなみんな、今まで気を使わせて」
澪「ん?そう?」
梓「いつもの澪先輩です」
澪「うん。私もちょっと意地になってたところがあった。ここは私が折れてやるか」
唯「やっといつもの軽音部かー。もー毎日肩凝ったよ~」
梓「嘘ばっかり」
唯「へへ、バレた?」
澪「ごめんなみんな、今まで気を使わせて」
64: 2009/09/30(水) 00:13:22.96 ID:XeW1jTZKO
いざとなると中々声をかけ辛いものだ。
何度もチャンスを伺うが、そのたびに逃げられる。
唯「澪ちゃん、しっかり!」
澪「う、うん…でもあいつ明らかに私を避けてるし…」
唯「もぅ!さっきの意気込みはどこに行ったの!」
澪「だって…」
唯「だってじゃないよ!あーもう、まどろっこしい!」
澪「え、ちょ唯!?」
何度もチャンスを伺うが、そのたびに逃げられる。
唯「澪ちゃん、しっかり!」
澪「う、うん…でもあいつ明らかに私を避けてるし…」
唯「もぅ!さっきの意気込みはどこに行ったの!」
澪「だって…」
唯「だってじゃないよ!あーもう、まどろっこしい!」
澪「え、ちょ唯!?」
65: 2009/09/30(水) 00:18:27.10 ID:XeW1jTZKO
唯「りっちゃん!」
律「えっ何?」
唯「ちょっとこっちおいで!澪ちゃんも!」
澪「うわっ」
私と律は唯に手を引かれ、宿の外へ躍り出た。
律「何…?」
唯「二人とも一晩頭を冷やしなさい!お母さん、もう怒りましたからね!」プンプン
澪「お母さん…?」
律「えっ何?」
唯「ちょっとこっちおいで!澪ちゃんも!」
澪「うわっ」
私と律は唯に手を引かれ、宿の外へ躍り出た。
律「何…?」
唯「二人とも一晩頭を冷やしなさい!お母さん、もう怒りましたからね!」プンプン
澪「お母さん…?」
67: 2009/09/30(水) 00:23:43.53 ID:XeW1jTZKO
唯「ちゃんと話し合って、仲直りしないと部屋に入れてあげないからね」プンプン
澪「ちょっと待て唯!」
律「…」
なんということだ。
唯の奴、勝手に玄関の鍵を掛けやがった。
他に客はいないようだから問題はない…のか?
澪「…」
律「…」
沈黙が続くこと5分。
せっかく唯がお膳立てしてくれたのだ。
その好意をありがたく頂こう。
澪「とりあえず歩くか」
律「うん」
澪「ちょっと待て唯!」
律「…」
なんということだ。
唯の奴、勝手に玄関の鍵を掛けやがった。
他に客はいないようだから問題はない…のか?
澪「…」
律「…」
沈黙が続くこと5分。
せっかく唯がお膳立てしてくれたのだ。
その好意をありがたく頂こう。
澪「とりあえず歩くか」
律「うん」
70: 2009/09/30(水) 00:28:27.97 ID:XeW1jTZKO
律「夕飯、うまかったな」
澪「うん」
律「…」
澪「…」
澪「茶碗蒸しが美味しかった」
律「うまかったな」
澪「…」
律「…」
残念ながら、もう修復不可能な気がしてきた。
澪「うん」
律「…」
澪「…」
澪「茶碗蒸しが美味しかった」
律「うまかったな」
澪「…」
律「…」
残念ながら、もう修復不可能な気がしてきた。
72: 2009/09/30(水) 00:33:18.11 ID:XeW1jTZKO
林道を抜けると、
だいぶ開けた場所に出る。
木のせいで気付かなかったが、
今日は雲ひとつない夜だった。
夜空には無数の星が瞬いている。
私も律も、数分間口をポカンと開けて、空を眺めた。
澪「くくく…」
律「どうした?」
澪「いや、だってさ…ぷふ」
客観的に見たら、ひどく間抜けな絵面だろうなと思ったら、
笑わずにはいられなかった。
だいぶ開けた場所に出る。
木のせいで気付かなかったが、
今日は雲ひとつない夜だった。
夜空には無数の星が瞬いている。
私も律も、数分間口をポカンと開けて、空を眺めた。
澪「くくく…」
律「どうした?」
澪「いや、だってさ…ぷふ」
客観的に見たら、ひどく間抜けな絵面だろうなと思ったら、
笑わずにはいられなかった。
73: 2009/09/30(水) 00:38:26.44 ID:XeW1jTZKO
律「なんだよ。何が可笑しいんだよ」
澪「いや、なんでも…ふふ」
律「何なんだよ、気にな…ぶふ」
律も私につられて笑い出した。
澪「アハハハハ、お腹痛い」
律「ハハハ、何が可笑しい!」
澪「…」
律「…ぷっ」
澪、律「アハハハハ」
澪「いや、なんでも…ふふ」
律「何なんだよ、気にな…ぶふ」
律も私につられて笑い出した。
澪「アハハハハ、お腹痛い」
律「ハハハ、何が可笑しい!」
澪「…」
律「…ぷっ」
澪、律「アハハハハ」
75: 2009/09/30(水) 00:43:10.78 ID:XeW1jTZKO
律「はぁ、あー何かもう疲れた!」
澪「私も」
律「よいしょっと」
律が芝生に寝転がる。
私は余り服を汚したくなかったので、
その場に腰を下ろすだけにした。
律「なあ澪。あれって何座?」
澪「さぁ?」
律「さぁってお前、会話終わっちゃうじゃん。織姫様とか彦星様とかあるだろ」
澪「さすがの私でもそれくらいわかるぞ。織姫と彦星は七夕の代名詞ってことくらいな」
澪「私も」
律「よいしょっと」
律が芝生に寝転がる。
私は余り服を汚したくなかったので、
その場に腰を下ろすだけにした。
律「なあ澪。あれって何座?」
澪「さぁ?」
律「さぁってお前、会話終わっちゃうじゃん。織姫様とか彦星様とかあるだろ」
澪「さすがの私でもそれくらいわかるぞ。織姫と彦星は七夕の代名詞ってことくらいな」
76: 2009/09/30(水) 00:48:10.52 ID:XeW1jTZKO
律「てことは、織姫と彦星は見れないの?」
澪「そうなるな」
律「こんなに星があるのに?」
澪「えっ、ああ、うん」
律「そっかぁ、それは大変な事だな」
澪「律ってやっぱりバカだな」
律「んなっ!?」
澪「そうなるな」
律「こんなに星があるのに?」
澪「えっ、ああ、うん」
律「そっかぁ、それは大変な事だな」
澪「律ってやっぱりバカだな」
律「んなっ!?」
78: 2009/09/30(水) 00:53:14.63 ID:XeW1jTZKO
律「はいはい、どうせ私はバカですよー」
澪「ふふ、バーカ」
律「うるさいわい」
澪「星、キレイだな」
律「うん」
澪「…」
律「…」
律「澪、あの時は悪かったな」
澪「ふふ、バーカ」
律「うるさいわい」
澪「星、キレイだな」
律「うん」
澪「…」
律「…」
律「澪、あの時は悪かったな」
79: 2009/09/30(水) 00:58:28.16 ID:XeW1jTZKO
澪「私もいきなり殴っちゃったから…」
律「…」
澪「…」
律「私達なんでケンカしてたんだっけ?」
澪「んー、忘れた」
律「私も忘れた!バカだからな」
澪「じゃあ私もバカか。仲間だな」
律「だな」
律「…」
澪「…」
律「私達なんでケンカしてたんだっけ?」
澪「んー、忘れた」
律「私も忘れた!バカだからな」
澪「じゃあ私もバカか。仲間だな」
律「だな」
81: 2009/09/30(水) 01:03:42.57 ID:XeW1jTZKO
律「ずっと親友な」
澪「うん」
律「ごめんな」
澪「何の謝罪?」
律「この先またケンカすると思うから、先に謝っておく」
澪「なんだよそれ。その時に謝って欲しいな」
律「私は素直じゃないからな。できるときにしておくんだよ」
澪「自己分析はバッチリか」
律「おお!今すぐ履歴書を書けるぞ」
いつもの私達がそこにいた。
澪「うん」
律「ごめんな」
澪「何の謝罪?」
律「この先またケンカすると思うから、先に謝っておく」
澪「なんだよそれ。その時に謝って欲しいな」
律「私は素直じゃないからな。できるときにしておくんだよ」
澪「自己分析はバッチリか」
律「おお!今すぐ履歴書を書けるぞ」
いつもの私達がそこにいた。
83: 2009/09/30(水) 01:08:23.32 ID:XeW1jTZKO
楽しげな一つ隣の君。
律「また来年ここに来ような」
澪「ん?ああ」
律「今度は二人で」
澪「わかった」
律「そうだ!来年と言わず毎年この日にここに来ようぜ!高校卒業しても働き出しても結婚してもばーさんになっても」
澪「氏ぬまで律と会わなくちゃいけないのか?出来れば遠慮したいな」
律「なーに言ってんだ。いいだろ、親友なんだから」
澪「まあ、律だから特別な」
律「また来年ここに来ような」
澪「ん?ああ」
律「今度は二人で」
澪「わかった」
律「そうだ!来年と言わず毎年この日にここに来ようぜ!高校卒業しても働き出しても結婚してもばーさんになっても」
澪「氏ぬまで律と会わなくちゃいけないのか?出来れば遠慮したいな」
律「なーに言ってんだ。いいだろ、親友なんだから」
