1: 2008/07/29(火) 13:12:24.93 ID:/q5j7arGP
うざったいくらいの熱気が部室に漂っている。
既に10月後半だというのに・・・
いや、暑いのはこのSOS団の部室だけかも知れない。


ハルヒ「あんた達、いい加減にしなさい!」
みくる「涼宮さん、今日という今日はハッキリ言わせてください」

朝比奈さんは頭から湯気が出るくらい興奮している。
そりゃ温度もあがるわな。

長門「どうぞ」
ハルヒ「有希も煽ったりしないの」
みくる「キーッ!今日という今日は長門さんに言わせてもらいます」
長門「何?」
みくる「あなた、キョン君の何なんですか?ここ数日、ベタベタし過ぎです」
長門「していない。彼とは用があって話しただけ」
みくる「ふーん、話しがあるだけで、家にまで連れ込んだりするんですかー?」

うぉ!なんて事を言うんだ、朝比奈さん。

ハルヒ「へー、キョンってば、有希の家に転がり込んだりするんだ?」
キョン「まてまて、俺は長門の相談を受けてだな・・・」
みくる「話なら部室でも、中庭でも喫茶店でも出来るじゃないですかぁ!なんで家なんですか!」
キョン「まぁ、落ち着いて。色々長くなる話があってだな」
みくる「もしかして、お二人はおつきあいしてるんですかー?」

いよいよ朝比奈さんの怒りは頂点なのか、語尾が煽る様に伸びている、マズイ。

2: 2008/07/29(火) 13:13:24.02 ID:/q5j7arGP
ンコン

タイミングよく古泉がやってきた。

古泉「すみません、バイトが入ったので今日は休みます」

そう言って、古泉は帰った。

まったく役に立たない奴だ・・・

しかしこれはマズイ、これは朝比奈さんの一言でハルヒの機嫌が・・・

ハルヒ「もういいわ、今日は解散。あと、部活内での隠し事はなし!有希は明日にでも事情を話して」

長門「・・・・」

俺には横に首を振ったように見えた

みくる「長門さんの好きにはさせないのです!」

ますますややこしくなってきたぞ・・・

3: 2008/07/29(火) 13:14:13.23 ID:/q5j7arGP
~自宅にて~

夜、古泉が突然訪ねてきた。

古泉「貴方は今回の件、どう収めるつもりなのですか?」

収めるも何も、俺は何にもしちゃいない、長門から色々相談を受けただけだ。

古泉「それは珍しい。長門さんが相談とは。彼女の上部が解決すると思ったのですが・・・」

有機ヒューマなんちゃらでも相談事はあるんだよ。長門のプライバシーの為にも内容までは話せないが・・・

古泉「それは良いとして、貴方への涼宮さんの怒りはMAXですよ」

そりゃよかったな、バイト代がウハウハ入ってくるじゃないか。

古泉「出来れば、貴方が解決してくれれば一番いいのですが・・・状況はかなり悪いです、いや最悪と言えるでしょう」

できりゃ苦労しないって・・・古泉が苦言を呈するって事はかなり悪い状態なのか・・・

古泉「では明日」

結局のところ、古泉は「バイトが辛い」と愚痴を溢しに来ただけだ。
しったこっちゃねーや。

5: 2008/07/29(火) 13:15:06.33 ID:/q5j7arGP
~翌日~
教室へ入ると、そこにはポニーテールのハルヒが居た。

キョン「お?今日は珍しくポニーテールか?」

ハルヒ「別にあんたの為にしてんじゃないわよ」

キョン「そうかい。それより昨日の件だけど・・・」

ハルヒ「聞きたくない・・・」

俺は突いてはイケない藪を突いたのか・・・

ハルヒ「あんたが有希と何してようが私の知った事じゃないわ」

なんだ、この態度は・・・

ハルヒ「だからもうその話はしなくていい」

何があったんだ?いつものハルヒならここで俺の首根っこを掴まえて「吐きなさい」って言うはずなのに・・・
授業中、背後からの視線が常時刺さっていたのは言うまでもない。
それが何を意味するのかは分らない・・・

