1: ◆GLPLA.M.6I 2011/06/23(木) 23:42:56.26 ID:Nfk5XxpX0
あらかた書き終わったので見切り発車
一応唯梓、時々憂純
どちらもそれほど濃くは無いです
あ、それと、ナレーターが出てきますが
CV:銀河万丈さんでお願いしますwwwww
2: 2011/06/23(木) 23:43:48.90 ID:Nfk5XxpX0
昔々のその昔
現在の京都に程近い山間の村に、一組の老夫婦が住んでおりました
「いい天気じゃのぉ、婆さんや」
「そうですねぇ、お爺さん」
「絶好の散歩日和じゃのぉ、婆さんや」
「そうですねぇ、お爺さん」
「……ってさー、何で私が翁なのぉ?」
「配役の都合らしいから仕方ないよ、純ちゃん」
「……憂は良いじゃん、嫗なんだから……私だって女役やりたかったよ」
「でも……ね、私は……純ちゃんと夫婦役が出来て……嬉しい、よ」
「……そか。なら……翁で良いや」
《なよたけの……》
3: 2011/06/23(木) 23:44:22.21 ID:Nfk5XxpX0
ある日の事です。翁は日課の散歩で、近くにある竹林を散策していました
「……竹林って散策する価値あるのかなぁ?」
筍掘りのシーズンや竹の花見の時は最高ですよ。
「ふーん、そっか~。……ってあのぉ~、ナレーターさん」
はい。
「……独り言に反応されると……恥ずかしいんですけど」
おっと、失礼しました。では気を取り直して……。
翁が散策していると、奥の方に不思議な光が見えました
慌ててそこに近寄ると、一本の竹が輝いています
「な、なんじゃこりゃー!と、とにかく中を確かめないと!!」
急いで家に帰り、鉈を持ち、先程の竹の所へ戻ると、光輝くその部分をじっくりと観察しました
どうやら竹の一節だけが光り輝いているようです
「よし……それじゃぁ、この節の真ん中に思いっ切り鉈を振り下ろせば……」
『ちょっとちょっと!真ん中じゃなくて上の方だよ!』
「あ、そうか。真ん中じゃ梓が真っ二つだよね~。……でも~、それも面白いかもねっっっ!!!」
『にゃぁぁぁぁ!!!』
4: 2011/06/23(木) 23:44:48.40 ID:Nfk5XxpX0
翁は楽しそうな顔で光る節の真ん中目掛けて鉈を振り下ろした!
キーン!!
鉈は見事に弾かれた!!
翁は5のダメージ!!
「い……ったーい!!」
『うふふふ~、そんな事も有ろうかと思って、節の上部以外はチタンコーティングしてあるの~』
「さ……さすがはムギ先輩……やりますね」
では、気を取り直して上部を叩きましょうか。
「仕方ないなぁ……ほい、コーンっと」
翁が鉈の刃を節の上部に軽くぶつけると、何故か斜めにスパッと切れて中からとても美しい女の子が現れました
「……なんだか色々と突っ込みたいけど……まぁいいや。えっと……おぉ!竹を斬ったら中からこんなに美しい女の子がー!」
何だか白々しいですね。
「ゴチャゴチャ煩い!」
翁は女の子を家に連れて帰り、嫗と相談してこの子を育てる事にしました
5: 2011/06/23(木) 23:45:38.44 ID:Nfk5XxpX0
「でもさー、憂。育てるにしても私達そんなにお金無いよ?」
「大丈夫だよ、純ちゃん。私が機織りをして稼ぐから!」
「それ……違う話しじゃん……」
『あ、お金なら大丈夫だよ!』
「梓、それ本当?……あ、まだ梓じゃなかったんだっけ……。えっと……娘!それは本当か?」
『……まぁ、まだ人形だし名前が無いから仕方ないよね……。えと……おじいさん、光る竹を見つけたらそれを斬ってみて!』
「そうすると金が出て来るんだよね!」
『憂……私の台詞とらないでよ……』
「よっしゃ!それじゃ明日から光る竹を探すぞー!!」
翌日、翁は竹林に入り光る竹を見付けては斬る作業を繰り返していました
「おぉっ!金が一杯!!こっちも!あっちも!!」
大漁ですね。
「うん!これだけあれば三人で充分暮らしていけるよ」
そうですか。でも、金ばかりじゃ飽きますよね。
「ん?じゃぁ他に何が出るの?」
そこの……そう、それです。それを斬ってみて下さい。
7: 2011/06/23(木) 23:46:24.54 ID:Nfk5XxpX0
「これ?よいしょ……コーンっと!……はぁ!?ゴールデンチョコパン!?」
どうですか?
「いや……確かに名前に『金』が入ってるけどさぁ~」
お気に召しませんか?
「まぁ、食べられるから良いや。さってと……こんだけ稼げば充分だよね~。憂に見せてあげなくちゃ~」
翌日も、翌々日も、竹林に行く度に金を見付けては持って帰る日々を続け、気付いた時には貴族と肩を並べるほどの大金持ちになっていました
「うっわー!凄い屋敷だよ!!一体何部屋あるんだろ……」
「私達だけじゃ広すぎるよね~」
「まぁ、後々必要になるんだから、このくらいでも良いんじゃない?」
「……あれ?さっきまでチビチビ人形だったのに……何で出てきたの?」
「純……話しの中ではもう三ヶ月経っているんだけど……」
「あれ?でもそんな事誰も言ってないよ?」
「そんな、憂まで……あれ?そういえば言われていないような……ナレーターさーん」
はいはい、なんですか?
「確か三ヶ月経った……んだよねぇ?」
……そのナレーションはこの直後ですよ。
・
・
・
「へっ!?にゃぁぁぁ!間違えたぁー!!」
まぁ良いじゃないですか。では……。
8: 2011/06/23(木) 23:46:50.42 ID:Nfk5XxpX0
娘は日毎に成長し三ヶ月経った今では、この世の者とは思えない程の美しさと、仏のような慈悲の心を持った娘になっていました
「そろそろ髪を結い上げる頃ですねぇ」
「もうそんな時期になるのか……子供の成長は早いのぉ」
「それに、名前を付けないといけませんねぇ、純じいさん」
「そうじゃのぉ、憂ばあさん」
「どんな名前がいいですかねぇ」
「そうじゃのぉ……よし、ここは御室戸斎部の中野を呼んで名付けてもらうかのぉ」
「それは良いですね、では早速手配してもらいましょうか」
数日後、屋敷にやって来た御室戸斎部中野は、娘の容姿を見t
「ひゃっほー!やっと名前付きで出られるぞー!!」
「ちょっとちょっと……まだ私達の名前は確定していないんですよ」
「え゛?そうなの?」
「えぇ、そうですよ。まぁ、私は非公式ながらも一応名前は出ていますけどね」
「でも、確かあのシーンでは両親の名前が……」
「確かに出ていましたけどね、ただ残念ながら父であるあなたの名前は判別出来ていないんです」
「……なんてこった……」
「というわけで、名付け親となる中野母でーっす!!」
「……夫の……中野父です……」
10: 2011/06/23(木) 23:47:45.63 ID:Nfk5XxpX0
ナ、ナレーションに割り込まないで下さいよ!ちゃんと出番があるんですk
「そんなの待っていられないわよー!」
「というわけで、娘の名は『なよ竹のあずさ姫』に決定する!」
「は、はい!!ありがとうざいます!!」
「よかったね、梓」
「これでちゃんと梓ちゃんって呼べるよ~」
「それじゃぁ、皆を呼んで祝宴だー!」
翁と嫗は髪の結い上げと名付けの祝宴を三日三晩執り行いました
それはそれは素晴らしい宴で、梓姫の住む国だけでなく隣国や離れた国からも人が集まる程でありました
「あ、あの……」
おや、中野夫妻じゃありませんか。こんな所で何をしているんですか?
「えっと……この後の出番は……」
ありませんよ。
「「えっ!?」」
あんな風に割り込んでくるんだから、当たり前じゃないですか。
「「そ、そんなぁー」」
あ、お帰りはあちらからお願いしますねー。
11: 2011/06/23(木) 23:48:25.72 ID:Nfk5XxpX0
宴から数日経つと、梓姫の噂を聞き付けた公家や貴族、更には庶民までもが一目見ようと屋敷に集まりはじめました
しかしどれだけの貢ぎ物を差し出しても、梓姫は誰とも会おうとはしませんでした
そのため、日に日に屋敷を訪れる輩は少なくなっていき、最終的には五人の公家や貴族だけが残りました
その五人の名前は律皇子、紬皇子、右大臣澪御主人、大納言聡御行、そして中納言唯麻呂
梓姫に対する想いは他の誰にも負けていないとそれぞれ自負しています
「梓ちゃん……なんで誰とも会おうとしないの?」
「なんでって……そんな『私は金持ちなんです!』的な態度を示されてもどうかなって思うし」
「まーねー、それにいくら『大切にします!』って言われても本心はわからないしねぇ」
「純の言う通りだよ……」
「でもね、一応設定では私達もう七十歳なんだよ」
「当時の平均寿命から言えば、私達は妖怪レベルだよね」
「だからさ、結婚とか……考えてもらえないかな?」
「……わかった……そのかわり、条件を付けたいんだけど……」
15: 2011/06/26(日) 13:14:45.00 ID:KiOrn94W0
梓姫は五人を屋敷に招き入れ、御簾の奥からその条件をそれぞれに伝えました
「律せ……じゃなくって、律皇子」
「はい」
「『仏の御石の鉢』を持ってきて下さい」
「ははっ!畏まりました!」
「紬皇子」
「はい」
「『蓬莱の玉の枝』を持ってきて下さい」
「畏まりました~」
「右大臣澪御主人」
「は、はいっ!」
「『火鼠の裘』を持ってきて下さい」
「ね、鼠っ!?ひぃぃぃぃ……か、畏まりましたぁー」
「大納言聡御行」
「あ、はい」
「『龍の首の珠』を持ってきて下さい」
「龍っすか!?はぁ……畏まりました」
16: 2011/06/26(日) 13:15:32.06 ID:KiOrn94W0
「唯先輩」
「……ほぇっ!?」
「……あ、間違えました……。コホン、中納言唯麻呂」
「は~い」
「『燕の産んだ子安貝』を持ってきて下さい……って、出来ますか?」
「うーん、難しいかも……。でも、あずにゃ姫たっての願いなんだから、頑張るよ!」
「……なんですか、その『あずにゃ姫』って」
「あずにゃんだからあずにゃ姫だよ~」
「意味わかりませんよ……」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。それで、期限はいつまでなの?」
「あ、一週間後でお願いします」
「では、探しに行くとするか!……まぁ、私が一番乗りだろうけどね~」
「ねーちゃんには負けないぞ」
「わ、私もだ!」
「私、結構楽勝かも~」
「私も負けないよぉ~」
五人はそれぞれ梓姫が望む物を探しに旅立って行きました
17: 2011/06/26(日) 13:16:11.82 ID:KiOrn94W0
それから二日後……
「よっしゃー!やっぱ私が一番乗りだなっ!!てなわけで律皇子、只今戻りました!!」
「以外と早かったですね……では、『仏の御石の鉢』を見せて下さい」
「はい!こちらでございます」
「……純……どう思う?」
「どう思うって言われても……ねぇ、憂」
「うん……これって、金魚鉢……だよねぇ」
「テヘッ、ばれたか」
「『テヘッ』じゃありません!では、律皇子は失格という事で」
「そうだねー」
「けってーい!」
「そ、そんなぁ~」
18: 2011/06/26(日) 13:16:50.74 ID:KiOrn94W0
翌日、紬皇子がホクホク顔でやってきました
「梓姫さま~、『蓬莱の玉の枝』お持ちしました~。これになりま~す」
「おぉ……これは……」
「確かに……根が銀、枝が金、そして真珠の実がなっているよ!」
「うふふ~、琴吹グループに頼んで作ってもらったの~」
「「「……は?」」」
・
・
・
「……あ!いっけなーい!」
「つまり……偽物だという事……か」
「そうだね……純ちゃん」
「偽物を持って来るなんて言語道断です!紬皇子も失格です!!」
「はぁ……失敗しちゃったなぁ~」
19: 2011/06/26(日) 13:17:29.34 ID:KiOrn94W0
そのまた翌日、今度は右大臣澪御主人が怯え顔でやってきました
「えと……梓姫さま……お望みの物をお持ちしました……」
「……なんでそんなにも怯えているんですか?」
「だ、だって……鼠だぞ!しかも裘だぞ!!」
「はぁ……では、見せて下さい」
「こ……この中に入っているから……」
「そこまで怯えるのもどうかと……まぁいいです。純、開けてもらえる?」
「はいよ~、パカっと」
「一応鼠の裘っぽいけど……純ちゃんはどう思う?」
「うーん……わからないなぁ~」
「じゃぁ、取り敢えず燃やしてみたら?」
「あ、そうだね。えっ……と」
「はい純ちゃん、松明だよ」
「サンキュー。ではこれを……」
20: 2011/06/26(日) 13:18:08.66 ID:KiOrn94W0
梓姫に促され、翁は燃え盛る松明を裘の上に載せました
もしこれが本物ならば、松明のみが燃え尽きるのですが……
「あ、火がついた」
「……燃えてるねぇ……てかなんか燃え方激しくない!?」
「なんかバチバチ言ってるよっ!!」
「なんでだっ!?わ、私はちゃんと用意されていた偽物を持ってきたぞっ!!」
「でもでもっ!!どんどん激しくなってきてるよっ!!」
「だ、誰かっ!水!水を持って来てっ!!」
齋藤さん!!
「ちょっと待った!水なら用意してあるぞ!!」
「律!?」
「あそーれっと!!」
……ふぅ、無事に消えましたね。
「……純ちゃぁ~ん、怖かったよぉ~」
「よしよし……でも一体どうして?」
「わ、私は何も知らないぞ!普通に、用意されていた物を持って来ただけなんだからなっ!」
21: 2011/06/26(日) 13:18:36.40 ID:KiOrn94W0
「ですよね……じゃぁ……すり替えられたって事……ですかね?」
「あぁ。おそらくな……でも誰が何のためにこんな事を……」
「あれ?そういえば……律先輩、齋藤さんに声がかかった時、既にバケツを用意していましたよね……?」
「へっ!?だって台本に書いてあったからさ」
「嘘を言うなっ!!そんな事、私の台本には書いてなかったぞ」
「嘘なんかじゃないやいっ!!私の台本にはちゃんと書いてあったぞっ!」
「あ、あの、私の台本にもそんな事は書いてなかったと思います」
「わ、私のにも……」
「梓に純ちゃんまで……なんだよっ!そんなに私を悪者にしたいのかよっ!!」
「あの……律さん、台本には何と書かれていたんですか?」
「えっと『裘が燃えさかるので、用意してある水をかける』だったかな?」
「それって、手書きでしたか?」
「よくわかったねぇ、憂ちゃん正解だよん」
「やっぱり……私、さっきから気になっていたんですよね。あの、ナレーターさん」
はいはい。
22: 2011/06/26(日) 13:19:17.60 ID:KiOrn94W0
「もしかして、私達の持っている台本って……みんな違う内容だったりしますか?」
あ、ばれましたか。その通りです、印刷されている部分は同じなんですが、数名の方の台本に『指令』をボールペンで書き入れてあります。
「……と言う事は……そうか。律、ごめん、疑って悪かった」
「あ、いや、そんな、面と向かって謝られても……私だって……悪かったんだし」
「何でだ?別に律は悪い事なんかしていないだろ?」
「ん……いや……その……ちゃんと、澪に、伝えておけば、澪が、怖い思い、しなくて、すんだかな……って」
「まぁ、それは、そうなんだが……。てゆーかそういったネタばらし的な事って今までにやった事あったか?」
「無い……けどさ、いつもは危なくない事だから言わなかったんだけど、今回はさ、私が予想した以上に燃え上がったから……酷い事したなって……」
「……バカ律。そんなに後悔するんだったら前以て齋藤さんやムギに訊けば良かったじゃないか」
「うん……ゴメン。そこまで頭が回らなかった……ホントに……グズッ……ゴメン……」
「全く……いつもの律は何処に行ったんだ?」
「……グスッ……どっか……ヒック……いっちゃった……」
「……じゃぁ、いつもの律が戻ってくるまで、こうしててやるよ……」
「……ウゥッ……ヒグッ……グズッ……みおぉぉぉーーー!!!」
26: 2011/06/29(水) 22:51:04.49 ID:Img+z6Ac0
「ねぇ梓、これって取り敢えず『一件落着』ってやつ?」
「そうじゃないかな。……憂のお陰だね」
「えぇ?わ、私は別に何も……」
「何もして無くないよ。だって、憂が台本の事言ったから二人は仲直り出来たんだし」
「そうなの……かな?」
「そうだよ!この私が保障しまっす!!」
「もぉ……純ちゃんったら……。それにしても……律さんと澪さんって相変わらず仲が良いよね~」
「だよね~。梓と唯先輩に負けず劣らずって感じだよね」
「純ってば、変な事言わないでよ……」
「だって本当の事じゃん」
「……むぅ……。でもそれを言うならさ、憂と純だってそうでしょ?」
「えぇ~?そうかなぁ~。……憂はどう思う?」
「わ、私は、お姉ちゃんと梓ちゃんや、澪さんと律さんのほうが、仲が良いと思うよっ!」
「そんなに強調しなくてもいいじゃん……せめて『私達も同じ位かな』とか言ってよ……」
「あ、そうじゃないの!えっとね、時々なんだけど、とても羨ましいなって思うの」
「羨ましい?……梓と唯先輩が?」
27: 2011/06/29(水) 22:51:35.47 ID:Img+z6Ac0
「うん!だってさ、どちらもとっても仲良さそうだから、……私も、純ゃんともっと仲良くなりたいなって思っちゃったりするんだよね」
「……憂?」
「だけど、そんな事純ちゃんに言ったら変な顔されそうで心配だし、だけどやっぱりもっと仲良くなりたいし、でもこういった時ってどうやって相手に伝えれば良いかわからないし!」
「憂……」
「そう考えたら、やっぱり今までと同じ距離感で居たほうが良いのかな?って思っちゃって、でもこの想いを伝えずに終わるのは嫌だし!!だからどうしたらいいのかわからないのっ!!!」
「憂!!!!」
「ひゃうっ!!じ……純……ちゃん?」
「憂……なんで私が憂を抱きしめているんだと思う?」
「わ……わからない……」
「私も……憂と同じだよ」
「えっ……?」
「私も……憂ともっと仲良くなりたい。それも……できれば恋人として……ダメかな?」
「純……ちゃん。……ダメなんかじゃ……ないよ。でも……良いの?私なんかで……」
「……憂じゃなきゃヤダ。憂が良い……」
「純ちゃん……グズッ……じゅんちゃぁぁぁーーーん!!」
「ごめんね……私のせいで寂しい思いをさせちゃっt」
「はーい、そこまでそこまで」
28: 2011/06/29(水) 22:52:27.55 ID:Img+z6Ac0
ど、どうしたんですか?梓さん。
「どうしたもこうしたも……。あ、そうか。ナレーターさんは知らないんだよね。この二人が既に恋人同士で尚且つお互いの家を行ったり来たりしてる事」
そ、そうなんですか!?
