1: ◆6cZRMaO/G6 2017/10/09(月) 18:42:30.67 ID:yBu5KLrf0
更新遅め。
久々の百合。
ようルビ

以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。


2: 2017/10/09(月) 18:58:41.73 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー




ルビィ「…………」




季節は夏。
まだまだお日さまはかくれてなくて。
だから、夕暮れももうちょっとあとになりそう。

そんな、練習終わりの帰り道。
いつも通りの道を、いつものように。
けれど、いつもと違う人と歩く。



「ルビィちゃん、着いたよ」

ルビィ「ピギッ」



ぼけっとしてたせいで、変な反応しちゃった。

大丈夫?
なんて、顔を覗き込まれて……。

うぅぅぅ。
恥ずかしいよぉ……。



「今日はなにがいいかな? まだ暑いし、氷のやつ? それとも、ルビィちゃんの好きなクリーム系?」



って、ルビィが恥ずかしがっている間にも、話を進めてる。
え、えっと!
答えなきゃ!



ルビィ「あ、えっと……えっとぉ……」

「っと、ごめんね。焦らなくていいよ!」

ルビィ「う、うんっ」



ルビィが頷くのを待ってから、隣にいるその人はーー




曜「なんでも好きなやつ、選んでいいからね!」




ーーにこりと微笑んだ。




ーーーーーー

3: 2017/10/09(月) 18:59:28.22 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー

4: 2017/10/09(月) 19:11:03.33 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー



そもそもこうなった原因は数日前のこと。



ーーーーーー




ダイヤ「んもうおぉぉぉ!! 我慢なりませんわつ
!!!」

ルビィ「ピギッ!?」



夜。
スクールアイドルの動画を見ようとして、ゴロンってしてたルビィ。
その部屋のドアをバーンって開けて入ってきたのはおねえちゃん。
び、びっくりしたぁ……。
変な声出ちゃった……。



ルビィ「ど、どうしたの……? おねえちゃん?」



ものすごく怖い顔をしたおねえちゃんにそう聞きました。

もしかしたら、鞠莉ちゃんがなにかしたとかかなぁ?
……でも、だとしたら、なんでルビィの部屋に……?

そんな風に考えてたルビィ。
けど、そんな考えはーー




ダイヤ「ぶっぶーー!!! ですわっ!!」

ルビィ「っ!?」



おねえちゃんに一喝されました。



ルビィ「お、おねえちゃん……ちかいよ……」

ダイヤ「…………近い? はぁ?」

ルビィ「な、なんで、そんなにルビィのことにらんでくるのぉ……」



至近距離で睨んでくるおねえちゃん……怖い。

ちょっとはなれて……。
そんなルビィの願いを無視して、おねえちゃんは続けます。

5: 2017/10/09(月) 19:19:35.68 ID:yBu5KLrf0

ダイヤ「……ルビィ」

ルビィ「は、はい」

ダイヤ「わたくしは貴女の姉です」

ルビィ「う、うん……」

ダイヤ「お父様やお母様からも、ルビィを守ってあげるのですよと言われてきましたわ」

ルビィ「……う、うん」

ダイヤ「そう。だから、わたくしは今まで我慢してきたのです」

ルビィ「??」



ぅゅ?
よくわかんない……。
おねえちゃんはなにをーー



ダイヤ「ですが!」

ダイヤ「もう我慢の限界ですっ!!!」



ーー バンッ ーー




ルビィ「ピギッ!?」



机をおもいっきりたたいて、おねえちゃんはルビィの目の前にあるものを突き出しました。

それは、そう。
ルビィにも見覚えがあるもの。

……ううん。
ついさっきまで、目にし、口にし、味わった後になって気がついたもの。
気づいて、隠したはずのもの……!?



ルビィ「……な、なんで……」

ダイヤ「なんで……? じゃあ、ないわ」

ルビィ「それは、ルビィが完璧にかくしたはずなのに……」

ダイヤ「えぇ、ビニール袋に包まれて捨てられていたわ。ご丁寧に中が見えないようにしてあった」

ルビィ「…………」

ダイヤ「でも、すぐに分かりましたわ。だって、あるべきところにこれがなかったのだから!!」

ルビィ「!」

ダイヤ「…………ルビィ、貴女ーー」




ダイヤ「ーーまた、わたくしのアイスを食べましたわねッ!!!」

ルビィ「!?!?」



6: 2017/10/09(月) 19:25:21.99 ID:yBu5KLrf0
がくぜんとした。
おねえちゃんの手にあったのは、さっき間違ってルビィが食べちゃったおねえちゃんのアイスだった。



ダイヤ「間違って? どうやったら、間違うんですか……?」

ダイヤ「ここに!! わたくしの名前が書いてあるでしょう!!!」グリグリ

ルビィ「あ、あぅぅ……」



たしかに、ルビィの顔に押しつけられたアイスの……アイスだったもののふたには大きく『ダイヤ』って書いてある。
うん。
それは、わかってた……。

でも!!



ルビィ「ま、まって、おねえちゃんっ」

ダイヤ「……なに?」

ルビィ「そ、それを食べたのは、たしかにルビィだよ……」

ダイヤ「えぇ、でしょうね。お母様はともかくお父様はあまり甘いものを好みませんし、お母様は今日は出かけていますからね」

ルビィ「…………あのね、実はこれには深いわけがあるの……」

ダイヤ「深い、わけ?」

ルビィ「うん。あのねーー」

7: 2017/10/09(月) 19:28:29.48 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー



ルビィ「うゅぅぅ……おふろ、きもちよかったぁ……」

ルビィ「……でも、ちょっとあついぃぃ……」

ルビィ「………………こんなときは」



ーー ガラッ ーー



ルビィ「ひゃぁぁぁ、つめたぁ……」

ルビィ「お行儀悪いからおねえちゃんに怒られちゃいそうだけど……冷凍庫冷たくてきもちいい♪」

ルビィ「…………あれ?」




ルビィ「こ、これはーー!!!」




ーーーーーー

8: 2017/10/09(月) 19:32:56.75 ID:yBu5KLrf0



ダイヤ「深くない」

ダイヤ「浅い」



一蹴された。
ぅゅ……。



ダイヤ「それで?」

ルビィ「え?」

ダイヤ「なにか言うことがあるんじゃない?」

ルビィ「ご、ごめんなさい……」

ダイヤ「反省してる……?」

ルビィ「は、はい」

ダイヤ「…………」

ルビィ「…………」



ダイヤ「……あれ、美味しかった?」

ルビィ「すっごく♪」



ルビィ「あ……」

ダイヤ「~~~~っ!!!」




ダイヤ「ルビィ!!」

ダイヤ「貴女は1ヶ月アイス禁止ですわ!!!」



ーーーーーー



こうして。
ルビィは、家でも、外でもアイス禁止令が出されたのでした。



ーーーーーー

9: 2017/10/09(月) 19:33:31.17 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー

10: 2017/10/09(月) 19:43:54.81 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー



善子「いや、自業自得よ」

ルビィ「うゅ……」



アイス禁止令が出た次の日。
教室で、善子ちゃんにその話をしたらそう言われちゃった。



善子「ほんと、いつもは天使みたいなのにね」

ルビィ「そ、そんなこと……///」

善子「やってることは、堕天使ヨハネもビックリの悪魔の如き所業ね」

ルビィ「うぅぅぅ……」



上げて落とされたよぉ……。
そ、その通りなんだけど……。



花丸「やめるずら、善子ちゃん」



と、そこで声をあげたのは、はなまるちゃん。

ルビィちゃんをいじめるのはよくないよ。
そう言ってくれた。
さすが、ルビィの親友っ!



善子「だから、ヨハネよ」

花丸「善子ちゃん、ルビィちゃんも反省してるし。ね? ルビィちゃん?」

ルビィ「う、うんっ」



うん!
反省した、すごく反省した!
楽しみにしてたアイスを食べられたら、すっごく悲しいもんね……。



善子「……ちなみに、ルビィ? それでダイヤさんに怒られるのは何回目?」

ルビィ「…………」

善子「何回目?」

ルビィ「5回目……」ボソッ

善子「それはさすがに呆れるわ」

ルビィ「ぅ、ぅゅ……」



返す言葉がないよ……。

11: 2017/10/09(月) 19:50:36.98 ID:yBu5KLrf0

花丸「……うんうん。それは仕方ないことずら」

ルビィ「はなまるちゃん?」
善子「ずら丸?」

花丸「ルビィちゃんは好きなもののことになると夢中になっちゃうから」

ルビィ「はなまるちゃんっ」



さすが親友っ!
ルビィのことを理解してくれてる!
そして、やさしい!



花丸「だから、まるで理性のない獣のように目の前のアイスを食らってしまうこともしょうがないこと」

ルビィ「え゛……」



やさ、しい……。



ルビィ「うぅぅぅ……」

花丸「……って、あれ? ルビィちゃん?」

善子「たまに、ずら丸ってえぐいわよね」

花丸「ずら?」



うぅぅぅ……。
ルビィが悪かったです……。
だから、獣とか言わないでください……。



ーーーーーー

12: 2017/10/09(月) 19:58:46.34 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー




