1:◆cgcCmk1QIM 19/11/11(月)12:59:37 ID:mAi
【某月某日夜/女子寮ロビー】
久川颯「うわー、アイドルになって初めてのお給料!」
颯「うわー、うわー、思ったよりある! すごくない!?」
颯「どうしようかなあ。何に使おうかなあ。ゆーこちゃんとの約束だから貯金分は実家に送って、ゆーこちゃんとパパにプレゼント買って、あっ、服! 服買いたい! なーとまた原宿行ってー」
颯「……あっ、寮費とレッスン料の引き落としが10日じゃない! その分はちゃんと取り置いて、えーと」
岡崎泰葉「ふふ、はしゃいでるね。初めてのお給料日だっけ?」
颯「あっ! 岡崎泰葉ちゃん!? 凄い、ホンモノだ!!」
泰葉「解かるなあ。私も初めてのお給料は舞い上がったっけ」
颯「あのっ、あの、泰葉さんの出てる番組よく見てました! 名探偵ザキちゃん、なーと一緒に、あ、なーって言うのは」
泰葉「知ってる。久川凪ちゃんだよね、双子のお姉さん」
颯「すごーい! 知っててくれたんだ!」
泰葉「そりゃね。久川凪と颯のmiroir。今話題じゃない」
颯「き、恐縮です!」
2: 19/11/11(月)13:00:05 ID:mAi
泰葉「あと、私個人的に颯ちゃんを応援してるし?」
颯「えっ……ほ、ほんとに!? すごい! ありがとうございます!」
泰葉「厳しい世界だけど、お互い頑張ろうね――で、お給料の使い道のこと考えてたの?」
颯「はい! 働いてお金もらうの初めてだから、どうしようかなって、いろいろ考えちゃって」
泰葉「うん、解かる解かる――まずはやっぱり、貯金かな」
颯「はい! ゆーこちゃんと、実家の口座に貯金分は送金する約束をしてて」
泰葉「ううん、そういうのじゃなくてね」
颯「えっ、でも貯金て」
泰葉「颯ちゃんがしなくちゃならないのは貯金は貯金でも親にナイショの貯金……いわば隠し財産の確保だよ!」
颯「隠し財産!?」
泰葉「名づけるなら久川埋蔵金かな」
颯「すごい! 糸井○里が掘りそう!」
泰葉「古いのよく知ってるね」
颯「はーもなーもテレビ大好きだったから……でもどうして? あ、やっぱり将来物入りだったりするから?」
3: 19/11/11(月)13:36:15 ID:mAi
泰葉「ゆーこちゃんって言うのは、2人のお母さん?」
颯「あ、はい、そうです! 応援してくれてて」
泰葉「家族の応援は有難いよね」
颯「えへへ、はい!」
泰葉「でも、家族の望む方向と、自分の行きたい方向がいつまでも一緒とは限らないから」
颯「――えっ」
泰葉「今の路線を続けて欲しいから路線転向は反対ですとか、もっと単純になかなか結果が出ないから、手遅れにならないうちにアイドルは諦めて戻ってきなさいとかね」
颯「あ、あの」
泰葉「やっぱり私たち、未成年だからね。親が本格的に反対すると、活動を続けるのは難しいじゃない」
颯「は、はい……」
泰葉「芸能界って不安定だし、結果が出せない時はお給料も減るから……そういうときまとまったお金が無いと、粘って結果を出すために挑戦することもできなくなっちゃうんだよ」
颯「あ、はい、そうです! 応援してくれてて」
泰葉「家族の応援は有難いよね」
颯「えへへ、はい!」
泰葉「でも、家族の望む方向と、自分の行きたい方向がいつまでも一緒とは限らないから」
颯「――えっ」
泰葉「今の路線を続けて欲しいから路線転向は反対ですとか、もっと単純になかなか結果が出ないから、手遅れにならないうちにアイドルは諦めて戻ってきなさいとかね」
颯「あ、あの」
泰葉「やっぱり私たち、未成年だからね。親が本格的に反対すると、活動を続けるのは難しいじゃない」
颯「は、はい……」
泰葉「芸能界って不安定だし、結果が出せない時はお給料も減るから……そういうときまとまったお金が無いと、粘って結果を出すために挑戦することもできなくなっちゃうんだよ」
4: 19/11/11(月)13:36:35 ID:mAi
颯「……それ、あの、実体験があって……?」
泰葉「どうしてそう思ったの?」
