歩夢「しずくちゃんは何をしてるの？」

しずく「この間せつ菜さんの正体が三船さんにバレてしまったじゃないですか」

歩夢「うん」

しずく「あの時もっと私がせつ菜さんを上手く演じていれば切り抜けられたかもしれないのに……！」

歩夢「そういう問題じゃなかったと思うけど」

しずく「だからもっと極めたいんです！　女優を目指す身として！」

歩夢「偉いね。でも私が聞きたいのはそういうことじゃなくてね」

しずく「といいますと？」

歩夢「さっきから変な音鳴ってるけど、あれ何？」

しずく「ああ……せつ菜スカーレットストーム！」ボヨヨーン

しずく「なんかこう、鳴るんですよ」

歩夢「鳴るって何！？　というかあのときも鳴ってたよね！？」

しずく「はい、せつ菜さんからはこんな音はしません。もっと精進しなければ！」

歩夢「えぇ！？　それどころじゃないよしずくちゃん！」

しずく「せつ菜スカーレットストーム！」ぴゅーん

歩夢「なんか飛んでったよ！？」

しずく「違いますね……もっとこう、ドカーンって感じだったと思うんですけど」

歩夢「あれは効果音で……」

せつ菜「おはようございます！」ｶﾞﾗﾗ

しずく「せつ菜さん！」

歩夢「もう少し静かに開けてよぉ」

せつ菜「いませつ菜スカーレットストームが聞こえたのですが」

しずく「はい、実は今練習をしてるんです。でも上手くいかなくて」

せつ菜「そうですね。私も一朝一夕で身に着けた技ではないですから」

歩夢「練習してることはスルーなんだ」

しずく「生でお手本見せてもらっていいですか？」

せつ菜「いいですよ。すぅー……」

歩夢「ドア閉めとこ」

せつ菜「せつ菜スカーレットストーム！」ﾁｭﾄﾞｰﾝ

しずく「これが、本物……！」

歩夢「えっ！？　これせつ菜ちゃんから出てる音だったの！？」

せつ菜「中々いい音にならなかったのもいい思い出です……」

歩夢「音が出ることはもう気にしてないんだね」

新しいタイプのSSで草

ドアを蹴破る音で草

これが新時代のSSか

せつ菜「ちょっとしずくさんの見せてもらっていいですか？」

しずく「わかりました……せつ菜スカーレットストーム！」ボヨヨーン

歩夢「音が出るだけで凄いことだよ？」

せつ菜「なるほどわかりました！」

しずく「本当ですか！？」

歩夢「全然理解できないよぉ」

せつ菜「せつ菜スカーレットストーム！」ﾎﾟﾖﾖｰﾝ

しずく・歩夢「！」

せつ菜「しずくさんがどんな感じでやっているか、大体わかりました」

歩夢「しずくちゃんより変な音だったよ」

しずく「一体何が悪いんでしょうか？」

せつ菜「しずくさんは何かを投げるイメージでやってますね？　しかも投げ方がユルユルです」

しずく「だからさっき素早くやってみたらﾋﾟｭｰﾝって音がしたんですね！」

歩夢「これ理屈とかあったんだ……」

せつ菜「大好きという気持ちを高速で回転させつつ圧縮し、一気に発散させるのがコツです」

歩夢「気持ちって高速で回転させるって何！？」

しずく「よーし……せつ菜スカーレットストーム！」ﾋｭﾙﾋｭﾙ

せつ菜「いい回転です！　ここから圧縮と発散を組み合わせれば」

しずく「圧縮と発散……せつ菜スカーレットストーム！」ﾊﾞｰﾝ

せつ菜「もう一回！」

しずく「せつ菜スカーレットストーム！」ｶｧ~

歩夢「和風だね」

しずく「せつ菜スカーレットストーム！」デデン

歩夢「迷走してるよ……」

しずく「はぁ、はぁ……できない」

せつ菜「圧縮は難しかったでしょうか。あ、歩夢さんちょっとやってみてください」

歩夢「えぇ！？　なんで！？」

せつ菜「歩夢さんってこう、感情が爆発しそうなイメージがあるので」

歩夢「そんなことないよ！　それにまず音が出ないよ！」

せつ菜「それは一度やってみて出なかったということですか？」

歩夢「いや違うけど……」

せつ菜「ならば物は試しです！　隠れた才能があるかもしれません！」

歩夢「あっても一生隠れてていいけどなぁ、こほん！」

栞子「失礼します」ｶﾞﾗﾗ

歩夢「せつ菜スカーレットストーム！」

栞子「……」

歩夢「……」

ﾁｰﾝ

歩夢「ち、違うの三船さん……しずくちゃんから変な音が出て、せつ菜ちゃんが爆発っていうから……」

栞子「落ち着いて下さい」

～間～

栞子「なるほど、桜坂さんのせつ菜スカーレットストームは奇妙な音になってしまうということですか」