果南「それじゃあ、今日はここまで!」




果南ちゃんの言葉で、その日の練習はおしまいになった。
みんな思い思いの話をしてて……。



千歌「ル・ビ・ィ……ちゃんっ!!」ガシッ

ルビィ「ピギッ!? ち、ちかちゃんっ!?」



ルビィのところにも、千歌ちゃんが来てくれた。
けど、ビックリしたぁ……。



千歌「あ、驚かせちゃった? ごめんね!」

ルビィ「う、ううん! それで……えっと……?」

千歌「ほら! 今度のユニットのことで話があってさ!」

ルビィ「あっ」



そういえば、今度のライブではユニットでも曲を作りたいって話があったんだった。
見ると、千歌ちゃんの後ろには、曜ちゃんの姿もあって。



千歌「それで、今日空いてる?」

ルビィ「……え、えっと……」



ちらっとおねえちゃんの方を見る。
どうやら、果南ちゃんと話をしてるみたい。

…………えっと。



千歌「なにか用事ある?」

ルビィ「あ、ううん。ないんだけど、一応おねえちゃんに聞いたほうがいいかなって」



今日は金曜日。
だから、お泊まりしてもいいとは思うけど……。

13: 2017/10/09(月) 20:06:01.89 ID:yBu5KLrf0

千歌「あ! そっか!」

千歌「ダイヤさ~~ん!」



どうやら、ルビィの反応を見て気づいたらしい千歌ちゃんは、そのままおねえちゃんを呼んだ。
果南ちゃんとお話をしてたおねえちゃんもそれに反応した。



ダイヤ「なんですか?」

千歌「今日、ルビィちゃん、うちにお泊まりしてもいいですか?」

ダイヤ「…………あぁ」



少しの沈黙のあと、おねえちゃんは納得がいったように頷いた。



ダイヤ「ユニットの……」

千歌「はい! だから、お借りしたいなぁって」

ダイヤ「それは構いませんが…………」

ルビィ「っ」



おねえちゃんの視線がこちらに向く。
と同時にそらす。

昨日のことがあったから、なんとなく……気まずいよぉ。



ダイヤ「…………まぁ、構いませんわ。お父様にはわたくしから言っておきますから」

千歌「やったぁぁ!! これで、遅くまで曜ちゃん、ルビィちゃんとお菓子パーティがーー」




ダイヤ「ただし!!」




ダイヤ「ルビィには絶対に、アイスを与えないでくださいね」ニコリ




14: 2017/10/09(月) 20:12:14.80 ID:yBu5KLrf0

千歌ちゃんの言葉をさえぎるように、おねえちゃんはそう言った。

うぅぅぅ……。



千歌「え? でも、こんな暑いんですし、アイス食べたくなりません?」

ダイヤ「そうですわね。なので、千歌さんや曜さんはご自由に」

千歌「? ルビィちゃんはーー」




ダイヤ「ダメですわ」




千歌「え、でも、ルビィちゃんだけ食べないのも……」

ダイヤ「ダメです」

千歌「でも……」

ダイヤ「ダメです」

千歌「…………あ」

ダイヤ「ダメです」

千歌「はい……」



ついに、それに頷いた千歌ちゃん。
その後、曜ちゃんにも念を押していたおねえちゃん。

こうして、ルビィのアイス禁止令は徹底されました。




ルビィ「うゅ……あんまりだよぉ……」



自業自得。
なのはわかってるけど、そう言わずにはいられないルビィでした。




曜「………………」




ーーーーーー

15: 2017/10/09(月) 20:45:50.21 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー



帰り道。
というか、千歌ちゃんのお家への道の途中。



千歌「生き返るぅぅぅ……」

曜「はぁぁ、だねぇ」

ルビィ「うゅぅぅ……」



三人でコンビニに寄りました。
夕方、涼しくなったとは言っても、練習終わりで体は全然冷めてなくて。
だから……。



千歌「…………アイ、ス……」



アイスのケースを覗き見るのも当然なわけです。



ルビィ「……アイス」



もちろん、ルビィも。

スーパー?ップ……M?W……ハーゲン?ッツ……。
アイスケースのなかのアイスが、ルビィを誘惑してくるよぉ……。
……い、一個だけ……一個だけなら……。



千歌「…………ルビィちゃん」

ルビィ「あ、あぅ……」

千歌「気持ちは分かるよ」

ルビィ「千歌ちゃん……」



千歌ちゃんの言葉で、ぐっとこらえる。
そ、そうだよね。




千歌「これひとつください!」つM?W

「ありがとうございました~」




ルビィ「」




16: 2017/10/09(月) 20:53:46.95 ID:yBu5KLrf0


ルビィ「ち、ちかちゃん……?」

千歌「……ごめんね、ルビィちゃん」



伏し目がちに、千歌ちゃんは視線を向けた。
そして、



千歌「みかん味……だからね」



それだけを言って、自動ドアを出ていった。

うゅぅぅぅ……。
無情だよぉ……。
この世界は悲しみに満ちてるよぉ。

17: 2017/10/09(月) 21:06:19.48 ID:yBu5KLrf0


ルビィ「うぅぅぅ……」




曜「ごめんね、ルビィちゃん」

ルビィ「……曜ちゃん」




落ち込んでいたルビィに、曜ちゃんはそう声をかけた。

千歌ちゃんはみかん味に目がないから。
そう言って、曜ちゃんは笑った。



ルビィ「だいじょぶです……おねえちゃんのアイスを食べてしまったルビィが悪いから……」

曜「あはは……」



苦笑いを返す曜ちゃん。

そんな曜ちゃんの手にもコンビニの袋があって。
その袋は少し結露してるのが分かりました。



ルビィ「……ルビィ、飲み物買ってくる……」

曜「あっ」



落ち込む気持ちをどうにかしようと、コンビニのドリンクコーナーに向かおうとするルビィをーー



曜「待って!」



ーー ギュッ ーー




曜ちゃんは呼び止めました。
……手も握って。



ルビィ「……え? え?」

曜「あ、えっと……ごめん!」



パッと手を離した曜ちゃんは、ばつの悪そうな顔をして続けます。



曜「ね、ルビィちゃん」

ルビィ「?」

曜「ちょっと、こっちこっち」

ルビィ「?」


18: 2017/10/09(月) 21:14:54.85 ID:yBu5KLrf0
曜ちゃんに手招きされて。
コンビニの外に向かう。



千歌「うま~♪」



見ると、千歌ちゃんは駐車場の縁石のところで例のみかん味のアイスを食べてた。
……いいなぁ。



曜「…………千歌ちゃんは……っと」

ルビィ「?」



曜ちゃんも千歌ちゃんの方を見て。

って、ん?
曜ちゃんはなにやらさっきのコンビニの袋をごそごそとしてーー



曜「…………はい」

ルビィ「え?」



ーーそれを差し出した。

それは、




ルビィ「アイス……?」




19: 2017/10/09(月) 21:26:23.05 ID:yBu5KLrf0

ルビィ「え!? な、なんで!?」

曜「ほら、流石にルビィちゃんだけ、っていうのもかわいそうかなぁ、ってさ」



千歌ちゃんに言っても良かったんだけど、千歌ちゃん、秘密にするのとか苦手だから。
そう言って笑う曜ちゃん。



ルビィ「え、でも! でも、ダメだよ!」



そう!
流石にそれは、ダメだよ……。



曜「……でも、1ヶ月禁止は辛くない?」

ルビィ「…………う、うゅ」

曜「…………だから、ね?」

ルビィ「で、でも……」

曜「………………うーん」



曜ちゃんの手にあるアイスは受け取れない。
おねえちゃんとの約束だから。



曜「…………じゃあ、こうしよう?」

ルビィ「…………ふえ?」



曜ちゃんの言葉に反応する前に、曜ちゃんはーー



ーー パキッ ーー



曜「はい」

ルビィ「あむっ……」



ーーアイスをルビィの口に……。

20: 2017/10/09(月) 21:35:16.30 ID:yBu5KLrf0


ルビィ「ようひゃん……!?」

曜「こうすればいいよね?」アー




曜「……むっ……半分こ」




にこりと。
曜ちゃんは笑った。



ルビィ「よ、ようちゃんっ」

曜「これなら、私が無理矢理食べさせただけでしょ?」

ルビィ「でもーー」

曜「大丈夫」



でも、と。
そう言うルビィの言葉に、大丈夫と返す曜ちゃん。

人差指を口に当てて。
ルビィの不安を和らげるみたいにーー




曜「二人だけの秘密」

曜「ね?」




ーー曜ちゃんはまた笑った。




ーーーーーー

21: 2017/10/09(月) 21:36:53.26 ID:yBu5KLrf0
ーーーーーー



そして、この日から。
ルビィと曜ちゃんの『アイス』な関係が始まったのでした。



ーーーーーー

30: 2017/10/11(水) 18:14:42.52 ID:VHl26CD20
ーーーーーー



曜「はい、ルビィちゃん!」

ルビィ「あ、ありがとうございます」



次の日。
練習自体は昼すぎで終わって、荷物を千歌ちゃんのお家に取りに行くことになってた。

だけど、隣にいるのは千歌ちゃんのじゃなくて、曜ちゃんで。
なんか千歌ちゃんは梨子ちゃんと用事があるみたい。

なので、ルビィたちはいっしょにアイスを食べ歩き中です。



曜「んっ」パキッ

ルビィ「あむっ……」パキッ

曜「んー、やっぱり氷系は夏にぴったりだよね!」

ルビィ「うんっ!」



曜ちゃんがくれたアイスを一口かじって、笑い合う。
曜ちゃんの言う通り、この暑い夏……特に練習帰りのアイスはさいこう……。



ダイヤ「それにしても、これを1ヶ月も禁止するなんてダイヤさんも中々ひどいことするよねぇ」

ルビィ「うっ……」



と、曜ちゃんのその一言で、アイスを食べる動きが止まっちゃう。

うゅ……。
忘れてた。
いや、ほんとはわかってたんだけど……。



ルビィ「ざいあくかん……」



おねえちゃんの言いつけを破ってることを意識しちゃって……。



曜「あー、ごめん。余計なこと言っちゃったね」



そんなルビィを見て、曜ちゃんは苦笑い。
そんな姿を見て、ルビィのなかの罪悪感はもっと強くなる。

31: 2017/10/11(水) 18:26:14.30 ID:VHl26CD20

ルビィ「はなまるちゃんにも言われました……ルビィは理性をなくした獣みたいだって」

ルビィ「おねえちゃんとの約束をやぶるルビィは……ダメな娘です……」



ひどい……けど、否定できないよ。
アイスを目の前にすると、ルビィは……!



曜「っ、ぷっ」

ルビィ「……え?」

曜「っ、はっははっ……はははっ」



と、いきなり曜ちゃんが笑いだして……。
って、え?
な、なに?



ルビィ「え、ええ!?」

曜「っと、ご、ゴメンゴメンっ」



ついおかしくて。
そう言う曜ちゃん。

あ、違うよ?
ルビィちゃんが落ち込んでるのがおかしいんじゃなくてね!
そんな風に言ってから、曜ちゃんはさらにこう続けます。



曜「いやぁ、獣……というか熊のカッコしたルビィちゃんを思い浮かべたらねぇ」

ルビィ「え、え? く、クマ?」

曜「そ。こんな感じ?」



ーーーーーー


ルビィ(クマ)「がおー!」

ルビィ(クマ)「あいすをくださいクマー!」

ルビィ(クマ)「じゃなきゃ、食べちゃうぞー!」グワー

曜「…………」

ルビィ(クマ)「んーっ!!」グルグルパンチ

曜「…………」


ーーーーーー




曜「……ふふっ」

ルビィ「っ/// よ、ようちゃんっ!」

曜「あー、ごめんね? つい」

ルビィ「ルビィで変なもうそうするのやめてよぉ///」

曜「ふふっ」



曜ちゃんにからかわれて。
たぶん、ルビィは今真っ赤になっちゃってるよぉぉ……!

