1: 2012/03/05(月) 19:21:18.69 ID:CeNxkaeDO

 きっかけはそう、わたしが小学生の頃のことだった。

 小学校4年生。内気で友達は少なく、周りから孤立しがちだったわたし。教室では騒ぐ皆に混ざらず自分の席にいて、図書室から借りた本を独り読んでいた。
 時には男子からちょっかいを受けて、そのたびに怯えていた。いや、今おもえばただ元気よく声を掛けられただけだろうな。この頃のわたしはそれほど臆病な子だった。
 ……だから、わたしと話を交わせる友達はどの子も、普段からおとなしい人ばかり。話しをするのも極まれに。たまたま居合わせた時くらいしか交わらなかった。

映画「けいおん!」【TBSオンデマンド】


2: 2012/03/05(月) 19:22:27.19 ID:CeNxkaeDO

 ある日、いつものように独り席で絵本を読んでいると、わたしの机の左側に同学年の女の子が一人、ほお杖をついてわたしを見てきた。「じーっ」とコミックによく出てくるアレを口にしながら。

 わたしがその子へゆっくりと顔を向けると、その子と目が合わなかった。見ていたのはわたしではなく絵本の方だからだ。
 それでもわたしが見てると横目に気づいたんだろう、その子はほおをついてた腕を解き、サッと立ち上がり目をわたしに合わせこう言った。


 「なに読んでるの!」


 これが最初と呼んでいい、この快活な女の子との出逢い。
 それは最悪な相性で、当時のわたしには厳しい相手だった。

 それから幾度も、男子ばりに活発なその子が声掛けてくるようになり、そのたび過度にわたしが怯えるといった光景は繰り返された。でもその子に悪気はないようで、ふつうにお話してくれることも多かった。

4: 2012/03/05(月) 19:23:19.54 ID:CeNxkaeDO

 気がついて、ふと毎日を思い返すと、わたしはその子と交流することに怯えなくなっていた。それどころか下校を一緒にする約束を交わすほどに仲が進んでいた。だけどわたしから話を始めたことは少なかった。わたしは引っこみ思案でもあった。

 声かけて、わたしからその子に話し始めることが増えたのは、たしか作文コンクール事件のあとからだ。なかば逆ギレ気味に放った本音、いやその大声が生んだ関係の進展。わたしから話す行為に不安をなくす魔法を教えてもらった。
 ああ、コンクールのあともその子ともっと自分から話をしたくて、その子だけパイナップルをイメージし続けた。のちにそれがバレて拗ねられたから、その場でがんばってイメージ無しに話しかける練習をしたっけな。

 誘って、とママに頼んでその子とスケート場に連れていってもらったことがあった。
 インドアなわたしには最初、氷に足を着けるのも恐かった。わたしが踏めば氷が割れて落ちるんじゃないか、と根拠ない不安にとらわれていた。
 けどその子が氷の上を滑る、のでなく威勢よく歩を進め転倒したのを見て、なんだか恐がっていた自分がバカらしくなった。怖じけ無くその子のもとへ滑り寄った。
 それからのスケートの上達は、わたしの方が速いのは言うまでもない。なのでその子にスケートを指導してあげることになる。
 ……ちなみに、わたし達は帰りにスケート場付近のプリクラで撮ったのだけど、律の右頬はじゃっかん赤く腫れていた。

5: 2012/03/05(月) 19:24:16.01 ID:CeNxkaeDO


 ――なつかしい思い出の数々。数えていたらキリがない。たいせつな宝物。

 ……ただ、できればなかったことにしたい黒歴史をも作り出してしまうことになる。
 これがなければ今も、こんなひどい仕打ちを受けることはなかった。

 それは小学校六年生の秋。特別なことのない、いつもの騒がしい一日で。

 放課後の掃除当番でたまたま、教室で溜まったゴミの処理をわたし一人が担当することになった。
 教室を掃除し終えたあと、他の当番の子たちとサヨナラをして。
 ふたつあるゴミ袋にため息ついて、ひとつを手に取ろうした。

6: 2012/03/05(月) 19:25:04.51 ID:CeNxkaeDO
 すると校門で待ち合わせしていたはずのその子が、教室に勢いよく入って来た。ゴミ袋の処理を手分けしてくれた。



 なんで校門で待ってなかったの?忘れもの?

 ううん、なんとなく。

 ふーん…?

 いーじゃんいーじゃん! 澪ちゃんのゴミ出し、てつだってあげたし。

 あぁ、うん…。

 さあて……もうゴミないね? じゃかえろー。

 うん。


――ここでなぜあんな恥ずかしいせりふが自然に口に出たのか、わたしには解らない。


 「ありがとね。わたし、りっちゃんのこと、世界で一番だいすきだよ」



 自分の言葉に自分で驚き、必氏にごまかそうにも時すでに遅く。

 律はわたしに告白されたと声を上げ周りに言いふらし、周りの子も周りの子で「ラブコール!」と手拍子を打ち騒ぐ始末。

澪「ち、ちがうのぉ…そうじゃなくて……」

 「ラブコール! Hey! ラブコール! アンコール!」

澪「ふぇぇ・・・・・・」

 恥ずかしさのあまり氏んでしまいそうだった……。

7: 2012/03/05(月) 19:25:39.06 ID:CeNxkaeDO


――そんな悪夢が小学生の時に起こった……いや起こした。

 それから卒業まで律に「あいつが私にwwぷぷぷ」と何度でもそのことをネタにされ続けた。

 同じ中学に入っても三年間律にバカにされ続けた。その間ようやくわたしはツッコミを覚え、調子に乗る律に拳骨を食らわせてきた。それでも律はやめることはなかった。

 そして高校でも三年間バカにされ、大学に入ってもずっとバカにされ、今だに夕食の時に養娘(むすめ)にまでバカにされる。


律「そーれ! 世界でイチバン!」

娘「DAiSUKiだよ!」

律娘「愛しのりっちゃん!!」

澪「このバカ親子! わたしの話きけーーーーーーーーーー」



 ……このとおり、メジャーデビューを果たしたバンドの漫才夫婦は、今日も健在です。


END

8: 2012/03/05(月) 19:27:20.59 ID:CeNxkaeDO
以上です。使用したコピペがどうも検索にヒットしないので貼れません。内容だけ覚えてます。すいません

9: 2012/03/05(月) 21:30:06.28 ID:7wWZSLqx0
荒んだ気持ちが癒されたよ乙

さてsingingの澪フィギャーの予約でもしてくるか

引用元: 澪「こんな仕打ちを受ける生活はもうヤだ!」