1: 2017/07/28(金) 17:22:00.02 ID:gOKOXAOSo

P「"温もり"ですよ"温もり"!」

P「現代人は温もりを求めているんです!」

P「おわかりですか、ちひろさん」

ちひろ「はい?」



【メーカー特典あり】 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS EXTRA! ダイアモンド・アテンション(ジャケ絵柄ステッカー付)

2: 2017/07/28(金) 17:22:59.61 ID:gOKOXAOSo


P「こちらをご覧ください」

P「昨日夜なべして作ってきました」

ちひろ「……」

ちひろ「なんですかこれ、プラカード?」

ちひろ「これがどうかしたんですか」

P「なんて書いてあるか、読んでみてください」

ちひろ「ええと……」

ちひろ「"FREE HUGS"?」


3: 2017/07/28(金) 17:23:46.50 ID:gOKOXAOSo

P「その通り!」

P「ちひろさんも聞いたことがあるんじゃないですか」

P「もしくは街中で見かけたことがあるかもしれませんね」

P「フリーハグってやつです」

P「自由にハグしていいよっていうサインですね」

ちひろ「……」

ちひろ「まさか」

P「そう、そのまさかです」

P「やりますよ、俺は」

P「アイドルのみんなに、"温もり"ってやつを届けてやりますよ」

P「今日一日限定で、フリーハグ、やってやりますよ!」

5: 2017/07/28(金) 17:24:46.54 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「……」

ちひろ「Pさん」

P「はい」

ちひろ「セ」

P「セクハラだって言いたいんでしょう!」

P「断じて違いますよ!」

P「よく見てください、"フリー"ハグなんです」

P「つまり、俺はハグを強要するわけじゃないんです」

P「ただフリーハグというプラカードを掲げるだけです」

P「その上でするしないは相手の自由!」

P「ノットセクハラ、OK?」

ちひろ「……」

ちひろ「わかりました」

ちひろ「限りなく黒に近いグレーだと」

P「おわかりいただけましたか」


6: 2017/07/28(金) 17:26:26.63 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「まあ、Pさんが奇行に走るのは」

ちひろ「今に始まった話ではないですし」

ちひろ「今回のだって、別に止めはしませんけどね」

P「さっすがちひろさん」

P「話がわかるゥ!」

ちひろ「ただ、騒ぎになったら困るので」

ちひろ「一つだけ制限させてください」

P「はい?」

ちひろ「絶対に私の目の届かない場所ではやらないこと」

ちひろ「特に事務所の外でハグするとかはやめてください」

P「変に噂になったら困りますしね」

P「了解しました」

P「じゃ、この部屋の中でだけやることにします」

P「プラカードはこの辺に立てかけておきますか」

7: 2017/07/28(金) 17:27:38.17 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「そもそもの話」