颯「泰葉さんは子役から転向したって。もしかしたら、色々大変だったのかなあって、その」
泰葉「……違うよ?」
颯「えっ」
泰葉「芸能界長いと、色々噂も聞くし、見もするから。これは伝聞。うちの両親は颯ちゃんとこと同じで応援してくれてるけど……何があるか解からないもの。しっかり現金抱えておいたほうがいいよ」
颯「は、はい……」
泰葉「それに隠し財産があると、色々楽しいんだよ?」
颯「楽しい?」
泰葉「いざというときポンとお金を出して先輩面とかできるよ!」
颯「すごい! 即物的!」
泰葉「どうしてそう思ったの?」
颯「泰葉さんは子役から転向したって。もしかしたら、色々大変だったのかなあって、その」
泰葉「……違うよ?」
颯「えっ」
泰葉「芸能界長いと、色々噂も聞くし、見もするから。これは伝聞。うちの両親は颯ちゃんとこと同じで応援してくれてるけど……何があるか解からないもの。しっかり現金抱えておいたほうがいいよ」
颯「は、はい……」
泰葉「それに隠し財産があると、色々楽しいんだよ?」
颯「楽しい?」
泰葉「いざというときポンとお金を出して先輩面とかできるよ!」
颯「すごい! 即物的!」
5: 19/11/11(月)13:36:55 ID:mAi
泰葉「仲間とお金を出し合って何か楽しいことをしようって時も、まとまったお金をいったん立て替えて先払いできる子がいるととってもスムーズだし」
颯「あっ、それはわかる気がします」
泰葉「ちなみに一番最近岡崎埋蔵金が出動したのはGBNSの4人でロマンスカーに乗って箱根観光に行くプランを実行したときだよ!」
颯「すごい! なんか楽しそう!」
泰葉「紅葉見て温泉入ってね。事前に予約してたから移動もスムーズ!」
颯「いいなあ、いつかはーもそういうのしてみたい!」
泰葉「じゃあ、埋蔵金を作らなきゃね」
颯「はい。さっそくなーとも相談してみます――それでは!」
泰葉「うんうん――あー、行っちゃった」
千鶴「名前通り、パパッと動く子だね……」
泰葉「あれ、千鶴ちゃん、いたの」
千鶴「えへへ。なんだか入りにくくて」
泰葉「お金の話だもんねー」
颯「あっ、それはわかる気がします」
泰葉「ちなみに一番最近岡崎埋蔵金が出動したのはGBNSの4人でロマンスカーに乗って箱根観光に行くプランを実行したときだよ!」
颯「すごい! なんか楽しそう!」
泰葉「紅葉見て温泉入ってね。事前に予約してたから移動もスムーズ!」
颯「いいなあ、いつかはーもそういうのしてみたい!」
泰葉「じゃあ、埋蔵金を作らなきゃね」
颯「はい。さっそくなーとも相談してみます――それでは!」
泰葉「うんうん――あー、行っちゃった」
千鶴「名前通り、パパッと動く子だね……」
泰葉「あれ、千鶴ちゃん、いたの」
千鶴「えへへ。なんだか入りにくくて」
泰葉「お金の話だもんねー」
6: 19/11/11(月)13:37:22 ID:mAi
千鶴「……あれ、半分当りだったんじゃないの」
泰葉「ん?」
千鶴「颯ちゃんの言ってた事」
泰葉「――まあね。アイドル転向したてはお給金雀の涙だったし、親はあまりいい顔してなかったし。子役時代の蓄えがなかったら、結果が出るまで粘れなかったのはそうかも」
千鶴「そうだよね……でも、珍しいな」
泰葉「珍しい? ああいうアドバイスするのが?」
千鶴「それもだけど、個人的に応援してるとか、普段言わないでしょ。ほら、みんなライバルで……って、いつも言ってるし」
泰葉「……似てるからかなあ」
千鶴「似てる? 颯ちゃんが、泰葉ちゃんに?」
泰葉「うん」
千鶴「そうかなあ。向こうのほうがくっきりした美少女顔でグラマーで」
泰葉「グーでいい?」
千鶴「冗談、冗談……でも、実際あまり似てる気がしないけどな」
泰葉「容姿も性格も似てないけどね、似てる」
千鶴「?」
泰葉「色々できて、そつなく纏まってるけど、尖ったところがないところがね」
千鶴「……」
7: 19/11/11(月)13:38:02 ID:mAi