32: 2017/10/11(水) 18:41:43.13 ID:VHl26CD20

曜「……って、あ! ルビィちゃん、アイス!」

ルビィ「え……?」



ーー ベチャッ ーー



曜ちゃんの言葉に反応する直前で、アイスが地面に落ちてくのが見えた。
って!



ルビィ「あ、アイス……っ」

曜「ごめんっ、ちょっとからかいすぎたね」



手元を見ると、ルビィのアイスは半分くらい溶けちゃってて。
お昼の強い日差しで、溶けるのがはやかったんだ……。
うゅ、もったいない……。



曜「氷系のアイスは溶けるの早いからなぁ」

曜「安いのはいいんだけどね」



それより大丈夫?
服についたりしてない?

気づかってくれる曜ちゃんの言葉にうなずくルビィ。
その間も曜ちゃんは、念のために、ってルビィの服が汚れてないか確認してくれてる。



曜「……なら、よかった」

ルビィ「……うゅ」


一通り確認したみたいで、曜ちゃんは頷いた。

うーん。
それにしても、せっかく買ってもらったのに……。
ルビィがモタモタしてるせいで……はぁ、ほんと、ルビィはダメなやつだよぉぉ。



曜「…………?」

ルビィ「……はぁぁ」



曜「って、そんな落ち込まないでよ、ルビィちゃん」



ルビィ「え、あっ」



どうやら、落ちちゃったアイスを見てたせいで、曜ちゃんにそう思われちゃったみたい。

33: 2017/10/11(水) 18:47:36.02 ID:VHl26CD20
もったいないって思ってたのはほんとうだけど。
アイスが食べられなかったせいで、落ち込んでるわけじゃーー



曜「…………はい」

ルビィ「……え?」



いやしい子だと思われたらやだな。
そう思って、いいわけをするルビィの口元に……。



ルビィ「曜ちゃんのアイス……?」



えっと、これはどういう……?



曜「あげる!」



にこり、と。
笑う曜ちゃん。



ルビィ「え、で、でもっ!」

曜「いいから!」

ルビィ「…………ぅゅ……」



優しい笑顔で、アイスを差し出してくる曜ちゃん。

で、でも!
ルビィはもう自分のは食べて、しかも、買ってもらったの落としちゃったから……。

そんなルビィのかっとーは……



曜「あっ!! 落ちる!?」

ルビィ「!?!?」




ルビィ「あむっ」




ルビィ「…………あっ」

曜「なんてね、ふふっ」



曜ちゃんの策に負けちゃった。
し、してやられた!?

34: 2017/10/11(水) 18:57:04.67 ID:VHl26CD20



曜「おいしかった?」

ルビィ「…………………………っ」



曜ちゃんの質問に黙って頷くルビィ。

ずるい、なんて。
曜ちゃんにアイスをもらっておいて言うのは違うんだと思うけど……。



ルビィ「ずるい……」

曜「……ん? なにか言った?」

ルビィ「ううんっ」



でもやっぱり、なんだか曜ちゃんの思い通りになったみたいで、少し、少しだけずるいなぁって思った。




曜「さ、ルビィちゃん、早く千歌ちゃん家に向かおうか!」

ルビィ「は、はい!」



アイスの棒をコンビニの袋に入れてしばる。
そして、数歩先の曜ちゃんに並ぶ。




曜「……次はどのアイスにしよっか?」

ルビィ「……ミルク系が……」

曜「ん? 好きなの?」

ルビィ「は、はい!」

曜「そっか。じゃあ、そうしよっか!」

ルビィ「うんっ」



それから、千歌ちゃんのおうちに着くまで、お互いの好きなアイスの話とかをしてーー。



そんな休日のお昼のお話。



ーーーーーー

36: 2017/10/11(水) 19:48:36.95 ID:VHl26CD20
ーーーーーー



曜「はい、ルビィちゃん!」

ルビィ「あ、ありがとうございます」



次の日。
練習自体は昼すぎで終わって、荷物を千歌ちゃんのお家に取りに行くことになってた。

だけど、隣にいるのは千歌ちゃんのじゃなくて、曜ちゃんで。
なんか千歌ちゃんは梨子ちゃんと用事があるみたい。

なので、ルビィたちはいっしょにアイスを食べ歩き中です。



曜「んっ」パキッ

ルビィ「あむっ……」パキッ

曜「んー、やっぱり氷系は夏にぴったりだよね!」

ルビィ「うんっ!」



曜ちゃんがくれたアイスを一口かじって、笑い合う。
曜ちゃんの言う通り、この暑い夏……特に練習帰りのアイスはさいこう……。


曜「それにしても、これを1ヶ月も禁止するなんてダイヤさんも中々ひどいことするよねぇ」

ルビィ「うっ……」



と、曜ちゃんのその一言で、アイスを食べる動きが止まっちゃう。

うゅ……。
忘れてた。
いや、ほんとはわかってたんだけど……。



ルビィ「ざいあくかん……」



おねえちゃんの言いつけを破ってることを意識しちゃって……。



曜「あー、ごめん。余計なこと言っちゃったね」



そんなルビィを見て、曜ちゃんは苦笑い。
そんな姿を見て、ルビィのなかの罪悪感はもっと強くなる。

37: 2017/10/11(水) 19:58:17.62 ID:VHl26CD20
ーーーーーー



週はあけて月曜日。
ルビィは……。



ーーーーーー



ルビィ「受け取ってください!」

曜「ちょっ、ルビィちゃん!?」



お昼休みに曜ちゃんを体育館裏に呼び出していた。
今、ルビィの手にあるこれを渡すために。



曜「そ、そんな困るよ」

ルビィ「それはルビィのセリフですっ」



受け取ってもらわなくちゃ!

日曜日、ルビィははたと気づいたんだ。
気づいて、渡さなきゃって思った。

そう。




ルビィ「アイスの代金ですっ」




ーーアイス代を。

思えば、金曜日も土曜日も。
どっちも曜ちゃんにアイスを買ってもらったから、ルビィはお金を払っていなかった。
それはダメだって思って、だから、ルビィはこれをアイス代を渡そうと思ったんだ。

でも、おねえちゃんにばれないようにって考えたら、こんなところに呼び出すしかなくて……。



曜「えっと……ルビィちゃん?」

ルビィ「なんでしょう!」

曜「だから、その、あれは私が好きでやったことだから」

ルビィ「……で、でも!」



それじゃあ、と言葉を続けるルビィに、



曜「ほら、ルビィちゃんはアイス禁止令がでてるんでしょ!? だから、これを受け取ると、本当にダイヤさんを裏切って『自分で』アイス買ったってことになっちゃうよ?」

ルビィ「あ、ぅぅぅ……」



曜ちゃんはそう言った。

た、たしかに……。
それはルビィがアイスを買って食べたってことに……。
でも、もうアイス食べちゃってるから……。

38: 2017/10/11(水) 20:03:49.27 ID:VHl26CD20


ルビィ「う、うゅぅぅ……」



混乱してきたよぉ……。
ルビィは確かにこのままお金を返したら、おねえちゃんの言いつけを無視したことになるし!
でも、お金を返さないのはもっとダメで……!



曜「はぁ、ルビィちゃんも頑固だね」



ダイヤさんに似て。

ため息を吐きながら、曜ちゃんはそう言う。
その表情は、どこか困ったような笑顔……。



ルビィ「よう、ちゃん……?」

曜「じゃあ、こうしよう?」


曜「お金はもらわない。何度も言うけど、私が好きでしたことだからね」


ルビィ「で、でも!」

曜「そのかわり!」




曜「今日、うちに来てくれないかな?」




にこりと笑う。
曜ちゃんの笑顔に、ルビィは黙って頷いた。



ーーーーーー

39: 2017/10/11(水) 20:07:38.20 ID:VHl26CD20
ーーーーーー



花丸「た、大変ずらっ……」

花丸「途中、よく聞こえなかったけど……」

花丸「状況からするに、ルビィちゃんの手にあったのは、ラブレター……」

花丸「そして、最後の台詞……」



花丸「ルビィちゃんが曜ちゃんにお持ち帰りされる……ということ!?」



花丸「はわわわわ///」

花丸「事件、ずらぁぁぁっ///」



ーーーーーー

40: 2017/10/11(水) 20:09:01.07 ID:VHl26CD20
ーーーーーー

41: 2017/10/11(水) 20:16:31.26 ID:VHl26CD20
ーーーーーー



曜「よし! じゃあ、行こっか、ルビィちゃん」

ルビィ「う、うんっ」



花丸「っ!?」



部活終わり。
二人が動いた。



曜「それじゃあ、また明日!」

千歌「うん! じゃあねわー、曜ちゃん!」


ルビィ「じゃあ、おねえちゃん……」

ダイヤ「えぇ、衣装のことは二人に任せているから……くれぐれも曜さんのお宅にご迷惑をかけてはいけませんよ!」

ルビィ「うん、わかってるっ」



ダイヤ「…………それに、アイス」



ルビィ「……っ」

ダイヤ「途中のコンビニなどで買って食べてはいけませんからね」ニッコリ

ルビィ「う、うん」



曜「ルビィちゃん、行くよ! バスなくなっちゃうから!」

ルビィ「あ、うんっ」



ーー バタンッ ーー



曜ちゃんはルビィちゃんを連れて部室を後にした。

いつもなら。
いつものマルなら、見送って終わり。
だけど、今のマルは違う!
やるべきことがある!

42: 2017/10/11(水) 20:20:18.54 ID:VHl26CD20
善子「じゃ、ヨハネも帰るわーー」



花丸「善子ちゃん」ガシッ



善子「ぐえっ!?」

花丸「あ、ごめんずら」

善子「けほっ……な、なにすんのよ!!」

花丸「…………許してほしいずら……こ、これには深いわけが……」

善子「ずら丸?」



そう。
深いわけがある。
これから、



花丸「善子ちゃん」

善子「だから、ヨハネ!」



花丸「ルビィちゃんたちを尾行しよう!」



善子「は? なにをーー」

花丸「詳しいことは途中で話すから!」ガシッ

善子「ちょっ!?」




花丸「今は、急ぐずらぁぁ!!」

善子「はぁぁぁぁっ!?」




ーーーーーー

43: 2017/10/11(水) 20:21:16.78 ID:VHl26CD20
ーーーーーー

44: 2017/10/11(水) 20:29:35.83 ID:VHl26CD20
ーーーーーー




曜「よし、着いたよ」

ルビィ「う、うん」



バスに乗って少しして。
ルビィたちは、曜ちゃんのおうちにいた。



曜「それにしても、花丸ちゃんと善子ちゃんもお泊まりかぁ」

曜「ふふっ、楽しそうだね」

ルビィ「う、うん」



バスの中で二人に会ったのは確かにビックリ。

今日は二人でお泊まりなんだって。
幼稚園の頃のお友だちだから、そんなこともあるんだなぁって思ったり。



曜「って、ルビィちゃんごめんね!」

ルビィ「え、え??」

曜「いや、もしかして、二人と約束あったのかなって……」



そう言って、ルビィの表情をうかがう曜ちゃん。

あ、そっか。
一年生組でなにかあったって思ってるのかな?



