4: 2013/01/30(水) 09:58:19.36 ID:Kr/SmHMq0
菫「…はぁ」

亦野「ため息なんてついてどうしたんですか、弘世先輩?」

菫「…ため息? そうか、気が付かなかったな」

亦野「そうですか? 先輩、今朝からずっと浮かない顔していたんで何か心配事でもあるのかと」

菫「うん。…いや何、少々気が重いことを控えていてな」

亦野「そうでしたか。自分なんかがお役に立つとは思いませんが、他人に話して楽になるのならお聞かせください」

菫「気を使わせて済まんな。 別に大したことではない。明日、来客の予定があってな」

亦野「はぁ」

菫「…その、何て言うか訪れる者が苦手なタイプの相手でな」

亦野「嫌なお客さんだったら断ればいいじゃないですか」

8: 2013/01/30(水) 10:02:20.54 ID:Kr/SmHMq0
菫「いや、別に嫌ではないのだ! むしろ遥々こちらまで来てもらうのは嬉しく思っている」

亦野「…じゃあ別にそんな憂鬱になる必要ないじゃないですか?」

菫「まぁ、確かにお前の言う通りなんだが… 実際に顔を合わせるのとなると、どうもな」

亦野「…実際、ってお会いする方は面識ない人なんですか?」

菫「いや、実際に顔は何度か合わせてはいる。 …亦野、今から話すことを誰にも言わないと約束できるか?」

亦野「…え? あ、はい」

菫「うむ。 …IHの時に対戦した阿知賀の松実姉、お前も覚えているだろう?」

亦野「ああ、弘世先輩と同卓したあのマフラーの?」

菫「そうだ。あの娘とは選抜合宿とかでも顔を合わせている内に連絡を取り合う様になってな」

亦野「へぇ~」

菫「それで彼女が来年東京の大学に進学するので、その下見に明日来京する予定なんだ」

12: 2013/01/30(水) 10:05:25.20 ID:Kr/SmHMq0
亦野「はぁ… その、聞いた限りのお話ですと何も問題ないような気がしますが」

菫「まぁそうなんだが… 彼女は色々面倒と言うかその…、気を使う娘でな」

亦野「…ええっと、あの人なんか問題ある方なんですか?」

菫「いや、そんなことはない」

亦野「……じゃあ、まさか弘世先輩あの人と!?」

菫「……」ギロッ

亦野「じ、冗談です! だから殺気を漂わせながら弓を人に向けるのは止めてください!」

菫「…全く、淡みたいなつまらん冗談は止せ。彼女と私で何かある訳ないだろうが…」

15: 2013/01/30(水) 10:10:56.75 ID:Kr/SmHMq0
亦野「それじゃあ一体何が問題なんですか?」

菫「まぁメールとかでは普通に交流はあるのだが、実際顔を合わした時は日常会話程度しか話していなくてな…」

亦野「なら、これを機会にもっとフランクに話せる仲になればいいじゃないですか」

菫「いや、まぁお前の言う事はもっともなんだが、どうにもああいうタイプの接し方がな…」

亦野「ああいうタイプ、と言いますと?」

菫「どう言えばいいのだろうな… 私たちの身近で言うと渋谷に似ているのかな?」

亦簿「尭深、ですか?」

菫「ああ、渋谷をもっと弱々しくした様な感じで… その、触れたら折れてしまいそうな、華奢と言うか儚げと言うか…」

亦簿「なるほど、つまり守ってあげたくなるようなタイプの人ってことですか?」

菫「うむ、まぁ大まかに言えばそんな感じの娘だな」

亦野(…選抜に招集される度、宮永先輩の機嫌が悪いのはこれが原因なんだろうなぁ)

17: 2013/01/30(水) 10:14:01.36 ID:Kr/SmHMq0
菫「…それで、ああいう娘とどうして接していいかわからなくて思案していたということだ」

