1: 2011/05/21(土) 20:02:56.06 ID:07cR40c90
―阿笠博士邸―

阿笠「…それで、今度のみんなをその知り合いの別荘に連れていこうと思うんじゃが?」

コナン「あいつらも連休の予定はねぇみたいだし、いいんじゃねぇか」

灰原「そうね、あの子たちも喜ぶんじゃない」

阿笠「そうじゃの、じゃあ早速みんなに連休に龍豹館に行くことを伝えんとな」

灰原「変わった名前なのね…その別荘」

コナン「りゅうひょう館…まさかその屋敷、斜めになってねぇよな?」

阿笠「?たしかに古い建物らしいが、しっかりした作りだといっておったぞ」

コナン「はは…冗談だよ」

灰原(…推理バカ)

2: 2011/05/21(土) 20:08:30.32 ID:07cR40c90
―屋敷に向かう船の上―

元太「おい、あそこでイルカが泳いでるぞ!」

歩美「ホントだー!かわいー!」

光彦「あっ!見ました!?今、跳ねました!跳ねましたよ!」

阿笠「こらこら。はしゃぐのもいいが海に落っこちんようにな」

元太「でもコナンもツイてないよな。せっかくの旅行について来られないなんてよ」

歩美「しょうがないよ、突然熱出して倒れちゃったんだもん」

光彦「元太くんみたいに風邪を物ともしない頭脳の持ち主なら良かったんですけどね」

元太「どういう意味だ…それ」

3: 2011/05/21(土) 20:13:33.55 ID:07cR40c90
灰原「………」

阿笠「なにか元気がないのう、哀くん。そんなに新一が来れないのが残念なのか」

灰原「そう、残念だわ。せっかく風邪を引いたんだから、新しい解毒剤の実験ができたのに」

阿笠「おいおい」

灰原「…冗談よ」

5: 2011/05/21(土) 20:18:13.05 ID:07cR40c90
阿笠「それはそうと、渡(わたり)さん。屋敷のある島までどのくらい掛かるんじゃろうか」

さつき「そうですね…あと十数分くらいですかね」

歩美「それにしても、さつきお姉さんってすごいよね!」

元太「そうだよな。この船だってひとりで運転できるんだもんな」

さつき「使用人の仕事の合間に趣味で資格をとったんですけど、お客さまの送り迎えを頼まれるようになってしまって」

阿笠「向こうの島にはワシらの他には誰がおるんですかな」

さつき「旦那様のご家族とそのご友人が何名か、それと遅れてくる方が居らっしゃるみたいです」

歩美「見て見て!カモメさんが飛んでるよ」

光彦「違いますよ、歩美ちゃん。にゃあにゃあ鳴いてますからあれはウミネコです」

さつき「皆様、見えてきましたよ。あれが目的の島です」

灰原「そして…龍豹館…ね」

7: 2011/05/21(土) 20:20:42.45 ID:07cR40c90
―人物紹介―

灰原哀  小学一年生
小嶋元太 小学一年生
円谷光彦 小学一年生
吉田歩美 小学一年生
阿笠博士 マッドサイエンティスト

明智健吾  警視
金田一二三 小学三年生

三郎丸豊  DDS生徒

―以下犠牲者・容疑者候補―

恵比島朝貴 元学習塾経営者
恵比島有衣 長女・洋品店経営者
恵比島恒成 長男・大学生二年
恵比島京子 次女・家事手伝い
恵比島億也 次男・小学三年生

仁藤美奈 小学三年生

竹野典馬   有衣の友人 コック
小山内菜司美 有衣の友人 OL

渡さつき 使用人

10: 2011/05/21(土) 20:24:07.70 ID:07cR40c90
―龍豹館・南館―

歩美「うわー!ひろーい!」

元太「おい光彦、キックベースしようぜ!」

阿笠「これこれ、屋敷の中を走りまわってはいかん」

朝貴「ははは、元気がいいのは良いことだよ。それにしてもみんなよく来てくれたね」

光彦「おじさんが、この館のご主人なんですか」

阿笠「そうじゃよ。彼がこの館の主でわしの友人の恵比島朝貴(えびしま ともたか)さんじゃ」

元太「でもなんで、博士がこんなお金持ちと知り合いなんだよ?」

朝貴「若い頃、私は小さな英会話学校をしてたんだけど最初は生徒が全く居なくてね。それを解決してもらったんだよ」

11: 2011/05/21(土) 20:26:21.95 ID:07cR40c90
阿笠「ワシもその頃は、研究費用を稼ぐのに必氏でな。そこで、恵比島さんの噂を聞きつけて発明を売り込んだのじゃ」

灰原「自分の発明で無名の英会話学校が売れるようになれば宣伝効果が大きいってことね」

朝貴「最初は怪しいと思ったけど話を聞くうちに興味が出てね。その発明を買うことにしたんだ」

歩美「それってどんな発明だったの?」

阿笠「えぇっと…たしか…『アメリカ人と同じ脳波になるヘッドギア』じゃ!」

灰原(なにやら恐ろしい物作ってるのね…博士って)

朝貴「そのお陰でどんどん生徒が急増して、その利益で私は学習塾とかの分野にも経営を拡大していったのさ」

光彦「じゃあ、朝貴さんって社長さんなんですか?」

朝貴「いや今は、社長の椅子を部下に渡して気楽な隠居生活をしているよ」

元太「へー、なんかもったいねーな。せっかく大きくした会社なのに」

13: 2011/05/21(土) 20:29:07.95 ID:07cR40c90
さつき「皆様、そろそろお部屋にご案内しますよ」

光彦「あれっ、僕達が泊まるのはこの建物じゃないんですか?」

朝貴「この本館はお風呂と食堂がついてるけどお客様に泊まってもらうのは別の建物になるんだ」

さつき「龍豹館は四つの建物から出来ているんです。ここ南館と西にある豹館、東にある龍館、そして北館。

    みなさまのお部屋は豹館にあります」

歩美「その建物には歩美たちの他にもお客さんがいるの?」

さつき「はい、豹館にはお嬢様達とそのご友人がいらっしゃいます」

阿笠「そういえば、恵比島さんは四人子供いたはずじゃったな」

朝貴「理由あって五人になったんだよ。息子二人の娘三人だ」

灰原「龍館は息子たちの部屋ってことね。じゃあ北館には何があるの?」

朝貴「私の寝室だよ。妻が亡くなった今では少し広すぎるがね…」

14: 2011/05/21(土) 20:33:06.25 ID:07cR40c90
―龍豹館―

線は廊下で龍館、豹館、南館はそれぞれの広間に繋がっているが
北館はワンルームなのでその部屋につながる


  北
 / \
豹   龍
 \ /
  南

15: 2011/05/21(土) 20:36:18.34 ID:07cR40c90
―豹館・広間―
さつき「つきましたよ。ここが豹館です」

歩美「きれいなお部屋~」

光彦「僕らの泊まる部屋はどの部屋ですか?」

さつき「ここからは見えませんが、階段を上がった奥の二部屋です」

元太「早く、荷物置いて海に泳ぎに行こうぜ!」

京子「あら、お客様?」

歩美「お姉さん、だーれ?」

さつき「彼女は次女の恵比島京子様です」

16: 2011/05/21(土) 20:38:55.59 ID:07cR40c90
京子「よろしくね。あなた達は誰のお友達?」

灰原「博士が恵比島さんと知り合いで私たちはその連れなのよ」

元太「泣く子も黙る少年探偵団だぜ」

京子「えっと…『博士と少年探偵団にであう』っと」

歩美「なにを書いてるの?」

京子「備忘録って言う…簡単な日記みたいなものね。私忘れっぽいから」

光彦「携帯電話じゃだめなんですか?」

京子「私、機械音痴で携帯電話はメールと電話くらいしかわからないの…」

18: 2011/05/21(土) 20:42:10.84 ID:07cR40c90
灰原「今はこの館には他に誰かいるの?」

京子「ええ、妹とその友達が来ているわ。」

光彦「でも、恵比島さんには確か娘が3人いたはずですよね」

さつき「有衣お嬢様は今、龍館にいらっしゃると思いますよ」

二三「あれ~、なんか騒がしいけど」

美奈「誰かお客さん?」

京子「うん。紹介するね。博士と少年探偵団のみんなよ。父の知り合いなんですって」

阿笠「よろしくのう」

19: 2011/05/21(土) 20:43:21.06 ID:07cR40c90
美奈「私は仁藤美奈っていうの、よろしくね」

歩美「美奈さんは京子さんの妹さんなの?」

美奈「それは…」

光彦「でも、苗字が違いますよ」

京子「美奈ちゃんは、父の知り合いの子でご両親が行方不明になってから私たちと暮らしてるの。

   私が小学生の時から一緒だから妹みたいなものよ」

二三「ちょっと待って。どーしてわたしの名前を聞く前から美奈が京子さんの妹だと思ったわけ?苗字も違うのに」

灰原「…オーラかしら」

光彦「気品のようなものを感じましたからね。美奈さんには」

元太「オメー山ん中とか走りまわってそうな感じがしたからよー」

20: 2011/05/21(土) 20:45:56.39 ID:07cR40c90
二三「ガキンチョ共が…金田一二三さまを相手にいい度胸だな、おい」

光彦「金田一?金田一ってあの金田一耕助と同じ金田一ですか?」

元太「誰だよそのキンダイチュウって」

灰原「金田一耕助…昔、多くの事件を解決した名探偵よ。彼の活躍を描いた伝記はどの書店でも置いてあるわ」

二三「お爺ちゃんの事を知ってるなんて感心感心。なんなら少年探偵団のリーダーをやってやってもいいぜ」

阿笠「なんと!あの金田一耕助に孫がおったとはのう」

元太「でもすごかったのはジーちゃんなんだろ。オメーがすごいわけじゃねーじゃんよ」

二三「このオニギリ頭…」

22: 2011/05/21(土) 20:47:10.29 ID:07cR40c90
美奈「まあまあ、二三ちゃん落ち着いて。みんなはこれからどうするの?」

歩美「海に遊びにいくつもりなの」

美奈「じゃあ、わたしたちも一緒に遊ぼう!ね、二三ちゃん」

二三「わかったよ…ビーチバレーで勝負だ、オニギリヘッド!」

元太「おう!望むところだ!」

灰原「…仲よさそうで良かったわ」

24: 2011/05/21(土) 20:49:45.08 ID:07cR40c90
―南館・食堂―
元太「やったー!メシだメシ!」

光彦「もう、元太くんは。さっきまで遊び疲れてぐったりしてたのに」

歩美「元太くんらしいね」

灰原「でも、博士の活躍には驚いたわ。あんなに機敏な動きができるなんて」

阿笠「こうみえても昔はちょっとしたもんじゃったんじゃ」

二三「子供相手に『ナイアガラアタックじゃ!』とかは卑怯じゃない」

京子「へー、なかなか楽しんだみたいね」

歩美「楽しかったよー。京子さんも来たらよかったのに」

京子「行きたかったんだけど、私体弱いから…」

26: 2011/05/21(土) 20:50:55.85 ID:07cR40c90
阿笠「京子さんの部屋は一階じゃったな。それも身体のことに気を使ってのことかの?」