「そ。それに、衣装で見えないけれどお揃いのネックレスをしてるし」
はぁ。
「んで、そこに通されたペアリングには『J to U』『U to J』って彫られてて更にお互いの誕生石が埋まってると」
つまり……。
「ラブラブって事。ねぇ……何でいきなりこんな小芝居始めたのさ」
「えへへ~、何でだと思う?」
「何でって……そんなのわからないよ」
「ヒントは……私と憂の台本は二人で一冊です」
「二人で一冊……ハッ!もしかして今のやりとりが……?」
「だーいせーいかーい!!」
「『指令』として書かれていました~!!」
「でも……どうして今なの?」
「今っていうか……」
「キーワードが出たらお願いしますって書いてあるだよね~」
「ね~」
「キーワード?どんな?」
29: 2011/06/29(水) 22:53:11.58 ID:Img+z6Ac0
「えっと、梓ちゃんが『憂と純だってラブラブじゃない?』というような発言をしたらお願いしますって書いてあったの」
「だから梓がもしそういった感じの事を言わなかったら……」
「さっきのやりとりは無かったって訳か……成る程。……あれ?でもおかしくない?」
「……どこかおかしい所あった?」
「あ、別に憂と純は問題ないんだけど……あの、ナレーターさん」
はい、何ですか?
「ナレーターさんは『指令』の全てを知っているんですよね」
えぇ、そうですよ。
「じゃぁ何で二人が付き合ってる事を私が言った時……ってまさか!」
あ、ばれましたか。そうです、私にも『指令』があったんですよ。
「……だから、敢えて知らないふりをしていたんですか……」
はい、その通りです。ですが、流石にお二人がそこまでの関係とは知りませんでしたが……。
「だから演技っぽく無かったんですか……成る程」
「でも大変だったよ~。特に打ち合わせとかしてなかったからさぁ~」
「純……それにしては随分と息が合ってた気がするんだけど」
「まぁ、ね。憂の考えてる事なら大体わかるからさ」
「もぉ……純ちゃんったら……」
30: 2011/06/29(水) 22:54:24.25 ID:Img+z6Ac0
梓さん……。
「言わないで……聞いた私がバカだったって今物凄く実感してるから……」
……物語を進めましょうか。
「……お願い……」
了解しました。
右大臣澪御主人が失格となった翌日、今度は大納言聡御行が疲れた表情で屋敷に戻ってきました
「……」
おや?聡さーん、出番ですよー。
「あぁ、聡なら来ないよ、てゆーか居ないよ。ホテルに戻るって言ってた」
「へっ!?律先輩、何でですか!?」
「『頭数合わせで来ただけだし、この先大して出番無いし、龍の首の珠探しの演技するんだったらM○P3の古龍倒してた方が良いや』だってさ」
あの、それで律さんは引き留めなかったんですか?
「まぁ、実際そうだし……特に居なくても問題無いかなぁと思ってね」
「と言うことは……猫勝負で梓はオトモに負けたのか……」
「オトモ言うなぁぁぁぁーーー!!!てゆーか私は猫じゃなぁぁぁーーーい!!!」
「だって……ねぇ憂」
「あず『にゃん』だもんねぇ……純ちゃん」
「にゃぁぁ……反論出来ない自分が歯痒い……」
31: 2011/06/29(水) 22:55:07.86 ID:Img+z6Ac0
それから二日程経過し、今日が期限の最終日ですが最後の一人となる中納言唯麻呂は未だ姿を見せません
「唯麻呂様……今何処に居られるのですか……?」
「梓姫、唯麻呂さんを信じて待ちましょう」
「うむ、もしかしたら今も子安貝を探しているのかもしれぬしのぉ」
「ですが、梓は心配です……」
「……台詞抜きで?」
「いや、それは流石に無いけどさ」
「そっか」
「純ちゃん、梓ちゃんの事だから、本心ではきっと心配しているんだと思うよ」
「もぉ……シナリオではもう少ししたら来るんだから心配する必要なんて無いじゃん」
「それもそっか。あーでも気になるなぁー、唯麻呂さんは今一体何をしているのかなぁー」
「純……わざわざこっちをチラ見しながらそんな事言う必要あるの?」
「えー、だって、ねぇ憂」
「うん、そうだよね、純ちゃん」
「……ぶぅ……」
32: 2011/06/29(水) 22:55:55.01 ID:Img+z6Ac0
あの、皆さん。なんでしたら唯麻呂さんが今何をしているのかお見せしましょうか?。
「ホントに?見たい見たい!!」
「はい!私もお姉ちゃんが気になります!!」
「……私も……見たいです……」
「おやおや、先程とは打って変わって素直ですなぁ」
「そうだねぇ~」
「い、いいじゃん!気になるんだから!!」
「うんうん、素直が一番だよ、梓ちゃん」
「憂の言う通り!!……とまぁ、梓をからかうのはこれくらいにしておいて……ナレーターさん」
はい。
「あの、一体どうやって唯先輩の様子を見るんですか?」
あぁ、それはですね……こうします!モニターカモーン!!
「……純ちゃん……天井から液晶モニターが下りてくるよ……」
「今って確か……平安時代って設定だよねぇ」
まぁまぁ、細かいことは気になさらずに……。
「そんな事言われてもさぁー、気にならずにはいr」
それでは準備も整いましたので現場を呼んでみましょうか。
「なっ!私の発言遮った上にスルー!?」
屋外ロケ現場の紬さーん。
33: 2011/06/29(水) 22:58:08.33 ID:Img+z6Ac0
本日はここまでです
ではまた後日
ではまた後日
35: 2011/07/03(日) 11:28:25.56 ID:Ig7QPECA0
『は~い。リポーターの紬で~す。私、一度で良いからリポーターってやってみたかったの~』
お約束はしなくて良いので、リポートお願いします。
『了解しました~。……ごちら、現場の琴吹です。中納言唯麻呂さんですが、今まさに子安貝が有るという燕の巣目指して岩山を登っております』
「……あんな高いところを……」
「お姉ちゃん、フリークライミングしてる……」
『あ、因みに現在唯麻呂さんが登っている地点は、地上から約300メートルになります』
「そんな高さを……さっすが唯先輩!これぞ愛の成せる技だね!」
「愛って……純……やめてよ……恥ずかしい……」
『ではここでカメラを切り替えて唯麻呂さんの表情を見てみましょう』
「おぉ……凛々しい……」
「お姉ちゃんカッコイイね……」
「……」
「どったの?梓」
「……かっこ唯……」
「梓ちゃん……」
「憂、スルーしてあげるのが親友の務めだよ……」
36: 2011/07/03(日) 11:29:06.52 ID:Ig7QPECA0
『唯麻呂さんは梓姫の願いを聞いたのち、様々な文献を読みあさりつい先日ここにたどり着いたそうです』
「そうだったんだ……唯先輩、無理難題を押し付けてすみません……」
「……他の四人にも無理難題を押し付k」
「まぁまぁ……純ちゃん、スルーするのが親友の務めでしょ?」
「……りょうかい。それにしても……この映像ってどうやって撮ってるのかなぁ?」
「うーん……空撮だと思うけど……」
「空撮ねぇ……でも何か……変な気がするんだよなぁ~、何だろ……うーん……」
あ、ほらほら、そんな事言っている間に向こうはクライマックスを迎えていますよ。
「えっ!?」
『登り始めて一昼夜、燕の巣まであと少しです!唯麻呂さん、頑張ってください!!』
「い、いつの間に……てか一昼夜って実際だったら有り得ない!!」
「お姉ちゃん!もう少しだよ!!」
『さぁ!ラストスパートです!!』
「唯先輩……頑張って……」
『……あずにゃ姫のぉ……ためなぁらぁ……えんやこーら!!……やったー!とうちゃーく!!』
「すごいすごい!唯先輩流石です!!」
「やったね!お姉ちゃん!!」
『おぉ!これこれ……燕さんごめんね~。よいしょっと……子安貝取ったどぉーーー!!!』
37: 2011/07/03(日) 11:29:37.61 ID:Ig7QPECA0
「こんな時でもお約束を忘れないとは……」
「まぁ、唯先輩だし」
「まぁ、お姉ちゃんだし」
「それで良いのか二人共。……あれ?唯先輩ヤバいんじゃない?」
「「えっ?」」
『お!そういえば私、岩山にへばり付いているんだったっけ……じゃぁ手を放したら……まずい……よね』
何を悠長に解説しているんですか、素直に落っこちましょうよ。
『あ、そうだね~。おっとっとっとっとっとっとぉぉぉーーーー!?』
「お姉ちゃーーーん!!」
「唯せんぱーーーーーい!!!!」
『きゃーあー、おーちーるー』
38: 2011/07/03(日) 11:31:08.82 ID:Ig7QPECA0
「……なんか切羽詰まっているような声じゃ無いような……てか変だよ!背景動いて無い!!」
あ、ばれましたか。
『実はこれ、琴吹グループの映像チームが作ったCGだったの~』
「やっぱり……何か変だとは思ったんだよね~。あんなセット屋外に無かったし……」
『純ちゃんすご~い!まさか見抜かれるとは思わなかったなぁ~。……というわけで、唯ちゃん、もう起き上がっても大丈夫よ~』
『ふぅ……流石に後ろに倒れ込むのはドキドキしたよ~』
「……私の叫び声を返して欲しいです……」
「梓ちゃん……今回ばかりは私もそう思うよ……」
『それじゃぁ、あずにゃん……じゃなかった、あずにゃ姫、今すぐに子安貝をお持ちいたしますので少々お待ち下さいませ』
『現場からは以上でーす!』
紬さん、ありがとうございました。では皆さん、再開して……ってどうされましたか?
「あ、えっと、何か……ねぇ憂」
「うん、色々と……ねぇ純ちゃん」
「そだね、疲れたよ……ナレーターさん」
そ、そうですか。……あの……再開しても……よろしいです……か?
「いいですよー」
「がんばりまーす」
「わたしもー」
はぁ……では、再開しますね。
39: 2011/07/03(日) 11:31:52.23 ID:Ig7QPECA0
ついに迎えた期限の日、日が暮れ篝火が焚かれる時間になってようやく唯麻呂が現れました
「中納言唯麻呂、只今戻りました。あずにゃ姫、こちらが『燕が産んだ子安貝』になります」
「よく戻られた。では、父様、母様、改めを……」
「翁殿。改め、お願いいたしまする」
「承知致した。では、改めさせてもらうぞ」
翁は唯麻呂から子安貝の入った箱を受け取り、嫗と共に中を改めました
「うむぅ……これは……どう思う?婆さんや」
「多分……それですね……お爺さん」
「父様、母様、それは子安貝では無いのですか?」
「うむ、子安貝ではないな……」
「梓姫もご覧なさい」
「では失礼して……こ、これは……」
「どう見ても違うじゃろ?……あーもー年寄り言葉めんどくさい!これからは普通に話そ、ね!」
「もぉ……純ちゃんたら……」
「でさぁ、梓もこれって絶対に違うと思わない?」
「ま、まぁね」
「ね!どう見ても『燕のフンがついた卵の殻』だよね!」
「ほぇっ!?そうなの!?」
40: 2011/07/03(日) 11:33:03.38 ID:Ig7QPECA0
「お姉ちゃん……ちゃんと確認したの?」
「えっ?だ、だって……置いてあるって言われたし……それしか置いてなかったし……」
「唯ちゃんごめんね~、琴吹グループ総出で探したんだけど……見つからなかったの……」
「まぁ、空想の産物ですからね……ムギ先輩は悪くないと思いますよ」
「そぉ?そう言ってもらえると助かるわぁ~。梓ちゃん、ありがと~」
「えと……それじゃぁ……私は……」
「失格ですね」
「しょ、しょんなぁ~。あずにゃ姫様~、お願いしますよぉ~。私、頑張って取ったんですから~」
「そんな事言われても失格は失格です!」
「うぅ~、あずにゃんのいけずぅ~」
「それじゃぁ……中納言唯麻呂も失格という事でオッケー?」
「うん。じゃぁ純、名簿に×印しておいて」
「ほーい。……てかさ、唯先輩も失格したって言うのになんだか嬉しそうだねぇ~」
「お姉ちゃんが無事だったからだと思うよ、純ちゃん」
「なるほど……愛ですなぁ~」
「ですなぁ~」
「……憂、純、それ以上言うと流石の私も怒るよ!」
「きゃー、梓ちゃんが怒ったー」
「怒ったー、アハハ~」
「……もぉ……二人共知らない!」
41: 2011/07/03(日) 11:34:26.08 ID:Ig7QPECA0
それから数日経ったある日、屋敷に豪華な牛車が現れました
「ねぇ、純ちゃん……これって……」
「帝の……牛車!?」
公家達があれだけ騒いでいれば帝の耳にも届くというもの。梓姫の噂を聞き、一目見ようと現れたのです
「あ、梓!み、帝が来たよ!!」
「帝ねぇ……興味無いなぁ~」
「と、取り敢えず上がってもらおうよ、ねっ」
「……仕方ないなぁ……じゃぁ憂、お願い」
「うん!」
嫗は恐る恐る車に近付き、帝に声をかけました
すると後簾がゆっくりと上がり、中から帝がおごそk
「ようやく私の出番がまわってきたわ~!梓ちゃ~ん、お待たせぇ~!!」
さ、さわ子さん。帝役なんですからもう少し落ち着いた演技をおねg
「んもぉ、このくらい良いでしょ~?みんなそれぞれに役を崩しているんだし」
それは、まぁ、そうなんですが。せめて登場のシーン位は台本通りでお願いできますか?
42: 2011/07/03(日) 11:35:05.46 ID:Ig7QPECA0
「ぶー、仕方ないわねぇ。……オホン、この屋敷に梓という名の姫が居ると聞いたのだが……真か?」
「は、はい!左様にございます」
「ふむ……ではその姫の許へ案内して貰えまいか」
「あ、こ、こちらです!どうぞ!!」
嫗は帝に最大級の敬意を払いながら、梓姫のもとへ案内しました
「この御簾の奥に居るのが梓姫でごz」
「梓ちゃ~ん!コスプレ用の衣装、い~っぱい用意してきたわよぉ~!!」
も、もう帝の台詞は終わりですかぁ!?
「さっきやったんだから良いでしょぉ?それとももっと続けろっていうの?」
あ、はい……出来れば、ですg
「嫌!」
そ、即答ですか……。
「当たり前じゃない、面倒だし。だから、良いわよね♪」
……シナリオを進めるためですので、致し方ありませんが目を瞑りましょう。
「固いのねぇ……まぁいいわ。えっと……という訳なので、さぁ!梓ちゃん!!好きな衣装を選びなさい!!」
「そ、そういわれましても……てゆーか、もう着ていますし……」
「……それもそうよねぇ……はぁ、じゃぁ仕方ないか……折角作ったのになぁ~」
43: 2011/07/03(日) 11:35:49.20 ID:Ig7QPECA0
「あの……つかぬ事をお聞きしたいのですが……」
「な~に?」
「一応舞台は日本なんですけど……なんで衣装が洋服……それもゴス口リクラ口リ甘口リだらけなんですか?」
「あら~、純ちゃん良いところに気が付いたわね~。なんでかって言うとね……『♪炭水化物と炭水化物の』はい!」
「え、あ、ゆ、夢の……コラボレーション……」
「正解よ!つまりこれは平安日本と中世ヨーロッパのコラボレーションなの!」
「は、はぁ」
「どちらも絢爛豪華だった時代……だけど決して交わる事の無かった時代……それを私がコラボしてみせようと思ったんだけど……まぁ、仕方が無いわね……これで我慢するわ」
「……?」
「梓ちゃ~ん、こっちにいらっしゃ~い。取っておきのネコミミ持ってきたわよぉ~!」
「え……でも、御簾から出てはいけない決まりなので……」
「え~?……じゃぁいいわ、こっちから行くから」
「あ!それも駄目なんです!!決まりですから!!!」
「決まり……?でも梓ちゃんの隣に唯ちゃん居るじゃない!」
「えっと、まぁ、唯先輩ですし」
「お姉ちゃんですし」
「とまぁ、そーゆーことですし」
「クッ……そんな理由にもなっていない理由で私を拒むなんて……」
「さわちゃん、理由ならちゃーんとあるよ!」
44: 2011/07/03(日) 11:36:17.89 ID:Ig7QPECA0
「えっ!?あら、そうなの?ごめんね~、先生はやとちりしちゃった。それで?その理由ってな~に?」
「それはもちろん、あずにゃん……じゃなくて、あずにゃ姫分の補給です!フンスッ」
「……あの……唯ちゃん?言っている意味がちょーっとわからないんだけど……」
「だから~、『あずにゃ姫分補給』だってば~。さわちゃんだって、大好きな人をぎゅーってするとほわぁ~んってなって気持ちいいでしょ~?」
「……」
「あれ?さわちゃん、どうしたの?うつむいて肩を震わせてるけど……」
「……ゆ・い・ちゃん♪」
「はい」
「ちょっと、こっちにいらっしゃい♪」
「え……えと……」
「さっさとこっちに来なさい!!」
「は、はひぃ!」
「ね、ねぇ梓。もしかして今のが……」
「そう。あれがデスデビr」
「そこ!こそこそ話さない!!」
「ひぃぃぃっっ!!」
「す、すみませんでしたぁぁぁーー!!」
45: 2011/07/03(日) 11:36:51.78 ID:Ig7QPECA0
「……さてと。唯ちゃん、私の前に座りなさい♪」
「はいぃ……それで、あの、私、何か、いけない事、しましたかぁ!?」
「したわよぉ~♪だ・か・ら~♪」
「だから?」
・
・
・
「こうするのよぉぉぉっっっ!!!さっきの台詞を言ったのはこの口かぁ!この口かぁぁっっ!!この口かぁぁぁっっっ!!!」
「いひゃいいひゃい!はわひゃんおえんあひゃ~い!!!」
「……唯先輩って、天然と言うか無邪気と言うか……本当に噂通りの人だったんだね……」
「うん……部室でもたまにやられてるよ……」
「前は家でもお父さんやお母さんにやられてたよ……」
「ふぅ……唯ちゃん!金輪際さっきみたいな台詞を言わない事!わかった!!」
「はい……申し訳ございませんでした……」
梓姫の姿を見る事が出来なかった帝は、せめてもの手土産としてネコミミを翁に預け、PC及び携帯のメールアドレスと電話番号を嫗に教え、屋敷を去って行きました
「……ネコミミやメールやケータイが平安にあるかぁぁぁぁっっっっーーーー!!!!」
「純……」
「ん?」
「……ツッコミお疲れ」
「……あんがと」
48: 2011/07/06(水) 22:17:36.99 ID:ti+LXxIr0
その後も多数の公家や貴族が梓姫に面会を申し込みましたが、誰ひとりとして会うことは叶いませんでした
ただ唯一、帝とだけはメールでの悩み相談等で親交を深めていきました
「だからメールって……」
「純ちゃん、そんなにツッコミばかりしてると疲れちゃうよ……だからさ、程々にしておいたほうが良いんじゃないかなぁ」
「そうそう。憂の言う通りだよ~。ノンビリゴロゴ口リラ~ックスだよぉ~」
「……唯先輩が今ここに居るってのが、一番ツッコミたい点なんですけど……」
「良いじゃん。唯先輩なんだし」
「そうだよ。お姉ちゃんなんだから」
「その流れさっきやったし!!……ってもぉいい!疲れるからツッコミ止める!!」
「でも……ツッコミするよね」
「するね」
「私も~そう思うよぉ~」
同じく私もそう思いますね。
「……なんでナレーターまで同意するのよ……」
「まぁ、ナレーt」
「それはもういいから!!」
「……やっぱりね」
「……ツッコミいれたね」
いれましたね。
49: 2011/07/06(水) 22:18:10.19 ID:ti+LXxIr0
「……おちつけぇ~……おちつくんだわたしぃ~……素数を数えて……1・2・3・5・7・11・13・17・19・22・24・26・29・31・37・41・53!!!!」
あの、途中間違えてますよ。
「……いーのっ!!!」
そうですか。
「そうなのっ!!……ったく……。あ、そうだ。ナレーターに聞きたいんだけどさ」
はい、なんでしょうか。
「さっき『悩み相談』って言ってたよね……それって何の相談?」
気になりますか?