6: 2008/07/29(火) 13:16:00.62 ID:/q5j7arGP
~前日に戻る~

プルルルル・・・

ハルヒ「はい、涼宮です」

みくる「もしもし、わたくし朝比奈と申します。夜分恐れ入りますが、ハルヒさんは・・・」

ハルヒ「あー、みくるちゃん!どうしたの?こんな時間に電話してきて」

みくる「涼宮さんにお話ししておきたい事があって・・・」

ハルヒ「分かったわ。で、何?」

みくる「あの・・・電話では何なので今からそちらへお伺いしていいですか?」

ハルヒ「別にいいけど、大丈夫?こんな時間に出歩いて」

みくる「ええ、実はもう涼宮さんの自宅の近くなんです」

ハルヒ「そう、じゃ、玄関で待ってる」

みくる「では、今からお伺いします」

7: 2008/07/29(火) 13:16:45.58 ID:/q5j7arGP
~数分後~

みくる「こんばんわ」

ハルヒ「わざわざ家にまで来て話すって余程大事な話なのね?」

みくる「ええ・・・」

ハルヒ「ま、立ち話もなんだから上がって」

みくる「お邪魔します」

ハルヒ「ゆっくりしていて、ジュースでいいわよね?」

みくる「あっ、お気づかいなく・・・」

ハルヒ「何言ってんの、いつもはみくるちゃんにやってもらっているんだし、たまにはね」

みくる「ありがとうございます」

ハルヒはキッチンでオレンジジュースをグラスに注ぎ、二階の部屋へと持って行った。

8: 2008/07/29(火) 13:17:33.86 ID:/q5j7arGP
ハルヒ「で、みくるちゃん。話って何?」

みくる「長門さんの事・・・」

ハルヒ「今日の事ね。別に気にしてないから」

みくる「駄目です!駄目なんです、それでは・・・(規定事項から外れるんです)」

ハルヒ「何?良く聞こえなかったんだけど」

みくる「長門さんはキョン君を狙っています。それはどうしても阻止しなければならないんです」

ハルヒ「べ、別に良いんじゃない?そ、それに有希が狙っているとか良く分んないし」

みくる「涼宮さん、長門さんは本気です。彼女はキョン君を狙っています」

ハルヒ「そう?有希がキョンの事好きなようには思えないんだけど・・・」

みくる「このままほっておいたら、あの二人は付き合います。それは困るんです・・・」

ハルヒ「何がどう困るのよ?」

みくる「あの・・その・・・上手くお伝えできないんですが・・・キョン君は涼宮さんと付き合わなければなりません」

ハルヒ「あ、あ、あんた・・・みくるちゃん!何言ってんの!」

9: 2008/07/29(火) 13:18:54.30 ID:/q5j7arGP
みくる「その・・・それが一番だと思うのです」

ハルヒ「べ、別に私はキョンの事・・・」

みくる「私には分かるんです、涼宮さんがキョン君の事好きだって・・・」

ハルヒ「ちょっとみくるちゃん!冗談はやめてよ!」

みくる「涼宮さん・・・」

みくるは背筋を伸ばし、正座を組み直し淡々とハルヒに語り始めた。

10: 2008/07/29(火) 13:21:23.74 ID:/q5j7arGP
みくる「涼宮さん、もっと素直になるべきです。私には分るんです、涼宮さんがキョン君の事好きだって」

ハルヒ「ちょっと、別に私は・・・その・・・同じクラスで、同じ団で・・・」

みくる「自分に正直になってください」

みくるはハルヒの言葉を遮るように強く言い捨てた。

ハルヒ「正直って言われても、別に好きとか嫌いとか・・・」

みくる「本当にそうなんですか?じゃ、キョン君が長門さんと付き合ってもいいのですね?」

ハルヒ「え?あ・・そのぉ。。。」

みくる「涼宮さん、よく聞いてください。キョン君はみんなに優しくて、頼りになります。もし、涼宮さんがキョン君の事が好きじゃないなら、私も彼女候補になりますよ?」

ハルヒ「え?みくるちゃん・・・うそ?・・・」

みくる「嘘です」

ハルヒ「・・・」

11: 2008/07/29(火) 13:23:42.17 ID:/q5j7arGP
みくる「私もキョン君には好意を抱いていますが、それは恋愛感情ではありません。ただ、何と言えばいいのか・・・年上の私が言うのもなんですが、」

ハルヒ「が?」

みくる「兄みたいな人だから、涼宮さんと一緒になって幸せになって欲しいのです。長門さんとではキョン君は幸せになれないんです!」

ハルヒ「だからって・・・私に、どうしろって言うのよ」

みくる「これは戦争です。キョン君争奪戦なのです。私は全面的に涼宮さんを応援します。だから、長門さんに勝ってください」

ハルヒ「んー・・・勝とか負けるとか、良く解らないんだけど」

みくる「素直になってください!これはとても大事なことなんです!自分の気持ちに正直になってください」

ハルヒ「分かったわよ!要は有希とキョンがくっつかなければいいんでしょ!」

みくる「それだけでは駄目です。あなた達は付き合わなくてはならないんです」

ハルヒ「さっきからまるでシナリオがあるみたいな事、言ってるわね。キョンと付き合うとかは二の次よ」

みくる「詳しい事を今は言えません、でも・・・お願いします」

ハルヒ「あー!もう!なんなの!分ったわよ!で、どうすれば良いのよ!」

みくる「まずは気を引きましょう。それから長門さんは私が阻止します。涼宮さんの代わりに・・・」

12: 2008/07/29(火) 13:25:40.64 ID:/q5j7arGP
~昼休み~

国木田「キョン、お客さんが来ているよ。SOS団の人、古泉君だっけ?」

キョン「ん?なんだ、珍しい」

古泉「こんにちわ。よければご一緒に昼食など」

キョン「ああ、いいぜ。昨日の続きだろ、どうせ」

古泉「正解です、今日は察しが良いですね」

いつもは悪いと言いたそうだな

古泉「まずは食堂にでも行きましょう。お昼を買って、テラスで」

キョン「で、話は何だ?」

古泉「今回の件、状況はかなり悪いのです。涼宮さんと朝比奈さんは手を組みました。長門さんは孤立無援のようですが・・・もしかすると喜緑さんが長門さん側につくかも知れません」

キョン「昼間から悪い冗談はよせ」

古泉「貴方は分っていて、誤魔化しているだけです。長門さんの感情をね」

キョン「あのな、古泉。長門はSOS団の中でもだなぁ、その無口でなんというか・・・」

13: 2008/07/29(火) 13:27:08.00 ID:/q5j7arGP
古泉「言いたい事は分ります、しかしよく考えてください。ここ数日の長門さんの行動をね。組織の調査では貴方は長門さんの家で食事をとり、お風呂まで入ったはずです」

キョン「なんで!何で分るんだよ!」

古泉「組織の調査力なら簡単な事です、貴方は家に帰ってから食事もとらず、風呂にも入らず寝たのですから。長門さんの家はシールドされて監視は出来ないのですけどね」

キョン「お前!俺の家のプライバシーはどうなるんだ!」

古泉「これは・・・世界の為です。我慢してください」

キョン「なんでもかんでも世界世界、しったこっちゃねーよ!いいか、二度とおれんちを監視するな、わかったな!」

古泉「監視しないで良い様に心がけて行動してくれれば・・・」

キョン「なっ!なんだと!いい加減にしろ!俺は普通の人間で普通の高校生で居たいんだ!」

古泉「なら話は簡単です。人間として『人間』とお付き合いされては?」

キョン「どういう事だ?」

古泉「単刀直入に言えば、あなたは涼宮さんと付き合えば良い。朝比奈さんもそうなる様に行動しています」

キョン「なんだと!」

14: 2008/07/29(火) 13:28:16.42 ID:/q5j7arGP
古泉「彼女は本気です。それは・・・おっとこれ以上はお話しできません。では、その辺の事を良く考えて行動してください」

キョン「やだね、俺はハルヒとは付き合わん」

古泉「そうですか。ま、どっちでも構いませんけどね。バイトが忙しくなるのは勘弁して欲しいです」

古泉がいつになく、真剣に語る。

古泉「長門さんは人間ではない、朝比奈さんは・・・幾ら頑張ってもお付き合い出来ません。ほかの選択肢もあなたには無い、分かりますよね?」

鶴屋さんとかSOS団以外でも考えられるだろ?

古泉「あーそれから、長門さんとお風呂は一緒に入ったのですか?」

キョン「入るわけねーだろ!それよりお前はどっち側なんだ?」

古泉「私ですか?私は・・・一応「人間」ですから。まぁ光と闇で言えば・・・夕闇の中ってところでしょうか?

