1: 2014/08/10(日) 12:23:32.37 ID:g+tl3+OlO
”世界のガイト”こと臨海女子・辻垣内 智葉さんの探訪記。

長野・奈良に続いて、今回もどこかの田舎でロケをしたようです。

最後まで読んでいただけたら幸いです。


ー過去の作品ー

辻垣内 智葉「田舎でツモろう?」
→長野・清澄編

辻垣内 智葉「田舎でツモろう?」2本場
→奈良・阿知賀編

咲-Saki- 22巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

2: 2014/08/10(日) 12:24:54.71 ID:g+tl3+OlO
前略 母上様


私は今、東北某所に来ています。


こちらは春だというのに少し肌寒く、東京とは違って空気がとても澄んでいます。


なにやら素敵な出会いがありそうな、そんな予感がしています。


明日には東京に帰ります。それまでどうか、お元気で…

3: 2014/08/10(日) 12:26:21.63 ID:g+tl3+OlO
岩手某所

智葉「…なんにもない所だな。そして人が全然いない」


智葉「まぁいい…とにかく歩いて人と出会う事が先決か」REC


智葉「みなさんこんばんは。”田舎でツモろう”のコーナーです。」


智葉「今回も私、臨海女子麻雀部・辻垣内智葉が、東北某所の素敵な田舎町へやってきました」


智葉「しかし残念ながら、まったく人がいません。しばらく散策してみましょう」


(1時間くらい周辺を散策する)


智葉「…ん? みなさん、ついに第一町人発見です。さっそく話を伺ってみましょう」

4: 2014/08/10(日) 12:27:43.01 ID:g+tl3+OlO
豊音「はぁー…買い出し疲れたよー。早く帰りたいなー」


『そこの方! 少しよろしいか!』


豊音「えっ? 誰かなー?」クルッ


智葉「突然すまない、臨海女子麻雀部・辻垣内智葉という者だが。話を聞かせてもらってもいいかな?」


(カンペ:私の質問には全て”はい”で答えろ)


豊音「えっ!? はい…って臨海女子の辻垣内さん!?」


智葉「”田舎でツモろう”という番組で来たのだが、君は麻雀が出来るのかな?」


豊音「は、はいっ!(うそー!なんで辻垣内さんがこんな所に!?)」


智葉「君の学校はここから近いのか? 学校名と名前を教えてくれ」


豊音「はい!宮守女子の姉帯豊音だよー」


智葉「宮守女子…(聞いたことがないな…) 姉帯さん、私を君の学校に連れていってくれないか?」


豊音「え? えーっ!? いやいや、それは困る…」


智葉(カンペを主張し、睨み)


豊音「うー…はい」


智葉「すまないな、それでは案内してもらおうか?」


豊音「は、はい!」

5: 2014/08/10(日) 12:28:55.17 ID:g+tl3+OlO
智葉「その荷物…重いだろう? 一つ持ってやろうか?」


豊音「へっ? いやいや! 辻垣内さんにそんな! 荷物持ちなんてさせたくないよー」


智葉「そうか。 豊音、宮守まではここから近いのか?」


豊音「えっと…歩いてもそんなにかからないかなー?」


智葉「そうか…」


豊音「えと…臨海女子ってあの臨海女子だよねー? 東東京の…」


智葉「あぁ、その通りだ」


豊音「あのっ!辻垣内さん!」


智葉「智葉でいい。なんだ?」


豊音「あ…智葉さん、そのカメラって回ってるのかなー?」


智葉「あぁ、絶賛録画中だ」


豊音「えーっ!?」

6: 2014/08/10(日) 12:29:49.87 ID:g+tl3+OlO
宮守女子・部室


ガチャ


豊音「みんなー、今帰ったけどー」


塞「おかえり豊音」


エイ「トヨネ!」


白望「ダル…おつかれ」


豊音「あれー?胡桃ちゃんはー?」


塞「トシさんと何処か出かけたよ」


豊音「そっかー、残念。」


白望「なにが残念なの…」


豊音「へへへ、今日はなんと!スペシャルゲストがいるんだよー!」


エイ「Special!?」


塞「ゲストですって!?」


白望「ダル…」


豊音「よーし、それじゃあ呼ぶからねー? どうぞー!」

7: 2014/08/10(日) 12:30:36.12 ID:g+tl3+OlO
ガチャ


智葉「東京から来た、臨海女子の辻垣内 智葉だ。よろしく」


白望「臨海…」


塞「えっ!? 臨海女子の…ってウソ!本物!?」


エイ「Surprise!!」


豊音「”田舎でツモろう”っていう番組で、岩手に来たんだってー」


智葉「説明ありがとう。早速だが…お手合わせ願えるか?」


塞「あっはい…って私達と!?」


白望「ダル…なんでまた」


エイ「マージャン、ヤル!」


豊音「わーい!私もやるよー」


智葉「助かる。それではまずはカメラのセッティングを…」

8: 2014/08/10(日) 12:31:31.74 ID:g+tl3+OlO
智葉「………」カチャカチャ


塞「ずいぶん熱心にセットしているわね…」


智葉「…これで良し。 待たせてすまないな、それでは始めようか」


豊音「わーい! 楽しみだよー!」


塞「うーん…ちょい緊張」


エイ「ゼッタイ負ケナイ!」


智葉「その心意気やよし。私も全力で行かせてもらおう」


カタ…カタカタカタカタ…


パリン!!