「ま~ね~。だって私達が居るのにも関わらずわざわざ帝とメールで相談するんだよ!?気にならない訳が無いでしょ」
では、次のシーンまで時間を進めましょうか。
「あ、それなんだけどさぁ、何で次のシーンは三年後なの?」
変ですか?
「そりゃあ変でしょ。まぁ一日ずつとまでは言わないけど、一ヶ月とかワンシーズン毎とか、そんなペースで進めても問題は無いんじゃない?」
いえ、それが……その……大有りでして。
「そうなの?」
はい。原作でもこの間の事は描かれていないんですよ。
「はぁ」
なので……申し訳ありませんが、一気に三年進めさせていただきたく……。
「そうなんだ。なら、いいや。ちゃっちゃと進めちゃって」
純さん、ありがとうございます。では……っとその前に少々準備を……。
50: 2011/07/06(水) 22:19:21.63 ID:ti+LXxIr0
「準備?」
はい。齋藤さん、例の物を梓姫さんにお願いします。
「かしこまりました。では……こちらをお渡しいたします」
「えっと……ノートPC?」
「必要なソフトは既に起動しておりますので、どうぞ開いてみて下さい」
「あ、はい。……メーラー?送信済みトレイにメールがいっぱい……。あの、これってもしかして……」
『梓ちゃん、その通りよ』
おや、さわ子さん。いきなり何ですか?
『何ですかもなにも……何?このメールの数々は……』
『さわちゃんみせてー。……うぉっ!!こ、こんな沢山のメール、私には到底出来ない!!だがしかし、澪ならば可能……だよな』
『私にふるな!それに……いくらなんでもこの数は私だって無理だ。先生、梓からのメールは一体何通あるんですか?』
『全部で980通、まぁ実際に梓ちゃんが書いたのは十通なんだけどね。確か件名に『梓(梓姫)です』って書いてあるのがそうよね?』
「あ、はい。その通りです」
因みにそれ以外はスタッフとアルバイトに書いてもらいました。
「へぇ~。……どんなのか読んでみたいなぁ~」
「あ、私も読んでみたい~」
「ちょっ!純!憂!」
「という訳で、見に行っても良いですか?」
あ、ではお二方も隣のスタジオへどうぞ。
「あ、そ、それは困る!」
51: 2011/07/06(水) 22:21:54.07 ID:ti+LXxIr0
「なんで?」
「……なんでも」
「じゃぁさ……まずい部分を黙読するんなら良いでしょ?」
「でも……」
「なら今ここで教えてよ、なんて書いたのかを」
「そ、それは……ゴメン、ちょっと無理……かな」
「それじゃぁ見なきゃ尚更わからないじゃん。という訳で私と憂は向こうに行ってくるね~」
「あ、ちょ!ちょっと待ってよ!!」
おっと、梓さんはそこから出てはいけませんよ。
「えぇっ!?そんなぁ~」
決まりは決まりなので……すみません。モニターで様子を見ていて下さい。
「大丈夫、私が一緒に居てあげるからね」
あ、では唯さん、梓さんをお願いしますね。
「は~い。……あずにゃ姫様~、むぎゅぎゅ~」
「にゃ、にゃぁぁぁっっっ!で、でもっ!!あのメールはっ!!!」
「んもぉ、あずにゃ姫様、落ち着いて下され。ねっ……いーこいーこ……」
「ふみゅぅぅぅぅ……」
ではカメラを隣のスタジオに切り替えまして……。
52: 2011/07/06(水) 22:23:17.59 ID:ti+LXxIr0
♪
「しっかし……梓が書いたメールかぁ、どんな事書いてあるんだろうな」
「確かに、気にはなるな」
「どんな事が書いてあるのかしら~」
「まぁ、私は一度目を通したけどね」
「えっ!?じゃぁさっき梓が言ってた『読まれたくない理由』ってのも既にわかってるの?」
「う~ん……、多分そうじゃないかなって程度にはね」
「成る程……」
「さわ子先生、先輩方、ただ今到着しましたー」
「純ちゃん、憂ちゃん、いらっしゃい」
「……どうしたんですか?皆さん考え込んでいますけど……」
「ん?あぁ、かくかくしかじかで考え込んでいるだけよ。……まぁとにかくみんな読んでみなさい。梓ちゃん本人が書いたメールだけ表示してあるから」
「本当に読めば理由がわかるのか?」
「多分、ね」
「じゃぁ一通目から読みましょうか。えっと……」
53: 2011/07/06(水) 22:24:11.41 ID:ti+LXxIr0
件名 梓(梓姫)です
本文 ムギ先輩に言われてメールしました
悩み事を書いて相談する
という感じで書いてほしいと言われたのでこれから何通か考えて送りますね
「まぁ、普通だな」
「あぁ」
「えぇ」
「そうですね」
『普通でいいじゃないですか、最初のメールなんですから。……あの、この先も……読むんですか?』
「ん?そのつもりだけど」
『できれば……読まないでいただければ……嬉しいんですけど……』
「あぁ、さっき言ってた『読まれるとまずい』って事か?」
「だいじょーぶ、そん時は黙読するから。んじゃさわちゃん、次お願い」
「はいはい。それじゃぁね……これなら良いかしら?半年位経過したっていう設定のメールよ」
54: 2011/07/06(水) 22:25:11.98 ID:ti+LXxIr0
本文 突然ですが、恋って何ですか?
私、とある人の事が好きなんです
その人の事を想うと、それだけで胸が張り裂けそうになるんです
さわ子先生、これが恋なんですか?
「一気にきましたなぁ」
「そうだねー」
『も、もう十分ですよねっ!だからこれでおしまいにしませんかっ?』
「いやいや、これだけじゃまだまだですなぁ~」
「折角盛り上がってきたんだし~」
「ムギ先輩もそう思いますか?」
「えぇ、もっちろ~ん♪」
『で、でもでも!』
55: 2011/07/06(水) 22:25:49.45 ID:ti+LXxIr0
「だから落ち着けってーの。ちゃんとまずい部分は黙読するって」
『あ、あの!律先輩!そうじゃなくて!』
「さわちゃ~ん。次はどれが良いかなぁ?」
「そうね……じゃぁこれかしら。因みに七通目よ」
『七通目……あ!そ、それは絶対にダメです!!!』
「だが私は見るぞ!」
「律!!」
「澪まで……そんなに私は信用出来ないか?」
「いや……梓があれだけ嫌がっているから……」
「見るだけだってば。えーと、どれどれ……」
56: 2011/07/06(水) 22:27:17.50 ID:ti+LXxIr0
本文 さわ子先生
私、今まで好きな人の名前を敢えて書かないでいました
何故かというと、その人は先生もよく知っている人だからです
私が好きな人……、その人の名前は平沢唯と言います
そうです。私が好きな……愛している人は、唯先輩なんです
私自身、女の子なのに……って思った時もありました。
でも、憂と純が、お互いに勇気を出して告白して、恋人になった時に私わかったんです
好きになったのなら、そんな考えは小さな事だって
だから、私決めました!
唯先輩に勇気を出して告白します!
でも……多分、私はフラれると思います
だって、唯先輩にとって私はただの『後輩』
いつもの抱き着きだって、ただのスキンシップだって事、わかってますから
だけど、言わないでウジウジとしているよりは、言って砕けた方が気持ち的に納得出来そうなんです
私、これからは後悔しない生き方をしていきたいんです
でももし、唯先輩がオッケーしてくれたら
その時は、一番に報告しますね
それでは、失礼いたします
P.S. 支離滅裂な文章になっちゃってすみません
61: 2011/07/11(月) 22:06:37.54 ID:82S8/HNW0
『ヒック……ヒック……グズッ……』
「あ、梓ちゃん!どうしたの!?」
『グズッ……読まないでって……エグッ……言ったのにぃーーー……ウワァァァァーーーン』
「え?で、でもさ、誰も声に出して読んでないぞ!」
『あのね、りっちゃん……メールの内容ね……モニターに……全部……映ってるの……』
「えぇっ!?……そう、だったのか……梓、ゴメン。悪かった」
「ご、ごめんね、梓ちゃん」
「私も……梓、本当にゴメン」
「……私達みんな同罪よ。梓ちゃんがあれだけ嫌がっていたのに……その理由も聞かないで勝手に読んでいたんだから……。梓ちゃん、ごめんね……」
『ヒック……グズッ……ウグゥ……』
「……唯ちゃん、聞こえる?」
『あ、はい』
「……あなたの出番よ。わかるわよね」
『はい。……あずにゃん、泣かないで』
62: 2011/07/11(月) 22:07:52.01 ID:82S8/HNW0
『ウゥッ……ヒグッ……グズッ……ウゥッ……』
『あずにゃん……』
『ゆ、ゆいぜんばいぼ……ヒック……おどろぎばじだよで……エグッ……』
『うん……驚いた』
『ぞうでずよで……ウグッ……ごんだごど……おどろがだいでいだれるびど……グズッ……いばぜんよで……』
『……』
『ヒック……グスッ……へ、変ですよね!私が、唯先輩を、好きだなんで……ヒック……おかしい……グズッ……です……よね……』
『……おかしくなんかないよ』
『嘘!!』
『嘘じゃないよ』
『だって、唯先輩は色んな人と仲良くしているし……グスッ……抱き着いたりも……ウゥッ……してるじゃ……エグゥ……ないですかぁ……ウワァァァーーーン』
『あずにゃん!!』
『……ヒック……』
『さっきの純ちゃんじゃないけど……なんで私があずにゃんをギュッてしているか……わかる?』
『わかり……ウゥッ……ません……』
63: 2011/07/11(月) 22:08:33.28 ID:82S8/HNW0
『あのね……私も、あずにゃんが好き。愛してる』
『ほんとう……グスッ……ですか?』
『うん。……私ね、何度も……あずにゃんに告白しようと……思ってたんだ』
『……グズッ……』
『でもね、私は……あずにゃんみたいに勇気がなくて……臆病だったから……告白……出来なかったの……』
『唯先輩……グスッ……』
『だからね……グズッ……今……とても……嬉しいの……』
『ゆい……せんぱい……』
『あずにゃん……グスッ……遅くなっちゃたけど……私にも言わせてもらえる……かな?』
『……はい』
『あずにゃん……私、あずにゃんが好き。愛してる。だから……この先もずっと……一緒に居てもらえますか?』
『唯先輩……それじゃまるで……』
『まるで?』
『……プロポーズじゃないですか……』
『あ……ホントだねぇ~』
『もぉ……ふふっ』
『えへへ。……ねぇ、あずにゃん』
『ふふふっ……なんですか?』
64: 2011/07/11(月) 22:09:06.10 ID:82S8/HNW0
『……やっと、笑ってくれたね……』
『……?』
『あずにゃん……今日、ここに来てから一度も、笑っていなかったから……』
『そう……ですか?』
『うん。……笑ってはいるけど、本当の笑顔じゃなかった』
『本当の……?』
『本当の。あずにゃんが心から嬉しい時にだけ見せる本当の笑顔。今日は一度も見せていなかったから……心配だったんだよね……』
『……気づきませんでした……』
『だからね……今、あずにゃんが本当の笑顔を見せてくれて、とても嬉しいよ』
『……唯先輩が……』
『ん?』
『唯先輩が、一緒に居てくれれば……それだけで私はいつでも……本当の笑顔を、見せてあげられますよ』
『……という事は……』
『私からもお願いします。……この先ずっと……一緒に居て下さい』
『……うん』
65: 2011/07/11(月) 22:10:05.01 ID:82S8/HNW0
「……お~い、お二人さ~ん……って、聞こえてないか……」
あ、向こうのモニターは全てオフにしてあります。
「あ、そうなの?てかそれを早く言ってくれよっ!気を遣って損したじゃないか……」
「照れてるりっちゃんって可愛らしいわぁ~」
「よ、よせやい!」
「えぇ~?だって本当にそう思うんだもの~。澪ちゃんもそう思うでしょう?」
「へっ?あ、あぁ。コホン……た、確かに、少し、カワイイと、思う……ぞ」
「みぃ~おぉ~。なんで澪までそんな事言うんだよぉ~。余計恥ずかしくなるじゃんかぁ~」
「そ、そんな事言われても……。私は、ただ、事実を述べただけだぞっ」
「お、追い打ちをかけるなよぉぉーー」
「うふふふふふふ」
66: 2011/07/11(月) 22:10:51.91 ID:82S8/HNW0
「先輩達……楽しそうだね」
「うん、そうだね~。あ、お姉ちゃんと梓ちゃんも楽しそうだよ」
「ホントだ。……凄く楽しそうに笑ってる」
「……良かったね、お姉ちゃん、梓ちゃん」
「うん。二人とも……おめでとう。……あ、そうだ。先生に聞きたい事があるんですけど……」
「何かしら?」
「さっき、梓からのメールは一度目を通したって言ってましたよね」
「えぇ」
「それはつまり、梓が一番嫌がるであろう七通目のメールを、敢えて私達と唯先輩に見せた……という事ですよね」
「その通りよ。……なんでそんな事をしたんだろうって顔をしているわね……。良いわ、種明かししてあげる。ちょっと!そこの三人もこっちに来なさい!!」
「「「はーい!」」」
67: 2011/07/11(月) 22:12:08.22 ID:82S8/HNW0
「んで、さわちゃんな~に?」
「あなた達も気になるでしょ?私がなんで七通目を見せたか」
「それは、確かに気になります」
「それについて、種明かししてあげるわね」
「種明かし……トリックを自らばらす……つまり全てを話すという事?……りっちゃん警部!犯罪のにおいがします!!」
「あぁ、そうだな……ってムギ、しないから」
「えぇ~!?……ショボーン」
「いや、えぇ~じゃないし、おまけに落ち込まれても困るし。てかさわちゃんの話しきこうぜ」
「はぁ~い」
「はぁ、全くムギもムギなら律も律だな……。それで先生、なんで七通目をわざわざ見せたんですか?」
「……えっ?あぁ、ごめんね。りっちゃんとムギちゃんの掛け合い漫才が面白くてついボーッとしちゃってたわ」
「……面白かったんだ……」
「……純ちゃん、それは言わない約束だよ……」
「えっと……あぁ、理由ね。それはねぇ……んーっと……ちょっと待ってね……」
「……携帯に何かしらのヒントが!?やっぱりこれは犯罪のn」
「それはもういいから」
「……あ、これこれ。このメールを見てちょうだい」
「それって……唯から?」
「……だな、えっと……」
68: 2011/07/11(月) 22:12:55.23 ID:82S8/HNW0
件名 さわちゃんこんばんわ
本文 えと、突然のメール、ゴメンナサイ
実は、さわちゃん……いえ、人生の先輩であるさわ子先生にどうしても聞きたい事があるんです
恋って何ですか?
私、とある人の事が好きなんです
その人の事を想うと、それだけで胸がドキドキしたり、ギュッってなったりするんです
さわ子先生、これが恋なんですか?