億也「…京子姉さんは少し前に階段から落ちて頭打ってから、そのトラウマで階段を登れなくなったんだよ」

元太「突然入ってきて、オメーは誰だよ」

京子「そっか、龍館に行ってないからまだ会ってなかったのね。弟の億也よ。ほら自己紹介」

億也「ふんっ、恵比島億也だ」

二三「なにあれ、感じわる~い」

京子「ちょっと、反抗期なのよ。難しい年頃ね」

27: 2011/05/21(土) 20:52:24.83 ID:07cR40c90
光彦「そうだ、京子さん。この館は恵比島さんが建てたものなんですか?」

京子「違うわ。父がこの島を買ったときに一緒についてきたのよ」

歩美「なにか不思議なお話とかはないの?」

元太「少年探偵団の血が騒ぐ様な話はよー」

京子「そうねぇ…前の持ち主は旧華族で禁欲家だったという話を聞いたことがあるけど…そのくらいね」

元太「なんだツマンネーの」

阿笠「おいおい、その言い方はないじゃろう」

灰原「そういえば、さつきさんの姿が見えないわね」

京子「彼女は今、最後のお客様を迎えに行ってるのよ」

28: 2011/05/21(土) 20:54:09.56 ID:07cR40c90
光彦「すごいですよね。御飯作って船で送り迎えして、この島の家事を全部一人でやるわけですから」

朝貴「彼女の働きにはとても助かっているよ」

元太「じゃあ、おかわりは自分で取りに行かねーといけねーのかよ。オレ、厨房にいってくるぞ」

光彦「ちょっと、元太くん!そっちは広間に行くドアですよ」

元太「へ?ってうわあ!?」

有衣「あら?ぶつかっちゃってゴメンね。でもそのお皿におかわり入れるなら食堂の奥よ」

元太「わーわー!抱き抱えなくても自分で行けるよ!」

有衣「ふふ、照れちゃって」

光彦(僕も向こうのドアに行くべきでした…)

阿笠(APTXか…本気で考える必要があるかもしれん…)

灰原「!?(なに?今の悪寒は!?)」

30: 2011/05/21(土) 20:55:00.15 ID:07cR40c90
京子「ちょっと姉さん、元太くん困ってるじゃない」

有衣「私には喜んでいたように見えたわよ」

恒成「姉貴は男なら見境なしだからな」

小山内「典馬もちょっと羨ましそうな顔しないの!」

竹野「なんだよ。そんな顔してねーだろ」

歩美「ねえこの人達はだれかな?」

灰原「多分、龍館に泊まってる人たちでしょうね」

31: 2011/05/21(土) 20:55:54.96 ID:07cR40c90
有衣「自己紹介がまだだったわね。私は恵比島家の長女、恵比島有衣よ」

竹野「俺はその友人でコックの竹野典馬だ。」

小山内「貧乏料理人の癖になにがコックよ…私は小山内菜司美。よろしくね」

恒成「そして俺がこの家の長男の恵比島恒成だ。よろしく!」

阿笠「それで、その隣に立っている彼は…?」

三郎丸「僕ですか?僕はIQ180で東大生の三郎丸豊です」

元太「東大生かよー、かっけー」

二三「あ!この前クイズ番組でひとりだけ予選落ちした人だー!」

三郎丸「げっ!なんでそのことを…」

光彦「あっさりメッキが剥がれましたね」

元太「かっこわりー」

33: 2011/05/21(土) 21:00:00.78 ID:07cR40c90
恒成「ははっ、子供相手にもいつも通りだな」

三郎丸「なんだよ。いつも俺がダメみたいに言うなよ…」

歩美「おもしろいお兄さんだねー」

阿笠「三郎丸くんは恒成くんのお友達なのかな」

恒成「ええ、大学の同級生なんです」

二三「じゃあ、恒成さんも東大生なんですね。すごーい」

恒成「そうだよ。俺に惚れたかい?」

有衣「…あなたも人のこと言えないじゃない」

竹野「まあまあ、早く座って飯食おうぜ。俺は腹がぺこぺこなんだ」

小山内「もう典馬ったら…」

34: 2011/05/21(土) 21:00:40.72 ID:07cR40c90
―南館・広間―
元太「いやー食ったくった。腹いっぱいだぜー」

歩美「元太くん、おかわりし過ぎだよ」

朝貴「ははは、いい食べっぷりで感心したよ。さて、そろそろ私は部屋で休もうかな」

阿笠「まだ最後の客人が来ておらんがもう休むんですか?」

朝貴「最近、病気を患ってしまいましてね。医者に早めに寝るように言われているんです。では」

歩美「おやすみなさーい」

35: 2011/05/21(土) 21:02:24.99 ID:07cR40c90
京子「本当にお父様、つらそうね…」

恒成「こりゃあ、親父のやつ長くはねぇだろうな」

有衣「しっかりお父様のご機嫌とっておかないといつ遺書を書き換えられるかわからないわよ」

恒成「どういう意味だよ」

有衣「あなた、株に手を出して借金してるでしょ。遺産の分け前が減ると困るんじゃなくて?」

恒成「姉貴だって、店の経営が芳しくないんだろ。それにアイツがいるから次の遺書では余計減らされるんじゃねーか」

美奈「………」

億也「二人とも客がいんのにそんな話すんなよ」

恒成「…すまん」

二三(ふーん、結構ドロドロした感じなのね)

36: 2011/05/21(土) 21:04:53.17 ID:07cR40c90
三郎丸「そんなことより、東大生のこの僕にはなにか聞きたいこととかはないのかな?」

京子「コーヒーでも沸かしてきましょうか?」

阿笠「おお、スマンのう」

三郎丸「普通に無視するなよ…」

恒成「じゃあ、俺らはそろそろ龍館にもどることにするよ」

竹野「そうだな。行くぞ菜司美」

小山内「ちょっと待ってよー」

三郎丸「おい、俺を置いていくな」

億也「…俺も戻る」

元太「最後まで無愛想だったなあいつ」

光彦「友達も呼んでいませんからね。もしかすると…」

歩美「かわいそう…」

阿笠「コレ、変な推測するもんじゃないぞ」

37: 2011/05/21(土) 21:06:55.97 ID:07cR40c90
さつき「ただいま戻りましたー」

歩美「さつきお姉さんが帰ってきたみたいだよ」

光彦「ということは、最後のお客さんも到着したってことですね」

明智「夜分遅くなってすみません。仕事がたて込んでしまいまして…明智健吾と申します。よろしく…ん?」

二三「あー!明智さん!」

明智「たしか君は…彼の従姉妹の二三くんだったね」

美奈「二三ちゃんの知り合い?」

二三「うん、ちょっとね」

阿笠「それで明智さんは誰の招待で来られたんですかな」

明智「私は学生時代、恵比島さんの経営している学習塾で講師をしていたんですよ。まあたった3年間でしたが受験の神様と呼ばれましてね
 
   その時に表彰を受けて以来、恵比島さんとは懇意にさせてもらってるんですよ」


灰原(でも今の自己紹介に受験の神様の下りは必要だったのかしら)

38: 2011/05/21(土) 21:08:56.62 ID:07cR40c90
明智「それであなた方は?」

阿笠「ワシも恵比島さんの知り合いでしてな。彼らは近所に住んでる子供たちじゃ」

光彦「泣く子も黙る少年探偵団です」

明智「…なるほど。そういえば、恵比島さんが居らっしゃいませんね」

二三「恵比島さんはさっき休むって部屋に戻っちゃったよ。」

明智「そうでしたか…では、挨拶は明日にしましょう。さつきさん食事をいただけませんか?」

さつき「はい。食堂はこちらです」

光彦「なにか凄そうな人でしたね…」

歩美「周りがキラキラしてたねー」

元太「でも、博士のこと変な目で見てたよな」

阿笠「彼とは会ったのことはないはずじゃが…」

39: 2011/05/21(土) 21:10:18.46 ID:07cR40c90
灰原「…それは多分、博士が私たちと一緒にいることが問題なんじゃないかしら」

歩美「どういうこと?」

灰原「怪しげな中年男性が、小さい子供を連れ回しているのよ。怪しむ人もいるんじゃない」

元太「ひでーな」

光彦「博士はそんな人じゃありませんよ!」

灰原「…そうかしら?この間なんて、私を男子トイレに連れ込んで…」

光彦「!?どういうことですか!」

40: 2011/05/21(土) 21:13:40.24 ID:07cR40c90
阿笠「おいおい、哀くん…」

灰原「…それで博士は『ちょっと…我慢してくれ』とか『早く帰りたいなら…自分で…』って…」

二三「………」

美奈「………」

歩美「本当なの哀ちゃん!」

灰原「…ふふ、冗談よ。本気にしないで。博士はそんな人じゃないわ。ちょっと変わった所はあるけどね」

阿笠「哀くん…ワシはみんなの視線で殺されると思ったわい」

41: 2011/05/21(土) 21:17:35.45 ID:07cR40c90
―豹館・広間―

二三「ねぇ美奈。私をここに呼んだ理由ってなに?」

美奈「それはね…この紙の事なんだけど…」

二三「えっと…

  『その昔、国に君主の左右両腕・龍と豹に例えられし臣あり。
   
   その位を極めし両名に習いて我も研鑽をつむを重ねるも未だ大業ならず。
   
   故に我が夢を次代に託し、そして、不時に備え我が宝を蔵に秘す』

なにこれ?宝って?」

   
美奈「この島に来る前に恵比島さんにもらったのよ。普通に渡してもいいんだけど、やっぱり自分で…って」

二三「それで、その紙に書かれてることを調べるために私を呼んだのね」

美奈「二三ちゃんって、有名な探偵さんがお爺ちゃんなんでしょ。もしかしたらわかるのかなって思って…」

42: 2011/05/21(土) 21:20:07.45 ID:07cR40c90
元太「おい!なんだよその古そうな紙は!」

歩美「宝って書いてあるよ!」

光彦「まさか埋蔵金ですか!」

二三「こっちは大人の会話をしてんだから向こうに行ってな、ガキンチョたち!」

光彦「二三さんだって二つしか変わらないじゃないですか」

元太「そんな胸してるくせに何が大人だよ」

灰原(ぐっ!!)