ちひろ「誰がやってくれるんですかね?」

ちひろ「Pさんとハグしたいなんて人、いないんじゃないですか」

P「う」

P「い、いますよきっと」

P「というか、いてほしい」

ちひろ「いやーどうですかね」

ちひろ「魂胆みえみえですからね、こんなの」

ちひろ「ひっかかってくれる奇特なアイドルがいるかどうか」

P「誰もやってくれなかったら」

P「めっちゃ滑ってる感じになって悲しいですね」

P「頼む、誰かハグしてくれる優しい人――」

P「具体的にはキュートのアイドルとか来てくれ! 頼む!」

ちひろ「清々しいくらい欲望に忠実ですね……」


8: 2017/07/28(金) 17:28:14.99 ID:gOKOXAOSo


ガチャッ


凛・奈緒・加蓮「「「おはようございまーす」」」


P「げっ」


9: 2017/07/28(金) 17:29:02.76 ID:gOKOXAOSo


ちひろ「おはようございます」

ちひろ「今日はそろっての出勤なんですね」

凛「三人で合わせのレッスンがあるので」

奈緒「ちょっと早めに着いちゃったけどな」

加蓮「ていうか今」

加蓮「Pさん"げっ"って言ったよね?」

加蓮「何? アタシたちが来ちゃダメなことでもあった?」

P「いやいやそんなまさか」

P「めっそうもございません」ササッ

奈緒「……怪しすぎるな」

加蓮「なんか隠してるよね」

加蓮「凛!」

加蓮「Pさんの後ろ!」

凛「うん」

スッ

P「あ、ちょっ」

サッ

10: 2017/07/28(金) 17:29:57.79 ID:gOKOXAOSo

凛「……? 何、これ」

奈緒「プラカード?」

奈緒「えーっと」

奈緒「"ふりーはぐず"? でいいのかな?」

加蓮「あー知ってる! これ!」

加蓮「持ってる人見たことある!」

奈緒「何なんだ、これ?」

加蓮「凛も知ってるでしょ? 駅前とかにいるもん、たまに」

凛「うん」

凛「誰もやってなかったけどね」

奈緒「え? 凛も知ってるのか?」

加蓮「でも待って、Pさんがこれを持ってるってことは」

加蓮「ひょっとして……」

凛「……」ジー

P「凛」

P「その視線キツい」

奈緒「なあ、ちょっと」

奈緒「さっきからあたしだけ蚊帳の外なんだけど!」


11: 2017/07/28(金) 17:30:52.35 ID:gOKOXAOSo

加蓮「奈緒、つまりね」

加蓮「Pさんは今、ハグし放題なんだってさ」

加蓮「それで合ってる? Pさん」

P「……はい」

P「絶賛ハグし放題にございます」

奈緒「ハグ?」

加蓮「抱きしめることだよ」

加蓮「奈緒、よかったじゃん」

加蓮「Pさんにハグしてもらったら?」

奈緒「……は?」

凛「フリーハグって、そういう意味だよ」

奈緒「いやいや、意味は分かったけど……」

奈緒「……」

奈緒「いやいやいや!」

奈緒「ちょっと待て! おかしいだろ!!」

奈緒「それセクハラだろ!! 何やってんだよPさん!!」

P「言うと思った」

12: 2017/07/28(金) 17:31:47.11 ID:gOKOXAOSo

P「大丈夫、やるやらないは君らの自由だから」

P「別にこれ強制じゃないから」

P「だからセクハラじゃないんですー」

奈緒「ええ……なんだその屁理屈」

加蓮「いいじゃん奈緒、やってもらいなよ」

加蓮「Pさんもきっと喜ぶよ」

奈緒「ないないない!」

奈緒「ぜっったいやらないからな!!」

奈緒「だいたいPさんとハグなんて」

奈緒「どこ触られるかわかったもんじゃないだろ!」

凛「……ただハグするだけじゃないの?」

P「基本的にはそうだな」

P「俺はマネキンのように突っ立ってるだけで」

P「あとはハグするほうでお好きにどうぞ、てな具合だ」

凛「だってさ、奈緒」

奈緒「"だってさ"、じゃないよ!」

奈緒「なんであたしがやるみたいな流れになってるんだよ!」

13: 2017/07/28(金) 17:32:33.08 ID:gOKOXAOSo

加蓮「え、むしろやらないの?」

加蓮「こんな機会、めったにないんだよ?」

奈緒「は、はあ?」

P「そうだぞ」

P「今日一日の限定だからな」

加蓮「だってさ」

加蓮「これを逃したら一生ハグできないかもしれないよ?」

加蓮「奈緒、それでもいいの?」

奈緒「う、え……」

奈緒「……」

奈緒「いやいやいや!!」

奈緒「だまされないぞ! その手には乗らないからな!」

奈緒「あたしはやらない! やらないってもう決めたから!!」

P「そっか……」

P「俺と奈緒との絆は、そんなもんだったか……」

奈緒「え、ちょ、おい」

奈緒「そ、そんながっかりしなくても……」

14: 2017/07/28(金) 17:33:25.09 ID:gOKOXAOSo

加蓮「(Pさん、いけそうだよ!)」

凛「(後一押しすれば落ちるよ、きっと)」

P「(よっし、まかせろ)」

奈緒「だああ! 何目配せしてんだ三人とも!」

奈緒「もー決めた! 何があってもやらない!」

奈緒「天地がひっくり返ってもやらないから!!」

奈緒「さ、行くぞ二人とも! レッスンだレッスン!」

加蓮「あらら、残念」

凛「うまく行きそうだったのにね」

P「なんかちょっとショックだわ」

奈緒「ったく、もう!」

加蓮「……」

加蓮「ね、Pさん」

加蓮「アタシたちの前に、もうハグした人っていた?」

15: 2017/07/28(金) 17:34:10.04 ID:gOKOXAOSo

P「ん?」

P「いや、誰もいないけど」

加蓮「ふーん……」

P「なんかあった?」

加蓮「Pさん、そこ立って」

P「?」

加蓮「いいから立つの!」

P「は、はい、立ちました」

加蓮「ばんざーいってして」

P「ばんざーい」ヒョイ

加蓮「誰もいないんだよね」

加蓮「いままでハグした人」

P「うん」 


ギュッ


P「!」

凛「!」

奈緒「!!」

加蓮「じゃ、アタシが一番乗りだ♪」


16: 2017/07/28(金) 17:35:34.56 ID:gOKOXAOSo

奈緒「ちょ、ま、かれ……!」

凛「……」

加蓮「なーに? 二人とも」

加蓮「別にアタシがやってもいいんだよね?」

加蓮「だってフリーハグだもんねー」

P「う、うむ……」

加蓮「それにこのまま誰にもハグされなかったら」

加蓮「Pさんかわいそうでしょ?」

加蓮「だったらちょっとくらい、いい思いをさせあげたいじゃない?」

P「ど、どうも……」


17: 2017/07/28(金) 17:36:28.30 ID:gOKOXAOSo

加蓮「それでどう? Pさん」

加蓮「ファーストハグの感想は」

P「あの……」

P「たいへん情けないことに」

P「体が緊張して動けないです」

P「銃口を突きつけられたみたいになってる」

加蓮「ふふっ、体硬くなってるよね」

加蓮「いいよ、腕降ろしても」

加蓮「せっかくなんだから、もっとリラックス、しよ?」

P「……うむ」

スッ

P「……」

加蓮「落ち着いてきた?」

P「ああ」

P「びっくりした」

19: 2017/07/28(金) 17:37:27.55 ID:gOKOXAOSo

加蓮「他に感想は?」

P「他?」

加蓮「ハグされてるのに、何もないの?」

P「……」

P「加蓮、いい匂いがするな、と」

加蓮「んふふ、そうでしょ」

加蓮「アタシもPさんの匂いがするよ」

P(臭くないだろうか……)

