1: 2008/08/07(木) 17:24:27.47 ID:vkMJm7dl0
・本作はハルヒ×ローゼンSSです
・キャラ崩壊激しいです
・設定崩壊ひどいなんてもんじゃないです
(特にローゼンは8割以上勝手な設定)

以上をご理解ください。

2: 2008/08/07(木) 17:24:56.39 ID:vkMJm7dl0
―――――まきますか?まきませんか?


放課後、いつもの部室



ハルヒ「そういえば昨日すごいことがあったのよ!」

ハルヒがいつものように、烈火の如く喋り出す。

ハルヒ「うちに帰って、いつもみたいにドラえもんを探して引き出しを開けたら変な紙がでてきて…」

古泉とキョンがびくっと体を震わせる

ハルヒ「まきますか?まきませんか?って書いてあるのよ!」

キョンが恐る恐る尋ねる

キョン「で…お前、それどうしたんだ…?」

ハルヒ「勿論『まきます』に丸したわよ、でもその紙、すぐに消えちゃったのよ!」

ハルヒはお茶を運びに来た朝比奈みくると強引に肩を組笑っている。

ハルヒ「これは事件の臭いがするわね…!」

3: 2008/08/07(木) 17:26:06.87 ID:vkMJm7dl0
~その日の夜~

公園には2つの影

キョン「おせーよ」

古泉「すみません、ちょっと手間取りました」

古泉の足元で小さな何かが動く。

キョン「連れてきたのか?その…えっと、」

古泉「金糸雀です」

キョン「そうそう、金糸雀金糸雀。」

金糸雀と呼ばれた少女はそそくさと古泉の後ろに隠れた

古泉「ついてきたいと言って聞かなくて…置いてくるのも可哀想でしたし」

古泉に催促されて金糸雀はぺこ…と頭を下げる

古泉「あなたの方は?」

キョン「うちは妹と遊んでるよ」

そう言って空を仰ぐ

4: 2008/08/07(木) 17:26:27.98 ID:vkMJm7dl0

キョン「しかし…今回のこれもハルヒの影響か?」

そう言うとキョンは金糸雀のおでこをトンっと小突く

金糸雀はむっとした顔を見せるが、体格差のせいか人見知りなのか、ただ黙っていた。

古泉「その件については調査中ですが、おそらく……」
キョン「おそらく?」

古泉は一呼吸置いて再び話し出す

古泉「涼宮さんのみ力ではありません。もちろん影響はありましたが」

キョン「偶然だってことか?」

古泉「半分くらいは…ですかね。涼宮さんの力と『この子達』の都合が偶然一致してしまったのでしょう」

古泉はいつもの笑顔で
「困ったものです」
と、付け加えた。

5: 2008/08/07(木) 17:27:09.65 ID:vkMJm7dl0
次の日、予想通りハルヒは超上機嫌だった。

ハルヒ「みんな、見なさいっ!」

ハルヒは鞄の中からひとつの人形を取り出す。

みくる「うわぁ…かわいいです~」

紅いドレスを身に纏った西洋人形

ハルヒ「真紅って言うのよ!どう?すごいでしょ!!」

みくる「いいなぁ~」

朝比奈みくるが真紅をぺたぺたと触る。

「―――――やめて頂戴」

6: 2008/08/07(木) 17:27:45.90 ID:vkMJm7dl0
ぺちん

真紅がみくるの手を軽く叩く。

みくる「へ…………?」

みくるが驚きのあまりに固まる。

みくる「い…生きて……」
ハルヒ「そーう!!」

ハルヒがダンッと机を叩く。
机の上の『団長』と書いてある三角コーンが倒れる

ハルヒ「生きた人形よ!すごいでしょう!?」

真紅「全く五月蝿い人間なのだわ」

真紅は服についた埃をぱっぱと手で払う。

7: 2008/08/07(木) 17:28:23.87 ID:vkMJm7dl0
キョン「…………長門」

キョンは近くにいた長門有紀に小声で声をかける

キョン「お前んとこにもあれ、来てるのか?」

長門は首を横にふる

長門「来ていない。現在確認できているのは涼宮ハルヒ、古泉一樹、あなた、そして……」

鶴屋「やっほー!はるにゃんはいるかいっ!?」

いきなり鶴屋が部室に転がり込んだ。

小さな美しい人形を抱えて。

鶴屋「珍しい人形を見つけたのさっ……て、あり?」

鶴屋は机に座っている真紅を見た。

鶴屋「もしかして…はるにゃんも?」

8: 2008/08/07(木) 17:28:46.34 ID:vkMJm7dl0
10分ほどのごたごたがあった後、
さすがにこのままじゃ埒があかないということで、現状を整理することにした。

古泉「……つまり、この人形達はその、ローゼンに作られた生きた人形だと?」

ハルヒ「そっ。この子が真紅で……」
鶴屋「この子が蒼星石にょろっ」

蒼星石「よ…よろしく……」
真紅「よろしくなのだわ」

古泉「えぇ、宜しくお願いします」

古泉は頬を少し掻いたあと、質問を続けた

古泉「よろしければ、貴女方がやってきた理由を教えてもらえますか…?」

真紅はティーカップを置き、顔をあげた。

真紅「私たちはローゼンメイデンとして、ある使命を負って来たのだわ」
古泉「使命……と言いますと?」

9: 2008/08/07(木) 17:29:25.73 ID:vkMJm7dl0
真紅は首を横にふる

蒼「それが…覚えてないんです…」

古泉「覚えてない?」

真紅「えぇ…。此処に来る前にちょっと障害が発生して……。
でも私達6姉妹は、ある使命を負って此処に来た。それは確実なのだわ」

古泉は、ほぉ…と言って腕を組む

古泉「6姉妹ということは他に………」
ハルヒ「あーもう!やめやめ!!」

古泉が質問し終える前にハルヒがついに暴れだした。

ハルヒ「そんなつまらない顔でいたらせっかくの楽しい気分が薄れちゃうわ!ねぇ真紅!?」
真紅「それより紅茶のおかわりを頂戴」
ハルヒ「あ、はいはい」

10: 2008/08/07(木) 17:29:46.11 ID:vkMJm7dl0
その後しばらくして、その日はそれでお開きになった。


下校中……

ハルヒ「ねぇキョン」

ハルヒは少し不機嫌そうに話しかけた

キョン「ん、どうした」

ハルヒ「あんた、あんまり驚かないのね」

キョンは少し、しまった…という顔をしたが、なんとかハルヒに気付かれずにすんだ

キョン「驚いてるさ…ただ、俺はお前のことで手一杯なだけだ」

無論、「ハルヒが何かやらかさないか監視するだけで」
という意味だったが、ハルヒは顔を赤らめて早口になった

ハルヒ「なな、なにいってんのこのバカキョンっ!」

そう言うと小走りになり、少し行ったところで振りかえる

ハルヒ「じゃ、じゃあ私こっちだから、また明日、遅刻するんじゃないわよ!!」

そう言ってハルヒは真紅を抱いて行ってしまった。

11: 2008/08/07(木) 17:30:06.78 ID:vkMJm7dl0
またその日の夜、公園にて今度は大小4つの影があった。

キョン「あまり有益な話しは聞けなかったな…」

キョンは今日の夕方のことを思い出す

古泉「いや、そうでもないです。少なくともかなり重大なことが2つわかりましたよ」

キョン「重大なこと…?」

古泉「えぇ、まず1つ、ドールは全部で6体だということ」

キョン「ふむ……もう1つは?」

古泉「彼女達が僕たちの所へ来たのは、偶然じゃなかったことです」

キョンは少し驚いた

キョン「なぜそんなことが言える?」

古泉「彼女達は何か目的があると言っていました…その目的とはおそらく涼宮さんでしょう」

古泉は触れそうなくらい近くまで顔を寄せ、楽しそうに笑う

古泉「考えてもみてください…我々のような超能力者、未来人、宇宙人……
そして『生きた人形』………これらが一同に会することがあるでしょうか?」

12: 2008/08/07(木) 17:30:27.42 ID:vkMJm7dl0
そうしてまたふふっ、と笑った

キョン「―――っ!顔が近いんだよ気色悪い」

古泉「はは、失礼しました。しかし、そうなると益々の謎はあなたです」

キョン「俺?」

古泉「はい、やはりどれだけ調べてもあなたからは、なんの力の片鱗も見えないのです」

キョン「俺はその方が平和でいいんだがね」

そう言った瞬間、キョンの頭に重たい衝撃が走った。

13: 2008/08/07(木) 17:30:48.29 ID:vkMJm7dl0
「キョン登りなのーっ!!」

金髪の幼いドール。

キョン「こ、こら雛苺っ、やめなさいっ!」

すると更なる重さが加わる

金糸雀「キョン登りかしらーっ!!」

キョン「ぐえっ…金糸雀…雛苺……おり…ろ…!」

古泉「ふふ、ずいぶんなつかれてますね」

キョン「いいから下ろすの手伝えーっ!」

14: 2008/08/07(木) 17:31:08.18 ID:vkMJm7dl0
それから数日後……

キョン「で……」

部室には6人のおとな、5人のこども

キョン「ここはいつから幼稚園になったんだ…?」

真「みくる、お茶を煎れて頂戴」
みくる「は、はいただいまぁっ!」

翠「チビ苺っ、それは私のぬいぐるみですぅ!」
雛「いーやーなーのおおぉぉ!!」
鶴屋「ほら、喧嘩しちゃだめさっ!」

金「金糸雀はあんなおこちゃまじゃないかしらー」
古泉「はは、偉いじゃないですか」

蒼「長門さん、その本次読ませてもらってもいいですか?」
長門「………わかった」

15: 2008/08/07(木) 17:31:29.88 ID:vkMJm7dl0
キョン「そんでお前は一人だけなにやってんだ」

ハルヒは自分の席でふんぞり返っていた

ハルヒ「んー?」

キョン「んー?じゃねえだろ…お前の大好きな不思議な現象がゴロゴロしてんだぞ?」

ハルヒは、はぁーとため息をついた

ハルヒ「いや…なんか、これだけいっぱいいると、面白さも半減かなぁって…」

キョン「はぁ?」

さすがのキョンも呆れてしまった。
自分で望んでおいて、投げっぱなしかよ…

16: 2008/08/07(木) 17:32:03.28 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「あ、いや、別に真紅が駄目とかそういうんじゃないのよ!真紅かわいいし!!」

ハルヒは焦って誤解を解こうとした

ハルヒ「ただ…『不思議』自体に興味無くなっちゃったっていうかさ…」

キョン「えっ…??」

何だって?興味無くした??あのハルヒが!?

ハルヒ「うーん…ちょっと1人になりたいわ!今日は解散っ!真紅、帰るわよっ」

そう言うとハルヒはそそくさと出ていってしまった

17: 2008/08/07(木) 17:32:25.40 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「はぁ………」

ハルヒは家で1人、ため息をついていた。

真紅「どうしたの?さっきからため息ばかりなのだわ」

ハルヒ「あー、真紅…」

「よっ」と、ハルヒは上半身を持ち上げた

ハルヒ「んー、ちょっとね…」

そう言って真紅の瞳を見つめる

ハルヒ「いっそ人形だったら……」

真紅「えっ?」

ハルヒ「あぁ、いや、何でもないの」

真紅「そう………」

ハルヒ「……………」

真紅「貴女…とても寂しい目をしているわ」

19: 2008/08/07(木) 17:32:49.10 ID:vkMJm7dl0
ハルヒは驚いて顔をあげる

ハルヒ「あ…わかる?」

渇いた笑いをあげる。
さすがに人形相手に気を張るつもりはなかった。

真紅「それくらいはね。貴女私のミーディアムだもの」

真紅が一歩近寄る

真紅「話して頂戴。私もっと貴女のこと知りたいのだわ」

真紅がハルヒの頬を撫でる

ハルヒ「…ありがと」

ハルヒも微笑む

20: 2008/08/07(木) 17:33:14.77 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「真紅は…使命を負って来たって言ってたじゃない?」

真紅「えぇ」

ハルヒ「でもそれ、忘れちゃったんでしょ?」

真紅「残念だけど……」

ハルヒ「じゃあ、もう諦めちゃえ…とか思わなかった?」

真紅「思わないのだわ」

真紅は、はっきりと答えた

真紅「私達は人形…本来動くことはできない」

真紅「でも、お父様のおかげでこうして、一時的にだけど生きてる」

真紅「生きてるっていうのはただ、心臓が動いていることじゃないのだわ」

真紅「お父様のために、ローゼンメイデンとしての誇りをもって使命を全うする」

真紅「それが私達にとって、生きてるっていうこと」

21: 2008/08/07(木) 17:33:54.29 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「誇り……?」

真紅「そう。貴女達人間だって持っているはずだわ。」

真紅「逆に言えば誇りが氏なない限り私達は氏なない。たとえ……」

真紅「使命を全うしたら、この身体が止まってしまうとしても」

ハルヒ「え……?」

真紅「お父様は…いくら天才の人形師だと言ってもそんなに長い間私達を、整備も無しに動かすことはできないわ」

ハルヒ「そんな……」

22: 2008/08/07(木) 17:34:28.94 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「私は…正直もう、不思議にそれほど興味は無いだと思う」

真紅は静かにハルヒの言葉を聞く

ハルヒ「私は昔、自分がちっぽけな存在だということに気付いて…とにかくそれに抵抗したかった」
ハルヒ「人と違うことをして、人を寄せ付けなかった」
ハルヒ「でも…あれから…高校に入ってみんなに会ってから」
ハルヒ「私がやりたかったのはそんなことじゃないってわかった」
ハルヒ「私は私を認めてくれる人を求めていた」
ハルヒ「それがわかったときには不思議なことへの興味なんてほとんど失ってたわ」
ハルヒ「でも…みんなは『今の私』だから付き合ってくれる…普通の女の子になったらまた、誰もいなくなっちゃう」
ハルヒ「なんとなくわかるの。…理由はわからないけど」

真紅は目に涙を浮かべるハルヒの腕を抱きしめる。

真紅「貴女の瞳にはとても強い光が見えるのだわ…」

ハルヒ「光…?」

23: 2008/08/07(木) 17:35:11.52 ID:vkMJm7dl0
真紅「えぇ…ちょっと、お父様に似てるわ」

ハルヒは涙を拭き、微笑む

ハルヒ「あなたのお父様…素敵な人なのね」

真紅「えぇ、とっても。貴女も会えばきっと好きになるわ」


そう言って真紅もハルヒの頬を撫で、涙を拭いた

24: 2008/08/07(木) 17:35:44.15 ID:vkMJm7dl0
次の日、ハルヒは珍しく学校を休んだ

キョン「おい…大丈夫なのかこれは?」

放課後の部室

古泉「はい、閉鎖空間の発生もないので…おそらく本当に風邪なのでしょう」

キョン「ならいいが……」

今日はハルヒと真紅を除いて人間5人ドール4人の9人。

キョン「しかし、最後のドールは一体誰のところに来るんだ…?」

古泉「まぁこのまま行けば朝比奈さんあたりでしょうけど」

キョンはドールの世話をしながら走り回るみくるを見た

キョン「長門、お前の力でわからんのか?」

長門「無理。彼女達を見つけることはとても困難。おそらくローゼンによるプロテクトがかかってる」

キョン「プロテクト…?何故?」

長門「外敵から守るため」

キョン「外敵?そりゃいったい………」


ドンドンドンドンドン!!