「字面こそ違えど……」
「文脈はほぼ同じだね……」
「で?さわちゃんはどう返事したんだ?」
「ちゃんと返事したわよ、それが『恋』だって」
「おぉ!いつになく真面目だ!!」
「当たり前でしょぉ~?教え子から送られてきた直々の相談メールなんだし……それに、嬉しかったからね」
「嬉しかった?唯ちゃんからのメールが嬉しかったんですか?」
「相談されたって事と、成長を知ることが出来たって事でね……。あ、これこれ。次はこのメールを見てちょうだい。因みにさっきから約半月後に届いたメールよ」
「どれどれ……」
69: 2011/07/11(月) 22:13:52.52 ID:82S8/HNW0
件名 さわ子先生
本文 えっと、今日は重大発表をしようと思います
私、今まで好きな人の名前って書いてなかったよね
なんでかっていうと、その人は先生もよく知っている人だからなんだ~
私が好きな人はね……中野梓って言うの
そう。私が好きな……愛している人は、あずにゃんなんだよ
女の子なのに、変だよね
さわ子先生もそう思うでしょ?女の子が好きだなんて……普通、気持ち悪いよね
70: 2011/07/11(月) 22:14:34.58 ID:82S8/HNW0
だからね、この気持ちを心にしまっておこうと思うんだ
だって、あずにゃんにとって私は『一人の先輩』でしかないんだろうし
それに、抱き着いた時も必ず「やめてください」って言われるし……
あずにゃんに告白しても、多分、驚いた顔をして、不快な顔をして
……そしてフラれて、あずにゃんと私の関係がギクシャクして
軽音部の雰囲気が悪くなって、私かあずにゃん……最悪両方が辞めざるをえなくなるだろうから
私、自分のせいでそんなふうになるの、嫌だから
だから……告白はしないで今までのままでいようと思う
さわ子先生、今まで色々と相談にのってくれて、ありがとう
そして、ゴメンナサイ
それじゃ、また明日、学校で
P.S. へんてこりんな文章になっちゃってごめんね
71: 2011/07/11(月) 22:15:04.86 ID:82S8/HNW0
「えっと……という事は、梓と唯先輩は……」
「両想いだった。だけど……お姉ちゃんは……」
「今までの関係、そして軽音部の事を思って告白しなかったのよね……」
「……全く、そんな事で私達の関係が悪くなる訳無いだろ」
「……澪ちゃん。本当にそう思う?絶対にそうだって言い切れる?」
「……フラれた直後は唯が書いたようにギクシャクするかもしれませんが……」
「……梓ちゃんがその雰囲気のまま軽音部で今までみたいにやっていけると思う?」
「それは……多分、無理、ですね」
「だからね、唯ちゃんは自ら身を引く事を決めたのよ」
「そうだったのか……」
「あ、だからさわ子先生が梓ちゃんのメールを見て……」
「これなら二人は大丈夫だって思ったから、あのメールをみんなにも見せたって訳」
72: 2011/07/11(月) 22:16:58.69 ID:82S8/HNW0
「むぅ……今日のさわちゃんはいつになく先生な感じですなぁ~」
「りっちゃん、それってどういう意味?」
「え~、だってさぁ、いつものさわちゃんだったら唯と梓が恋人になるのを見て『教え子に先を越された!』とか言いそうじゃん?」
「あのねぇ……一応私は何度か男性と付き合った事もあるのよ、それに……嬉しい事じゃない。教え子が二人も幸せになるんだから……」
「そっか……そうだよな、唯も梓も、ずっと辛かったんだもんな」
「田井中部長!お二人に一言お願いします!」
「うむ、では……二人とも!幸せになるんだぞー!!」
「律、ムギ、向こうには聞こえないから」
「あ、そうだった……っておいおい!」
「ひゃぁぁぁーーー、お姉ちゃんと梓ちゃんが……」
おやおや、これはこれは……若いって良いですねぇ~
「あのねぇ、ナレーターさん……まぁいいわ、それよりもちょっとお願いがあるんですけど」
なんですか?さわ子さん
「このマイクの声を向こうのスピーカーから出していただけますか?」
え?何でですか?そのままでも良いじゃないですか。
「良くないの。さ、早くして頂戴」
はぁ、わかりました。では……はい、オーケーですよ。
73: 2011/07/11(月) 22:18:25.92 ID:82S8/HNW0
「……ゆーいーちゃん♪あーずさちゃん♪」
『『ふぇっっ!?』』
「恋人同士、あま~い雰囲気で居るのも良いけど……二人とも、何か忘れてない?」
『何か……?』
『あぁっっっっっ!!!!』
『ど、どうしたの?』
『唯先輩!……今、私達が、居るのは、何処ですか?』
『何処って……あぁぁぁぁっっっっっ!!!!!』
「思い出したかしら?」
『……という事は……』
『私達が話していた事も……』
「あぁ、それは大丈夫よ。映像だけで音声は届いていなかったから。……でも、そんなふうに言われると気になるわねぇ~」
『さわ子先生!それだけは!!』
『ごめんさわちゃん!それだけはほんっっとうに無理!』
「冗談よ、じょーだん。まぁ、それだけ慌てられると余計気にはなるけどね……ま、今回は自重しておくわ」
『ありがと!さわちゃん!!』
『ありがとうございます!!』
74: 2011/07/11(月) 22:19:40.46 ID:82S8/HNW0
「……私……軽音部に入って……良かった……」
「……ムギ、何をシミジミと呟いてるんだ……?」
「りっちゃんと澪ちゃん、部員じゃ無いけど憂ちゃんと純ちゃん、そして唯ちゃんと梓ちゃんよ……ス・テ・キ……はふぅ……」
「……そか」
「うふふふ~、軽音部……サイコー!!」
「……おぉーい、ムギ~、帰ってこ~い」
79: 2011/07/16(土) 14:31:53.06 ID:e0oBSoL+0
「こ、これは……凄い……」
「……確か、相談事っていう設定、なんだよねぇ……」
「うぅ……み、見るんじゃなかった……」
「あら、どうしたの?三人共変な顔して……。あ!もしかしてメール見てたの?」
「あ、は、はい……」
「いやぁ、梓が書いたの以外ってどんなのかなぁ~って思って……」
「気になったから、純ちゃんと澪さんと一緒に見たんですけど……」
「……凄いでしょ」
「……かなり……凄い……ですね……」
「ほほぅ……澪が絶句する位凄いのか」
「ヒィィッッ!!りっ、律!!急に後ろから寄り掛かるなっっっっ!!!」
「別にいーじゃん。んで?その澪が絶句したメールってのはどれかなぁ~?」
「律先輩……恐らくほぼ全てです」
「何!?……ほぼ全て……だと?」
「件名だけで空のメールが殆どなんですけどね」
「本文の書いてあるメールが三十通位あって……その内容が……」
「ふーん……よっしゃ、ちょいと流し読みしてみるか!」
「りっちゃん……後悔しないでね……」
「そんな大袈裟な……あ、そうか。さわちゃんは一足先に見てるんだっけか……オッケー、気をつける。えーっと……」
80: 2011/07/16(土) 14:32:27.20 ID:e0oBSoL+0
本文 唯先輩かっこよすぎです!
本文 唯梓というよりYUIAZU
本文 ゆいにゃんペロペロ
本文 唯先輩!唯先輩!!
本文 中野唯も良いが、平沢梓も捨て難い
本文 唯先輩とチュッチュしたいよぉ~
本文 今日、唯先輩が私を見てくれた!!
本文 平沢唯は私の宇宙だ!
本文 唯先輩があーんってしたら、私もあーんって返します!
本文 ひらさわゆい、私はこの六文字に全てを捧げられる!
本文 ゆいあずサイコー!!
本文 唯先輩の黒タイツクンカクンカ
本文 私達の歌を聞けぇぇぇーーー
本文 唯先輩は私が育てた
81: 2011/07/16(土) 14:33:03.46 ID:e0oBSoL+0
本文 唯先輩の御両親に感謝したい
本文 今日、唯先輩の布団に潜り込んだら脱ぎたてのパ
本文 待ち受けの唯先輩にキスをする事で私の一日が始まる
本文 着声は勿論唯先輩の『あずにゃ~ん』です
本文 唯先輩の中指チュパチュパ
本文 ゆいちゃんと呼ぶかゆいにゃんと呼ぶか、それが問題だ
本文 唯って呼んでみたい
本文 唯先輩のヘアピンが有ればそれだけで私は十回オ
本文 唯先輩を語るには一日じゃ少なすぎます
本文 私はアイスになりたい
本文 好きなジャンル?平沢唯以外の何があるの?
本文 唯先輩のトイレ&入浴シーンを盗撮したBDを手に入れた!
本文 唯先輩・・・ハァ・・・唯先輩・・・ンッ・・・ンァッ・・・
本文 あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!
・
・
・
「さわちゃん……」
「ん?」
「……私が悪かった……」
82: 2011/07/16(土) 14:33:55.45 ID:e0oBSoL+0
『そういや和ちゃん遅いね~』
「まぁ、仕方ないんじゃないか?生徒会の引き継ぎが大変だって言ってたぞ」
「去年までと比べて生徒会の業務が増えたのよね~」
『へぇ~、そうなんだ~』
「まぁ、そのお陰で各部室にクーラーを入れたり出来たんだけどね。去年までだったら職員会議にすらかけられなかっただろうし」
『ふ~ん。……和ちゃん今年は大忙しだったんだねぇ』
「えぇ、その通りよ、唯。すみません、お待たせしました」
『あ、和ちゃ~ん!』
和さん、お待ちしておりました。
「ごめんなさい、引き継ぎが中々終わらなくて……」
『い~よい~よ、和ちゃんだって大変だったんだからさぁ~』
「ありがと。あ、そうだ。ナレーターさん」
はい、なんですか?
「もうすぐ七時ですけど、今日はまだ続けるんですか?」おや、もうそんな時間ですか。えーっと、齋藤さんは居ますか?
「はい、ここに」
シナリオ的にも結構進んだので、今日はこれで終わりにしますか。
「そうですね」
では、今日はここまでという事で。皆さん、お疲れ様でした!
「「「「「「「『『お疲れ様でしたー!』』」」」」」」」
83: 2011/07/16(土) 14:34:36.99 ID:e0oBSoL+0
「……ってちょっとまったぁぁぁーーー!!!」
「ヒャッ……な、なんだよ律……いきなり大声出して……」
「ん?何でかって?それはだな、……えっとぉ~、そっのぉ~、なんとなくぅ?じこしゅちょぉー?みたいなぁ~」
「その喋り方は、や め ろっ!!!」
「アダァッ!!!」
……あの……もしかして、それだけのためにわざわざ叫んだんですか?
「まっさかぁ~、今のは軽いジョークだって」
はぁ、軽いジョーク……ですか。
「そうそう。んで、本題なんだけどさ……シナリオをちょっと手直ししてみないか?」
手直しですか?
「そう。って言ってもホントにちょびっとだけなんだけどな」
「それ面白そう!りっちゃん、何処を手直しするのかしら?」
「よくぞ聞いてくれた!えっとまずは……」
84: 2011/07/16(土) 14:35:06.60 ID:e0oBSoL+0
『あ、あのぉ……取り敢えずホテルに移動しませんか?』
「えぇ~?あずさぁ~なんでだよぉ~、別に良いじゃんかよぉ~」
『あの……その……ずっと重い衣装着ていたので……早く脱ぎたいな~って……』
「そうだよな、梓の衣装が一番重いんだもんな。律、私も早くホテルに戻ってシャワーを浴びたい。誰かさんのお陰で冷や汗いっぱいかいたからな」
「うぅ……その節は大変御迷惑をおかけいたしました……」
では、晩御飯の後位にホテルのロビーで手直しの件を話し合うってのはどうでしょう?
「確かに、その方がジックリと話せるな……。じゃぁ、それでお願いします」
では、皆様ホテルに戻りましょうか。
「「「「「「「『『はーい!』』」」」」」」」
87: 2011/07/24(日) 23:13:53.00 ID:0VoTJy5V0
#
「はぁ~、美味しかったね~」
「そうですね~。私、ちょっと食べ過ぎちゃいました」
「私もだよ~。……はぁ、ゴロゴロしたいなぁ~」
「部屋に戻るまでの辛抱ですよ」
「ですよねー。……んー、じゃぁゴロゴロの代わりに……」
「代わりに?」
「あずにゃ~ん……むぎゅ~」
「にゃっ!?」
「代わりにあずにゃん分補給しま~す♪」
「な、何で代わりなのか意味がよくわからないんですけどっ!」
「んーと、私のリラックスタイムって感じかなぁ~」
「はぁ、リラックスタイムですか。……じゃぁ、仕方がありませんね。でも……特別、ですよ……」
「ありがと~。お礼にいーこいーこしてあげよう」
「ふみゅみゅぅぅぅ……」
88: 2011/07/24(日) 23:14:23.53 ID:0VoTJy5V0
「はぁ、バカップルですなぁ~」
「律先輩もそう思いますか?」
「そりゃ、誰だって思うっしょ。……あれをバカップルと呼ばずして何と呼ぶ」
「あの……、律さん、純ちゃん」
「ん?あぁ、憂ちゃんは流石にそうも思わないか」
「いえ、バカップルだと思いますけど……」
「おぅ……実の妹公認ですよ、律先輩」
「だな……」
「そんな事より、そろそろ始めませんか?もう八時半過ぎてますし」
「それもそうだな……、よし。お~い、そこのラブラブなお二人さん!こっちだぞ~」
「……ラブラブって……」
「いいじゃん、ラブラブで。幸せのおすそ分けをしてるって事で。ね♪」
「……そうですね」
「おーい、早く来いよぉー!」
「「はーい!」」
89: 2011/07/24(日) 23:14:50.06 ID:0VoTJy5V0
「さて、みんな揃ったな。それじゃ早速……とその前に、ナレーターさん」
「はい、なんですか?」
「もうこの先には誰の台本にも『個別指令』は書いて無いって思って良い?」
「えぇ、それで大丈夫ですよ。それで、律さんは何処を手直しした方が良いと思うんですか?」
「あぁ、その事なんだけど……このままじゃ確実にバッドエンドじゃん?」
「それは……そういった物語ですし……」
「でもさ、出来ればハッピーエンドの方が良くないか?私はそう思うんだけどな」
「確かに、りっちゃんの言う通りね。私もハッピーエンドの方が良いと思います!」
「成る程。ではこれをどうやってハッピーエンドに変えますか?」
「そうだぞ、律。ストーリーも結構進んでいるんだからあまり無茶は出来ないぞ」
「大丈夫、そこら辺はちゃーんと考えてあるからさ」
「では、何処を手直ししましょうか」
「えーっと、まずは……このシーンを……こんな感じにして……」
「……ほほぅ……それならば、この台詞もこんな感じにしますか?」
「おぉ!ナレーターさんナイスアイデア!」
「お褒めにあずかり恐悦至極です」
90: 2011/07/24(日) 23:15:22.84 ID:0VoTJy5V0
「んでもって次に……ここを……こんな演出で……こんな風に……こう」
「それは……時間との戦いですね。齋藤さん、どうですか?」
「そうですね……今夜いっぱい有れば大丈夫かと」
「ホントに!?齋藤さん、ありがとうございます!!」
「あ、じゃぁその次のシーンをこんな風にするのはどうかしら?」
「ムギも良いアイデア出すじゃないか~」
「あの、律先輩。私もアイデア出して良いですか?これだと翁と嫗が……」
「確かに、純ちゃんの言う通りだな……、んじゃぁどうしたい?」
「ここの台詞をですね……こんな……それで……こう。どうですか?」
「うんうん、良いんじゃないか?これならみんなハッピーエンドだし」
「ちょっと待ってよ律……これじゃ私だけバッドエンドよ」
「そっか……難しいなぁ、みんなハッピーエンドってのは……」
「大丈夫よ。私の台詞をこんな感じに……ほらね」
「おぉ!さっすが和!てかこんな台詞よく考えついたなぁ」
「みんなで話し合っているのを見たら、何となく、ね」
「あ、それじゃぁ私からも良い?最後なんだけどさ……」
・
・
・
91: 2011/07/24(日) 23:16:21.61 ID:0VoTJy5V0
「フゥ……こんな感じで……大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うぞ。律、お疲れさん」
「いやいや、私は単にまとめただけだし」
「でも、これならみんながハッピーエンドになるわ~」
「本当ですね」
「りっちゃん隊長!ありがとうございます!!」
「……では、これで決定として宜しいですか?」
「私はオッケーだよん」
「皆さんも……宜しい……ですね。ではこれに沿って明日は進ませていただきます。あ、齋藤さん」
「はい。これより明日の準備に入らせていただきます」
「すみません、私の我が儘で御迷惑をおかけします」
「いえいえ、良いものを作るためならこの程度は大した事ありませんよ、律さん。では、失礼して作業に入らせていただきます」
「齋藤さん、お願いします。……ではこれで解散といたします……か?」
「あ、うん。それで良いんじゃないかな」
「それでは、明朝また。皆さんおやすみなさいませ」
「「「「「「「「「おやすみなさーい」」」」」」」」」
92: 2011/07/24(日) 23:17:59.74 ID:0VoTJy5V0
#
あーあー、てすてす、あーあー。
……いっちっごっパッフェが とっまーらないっ♪
うーん、もういっちょいきますか!!!
カーレーちょっぴり ライスたぁっぷりっっ!!!
よっし!今日も絶好調!!
「……おはようございます。あの、ナレーターさん……今のは一体……?」
えっ!?あ、の、和さん、ず、随分とお早いですねっ!
「えぇ。セットの装置をテストするって齋藤さんに言われたので。それで、その、さっきの歌声は……」
あー、その、まぁ、マイクテスト的な事でして……っと、齋藤さん!!和さんがいらっしゃいましたよ!!
「和さん、おはようございます。お待ちしておりました」
「あ、齋藤さんおはようございます。それでその装置って……」
「こちらです。本来は衣装の中に仕込まれるのですが、テストなので今の服の上から着けますね。先ずはこのベストを着ていただいて……」
93: 2011/07/24(日) 23:18:32.38 ID:0VoTJy5V0
「「「おはようございまーす」」」
律さん、澪さん、紬さん、おはようございます。
「ナレーターさん……和ちゃんは一体何をやっているんですか?」
舞台装置のテストです。後は動きの確認ですかね。
「うはぁっ!面白そう!!齋藤さーん!!」
「皆様おはようございます。律さん、どうされましたか?」
「ねねっ!テストってあとどんくらいで終わる?」
「そうですね……二、三分で終わります」
「じゃぁさ!そのあと私がこれ着けて飛んでみても良い?」
「えぇ、構いませんよ」
「いやったぁぁぁーーー!!」
94: 2011/07/24(日) 23:19:07.18 ID:0VoTJy5V0
「あ、私もやりたいなぁ~」
紬さん……スカートでやるんですか?
「え?あ、そっか……残念」
「澪は……スカートじゃないから出来るな~」
「わ、私はやらないぞっ!」
「えぇ~、別に高い所まで上げる必要無いじゃん。ちょっと足が浮く程度なら平気だろ~?」
「そ、そんな事よりメイクして着替えないといけないじゃないかっ!だからわたしはさきにいってるぞっ!!」
「……全く、相変わらず臆病なんだから」
「でも、二人きりだと違うんでしょ?」
「まぁ、澪が色々とリードする時の方が多いかなぁ……ってムギ!」
「えへへ~、ごめんなさ~い♪」
「ったく……」
95: 2011/07/24(日) 23:19:39.12 ID:0VoTJy5V0
「「「おはようございまーす」」」
さわ子さん、憂さん、純さん、おはようございます。
「おーい!!みんなおはよう!!!」
「あ、おはようございまーす!!律先輩、何をされているんですかー?」
「見ての通りだよー!純ちゃんもやってみるかーい?」
「えっ?良いんですか!?齋藤さん!」
「えぇ、まだ皆さん揃っておられませんので大丈夫ですよ」
「やったー!憂もやるよねっ!!」
「え?う、うん……私はやっても大丈夫だけど……ね、純ちゃん……本当にやるの?」
「え?だってまだ急ぐ必要無いし」
「あ、そうじゃなくて……純ちゃん、今日、フレアミニ、だよ」
「ん?あぁ、大丈夫。こうやって……裾を足で挟んじゃえば……ほらね」
96: 2011/07/24(日) 23:21:23.24 ID:0VoTJy5V0
「成る程、そうやれば良いのね……じゃぁやっぱり私もやる~」
「はぇっ!?あ、じゃぁ、ムギ先輩、お先にどうぞ」
「うふふ~、スカートだから出来ないんだと思ってたのよね~。……あ、でも純ちゃんからどうぞ~」
「……いいんですか?」
「えぇ。見本を見てからじゃないと……ちょっと心配だから……」
「まぁ、それもそうですね……」
「みんな元気ねぇ……私は一足先にメイク室行ってるわね」
「はーい!……律せんぱーい!早く交代してくださいよぉー!」
「オッケー!!」
97: 2011/07/24(日) 23:21:53.40 ID:0VoTJy5V0
「「おはようございまーす」」
唯さん、梓さん、おはようございます。もう皆さん揃ってますよ。
「ほら、言った通りじゃないですか」
「だって、おふとんさんが中々離してくれないから……」
「はいはい、それはもう何回も聞きました。えっと、ナレーターさん、皆さんメイク室ですか?」
はい、おそらく皆さんお待ちかねですよ。
「それは大変だ!あずにゃん、急ぐよ!!」
「今更そんなに慌てても遅いですよ!てゆーかそんなに強く手を引っ張らないで下さい!!」
「レッツゴー!!!」
「あぁぁーーーれぇぇぇぇーーーー」
……ご愁傷様です。
100: 2011/07/29(金) 00:34:55.71 ID:p4ZanQb/0
♪
さて、皆さん準備は宜しいですか?