亦野「でも、ウチにもあんな感じの部員はいますし、先輩も普通に接しているじゃないですか?」

菫「あれは部長として指導しているだけで、この件とは話が違うだろ? それに…」

亦野「それに?」

菫「…正直、部員や他生徒たちと距離を感じる時もある。原因が私に有るのはわかってはいるがな」

亦野「それは先輩の勘違いですよ。皆、弘世先輩を慕っています」

菫「世辞など止せ。 …こんな容姿と性格だ、他の者から怖がられてることぐらい自覚しているさ」

亦野「そんなことありませんけど、もし先輩がそういう自分が嫌なら改善すればいいじゃないですか?」

菫「改善、と言われてもな。そう簡単に変えれる物ではないだろう?」

亦野「それならちょっと試しにやってみますか? 性格を変更する催眠術を」

菫「…何?」

18: 2013/01/30(水) 10:18:04.69 ID:Kr/SmHMq0
~翌朝~


淡「あ、スミレだ! おっはよ~」

菫「おはよう、淡。今朝も元気だな」ニコッ

淡「…ん? スミレ、機嫌良さそうだけど何かいいことでもあったの?」キョトン

菫「そうか? 普段と特に変わっていないつもりだが、いいことならあったかな」

淡「なになに? どんないいことあったの~?」

菫「朝から君の笑顔を見れた。ちょっと眩しいくらいの、とびきり素敵な淡の笑顔にな」ニコツ

淡「ふぇっ?」///

菫「…ん、どうした淡? 顔を赤いが風邪でもひいたか?」

淡「え?、え?? これはその…、スミレがなんか変って言うか優しいって言うか…」

菫「フッ、私は普段通りさ。 …だが本当に調子が悪いのなら私にすぐ伝えてくれ」

淡「えっ?」

菫「私の淡に何かあったら大変だからな。その時は治るまで付きっきりで看病させてくれ」

淡「ワ、ワタシノアワイ?」

19: 2013/01/30(水) 10:21:18.09 ID:Kr/SmHMq0
菫「…何だ、ますます顔が赤くなっているぞ? どれ、本当に熱があるか測ってやる」ピタッ

