1: 2012/06/11(月) 00:09:02.79 ID:x9w1dHxlO
旅人「ああ、東京といってね。随分前には栄えていたところなんだ」

助手「ふむふむ」

旅人「今は人口が少ない分、皆のんびりしているみたいだよ」
旅人「あの街の人たちは常に忙しなく働いていたみたいだからね」

助手「なるほどー、さすが先生です!」
助手「それで、旅の終わりはどこでしょうか?」

旅人「終わりなんてものはないよ」
旅人「……あるとすれば君が一人前に成長した時かな」

助手「うぅ……じゃあずっと一人前になれなくて良いです…」

旅人「若いんだから、良い人を見つけて幸せになりなさい」

助手「世界の人口が最盛期と比べて200分の1ですよ?」
助手「それに、気になる人はいますから……」チラッ

旅人「そうか……それはよかった」

助手「……気づいてませんよね、絶対」ハァ

2: 2012/06/11(月) 00:13:11.04 ID:x9w1dHxlO
ザワザワ…

助手「わぁ~賑やかなところですね!」

旅人「賑やかか……廃れても、ここは栄都だね」

助手「見てくださいっ、果物が売っています!」

旅人「珍しい……久しぶりに食べようか?」

助手「本当ですか!?」パァッ
助手「じゃ、じゃああの赤色のやつが良いです!」

旅人「あれは林檎といってね……ずっと北にはあの林檎で生計を建てていた人たちがいたんだ」

助手「へぇー、勉強になります!」

旅人「日差しは暑く、地面はどこも水に浸っている…」
旅人「……こんな世界でも、植物たくましく強く生きているんだな」

助手「……」
助手「先生だって強いじゃないですか!」

助手「この前だって私が襲われた時にこう……バコーン!って」エイッ

旅人「その強さとはまた違うんだけどなあ」

4: 2012/06/11(月) 00:22:15.79 ID:x9w1dHxlO
助手「すみませんー林檎2つくださいっ」

店主「お嬢ちゃん、元気だねえ」

助手「はいっ元気が取り柄ですから!」

店主「どうだい? うちの嫁になっては」
店主「若い女性も少なくてね……倅が不憫なんだよ」

助手「ぁ……えっと」
助手「その……ごめんなさいっ!」ペコ

店主「ははは、冗談だよ。さあ頭を上げて」

旅人「この辺りでは林檎が?」

店主「えぇ、ウチは商品を卸しているだけなんで詳しくは知らないんですけど」
店主「なんでも林檎の生る樹が何本もある屋敷跡が近くにあるみたいですよ」

旅人「……そうですか。ありがとうございます」
旅人「……」チラ

助手「?」

旅人「君にも良い人が見つかるといいね」
旅人「ああ、想い人がいたんだよな」

助手「先生、私に男の人を見付けようと旅してるんじゃないかと勘繰るくらいお節介ですよね」ムゥ

5: 2012/06/11(月) 00:31:08.40 ID:x9w1dHxlO
店主「それにしても可愛い嬢ちゃんだ」

助手「誉めてもこの林檎はあげませんよ」シャリ

店主「髪と瞳の色が違うけど、異国から?」

助手「ええと……」

旅人「えぇ。私が世界この子を連れて勉強のためにも旅をしているんです」

店主「ほほう……」
店主「どうです? 近くにこの地の権力者が結婚相手を探す催しがあるんですよ」

店主「お嬢ちゃんはまだ少し若いすぎるかもしれないけど。今の時代、目当ての歳の子をめとる事自体難しいからね」

旅人「ほう……それは」
旅人「どうだい? 若い女性が集まるみたいだけど」

助手「同年代の女の子と話したい気持ちはありますけど…」