「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」
それでは、昨日の続きからスタートしますね。
梓姫と帝が出会ってから三年の月日が流れました
その間も二人は文を交わし、今では互いに本音を言い合える仲となりました
そんなある日の事です
翁と嫗は梓姫の様子がおかしい事に気が付きました
毎夜毎夜、空を眺めては溜め息をつく事が多くなっていたのです
「梓姫や、どうした?」
「お爺さま……いえ、何でもありません」
「何でも無い訳は無いでしょう。それとも、私やお爺さんには話せない事なの?」
「……あの、驚かないで聞いていただけますか?」
「驚く……?わかった、話してみなさい」
101: 2011/07/29(金) 00:35:45.33 ID:p4ZanQb/0
「実は……私は月の住民……月の都の姫なのです」
「……それは本当なの?」
「はい……それで、今度の満月の夜、月からの使者が私を迎えに来るのです」
「今度の満月……今宵は上弦、つまり一週間後という事か」
「はい」
「……それは、避けられぬのか?」
「……決まり事なので……恐らくは、無理かと」
「その言い方だと、もしかしたら避けられるかもしれないのね」
「多分……無理でしょうが……」
「何事もやってみなければわからぬだろうて。よし、早速帝に知らせようぞ。婆さんや」
「はい、メールしておきましたよ」
「……憂、早過ぎ」
「だって……その方が良いかなって……」
「まぁ、そうなんだけどさ」
102: 2011/07/29(金) 00:36:47.43 ID:p4ZanQb/0
一方その頃、宮廷では……
「ん……誰だ……なんだ、梓姫からか……」
「律皇子、どうされた?」
「紬皇子……いつからここに?」
「つい先程だ。良き寝顔を見させてもらったぞ。それで……一体どうなされた?」
「お主も趣味が悪いな……。我が愛しの君からメールが届いた」
「何故お主のPCに?……いや、よく見ればそれは帝の物か……。ん?何故帝のPCがお主の部屋に!?」
「帝から……ふぁ~あ……預かってそのままなだけだ……他意はない……ふぁ……」
「随分と眠そうだな……」
「泡沫の国より現の国へと強制的に戻されたからな……さて、姫からのメールを確認するか……ん?……なん……だと……?」
「律皇子、どうした?」
「これを……読んでくれ」
「わかった、これだな……。な!!なんだってぇぇぇぇーーーー!!!」
「今すぐさわ子帝に知らせないと!!」
「では共に参ろうぞ!……せーのっ」
「「みかどぉー!!てーへんだてーへんだ!てーへんだぁぁぁーーーーー!!!」」
103: 2011/07/29(金) 00:37:50.27 ID:p4ZanQb/0
「そこを右よ!」
「オッケー!」
「次は左!」
「よっしゃ!」
「最後は真っ直ぐ!」
「どりゃぁぁぁーーーっっっっ!!!……ってムギ、襖を蹴破れってか?」
「あ、ばれた?テヘッ♪」
「テヘッ♪じゃないだろ……セットをこわしてどーすんだっ」
「イタッ!……やったー、りっちゃんにつっこまれた~♪」
「……まさか、そのためだけに?」
「うん♪」
「ハァ……」
律皇子と紬皇子が話していると、突然襖が開いて不機嫌そうな顔をした帝が姿を見せました
「ちょっとー、折角優雅に午後のお茶を飲んでいるんだから、少し静かにしてちょうだい」
「あ、ゴメンさわちゃん……じゃない!帝、大変です!」
「何よ、急に真面目な顔して……何かあったの?」
「梓姫からメールです!しかも急を要する内容の」
「急を要する……?ちょっと見せて!」
104: 2011/07/29(金) 00:38:35.51 ID:p4ZanQb/0
メールを読み進める帝の顔は徐々に険しさを増していきました
「これは……!律皇子!紬皇子!」
「「はい!!」」
「梓姫の一大事である。澪御主人、聡御行、唯麻呂を呼び寄せるのだ!」
「「御意!!」」
それから数刻後、宮廷には帝の要請に応じた三人の姿がありました
「あ、ちょっとそこ訂正」
え?律さん、何処を訂正するのですか?
「聡が居ない」
「そういえば……今日は一度も見ていないな」
「今朝部屋に行った時は居たんだけどな。……ったく、一体何処に行ったんだ?」
荷物は有ったんですか?
「あぁ。だから家に帰った訳じゃなさそうなんだけどな……」
「居ないのなら仕方ないわね、残ったメンバーで話を進めましょうか、そのうち姿を見せるかもしれないし」
さわ子さんの言う通りですね、では改めて……。
105: 2011/07/29(金) 00:39:08.20 ID:p4ZanQb/0
それから数刻後、宮廷には帝の要請に応じた二人の姿がありました
「澪御主人、唯麻呂、話は聞いているな」
「ははっ!確かに!」
「あずにゃ姫の一大事なんだよね!」
「月の民には悪いが、我々には梓姫が必要なのだ。だから姫が帰るのを全力で阻止しようと思う」
「「「「御意!!」」」」
「……厳しい戦になると思うが、皆覚悟は出来ているか?」
「既に」
「同じく」
「聢と」
「あずにゃ姫の為なら、この命惜しくありません!」
「では一週間後、梓姫の屋敷に一同集おうぞ!!」
「「「「ははっ!!!」」」」
106: 2011/07/29(金) 00:40:05.67 ID:p4ZanQb/0
それから一週間、帝の命を受けた四人はそれぞれ戦の為の準備をすすめました
そして……遂に迎えた満月の夜
帝を含めた五人は事前に計画した作戦の通り、梓姫の屋敷の内外に就きました
「律皇子!様子はどうだ?」
「月は変わらずに美しい姿を見せております!」
「そうか!引き続き監視を頼むぞ!……紬皇子!弓の手入れは万全か?」
「はい!御要望とあらば闇夜の鵜を撃ち落として見せましょうぞ!」
「おぉ!頼もしいな!……澪御主人!刀の切れ味はどうだ?」
「問題ありません!舞い散る一枚の花弁を花吹雪にすることも可能です!」
「うむ!良い返事だ!……唯麻呂!梓姫の様子はどうだ?」
「取り乱した様子も無く落ち着いております!……ね、あずにゃ姫♪」
「えぇ。唯麻呂さんが一緒ですから♪」
「そ、そうか!では引き続き梓姫の護衛を頼むぞ!」
107: 2011/07/29(金) 00:42:09.45 ID:p4ZanQb/0
「は~い!……えへへ~、あずにゃ姫さまぁ~♪」
「えへへ~、唯麻呂さ~ん♪」
「あずにゃ姫さまにほっぺスリスリ~♪」
「にゃっ!?もぉ……ほっぺスリスリがえしぃ~♪」
「むぅ、まさかそんな攻撃をしてくるとは……ならばこうだ!むぎゅー、抱き着き攻撃であずにゃ姫さま分ほきゅー。えへへ~」
「じゃぁ私も、抱き着きがえしで唯麻呂さん分ほきゅー。うふふ~」
「……梓ってそんなキャラだっけ……?」
「純、何変な事言ってるの?演技に決まってるでしょ?」
「演技……ねぇ」
「当たり前じゃん」
「えっと、まさに今、お姉ちゃんが後ろから抱き着いて首筋をクンクンしているんだけど……それも?」
「演技ですっっっ!!」
「えっ?……じゃぁあずにゃんは、今あんまり嬉しくないの?」
「そ、そんな事はありません!演技と言ったのは、その、えと……ひ、人前で……あまりやってほしくない事や自分がやりたくない事を……あえて容認するという事でして……」
「……さりげなく大胆な事言ってるよ、この娘さんは」
108: 2011/07/29(金) 00:42:37.26 ID:p4ZanQb/0
「えっと……要約すると、梓ちゃんはお姉ちゃんと二人きりならなんでもオッケーって事……で、合ってますよね?さわ子先生」
「……えっ!?……あ、あぁ。そうね、それで合っているわ。……つまり、私達はお邪魔虫的存在であると言いたいのよね。はぁ~ぁ、いっそ二人だけの世界にでも行っちゃえば~?」
「そ!そんな事は……」
「あずにゃ姫様、大丈夫ですよ!例えこの世界で二人きりになっても、今と変わらずにスリスリしますから!!」
「唯麻呂さん……それは本当ですか?」
「愛する人に、嘘などつけましょうか?」
「あぁ……唯麻呂さん……なぜあなたは唯麻呂さんなんですか?」
「梓姫……あなたこそ、なぜ梓姫なのですか?」
「……リポーターさん……」
はい。純さんどうしました?
「……ここでツッコミ入れても……良いよね」
……そうですね、明らかに本来の台詞から逸脱している上に長すぎです。
「ですよねー」
では、純先生!お願いします!!
「では!スゥゥゥ……この話は竹取物語だってーのぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!」
112: 2011/08/09(火) 22:29:56.21 ID:Vibsg/FD0
その後も周囲に目立った変化は無く、気が付けば日付が代わる頃となっていました
「りーつー」
「なーにー」
「様子はどぉー?」
「変わらなーい。……ムギー」
「なーに?」
「そっちはー?」
「同じー、変わった様子はありませーん」
「はぁ……ホントに今夜来るのかー?」
「でもりっちゃん、梓姫様は今夜って言ってたわ」
「だよねぇ……はぁ、まぁ一応今夜はやっとこさ半分だからなぁ。……ん?あれ……?」
113: 2011/08/09(火) 22:32:10.46 ID:Vibsg/FD0
律皇子が呟いたその時、それまで静かにその姿を見せていた月の輪郭がぼやけ、小さな点が表れました
皇子が目を凝らして見つめていると、その点は段々と大きくなり、それが人影だと判断出来る頃にはそこから聞こえる雅楽の音が屋敷に響き渡っていました
「雅なる音色だが……律皇子!月からの使者なる者が現れたのか?」
「はい!真っ直ぐこちらに向かってきております!!帝!如何為されますか?」
「先ずは話し合いからだ。我も表に出る。皆のもの!配置につけ!油断するでないぞ!!」
「梓姫や、早く蔵の中へ」
「ここは私達と唯麻呂様が守りますからね」
「……あの、出来れば、唯麻呂様も一緒に。……その方が安心できるので……」
「ふむ……じゃがしかし、それでは……」
「良いではないか。宜しい、私が許可しよう」
「帝!本当ですか!?」
「あぁ。実際護衛をするのならそれが一番だからな」
「あ、ありがとうございます!!」
「なに、他ならぬ梓姫の頼み。断る筋合いなどございませぬ」
「帝!月の者が!!」
「わかった!すぐ行く!!
114: 2011/08/09(火) 22:33:15.77 ID:Vibsg/FD0
律皇子からの声に応じて帝が表へ出る頃には、使者はその姿形がはっきりと確認できるほど近づいておりました
「あれが月より参った者か」
「左様にございます」
「……出来れば、話し合いで解決したいのだがな……それにしても良い調べだ……」
「……そうですね……」
帝達は暫くの間その調べに耳を傾け、使者が近づくまで待ちました
そして、遂に使者は屋敷で一番高い松の頂にその身を置きました
「……そなたが月の使者か?」
「いかにも。名を和と言う。そなたは地上の帝か?」
「いかにも。ところで和殿、何故地上に参られたのだ?」
「……帝ともあろうお方が、わざわざそのような質問をされるのか?」
「なーに、戯れだ……。では率直に言おう。梓姫は渡さない。姫は我らにとって今では不可欠な存在なのだ」
「では私も率直に……。梓姫は連れて帰る。これは私に課せられた使命なのだからな!」
「では、交渉決裂……だな」
「そう……なりますな」
「律皇子!!紬皇子!!あの者を射落とすのだ!!!」
「「承知!!!」」
115: 2011/08/09(火) 22:33:56.95 ID:Vibsg/FD0
二人はそう応えると共に、弦を引きはじめました
それを見た使者は右の手の平に不思議な光を宿しました
「紬皇子!先ずは拙者から射るぞ!!」
「任せた!!」
「和殿!!早々に月へと戻るがよい!さすれば命は救おうぞ!!」
律皇子が上げた声と共に放たれた矢は緩やかな放物線を描きつつも、狙い違わず使者の右足へと一直線に向かいました
「刺さる!!」
地上の誰もがそれを確信していました
しかし使者は、迫り来る鏃にも全く動じていません。それどころか笑みまで浮かべています
その様子を見た地上の者達が訝しく思ったその時、使者は無言でそれに向かい手を翳しました
するとどうでしょう、手の平の光が徐々に大きくなりまるで使者を護るかのように包み込みました
そして、鏃がその光に触れた瞬間……
「な、なにぃっっっ!!!」
右足を狙っていた筈の矢はその縁を滑るかのように動き、使者の遥か後方へと飛び去りました
「ならば次は拙者が!これを喰らえぃ!!」
116: 2011/08/09(火) 22:34:34.48 ID:Vibsg/FD0
紬皇子はそう言い放つと矢を二本番えて放ちました
狙うは頭と心臓
矢はそれぞれ狙い通りに使者のそこへと向かいます
「どのような術を用いているのかはわからぬが、二本同時ならば防ぐ事も出来まい!」
「さぁ、どうかしら?」
するとまるで使者の呟きに会わせるかのごとく光が強まり拡がっていきました
そして二本の矢は同時に触れた途端その場で反転し……
「なっ!なにぃっ!?」
紬皇子が放った以上の速度で戻ってきました
「うわっっっ!!!」
慌てて身を翻そうとした刹那、一本は狩衣の脇腹を掠め、一本は紬皇子の烏帽子を貫き地面に突き刺さりました
117: 2011/08/09(火) 22:35:13.09 ID:Vibsg/FD0
「紬皇子!大丈夫か!」
「あぁ……なんとか大丈夫だ!」
「予想以上に手強い……流石に月より来ただけはあるな。二人共!加減は無用だ!!」
「「おう!!」」
帝の号令に二人は次々と矢を射かけました
しかしそれらは全て光に阻まれ、ある物はあらぬ方へ飛び去り、ある物は地面や屋根へと突き刺さりました
その間も使者は屋敷に近付き、矢の半分を射終える頃には律皇子の目前まで迫っていました
「チッ!仕方ない、私は一度退く!!」
「無駄よ」
屋根から降りようとした律皇子に向かい使者がそう告げ左手を翳しました
するとそこからも光が溢れ、律皇子の身体を包み込みました
「うわぁぁぁーーーー!!!!」
「律皇子!!!」
「……よくも皇子を!!」
「帝、安心して下さい、別に危害は加えておりませんよ。……ほら、ご覧になればわかるでしょう?」
「何だと……?」
118: 2011/08/09(火) 22:35:54.90 ID:Vibsg/FD0
使者に促され帝と紬皇子は律皇子を見ました
皇子を包み込む光が徐々に揺らぎ薄らいでいます
やがてそれは全て消え去り、そこには明らかに脱力した皇子の姿がありました
「律皇子!無事か!」
「ん~?まぁねぇ~。……ムギ~お茶くれぇ~」
「り、律皇子……?」
「あ~、和じゃないか~。一緒にお茶飲もうぜぇ~」
「おのれ!律皇子に一体何をした!!」
「……気になるのならあなたも体験してみれば良いわ」
使者はその言葉が終わるや否や一気に紬皇子の目前に降り立ち光を浴びせました
「うぉぉぉーーー!!!やめろぉぉぉぉーーー!!!」
皇子の叫びが辺りに木霊しました
帝達は、唯々見守る事しか出来ません
そして、先程同様に光が薄らぎ……
119: 2011/08/09(火) 22:36:28.52 ID:Vibsg/FD0
「りっちゃ~ん、お茶もうちょっと待ってねぇ~」
「えぇ~!?なんでだよぉ~」
「だって~、まだ私達しか居ないんだもん」
「あ~、それもそうだなぁ~」
そこには、律皇子同様に腑抜けた表情の紬皇子の姿がありました
「おのれぇぇぇぇーーー!!!よくも二人をこのような姿にしてくれたなっっっっ!!!」
「……それほどまでに怒るような事かしら?」
「黙れっっっ!!!飛び道具とはひと味違う拙者の刀を受けてみよっっっ!!!」
澪御主人は明らかに無防備な使者めがけて刀を振り下ろしました
その切っ先からは使者に引導を渡す喜びの歌声が聞こえます
「取った!!!」
そう確信した澪御主人は振り下ろす腕に更なる力を込めました
「流石、速いわね……。でも、無駄よ」
120: 2011/08/09(火) 22:37:33.67 ID:Vibsg/FD0
使者が落ち着き払った口調でそう言うと同時に刃が光にめり込み使者へと迫りました
が、しかし……
「ぬぉっ!?」
使者の目前まで迫った刃は光の膜に阻まれそこから先へと進む事が出来ません
「残念だけど、ここまでね。じゃ、あなたも二人と同じようにしてあげるわ」
「あぁっ!や!やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
訪れる静寂
そして光が収縮したその後には……
「……ん?唯と梓はまだ来ていないのか」
「おやぁ~、その口調からすると……澪しゃんもティータイムが待ち遠しいんでちゅかぁ~?」
「律と一緒にするなっ!……まったく……私はベースのチューニングするぞ!」
「へいへい……ま、実際二人が来なきゃ始められないからなぁ~。私もドラムの調子チェックしとくか」
「あ、じゃぁ私もキーボードの……する必要は無いわね……ショボーン」
121: 2011/08/09(火) 22:38:29.88 ID:Vibsg/FD0
「な、なんという恐ろしい技なのだ……」
「恐ろしい?私としては平和的に事を解決できる素晴らしい力だと思いますが」
「だからこそ、だ。聞くが、皆は元に戻るのであろうな」
「えぇ。戦う気勢を削ぐだけですので、半刻から一刻あれば戻りますよ」
「嘘ではあるまいな」
「……一度味わえばわかりますよ」
「そんな物を頂く気など毛頭無いがな」
「そうですか……ですが、嫌でも味わってもらいますよっ!!」
使者の言葉を合図に、二人の戦いが始まりました
先手を取ったのは使者は、先程までと同様に帝へ光を放ちました
しかし帝は動ずることなくその光を持っていた鏡で反射させました
「その鏡は……『八咫鏡』!?という事は首に掛けられた勾玉と手に持つ剣は……」
「その通り、『八尺瓊勾玉』と『天叢雲剣』だ」
「……まさか三種の神器を持ち出してくるとは思いませんでしたよ」
「相手の実力が不明だからな、用心に越したことは無いと思って準備をしたのだが……正解だったな!!!」
122: 2011/08/09(火) 22:39:53.37 ID:Vibsg/FD0
そう言い放つと同時に帝は使者へと切りかかりました
それを見た使者は即座に光を拡げ僅かに身を翻します
瞬間、剣が光と共に衣の裾をを切り裂きました
「見事……今の一撃を躱すとはな」
「……その剣の噂は、月でも有名でしたからね……」
「成る程……だが、次はそうもいかぬぞ!!!!」
帝は目にも留まらぬ速さで剣を繰り出します
が、使者はそれを上回る速さで剣をかわし続けました
「避けて、ばかり、では、勝利、できぬ、ぞ」
「……さて、そうでしょうか」
「では、どのように、して、勝つ、のだ?」
会話を交わす間も休むことなく、帝は剣を振り続けます
「せいっ!たぁっ!とぉっ!」
ですが、その切っ先は使者はおろか最初に切り裂いた衣ですら掠めることが出来ません
123: 2011/08/09(火) 22:41:21.00 ID:Vibsg/FD0
「てやっ!ハァ……ハァ……えいっ!ハァ……ハァ……」
「そろそろですね。帝、あなたの負けです」
「ハァ……ハァ……世迷い言をっ!!」
「……周りをよく見てください」
「……なにぃっっっ!!!」
気付くと、帝は使者の放つ光に囲まれていました
「……鏡や剣で対処出来る光はごく一部だけ、全ての方向からの光を防ぐことなど出来ません」
「だが無駄だな、勾玉の存在を忘れていたとは言わせぬぞ」
「えぇ、忘れてはいませんよ」
「では何故?妖しげな術は勾玉によって全て封じられるのだぞ」
「それは『悪意を持つ術』にのみ有効ですよね。……残念ながらこの『光』に悪意は僅かもありません」
「な、なんだとぉ!!」
「では、そろそろ終わりにしましょうか」
使者はそう宣言すると、左の手の平を帝に向けて光を放ちました
「小癪なっ!せいっ!!ていっっ!!」
帝は迫りくる光を反射しながら切り裂き続けました
しかし……
