1: 2016/06/05(日) 20:04:25.035 ID:wWdZTeKf0.net
亀山「えっ、ほ、本当ですか!? ああ、まずいな、こんな出先で……右京さん、我慢できます?」

右京「持ちこたえて……あと、30秒といったところでしょうか」プルプル

亀山「えーっと、そうだ! 俺、例の物探してきますから!」

右京「ええ。お願いします」プルプル

ダッ

亀山「急げ急げよ~!」


~数分後~

亀山「右京さん! ティーカップとポット、買ってきました! 右京さん? どこいっちゃんたんだ……? 右京さーん!」


右京「イー! イー!」

パチパチパチ!!!


亀山「いた!」

子供「ねえママ。どうしてあのオジサンは『イーイー』って言いながら噴水の中で拍手してるの?」

母親「シッ! 見ちゃいけません!」

亀山「あー! くそっ! 間に合わなかったか……!」

3: 2016/06/05(日) 20:10:23.763 ID:wWdZTeKf0.net
亀山「右京さん! 右京さんほら! カップ持って、ね? 水は入ってますから」

右京「イー! イー!」

ジョボボボボボボボ

右京「……落ち着きました」

亀山「今回はやばかったですね。見られちゃいましたよ、通行人に」

右京「そうですか」

亀山「そうですかって……こう言っちゃなんですけど、恥ずかしくないんっすか?」

右京「君は恥ずかしいんですか?」

亀山「そりゃ恥ずかしいっすよ! 自分の上司が人前であんな……いい加減、どうにかならないもんですかね」

右京「どうでしょう。キチOイゲージが溜まると、辛抱堪らず、たちまち狂った行動を起こしてしまう……僕の悪い癖」

亀山「その癖、悪すぎますよ。頑張って治しません?」

右京「癖というものは一概にして、易々と矯正できるものではありませんからねぇ」

亀山「そうは言いますけど……」

右京「こうして、高い位置から紅茶を注ぐ動作をすれば、キチOイゲージは解消されるわけですから、それでいいじゃありませんか」

亀山「でも、いつも紅茶セットを持ち歩くわけにはいかないでしょ? ほら、今回も手元になかったわけだし」

右京「今回はイレギュラーです。通常であれば、この時間にキチOイゲージが溜まることなど無いものですから」

亀山「だんだん、ゲージが溜まる間隔が狭まってる気がするんですけど……」

右京「その話はさておき、先を急ぎましょう。被害者の葬儀が始まる時間が迫っています。遺族の方から話を聞く絶好の機会ですから」

亀山「はぁ」

4: 2016/06/05(日) 20:12:24.682 ID:I/m8uwqh0.net
違和感がないんだよなぁ

5: 2016/06/05(日) 20:17:09.977 ID:wWdZTeKf0.net
~式場~

右京「この度は、まことにご愁傷様でした。謹んでお悔やみ申し上げます」

遺族「どうもご丁寧に……」

右京「ご心労、お察しします」

遺族「あの、それで今日はどういったご用件で……」

亀山「不躾で申し訳ないんですけど、被害者……ご主人の交友関係について、いくつかお伺いしたいことがありまして」

遺族「はい……あの、式が終わった後でよろしければ……あまり時間はとれませんけど」

右京「ご協力、感謝します」


亀山「話、聞けそうですね」

右京「ええ。僕達も式に参加しましょう」

亀山「はい」

右京「……」プルッ

6: 2016/06/05(日) 20:17:43.470 ID:45b5E/1Z0.net
右京さんはこんなこと言いそう

7: 2016/06/05(日) 20:17:47.099 ID:mRXTKk6/0.net
ワロタ

9: 2016/06/05(日) 20:23:01.218 ID:wWdZTeKf0.net
住職「南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経」