加蓮「他は?」

P「他は……」

P「密着してる部分が熱いな、って」

P「腰に回してる手の部分とか……」

加蓮「……うん」

加蓮「アタシも何か、熱くなってる」

加蓮「でもあんまり嫌いじゃないかも」

加蓮「むしろ落ち着く感じ」

P「……確かに」

加蓮「……」

P「……」


ギュー


20: 2017/07/28(金) 17:38:19.55 ID:gOKOXAOSo


奈緒「ど、どーすんだよ、凛!」

奈緒「完全に二人の世界になってるじゃんか!」

凛「奈緒、落ち着いて」

凛「……ねえ加蓮、そろそろいいんじゃない?」

加蓮「……んー? ふふっ、そう?」

加蓮「じゃあPさん、名残惜しいけどここまでね」

加蓮「これ以上やると、二人が怖いもんね」

パッ

P「……ぶはー」

P「なんかめっちゃ疲れたような」

P「反面、癒されたような……複雑な心境だ」

加蓮「でも、良かったでしょ?」

P「……うす」

P「たいへん助かりました」

P「このままだとハグ0ってこともありえたからな」

加蓮「ふふっ、どーいたしまして」

加蓮「またいつかやろーね」

21: 2017/07/28(金) 17:39:18.11 ID:gOKOXAOSo

奈緒「あ、あのなあ加蓮!」

加蓮「さーさー二人とも、レッスンの時間だよっ」

加蓮「それともどうする? 二人もPさんとハグしていく?」

奈緒「えっ」

凛「……ううん、私はいいかな」

加蓮「へー」

加蓮「凛はいいんだ、意外」

加蓮「じゃ奈緒だね」

奈緒「だ、だからあたしは……っ!」

加蓮「まーまー、そんなたいしたものじゃないって」

加蓮「海外で挨拶するときとかよくやってるし」

加蓮「それにけっこう癒されるよ?」

加蓮「Pさん、なんかおとなしい熊みたいだったし」

P「熊て」


22: 2017/07/28(金) 17:40:07.76 ID:gOKOXAOSo

奈緒「う……」

加蓮「(ほら、Pさん!)」

P「(え?)」

加蓮「(どーみても奈緒迷ってるでしょ!)」

加蓮「(今がチャンスだって!)」

P「……ええと」

P「奈緒、あのー、なんだ」

P「俺本当に、全然動かないからさ」

P「人形かなんかだと思ってくれていいんで」

P「軽い気持ちで、どうぞよろしくお願いします」

奈緒「……Pさんは、どーなんだよ」

P「俺?」

奈緒「その、あたしに、だ、抱きしめられるとか」

奈緒「Pさん、イヤじゃないのかよ?」

23: 2017/07/28(金) 17:41:02.13 ID:gOKOXAOSo

P「……」

P「いや、普通に嬉しいけど……」

奈緒「そ、そうなのか?」

P「奈緒に抱きしめられるとか」

P「どんなご褒美だよって思っちゃうわ」

奈緒「そ、そっか……」

加蓮「いっちゃえいっちゃえ」

奈緒「ああもうっ! 加蓮はうるさい!」

加蓮「はーいっ♪」

奈緒「じゃ、じゃあ……」

奈緒「Pさん、ば、ばんざーいってして、くれる?」

P「はい」

ヒョイ

P(これ毎回やんのかな)


24: 2017/07/28(金) 17:41:55.07 ID:gOKOXAOSo


奈緒「よ、よし」

奈緒「Pさん絶対動くなよ、絶対だぞ!」

P「ハイ」


奈緒「……」スーハースーハー

加蓮「(深呼吸してる)」

凛「(かわいい)」


奈緒「い、いくぞっ!」

奈緒「っ!」


ガバッ


25: 2017/07/28(金) 17:42:49.35 ID:gOKOXAOSo


P「……」

奈緒「……」


ギュー


P(これは……)

P(ハグというか……)

P("しがみつかれてる"って感じだ)

奈緒「~~っ!」


ギュウゥ


26: 2017/07/28(金) 17:43:25.35 ID:gOKOXAOSo

加蓮「なーおー」

加蓮「それじゃ意味ないでしょー」

加蓮「もっとこう、腕を背中に回して」

加蓮「ぎゅーっとやんないと、ぎゅーっと」

凛「今のだと、ただ寄りかかってるだけだね」

奈緒「む、無理! もう無理!」

奈緒「限界! これが限界っ!!」

奈緒「は、は、恥ずかしすぎる…っ!」


ギュー


P「ぐええ」

加蓮「おお」

凛「力はいったね」

27: 2017/07/28(金) 17:44:06.04 ID:gOKOXAOSo

P(……いかん)

P(奈緒の頭が、目の前に)

P(髪の毛、すっごい近い)

P(なんだろう)

P(めっちゃ、なでたい……)

P(でも、勝手になでるのはNGだったハズ)

P(くそっ、俺の両手はどこに置けば……っ)

P「~~っ」

奈緒「~~っ」

加蓮「なんか、二人とも悶えてるね」

凛「あんまり癒されてないっぽいね」

28: 2017/07/28(金) 17:45:09.18 ID:gOKOXAOSo


ガバッ


奈緒「ぶはっ!」

加蓮「あ、離れた」

奈緒「はー、はー……」

凛「奈緒、大丈夫?」

加蓮「肩で息してるけど……」

奈緒「だ、大丈夫……」

奈緒「ちょっと、息止めてただけだから……っ」

加蓮「そ、そんなに?」

P(危なかった)

P(こっちはこっちで誘惑に負けるところだった)

29: 2017/07/28(金) 17:45:39.19 ID:gOKOXAOSo

加蓮「ちょっと不安ですが」

加蓮「感想聞いてみましょう」

加蓮「奈緒、どーだった?」

奈緒「いや、あの、ゴメン」

奈緒「全然覚えてない」

奈緒「とにかく恥ずかしかった……」

凛「だと思った」

P「なんか、悪いことしたな」

30: 2017/07/28(金) 17:46:24.25 ID:gOKOXAOSo

奈緒「いや、Pさんが謝ることじゃないけど!」

奈緒「だけどなんていうか、こういうのは慣れが必要っていうか!」

奈緒「い、いきなりだとうまくできないっていうか……」

加蓮「へー」

加蓮「さっきのじゃ足りないってさ、Pさん」

奈緒「か、加蓮! 何言ってnーー」

凛「もう一回やれば?」

奈緒「り、りーんー!!」

P「まあまあ、二人ともあんまりからかうな」

P「俺は結構よかったぞ」

奈緒「えっ」

31: 2017/07/28(金) 17:47:31.23 ID:gOKOXAOSo

P「なんつーか、いい意味でどきどきしたな」

P「癒しとかそういうのはなかったかもしれないけど」

奈緒「そ、それって……」

P「なんでかしらないけど」

P「懐かしい気持ちになったな」

P「いい思いしたわ、ありがとう、奈緒」

奈緒「う、うん」

奈緒「ま、まあ、Pさんがよかったっていうなら……」

奈緒「あたしも、別に、イヤじゃなかったし……」

加蓮「」ニヤニヤ

凛「」ニヤニヤ

奈緒「な、何笑ってんだよ! 二人とも!」

加蓮「べっつにー」

凛「なんでもないよ」

32: 2017/07/28(金) 17:48:19.41 ID:gOKOXAOSo

凛「それよりいいの? 二人とも」

凛「もうこんな時間だけど」

加蓮「あ」

奈緒「あわわ、やっばい! は、早く行かなきゃ!!」

加蓮「なーんだ、残念」

加蓮「もっと奈緒のかわいいところが見られると思ったのに」

奈緒「そんなこと言ってる場合か! ほら、急ごう!」

加蓮「はーい、じゃーね、Pさん」

P「うす」

P「お気をつけて」


ガチャ


凛「……」チラッ

P「?」


バタン


タタタタ……


33: 2017/07/28(金) 17:49:07.77 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「……終わりましたか」ヒョコッ