淡「スミレ… おでこ、くっつけて… 顔近いし……」///

菫「何を照れている?熱を測ってるだけじゃないか。 …ん、少し熱っぽいようだな」

淡「ス、スミレ…?」カタカタ

菫「念のために保健室に行くか… 全く、心配をかけさせてくれる私の天使は」オヒメサマダッコ

淡「ちょっと待って、大袈裟だってスミレ! 風邪なんかじゃないし、恥ずかしいから止めてよ!」

菫「ん、何でだ?」

淡「だ、だって他の人も見てるんだよ? お姫様抱っこで登校なんて恥ずかしくて頭がフットーしちゃうよぉ!」

菫「…じゃあ二人っきりの時なら、お前をいくら抱きしめてもいいのかな?」ニコッ

淡「……」

淡「」ガハッ


―――――某日 07:50 大星淡、撃沈

23: 2013/01/30(水) 10:25:25.29 ID:Kr/SmHMq0
~同日放課後~


ガラガラ


淡「タカミー!! 大変、大変だよ!!」

渋谷「…どうしたの淡ちゃん、そんなに急いで。 お茶でも飲む?」

淡「お茶なんていいって! それよりスミレが、スミレが変なの!!」

淡「…弘世先輩が変? …ええっと、もうちょっと具体的に言ってくれないと」

淡「ァゥ……」///

渋谷「…? 淡ちゃん、黙っていちゃわからないよ」

淡「あのね、そのぉスミレが優しいって言うか、キラキラしてるって言うか…」ゴニョゴニョ

渋谷「…??」

淡「と、とにかくスミレのくせにすごくカッコよくて大変なんだよ~!!」

渋谷「…う~ん、普段から弘世先輩ってそんな感じじゃないかな?」

25: 2013/01/30(水) 10:28:29.78 ID:Kr/SmHMq0
ガラッ


菫「…やぁ尭深。淡もここにいたのか」

淡「ス、スミレ!?」///

渋谷「あ、弘世先輩お疲れ様です。          ……尭深?」

菫「どうした、不思議そうな顔をして? 何かあったのか」

渋谷「い、いえ別になにも。 …あ、お茶淹れますね」

淡「……タカミー、気を付けて。今日のスミレは本当に変だから」ボソッ

渋谷「う、うん…」

淡「私、テル呼んでくるからそれまで頑張って。じゃあ後はお願いね」ボソボソ

ダダッ

菫「…ん、淡は慌ててどうしたんだ?」

渋谷「…あっ、淡ちゃん? 頑張ってって言われても私は何を…」

27: 2013/01/30(水) 10:32:05.04 ID:Kr/SmHMq0
渋谷「はい、お茶が入りました。今日は宇治の緑茶です」コトッ

菫「ああ、ありがとう。 …うん、尭深の淹れるお茶はいつでも美味しいな」ニコッ

渋谷「…あ、いえ。その、ありがとうございます」///

菫「…どうしてなんだろうな? 尭深のお茶を飲む度、心が揺れてしまう」

渋谷「…え、どういうことですか?」

菫「ああ、どうして尭深の淹れてくれる相手が私だけじゃないのだろう、ってな…」

渋谷「ひ、弘世先輩?」

菫「恥ずかしいよ。どうしても尭深を一人占めにしたい気持ちを抑えられない…」

渋谷「」

菫「……尭深、お前がもし弓なら、――――私は矢だ。 矢だけではどこにも放たれない」

渋谷(言葉の意味が全然わからない、けど……)

菫「矢は放たれるのを持っている。 …そして、矢を射ることができるのは ――――弓だけだ」キリッ

渋谷「……」

渋谷「」グハッ


―――――某日 14:40 渋谷尭深、撃沈

32: 2013/01/30(水) 10:37:03.98 ID:Kr/SmHMq0
照「…淡、そんなに手を引っ張らないで」

淡「駄目だよテルー、急がないと。 今日のスミレと二人っきりにさせたらタカミーだって危ないんだから!」

照「だから菫が変って言われても意味が全然わからない…」

淡「もう~、とにかく実物を見た方が早いって! …大丈夫かなぁタカミー」



『だ、駄目ですって弘世先輩… こんな所、宮永先輩たちに見られたら…』スル

『…他人など気にするな。もう、私の目にはこの世界に尭深しか映っていないよ』スルスル

『でもこういう事は… その順番が』///

『…そうだな、欲しい物が全て腕の中にあるからと気が急いていたようだな。 ……尭深、目を瞑ってくれ』ニコッ


淡「あ…」

照「……」ゴッ

34: 2013/01/30(水) 10:41:49.41 ID:Kr/SmHMq0
ガラガラガラ


照「…神聖な部室で貴女たちは一体何をしているのかな? かな?」ギュルルル

菫「…ん?」

渋谷「……あ」///

淡「あわあわあわ」 カタカタカタ

菫「…ふぅ、もう少しで脱がせ終わるとこだったのだがな。 やきもちかい? 照も案外可愛いのだな」

照「…なに馬鹿なこと言ってるの? 淡が言ってたこと、どうやら本当だったみたい」

菫「そうだな、確かにこれはこんな可愛いお姫様を放っていた私が愚かだったな」ニコッ

照「…ふぅん、重症のようね。ちょっと痛い目にあって頭冷やそうか?」ギュルルルル

菫「…フッ、怒った顔も魅力的だな照」スッ

照「えっ!?」

渋谷「宮永先輩のコークスクリューブローをかわした!?」

淡「…本当に今日のスミレ、どっかおかしいよぉ」

35: 2013/01/30(水) 10:44:54.63 ID:Kr/SmHMq0
菫「やれやれ、気が済んだかい? では、今度はこっちの番だな」カベドン

照「…何、どうするつもり? 弓で私を撃つの?」

菫「大事なお前に手をかけるなんて出来る訳ないだろう? やきもち焼きのお姫様にはちょっと落ち着いてもらうだけさ」チュッ

照「な”ッ?!」///

渋谷「み、宮永先輩のおでこにキス!?」///

淡「や、やった…! さすが今日のスミレ、普段にできないことを平然とやってのける!」

菫「…落ち着いたかい、お姫様? 咄嗟のことで間違えてしまったのを許してくれるかい?」

照「ま、ま、間違えたって何?」///

37: 2013/01/30(水) 10:48:56.82 ID:Kr/SmHMq0
菫「額へのキスは友情の意味だった。 お前にキスできるのならどこでも構わないが…」