亀山「……」

右京「……」プルプル

亀山「……? あのー、右京さん? さっきから、かすかに震えてません? 俺の気のせいならそれでいいんですけど」

右京「……ええ。震えています」プルプル

亀山「ああ、やっぱり…………。ってなると……すごーく……嫌な予感がするんですけど……」

右京「……君のその『嫌な予感』……おそらく、当たっていると思いますよ」プルプル

亀山「じゃ、じゃあまさか……!」

右京「ゲージ、80%といったところでしょうか」プルプル

亀山「絶対だめですよっ。何考えてんですかっ。よりによって葬式で……アレやったらエライことになりますよ」

右京「ええ。ですからこうして、歯を食いしばり、我慢しています」プルプル

亀山「ど、ど、どうします? 一旦、外出ます?」

右京「いえ、もうすぐご焼香の順番が回ってきます。ここで退席したら、失礼に当たりますからねぇ」プルプル

亀山「いや、でも……立礼の焼香ですし……式場の視線が集中しちゃうんですよ。我慢できるんすか?」

右京「自信はありません。ですが、遺族の方から話を聞くためにも、ここは辛抱しましょう」プルプル

10: 2016/06/05(日) 20:28:29.264 ID:wWdZTeKf0.net
亀山「右京さん、順番が回ってきましたけど……、ホントに、大丈夫ですか?」

右京「ええ。行きますよ」プルプル

亀山「は、はい」


右京「……」プルプル

亀山「……」

右京「ィー……」プルプル

亀山「……?」

右京「イー……」プルプル

亀山「っ!」

右京「イーイー……!」プルプルプルプルプルプル

11: 2016/06/05(日) 20:28:58.804 ID:0Nej2SPI0.net
ワロタwwwwwwww

13: 2016/06/05(日) 20:34:34.544 ID:wWdZTeKf0.net
遺族「……?」

「なんだ?」「イー? イーってなんだ?」「どうしたんだ? あの人……」

ザワザワ

亀山「う、右京さん……!?」

右京「イー……! イー!」

右京「イーイー! イーイーイーイー! イーイーイーイーイーイー!!!!!!!!!!」

パチパチパチパチ!!!!

