1: 2014/06/30(月) 23:15:18.35 ID:xbUidgla0
進撃のSSです。

2: 2014/06/30(月) 23:15:44.66 ID:xbUidgla0
アニ「お父さんへ。この壁の中の世界は無事終焉に向かっています」

アニ「ですからもういいですか?」

アニ「これ以上の意味が私にはわかりません」

とこんな風な手紙を私は書き、捨てる

だって届ける方法がどうやってもわからないし

わからなくなった

この世界は誰かが望んだように人類は負けそうだった

どのくらいなんだろう?

負けたかどうかは知らないし、分からない

私は一人で暮らしていた

誰とも会わない。会いたくない

滅んでしまった?かまわない。変わらないから

それは昔だって今だったそうだ

いやになる

いやになった

だから離れた

3: 2014/06/30(月) 23:16:29.50 ID:xbUidgla0
私は私に誰も話しかけない今の生活に満足しているんだ

この街は人がまあいない。いなくなった

氏んで殺され逃げて

結果としてはどれも同じ

いなくなってしまっては

理由はそう外にいる

歩く音、呼吸の音、うめき声。何から何まで

アニ「うるさい」

耳障りな振動。嫌になる

この街のそばの壁には穴が開いている。それは小さな巨人が通れるくらいの

アニ「いなければいいのに」

誰に言っているのだろう?声を発する度にそう思う

目の前の巨人にいってるのかな?

アニ「変な顔だ」

聞こえている?どうでもいいけど

向けられているのはそんな殺意だ

アニ「仕方ないね」

私の家の周りにうるさい奴はいらない

こんな雨の日はなおさらだ

家でゆっくりしたいよ

4: 2014/06/30(月) 23:17:07.81 ID:xbUidgla0
ブレードを手に私は確かめる

冷たさを感じ

確かにあるものだと

ブレードを触る

立体機動で跳ぶとき

真直ぐに降りる雨は

斜めに方向を変えて

私に迫り過ぎてゆく

このときだけ私は

何も考えなくていい

ブレードを触る

熱い。確かに頃した

こうなっては相手に願うことは

真直ぐ倒れて何も壊さないように

アニ「氏んでくれ」

パチパチパチ

サシャ「いやーすごいですねーアニは」

まだうるさい奴がいた

5: 2014/06/30(月) 23:18:49.67 ID:xbUidgla0
少し前からなぜか居ついているこいつは

サシャ「お疲れ様です。じゃあご飯にしますか?」

アニ「まだいたの?」

サシャ「まだいますよ。もちろん」

なんでいるんだ?

アニ「いつ帰るの?」

サシャ「じゃ一緒に帰りましょう」

違う

アニ「いい加減所属の兵団にもどりな」

サシャ「あぅそうですねー」

アニ「うん」

サシャ「いつか帰ります」

いつか?

アニ「なんで?」

サシャ「いいからっ帰りましょう。ねっ」

理由は言いたがらない。ここに来た理由もいる理由も

それは私も同じだけれど

サシャ「今日のご飯はなんでしょねー」

折れたブレード、尽きかけたガス

そんな状態で現れた。巨人に出会ってでもしたら

危なかっただろう。今もそうだ

サシャ「アニ特製のスープですかね?」

アニ「そうだねぇ」

ひとまず帰ろう。戻るところがあるならば

・・・特製ってなんだ?

6: 2014/06/30(月) 23:30:28.88 ID:xbUidgla0
食料はとても貴重だ。前よりずっと

サシャ「美味しいですね」

アニ「そんなことない」

ほんとにそう思う。いつもと同じだ

アニ「あんたは何食ってもそういうじゃないか」

サシャ「何を食べても美味しいのですよ」

アニ「あっそ」

まあいいや。一人分を作るのも、二人分も変わらない

んっ?何で私が作るんだ?

仮にも居候のあいつが作るべきじゃないか?

サシャ「私の顔になにかついていますか?」

アニ「別に」

サシャ「アニは料理上手ですね」

アニ「そう」

上手いか?自分では分からないな

7: 2014/06/30(月) 23:31:48.74 ID:xbUidgla0
サシャ「どうしたんです。複雑な顔して」

アニ「別に」

サシャ「・・・アニいいですか?」

なんだ?

アニ「なに?」

サシャ「もっと会話しましょうよ」

アニ「やだね」

話すのは苦手なんだよ

サシャ「いくら話すのが苦手でもですねー」

うん。ばれてるね。じゃあ・・・

アニ「あんたは今日何をやっていたの?」

何も思いつかないな。一人でいるほうが喋っているかも

サシャ「私ですか?物思いに耽っていました」

そうか。次は何を話そう

アニ「・・・」

サシャ「冗談ですって。そんな怖い顔しないでください」

してるつもりはないけど

サシャ「掃除とかですね。買い物です」

意外にちゃんとしてる

8: 2014/06/30(月) 23:32:50.45 ID:xbUidgla0
サシャ「お掃除あんまりしてなかったですね?細かいところに埃がたまってますよ」

アニ「そう」

いつ終るかもしれないこの場所に

そんな気持ちは湧かない

物も買う気持ちにもなれない

アニ「何を買ったの?」

サシャ「食料と食料と・・・食料です」

あー・・・

サシャ「怖い顔」

アニ「してないよ」

アニ「無事に買えた?怖い思いしなかった?」

サシャ「あっありがとうございます!」

なにが?

サシャ「大丈夫でしたよ。立体機動を持ってますから」

サシャ「逃げに徹すればまあ大丈夫です」

サシャ「それに・・・アニも近くにいますから」

アニ「戦いなよ」

サシャ「・・・すみません」

アニ「おかわりいる?」

サシャ「はい!」

11: 2014/07/01(火) 00:01:03.87 ID:YiwqyBLm0
晴れたみたいだ。星が見える

サシャ「もう寝ましょうか?」

アニ「あーうん」

サシャ「火を消しますよ?」

アニ「どうぞ」

消えた

サシャ「明日は何をしましょうね?」

アニ「うん」

思いつかない

サシャ「どうして目を?天井を見つめているのですか?」

アニ「寝なよ」

サシャ「・・・はい」

なぜかこの暮らしをしてから

どんなに暗くても何も見えなくてもベットに入ってから目を開けて

天井と窓の外を交互に見ている

暗さを比較しているのだと思う

そしていつの間にか寝ている

サシャ「あのー」

うるさいな

サシャ「起きてます?」

アニ「うん」

サシャ「やっぱりアニのご飯は美味しいですよ」

アニ「・・・ああ。ありがと」

明日は何を作ろうかな

12: 2014/07/06(日) 00:38:34.52 ID:lqZc288j0
アニ「じゃ行ってくるから」

サシャ「えっどこにです?」

アニ「そこらへんをぶらぶらする」

サシャ「何をしに行くんですか?」

アニ「人頃しをしに」

サシャ「巨人は人じゃないです」

どっちでもいいんだ

アニ「生きるためにはさ」

サシャ「はい・・・」

私は巨人を頃して生活をしている

殺せば金がもらえる

何も感じるな

アニ「あんたも来る?」

なんて性格が悪いんだ私は

サシャ「・・・」

アニ「嫌ならいい」

本当だ

13: 2014/07/06(日) 00:39:35.17 ID:lqZc288j0
サシャ「はい」

どちらの肯定だろうか?