ルビィ「ちがうよ! 今日は特になにもなかったから!」

曜「そう?」

ルビィ「うんっ」



ほんとに今日はなにもない。

まぁ。
ルビィに声がかかってないだけかもしれないけど……。

というか、バスのなかのはなまるちゃん、変だったなぁ……。
まるで、ルビィたちに見られて、すごく慌ててたみたいな……?



ルビィ「…………」



45: 2017/10/11(水) 20:36:38.74 ID:VHl26CD20
ふと、ある考えが頭をよぎる。

もしかして……。



ルビィ「~~っ///」



いやいやいやいや!
ないよねっ///

善子ちゃんとはなまるちゃんが……そ、その……恋人、なんてっ///

確かに、恋人なら、お泊まりに行ったりしても変じゃないし!
それを内緒にしてるから、見つかって慌ててたとかなら、はなまるちゃんの様子にも納得するけどっ!

それに、もしかしたら……///



曜「ルビィちゃん?」

ルビィ「ピギッ///」



変な想像を打ち切られる。
ルビィの目の前にあった曜ちゃんのお顔を見たせいで。



……曜ちゃん、きれいな顔してーー




ルビィ「~~っ///」

曜「ルビィちゃん!?」




顔、真っ赤だよ?

そう言われて、もっと顔が赤くなるような気持ちになった。

あー、もう!!
変なこと考えちゃったせいだぁ!
もうっ!

ブンブンと頭をふって、よくわかんない顔の熱さをおいだす。



ルビィ「い、いこう、曜ちゃん」

曜「う、うん?」



ーーーーーー

51: 2017/10/15(日) 19:33:36.29 ID:ldredb660
ーーーーーー



曜ちゃんのおうちに入って、荷物を置いて。
それから二人でキッチンへ。

いったい、なにを……?
……の前に!



ルビィ「って、これ! かわいいっ」

曜「どうかな! 実はこっそり作ってたんだ! エプロン!」

ルビィ「うんっ、すごくかわいいっ!」



ルビィちゃんに似合うかと思って!

そんな曜ちゃんの言葉を聞いて、曜ちゃんに借りたエプロンをさらによく見てみる。

シンプルな白のエプロンなんだけど、フリフリで真ん中にはピンクのリボンもついてて。
……えへへぇ♪



ルビィ「♪」

曜「気に入ってくれたみたいでなによりであります! これなら、一緒に作れるね!」

ルビィ「あっ」



と、そこで思い出します。
そういえば……。



ルビィ「作るって?」



ルビィの疑問に、曜ちゃんは得意気に笑いながらこういいました。




曜「もちろんアイスだよ!」




52: 2017/10/15(日) 19:39:17.64 ID:ldredb660


ルビィ「あ、あいす! つくれるの!?」

曜「もちろん!」



まぁ、簡単なものだけどね。

そう言う曜ちゃん。
けど、すごい!!
アイス作れるんだ!



ルビィ「さすが、曜ちゃんっ!」

曜「ん? って、ルビィちゃんも一緒にやるんだよ?」

ルビィ「………………え」

曜「いや、じゃなきゃ、お客さんをキッチンまで連れてこないって」



え!?
ええええ、ルビィも作るの……?

で、でも……ルビィ、そんなに料理とか……。
曜ちゃんみたいにできないし……。



曜「大丈夫! 簡単だよ!」

曜「それに、私も一緒にやるから!」



曜「ね?」



ルビィ「……う、うん!」

曜「よし! それじゃあ、一緒にーー」



ようルビ「「がんばルビィ!!」」



ーーーーーー

53: 2017/10/15(日) 19:53:12.11 ID:ldredb660
ーーーーーー



曜「用意するものは、卵、砂糖、牛乳!」

曜「そして、バニラエッセンス!」



ルビィ「え、これだけ?」

曜「まぁ、ほんとは生クリームとかあるともっといいんだけどね! でも、これだけでも十分できるよ!」

ルビィ「そ、そうなんだ」



曜「じゃあ、早速始めよーそろー!!」ビシッ

ルビィ「おー!」



曜「まずは、卵をかき混ぜよう!」シャカシャカ

ルビィ「は、はい!」シャカシャカ

曜「……やぁぁぁ!」シャカシャカ

ルビィ「……うゅゅゅゅっ!」シャカシャカ

曜「…………」シャカシャカ

ルビィ「…………」シャカシャカ



曜「…………よし! このくらいかな」

ルビィ「……うんっ」



曜「次は、砂糖を半分だけ入れるよ!」

ルビィ「半分だけ?」

曜「うん。全部いれると溶けにくくなるからね。だから、まずは半分」

ルビィ「そうなんだぁ」

曜「そして、またかきまぜ!」シャカシャカ

ルビィ「う、うん!」シャカシャカ



曜「…………よし! 次は、牛乳を入れるよ」

ルビィ「……ぅゅ、次もはんぶん?」

曜「ううん。次は計った分全部いれます!」

ルビィ「う、うん!」



曜「そして、またかきまぜ!」シャカシャカ

ルビィ「う、うんっ」シャカシャカ

曜「ヨーソロー!!」シャカシャカ

ルビィ「う、ぅゅ……」シャカシャカ…

曜「タタタタタタタッ!!!」シャカシャカ

ルビィ「う、うゅぅぅ……!」シャカ…シャカ…


54: 2017/10/15(日) 19:58:01.93 ID:ldredb660




曜「…………ふぅ! こんなものかな!」

ルビィ「……ふぅ……つ、次は……」プル…

曜「ん? あとは、残った砂糖を入れてーー」

ルビィ「ーーもしかして……」

曜「うん!」




曜「か・き・ま・ぜ!」


ルビィ「」




曜「よーし! 最後、全速前進! ヨーソロー!!」シャカシャカシャカシャカ

ルビィ「が、がんば……ルビィ……」シャカ…プル…シャカ……


55: 2017/10/15(日) 20:04:14.95 ID:ldredb660


曜「…………よし!」

ルビィ「う、うで……ぷるぷる……」プルプル


曜「って、あはは……やっぱり普段からやってないと、こういうのはきついよね」

ルビィ「……う、うぅぅぅ……またかきまぜるの……?」

曜「ううん。あとは、バニラエッセンスを少し入れて……っと!」

ルビィ「ふわぁ、あま~い香り……」

曜「ふふっ、この香り、いいよね。バニラーー!って感じがすごくしてさ」

ルビィ「うんっ!」

曜「あとは、これを冷凍庫に入れよう」

ルビィ「!! これで冷やしたら完成!?」

曜「あ、まだもう一工程残ってるよ。まぁでも、少し冷やしたあとだから……」チラッ

ルビィ「?」



曜「私の部屋で衣装考えよっか!」

ルビィ「うんっ」



56: 2017/10/15(日) 20:11:15.05 ID:ldredb660
ーー 1時間後



曜「……んー、いい感じかな?」

ルビィ「わぁぁ……氷のまくがはってる……」

曜「凍りかけの状態だね。これを…………」ゴソゴソ

ルビィ「? 曜ちゃん?」



曜「じゃーん!」

曜「電動泡立て器っ!!」



ルビィ「おぉぉ、お料理の番組とかでよく見るやつだ!」

曜「ふっふっふっ、これで最後にしっかり泡立てて終わりだよ!」

ルビィ「おぉぉ………………って、曜ちゃん?」

曜「ん? どうかした? ルビィちゃん?」



ルビィ「最初からこれでまぜたらよかったんじゃ…………」

曜「…………あ」



曜「ほら、最初からこれ使うと……舌触りが、その、ね?」

ルビィ「……そ、そっかぁ」

曜「そうだよ、うんうん!」



ルビィ(…………目がすごく泳いでるけど……言わないほうがいいよね……)




ーーーーーー

57: 2017/10/15(日) 20:16:35.52 ID:ldredb660
ーーーーーー



こうして、ルビィと曜ちゃんのアイスづくりは終わりました。
といっても、すぐにアイスが食べられるわけじゃないみたい……。



曜「一晩寝かせたものを用意しておけば良かったんだけどね」



急に思いついたことだったからさ。

ううん。
それでもじゅうぶんだよ!
楽しかったし、なにより、



ルビィ「明日がたのしみ!!」



アイスは買ってくるもの。

そう思いこんでたけど、自分で作れるんだね!
ルビィは今日、ひとつかしこくなりました。
えっへん!



曜「そう言ってくれると、誘った甲斐があったかな」

ルビィ「うん! ありがと、曜ちゃんっ」

曜「どういたしまして」



58: 2017/10/15(日) 20:25:28.73 ID:ldredb660



曜「……さて、それじゃあーー」

ルビィ「あ、うん」



話はおしまい。
だって、もう遅い時間だから。



曜「じゃあ、電気消すね?」

ルビィ「は、はいっ」



結局、バスもなくなっちゃってお泊まりになった。
曜ちゃんのお部屋に、お客さん用のお布団を運んでもらって、それをルビィが使うってかたち。
曜ちゃんは最初からそのつもりだったみたいだけど……。

…………でも、お泊まりかぁ……。




ーー カチッ ーー




ルビィ「ピギィィッ!?」ビクッ

曜「る、ルビィちゃん!?」バッ



ルビィの声に、曜ちゃんが飛び起きたのがわかった。
それといっしょに、灯りももどってきた。



ルビィ「ご、ごめんなさい……」

曜「ううん。別に大丈夫だけど……」

ルビィ「ぅゅ…………」

曜「もしかして……いや、もしかしなくても、ルビィちゃんーー」




曜「ーー暗いの苦手?」

ルビィ「……う、うん……」




59: 2017/10/15(日) 20:38:42.74 ID:ldredb660

曜ちゃんの言うとおり、ルビィは暗いのがにがて。
だって、こわいもん……。

だから、いつもは怖くないようにって、お部屋は夕方にしてねるんだけど……



曜「うーん……ここ、小さい電球ないからなぁ」



ということみたい。
他の部屋にあるはあるみたいだけど、曜ちゃんの家族が寝てるから……。
それに、こんなことで迷惑かけられないよぉ。

で、でも…………。



ルビィ「うぅぅぅ……」

曜「…………」

ルビィ「ご、ごめんね、ようちゃん……」



ルビィがお子さまなばっかりに……。

こういうとき、きっとおねえちゃんとか果南ちゃんなら困らないんだろうなぁ。
二人とも大人だし。
暗いのなんてきっとへっちゃらだよね。

なんて、無いものねだりだけど。


うぅぅぅ。
ほんとにルビィ、お子さまだよぉ……。



曜「………………ねぇ、ルビィちゃん」

ルビィ「え、な、なに?」

曜「…………暗いのが怖いんだよね?」

ルビィ「……う、うん」

曜「……それって、さーー」スッ

ルビィ「え、ようちゃーー」




曜「こうやって」

曜「一緒の布団なら、大丈夫…………じゃないかな?」




ルビィ「………………ふへぇ?」

60: 2017/10/15(日) 20:46:57.65 ID:ldredb660



ルビィ「~~っ///」



すこし、おくれてから。
今のじょーきょーがわかった。

な、ななななっ!?