P「うわっ」

ちひろ「0ハグ回避、おめでとうございます」

ちひろ「幸先いいスタートでなによりですね」

P「ど、どうも」

ちひろ「それで、与えられましたか?」

ちひろ「"温もり"とやらは」

P「いや~、どうでしょうね」

P「逆に元気をもらってる側な気がしますね」

ちひろ「完全にもてあそばれてましたしね」

ちひろ「まあ、健全な範囲だったので、不問としましょう」

ちひろ「今後も変なことはしないようにお願いしますよ」

P「あ、はい」

P「そうか、温もり、温もりか……」

P「よし、次こそ主導権をとってみせるぞ」

P「キュートのアイドル、来てくれ~」

ちひろ「……」

34: 2017/07/28(金) 17:50:01.05 ID:gOKOXAOSo


ガチャッ


未央・茜・藍子「「「おはようございまーすっ!」」」


P「お」


35: 2017/07/28(金) 17:50:47.12 ID:gOKOXAOSo

P「パッション勢か」

未央「おっはよー、Pさん!」

茜「おはようございます!!」

藍子「おはようございます、Pさん」

P「はい、どうも」

P「お揃いのところ恐縮だけど」

P「今これ、やってるよ」サッ

藍子「……なんですか、これ?」

茜「ふりー……読めません!!」

未央「あっ! フリーハグだ!」

未央「Pさん、これフリーハグのカードでしょ!」

P「ご明察」

茜・藍子「「ふりーはぐ?」」


36: 2017/07/28(金) 17:51:26.57 ID:gOKOXAOSo

未央「ん? 待てよ、ということは……」

未央「……ふぅーむ、なるほど、なるほど」

未央「Pさんも、なかなかワルですなあ」ニヤリ

P「なにをいう」

P「俺は純粋な気持ちからだな」

未央「まーまー、いいっていいって細かいことは!」

未央「それで、どうかな? 成果はあったのかな?」

P「まあ、おかげさまで」

P「ご好評いただいております」

未央「おー! いたんだ、やってくれる人!」

未央「え、だれだれ!? これって聞いてもいいのかな!」

P「うん、さっきな……」

藍子「……茜ちゃん、二人が話してること、わかる?」

茜「はいっ!」

茜「まったく!!」

37: 2017/07/28(金) 17:52:30.12 ID:gOKOXAOSo

未央「ふふふ、茜ちんにわかるよう簡単に言うとね」

未央「Pさんが練習台になってくれるんだってさ」

未央「タックルの」

P「ちょ」

未央「しかも無料で、何回でもオッケーだって!」

茜「!!」

茜「本当ですかっ! Pさんっ!!」

P「ぜってえこうなると思った」

P「落ち着け茜」

P「俺が言いたいのはな……」スッ

未央「あっ、立ったよ!!」

未央「いまだっ! 茜ちんっ!!」

茜「はいっ! いきますっ!!」


茜「うおおおぉおっ! ぼんばーーーっ!!!」


ドムッ


P「ぐふっ」


38: 2017/07/28(金) 17:53:29.09 ID:gOKOXAOSo

未央「よーし、あたしも続くぞー!」

P「まって」

P「これ以上はむr」

未央「ぼんばーーっ!!」


ドゴォッ


P「オアアーッ!」


バターン


藍子「わああ! P、Pさんっ!?」


39: 2017/07/28(金) 17:53:59.48 ID:gOKOXAOSo


―――


P「座れ」

未央・茜「ハイ」


P「聞け」

P「人の話を」

未央・茜「ハイ」


40: 2017/07/28(金) 17:54:45.83 ID:gOKOXAOSo

P「まず君らのはハグではない、いいね?」

茜「えっ!」

茜「違うんですか!?」

P「あんな殺意をこめたハグがあるか」

P「激しすぎるわ」

未央「はいはい! せんせーじゃあ質問でーす!」

未央「普通のハグってなんですかー!」

P「うん」

P「いい質問だ」

P「そいつをこれから披露しようと思う」

P「そう、俺と――」

P「……」チラッ

藍子「えっ」

藍子「わ、私ですかっ?」

41: 2017/07/28(金) 17:55:52.44 ID:gOKOXAOSo

P「藍子、そういうわけなんだ」

P「すまないがひとつ、頼まれてくれるか」

藍子「えっ、ええっ」

藍子「といわれても私、そんな、あの……」

未央「ちょちょちょちょちょ!」

未央「まったー! まったまった!!」

P「なにか?」

未央「なにか? じゃないよ!」

未央「私のあーちゃんに何させようとしてるのさっ!」

P「別に俺は何とも言っていないぞ」

P「ただ、頼まれてくれるか? って聞いただけだ」

P「なあ、藍子?」

藍子「え、あの……え?」

未央「あーちゃんダメだよ耳を貸しちゃ!」

未央「これ、Pさんのいつものやり口だもん!!」

未央「こうやって数多の女の子を口説(スカウト)いてきたんだから!」

42: 2017/07/28(金) 17:56:52.32 ID:gOKOXAOSo

P「ほーう」

P「何か知ってる風じゃないか、未央」

未央「うっ」

P「本当は俺が教えずとも、わかっているんじゃないかね」

P「"普通のハグ"とはいったい何なのかを」

未央「ううっ!」

未央「な、なんて卑劣な!」

未央「あーちゃんを人質に、私たちを脅そうって腹だね!」

茜「?」

未央「あーちゃん! 私の後ろに隠れてっ!」

未央「一刻も早くPさんの魔の手から遠ざけないと!」

藍子「え?」

P「ふふふ……」

P「さあ藍子、こちらにくるがよい……!」

藍子「えっ? えっ?」

茜「?」

茜「??」キョロキョロ


ちひろ(……)