二三「なんだとー!言わせておけば好き勝手な…」

43: 2011/05/21(土) 21:22:35.97 ID:07cR40c90
美奈「…でも、みんな少年探偵団なんだよね?」

歩美「泣く子も黙る少年探偵団だよ!」

灰原「実際に何度か事件も解決したことがあるから実力は確かよ」

美奈「だったら、今回の捜し物も依頼してもいい?ね、二三ちゃん」

二三「まあ、この私がいればどっちにしろ解決しちゃうけどね」

元太「おう、少年探偵団にまかせとけ!」

灰原「この紙のこと、誰か大人に聞いてもわからなかったの?」

美奈「うん、家のみんなに聞いたけど誰も分からないって…」

元太「江戸時代の埋蔵金とかじゃねーのか?」

光彦「使われている字体も新しいですし、紙の古さから言ってもせいぜい4,50年くらい前じゃないですかね」

灰原「この館の前の持ち主が残した物かもしれないわね」

44: 2011/05/21(土) 21:25:16.30 ID:07cR40c90
二三「そうだ!明智さん、この紙に書いてあることが何かわかりますか?」

明智「龍と豹…ああ、たしかこの館を作る際のコンセプトになった話ですね」

歩美「だから龍豹館っていうんだー」

明智「…なるほど、此処に書かれている宝の在り処は…」

光彦「やっぱり、冒険するためのアイテムを持ってきて正解でしたね!」

歩美「私、おおきい懐中電灯を持ってきたよー」

元太「少年探偵団の活躍をみせてやろーぜ」

三人「「「おー」」」

明智「……わかりません。彼らの活躍に期待するしかありませんね」

二三「明智さんでもわからないんだ…」

灰原「……」

45: 2011/05/21(土) 21:28:05.66 ID:07cR40c90
光彦「まず、どこを探しましょうか。「宝は蔵にある」と書かれてますが」

元太「蔵…それってめし食った建物の横にあったやつじゃねえか?」

二三「じゃあ、まずはそこからね。よーし、二三探偵団しゅっぱーつ!」

光彦「なんで二三さんが仕切るんですか!」

阿笠「待ちなさい。こんな夜に子どもだけでは危険じゃないか?」

明智「そうですね。それなら私が…いや、やめておきましょう」

元太「博士が付いてこいよ」

阿笠「しょうがないのう。よっこいしょ…ぐわあ!」

歩美「大丈夫!?博士!」

阿笠「アイタタ…腰がたたん…」

灰原「…昼間のビーチバレーであんなにはしゃぐからよ」

46: 2011/05/21(土) 21:30:57.60 ID:07cR40c90
光彦「でも、博士がダメとなると…」

歩美「京子お姉さんは寝ちゃったし、さつきさんは忙しそうだもんね…」

小山内「それなら、私が付いて行こうか?」

光彦「あなたは確か…向こうの館に泊まってるお姉さんですね」

小山内「ええ、向こうのみんなが酒盛りしちゃってるから…私お酒に弱いし」

明智「酒盛りですか…そういえば南館の地下にワインセラーがありましたね」

小山内「高そうなお酒なのにガブガブ飲んじゃってるのよ。飲まされないうちに逃げてきたの」

歩美「明智さんは前にもこの館に来たことがあったのー?」

明智「だいぶ前に一度だけね」

灰原「じゃあ、付き添いをお願いしてもいいかしら」

小山内「まかせておいて」

阿笠「さて、わしらはチェスの続きをやるかのう…ふっ、明智さん、その一手…待ったじゃ!」

明智「だめですよ博士。待ったは5回までです」

47: 2011/05/21(土) 21:32:30.11 ID:07cR40c90
―南館側の蔵―

元太「おい、なんか見つかったか?」

歩美「見つかんなーい」

二三「お宝っぽいものはないわね」

小山内「やっぱり大きな箱とかを動かさないと見つからないものなのかしら」

灰原「それはないと思うわ。子供に向けて出されたものだから力が必要な場所にはないはずよ」

光彦「でも、蔵にあるって……あー!」

歩美「どうしたの?光彦くん」

元太「お宝をみつけたのか!」

48: 2011/05/21(土) 21:33:52.55 ID:07cR40c90
光彦「違います。でも場所はわかりました!美奈さん、北館の方も蔵があるんじゃないですか?」

美奈「あるよ。少し古いから埃だらけだけど」

光彦「そこです!そこにお宝があるんです!」

小山内「ちょっと待って。どういう事?」

光彦「いいですか?この紙にはこう書かれています『左右両腕・龍と豹』と」

元太「それがどうしたんだよ」

光彦「いいですか元太くん。この龍と豹が龍館と豹館を表しているとすればどうです?」

元太「ん?どういうことだ?」

二三「そっか、龍が左で豹が右ならこの南館から見たら逆になるんだ」

光彦「そうです。つまり、左右が正しく見える場所にお宝があるんですよ!」

49: 2011/05/21(土) 21:37:55.52 ID:07cR40c90
―北館側の蔵―

灰原「ここがその蔵ね…」

二三「いかにもって感じだな、これは」

光彦「でも、こういう所に来ると思い出しますよね」

歩美「歩美たちが最初に犯人を捕まえた事件のことよね」

元太「俺が勇者だったよな」

光彦「僕が魔法使いで歩美ちゃんが女戦士でしたよね」

灰原「じゃあ、江戸川くんは?」

歩美「コナン君は村人だったよ」

光彦「でも灰原さんは村人よりもっと…魔道士とかがいいですよ!」

灰原「ありがと。でも、私は村人の方が似合ってるわ」

二三「じゃあ私は美少女戦士ね!」

元太「なにいってんだよ…」

光彦「もう3年生なんですから」

歩美「落ち着いたほうがいいよ…」

50: 2011/05/21(土) 21:39:18.24 ID:07cR40c90
美奈「!?今そこで何か動かなかった?」

三人「「「!?」」」

二三(村人の後ろに隠れるのかよ…)

歩美「ネズミ…かな?」

光彦「鼠は常に食べ物を食べてないと餓氏してしまうって話ですから…こんなトコロには…」

歩美「じゃあ…もしかして…」

小山内「って、億也くんじゃない!?」

元太「なんだよ、おどかすなよ。なにやってんだこんなとこで」

億也「…なんだっていいだろ…」

光彦「あっ、待って下さい!」

歩美「走っていっちゃった…」

二三「なんなんだあいつは」

灰原「……」

51: 2011/05/21(土) 21:44:11.80 ID:07cR40c90
―豹館・広間―

阿笠「チェックじゃ!」

明智「…では、こちらに振って…クイーンをいただきます」

阿笠「明智さん…待ったはあと何回残っておったかの」

明智「一生の頼み…冥土の土産に…次は何を叶えて差し上げればいいんでしょうか」

さつき「失礼します」

阿笠「…おや?さつきさん、その水差しは?」

さつき「旦那様のお部屋に持っていくんです。いつもこれくらいの時間に喉が渇いて目が覚めるそうですので」

明智「恵比島さんは、起きていらっしゃるのですね?」

さつき「はい、いつも私が部屋に入るときは起きておられますよ」

明智「私も付いて行って構いませんか?まだ挨拶を済ませていませんので」

さつき「構いませんが…」

明智「では、阿笠博士。ゆっくり次の一手を考えておいてくださいね」

阿笠「ぐぬぬぬ…」


52: 2011/05/21(土) 21:46:12.47 ID:Ohv8z1f+0
明智さん、数年前の性能とはいえコンピュータにチェスで勝つほどの指し手だからなぁ

53: 2011/05/21(土) 21:47:22.50 ID:07cR40c90
―北館側の蔵―

元太「おい、なんか見つかったか?」

歩美「見つかんなーい」

光彦「そんなバカな…美奈さん、他に蔵はないんですか?」

美奈「ないと思うけど…この紙…恵比島さんのいたずらなのかな…」

二三「前から気になってたんだけどさ。美奈ってなんで恵比島さんのことお父さんって呼ばないの?」

美奈「それは、恵比島さんが自分のことはお父さんって呼ぶなって…」

元太「ひでーな、それ。家族として認めてねーのかよ」

歩美「そんなひどい人には見えなかったのにね…」

美奈「そんなことないよ!幼稚園に上がる前からお世話になってるし、家の人達も優しいから…」

灰原「……」

54: 2011/05/21(土) 21:49:34.07 ID:07cR40c90
歩美「そういえば菜司美お姉さんは、この島に来たのは初めてなの?」

小山内「そうよ、私も典馬も。有衣ちゃんとは知り合いだけど他の人とは初めてあったわ」

元太「もしかして、コックと恋人同士なのか?」

光彦「そういえば、竹野さんのことを下の名前で呼んでますよね」

小山内「ぜ、全然そんなんじゃないよ!あいつとはただの幼馴染みです!」

二三「じゃあ、菜司美さんに今恋人がいるの?」

小山内「それは、いないけど…」

灰原(この反応…彼女と同じタイプね)

二三(美雪姉ちゃんのポジションだな。うん)

小山内「と、とにかく。もうこんな時間だから帰りましょう!」

55: 2011/05/21(土) 21:51:35.90 ID:07cR40c90
―豹館・広間―

歩美「ただいまー」

阿笠「おお、おかえり。それでどうじゃった、捜し物は」

元太「全然駄目だぜ」

光彦「探す場所は正しいはずなんですが…」

明智「そうですか、それは残念ですね」

美奈「みんなごめんね…」

二三「大丈夫!明日こそ見付け出してみせるよ、お祖父様の名にかけて!」

元太「なんだかなー」

光彦「二三さんはなんの意見も出してませんでしたからね」

二三「まだ本気は出してなかったんだよ!」

56: 2011/05/21(土) 21:53:17.29 ID:07cR40c90
歩美「そうだ!向こうの建物にはおっきなお風呂があったよね。これから入ろうよ!」

灰原「宝探しでみんな疲れているし、いいんじゃない」

二三「そうだね。私も汗かいたし」

光彦「お風呂ですか。いいですね」

明智「では、私たちはチェスの続きを」

阿笠「スマンが、ワシも行かせてもらおうか。腰の調子がなんとも」

小山内「私が御相手しますよ。明智さん」

明智「では、お願いしましょう」

57: 2011/05/21(土) 21:55:06.79 ID:07cR40c90
―南館・風呂・男湯―
阿笠「ふぅ。生き返るのう」

光彦「えぇ、気持ちいいですね…」

元太「でも、ひっろい風呂だよなー」

光彦(大きいと言っても個人のお風呂だからあわよくば…っと思っていたんですが、

   まさか男湯と女湯に分かれるほど大きいとは…)

元太「見ろよ光彦!泳いでも大丈夫だぜ!」

光彦「静かにしてください。それに、元太くんまだ体を洗ってないでしょう」

元太「だってよー、オメーらが石鹸使いきったのがわりーんだろ」

光彦「だったら、とってきたらいいじゃないですか」

元太「ちぇ、しょうがねーなー。貰ってくりゃいいんだろ」

58: 2011/05/21(土) 21:56:50.66 ID:07cR40c90
阿笠(まったく、静かにしてくれんと困るわい)

光彦(となりの音が聞こえませんからね)

歩美『哀ちゃーん、このお風呂すっごく大きいよー』

灰原『そんな走りまわると危ないわよ』

二三『まったく、これだから子供は困るよ』

美奈『泳いでる二三ちゃんが言うのはどうなのかな…』

阿笠(ぐふふふ…)

光彦(えへへへ…)

元太『おーい、石鹸貸してくれよー』

四人『『『『キャーッ!』』』』

阿笠・光彦「!?」

59: 2011/05/21(土) 21:58:44.06 ID:07cR40c90
―豹館・広間―
明智「どうでしたか、お風呂の方は」

阿笠「ああ、いい湯じゃったよ」

元太「たいへんだったけどな…」

灰原「自業自得よ」

二三「五体満足だったことを幸運に思うんだな」

小山内「?よくわからないけど、阿笠さんも戻ってきたことだし私は部屋に戻るわね」


60: 2011/05/21(土) 22:00:10.73 ID:07cR40c90
二三「じゃあ、私たちはそろそろ寝よっと」

光彦「僕らも寝ましょうか」

明智「では、博士。続きをやりましょうか」

阿笠「さっきの続きからじゃと…むむむむ…」

灰原「…こっちの筋をとめればいいんじゃない」

阿笠「おお!スマンな哀くん」

明智「…もし良かったら、指しませんか?えっと…」

灰原「灰原哀よ。一局だけね」

明智「よろしくお願いします、灰原さん」

61: 2011/05/21(土) 22:03:23.00 ID:07cR40c90

―南館・食堂―
灰原「ふあ~あ」

歩美「大丈夫、哀ちゃん?」

灰原(結局、明け方まで対局してしまったわ…)

光彦「いやー朝から豪華な食事ですねー」

元太「うめー!やっぱ飯はこーでなくっちゃな。」

三郎丸「…騒ぐなよ、ガキども…頭に響く…」

恒成「なんだよ、情けねえな。お前ほとんど飲んでないだろ」

有衣「あんた達がおかしいのよ…あれだけ飲んでおいて…」

62: 2011/05/21(土) 22:05:18.08 ID:07cR40c90
竹野「あんなにおいしい酒飲んで気を失うなんて勿体無いよ~。菜司美も飲めばよかったのに」