照「どっ、どっ、どこでも!?」///

菫「…私たちの関係だと適切な場所は、ここしかない」カオクイッ

照「す、菫……」ボー

淡「ストーーーップ!! テルー、なんでボーってしてるの?本当にされちゃうとこだったよぉ!!」

照「ハッ!? あ、危ない所だった…」

菫「…ああ、済まん。ちゃんと順番にしてあげるからいい子で待っててくれないか、淡?」カミノケサラッ

淡「はぅ!?」///

照「…順番?」イラッ

菫「さ、とんだ邪魔が入ったが続きをしようか、照?」ニコッ

照「フンッ!!」ギュルルルル

菫「  」ドサッ

渋谷「至近距離からの全力コークスクリュー… 流石にアレは避けきれない」

38: 2013/01/30(水) 10:53:04.74 ID:Kr/SmHMq0
亦野「な、なるほど… そういったことがあったんですね」

照「だから菫が気を失っている隙にすまきにして向こうの部屋に放り込んどいた」

淡「危ないとこだったよ~ あのまんまだったら皆、スミレに堕とされてたかもしんないし」

渋谷「…別に私は構わなかった」ボソッ

亦野「えっ?」

照「…とにかく、菫を元に戻さないと部活にも支障が出るから何とかしないと」

淡「…テル、そんなこと言っても『ああいう強引な菫もいいかも(はぁと』って顔してるよ」

照「し、してないッ!!」

渋谷「何はともあれ弘世先輩がどうしてああなったのか、原因究明は必要かと」

41: 2013/01/30(水) 10:58:12.02 ID:Kr/SmHMq0
亦野「……ふ、不思議な話ですね。一体どうしてこんなことになったのか」ガクブル

渋谷「…誠子、顔色悪いけどどうしたの?」

照「……亦野、貴女もしかして何か知っているの?」

亦野「い、いえ自分は何も知らないであります… ヒッ、淡?」カタカタ

淡「この味は! ……ウソをついてる『味』だよ…… 亦野せぇんぱぁ~い?」ペロッ

亦野「な、何を言っているんだ淡は!? 自分が弘世先輩のことを知ってる訳ないじゃないか!!」


ドンッ


亦野「これは…、照魔鏡……?」

照「……ふぅん、なるほどね。 …どうして亦野は嘘を吐くのかな?かなぁ?」

渋谷「ヘイ、フィッシャー。 あたしはさ、“ツマラない嘘”を吐かれるってのが一番気にくわねぇんだ……」

淡「己の置かれた立場がわからない。そんな愚か者には自分から話したくなるようにするだけ…」ファサッ

亦野「」

照「……じゃあ亦野、ちょっと“お話し”しようか?」ニコッ

46: 2013/01/30(水) 11:03:20.98 ID:Kr/SmHMq0
玄「東京の学校は凄いね、おねーちゃん。いっぱい教室あるから迷っちゃったよ」

宥「そうだね、玄ちゃん。確か麻雀部の部室はこの校舎の最上階って聞いていたんだけどぉ…」

玄「それにしてもどうして弘世さん、電話に出てくれないんだろ? もしかして今日来ること忘れちゃったのかなぁ?」

宥「ううん、菫ちゃんはそんな人じゃないよ。きっと忙しくて電話に出れないだけだと思う…」


ギャァァー!!