塞「…! モノクルがっ!」


白望「…割れた」


智葉「………」ゴゴゴゴゴ…

9: 2014/08/10(日) 12:32:42.53 ID:g+tl3+OlO
智葉「ツモ。2000・4000」パラッ


白望「…終局だね」


塞「うへー…辻垣内さん強過ぎ!」


エイ「ウー…クヤシイー!」


豊音「ほんと強過ぎだよー!」


智葉「全力でいかせてもらったが…ところどころで苦戦はしたな」


塞「これが全国レベルかぁー…ちょっと凹んだわ」


智葉「県予選までまだ時間はある。まだまだ強くなれるさ」


白望「ダル…この後どうするの?」


智葉「あぁ、今夜泊まる所を探さなければいけないんだ」

10: 2014/08/10(日) 12:33:38.07 ID:g+tl3+OlO
豊音「うちで良かったらいいですよー! 少し狭いけどー…」


塞「そっか、豊音は一人暮らしだもんね!」


白望「豊音…がんばって」


エイ「トヨネ! サスガ!」


智葉「いいのか? それなら助かる」


豊音「大丈夫だよー! 智葉さんに東京の話、いろいろ聞きたいんだー」


智葉「あぁ、聞きたい事があれば何でも聞いてくれ」


豊音「うん! それじゃあみんなー、私は先に上がるよー」ガチャ


智葉「世話になった、それではまたいつか何処かで会おう」


バタン

11: 2014/08/10(日) 12:34:40.95 ID:g+tl3+OlO
豊音の家


豊音「さぁ、着いたよー」ガチャ


智葉「お邪魔します…本当に一人暮らしなんだな」


豊音「そうだよー? お茶でもいれるからゆっくりしててよー」


智葉「あぁ、すまない」


リビング


智葉(この部屋、生活感がないというか…物が無さ過ぎる)