サシャ「お弁当作りますね」

アニ「あっうん」

私は自分のことしか無理で

いつもそうで

それしかできないから

あなたはもっと別のところに

サシャ「はいっどうぞ」

アニ「ありがと」

こんなとこにいたら駄目だ

サシャ「ではいきましょう」

アニ「えっ?」

サシャ「狩りですよ」

14: 2014/07/06(日) 01:05:55.10 ID:lqZc288j0
どういうつもりだろう

きっとこいつは私と同じじゃないのか?

サシャ「あのっブレード借りていいですか?」

アニ「いいよ」

アニ「・・・」

サシャ「なにか?」

成績は優秀だったから

なんとかなるだろうか

アニ「ふー・・・じゃあ役割を決めようか」

サシャ「役割?」

アニ「あんたは囮だ」

サシャ「囮」

アニ「私が頃す」

サシャ「すみません」

アニ「なにが?」

サシャ「いえ・・・アニのほうが危ないですから」

アニ「おんなじだよ」

アニ「単に私より成績の悪かった奴に任せられないから。それだけ」

サシャ「ああ。そうでした。そうでしたね」

アニ「いこうか」

サシャ「ええ」

変なことを言ってしまった

15: 2014/07/06(日) 14:36:22.44 ID:tjYHS0Ky0
サシャ「こうなんというか普段と変わって見えますね」

サシャ「街がまるで森の中のように生きているように蠢いているように見えてしまいます」

普段より少しよく喋る

サシャ「アニは森で狩りとかしたことありますか?」

アニ「ないよ」

サシャ「そうですか。今度行きますか?」

アニ「あー」

行きたくないなー

サシャ「どっちなんですか?」

アニ「帰ったら考えるよ」

サシャ「ほんとですよ?」

アニ「今は今のことだけを考えるんだ」

アニ「後にも先にもその価値があるかどうかわからないし」

サシャ「ありますから。ありますよきっと」

アニ「そう?」

サシャ「昔は楽しかったじゃないですか。そうじゃありませんでした?」

わからないよ。そんな余裕はなかったから

それにもうあまり思い出せない

そこまで昔でもないのに

サシャ「いまは大変かもしれないですが」

サシャ「きっと」

アニ「もう。やめだ」

16: 2014/07/06(日) 14:36:57.48 ID:tjYHS0Ky0
サシャ「アニは・・・みんなのことを聞かないんですね」

アニ「うん」

みんなって誰のことだ

いろんな奴がいた

昔から知っている奴とか

・・・氏にたがりの奴とか

思い出したくない

氏んでしまった人や

それと同じくらいに

生きている人のこと

だから思いだせないのか

17: 2014/07/07(月) 06:13:49.17 ID:lG7Ps1nw0
アニ「あんたも聞かないよね。私のこととか」

サシャ「・・・」

アニ「責めてないから」

サシャ「昔は楽しかったなんて随分情けないことを言いました」

サシャ「そんなこと言うなんて嫌になりますね」

サシャ「そうですよね?嫌になりますよ」

サシャ「駄目です。そんなんじゃ」

サシャ「がんばりましょう。狩って狩って狩りまくってやりましょうよ」

アニ「そうだね」

勝手にしてくれればいい

だけど今日のことは覚えている

18: 2014/07/08(火) 00:24:02.49 ID:5c5k5lpe0
ブレードを携えて歩く私達は

いつもの廃墟を練り歩き

いつもより怯えて歩く

サシャが覚えていた昔のような

私が忘れたことのように

歩くことはできない

声を出してみることはできる

アニ「帰ったら何食べる?」

サシャ「何でもいいですよ」

アニ「うん。何でもいいの?」

サシャ「ええ。何でも」

アニ「食べれれば?」

サシャ「美味しければ」

アニ「芋とか?」

サシャ「・・・忘れてくださいよ」

アニ「うん。何でも美味しいのを作ろうか」

サシャ「それは素敵ですね」

サシャ「そして私達は索敵中です」

アニ「何か言った?」

サシャ「いーえ」

私が思うよりも単純でもなく

色々と考える

訓練のときは思いもしなかった

19: 2014/07/08(火) 23:34:28.06 ID:K+FA8uJz0
私が覚えていた少しのことは

あなたが・・・いやみんなが良かった時のことなんだ

でもそれは声に出せない

その時を思い出すのは今見ているような

この街のような

あなたの顔のような

そんな姿を見たときだから

サシャ「なにか顔についていますか?」

アニ「ごめん」

何も言う事ができなかったから

サシャ「えっ?そんな訳じゃないですから」

サシャ「なんならずっと見ていてもいいですよ」

アニ「見るわけないだろ」

サシャ「なんですかー」

20: 2014/07/10(木) 23:29:15.44 ID:BOCMzfpO0
サシャ「ふふっ」

アニ「気持ち悪いよ」

サシャ「アニはちょっと意地悪ですね」

アニ「あっそ」

サシャ「そして優しいかもしれません」

アニ「それはないよ」

サシャ「いいんですどちらにしても」

サシャ「私は今日少し知ることができました」

サシャ「でも」

サシャ「知ることはなかったんです私は」

サシャ「みんなのことを」

サシャ「だから今話せていることが」

サシャ「それは良いことだと思ってますから」

なにが言いたい?

分かりたくない。分かってなにができる

私なんかに

アニ「どうでもいいよ」

私に対してそう思って

アニ「今日は狩りに来たんだって」

アニ「話しにきたんじゃないから」

サシャ「・・・ええ」

21: 2014/07/14(月) 00:41:34.93 ID:DFCPnHHA0
サシャ「いつかこの街もそんなふうにできますかね?」

サシャ「普通に歩いて普通に話して」

アニ「ガスとかって残量問題ない?」

サシャ「問題ない・・・と思います」

アニ「確認を」

サシャ「はい」

手際よく点検を行う

私達は兵士だった

戦士だったかも知れない

質問に答えられないのもその所為だ

アニ「いい?」

サシャ「問題ありません」

サシャ「そういえばガスとかブレードってどこで補充しているのですか?」

もう兵士でもなんでもないから

支給されることはない

そんな疑問が出ることは当然のことだ

だからその質問がくることは分かっていた

身構えていた

22: 2014/07/14(月) 00:44:38.39 ID:DFCPnHHA0
私が最初にこの街に流れ着いたときその問題に

どうしようかと思ったけど

解決した。街を歩くと

アニ「見な」

サシャ「えっ?」

サシャ「あれは・・・人ですよ」

サシャ「氏んだ」

アニ「そうだよ」

アニ「そこからもらう」

氏んだ団員

装備も全てそのままに

氏んだものはそのままに生きているものは去った

悪いとは思わない。仕方がなかったんだ

アニ「とっておく?」

サシャ「・・・」

サシャの言う通り私は意地が悪いみたいだ

あんたはそんなことしなくていい

サシャ「はい」

えっ?