25: 2008/08/07(木) 17:36:05.32 ID:vkMJm7dl0
キョンが言い終わる前に部室のドアが叩かれる

みくる「は、はぁ~い」

ガチャ


部「たのもーうっ!!」

コンピ研の部長だった

部「涼宮ぁ!これはお前の仕業だろう!」

部長が抱いているのは小さな人形だった

27: 2008/08/07(木) 17:36:52.19 ID:vkMJm7dl0
翠「す、水銀燈っ!?」

銀「あらぁ、貴女達、こんな所にいたのぉ?」

水銀燈と呼ばれた人形は姉妹の元に歩み寄る

銀「あらあらお揃いで…真紅は?」

蒼「今はいないけど…すでに一度会ったよ」

銀「ふぅん…?で、ここにいるのが貴女達のミーディアムってことねぇ?」

水銀燈は人間達を見上げる

銀「なかなか面白そうじゃないの」

部「喋るな人形ううう!!」

部長は水銀燈に手刀をくらわせようとしたが、水銀燈は華麗によける

銀「私のミーディアムは駄目ね…昨日からこんな調子」

そう言うと水銀燈はふわっと飛び上がり、部長にデコピンした

銀「順応性の低い男は嫌われちゃうわよぉ」

ふふふ、と優雅に飛び回る

28: 2008/08/07(木) 17:37:17.09 ID:vkMJm7dl0
部「くっ…!それより涼宮はどこだ!?」

キョン「あ…ハルヒなら風邪で休みですよ」

部「休みぃ~?」

キョン「しかもそのドールのことなら、ハルヒのイタズラとかじゃないですよ」

部「な、そんなわけあるまい!いきなり小さな喋る人形が現れるなんてそんなベタな…いや、非現実的な…!!」

部長が騒ぎ立てる。

ま、これが普通の反応だよなぁ……

29: 2008/08/07(木) 17:37:42.94 ID:vkMJm7dl0
その日の夜…

古泉「さて、困りましたね…」

古泉は機関からの連絡を受けた後、珍しく焦っていた。

古泉「まずは…キョン君に電話しなければ……」

そんな古泉のズボンを何かが引っ張る

古泉「金糸雀?どうしたんですか?」

金糸雀がおどおどと話始める

金「いっちゃんは…いつも笑ってるかしら……」

古泉「?」

金「わ、笑ってることはとても素敵なことかしら…でも……」

金糸雀はちょっと考えたあとに続けた

金「いっちゃん、全然楽しくなさそうかしら…」

古泉「そ、そんなことは……」

金「嘘かしらっ!いっちゃん誰といても同じ顔っ!私も、私の姉妹も、涼宮さんって人も、
キョンってお兄ちゃんも…『そこにいる人』くらいにしか思ってないみたいかしら」

一瞬古泉の顔がひきつる

30: 2008/08/07(木) 17:38:06.44 ID:vkMJm7dl0
古泉「………そう見えますか?」

金「見えるかしら。なんだか凄く…つらそう」

古泉は自嘲気味に笑う

古泉「……そうかもしれません…でも、誰かがやらなくちゃいけないんです……」

そう言って古泉は携帯にキョンの番号を入力し始める

古泉「今日も公園に行きますが…どうします?」

金「今日は……結構かしら」

古泉「そうですか…」

古泉の表情がほんの少し暗くなったのを金糸雀は見逃した

47: 2008/08/07(木) 19:59:01.67 ID:vkMJm7dl0
翠「ネクラ人間~お腹すいたですぅ~」

殺風景な家に長門と翠星石の二人だけ

長門「待ってて、もうすぐ妹が帰ってくる」

翠「妹ぉ~?」

長門「食事係」

翠「あぁ、あの眉毛ですか…」

沈黙が流れる


翠「そういえばあんた、皆で集まっても本しか読まないですか」

長門「他にすることもない」

翠「友達とお喋りするとか…」

長門「ともだち…?」

翠「そうですぅ。友達なんですよね?いつも一緒にいるあいつら」

長門「……朝比奈みくると古泉一樹は、同業者みたいなもの。互いに友好関係を結ぼうとは思っていない」

翠「…………?」

長門「『彼』と涼宮ハルヒは観察対象。よってあの部屋に友人に該当する人物はいない」

49: 2008/08/07(木) 19:59:37.01 ID:vkMJm7dl0
翠星石がぽかんとする

翠「じゃああんたは、みんな友達じゃないって言うですか?なんでです?」

長門は簡単に今の自分たちの状況を説明した

長門「極秘事項…他言無用で」

翠「わ、わかったですぅ…でも……」

長門「でも?」

翠「その…キョンって奴はまだいいとして…涼宮って奴はちょっと可哀想ですぅ」

長門「………可哀想?」

翠「だって…自分は友達だと思ってる奴がみんな友達じゃなかったなんて…翠星石だったら耐えられないですぅ」

長門「………仕方がない。涼宮ハルヒがあの力を持っている限り」

翠「でもそれは本人が望んだことなんですかねぇ…」

長門「……………」

51: 2008/08/07(木) 20:00:48.11 ID:vkMJm7dl0
しばらくの沈黙の後にドアが開く

朝倉「ただいま~!おなかすいたでしょ……って、どうしたの…?」

翠「いや、なんでもねぇです!それより今日の夕飯は何ですか?」

朝倉「今日?今日はおでんよ!」

翠「またですか…」

長門「朝倉涼子はおでんとカレーしか作れない……」

翠「てことはこれからずっと…毎日おでんかカレーですか…?」

長門は頷く。

朝倉「翠星石ちゃーん、ちょっと手伝ってー!」

翠「えー?」

朝倉「長門さん全然手伝ってくれないのよ~、ねぇ、おねがい」

翠「しょーがねーですぅー」

そういって翠星石は走り出した


その背中を、長門が無機質な目で見ていた。

52: 2008/08/07(木) 20:01:08.13 ID:vkMJm7dl0
銀「ちょっと貴方ぁ~」

部「聞こえない聞こえない僕は何も聞こえない」

銀「全く…そう言えば貴方涼宮ハルヒの知り合い?」

部「……~ったく!涼宮がなんだって?」

ついに吹っ切れたように水銀燈に向き直る

銀「前に話した…私達が此処に来た理由は聞いてたかしら?」

部「一応な。だがその内容は忘れたんじゃなかったのか?」

銀「殆んどねぇ…。だけど2つだけ覚えてることがあるの、それは…」

部「それは?」

銀「私達の使命は…『涼宮ハルヒの解放』」

部「解放…?どういう意味だ?」

銀「私も詳しくは覚えてないわぁ。」

部「涼宮ハルヒの解放…ね」

銀「ねぇ…貴方にとって涼宮ハルヒってどんな存在なわけぇ?」

部長が驚いて水銀燈を見る。
しかしすぐに特別な意味があるわけではないことに気付く

53: 2008/08/07(木) 20:01:28.08 ID:vkMJm7dl0
部「あぁ…そうだな…宿敵…?」

銀「宿敵?」

部「あぁ。とは言っても私が勝手にそう思ってるだけなんだが…」

銀「ふふっ、変なのぉ」

部屋に二人の笑い声が響いた。

部「それで?もうひとつは…?」

銀「これをを見て」

水銀燈は内側のポケットから指輪を取り出す

部「これは……?」

銀「これは薔薇の指輪。貴方と私の誓いの指輪………」

54: 2008/08/07(木) 20:01:52.49 ID:vkMJm7dl0
蒼「なんか、あの場所って不思議な所だね…」

鶴屋「不思議?」

蒼「あぁ、部室…だっけ?なんだかいろんな思考が交錯してる感じだ」

鶴屋「うーん、よくわからないけどねっ、めがっさ複雑なんだよっ!」

鶴屋は困ったようにえへへ、と笑う

蒼「君は蚊帳の外?」

鶴屋「蚊帳の外っていうか…面倒だからかな?他の人がどうだろうと、私は、はるにゃんの友達!それでいいじゃないかっ」

蒼星石が笑う

蒼「ふふ、君らしいね…」

鶴屋「難しいことはね、わからないのさ」

鶴屋が蒼星石を捕まえてほおずりする

蒼「うわっ、や、やめてよっ、くすぐったいっ」

鶴屋「にょろーん、うりうりうり」

55: 2008/08/07(木) 20:02:14.87 ID:vkMJm7dl0
蒼「なんか、あの場所って不思議な所だね…」

鶴屋「不思議?」

蒼「あぁ、部室…だっけ?なんだかいろんな思考が交錯してる感じだ」

鶴屋「うーん、よくわからないけどねっ、めがっさ複雑なんだよっ!」

鶴屋は困ったようにえへへ、と笑う

蒼「君は蚊帳の外?」

鶴屋「蚊帳の外っていうか…面倒だからかな?他の人がどうだろうと、私は、はるにゃんの友達!それでいいじゃないかっ」

蒼星石が笑う

蒼「ふふ、君らしいね…」

鶴屋「難しいことはね、わからないのさ」

鶴屋が蒼星石を捕まえてほおずりする

蒼「うわっ、や、やめてよっ、くすぐったいっ」

鶴屋「にょろーん、うりうりうり」

56: 2008/08/07(木) 20:02:37.67 ID:vkMJm7dl0
キョン「おーい、雛苺っ!」

キョンに呼ばれてシャミセンと遊んでいた雛苺が駆けてくる

雛「公園行くのー?」

顔いっぱいに笑みを浮かべる

キョン「あぁそうだ。もう行けるか?」

雛「うんっ!」

キョンは自転車にまたがり雛苺を前のカゴにのせる。

キョン「よし、出発だ!」
雛「出発なのー!」

57: 2008/08/07(木) 20:03:14.05 ID:vkMJm7dl0
公園についたら、すでに古泉が待っていた。

キョン「お前が先とは珍しい」

そう言って辺りを見渡す

キョン「金糸雀は?」

古泉は動揺したがそれを表情に出すことなく

古泉「今日はお留守番です」

と答えた。

キョン「へー、これまた珍しい。で、話ってのは?」

古泉「涼宮さんのことです」

キョンは少々面食らった

キョン「ハルヒ?こいつらじゃなくて?」

キョンは頭上の雛苺を指差す

58: 2008/08/07(木) 20:03:40.81 ID:vkMJm7dl0
古泉「えぇ…。しかもかなり厄介なことになってます」

キョン「厄介?閉鎖空間か?」

古泉「はい…。しかし今回は今までと規模が圧倒的に違う…」

古泉「まず、距離です。前例を見ないほど大きくなり、すでにこの周辺の街を覆い尽くしました。物凄い速さで」

古泉「そしてもうひとつ…これが一番厄介なんですが…今回の閉鎖空間、現実世界と徐々に同化しています」

キョン「同化……?」

古泉「はい…。閉鎖空間とは涼宮さんの力が生み出した『涼宮ハルヒの望む世界』」

キョン「それが現実世界と同化したらどうなるんだ?」

古泉は少し躊躇い、そして話し始めた

古泉「これは…我々の予想に過ぎませんが、おそらく涼宮さんの望む人しかいなくなる…」

古泉「我々のような超能力者、未来人、宇宙人、異世界人、このローゼンメイデン、そしてあなたです」

60: 2008/08/07(木) 20:04:03.08 ID:vkMJm7dl0
キョン「それで…俺はどうすればいいんだ?」

古泉「えっ?」

キョン「お前がこういうことを俺に話すってことは俺に何かさせようとしてるってこったろ」

キョンがイタズラっぽく笑う

古泉「察しがよくて助かります」

古泉も、張り付けたような笑顔を返す

古泉「あなたに…涼宮さんを学校まで呼び出してほしいのです」

キョン「学校?」

古泉「ええ、あそこは以前から濃度の高い閉鎖空間が発生していました。」

古泉「おそらく涼宮さんが…意識的にかどうかはわかりませんが、好んでいた場所なんでしょう」

キョン「んで、呼び出した後、俺はどうすりゃいいんだ?」

古泉「すぐに私達が行きますから、そのまま待っていてください」

キョン「わかった、とりあえずうちに帰って涼宮に電話しよう…急いで来たもんだから携帯忘れちまった」

古泉「じゃあ私も一旦戻って準備します、それではまた後で」

そう言って古泉が立ち去ろうとしたときだった

61: 2008/08/07(木) 20:04:23.52 ID:vkMJm7dl0
キョン「おい、古泉っ!」

後ろから声をかけられ、心臓が跳ねる

古泉「は、はい…なんでしょう?」

できるだけ平静を保とうとする

キョン「お前さ………」

額に冷や汗が浮かぶ

キョン「体調でも悪いのか?」

古泉「…へっ?……僕、どこかおかしかったですか?」

呆気にとられる

キョン「いや…おかしかったって程じゃないけど、なんとなくな」

キョンは照れたように言う

古泉「はは…確かに、このところ機関が忙しくてあまり寝てません…」

嘘ではない

キョン「そうか…、まぁ、あんま無理すんなよ?」

そう言ってキョンは雛苺を連れて歩き出した

62: 2008/08/07(木) 20:04:47.16 ID:vkMJm7dl0






古泉「……仕方がないんです………」

古泉が小声で呟く


古泉「誰かが…やらなきゃ………」

その言葉を聞くことなく、キョンは自転車をこぎはじめた

63: 2008/08/07(木) 20:05:11.01 ID:vkMJm7dl0
ハルヒと真紅が夜の学校につく
それをキョンと雛苺が出迎えた

ハルヒ「全く、こんな時間になによ!」
真紅「そろそろ寝る時間なのだわ」

ハルヒと真紅はすこぶる機嫌が悪い

キョン「まぁそう言うなよ…。なんか古泉から連絡があってな、今日この学校で幽霊が出るらしいんだ」

よく考えたら間抜けな話だが、ハルヒなら嬉々として飛び付くにちがいないと思った

ハルヒ「幽霊……?」

…しかし、案外リアクションが薄いことにキョンは驚く。

キョン「あぁ…。」

まさか…もう不思議なことに興味ないって言ってたのは…本当なのか?
じゃあなんで閉鎖空間が……?