ルビィ「よ、よよようちゃんっ///」

ルビィ「いっしょの、おふとんっ///」



曜「…………うん」



となりに曜ちゃんがいた。
いつのまにか電気も消えてて。
でも、となりには曜ちゃんがいて……。

ふわぁ!?
なんだかあったかいっ!
それに、匂い……。



ルビィ「シャンプーの……」

曜「……ルビィちゃん?」

ルビィ「え…………あっ///」



もうっ!!
ルビィのバカ!
シャンプーのいい匂いとかっ……なんだか、それ、ルビィがへんた…………うぅぅぅ……///


61: 2017/10/15(日) 20:56:38.18 ID:ldredb660
ブンブンって首をふる。

変なかんじだよぉ。
なんかわかんないけど……うゅ……///
顔があつい。



曜「…………タオルケット、大丈夫?」

ルビィ「え、あっ…………うん……」

曜「……そっか」



なんだか、ちょっと曜ちゃんもちがう感じ。
いつもよりずっと静かなかんじ?

なんでだろう。
暗いから、かな。



曜「…………あんまり、くっつくと暑いよね」

ルビィ「え、あっ…………ううん」



曜ちゃんの言うとおり、暑い。
夏だもん。
くっついてたら暑いよ。

…………けど、




ルビィ「このままが……いいかも…………」

曜「……………………そっか」




そう。
答えちゃったのは、なんでだろう。

…………よくわかんない。




曜「……………………」

ルビィ「………………」

曜「……………………」

ルビィ「……………………」




曜「………………おやすみ、ルビィちゃん」

ルビィ「……う、うんっ、おやすみなさい」




いつもと違って、真っ暗でなんにも見えないまま。
夏のじんわりとした暑さと。
曜ちゃんのあったかさを感じながら。

ルビィは、曜ちゃんにおやすみをした。




ーーーーーー

62: 2017/10/15(日) 20:57:31.46 ID:ldredb660
ーーーーーー

71: 2017/10/22(日) 13:14:17.66 ID:9e6dKLHq0
ーーーーーー



次の日。
ルビィは曜ちゃんのおうちから学校にいって。
それで、練習終わりに曜ちゃんのおうちによって、アイスを食べたんだ。
もちろん前の日にふたりで作ったアイス。

おいしかったよ。
すっごく!

でも、ルビィはアイスの味より、となりにいる曜ちゃんが気になっちゃって……。
むねがなんだかぽわぽわしてた。



それから、三日が過ぎてーー



ーーーーーー

72: 2017/10/22(日) 13:22:47.67 ID:9e6dKLHq0
ーーーーーー



善子「アイス解禁?」

花丸「もう?」

ルビィ「う、うん」



金曜日の朝。
ルビィはふたりに昨日の夜の話をした。

昨日の夜。
ルビィのお部屋におねえちゃんがきてーー



ーーーーーー



ダイヤ「ルビィ」

ルビィ「は、はい」

ダイヤ「一週間頑張りましたね」

ルビィ「え?」

ダイヤ「明日からはアイスを食べても構いません」

ルビィ「えぇ!? え、だって、1ヶ月のはずじゃ!?」

ダイヤ「いえ、あれはわたくしも感情的になりすぎていましたから。しっかり反省して我慢しているのですから、そろそろ……と」

ルビィ「…………ぅ」

ダイヤ「ルビィ?」

ルビィ「ぅ、うぅん! なんでもないっ」

ダイヤ「……まぁ、とにかくーー」



ーーーーーー



善子「えー……甘すぎじゃない?」

花丸「まぁ、なんとなくそんな気はしてたずら」

ルビィ「あ、あはは」



どうやら、ふたりのなかでは、おねえちゃんはルビィに甘いという認識みたい。

73: 2017/10/22(日) 13:28:57.97 ID:9e6dKLHq0


善子「じゃあ、今日帰りにコンビニ寄る?」

ルビィ「え?」



唐突な提案をする善子ちゃん。
それに乗っかって、はなまるちゃんもうなずいた。



花丸「うんうん。それがいいよ」

ルビィ「え、あの……」

善子「ルビィも1週間我慢したんだし……今日はこのヨハネが特別に貴女に深遠なる氷結の結晶を授けてもーー」

花丸「善子ちゃんのおごりずら~~♪」

善子「よしこゆーな!!」

ルビィ「…………」

善子「…………で? ルビィもそれでいいわよね?」

ルビィ「あ……」

花丸「? ルビィちゃん? どうかした?」

ルビィ「…………」




ルビィ「う、うんっ!」

ルビィ「アイス、たのしみっ」




ーーーーーー

74: 2017/10/22(日) 13:39:31.78 ID:9e6dKLHq0
ーーーーーー



学校帰り。
練習も終わったルビィたちは、コンビニに来ていた。
おねえちゃんと鞠莉ちゃんはお仕事でまだ学校だけど。

いいの?

そう聞いたら、

今日は特別よ?

おねえちゃんはそういってくれた。
だから、今日はーー




千歌「みかん……ナポリタン味、だと……!?」

梨子「ち、千歌ちゃん? まさか、それを買うなんてこと……」

千歌「みかん味!!」

梨子「だめぇぇぇ!!」



善子「クックックッ、この黒さ!! 堕天使ヨハネに相応しい闇のーー」

花丸「ただのチョコレートアイスずら」

善子「わかってるわよ!」

果南「うーん」

善子「? どうかしたの?」

果南「このわかめ味のアイスがね?」

よしまる「「え゛……」」



コンビニでみんなでアイスをえらぶ。

思い思いのものを選んで、食べ比べの約束なんかもして。
そんななかルビィは、



ルビィ「…………」



ひとり、アイスのケースの前にいた。

じっくり選びたいんだ。
はなまるちゃんにはそう言ったけど、ほんとは、




曜「ルビィちゃん」

ルビィ「あっ、曜ちゃんっ!」




75: 2017/10/22(日) 13:56:41.65 ID:9e6dKLHq0
ルビィに声をかけてくれた曜ちゃん。
振り返る。
また、曜ちゃんとなににしよっかって相談できるかなって思って!

……でも、その手には、



ルビィ「それ……アイス」



アイスがあった。
ルビィがちょっと苦手な……抹茶のやつ。



曜「……あぁ、ダイヤさんにって思って。こっちは鞠莉ちゃんの」

ルビィ「そ、そうなんだ」



そう言って、曜ちゃんは両手にもったアイスを見せる。
もちろん、ミルク系のアイスはない。

…………うん。
わかってた、けど。



曜「ルビィちゃんは?」

ルビィ「え、あっ」

曜「って、ごめん! ちゃんとOKでたんだもん。じっくり選びたいよね」

ルビィ「あ、ルビィは……」

曜「…………?」

ルビィ「……ぅゅ」

曜「…………って、このままじゃ溶けちゃうし。それじゃ、買ってくるね」

ルビィ「あ……はい」



手のなかのアイスがすこし溶け始めたことに気づいた曜ちゃんは、そのままレジに向かった。
と思ったら、ふと振り返って……。



曜「……っと、そうだ! ルビィちゃん!」

ルビィ「え」




曜「よかったね」

ルビィ「…………ぅ、ん」


76: 2017/10/22(日) 13:57:07.15 ID:9e6dKLHq0
よかったね。
そう言って笑った曜ちゃんを、ルビィはただ見送る。



ルビィ「…………そう、だったよね」



わかってた、んだけどな。
ルビィと曜ちゃんは、アイスで繋がってただけだって。

もちろん、仲がいいのはかわらない。
けど、なんでだろう……?




ルビィ「…………さびしい」




ポツリと呟いた言葉は、アイスケースの冷却機の音に消されて、溶けた。




ーーーーーー

77: 2017/10/22(日) 14:05:07.20 ID:9e6dKLHq0
ーーーーーー




ーー コンコンッ ーー



ダイヤ「ルビィ? お風呂、あがったけれど」

ルビィ「…………」

ダイヤ「ルビィ?」

ルビィ「…………」



ダイヤ「…………ルビィ!」

ルビィ「ピギッ!?」



突然のおねえちゃんの声で、からだがはねる。
び、ビックリしたぁ……。



ルビィ「の、のっく!」

ダイヤ「しましたわよ」

ルビィ「え……あ、ご、ごめんなさい」



何度も呼んでくれたのかも。
そう思ってあやまる。

おねえちゃんは、そのままお部屋に入ってきて、



ダイヤ「っしょ」



ルビィの横にすわった。

えっと……?



ルビィ「どうかしたの……?」

ダイヤ「…………はぁ」



ルビィの疑問に、ため息で返すおねえちゃん。
そして、



ダイヤ「どうかしたの」

ダイヤ「それはこっちの台詞ですわ」



そう言った。

78: 2017/10/22(日) 14:11:18.03 ID:9e6dKLHq0


ダイヤ「貴女の好きなアイスが解禁になった」

ダイヤ「だというのに、そんな上の空で……」

ダイヤ「なにもない、と考える方が変でしょう?」



ルビィ「ぅ、ぅゅ……」



そんなに変?