亀山「あー! やっぱりだめだったか!」

右京「イー!!!! イー!!! イー!!!」

住職「うわっ! な、なにをする!」

右京「イー!!!!!」

ポクポクポク チーン ポクポクポク チーン

住職「木魚としもくを奪われた……!」

亀山「右京さん!!!」

15: 2016/06/05(日) 20:40:33.025 ID:wWdZTeKf0.net
~刑事部・部長室~

内村「馬鹿者!!!」

中園「遺族の前で木魚を打ち鳴らし、挙句、参列者に向けて抹香を撒くなど……キチOイのやることだぞ!」

内村「警察官としてどうこう言う前に、人として終わっとる!」

右京「……」

ジョボボボボボボボ

内村「人が話している時に、何をしとるんだ! しまえ、それを!」

亀山「あ、これはですね。こうして紅茶を注いでないと、ゲージが溜まっちゃうもんで、仕方なく」

中園「ゲージ?」

亀山「あのー、キチOイゲージ。右京さんはそう呼んでるんですけど……そのゲージが満タンになっちゃうと――」

右京「キチOイになります」

亀山「はい、そういうことで……」

内村「ふざけるのもいい加減にしろ!!!」

ダンッ

右京「この度は、まことに申しわけありませんでした」

亀山「したっ!」

ジョボボボボボボ

中園「紅茶を床にこぼすな!!! とっとと出ていけ!!!」

17: 2016/06/05(日) 20:42:11.763 ID:Re5IEZ630.net
ワロタ

19: 2016/06/05(日) 20:47:55.105 ID:wWdZTeKf0.net
亀山「もの凄く、怒られちゃいましたね」

右京「怒られちゃいましたねぇ」

亀山「刑事部長なんて、怒りを通り越して呆れちゃってましたよ」

右京「ええ」

亀山「それでー、これからどうします?」

右京「遺族の方へ謝罪しに行きましょう」

亀山「ですね」

ジョボボボボボ

亀山「あ、もうカップいっぱいですね。中身捨ててきます。はい、替えのカップ」

右京「どうもありがとう」

20: 2016/06/05(日) 20:53:58.481 ID:wWdZTeKf0.net
~被害者宅~

遺族「帰ってください! 主人の葬儀を滅茶苦茶にした方に、話すことはありません!!! あんなの、酷い侮辱だわ!!!」

右京「おっしゃるとおりです。決して、あってはならないことでした。重ね重ね、お詫び申し上げます」

亀山「俺からも謝ります! すいませんでした!!!」

遺族「いくら謝られても、話すことはありませんから! もう顔も見たくない!!!」

亀山「あの、奥さん。そうおっしゃらずに、ほんのちょっとだけでも……」

遺族「帰ってください!!!! あんな風に歯をむき出しにして……! サルのおもちゃみたいに……………あら、そういえば……」

亀山「……? なんか、思い当たることでもあるんですか?」

遺族「え? あ、いえ……別に……」

右京「無礼を承知でお願いします。どうか、話していただけないでしょうか。どんな些細なことでもかまいません」

亀山「ご主人を殺害した犯人を特定するためなんです! お願いします!」

遺族「……昨日の刑事さんの行動を見て、思い出したんですけど……主人の友人に似たようなことをする人がいたんです」

右京「似たようなこと……と言うと、つまり」

遺族「歯をむき出しにして、眼を見開いて……サルのおもちゃみたいに、両手を叩く人が……」

亀山「右京さん……!」

右京「ええ。どうやら、僕の同類のようです」

21: 2016/06/05(日) 20:59:59.386 ID:wWdZTeKf0.net
~都内アパート~

ガチャ

キチOイゲージ保有者「……なんですか? あなたたち」

右京「警視庁、特命係の杉下です」

亀山「亀山です」

キチOイゲージ保有者「……刑事さん?」

右京「失礼ですがあなた……キチOイゲージの保有者ですね?」

キチOイゲージ保有者「……! な、何の話ですか? キチOイゲージなんて感じたことはありませんよ」

右京「その反応……やはり、キチOイゲージに覚えがありますか」

キチOイゲージ保有者「なっ……!」

右京「常人であれば『キチOイゲージ』が『感覚』であると分かるはずがありませんからねぇ」

右京「あなたは『キチOイゲージ』と聞き、それが実体のある物ではなく、感覚的なものであると瞬時に理解した……」

亀山「キチOイゲージ、保有してますね」

キチOイゲージ保有者「だ、だったら何なんだ」

右京「あなたに殺人の容疑がかけられています。お部屋の中を拝見させていただきますよ?」

キチOイゲージ保有者「なっ!」

亀山「はいこれ、令状ね。断れませんから。おい伊丹、いいぞ」

伊丹「うっせ、てめえが指図すんじゃね! はいどうも、失礼しますよー」

芹沢「失礼します」

キチOイゲージ保有者「ちょ、ちょっと!」

22: 2016/06/05(日) 21:04:04.446 ID:7pRal9sp0.net
まさかの展開

24: 2016/06/05(日) 21:06:55.468 ID:wWdZTeKf0.net
~キチOイゲージ保有者の部屋~

伊丹「こっちにはねえな。おい、そっちはどうだ」

芹沢「いや、ないっすね」

三浦「おいおい、なんだこりゃあ……! これじゃないのか!?」