キョンがあれこれ考えている間に、ハルヒがポツリと言う

ハルヒ「まぁいいわ…ちょっと探しに行きましょ」

キョン「あ…あぁ。」

ハルヒと真紅が歩き出し、その後ろを寝ている雛苺をおぶったキョンがついていく

後ろをついて歩いていたキョンにはハルヒの表情は見えなかった

64: 2008/08/07(木) 20:05:32.77 ID:vkMJm7dl0



校庭に出る。

キョン「ここで古泉と待ち合わせしたんだが…」

そう言った瞬間、急に鋭い光がキョン達の目をくらませた

キョン「くっ………!?」


光に慣れ、目を開けたとき、世界は蒼白い光に満ちていた

キョン「これは…閉鎖空間っ!?」

キョンは背中で寝ている雛苺を下ろし、出口に向かって走り出した

キョン「ぐっ………!!」

しかしすぐに見えない壁にぶつかる

ハルヒ「ちょっとキョン!どういうことよ…これ!」

ハルヒがキョンにかけよる…

キョン「………っ、幽霊……じゃねえの?」
ハルヒ「馬鹿っ、こんなときに冗談言ってんじゃないわよ…」

65: 2008/08/07(木) 20:05:52.93 ID:vkMJm7dl0
ハルヒは真紅を抱き上げる

ハルヒ「ねぇ真紅…これはあなたたちと関係があるの…?」

真紅「……わからない…、ちょっとおろして頂戴」

真紅は華麗に着地すると、見えない壁に向かって歩き出す

真紅「……これは…結界ね」

ハルヒ「結界…?」

真紅は見えない壁に蹴りを入れる
壁は波紋を浮かべただけだった

真紅「これは面倒ね…外から入る分にはなんとかなるんだけど…内側の防御がとても厚い」

そう言ってまた壁に向かって足を上げたときだった


「無駄ですよ」

66: 2008/08/07(木) 20:06:15.39 ID:vkMJm7dl0
古泉一樹、長門有紀、そして金糸雀と翠星石がいた

ハルヒ「古泉君に…有希っ!?」

キョン「古泉っ!どういうことだこれは!!」

キョンが古泉に詰め寄ろうとした時だった

キョン「―――ッ!?」

金糸雀から鋭い針が何本も飛んできた

真紅「金糸雀っ!?」

古泉「動かないで!!!」

古泉が怒鳴る

古泉「キョン君、涼宮さん…申し訳ありませんがお二人にはこの閉鎖空間と共に消えてもらいます」

キョン「な………なにを……」

キョンの言葉を待たずに、金糸雀が今度はハルヒに向かって針を射つ

キョン「くそっ!」

呆気にとられて動けないハルヒをかばう

67: 2008/08/07(木) 20:07:15.12 ID:vkMJm7dl0
キョン「うぐっ…!」

今度はさっきよりも多くの針がキョンを襲った
キョン「ハルヒ…立てっ!走れ……!!」

キョンがハルヒの肩を抱き走り出す
その間に真紅は金糸雀に向かって走る

真紅「金糸雀…!なにしてるのだわっ…!!」

金糸雀を止めるため、手を伸ばす
しかし立ちはだかった長門に阻まれ、投げ飛ばされる

真紅「うぁっ……!!」

真紅が地面に叩きつけられる
そんな真紅に目もくれずに翠星石が如雨露から水を飛ばす
その先には雛苺が眠っていた

キョン「まずいっ……!」
キョンはハルヒを先に行かせて、雛苺の元へと突進する

キョン「うおおぉぉぉ!!!」
なんとか雛苺を抱き上げ、勢い余ってそのまま前転する

キョン「ぐ…あああぁぁぁ!!」

腕を擦りむく
足には何滴か水が当たり、そこの肉が音を立てて溶ける

68: 2008/08/07(木) 20:08:07.01 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「キョンっ!!」

ハルヒがキョンに向かって走ろうとする

キョン「来るなっ!!!」

それをキョンは制止した。
近くにいる真紅を拾い上げ、雛苺と真紅をハルヒに投げる

ハルヒ「わぁっ!!」
なんとか受け止める

キョン「はやく校舎に行けっ!俺もすぐに行く……!!」

ハルヒ「でも…っ!!」
戸惑うハルヒの足を真紅と雛苺が引っ張る

真紅「ハルヒっ!行くのだわっ!!」
雛「はやく、走るのっ!!」

ハルヒ「うぅ…っ!!」

ハルヒ達は校舎に向かって走り出した

キョン「はぁ…はぁ…!」

キョンが4人を睨む

キョン「説明……しろ……!」

100: 2008/08/07(木) 22:20:59.66 ID:vkMJm7dl0

古泉「長門さん……」

古泉が長門に合図を送る
長門と翠星石がハルヒ達を追う

キョン「お、おいっ!!」

キョンも長門を追おうとするが、金糸雀の針をくらい倒れる

古泉「あなたの相手は私ですよ」

古泉がいつもの笑いを浮かべる

キョン「……どういう…ことだ……」

古泉は表情ひとつ変えない

古泉「1ヶ月前からです」

キョン「え……?」

古泉「1ヶ月前から、あなたと涼宮ハルヒの抹殺は決まっていました」

101: 2008/08/07(木) 22:21:36.30 ID:vkMJm7dl0
キョン「……なぜ…ハルヒを頃したら…世界が終わるんじゃないのか……?」

古泉「だから…この空間ごと切り離すんです。閉鎖空間は涼宮ハルヒの意識が無くなったとき、一時的にこの世界から消える」

キョン「くっ……何故、今…っ」

古泉「この作戦は当初から考えられていました…
しかし、その時点ではまだ涼宮ハルヒ自体は大した脅威ではなかった」

古泉「しかし、高校に入って少しして、閉鎖空間の発生するタイミング、形、拡大範囲が大幅に変わった」

古泉「先ほどはなしたような、現実との同化の力も、徐々に見せ始めた
…そして昨日から、今までにないほどの閉鎖空間が発生した」

古泉「もう手段を選んでいられなくなった。このままでは…世界の崩壊は確実ですから」

古泉「ローゼンメイデンという不確定要素はありました…しかし、我々はこうしてそれすら利用できた」

キョンは拳を握りしめる

キョン「………古泉ぃ……っ!!」

102: 2008/08/07(木) 22:22:39.40 ID:vkMJm7dl0
古泉「それにあなたです…」

キョン「………っ!?」

古泉「前から言うように、あなただけはなんの能力もない…完全に謎なんです」

古泉「しかし、我々はある仮説を立てました…それは、あなたは涼宮さんの予備なのではないか…と」

キョン「予備…?」

古泉「そうです。つまり涼宮さんが能力を持っているのではなく、
願望を実現する能力自体に意思のようなものがあり、涼宮ハルヒを自分の入れ物として選んだのではないか…」

古泉「だとしたら、予備を用意していたとしても不思議はない…そうでしょう?」

103: 2008/08/07(木) 22:23:08.08 ID:vkMJm7dl0
キョン「……っざけんなよ…たったそれだけの理由で…俺も…ハルヒも頃すのか…?」

古泉「残念ながら、あなたにとって『それだけの理由』でも、
我々にとって60億の命がかかっているのです」

キョンは舌打ちする

キョン「っおおおぉぉぉぉ!!!!」

古泉に殴りかかる

古泉「金糸雀」

古泉が合図すると、何百もの針がキョンを襲う

キョン「ぐああぁぁっ!!」

服を使って振り払い、庇うが、それでも相当な数の針が刺さる。
そして刺さった針は数秒経つと消えるので出血量が増える

104: 2008/08/07(木) 22:23:46.85 ID:vkMJm7dl0
キョン「うっ…」

目が霞む

古泉「キョン君、私達は今、涼宮ハルヒを頃すことはできません。」

古泉「頃してしまったらあの力が暴発するかもしれない……でも」

古泉「あなたは今殺さなきゃいけない。
あの力が危険を感じて入れ物をあなたに変えるかもしれないから……」




古泉「キョン君 ―――――さよなら」




今度は何千もの針が一斉にキョンを目掛けて降ってきた

105: 2008/08/07(木) 22:25:03.80 ID:vkMJm7dl0
そしてその頃…


ハルヒ「はぁっ…はぁっ……!」
ハルヒは学校の廊下を走っていた

ハルヒ「なんなのよ…これぇっ!!」
何度目かの悪態をつく

真紅「………金糸雀…、翠星石…」
真紅は唇を噛んだ

雛「ひな…、ちょっとしか見てないけど…二人とも変だったの…」

真紅「えぇ…。それに…あの力は一体……?」

後ろから長門が迫ってきた。

ハルヒ「…やばいわねっ…!真紅、雛苺…スピードあげるわよ!」

そう言ってハルヒは一層強く地面を蹴る

真紅「ま…待って!!」

真紅が急に立ち止まる

106: 2008/08/07(木) 22:26:05.06 ID:vkMJm7dl0

ハルヒ「な、なにして、……!!」

ハルヒも立ち止まる
前から翠星石が迫ってきた

ハルヒ「挟み撃ち…っ!」

ハルヒは近くの教室に入り、窓に足をかけて飛び降りる。
幸い一階だったから軽くつまずいたくらいですんだ。

真紅「ハルヒ、そっちは!!」
しかしハルヒ達は再び校庭に向かって逆走していた

ハルヒ「し、しかたないじゃないっ!こっちにしか道が……あっ!!」

ハルヒが石につまずき転ぶ

ハルヒ「しまった…!」

立ち上がろうとしてる間に長門と翠星石に追い付かれた

真紅「……………っ!」

真紅と雛苺がハルヒを庇うように立つ

長門「………頃しはしない」
翠星石が如雨露を構える

長門「気を失わない程度に痛め付けるだけ」

107: 2008/08/07(木) 22:26:38.50 ID:vkMJm7dl0
真紅「くっ!!」

真紅が翠星石の構えた如雨露を蹴り、狙いを反らす。

真紅「貴女っ!!翠星石と金糸雀になにをしたのだわっ!この力は一体なに!?」

長門「………………」

長門はなにも答えず、翠星石に指示を出す

真紅「まずい……!」

翠星石がハルヒに狙いを定める

真紅「くっ……!」

真紅も雛苺も、ハルヒを守るには遠すぎる

真紅「ハルヒッ!!」

翠星石の如雨露から水が発射される

ハルヒ「―――――ッ!」

思わず目を瞑る



「させ……るかああぁあぁ!!!」

108: 2008/08/07(木) 22:27:13.46 ID:vkMJm7dl0
男は走りながらハルヒを引っ張り、投げ飛ばす

ハルヒ「うわっ!!」

なんとか二人とも水を回避する

ハルヒ「いてて…って、あんた…コンピ研の……!?」

部長は一瞬ハルヒを振り返るとすぐに前を向き、叫んだ

部「水銀燈ーっ!!」

とたんに漆黒の羽根が翠星石と長門に向かって放たれる

長門「くっ…」

長門に当たったその羽根は発火した

部「涼宮ハルヒともあろう者が…随分不様な姿を晒してるじゃないか…」

部長がハルヒを見ずに話しかける

ハルヒ「なによ…あんただって、足、震えてるわよ…」

110: 2008/08/07(木) 22:28:34.90 ID:vkMJm7dl0
ハルヒがその場にへたれこむ

すると校庭の方から3つの影が走ってきた

ハルヒ「…キョン!!」

ハルヒもその影に向かって走る

キョンと共に来たのは鶴屋と蒼星石だった

鶴屋「はるにゃん、とりあえずキョン君を頼むにょろっ!!」

鶴屋はハルヒにキョンを預け、振り返る。後ろからは古泉が追ってきている。

鶴屋は古泉から目を離さないように部長達と合流する

鶴屋「なんとか間に合ったようだねっ」

部「そっちこそ……!」

再び校舎を背にするように立つ

112: 2008/08/07(木) 22:31:07.63 ID:vkMJm7dl0

部「鶴屋さん…だったかな…?」

鶴屋「そうにょろ」

部「君は涼宮ともう1人の彼を連れて校舎に入っていてくれ。」

鶴屋「えっ…?」

部「わかるだろう、彼ら二人じゃだめなんだ。彼らは薔薇の誓いを知らない…」

古泉が迫ってくる
長門がゆっくり立ち上がる

部「さあ早くっ!」

部長が鶴屋の背中を押す

鶴屋「くっ……みんな、こっちにょろ!」

鶴屋はキョンを支え、他の者を引き連れて走る

114: 2008/08/07(木) 22:31:42.54 ID:vkMJm7dl0
古泉「僕達四人に対してあなた達は二人…なめられたものですね…」

長門と古泉、金糸雀と翠星石がじりじりと部長達に詰め寄る

部「なめてなんかいないさ」

部長がククク…と笑う

部「君たちには負けん」

金糸雀の針が部長に飛ぶ


部「なるほど、君のその攻撃……バイオリンの音波を針に変えて攻撃する…」

部「さしずめ逆鱗の鎮魂歌ってところか」

部長が冷静に攻撃を見極める

部「水銀燈っ!」

漆黒の羽根がその針をひとつ残らず叩き落とした

118: 2008/08/07(木) 22:38:13.94 ID:ID+qNxxGO
銀「貴女、少し大人しくしてなさぁい」
4本の羽根が金糸雀の四肢を縛る
古泉「くっ………」
翠星石が攻撃してくるが、水銀燈はそれをあっさりかわす
銀「いい感じよぉ、貴方、なかなか筋がいいわぁ」
そう言って部長の周りを旋回する
古泉「強い…何故…?」
古泉から焦りの色が見えた
部長が笑う
部「君たちの薔薇の誓いは、指輪の本当の力を引き出せてないからさ」

119: 2008/08/07(木) 22:38:42.50 ID:ID+qNxxGO
キョン「薔薇の…誓い……?」
血だらけのキョンが聞き返す
校舎の中の一室
蒼「あぁ…、ボク自身忘れてて…水銀燈に教えてもらったんだけど」
蒼「真紅、雛苺、二人とも服の内ポケットの中を見てごらん」
真紅と雛苺は服の中を探る
真紅「これは…」
そこには指輪が入っていた
蒼「それが薔薇の指輪…それをパートナー…ミーディアムにはめるんだ」