そう聞くと、おねえちゃんはコクリとうなずく。

いつものルビィだったら、大喜びして庭駆け回るはずでしょ、なんて。
そこまで子どもじゃないよ……。



ダイヤ「まぁ、それは冗談としても」



おねえちゃんらしくない冗談。
たぶん、ルビィのきもちをほぐそうとしてくれたのかもしれないけど……。

どうしても、ほぐれない。
モヤモヤ、する。

79: 2017/10/22(日) 14:19:54.38 ID:9e6dKLHq0

ルビィ「…………」

ダイヤ「…………」

ルビィ「…………」



ダイヤ「はぁ……」



すこし静かになったあと、おねえちゃんは大きなため息をついた。

しょうがないですわね。
そう言って、それを取り出す。



ダイヤ「食べましょうか、一緒に」

ルビィ「それ……」

ダイヤ「えぇ、ルビィが曜さんから預かったという抹茶アイスですわ」

ルビィ「っ」



…………曜ちゃんのアイス。
曜ちゃんが買ってくれた…………おねえちゃんのためのアイス……。



ダイヤ「……っと」



スプーンをあけて、カップを外す。
なかには、緑色が見えた。

一口、すくって、



ルビィ「あっ」

ダイヤ「んっ」




ダイヤ「ふふっ、美味しい」



おねえちゃんは笑った。
美味しいって言って、アイスを食べた。

80: 2017/10/22(日) 14:25:19.94 ID:9e6dKLHq0




ルビィ「っ!!」




それを見たとたん、またモヤモヤが……ううん。
今までよりもずっと大きなモヤモヤだ。

なに、これ……。



ダイヤ「……って、ルビィ?」

ルビィ「え」

ダイヤ「どうかした?」

ルビィ「……っ、な、なんでもないっ」



プイッと顔を背ける。

だめ、だめだよ。
いま、ルビィ……たぶんすごい顔してるもん。



ダイヤ「……る、ルビィ?」

ルビィ「…………って」

ダイヤ「……………………? いま、なんと……」




ルビィ「で、でてって!!」




81: 2017/10/22(日) 14:32:50.67 ID:9e6dKLHq0
自分でもビックリするくらい大きな声が出た。
おねえちゃんも、目を丸くしてる。



ダイヤ「るーー」

ルビィ「でてってよっ」

ダイヤ「ちょ、ちょっと待ちなさい、ルビィ」

ルビィ「やだっ!!」



ぐいぐいとおねえちゃんを押す。
どこからきたのかわかんない力で、おねえちゃんを押して押して。



ダイヤ「ルビィ!?」

ルビィ「おねがいだからっ」




ルビィ「でてってっ!!!」



ーー バンッ ーー




大きな音を立てて、襖をしめる。
鍵はついてないから、入ってこれないようにつっかけ棒を使って。
その前に、うずくまる。




ルビィ「ぅ……ぅゅ……」




なにかわかんないモヤモヤが、ルビィの心のなかで暴れてる。

ごめんね。
おねえちゃん。
助けて。




ルビィ「ようちゃん……」




ーーーーーー

82: 2017/10/22(日) 18:57:36.97 ID:H5qEGOipO
ーーーーーー

84: 2017/10/22(日) 19:20:54.20 ID:H5qEGOipO
ーーーーーー




曜「はぁぁぁ……」



本日何度目かの盛大なため息。
自分の部屋のベッドで横になりながら、考えるのはーー



曜「ルビィちゃん……」



ルビィちゃんのこと。

アイス禁止令が出てから、ここ何日かはずっとルビィちゃんといた。
帰り道はもちろん、家に来たり、休み時間もあってたり。
それは、理由があったから。



曜「アイスだけの関係だもんなぁ」



勿論、Aqoursの、しかも、同じユニットだから、仲はいい。
だけど、学年は違うし、育ってきた環境が全然違う。
ルビィちゃんは網元のお嬢様。
私は特にこれと言って特別なことはない。
だから、というわけじゃないけれど、あまり関わってこなかった。

85: 2017/10/22(日) 19:27:25.24 ID:H5qEGOipO
話してみれば。
衣装について話はできるし、スクールアイドルへの姿勢も共感できる。
会話は尽きないし、なんとなく波長も合う感じ。
なによりーー



曜「かわいい、んだよ……」



なんだろう。
話し方、仕草ひとつひとつが可愛い。

でも、やっぱり一番は笑顔。

アイスを食べている時の幸せそうな笑顔。
私に向けてくれたその笑顔がすごくかわいくて……。



あぁ。
この娘の笑顔を、この娘のすぐ隣でずっと見ていたいな。



そう、考えてしまったんだ。

それはたぶん千歌ちゃんや梨子ちゃんへの感情とは違うもの。
友情でも親愛でもない。



たぶん、恋慕って言われるやつだ。




86: 2017/10/22(日) 19:36:39.52 ID:H5qEGOipO
曜「おかしいかな……」

曜「…………」

曜「たぶんおかしいんだよなぁ……」



ひとりボソボソと呟く。
そして、またため息。



曜「はぁぁぁ……」



おかしいのは分かってる。
いくら浦の星が女子高だっていっても、女の子同士で付き合ってる人なんていない。

…………いや。
深く考えるのはやめにしよう。
どうせ、もう終わったことだもんね。



曜「もう……『アイスな関係』は終わり」

曜「普通の先輩後輩だし」



だから、今日だってルビィちゃんのアイスは買わなかった。
……まぁ、買いそうになってたんだけどね。




曜「~~っ、あー! もう!」



ーー バチンッ ーー




これ以上。
色んなことを考えないように。
頬を叩く。

飛び込みの時にやってる、いつものルーティン。

不安とか、悩みとか。
そういうのは考えない。
今はなにも考えない。

明日から、ただの先輩後輩、だから。



曜「…………ふぅ」

曜「…………おやすみなさい」



誰に言うでもなく、そう言って。
真っ暗な闇に意識を溶かしていった。



ーーーーーー

87: 2017/10/22(日) 19:37:18.22 ID:H5qEGOipO
ーーーーーー

91: 2017/10/29(日) 17:57:04.43 ID:swqWhekf0
ーーーーーー



曜「え? ルビィちゃん、休みなんですか?」



土曜日。
午前中の練習に行くと、ルビィちゃんの姿がなくて。
それで、ダイヤさんに聞いたらそんな答えが帰ってきた。



ダイヤ「……えぇ。少し調子が悪いようですわ」

曜「……そう、なんだ」



正直、ホッとした。
昨日、ルビィちゃんのことを考えたせいで、会うのがなんだか不安だったから。

………………。



曜「早くよくなるといいですね」

ダイヤ「………………はい」

曜「…………?」



って、なんだか変じゃない?

いつものダイヤさんだったら……。


「体調管理を怠るなんて! ぶっぶーですわ!!」


なんて。
ルビィちゃんを心配しながらも、そう言いそうなのに。
今のダイヤさんは……?



千歌「よーちゃ~~ん!! ちょっといい~~?」

曜「あ、うん! ごめんなさい、ダイヤさん! 千歌ちゃん呼んでるから!」

ダイヤ「あ、はい。ご心配をおかけして……」

曜「そりゃあ…………」



曜「……仲間だし」



ちょっとだけ、言葉に詰まりながら、そう答える。
仲間だし、当然。

そうとしか答えられない。
そんな自分が…………ちょっとイヤ。

92: 2017/10/29(日) 18:06:28.10 ID:swqWhekf0


曜「って、イヤイヤイヤイヤ!!」



自己嫌悪に陥りそうな頭を振って、思考をリセットする。
ついでに、



ーー バチンッ ーー



曜「っし!」



頬を叩く。
これでよし!



曜「おまたせ、千歌ちゃん!」

千歌「……よーちゃん」

曜「ん? なに?」



千歌「悩みあるなら聞くよ?」



と、突然、ポンッと私の肩を叩いて、千歌ちゃんがそう言う。

え?
な、なに?



千歌「なに? 痛いのに目覚めちゃったの?」

曜「え? はぁっ!?」

千歌「いや、いま、ばちんってすごい音して、顔叩いてたから」



って、しまった!
千歌ちゃんに見られてた!?
確かに、これ、幼馴染みの千歌ちゃんの前でもほとんどやったことないやつだった。



曜「イヤイヤイヤイヤ!」

曜「違うから! そんなんじゃないから!」



チラチラと視線を送ってくる千歌ちゃん。



千歌「……///」



って、なんでちょっと赤い顔してるの!?



千歌「叩く?」

曜「いや、いい!」

千歌「え? 叩いていいの?」

曜「あ、違う違う!! そっちのいいじゃない!」

93: 2017/10/29(日) 18:11:55.95 ID:swqWhekf0


果南「おーい! 二人とも! 遊んでないで練習続けるよー!」

千歌「あ、はーい!」



果南ちゃんの声に助けられ、ほっと一息。



千歌「……いつでもーー」

曜「よーし! 全速前進! ヨーソロー!!」

千歌「むー……」



どうにか誤魔化してみんなの輪に戻る。

……危ない危ない。
千歌ちゃんがなにかに目覚めるところだったよ……。



そんな。
くだらないやりとりをして、この日は終わってしまった。
だから、結局、



ダイヤ「…………はぁ」



様子の変なダイヤさんから話を聞くことはできなかった。
私自身もそれをあんまり大きな事だと考えてなくて。

だから、起こっちゃったんだ。
この二日後に。



あの事件がーー。



ーーーーーー

94: 2017/10/29(日) 18:20:21.55 ID:swqWhekf0
ーーーーーー



月曜日のこと。
前の日に、千歌ちゃんと梨子ちゃんと一緒に遅くまで衣装の相談をしてたせいで、授業中は爆睡しちゃってた。

……まぁ、寝てるのは今日に限らなかったりするんだけどね。

とにかく、気だるさが残る放課後の練習。
その前の時間。



ーー バタン ーー


花丸「遅刻ずらぁ!」



と、慌てて部室に入ってきた花丸ちゃん。
その後ろには、決め顔の善子ちゃんがいる。



善子「フッ、悪魔に誘われて天界に残りし我が聖典をーー」

花丸「日直の日誌を出さなきゃいけなくて……」

果南「あー、あれね。確かに少し時間かかるから面倒だよね」

善子「無視するなー!!」

曜「っと、これで全員…………」



曜「じゃないね」



今、部室にいるのは、7人。
えっと、ダイヤさんとルビィちゃんが来てないみたい。

95: 2017/10/29(日) 18:25:11.63 ID:swqWhekf0


善子「あ、ルビィは休みよ」

曜「え?」



善子ちゃんもメンバーを見て、気づいたみたいで、ルビィちゃんが休みだと教えてくれた。

って、お休み?