あーこれがゲームなら色んな分岐でいろんなルートがあるだろう。
なんだ、このレールの上を走る電車のような話は。
俺は自分の意志で決めちゃならんのか?
結局、昼飯には殆ど手を付けず、昼休みが終わった。

15: 2008/07/29(火) 13:31:40.69 ID:/q5j7arGP
~放課後~

俺は沈んだ気持ちのまま、部室へ。
そこにはいつものように、長門が本を読み、朝比奈さんが掃除をしてお茶を入れる用意をしていた。
今日は何も起こっていないようだな。
俺がドアを閉めようとしたとき、古泉が滑るように入って来た。

古泉「もう皆さまお揃いで」

キョン「ハルヒはまだだけどな」

古泉「おや、授業が終わって、一緒じゃなかったのですか?」

キョン「何か用がるとかで、出て行っちまった」

古泉「そうですか・・」

みくる「キョン君、お茶淹れますね」

キョン「あ、どうもすみません」

17: 2008/07/29(火) 13:34:11.89 ID:/q5j7arGP
朝比奈さんは湯呑を2つ用意し、お茶を淹れる。
古泉と俺のところへ運んで来た。
長門には・・・どうやらまだ昨日の件で尾を引いているようだ。

キョン「朝比奈さん、長門の分は?」

みくる「あら、長門さんいらっしゃったのですか?気が付きませんでした」

長門「・・・」

みくる「お茶いるんですか?生憎今淹れた2杯でお茶っ葉がなくなりました。『出がらし』でいいですか?」

長門「いい、淹れなくて良い」

みくる「そうですか、ごめんなさい」

キョン「長門、よかったら俺のを・・・」

長門「要らない」

キョン「そうか・・・」

長門「明日から自分のお茶は持ってくる。だから今日、貴方と一緒に葉を買いに行きたい」

キョン「え?ああ。まぁ・・・いいけど」

横方向からの視線が痛い、古泉と朝比奈さんが俺を見ている、あーなんかまずいこと言ったか?

18: 2008/07/29(火) 13:34:59.15 ID:/q5j7arGP
みくる「お茶っ葉だけでなく、ポットや急須も持ってきてくださいね」

おいおい、朝比奈さん何もそこまで言わなくても

一気に冷え込んだSOS団の雰囲気、無言が続く、ああ、もう100年ぐらい動いていないような感覚だ。

静寂を打ち破るように、ハルヒがやってきた。

ハルヒ「みんな、おっはよー!あ、午後だからこんにちわかな?」

いつものテンションでハルヒの登場だ。

俺はどこに視点を置けばいいのか良く解らない状態に陥る。
たぶんこの部屋には俺には見えない大きな壁があるんだろう。
そして俺はその壁の間に挟み込まれた柱なんだろう・・・

19: 2008/07/29(火) 13:35:55.32 ID:/q5j7arGP
ハルヒ「みくるちゃん、お茶頂戴」

みくる「はぁ~い、今淹れますね」

おい、お茶っ葉ないんじゃないのか?
長門は気にもせずページを捲る、一瞬手が止まったようには見えたが・・・

ハルヒ「キョン、今日このあと付き合って」

キョン「????」

ハルヒ「ちょっと買い物行きたいの。駅前のデパートで良いコート見つけたの、だから一緒にきて!」

古泉は何も聞こえないフリをし、黙々とトランプをシャッフルしている。

ハルヒ「ね、いいでしょ?」

キョン「団長命令だろ、どうせ。聞かなくて罰金と言われても困るしな。ただ、先約があってだな・・・」

みくる「コートいいですね、涼宮さんの選んだコートだからきっと素敵なんでしょうね」と朝比奈さんが言葉を遮る。

みくる「ついでに並んで歩いても絵になるような男性用コートも見てくればいいじゃないですか」

キョン「朝比奈さん・・・」

20: 2008/07/29(火) 13:39:53.37 ID:/q5j7arGP
ハルヒ「じゃキョン、いきましょう!今日の活動はここまで!」

キョン「いや、俺このあと長・・・」

ハルヒが俺の正面に立つ、俯角15度・距離40センチ・・・

ハルヒ「キョン・・・あの・・団長命令じゃなくて、私個人としてのお願いなの・・・」

やべ、なんという近距離爆撃!俺は言葉を失い、力が抜けた!

スマン長門、お茶は明日買いに行こう

みくる「さぁ、日が暮れる前にどうぞ。戸締りは私がしておきますから」

古泉「では、僕も今日はこの辺で・・・最近バイトが忙しかったので色々私用が溜まってますので」

キョン「長門、また明日・・・」

俺の言葉をかき消すように朝比奈さんが俺の背を押す、俺はドアの外へ一直線押し出された。

みくる「じゃ、気を付けて行って下さいね!また明日、お話聞かせてくださいね」

朝比奈さんがハルヒの耳元で何か囁いた。
俺は朝比奈さんに見送られ、ハルヒに手を引かれながら部室をあとにした。

22: 2008/07/29(火) 13:41:31.49 ID:/q5j7arGP
みくる「さて・・・戸締りして帰りましょう」

古泉「ではお先に。朝比奈さんあとは宜しく」

みくる「はい」

古泉「では、お先に」

朝比奈さんは湯呑を洗い、帰り支度を始める。

長門「何故?」

朝比奈「♪ふんふんふん」鼻歌交じりで着替えをする朝比奈さん。

長門「何故、妨害する」

みくる「なんのことですかぁ?長門さん」

長門「なぜ邪魔をする?」

みくる「別に邪魔なんかしてませんよ?それにお茶っ葉なんて一人で買えるじゃありませんか。長門さん、お茶の葉見た事ないんですか?」

明らかに攻撃的な発言だ

長門「そう、これは宣戦布告」

23: 2008/07/29(火) 13:42:30.51 ID:/q5j7arGP
みくる「あら、どう取られても勝手ですけど、人間と機械は結婚できませんよ?」

長門「進化すれば可能」

みくる「その進化の時間、人間の個体が生きているとでも?」

長門「それは時間を超越した処理を行えば可能」

みくる「元居た時間上ですら、貴方達は進化出来ていません。それは無理なことなのですよ?まだ理解できないのですかぁ?」

長門「未来は変わる」

みくる「変えられては困る未来もあるのです。有機ヒューマノイドインターフェイス一個体の我儘で、人類の未来を変えられては困るの」

長門「私は必ず進化する」

みくる「へぇ、楽しみですね。期待してますね」

長門「見ているがいい」

みくる「もう戯言はいいですから、とっとと出てください。閉めますよ?」

長門はそっと本を閉じ、席を立った。

24: 2008/07/29(火) 13:44:12.32 ID:/q5j7arGP
~駅前~

ハルヒ「ねぇ、キョン。こっちのコートとあっちのコートどっちがいいと思う?」

キョン「そうだなぁ・・・って、俺のセンスをアテにしない方がいいぜ」

ハルヒ「さぁ!早く選び・・・」

(みくる:いいですか、涼宮さん。キョン君を脅迫したり急かしたりしては駄目、甘えてください)