サシャ「ちょっと失礼します」

サシャ「すみません。ごめんなさい」

そんなふうなことを口にしないで

こいつは氏んだ。弱くて当然だ

当然なんだ。悪くない

そんな顔をしないでくれ

サシャ「許して下さい」

やめろ

アニ「やめて」ボソッ

サシャ「何か言いました?」

25: 2014/07/15(火) 00:44:08.63 ID:nZ76lPQu0
上も下も前も見たくない私はまた答えられない

サシャ「もう終わりました・・・あの今日はもう帰りますか?」

声が聞こえる

アニ「あっああそうだね・・・後ろ!」

サシャ「へっ?」

気付くのが遅い

巨人が迫っているのを

方向を気にする暇もなくガスを噴き

散り散りになった

巨人の降り落とした腕と私達のガスのせいで

周囲の気体が狂って視界を塞ぐ

アニ「覚えてる!?」

サシャ「ハイ!」

対した大きさじゃないこの巨人は

対した問題無く消せる

それに今日はいつも違うから

廃墟の上その屋根の上に登り・・・サシャは?

26: 2014/07/15(火) 00:46:38.78 ID:nZ76lPQu0
咆哮が伝わった先から

真正面から向かいあっている

なんで?

アニ「サシャ!逃げろ」

あいつ様子がおかしい

震えている

アニ「逃げろって言ってるだろ!」

口を開けている

27: 2014/07/18(金) 23:49:24.42 ID:C8dovTOa0
不意を突かれたって

仲間が氏にそうだって

アニ「くそっ!」

問題ない

サシャは囮だ。注意だけ逸らせれば

アニ「いま行くから!」

私が殺せ

私が助ける

間に合え

昔を思い出してしまう前に

28: 2014/07/21(月) 21:29:21.54 ID:8v6pufzS0
アンカーを放ち

うなじを狙い

そのまま当たってしまうような距離で

向かった

身体が捻じ切れるような力で

切り裂く

アニ「大丈夫?」

巨人が倒れる音がする

ブレードはどうだ

違う

アニ「怪我はない?」

サシャ「あっ・・・あの」

サシャ「ごめんなさい」

アニ「それは聞いてないから」

サシャ「だっ大丈夫です」

アニ「そう。じゃ帰ろう」

強張った顔だ。私もそうだろうか

早く帰りたい

29: 2014/07/21(月) 21:31:17.82 ID:8v6pufzS0
周囲を見渡し蒸気を発して消える巨人が見える

その熱のせいか燐光を発してるように見える

どうでもいい

アニ「帰るよ」

サシャ「はいっ」

帰るまでに何もなければいい

いつもみたいに問題なく

サシャ「あっあの」

アニ「何?」

サシャ「すみませんでした」

アニ「だから?」

頭に血が上るのがわかる

サシャ「本当に役に立てなくて」

サシャ「前もそうでした。だから私は

アニ「聞いてないって言ってるだろ!」

アニ「何で動かなかった!氏にたかったのか!?」

アニ「だったら一人で氏になよ。少なくとも私の前ではなくて!」

サシャ「・・・すみません」

30: 2014/07/21(月) 21:36:49.01 ID:8v6pufzS0
消えそうな声が聞こえた

互いに何も言えなかった

何も言わないときは何も言えないときだろう

何も喋らず帰る

何か話したほうがいいんだ

今が

正しくないのはわかる

けど間違っていないかどうかはわからない

だれも間違ってるなんて言ってくれない

家に着くまでそんなことを考えていた

喋らずに

33: 2014/07/23(水) 06:53:11.44 ID:+xPKYmzD0
アニ「ご飯・・・にしようか」

サシャ「はい」

まだ会話をすることができなくて

サシャも私も

まだ街中にいて怯えているように

えっと・・・

アニ「あんたさぁ」

サシャ「はい」

アニ「元の場所に戻りなよ」

サシャ「・・・」

アニ「このままいても何もよくならないから」

アニ「あんたには向いてないよ。この生活は」

アニ「戻るところ・・・あるんでしょ?」

じゃああなたはここにいてどうにかなる?って聞かれたら

黙るしかない。戻る場所もどこにもない

サシャ「いや・・・です」

アニ「嫌って」

サシャ「逃げたくないんです」

何から?

サシャ「それに行くところなんてどこにもないです」

サシャ「逃げ出した私には」

知らなかったけど。解っていた。私と同じ

アニ「負け犬」

サシャ「ははっ・・・ひどいですよアニったら」

アニ「うん。そうだね」

渇いた笑い方だ。私は嫌いじゃない

サシャ「私達の親しかった人は何人も氏んでしまいました」

うん・・・そうだね

34: 2014/07/26(土) 14:25:03.99 ID:ihaeLJU70
顔が思いついて

すぐに消して

サシャを見ながら

アニ「でもそれが何?」

サシャ「なん・・・でしょう。分かりませんから」

サシャ「ただ弱くて怖くてそれだけでした」

それも私と同じ

怖いのはどんな理由から?