120: 2008/08/07(木) 22:39:19.03 ID:ID+qNxxGO
ハルヒとキョンがそれぞれの指輪をはめる
蒼「そしてそれにキスをする」
キョン「キ、キスぅ!?」
ハルヒ「キョン!恥ずかしがってる場合じゃないわよ!」
そう言ってハルヒが指輪にキスをする
続いてキョンが不格好なキスをした
蒼「これで、僕たちは本来の力を出せる。」
雛「なんだか、身体が軽くなったのー」
真紅「力が溢れるようなのだわ…」
蒼「そして、この指輪のもうひとつの特性…それはドールとミーディアムの心の
波長が合っているほど強い力を出せること」

121: 2008/08/07(木) 22:43:19.40 ID:ID+qNxxGO
古泉「…あの指輪にはそんな意味があったのですか」
古泉「なるほど、機関の研究によって指輪から力を放出させることには成功しましたが…」
部「契約者との波長が合わない操り人形のような状況では、本来の力は発揮されない」
古泉は迂濶でした…、と言って笑う
銀「そもそも貴方、二人に何をしたの?」
古泉「ローゼンメイデンとはいえ、所詮は人形。機関の力に加えてこちらには未来人と宇宙人にも少々の協力者がいる」
古泉「自我の遮断自体は案外すんなりいきました」
水銀燈の顔が歪む
銀「貴方…かわいい顔してなかなか残酷なのね」
水銀燈は古泉に向かって攻撃の態勢をとる

122: 2008/08/07(木) 22:44:33.84 ID:ID+qNxxGO
古泉「………あなたは?」
水銀燈を気にすることなく、部長を指差す
古泉「あなたは何故水銀燈との意識の同調に成功したんですか?」
古泉「そもそもあなたは今回完全に事情もわからず巻き込まれた…いや、わざわざ巻き込まれに来た…何故?」
部長は水銀燈を自分の肩に乗せ、答える
部「この人形の使命の手伝いをするため…」
古泉「………使命?」
部「そう、涼宮ハルヒの解放」
古泉「解放………?」
部「おや?知らなかったのか」
部長はちょっと意外そうに言う

123: 2008/08/07(木) 22:45:42.24 ID:ID+qNxxGO
古泉「それは初耳です…が、それだけの理由でこんなところまで?」
部「たしかに、君にとっては『それだけの理由』だが、私にとっては重大なことなんだよ」
古泉「……………っ!」
古泉は先程自分がキョンに言った言葉を思い出す。
部「解放がどういう意味なのかはわからないが、おそらく涼宮を助けることには、なるだろう」
古泉「わかりませんね…あなたが涼宮さんにそこまで肩入れする事自体が」
古泉「あなたは何度か涼宮ハルヒに巻き込まれている。恨みこそすれど助ける理由なんてどこにもない」
古泉「しかも、命を懸けてまで」
部長はふっ、とため息をつく
部「まぁ、わからないだろうね…。異常だってことは自分でも自覚してる。」
部「しかし、思い出してほしい。最初に涼宮が私達からPCを奪っていったとき、
我々は職員に訴えることもできたが、それをしなかった…なぜだと思う?」
古泉「………………?」

125: 2008/08/07(木) 22:46:50.07 ID:ID+qNxxGO
部「その後私達は毎日、どうすれば涼宮に一泡吹かせられるか、そればかり考えていた」
部「考えつくした結果のゲームも、あっさり破られてしまったがね」
部長は楽しそうに笑う
部「しかし私達はまだあきらめてなんかいない。新しいソフトを開発中さ。今度はズルは無しでね」
古泉「………だから、何だって言うんですか」
部「君は、涼宮ハルヒと共にいて、快いと感じたことはなかったか?」
古泉「快い…ですか」
部「そうだ。涼宮ハルヒは無礼で、人の迷惑を省みない。」
部「しかし決して人を見下さない」
古泉「……………………………」
部「彼女は、誰も寄り付かなかったコンピ研にずかずかと入り込んできて、いきなりパソコンを奪って行った」
部「もちろんその横暴な振る舞いには怒りを感じた。」
部「だが我々はそれを境に初めて、一丸となって、夢中で何かに向かうことを知った」
部「涼宮ハルヒに報復する…まぁ、あまり動機は良くなかったがね」
部「特に不満があるわけでもなく、かといって目標もない毎日を彼女は一瞬にして変えてくれた」

126: 2008/08/07(木) 22:47:37.85 ID:ID+qNxxGO
部「それは彼女が我々を、世間じゃオタクだなんだと偏見だらけの目で見られる我々を、
対等な者として勝負を挑んできてくれたおかげだ」
部「涼宮ハルヒ含む文芸部…いや、SOS団だったか。君たちは我等が宿敵にして最終目標!」
部「…だから、こんなところで失うわけにはいかないのだよ。そして私と水銀燈にはそれを守る力がある」
部「結果的に…君たち二人とは戦わなきゃいけなくなったがね」
古泉は少し表情を曇らせる
古泉「それでも…、命を懸けるに値するとは、到底思えません」
部長は相変わらず笑っている
部「それは君が決めることじゃあない。私の命だ。使いどころは私がいちばん知っている」
部「だらだらと無駄に寿命を浪費するより…危険だろうが、誰かを守って戦いたい」
部「本当は……ずっと前から、それを望んでいたんだ」
部「だからこそ、君もそうして戦ってるんじゃないのか?」

古泉はくっ、と唇をかんで俯く

127: 2008/08/07(木) 22:48:26.26 ID:ID+qNxxGO
長門「お喋りは終わり……」
今まで静かだった翠星石が長門の命令で動き出す
部「ははっ…まさか長門さんが最後まで黙って話を聞いてくれるとは思わなかったよ…!」
部長は降り注ぐ水をうまくかわす
部「君とも仲良くさせてもらったからね…その情けかな…?くっ…!!」
部長の手の甲に水滴がいくつか当たり、肉を溶かす
部「ぐっ………」
痛みを気にしてる間もなく、次の攻撃が来る
部「水銀燈っ!!」
水銀燈の羽根が飛び、部長を雨から守る。
部「そのまま一気にたたみかけろっ!」
銀「わかってるわよぉ!」
今度は翠星石に向かって羽根を飛ばす
翠星石「ぐっ…!!」
命中し、翠星石が地面に叩き付けられる。
部「よしっ、これで……」

135: 2008/08/07(木) 23:14:03.98 ID:vkMJm7dl0
携帯も規制されるとか規制天国

136: 2008/08/07(木) 23:15:05.93 ID:vkMJm7dl0
部長が手を握り締め、水銀燈の元へ走り出したとき、目の前の水銀燈が視界から消えた。

部「えっ………?」

紅い塊が水銀燈を吹き飛ばす。

部「………っ!?」

金糸雀と翠星石は相変わらず動いていない。

古泉が何かを撃ち出す仕草をする


古泉「セカンドレイド…ッ!!」

古泉の掌から、今度はブーメランのような形をした何かが発せられる

それは部長の肩をかすめ、50メートルほど先で爆発した。
部長の肩が擦り切れ、血が噴出す

部「なんだ…っ?一体何がっ!?」

古泉「あなたのおかげです」

部「…………っ?」

古泉「あなた、僕に言いましたよね『誰かを守って戦いたい』………」
古泉「『だからこそ君もそうして戦ってるんじゃないのか』………」
古泉「そうです、そのとおりです…僕は、僕の大切な者を守るためにあなたを頃す」

137: 2008/08/07(木) 23:15:41.84 ID:vkMJm7dl0
今度は両手から紅い弾が撃ち出された

部「まずい……っ!!」

部長は右に飛び込みなんとかそれをかわすと、
素早く立ち上がり水銀燈を抱えて校舎の方に走り出す

部「これは……さすがに私一人じゃ太刀打ちできんっ…!」

幸い二人との距離はある。殺されるより先に校舎に逃げ込む自信があった。


長門「―――――――――――――――――――」

部「っ…?」

耳が少し痛い。そう思った瞬間部長は吹き飛ばされていた

部「ああああああああああっ!!!!!!」

何が起きたかわからなかったが、長門が何かを口にして、
その瞬間何か高圧なものが飛んできたような気がした

138: 2008/08/07(木) 23:16:04.22 ID:vkMJm7dl0
部「……はぁ………はぁ……………」

すでにいたるところから出血している。
古泉の紅い弾をモロに食らったため、水銀燈は目を覚まさない

部「………さすがに…万事休すだな…」

部長が氏すら覚悟したその時だった。


「そこまでだっ!!」


倒れている部長の前に誰かが立っていた。

6人の影。

ハルヒ、キョン、鶴屋、真紅、雛苺、蒼星石が部長と水銀燈をかばうように立っていた

140: 2008/08/07(木) 23:23:45.17 ID:vkMJm7dl0
キョン「すまん部長……遅くなった………」

そういうなりキョンはその場に崩れてしまった。

ハルヒ「ちょっとキョンっ!だから待ってろって言ったじゃない…」

キョンは先の戦闘ですでにボロボロだった。

キョン「………俺もかっこつけたかったんだよ…」

キョンがハルヒを見上げる

キョン「それに……………」

足に力を入れ、なんとか立ち上がる

キョン「あいつらに…一発ずつ入れなきゃ気がすまねえ…っ!!」

拳に力を入れる

キョン「行くぞ…雛苺っ!!」
雛苺「キョンをいじめるひどい人たちを…やっつけるの!!」

141: 2008/08/07(木) 23:24:35.83 ID:vkMJm7dl0
雛苺が両手を前に構える。
すると地面から苺の轍のようなものが現れた

長門「…………………」
突然の攻撃にも関わらず長門は冷静にそれをかわす。

古泉「轍…?動きを封じるつもりですか…っ!」
古泉は小さな紅い弾を飛ばし、長門に向かった植物を全て切り落とす
古泉「あなたなら、こんなチャチな攻撃が通用しないことくらい、わかってると思いましたがっ!」
そういってキョンに向かって弾を飛ばそうとする。

キョン「ばぁか……。『蛇苺』にはなぁ…棘があるんだよ……っ!」
古泉「………?しまったっ!!」

切り落としたはずの轍から猛スピードで棘が伸びる
古泉「くっ…!」

ズサッ…!

なんとか致命傷を避けたが、古泉の掌には風穴が開いた

古泉「うっ……!!」

143: 2008/08/07(木) 23:25:03.98 ID:vkMJm7dl0
ドスッ!!

そして長門は自らに向かって突進してくる棘を避けようとしなかった。

おかげで長門の腹部には古泉とは比べ物にならないほどの孔が開いた。

ハルヒ「有希っ!!ちょっと…キョン、あんた………っ!」

ハルヒがキョンに詰め寄ろうとするのを鶴屋が止める。

ハルヒ「ちょっと鶴屋さんあんたまで…………」

鶴屋「はるにゃん…あれ見て………」

ハルヒ「……っ!?」

長門は自力で棘を引き抜き、地面へ放り投げる。
すると見る見る孔が塞がる。

キョン「やっぱ……これくらいじゃ……ダメかっ!!」

長門が向き直る

長門「――――――――――――――――」
そしてものすごい速さで何か唱える。

キョン「まずい……っ!!」

144: 2008/08/07(木) 23:25:25.46 ID:vkMJm7dl0
目には見えない何かが飛んでくるのがわかる。

キョン「うおおおおおおおっ!!!」

ハリヒ、鶴屋と突き飛ばし、蒼星石、真紅をそれぞれ
金糸雀、翠星石のところへ投げ飛ばす。

真紅「………!よくやったのだわ、人間っ!!」
真紅と蒼星石は二人を抱え、避難する。

キョン「雛苺っ!!」
キョンは服にしがみついてる雛苺を投げ飛ばそうとする。
しかし雛苺は頑なに手を離さない。
キョン「バカ…お前なにやって……!」

雛苺「いや、離さないのっ!」

もう時間がない――――――――

キョン「くそっ…!!!」

キョンは雛苺を抱きかかえ、丸くなり見えない何かに背を向けた

雛苺だけでも守ろうとしたが、結果的に二人とも10メートルは吹き飛んだ

ハルヒ「キョン!!!」
ハルヒはすぐさま駆け出し、その間に鶴屋と真紅、蒼星石は
気を失った部長、水銀燈、翠星石、金糸雀を比較的安全な校舎付近に移動させた

145: 2008/08/07(木) 23:25:46.11 ID:vkMJm7dl0
古泉「―――さすがに氏にましたか…?」

古泉が隣の長門に問いかける

長門「まだ………それどころか意識も…微かにある」

古泉「えっ……?長門さんのアレを受けたのに……?」

長門「おそらく彼女が望んだから」

古泉「なるほど…厄介な力です」


二人はハルヒとキョンの元へ歩き出す

古泉「…長門さんは涼宮さんとキョン君を頼みます」

古泉は長門と離れ、鶴屋と、蒼星石を目で捉える

古泉「おや…真紅がいませんね…逃がしましたか……?」

一歩一歩近寄る

146: 2008/08/07(木) 23:26:28.35 ID:vkMJm7dl0
鶴屋「うりゃああぁぁっ!!」

鶴屋が古泉に猛進する

古泉「………………っ!?」

古泉が鶴屋に片手を向ける

二人の距離は3メートルもない

この距離なら間違いなく当たる…!
古泉が紅い弾を撃ちだそうとしたとき、鶴屋が古泉の後ろ…ハルヒたちを指差して叫んだ

鶴屋「真紅っ!今にょろっ!!」

古泉「しまった…鶴屋さんは囮か…!」

慌てて振り返る。しかし真紅の姿はない

古泉「……?」

古泉はコンマ数秒考えた後ハッと鶴屋に向き直る

古泉「しまった…!」

古泉が振り返るの同時に、鶴屋は背中に貼り付かせておいた真紅を抱えて……
おもいっきり投げ飛ばす

149: 2008/08/07(木) 23:31:02.12 ID:ID+qNxxGO
古泉「くっ!」
急いで真紅に狙いを定めて弾を撃ったが、
直前に鶴屋に突き飛ばされ、弾は真紅から大きくそれた
その隙に真紅は着地し、ハルヒと合流する
ハルヒ「し…真紅っ!」
真紅「全く人間は…投げる以外に受け渡しの方法はないの……?」

鶴屋「よしっ…はるにゃんのことは真紅にまかせるとして……」
目の前に古泉が立ちはだかる
鶴屋「こっちはこっちで大変そうだねっ!!」
古泉は指をパチンと鳴らす
すぅっ…と紅い弾が浮かんだ
古泉「ふ……もっふ!!!」
弾は真っ直ぐ鶴屋目掛けて飛んだが、鶴屋はそれを上手く避けた
蒼「そうだ…いくら速くてもあの程度の弾なら冷静に見極めれば当たることはない!」
鶴屋「蒼星石の言ったとおりだねっ…!」
鶴屋の額に汗が浮かぶ
古泉「なら…これでどうです…セカンドレイドッ!!」