玄「な、なに今の悲鳴!?」ビクッ

宥「き、き、気のせいだよ。だってここ学校だよ?」アワワ

玄「いや、あれはどう考えても悲鳴だったよぉ… 上の方から聞こえてきたよね?」

宥「う、うん。でも私たちの聞き間違いって可能性もあるし…」カタカタカタ

玄「とにかく麻雀部も最上階って話だし、上に行ってみないとわからないのです!」

49: 2013/01/30(水) 11:07:29.88 ID:Kr/SmHMq0
宥「ここが最上階みたいだね。 …あれ、あの部屋は灯りが点いてる」

玄「そうだね、あそこに行ってさっきの悲鳴と麻雀部の部室を尋ねれば一石二鳥だよ」


タ、タスケ・・テ・・     ドタッ


玄「」

宥「」

玄(お、おねーちゃん、さっきの悲鳴もきっとここからだよ!?)ヒソッ

宥(ど、ど、どうしよう玄ちゃん!? 私、腰抜けちゃったよぉ…)ヒソヒソ

玄(と、とりあえずこの誰もいなそうな部屋に逃げて落ち着くのです!)ヒソッ

宥(う、うん… ごめんね玄ちゃん、頼りないお姉ちゃんで)ヒソヒソ

玄(ううん、気にしなくていいから。おねーちゃんは私が守るのです!)フンス

50: 2013/01/30(水) 11:10:37.14 ID:Kr/SmHMq0
ソロッー


宥(お邪魔しまぁ~す、って誰もいなよね。 …あれぇ? ねぇ玄ちゃん、そこ何か動いてない?)

玄(暗くてよくわからないね… む?これはなかなかなおもちの感触)ムニュ

宥(おもち…?)

玄(…あ!? お、おねーちゃん、弘世さんだよ!弘世さんが簀巻に猿轡されて転がされてるよぉ!!)

宥(え、菫ちゃん!?)

玄「だ、大丈夫ですか弘世さん?」サルグツワ ポイー

菫「…ふぅ、助かったよ。まさか姉妹の天使に救われるとは想像もしていなかったよ」ニコッ

宥「!?」///

53: 2013/01/30(水) 11:13:45.65 ID:Kr/SmHMq0
玄「あ、あのぉ… 弘世さん、どうしてこんな所でそんな恰好しているんですか?」

宥「も、もしかして菫ちゃん、そういう趣味が!?」ガーン

玄「お、おねーちゃん…!?」

菫「フッ、勘違いしないでくれ宥。これはやきもち焼きな私のお姫様たちがちょっと悪戯をしただけさ」

宥「ゆ、宥ッ!?」///

菫「ああ、だから済まないが二人ともこの紐を解いてくれないか? 早く手を自由にしないと私は…」

玄「私は…? 困っているのは見ればわかりますけど、自由にしないと何がどーなるのですか?」

菫「…手が自由にならないと君達を抱きしめられないだろ? 私には君たちの温もりが必要なんだ」ニコッ

玄・宥「」

56: 2013/01/30(水) 11:17:53.26 ID:Kr/SmHMq0
淡「ねぇタカミー、このミンチより酷い『これ』どうしよう?」

渋谷「…もうあんまり暑くないし、そこに放置してままでも暫くは腐らないと思う」


ガタッ


照「…ん、何の音?」

淡「今の、隣の方から聞こえたね… あの部屋、今日は誰もいないはずなのにはて?」

渋谷「弘世先輩が逃げ出したのかも… 確認しないとまた面倒なことになりかねない」

淡「そっか、スミレがいたんだっけ! ん~、でもあんなキツく縛っていたのにおっかしいなぁ?」

照「渋谷の言う通り。逃げ出されでもしたら厄介だし、確認しておかないと」


ガラッ


宥「あ、宮永さん!?」

照「!? 貴女…、阿知賀の松実さん… どうしてこんな所に?」

57: 2013/01/30(水) 11:24:30.31 ID:Kr/SmHMq0
~で~


玄「なるほど、簀巻にされていたのはそういうことだったんですね」フムフム

宥「事情はわかりました。 でも、菫ちゃん縛られたままで何だか可哀想…」

照「菫…ちゃん…?」ピクッ

菫「宥だけだよ、私のことを理解してくれるのは… だからこの紐を解いてくれないか?」ニコッ

照「…菫は少し黙っていて」ギュルル

菫「グハッ!?」ガクッ

宥「す、菫ちゃん!?」

玄「あわわ… さすが名門校は色々と厳しいのです」ガクガク

淡「それにしても松実さんのおねーちゃん、スミレとそんな仲良かったなんて全然しらなかったよぉ」

宥「な、仲が良いって言うか私が人見知りするから一方的にお世話になってただけで」///

照「……」ムカッ

照(……あれ、松実さん何もしてないのに私は何で不機嫌になってるんだろう?)