小山内「倒れてる人がいるのに、恐ろしくて飲めないわよ。どれだけ飲まされるかわかったもんじゃないわ」

竹野「でも恒成はいい飲みっぷりだったよね」

恒成「竹野さんの方こそなかなかのものでしたよ」

小山内「出会ってすぐこれだけ意気投合できるなんて…お酒って怖いわね」

明智「そうだ、恵比島さんはまだいらっしゃらないのですか」

京子「おかしいわね…いつもは早起きな方なのに」

さつき「私、見てきます」

64: 2011/05/21(土) 22:08:02.37 ID:07cR40c90
億也「……」

元太「なんだよあいつ。今朝からむっつりしちゃてよお」

光彦「それに、昨日の晩の怪しい行動…」

二三「もしかして、あいつもお宝を狙ってるとか」

美奈「億也くん…」

灰原「……」

さつき「み、みなさん!大変です!」

明智「!?どうされました!」

さつき「旦那様が…旦那様が!!」

65: 2011/05/21(土) 22:10:59.82 ID:07cR40c90
―北館―

小山内「これは…」

竹野「心臓を一突きだな…」

京子「お父様?お父様…お父様!!」

有衣「京子!落ち着きなさい!」

美奈「恵比島さん…」

二三「美奈…」

灰原(どうして彼がいないのに事件が起きるのよ……)

元太「おい…どうなってんだよ…」

光彦「僕に言われてもわかりませんよ!」

歩美「ねえ哀ちゃん……」

灰原「…………」

67: 2011/05/21(土) 22:11:41.71 ID:07cR40c90
明智「みなさん、部屋から出てください。決して部屋に入らないように」

恒成「おい、なんだよ。お前になんの権限があるんだよ!」

明智「此処から先は…捜査一課の管轄です」

竹野「その手帳…警官だったのかよ!」

明智「さつきさん、この島は携帯電話が使えますよね?」

さつき「は、はい。そのためのアンテナが付けられていますから」

68: 2011/05/21(土) 22:14:49.48 ID:07cR40c90
明智「ありがとう……もしもし、私ですが」

剣持『これは…明智警視!たしか休暇中だったはずでは…』

明智「ええ、急な仕事が入りましてね。場所は私の日程表に書いてありますから至急警官を送っていただきたい」

剣持『了解しました。しかし警視、事件があると真っ先にここに掛けてくれるとは』

明智「南の島とはいえ、管轄は警視庁ですから当然でしょう」

剣持『いえ、そのことではなく私の携帯にですね…』

明智「では、よろしく頼みますよ、剣持警部。……では、現場検証に移ります。阿笠博士、手伝ってもらえますか?」

阿笠「ええ、ワシでよければ…」

明智「さつきさんは、彼らを…そうですね。食堂に集めておいてください」

さつき「わ、わかりました。それと…その包丁…たぶん厨房で使っていたものです」

明智「ほんとうですか?」

さつき「はい、包丁が一本…昨日から見つからなかったので…」

69: 2011/05/21(土) 22:19:15.71 ID:07cR40c90
―南館・食堂―
歩美「恵比島さん…助からないのかな」

光彦「胸に包丁が刺さってましたから…おそらくは」

美奈「恵比島さん…」

二三「美奈、安心して。明智さんは優秀な警視さんだからすぐに犯人を捕まえてくれるよ」

元太「なんだよケーシって、あいつは刑事だろ?」

光彦「違いますよ元太くん。警視っていうのは警察官の階級です。たしか警部の一つ上でしたか」

歩美「じゃあ、目暮警部より偉いの?」

光彦「そうなりますね。あの若さですから相当優秀な方なんですね」

70: 2011/05/21(土) 22:21:52.91 ID:07cR40c90
―北館―

明智「氏因は心臓を刺されたことによる失血氏、凶器は刺さっている包丁ですね」

灰原「掛け布団の上から刺してるから血はほとんど出なかったみたいね」

明智「ということは返り血を浴びている可能性は…どうして彼女はここにいるんですか?」

阿笠「それは…その…」

灰原「私、博士の助手なの。博士って少し忘れっぽいところもあるから」

阿笠「あ、ああ…そうじゃそうじゃ、そうじゃった。彼女にはいつも助けられてるんじゃ」

灰原「だから…お手伝いしても…いい?」

明智「……あまり子供に見せるものではないのですが、現場を荒すような子では無いようですしね」

灰原(彼の代わりになれるかはわからないけど…あの子たちの為にも…ね)

72: 2011/05/21(土) 22:24:50.46 ID:07cR40c90
阿笠「でも、なんでワシは現場に残っても良かったんじゃ?」

明智「布団の血の渇き具合から見て、この事件は発生からかなりの時間が経っていることがわかります」

灰原「…それで、明け方までアリバイが確認できた私と博士は犯人じゃないって事になるのね」

明智「そういうことです。よくわかりましたね」

灰原「うん。わたしサスペンスドラマとかよく見るからそうかなって思って」

明智「…なるほど。見たところ、氏体周辺から分かることはこのくらいですかね」

73: 2011/05/21(土) 22:26:06.20 ID:07cR40c90
阿笠「でも、部屋の中に変わったところは見当たらないが…」

灰原(マホガニーの机にマントルピース…彼が見たら喜びそうな現場ね)

阿笠「この写真立ての写真に写ってる外国人は誰じゃ?」

明智「彼は外国人講師ですよ。私も度々みかんを投げつけられました」

阿笠「どんな職場なんじゃ…」

灰原「ドアの鍵は開いてたけど、窓の鍵は全部締まってるみたいよ」

明智「窓の鍵ですか…では、簡単な検氏をしましょう。阿笠博士、手伝ってください」

阿笠「専門ではないんじゃが…」

灰原(こっちを見ても、さすがに手伝えないわよ)

74: 2011/05/21(土) 22:30:00.16 ID:07cR40c90
―南館・食堂―

阿笠「氏後硬直の具合や氏斑の浮き具合からみて、恵比島さんは氏後10時間は経っているようじゃ」

明智「そして私とさつきさんが彼を最後に見たのが九時前ですからその間に行われたと考えられます」

光彦「氏亡推定時刻っていうやつですね」

明智「ではみなさん、その間…つまり昨日の午後九時から十一時までなにをされていましたか?」

有衣「…私は、龍館の広間で彼らとお酒を飲んでいたわ」

竹野「晩飯が終わってから明け方までずっと飲んでたからな」

恒成「俺も一緒に飲んでたからアリバイはあるぜ」

三郎丸「…俺も最初は飲んでたが…途中から記憶がない…気づいた朝になってた」

恒成「お前はすぐに倒れたから、ベッドに運んだんだよ」

竹野「でもこいつも、部屋からは出てこなかったからアリバイは成立するな」

75: 2011/05/21(土) 22:31:40.15 ID:07cR40c90
億也「俺は…外に出ててその後すぐに部屋に戻った…と思う」

恒成「館に戻って来て俺らの酒瓶見るとラッパ飲みしやがったからな。その後俺が部屋に運んだんだよ」

明智「広間で酒盛りをしている間、誰か北館に向かう人は見ませんでしたか?」

有衣「記憶にないわ…」

恒成「俺らの居た場所からドアは見えるが誰も通らなかったはずだぜ」

明智「…なるほど」

二三「わたしたちは菜司美さんと宝探しをしてたんだよね」

小山内「うん、外の蔵で宝探しをしていたから…その後、明智さんとチェスをして」

二三「その間に私たちはお風呂に入って上がったときは十一時過ぎだったかな」

小山内「それで彼女たちが帰ってきた時に私も龍館に戻ったのよ」

阿笠「わしらにもアリバイが成立じゃな」

76: 2011/05/21(土) 22:33:25.97 ID:07cR40c90
さつき「私は明智さんと別れたあとずっと南館で家事をしていました」

京子「私は…部屋で寝ていました」

竹野「じゃあアリバイはないのか」

阿笠「いやいや、ふたりとも恵比島さんの部屋にはいってないぞ」

灰原「その二時間、明智警視がずっと豹館の広間でチェスをやっていたもの」

明智「そして私は誰も北館に向かう人を見ていない…」

有衣「でもそれだと…」

明智「そう、すべての人にアリバイが成立してしまう…」

小山内「でも、この中の誰かが犯人なんですよね…」

阿笠「だから、警察が到着するまでこの島から逃がすわけにはいかんのじゃ」

77: 2011/05/21(土) 22:34:42.31 ID:07cR40c90
三郎丸「くそぉ!この中の誰かが殺人者なんて…こんな恐ろしいところにいられるか!俺は部屋に戻るぞ!」

恒成「…俺も部屋に戻るぜ」

有衣「ちょっと、ふたりとも!」

京子「私も…部屋で休ませてもらいます」

さつき「…私もお付き添いします」

京子「いいの…ひとりにさせて…」

さつき「お嬢様…」

有衣「そうよね…京子が一番父に懐いていたものね…」

美奈「恵比島さん…」

歩美「美奈お姉ちゃん、かわいそう…」

元太「……」

光彦「……」

灰原「……」

78: 2011/05/21(土) 22:37:01.66 ID:07cR40c90
二三「…ねえ、私たちは外に出て遊ばない?」

光彦「何言ってるんですか、こんな時に!」

二三「だって、外で遊ぶには絶好の天気だよ」

元太「…そうだな。みんなで鬼ごっこしようぜ!」

二三「ね、美奈?」

美奈「…うん」

灰原「私はパス。やることがあるから」

二三(かわいくねー娘だな)

灰原「でも、ありがと」

二三「…なんのことかな?私はただ太陽を浴びたかっただけだからね」

元太「なんだよ。オメーも来るのかよ」

億也「…わりーかよ」
 
歩美「いいじゃない、元太くん。大勢で遊ぶほうが楽しいよ」

元太「しょうがねーな。じゃあ行ってくっぞ」

灰原「行ってらっしゃい」

79: 2011/05/21(土) 22:39:02.40 ID:07cR40c90
阿笠「でも、いいのか。犯人がいるかも知れないのに外に行かせて」

明智「あの凶器を使っているところを見ると連続殺人ではなさそうですし」

灰原「それに、第一の被害者の地位を考えると本命である可能性が高いしね」

阿笠「そういうもんかのう」

有衣「そうだ。みんなで携帯の番号交換しとかない?なにかあったときに連絡とれるようにさ」

明智「そうですね。」

竹野「やべー、俺の赤外線ついてねーんだわ」

小山内「もう、私があとでみんなの分送ってあげるわよ」

灰原「そうだ…電話!博士、私先に部屋に戻ってるわね」

博士「ちょっと哀くん!え?ああ、確かこの先の方に…いや横じゃったかな?」

80: 2011/05/21(土) 22:40:28.89 ID:07cR40c90
―豹館・阿笠の部屋―

阿笠「どうしたんじゃ、いきなり部屋から飛び出して」

灰原「工藤くんに電話してるのよ。さすがにあの部屋で掛けるのは難しそうだったから」

阿笠「それで新一はなんて言ってるんじゃ?」

灰原「それがなかなか出て……あ、工藤くん?私だけど」

コナン『おう…どうした…バカンスは楽しんでるのか…』

灰原「苦しそうね…こっちもそれどころじゃないわ…殺人事件が起きたの」

コナン『事件…?それであいつらはどうしてんだよ…』

灰原「金田一って子と一緒に外で遊んでるわ」

コナン『金田一…?そこに金田一がいるのか…?』

82: 2011/05/21(土) 22:41:50.39 ID:07cR40c90
灰原「もしかして知り合いなの?」

コナン『ああ…前にキッドの事件の時にな…あいつがいるなら…心配はなさそうだ…』

灰原「でもあなたの言ってる人と違うかもしれないわ。そんな優秀には見えなかったもの」

コナン『見た目はそうだが…ひらめきは相当なもんだぜ…』

灰原「そういうものかしら…でも、祖父の金田一耕助も外見はパッとしなかったっていうし」

コナン『ちょっとまて…あいつって…金田一耕助の孫なのか…?』

灰原「そう言ってたわよ。金田一って苗字も珍しいし…嘘じゃないと思うけど」

コナン『そうかあ…金田一耕助の孫かあ…』

83: 2011/05/21(土) 22:44:53.57 ID:07cR40c90
灰原「…それで事件の話なんだけど」

コナン『…おう…そうだった…それでどんな事件なん…』

蘭『コナンくーん、おかゆ作ったわよー』

コナン『やべー…蘭だ…そろそろ切るぞ…』

灰原「ちょっと工藤くん!」

コナン『あいつらのこと…頼んだからな…』

灰原「…ええ、任せておいて…………切れたわ」

阿笠「新一もつらそうだったからのう…おや?」

明智「阿笠博士、少しよろしいでしょうか」

84: 2011/05/21(土) 22:46:53.35 ID:07cR40c90
―龍館・広間―
阿笠「やはり、全員にアリバイがあるのがポイントじゃないか?」