124: 2011/08/09(火) 22:42:31.55 ID:Vibsg/FD0
「ハァ……ハァ……、う……あ……ヒィッ!……やめろ!くるなぁっっっ!!……あっ!あぁっっ!!ぐぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
遂に帝は力尽き、光に飲み込まれてしまいました
先程までと同様に訪れる沈黙
やがて包み込む光は徐々に小さくなってゆき……
「ふぅ……今日も疲れたわぁ~。……ってあなた達!何やってるの!?」
「何って……チューニングですけど……」
「それはわかるわよぉ。私が聞きたいのは、なんでお茶していないのかってことなのぉ」
「いや、まだ唯と梓が来てないし。てゆーかさわちゃん、その発言は顧問としてどーよ」
「あら、そうだったの。じゃぁ、仕方ないわね……私はのんびりと待たせてもらうわ~」
「……ハァ」
「りっちゃんどうしたの?溜め息なんかついちゃって……」
「え?あぁ、ムギか……いや、なんでもない。……ツッコミ入れたら負けのような気がするし」
「そ、そうなの?」
「早く来ないかな~♪」
125: 2011/08/09(火) 22:43:13.00 ID:Vibsg/FD0
「……これで大丈夫ね。さて、と」
使者は帝達の様子を見て満足げに頷くと、屋敷の中へと足を踏み入れました
「……あそこね」
視線の先には重厚な蔵の扉、そして……
「あ、梓姫は渡さんぞ!」
「そ、そうですとも!」
最後の砦となるべく蔵を守る、翁と嫗の姿がありました
「……そこをどきなさい」
使者は二人の前にゆっくりと歩み寄ります
「い、いやじゃ!!絶対に動かんぞ!!!」
「梓姫を連れていかないで下され!!」
「では……仕方ありませんね」
使者は手の平を二人に向け、光で照らしました
126: 2011/08/09(火) 22:44:06.01 ID:Vibsg/FD0
「ぬおっ!か、身体が……!」
「……あぁ、これでは梓姫が……」
光を浴びた二人の身体は座り込んだ姿勢のそのままに床の上を滑り、使者の隣へと運ばれました
「これで、邪魔する者は居なくなりましたね……梓姫!そちらにいらっしゃいますね」
『……帰って下さい!私は……地上で暮らしたいのです!』
「……そうもいきません。これは決まり事なのです」
『決まり事……私の意向は完全に無視なんですね』
「えぇ……そうよ。……だから、お願い。……嫌な事くらい、わかってる。でも……」
『和さん……ごめんね。私、和さんの気持ち、よくわかる。でも、私は……私は!あの奔放過ぎる月帝の許に戻る気などありません!!』
「……そんな閂と錠前一つで私から逃れられると思っているの?」
『はい!!思っています!!』
「そぅ、貴女も随分と地上で惚けたようね……こんな物、月光の力を使えばたやすく外れる事くらい覚えているでしょ?」
そう言って使者が両手を扉に翳すと、今までとは比べものにならない強い光が扉に降り注ぎました
すると、物音一つたてずに鍵が外れ、閂が動き、蔵の扉がゆっくりと開きました
「さ、そんな所に隠れていないで……えっ?……誰も……居ない!?」
「へっへーん!引っ掛かったなぁー!二人はとっくに逃げてったよーん!!」
「な、なんですって!?それは本当なの?」
127: 2011/08/09(火) 22:44:56.89 ID:Vibsg/FD0
「あぁ。梓姫は……既に抜け穴を通って安全な場所へ移った!月の使者でも手を出せない、太陽神の加護を受けた『聖域』にな!!」
「『聖域』ですって!?そ、それは何処なの?」
「うふふふ~、何処かしらね~。……『太陽が沈む事無く常に照らし続ける所』……残念だけど貴女には教えられないわ」
「お、教えなさい!今すぐに!!」
「そうはいきませぬ。先程も申したが、わしらにとって梓姫はなくてはならぬ存在なのじゃ」
「お爺さんの言う通りです、なので……お引き取り下され」
「でもまぁ、何処……というか今どうしているかくらいは教えてあげる」
「帝、それは真か?」
「帝の名にかけて誓うわ。それじゃぁ……梓ちゃ~ん♪唯ちゃ~ん♪今何をしているのかな~?……モニターかもーん!!!」
あ、それは私の台詞……。
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、気にしちゃダメですよ、ナレーターさん」
はぁ……わかりました。
「……さて、それじゃ今の二人を映してちょうだい!」
了解です。
……ここは屋敷から離れた……っておやぁ?何か変ですよぉ!?
128: 2011/08/09(火) 22:45:42.28 ID:Vibsg/FD0
「……樽G爆破しまーす!」
「オッケー!」
「……お、赤くなりましたよ!!」
「よっしゃ!えっと……罠はそっちか!!」
「ほれほれ~こっちだよ~ん」
「では私もそちらに……」
『……おい』
「んー?なーに、ねーちゃん」
「お!来たきたキタ━━━(゜∀゜)━━━!!」
「そのまま真っ直ぐ!!」
『……おい!』
「だからなーに?……よっしゃかかった!!」
「捕獲玉ポーイッ」
「私もポーイッ」
「オッケー!!ベリオ亜種ゲットーー!!!」
『おい!!聡!!!!』
「わわっ!!!お、驚かすなよ~」
『驚かすなよ~、じゃない!!なんでお前がそこに居るんだよっっっ!!!』
『てゆーか……聡の隣に居る君は……誰?』
「あれ?澪さんは会ったこと無いんだっけ?ほれ、挨拶」
129: 2011/08/09(火) 22:46:11.26 ID:Vibsg/FD0
「あ、えっと、田井中の友達の鈴木です」
『鈴木君か、よろしく』
『……ところで斉藤、あなたも何をしているのかしら?』
「御覧の通りでございます。お二方とパーティーを組んでモンハンをやっておりました」
『……そんな事を聞いているのではありません!!』
『あの、唯先輩と梓は何処ですか?』
「あぁ、それでしたら……ナレーターさん、すみませんが部屋の隅にある外部ケーブルのBをモニター端子に繋いでいただけますか?」
隅に……あぁ、これですか。少々お待ち下さい。
『……斉藤、なんでこんな事をしたのか今すぐ教えなさい』
「お嬢様……申し訳ございません。全ては唯様からのご提案でして……」
『唯ちゃんからの?』
「はい……」
……お取り込み中申し訳ありませんが、繋げましたよ。
「ありがとうございます。お嬢様、詳しくは唯様ご本人から説明があると思われますので……」
『……わかったわ』
では、外部スイッチを入れますね。
『……草原?』
『だな……おそらく外の』
『でも、なんで唯ちゃんはこんな事をしたのかしら……』
『まぁ、直接聞いてみればいいさ。おーい!ゆいー!!』『……』
130: 2011/08/09(火) 22:47:22.95 ID:Vibsg/FD0
『あれ?ゆいー!!あずさぁー!!返事しろぉー!!!』
『……』
おかしいですね……、斉藤さん!
「はい」
お二人は外に居るんですよ……ね?
「そうです。おぉ、一つ言伝を忘れておりました」
言伝……ですか?
「はい。唯様より預かっております。『ナレーターさん、ちゃんと再開してね』との事です」
ちゃんと……ですか?……ちゃんと……ちゃんと……あ!そ、そうか!!
『あの、唯先輩の言伝で何がわかったんですか?』
純さん、キーワードは『再開』ですよ。
『再開……あぁーー!!なるほど~、手が込んでるなぁ~』
『お姉ちゃんらしいね~』
「それと、ナレーションを少し手直しされたそうです。そちらに置いてあるPCにメールで送ったと言っておられましたが」
PCにメールで……あぁ、これですね。えーっと、これは台本のこの部分を置き換えれば良いのですね?
「はい、そうです」
わっかりましたー!では早速再開しますよ!!
134: 2011/08/13(土) 13:34:20.50 ID:mBPRPvBe0
……ここは屋敷から離れたとある草原……
太陽の光がさんさんと降り注ぎ、薫風が走る度に若草が華麗な踊りを披露しています
草原をよく見ると、中央付近に小さな祠が一つ
その前に立ち、手を合わせる人影が二つ
梓姫と唯麻呂です
「唯麻呂様、こちらに奉られているのが……」
「はい。太陽神、『天照大神』様です」
「だから夜半を過ぎているのに太陽が天にあるのですね」
「えぇ。……ここならば、流石の月読命といえども手を出すことなど無理ではないですか?」
「……そうですね……」
『梓姫』
「その声は……和さんですか?」
『えぇ、そうよ。……まさかそんな所に逃げるとは思いもしなかったわ』
「……私も、こんな場所があるとは思いもしませんでした」
『もう一度、確認するわ。……梓、本当に帰る気は無いのね?』
「……うん。私は……さっきも言った通り、月帝の自由奔放ぶりが嫌なの!」
「あずにゃ姫……それ程までに月帝が嫌いなの?」
「だってそうでしょ!ある日突然『地上に降りて修業をしてこい』って言われて!有無を言わさずに竹型カプセルに乗せられて!!」
「そんな事を……?」
135: 2011/08/13(土) 13:34:52.98 ID:mBPRPvBe0
「地上で楽しく暮らしていたのに突然『帰ってこい』って言われて!!おまけに私を連れ帰る使者が幼なじみの和よ!!!なんで……なんでこんな酷いことばかりするのっっ!!!」
『……そうよね、今回ばかりは酷すぎるわね……』
「修業って何!?月の姫になるための修業だって言ってたけど!これじゃ……これじゃぁ……単なる……イジメ……だよぉぉぉ……」
「あずにゃ姫……泣かないで……ギュッ……いーこいーこ」
「唯麻呂さん……唯麻呂さぁぁぁぁーーーーん!!!ウワァァァーーーン!!!!」
『……和殿』
『和で良いわ、えーっと……澪御主人』
『澪と呼んでくれ。それで……その……月帝とは梓姫が言ったような人物なのか?』
『……えぇ。良くも悪くもその通りよ』
『良くも悪くも?』
『そう。……私と梓は共に孤児だったの。でも、月帝はそんな境遇にある子供達を集めてちゃんと育ててくれたわ。』
『……それが自由奔放となんの関係があるんだ?』
『大有りよ、だってそのために国の法律まで変えてしまったし』
『はぁ……自由奔放もそこまでいくと凄いな』
『それに、その性格のお陰で政も上手くいってるし。ただ……下手に上手くいっているから、今回みたいな事は全て見て見ぬ振りをされているのも、事実よ』
『……同じ帝を名乗る者として、にわかには信じ難いな……』
『まぁ、そうでしょうね。実際、月帝の良い面のみを見ている者からしたら有り得ない事ですから』
『孤児を育てる慈愛の心と孤児を突き放す鬼の心を持つのか……まるで地蔵菩薩だな』
『ジゾウボサツ?その名を聞いたことはありませんが……おそらく帝の言うそれと同じではないかと思いますけどね。……さて、ねぇ梓、聞こえる?』
「ヒック……うん……」
136: 2011/08/13(土) 13:35:39.85 ID:mBPRPvBe0
『もう一度聞くわ。……月帝の勅にそなたは従うか?背くか?どちらか速やかに答えよ』
「……私は……月には戻りません!」
『では、恩義ある月帝に背くのだな?』
「……恩義がある事は重々承知の上です。ですが、私にはその恩義をも上回る恩義が、地上の皆にあるのです!!」
『……そう、わかった……じゃぁ月帝にはそう伝えておくわ』
『和さん……本当に良いの?』
『紬皇子……えぇ、これで良いんです。私も、今回の件に関しては少なからず思うところがあるので』
『でもさぁ、手ぶらで帰ったら大変な事にならないのか?』
『それくらい承知の上ですよ、律皇子。……まぁ、大変な事と言っても、私が姫になるだけですから』
『『『『『『「「えぇっ!?」」』』』』』』
『そんなに驚かなくても……』
『いや、普通驚くだろ』
『……そうかしら?』
『うん!』『あぁ!』『えぇ!』『そうよ!』『そうですよ!』『それが普通ですよ!』
『……地上人の考えはよくえわからないわ……』
『いや、むしろ月の人の考えがおかしいと思うんだが……』
『……まぁいいわ。それで?梓はこれからどうするの?』
「私は……唯麻呂様と共にこうします!!」
137: 2011/08/13(土) 13:36:47.01 ID:mBPRPvBe0
梓姫はそう叫び、唯麻呂と固く手を繋ぎました
するとどうでしょう、二人を不思議な光が包み込み、辺りはまばゆい輝きに満たされました
「……斎藤さ~ん、ちゃんと見えなくなってますか~?」
『大丈夫ですよ、唯さん』
「唯先輩、急がないと!」
「ほいほ~い」
『……なぁ澪、あの二人は何をやっているんだと思う?』
『さぁな……。既に昨日決めたシナリオから逸脱しているしな』
『ワクワクするわぁ~』
やがて光は徐々に薄らぎ、二人の姿が再び露わになり……ってえぇぇぇーーー!?
「ナレーターさん、どうしました?」
いえ、どうもこうも……お二人の格好が以外過ぎたので……つい。
「んもぉ、折角ポーズ決めてるんだからちゃんとやってよぉ~」
『いや、その格好は誰が見ても驚くと思うぞ』
『律の言う通りだ。なんでそんな格好しているんだ?』
「……変ですか?」
『変も何も……なんで梓も唯先輩も普段着なのさ』
「いやぁ~、実は昨日の夜テレビ見てたら急に閃いてさぁ~」
138: 2011/08/13(土) 13:37:24.72 ID:mBPRPvBe0
『閃いたって……唯、何を閃いたの?』
「あのね、和ちゃん。昨日の天気予報で今日は晴れて心地好いって言ってたんだよ」
「唯先輩……それだけじゃ通じないと思うんですけど」
『……つまり、晴れて心地好いから、スタジオじゃなくて外にしたって事ね。ついでに終わったらそのまま外でのんびりまったりしようと思った……でしょ?』
「おぉ!さっすが和ちゃん!!」
『まぁね、伊達に長い付き合いじゃないし』
『じゃぁ……斎藤は昨日の夜に唯ちゃんから連絡を受けていたのね』
『はい。他言無用と言われましたので……お嬢様、申し訳ございません』
『まぁ、そういった理由なら仕方ないわ。今回は許してあげる』
『お嬢様、有難うございます』
『あれ?でも一つおかしくないか?』
「ほぇっ!?りっちゃん、どこかおかしい所あった?」
『いや、唯達じゃなくて……おい、聡』
『なーに?』
『お前がここに居るのは良いとしてだ、何で鈴木君も居るんだ?』
『斎藤さんに頼んで連れてきてもらった』
『そうじゃなくて……何で連れてきたかって事!』
『あぁ、そっちか。……暇だったから』
『……そんな理由で呼んだのか?』
『だって、電話したら暇だしオッケーって言ってたから』
139: 2011/08/13(土) 13:38:12.97 ID:mBPRPvBe0
『鈴木君……本当?』
『あ、はい』
『はぁ……最近の若者はよくわからんなぁ』
『お前も最近の若者だろ……』
『聡よりは年上だいっ!!』
『はいはい……』
「あの~、すみませんけど~」
『梓ちゃん、な~に?』
「そろそろ再開していただけませんか?」
「このポーズとってるのも辛いんだよ?」
『……そんな戦隊モノの決めポーズみたいなのしてるんだから仕方ないんじゃない?てかポーズやめれば良いじゃん』
「いやぁ~そう言われてもですねぇ~」
「なんかさ、タイミング逃したら辞めづらくって……」
『なにそれ……ま、いっか。梓と唯先輩だし』
『そうだね~』
「純だけじゃなく憂まで……」
「二人共……しどいよ……シクシク」
まぁまぁ、ではお望み通りに再開しますよ。
140: 2011/08/13(土) 13:39:03.96 ID:mBPRPvBe0
やがて光は徐々に薄らぎ、二人の姿が再び露わになりました
その姿は先程の狩衣ではなく、まるで異国の者のようです
「私はこれより『梓姫』ではなく『梓』として!」
「私はこれより『唯麻呂』ではなく『唯』として!」
「「普通の女の子として共に生きてゆきます!!」」
『な……なんですって!?梓、本気なの?』
「和……私は本気だよ」
『でも、共にって……私達の寿命は地上の者より遥かに長い事くらい知っているでしょ?』
「えぇ、知っていますよ」
『なら、どうして!?』
「和殿……ご安心を。私は先程、あずにゃ姫……もとい、あずにゃんから薬を貰い、既に飲みました」
『……『不老不氏の薬』を?』
「はい。そうです」
『……それだけ本気って訳ね』
「あずにゃんと共に生きるためなら、このくらい当然です!」
『そう、わかったわ。では……、唯殿、梓を頼みましたよ』
「はい!!!」
『それじゃ、梓……』
「和……ウグッ……ごめ、ごめんね……エグッ……我が儘いっぱい……しちゃって……グズッ」
141: 2011/08/13(土) 13:40:00.14 ID:mBPRPvBe0
『……良いのよ。さっきも言ったけど、私も今回の事に関してはちょっと頭にきてるからね』
「……でも……ヒック……でもっ……」
『もぉ……別にこれが今生の別れって訳じゃ無いんだからさ』
「グズッ……そう……なの……ヒック……?」
『そうよ。だって、私が姫になるんだし……別に梓を連れ戻しに来る必要無くなるでしょ?』
「それは……グスッ……そうだけど……でも……」
『確かに私が此処に来るのはかなり難しくなるわ……でも、難しいだけで無理な訳じゃないから』
「うん……わかった……」
『それじゃ、二人共、またいつか』
「うん!またいつか、必ず会おうね!!」
「その日を楽しみに待ってます!」
その言葉を最後に二人の映像が途絶え、先程までの喧騒が嘘のように静寂が屋敷を包みました
残されたのは、梓姫を連れ帰る事に失敗した使者と、梓姫を守り通した地上の者達
それぞれの顔には先程の戦いによる疲労の色が濃く出ています
142: 2011/08/13(土) 13:40:45.61 ID:mBPRPvBe0
「……じゃぁ、私は月へ帰りますね」
「……和殿、戻られる前に少々聞いても宜しいか?」
「帝……なんでしょうか」
「先程そなたは『此処に来るのはかなり難しいが無理ではない』と申されたが……真か?」
「えぇ」
「それは時間と手段、どちらの理由なのだ?」
「……どちらも、ですね。時間は……月帝を説得する事は容易でない為、です」
「具体的にはどれ程の時間が必要と思われるのだ?」
「……我々の時間で、恐らく数年」
「……我々の時間に換算した場合は、一体何年だ?」
「地上の年月に換算すると……十数年、ですね」
「十数年!?それ程まで……。では次に、手段とは?」
「……私は『月の民』です。先程の矢や刀を退ける力、そして蔵の閂を外したり戸を開いたりする力、それらは全て『月光』のご加護が有ったからなのです」
「……つまり、『月光』が無ければ力を奮えない……と」
「はい、その通りです。ですので、月が天に無い時は……」
「来ることも不可能、ということか……」
「……それならば、尚更儂等がそれを見ることは不可能じゃな、婆さんや……」
「……そうですね、私達は何時お迎えが来てもおかしくはありませんからね……」
143: 2011/08/13(土) 13:41:29.34 ID:mBPRPvBe0
再び静寂が屋敷に訪れました
本来ならば聞こえてくるであろう木々のざわめきも、今は全く聞こえません
そんな重苦しい沈黙を破る声が不意にあがりました
「ん?……なんだコレ?」
「律皇子、どうされた?」
「澪御主人……蔵の中に何かあるんだ……箱か?」
「箱ですね。よっと……軽いな」
「軽いのか……ちょっと貸してくれないか?」
「あ、はい」
「ありがとう。……ふにゅにゅにゅにゅぅぅぅぅーーー!!!お、重くて持ち上がらないぃぃぃーーー!!!」
「えっ!?そ、そんな事あるわけ無いだろう!?」
「はぁ……はぁ……こんな重いものを軽々と持ち上げるとは……さっすが澪しゃん、ちっから持ちぃ~!!」
「……つまり、今のアドリブは、それを言いたかったが為の物だった、ということか?」
「え?あ、いやー、シリアスな展開ばっかだからさぁ~、ちょっとだけぇー?息抜きぃー?みたいn」
「い い 加 減 に し ろっっっ!!!!」
「あぎゃぁぁぁぁーーーーっっっっ!!!!」
……えー、お二人の事は放っておいても……良いです……か?