59: 2013/01/30(水) 11:31:54.31 ID:Kr/SmHMq0
照「そうだったんだ。 “ウチ”の菫が松実さんに何かご迷惑をかけてなかった?」ニコッ

宥「…いいえ、菫ちゃんは“とっても親切”だからすごく助けられていますよ」ニコッ

亦野「…なぁ、何かあの人たち来てからここの空気、妙に張りつめてないか?」

渋谷「あ、誠子復活したんだ… うん、色々と複雑。それもこれも弘世先輩が全部悪い気がする」

淡「…まぁ、そんな訳でスミレがこんな調子だから遠くから来てもらって悪いんだけど」

照「うん、菫は今日ちょっと無理だから代わりに私たちがキャンパスとか案内する」

宥「…そうですね。残念ですけど、こういうことなら仕方ないですね」シュン

玄(おねーちゃん、すごくガッカリしてるのです… よし、ここは私がひと肌脱ぐのです!)

玄「あ、あのぉ…」

照「…ん? 松実玄さん、何か?」

玄「そのぉ…、弘世さんがおかしくなったのはその催眠術のせいなんですよね?」

62: 2013/01/30(水) 11:36:58.48 ID:Kr/SmHMq0
亦野「ええ、買ったばかりの本のを試したのですが、まさかここまで効くとは…」

淡「でもさ、何でスミレは女の子を口説きたくなる催眠術なんてかけてもらったの?」

亦野「いや、弘世先輩は人当りを良くしたいと思っていたみたいなんだけど、ちょうどいいのがなくってさ」

渋谷「…それであんな性格にする催眠術を?」

亦野「まぁ、人当り良くするにはあんま変わりないかなぁって… アハハ」

照「…全く、いい迷惑だった。それで、どんなに効いても1日ぐらい経てば元に戻るんだったよね?」

亦野「はい。ですので遅くても明日の朝には普通の弘世先輩に直っていると思います」

宥「そっかぁ… じゃあ、今日はやっぱりダメなんですね」

玄「おねーちゃん… 待ってください!明日の朝って言うのは効果が自然に解ける時間のことですよね?」

亦野「…は、はい、たぶんそうだと思います」

玄「それじゃあ、もっと手早く任意で効果を終わらす方法もあるんじゃないんですか?」

64: 2013/01/30(水) 11:41:46.61 ID:Kr/SmHMq0
淡「そーだね。すぐに解けなかったら危ないもん、きっとすぐに解く方法だってあるはずだよ!」

亦野「まぁ、確かに淡たちの言う通りだな。 …う~ん、まだ解除方法まで読んでなかったからなぁ」

玄「早く見つけるのです! おねーちゃんにはあまり時間がないんですから」

宥「玄ちゃん…」

亦野「おッ、あった! …って、本当にこんな方法でやんなきゃいけないのか!?」

渋谷「…どうしたの誠子、一体どういう方法で解除するって?」

亦野「……ええっと、解除方法はかかってる者にキスをする、と」

照・淡・渋谷・宥・玄「「えええええええええええええっっ!!??」」///

66: 2013/01/30(水) 11:45:50.70 ID:Kr/SmHMq0
淡「キ、キ、キスぅッ?!」///

照「ね、ねぇ亦野、本当にそんなこと書いてるの??」///

亦野「本当ですって、ほら!」

渋谷「あ、本当に書いてる…!? ど、どうしますか?」///

宥「どうって言われても… ね、ねぇ、玄ちゃん?」///

玄「え? わ、私は別にそういうのは特にそういうのじゃないから他の人が」

照「…し、仕方ない。 うん、これは仕方ないから、ここは菫と一番付き合いの長い私が代表して」テレテレ

淡「……待って、テル。仕方ないってどういうこと? そんなんじゃスミレが可哀想だよ」ギロッ

照「淡……?」

67: 2013/01/30(水) 11:49:52.31 ID:Kr/SmHMq0
淡「奥手のスミレのことだから、きっとキスなんて初めてなはずだよ。それを仕方なくするなんて酷いんじゃない?」