助手「……先生が惑わされる可能性もあるし…」ウーン

旅人「その心配はいらないよ」ハハ

6: 2012/06/11(月) 00:39:43.94 ID:x9w1dHxlO
【広場】

ザワザワ…

助手「わ~、女性がいっぱい!」

旅人「滅多に見られない光景だね……眼福、眼福」

助手「……」キョロキョロ
助手「でも、歳上のお姉さんばかりです」

旅人「確かに……君の友達に、というには些か歳が離れすぎているみたいだ」

助手「次の場所を目指します?」

旅人「ああ、そうだね」
旅人「いくら花嫁探しといえど、流石に君のような年端もいかない少女は候補外だろうし……」

地主『か、可憐だ……』

旅人「?」
助手「??」

側近『お嬢さん、旦那様が貴女をお気にめされた用です』

助手「……えぇ」

旅人「……見たところ二回り…いや、歳で四周分くらい離れている男だね」

7: 2012/06/11(月) 00:51:23.28 ID:x9w1dHxlO
  『助手・手記』

 先生に付いてきて、数ヶ月。
 新しくやってきた街は、とても人が多く……賑わっていました。
 ここも、他と同じく先の大戦の影響で地面が水で浸っていて、長靴が無いと歩く事が出来ません。

 とある広場で、この地の権力者さんが花嫁探しをするという噂を聞き付けて、私と先生は向かいました。
 先生は、私が旅を付いて回るようになった時から必要以上に男性を薦めてきます。
 もしかしたら邪魔なのかな、と思って素直に聞いてみた時もありますが……先生はそれを否定しました。
 私には、旅をせずに平穏で幸せな生活を送ってほしい。そうお父さん達のお墓に向かって祈っていた姿を今でも鮮明に思い出せます。

 もしかしたら、先生にとってこの旅は……私に好い人を見つけて、結婚させるための旅でもあるのかもしれません。

 とてもとてもお節介な話です。

 そして……

――――――――――――――
 ザワザワ…

助手「……どうして私は会場の中心にいるんですか?」

旅人「うーん、あの地主はとびきり若い子が好みみたいだねえ」ポリ

8: 2012/06/11(月) 00:58:40.06 ID:x9w1dHxlO
助手「私からすればお父さんより歳上なんですよ?」

旅人「そうだね……でも、君は可愛いから」

助手「え?」
助手「……え、えへへ…嬉しいです」

旅人「でも、歳の事を言うなら僕だって人の事は言えないよ」

助手「せ、先生はまだ若いですし! 格好良いです!!」

旅人「……ありがとう」ハハ

側近『これより、選ばれた三名の候補者を紹介します』

旅人「おや……僕まで壇上にいていいのかな」

助手「いいですよ……問題無しです」

側近『まずは……12最の…』

旅人「……君よりお姉さんじゃないか」

助手「といっても一つだけですけどね……」

10: 2012/06/11(月) 01:04:22.37 ID:x9w1dHxlO
側近『次に10歳の……』

旅人「歳下だね」

助手「……話をしたいです」

旅人「この催しが終わったら、友達になるといい」
助手「友達……」

側近『そして三人目は…また若い子ですね』

ザワザワ…

助手「お姉さん方の目が怖いです……」

旅人「うーん、彼女達からすればやっかみたくもなるかもね」

側近『一言よろしくお願いします』

助手「ええと……」チラ
旅人「」コク

助手「……そうですね」
助手「もっと大人の女性と結婚した方が良いと思いますっ!」

ワー! ワー!!