澪「まあ、律だから特別な」
84: 2009/09/30(水) 01:13:44.44 ID:XeW1jTZKO
私達は別々の大学に入っても、
お互い県外に就職しても、
約束の日には必ずここにいた。
数え切れないほどケンカをした。
取っ組み合いのケンカをしたこともある。
それでも私達の関係が続いたのは、
この時間、この場所を共有できたからに他ならない。
律はどう思っているか定かではないが、私はそう信じている。
お互い県外に就職しても、
約束の日には必ずここにいた。
数え切れないほどケンカをした。
取っ組み合いのケンカをしたこともある。
それでも私達の関係が続いたのは、
この時間、この場所を共有できたからに他ならない。
律はどう思っているか定かではないが、私はそう信じている。
85: 2009/09/30(水) 01:18:29.53 ID:XeW1jTZKO
70年後、私は服の汚れを気にせず芝生の上に寝転がった。
どうやら今年から、ここに来るのは私一人になるらしい。
一人と言っても、ここまで来るために、
息子の車に乗せてもらうわけだけれど。
結局、軽音部の中で一番長生きだったのは私だった。
唯だけは…。
うん、これは私の口から語ることではあるまい。
70年前、せっかく星を眺めに来るのだからと、
星座の勉強をしようと思い参考書を手に取ったが、すぐに諦めた。
わかるのはせいぜい北極星くらいだろうか。
今となってはどうでもいいことだが。
どうやら今年から、ここに来るのは私一人になるらしい。
一人と言っても、ここまで来るために、
息子の車に乗せてもらうわけだけれど。
結局、軽音部の中で一番長生きだったのは私だった。
唯だけは…。
うん、これは私の口から語ることではあるまい。
70年前、せっかく星を眺めに来るのだからと、
星座の勉強をしようと思い参考書を手に取ったが、すぐに諦めた。
わかるのはせいぜい北極星くらいだろうか。
今となってはどうでもいいことだが。
86: 2009/09/30(水) 01:23:15.28 ID:XeW1jTZKO
ふと横に目を向けると、高校生の律が隣にいるような気がした。
澪「何してるんだ?」
律「約束だからな。澪がここに来れなくなるまでは顔を出すさ」
澪「そっか。縁起でもないから早く成仏してほしいものだけど」
律「相変わらずの減らず口だな」
澪「律にだけ、な」
律「私は特別ってか?」
澪「ふふ、よくわかったな」
律「その調子ならあと20年はここに来るつもりか?勘弁してくれよ」
澪「私はまだまだやりたいことがたくさんあるんだ。悪いけどもう少し待っててくれ」
律は私に微笑みかけ、そのまま闇夜に溶けていった。
気がした。
澪「何してるんだ?」
律「約束だからな。澪がここに来れなくなるまでは顔を出すさ」
澪「そっか。縁起でもないから早く成仏してほしいものだけど」
律「相変わらずの減らず口だな」
澪「律にだけ、な」
律「私は特別ってか?」
澪「ふふ、よくわかったな」
律「その調子ならあと20年はここに来るつもりか?勘弁してくれよ」
澪「私はまだまだやりたいことがたくさんあるんだ。悪いけどもう少し待っててくれ」
律は私に微笑みかけ、そのまま闇夜に溶けていった。
気がした。
88: 2009/09/30(水) 01:28:35.35 ID:XeW1jTZKO
息子「母さん、そろそろ宿に戻ろうか。だいぶ冷えてきた」
澪「ええ」
息子「ほら、手を貸すよ」
澪「悪いね」
お恥ずかしながら、私は人の手を借りないとすぐに立ち上がることもできない。
老いとはおそろしいものである。
車が林道に入るまで、私はずっと名も知らぬ星を眺めていた。
それじゃあ律、来年またここで。
唯「今夜星を見に行こう」―澪、律編―
完
澪「ええ」
息子「ほら、手を貸すよ」
澪「悪いね」
お恥ずかしながら、私は人の手を借りないとすぐに立ち上がることもできない。
老いとはおそろしいものである。
車が林道に入るまで、私はずっと名も知らぬ星を眺めていた。
それじゃあ律、来年またここで。
唯「今夜星を見に行こう」―澪、律編―
完
97: 2009/09/30(水) 01:34:53.15 ID:XeW1jTZKO
ちかれた
紬編、唯、憂、梓編に続きます
紬編がカキタメ中なのでカキタメながらの投下
多分さっきより遅くなる
紬編、唯、憂、梓編に続きます
紬編がカキタメ中なのでカキタメながらの投下
多分さっきより遅くなる
99: 2009/09/30(水) 01:40:25.63 ID:XeW1jTZKO
斎藤「お嬢様、冷えてまいりましたのでそろそろ中へ」
紬「うん、すぐに戻るわ。でももう少しだけここにいたいの」
斎藤「では何かお召し物を」
紬「私は大丈夫だから。もう遅いわ、先に休んでて」
斎藤「はっ、では失礼いたします」
あの頃見た星と今見ている星。
全然違って見えるのは何故だろう。
それは天文学的な問題だけではない。
私がそれほど大人になったということなのだ。
紬「うん、すぐに戻るわ。でももう少しだけここにいたいの」
斎藤「では何かお召し物を」
紬「私は大丈夫だから。もう遅いわ、先に休んでて」
斎藤「はっ、では失礼いたします」
あの頃見た星と今見ている星。
全然違って見えるのは何故だろう。
それは天文学的な問題だけではない。
私がそれほど大人になったということなのだ。
102: 2009/09/30(水) 01:48:40.81 ID:XeW1jTZKO
紬「そろそろ休もうかしら」
最近、夜になるととても冷える。
1時間も外にいたら風邪を引いてしまいそうだ。
斎藤が心配して私に声を掛けるのも無理はない。
私は先に休めと言ったけれど、
真面目を絵に描いたあの人のことだ。
きっと、廊下かどこかで私の身を案じてオロオロしているに違いない。
最近、夜になるととても冷える。
1時間も外にいたら風邪を引いてしまいそうだ。
斎藤が心配して私に声を掛けるのも無理はない。
私は先に休めと言ったけれど、
真面目を絵に描いたあの人のことだ。
きっと、廊下かどこかで私の身を案じてオロオロしているに違いない。
105: 2009/09/30(水) 02:00:02.96 ID:XeW1jTZKO
私はあまり、両親を好きにはなれない。
私が幼少の頃から仕事が忙しく、
私と両親が接する時間は一般家庭のそれより圧倒的に少なかったし、
物心ついた頃からやれパーティーだ、やれ付き合いだと言われてきたからである。
私の心の支えは執事である斎藤だけだった。
親の愛情を知らない私に、
まるで本当の親のように優しく接してくれたし、
時には厳しく叱ってくれたりもした。
私にとって斎藤は、父以上に父であり、
母以上に母だった。
私が幼少の頃から仕事が忙しく、
私と両親が接する時間は一般家庭のそれより圧倒的に少なかったし、
物心ついた頃からやれパーティーだ、やれ付き合いだと言われてきたからである。
私の心の支えは執事である斎藤だけだった。
親の愛情を知らない私に、
まるで本当の親のように優しく接してくれたし、
時には厳しく叱ってくれたりもした。
私にとって斎藤は、父以上に父であり、
母以上に母だった。
106: 2009/09/30(水) 02:07:07.30 ID:XeW1jTZKO
文化祭ライブで大成功収めた興奮も覚めやらぬある日、
重要な話があると、父の書斎に呼びだされた。
父に会うのも久しぶりだったので、
出張先での思い出話などをするのだろうと思っていた。
紬「失礼します」
父「ん、入りなさい」
紬「お久しぶりですお父さん。お勤めご苦労様です」
父「うん、紬は少し見ないうちにどんどんキレイになっていくね」
紬「そんなことありません」
重要な話があると、父の書斎に呼びだされた。
父に会うのも久しぶりだったので、
出張先での思い出話などをするのだろうと思っていた。
紬「失礼します」
父「ん、入りなさい」
紬「お久しぶりですお父さん。お勤めご苦労様です」
父「うん、紬は少し見ないうちにどんどんキレイになっていくね」
紬「そんなことありません」
108: 2009/09/30(水) 02:13:30.24 ID:XeW1jTZKO
紬「同じ部活動に所属する秋山澪さんはファンクラブがあるほど素敵な方です。私なんてまだまだ…」
父「確か軽音部だったかな?」
紬「はい」
父「可愛い紬が言うほどだ。その秋山さんはさぞかしお綺麗な方なんだろうね」
紬「お父さんたら…」
お世辞にも私が綺麗だなんて言えるはずがない。
高校生にもなって眉毛の手入れもしない、化粧もしない、
自分でいうのも変だが、天然記念物である。
父「確か軽音部だったかな?」
紬「はい」