「……そうして貰えると助かるわ……全く、あの子達ときたら……」
で、では、続けます。
144: 2011/08/13(土) 13:42:10.19 ID:mBPRPvBe0
律皇子が見つけた物は片手で持てる程の小さな箱でした
帝が手に取り軽く振ると、何やらカサカサと乾いた音がします
「ふむ、中には何が……?」
「……鑑識にまわしてみますか?もしかしたらこれを開くヒントg」
「もぉ……なんでムギちゃんまでそんな事……折角のクライマックスなのに……グスン……」
「あ、あの、さわ子先生っ」
「和先輩と憂と私がついてますよっ」
「クスン……ホントに?」
「はい。だから涙を拭いて下さい……可愛い顔が台無しですよ」
「和ちゃん……ありがと……私、和ちゃんの担任で良かった……」
「さわ子先生……」
「……あれ?憂、もしかして先生と和先輩も脱線してる?」
「もしかしなくてもそうだと思うよ、純ちゃん」
「ハァ……これじゃシナリオ進まないじゃん……もうちょっとで終わりなのに」
「うーん……仕方ないから私達も何かする?」
「何かって……なにを?」
「えっとね~、例えば……」
145: 2011/08/13(土) 13:42:56.43 ID:mBPRPvBe0
「例えば?それだけじゃわからな……ンッ……ンムッ……チュムッ……プハァ……も、もぉ……いきなりなんて狡いよ……」
「フフッ……ごめんね……なんか……みんなを見てたら……我慢出来なくって」
「……なるべくなら我慢して下さい……部屋に帰ったらいくらでもしていいから……」
……あのぉ~、……純さーん、憂さーん……シナリオ進めましょうよぉ~。
「……ギュッするくらいだったら……良いよね……」
「……うん、良いよ……」
「純ちゃん……大好き……」
「憂……私も……大好きだよ……」
……そんな……頼みの綱でもあるお二人も脱線するなんて……
じゃぁ……スイッチをBに切り替えて……斎藤さーん、宜しいですかー?
「鈴木!ソッチに金行ったぞ!!」
「オッケー!……よっしゃ落ちた!!」
「銀の相手は私に任せて下さい!!閃光弾いきます!!!……墜ちろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「金脚引きずってるぞ!」
「捕らえろ捕らえろー!」
「ではシビレ罠仕掛けさせていただきます」
146: 2011/08/13(土) 13:44:30.84 ID:mBPRPvBe0
……斎藤さん達まで……。
この分じゃ外の二人も……っとぉ~!?
外部スイッチオン!!
そこの二人!!
「ぬぉっ!?」「キャッ!」
誰も居ないからって、一体何をしようとしていたんですか?
「え、えと……その……」
「あ、あずにゃんと……キス……しようとして……いました……」
あのですねぇ、外部モニターの映像は私の所で逐一チェック出来る状態なんですよ?
「そ、そうなの!?」
「じ、じゃぁさっき話していた事も……筒抜けなんですか!?」
いえ、音声はオフになっていますので……って昨日も似たような事ありませんでしたっけ?
「そういえばあったような……んで?ナレーターさんはどんなご用?」
えー、そのー、……ちょっとスタジオの映像見ていただけますか?
「ほいほーい。……ありゃ?」
「これは……シナリオが止まっているんですか?」
その通りです……頼みの綱である斎藤さんも……二画面にしますので確認してください。
147: 2011/08/13(土) 13:46:10.74 ID:mBPRPvBe0
「……えっと……モン○ン中?」
そうです。
「まだやっていたんですか……」
ですので、もうお二人の力を借りるしか選択肢が残っていないんですよぉ~。
「うーん、そうかなぁ~?私にはまだ残ってると思えるんだけど……」
……そうですか?
「あ、私もわかりました」
「あずにゃんもわかった?」
「はい。そういえばやっていないですね」
えっと……それは一体どんな事ですか?
「まだわからないの?しょーがないなぁ~、じゃぁ早く終わってもらいたいから特別に教えてあげよう!」
あ、ありがとうございます。それで……一体……。
「あのね……」
148: 2011/08/13(土) 13:50:11.67 ID:mBPRPvBe0
♪
あー、あー、……よし、頑張れ自分。
(スイッチオン……ボリューム最大……スゥゥゥゥゥゥゥーーーー)
み な さ ん!!!!!!!!
「ぬぉっ!」「うわっ!」「キャァッ!」「わっ!」「ヒャッ!」「わわっ!」「キャッ!」
そ ろ そ ろ さ い か い し ま せ ん か っ!!!!!!!!
「「「「「「「は、はいっ!!!!!」」」」」」」
(こっちはオッケーですね。ではスイッチをBに切り替えて……スゥゥゥゥゥゥーーーー)
そこの三人!!!!!
「んなっ!」「のわっ!」「はいっ!」
そのクエストが終わったら!!ゲームも終わりにしませんか!!!
「わ、わかりましたぁっ!」「り、了解っすっ!」「畏まりましたっ!」
(ボリュームを下げて……スイッチを外部に切り替えて……)
ふぅ……唯さん、梓さん、聞こえますかー?
「ほーい」
「聞こえますよー」
ありがとうございます、お二人のお陰で無事シナリオを進めることが出来そうです。
「うまくいったんだ~、良かったぁ~」
149: 2011/08/13(土) 13:52:50.24 ID:mBPRPvBe0
「これで一安心ですね~」
はい。ではもう少々そちらでお待ち下さい。
「「はーい♪」」
あ、だからといってチューするのはダメですよ~。
「流石に……人前では……ねぇ」
「そうですよ……ね……」
では改めて……。
(ボリュームを上げて……スイッチをALLに合わせて……)シナリオをっ!再開しますっ!!
律皇子が見つけた物は片手で持てる程の小さな箱でした
帝が手に取り軽く振ると、何やらカサカサと乾いた音がします
「ふむ、中には何が……?」
「開けてみますか?」
「うむ、では紬皇子、頼んだぞ」
「畏まりました。では……」
紬皇子が箱を開けると、そこには数個の小さな麻袋が入っていました
「あ……その麻袋は……」
「和殿、ご存知か?」
「はい。帝、これこそが先程梓が言っていた『不老不氏の薬』です」
はい。ではもう少々そちらでお待ち下さい。
「「はーい♪」」
あ、だからといってチューするのはダメですよ~。
「流石に……人前では……ねぇ」
「そうですよ……ね……」
では改めて……。
(ボリュームを上げて……スイッチをALLに合わせて……)シナリオをっ!再開しますっ!!
律皇子が見つけた物は片手で持てる程の小さな箱でした
帝が手に取り軽く振ると、何やらカサカサと乾いた音がします
「ふむ、中には何が……?」
「開けてみますか?」
「うむ、では紬皇子、頼んだぞ」
「畏まりました。では……」
紬皇子が箱を開けると、そこには数個の小さな麻袋が入っていました
「あ……その麻袋は……」
「和殿、ご存知か?」
「はい。帝、これこそが先程梓が言っていた『不老不氏の薬』です」
150: 2011/08/13(土) 13:55:35.39 ID:mBPRPvBe0
「……ま、真か?」
「えぇ」
「ということは……これを飲めば、我々も梓と和殿が再会するその日を目にする事が出来る……ということか!」
「わ、儂等のような老いぼれでも大丈夫なのですか?」
「翁、ご安心を。これを煎じて飲めば誰でも月の者と同じ時間を過ごすことが出来るようになりますよ」
「ば、ばぁさん……」
「お爺さん……」
翁と嫗は抱き合って泣き続けました
二人の再会に立ち会える、それがとても嬉しかったのです
「……では、皆でこれを飲もうじゃないか。紬皇子、煎じてくれぬか」
「ははっ!では椀を……あら?これって七袋あるわねぇ……」
「ん?何かおかしいのか?」
「だって澪ちゃん考えてみて、今ここにいるのは和ちゃんを除いたら何人?」
「えっと……律、ムギ、さわ子先生、憂ちゃん、純ちゃん、私の六人だな」
「でもここには七袋あるのよ?どうしてかしら……もしかして間違い?」
「……あぁっ!わかったぞっ!!」
151: 2011/08/13(土) 13:58:06.49 ID:mBPRPvBe0
「律、何がわかったんだ?」
「澪、ムギ、それって聡も含めての人数だよ!」
「聡?……そっか、当初の予定だと居る事になっていたから……」
「それで七袋なのね!」
「その通り~!」
「じゃぁ聡を呼んできたほうが良いんじゃないか?」
「んー?別にいいよ~、居てもやること無いし。聡もそうだろ?」
『うん、着替えてもいないし……』
「という訳だ。だからムギ、六人分頼む」
「は~い。よろこんでぇ~」
紬皇子は車座になった各々の前に麻袋の入った椀を置き、慣れた手つきでそこに湯を注ぎました
「薬液が全て浸み出るまで、暫しお待ち下さい」
使者の言葉に皆黙って椀を注視すると、袋から薬液がゆらゆらと浸み出始めていました
そして現在の時間にして五分後
ついに『不老不氏の薬』が完成しました
152: 2011/08/13(土) 14:00:25.20 ID:mBPRPvBe0
「ふむ……なぁ紬皇子、私にはただの茶にしか見えぬのだが、皇子はどう思う?」
「どうと聞かれても……私も律皇子と同じ意見なのだが」
「だよなぁ~……」
「まぁ、確かに見た目はただのお茶ですが飲んでみればそうでは無いということが良く解りますよ」
「そうか。では皆の者、椀を手に取るのだ!」
帝の令に各々目の前に置かれた椀を掲げます
「では……唯と梓、二人の新たな門出の祝いと遥か先にある梓と和殿の再会を祈って!」
「「「「「門出の祝いと再会を祈って!!」」」」」
「乾杯!!」
「「「「「乾杯!!!!!」」」」」
皆は祝いの声を上げ、椀の中身を一気に飲み干しました
すると、今まで充実感で満たされていた皆の笑顔が、徐々に険しくなっていきました
153: 2011/08/13(土) 14:06:33.88 ID:mBPRPvBe0
「の……和殿……」
「なんですか、帝」
「こ、これは……良薬口に苦し……ということ……か?」
「はい、その通りです」
「……ウゥッ……口の中が苦くて渋い……唯はこれを飲み干したのか……」
「……なぁ澪、今何て言った?」
「え?あぁ、こんな苦くて渋いお茶を唯は飲み干したんだなぁって」
「……ちょっと確認の必要が有るな……ナレーターさん!唯と今話せますか?」
スイッチを入れれば可能ですよ。
「じゃぁ、ちょっとお願いします!」
では少々お待ち下さい……ポチッとな。
……はい、大丈夫ですよ!
「おーい、ゆーいー!聞こえるかー?」
『聞こえるよ~。りっちゃんな~に~?』
「あのさー、唯はお茶飲んだのかー?」
『お茶って……薬の事?う、うん。飲んだよー』
154: 2011/08/13(土) 14:07:04.73 ID:mBPRPvBe0
「ほほぅ……結構甘かったよなー」
『そ、そうだねー』
「唯先輩……その反応は……」
「飲んでないんだね……お姉ちゃん……」
『ちょ、ちょっとー、憂も純ちゃんも何を言っているのかなぁー』
「唯……あのな、あのお茶は……ありえねぇ位苦くて渋いんだよっっっっっ!!!!」
『な、なんだってぇぇぇぇーーーー!!!!』
「つーわけで……唯、後でしっかりと味わってくれ。お誂え向きに丁度一袋残っているんだ」
『……慎んで遠慮させていただきます』
「いーやっ、これは話の流れ上飲まなくちゃいけないからな、終わったらちゃーんと飲んでもらうぞっ!」
『そ、そんなぁ~』
「ヘッヘーンだ!私達が受けた苦しみを唯も味わってみろー!」
『ウゥッ……りっちゃん隊長厳しいっす……』
155: 2011/08/13(土) 14:07:35.09 ID:mBPRPvBe0
『唯先輩!私も半分飲みますから、頑張りましょう!』
『あずにゃん……うん!私頑張るよ!!』
「……結局そんな感じの流れになるんだな……」
「律先輩、仕方ないですよ……」
「今の二人には何を言ってもムダだからねぇ」
「……実の妹と親友がそう言っているんだ。律、諦めろ……」
あのー、皆さんそろそろ大丈夫ですか?
「あ、はい!憂も大丈夫だよね」
「うん♪」
「澪ちゃんもりっちゃんも大丈夫よね?」
「おぅ!そう言うムギはどうだ?」
「もっちろん♪」
「先生は……大丈夫ですか?」
「一応ね……そう言う和ちゃんは……無関係だったわね……」
では再開しましょうか、ラストまでこのまま一気に駆け抜けましょう!
「「「「「「「はいっ!!!!!!!」」」」」」」
158: 2011/08/15(月) 23:09:07.27 ID:byEftcYL0
時と言うものは無情なる物です
薬を飲み干した皆が使者と歓談を楽しんでいると、東の空が白み始めました
「もうこんな時間になってしまいましたか。では改めて……私は月へ帰りますね」
そう言うと、使者はフワリと舞い上がり松の頂に立ちました
「和殿!最後にもう一つだけ!次は何時来られそうなのだ?」
「……帝、すみませんがそれに関しては未だ不明です」
「そうか……」
「そうだ!では、こうしましょうか。次回……というか此処に来られる三日前に、月から合図を送ります」
「合図を?」
「はい。この幹に文を括り付けた矢を撃ち込みます」
「成る程、それならわかりやすいな。承知した!ではその日を楽しみに待っていようぞ!」
使者はその返事に無言で頷くと、雲に乗り月へと向けて飛び立ちました
「皆様!梓の事を宜しくお願いしますね!!」
「帝の名において!その日までしっかりと見守らせていただこう!!」
「大丈夫!私等がちゃんとついてるから!!」
「律皇子の言う通りですよ!だから安心していて下さい!!」
「せ、僭越ながら!私も力になります!!」
159: 2011/08/15(月) 23:09:36.35 ID:byEftcYL0
「儂等もですぞ!!なぁ、婆さんや」
「えぇ、梓の親ですからね」
「それでは……また次に会える日まで、暫しのお別れです!さようなら!!」
「「「「「さようならー!!!!!」」」」」
皆は使者の姿が段々と小さくなり、見えなくなるまで手を振り続けました
「さて……我等もそろそろ帰るとするか。律皇子、支度を頼む」
「ははっ!」
「……翁」
「なんでしょうか」
「合図が来たらすぐ私と皆に知らせてくれ……皆楽しみにしているのでな」
「畏まりました」
「頼んだぞ……。皆の者!準備は整ったか!」
「「「既に!!!」」」
「うむ、良い返事だ!……では、翁、嫗、いずれまた会おう!達者でな!!」
「「はい!!」」
160: 2011/08/15(月) 23:10:36.90 ID:byEftcYL0
◆
「その後、数ヶ月程経った満月の夜に再び和殿……じゃなくて、和姫がやってきた。
あぁ、勿論『合図』もちゃんと送ってきたぞ。
食べて咏って……色んな事をして、楽しかったんだよなぁ~。
だって、気が付いたら帰る時刻ギリギリだったし。
そういえば、この時はまだ『姫』を名乗れないって言ってたなぁ~。
何で名乗れなかったんだっけ……?
二人でお茶談議をしていたから、紬皇子なら知っているかな?」
「律皇子、和姫はちゃんと言ってたじゃないですか。
『儀式が終わるまでは仮の身分だ』って。
それにしても……毎回持参してくる月のお茶には驚かされますね。
銀紫色のお茶など初めて見ましたよ……。
まぁ、此処だけの話、味はいま一つだったんですけどね……フフッ。
そういえば、澪御主人は姫が来る度に二人で何処かに行って、
帰ってくると毎回『今回もダメだった……』って言っているけれど……。
何が『ダメ』なんだろう?」
161: 2011/08/15(月) 23:11:19.35 ID:byEftcYL0
「つ、紬皇子……その理由、言わねばなりませんか?