助手「先生、拍手喝采ですっ」

旅人「彼女達の心をガッチリと掴んだね」

11: 2012/06/11(月) 01:10:39.93 ID:x9w1dHxlO
助手「それに、この会場には食べ物がたくさんあります」

助手「広場の外ではお腹を空かせている人が、たくさんいます」

助手「権力者なら、そこからなんとかするべきだと思います」

側近『……助言、痛み入ります』

助手「言ってやりました!」

旅人「君は……勇敢だね」

――…
側近『旦那様が選んだのは…』

側近『……聡明な、碧眼の少女です!』

助手「えぇっ!?」

旅人「ほう……」

助手「いや"ほう……"じゃなく!」

旅人「君に目をつけるあたり、中々に人を見る目がある男みたいだ」

助手「そ、そうですか……」テレ
助手「じゃなく! このままだと結婚させられちゃいますよぉ」

旅人「……」フム

13: 2012/06/11(月) 01:16:24.33 ID:x9w1dHxlO
地主「……」フヒヒ

助手「すごいこっちを見てます……」

旅人「もしかしたらただの面食いなのかも」

助手「先生……」

旅人「どうだい? 話だけでもしてみたら。もしかしたら良い人かもしれないし、この縁談自体は悪いものでもない」

助手「そうですか……」チラ

地主「……」ヒヒフ

助手「そうですかっ?」

旅人「そうあからさまに嫌な顔をしないで……」

側近『詳しい話は屋敷の方で……美味しい食事もご用意してあります』

助手「えっ」
助手「(……持って帰って、先生にも食べさせてあげらるかも)」

助手「……話だけなら…」

側近『ありがとうございます』ニコ

旅人「さて……」

16: 2012/06/11(月) 01:23:34.99 ID:x9w1dHxlO
【屋敷】
助手「わぁっ、豪華な食事」

側近『助手さんは、元々参加のご意志がなかったと聞きましたが…』
側近『……旦那様と一緒になられた暁には、このような食事を毎日堪能することが出来ます』

助手「毎日……」
助手「(毎日 先生にご馳走を食べさせてあげられる? でも……)」

助手「……地主さんは?」
側近『はい、あちらに』

助手「……?」

地主「ああなんと可愛らしい……」
助手「あ、ありがとうございます……」

地主「どうだい、真剣に考えて貰えないか」

助手「うーん……」
助手「あっ、このお料理は持ち帰っても?」

地主「君が結婚してくれるのならいくらでも」

助手「……でもぉ」
助手「そういうのは口リ…なんとかといって、いけないことだと聞きました!」

地主「か、可愛い子を可愛いと思ってなにがいけないんだ!」

側近『仰有る通りでございます』

18: 2012/06/11(月) 01:30:19.86 ID:x9w1dHxlO
助手「広場にいたお姉さん方は綺麗な人も多かったですよ」

地主「綺麗じゃダメなんだ。可愛いじゃないと」

助手「……私、まだ11歳で…」

地主「それが良いんじゃないか!」

助手「子供が良いって言いますけど、私は異国の人間なので……その」
助手「胸は、少しありますし……地主さんの好みとは違うと」

地主「なに、ふくらみかけが良いんだ」

助手「ええと……」
助手「……ちょっと、気持ちわるいかなと思います」

地主「丁重に監禁しろ」

側近『はっ』

ガシッ

助手「っ、離してください!」

地主「……」フヒヒ

21: 2012/06/11(月) 01:46:10.96 ID:x9w1dHxlO
【屋敷前】
旅人「……」

門番「おい、いつまで門の前にいる」

旅人「待ち人がいるので」

門番「残念だったな、今しがた花嫁が旦那様の話を受けたとの連絡が入った」

旅人「ほう……」
旅人「それは……彼女が選んだのなら、良いことだ」

門番「ご馳走を目の前に釣られたんじゃないか?」
門番2「お前に、花嫁から手紙だ」

旅人「?」

――――――――――――――
 先生へ、今までありがとう……。
 わたしは、ここで幸せに暮らすことにしました。
 けどすごく先生のことが心配で……
 ここだけの話。私は、旅を続けたいです。
 先生と見てきた景色や、一緒の思い出は私の大切な宝物です。
 先生、小説も斜め読みだから……長々と手紙を書いてもきっと同じだと思って手短にまとめました。
 暇が出来たらまた、会いに来てくださいね。