サシャ「きっと腰抜けって言われているんですよね」

サシャ「アニもそう思っていますか?」

アニ「別に。それにさ」

アニ「だれがそんなことをいうの?」

アニ「もう誰も言うわけないから」

アニ「だってほら」

アニ「誰もいないでしょ?」

35: 2014/07/26(土) 14:26:31.56 ID:ihaeLJU70
サシャ「そ・・・うです・・・よね」

サシャ「私はどのくらいの人と会えなくなってしまったのでしょう」

サシャ「話せなくなってしまったんですか?」

サシャ「気付いていました、解っていました」

サシャ「それでも」

サシャ「失くしました」

サシャ「だから」

サシャ「なんとかしたかったんです」

サシャ「今日は」

サシャ「でも」

サシャ「駄目でした」

サシャ「また何もできませんでした」

サシャ「結局は何もできなかったんです」

サシャ「しなかったんです」

サシャ「私は」

サシャ「なんとかしたかったんですよ」

サシャは泣きそうだったけど泣いてない

ああ・・・結構強いじゃないか

見直したよ

サシャ「どうして泣いているんです?」

言わないでほしかったんだけどさ

36: 2014/07/27(日) 23:59:56.68 ID:xhjwOA+C0
サシャ「あのっすみません。泣かないで下さい」

うるさいな

アニ「バカだろ?」

サシャ「はい」

アニ「話すことができなかったからここにいる」

アニ「何もしなかったから」

アニ「でも話すことができたなら」

アニ「何かできていたら」

アニ「何を話していた?」

アニ「何をしていた?」

サシャ「・・・」

答えてくれないか

アニ「そのことに意味はあったの?」

生きることに意味あったら

氏ぬことにも意味があったのか

いなくなる前に

誰か言ってくれればよかった

37: 2014/07/28(月) 00:03:29.49 ID:3yHVlLj/0
現実は

誰も言ってくれることはなかった

私も言う事はなかったけど

サシャ「私達には永遠にわかりませんね」

サシャ「でも私達は」

アニ「うん」

サシャも気がついたら泣いていた訳がわからない

だけど今度は違う

泣く理由と

怖がる理由が

解らなくなる前に

あなたと私は話をしている

サシャ「生き残っていますよね私達?」

サシャ「だからこんな話ができたんですね」

アニ「うん・・・あんたが怯える理由はなんで?」

サシャ「それは巨人が怖いからです」

アニ「うん。今日逃げなかった理由は?」

サシャ「また逃げたくなかったんです」

アニ「うん。泣いている理由は?」

サシャ「あれっ泣いていましたか?」

アニ「うん」

サシャ「・・・自分が情けないからです」

アニ「全部違うと思うんだ」

サシャ「へっ?」

アニ「とりあえずご飯にしようよ」

サシャ「あっ賛成です」

38: 2014/07/28(月) 00:06:49.17 ID:3yHVlLj/0
その日の夕食では互いに何も話さなかった

アニ「火を消すよ?」

サシャ「はい」

火を消した瞬間が最も暗いのはいつものこと

サシャ「あのーまだ少し話していいですか?」

アニ「いいよ」

サシャ「私がここに来た理由を言っていませんでした」

アニ「別にいいよ。もう」

サシャ「いや。言わせて下さい」

アニ「逃げたから」

サシャ「それはそうですが噂を聞いたからです」

アニ「噂って?」

サシャ「一人で巨人を討伐している兵士がいるって」

サシャ「しかも女性だって」

アニ「そう・・・それで私だってわかったの?」

サシャ「噂ではそこまでですが私は多分そうだと思ってました」

少しまずいかもしれないな

サシャ「・・・アニ?」

アニ「なんでもない」

サシャ「そうですか。これが私がここに来た理由です」

なぜよりによって私のところへ?

サシャ「なぜアニはここにいるのですか?」

アニ「誰かれもがこの世界を救えなかったから」

アニ「救わなかったから」

サシャ「少なくとも今日アニは私を救ってくれました」

サシャ「いえ。その前からずっと」

アニ「いいよ」

サシャ「最後に・・・アニが違うって夕飯の前に言ったことがわからなくて」

目を閉じる

アニ「寝ようよ。私が適当に言ったことだから意味ないから」

サシャ「はい。ではまた明日」

39: 2014/07/28(月) 00:14:38.19 ID:3yHVlLj/0
目を開ける

目を閉じる前より明るくて隣を見る

包帯が見える今日受けた傷だ

また目を閉じたくなる

怖がるのは弱いからかもしれない

だから誰も傷つくのが見たくなかった

私も傷つきたくなかった

それは弱さからで

けどその中には優しさだってある

泣くことだってそう

誰かを思ってのことなんだ

誰も言わなかったけれど

そのはず

信じていいはずだ

恥ずかしいから言わなかっただけだ

こんな顔を見せてしまうから

アニ「サシャ今日はごめん」

サシャ「今日はありがとうございました」

おやすみなさい

起きたら少しだけ話をしよう

おはようって

言うだけでも

昨日よりは勇気がいるな

なぜだろう

40: 2014/07/28(月) 23:17:01.07 ID:rXfwb+X60
眠い。私は

さよならを言う相手さえいないと

幸せな人は幸せな人と一緒にいればいい

そう思ったからで

優しいから

この世界が誰も救わなかっただけ

いつものことだから

それくらいするしかない

氏にたくないのなら

なんかわからなくなる

隣では微笑みがある

月が出ている

ブレードに光があたっている

寝よう

41: 2014/08/03(日) 21:51:52.18 ID:aVjk8mWi0
サシャ「おっはようございます!」

・・・

アニ「おっおはよう」

サシャ「はい!」

むかつくくらい元気だ

アニ「どうしたの?」

サシャ「なんでもありませんよ。いつもと同じです」

昨日は頭なんかぶつけていないはずだけど

サシャ「どうしました?」

アニ「怪我は?」

サシャ「ありがとうございます!全然大丈夫ですよ」

アニ「そう」

サシャ「アニったら優しいんですね。もうっ」

病院どこかにあったかな

サシャ「あっそうそう。今日は私がご飯をつくりました」

私がつくろうと思ったのに

サシャ「すごいですか?」

アニ「あっうん」

サシャ「ふふっ」

どうしたんだ?あんたは

サシャ「今日も一日がんばりましょうね」

アニ「あーはいはい。がんばろーね」

42: 2014/08/03(日) 21:55:43.06 ID:aVjk8mWi0
サシャ「今日は外が静かです」

アニ「いいことじゃない」

サシャ「私の華麗な剣さばきを見せられないのが残念です」

アニ「あんたはうるさいね」

サシャ「ううっ」

アニ「あーいいよ。ごめん」

アニ「喋ってほら。どうぞ存分に」

サシャ「そんなこと言われると話にくいですって」

アニ「いいことだね」

サシャ「よくないです」

アニ「ははっ」

サシャ「あっやっぱいいことです」

アニ「えっ?」

43: 2014/08/03(日) 21:58:11.12 ID:aVjk8mWi0
サシャ「それにしてもおかしいですね。今日は一体も見かけません」

そうなんだ。おかしい

いつもは少なくとも気配はあるはずなのに

それすらもない

サシャ「あっあそこ変です」

アニ「あそこ?」

巨人がいる。というかいた跡だ。残骸があるだけ

新しい。今日だろうか?