150: 2008/08/07(木) 23:31:44.58 ID:ID+qNxxGO
さっきまでバレーのスパイクのようなモーションだったが、今度はドッヂボールのように投げられた
鶴屋「うわぁっ!!」
しかし鶴屋はそれすら凌いで見せた
弾は地面に当たる
鶴屋「へへっ…」
鶴屋が弾から目を離した瞬間
蒼「まずいっ!!」
再び弾が鶴屋に迫る
鶴屋「しまっ………」
足がよろけて反応できない
古泉「終わりですっ!!」
弾が鶴屋に当たる直前、蒼星石が紅い弾と鶴屋の間に入る
蒼「惜しかったね」
蒼星石が鋏を構えたかと思うと、セカンドレイドは真っ二つに割れ、左右に外れる

152: 2008/08/07(木) 23:38:14.12 ID:ID+qNxxGO
古泉「な…何故……っ!」
蒼星石が古泉に鋏を向ける
蒼「ボクの鋏は…空間を切り取る力がある」
古泉「空間…っ?じゃあ……」
蒼「そう、君の攻撃の一部を切り取り、反らした」
古泉「………っ、反則的ですね」
蒼「君も人間にしては反則的な強さだと思うけど」
古泉はボロボロになった腕を蒼星石に向ける
蒼「やめた方がいい。もともとその力は乱発できるようなものじゃないはずだ」
古泉「やってみなくちゃ…わかりませんよっ!!」
今度は何発かの弾が浮き出る
古泉「はあああぁぁ!!」
一気に撃ち込む

しかし片手では狙いがずれる
鶴屋「ほいっ、ほっ!」
鶴屋もすでに足が慣れ、余裕の表情でよける

153: 2008/08/07(木) 23:39:29.78 ID:ID+qNxxGO
古泉「くっ……セカンドレイドォォオ!!」
鶴屋が避ける。しかし弾は落ちずに跳ね返ってくる。
鶴屋「へっ?」
しかしまた蒼星石が間に入り、阻止する
蒼「なるほど。そのセカンドレイドってのは一直線じゃなくて、攻撃にワンモーション加えられるのか」
古泉の口が歪む
紅い弾が地面から蒼星石に向かってくる
鶴屋「あ…危ないっ!!」
蒼「………甘いよ」
蒼星石は後ろ振り向きもせずにその弾を切り刻む
古泉「な…何故……」
蒼「君が本当はセカンドレイドを二発放っていたのは気付いてた」
古泉「………っ!?」
蒼「最初の弾と攻撃モーションが全く違うからね…」
蒼「それにセカンドレイドの方がスピードは遅い」
蒼「きっと本来両手撃ちなんだね。それならフェイントや、今みたいな不意討ちもかけやすい」
蒼「でも、君はさっきの雛苺の攻撃で片手が使えない……」

154: 2008/08/07(木) 23:40:20.53 ID:ID+qNxxGO
古泉がため息をつく
古泉「そこまで読まれてましたか……」
構えていた手を下ろす
古泉「完全に負けましたよ…この手ではもう攻撃もできません……」

古泉の手は既に殆んどの皮が剥げ、爪も無かった
古泉「僕をどうしますか?今のうちに頃す?」
古泉はあきらめたように両手を挙げる
鶴屋「頃しはしないよ」
鶴屋「まずは、はるにゃんとキョン君に謝ってもらう。それでその後はるにゃん達が決めればいいさ」
古泉「謝る…ですか……。」

古泉「それが一番……辛いんですがね……」

158: 2008/08/07(木) 23:41:52.66 ID:ID+qNxxGO


真紅「彼女が来たわよ…っ!」
長門が淡々と近づいてくる
ハルヒ「有希…ねぇ、あなた本当に……!」
長門「――――――――――」
真紅「っ!危ないっ!!」
真紅がハルヒの手を引く
真紅「何をしてるのっ!もう話しかけても無駄なのだわ!」
ハルヒ「でも…私は有希と闘いたくないっ!有希だけじゃない、誰とも闘いたくなんてない!」
真紅「………じゃあ氏ぬの?」
ハルヒ「えっ?」
真紅「闘わなきゃ…氏ぬのよっ…貴女も、私もっ!」
真紅は長門を睨み付ける
真紅「いいこと、ハルヒ…闘うってことは生きるってこと」
真紅「これは何も今だけの話ではないのだわ……」
真紅「人間の世界も闘いが基本でしょう?物理的な闘いはなくても、自分の大切なものを守るために闘うの」

159: 2008/08/07(木) 23:42:42.21 ID:ID+qNxxGO
真紅「でも、闘うことは悪いことじゃないわ…生きることよっ!それがドールの…人間の誇り!」
真紅「だからハルヒ…闘うことをやめたら氏ぬのっ!誇り高き心が氏ぬのよ!!」
長門がどんどん近づいてくる
ハルヒ「真紅……」
ハルヒと真紅が見つめ合う
ハルヒ「わかったわ……私は闘う…!そしてみんなで此処を出るわ!」
ハルヒが立ち上がる
長門は目の前だった

ハルヒ「真紅、両手を前に!」
真紅「えぇっ」

ハルヒは指輪を通じて真紅と繋がっているのがわかった
長門が呪文を唱えようとしたとき、校舎の窓ガラスが割れ
中から机や椅子が飛び出してきた

真紅「やああぁぁっ!」
それらが長門に向かって一斉に飛ぶ

160: 2008/08/07(木) 23:43:20.68 ID:ID+qNxxGO
長門「………………!」
長門は到底人には真似できないような速さでかわす
机やら椅子やらは勢いを殺せず、地面に当たって砕け散る
そしてその砕け散った破片が再び長門に飛ぶ
長門「…………なるほど」
長門はいくつか避けたが、さすがに全て避けることはできず、血を流す
長門「……貴女の能力…それは、物体を操作する能力……」
長門が足を止めずに向かってくる
真紅「…ちょっと正解」
長門「ちょっと……?」
長門の頭上に大きな鏡が浮かぶ
長門「………これはまずい」
そう言って頭上から降ってくる鏡を走って避ける
鏡が大きな音を立てて割れた
長門「――――――」
例の呪文を唱える
見えない何かが迫り来るのをハルヒも真紅も感じた

161: 2008/08/07(木) 23:43:52.73 ID:ID+qNxxGO
ハルヒ「真紅っ!!」
真紅「えぇっ!!」
真紅が両手を天高く挙げる
すると地面が捲れ上がり、ハルヒ達の盾となった
長門「無駄………その程度では……」
しかし長門の予想を外れて、ハルヒ達は無事だった
長門「………………?」
真紅「さっき『ちょっと正解』って言ったでしょう?私の能力は物体を操作、強化し……」
さっき割れた鏡の破片の中から千を越える木材と鏡の破片が浮かび上がった
真紅「『複製』する能力……!!」
破片は一斉に長門に襲いかかった
長門「…これは……回避不可能……」
長門は全てを受け止める

164: 2008/08/07(木) 23:55:18.24 ID:vkMJm7dl0
しかし、攻撃が終わった後、長門はまだ立っていた
長門「情報連結、解除」

長門がそう呟くと、刺さっていたガラスや木片が消える

ハルヒ「くっ…!」

長門「再構成、開始」
身体もみるみるうちに元に戻る

ハルヒ「真紅…あんたまだ闘える……?」

ハルヒと真紅は冷や汗を浮かべた

真紅「かなり…きついわね……」

あれだけの大技を連発して、二人はたっているのもやっとだった
長門が目と鼻の先にまで近づき、ハルヒの肩を掴む

ハルヒ「ひっ……!」

長門「私の、負け」

ハルヒ「へ………?」

ハルヒは何が起きたのかわからず唖然とする

長門「私は今の修復作業でほとんど力を使い果たした。これ以上の戦闘続行は不可能」


165: 2008/08/07(木) 23:56:08.49 ID:vkMJm7dl0
そしてひとまず、全員が校庭に集まる

ハルヒ「有希、やりなさい」

長門はドールと部長、キョンの傷を回復させた

部「こ…こは……?」
銀「真紅……?」

キョン「う…あたた……」
雛「うーん、よく寝たのー」

皆ほぼ完璧に回復した

古泉「でもよかったんですか…?」

古泉「僕まで治しちゃって」

古泉は相変わらず笑顔だった

ハルヒ「えぇ、まずは説明してもらわなきゃいけないし」

そう言ってハルヒがちらとキョンを見る

166: 2008/08/07(木) 23:57:25.73 ID:vkMJm7dl0
キョン「そうだな…そんでお前らちょっとこい」

古泉「…?」
長門「…?」

二人がキョンの元に歩いて行く

キョンが行きなり古泉を殴り飛ばした

古泉「うあっ…!!」

そして長門には力いっぱいデコピンした

長門「っつ…!」

キョン「よし、すっきりした。」

古泉「なるほど…」

古泉が頬をさすりながら立ち上がる

古泉「……しかしこれはあまりに男女差別じゃないですか?」

キョン「うるせー。っていうかこの状況でよく冗談言ってられんな」

キョンは呆れて笑った

167: 2008/08/07(木) 23:57:46.35 ID:vkMJm7dl0
古泉「もう吹っ切れましたよ」

両手をあげ、やれやれ、といったポーズをとる

キョン「わかったわかった…で、これはどういうことなのか説明してくれ」



一呼吸おいてから、古泉は今までにの経緯を話した。

ハルヒの力について
自分達が人間ではないことについて


キョン「ふん…俺が知る限りは嘘はないな」

雛「ひなにはよくわからなかったのー」
真紅「人間には、人間の事情があるのだわ」
銀「面倒なのねぇ」
蒼「それは同感」

ハルヒを含む部長、鶴屋の三人はさすがに
開いた口がふさがらないようだった

部「いやぁ、もう何を言われても驚かないつもりだったんだが…」

鶴屋「みくるが未来人…かぁ~」

三人とも狐につままれたようだ

168: 2008/08/07(木) 23:58:07.56 ID:vkMJm7dl0
ハルヒ「……その話が本当だとして、わからないことがいくつかあるわ」

ハルヒが静かに古泉を見る

古泉「…なんでしょう」

ハルヒ「1つはキョン。古泉君は超能力者、有希は宇宙人、みくるちゃんは未来人…キョンはなんなの?」

古泉「すみません…それだけはわからないんです。
さっき話したように涼宮さんのその力の予備ではないか…というのが最有力説ではありますが
…此処にいるからには、涼宮さんに望まれたことは確かなんですがね…」

キョン「お前には心当たり無いのか?」

ハルヒ「んー、異世界人でも地底人でもないなら…あんた忍者の末裔だったりしない?」

キョン「それはないと思うが…」

古泉「あ、その線も考慮して調べましたが違いました」
キョン「それも調べたのかよ…」
古泉「ちなみにしがない商人でした」
キョン「ほっとけよ…」

169: 2008/08/07(木) 23:58:27.66 ID:vkMJm7dl0
ハルヒがこほん、と咳払いをする

古泉「失礼しました…で、他には?」

ハルヒ「じゃあこの子たちは?」

ハルヒは真紅を指差す

古泉「すみません、それもわかりません…
しかし涼宮さんが何か面白いことを望んだが故のことだとは思います」

真紅「それは違うのだわ」

今度は真紅が話始めた。

真紅「私達の使命は『涼宮ハルヒの解放』」

真紅「この解放の意味はわからないけど…
…私達のお父様は私達を意図的に涼宮ハルヒのもとへ送り込んだ」

古泉「なるほど…確かに言われてみれば」

キョン「そもそも、もうハルヒは不思議現象なんて望んじゃいないしな」

古泉「えっ…?」

古泉がかなり驚いた顔をする

170: 2008/08/07(木) 23:58:50.21 ID:vkMJm7dl0
キョン「だろ?」

キョンがハルヒに向かって笑う

ハルヒ「う…うん……」

古泉「で…では何故あんな態度を……?」

ハルヒは耳まで赤くしてうつむく

ハルヒ「だ…だって…なんとなく、古泉君や有紀、みくるちゃんに……キョン。
…みんなが一緒にいてくれるのは、
私がそういう人間だからだって気がしてたから…事実、そうだったし…」

古泉「そう…だったんですか」

キョン「なぁ、おかしくないか?」

古泉「おかしい…?」

キョン「気付かないか?」

古泉「……………?」

キョンが古泉を凝視する

古泉「…っ!閉鎖空間……!」

171: 2008/08/07(木) 23:59:19.48 ID:vkMJm7dl0
キョン「そうだよ…」

部「なんだなんだ、どういうことだ?」

部長とハルヒはわけがわからないという顔をしてる

鶴屋「つまり…閉鎖空間っていうのは、はるにゃんの心の不満みたいなのが原因なんだから、
現状維持したいと思ってるはるにゃんが閉鎖空間を発生させるのは、おかしいってことにょろ?」

キョン「そうだ…しかも閉鎖空間は高校に入った直後に形を変えた」

キョン「現実世界同化するようにな。でも、これって現実世界を取り込むのとはちょっと違うんじゃねえか?」

キョン「同化ってことは現実を閉鎖空間に変えるんじゃなくて、閉鎖空間が現実に溶け込むってことじゃないか?」

キョン「つまりハルヒは、ハルヒ自身の意識で閉鎖空間を封印し始めた…おそらくこれが答えだ」

古泉は今までに見せたことがないほど驚嘆していた

古泉「長門さん…!!」

長門「今の話を考慮すれば…ほぼ全ての現象につじつまが合う……」

172: 2008/08/07(木) 23:59:42.86 ID:vkMJm7dl0
古泉「荒川さんっ!森さんっ…!!聞こえましたかっ!?
今の話をもう一度考慮して作戦を見直すべきですっ!!」