父「可愛い紬が言うほどだ。その秋山さんはさぞかしお綺麗な方なんだろうね」
紬「お父さんたら…」
お世辞にも私が綺麗だなんて言えるはずがない。
高校生にもなって眉毛の手入れもしない、化粧もしない、
自分でいうのも変だが、天然記念物である。
110: 2009/09/30(水) 02:24:24.85 ID:XeW1jTZKO
紬「それで、お話って?」
父「ああ、うん。紬の将来のことなんだけどね」
紬「私の将来?今のところあまり考えておりませんが」
父「ああ、いやそうじゃなくて。斎藤、喉が乾いた!お茶をくれないか」
斎藤「ただいま」
いつの間に部屋に入ったのだろう、斎藤が私の後ろに立っていた。
父「ああ、うん。紬の将来のことなんだけどね」
紬「私の将来?今のところあまり考えておりませんが」
父「ああ、いやそうじゃなくて。斎藤、喉が乾いた!お茶をくれないか」
斎藤「ただいま」
いつの間に部屋に入ったのだろう、斎藤が私の後ろに立っていた。
114: 2009/09/30(水) 02:49:15.06 ID:XeW1jTZKO
父「こういう話をするのは緊張するな…」
斎藤「心中お察しいたします」
父「君も心穏やかではないだろう」
斎藤「いえ、私はあくまで執事ですので」
父「相変わらずだな。君らしいね」
斎藤「おそれ多いことです」
斎藤「心中お察しいたします」
父「君も心穏やかではないだろう」
斎藤「いえ、私はあくまで執事ですので」
父「相変わらずだな。君らしいね」
斎藤「おそれ多いことです」
115: 2009/09/30(水) 02:55:29.16 ID:XeW1jTZKO
紬「さきほどから何のお話をなさっているのですか?全く話が見えないのですけど」
父「ああ、そうだね。そう、紬の将来の話だよ」
紬「はい。ですから、あまり考えておりません」
父「紬はそうなんだけど、うーん…なんと言うか」
斎藤「私のでよろしければお嬢様にお伝え致しますが」
父「ああ…頼む…」
父「ああ、そうだね。そう、紬の将来の話だよ」
紬「はい。ですから、あまり考えておりません」
父「紬はそうなんだけど、うーん…なんと言うか」
斎藤「私のでよろしければお嬢様にお伝え致しますが」
父「ああ…頼む…」
118: 2009/09/30(水) 03:07:55.12 ID:XeW1jTZKO
斎藤「お嬢様の正式な婚約者が決まりました」
紬「…は?」
父「うん…」
紬「急にそんなこと言われても困ります。それに私はまだ高校生だし…」
父「何もすぐにどうこうするというわけじゃないさ。近いうちに顔合わせをして25歳前後にでも結婚してくれれば」
紬「だからって、そんな見ず知らずの方と…しかも私の意思もなしに勝手に決めるなんて!」
父「だからこうして今伝えたじゃないか」
紬「…は?」
父「うん…」
紬「急にそんなこと言われても困ります。それに私はまだ高校生だし…」
父「何もすぐにどうこうするというわけじゃないさ。近いうちに顔合わせをして25歳前後にでも結婚してくれれば」
紬「だからって、そんな見ず知らずの方と…しかも私の意思もなしに勝手に決めるなんて!」
父「だからこうして今伝えたじゃないか」
140: 2009/09/30(水) 13:08:36.95 ID:XeW1jTZKO
紬「斎藤は知っていたの?」
斎藤「私も先ほど伺いました」
紬「そう…」
父「相手は青年実業家でね。しかも親は政治家だ。今回の縁組みが決まれば琴吹家も安泰だ」
紬「そうですか。斎藤はどう思ってるの?」
斎藤「両家の安泰、大変喜ばしいことと存じております」
紬「…」
紬「今日はもう休みます。少し考えさせて下さい」
父「ああ、ゆっくり休みなさい」
斎藤「私も先ほど伺いました」
紬「そう…」
父「相手は青年実業家でね。しかも親は政治家だ。今回の縁組みが決まれば琴吹家も安泰だ」
紬「そうですか。斎藤はどう思ってるの?」
斎藤「両家の安泰、大変喜ばしいことと存じております」
紬「…」
紬「今日はもう休みます。少し考えさせて下さい」
父「ああ、ゆっくり休みなさい」
141: 2009/09/30(水) 13:14:40.22 ID:XeW1jTZKO
私はベランダに出て、夜風に当たっていた。
久しぶりに父と会ったと思ったら、これだ。
唯ちゃんはよく、「ムギちゃんはお金持ちで羨ましいな~」
と言うけれど、実際名家に産まれると、普通の家庭ではあまり味わうことのない寂しさを感じたりするし、
今回のように勝手に婚約者を決められたりするのだ。
紬「出来れば普通の家に生まれたかった…」
斎藤「そのような事を申してはいけません」
斎藤はいつの間にか私の後ろに立っていた。
斎藤「あの御方は家名の存続はもちろん、紬お嬢様のことも考えて婚約のお話を…」
紬「私のことを考えているのだったら、勝手に結婚相手を決めたりしないわ」
久しぶりに父と会ったと思ったら、これだ。
唯ちゃんはよく、「ムギちゃんはお金持ちで羨ましいな~」
と言うけれど、実際名家に産まれると、普通の家庭ではあまり味わうことのない寂しさを感じたりするし、
今回のように勝手に婚約者を決められたりするのだ。
紬「出来れば普通の家に生まれたかった…」
斎藤「そのような事を申してはいけません」
斎藤はいつの間にか私の後ろに立っていた。
斎藤「あの御方は家名の存続はもちろん、紬お嬢様のことも考えて婚約のお話を…」
紬「私のことを考えているのだったら、勝手に結婚相手を決めたりしないわ」
144: 2009/09/30(水) 13:23:44.33 ID:XeW1jTZKO
紬「斎藤にもし娘がいたら、娘の意思に関係なく婚約者を決めたりする?」
斎藤「わかりかねます」
紬「それじゃあ、もし私が斎藤の娘だったら?」
斎藤「…」
斎藤「おそれ多いことです」
紬「そう、もういいわ。私ももう少ししたら部屋に戻るから斎藤も休んで」
斎藤「はっ、では」
あなたはいつもそうやって本心を隠す。
約16年間、常にあなたの側にいた私があなたの本心を見破れないわけがないでしょう。
斎藤「わかりかねます」
紬「それじゃあ、もし私が斎藤の娘だったら?」
斎藤「…」
斎藤「おそれ多いことです」
紬「そう、もういいわ。私ももう少ししたら部屋に戻るから斎藤も休んで」
斎藤「はっ、では」
あなたはいつもそうやって本心を隠す。
約16年間、常にあなたの側にいた私があなたの本心を見破れないわけがないでしょう。
146: 2009/09/30(水) 13:41:38.83 ID:XeW1jTZKO
昨日のこともあり、昨晩はあまり眠れなかった。
寝起きは最悪。
部活のみんなが私のこんな寝惚け顔を見たら驚くだろう。
斎藤「紬お嬢様、本日は車での送迎はいかがなさいますか」
紬「いらないって、いつも言ってるでしょう」
斎藤「はい、失礼致しました」
毎日車で送迎しようとすること、
2度目の合宿など、斎藤は良かれと思ってやっているのだろうが、
私にとっては余計なお世話であることが多い。
正直、鬱陶しく思うことさえある。
普通の女の子も、自分の父親にこんな感情を抱くのだろうか。
寝起きは最悪。
部活のみんなが私のこんな寝惚け顔を見たら驚くだろう。
斎藤「紬お嬢様、本日は車での送迎はいかがなさいますか」
紬「いらないって、いつも言ってるでしょう」
斎藤「はい、失礼致しました」
毎日車で送迎しようとすること、
2度目の合宿など、斎藤は良かれと思ってやっているのだろうが、
私にとっては余計なお世話であることが多い。
正直、鬱陶しく思うことさえある。
普通の女の子も、自分の父親にこんな感情を抱くのだろうか。
147: 2009/09/30(水) 13:47:43.19 ID:XeW1jTZKO
唯「あ、ムギちゃんおはよ~」
紬「お早う唯ちゃん」
婚約者の件が頭から離れないけれど、
外では努めてポーカーフェイスを装う。
自分でも思うが、年不相応な性格である。
唯「どうしたのムギちゃん。今日はなんだか元気ないね」
紬「え…?どうして?そんなことないわ」
唯「ふーん、まぁいいや。そうそう昨日のアレ見た!?」
紬「昨日は色々あって見れなかったの」
唯「なーんだ、面白かったのに」
唯ちゃんのたまに見せる鋭さには目を見張るものがある。
みんなには知られないように気を付けないと。
紬「お早う唯ちゃん」
婚約者の件が頭から離れないけれど、
外では努めてポーカーフェイスを装う。
自分でも思うが、年不相応な性格である。
唯「どうしたのムギちゃん。今日はなんだか元気ないね」
紬「え…?どうして?そんなことないわ」
唯「ふーん、まぁいいや。そうそう昨日のアレ見た!?」
紬「昨日は色々あって見れなかったの」
唯「なーんだ、面白かったのに」
唯ちゃんのたまに見せる鋭さには目を見張るものがある。