ちひろ(茜ちゃん、完全に置いてきぼりじゃないですか)


43: 2017/07/28(金) 17:57:41.77 ID:gOKOXAOSo

P「――と、冗談は抜きにしても」

P「君らのはちょっと、あっけらかんとしすぎてる」

P「ハグってのはもっとこう、慈しみの精神が無いとダメなんだよ」

P「二人きりで、静かで、豊かで……」

未央「な、なんか語り始めたっ」

P「ハグソムリエの俺から言わせてもらうと」

P「全体的に軽いんだよね、君らのスキンシップは」

P「もっと恥じらいっていうか、しっとりした感じがほしいよね」

未央「うわあ……」

未央「ハグを要求するだけでもアレなのに」

未央「シチュエーションにも口を出し始めるとか」

未央「どん引きですよ、未央ちゃんは」

P「この三人相手だと」

P「好き勝手言えて楽だわ」

44: 2017/07/28(金) 17:58:37.86 ID:gOKOXAOSo

P「それに実際、ハグには癒し効果があるみたいなんだよ」

P「脳内でオキシなんちゃらとかいうホルモンが分泌されて」

P「幸せな気持ちになれるんだって」

藍子「……幸せ、ですか?」

未央「なるかなー、Pさんとハグして」

P「俺とハグして幸せになるかは、人によるだろうけど」

P「アイドル業は何かとストレスフルだろ?」

P「精神的なケアがやっぱり必要かなって思うわけよ」

P「俺としては少しでも力になりたいわけよ、アイドルたちの」

P「だからできることは何でもしてやりたいのよ」

未央「ほうほう」

未央「たいへんご立派なことですけれども」

P「だろ?」

未央「でもやっぱり、見え隠れしちゃうよね」

未央「Pさんの下心? っていうのがさ」

P「……しゃーない、それは」

P「もはや俺も隠しません! そういうところは!」

未央「うわっ、開き直った!」

P「すべて承知の上で、ハグしてほしい!」

P「ただただアイドルからのハグがほしい!」

P「私からは以上です!」

P「どうじゃっ! 誰か、誰かおらぬかっ!」

45: 2017/07/28(金) 17:59:12.79 ID:gOKOXAOSo

未央「……などと意味不明な供述をしておりますが」

未央「二人とも、いかがかな?」

藍子「……」

茜「あのっ!」

茜「結局、タックルとハグって何が違うんですかっ!!」

P「そこからか?」

P「茜はそこから説明しないとダメか?」

未央「ふふふ」

未央「あんまり響いてないっぽいねー」

藍子「……」

藍子「あの」

藍子「私、少し、興味があるかもしれません」

P「えっ!」

未央「うえっ!?」

P「こ、これは意外なところから……!」

46: 2017/07/28(金) 18:00:01.52 ID:gOKOXAOSo

未央「だ、ダメだよあーちゃん!」

未央「考えてみてよ? 相手はあのPさんだよ!」

未央「絶対ハグだけじゃすまないって!」

P「俺の評価って基本低いよね」

P「そんなに信用されてないのかっていう」

藍子「あ、いえ、ハグはできないかもしれないんですけど……」

P「へ?」

藍子「さっきのPさんの話、すごく共感するところがあったんです」

藍子「私もよく、"幸せ"について考えますから」

藍子「アイドルとして、どうやったらみんなに幸せになってもらえるかなって……」

未央「あー」

未央「確かにあーちゃんよく言ってるイメージある」

藍子「だから、本当に幸せになる効果があるかどうか」

藍子「興味があって、確かめてみたいんです、その……」

藍子「は、ハグは私にはハードルが高いかもしれませんけど……」

P「……ふむ」

47: 2017/07/28(金) 18:00:38.30 ID:gOKOXAOSo

P「そういうことなら俺も譲歩しよう」

未央「譲歩?」

P「さっき俺、ホルモンの分泌がどうのって言ってただろ?」

P「アレは別に、ハグだけに限った話じゃないらしい」

P「抱っこするとか肩を組むとかでも同じ効果が得られるんだそうな」

未央「というと?」

P「要するに肌の触れ合いがあるかどうかが大事で」

P「方法はなんでもいいみたいだ」

未央「へー」

未央「柔道の寝技とかでもなるのかな」

P「タックルもそうだけど」

P「お互い敵意がないことが大前提ですからね」

未央「あ、そっか、そうだよね」

P「まあ、だから別にいいよ、ハグじゃなくても」

P「藍子の好きなようにしてくれていい」

P「どうだろう、これで」

藍子「は、はいっ」

藍子「それならなんとかできるかもしれません」

未央「ええー……あーちゃん本気でやるの?」

48: 2017/07/28(金) 18:01:09.73 ID:gOKOXAOSo

藍子「ふふっ、大丈夫ですよ」