伊丹「あったか!」

三浦「見てみろ、ほら」

芹沢「うわっ……血のついたシンバル……! 先輩っ」

伊丹「ああ、決まりだな」

右京「やはり、あなたが犯人でしたか」

キチOイゲージ保有者「……!」

亀山「このシンバルについた血痕が誰のものか……調べれば、すぐに分かりますよ」

キチOイゲージ保有者「そ、それは…………」

右京「これでもまだ、言い逃れをしますか?」

キチOイゲージ保有者「…………くそっ! くそぉ!!!」

ガクッ

キチOイゲージ保有者「頃すつもりはなかったんだ……! 頃すつもりは……!」

キチOイゲージ保有者「ただ、たまたまシンバルを持ってる時にゲージがたまって……!」

25: 2016/06/05(日) 21:08:37.089 ID:7pRal9sp0.net
凶器シンバルかよ

26: 2016/06/05(日) 21:11:29.225 ID:56xwuo2B0.net
亀山の独特の言い回しが再現されてるとこ見ると相当のファンだな

27: 2016/06/05(日) 21:12:39.215 ID:wWdZTeKf0.net
―――

被害者「いやぁ、久しぶりだなぁ! 相変わらず、ゲージに苦労してんのか?」

キチOイゲージ保有者「まあな。学生の頃からの癖はそう簡単に治せないさ。そういえば、ついにシンバル買ったよ。見るか? ほら」

被害者「おっ! とうとうやったか! お前がキチOイになってる時、サルのおもちゃみたいだって話してたもんな」

キチOイゲージ保有者「これを思いっきり鳴らすと、いくぶん気持ちが良いんだ」プルプル

被害者「へぇ」

キチOイゲージ保有者「……」プルプル

被害者「……ん? なんだよ。震えたりなんかして」

キチOイゲージ保有者「……い、イー」プルプル

被害者「……おい、どうしたんだ? まさか……ハハハ、冗談はよせよ」

キチOイゲージ保有者「イー……! イー!」

被害者「お、おい。なあ」

キチOイゲージ保有者「イー!!! イー!!!」

被害者「うわっ!!!」

キチOイゲージ保有者「イー!!!!!!!!!」

バァァァァァァァン

――――

29: 2016/06/05(日) 21:18:13.817 ID:wWdZTeKf0.net
右京「被害者の遺体を見た時から、気になっていました。頭部を左右から強打した、その凶器はいったい何なのか」

右京「やはり、シンバルだったんですねぇ」

キチOイゲージ保有者「なんで俺が怪しいと……?」

右京「遺体はリビングに仰向けで倒れていました。傷が残っていたのは前寄りのこめかみ……つまり、正面から殴られた可能性が高い」

右京「にもかかわらず、現場には争った形跡が一切残っていない……犯人は不法に侵入したのではなく、迎え入れられたのだろうと思いました」

亀山「被害者の奥さんから聞きましたよ。両手を叩くのが印象深い、古い友人がいたって」

キチOイゲージ保有者「……!」

右京「この地域では、シンバルは粗大ごみにあたります。回収日になるまではうかつに処分できないだろうと考え、こうして踏み切ったわけです」

キチOイゲージ保有者「ゲージが……」

伊丹「あん?」

キチOイゲージ保有者「ゲージが悪いんだ!!!」

31: 2016/06/05(日) 21:20:30.935 ID:abgNDT9oa.net
相棒への愛をひしひしと感じる

32: 2016/06/05(日) 21:25:51.077 ID:wWdZTeKf0.net
キチOイゲージ保有者「ゲージが都合の悪いときに溜まるから……! 俺は、俺はぁ!!!」

右京「ええ。キチOイゲージは往々にして、タイミング悪くMAXになる……よく理解できます」プルプルプル

伊丹「おい、お前理解できるか?」

芹沢「さあ……」

右京「ですが、そのゲージを含めて、あなた自身です。決して、人を殺める言い訳にしてはならない……」プルプルプル

キチOイゲージ保有者「う、うわああああああああああああっ!!!! 俺は頃す気はなかったんだぁ!!!!」

キチOイゲージ保有者「イー!!! イーイー!!!!!!!!!! イー!!!!!!!!!!!!!!」

パチパチパチパチ!!!

伊丹「おい」

芹沢「は、はい。ほら、立って」


亀山「なんだか、彼が可哀想だって思っちゃいます……あれじゃあまりに惨めだ」

右京「誰であろうと、その内に狂気を秘めています。そして、その『狂気』の扱いを間違えると、容易に人を殺める『凶器』となる……」プルプルプル

亀山「あ、右京さん。はい、ポット。カップもありますよ」

右京「大切な友人や家族を守るためにも、懸命に自制するのが、狂気を秘めた者の使命なのではないでしょうかねぇ」

ジョボボボボボボ

亀山「そっすね……」


キチOイゲージ保有者「イー!!!!! イー!!!!!!!!!!!!!!!!」


END

33: 2016/06/05(日) 21:26:28.454 ID:Qj/EV1qyr.net
面白かった

34: 2016/06/05(日) 21:37:37.709 ID:56xwuo2B0.net
え?終わり?
第二話は何時開始かな(^^)

引用元: 右京「僕としたことが……キチOイゲージが溜まってしまったようですねぇ」プルプル