みんなには知られないように気を付けないと。
150: 2009/09/30(水) 13:54:57.01 ID:XeW1jTZKO
放課後、音楽室。
今日も今日とて、澪ちゃんとりっちゃんがケンカをしている。
ここのところ毎日だ。
唯「またケンカ~?」
澪「だって律が…」
律「はいはい、全面的に私が悪ぅございましたぁ。すいませんねぇ」
澪「なんだよその態度!」
律「謝ってんだろ。まだ何か文句あるのかよ」
澪「だからお前のそういう態度が…!」
梓「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うけど…」
紬「もう放っておくしかないわね…」
初めはケンカの仲裁役をしていた私も今は諦めぎみだ。
澪ちゃんとりっちゃんのことより、自分のことの方が気にかかる、
というのが本音であるが。
今日も今日とて、澪ちゃんとりっちゃんがケンカをしている。
ここのところ毎日だ。
唯「またケンカ~?」
澪「だって律が…」
律「はいはい、全面的に私が悪ぅございましたぁ。すいませんねぇ」
澪「なんだよその態度!」
律「謝ってんだろ。まだ何か文句あるのかよ」
澪「だからお前のそういう態度が…!」
梓「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うけど…」
紬「もう放っておくしかないわね…」
初めはケンカの仲裁役をしていた私も今は諦めぎみだ。
澪ちゃんとりっちゃんのことより、自分のことの方が気にかかる、
というのが本音であるが。
151: 2009/09/30(水) 14:06:20.52 ID:XeW1jTZKO
結局今日も練習はせず終いだった。
しかし後日、さわ子先生が懸賞で当てたという温泉旅行に行くことになった。
荒んだ心を癒すには丁度いいかもしれない。
私も今からとても楽しみ。
今日もベランダに出て、星を眺めながら婚約者のことについて考えてみる。
答えはまだ出ない。
しかし後日、さわ子先生が懸賞で当てたという温泉旅行に行くことになった。
荒んだ心を癒すには丁度いいかもしれない。
私も今からとても楽しみ。
今日もベランダに出て、星を眺めながら婚約者のことについて考えてみる。
答えはまだ出ない。
152: 2009/09/30(水) 14:13:38.55 ID:XeW1jTZKO
数日後、出張先の父から電話があったらしい。
婚約の件はほぼ固まった。だそうだ。
それを使用人から伝えられたため、私が反論する余地はなかった。
結局、私の気持ちなどお構い無しに決められる、
出来レースの婚約だったのだ。
悲しかったけれど、涙は出なかった。
なんとなくこうなることはわかっていたし、
私も琴吹家の一員として、家の繁栄に貢献できると思えば、そう悪いことでもないと思っていた。
婚約の件はほぼ固まった。だそうだ。
それを使用人から伝えられたため、私が反論する余地はなかった。
結局、私の気持ちなどお構い無しに決められる、
出来レースの婚約だったのだ。
悲しかったけれど、涙は出なかった。
なんとなくこうなることはわかっていたし、
私も琴吹家の一員として、家の繁栄に貢献できると思えば、そう悪いことでもないと思っていた。
160: 2009/09/30(水) 16:30:59.39 ID:XeW1jTZKO
斎藤「紬お嬢様、おめでとうございます」
紬「何が?」
斎藤「婚約の件でございます」
紬「ああ…ありがとう」
斎藤「…」
紬「…」
斎藤「後悔はございませんか?」
紬「何が?」
斎藤「婚約の件でございます」
紬「ああ…ありがとう」
斎藤「…」
紬「…」
斎藤「後悔はございませんか?」
161: 2009/09/30(水) 16:43:38.94 ID:XeW1jTZKO
紬「この家に生まれたのだもの。天命と思って受け入れるわ」
斎藤「紬お嬢様はいつも本心をお隠しになりますな」
紬「――――!」
紬「どういう意味?」
斎藤「そのままの意味でございます」
紬「そう、でもあなたに言われたくないわ」
斎藤「これはこれは。さすが紬お嬢様、全てお見通しですか」
斎藤「紬お嬢様はいつも本心をお隠しになりますな」
紬「――――!」
紬「どういう意味?」
斎藤「そのままの意味でございます」
紬「そう、でもあなたに言われたくないわ」
斎藤「これはこれは。さすが紬お嬢様、全てお見通しですか」
190: 2009/09/30(水) 21:46:37.44 ID:XeW1jTZKO
紬「あなたの本心を聞かせて」
斎藤「畏れながら申し上げます。この16年間、私は紬お嬢様を男手一つで育ててきたと自負しております。どこの馬の骨ともわからぬ若造にお嬢様を嫁がせるなど、口惜しくてたまりません」
いつもの涼しい顔で、とんでもないことを言うものだ。
斎藤「ですが、お嬢様が望むのであれば、婚約を受け入れる覚悟も…」
紬「そう」
斎藤「望むのであれば、ですが」
紬「ふふ、あなたがそんなに感情を露にしたのを見るのは初めてかも」
斎藤「お恥ずかしいことにございます。よろしければ紬お嬢様の本心もお聞かせ下さい」
斎藤「畏れながら申し上げます。この16年間、私は紬お嬢様を男手一つで育ててきたと自負しております。どこの馬の骨ともわからぬ若造にお嬢様を嫁がせるなど、口惜しくてたまりません」
いつもの涼しい顔で、とんでもないことを言うものだ。
斎藤「ですが、お嬢様が望むのであれば、婚約を受け入れる覚悟も…」
紬「そう」
斎藤「望むのであれば、ですが」
紬「ふふ、あなたがそんなに感情を露にしたのを見るのは初めてかも」
斎藤「お恥ずかしいことにございます。よろしければ紬お嬢様の本心もお聞かせ下さい」
191: 2009/09/30(水) 21:56:15.51 ID:XeW1jTZKO
斎藤「無理をなさっていたのですね」
紬「…」
斎藤「お嬢様は周りに気を使いすぎる。まだ子供なのですから笑いたい時には笑えばいいし、泣きたい時には泣けばいいのです」
紬「…」
斎藤「それでお嬢様を嫌いになる人などおりません。むしろもっともっとお嬢様を好きになるはずです」
紬「…」
斎藤のタキシードをギュッと握る。
アイロンをかけるのが大変そうだ。
紬「うわあぁぁ…」
紬「あああああ!」
涙を溢すまいと両手で顔を覆うが、どうやら無意味らしい。
何年ぶりだろうか、私は斎藤の前で嗚咽を漏らしながら泣いた。
斎藤は何も言わず、私を抱き締めてくれた。
紬「…」
斎藤「お嬢様は周りに気を使いすぎる。まだ子供なのですから笑いたい時には笑えばいいし、泣きたい時には泣けばいいのです」
紬「…」
斎藤「それでお嬢様を嫌いになる人などおりません。むしろもっともっとお嬢様を好きになるはずです」
紬「…」
斎藤のタキシードをギュッと握る。
アイロンをかけるのが大変そうだ。
紬「うわあぁぁ…」
紬「あああああ!」
涙を溢すまいと両手で顔を覆うが、どうやら無意味らしい。
何年ぶりだろうか、私は斎藤の前で嗚咽を漏らしながら泣いた。
斎藤は何も言わず、私を抱き締めてくれた。
193: 2009/09/30(水) 22:05:41.72 ID:XeW1jTZKO
数分後、落ち着いた私と斎藤は私の部屋にいた。
斎藤「お嬢様が生まれた時に、御主人に仰せつかったことがあります」
紬「なに?」
斎藤「執事業よりも紬お嬢様を育てる乳母としての役割を優先しろ、と」
紬「そんなことを…」
斎藤「つまりそれは紬お嬢様の命令が第一ということ」
紬「?」
斎藤「ご命令下さい。私を家のしがらみなどないどこか遠くへ連れ去ってくれと。どうか」
紬「そんなことをしたらあなたはクビよ。私はそんなこと望んでない…」
斎藤「元より覚悟の上です。自分の娘が、したくもない婚約をさせられるところを見たい親などおりましょうや」
斎藤は確かに「自分の娘」と言った。
斎藤もまた、私を本当の娘だと思ってくれていたのだ。
斎藤「お嬢様が生まれた時に、御主人に仰せつかったことがあります」
紬「なに?」
斎藤「執事業よりも紬お嬢様を育てる乳母としての役割を優先しろ、と」
紬「そんなことを…」
斎藤「つまりそれは紬お嬢様の命令が第一ということ」
紬「?」
斎藤「ご命令下さい。私を家のしがらみなどないどこか遠くへ連れ去ってくれと。どうか」
紬「そんなことをしたらあなたはクビよ。私はそんなこと望んでない…」
斎藤「元より覚悟の上です。自分の娘が、したくもない婚約をさせられるところを見たい親などおりましょうや」
斎藤は確かに「自分の娘」と言った。
斎藤もまた、私を本当の娘だと思ってくれていたのだ。
194: 2009/09/30(水) 22:10:56.78 ID:XeW1jTZKO