明智「そう…そこが問題です」

灰原「龍館と豹館を通らずに北館に行く方法はないの?」

明智「まず龍館、豹館、南館にはそれぞれ外と中庭への出入口があるんですが北館には無いんです」

阿笠「窓も閉まっておったし外から北館には入れんのか」

明智「それに、廊下の窓ははめ頃しになってますから必然的にどちらかを通る必要があるんですよ」

灰原「だったら、建物自体に仕掛けがあるのかも?」

明智「この龍館の構造ですが、一階に広間と部屋が三部屋、二階には四部屋あります」

阿笠「豹館と一緒じゃな」

明智「一階は恒成くんと億也くん、それに三郎丸くんの部屋ですね」

灰原「じゃあ、二階の部屋には竹野さんと小山内さんが泊まっているのね」

85: 2011/05/21(土) 22:48:59.15 ID:07cR40c90

明智「ええ、この階段を上がって手前の部屋に小山内さんが、そしてここが竹野さんの部屋です」

灰原「?この部屋、ドアがあいてる…あの机の上に何かあるよ」

阿笠「ちょっと哀くん、勝手に部屋に入るのは…明智さんまで」

明智「これは…手帳ですかね」

灰原「中を読んでみると…竹野さんと恒成さんは初めて顔を合わせたわけじゃないみたいね」

明智「なるほど…他にめぼしいものは…調理器具くらいですか」

竹野「おいお前ら!俺の部屋で何やってんだ!」

阿笠「えっと…それは…」

灰原「ゴメンなさい。私が遊んでたボールをどこかに無くしちゃったから一緒に探してもらっていたの」

明智「…どうやら、ここでは無いようですね。灰原さん、もう一度外を探しましょうか」

灰原「うん」

竹野「ったく、警官のくせに殺人事件よりガキのおもちゃ探しかよ」

87: 2011/05/21(土) 23:00:11.78 ID:07cR40c90
―南館・食堂―

灰原「さっきの反応…竹野さんはなにか隠してるみたいだね」

明智「……話はある程度みえてきましたが……おや?電話ですか……はい、私ですが」

剣持『こちら剣持です。そちらに派遣する警官の件ですが、どうやら天気が崩れてきてるようでして……』

明智「到着は遅れると……」

剣持『スミマセン。できるだけ急がせますが、しばらくは我慢してください』

明智「……わかりました。では、頼みましたよ」

阿笠「到着が遅れるんですか」

明智「ええ、それに向こうの天気が悪いとなると……」

88: 2011/05/21(土) 23:03:44.64 ID:07cR40c90
灰原「この島の天気も変わっちゃうかもね」

有衣「じゃあ、私外の子供たちを呼んできましょうか?」

小山内「私も行きます。この島広いからどこにいるかわからないしね」

阿笠「お願いできますか」

さつき「私は念の為に船のロープを確認してきます。昼食は作っておきましたので後で召し上がってください」

灰原「結局、私たちだけになっちゃったね、この食堂」

阿笠「結構みんな好き勝手しとるから」

明智「念の為に現場の鍵は掛けておきましたから問題はないと思いますが」

89: 2011/05/21(土) 23:05:50.01 ID:07cR40c90

―南館・食堂・30分後―
三郎丸「あれ?なんだよ三人しかいないのか」

阿笠「みんな出払ってしまっていてな」

三郎丸「ふーん、それで捜査は進んでんのか?」

明智「ええ、順調に進んでいると言っていいでしょう。あとは警察の到着を待つだけです」

三郎丸「なんだよ、せっかく俺も協力してやろうと思ったのに。これ持ってるしさ」

明智「これは……DDS手帳ですか」

灰原「ということは……三郎丸さんは探偵なの」

三郎丸「バレてしまっては仕方ない……なにを隠そうこの三郎丸、あの団守彦の一番弟子なのだ」

阿笠(探偵なのにあんなセリフ残して、いの一番に出て行ったのかい)