サシャ「私達じゃないですね。寿命でしょうか?」

アニ「そんなわけないから」

もう消えかけている斬撃のあとがある

アニ「ねえサシャ」

サシャ「はいなんでしょう」

アニ「あんたは兵団から抜け出した脱走兵だけど」

サシャ「アニもですけどね」

アニ「いいんだよ。それであんたの他にいなかったの?あんたみたいなやつ」

サシャ「私みたいに?」

アニ「兵から抜けた奴」

サシャ「いましたが私達の知ってる人はいません」

アニ「みんな強いんだ」

サシャ「そう思います。今思えば私達の世代は優秀でした」

44: 2014/08/03(日) 21:59:42.46 ID:aVjk8mWi0
アニ「優秀か・・・」

サシャ「なぜこんなことを聞くんです?」

アニ「思いだしてた」

その中でも一際優秀だった奴を

そして

頭上から音が聞こえる

飛び立つ音

力強くて完璧に思えた

昔っから

着地する音

ああ・・・やっぱりね

来るとしたらこいつがやってくると思ったよ

アニ「ミカサ」

ミカサ「アニ」

45: 2014/08/05(火) 23:57:45.37 ID:Swun6mNW0
それきり何も言わず

サシャも何も言わない

ただ近づくミカサを見る

あいつは無表情で

いつものとおりだ

ミカサ「変わりない?」

サシャ「おかげ様で」

アニ「何の用?」

バカな答えだけどなにを言ってもおかしい

考えをめぐらすが

どれもいいようには思えない

ミカサ「あなた達こそ何をしているの?」

ミカサ「いま世界がどんな状況であるか知っている?」

まだ表情が変わらない

アニ「何の用って聞いてるんだけどさ?」

サシャ「あのっミカサも疲れているでしょうから家に来て下さい」

ミカサ「・・・わかったそうする」

私達は今どんな表情なんだろう?

46: 2014/08/06(水) 00:02:15.74 ID:kn4ZyVJD0
サシャ「いやーはるばるですねー」

ミカサ「うん。はるばる」

サシャ「それは大変でした」

ミカサ「うん。大変」

サシャ「お腹減ってますか?」

ミカサ「そんなでもない」

サシャ「そうですか。私はペコペコです」

なんの益体もない話をサシャがしてる

私がお茶を準備する。私が?

アニ「どうぞ」

ミカサ「どうも」

サシャ「ありがとうございます」

私とサシャが飲み。ミカサも飲む

ミカサ「おいしい」

サシャ「そうですよね」

アニ「あんたがいうな」

アニ「大体あんたももっと手伝うとかしなよ」

サシャ「だってですね」

アニ「だってもなにもない」

ミカサが驚いた目で私を見る

なにかした?

それからキョロキョロと周りを見渡す

ミカサ「いいところだと思う」

悪い気はしないかも

47: 2014/08/06(水) 00:09:43.55 ID:kn4ZyVJD0
ミカサ「ずっとここにいたの?」

アニ「まーね」

ミカサ「サシャはいつから?」

サシャ「アニとずっと一緒です」

アニ「はぁ?嘘つかないでよ。最近でしょあんたが来たの」

サシャ「はい最近ずっと一緒です」

ミカサ「・・・うん」

ミカサ「良かった。みんな無事に会えて」

サシャ「ええ!ミカサも会えて良かったです」

サシャ「アニもそうですよね?」

アニ「えっ?ああうん」

そんな風な顔には見えない

なんで悲しい顔を?