今、私は斎藤が運転する車の助手席に乗っていた。
私達のことが知れるのは時間の問題だろう。
その後一体どうなってしまうのか、私にも斎藤にも想像がつかなかった。
軽音部のみんなに挨拶出来なかったのは寂しいけれど、仕方のないことだ。
みんなとの出会い、合宿、文化祭、新歓ライブ、二度目の文化祭、
それらを思い出にこれから頑張って行こうと思う。
軽音部のみんなで温泉旅行に行けなかったことだけが残念でならない。
私達のことが知れるのは時間の問題だろう。
その後一体どうなってしまうのか、私にも斎藤にも想像がつかなかった。
軽音部のみんなに挨拶出来なかったのは寂しいけれど、仕方のないことだ。
みんなとの出会い、合宿、文化祭、新歓ライブ、二度目の文化祭、
それらを思い出にこれから頑張って行こうと思う。
軽音部のみんなで温泉旅行に行けなかったことだけが残念でならない。
195: 2009/09/30(水) 22:21:52.07 ID:XeW1jTZKO
最悪だ、充電器忘れた多分途中落ちる
斎藤「お嬢様、空をご覧ください。星が綺麗ですよ」
紬「そうね」
琴吹の家名から解放されたからだろうか、
車から眺める星がやけに輝いて見える。
大人になったからといって変わらない、
昔見たのと同じ星空だ。
紬「はくちょう座…」
斎藤「紬お嬢様が最初に覚えた星座ですな。夏の大三角の一部です」
紬「車を止めて」
斎藤「お嬢様、空をご覧ください。星が綺麗ですよ」
紬「そうね」
琴吹の家名から解放されたからだろうか、
車から眺める星がやけに輝いて見える。
大人になったからといって変わらない、
昔見たのと同じ星空だ。
紬「はくちょう座…」
斎藤「紬お嬢様が最初に覚えた星座ですな。夏の大三角の一部です」
紬「車を止めて」
196: 2009/09/30(水) 22:29:22.08 ID:XeW1jTZKO
私達は車から降り、河原へと足を運ぶ。
偶然にも、ここは幼少の頃に、
よく斎藤に連れられて遊んだ河原である。
斎藤「昔を思い出しますな」
紬「あなたも覚えていたの?」
斎藤「娘と遊んだことを忘れる親などおりません」
紬「ふふ、そう」
紬「ね、またアレやって?」
偶然にも、ここは幼少の頃に、
よく斎藤に連れられて遊んだ河原である。
斎藤「昔を思い出しますな」
紬「あなたも覚えていたの?」
斎藤「娘と遊んだことを忘れる親などおりません」
紬「ふふ、そう」
紬「ね、またアレやって?」
197: 2009/09/30(水) 22:33:33.10 ID:XeW1jTZKO
幼少の私は少しでも星に近づきたくて、
毎日のように斎藤に肩車を頼んでいた。
幼女紬「さいとー」
斎藤「はい」
幼女紬「あれやって!あれ!」
斎藤「はい」
私は斎藤の肩に股がる。
幼少紬「おおお!」
幼少紬「ほしがちかくなったよ!」
斎藤「お嬢様、あれがはくちょう座でございます」
幼女紬「ふーん。よくわかんないや」
斎藤「これはこれは。帰ったらお勉強ですね」
幼女紬「えー。もうべんきょうやだー」
毎日のように斎藤に肩車を頼んでいた。
幼女紬「さいとー」
斎藤「はい」
幼女紬「あれやって!あれ!」
斎藤「はい」
私は斎藤の肩に股がる。
幼少紬「おおお!」
幼少紬「ほしがちかくなったよ!」
斎藤「お嬢様、あれがはくちょう座でございます」
幼女紬「ふーん。よくわかんないや」
斎藤「これはこれは。帰ったらお勉強ですね」
幼女紬「えー。もうべんきょうやだー」
199: 2009/09/30(水) 22:40:21.49 ID:XeW1jTZKO
斎藤「ここで…でございますか」
紬「冗談よ。あなたの困った顔を見るのは何年ぶりかしら」
斎藤「一本取られました」
紬「ふふ」
紬「…」
紬「帰ろうっか」
斎藤「よろしいのですか?」
紬「ええ、もう満足だから」
紬「冗談よ。あなたの困った顔を見るのは何年ぶりかしら」
斎藤「一本取られました」
紬「ふふ」
紬「…」
紬「帰ろうっか」
斎藤「よろしいのですか?」
紬「ええ、もう満足だから」
203: 2009/09/30(水) 22:52:42.92 ID:XeW1jTZKO
屋敷に帰ると、当然ながら私達の失踪で大騒ぎになっていた。
このことは父の耳にもすでに入っていて、斎藤に対して激怒しているらしい。
紬「斎藤…」
斎藤「心配なさいますな。紬お嬢様は先に休んでいて下さい」
紬「でも…」
斎藤「子は親の言い付けを守るものです」
紬「わかったわ…何かあったら呼んで」
斎藤「はい」
今日は色々ありすぎて、少し疲れてしまった。
斎藤の言葉に甘え、ベッドに入った私はすぐに深い眠りについた。
このことは父の耳にもすでに入っていて、斎藤に対して激怒しているらしい。
紬「斎藤…」
斎藤「心配なさいますな。紬お嬢様は先に休んでいて下さい」
紬「でも…」
斎藤「子は親の言い付けを守るものです」
紬「わかったわ…何かあったら呼んで」
斎藤「はい」
今日は色々ありすぎて、少し疲れてしまった。
斎藤の言葉に甘え、ベッドに入った私はすぐに深い眠りについた。
270: 2009/10/01(木) 16:39:08.30 ID:FtiTJy1EO
次の日、いつも起こしに来るはずの斎藤がこない。
昨日のこともあったし、疲れて寝坊でもしたのだろうか。
私の予想は外れだった。
私の枕元には一枚の紙が置いてあった。
丁寧で武骨な字が書かれたその紙は、
斎藤が私に宛てて書いた別れの手紙である。
昨日のこともあったし、疲れて寝坊でもしたのだろうか。
私の予想は外れだった。
私の枕元には一枚の紙が置いてあった。
丁寧で武骨な字が書かれたその紙は、
斎藤が私に宛てて書いた別れの手紙である。
271: 2009/10/01(木) 16:44:47.69 ID:FtiTJy1EO
親愛なる紬お嬢様へ
まずは昨晩の蛮行をお許しください。
思い悩む紬お嬢様を見ると、胸が締め付けられる思いだったのです。
紬お嬢様がお休みになった後、御主人様と電話致しました。
御主人様は今回の件についてひどくご立腹でしたが、これからも職務を全うするならばお咎めなしとのことです。
我が御主人様ながら本当に心の広い方です。
御主人様のような父を持てたことを誇りに思って下さい。
今はわかり合えずとも、よくよくお話すればきっとお二人の絆深まることでしょう。
しかし、今回の私の行動は決して許されるものではありません。
御主人様の御厚意を無下にするのは心苦しかったのですが、私自らお暇を頂くことを決心いたしました。
この先、紬お嬢様の成長を見届けられないと思うと大変残念ですが、致し方ありません。
琴吹家の益々のご発展と、紬お嬢様が健やかに育つことを心から願っております。
さて、私には琴吹家執事、お嬢様の教育係としての最後の仕事が残っております。
明朝、御主人様とともに婚約者様とそのご家族に、今回の婚約断る意を伝えにまいります。
この行動がお嬢様のためになるからわかりませんが、育ての親の最後のわ
まずは昨晩の蛮行をお許しください。
思い悩む紬お嬢様を見ると、胸が締め付けられる思いだったのです。
紬お嬢様がお休みになった後、御主人様と電話致しました。
御主人様は今回の件についてひどくご立腹でしたが、これからも職務を全うするならばお咎めなしとのことです。
我が御主人様ながら本当に心の広い方です。
御主人様のような父を持てたことを誇りに思って下さい。
今はわかり合えずとも、よくよくお話すればきっとお二人の絆深まることでしょう。
しかし、今回の私の行動は決して許されるものではありません。
御主人様の御厚意を無下にするのは心苦しかったのですが、私自らお暇を頂くことを決心いたしました。
この先、紬お嬢様の成長を見届けられないと思うと大変残念ですが、致し方ありません。
琴吹家の益々のご発展と、紬お嬢様が健やかに育つことを心から願っております。
さて、私には琴吹家執事、お嬢様の教育係としての最後の仕事が残っております。
明朝、御主人様とともに婚約者様とそのご家族に、今回の婚約断る意を伝えにまいります。
この行動がお嬢様のためになるからわかりませんが、育ての親の最後のわ
273: 2009/10/01(木) 16:49:51.65 ID:FtiTJy1EO
紬「バカ」
紬「バカバカバカ!」
手紙を読み終えた私は、パジャマのまま屋敷から飛び出した。
どこ?
どこに行けば斎藤に会える?
空港、それとも駅?
私はどこに行けばいいのかわからないまま、ただただ走り出していた。
靴を履いていないことに気付くのはもう少し後のことである。
紬「バカバカバカ!」
手紙を読み終えた私は、パジャマのまま屋敷から飛び出した。
どこ?
どこに行けば斎藤に会える?
空港、それとも駅?