          助手より。
――――――――――――――

旅人「……わかったよ」

24: 2012/06/11(月) 01:57:08.90 ID:x9w1dHxlO
【夜・屋敷】
助手「……はぁ」
助手「……先生」グス

地主「なんだ、一緒にいた男のことか」

助手「……」
地主「アイツも私と同じで、君が可愛いから行動を共にしていただけなんだよ」

助手「違いますっ!」
助手「私が勝手に先生に付いて……」

地主「そんな事より、乱暴にされるのは嫌だろう?」
地主「大人しく自分から服を脱いでほしいなあ……」

助手「? どうして服を脱がないといけないんですか??」

地主「……あの男、余計な知識ばかりつけて。こっちは何も教えてないのか…」
地主「……話が合いそうだ」
スッ

助手「いやですっ、来ないでください!」

地主「白い肌に愛らしい顔……」フヒヒ

地主「ぷぎゃっ!?」ゲフッ

旅人『ん? 窓から侵入したら何か踏んだかな』

助手「先生っ!」パアァッ

26: 2012/06/11(月) 02:06:20.15 ID:x9w1dHxlO
旅人「……どうやら無事みたいだね」

助手「来てくれるって信じてました!」ウル

旅人「なに、暇が出来たから会いに来ただけさ」
旅人「ついでに、夜の散歩といこうか」ニコ

助手「はいっ!」

『旦那様!? なんの音ですか!!』
ドタドタ

助手「あの声は……側近の人…」

旅人「大丈夫、窓からロープを下げてあるから」
旅人「ほら、背中に乗って」

助手「ぁ……」
助手「……お邪魔、します」カァ

旅人「んしょ、っと。軽いな……僕にも、たまにはお腹一杯食べさせてあげられるような甲斐性があれば良かったんだけど」
助手「先生はそんな心配しなくて良いんです……」
ギュッ

旅人「さあ、登るよ」
助手「はいっ」


――…
側近『旦那様!? ダメだ、完全にノびてる…………このダメ人間…』ハァ

28: 2012/06/11(月) 02:13:32.39 ID:x9w1dHxlO
――…

スタスタ…
旅人「……」

助手「……先生、もう下ろしてくださって結構ですよ」

旅人「うーん、君は少し近くに置いておかないと危ないみたいだ」
旅人「次からは良い縁談があっても、僕が近くにいて見る事にしようかな」

助手「……また、そういう事を言って」
ピト

助手「……先生の背中、広くて暖かいです」

旅人「旅で鍛えらさったかな、おかげで逞しさだけは人並み以上になった」

助手「……月が、綺麗ですね」

旅人「……そうだね」

助手「憶えてますか? 私が、初めて、先生と会った…」
助手「……日も…こういう、綺麗な、満月…………」

助手「……」スゥ

旅人「……今日は疲れたね。…ご苦労様」ナデ

30: 2012/06/11(月) 02:21:35.39 ID:x9w1dHxlO
――…

助手「先生っ、向こうにお団子屋さんがあるみたいですよ!」

旅人「そう……じゃあ、この辺で一休みしようか」

助手「私、甘いの大好きです!」
旅人「そう、甘味は疲れにも良いからね……」

店主「いらっしゃい」
店主「あれ?」

旅人「おや、いつぞやの林檎の」

助手「林檎のおじさんっお久しぶりです」ペコ

店主「奇遇ですね、私も店を変えながら北に向かっているんですよ」ハハ

助手「北? 先生、私たち北に向かっているんですか??」

旅人「ああ、そうだよ」

助手「なるほど…」
助手「……では――…」


助手『……先生、次の街はなんというところですか?』ニコ


     <了>

33: 2012/06/11(月) 02:26:41.00 ID:x9w1dHxlO
 支援感謝です。
 本当は長編なので、不定期で物語の続きを書いていきます。

 この世界では、日本の地理も大分変わっていて、文化も変わっています。
 この物語は、変わった文化や人達から助手がどう上手く交際を断るかの……ゲフンゲフン

 旅人と、助手の成長を見ていっていただかればと思います。
 乙です。

34: 2012/06/11(月) 02:28:02.17 ID:0T9b8lQa0
助手ちゃん可愛かった乙かれ

引用元: 助手「先生! 次の街はなんていうところですか!?」