照「……じゃあ、淡はどうしろと言いたいの?」ギロッ

淡「……テルが嫌なら私がしてあげるよ。今日のスミレ、かっこよかったし私は嫌じゃないもん」

照「グッ…」

淡「…はい、だからテルはそこどいて。 さぁスミレ、お姫様のキスで目を覚ますんだよ~」

宥「……ちょっと待って、大星さん」ニッコリ

淡「……なぁに、松実さん? 内輪の問題で他所の人には迷惑かけれないから、ちょっと待っててくれる?」

宥「……ううん。菫ちゃんがこんなになったのも、元はと言えば私のせいだから私が責任取るよ」ニコッ

玄「…お、おねーちゃんの笑顔が全然暖かくないよぉ」ガクブル

72: 2013/01/30(水) 11:53:57.57 ID:Kr/SmHMq0
渋谷「…待って、松実宥さん。責任とかそういうのでキスされても、きっと弘世先輩は迷惑なはず」

宥「えっ、その別に私は責任とかそういうのじゃなくって…」

渋谷「…催眠状態だったとは言え、あんなことをされて先輩に汚された私がすれば何も問題がない」

宥「け、汚されたって菫ちゃんは貴女に何をしたのッ!?」アワワ

淡「…タカミーは大袈裟だよ、服を脱がされかけてただけじゃん。 だから私がスミレを元に戻してあげるって!」

照「淡だって初めてなんでしょ? 無理しなくていいから、こういうことは先輩の言うことを素直に聞いて私が…」

渋谷「…宮永先輩、こういうことに先輩後輩は関係ないと思います」

宥「うん、もっと言うなら他所とか内輪とかも関係ないから、一番の仲良しさんな私がするよ」ニコニコ

照「」 

淡「」 

渋谷「」

宥「」 

74: 2013/01/30(水) 12:00:17.62 ID:Kr/SmHMq0
菫「う、う~ん… なんだ一体? やれやれ私を取り合って喧嘩かい?」ニコッ

照「…菫、邪魔だからひっこんでいて」

菫「フッ、安心するんだ子猫ちゃんたち。 私なら同時に4人まで相手できるかr…  グハッ!?」ドサッ

宥「…うん、菫ちゃんちょっと邪魔だからそこで寝ていてね」ニッコリ

照「……ふうん、じゃあ貴女達はどうしても譲る気はないんだ?」ゴッ

淡「……みんな強情だね~ 一番可愛い私がしてあげれば、スミレもきっと喜ぶはずなのに」ゴゴゴゴ

渋谷「……えっ、淡ちゃんいま何か言った? 先輩は物静かで理知的な子がきっと好みのはずだよ」ユラァァァ

宥「……う~ん、それだけじゃちょっとねぇ …それプラス、優しくておもちも有る子がいいんじゃないかなぁ」メラメラ

照「……よくわかった。これ以上は話し合っても無駄だろうし、後は実力で理解させるしかない」

淡「……そうだね。ちょうど4人だし、ここは麻雀で決着つけようか?」

渋谷「ウィナー・テイクオール…… 半荘一回勝負で恨みっこなし。勝者が弘世先輩とキスで」

宥「……うん、それで構わない。何だかすっごく暖かくなってきたよ」

77: 2013/01/30(水) 12:07:00.77 ID:Kr/SmHMq0
亦野「何だこの重圧は…? あの人たち公式戦ばり…、いやそれ以上の真剣勝負する気だ…!?」

玄「あわわわ… どうして、どうしてこんなことに」カタカタカタ

亦野「…おい、そこの足元に弘世先輩が倒れているから踏まない様に気をつけてくれよ」

玄「えっ? あ、おっとととと」フラフラー ドタン


ムチュッ


照「…あ」  淡「あ…」  渋谷「…!?」 宥「…く、玄…ちゃん?」

玄「あ痛たたたた、頭をゴッつんこしちゃったのです…」

菫「うぅん、ずいぶん賑やかだな… 痛ぅ、何でこんなに頭が痛いんだ?」

淡「…あ、スミレがまた目を覚ました」

81: 2013/01/30(水) 12:10:03.12 ID:Kr/SmHMq0
菫「あ、松実さん、何時の間に東京に? …って何だこの紐は、どうして私が縛られて床に転がされているんだ!?」