ハルヒ「ねぇ、キョン・・君は、ど、ど、どっちがいいかなぁ?」

キョン「はぁ?君?あっはっは!どうしたハルヒ、熱でもあんのか・・・」

ハルヒ「(カァー!)べ、べつに熱なんてないもん!ど、どっちがいいかな?」

キョン「そうだな・・・ハルヒって行動的だし、こっちのタイプが良いんじゃないか?ダッフルだと長門とかぶるし」

ハルヒ「(また有希だ・・・)そ、そう。じゃ、こっちにするね」

キョン「ああ、それがいい。それが似合ってる。それに今日はポニーテールだから襟元がすっきりしている方が可愛いぜ」

ハルヒ「(ポッ)す、す、すみません、このコートください!」

キョン「おい、買っちゃうのか?他にも見たらどうだ?」

ハルヒ「いいの、もう買っちゃう!」

キョン「おかしなやつだ・・・」

26: 2008/07/29(火) 13:45:29.53 ID:/q5j7arGP
ハルヒ「キョン・・君、ついでに良かったら、その・・・これとお揃いのコート買う?」

キョン「おいおい、ハルヒ無理に君付けで呼ばなくいいぞ。それに今どきペアルックなんて流行らないし笑えない。SOS団ご指定のコートと言われても俺はヤだね」

ハルヒ「そう・・・もういい・・・」

ピロロロロ、ハルヒの携帯が鳴る

ハルヒ[もしもし]

みくる[涼宮さん、コート選んでもらえましたか?]

ハルヒ「う、うん。。。]

みくる[じゃ、キョン君のコートも選んで上げてください]

ハルヒ「それが・・・・要らないって]

みくる[そうですか、ではそのコートはプレゼント用に買いましょう。与えてしまえば良いのです。そちらのデパートで使える商品券を古泉君から貰ってるので遠慮なく使ってください」

ハルヒ[でも・・・]

みくる[大丈夫です。無くならないように取り置きしてもらってくださいね]

ハルヒ[わかった]

ピッ

27: 2008/07/29(火) 13:47:42.15 ID:/q5j7arGP
キョン「誰から?」

ハルヒ「え?ああ、家から」

キョン「そうか、じゃ帰るか」

ハルヒ「うん・・・でも、ちょっとだけ待ってて」そういうとハルヒは再び店の中へ。

キョン「なぁ、ハルヒ。何かSOS団内部がややこしい事になってるが、流されないようにしろよ。お前が団長なんだしな」

ハルヒ「分ってるわよ、そんな事」

キョン「そうかい、それを聞いてホッとしたよ」

ハルヒ「キョン、今日うちでご飯食べて行かない?」

キョン「ん?うんーん、今日はやめとくわ。俺、最近あやしげな集団に監視されているようだし」

ハルヒ「何それ?SOS団を付け狙うなんて私が許さないわ!」

キョン「やめとけ、たぶんハルヒが勝つだろうけど、勝っても仕方がないからな」

ハルヒ「そう・・・」

キョン「スマン、他にも色々と用があるんで今日は帰るわ」

ハルヒ「じゃ、また明日ね!バイバイ!」

28: 2008/07/29(火) 13:48:43.29 ID:/q5j7arGP
ハルヒと別れた俺は直ぐに携帯を取り出し電話した

キョン[もしもし、長門か?あの用は済んだ、今から買い物に行かないか?」

長門「いい・・・」

キョン「なんだ、あの後朝比奈さんと仲直り出来たのか?ちゃんと明日からお茶出して貰えるのか?」

長門「無理。すでに宣戦布告された。だから明日から部室へも行かない」

キョン「何言ってんだ。元々あそこは文芸部員たるお前の部屋だろ、そんな事ぐらいで躊躇するなよ」

長門「巻き込んでしまう」

キョン「大丈夫だ、俺がお前達の喧嘩を止めるから」

長門「・・・そう」

キョン「とりあえず今から行くから」

長門「分かった」

俺は電車を降り、自転車を自宅ではなく長門のマンションへ走らせた。

キョン「長門、待たせたな」

長門「待ってない、用意をした」

キョン「そうか、じゃ、後ろに乗れよ」

29: 2008/07/29(火) 13:49:35.29 ID:/q5j7arGP
長門はいつもの制服ではなく、今私服を着ていた。
アースカラーのワンピースにカーディガン、足元はショートブーツ・・・
こんな長門を見るのは初めてだ

キョン「長門、今日は私服か。珍しいな」

長門「そんな気分」

キョン「そうかい、お茶っ葉買いに行くのがそんなに嬉しいのか」

長門「たぶん」

自転車の荷台にちょこんと座った長門は俺の腰のあたりをそっと掴む。
しかし、長門は軽いな。
一体何キロあるんだろうか?
前にハルヒを載せて、坂道を上がった時は氏ぬかと思ったけどな。
長門のマンションから15分ほど走り、商店街につく。

32: 2008/07/29(火) 13:53:00.39 ID:/q5j7arGP
キョン「ここの商店街に専門店がある、好きなお茶っ葉を買えよ」

長門「もう決まっている。前にあなたに飲んでもらったモノ」

キョン「あー、あれか!産まれるまで飲んだアレか!あれは美味しかったな」

長門「これを200g」

店主「やぁ、お嬢ちゃん。毎度ありがとう、いつものやつ200gね、はい3600円」

キョン「何?たったそれだけで3600円?」

長門「そう」

店主「このお茶はとても高級なお茶だよ。このお嬢ちゃんはいつも買いに来てくれるんだよ」

なんだ、ここは長門の行きつけだったの・・・・なのに何故俺を買い物に誘ったんだ?
まさか、本当に長門は・・・・

店主「あんた、お嬢ちゃんの彼氏かい?いいねぇ、若いって。はい、100円おまけだよ」

長門「ありがとう」

キョン「いや、ただの同級生でして・・・・」

長門「照れてる」

キョン「なんですと!」

店主「お嬢ちゃん、彼氏と仲良くね、まいどあり~」

33: 2008/07/29(火) 13:53:59.29 ID:/q5j7arGP
長門は一体何のつもりだ?
彼氏と言われて否定せず・・・もしかして、古泉の言う事は本当なのか!
長門は俺に対して何か特別な感情を持っているのか?
俺は考えた、数分考えた、たぶん考えた。
が、答えが出ない。
俺の袖を引っ張るか弱い力でふと我に返った。