泰葉「私は子役出身だから。他の役をやったときに邪魔になる『色』はあまりつけないようにして――その分くっきりした私の色が無かった。何でもできて、どれもそこそこ。それが私の武器であり、弱点かな」
千鶴「颯ちゃんもそう、ってこと?」
泰葉「いびつでも、ひとつ尖ったとこがある子がぱっと売れることがある世界だし――――颯ちゃんは凄い伸びしろがあるけど、それが評価されるまで時間がかかると思うから、ちょっと心配」
」
千鶴「そっか……」
泰葉「うん」
千鶴「そっか……」
泰葉「こほん。それはそれとしてだけど」
千鶴「えっ?」
泰葉「さっき言ったGBNSロマンスカー計画、どう思う?」
千鶴「あっ、行った覚えないこと喋ってるなあと思ったら腹案の段階だったのね」
泰葉「そうそう。我ながらちょっと楽しそうじゃない? 紅葉が残ってるうちになんとか行きたいなあって」
千鶴「すごく行きたい! 私、まだ箱根って見たことないから」
泰葉「良かった。ほたるちゃんと千鶴ちゃんは私たちを差し置いてモデルアイチャレの皆ともみじ見に行ってたから、もう紅葉なんて興味ないかと……」
千鶴「そそそそんなことないよ!? 絶対みんなで行きたいよ!?」
泰葉「あはは、解かってます。それでね……」
千鶴「うんうん……」
8: 19/11/11(月)13:38:19 ID:mAi
【30分後/女子寮・久川凪私室】
颯「――と。そういうわけなの!」
凪「なるほどそういうワケだったのか」
颯「ああいうお金のアドバイスって初めてだったから、ちょっとびっくりした」
凪「突然埋蔵金とか言い出すから、凪はてっきりはーちゃんが秘密の『あのお金』に気付いたものとばかり」
颯「あのお金って何!?」
凪「はーちゃんが困った時のために、ゆーこちゃんがあの旅行鞄の底にお金をそっと」
颯「えっ!? 知らなかったそんなの!!」
凪「忍ばせたという設定で凪が100円入れておこうかと。未遂です。つまり存在しない」
颯「もー、なーは……でもね、泰葉さんの言うこと一理あると思うから。はーとなーも一緒に埋蔵金を」
凪「いえ、それは別々にしましょう」
颯「えっ」
9: 19/11/11(月)13:38:49 ID:mAi
凪「一緒に埋蔵金すると、凪ははーちゃんにサプライズできません。はーちゃんも凪にサプライズできません」
颯「それはそうだけど」
凪「サプライズな火曜日のためにお互い秘密がよいのです。秘密の数だけ女は綺麗になると言います。やや、そうすると凪は絶世の美少女?」
颯「双子だもん。一緒の顔だよ」
凪「でも、サプライズしたい事も時も、一緒じゃないかも知れません。一緒かもしれないが。どっちだ」
颯「……そっか」
凪「メイビー」
颯「……なんか今日は、みんなが大人に見えるなあ」
凪「アダルトな魅力まで手に入れてしまったか。勝ったな」
颯「もー。真面目な話だよ。泰葉さんも最後はぐらかしてたけど……なんか、はーが子供みたいじゃない」
凪「自分でお金を稼いで、使い道を考えて。凪たちは一歩大人になりました――多分。もしかしたら」
颯「そうしていつか、そのお金で別々の道に進んだり……なんだかちょっと、寂しい気もする」
凪「凪はちっとも」
颯「えー! 薄情じゃない!?」
10: 19/11/11(月)13:39:02 ID:mAi
凪「だって凪とはーちゃんは今度の日曜2人で原宿にくりだします。今度はP抜き、羽目を外すぜ」
颯「えっ、決定事項!?」
凪「おや、はーちゃんは行きたかったものとばかり。違ったら凪のこの原宿に行きたい気持ちはどうすればいいのか。埋蔵すべき?」
颯「ううん。はーも行きたい……うん、それでいいか、今は」
凪「それでいいのです、今は」
颯「――ね、今日一緒に寝ない?」
凪「わーお。見たか世間のはーちゃんファン。これが姉妹特典だ。了解です」
颯「たまにはいいよね。いっぱい話そう!」
凪「たまにはいいのです――いつだって」
(おしまい)
11: 19/11/17(日)18:40:14 ID:t9O
とても良かった 乙ぅぅう!
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