キョン「やっぱりか」
ハルヒ「え?」

キョン「この大掛かりな作戦、二人だけで遂行するはずがない…必ず誰か管理者が見てるはずだ」
キョンがハルヒにむかって笑う

キョン「つまりそいつらを説得すりゃこっから出られるって寸法さ!」
キョンは疲れからか、その場で仰向けになった

キョン「俺の考えはおそらく正しい!これで出られ……」

キョンの会話を古泉の大声が遮る

古泉「どういうことですか!?彼が正しいのは明白ですっ!!」

173: 2008/08/08(金) 00:00:05.47 ID:Fv2AQAGY0
部「なんだ…どうした……?」

古泉「何故ですか!それがあなたたちの……」

『空間保持装置、解除』

聞き覚えのある声、おそらく荒川さんだ

その声が聞こえた瞬間地面が大きく揺れ、収まったときに古泉が地面にへたれこんでいた



閉鎖空間に、閉じ込められた

174: 2008/08/08(金) 00:00:51.88 ID:Fv2AQAGY0
古泉「完全に閉じ込められてしまったようですね…」

古泉は見えない壁をぺたぺたと触る

金糸雀と翠星石は正気に戻っていた
現実世界と、一切の交渉が途絶えたことで機関が生み出した指輪に縛られなくなったからだろうと古泉は言っていた

長門も正気に戻った…というより、いつもの長門に戻った。

今まで長門の身体には情報統合思念体が直接介入していたらしい。
戦闘の負傷から通信維持ができなくなり一時的に退去したのだが、現実と閉鎖空間との接点がなくなったため
もう侵入されることはないそうだ。

長門「私は、涼宮ハルヒの抹殺や、ローゼンメイデンの兵器化には反対だった。
しかし情報統合思念体に抵抗することは不可能だった…」

長門なりに謝っていたのだろうか

真紅「駄目ね…」

真紅が見えない壁に何度目かの蹴りをいれる

真紅「いくら薔薇の誓いの力が加わっても、この結界は破れそうにない」

175: 2008/08/08(金) 00:01:12.31 ID:Fv2AQAGY0
キョン「古泉、長門、お前らなんとかならんか」

二人とも首を横に振る

古泉「すでに僕達には能力を使うほどの力が残ってません…」

キョン「MP切れかよ……」


皆疲労困憊だった。


口数も減って、いよいよ危ないときになってバリバリと音を立てて空間が裂けた。


「み、みなさぁん!よ…よかったぁ…」

聞き覚えのある声

176: 2008/08/08(金) 00:01:35.42 ID:Fv2AQAGY0
ハルヒ「み、みくるちゃん!?」

皆に活気が戻った

みくる「涼宮さん…!よかった…生きてた……」

鶴屋「みくる~!助けに来てくれたんだねっ!?」

鶴屋がみくるに駆け寄る

真紅「…………?」

みくるの足元に小さな影がひとつ

真紅「あれは……!?」

その影が真紅に向かってにやっ…と笑う


みくる「助けに…?」

蒼「……っ!危ないっ!!!」

177: 2008/08/08(金) 00:02:05.51 ID:Fv2AQAGY0
小さな影から何本もの刺々しい白薔薇が鶴屋に向かって伸びる。

ドスッ…ドスドスッ…!!

間に入った蒼星石に刺さる

鶴屋「………え…?」

そこにいた全員が、何が起きたか理解できなかった

蒼「はや……く……逃げるんだ…!」

蒼星石が力なく地に堕ちる

鶴屋「蒼星石ーっ!!!」

鶴屋が蒼星石を助けに行こうとするが、部長に止められる

部「よせっ…!彼女は君を守るために君の盾となった…!ここで君が駆け寄ってなんになる!!」

そう言って強引に引っ張る

178: 2008/08/08(金) 00:02:29.35 ID:Fv2AQAGY0
ハルヒ「みくるちゃん…どういうこと!?」

みくる「どうもこうもないです…本当に危なかったんですよぉ?」

みくる「穏便派のやつら、私達に漏れないように、極秘でこんなことやるんだからぁ」
みくるがゆらゆらと歩いてくる

みくる「涼宮さんが封印されるなんて…そんなつまらないオチだったらどうしようかと思っちゃいました」

足元に転がった蒼星石を蹴り上げる

蒼「がっ…!!」

翠「蒼星石っ…!!!」

翠星石が走り、それを受け止める

蒼「みんな…涼宮ハルヒを守るんだ…ローゼンメイデンの……誇りにかけて…!」

蒼「鶴屋さん…みんな…、ありがとう…楽しかったよ……」

蒼星石から力が抜けて、光る宝石のようなものが浮かび上がる

179: 2008/08/08(金) 00:02:49.80 ID:Fv2AQAGY0
翠「これ…は……?」

銀「それは…ローザミスティカ!」

真紅「なんなの、それは…?」

銀「お父様が言っていた…ドールがその役目を全うしたときに出るという……」

銀「そしてそのローザミスティカが出てきた時点で、そのドールは役目を終え…止まる」

翠「そんな……蒼星石……!」

翠星石が小さな影を睨み付ける

翠「あんた…誰ですかっ!」

その影がみくるから離れ、姿が見える

銀「……っ!あんたぁ…!」

雪「ふふ…私は雪華綺晶…『第7ドール』の雪華綺晶…よろしく、お姉さま」

古泉「第7ドール…?あなた達、6姉妹だったのでは…?」

真紅「えぇ…第7ドールなんて聞いたことがない…彼女はお父様の作品じゃない」

180: 2008/08/08(金) 00:03:29.19 ID:Fv2AQAGY0
真紅が雪華綺晶を睨む

銀「それだけじゃないわぁ…あいつ、ここに来る前、時空の海で私達を邪魔した奴よ…!」

金「じゃあ…あいつをやっつければ私達の記憶も戻るかしら…?」

雛「蒼星石をいじめた罰を受けさせるの!」
ドールズが雪華綺晶に向き直る

部「お…おいっ!」

部長が止めようとするのをキョンが制止する

キョン「彼女達の判断は正しい…」

部「え?」

キョン「ここは閉鎖空間です…どちらにしろ逃げ場はない!」

古泉「それに…彼女にはいろいろ聞き出さなければいけませんし……」

キョンと古泉も朝比奈みくるを睨み付ける

みくる「お教えしますよぉ…?……聞き出す暇があれば…ですが」

181: 2008/08/08(金) 00:03:49.25 ID:Fv2AQAGY0

雪華綺晶の蜘蛛の巣のような白薔薇が飛ぶ

キョン「雛苺っ!!」
雛「わかったのっ!」

雛苺の『蛇苺』が白薔薇を受け止める

雛「うわっ…!」

しかし白薔薇の方が数も多く力も強い

キョン「くっ…すまん、ハルヒを頼む!!」

部長「引き受けた…っ!!」
銀「いくわよぉ…!!」

水銀燈が羽ばたくと、強風吹き付け、白薔薇を食い止める

ハルヒ「みくるちゃん…!どういうことなの?説明して!!」

みくるはあはっ、と笑って答える

みくる「難しいことじゃないです…私はチームの中でも過激派…
つまり最初っから涼宮ハルヒを頃してみたくてたまらなかった!!」

183: 2008/08/08(金) 00:04:16.23 ID:Fv2AQAGY0
ハルヒ「えっ……?」

みくるが、心のそこから楽しそうに笑う

みくる「そこの超能力者や宇宙人が涼宮を守るために必氏で作戦を考えてるときなんて…最高に笑えましたよっ!!」

笑いながらみくるが雪華綺晶に話しかける

みくる「ちょっと雪華綺晶…あなた何遊んでるの?もうちょっと本気出しなさいよ」

雪華綺晶の口が歪む

雪「わかったわ…でも、その前に……」

白薔薇が鶴屋に向かって伸びる

キョン「なにっ……!?」

鶴屋「くっ……はるにゃん!!」

鶴屋はローザミスティカが取り巻く蒼星石を投げる

ハルヒ「おっと…!」

なんとか受け止める

部「鶴屋さ……!!」

鶴屋の身体に白薔薇が巻き付き、あっと言う間に捕まってしまう

184: 2008/08/08(金) 00:04:56.73 ID:Fv2AQAGY0
雪「ふぅ…。力を出すには、やっぱり媒介はひとつじゃたりないわ」

雪華綺晶の薔薇は、急に力があがり、数も増えた

雛「きゃ!!」

『蛇苺』が破られる

翠「チビチビ…!あぶねーです!!」

翠星石が雛苺を突き飛ばした

ドスッ

太い薔薇が翠星石を突き破る

翠「ぐぅ…っ!!」

長門が猛スピード走り、で雛苺と翠星石を抱き上げ、キョンに投げる

キョン「な…長門っ!!」
白薔薇が長門を捉えた

長門「翠星石……ごめんなさい……っ」
翠「気にすんなですぅ……また…おでん……食べに…」

翠星石の身体からもローザミスティカが浮かび上がる

185: 2008/08/08(金) 00:08:14.17 ID:fqj+7/KfO
雛「翠星石っ!!」
長門を吸収することで、雪華綺晶はより力を強める
キョン「ちくしょう…なんとかなんねーのかよ…!!」
古泉「ならないこともない…っ!」
3人が古泉の方を向く
ハルヒ「えっ……?」
キョン「なんだ、何か策があるのかっ?」
古泉「策…というにはあまりにも不確定要素が多すぎますが…」
部「いや、この際そんなこと言ってられない…!!」
雛苺が再び加勢に行ったが、水銀燈と雛苺だけでは、とても雪華綺晶を止めていられない
真紅「くっ…ハルヒ!指輪に力を込めて頂戴!」
雛「来ちゃだめなのっ!」
真紅が水銀燈たちのところへ駆けつけようとしたが、雛苺に止められた
銀「真紅ぅ…私達の使命はなに…?」
真紅「………!でも!」
銀「心配すんじゃないわよぉ………倒すまでいかなくても…足止めくらい…!!」
雛「金糸雀は…真紅を守るのっ!!」
金糸雀は叫んだ
金「わ…わかったかしら…!!」
そしてやるせなさそうに言う
金「…薔薇の誓いが解けた今…できることをしなくちゃ……」
古泉「…では聞いて下さい、キョン君と部長さんは力の放出を続けながら」
キョン「おう」
部長「わかった」

186: 2008/08/08(金) 00:09:53.49 ID:fqj+7/KfO
古泉「…この状況で助かるには、2つの不確定要素…涼宮さんの能力と、ローゼンメイデンにかけるしかありません」
ハルヒ、キョン、部長、真紅、金糸雀はただ黙って聞く

銀「くっ…この薔薇…力がどんどんあがる…!」
雛「け、結構ピンチ…なの…」
みくる「あはは、見て雪華綺晶…キョン君達、必氏に作戦たててるよぉ…惨めねぇ~」
みくるが余裕の表情で嘲う
銀「大体…っ!なんなのよ…第7ドール…って!!」
雛「ここに来る前はいなかった…あうっ!」
雛苺の頬を薔薇がかすめる
みくる「それはそうですよ…雪華綺晶は、未来の私達が…過去を変えるために送り込んだ欠番のドール…」
銀「なんですっ…て?」
みくる「未来の私達…過激派は、この事件から、データを収集して、最強のドールを作り出した」
みくる「ミーディアムを加えれば加えるほど強くなる雪華綺晶…!」
みくる「本当は時空間の海であなたたちを始末できればよかったんだけど…そこまで上手くはいきませんでした」
銀「じゃああんたが諸悪の根源ってわけねぇ…!!」

187: 2008/08/08(金) 00:10:34.96 ID:fqj+7/KfO
古泉「まず、涼宮さんの能力は先ほどお話したように願望を現実にする力…」
ハルヒ「なるほどっ!」
ハルヒが手を叩く
ハルヒ「つまり私が此処を出られるように念じればいいのねっ?」
古泉「半分当たりで…半分外れです」
ハルヒはむっ、としかめっ面をする
古泉「事態はそう簡単ではありません…涼宮さんは自身の力を半分もコントロールできていない」
キョン「どういうことだ…?」
古泉「涼宮さんの身体ははまだその能力に慣れていないのです」
古泉「これは、涼宮さんが能力を乱用することを防ぐため、
できるだけ涼宮さんに能力を遣わせなかった僕の責任なのですが……」
ハルヒ「慣れてないと、なにが駄目なの?」
古泉「思い出してみて下さい…あなたは入学当初、宇宙人、未来人、超能力者に
加えて異世界人や忍者…もっと多くのものを望んだはずです」
古泉「事実、宇宙人未来人超能力者は集まりました…ちなみにこれは涼宮さんが望んだ順です」
古泉「しかしこれ以降ぴたりとやんでしまった…これはキョン君の話とあわせて考えると…」
古泉「あなたが現状に満足し始めた…つまり望みが薄れたということです」

188: 2008/08/08(金) 00:11:53.92 ID:fqj+7/KfO
古泉「以上のことからわかるように、願望を現実にするには長い年月それを願うことと、強い思い…
このふたつなくして願いは実現しません」
古泉「だから、今ぽっと出たような願いじゃ叶わないのです…!」
ハルヒ「じゃあどうすれば……!」
古泉「なんとか…『以前』から『強く』願っていて…ここから『脱出』できる、
現在の涼宮さんの能力の『身の丈に合った』願望を…!」
ハルヒ「わ…わかんないわよそんなの…すぐになんて!」
古泉「ですから、その間に私達が時間を稼ぎます…そして真紅さん」
真紅「なにかしら?」
古泉「あなたのお父様の言う『解放』を信じます」
真紅「…………?」
古泉「おそらく解放とは…この状態からの解放のことだと思われます…
ということはお父様はこの状態を予期していた」
古泉「つまり涼宮さんを解放するための何かがあなたにはある…ということです」
古泉「そしてあなたが涼宮さんをミーディアムに選んだ理由もきっとある…
…だからあなたは涼宮さんの側で涼宮さんだけを守ってください」
古泉「金糸雀は、真紅を」
金糸雀が力強くうなずく
キョン「じゃ…俺たちの役目は?」
古泉が笑う。
いつもの貼りついたような笑みではなかった
古泉「奇跡を信じて…時間を稼ぐことです」

それを合図にキョン、古泉、部長は走り出した

189: 2008/08/08(金) 00:16:02.63 ID:fqj+7/KfO
みくる「ありゃ…キョン君達、まだ抵抗するみたい」
キョンと部長が指輪に力を込める
雛「あ…あぶなかったの…」
銀「全く…いつまで待たせるのかしらぁ?」
部「すまん…だが、ここからは本気で行くぞ…!!」
キョン「雛苺…もう一度『蛇苺』に力を入れろ!」
『蛇苺』が白薔薇を押し返す
みくる「へぇ~、ドールとのシンクロが高いとこんなに力が出るんですか~」
みくるは焦りなど感じずに、素直に感心する。
部「…完全になめられてるな」
水銀燈がみくるに向かって羽根を飛ばす
みくる「雪華綺晶」
白薔薇が蜘蛛の巣のようになり、羽根を捉えた
みくる「ふふっ、お返しです」
漆黒が跳ね返ってくる
銀「…くっ!!」
なんとか背中の羽根で受け止めるも、累積ダメージと体力が底を尽きたこどで倒れてしまった
力の差は明白だった
古泉「うおおおぉぉぉ!!」
古泉が単身で突っ込んでいく
キョン「な…!雛苺、援護だっ!」
古泉にまとわり付こうとする白薔薇を『蛇苺』が受け止める
古泉「っ!食らえ!!」
古泉の前に紅い球体が浮かぶ
古泉「ふ…もっふ!!!」
キョン「よし…っ!当たる!!」
紅い弾はみくるに直撃する