藍子「未央ちゃんと茜ちゃんにも協力してもらいますから」

未央「協力?」

茜「ですか?」

藍子「じゃあ、Pさんは座ったままで」

P「ハイ」

藍子「こっちのイスお借りしますね」

藍子「それで、みんなで座って輪になりましょう」

茜「輪?」

未央「よくわかんないけど、やってみよっか」

49: 2017/07/28(金) 18:02:18.06 ID:gOKOXAOSo

――


藍子「……みなさん輪になりましたか?」

P「うす」

茜「はいっ!」

未央「オッケーだよっ」

藍子「そしたら、両隣の人と手をつなぎましょう」

藍子「私はPさんと、未央ちゃんに……」ギュッ

未央「わわっ」

藍子「そしたら未央ちゃんは茜ちゃんとも……」

未央「う、うん」ギュッ

茜「そして最後に私がPさんと手をつなげばいいんですね!」ギュッ

藍子「はいっ、これで輪になりましたね」

P「なるほどね」

P「まあ手をつなぐのが一番ハードル低いわな」

藍子「Pさん、どうでしょう、こんな感じで」

P「当初の目論見からは大きく外れてしまったが……」

P「平和な感じにおさまったんで、まあオッケーです」

藍子「ふふっ、ありがとうございます」

50: 2017/07/28(金) 18:03:03.12 ID:gOKOXAOSo

茜「それで、これからどうしましょうっ!」

茜「みんなで回転しますか!? それともジャンプしますか!?」

茜「もしくはスクラムを組みますかっ!?」

藍子「あ、茜ちゃん落ち着いて」

藍子「何もしなくていいんだよ」

茜「……何、も?」

藍子「そう、ただ手をつないでじっとしているだけでいいんです」

藍子「そのまま楽にして、ゆったりした時間を過ごしましょう」

茜「楽に……わかりました!」

未央「しっかし相手があーちゃんと茜ちんとはいえ」

未央「ずっと手をつないでいるってのは気恥ずかしいねー」

藍子「ふふっ、私も同じです」

藍子「でもきっと、じきに慣れますよ」

藍子「のんびり静かに、いきましょう」

51: 2017/07/28(金) 18:03:31.97 ID:gOKOXAOSo


P「……」

藍子「……」

未央「……」

茜「……」ソワソワ


P(ポジパ+俺で輪になって手をつないでいる)

P(なんかの儀式っぽい)


52: 2017/07/28(金) 18:04:25.82 ID:gOKOXAOSo


P「」チラッ

茜「?」

P(……茜、手がめっちゃ熱いな)

P(しかも、がっつり握り返してきてる)

P(どうしよう、手汗かかないか心配だ……)


P「」チラッ

藍子「?」

P(……藍子の手は、小さいな)

P(こっちは茜と比べると控えめで)

P(お手してるみたいな優しい握手だ)


未央「……」ジー

P(対面の未央は――)

未央「……! ……!」パクパク

P(なんか口パクしてきてる)

P(……悪口言われてる気がする)


53: 2017/07/28(金) 18:05:07.61 ID:gOKOXAOSo

P「……」

藍子「……」

未央「……」

茜「……」


P「……」

P(確かに、ただ握手するだけでも効果はあるかもな)

P(この状況、最初は違和感しかなかったけど)

P(慣れてくると、藍子や茜と"繋がってる"感が強くなってきた)

P(直接手をつないでいるわけじゃないけど)

P(未央とも通じ合えている気がする……)

P(握手のパワー、すごい)

P(なんていうか)

P(肩から力が抜けていく)

P(そうか、これが)


54: 2017/07/28(金) 18:06:02.42 ID:gOKOXAOSo


P(ゆる)


P(ふわ――)


55: 2017/07/28(金) 18:10:54.12 ID:gOKOXAOSo


――――
――


56: 2017/07/28(金) 18:11:21.84 ID:gOKOXAOSo


ガバッ


P「はっ!」


57: 2017/07/28(金) 18:12:10.12 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「起きましたか」

P「お、俺は一体……」

ちひろ「びっくりしましたよ」

ちひろ「Pさん、いきなり寝ちゃうんですから」

P「寝た?」

P「あれ? ポジパの三人は?」

ちひろ「もうとっくに仕事に行きましたよ」

ちひろ「まったく、大変だったんですからね」

P「……状況が把握できない」

58: 2017/07/28(金) 18:12:43.68 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「みんなで手をつないでいたじゃないですか」