ミカサ「氏んだら話すこともできないから」

サシャ「はい!氏んだら元も子もありませんから」

そうか

アニ「あんたは話にきたんだ」

サシャ「それはそうですよ」

ミカサは少し微笑んでうつむいた

そのときはサシャも私も微笑んだかもしれないけど

そのままではいられなかった

この家にこんなに人がいるのは初めてなのに

何年も一緒にいた奴らなのに

こんなに静かな場所になったんだ

48: 2014/08/07(木) 00:37:45.93 ID:2Zf4pYiy0
アニ「みんなはどうしたの?」

アニ「あんたの幼馴染とかさ」

アニ「元気にしてるの?」

アニ「兵団ってどうなったの?」

アニ「世界はどうなったの?」

アニ「みんな生きているの?」

沈黙のほうがまだマシだったことを聞く

これでいいんだって自分に言い聞かせながら

51: 2014/08/10(日) 18:42:57.54 ID:zBMn/ijZ0
サシャ「アニなにを言うんですか!?」

アニ「なにが?聞いてるだけじゃない?」

アニ「私は知らないだけだから」

静かに口を開いたミカサは

ミカサ「アニは逃げた。だから知る必要はない。いや・・・知ってどうするの?」

静かに話す

アニ「どうもしないって。どうにかできるわけないから」

アニ「ここはミカサ。あんた達がいた世界と違う」

ミカサ「アニ・・・あなたは亡霊のように思える」

ようやく私を見た

アニ「私が亡霊だったらここはそういうところなんだ」

アニ「そういうのがいることができる場所なの」

ミカサ「もしそうだとしたら」

ミカサ「亡霊は喋らない。いつものあなたがそうだったように」

アニ「そうだね」

ミカサ「あなたはそのままで黙っていればよかった」

アニ「優しいね」

ミカサ「そんなことない」

サシャは黙っている

それを見てふと思った

今日の夕飯はサシャに作ってもらおうかな

52: 2014/08/10(日) 18:47:27.14 ID:zBMn/ijZ0
ミカサ「あなたは巨人の仲間なの?」

サシャ「ミカサ!?」

サシャ「おかしいですよ。二人とも。さっきから」

サシャ「何を言ってるのですか?訳がわかりません」

サシャ「なんでですか」

サシャ「私達は会えたのですよ?」

サシャ「やっと会えたのに・・・なんで」

ミカサ「サシャ・・・」

アニ「ごめんねサシャ」

アニ「巨人の仲間か・・・さあね」

ミカサ「やはりあなたは」

アニ「でも今、サシャは仲間さ」

53: 2014/08/11(月) 06:28:20.71 ID:+dtGt56e0
サシャ「えっ?うれしいです」

アニ「ありがとねサシャ」

優しい目をするミカサはうつむいたりしなくて

ミカサ「もっと話をする必要がありそう」

アニ「構わないけど。ここで?」

ミカサ「悪いけど」

アニ「やっぱりそうだよね」

アニ「サシャも?」

ミカサ「ごめんなさい」

サシャ「旅行ですか?」

アニ「じゃあ駄目だね」

ミカサ「仕方ない」

アニ「仕方ないね」

窓のほうを見るといつも同じなんだ

埃が少したまっているな。

これは私がやらなきゃいけなかったな

アニ「あっお茶のおかわりいる?」

ミカサ「うん」

サシャ「あっ私もお願いです」

アニ「仕方ないね」

54: 2014/08/14(木) 13:58:42.33 ID:NHAbU/jZ0
みんなでお茶を飲んで

少し話をした

アニ「なんでいつもマフラーしてるの?」

サシャ「そうですよ私も疑問でした」

ミカサ「これっ?これは大事なものだから」

サシャ「大事なものですかー」

ミカサ「・・・」

アニ「・・・えっそれだけ?」

ミカサ「話せば長いから」

サシャ「長いのではしかたないですね」

アニ「だれかからのもらい物?」

ミカサ「この世界で一番大切な人からの」

アニ「ふーん。いいねぇ」

サシャ「いいですねぇ」

55: 2014/08/14(木) 22:53:00.85 ID:NHAbU/jZ0
ミカサ「じゃなんでいつもフード付きの服なの?」

アニ「私?」

サシャ「そういえばそうです」

アニ「特に理由なんかないよ。好きなだけ」

ミカサ「それだけ?」

アニ「それだけ」

サシャ「えー。なんかもっといい理由とかありませんか?」

サシャ「こうなんという最愛の人にもらったとか」

サシャ「アニ家に伝わる家宝だとか」

アニ「バカ」

サシャ「直接的ですね。悪くないです」

アニ「悪いだろ?ミカサもなんか言ってよ」

ミカサ「そうだ。サシャに聞きたかったことがある」

ミカサ「昔訓練兵団にいたとき」

アニ「・・・!ああそうだね」

サシャ「えっお二人から私に質問ですか?」

サシャ「いいですよ。なんでもお答えしましょう」

アニ「入団式のとき」

ミカサ「なぜ」

アニ、ミカサ「芋を食べてたの?」

サシャ「あーもう。それ言わないで下さいよー」

56: 2014/08/14(木) 22:59:02.07 ID:NHAbU/jZ0
もっと前から話すことができたなら

叶わないことだって簡単に話せたのかな

けど時間はもうないよね

ミカサ「もういい時間になってしまった」

ミカサ「本当ならもっとゆっくりしていきたかったけど」

サシャ「水くさいですね。いくらでもいていいですよ」

アニ「ミカサは忙しいんだって・・・じゃどうぞ」

ミカサ「ありがとうアニ、サシャ」

ミカサ「あなたたちには」

ミカサ「力ずくでも兵団にきてもらう」

サシャ「えっ?」

アニ「抵抗するから」

ミカサ「うん」

57: 2014/08/16(土) 14:48:26.02 ID:T9PWWU400
アニ「ここじゃあ狭いよね」

ミカサ「そうみたい」

アニ「外にでようか?」

ミカサ「装備は?」

アニ「えっああそうか」

なんの武器も装備も持たずに外に出たら氏ぬから

そして対峙するミカサも私も武器を持つことになる

サシャ「ちょっと待って下さいよ!」

いままでで一番大きい声

サシャ「アニは巨人の仲間じゃあないって言ったではないですか?」

ミカサ「アニが言っただけ、それだけで信じられるものではないから」

ミカサ「そしてアニもサシャも兵団を勝手に抜けた。それだけで罪だから」

サシャ「そんな仲間なのに」

ミカサ「仕方ないの」

サシャ「こんな終わりかけた世界でそんなことして誰が救えるのですか!?」

ミカサ「ごめんなさい・・・」

アニ「サシャ仕方ないんだ」

サシャ「二人してしかたないって・・・大人みたいなこと言わないで下さい」

アニ「子供でもない」

サシャ「でも私達は」

アニ「わかってよ。ミカサだってなにもせずに戻ったら罰せられるだろう」

サシャ「そんなことは」

58: 2014/08/16(土) 14:52:23.39 ID:T9PWWU400
アニ「サシャ。離れてくれる?」

ミカサ「サシャ離れて」

サシャ「えっあぅえっと」

アニ「サシャ?」

サシャ「やです」

アニ「やじゃないからサシャ」

サシャ「でも」

アニ「いいからっ帰ってくるからそれでいい?ねっ?」

サシャ「じゃあ怪我しないで下さい」

アニ「努力する」

サシャ「氏なないで下さい」

アニ「氏なないから」

サシャ「泣かないで下さい」

アニ「泣かないよ。だいじょうぶ」

アニ「だいじょうぶ。だいじょうぶだから」

サシャ「は・・・い」

アニ「もういい?」

サシャ「では最後に・・・思い出して下さい。お願いです」

アニ「思い出す?」

ミカサ「もういい?」

アニ「悪かったね。それじゃあサシャ装備をお願いできる」

サシャ「はい。ミカサも大丈夫ですか?準備します」

ミカサ「ありがとう」

59: 2014/08/16(土) 15:34:28.03 ID:T9PWWU400
サシャは大丈夫だとか問題ないですか?なんて言葉を繰り返す

確かめているみたいに言い聞かせるように

私は思い出すことがたくさんあってそれを思い出せるかどうか考えていた

なぜ私は戦うのかって

この生活を壊したくないからか?

どうしてだろう

嫌いじゃないから

嫌いじゃなかったっけ

どうしてかな

最近は思わなくなった

なんでだろう

いつからだろう

一人でいなくなってからかな

そうかもしれない

逃げたくない理由ができたんだ

ボロボロだったころに

泣いてしまったときに

あなたが同じようなときに

そんなのは見たくないから

少しだけ話すことが嫌じゃないから

けどもしなんで戦うのって聞かれたら

知らないと答えると思う

そんなことを思い出し、考えた

60: 2014/08/17(日) 13:33:58.97 ID:yybUc5Wd0
ミカサ「ブレードは抜かないの?」

アニ「さあ?」

アニ「あんたは?かかってきなよ」

ミカサ「・・・」

夕日の中で向かい合う

もう少しで沈むだろう

サシャは家で待っている

アニ「じゃあ」

アニ「私から抜こう」

アニ「あんたも抜きな。それで私を殺せばいい」

ミカサ「・・・」

アニ「私もそうするから」

ミカサ「そうしよう」

61: 2014/08/17(日) 13:38:05.82 ID:yybUc5Wd0
ミカサがブレードに手をかけた瞬間私は

ガスとワイヤーを吹き上げる

不意を着かれたはずだ。だって全力で逃げたからね

ミカサ「アニ!」

流石だ。視線の端にしか映らなかっただろうに

的確に追ってきている

私が有利なのはこの街に詳しいことだけ

実力はまあ考えたくないけど相手は首席様だ

追いついてくるだろう

アニ「ミカサ!」

もう夜に近い

62: 2014/08/17(日) 23:45:17.58 ID:+rwogdnc0
飛び続け逃げ続け

そのためにガスは全開にしてる

その性能に差はないはずだから

易々とは追いつけない

・・・はずなのに

目の前に現れ

ミカサの出す斬撃が暗闇を切り裂く音が聞こえる

ブレードがぶつかり会う

光が散るんだ

光が飛ぶ

暗闇が裂ける

押されている

くそっ

私にだって

あるはずだった

アニ「光だって」

だけどもうない

ミカサはまだある?