私はどこに行けばいいのかわからないまま、ただただ走り出していた。
靴を履いていないことに気付くのはもう少し後のことである。
274: 2009/10/01(木) 16:55:01.81 ID:FtiTJy1EO
唯「あっ、ムギちゃんおは」
紬「おはよ!」
唯「よー。って、行っちゃった…慌てて走ってるムギちゃんも珍しいなー。漏れそうなのかな」
唯「ふふ、可愛い」
途中、通学中の唯ちゃんに声を掛けられたが一言だけ挨拶し、
止まること走った。
後で美味しいお菓子で埋め合わせしよう。
優しい唯ちゃんならきっと許してくれるはずだ。
そんなことを考えて走っていると、
幼少の頃、そして昨晩斎藤と一緒に星を眺めた思い出の河原にたどり着いた。
紬「おはよ!」
唯「よー。って、行っちゃった…慌てて走ってるムギちゃんも珍しいなー。漏れそうなのかな」
唯「ふふ、可愛い」
途中、通学中の唯ちゃんに声を掛けられたが一言だけ挨拶し、
止まること走った。
後で美味しいお菓子で埋め合わせしよう。
優しい唯ちゃんならきっと許してくれるはずだ。
そんなことを考えて走っていると、
幼少の頃、そして昨晩斎藤と一緒に星を眺めた思い出の河原にたどり着いた。
276: 2009/10/01(木) 16:59:55.18 ID:FtiTJy1EO
斎藤「スーッ…ゴフッ」
斎藤「紬お嬢様がお生まれになった日にタバコを止めたから…16年ぶりか。さすがに体が受け付けないな」
斎藤「…」
斎藤「お嬢様、どうかお幸せに…」
紬「斎藤!」
斎藤「紬お嬢様!?」
紬「ここにいたの…やっと見付けた…」
斎藤「何故ここに…いやそれよりも足がボロボロですが」
紬「靴を履き忘れたのね。ううん、今はそんなことどうでもいいの」
斎藤「お嬢様、一体…」
紬「斎藤!琴吹紬が命じます!」
斎藤「紬お嬢様がお生まれになった日にタバコを止めたから…16年ぶりか。さすがに体が受け付けないな」
斎藤「…」
斎藤「お嬢様、どうかお幸せに…」
紬「斎藤!」
斎藤「紬お嬢様!?」
紬「ここにいたの…やっと見付けた…」
斎藤「何故ここに…いやそれよりも足がボロボロですが」
紬「靴を履き忘れたのね。ううん、今はそんなことどうでもいいの」
斎藤「お嬢様、一体…」
紬「斎藤!琴吹紬が命じます!」
279: 2009/10/01(木) 17:04:45.76 ID:FtiTJy1EO
そして次の日の朝。
斎藤「御主人様、おはようございます。本日の車での送迎は如何なさいますか」
紬「今日は車で送って」
斎藤「はっ、失礼致しました。ではお気をつけて電車に…は?」
紬「あなたもまだまだ未熟ね。私が毎日電車で通学すると思ってたら大間違いなんだから」
斎藤「これはこれは…」
紬「執事業は流れ作業じゃないの。御主人様の言葉はちゃんと聞かなくちゃね」
斎藤「一本取られましたな。さすが御主人です」
斎藤「御主人様、おはようございます。本日の車での送迎は如何なさいますか」
紬「今日は車で送って」
斎藤「はっ、失礼致しました。ではお気をつけて電車に…は?」
紬「あなたもまだまだ未熟ね。私が毎日電車で通学すると思ってたら大間違いなんだから」
斎藤「これはこれは…」
紬「執事業は流れ作業じゃないの。御主人様の言葉はちゃんと聞かなくちゃね」
斎藤「一本取られましたな。さすが御主人です」
282: 2009/10/01(木) 17:11:10.70 ID:FtiTJy1EO
さらに話は前日に戻る。
斎藤は琴吹家の執事を自ら辞めた。
その決意は堅い。
今更戻れと言っても、真面目で頑固な彼のことだ、
絶対に首を縦に振らないだろう。
ならば…
紬「今日から私が斎藤の御主人様です!」カーッ
顔が熱くなった。
何かとんでもなく恥ずかしいことを言っている気がする。
斎藤「は…?」
紬「あなたは今から琴吹家執事ではなく、琴吹紬の執事です!お給料も私が払います!」
私が就職するまでは斎藤のお給料はお父さんに立て替えてもらおう。
そうだ、長い休みにはアルバイトをして少しずつ返していこう。
どこでアルバイトしようかな。
斎藤は琴吹家の執事を自ら辞めた。
その決意は堅い。
今更戻れと言っても、真面目で頑固な彼のことだ、
絶対に首を縦に振らないだろう。
ならば…
紬「今日から私が斎藤の御主人様です!」カーッ
顔が熱くなった。
何かとんでもなく恥ずかしいことを言っている気がする。
斎藤「は…?」
紬「あなたは今から琴吹家執事ではなく、琴吹紬の執事です!お給料も私が払います!」
私が就職するまでは斎藤のお給料はお父さんに立て替えてもらおう。
そうだ、長い休みにはアルバイトをして少しずつ返していこう。
どこでアルバイトしようかな。
284: 2009/10/01(木) 17:15:00.31 ID:FtiTJy1EO
斎藤「それは屁理屈というものです」
紬「わ、私の命令は絶対なのー!」
斎藤は笑いたい時には笑い、泣きたい時には泣いていいと言った。
ならばわがままを言いたい時にはわがままを言っていいはずだ。
斎藤「しかし…」
紬「私が御主人様…命令なの…」ポロポロ
斎藤「…ふっ」
斎藤「アッハッハ、そうですね。執事として御主人様の命令は聞かねばなりますまい」
紬「斎藤…」
斎藤「これからよろしくお願い致します、御主人様」
紬「わ、私の命令は絶対なのー!」
斎藤は笑いたい時には笑い、泣きたい時には泣いていいと言った。
ならばわがままを言いたい時にはわがままを言っていいはずだ。
斎藤「しかし…」
紬「私が御主人様…命令なの…」ポロポロ
斎藤「…ふっ」
斎藤「アッハッハ、そうですね。執事として御主人様の命令は聞かねばなりますまい」
紬「斎藤…」
斎藤「これからよろしくお願い致します、御主人様」
285: 2009/10/01(木) 17:24:51.72 ID:FtiTJy1EO
その後、私は斎藤と父と一緒に先方に頭を下げに行った。
先方も私がまだ学生ということでひどく追求してくることはなかったが、
当の父は政界進出のチャンスを失って非常に残念がっていた。
泣きっ面に蜂、そういうことは他力本願ではなく、自分の力で掴むものだと斎藤から説教を食らっていた。
ちょっぴりいい気味だと思ったのは内緒だ。
先方も私がまだ学生ということでひどく追求してくることはなかったが、
当の父は政界進出のチャンスを失って非常に残念がっていた。
泣きっ面に蜂、そういうことは他力本願ではなく、自分の力で掴むものだと斎藤から説教を食らっていた。
ちょっぴりいい気味だと思ったのは内緒だ。
287: 2009/10/01(木) 17:33:35.02 ID:FtiTJy1EO
今日からまたいつもの毎日が始まる。
斎藤が私専属の執事になったと言っても、何かが変わるわけではない。
親子の距離はこれから徐々に縮めていけばよい。
今回のことで、私の中で斎藤がいかに大きな存在か気付かされた。
斎藤には斎藤が氏ぬまで、あるいは私が氏ぬまで執事を続けてもらうつもりだ。
斎藤、これからもよろしくね。
斎藤が私専属の執事になったと言っても、何かが変わるわけではない。
親子の距離はこれから徐々に縮めていけばよい。
今回のことで、私の中で斎藤がいかに大きな存在か気付かされた。
斎藤には斎藤が氏ぬまで、あるいは私が氏ぬまで執事を続けてもらうつもりだ。
斎藤、これからもよろしくね。
288: 2009/10/01(木) 17:40:03.56 ID:FtiTJy1EO
そして待ちに待った温泉旅行。
澪ちゃんとりっちゃんは相変わらずケンカ中だ。
唯「りっちゃんと澪ちゃんは幼馴染みだから、何も言わなくても澪ちゃんなら理解してくれると思ったんじゃないの~?」
紬「そうかもね。それだけ長く一緒にいたら何も言わなくてもお互い理解できたりするもの。私も…」
斎藤が何を考えているかわかるし、
斎藤も私が考えていることがわかるだろう。
私達の間に言葉などいらない。
澪「え?なに?」
紬「ううん、なんでもない」
唯「私も和ちゃんが何を考えているかわかる時あるよ~!」
梓「幼馴染み、親友ってそういうものですよね」
紬「澪ちゃんは今りっちゃんが何を考えているかわかる?」
澪「それは…」
澪ちゃんとりっちゃんは相変わらずケンカ中だ。
唯「りっちゃんと澪ちゃんは幼馴染みだから、何も言わなくても澪ちゃんなら理解してくれると思ったんじゃないの~?」
紬「そうかもね。それだけ長く一緒にいたら何も言わなくてもお互い理解できたりするもの。私も…」
斎藤が何を考えているかわかるし、
斎藤も私が考えていることがわかるだろう。
私達の間に言葉などいらない。
澪「え?なに?」
紬「ううん、なんでもない」
唯「私も和ちゃんが何を考えているかわかる時あるよ~!」
梓「幼馴染み、親友ってそういうものですよね」
紬「澪ちゃんは今りっちゃんが何を考えているかわかる?」
澪「それは…」
291: 2009/10/01(木) 18:00:46.72 ID:FtiTJy1EO
さるだと?