P「それは覚えてます」

ちひろ「そしたらPさんが船をこぎ始めたんですよ」

ちひろ「電車で寝てる人みたいに首をかっくんかっくんし始めて」

ちひろ「三人ともそれ見て笑ってましたよ」

P「なんてこった」

P「あまりにゆるふわな空間だったもんだから……」

ちひろ「それだけならよかったんですけどね」

ちひろ「Pさん、終いには倒れ込んじゃったんですよ」

ちひろ「未央ちゃんに覆いかぶさるようにしてね」

P「へ?」

59: 2017/07/28(金) 18:14:03.06 ID:gOKOXAOSo

――――――――――――――――――――――――――

未央「ほらほらPさんっ! 寝るなら仮眠室でね!」

P「うむ……む」

未央「ほら立って! 歩ける?」

P「ゆるふわだ……ゆるふわ」フラフラ

未央「あーあ、うわごと言っちゃってるよ」

藍子「だ、大丈夫でしょうか」

茜「私、肩をかしますよっ!」

未央「Pさんでっかいからなー……茜ちんより私がやった方がよさそう」

未央「Pさん、腕こっち回して! できる?」

P「……」

未央「Pさ――」

フラッ

藍子「あ」

茜「あ」

未央「え」

ガバッ

未央「へ?」

P「……」

ギュッ

未央「ちょ」

P「……」

P「……未央」ボソ

未央「」

――――――――――――――――――――――――――

60: 2017/07/28(金) 18:14:47.60 ID:gOKOXAOSo

P「やばい」

P「鳥肌立った、やばいやつじゃないですかそれ」

ちひろ「ほんとですよ」

ちひろ「具体的には言いませんけど」

ちひろ「有らん限りの罵詈雑言を吐いてましたよ、未央ちゃん」

P「次会ったとき土下座確定ですね」

P「誠心誠意、謝罪いたします……」

ちひろ「そうしてください」

P「でも、仮眠室にいるってことは」

P「なんだかんだ、ここまで運んでくれたんですね」

ちひろ「三人で頑張ってました」

ちひろ「未央ちゃんもぷんすかいいながら協力してましたよ」

ちひろ「ぽこぽこPさんの肩をたたいてましたけどね」

P「優しいかよ」

P「今度何かおごってやることにします」

ちひろ「そうしてください」

61: 2017/07/28(金) 18:15:55.79 ID:gOKOXAOSo

P「とはいえ、意識を失うとは」

P「とんだ不覚を打ちました」

P「アイドルの精神的ケアがどうのと言ってましたけど」

P「本人がこんなになってちゃ世話無いですね」

ちひろ「フリーハグと銘打っておきながら」

ちひろ「ハグされる側が癒されちゃってますからね」

P「面目ねえことです」

P「でも、次こそは汚名返上してやりますよ」

ちひろ「……まだやるんですか?」

P「このままじゃ終われないでしょう」

P「だって、まだキュートのアイドルが来てないんですよ!」

ちひろ「は?」

P「キュートのアイドルが来るまでは……」

P「キュートのアイドルのハグをもらわぬことには」

P「終わるに終われませんよ!」

P「頼む、頼むぞー! きてくれー!」

ちひろ「……」

P「なにか?」

ちひろ「いえ」

62: 2017/07/28(金) 18:16:42.25 ID:gOKOXAOSo


ガチャッ


P「お」


仁奈・薫・千枝「「「ただいまーっ!!」」 でごぜーますよ!」


P「わ?」


63: 2017/07/28(金) 18:17:37.61 ID:gOKOXAOSo

P「年少組か」

P「意外なところだ」

薫「せんせぇ、ただいまーっ!」

P「はいお帰り」

P「三人とも、仕事終わり?」

仁奈「そうでごぜーます!」

仁奈「いっぱいほめてもらったですよ!」

千枝「えへへっ、"良かったよ"って言ってもらえましたっ」

P「ほおー」

P「だいぶ好印象だな」

P「先方にお世話になりましたメール送っとかなきゃな」

仁奈「ぷろでゅーさーもほめてくだせー!」

P「もちろん褒めるぞ」

P「だが今日はちょっと趣向を変えてだな」

P「こういうキャンペーンをやってるんだ、今」サッ

仁奈「んー?」

薫「なぁにーこれーっ?」

千枝「えっと……」

千枝「"ふりーはぐ"、であってますか?」

P「えっ」

P「千枝読めるの」

千枝「あの、意味は分からないんですけど……」

P「すっご」

64: 2017/07/28(金) 18:18:23.51 ID:gOKOXAOSo

仁奈「ふりーはぐって、なんだー?」

P「要するにな」

P「ぎゅーってすることだ」

P「俺は今日だけ、ぎゅーってし放題なんだ」

薫「えっ!」

薫「せんせぇにぎゅーってしてもらえるの!」

仁奈「ほんとでごぜーますか!!」

千枝「……!」

P「もちろんだ」

P「ぎゅーだけじゃない」

P「なでなでだってしてやるぜ」

P「たかいたかいだって、お手の物だ」

薫「わあー! やったーっ!!」

仁奈「ひょえー! ふとっぱらだ-!」

65: 2017/07/28(金) 18:19:30.86 ID:gOKOXAOSo

P「さあ、もう言葉はいらないだろう!」

P「全力で来い、二人とも!!」

P「俺の全身全霊をもって受け止めてやる!」

薫「いっくよー! せんせぇっ!」

仁奈「とつげきー! でごぜーますよ!!」


ダダダダッ


ドカーン


P「ウワー!!」


バターン


千枝「あわわ、P、Pさんっ!?」

66: 2017/07/28(金) 18:20:28.85 ID:gOKOXAOSo

P「やられたー」

仁奈「あははっ、ぷろでゅーさーにぶらさがってるですよー!」

薫「せんせぇせんせぇ! かおるもやるー!」

P「よーしっ、薫はこっちの腕にぶらさがるといい」

P「いいかーゆらすぞーほれほれー」ユッサユッサ

仁奈「ひゃー!」

P「こんどは回るぞーほらほらー」クルクル

薫「わぁー! 目が回るー!」

仁奈「ぐーるぐるでごぜーます!」

薫「せんせぇ! もっとやってー!」

P「ふふふ」

P「好評なようでなによりだ……ん?」

千枝「……」ジー

P「……」

67: 2017/07/28(金) 18:21:19.36 ID:gOKOXAOSo

千枝「……あ、あの、Pさん」

千枝「その……千枝……えと……」

P「……千枝」

P「フリーハグはな」

P「"誰でも"ウェルカムなんだ」

千枝「えっ?」

P「老若男女問わず、誰だってハグしていいのさ」

P「人種国籍を超えて、誰もが愛と平和を叫ぶことができる」

P「それがフリーハグの精神だからな」

P「もちろん、千枝だって例外じゃない」

千枝「……!」

薫「千枝ちゃんも、いっしょにやろー!」

仁奈「あったけー気持ちに、なるですよー!」

P「俺の心配ならいらないぞ」

P「三人同時にだって、へっちゃらだ」

P「なぜなら俺は、みんなのプロデューサーだからな!」

千枝「……はいっ!」

千枝「Pさん、千枝、ちょっと大胆になります!」

P「しゃあ!」

P「どんと来い!」

68: 2017/07/28(金) 18:22:11.25 ID:gOKOXAOSo


千枝「いきますっ! Pさんっ!」

千枝「千枝のこと、受け止めてくださいっ――!」