長門「この先に、たまに行く店がある。食事を」

キョン「あ、ああ・・わかった、行こう」

自転車を押しながら歩くと、そこには小さな食堂があった。
へー、長門はこんな食堂でご飯食べたりするんだな。

店員「いらっしゃい、あら?今日は彼氏と?」

長門「コクン」

うなずくな、長門

店員「まぁ、隅に置けないね。今日はご飯サービスするよ」

勝手に決めるな

34: 2008/07/29(火) 13:54:58.80 ID:/q5j7arGP
メニューを見る。何だこの店は!特盛り過ぎる・・・

長門「焼肉大盛り」

キョン「俺はふつうの焼肉定食で」

店員「あらあら、彼女が大盛りなら彼氏も頑張らなきゃ」

何故飯を食うだけで頑張らねばならんのだ!

長門「ここはリバース厳禁、残してもいけない」

ああ、分かってるって、これだけ店中に張り紙してりゃ誰でもわかる。

長門「そう・・・残りそうな時は私が」

そうしてくれ、助かる。

少ししてテーブルに置かれた料理は、特盛りでは済まなかった。

「なぁ長門、いつもお前はこんなのを食べてるのか?」

その質問に長門は壁を指さす
うぉ!長門がTVによく出ているフードファイターと一緒に写真に写っている。
なんだなんだ、大飯ぐらいは知っていたが、まさか・・・・

店員「この子は飛び入りでフードファイターと引き分けたのよね。色々TV出演も誘われたのに・・・」

長門「興味無い」

37: 2008/07/29(火) 14:01:03.20 ID:/q5j7arGP
そうかい、お前の興味はこの食べ物だけだろうな。
しかし、これ全部食えるのか心配になって来た!
これで1000円未満とは・・・恐ろしい食堂だな
不思議探しにハルヒを連れてくるべきだろう、何故この量でこの価格なのか、不思議でしょうがない。

何とか完食した。
大盛り完食の長門に遅れること10分・・・食事がこんなにつらいと思ったのは初めてだ。

長門「お勘定」

そういって、すっと立ち上がる長門
ちょっと消化するまでまってくれ

長門「大丈夫、自転車は押しながら帰ればいい」

満腹の腹を摩りながら、俺は自転車を押す。
長門と居るといつも生まれそうになる。
長門、ひょっとして俺に宇宙人の子でも産ますつもりか?
このまま腹からエイリアンが出てきてもおかしくない状態だ。

38: 2008/07/29(火) 14:02:18.11 ID:/q5j7arGP
マンションが見える坂道に差し掛かった時に長門が呟く

長門「焼肉を二人で食べるカップルは既に性交渉済みと聞いた事がある」

キョン「長門、そんな冗談は良くない。それにそれは都市伝説だし、今日のは定食だ」

長門「都市伝説って何?」

キョン「明日、図書館で調べてくれ」

長門「そう・・・」

キョン「あのさぁ、長門」

長門「何?」

キョン「お前、俺の事どう思ってるんだ?」

長門「意味がわからない。笑えない」

キョン「いや、なんていうか・・・ギャグでも冗談でなく質問だ」

長門「今言えるのは、朝比奈みくるには負けない」

キョン「そうか・・・出来れば以前のようにみんな仲良くして欲しいんだが無理か?」

長門「望むものが居るなら。あなたが決めれば良い。それが解決法」

41: 2008/07/29(火) 14:04:17.99 ID:/q5j7arGP
俺は何も言う事が出来ず、ただ自転車を押し、黙々と歩いた。
マンションの前で長門と別れる。
お茶に誘われたが、今日は何となくそんな気分ではない。
踵を返して、家路に就こうとしたとき長門が何か言ったように思えた。

「す・・・き・・・」

振り向くと長門が小さく手を振っている。
ただの風の音か。
しかし、このまま自転車を漕いで帰るのは危険だ。
途中で産まれるのは必至だし、とりあえず押して帰るか・・・

42: 2008/07/29(火) 14:05:18.47 ID:/q5j7arGP
自宅が見えた時、俺は古泉が来ている事を察知した。
何故なら、いつもの黒塗りタクシーが家の前で停止灯を点滅させ、停まっているからだ。
古泉、何か急用か?

「どちらへ行かれてたんですか?」

お前には関係ない

「おやおや、つれない返事ですね。良かったら食事でもしながらお話しませんか?」

また俺を監視していたな

「さぁ、どうでしょうか?別に誰かに報告する為に監視している訳ではありません」

じゃ、なんだ?そんなに俺が気になるのか?

「少しドライブでもしながら話しませんか?」

俺は古泉と一緒にタクシーに乗り込み、車内で話をすることにした。

「さて早速ですが・・・今日はかなり平穏でしたが、この後また閉鎖空間が発生すると思います。何故ならあなたの行動が全て涼宮さんに筒抜けですから」

何故だ?俺はハルヒと買い物に行き、その足で帰ってきたんだぞ?

43: 2008/07/29(火) 14:06:03.74 ID:/q5j7arGP
「ダイレクトにですか?」

いや、まぁ寄り道をしたが・・・・

「ですね。それが間もなく涼宮さんの耳に入ります。未来人にも組織はありますからね。そろそろ朝比奈さんが報告に行くころでしょう」

何?!じゃ、俺が長門と買い物して飯食った事は筒抜けか?

「勿論ですよ。さて、ここで我々からの提案です。貴方には早急にどちらか一方を選んで貰いたいのです。人間を選ぶ方が無難だと思いますが・・・」

待て、そんな事をしたら・・・

「まぁ、どちらを選んでも結果は同じなのです。他は違うようですけどね。」

どういう事だ?