191: 2008/08/08(金) 00:16:48.32 ID:fqj+7/KfO
みくる「…………なにこれ?」
しかしみくるには全くきいていなかった。
みくる「古泉君…よほど力を消耗したのね…私ですら受け止められるほど弱っちゃって…」
再び古泉に向かって白薔薇が伸びる
古泉「うぁ…!!」
そのうちの一本が古泉の手の小指を捉える
古泉「しまっ…!」
必氏に引き剥がそうとするが、剥がれないどころか爪から第一関節へ…
そして第二関節へと伸びる
古泉「く… ああぁぁぁ!!」
古泉はもう片方の手でポケットからダガーナイフを取り出す
古泉「…………っらああぁぁぁ!!」
ズスッ…
古泉は自分の小指を切り落とした
古泉「…っ!!うぉぉぉぉ!!」
大量の出血を自分の服を破り巻き付けることで一時的に抑える
キョン「こ…古泉っ!!」
今度は『蛇苺』が古泉を捉え、キョンと部長の元へ引き戻す
キョン「馬鹿野郎…なにやってんだ!!」
古泉「こうでもしなければ…時間稼ぎすら、ままならない…!」
キョン「だからって…!」
古泉「キョン君……」
痛みで歪んだ顔でキョンの目を見る
古泉「これは…罪滅ぼしのつもりなんです」
キョン「罪滅ぼし…?」

193: 2008/08/08(金) 00:17:25.27 ID:fqj+7/KfO
古泉「そう…キョン君、部長さん、鶴屋さん、涼宮さんへの……」
キョン「お前…そんなこと………」
古泉「こんなことで許されるとは思いません…でも……
僕は、少なくともあなた方四人は帰さないと…巻き込んだ者として…!」
古泉が立ち上がる
古泉「キョン君…引き続きフォローお願いします…これからは…さらに危険な橋をわたりますよ…!!」
キョンは古泉の肩に手を置く
キョン「お前が危険な橋を渡るってんなら俺も行くさ」
古泉「え……?」
キョン「思えば最初に閉鎖空間に入ったときや、
その後閉鎖空間に閉じ込められたとき…いつもお前はぎりぎりまで一緒にいてくれたな」
古泉「………………」
キョン「だから今回は俺がお前に付き合う」
古泉「キョン…君……」

部長がキョンの肩を叩く
部「おいおい二人とも、私を忘れてないか?」
古泉「部長さん……」
部「言ったじゃないか、私はSOS団を助けるためにここに来た…ってな」
部「君はSOS団の…副団長なんだろ?」
キョンと部長が笑う
古泉「えぇ…二人とも…ありがとうございます…!」
古泉が涙を拭く

194: 2008/08/08(金) 00:18:27.99 ID:fqj+7/KfO
みくる「はぁ~。くっさい三文芝居ですね…」
みくるがあきれたように言う
みくる「気はすみました?そろそろ行きますよ」
雪華綺晶の薔薇がさっきよりも勢いを増す
古泉「行きますよ!!」
部「氏ぬなよ!」
キョン「おう!」

白薔薇に向かって三人は、あろうことか突っ込んでいった

みくる「えっ!?」
三人は全てぎりぎりで避けながら近づいてくる
みくる「雪華綺晶…もう少し本気だしなさいっ」
薔薇が三人を攻撃する。
もうすでに何発も食らっていたが、致命傷や、捕まることはなかった
みくる「どうしたって言うの……?」
みくるに初めて焦りが浮かんだ
キョン「…古泉の言ったとおりだな…」
キョンは古泉の言葉を思い出す

197: 2008/08/08(金) 00:19:39.39 ID:Fv2AQAGY0
――攻撃を避けるときには目をみて下さい

――目?

――はい。薔薇や雪華綺晶ではなく、命令を出してる朝比奈みくるの目です

――漫画なんかでよく見るが…そんなに上手くいくか?

――えぇ、戦闘の初心者がまずするべきは相手の目を見ること。これで8割は
かわせますし、致命傷はほぼ確実に受けません

――そんなもんか

――えぇ。だから絶対に生き残って下さい

――お前もだよ。皆で帰ろう

――………はいっ


雛苺のサポートもあって、古泉の言ったとおり殆んどの攻撃を避けられた

キョン「これなら…!」

198: 2008/08/08(金) 00:20:06.06 ID:Fv2AQAGY0
キョンはハルヒを見る

何やら真紅と話しているようだ

キョン「頼むぞ……」

みくる「ちぇっ…やめやめ。これじゃ埒があきません」

三人を襲っていた白薔薇が急に消え去る

古泉「………?」

みくる「そろそろ飽きてきたし…本気でいきますよ」

みくるが雪華綺晶に手を置く

みくる「あの二人の力を最大限に引き出して、3…いや、2でいいわ」

その瞬間雪華綺晶の眼帯から二本の薔薇が伸びる

キョン「なんだあれ…今までと大きさが段違いだぞ……」

毒々しいほどの白薔薇は雪華綺晶のもとに佇んでいたが、
雪華綺晶が前を指差すと物凄い速さで突進してくる

199: 2008/08/08(金) 00:20:30.48 ID:Fv2AQAGY0
古泉「まずいっ!金糸雀…涼宮さんと真紅をっ!!」

古泉は振り返り金糸雀に叫ぶ

みくる「あれぇ…敵に背を向けるなんて…ずいぶん余裕じゃないですか」

古泉「えっ?」

ドスッ

一本の薔薇が古泉を貫きもう一本が縛り上げる

古泉「が…ハッ!!」

口から大量の血をはく

キョン「古泉いいいいぃぃぃ!!」

古泉が雪華綺晶の中に取り込まれる

みくる「安心してキョン君…古泉君は氏ぬ前に雪華綺晶の中に入れてあげたわ…先に氏んじゃったら力を使えないもの」

みくる「あそこには氏なんてない…変わりに生もないんだけど。ただ、雪華綺晶に力を注ぐだけ」

みくる「さぁて、残り3人と4匹」

200: 2008/08/08(金) 00:20:52.00 ID:Fv2AQAGY0
みくるが今までの彼女からは想像できない顔をする

雪「ふふふ…さすがに4つも媒介があれば…何だってできちゃうような気さえする…」

雪華綺晶がまるで姉妹のように朝比奈みくると同じ顔で笑う

部「おいおい冗談じゃないぞ…」

さっき古泉を襲った薔薇が5本も増えている

みくる「やりなさい」

キョン「雛苺おおぉ!!『蛇苺』だッ!!」

キョンが後ろを振り返ったとき、すでに雛苺と水銀燈は薔薇に貫かれていた

キョン「な……」

薔薇がキョンにも迫る

部「呆けてるんじゃないっ!!」

部長がキョンを蹴り飛ばす。キョンに向かってきた薔薇がその足に刺さる

部「ぐ……!何してる、走れ!!涼宮を守るんだ…!!」

201: 2008/08/08(金) 00:21:13.08 ID:Fv2AQAGY0
部「悲しんでる暇なんてない!!それに、もう彼女たちに闘う力は残されてなかった…」

部「私が思うに重要なのは涼宮ハルヒ、真紅…これだけではない」

部長が雛苺と水銀燈から浮かび上がるローザミスティカを指差す

部「あと2つ…ローザミスティカ……そして君だ!」

キョン「お…俺?」

部「そうだ…古泉一樹…彼が言っていたのを覚えてるか……?」

部「宇宙人未来人超能力者…それらが現れたのは涼宮ハルヒが望んだ順…だったと言ったはずだ」

部「SOS団で最初に涼宮ハルヒと出会ったのは誰だった…?宇宙人?超能力者?」

203: 2008/08/08(金) 00:21:50.37 ID:Fv2AQAGY0



キョン「俺………だ」

部「やはりな…」

部長がちらとハルヒを見たときにその瞳が大きく開かれる

部「あれは…!」

ハルヒの近くでローザミスティカが浮かんでいる

部「金糸雀か…!!」
前方ではみくるが再び攻撃の準備をしていた

部「はやく行けっ!!水銀燈と雛苺のローザミスティカを忘れるなよ…っ!!」

キョン「……すまんっ!!」
キョンが走り出し、雛苺と水銀燈のローザミスティカを抱えてハルヒの元へ向かう

部「水銀燈と雛苺のローザミスティカが浮かびあがったとき…真紅の体が
呼応するように一瞬光った…彼も涼宮ハルヒも気づいてなかったがこれは…」

部「間違いなく希望への鍵…!!そして彼もまた……」

白薔薇が、部長の身体を捕らえる

204: 2008/08/08(金) 00:22:38.94 ID:Fv2AQAGY0
キョン「ハルヒッ!!」
キョンがハルヒの前まで来る

ハルヒ「キョン…!みんなが……!!」
ハルヒが涙を浮かべた

キョン「あぁ…だが今は嘆くときじゃない…!」
真紅がキョンの両手にあるものに気付く

真紅「キョン…それは?」

キョン「あ、あぁ…雛苺と、水銀燈のローザミスティカ…部長が持ってろって……」

キョンが掌を開くと、翠星石、蒼星石、金糸雀のローザミスティカもそれに反応するように輝いた

真紅「え…っ?」

そしてそれが真紅にまとわり、真紅の中へと入っていく

真紅「みんな…」

真紅は自分の中に新たな力が芽生えたのを強く感じた

206: 2008/08/08(金) 00:22:58.70 ID:Fv2AQAGY0

部長を取り込んだ雪華綺晶の薔薇の数は10を軽く越えた


みくる「じゃあ、そろそろ終わりにしましょう」

そう言ってゆっくりと指を三人にむかって指す

みくる「それじゃあ…さよなら」

白薔薇が一斉に攻撃を開始する

ハルヒ「ひっ……!!」

ハルヒは目をつぶり、キョンは悔しそうに顔を背ける

真紅「ハルヒ…指輪に力を込めて…!!」

ハルヒ「えっ……?」

真紅「はやくっ!!」

ハルヒが指輪を握りしめる

真紅から薔薇吹雪が吹き、その場にいる全員の目を覆う

みくる「目隠し……!?」

208: 2008/08/08(金) 00:23:26.52 ID:Fv2AQAGY0
白薔薇の攻撃がとまる

みくる「こんなもんで………っ!?」

みくるが驚きのあまり目を見開く

真紅の前には、5人のドールが立っていた

みくる「………まさか…生き返ったの!?」

真紅「いいえ…この娘たちは幻」

真紅「事実彼女たちの身体は倒れたままよ」

みくるが辺りを見渡す…5人のドールの亡骸が倒れている

真紅「この娘たちは自身のローザミスティカから生まれた薔薇人形……
喋ることはできないけれど、闘うことはできる。ローザミスティカとはもともと誇り高き心だもの」

みくる「薔薇人形………だから…なんだっていうのよ!」

再び白薔薇が動き出す

真紅「あとは頼んだのだわ」

209: 2008/08/08(金) 00:23:46.96 ID:Fv2AQAGY0
白薔薇に向かって水銀燈が漆黒の羽根を飛ばす

みくる「そんなものっ!!」

羽根に当たった白薔薇が爆発する

みくる「えっ…!?」

雛苺の茨がいくつもの白薔薇を握りつぶした

みくる「なんですか…その力…!!」

真紅「私達本来の力…不完全だったローザミスティカがひとつに戻ったことで本来の力を取り戻したのだわ」

金糸雀の攻撃で雪華綺晶の腕が吹き飛ぶ

真紅はキョンに向かって歩き出した

真紅「キョン…掌を出して頂戴」

キョン「……?」

キョンが怪訝な顔をして真紅に従う

キョン「ほれ……」

キョンの掌と真紅の掌がくっつく

210: 2008/08/08(金) 00:30:30.77 ID:fqj+7/KfO
真紅「ちょっとの間じっとしていて」
真紅の身体が光る
キョン「………!?」
その光が真紅の掌に集中し、やがてキョンの掌に伝わる
キョン「な…なんだこりゃあ!?おい、真紅…こりゃいったい……」
真紅「静かにっ…もうすぐ思い出すから」
キョン「思い出す?」

後ろでドールズが戦っている
みくる「…………くぅっ!!」
さっきまで勝ち誇っていたみくるが圧される
みくる「雪華綺晶…!!どうしたの…?もっと力を…!」
振り向いた途端雪華綺晶の残された腕に水銀燈の羽根が当たり、爆発する。
真紅「……きた」
キョン「え?」
真紅「私達の記憶は雪華綺晶によって奪われていた…当然雪華綺晶が身体を失えばその分記憶も戻る」
真紅「そして、今思い出した。ローザミスティカは…使命を全うしたら出てくるのではなく、ローザミスティカを吐き出すのが私たちの使命」
キョン「……どういうことだ?」
真紅「今、あなたに送っているローザミスティカ…その本来の効力は涼宮ハルヒの力を高めるためのもの」

211: 2008/08/08(金) 00:31:28.17 ID:fqj+7/KfO
真紅「彼…古泉一樹の言っていた制限のうちのほとんどが解消され『強く』願うことだけが条件となる」
真紅「つまり…ローゼミスティカを受け渡したとき、貴方達はここから脱出できる」
キョン「ちょ、ちょっと待て!」
キョン「じゃあ俺なんかに力与えてもしょうがないだろ…!直接ハルヒに……」
真紅「いいえ、それはできない」
キョン「なぜ!?」
真紅「涼宮ハルヒの能力に直接介入できるのは貴方だけ」
真紅の掌から光が徐々に弱まる
真紅「あとは…私のローザミスティカだけね」
真紅が掌に力をこめる
キョン「お前…ローザミスティカを吐き出したら、動かなくなるんじゃ…」
真紅「私だけは特別…この力を受け渡す者としてローザミスティカを失っても動いていられる」
真紅「もっとも…1,2分が限界ってところでしょうけどね」

212: 2008/08/08(金) 00:32:19.26 ID:fqj+7/KfO
後ろで爆音がする
みくる「うわああああぁっ!!」
見ると朝比奈みくるはあちこち火傷し、切り刻まれ、擦り切れている