花丸「うん。なんだかまだ具合が悪いらしくて……」

果南「そうなの?」

梨子「土曜日もお休みだったし……心配ね」

曜「…………」



口々に、ルビィちゃんのことを話すみんな。
私は……。



果南「で、ダイヤはその看病で家に帰ったよ」

鞠莉「フフフ、さすが、ダイヤ。シスコンね~♪」

梨子「シ、シスコンって……」


96: 2017/10/29(日) 18:31:09.27 ID:swqWhekf0



千歌「よし!」

千歌「私たちもルビィちゃんのお見舞いに行こう!」



ダイヤさんのシスコンっぷりで盛り上がる鞠莉ちゃんたちの会話を遮るように、千歌ちゃんがそう叫んだ。

善子ちゃんがちょっとビックリして、イスから落ちかけてたのが視界の端に映ったけど……。
まぁ、触れないようがいいよね。



果南「お見舞いかぁ」

花丸「それいいと思う! まるもルビィちゃん看病したいずら!」

梨子「お、大勢で押しかけるのもどうかと思うけど……」



チラリと。
梨子ちゃんがこちらを見てくる。

千歌ちゃんがああいってるけど……。
どうする?

って、感じのアイコンタクト。



曜「………………」



…………まぁ。
別に反対する理由もないよね?



曜「いいんじゃないかな」



千歌ちゃんも私の言葉に嬉しそうに頷く。

97: 2017/10/29(日) 18:36:14.13 ID:swqWhekf0


千歌「よーし!!」

千歌「じゃあーー」




果南「でも、人数は考えた方がいいかもね」

千歌「えー! でも!」

梨子「私もそう思う」

千歌「梨子ちゃんまで!?」

果南「とりあえず、鞠莉とか千歌とかは行かない方向で」

千歌「なんで!?」
鞠莉「What's!?」

梨子「…………うるさいから」

ちかまり「「ガーン!?」」



善子「……フッ、任せなさい。リトルデーモンの想いはこのヨハネがーー」

花丸「善子ちゃんも風邪うつるからやめるずら~」

善子「!?」



……と。
そんなこんなでーー。



ーーーーーー

98: 2017/10/29(日) 20:26:40.88 ID:swqWhekf0
ーーーーーー



果南「結局、3人かぁ」

曜「そうだね」

梨子「あはは……」



鞠莉ちゃんと千歌ちゃんはうるさいから。
善子ちゃんは風邪うつるから。
花丸ちゃんはその付き添い……?

ということで、結局、私と梨子ちゃん、果南ちゃんの3人でルビィちゃんとダイヤさんのお家へ。
手には途中で買ったプリン。
勿論、お見舞い用に買ったやつだ。



果南「アイスじゃなくてよかったかな?」

曜「っ」



果南ちゃんの言葉に、思わずからだが跳ねる。
どうやら果南ちゃんは、私の目線を追っていたようで……。



梨子「お見舞いに、アイスは……ちょっと……」

果南「それもそうだね」

曜「…………うん」



……………………。

うん。
アイスは……いいや。

99: 2017/10/29(日) 20:33:25.70 ID:swqWhekf0



果南「さて、それじゃ行こうか」



曜「へっ?」

梨子「……曜ちゃん、どうかした? さっきからぼんやりしてるけど……」

曜「あ、いや……なんでもないであります!」



気づけば、いつのまにか目の前には立派な門があって。
ボンヤリしてるうちに、着いてた……みたい。


ーー バチンッ ーー


と、叩くわけにはいかない。
二人も見てるし。
だから、深呼吸をしてから、



ーー ピーンポーン ーー



ーー呼鈴を押した。



曜「…………」

梨子「…………」

果南「…………」

曜「…………」

梨子「…………」

果南「…………」




果南「出ないね?」



100: 2017/10/29(日) 20:39:45.35 ID:swqWhekf0
少し待っても応答はなし。
もう一度、呼鈴を押してみても……。



曜「……出ない」



留守かな?

梨子ちゃんの言葉に首を振る。
ダイヤさんなら、ルビィちゃんが具合悪いのに留守にはしないと思うけど?



果南「ダイヤ~~っ!!」



梨子「ちょっ!?」

曜「果南ちゃん!?」



いきなり大声を出す果南ちゃん。
それを梨子ちゃんと止める。



曜「果南ちゃん! なに大声だしてるの!?」

果南「え? いや、聞こえなかったのかなって思ってさ」

梨子「いやいや! 近所迷惑ですよ!」

果南「近所って……ダイヤの家広いから、隣の家、あそこだよ?」

曜「……まぁ、それはそうかもしれないけどさ」



流石に、大声で呼ぶっていうのは……。
そもそも呼鈴で聞こえない?んだから、呼んでも返事はーー




ダイヤ「果南さんっ!!!」




曜「えぇ!?」

101: 2017/10/29(日) 20:48:14.64 ID:swqWhekf0
黒澤家の二階。
そこの窓から身を乗り出して登場したのは、ダイヤさんその人。
果南ちゃんに負けず劣らずの大声を張り上げていた。



梨子「だ、ダイヤさん!?」

果南「あ、やっぱりいた」



ほらね?
と、得意気な表情の果南ちゃん。
う、うーむ。
果南ちゃんも千歌ちゃんたちと変わらない……というか、勝手知ったるって感じだから千歌ちゃんよりたち悪いかも……?
こんな大声で……って……?

あ、あれ?



曜「ダイヤさん! なにかあったんですか?」



そう。
果南ちゃんや鞠莉ちゃんならともかく、ダイヤさんがあんなに声を張り上げていたんだ。

なにかあった。

そう考えるのが自然なことだ。



ダイヤ「よ、曜さんっ」



慌てた様子のダイヤさん。

落ち着いてください。
そう言うと、ダイヤさんははっとした後に、軽く目を閉じる。
自分の気持ちを落ち着けるため……?
とにかく、そんな仕草をした後に、こう言った。

102: 2017/10/29(日) 20:55:29.84 ID:swqWhekf0
ーーーーーー




ダイヤ「ーールビィがっ」

ダイヤ「ルビィが、どこにもいないのですわっ!!」




曜「………………え?」




ーーーーーー

103: 2017/10/29(日) 20:56:06.38 ID:swqWhekf0
ーーーーーー

104: 2017/10/29(日) 21:03:12.47 ID:swqWhekf0
ーーーーーー




ルビィ「………………ぅゅ」




ポツリ。
つぶやく。



ルビィ「…………はぁ」



そして、ため息。
じこけんお……ってやつ。



ルビィ「なんで、こんなこと……」



なんで、こんなことしちゃったんだろう。

おねえちゃんにおこっちゃったこと。
学校をサボっちゃったこと。
家出してきちゃったこと。

全部ぜんぶ……。



ルビィ「モヤモヤのせいだもん……」

ルビィ「…………」

ルビィ「…………ううん」



わかってる。
そんなの理由にしちゃいけないんだってことは。
きっと、おねえちゃんに言ったら、そんなのは甘えだって言われるよ……。

だけど、どうしていいか分からないから。
ルビィは、どんな顔をして会えばいいの?

……………………。

…………だれに?

おねえちゃん?
それともーー

105: 2017/10/29(日) 21:11:54.70 ID:swqWhekf0



ルビィ「くちゅっ……」



くしゃみ……うぅぅぅ。
夏っていっても、夕方はすこしだけ涼しくなる。
だから、このカッコはちょっとさむいよぉ。

それに、




ーー カァァァァ ーー



ルビィ「ピギィッ!?」



びくんってなっちゃった。
か、カラスさん……ぅゅ、ビックリしたぁ……。


カラスが鳴くから、帰りましょう。



……だっけ?
昔、おねえちゃんといっしょに歌いながら帰った記憶がある。
ちっちゃいころの記憶だけど……。

それを歌ってたのは、いつも夕方でーー



ルビィ「……もう、暗くなってきた……」



周りをみれば、今も夕方。
暗くなり始めちゃった……。



ルビィ「か、かえらなきゃ……」



ーーーーーー

106: 2017/10/29(日) 21:18:09.72 ID:swqWhekf0
ーーーーーー



ルビィ「あ、あれ……?」

ルビィ「バス……は?」



いつもはバスに乗らないし。
今日はとくにボーッとしながら歩いてたせいだとおもう。
バス停につくと、周りはもう暗くて。
あわててバスの時刻表を見る。

けど、



ルビィ「え……え……?」

ルビィ「あ、あれ……?」



バスの時刻表の下半分。
夜の7時から下が破れて見えなくなっちゃってた。



ルビィ「っ」



急いで、反対側のバス停の時刻表を見に行く。
道路、車来てないことを見てから……。



ルビィ「バスは……」

ルビィ「っ」



時刻表を見てわかった。
もう7時にバスはなくて。
あとは……。



ルビィ「9時……半……?」



107: 2017/10/29(日) 21:23:47.01 ID:swqWhekf0
9時に一本。
一番最後のバスだけ。



ルビィ「え……」



ヒヤリとした。

こんなとこで…………あと…………。
あ、あれ?



ルビィ「……ケータイっ」



ポケットを確認するけど……ない。
……持ってくるの、わすれちゃった……。



ルビィ「…………え……」



え、え…………?
ま、まってよ……。
ここで、あと…………え?



ルビィ「…………っ」



時間もわかんない。
それに 家に戻る方のバスがいつくるかも……わかんない。
…………え、まって、まって……。
今、9時より前だよね?



ルビィ「…………も、もし……いま……9時すぎてたら」



もう、バスがないとしたら?