「未来人サイドとしては涼宮さんとのゴールが規定事項であり、おそらくその未来に貴方と涼宮さんが深く関与している。その関与のおかげで良い未来があるんでしょう」
「統合思念体としては、正直なところ涼宮さんがこのまま平穏無事で過ごす事なく、何か巨大な爆発を起こす事を願っている」

44: 2008/07/29(火) 14:07:54.63 ID:/q5j7arGP
まて、それは違うだろ。
朝倉の件で、はっきりしている。
長門の親玉は静観派だろう?

「まぁ、いつまでもそうとは限りません。そろそろ違うサンプリングを採る必要があるのかも知れません。彼らの進化の為に」

何?その為に長門は仕込まれて動いているのか?

「さぁ、どうでしょうね。もっと別の事情があるかも知れません」

で、お前の所はどうなんだ?

「中途半端が一番困るのです。閉鎖空間だけが多発しては困るのです」

なるほど、もうバイトには飽きたって事だな

「おやおや、酷い言い草ですね」

何言ってやがる、そうだろ?仕事が面倒になっただけじゃないか?

45: 2008/07/29(火) 14:10:20.35 ID:/q5j7arGP
「それは違いますよ。貴方も閉鎖空間を良く知っているでしょう?
あれは異次元的な世界のようで、実は同一平面上・同一時間上に発生している空間なのです。
なので、その隣接する空間には色んな無理が掛かります。例えば、直進する車はそこを通れない。
なので、無意識に迂回する。
そうする事で意識の中に何か違和感が発生する。
また、閉鎖空間内の人は一旦外へ放出されますが、事後元に戻る。
その空白の時間の意識を植え付ける仕事も私たちの役目なのです。
ただ、幾ら上手くやっても歪みは発生します。その蓄積は非常に困るのです」

何が何だか・・・要はハルヒのせいで、人類が色々困ってるってことか?

「まぁ、そんな感じですね。ですから、彼女が悩まなくていい世界を再構築するか、彼女が願っているモノが手に入ればいいのです。
それが貴方なのです。だから人間と付き合えと言ったのです」

くだらねぇ、結局何か?俺は駄々子に与える玩具か?

「あなたがそう思うのであればそうでしょう。ただ私たちは違う呼び方をしています、貴方の事をね」

何だ、言ってみろ

46: 2008/07/29(火) 14:11:07.97 ID:/q5j7arGP
「与えし者」

あたえしもの?なんだ、そりゃ?

「全ての物質へ、何らかの影響を与える存在です。
リンゴが赤いのはあなたが色を与えた。
魚が泳ぎ、鳥が飛ぶ事もあなたが与えた。
何かしら全ての事象に関与しているのは間違いありません。
だからこそ、涼宮さんの傍に居るのです」

俺はただの高校生で、勝手にハルヒが来ただけなんだぞ?

「違います、彼女は望んだのです。
自分を染めてくれる男性。自分に何かワクワクする事を与えてくれる人。
話し相手、喧嘩相手・・・彼女の望み全てを叶えられるスーパーマンをね。
それが貴方、『与えし者』なのです」

ちょっとまて。俺はリンゴを赤くなんて言った覚えは無い。

「ええ、今はね。貴方の1492代前の精神が与えたのです、貴方の精神はずっと旅をしながらこの世界を回っているのです。ですから、明日氏んだとしても、その精神はどこかへ引き継がれる。人とは限りませんが・・・

47: 2008/07/29(火) 14:11:52.66 ID:/q5j7arGP
私達もそれを最近知ったのですよ、統合思念体を調査しているうちにね。
統合思念体は涼宮さんの観察をしているうちに、貴方の存在に気が付いた。
精神の履歴、精神のDNAとでも言いましょうか?それを解読すると貴方はこの地球が生まれた時と同じくして出現しているのです。
そして、その存在を解明すると「異世界からの使者」である事が分かったのです。
もう一つの宇宙、統合思念体ですら把握できない世界、そこから貴方は来たのです。
貴方の『精神」が。
よって、涼宮さんが大爆発を起こし、新たな世界を作った時、貴方は何を与えるのか?その力によって統合思念体は進化を得られると判断したのです。
結論は貴方が大事な『駒』だったのですよ、すべてを完結させ、新たな世界を造る為の・・・」

おい古泉、面白くもなけりゃ真面目に考える気にもならない戯言だ。
なら何か?俺が明日から月は青色って決めたら青くなるのか?

「それはありませんね。貴方は『与えし者』、だれかに要求されその答えを出す。凡そ、未来人が未来人で居られるのも、あなたが何か与えたのでしょう、涼宮さんにね。結果、未来が変わったと」
じゃ何か、長門の親玉もそんな事を考えているのか?

「恐らく、統合思念体が進化の過程で欲する事があり、その導入過程として長門さんを使う。
貴方と長門さんが接触する事で、その力を手に入れられると判断したのでしょう」

49: 2008/07/29(火) 14:13:36.08 ID:/q5j7arGP
じゃ何か?長門の好意は所謂「やらせ」なのか?