蒼星石の鋏が雪華綺晶の足を切断する

真紅「…………わかった。貴方からハルヒへローザミスティカを移す方法」
キョン「ど、どうするんだ…!?」
真紅「貴方がハルヒにキスする」

キョン「はい?」
真紅「急いで…もう私も手足の感覚がない」
キョンが顔を赤らめる
キョン「キス……っつたって…」
ハルヒは真紅の代わりにいつでも指示を出せるよう朝比奈みくるに
集中しているのでこの会話は聞こえていないようだ
真紅「さぁ早く。闘いの末を…この闘いが何を生み出すのかを…私たちに見せて頂戴。」

213: 2008/08/08(金) 00:33:26.10 ID:fqj+7/KfO
キョンがハルヒの肩をつかむ
ハルヒ「な…え、なに?キョン?どうしたのよ?」
ハルヒが恥ずかしいほど動揺する
キョン「あー、どうしたっつーか………」
キョンが真紅とハルヒを交互に見る。
キョン「真後ろで漫画みたいな爆発音だして戦ってるってのに…」
キョンはハルヒをみつめた。

キョン「お前は毎日怯えてたんだな」
ハルヒ「えっ………?」
キョン「毎日毎日大騒ぎして…本当は普通に日々を過ごしていたいのに」
キョン「迷惑だってこともわかってたはずだ。でも、それが自分の存在意義だって勘違いしちまって」
キョン「いつ見放されるかわからない恐怖で怯えてた」
キョン「自分が人を信じられない人間だから、誰も自分を信じてくれないことをお前は知ってたんだ」
ハルヒ「………っ!そ、そんなこと…」
キョン「でも友達はほしい…だから力で手に入れた。」
ハルヒ「な、なによ…こんな力…私が望んだんじゃない…っ!」
キョン「見かけにしろやっと自分の居場所ができた……なのに、それでも人を信じられなかったんだろ」
ハルヒ「あんた……いい加減にっ!」

214: 2008/08/08(金) 00:34:10.08 ID:fqj+7/KfO
キョン「人に信じられたいなら人を信じることだ」
ハルヒ「…………………っ」
キョン「やさしくされたいならやさしくする。愛されたいならその人を愛する」
ハルヒ「知ったような口…きかないでよっ!」
ハルヒが拳を振り上げる
キョン「殴りたいなら殴っていいぞ」
キョン「俺は…俺を信じてほしいからお前を信じる」
ハルヒ「・・・・・・・!!」
キョン「そしてお前が精一杯俺たちを信じようとしてくれたことも知ってる」
キョン「誰よりも人を信じることの大切さを知ってるお前だからな」

ハルヒ「だから……なによ」
キョン「ここから出られたら、もう怯えて過ごすのはやめよう」
ハルヒ「え?」
キョン「俺は、お前のことを信じてる。誰一人お前を信じなくても…」
キョン「大体俺は古泉や長門と一緒にお前のことを守る義務なんてなかったんだ」
キョン「信用できないやつなら、そんな面倒なやつとは俺は一秒も関わり合いにならん」
キョン「つまり…そういうことだよ」

キョンがハルヒにキスをする

215: 2008/08/08(金) 00:34:37.81 ID:fqj+7/KfO
真紅「キョン………」
真紅が弱った声でキョンに話しかける
キョンはいったん口をハルヒから離す
キョン「なんだ、今いーとこなんだ」
真紅「真に愛し合ったるなら、舌を入れるって、本に書いてあったわ」
キョン「うるせー寝てろ。つーか本って何だ、後で詳しく聞かせろ」
もう一度キョンはハルヒにキスをする

キョンの身体からハルヒに光が移る

216: 2008/08/08(金) 00:35:05.42 ID:fqj+7/KfO
ちょうどそのとき、ドールズが雪華麗晶を完全に打ち砕いた。
真紅「私達の役目も…おわりね…」
真紅に最後の記憶が戻る
真紅「…………………!…………そういうこと…。」
真紅「私達の役目は終わってなんかいない…」
真紅「また会いましょう…誇り高き人間達………」

真紅が、止まる
少女達も止まり、薔薇に戻る

キョン「さぁ、ハルヒ…願うんだ。ここから脱出したい…ってな」
キョンがみくるをちらと見る

みくる「つまらない…本当につまらない幕切れだったわ…!」
もはやうわごとを繰り返すだけ。
本当にあれが…彼女だったのだろうか。
何が彼女をそうさせたのか…
それともはやり、自分達に見せたあの笑顔は全て演技だったのか。

ハルヒ「キョン…私は脱出なんて願わない。」
キョン「えっ…?」
ハルヒ「私はもっと大きな夢をかなえる。私にはその力がある」
ハルヒ「『以前』から『強く』願っていて…ここから『脱出』できる、願い…」
ハルヒ「私の願い…それは…!」

217: 2008/08/08(金) 00:39:53.62 ID:fqj+7/KfO
部室のドアが開く

部「たのもーーーーう!」

部長がずけずけと入ってくる。

部「はっはっは、前回のレースゲームでは惨敗したが、これはどうかな?」

部長の持っているゲームのパッケージには『シンプルシリーズ:THE鷲頭マージャン』と書いてあった

部「私、最近マージャンにハマっていてねえ!そもそも君はマージャンなんて知らないだろう!!」

相手が知らないであろうゲームで勝負を挑むっての…どうなの?

ハルヒ「あ、私マージャンできるわよ。役とかよくわからないけど」

部「な、なにぃ!?ま、まぁ、いい。役も知らない程度じゃタカが知れてる。」

鶴屋「にょろーん!私もまぜてほしいっさ!」

長門「……………私も参加する」

長門もマージャンできたのか

そういえば前に無人島に行ったときもやってたような…

218: 2008/08/08(金) 00:41:22.82 ID:fqj+7/KfO
古泉「では、僕たちはオセロでもやりますか」

キョン「いやだよ、どうせお前の勝ちは見えてるんだから」

古泉「おやおや…では僕ちょっとお手洗いに」

キョン「あ、俺も…」

ハルヒ「なによ二人してっ!怪しいわね」

キョン「ばかかお前は」

219: 2008/08/08(金) 00:43:34.70 ID:fqj+7/KfO
しかしキョンと古泉はトイレへ向かわず廊下の一角で立ち止まった。


キョン「で、結局これはどういうことなんだ」

古泉「なにから説明しましょうか…」

古泉が笑う。ずいぶんと自然な笑いになったが…

キョン「もういい加減、敬語とかやめにしないか」

キョンの言葉に古泉は困った顔をした

古泉「いえ、これは元々の性格でして…こればっかりは」

キョンがため息をつく

キョン「わーったわーった。で、あの事件は…現実だったのか?」

古泉「えぇ、それは間違いなく。あなたも気づいているでしょう?」

キョン「あぁ…」

部室も、みんなも元通りだった。

キョンと古泉と長門以外、ローゼンメイデンを覚えてる者もいない。

キョン「だが…朝比奈さんは帰ってこなかった」

220: 2008/08/08(金) 00:44:02.51 ID:Fv2AQAGY0

古泉「おそらく…あの状況で未来へ逃げ帰ったのでしょう。」

キョン「たしかに、雪華綺晶を手引きしたのは未来の朝比奈さんだと言ってたからな」

古泉「まぁ、実際はそんなに簡単な話じゃないのですが、それはおいておきましょう」

古泉の能力も完全に失われていた

古泉「しかし、涼宮さんもうまいこと考えてありますよ。
   普通ここまでの情報変換をしたら何らかの不具合が生じるはずなのに」

キョン「俺にはそんなに世界が変わったようには思えんが」

朝比奈さん以外は誰も欠けてないし、誰もあのことを覚えてないし、太陽は東から昇るし

古泉「それがすごいのです。事情を知っている僕達から見てもあれが夢だったのではないかと思ってしまう」

古泉「しかしあれは現実です。」

221: 2008/08/08(金) 00:44:23.43 ID:Fv2AQAGY0
古泉「事実僕たちの機関はまだ存在し、情報統合思念体もおそらく存在するでしょう」

古泉「涼宮さんの力によって、おそらく地上の生物との接触は不可能となったはずですが」

古泉「考えてみれば、僕たちの予想も間違いではなかった」

キョン「なんのことだ?」

古泉「僕は君に言ったはずです『あなたは涼宮ハルヒの能力の予備だ』と」

キョン「ああ」

古泉「調べてみたところ、やはりあなたはそれに近いものがあったようです」

キョン「調べたって…機関とやらで?」

古泉「えぇ。」

キョン「しかしおかしな話だな」

古泉「なにがですか?」

キョン「ハルヒは、その…自分の能力に関するものは全て消した」

キョン「長門や…喜緑さんなどのヒューマノイドインターなんちゃらは情報統合なんたらと接触できなくなった」

キョン「つまり普通の女の子になった。朝比奈さんはいなくなり、その位置には今鶴屋さんがいる」

キョン「なのになぜお前の機関だけ残っている?」

222: 2008/08/08(金) 00:44:43.87 ID:Fv2AQAGY0
古泉はふふっ、と笑う

古泉「それが彼女のすごいところです。我々は、機関は…今や超能力者の集団ではありません」

キョン「というと?」

古泉「我々は…ある人形について研究している組織となりました」


古泉は部屋を出るときから持っていた鞄を開く


キョン「これは…」

古泉「えぇ、ローゼンメイデン…ただし雪華綺晶を除きますが」

キョン「ということは………?」

古泉「ローゼンメイデンが私達の元にきたとき、未来の朝比奈さんの雪華綺晶邪魔をされたと言っていました」

古泉「つまりローゼンメイデンは異世界ではなく未来から送られてきた…ということです」

古泉「そして自分の能力を含む…それに関する力は全て捨て去った。それにもかかわらずこの人形達だけは器用に取り残されている」

古泉「ローゼンメイデンが『お父様』から命じられた使命…『涼宮ハルヒの解放』」

古泉「これは、涼宮ハルヒを、己の力から解放する……という意味だったのでしょう」

古泉「結果的にあの事件は…涼宮さんを解放するに十分な結果をもたらしました」

223: 2008/08/08(金) 00:45:06.96 ID:Fv2AQAGY0
キョン「それと俺が予備だってことに、何の関係があるんだ?」


古泉「あなたが真紅から涼宮さんへの力の架け橋になったのにはふたつの理由があります」

古泉「まずは彼女の能力に干渉できるのがあなただけだったこと」

古泉「そしてもうひとつは…あの能力を体にとどめて、別のものに受け渡しを行うことができるのがあなただけだったこと」

キョン「俺だけ?なぜ?」

古泉「我々機関が調べた結果、あなたにはまだローザミスティカが眠っています」

キョン「なにっ・・・?」

古泉「ローザミスティカの力は涼宮さんにも分け与えられましたが、なぜかあなたにだけは残っている」

キョン「そりゃ、ハルヒがそういうおかしな力を拒んだせいだろう」

古泉「いえ、彼女は望んだのです。あなたにその力が残ることを…あなたに、自分を救わせるために」

キョンが頭をかく

キョン「もうちょいわかりやすく説明してくれ」

古泉「ははっ、すいません。ですが思い出してください。SOS団の中で最初に彼女と出会ったのは誰です?」

キョン「それ部長にも聞かれたが…俺だよ」

古泉「つまりあなたが一番望まれていた。それは彼女を解放するために無くてはならない存在だったから」

224: 2008/08/08(金) 00:45:27.13 ID:Fv2AQAGY0
キョン「それは…俺がローザミスティカを蓄積し、与える力があるからか?だがなんでそんな力が?」

古泉「それはですね…ローザミスティカがあなたからうまれた能力だからです」

キョン「俺から?いやそれは違うだろう……」

古泉「たしかに生まれたというと少々違いますが…ではローザミスティカとはどこから出た能力ですか?」

キョン「そりゃローゼンメイデンから」

古泉「ではその前は?」

キョン「そりゃ……ローゼンメイデンを作ったローゼンから、だろ」

古泉「ローゼンの情報はとても少ないですが…しかし今わかってることがひとつだけある。」

古泉「それは未来の人間だということ」

古泉「あの時点での未来…つまり今も含まれますよ?その未来でローザミスティカを持っているのはただ一人です」

225: 2008/08/08(金) 00:45:46.99 ID:Fv2AQAGY0


キョンの目が見開く


キョン「まてまてまて……そりゃあ…」

古泉「誰です?」

キョン「俺……だけどよぉ」

古泉「つまり、そういうこと。未来のあなたが、ローゼンメイデンに力を与え、それが過去のあなたに受け継がれる」

古泉「そして過去のあなたが未来のあなたになったとき、それを再び受け継がせる。」

古泉「涼宮ハルヒを『解放』するために…ね」



キョンは、「いやいや」と「まてまて」を10回ずついった後に、ったく…結局俺か…と悪態をつく

226: 2008/08/08(金) 00:46:07.29 ID:Fv2AQAGY0


キョン「で?」

古泉「はい?」

キョン「つまり、俺はどうすればいいんだ?」

古泉「はは…っ、やっぱり引き受けてくれますか!あなたは昔から面倒見がいいですからねえ」

古泉が自然と笑う。
キョンはその笑顔に満足そうに微笑む

キョン「ばかやろー。俺が簡単に安請け合いするようになったのは、お前らと…」

キョン「そんでもってハルヒと出逢っちまったからだよ」

227: 2008/08/08(金) 00:46:27.79 ID:Fv2AQAGY0
古泉とキョンが部室へと戻る


部「うおおおお、負けたああああ!!一時あんなに点差が開いたのに…血も吸い尽くされたああああ!!」

鶴屋「はるにゃん、四連続役満って…つよすぎにょろ」

ハルヒ「あ、キョン、古泉君、おそいじゃないの!!」

古泉「はは、申し訳ありません」

ハルヒ「よーし、二人とも帰ってきたところだし、次は何して遊ぶ!?」

ハルヒは腕を回しながら満面の笑みで飛び跳ねる

キョン「おいおい…まだ遊び足りないのか…よく飽きないなお前も」

ハルヒは、キョンに向かってにこっと笑う。以前のハルヒより断然いい笑顔だった。

ハルヒ「全然遊び足りないわ!!いい?キョン、私は入学する前から、こういう高校生活を夢見てたの!」



ハルヒ「仲間がいて、笑いあう!それだけでいいのよ!!私は今、最っ高の気分だわっ!!」

229: 2008/08/08(金) 00:52:10.08 ID:Fv2AQAGY0













おしまい

230: 2008/08/08(金) 00:52:29.79 ID:Fv2AQAGY0
規制くらったけどぶっちゃけこれで終わりなんだ、すまない

233: 2008/08/08(金) 01:05:25.72 ID:HfXWsr7q0
>>1 乙

235: 2008/08/08(金) 01:11:45.93 ID:r8NF13ZAO
乙w

引用元: 水銀燈「私達の使命は…『涼宮ハルヒの解放』」