明智「…………」

三郎丸「なんだよその目は…」

明智「…どうやらこの手帳…偽物ではないみたいですね」

三郎丸「ったりまえだろ!」

90: 2011/05/21(土) 23:08:58.47 ID:07cR40c90
有衣「みんな、帰ってきたよ」

阿笠「おや、雨が降るまえに帰ってこれたようじゃな」

光彦「遠くのほうでゴロゴロ鳴っていましたから危ないところでしたよ」

元太「お腹ぺこぺこだぜ」

歩美「元太くんったら。どうして、哀ちゃんは一緒に来なかったのー?楽しかったよー」

灰原「ちょっとね……そういえばさつきさん、ご飯を作ってくれているみたいよ」

元太「よし、光彦!早速とってこようぜ」

光彦「待ってくださいよ。元太くん」

歩美「みんなも分も取ってくるねー」

91: 2011/05/21(土) 23:11:13.73 ID:07cR40c90
有衣「菜司美はまだ戻ってきてないの?」

阿笠「そういえばまだ見とらんのう」

有衣「まったく、しっかり者のようでおっちょこちょいな所があるからあの子は。ちょっと探しに行ってくるね」

二三「ふーん、意外と面倒見がいい人なんだね」

歩美「みんなーごはんだよー」

光彦「美味しそうですよ」

元太「でもよーエビフライがひとり二つだからちょっと足りねーよ」

光彦「まだ厨房にエビフライのあまりがあったじゃないですか」

92: 2011/05/21(土) 23:14:12.22 ID:07cR40c90
元太「あれはまだ来てない人の分だからな。きっとお腹空いてるだろうしよ」

二三「……良かったら、私の食べる?あんまりお腹空いてないしさ。ほら右のやつ」

元太「いいのか!じゃあいただきまーす!」

二三「あー!それ左のエビフライだろ、いいって言ったのは右のやつだ!」

元太「なんだよ、腹減ってねーんだろ?それにオレから見て右のとったんだよ」

二三「うう、身振りのいい方のエビフライは自分で食べようと思ってたのに」

灰原「…………なるほどね」

93: 2011/05/21(土) 23:16:23.35 ID:07cR40c90
―南館・食堂・さらに50分後―

小山内「ただいま。みんなもう帰っていたのね」

歩美「あれ?有衣お姉さんとは会わなかったのー?」

光彦「僕達を送ってくれたあとに、あなたを探しに出たんですよ」

小山内「えっ、そうなの。会ってないけど……あっ有衣から電話だ……はい……うん、もう帰ってるよ……ごめんね……」

阿笠「最初から電話をしておくべきじゃったな」

さつき「今戻りました。もう雨が降り出しそうです」

明智「そうですか。ご苦労さまでした」

有衣「ただいま。もう、菜司美ってばどこにも見つからないんだもの」

小山内「ごめん、ごめん」

有衣「そういえば、まだ食堂に来てない人がいるみたいね」

小山内「じゃあ、電話してみよっか」

95: 2011/05/21(土) 23:19:41.77 ID:07cR40c90
有衣「そうね…………………………ダメ、京子は電話に出てこないわ」

小山内「…………典馬の携帯は電源が入ってないみたい」

三郎丸「……恒成のもそうだな」

光彦「すごく嫌な予感がするんですが……」

二三「こういう時っていつも……」

明智「とにかく、彼らを探しに行きましょう。雨が降っていますから館の中にいるはずです」

97: 2011/05/21(土) 23:27:05.62 ID:07cR40c90
―龍館・恒成の部屋―
阿笠「これは……」

有衣「恒成!」

明智「胸を刺されてますね…声をあげる間も無かったようです」


灰原「窓があいてるよ!雨が降り込んじゃってる」

阿笠「現場が荒れるのはいかんから、閉めておかんと…なんじゃ!」

明智「窓の外に倒れているのは…竹野さんですね」

小山内「そんな……典馬!」

さつき『キャーーーッ!』

灰原「今の悲鳴は……」

明智「行ってみましょう」

98: 2011/05/21(土) 23:29:27.32 ID:07cR40c90

―龍館・竹野の部屋―

さつき「お嬢様ーー!」

阿笠「首吊り…じゃと…」

明智「梁にロープを掛けて……残念ですが」

灰原「ねえ、この机の上にある紙って…」

明智「……『お兄様たちを頃した』……遺書とも受け取れますね……」

灰原「そばに落ちてる血のついた包丁……」

明智「おそらく、下の二人を頃した際の凶器でしょう」

さつき「そんなことより、早くお嬢様を下ろしてあげてください!」

明智「そうですね、阿笠博士手伝ってください」

阿笠「ああ…………っと、それにしても、服に血がべったりついておる。やっぱり犯人は…」

明智「そう単純な話ではないようです……彼女の首を見てください」

2: 2011/05/22(日) 00:13:18.78 ID:anqmXD8I0
阿笠「首?ロープの跡がぐるっと残っておるだけじゃが」

灰原「いい、博士。普通、首を吊った場合、ロープの跡は体重がかかる前面だけに残るのよ」

明智「それに、前面の跡も二重になってます」

阿笠「じゃあ、彼女は……」

明智「殺されたと考えるのが自然でしょう」

阿笠「この返り血は、犯人が偽装のために付けたということか」

明智「ええ、その可能性が高い」

灰原「そうだ!さつきさん、このロープに見覚えはある?」

さつき「それは、私が龍館の屋根の補修をしていた時に使っていたものです」

明智「普段はどこに置いてあるものなのですか?」

さつき「えっと…まだ補修が終わってなかったのでこの建物の外側に置いたままでした」

明智「なるほど、犯人はそれを見つけて凶行に及んだということか…」

3: 2011/05/22(日) 00:15:19.71 ID:anqmXD8I0
阿笠「ちょっと待つのじゃ。彼女が殺されたとすると机の上の遺書はどうなる」

さつき「お嬢様の字のようですけど…」

灰原「それは彼女の持っていたメモ帳をなぞったんじゃないかな」

明智「確かに彼女は頻繁にメモを取っていたようですから。それにこの部屋にそのメモ帳は無い」

阿笠「じゃあ、メモ帳に『お兄様たちを頃した』って書いてあったということは、もしや……」

明智「彼女は『お兄様たちを頃した犯人は…』とメモを残していたのかもしれません」

4: 2011/05/22(日) 00:17:25.57 ID:anqmXD8I0
―龍館・外側―
明智「竹野さんの氏因は背中の刺し傷でしょう」

灰原「恒成さんの部屋の窓の側で倒れているのはどうしてかしら」

明智「きっと、竹野さんが恒成さんの遺体を見ている隙に背後から刺したのではないでしょうか」

阿笠「つまり、恒成さんのあとに竹野さんが殺されんたんじゃな」

灰原「あれ、こんなところに携帯電話が落ちてるよ」

明智「電源は……つきませんね」

5: 2011/05/22(日) 00:18:52.78 ID:anqmXD8I0
―南館・食堂―
光彦「さらに三人も殺されるなんて…」

歩美「怖いね…」

元太「でもよー。竹野って人は外で氏んでたんだろ?俺達が遊んでる時はそんなの見なかったぜ」

二三「行く時と帰りにそばを通ったけど見なかったよね」

灰原「じゃあ、竹野さんが殺されたのは貴方達が戻ってきた後ってことになるわね」

明智「みなさん、この携帯電話に見覚えはありませんか?」

三郎丸「それって確か恒成のやつじゃねーか?」

有衣「そうね、あいつの携帯電話よ」

灰原「…恒成さんの携帯電話がどうして外に落ちていたのかしら?」

明智「……そういう事ですか」

6: 2011/05/22(日) 00:22:22.55 ID:anqmXD8I0
―豹館・阿笠の部屋―

阿笠「それで、犯人はわかったのか。哀くん」

灰原「ある程度見当はついてるけど……わからないことが多すぎるわ」

阿笠「なんじゃそれは」

灰原「特に理解出来ないことが二つ。ひとつは動機…」

阿笠「動機?そりゃ恵比島さんの遺産じゃないのか?」

灰原「それなら竹野さんを頃す理由はないはずよ」

阿笠「恒成さんを頃した場面を目撃されたのかもしれんじゃないか」

灰原「竹野さんは部屋の中を覗くように背後から刺されて氏んでいた。つまり、待ち伏せされて殺されたのよ」

阿笠「頃すつもりが最初からあったってことじゃな」

7: 2011/05/22(日) 00:24:42.62 ID:anqmXD8I0
灰原「もうひとつは、なぜ京子さんを犯人に仕立てたのか」

阿笠「京子さんは二人を頃すこところを目撃したから殺されたんじゃろ?」

灰原「だとしても、京子さんが遺産目当てで人を頃したってことにするなら犯人が自頃するのはおかしいじゃない」

阿笠「良心の呵責ってこともあるじゃろうから一概にはいえんじゃろ」

灰原「それに、犯人役をさせるならもっとふさわしい人がいるのに…」

阿笠「そんなに悩んで居るのなら、新一に電話してみたらどうじゃ」

灰原「ええ、そのつもり………あ、工藤くん……」

8: 2011/05/22(日) 00:26:43.87 ID:anqmXD8I0

コナン『どうした……ハックション!……灰原……ッグション!』

灰原「……大丈夫?」

コナン『おう……バアックジョン!……ズズズッ……』

灰原「……お大事に」

コナン『……おう……』

阿笠「完全に悪化しとるな……」

灰原「彼が頼りにならないとなると……あら?彼からメール」

阿笠「新一はなんといっとるんじゃ」

灰原「『事件で困ってんならこいつらに電話しろ』って2つ番号をおくってきてるわ」

阿笠「誰じゃこいつらとは?」

9: 2011/05/22(日) 00:29:52.95 ID:anqmXD8I0
灰原「名前は書いてないみたいだけど…まずはこっちからね…………もしもし、探偵さんよね?」

服部『おう、西の高校生探偵ゆうたらこの服部平次やけど…姉ちゃんだれや?』

灰原「私は灰原哀。江戸川くんの紹介で電話したんだけど……」

服部『なんや、ちっさい姉ちゃんかい。それで、俺になんのようがあるんや?』

灰原「今、龍豹館というところで事件に巻き込まれてるから話を聞いてもらおうと思って」

服部『りゅうひょう館?それって斜めに建ってるわけやないやろな』

灰原(彼も推理バカなのね…)

10: 2011/05/22(日) 00:31:30.83 ID:anqmXD8I0
―豹館・二三の部屋―
二三「あ、はじめ!大変なんだよ」

はじめ『一体どうしたんだよ。南の島で遊んでるんじゃないのか?』

二三「それどころじゃないの!殺人事件が起きたんだから」

はじめ『殺人事件?』

11: 2011/05/22(日) 00:32:36.57 ID:anqmXD8I0
―豹館・阿笠の部屋―

服部『…なるほど、わかったで事件の概要が』

灰原「ホントに?」

服部『ああ、ちょっと納得できん部分もあるが間違い無いやろ』

阿笠「それで、犯人は誰なんじゃ?」

服部『結論からゆうで。京子ちゅう姉ちゃんを頃したんは…』

和葉『ちょっと平次!さっきから誰と電話しとるん!?』

12: 2011/05/22(日) 00:35:42.62 ID:anqmXD8I0
服部『なんや、和葉いま大事なとこやからじゃますんなや!』

和葉『大事なとこって、食事の途中になんで長電話せなあかんの!』

服部『食事ゆうてもラーメンやないか、そんな目くじらたてることないやろ!』

和葉『麺が汁吸うてもうデロデロやん!』

服部『……俺はその方が好みなんじゃ!』

和葉『なんなん?そのいいかた。そんなに電話相手のお姉さんが大事なん?』

服部『俺は電話するときお前に許可を取らなアカン義務でもあんのか!?』

和葉『平次がうまいラーメン食いたいって、連れてきたったのに……もっとうまいラーメンにしたるわ!』

服部『待て和葉!どうすんねん俺の携帯を!待てぇ!汁につけたら……(ツーツーツー)』

13: 2011/05/22(日) 00:38:26.59 ID:anqmXD8I0
灰原「…………」

阿笠「…………次の番号はに掛けてみようか…」

灰原「……次の番号は……もしもし、あなたも探偵なのよね」

白馬『…ええ、周りからはそう呼ばれていますが……あなたは?』

灰原「私は灰原哀。江戸川くんの紹介で電話したんだけど……」

白馬『あの少年の…まだ名乗っていなかったね、僕の名前は白馬探。それで要件はなにかな?』

灰原「今、龍豹館というところで事件に巻き込まれてるから話を聞いてもらおうと思って」

白馬『りゅうひょう館?もしやその館…』

灰原「…斜めには、なってないわよ」

15: 2011/05/22(日) 00:41:02.10 ID:anqmXD8I0
―豹館・明智の部屋―
明智「事件の概要はわかりましたが…犯人は誰なのか…おや?電話だ」

警視総監『明智君かね』

明智「はい、白馬警視総監」

警視総監『剣持くんから聞いたよ。なにやら事件に巻き込まれてるんだって?』

明智「ええ、とんだ休暇になりそうです」

警視総監『そのことなんだが、よかったら私の息子の意見を聞いてみないか』

明智「探くんのですか、彼はたしかイギリスにいるはずじゃ…」

警視総監『それがちょうど今家に帰ってるんだよ。おーい探!探!』

明智(白馬探…高校生にして幾多の事件を解決している名探偵と聞いてますが…)

警視総監『だめだ、探のやつ部屋で誰かと電話してるみたいで出てこない』

明智「それなら仕方ありませんね」

警視総監『すまないな。では、健闘を祈ってるぞ』

明智「…お気遣いありがとうございます」

16: 2011/05/22(日) 00:46:09.23 ID:anqmXD8I0
―豹館・二三の部屋―
はじめ『なるほどな、なんとなくわかったぜ』

二三「ホントか!?」

はじめ『ああ、気になるところはあるが…この程度の事件なら明智に任せときゃ問題ねーよ』

二三「明智さん悩んでたみたいだけど…」

はじめ『ふーん、じゃあ明智のやつに伝えておいてくれよ』

二三「なんて?」

はじめ『もっと単純に考えろってな』

17: 2011/05/22(日) 00:46:54.66 ID:anqmXD8I0
―豹館・阿笠の部屋―

白馬『なるほど……わかりました』

灰原「ホント?」

白馬『ええ、概要はね。それにしても、DDSの生徒もいるとは…』

阿笠「三郎丸さんのことじゃな」

白馬『あの有名なQクラスが来ていれば、もっと早期に事件が解決していたかもしれないな』

阿笠「そんなことより、彼らはなぜ殺されたんじゃ」

白馬『たぶん、金欲と復讐が主でしょう』

灰原「どういうこと?」

白馬『いいかい、まずすべての始まりである第一の事件のことについて……』

18: 2011/05/22(日) 00:48:33.70 ID:anqmXD8I0
ワトソン『ギャース!ギャース!』

白馬『僕としたことが…ワトソンの餌をあげ忘れていたようだ』

灰原「ワトソンってその鳴き声の主のこと?」

白馬『そう、僕と英国で暮らしていたせいか血を好むようになってしまって…早く行かないとばあやが食べられてしまう』

阿笠「ちょっと待つんじゃまだ話は終わっとらんぞ」

白馬『…そちらには、あの明智警視がいるんだよね?』

灰原「ええ、いるけど…」

白馬『ホームズは彼に譲ろう…今回の僕はヒントを与えるだけのしがないワトソン役』

阿笠「それでヒントとはなんじゃ」

白馬『「困難を分割せよ」ってことかな』

19: 2011/05/22(日) 00:50:00.11 ID:anqmXD8I0

阿笠「…どういう意味じゃ?」

灰原「…………

― …まずすべての始まりである第一の事件……―

―……ええ、順調に進んでいると言っていいでしょう……―

―……あの凶器を使っているところを見ると連続殺人ではなさそうですし……―

―……おそらく、下の二人を頃した際の凶器でしょう……―

―……私が龍館の屋根の補修をしていた時に使っていたものです……―

―……結論からゆうで。京子ちゅう姉ちゃんを頃したんは……―

   ……!?わかったわ、ありがとう」

白馬『ふっ、お役に立てて光栄だよ』

阿笠「結局良くわからないヒントじゃったな」

灰原「そんなことないわよ」

阿笠「その顔…もしかして哀くん!」

灰原「謎は……すべて解けたわ」 

20: 2011/05/22(日) 00:53:20.90 ID:anqmXD8I0
―南館・食堂―

有衣「どうしたのこんなところに私たちを集めて」

億也「…………」

さつき「もしかして、お嬢様たちを頃した犯人がわかったんですか?」

小山内「それで推理ショーってわけなの?」

阿笠「ああ、そういう事じゃ」

明智「……聞かせてもらいましょうか」

歩美「大丈夫かな博士」

光彦「大丈夫ですよ、博士もたまに事件を解決してますから」

阿笠「それじゃあ、哀くん。その変声機でよろしく頼むぞ」

21: 2011/05/22(日) 00:55:19.48 ID:anqmXD8I0
灰原「こっちの時計もそうだけど、博士の発明って頻繁に故障するわよね」

阿笠「繊細な機械にはメンテナンスが不可欠なのじゃ。それに今回持ってこれて正解じゃったろ」

灰原「どうして博士は推理の内容を覚える気が全くないの」

阿笠「老人のワシが覚えられるわけなかろう」

灰原「よくそんなので発明家ができるわね」

阿笠「とにかくじゃ。ワシの演技力を見せてやろうじゃないか!」

三郎丸「…それで、結局犯人は誰なんだよ」

灰原『あーあー……まあ、そんなに先を焦らずに、順番に聞いてくだされ』

明智「第一の殺人…恵比島さんの事件からですね

22: 2011/05/22(日) 00:57:23.72 ID:anqmXD8I0
灰原『恵比島さんが殺されたの昨日の夜、寝ているところを襲われて命を絶たれたんじゃ』