「私たち組織はそう思っています」

何だか複雑な気持ちになってきた。
山ほど食った焼肉定食で膨らんだ腹は既に平常を取り戻していた。
自宅前に到着した車を降りた時、古泉が俺に声をかける。

「恐らく明日は壮絶な戦いになると思いますよ」

はぁ、明日学校休もうかな・・・

51: 2008/07/29(火) 14:14:21.62 ID:/q5j7arGP
~翌日~

ハルヒ「キョン、おはよう!」

キョン「ああ、おはよう」

ハルヒ「どうしたの?浮かれない顔して?」

キョン「いや、なんでもない。ただ、少ししか寝てないんだ」

ハルヒ「そうなんだ・・・・何か悩み事?団長に相談しなさいよ・・・」

キョン「あー、サンキュ。どうしようもなくなったらその時は頼む」

ハルヒ「あ、うん・・・」

53: 2008/07/29(火) 14:15:56.10 ID:/q5j7arGP
~昼休み~

ハルヒ「ねぇキョン、天気もいいし、中庭でお弁当食べない?」

キョン「あー、じゃ購買でパン買ってくるわ」

ハルヒ「あ、あのね、今日お弁当作ってきたんだ・・・キョンの分もあるし・・・」

キョン「そうか、じゃ戴くとするか」

ハルヒ「うん!」
ハルヒ「ねぇねぇ、昨日あれからどうしたの?」

キョン「んー、ちょっと寄り道してから家に帰ったら古泉が来て、話しこんでたら夜遅くなった。で、続き考えてたら朝方でさぁ・・・眠いんだ」

ハルヒ「ふ~ん、寄り道してたんだ。そっか・・・」

キョン「あー大したことじゃない、買い物して飯食って・・・・スースー」

ハルヒ「キョン?寝ちゃった?」

キョン「・・・・」

54: 2008/07/29(火) 14:16:46.66 ID:/q5j7arGP
数十分後

ハルヒ「キョン、キョン、起きて」

キョン「ん?わっ!びっくりした!顔が近い!」

ハルヒ「あんた、話ししている途中で寝ちゃって私動けなかったんだからね」

辺りを見回せば、俺はハルヒの膝で寝ていたようだ

ハルヒ「さ、教室に戻りましょう。授業始まるわ」

キョン「ああ、そうだな」

ハルヒの膝枕は程良く暖かく、柔らかかった。
まだ後頭部にその余韻が残る。


みくる「涼宮さん、上手く行ってます。あとは問題分子を取り除くだけです」

55: 2008/07/29(火) 14:18:01.95 ID:/q5j7arGP
~放課後~
寝不足でフラフラだったが、昼寝をしたおかげで放課後にはいつもの調子に戻っていた。

キョン「よー、みんな元気か?」

みくる「キョン君、昨日は良いコート見つかりましたようですね、さっき涼宮さんから聞きましたよ」

ハルヒ「みくるちゃん!いわなくてもいいの!」

みくる「いいじゃないですかぁ。買い物している二人はお似合いのカップルに見えるんでしょうね?」

キョン「朝比奈さん、そんな妄想は勘弁して下さいよ」

古泉「羨ましい話です」

何だか羞恥心と恐怖心が一斉に襲ってきた。

古泉「ちょっと今日は予定があるので、部活は早退させてもらいますね?」

キョン「あ、古泉!」

古泉「では!」

古泉は沈没する船を察知したネズミの如く、部室を脱出した。

58: 2008/07/29(火) 14:20:10.37 ID:/q5j7arGP
みくる「キョン君、今お茶淹れますね」

その瞬間、長門が立ち上がる

長門「いい。私が淹れる」

みくる「いいです、これは私の仕事ですから」

長門「新しい葉を買ってきた。彼が一番好きなお茶の葉」

みくる「何言ってるんですか、長門さん。キョン君が好きなのは雁金ですよ」

長門「違う、かぶせ玉露」

みくる「そうなんですか?キョン君」

俺はどう返事すれば良いんだ・・・
糞!古泉め、これを察知してたんだな!

ハルヒ「私、用を思い出したからちょっと先帰るね」

ハルヒ!ちょっとまて!
そのまま、カバンを持ったままハルヒは部室を出てゆく。
朝比奈さんのアドバイスだろうか?

59: 2008/07/29(火) 14:21:21.86 ID:/q5j7arGP
長門「戦闘モード」

みくる「今日こそ決着させます」

何もお茶ぐらいでそんなに喧嘩しないでください、朝比奈さん。
長門もそこまで頑張らなくていいから!
あ~おれも帰っていいかな?

鞄を持って、ドアの方へ走った瞬間・・・空間閉鎖された。

長門「今日は最後まで見てほしい。私の想い」

みくる「何が想いよ、笑わせないで」

長門「朝比奈みくるを敵性と判定、攻撃開始」

みくる「ただの人間とおもって?禁則解除、全能力で贋作を排除する!」

そこに居るのは、見た事もない姿の朝比奈さんに、いつか朝倉に襲われた時に助けてくれた長門。
閃光と共に地響きがする。
やべぇ、巻き込まれる!
次の瞬間、視界に吹っ飛ぶ長門が映る。

60: 2008/07/29(火) 14:22:26.63 ID:/q5j7arGP
何とか着地した長門は呪文を唱える

「*&#&%”&#%”&」

呪文が終わるや否や、朝比奈さんの黒金色のスーツにヒビが入る。

みくる「これぐらいで倒れるとでも思って?」

青白い光が朝比奈さんの右腕から発射される。
長門はそれを左手のひらで受け止め、また呪文を唱える。
恐らく、何分も経っていないだろ。
数刹那・・・なのに二人ともボロボロだ。

「もうやめてくれ!」

俺は叫んだ。
瞬間、光は消え闇に包まれる。
「もうやめてくれ、お前達に与えるものは無い」
俺は何を言ってるんだ?
言葉は無意識に溢れる。
「これ以上の争いは何も生まない、何も与えられない」

無音の世界に俺の声だけが響く
「もうやめてくれ・・・・」

意識が遠のく、視界が狭まる、そして闇すら消えた。

63: 2008/07/29(火) 14:26:58.00 ID:/q5j7arGP
みくる「キョン君?キョン君?長門さん、キョン君をどうしたの!」

長門「私は何もしていない。空間閉鎖も解除していない。消えた」

みくる「どういう事?どういう事なの?」

長門「分らない。その存在が消えた・・・閉鎖解除」
みくる「あ・・・・」

空間閉鎖は解かれ、いつもの部室に戻る。
そこには割れた湯のみが一つ転がっていた。

みくる「キョン君・・・どこ?」

長門「この空間内のどこにも居ない」

みくる「そんな・・・・キョン君が居なくなれば未来が変わってしまう・・・」

長門「私の役目も終わりかも知れない」

外から野球部の金属バットが球を捉えた甲高い音が聞こえる。

みくる「私のせいよ・・・私が・・・」

長門「いや、私が彼を消してしまった」

みくる「どうすればいいの・・・・長門さん、貴女はどうしてキョン君を・・・」

長門「好きだったから」

65: 2008/07/29(火) 14:28:35.13 ID:/q5j7arGP
みくる「あなたは有機化合物でしょ、人への感情は無いはず」

長門「進化・・・望んだから進化した。進化により感情を得た」

みくる「そんな・・・・」

長門「そう、すでに私は人と同じ感情を持つ。だから今とても悲しい。彼が居ないから」

みくる「それはいつから・・・」

長門「かなり前。彼に接触した日、図書館で彼から感情を授かった」

みくる「そうだったの・・・・」

長門「だから、ずっと一緒に居たかった。だから、人になる事を望んだ。でももう無理。授かることは無い。だから進化は無い。感情だけ持った有機合成物、人になれなかった粗悪品」