63: 2014/08/17(日) 23:48:09.62 ID:+rwogdnc0
ミカサ「もう終わりにしよう」

アニ「やだね」

ミカサ「アニは変わった」

アニ「あんたは変わった?」

ミカサ「知らない」

アニ「・・・そう」

その言葉で充分

アニ「変わっても」

アニ「私がどう変わろうが間違っていたと思う?」

アニ「私やサシャは?氏んだものは?」

アニ「駄目だ。答えなくていいよ。悪かったね」

アニ「どっちにしてもまだ終わりじゃあないね」

アニ「まだ残っているものがある」

もう残り少ないだろうけど

ミカサ「残っている?なにが」

アニ「例えばこのブレード」

アニ「それももう捨てる」

ミカサ「えっ?」

アニ「受け止めなよ」

ブレードを投げつける

私は逆の方向へ

つまり逃げる

あの場所を目指して

64: 2014/08/17(日) 23:56:30.91 ID:+rwogdnc0
その場所は

燐光を発する頃した肉体が

まだ横たわっていた

私がそうしたんだ

ミカサ「もう逃げないの?」

アニ「相変わらず早いね」

アニ「もう終わり。あと少しで」

アニ「でももう少し飛ぼうよ」

屋根の上に飛び立ち降り立つ

ミカサ「いい加減に・・・?」

ミカサは珍しく動揺しているみたいだ

ミカサ「えっ?」

引き金をひいてもガスがでないから

アニ「ガス欠だ」

ミカサ「これを狙っていたの?」

アニ「まーね」

ミカサ「アニもすぐ同じことになる」

アニ「どうかな。ほらっ見ててよ」

私は存分にガスを使い

また違う屋根から屋根へ

ミカサ「どうして?」

65: 2014/08/18(月) 00:00:13.77 ID:HPIKznEe0
アニ「簡単だよ補充したんだ。あんたがここに来る前に」

ミカサ「そんなところはない。ここには何も無い」

アニ「ある。この街に相応しいのが」

アニ「あんたには見えない?」

ミカサ「巨人の残骸それと・・・アニ!」

確かに巨人の残骸が目印だった

この前の残り、兵団の残した氏んだもの

ミカサ「氏体から。何て」

アニ「悪いとはもう思わないから」

アニ「・・・少なくとも私は」

アニ「いやいい。それよりどうするミカサ?」

アニ「機動力を失ったあんたに勝ち目ないよ」

ミカサ「・・・」

アニ「降参して兵団に戻りな」

アニ「私とサシャは氏んだことにしてさ。いいだろそれで」

ミカサ「どうしたの?」

アニ「なに?」

ミカサ「かかってこないの?」

あなたはそういう奴だっけ。私にはない強さがあって

なぜか懐かしくなった

アニ「わかった」

私は最後の一対のブレードに手をかけ

アニ「サシャあとは頼んだよ」

ガスを全開にする

66: 2014/08/18(月) 06:50:02.00 ID:HPIKznEe0
私のほうが明らかに早く

そして届き、ミカサの身体を貫いていただろう

この刃がもう少し長ければ

ミカサ「アニどうして?」

貫かれたのは私の身体だ

ミカサ「折れたブレードを持って」

どんな考えがあったっていい

どんな思いがあったっていい

どんな残酷さがあっても

それは同じなんだ

私と私達を傷つけるものがいても

見たくなくて逃げたって

同じだった

この世界とこの街では

だから耐えるんだ

いつもそればかりで

いつだってそうだったから

でも優しさだって

あったりする

それも同じだった

アニ「このブレードはサシャのものさ」

68: 2014/08/20(水) 00:26:59.68 ID:Hcbn26Yc0
アニ「私の力じゃない」

この声は届いてる?自信がないよ

アニ「私は誰も救わないから」

私は無理だから

アニ「私は折れたブレードと盗んだ装備で戦うから」

悪い?なにも無いんだ

最後の武器なんだ。サシャのくれた

手放すことができなかった

ミカサ「私は・・・」

あなたも

アニ「同じなの?」

ミカサ「喋らないで」

いつものあなたや私のように?

うまく喋れたらいってみたかった

でもなにその顔?

らしくない

なんで?

心配してくれてる?

そんな顔しないで

アニ「サシャごめんね・・・ミカサも」

もう完全に夜だって気付いたら

意識は暗く遠くなった

69: 2014/08/20(水) 00:42:14.41 ID:Hcbn26Yc0
昔の夢をみている

見たいと思ったことはない

けど今見ている

お父さんがいる

私もいる

どのくらい昔かわからない

だっておんぶされているから

どちらも喋らない

いつものように

ただその横顔は

私を見ると懐かしそうに見ていた

私もそう見ていた

会話はないまま

歩いていた

そうしたら

言いたくないことを言いたくなった

お父さん。ごめんなさいと

さっきいったばかりの言葉を言って

やっぱり会話はないけど

それでいい。いつものようだから

そのうち私は

おんぶされたままで

また夢の中で眠った

70: 2014/08/20(水) 06:46:38.42 ID:Hcbn26Yc0
なんだろう地面が動いている?

暖かいのに?

暖かい?