有衣「でも、その時のアリバイは全員持ってたのよね」

三郎丸「犯人は外部犯じゃないのか?」

明智「あの部屋の窓は施錠されていましたし、廊下も外からの侵入は不可能…内部犯なのは確実です」

灰原『その通り。では、犯人はなぜあの時間に犯行に及んだのじゃろうか』

光彦「それは…自分のアリバイが確保できる時間帯だったんじゃないですか」

灰原『いや、犯人はさつきさんに罪を着せるためにあの時間に頃したんじゃ』

さつき「…私にですか」

明智「さつきさんは普段からあの時間に一人で恵比島さんの寝室を訪れることにしているんでしたよね」

三郎丸「寝室に行ったのがそいつひとりって事になれば自然と罪を着せられるってことか」

明智「しかし、昨晩はイレギュラーが存在した……私が彼女について寝室に行ってしまったことです」

26: 2011/05/22(日) 00:59:37.16 ID:anqmXD8I0
灰原『じゃから、すべての人にアリバイが成立するという状況になってしまったんじゃ』

さつき「それで、結局誰が…?」

灰原『アリバイの成立には最低二人で協力することが必要になる』

明智「犯行に及ぶものと、そのアリバイを証言し共犯者の不在を悟られない様にするものの二人がね」

灰原『ではそれが可能だったのは誰と誰か』

三郎丸「まさかそれって…」

明智「恒成さんと竹野さんの二人です。龍館で酒盛りをしていたという彼らなら犯行が可能です」

さつき「そんな…」

27: 2011/05/22(日) 01:01:45.03 ID:anqmXD8I0
小山内「ふたりとも被害者なのよ!」

有衣「それにわたしだって一緒に飲んでたのよ」

二三「有衣さんって酔いつぶれて記憶がなくなってたんだよね」

有衣「…それは…そうだけど」

灰原『彼らは有衣さんと一緒に飲んでいたことにすることで強固なアリバイを手に入れることにしたんじゃ』

小山内「でもあの二人はここに来て初めて会ったはずなのに共犯なんてできないわ」

明智「共犯を疑われないための演技でしょう。竹野さんの手帳には恒成さんとの繋がりを示す書き込みもありましたから」

億也「待てよ…だったらあの二人はだれに殺されたんだよ」

灰原『では、次に今日の昼に起きた事件に移ろうか』

明智「三人が殺された順番ですが…最初に恒成さんが部屋で殺され、

   次にその氏体を見た竹野さん、最後に京子さんが殺害されたと考えられます」

28: 2011/05/22(日) 01:06:16.83 ID:anqmXD8I0
灰原『犯行時刻じゃが子供たちが竹野さんの氏体を見ていないことから彼らの帰った時以降と考えられるじゃろ』

光彦「つまり、その時にアリバイのない人が犯人ってことですね」

さつき「……」

有衣「……」

小山内「……」

明智「まず、恒成さんを襲った犯人はその後に竹野さんを恒成さんの部屋の窓付近に呼び出しました」

灰原『そして、部屋を覗き込んで驚いている隙に背後から刺し頃すわけじゃ』

三郎丸「でも、それだけじゃ。誰が犯人かわからないじゃないか」

明智「そこで注目すべきは竹野さんの遺体の近くに落ちていた恒成さんの携帯電話です」

灰原『これは竹野さんを呼び出すとき使った携帯電話を犯人が落としたと考えられるじゃろう』

明智「では、犯人はなぜわざわざ恒成さんの携帯電話を使ったのでしょうか」

29: 2011/05/22(日) 01:08:28.34 ID:anqmXD8I0
三郎丸「それは、相手の警戒心を解く必要があったからじゃないのか」

明智「恒成さんが正面から殺されている点を鑑みるに彼らはあまり警戒していなかったと考えられます」

灰原『そもそも、殺人犯は自分たちなわけじゃから、怯える必要はない』

光彦「だったら、どうして恒成さんの携帯電話を使ったんですか」

灰原『それは犯人は竹野さんの連絡先を知らなかったからじゃ』

明智「私たちは一度連絡先の交換をしています。竹野さんはその時に参加していますから知らない人は自然と限られる…」

有衣「アリバイがなくって…竹野の連絡先を知らなかったひとって…」

明智「その条件に合致する人物はただひとり…第四の被害者である京子さんだけです」

億也「…姉さんが!」

灰原『動機は恐らく恵比島さんを頃したことに対する復讐』

有衣「たしかに、京子は父のことを慕っていたけど」

明智「彼女は竹野さんの部屋で手帳を発見し、恒成さんとの関係を知り犯人であることを理解したのでしょう」

阿笠「そうか!だから、竹野さんにとって大事なモノなのに無造作に机の上に置いてあったんじゃな」

灰原「博士!」

阿笠「すまんすまん……」

30: 2011/05/22(日) 01:12:22.52 ID:anqmXD8I0
明智「そして彼女は犯行後、メモ帳に自分のしたことを書き残した」

さつき「じゃあ、お嬢様のそばに置いてあった遺書は…」

明智「そのままの意味です。『お兄様たちを頃した』…そのことを忘れないためにね」

灰原『では、その京子さんを頃し自殺に見せかけたのは一体誰なのじゃろうか』

明智「……そう…それが最後の砦……」

灰原(…?)

明智「おそらくその犯人は竹野さんを頃している場面を目撃し、近くにおいてあったロープを拾い京子さんを頃した」

灰原『そのとき、京子さんはメモを書いている最中だったのかもしれんな』

明智「その後に、遺体を竹野さんの部屋に運び自殺を偽装したわけですが…まだ、犯人を特定するには情報が不足してる…」

灰原『それは、京子さんのある特殊な事情が…』

歩美「ねえ哀ちゃん、博士の後ろでなにしてるの?」

灰原『げっ…』

明智「特殊な事情が…『げっ』?」

光彦「だめですよ灰原さん。博士の邪魔しちゃ」

元太「ほら、こっちに来いよ」

31: 2011/05/22(日) 01:14:27.62 ID:anqmXD8I0
灰原「…じゃあ任せたわよ博士」

阿笠「ま…まつんじゃ哀くん。ワシには…」

明智「阿笠博士、それで京子さんの特殊な事情とはいったい?」

阿笠「そ、それは…」

二三「…もしかして、それってトラウマで階段が登れないって話じゃないかな」

明智「階段が…登れない」

二三「うん、京子さん少し前に階段から落ちちゃってそれがトラウマになっちゃったって…ね?」

億也「…そうだけど」

明智「なるほど…そういう事でしたか…」

阿笠「ふっふ、どうやらわかったようじゃな」

明智「ええ…謎はすべて解けました」

歩美「うわー周りがキラキラし始めたよー」

灰原(格好良くメガネを外す必要はあったのかしら)

阿笠「じゃったら、あとはお任せしましょう」

32: 2011/05/22(日) 01:20:52.35 ID:anqmXD8I0
明智「承知しました。京子さんは階段が登れなかった…だとするとなぜ二階の竹野さんの部屋で彼女は首を吊っていたのでしょう」

三郎丸「そりゃ、犯人が運んだんだから当然じゃないか。犯人は階段を登れるだろうしな」

灰原「でも、京子さんを犯人に偽装したいなら二階は選ばないはずだよね?」

光彦「本人が行ったわけじゃないことが明らかにわかりますからね」

億也「じゃあなんで、姉さんを二階に運んだんよ」

明智「それは犯人が彼女のトラウマを知らなかったからです。ですよね…小山内菜司美さん?」

小山内「!?」

灰原「アリバイがない三人のうち、その事実を知らない可能性があるのは外部から来た菜司美さんだけだもの」

小山内「…でもそれだけで私を犯人だと言い切るのは根拠が弱すぎないかしら」

明智「もちろんそれだけではありません。なぜわざわざ犯人は二階の部屋を選んだのでしょうか」

三郎丸「そりゃ一階の部屋が全部埋まってたからだろ」

灰原「でもそれなら恒成さんの部屋を使えばよかったんじゃない。彼は氏んでいるんだから」

光彦「けど、偽装してる最中に一階に泊まってる人が帰ってきたら…」

灰原「そう…もしかしたら気づかれてしまうかもしれないわ」

34: 2011/05/22(日) 01:26:05.12 ID:anqmXD8I0
明智「だから、犯人は二階の部屋を使ったんです。氏人と自分の部屋しかない二階をね」

小山内「……」

明智「もっとも、この島に鑑識が到着したなら、もっと多くの証拠が出揃うでしょうが…」

阿笠「どうなんじゃ?」

有衣「菜司美……」

小山内「……彼女が典馬を頃してるの見て…気づいたら近くのロープで首を締めてたわ…」

明智「では、認めるのですね?」

小山内「……認めます…」

阿笠「彼女の氏体を偽装したのも竹野くんのためじゃな」

小山内「典馬とは家族ぐるみの付き合いがあったから…彼が犯罪者だって知ったらみんな悲しむだろうと思うって」

灰原「自分で犯罪を告白していた京子さんの手帳をわざわざ隠したのもそのためね」

小山内「だってその手帳には…二人が恵比島さんを頃したって書いてあったんだもの」

36: 2011/05/22(日) 01:35:03.23 ID:anqmXD8I0

―南館・広間―
歩美「まさか、菜司美お姉さんが犯人だったなんてね…」

二三「昨日、一緒に宝探ししてたときはそんな感じじゃなかったのに」

光彦「仕方ありませんよ…あの時はまだ殺意は持っていなかったわけですから」

美奈「菜司美お姉ちゃん……」

元太「でも、結局宝がどこにあるかわからなかったなー」

光彦「北館の蔵にもありませんでしたからね…」

灰原「あら?それならわかったわよ」

歩美「ほんと?」

元太「どこだよ、どこにあったんだ?」

灰原「まだ確認してないけど…多分ね」

光彦「やっぱり北館の方の蔵が怪しいですよね?」

灰原「逆よ。怪しいのは南館の方」

億也「…なんでだよ

37: 2011/05/22(日) 01:46:02.20 ID:anqmXD8I0
光彦「左右の理屈から行くと北館の方のはずですよ」

灰原「いい、円谷くん。あなたから見て私の右手は右左どっちにある?」

光彦「それは…当然、左側ですけど」

美奈「そっか、君主の目線で左右を決めてるからこの文を書いた人からすると逆になるんだ…」

歩美「お雛様の左大臣と右大臣と一緒だね」

光彦「でも、最初に調べたときは何もなかったじゃないですか」

灰原「それは…」

阿笠「わかったぞ!そのお宝の隠された場所はワインセラーじゃ!」

二三「どういうこと?」

阿笠「ふっふっふ…この『不時に備え』の不時とは予想しなかった時…つまり、まさかの時のことじゃ」

元太「それがどうしたんだよ」

阿笠「まだわからんのか…ま『さか』の時のためのモノを『蔵』に隠す…つまり酒蔵のことを指していたのじゃ」

二三「ダ…ダジャレかよ」

光彦「本当にワインセラーで合ってるんですか?灰原さん」

灰原「…まあ、行ってみればわかるんじゃない?」

38: 2011/05/22(日) 01:53:38.50 ID:anqmXD8I0
―ワインセラー―

元太「おい、なんか見つかったか?」

歩美「見つかんなーい」

光彦「…!?ちょっとみんなこっちに来て下さい!」

美奈「どうしたの?」

光彦「見てください。この壁の切れ込みを」

二三「これって、もしかして隠し部屋があるってこと?」

灰原「そこにドアがあるなら…仕掛けは多分、この辺りに…」

39: 2011/05/22(日) 01:56:05.12 ID:anqmXD8I0
―ワインセラー・隠し部屋―
美奈「こんな部屋があったなんて…」

阿笠「やっぱりワシの推理が当たっておったな」

元太「でも、お宝なんて置いてねーぞ」

光彦「意外と普通の部屋みたいですからね」

灰原「お宝っていうのは、多分これのことじゃないかしら」

歩美「この封筒のこと?」

二三「ねえねえ、開けてみなよ」

美奈「えぇっと……これって?」

阿笠「これは…養子縁組の同意書じゃな」

40: 2011/05/22(日) 01:57:27.00 ID:anqmXD8I0
―南館・広間―

元太「結局、お宝じゃなかったんだな」

美奈「…………」

光彦「ちょっと……元太くん」

元太「…わりぃ」

二三「でも、どうして恵比島さんは今頃美奈を養子にしようと思ったの?」

灰原「それは多分…彼女の両親の事じゃないかしら」

阿笠「両親って物心が付く前に亡くなったていう」

灰原「正確には「行方不明になった」よ」

歩美「なにがちがうの?」

光彦「待ってください…それってもしかして失踪宣告のことですか」

元太「なんだよそれ」

41: 2011/05/22(日) 01:59:02.55 ID:anqmXD8I0
光彦「行方不明の人がその…氏亡と擬制される制度です。それに必要な失踪期間は確か…7年です」