みくる「もうやめて!私達も未来で人ではなくなる」

長門「そう・・・同じ境遇。しかし統合思念体は何も言わない。未来は何も言ってこないの?」

みくる「まだ何も・・・あ、連絡してみます」

みくるは片目を押さえ、何か呟く。
数分間、そのままの状態が続く。

66: 2008/07/29(火) 14:29:30.13 ID:/q5j7arGP
みくる「うそ・・・・何も変わっていない。キョン君が消滅したのに何も変わっていない」

長門「そう・・・こちらは追跡不能。異世界へ戻った可能性がある」

「私たち、何か大切なものを無くしてしまったのかも知れないですね」

「そうね」

「戻れたらいいですね」

「うん」

68: 2008/07/29(火) 14:33:53.72 ID:/q5j7arGP
部室のドアが開く。

「よぉ!」

「キョン君!?」
「キョン?」

「何だ二人とも、そんなに驚いた顔して、何かあったのか?」

みくる「本当にキョン君なの?」

キョン「朝比奈さん?言ってる事が良く解らないんですけど・・・それにあまり強く抱きつかれると硬直します・・・あー!」

右腕に朝比奈さんが抱きつき、左腕には長門が掴まっている。
捕まるというか、ぶら下がってるような・・・・

69: 2008/07/29(火) 14:35:12.87 ID:/q5j7arGP
「あんた達!いい加減にしなさい!」

突然ハルヒが部室に入ってくる。

ハルヒ「いつから部室は不純異性交遊の場所になったの?真昼間から男子一人に女子二人が抱きついてるんじゃないわよ!いい、SOS団は健全な団なのよ、あんた達罰として駅前でケーキ買ってきなさい!」

ハルヒの怒声に三人は直立不動、行けの号令で回れ右した。

70: 2008/07/29(火) 14:36:12.07 ID:/q5j7arGP
~駅への道のり~

みくる「あの~本当にキョン君ですよね?」

長門「そう、個体は同じ。しかし反応が無かった」

キョン「なんだ、二人はまだ記憶してたのか」

「!」「!」

キョン「いいですかお二人さん。願った者へ何かを与える『与えし者』というのが居てだな、
そいつに「もどれたらいいですねぇ~」なんて願ったもんだから、元の世界が与えられてしまったんですよ。
まさかこんな能力が俺にあるとは思わなかったが、なんとなくある事がわかった。
それも願われるだけでは駄目で、俺も「そっちの方がいい」と思う事で与えられるようですけど・・・」

みくる「それじゃ、やはりキョン君は異世界人?」

長門「そのよう」

72: 2008/07/29(火) 14:38:10.76 ID:/q5j7arGP
キョン
「ま、俺自身よく解ってないんだが、こっちの世界に来て1500回近く転生してるんで古い記憶は消えていくんだな。
消えるというか、段々と深い所に格納されるというか・・・
それが二人の喧嘩中に蘇ってきてさ、自分が誰であるか分かったんだ。
で、嫌になってこの体から飛び出したつもりが、体ごとと飛んじまって・・・捩れた時空を彷徨った。
やっと出口が見えたと思って飛びだしたら部室の前だった訳。
恐らく長門の空間閉鎖解除時に時空の捩れに隙間が出来て、つながったと思う
案外早く出られて良かったよ、昔500年ぐらい彷徨った事も思い出したしな」

みくる「そ、そうなんですか・・・・」

長門「すまない」

キョン「今回は今の時間換算で23日だったので楽勝だったけどな。さぁ、駅前まで急ごうぜ!またハルヒの機嫌が悪くなったら大変だ!」

73: 2008/07/29(火) 14:39:26.51 ID:/q5j7arGP
長門「進化の過程、続きは?」

キョン「ああ、あるさ」

みくる「あの。。。未来との関係は?」

キョン「ああ、あるさ。朝比奈さんが記憶しているように」

女子「うん」

キョン「だからこれだけは言える。俺が誰とどうなろうと、進化も未来もある。だから、長門が猛アタックしても大丈夫だ。朝比奈さんがアタックしてくれても大丈夫なんだぜ」

女子「!」

みくる「ライバルが一気に二人に増えましたね」

長門「私は負けない」

駅前まで坂道を駆け足で下って行く俺に、いつまでもこんな幸せな日々が続けばという願いが聞こえた。
だから、俺は与えた。

「ああ、いつまでも続くさ・・・・ハルヒ」


おわり

75: 2008/07/29(火) 14:40:20.68 ID:/q5j7arGP
エピローグ

ハルヒ「遅い!」

古泉「3人はどちらへ?」

ハルヒ「じゃれ合ってた罰に買い物に行かせたの」

古泉「そうなんですか」

ハルヒ「古泉君、ぼ~っとしないでお茶ぐらい入れなさいよ!」

古泉「はぁ・・・・」

ハルヒ「大型新人も半年経ったらメッキがはがれたの?」

古泉「メッキだなんて・・・最初か・・・」

ハルヒ「口答えしない!今度口答えしたら罰金よ、罰金!」

古泉「すみません、お茶が入りました」

ハルヒ「あっ!つーーーーーーー!あんたね、お茶の温度は70度よ!これ熱湯じゃないの!」

古泉「すみません」

ハルヒ「使えない子ね」

80: 2008/07/29(火) 14:59:55.28 ID:+67T610iO
おわり

82: 2008/07/29(火) 15:45:40.80 ID:/q5j7arGP
あとがき
僕は古泉が嫌いな訳じゃありませんw
今回は自分なりのキョンの世界観を書いてみました。
どこか矛盾や表現違いがあるかも知れませんが、ご容赦を。
空想入れすぎで重くなりすぎた、でも後悔していない。
反省はしてるけど・・・

では、またいつか。
次回、「キョン、仕事しない?」の巻

ここまでお付き合い、支援有難うございました。
ちなみに
ポリプロピレンはPP

eoなんだすまない

また規制なんだ

>>81
ごめんwwwww

83: 2008/07/29(火) 15:47:49.46 ID:4k9IYEbm0
>>82
面白いSS読ましてもらってるし逆に感謝してるぜw

84: 2008/07/29(火) 15:50:57.64 ID:/q5j7arGP
>>83
ありがとうございます。
努力して、もっと面白くなる様に頑張ります。

85: 2008/07/29(火) 16:06:44.54 ID:fgGZ0kI0O

涼宮ハルヒ……読んでみよっかな……

引用元: ハルヒ「あんた達、いい加減にしなさい!」