豊音「おまたせー。 お茶持ってきたよー」


智葉「あぁ、いただこう」

12: 2014/08/10(日) 12:35:16.73 ID:g+tl3+OlO
豊音「冷たいお茶の方がよかったかなー?」


智葉「いや、結構。こちらは少し肌寒くてな」


豊音「ふーん、東京は暑いのー?」


智葉「あぁ、コンクリートばかりだからな。夏になると最悪だ」


豊音「へー、こっちは夏でも割と涼しいかなー?」


智葉「羨ましい限りだ」


豊音「東京かぁ…私はね、東京の人が羨ましいんだー」


智葉「…? 理由を聞こうか」

13: 2014/08/10(日) 12:36:06.92 ID:g+tl3+OlO
豊音「東京って、すごく夢があるっていうかー…自由な感じがするんだよねー!」


豊音「遊ぶ所も、食べる所もたくさんあるでしょー? どこへ行くにも不便がなさそうだしー」


智葉「なるほどな。ただし、いいことばかりじゃないぞ?」


豊音「そ、そうなのー?」


智葉「人気のスポットにはいつも人混み、有名店には長蛇の列、道路は大渋滞、電車はすし詰め状態…」


豊音「えー…なんか大変そうー」


智葉「しかしこれが現実だ。東京は人も車も多すぎるからな」


豊音「ふーん…なるほどー」


智葉「豊音、私も一つ聞いてもいいか?」


豊音「うん、何かなー?」

14: 2014/08/10(日) 12:37:05.92 ID:g+tl3+OlO
智葉「豊音はどうして一人暮らしをしているんだ?」


豊音「あー…うん。 それはね、私の住んでた村が関係してるんだー」


智葉「豊音の住んでいた村…」


豊音「私の住んでた村はね、ここからずっと先の山奥にあるんだけどー」


豊音「とにかく、村の掟とかしきたりが厳しくてー…宮守に編入するまでほとんど村から出たことがなかったんだー」


智葉「…そうだったのか」


豊音「それでねー、熊倉先生が私を村から出してくれて…通学のために今はここで一人暮らしなんだー」


智葉「そうか。一人暮らしで大変じゃないか?」


豊音「うーん、家事とかは大変だけどー…宮守の皆と毎日麻雀ができて、すっごく楽しいよー!」


智葉「それは良かった。豊音、仲間を大切にな」


豊音「うん!」

15: 2014/08/10(日) 12:37:52.15 ID:g+tl3+OlO
豊音「あっ! もうこんな時間だよー! 夕食の支度しなきゃ」


智葉「時間が経つのはあっという間だな」


豊音「なにか食べたいものあるー?好き嫌いとかもあれば…」


智葉「好き嫌いは特にないな。何を作るかは豊音に任せよう」


豊音「了解だよー。智葉さんはゆっくり寛いでいてねー」


智葉「手伝える事があったら言ってくれ」


豊音「ありがとうー! でもキッチンは狭いから…また何かあれば!」


智葉「あぁ、わかった」

16: 2014/08/10(日) 12:38:40.58 ID:g+tl3+OlO
豊音「おまたせー!」


智葉「早かったな。これは…冷麺か?」


豊音「岩手といえば、盛岡冷麺かなー? 冷めないうちにどうぞー」


智葉「いや、もう既に冷めているんだが…」


豊音「わわっ! そうでした…じゃあ冷たいうちにどうぞー」


智葉「いただきます」


豊音「いただきまーす!」


智葉「…うまいな。」


豊音「ほんとにー?うれしいよー」


智葉「冷麺を食べる機会は殆どないが、ここまで美味いものだとは」


豊音「それは良かったよー! 私も誰かと一緒に夕食なんて久しぶりだからうれしいよー」

17: 2014/08/10(日) 12:39:45.61 ID:g+tl3+OlO
智葉「豊音、終わったぞ」


豊音「ありがとうー! 洗い物頼んじゃってごめんねー」


智葉「なに、このくらいお安い御用だ。」フキフキ


豊音「助かるよー! そういえばお風呂なんだけどー」


智葉「風呂? 風呂がどうした?」


豊音「この近くにねー、地元の人も滅多にこない温泉があるんだー。もしよければ、一緒にどうかなー?とかとか…」


智葉「温泉か…いいな。豊音、案内してくれ」


豊音「やったー! 支度するからちょっと待っててねー!」


智葉「あぁ…私も支度するか」

18: 2014/08/10(日) 12:40:16.21 ID:g+tl3+OlO
温泉


智葉「私たちしかいないな…」


豊音「ねー! 貸切状態だよー」


智葉「ふぅ…豊音はここにはよく来るのか?」


豊音「んー、実は今日が初めてなんだー! ずっと来たかったんだけどねー」


智葉「そうだったのか。いいところに連れてきてもらって感謝する」


豊音「私こそ感謝だよー! あ、智葉さん! 背中流してあげるよー」


智葉「いいのか? それじゃあ頼む」

19: 2014/08/10(日) 12:41:33.04 ID:g+tl3+OlO
豊音「痛かったら言ってねー?」


智葉「あぁ」


豊音(…智葉さんの背中、すっごく小さいなー。話し方も素っ気ないけど、頼りになるんだよねー)


豊音(対局した時はすごいプレッシャーだったけど…こう見ると普通の女の子なんだねー)