二三「美奈って…何年この家族にいるんだっけ…」

美奈「二歳の頃だから……7年…」

灰原「失踪宣告は自動的になされるものじゃないけど、ひとつの区切りとしては大きいんじゃない」

阿笠「じゃあ、恵比島さんが自分のことを父と呼ばせなかったのは…」

二三「待ってたんだね。美奈の本当の両親が帰ってくるのを」

灰原「…それに、地下室に封筒を隠したのは静かな場所で良く考えて欲しかったのかもね」

美奈「うぅ……」

歩美「でも…恵比島さん、その前に亡くなっちゃたんだね…」

元太「なんか、可哀想だよな」

42: 2011/05/22(日) 01:59:41.06 ID:anqmXD8I0
億也「…………」

灰原「…………」

億也「…………なんだよ」

灰原「……別に。もう少し素直になるべきじゃないかなと思っただけよ」

億也「…………なんのことだ?」

灰原「根拠は二つ。一つ目は昨夜の、私たちが北の蔵に入ったときあなたは何をしていたのかしら」

億也「…………」

灰原「彼女は家族みんなに相談したって言ってたから、あなたも探してあげてたんじゃないの?」

億也「…………」

灰原「二つ目は、今日のこと。あなたは事件が起きてからずっと彼女と同じ場所に居たわよね」

億也「…………」

灰原「昨日も朝食の時も私たちと協調しなかったのに、あの後には自分から遊びに付いて行った…

   もしかして、彼女が事件に巻き込まれないか心配だったんじゃない?」

43: 2011/05/22(日) 02:01:57.38 ID:anqmXD8I0
億也「……ふん」

灰原「経験から言わせてもらうと近くにいても案外気づいてもらえないものよ。それに姉弟同然なら余計にね」


有衣「…ねぇ美奈、もしよかったら…私の養子にならない?」

美奈「えっ…?」


灰原「…姉同然で同い年の義理の姪はどうかわからないけど……」

億也「……年下のくせに刑事の後ついて事件しらべるわ、説教してくるわ…お前いったいなんなんだよ」


灰原「灰原哀…探偵よ…………なんてね」

44: 2011/05/22(日) 02:03:29.43 ID:anqmXD8I0
―本土に戻る船の上―

美奈「…………」

二三「美奈……」

歩美「見て見てー!またイルカさんがいるよー!」

光彦「知ってますか?イルカって乗っている人を溺れさせないように泳ぐんですよ」

元太「…お前の動物の知識ってどこで得たものなんだよ」

光彦「だめですよ元太くん。小学生たるもの学級文庫は常にチェックしなくては」

美奈「……ふふ」

歩美「美奈お姉ちゃんイルカ好きなのー?」

元太「見ろよ!向こうに色の違うイルカがおよいでるぜー!」

二三「ほら、行こ?」

美奈「…うん!」

45: 2011/05/22(日) 02:07:05.56 ID:anqmXD8I0
明智「…………」

灰原「考え事?」

明智「えぇ……少し気になることが…」

灰原「ねぇ明智警視、もしかして昨日の時点で隠し部屋の場所…気づいてたんじゃない?」

明智「…『君子南面す』という言葉はご存知ですか?」

灰原「?確か…君子は太陽に向かって座るから、南を正面にして北に座るっていう中国の話よね」

明智「そう…その考え方は日本にも伝わっていますから、あの文章の中でも同様だと考えると、

   龍と豹が位を極めた臣である以上、北に座れるのは君子だけ…消去法で南館が「我」に決まります」

灰原「やっぱり…だからヒントとして南館のワインセラーの事を言ったのね」

明智「禁欲的だった前の持ち主が酒蔵として地下室をつくるとは思えませんから」

灰原「それで、ワインセラーが元々はただの倉庫だったと推理したわけ」

明智「そういうわけです……やはりその大人びた口調が地なのですね」

灰原「えっ!あ、こ、これは…その…」

明智「ふっ…私は気にしませんから楽な話し方でいいですよ……それにただの子供では無いようですしね」

灰原「!?」

46: 2011/05/22(日) 02:11:03.20 ID:anqmXD8I0
明智「小学生とは思えない着眼点に知識……そして推理力」

灰原(そんな…まさか…)

明智「そう…私の子供の頃にそっくりなんです」

灰原「はい?」

明智「良かったら、ロスに行く気はありませんか?」

灰原「ろ、ロス?」

明智「私がロス市警にいたときの友人が研究機関に勤めていてね。どうです留学する気はありませんか?」

灰原「え、遠慮させてもらうわ。私いまの学校が気に入ってるから…(それにパスポート作れないし…)」

明智「そうですか、若い頃の方が才能を伸ばすのにいい時期なのですが…残念です」

元太「おーい!港についたぞー!」

明智「では、私は本部と合流しますので…またいずれ」

灰原「ええ、次に会うときは事件が起きなければいいわね」

明智「気が変わったらいつでも連絡をください。米花町だったら110番で私の名前を出せば通じますから」

灰原「き、気が変わったらね」

47: 2011/05/22(日) 02:14:42.34 ID:anqmXD8I0

―後日・阿笠博士邸―
灰原「…全く、あなたがいないのに事件が起こるなんて思いもしなかったわ」

阿笠「でも、哀くんの推理もなかなかのもんじゃったぞ」

コナン「ふーん…で、やっぱいいもんだろ?探偵って」

灰原「こりごりよ。やっぱり私追い詰めるより追われる方が似合ってるみたい」

コナン「けど、話し聞く限りでは結構ノリノリだったみてーだけどな」

灰原「!?…こ、今回はあなたがいなかったから仕方なくやっただけよ!推理フェチの誰かさんと一緒にしないで欲しいわ」

コナン「たく可愛くねーやつ。それに推理フェチから言わせてもらうとオメーの推理…穴があるぞ」

灰原「えっ?」

48: 2011/05/22(日) 02:16:02.62 ID:anqmXD8I0
コナン「京子って人は階段が登れないんだろ?だったらどうして二階の部屋の手帳を見られたんだ?」

灰原「それは…私は他の方法で二人の関係を知ったのかもしれないし…」

コナン「それに、凶器の包丁の件もあるしな」

灰原「京子さんが使った包丁なら厨房から盗んだ来たものじゃないの?」

コナン「第一の事件のあとさつきって人が昼食の準備をしたんだろ?その時に包丁が減ってたら気づくはずさ」

阿笠「恵比島さんを頃した包丁を使ったんじゃないのか?」

コナン「現場検証のあと現場の鍵をかけたんなら持ち出すことは不可能なんじゃないか」

灰原「それならどこのどこから包丁を入手したのよ」

コナン「竹野ってやつの部屋からだよ。調理道具があったはずだしな」

阿笠「じゃあ、京子さんは犯人じゃなかったのか?」

コナン「いや、犯行を目撃している人がいる以上それはありえない」

灰原「じゃあ、一体どういう事?」

コナン「つまり…手帳の内容を教え、凶器を渡したやつがいるってことだよ」

50: 2011/05/22(日) 02:24:30.84 ID:anqmXD8I0
―おまけ・DDS本校舎―

三郎丸「…以上が魔女の真相です」

夢水「はい、正解。じゃあ仕事も終わったことだし、片桐先生さっそく美味しいラーメン屋に…」

片桐「ダメです!まだ教授には次の講義があるんですから!」

夢水「講義?さっき会った犯罪臨床学者って彼の?それとも意味なしジョークの彼かな?

   ああ占星術で生まれた時間を言い当てるおじさんの講義にも興味が有るなあ。だけど僕お腹すいちゃったから…」

片桐「違います!講義をするのは夢水教授あなたです!まったく…みんなは休み時間にはいっていいわよ」

雪平「それにしても最近調子がいいじゃない?三郎丸くん」

白峰「Aクラスにもどって来た時は何かの間違いかと思ったけどね」

郷田「それに、人が変わったように推理をするしな」

獅子戸「この前体験入学でここに来たあのイギリス人も凄かったし…いったいAクラスはどうなってんだ」

右近「いやー僕もうかうかしていられないなー」

一同「はっはっは」

三郎丸「…………」

51: 2011/05/22(日) 02:35:32.80 ID:anqmXD8I0

―屋上―

高遠「……ふぅ。やはり、探偵たちに囲まれるのはいい気分じゃありませんね。しかしながら…

   軽いメイクと髪型を変えるだけで変装ができる彼のお陰で次の事件現場のロケハンが楽になったのは事実…

   前回もあの明智警視にバレなかったのですから。無論この手帳は本物ですしね

   しかし、憎悪は成熟してからのほうがより芸術的な犯罪を生むようです

   まさか、私の計画を聞かずに包丁をもって飛び出していくとは…

   突発的な事件を利用することはなかなか難しい……まあ、それが面白いところなんですがね」

52: 2011/05/22(日) 02:45:33.66 ID:anqmXD8I0
―街中―

三郎丸「あいつと取引してAクラスに戻れたのはいいけど…やっぱり自分の力でやるべきなのかな…」

黒い男「…………」

三郎丸「?なんだあの怪しい男は…あんな路地裏に用があるのか?」

黒い女「遅かったじゃない?」

黒い男「ああ、悪かった…それでダイヤは持ってきたのか?」

黒い女「ええ、ここにあるわ」

三郎丸「あれってこの前の……この取引現場を押さえれば俺は…!」

53: 2011/05/22(日) 02:53:56.12 ID:anqmXD8I0
黒い男「…たしかに、本物のようだな」

黒い女「当然よ。それでこっちのお金はもって帰っていいのよね?」

黒い男「ああ、取引成立だ!」

黒い女「結構な大金だけど…あなたのバックにある組織は何をやっているの?」

黒い男「……あまり首を突っ込まないほうがいいぜ」

黒い女「…まあ、私はちゃんとお金さえ貰えれば他に興味はないわ。じゃあね」

三郎丸(ここで飛び出すか?いやひとりでは……)

黒い男2「探偵ゴッコは……そこまでだ!!!」

三郎丸「!?」

                                    ―完―   

54: 2011/05/22(日) 03:03:13.92 ID:RLjGlM1F0
すごくよかった、おつ

引用元: 灰原「だから…捜査のお手伝い…してもいい…明智警視?」