歩夢「理解が早過ぎない？」

栞子「何故そうまでして再現をするのですか？」

しずく「いろいろあるけど、やっぱり役者としてせつ菜さんを完璧に演じきれなかったのは悔しいから」

栞子「演じる……もしかするとこれは、芝居の範疇の話ではないかもしれません」

しずく「どういうことですか？」

栞子「そうですね、例えば実在の一流スポーツ選手の役を演じるとしましょう。」

しずく「はい」

栞子「その選手の振る舞いや特徴を掴んで、選手の心情を理解していくことが芝居だと思います。それらを完璧に演じる役者もいるでしょう。しかしそうしたところで選手のパフォーマンスが出来るわけではありません」

しずく「！」

栞子「人の特徴や性格を観察することで再現を出来たとしても、技術……スポーツの技やせつ菜スカーレットストームを再現することは出来ないのです」

歩夢「すごい分析力……全然理解できない」

栞子「私も音が出る理由は全く理解できてないです。ですが桜坂さんの演劇への適性は確かです。だとすると演劇とは異なる理屈があるのではないかと」

しずく「それじゃ私には、出来ない……」

せつ菜「しずくさん……」

歩夢「お芝居と関係ないならいいんじゃないかな」

栞子「いえ、桜坂さん。貴女にはせつ菜スカーレットストームの適性があります」

しずく「え？」

栞子「……せつ菜スカーレットストーム！」

歩夢「！」（結構声通るなぁ）

ｼｰﾝ

栞子「このように私も何の音も出ないみたいです」

しずく「そうだけど」

栞子「ではこう考えてはどうでしょうか？」

優木さん：いい音が出る
桜坂さん：変な音が出る
上原さん：音が出ない
三船栞子：音が出ない
他一般人：音が出ない（おそらく）

せつ菜「これは！」

栞子「上原さん。この人たちを二つに分けるとしたらどこに線を引きますか？」

歩夢「せつ菜ちゃんと、しずくちゃんが特別……」

栞子「音が出るということは、桜坂さんは既に近い技能を身に着けていると考えられます」

せつ菜「そうですしずくさん！　まずは芝居じゃなくてしずくさんが思うがままにやってみましょう！」

しずく「思うがまま……？」

せつ菜「本当の自分を曝け出すんです！」

しずく「本当の自分……」

歩夢「しずくちゃん」

しずく「しずくスカイブルーハリケーン！」ﾋｭｫｰ

栞子「これが桜坂さんの……」

歩夢「やったねしずくちゃん！　何がいいのかわからないけど！」

しずく「せつ菜さんとは全然違う……けど」

せつ菜「これはしずくさんの技、しずくスカイブルーハリケーンです！」

栞子「桜坂さんはせつ菜さんと同等の力を持っています。だとすればあとは演じればよいのではないでしょうか」

しずく「三船さん……ありがとう！」

しずく（せつ菜さんの感情、生き様、全部学んだ！　コツも教わった！）

せつ菜「やっちゃいましょう！」

しずく（回転、圧縮、そして爆発。これを掴めれば……）

せつ菜『歩夢さんってこう、感情が爆発しそうなイメージがあるので』

しずく（歩夢さん！　そうだ！）

歩夢「？」

しずく（回転と、圧縮……）

歩夢「え、どうしたの？」

@cﾒ*˶「しずくちゃん？」

@「おーい」

しずく（見えた！）

しずく「せつ菜スカーレット……

しずく（爆発！）

しずく「スト――――――ム！」ﾄﾞｰﾝ

歩夢「音が物騒になってない！？」

せつ菜「やりました！」

栞子「きっといいイメージを掴んだのでしょうね」

歩夢「爆弾でもイメージしたのかな……」

せつ菜（しずく）「ふぅ、今日もまた世界を救ってしまいました！」

歩夢「すごい、なんでか分からないけどせつ菜ちゃんを完璧に演じてるよ！」

しずく「せつ菜さん！　もしまた正体がバレそうになっても私の完璧な演技で欺いてみせます！」

せつ菜「ありがとうございます！　これで絶対に正体を隠し通せますね！」

～前夜祭～

映像せつ菜『スクールアイドル同好会の優木せつ菜です！』ﾊﾟﾗﾗﾊﾟｯﾊﾟﾗｰ


舞台裏しずく「……は？」ﾁｬﾝﾁｬﾝ

おわり

使用させていただいた効果音です

効果音ラボ
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うわ最後だけリンクミスった

最後の効果音はこのサイトの「ちゃんちゃん♪2」です