豊音「はい、終わったよー」


智葉「ありがとう。豊音も流してやるから、背中向けて」


豊音「わわ! ありがとうー! それじゃあ…」クルッ


智葉「………」ゴシゴシゴシ


豊音「いたた、ちょっと痛いかなー?なんて…」


智葉「…我慢しろ」ゴシゴシゴシ


豊音「えー!?」

20: 2014/08/10(日) 12:42:15.09 ID:g+tl3+OlO
帰り道


豊音「はー、サッパリしたねー!」


智葉「あぁ、いいお湯だったな」


豊音「うん! はぁ…夜風が気持ちいいねー」


智葉「そうだな。それに星もよく見える…とても綺麗だ」


豊音「東京は星が見えないって本当なのかなー?」


智葉「あぁ。東京は高い建物も多いし、夜でも街が明るいからな」


豊音「そっかー! 東京に行ったら、この景色も見れないんだー…」

21: 2014/08/10(日) 12:43:29.42 ID:g+tl3+OlO
豊音の家


豊音「もうこんな時間だー。そろそろ寝ようかなー?」


智葉「そうだな。布団まで用意してもらってすまないな」


豊音「全然大丈夫だよー。電気消すねー?」


智葉「あぁ。 おやすみ」


豊音「おやすみー」

22: 2014/08/10(日) 12:45:12.59 ID:g+tl3+OlO
豊音「…智葉さん? 起きてるー?」


智葉「…どうした?」


豊音「私ね、今日は凄く楽しかったんだー」


智葉「………」


豊音「でもでも…智葉さんと対局してね、少し怖くなったんだー」


智葉「………」


豊音「宮守のみんなで全国大会に行って、優勝したい…その気持ちで頑張って来たけどー」


豊音「力の差、っていうのかな? もし全国大会で臨海女子と当たったら勝てないかもー…って思っちゃったんだ」


智葉「…じゃあ麻雀をやめろ」


豊音「えっ!?」


智葉「何を言い出すかと思えば世迷言を…麻雀をやめればその悩みもなくなるだろ」


豊音「智葉さん…冷たいよー」


智葉「お前は私に何を期待した? 頑張れ、諦めるな、お前たちなら大丈夫だ」


智葉「そんな生ぬるい、慰めの言葉でも欲しかったか?豊音」


豊音「うっ…ぐすっ…」泣

23: 2014/08/10(日) 12:47:53.50 ID:g+tl3+OlO
智葉「山奥の村から下界に降り、ようやくお前の夢が始まったんじゃないのか?」


豊音「……!!」


智葉「………」


豊音「うぅ…ぐすっ…うっ」泣


智葉「…ある少女は”姉にもう一度会うため”、またある少女は”別れた友と会うために”、全国出場を目指している」


豊音「えっ…?」


智葉「お前の夢は、目標はなんだ?もう一度それを見つめなおせ」


豊音「わたしの…夢…」


智葉「私はもう寝る。おやすみ」


豊音「うん…おやすみー…」

24: 2014/08/10(日) 12:49:28.27 ID:g+tl3+OlO
翌朝・近くの駅前


智葉「送ってもらってすまないな、豊音」


豊音「ううん、ちゃんと見送りたかったからー…」


智葉「それに朝食まで持たせてもらって、ありがとう」


豊音「うん! おにぎり作ったんだー! 帰りの電車で食べてねー」


智葉「あぁ。それじゃあ私はそろそろ行くよ」


豊音「あっ!智葉さん!ひとつお願いがー…」


智葉「なんだ?」


豊音「サイン…書いて欲しいかなー、なんて」


智葉「あぁ…断る」


豊音「えーっ!? ダメかなぁー…あ、サインは書かない主義とか


智葉「全国大会に来たら、その時は書いてやる」


豊音「えっ…?」


智葉「全国出場の切符、色紙とペンを忘れるなよ」フッ


豊音「…うん!」ニコ

25: 2014/08/10(日) 12:51:03.87 ID:g+tl3+OlO
新幹線の車内


智葉「腹減ったな…豊音の作ってくれた朝食でも食べるか」ファサ


智葉「ん? これは…手紙?」


智葉へ

昨日は私たちの所へ来てくれてありがとう。

きっかけは何でも、智葉と一緒に過ごせてすごく楽しかったよー!

それと、昨日は泣いちゃってごめんなさい。

あの後、私の夢についてもう一度考えてみたんだー。

私の夢は、宮守のみんなと全国大会で優勝すること!

もちろん、臨海女子にだって勝つつもりだよー?

だから…全国大会で待っててね!

P.S.

私たち、友達になれるかな?

そうなれたらすごく嬉しいよー!


智葉「…豊音」モグモグ


智葉「…美味い。東京で待っているぞ、友よ」

26: 2014/08/10(日) 12:53:58.51 ID:g+tl3+OlO
臨海女子・部室


智葉「いま戻った」ガチャ


メグ「オカエリナサイー! 岩手ハドウデシタカ?」


智葉「あぁ。温泉がよかった」


ネリー「サトハー! お土産は!?」


智葉「は?土産なんてないぞ」


ネリー「えーっ!? サトハのケチー!」


智葉「ケチで結構。お前たち、早く部活を始めるぞ」


メグ「サトハはタフデスネー!」


智葉「県予選まで時間がないんだ。それに…」


ネリー「それに? なになにー?」


智葉「…なんでもない。ほら、さっさと始めるぞ!」


カン!

27: 2014/08/10(日) 12:55:33.64 ID:g+tl3+OlO
ーおまけー


インターハイ・個人戦2日目


福与「さぁーやってまいりました!インターハイ個人戦2日目! 本日よりシード選手が登場します!」


福与「個人戦D卓! 昨年度個人戦3位、臨海女子・辻垣内選手の入場でーす!」


智葉「………」ガチャ


『智葉お姉ちゃん!』


『智葉さーん!』


『智葉ー!待ってたよー!』


智葉「これは偶然か、はたまた奇跡か…」フッ


智葉「見せてやろう…都会っ子(シティーガール)の実力を!」


もいっこカン!

29: 2014/08/10(日) 14:38:37.36 ID:g+tl3+OlO
>>28
ありがとうございます。
カンペは旅に出る前にガイトさんが用意しているもので、使い回しです。

30: 2014/08/10(日) 14:56:57.00 ID:UWsDL+c9o

引用元: 【咲SS】辻垣内智葉「田舎でツモろう?」3本場