宥「…菫ちゃん、今までのこと覚えていないの?」

菫「…今までのこと? 確か私は昨日亦野に催眠術をかけられた後は帰宅して… そうだ、何で私は学校にいる!?」 

淡「ねぇテルー、これって逃げるための演技じゃないの?」ジトー

照「…う~ん、普段の菫っぽく見えるけどちょっと判断しにくい」

渋谷「ねぇ誠子、解除のキスって口じゃなくてもいいの?」

亦野「そうだなぁ、この本には特に箇所の指定は書いてないから別にどこでもいいんじゃないかな?」

玄「知らないのなら教えてあげるのです! 弘世さんは催眠術にかかって手当たり次第、女の子を口説いt…」ガクッ

宥「ふふふ、急に眠くなっちゃうなんて玄ちゃんやっぱり疲れちゃってたのかな?」ニコッ

83: 2013/01/30(水) 12:13:26.60 ID:Kr/SmHMq0
菫「松実…さん…? お、おいお前たち、私は一体何をしたって言うんだ? おい亦野、教えてくれ!」

亦野「ええっと先輩は催眠術の影響で周囲の子をですね……  イエ、ナニモナカッタデスヨ。」

照(……そう、長生きしたかったら、貝の様に口を噤んで草木の様に何も知らない風を装って)ボソッ

菫「照……? 淡!渋谷!! なぁ誰でもいい、頼むから教えてくれ今まで何があったんだ!?」

淡「はうッ!?」///

渋谷「……ッッ!?」///

菫「へっ? 何で顔を赤くしているんだお前たち?」

照「…さ、まだ菫の催眠術が解けてるかわからないし、今日はこのままで帰ろうか? 松実さん、行こう」

宥「う、うん、そうだね宮永さん。 …じゃあ菫ちゃんまた今度ね。       ……ばか」

菫「お、おい待てお前たち! せめてこの紐を解いてから帰れッッ!!」

84: 2013/01/30(水) 12:16:32.18 ID:Kr/SmHMq0
~そして~


和「…以上が玄さんから聞いた事の顛末です」

咲「おのれええええ、あの極道女狐ェッ! 私のお姉ちゃんを誑かすだけじゃ飽き足らず、純情を弄ぶとはッッ!!」ゴッ

まこ「…咲、座りんしゃい」

京太郎「やっぱ、どこの部長さんも女ったらしばっかなんだなぁ」ジー

優希「うん、いつか絶対に火遊びのつけを払う羽目になるんだじぇ」ジー

久「…須賀君に優希、何でこっちを見るのかしら?」ニコッ

和(…全く、弘世さんにはちゃんとお義姉様を捕まえておいてもらわないとこっちが困るのに)

和(……催眠術!? いや、そんなオカルト… しかし試してみる価値はありそうですね)ニヤリ

86: 2013/01/30(水) 12:20:51.28 ID:Kr/SmHMq0
~さらに~


店員「こちらの本ですがカバーはおかけしますか?」

照「…あ、はいお願いします」コソコソ

辻垣内「おぅ宮永、奇遇だな? こんな所で何をコソコソしているんだ?」

照「つ、辻垣内!?」ビクゥ

ダヴァン「ハハ~ン、どうやら宮永さんはエOチな本を買っていたんですね? どんなの買ったんデスか~?」

辻垣内「……ん、『初心者でもできる催眠術入門』? 宮永、お前そんな趣味があったのか?」

照「…う、うわあああぁぁぁあッッ!!」///  ギュルルルル

ダヴァン「ふげらッ?!」


ダダダダダ


店員「あ、お客さんお釣り~!!」

辻垣内「お、おいダヴァン大丈夫か? あいつ、あんな恥ずかしがって一体どうしたんだ…??」



おしまい。

91: 2013/01/30(水) 12:27:52.00 ID:TlB9lSBJ0
腹パン要員とは・・・・ダヴァン南無

94: 2013/01/30(水) 12:33:57.71 ID:1L+V/EYL0
乙!
面白かった

引用元: 菫「一体私が何をしたと言うんだ!?」