唯「ちゃんと話し合って、仲直りしないと部屋に入れてあげないからね」プンプン
温泉から上がり食事を済ませた後、
宿内をブラブラしていたら、玄関の方から唯ちゃんの声が聞こえた。
なんだか怒っているみたいだ。
どうやら、澪ちゃんとりっちゃんを仲直りさせるために、外に閉め出したらしい。
なんという荒治療。
でもあの二人ならきっと大丈夫だろう。
唯「それじゃあ私達は部屋に戻ってトランプでもしよっか!」
紬「そうね♪」
次の日、玄関前で凍氏寸前の澪ちゃんとりっちゃんを発見したのは新聞配達員だった。
唯「今夜星を見に行こう」―紬編―
完
唯「ちゃんと話し合って、仲直りしないと部屋に入れてあげないからね」プンプン
温泉から上がり食事を済ませた後、
宿内をブラブラしていたら、玄関の方から唯ちゃんの声が聞こえた。
なんだか怒っているみたいだ。
どうやら、澪ちゃんとりっちゃんを仲直りさせるために、外に閉め出したらしい。
なんという荒治療。
でもあの二人ならきっと大丈夫だろう。
唯「それじゃあ私達は部屋に戻ってトランプでもしよっか!」
紬「そうね♪」
次の日、玄関前で凍氏寸前の澪ちゃんとりっちゃんを発見したのは新聞配達員だった。
唯「今夜星を見に行こう」―紬編―
完
306: 2009/10/01(木) 19:19:11.88 ID:FtiTJy1EO
夜。
私は芝生の上で寝転がり、空を見上げる。
空にはびっしりと星が敷き詰められていた。
あれがデネブ、アルタイル、ベガ。
こんなやり取りをしたのはもう何年前のことだろうか。
私は空を見上げる。
それは二人の約束だから。
私の隣にもうお姉ちゃんはいない。
夜空はあの頃のままなのに、
私達があの頃のままでいることは出来なかった。
私は芝生の上で寝転がり、空を見上げる。
空にはびっしりと星が敷き詰められていた。
あれがデネブ、アルタイル、ベガ。
こんなやり取りをしたのはもう何年前のことだろうか。
私は空を見上げる。
それは二人の約束だから。
私の隣にもうお姉ちゃんはいない。
夜空はあの頃のままなのに、
私達があの頃のままでいることは出来なかった。
312: 2009/10/01(木) 19:41:13.72 ID:FtiTJy1EO
憂「行ってきます」
私は誰もいない玄関に向かって声を掛ける。
今日も一人で夜の散歩だ。
散歩を始めてからだいぶ経つが、
初めてお姉ちゃんと一緒に散歩した時からコースは変わっていない。
歩いて10分程のところにある大きな公園が目的地。
公園に着いたら芝生の上に寝転び、星を眺める。
これが私とお姉ちゃんの日課だった。
私は誰もいない玄関に向かって声を掛ける。
今日も一人で夜の散歩だ。
散歩を始めてからだいぶ経つが、
初めてお姉ちゃんと一緒に散歩した時からコースは変わっていない。
歩いて10分程のところにある大きな公園が目的地。
公園に着いたら芝生の上に寝転び、星を眺める。
これが私とお姉ちゃんの日課だった。
314: 2009/10/01(木) 19:46:34.89 ID:FtiTJy1EO
いつも通りのある日のこと。
君は突然立ち上がり行った。
唯「今夜星を見に行こう!」
憂「急にどうしたの?」
唯「へ?そのままの意味だけど?」
憂「それはわかるんだけど、晩御飯食べながら急にそんなこと言い出すからどうしたのかなって」
唯「実は今日ね~ムギちゃんに星座のことを色々教えてもらったんだ~!ムギちゃんははくちょう座が好きなんだって!」
憂「へー。お姉ちゃん、まずはご飯食べよう?」
君は突然立ち上がり行った。
唯「今夜星を見に行こう!」
憂「急にどうしたの?」
唯「へ?そのままの意味だけど?」
憂「それはわかるんだけど、晩御飯食べながら急にそんなこと言い出すからどうしたのかなって」
唯「実は今日ね~ムギちゃんに星座のことを色々教えてもらったんだ~!ムギちゃんははくちょう座が好きなんだって!」
憂「へー。お姉ちゃん、まずはご飯食べよう?」
318: 2009/10/01(木) 20:12:38.53 ID:FtiTJy1EO
明かりもない道を、バカみたいにはしゃいで歩いた。
唯「うい~夏の大三角って知ってる!?」
憂「えっと…デネブ、アルタイル、ベガを繋ぐと三角形だから夏の大三角って言うんだっけ?」
唯「なんだ…知ってるのか…」シュン
憂「あっ、でも詳しくは知らないよ。教えてお姉ちゃん」
唯「うん!デネブ、アルタイル、ベガを繋ぐと三角形だから夏の大三角なんだよ!」
憂「そ、そっかぁ!すごいなー!」
それはさっき私が言ったんだけど…
でもお姉ちゃんのションボリした顔は見たくないから。
それはそれで可愛いけれど。
唯「えへへ、ムギちゃんに教えてもらったんだ」
唯「うい~夏の大三角って知ってる!?」
憂「えっと…デネブ、アルタイル、ベガを繋ぐと三角形だから夏の大三角って言うんだっけ?」
唯「なんだ…知ってるのか…」シュン
憂「あっ、でも詳しくは知らないよ。教えてお姉ちゃん」
唯「うん!デネブ、アルタイル、ベガを繋ぐと三角形だから夏の大三角なんだよ!」
憂「そ、そっかぁ!すごいなー!」
それはさっき私が言ったんだけど…
でもお姉ちゃんのションボリした顔は見たくないから。
それはそれで可愛いけれど。
唯「えへへ、ムギちゃんに教えてもらったんだ」
320: 2009/10/01(木) 20:23:45.95 ID:FtiTJy1EO
憂「ところで懐中電灯がなくて本当に大丈夫?」
唯「うん!月明かりと星の明かりで充分だよ!」
憂「そっか」
唯「今日は星がすごいね、うい~」
憂「本当だ。でもずっと上を向いてると首が痛くなっちゃう」
唯「そうだね。そうだ!ちょっと先の公園に行こうよ!あそこなら首が痛くならないよ!」
憂「?」
唯「うん!月明かりと星の明かりで充分だよ!」
憂「そっか」
唯「今日は星がすごいね、うい~」
憂「本当だ。でもずっと上を向いてると首が痛くなっちゃう」
唯「そうだね。そうだ!ちょっと先の公園に行こうよ!あそこなら首が痛くならないよ!」
憂「?」
321: 2009/10/01(木) 20:31:47.51 ID:FtiTJy1EO
唯「うい!こっちこっち」
憂「公園なら首が痛くならないってどういうこと?」
唯「こういうこと!ごろごろ~」
憂「お、お姉ちゃん!?」
唯「憂も寝転がってみて。気持ちいいよ」
憂「でも服が汚れちゃうよ~。お洗濯大変だよ?」
唯「いいからいいから、ほら」
憂「う、うん。じゃあちょっとだけ」
服の汚れを気にしつつ、遠慮がちに寝転んでみる。
真っ暗な世界から見上げた夜空は星が降るようだった。
憂「公園なら首が痛くならないってどういうこと?」
唯「こういうこと!ごろごろ~」
憂「お、お姉ちゃん!?」
唯「憂も寝転がってみて。気持ちいいよ」
憂「でも服が汚れちゃうよ~。お洗濯大変だよ?」
唯「いいからいいから、ほら」
憂「う、うん。じゃあちょっとだけ」
服の汚れを気にしつつ、遠慮がちに寝転んでみる。
真っ暗な世界から見上げた夜空は星が降るようだった。
327: 2009/10/01(木) 21:46:02.08 ID:FtiTJy1EO
憂「綺麗だね、お姉ちゃん」
「…」
私は虚空に向かって話しかける。
無論、返答が返ってくることはない。
一人で散歩をしているとどうしても昔のことを思い出す。
お姉ちゃんとの楽しい思い出を。
「ういー」
憂「お姉ちゃん?」
「…」
私は虚空に向かって話しかける。
無論、返答が返ってくることはない。
一人で散歩をしているとどうしても昔のことを思い出す。
お姉ちゃんとの楽しい思い出を。
「ういー」
憂「お姉ちゃん?」
328: 2009/10/01(木) 22:00:11.72 ID:FtiTJy1EO
梓「私だよ」
憂「なんだ、梓ちゃんか」
梓「なんだとは随分だね」
憂「ごめんごめん。今仕事の帰り?」
梓「うん、隣いい?」
憂「いいよ。梓ちゃんも寝転んでみる?」
梓「スーツだけど…まあ、いいか!」
そう言うと、梓ちゃんは私の隣に寝転んだ。
憂「なんだ、梓ちゃんか」
梓「なんだとは随分だね」
憂「ごめんごめん。今仕事の帰り?」
梓「うん、隣いい?」
憂「いいよ。梓ちゃんも寝転んでみる?」
梓「スーツだけど…まあ、いいか!」
そう言うと、梓ちゃんは私の隣に寝転んだ。
331: 2009/10/01(木) 22:14:59.91 ID:FtiTJy1EO
梓「唯先輩のこと考えてた?」
憂「うん」
梓「そう…」
憂「懐かしいね。よく3人でこの公園に来てたよね」
梓「うん、あの頃は楽しかった。今みたいに余計な気を使ったり、損得で人と付き合うなんてことはなかった」
憂「私達ももう大人だもん。高校生の時のように行かないよ」
憂「うん」
梓「そう…」
憂「懐かしいね。よく3人でこの公園に来てたよね」
梓「うん、あの頃は楽しかった。今みたいに余計な気を使ったり、損得で人と付き合うなんてことはなかった」
憂「私達ももう大人だもん。高校生の時のように行かないよ」
336: 2009/10/01(木) 22:39:39.38 ID:FtiTJy1EO