目を開けると背中があってミカサに

背負われているのがわかった

思わず笑ってしまった

だけど傷が痛くて小さな声で

ミカサ「アニ起きた?」

なんて夢をみたんだろう

それはそうだけどさ

それにしても

ミカサ「なんで笑っているの?」

アニ「ミカサの背中ごついね」

71: 2014/08/22(金) 00:36:39.33 ID:Y0IzCbNd0
ミカサ「降りるの?」

アニ「ごめん。ごめんね。まだ傷が痛いから」

ミカサ「思ったより大丈夫そう。ひどそうに見えたのに」

ミカサ「普通の人だったらこんなふうにはならない」

ミカサ「あなたは・・・」

アニ「あー運んでもらって悪いけどどこに行くの?」

ミカサ「もちろん家に。なぜ?」

アニ「いやそれ以外ないよね」

ミカサ「きっとサシャがお腹を空かしている」

アニ「いつもだよサシャは」

ミカサ「確かに」

アニ「早くかえろう。それいけミカサ」

ミカサ「アニは見た目より重いから無理」

アニ「あんたに言われたくないね」

ミカサ「降りる?」

アニ「ごめん」

ミカサ「まったく・・・お父さんのほうが良かった?」

アニ「えっ?何て言ったの今?」

ミカサ「何も」

アニ「嘘だ」

ミカサ「ほんと」

アニ「えー」

こんなにミカサと話すとは思わなかったよ

けどこまったな

73: 2014/08/24(日) 23:50:50.41 ID:qaDyxM5i0
言いたいことがさっきから言えない

ミカサもそうだろうけど

アニ「えっと・・・」

ミカサ「なに?」

アニ「なんでサシャはあんなに食ってるのに太らないの?」

ミカサ「体質」

アニ「体質かぁ」

ミカサ「あの・・・」

アニ「なに?」

ミカサ「痛くない?」

アニ「痛くないよ」

アニ「重くない?」

ミカサ「重くない」

アニ「さっきは重いって」

ミカサ「見た目よりはって言ったの」

アニ「あのさ」

ミカサ「アニ。もう家の前に着いた」

いつの間に

ミカサ「降りて」

アニ「うん」

背中から降りてミカサは振り返る

アニ「それでさ」

ミカサ「待って」

ミカサ「あなたは今日氏んだ」

ミカサ「だから生まれ変わることもできる」

アニ「うん」

ミカサ「それでも話を続ける?」

アニ「やめとくって言えたらいいんだけどさ」

アニ「私はあんたと話すよ。それにさ」

ミカサ「それに?」

アニ「家に帰ったらうるさいだろうから」

ミカサ「そうかも。私も話せたらいいって思っていた」

74: 2014/08/25(月) 00:05:12.33 ID:C77C+fMP0
アニ「私を助けている理由は?」

ミカサ「折れた武器で戦う理由は?」

ミカサ「・・・」

アニ「・・・」

同じ瞬間に出たこの問いがそれだけで

互いの答えみたいに思える

だから答えられなかったし、次にいったのも

ミカサ「さあ」

アニ「知らない」

意味がない答えを言って

今度は二人して笑ってしまった

ミカサ「怪我はもう治りかけている?」

アニ「まだだね。けど大分良くなってるよ」

巨人の力のおかげで

アニ「兵団に私とサシャを連れて帰る?」

ミカサ「それはない」

アニ「あんたは?」

ミカサ「それはサシャといるときに話す」

アニ「そう・・・じゃ中に入ろう?」

振り返った瞬間に

ミカサ「アニは」

ミカサ「エレンを知っている?」

そんなミカサは初めて見るくらい弱弱しい声で聞いてきて

ミカサが本当に聞きたかったこと。来た理由がわかった

75: 2014/08/25(月) 00:07:06.33 ID:C77C+fMP0
アニ「行方がわからないの?」

ミカサ「やっぱり知らない」

アニ「もしかして・・・さらわれた?」

ミカサ「しっているの!?」

アニ「いや・・

ミカサ「エレンはどこ!?」

ミカサ「どこにいるの?」

アニ「ごめん。知らないんだ。本当に」

ミカサ「教えて・・・」

私は私の知っていることを言って

ミカサは起こったことを言った

ミカサが言うにエレンは作戦中にさらわれて行方不明らしい

そんな作戦があったということまでは知っていた

そこまで話したらひどく落ち込んでいた

ミカサは私達と同じようにボロボロだったんだ

そして私達はこの街で唯一明かりのついている家に

私とミカサは入っていく

76: 2014/08/25(月) 00:10:04.70 ID:C77C+fMP0
サシャ「お帰りなさいアニ、ミカサ。食事の用意が・・・」

机には3人分の食器が並べてある

並べてはあるがほぼ空

アニ「用意が?」

サシャ「できませんでした!」

サシャ「私、心配で心配で」

ミカサ「サシャ・・・」

アニ「サシャ顔を上げて。心配してくれてありがとね」

サシャ「アニ」

アニ「それと口を拭いたほうがいいよ。食べかすがついてるから」

サシャ「あっ」

私とミカサが家の前にいて話しているときに

窓から見えた料理は確かにあったから

サシャにしては上出来だ。3人分の食器も

アニ「ミカサ作るから待ってて」

ミカサ「私も手伝う」

サシャ「私もやります」

アニ「当たり前だよ」

77: 2014/08/25(月) 00:16:30.80 ID:C77C+fMP0
食事の後に私は2階の寝室へ行って窓を開けた

椅子に座り壊れてしまっている街を見てる

風が吹いて髪を揺らしている

私の故郷はもちろん見れない

もうだれの故郷だってみれない

サシャ「なにをしているのですか?」

なにも

ミカサ「街をみている?」

そう

ミカサ「不思議と綺麗に思えてしまう」

アニ「意外だね。そうみえるんだ」

ミカサ「なぜだろうとは思う」

二人が腰を降ろす

三人が座っている

また風が吹いて

その音が少し続いて話した

アニ「私もなんでだろうそう思える」

アニ「こんなにボロボロなんだけど」

折れたブレードに

盗みとった装備も

なにもかも

限界を迎えて

消えていくしかない

普通に歩くこともできない

この街とどちらが早いかな

サシャ「私は好きですよ。この街が」

アニ「なんで?」

79: 2014/08/26(火) 00:55:17.03 ID:shmt0HPn0
サシャ「それはもう。お二人がいるからですよ」

サシャ「話せるだけで幸せです」

サシャ「思いを伝えることができるだけで」

サシャ「後にはもうなにもいらないくらいです」

サシャ「私は私に大丈夫だっていってくれる人がいて」

サシャ「すばらしいといいことだと思えます」

ミカサ「アニ。サシャがちょっとおかしい」

アニ「そうだね。こんなこと言うなんてね」

サシャ「なんですか。ひどいですね」

サシャ「あとご飯がたべれるだけで」

それもそうだろうね

ミカサ「私も暫くここにいていい?」

サシャ「やった!」

アニ「いいけど兵団は?」

ミカサ「少し自分でエレンの行方を調査したいから」

アニ「そう。そうしたいならいいよ」

サシャ「よくわかりませんが手伝います。アニも」

アニ「勝手に・・・いいけどさ」

サシャ「アニも会いたいですよね?エレンに」

アニ「・・・まあ」

ミカサ「えっ?」

ミカサが怖い目でみてくる

アニ「もう寝よう?」

サシャ「誤魔化してます?」

アニ「なにが?」

ミカサ「アニ明日ゆっくり話をしよう」

アニ「だからなにが?」

80: 2014/08/26(火) 01:00:03.66 ID:shmt0HPn0
明かりを消して今日も月が出ている

私達はまだ一緒にいて

あなたも私と一緒にいることができる?

しばらく目を開けている

暗さを見ているんじゃない

まだ寝たくないだけ

二人はもう寝たの?

寝顔を見てみる

どうだろ?

息が聞こえる

これだけで

正しいと思える

叶うことなら

私達を救ってほしいと思えた

私達はわずかなことで氏んでしまうから

何度だってそう思うことが正しいと

誰も言ってくれなかったことを言ってみたくなる

うまく言えないだろう

子供のときからそうなんだから

優しさだけでも、強いだけでも、耐えるだけでも

または何も感じなくっても

その全部が昔を思い出して仕方ないし

そのために心が色々な方向に引っ張られて

しまっても構わない

昔だってそうだったから

でも違うこともあって今日は

サシャの作ったご飯や

ミカサの背中に

折れたブレード

それを思い出すことができた

部屋の隅にあるブレードは

月の光が当たって複雑な光になっている

その光が溢れる暗さの中で

みんなが起きてしまわないように

私は静かに微笑みを浮かべたんだ

81: 2014/08/26(火) 01:02:56.20 ID:shmt0HPn0
これで終わりです。ありがとうございました。

82: 2014/08/27(水) 09:40:27.47 ID:sSQUwQdV0
乙。良かったよ。

引用元: アニ「壁に穴のある街で」