……ハァ、仕方がありませんね……わかりました。
私が『ダメだった』と言っているのは、和姫との『手合わせ』です。
私は最初の戦いで負けた後、『あれは月光の力があったからだ』と思っていました。
ですが……それを使わずとも姫は強いです。
後から聞いた話なんですが、どうやら月の姫になるためには『知』だけでなく『武』も必要なんだそうで……。
いやはや、毎回のように自分と姫ではこれ程に『間』が違うのかと思い知らされていますよ。
そういえば、梓殿も姫になる予定だったのだから、『武』に長けているんでしょうか……?
今度帝に聞いてみようかな……」
「澪御主人、その事ならば以前メールで教えてもらったぞ。
ただ……梓殿は戦いそのものが嫌いだと書いていたので、そちらの面では和姫に劣るのかもしれんな。
だが、『お言葉ですが、帝よりは強いと自負しております』と書いてあったからな。
少なくとも地上の者で勝てる者は一人も居ないのだろう。
そういえば、嫗は宴の料理を総て一人で取り仕切っていたが……、
あれ程の料理を作る者は宮中……いや、都広しと言えども彼女以外誰も居ないな……。
今度、料理長として招き入れてみるかな……無理かもしれぬが……」
162: 2011/08/15(月) 23:11:45.82 ID:byEftcYL0
「帝、折角のお誘いですが丁重にお断りさせていただきます。
いくら私めが料理に長けていたとしても、それは内々での宴だからこそです。
宮中で日々献立を考え、それを振る舞うのも不可能ではありませんが……、
私には『翁』という伴侶がおります故……。
そういえば、先程届いた『合図』を見て翁が小躍りしていますが……、
一体何がそれ程に嬉しいのでしょうか……?」
「嫗!遂に、ついにこの日がやって来たぞ!!!
和姫からの文に『月帝が折れた』と書いてあった!!
これで……これで和姫が梓と再会出来るぞ!!
早速皆に知らせなければ……。
よし!先ずは梓と唯殿に連絡じゃ!!!」
163: 2011/08/15(月) 23:12:21.50 ID:byEftcYL0
「あずにゃ~ん」
「なんですかー?」
「なんかメールが来てるよぉ~」
「誰からですかー?」
「ん~っと、翁さんからだよ~」
「父上からですか……なんだろ?」
「うん。なんか急ぎの内容らしいけど……開けても良い?」
「あ、まだ洗い物終わらないんで、見てて良いですよー」
「ほ~い。んじゃぁぽちっとなっと。えっと~、……えっ?」
「唯せんぱーい、何て書いてありましたかー?」
「……」
「唯せんぱーい!」
「……」
「あれ?……唯先輩?」
「……」
164: 2011/08/15(月) 23:12:50.36 ID:byEftcYL0
「ゆーいせーんぱい?……なんだ、ちゃんと居るじゃないですか。もぉ……返事くらいしてくださいよ」
「……あ、あずにゃん……」
「一体どうしたんですか?こっちの呼び掛けにも答えないで」
「あ、ゴメン……聞こえてなかったよ。……あれ?あずにゃん洗い物は?」
「もぅとっくに終わりました。それで?父様からのメールには何て書いてあったんですか?」
「メール……?そうだ!あずにゃん!今すぐこれ読んで!!」
「もぉ……そんなに急かされなくても読みますってば。えーっと……えっ?……えぇぇぇーーーーっっっっ!!!!」
「あ、あずにゃん驚き過ぎ……」
「だ、だって!でも!えぇっ!?ほ、本当に?」
「本当だと思うよ……あずにゃん、良かったね~」
「……ヒック……よがっだ……でずぅ……ウグッ……」
「ずっと……グスッ……待ってたもんね……」
「……グズッ……」
「明後日……楽しみだね♪」
「……グスッ……はいっ♪!!」
和姫との再会を待ち侘びつつ、二人は空を見上げその時に思いを馳せます
燦々と輝く日輪は、そんな二人を優しく見守るのでした
165: 2011/08/15(月) 23:13:27.06 ID:byEftcYL0
★
さて……この物語もそろそろ幕引きの時間となりました
この後、梓と和姫は無事再会し大団円となるのですが……
更にその後、皆がどのように過ごしたかを、蛇足ではありますが書き記しておきましょう
先ずは帝と両皇子ですが……
どうやら二人の再会を見て思うところがあったようです
今まで全く政に参加しなかった両皇子ですが、帝を助けるべくそれに精を出すようになりました
「ちょっと律皇子!あの書類はどうしたの?」
「え?……あ!み、帝、少々お待ち下さい!今すぐ書いてお渡しします!!」
「やっぱり……もぉ、貴方は次の帝になる第一候補なんだからしっかりとしてよね」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、律皇子もあれで頑張っているのですから……」
「それは……まぁ、認めるけど……」
「クスッ……帝も律皇子もお疲れの御様子ですよ、そろそろお茶にしませんか?」
「お茶!?よっしゃー!さわちゃん休憩しようぜい!!」
「……良いわよ。そのかわり……書 類 を 書 い た ら ね ♪」
「デ、デスヨネー……アハハ……」
未だ前途多難な様子ではありますがね
166: 2011/08/15(月) 23:13:58.67 ID:byEftcYL0
次に澪御主人ですが……
どうやら和姫にどうしても勝ちたいらしく、剣術の腕をを磨くことに日々明け暮れているようです
「……あの構えからでは次の流れに対応出来ないな……ではこちらの構えで……いやいや、これは五回前に失敗した構えだな……」
どうやら今は構えの練習をしているようですね
「ならばこの構え……うむ、これなら……ってこれは二十三回前に失敗した構えじゃないか!じゃぁこれは?……って、これも五十七回前に……」
いやはや、迷走していますねぇ~
姫に勝てる日はいつになることやら……
そして翁と嫗ですが……
相も変わらず、悠々自適な生活を送っています
「さてと……今日も日課の散歩に行くとするかの」
「純ちゃん、お弁当忘れちゃダメだよ」
「おっと、危ない危ない……てかこれ多過ぎない?私一人じゃ食べ切れないよ?」
「だって……二人分作ったから……」
「……そか。じゃぁ……今日は嫗も一緒に行くか?」
「……はい♪」
167: 2011/08/15(月) 23:14:24.15 ID:byEftcYL0
ただ、姫が二廻り毎の満月に来る事を確約してくれたので、その時だけは宴の準備で忙しい模様です
「あぁっ!大変!!」
「ど、どうしたの!?」
「純ちゃん!来週末だよ!!」
「来週末……?何かあったっけ?……あぁっ!そうだった!!」
「今から献立考えないと……純ちゃん、何が良いと思う?」
「うーん……この前が魚介中心で、その前が洋風だったっけか」
「うん。そして更にその前が中華風だったから……」
「今回は肉中心の和風で良いんじゃない?」
「それが一番無難なんだけど……」
「何か不満が?」
「……例えば、ロシア風とか……東南アジア風とか……アフリカ風とか……」
「……一応平安時代なんだから、それは自重したほうがいいんじゃないかなぁ……」
はてさて、次回の宴の献立は何になる事やら……
168: 2011/08/15(月) 23:14:56.67 ID:byEftcYL0
最後に唯と梓ですが……
月帝の赦しを得た現在でも、聖域で仲睦まじく暮らしています
翁と嫗だけでなく他の皆も共に暮らす事を強く勧めたのですが、二人はそれを頑なに拒みました
「だってさぁ~、折角二人でラブラブなのにわざわざ『嫁の実家』に住むってのはどうかと思わない?」
「確かに、居心地の良い空間から敢えて悪い空間へ移動する利益はありませんね」
「だから、私達はこの地に二人で暮らす事を選んだのであります!フンスッ」
「……唯先輩、ところで私達は誰にむかって話しをしているんですか?」
「えっとねぇ~、……ギャラリーの皆さんに!です!!」
「ギャラリーって……誰も居ませんよ?」
「居るよぉ~。あずにゃんわからない?」
「はい」
「仕方ないなぁ~、じゃぁ特別に唯先輩が教えてあげましょう!」
169: 2011/08/15(月) 23:15:39.00 ID:byEftcYL0
「……で、誰なんですか?」
「先ずは、空に輝く太陽さん!次に野原の草花さん達!おっと、そこを駆ける風さんも忘れちゃいけないよね!そしてそして……」
「……つまり、『自然』がギャラリーだと」
「いぇーす!あずにゃん大正解!!」
「……ハァ」
「まぁまぁ、そんな溜め息つかないで……。さて、正解したあずにゃんには唯先輩からのご褒美をプレゼントします!」
「ご褒美……?あ、なんか嫌な予感が……」
「あずにゃ~ん!むちゅちゅ~!!」
「ちょっ!そ、それはダメです~!!」
「えぇ~?なんでぇ~」
「だ、だって、約束したじゃないですか!」
「あ……そうだったね……ゴメン」
唯と梓が交わした約束
それは……
『帝と月帝の前で祝言を挙げる』
そのためには守らねばならない事がありました
170: 2011/08/15(月) 23:16:26.00 ID:byEftcYL0
「『純潔』を守らなくちゃ……ダメなんですよ」
「……うん」
「だから、キスとか……エ、エOチな事とかはしちゃいけないんです」
「そうだったね……」
「で、でも、それ以外なら……大丈夫……です、よ……」
「それ以外か~、……では改めて、あずにゃんにはご褒美のむぎゅぎゅー」
「にゃぁ~♪」
……キス程度なら問題無いとは思いますがね
それでは、後日談もこのくらいにして
私は筆を置くとしましょう
唯と梓が無事祝言を挙げられるよう祈りながら……
おしまい♪
171: 2011/08/15(月) 23:17:24.88 ID:byEftcYL0
#
……以上で、全ての撮影が終了しました!!!
「よっしゃ終わったー!!」
「流石に疲れたな……」
「早くメイク落としてお茶したいわぁ~」
「私も~。帝の衣装って動き辛いからクタクタよぉ~」
「でも先生、私の衣装よりは動きやすかったんじゃないんですか?」
「まぁね~」
「確かに……和先輩の衣装は宙吊り用のフックやら何やらがついてるから大変そうですよね」
「一応動きやすい位置に付けてあるんだけどね、それでも気をつけないといけないから……」
「朝に体験させてもらった時、こんなの付けて動けるのかぁっ!?って思いましたもん」
「でも、楽しかったね~」
「ね~」
「あ、そうだ!ナレーターさん、まだ外と話せます?」
大丈夫ですよ、律さん。……『例の件』ですね?
「そうそう。では……おーい!ゆーいー!!」
172: 2011/08/15(月) 23:17:58.23 ID:byEftcYL0
『りっちゃんな~に~?』
「撮影終了したなっ!」
『そだねっ!』
「撮影終了したんだぞ~」
『だからわかってるって~』
「……ホントにその意味がわかってるのか?」
『……どゆこと?』
『あ!唯先輩!ほら……例の……』
『例の?……あぁっ!!!』
「どうやら思い出したみたいだな……」
『うん……。ねぇ、りっちゃん……やっぱ……飲まなきゃ……ダメ?』
「そんなの当たり前じゃないか」
『で、ですよねー。あはは……』
「……とまぁ、冗談はそれくらいにしておいてっと」
『……へっ!?』
「ま、今回は特別に許してやろう」
173: 2011/08/15(月) 23:18:34.03 ID:byEftcYL0
『りっちゃん……良いの?』
「本音を言わせてもらえれば、唯にも飲ませたい。でもさぁ……唯はこのあと何をする予定だ?」
『えっと……このまま外で……ゆっくりまったりゴロゴロしようと思ってるんだけど……』
「それって、『梓と一緒に』だろ?」
『……うん』
「だったら尚更だ。なぁ唯、折角梓と二人きりでのんびりと出来るんだぞ?」
『そう……だね』
「唯は、頭の片隅で『嫌な事が待ってる』なんて考えながら……楽しく居られるか?」
『多分、無理』
「だろ~?だからさ、今回は特別って事だ」
『そっか。……りっちゃん、ありがとね』
「……そ、そのかわり、ちゃんと後で何をしてたか言うこと!これが許す条件だ!!」
「うふふ、りっちゃんたら……」
「律、見えないからって照れながら言うのはどうかと思うぞ」
「ふ、二人共!ばらすなよぉ!!」
174: 2011/08/15(月) 23:19:09.48 ID:byEftcYL0
「……フゥ、青春ねぇ~」
そうですね~。……ところで皆さんそろそろホテルに戻りませんか?
「さんせーい!早く戻ってシャワー浴びたーい!」
「もぉ、純ちゃんったら……」
「俺もゲームの続きやりたいな~」
「おい、聡は充分過ぎる程にやってただろ!だから今日はもうゲーム禁止な!」
「えぇ~?なんでだよぉ」
「ゲームは一日二時間まで!」
「はーい……」
ハハハ、仲が良いですね~。
では……。
皆さん!二日間お疲れ様でした!!
「「「「「「「「「「『『お疲れ様でした!!!!!!!!!!!!』』」」」」」」」」」」
「唯、晩御飯までには戻るのよ」
『わかったよ~』
「梓ちゃん、唯がはしゃぎすぎて時間とかを忘れないようにちゃんと見ていてね」
『はい、わかりました』
『うぅ……和ちゃん酷いよ……』
175: 2011/08/15(月) 23:19:43.24 ID:byEftcYL0
♪
『フフッ、まぁ良いじゃないの。幸せ一杯の親友に対する祝辞みたいな物よ』
「ぶぅ……祝辞っぽくなぁ~い」
『……さっきの言葉、よく考えてみればわかるとおもうけどね』
「さっきの……?」
「それって、私に言った言葉ですか?」
『そうよ。……時間はたっぷりとあるんだから、二人で考えてみなさい♪じゃぁ、後でね』
「わかった~、じゃぁね~」
「お疲れ様でした!」
えっと、このスイッチを……ポチッと
「消えたかな?あーあー、聞こえますかー?……よし、オッケー」
「唯先輩、お疲れ様でした♪」
「あずにゃんも、お疲れ様でした~♪」
フゥ……やっと全部終わったよ~
176: 2011/08/15(月) 23:20:19.03 ID:byEftcYL0
「……いい天気で良かったですね」
「そだね~。……ちょっとあっちまで歩こうか、高くなってて見晴らし良さそうだし」
「良いですよ、今日は軽装ですし」
「昨日のあずにゃんだと辛いよね~、結構衣装重かったし」
「終わったあと、楽屋までまともに歩くことが出来ない状態になりましたからねぇ」
「重い衣装で座りっぱなしだったからね~」
「唯先輩が一緒に居てくれたお陰で助かりましたよ……」
そんな事を話しながら歩いていると、いつの間にか目的の場所に到着していた。
「わぁー!いい眺めー!!」
「戦国の合戦シーンを撮ったこともあるって言っていただけありますね~」
「ね~」
辺り一面に広がる草原。
吹き抜ける風が気持ち良いな~
……あ、そうだ
177: 2011/08/15(月) 23:20:57.24 ID:byEftcYL0
「えいっ♪」
「……唯先輩、そんな所に寝転がると服が汚れますよ」
「草がいっぱいだから大丈夫だよ~」
「もぉ、しょうがないですねぇ……よいしょっと」
「えぇ~?あずにゃんは座るだけぇ~?」
「当たり前じゃないですか……と言いたいところですが……えいっ♪」
「えへへ~」
「……唯先輩が気持ちよさそうにしていたから……特別、です」
「そっか」
私達はそのままボーっと流れる雲を見続けていた。
時折草花の間を駆け抜ける風の音だけが聞こえる。
「ねぇ、あずにゃん」
「……何ですか?」
「さっき和ちゃんが言ってた事って……」
「『祝辞』の事ですか?」
「うん。あれってさぁ……どこが『祝辞』なのかなぁ?」
「私が唯先輩の事をちゃんと見て、時間までに帰ってきなさい……って事ですよね」
「多分……」
178: 2011/08/15(月) 23:22:59.90 ID:byEftcYL0
うーん……わっかんないなぁ~
あずにゃんが私の事をちゃんと見て……
ん?
それってもしかして……
「あずにゃん……和ちゃんはあずにゃんに『ちゃんと私の事を見て……』って言ったよね」
「はい、そう言っていましたね」
「……和ちゃんと一緒にどこか行ったりしたときはね、和ちゃんが色々と私の世話をしてくれてたんだよね」
「はぁ」
「ちゃんと起きたか確認するついでに迎えに来るとか、電車の中で寝過ごさないように気を付けるとか」
「あ……」
「口の周りが汚れてたらそれを拭き取ったりとか、迷子にならないよう手を繋いで歩いたりとか……」
「……あの、それって……」
「そう、あずにゃんが私にやってくれてる事と一緒……だから、さっき和ちゃんが言った『ちゃんと見ていてね』ってのは……」
「唯先輩の事は全て任せた……という意味……ですか」
「うん、そうだと思うんだ。だからさ……」
179: 2011/08/15(月) 23:23:33.04 ID:byEftcYL0
そこまで話した私は「よっ」と声を出しながら身体を起こした。
隣には寝転んだあずにゃんも不思議そうな顔をしながらつられて起き上がる。
それを見た私は少し微笑みながら話を続けた。
「だから、これからも宜しくね。あずにゃん」
「あ、あのっ、こちらこそ、宜しくお願いしますっ」
「色々とお世話かけちゃうよ~♪」
「……どんとこいです。どんな事でもお世話しますよ」
「ホントにどんな事でもお世話してくれるの?」
「あ……その、ムリの無い範囲で、ですけど」
「えへへ……でも、あずにゃんのお世話もさせてね」
「当然です。恋人同士なんですから」
「そっかぁ~」
「そうですよ」
「……この先、ずっと、お世話されて、お世話して……」
「……この先、ずっと……」
「……おばあちゃんになっても……ずっと……ね」
「……はい……」
180: 2011/08/15(月) 23:24:46.73 ID:byEftcYL0
辺り一面に広がる草原……
風の声以外
何も聞こえない
「あずにゃん……大好き……愛してるよ……」
天には光り輝く太陽……
降りそそぐ日差し以外
見ている者は誰も居ない
「唯先輩……大好き……愛して……ます……」
二人きりの世界で……
「あずにゃん……」
私達は……
「唯先輩……」
初めての……
おしまい!!
181: 2011/08/15(月) 23:27:53.62 ID:byEftcYL0
以上です
次も昔話ネタでやろうかと画策中だったりするんですが・・・
それがいつになるかはネタの神様次第なので未定ですwww
ではでは ノシ
次も昔話ネタでやろうかと画策中だったりするんですが・・・
それがいつになるかはネタの神様次第なので未定ですwww
ではでは ノシ
182: 2011/08/16(火) 19:36:29.14 ID:jj0zBBTwo
乙
このふたりが何時までも幸せだと良いな
このふたりが何時までも幸せだと良いな
引用元: 唯「なよたけの・・・」
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