そう考えてーー




ルビィ「ぅ…………うぅぅぅ……」





108: 2017/10/29(日) 21:30:03.63 ID:swqWhekf0
泣きそうになる。
バス停のところで、うずくまる。



ルビィ「っ、うぅぅぅ…………」



急に、怖くなった。

怖い。
怖い怖い怖いっ……。

がくがくと、からだも震えだした。




ルビィ「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……っ」




ルビィは、だれにあやまってるんだろう……。

おねえちゃん?
それとも、おかあさんとおとうさん?
わかんない。
ただ、言葉だけが出てくる。



怖くても……しかたない……。
だって、ルビィが悪いんだもん。

おねえちゃんにひどいことして。
学校もずる休みして。
家出なんてしてこんな時間に出歩いて。



ルビィは悪い子で。

だから、これは罰なんだ。
神様がルビィにあたえた罰。

109: 2017/10/29(日) 21:37:21.65 ID:swqWhekf0



ルビィ「る、ルビィの……せいだもん……っ」

ルビィ「だから……しょうがない……よねっ」



目をぎゅってつぶって繰り返す。
ルビィのせいだから、って。



ルビィ「ごめんなさい……っ」

ルビィ「ごめんなさい…………っ」



繰り返す。
反省する……ためじゃない……。
静かにすると……。




ルビィ「……………………」



ーー カァァァァ ーー



ルビィ「ピギィッ……」



音が聞こえる。
ハッキリ聞こえてくるから。

カラスさんの鳴き声。
風が草を揺らすの音。
それに、バス停もガタガタって揺れてる。

いろんな音が、ルビィをおそってくる。

こわいこわいこわいっ。
いやだよぉ……。



真っ暗なのは怖い。

色んな音が、ものがいつもよりハッキリ見えて。
それがルビィのことを驚かせようとしてるみたいで。
だから、夜はいつも夕方にーー



ルビィ「っ!」



そうだ!
光!

お月さまの光をみればーー

110: 2017/10/29(日) 21:44:01.25 ID:swqWhekf0
見上げた空。
お月さまも、お星さまも、



ルビィ「な、い……っ」



見えない。
いつの間にか空一面に雲が、かかってる。



ルビィ「っ」



また、うずくまる。
うずくまって、目をかたく閉じた。



やっぱり、罰なんだ。

そう思った。
ルビィが悪い子だからって……思った。
いまだって、ルビィは反省じゃなくてちがうことを考えてた。
ごめんなさいじゃなくて。

助けて。

都合がいいとルビィもわかってる。
好き勝手して、怖くなったら助けてなんて。
ほんとにルビィは……。



ルビィ「うぅぅぅっ……」



でも、でもやっぱり……どうしてもこわくて。

だから、ルビィはつぶやく。
もう、こわくて声も出そうにないけど、それでもつぶやく。
そうしないと、ほんとにこのままな気がして……。

それはいやだよぉ……。
怖いよ……。

たすけてーー





ルビィ「…………ようちゃん」




111: 2017/10/29(日) 21:45:28.06 ID:swqWhekf0
ーーーーーー





「や、やっと……みつけた……っ」





ーーーーーー

112: 2017/10/29(日) 21:53:06.99 ID:swqWhekf0



ルビィ「え…………」



聞こえた音。

ルビィ以外だれもいないはずの場所で聞こえたその音は……。
カラスさんでも、風の音でもない。
バス停が軋むような嫌な音じゃなくて。
それとは正反対のーー



ーー安心できる声。




「ぜんぜんっ……見つからなくてっ……はぁっ」




顔をあげなくても、息を整えてるのがわかる。
ルビィと同じ量の練習をしても息がぜんぜん切れないその人がぜぇぜぇってしてるのがわかる。
その人が、ルビィに近づいてくるのがわかる。



「でも、よかった……はっ……見つかって……」



本気で心配してくれてたのがわかる。
今、ほんとにホッとしてるんだって伝わってくる。

そして、




「ほら……ルビィちゃん……っ」



113: 2017/10/29(日) 21:55:44.30 ID:swqWhekf0




曜「こっち、おいで!」



ルビィ「~~~~っ、ようちゃぁぁんっ!!」






114: 2017/10/29(日) 22:02:32.18 ID:swqWhekf0

曜ちゃんに飛びついた。
ルビィはそのあとずっとわんわん泣いて。
その間、曜ちゃんはずっとルビィのことを撫でてくれて。


そして、わかった。
ルビィの心のモヤモヤが晴れていくのがわかった。

そっか。
そうだったんだ。



ルビィは、こうやって曜ちゃんにぎゅっしてもらいたかった。



簡単なことだったんだ。

あの日。
曜ちゃんがルビィにアイスを買ってくれなかった時。
ルビィは曜ちゃんにもう優しくしてもらえないのかなって思った。

おねえちゃんが曜ちゃんからもらったアイスを食べた時。
曜ちゃんがとられちゃった気がした。



………………。



簡単なこと。
ルビィは曜ちゃんをとられたくなかった。
曜ちゃんに優しくしてもらいたかった。
曜ちゃんをひとりじめしたかった。




…………うん。




ルビィは、曜ちゃんのことがーー




ーーーーーー

115: 2017/10/29(日) 22:03:02.84 ID:swqWhekf0
ーーーーーー

116: 2017/10/29(日) 22:14:20.92 ID:swqWhekf0
ーーーーーー



例の事件の後。
ルビィちゃんは、1ヶ月の外出禁止をダイヤさんから言い渡された。


勿論、学校は行っていいけれど、それ以外は禁止。
練習のあとも、ダイヤさんと一緒に帰ること。

あ、ちなみに、今回はちゃんと1ヶ月禁止だったんだって。
いくらルビィちゃんに甘いとは言っても、今回のは別。
お父さんたちには話をしなかったらしいけど、その分ダイヤさんに怒られた、と。


ま、当然かな。
今回のは本気で心配したしね。
あの場にいた梨子ちゃんも果南ちゃんも、そして、連絡した他のメンバーもかなり必氏になって探し回ったから。




ん?
私?

いや、まぁ。
私が見つけられたのは、偶然だよ。

愛の力……って///

イヤイヤイヤ!!
そんなんじゃないってば!!

………………。

今?
今はまぁ、普通だよ?
そもそも1ヶ月間、ダイヤさんとベッタリだったわけだし。



………………え?



…………あー、そっか。
今日で、1ヶ月か。




ーーーーーー

117: 2017/10/29(日) 22:19:41.35 ID:swqWhekf0
ーーーーーー




ダイヤ「な、な…………」




梨子「ダイヤさん?」

千歌「どーしたんですか? ぷるぷる震えて?」

ダイヤ「な……な……」

果南「な?」

善子「な?」

鞠莉「NATTO?」



ダイヤ「ちっっっっがいますわ!!」



善子「っ、び、ビックリするじゃない!!」

果南「なに? どしたの?」

ダイヤ「な、ないんですわ!!」

梨子「ないって……」

千歌「なにが……?」




ダイヤ「練習終わりに食べようとここに冷やしておいたーー」

ダイヤ「ーーお高いアイスが! ですわ!!」




118: 2017/10/29(日) 22:24:33.32 ID:swqWhekf0

果南「……ダイヤ、部室になにを持ち込んでるのさ」

善子「いや、部室の外にワカメ干してるあなたが言うのはどうなのよ……」

果南「え? ワカメ美味しいよ?」

善子「いや、そうじゃなくて……」



ダイヤ「そんなことはどうでもいいですわ!!」バンッ



花丸「あ」

ダイヤ「花丸さん? なんです?」

花丸「そこにあったアイスなら……」




花丸「ルビィちゃんがさっき必氏に食べてたずら」




ダイヤ「なっ!?」

梨子「って、そのルビィちゃんは?」

花丸「曜ちゃんと寄り道して帰るって言ってたような……?」

ダイヤ「な、なっ、な……」




ダイヤ「なにをしてるの、あの愚妹はァァァァ!!!」




ーーーーーー

119: 2017/10/29(日) 22:31:56.99 ID:swqWhekf0
ーーーーーー




ルビィ「~~~♪」



ご機嫌なルビィちゃんに連れられて帰る帰り道。

ま。
1ヶ月ぶりに自由なんだもんね。
聞けば、夏休みもろくに外出できなかったらしいし。
そりゃご機嫌にもなるか。



曜「ねぇ、ルビィちゃん?」

ルビィ「? なぁに?」

曜「えっと…………」



……なに話そう……。
なんだか久しぶりすぎて……。
えぇと……。



曜「…………涼しくなってきたね」



って、なんだそりゃ……。
そんなどうでもいいことーー



ルビィ「うん。もう二学期だもんね」



ーー答えてくれるんだ。
そっか。
えぇと……。



曜「……もう」

曜「もうさすがにアイス食べるのは寒いよね、あはは」

ルビィ「……………………」



…………えー。
渡辺曜ってこんなに話下手だったっけ……?
うぅぅ、自信なくすよ……。

120: 2017/10/29(日) 22:36:37.55 ID:swqWhekf0



ルビィ「……………………」



ほら。
ルビィちゃんもあきれて黙っちゃったよ。
うつむいてるし。

はぁぁぁ……。
やっぱりーー




ルビィ「ね、ねぇ!」

ルビィ「ようちゃんっ!」




曜「……え、あっ、うん! なにっ?」



ワンテンポ遅れて返事を返す。
び、ビックリした。
えっと……?

ルビィちゃんの顔を見ると、なにやら真剣そうな表情で……。
それを見て、私も少しだけ姿勢を正す。



えぇと。
その……ね?



ルビィちゃんの言葉を待つ。
なかなか言葉に出来なくても、待つよ。
うん。
だから、聞かせて。

121: 2017/10/29(日) 22:39:28.62 ID:swqWhekf0



ルビィ「あ、あのね!」

ルビィ「実はルビィーー」




ルビィ「ーーおねえちゃんのアイスを間違って食べちゃったの」




曜「へ?」

ルビィ「…………っ」

曜「…………」




ルビィちゃんがなにを考えているのか。
それは、よく分からない。

だけど、私はーー

122: 2017/10/29(日) 22:41:34.02 ID:swqWhekf0



曜「……アイス、買ってくるね」

ルビィ「!」

曜「……大丈夫」





曜「二人だけの秘密だから!」



ルビィ「~~っ、うんっ!」




ーーーーーー

123: 2017/10/29(日) 22:44:24.16 ID:swqWhekf0
ーーーーーー




今はまだ『アイス』な関係だけど。



いつかは。
もしかしたら。
あるいは。

『アイス』も溶けちゃうような、そんな関係になれるのかな?



……どうかな?





曜ちゃん?





ーーーーーー fin ーーーーーー

124: 2017/10/29(日) 22:56:04.21 ID:swqWhekf0
以上で
『曜「私とあの娘のアイスな関係」』完結になります。
久しぶりの百合作品でした。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、ありがとうございました。

以下、過去作です。
よろしければどうぞ。

百合もの
果南「異世界に飛ばされた。百合の楽園だった」

衝動で書いたもの
梨子「よっちゃんのせいで血が足りない」ダイヤ「迷惑です」

にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」


またお付き合いいただけたら幸いです。
では、また。

125: 2017/10/30(月) 00:22:04.74 ID:BiaNZsMSO

ようルビ尊い

引用元: 【ラブライブ!サ!!】曜「私とあの娘のアイスな関係」