憂「仕事は順調?」
梓「ぼちぼちかな。やっと慣れてきたって感じ」
憂「ふふ」
梓「どうしたの?」
憂「梓ちゃんが楽しそうで良かったなって」
梓「憂は楽しくないの?」
憂「私は…」
楽しいわけがない。
いつも私の隣にいたお姉ちゃんが、今はもういないのだから。
梓「ぼちぼちかな。やっと慣れてきたって感じ」
憂「ふふ」
梓「どうしたの?」
憂「梓ちゃんが楽しそうで良かったなって」
梓「憂は楽しくないの?」
憂「私は…」
楽しいわけがない。
いつも私の隣にいたお姉ちゃんが、今はもういないのだから。
341: 2009/10/01(木) 23:05:39.84 ID:FtiTJy1EO
いつからだろう。
私はお姉ちゃんのことを追いかけてばかりいた。
唯「ういー、今日も公園行こうよ~」
憂「もー、今食器洗ってるでしょ。それにお風呂掃除もまだだし」
唯「じゃあ、ダメなの…?」ウルウル
お姉ちゃんはずるい。
私がその目に弱いことを知ってるくせに。
憂「仕方ないなぁ…それじゃあお姉ちゃんはお風呂掃除してきて」
唯「やったー!憂大好き!」
私も大好きだよ。
私はお姉ちゃんのことを追いかけてばかりいた。
唯「ういー、今日も公園行こうよ~」
憂「もー、今食器洗ってるでしょ。それにお風呂掃除もまだだし」
唯「じゃあ、ダメなの…?」ウルウル
お姉ちゃんはずるい。
私がその目に弱いことを知ってるくせに。
憂「仕方ないなぁ…それじゃあお姉ちゃんはお風呂掃除してきて」
唯「やったー!憂大好き!」
私も大好きだよ。
343: 2009/10/01(木) 23:27:15.32 ID:FtiTJy1EO
そして私達はいつもの公園に着く。
唯「今日もムギちゃんに星座を教えてもらったんだー」
憂「紬さんは天文学が好きなんだね」
唯「てんも…?よくわかんないや」
憂「天文学っていうのは天体とかてんも」
唯「うい!あれがフォーマルハウトだよ!」
憂「す、すごいねー!」
唯「今日もムギちゃんに星座を教えてもらったんだー」
憂「紬さんは天文学が好きなんだね」
唯「てんも…?よくわかんないや」
憂「天文学っていうのは天体とかてんも」
唯「うい!あれがフォーマルハウトだよ!」
憂「す、すごいねー!」
352: 2009/10/02(金) 00:30:03.45 ID:yItNmI10O
梓「唯先輩、一時期毎日天文学の本読んでたな。ムギ先輩に教わりながら。澪先輩はすぐに断念したのに唯先輩はずっと熱心に勉強してた」
憂「お姉ちゃんは一つのことに熱中するタイプだから」
梓「そのせいでギターのコードを忘れちゃうんだけど」
憂「ふふ、お姉ちゃんらしいね」
梓「憂が甘やかして育てるから…」
憂「だってお姉ちゃん可愛いんだもん」
憂「お姉ちゃんは一つのことに熱中するタイプだから」
梓「そのせいでギターのコードを忘れちゃうんだけど」
憂「ふふ、お姉ちゃんらしいね」
梓「憂が甘やかして育てるから…」
憂「だってお姉ちゃん可愛いんだもん」
353: 2009/10/02(金) 00:47:12.38 ID:yItNmI10O
梓「元気出た?」
憂「うん、少し」
梓「少し、か。やっぱり唯先輩じゃないとダメ?」
憂「ふふ、わかってるくせに」
梓「まったく、シスコンなんだから…」
憂「そんなこと言われても痛くも痒くもないもん」
だって、私はお姉ちゃんのことが本当に大好きだから。
憂「うん、少し」
梓「少し、か。やっぱり唯先輩じゃないとダメ?」
憂「ふふ、わかってるくせに」
梓「まったく、シスコンなんだから…」
憂「そんなこと言われても痛くも痒くもないもん」
だって、私はお姉ちゃんのことが本当に大好きだから。
355: 2009/10/02(金) 00:59:08.20 ID:yItNmI10O
抱え込んだ孤独や不安に押し潰されないように。
憂「お姉ちゃん、私をおいてどこかに行ったら嫌だからね?」
唯「急にどうしたの?」
憂「ううん、なんとなく」
唯「もー、私が憂をおいてどこかに行くわけないじゃーん!」
憂「そうだよね。信じてるよお姉ちゃん」
憂「お姉ちゃん、私をおいてどこかに行ったら嫌だからね?」
唯「急にどうしたの?」
憂「ううん、なんとなく」
唯「もー、私が憂をおいてどこかに行くわけないじゃーん!」
憂「そうだよね。信じてるよお姉ちゃん」
361: 2009/10/02(金) 01:36:39.75 ID:yItNmI10O
梓「もう一年か」
憂「時間が経つのは早いね」
梓「うん」
憂「お姉ちゃん、星になれるかな」
梓「唯先輩なら…きっと一番星だよ」
憂「一番星か。うん、お姉ちゃんらしいかも」
お姉ちゃん、どうか私を照らす一番星になって下さい。
憂「時間が経つのは早いね」
梓「うん」
憂「お姉ちゃん、星になれるかな」
梓「唯先輩なら…きっと一番星だよ」
憂「一番星か。うん、お姉ちゃんらしいかも」
お姉ちゃん、どうか私を照らす一番星になって下さい。
366: 2009/10/02(金) 01:59:58.81 ID:yItNmI10O
唯「あー!こんなところにいた!」
憂「お姉ちゃん!」
唯「もー、今日帰るって言ったじゃん。家に行ったら明かり消えてるし鍵もかかってるし」ぷんぷん
憂「ごめんね。でもお姉ちゃんならここに来ると思ってたから。それより一年ぶりだね。会いたかった…」
唯「私もだよ憂~…ずっと会えなくて寂しかったよ…」
梓「こんばんは、唯先輩」
唯「おお、あずにゃん!スーツ姿がビシッと決まってますなぁ」
梓「先輩こそ、アーティストの雰囲気が出てきましたね」
憂「お姉ちゃん!」
唯「もー、今日帰るって言ったじゃん。家に行ったら明かり消えてるし鍵もかかってるし」ぷんぷん
憂「ごめんね。でもお姉ちゃんならここに来ると思ってたから。それより一年ぶりだね。会いたかった…」
唯「私もだよ憂~…ずっと会えなくて寂しかったよ…」
梓「こんばんは、唯先輩」
唯「おお、あずにゃん!スーツ姿がビシッと決まってますなぁ」
梓「先輩こそ、アーティストの雰囲気が出てきましたね」
371: 2009/10/02(金) 02:08:26.48 ID:yItNmI10O
唯「ふっふっふ、この一年はメジャーデビューのために特訓してたからね。芸能人オーラってやつだよ」
憂「さすがお姉ちゃんだね!」
梓「よくわかりませんが…」
唯「ところで憂達はここで何してたの?」
梓「憂と一緒に星を眺めてました」
唯「お!いいねー。私も高校生の時ハマったなぁ。えーとあれが…なんだっけ?」
憂「あれは北極星だよお姉ちゃん」
唯「おお!それそれ」
梓「北極星くらい普通わかるでしょ…」
憂「さすがお姉ちゃんだね!」
梓「よくわかりませんが…」
唯「ところで憂達はここで何してたの?」
梓「憂と一緒に星を眺めてました」
唯「お!いいねー。私も高校生の時ハマったなぁ。えーとあれが…なんだっけ?」
憂「あれは北極星だよお姉ちゃん」
唯「おお!それそれ」
梓「北極星くらい普通わかるでしょ…」
375: 2009/10/02(金) 02:19:39.74 ID:yItNmI10O
憂「お姉ちゃん、ご飯できてるよ。そろそろ帰ろうっか」
唯「らじゃあ!」
憂「梓ちゃんも来てくれる?今日はお姉ちゃんが帰ってくるから、張り切りすぎちゃってオカズがいっぱいなの」
梓「もちろん!唯先輩のギターの腕前も見たいし」
唯「あずにゃん!?それプロに言う!?」
梓「アハハ、気にしない気にしない。早く帰って憂の料理を頂きましょう」
唯「まったく…あずにゃんじゃなかったら右ストレートが炸裂していたところだよ…!」ぷんぷん
憂「ほらほら、いいから帰るよお姉ちゃん」
唯「今夜星を見に行こう」―憂、唯編―
完
唯「らじゃあ!」
憂「梓ちゃんも来てくれる?今日はお姉ちゃんが帰ってくるから、張り切りすぎちゃってオカズがいっぱいなの」
梓「もちろん!唯先輩のギターの腕前も見たいし」
唯「あずにゃん!?それプロに言う!?」
梓「アハハ、気にしない気にしない。早く帰って憂の料理を頂きましょう」
唯「まったく…あずにゃんじゃなかったら右ストレートが炸裂していたところだよ…!」ぷんぷん
憂「ほらほら、いいから帰るよお姉ちゃん」
唯「今夜星を見に行こう」―憂、唯編―
完
377: 2009/10/02(金) 02:24:03.92 ID:yItNmI10O
眠くて最後急いでしまったけど終わりです
ここまで読んで頂きありがとうございました
唯早氏にフラグっぽいこと書いてたけど、初めから氏なせるつもりはなかったです
最後はほとんど遊びですねw
一応、氏に直結するようなセリフや文は書いてないつもりです
ではでは
ここまで読んで頂きありがとうございました
唯早氏にフラグっぽいこと書いてたけど、初めから氏なせるつもりはなかったです
最後はほとんど遊びですねw
一応、氏に直結するようなセリフや文は書いてないつもりです
ではでは
引用元: 唯「今夜星を見に行こう」
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