69: 2017/07/28(金) 18:22:44.93 ID:gOKOXAOSo




70: 2017/07/28(金) 18:23:18.69 ID:gOKOXAOSo


――――
――


71: 2017/07/28(金) 18:23:47.89 ID:gOKOXAOSo


P「――終わりよければ、すべてよし」

P「最後のは、文句ないんじゃないですか?」

P「みんな、満足してくれたみたいですしね」



72: 2017/07/28(金) 18:24:31.38 ID:gOKOXAOSo


ちひろ「……まあ、そうですね」

ちひろ「Pさんの言う"温もり"とやら、わかった気がしますよ」

P「ああいうのがやりたかったんですよね」

P「それまでは振り回されてばっかりだったけど」

P「最後の最後であったけえ気持ちになれました」

P「年少組には感謝しなくちゃいけませんね」

ちひろ「企画倒れにならなくてすみましたしね」

ちひろ「結局、キュートのアイドルは誰一人来ませんでしたけどね」

P「……」

P「そればかりが心残りだ……」

P「後一日くらい延長しようかな」

ちひろ「今度はもう許可しませんよ」

ちひろ「本当に今日だけの特別でしたからね」

P「ええー」

P「せっかくこんなプラカード作ったのに……」


73: 2017/07/28(金) 18:25:20.12 ID:gOKOXAOSo

ちひろ「それじゃ、私はそろそろ」

P「あっはい」

P「お疲れさまです」

ちひろ「戸締まりだけはきちんとしてくださいね」

ちひろ「電気はどうします?」

P「消しちゃっていいですよ」

P「机に明かりついてるんで、大丈夫です」

ちひろ「わかりました」

ちひろ「それじゃあ、失礼しますね」

P「……」ジー

ちひろ「……なんですか?」

P「ちひろさん、このフリーハグですが」

P「これ別に、アイドル限定ってわけではないんですよ」

ちひろ「そうですか」

ちひろ「では」


ガチャ


バタン


P「つれねえ」


74: 2017/07/28(金) 18:26:15.93 ID:gOKOXAOSo


――


カタカタ…


カタカタ…


P「なんやかんやあっても」

P「最後は一人か」

P「そんなもんよね」

P「よっしゃ、さっさと終わらせて――」


ガチャッ


P「?」

P「ちひろさん?」

P「忘れ物でも――」


??「――振り向かないで」

??「そのまま、前だけ見てて」


P「」

P「凛、か」


75: 2017/07/28(金) 18:26:54.51 ID:gOKOXAOSo

凛「当たり、すごいね」

凛「声だけでわかるんだ」

P「そりゃお前」

P「何年この仕事やってると……」

P「ってそうじゃない」

P「なんでここに凛がいるんだ」

凛「加蓮と奈緒がうるさくてさ」

凛「私はいいって言ってるのに」

凛「行かなきゃ絶対後悔する、なんて言うんだよね」

P「……」

凛「今日一日、限定だったよね」

凛「……まだ、大丈夫?」

P「……もちろん」

P「お好きなように、どうぞ」

76: 2017/07/28(金) 18:28:17.73 ID:gOKOXAOSo

凛「動かないでね、プロデューサー」

凛「本当にそのまま、前だけ見ていればいいから」

P「うん」

凛「……」

凛「それじゃ」

凛「いくよ」


フワッ


ギュッ


P「……」

P(まさか、後ろからとは)

P(ぜんぜん想像してなかった)

P(こういうの、なんつったっけ)

P(あー、そうだ)

P("あすなろ抱き"、だこれ)

凛「……大丈夫?」

P「うん、大丈夫」

77: 2017/07/28(金) 18:29:15.68 ID:gOKOXAOSo


凛「……」

P「……」


P(凛の顔が、すぐ横にある)

P(長い髪に隠れて、表情は見えない)

P(いい匂いがする)

P(首に回された、凛の腕)

P(結構、力強い)

P(……)

P(静かだ)

P(互いの吐息すらも、聞こえてきそうだ)


78: 2017/07/28(金) 18:29:58.95 ID:gOKOXAOSo


凛「……」

P「……」


ギュー



79: 2017/07/28(金) 18:30:42.84 ID:gOKOXAOSo


凛「……プロデューサー」

P「うん?」

凛「私たちが行った後、どうだった?」

凛「他にも誰か、やってくれる人いた?」

P「……うん、まあ」

P「ぼちぼちだったよ」

凛「何、それ」

P「年少組には好評だったけどな」

P「それくらいさ」

P「まともにやってくれたのは、そんなにだな」

凛「……ふーん」

凛「そうなんだ」


ギュー


P(露骨に力入れてきたな)

80: 2017/07/28(金) 18:31:22.49 ID:gOKOXAOSo

凛「……聞いていい?」

P「どうぞ」

凛「なんで、こんなことしようとしたの?」

P「……なんでだろな」

P「半分は下心だろうな」

P「現役アイドルからハグもらえたら、うれしいだろ?」

凛「そう?」

P「そうさ」

凛「今も?」

P「今も」

凛「……そっか」

凛「残り、半分は?」

81: 2017/07/28(金) 18:32:02.56 ID:gOKOXAOSo

P「後は、三割くらいウケ狙いだよな」

P「セクハラだのいわれるのも、想定内だったし」

P「ちょっと面白いかなってさ」

凛「……」

凛「後は?」

P「残りは、そうだな」

P「他は全部、純粋な気持ちからだよ」

P「"温もり"なんつーもんが本当にあるかは怪しいところだけど」

P「もしハグすることで、少しでも誰かの救いになるのなら」

P「やってみるのも悪くないなって思ってな」

凛「……」

凛「効果は、あった?」

P「……」

82: 2017/07/28(金) 18:32:41.52 ID:gOKOXAOSo


P(真っ暗な事務所の中)

P(俺と凛だけがぼんやり照らされている)

P(辺りは静寂)

P(物音一つしない)

P(二人だけの空間)

P(だけど、不思議と寂しさはない)

P(まあ、これはきっと、そういうことなんだろうな)


P「効果は、あったよ」

P「なんとなく、だけどな」


83: 2017/07/28(金) 18:33:31.80 ID:gOKOXAOSo



P「――なんとなく、優しい気持ちになれた気がするよ」




終わり


84: 2017/07/28(金) 18:34:55.95 ID:gOKOXAOSo


PCSにおかれましては、皆様の脳内で補完していただきたく……


html依頼してきます

85: 2017/07/28(金) 18:39:39.71 ID:iwrAvAoso
なんだよこの気持ちは
すごく言葉に表せない幸せな気持ちだ
おつおつ

86: 2017/07/28(金) 19:20:32.62 ID:4YVxV3Xqo

  心

  か

87: 2017/07/28(金) 19:25:23.28 ID:0Cj5DIFJ0

安らぎを感じた

引用元: モバP「フリーハグだァッ!! ぐへへへへ」