1: 2012/02/21(火) 02:39:57.22 ID:7VMw3l+Lo
「ふんまつ!」
テレビ「……寒気が流れ込み、しばらく厳しい冷え込みが続くでしょう」
梓「ねー、お茶入れて」
律「自分で入れろ」
梓「けち」
律「コタツから出るのやだし」
梓「朝からずっと篭もりっぱなしじゃないですか」
律「休みなんだからいいじゃん」
梓「怠け者」
律「お前こそ」
梓「うぅ~寒さむ」ゴソゴソ
律「お茶っぱはそっちの棚な。あと私の分も」
梓「あっずるい」
律「こういうのは先に出た奴が負けなの」
梓「むー」
2: 2012/02/21(火) 02:40:25.57 ID:7VMw3l+Lo
グリグリ
梓「あれ?」
律「どした」
梓「蓋が開かな……」
ボフンッ
梓「」
律「あーあ、何してんだよ」
梓「」
律「たくっ」ヨッコイショ
モワモワ
梓「」
律「おい、大丈夫か?」
梓「……」ムズムズ
律「梓?」
梓「へっくしゅんっ!!」
律「」
梓「うー、鼻がかゆい……あれ、律先輩?」
律「」ベチョ…
梓「何してんの、汚いなぁ」
律「おいコラ」
律梓「はじまり!」
3: 2012/02/21(火) 02:40:55.49 ID:7VMw3l+Lo
「せいめい!」
律「ひまー」ゴローン
梓「……」カタカタ
律「あーずさー」
梓「はいはい後でね」
律「さっきからパソコンで何してんの」
梓「占いです」
律「くだらん」
梓「これが結構当たるんですよ。この姓名判断とか」
律「親にもらった名前にあれこれ言うとは烏滸がましい」
梓「えっと、田井中律っと」カタカタ
律「人の名前を勝手に使うなっ」
梓「結果が出ました」
律「どれどれ」ズイッ
梓「結局気になってるじゃないですか」
律「うっせ」
4: 2012/02/21(火) 02:42:05.62 ID:7VMw3l+Lo
姓:田井中 名:律
画数:22 総格:大凶
講評:不運がつきまとう凶数。苦労するでしょう。
梓「……」
律「……」
梓「……」プッ
律「笑うな!」
梓「なるほど、やっぱり不運なんだ」
律「やっぱりって何だよ」
梓「いえいえ、別に」
律「ちっ……そういうお前はどうなんだ」
梓「あ、やって見ますね」カタカタ
姓:中野 名:梓
画数:26 総格:大吉
講評:すばらしく天運に恵まれた大吉数。幸多き人生を送るでしょう。
梓「わーい、やったぁ」
律「……」
梓「どうですか、律先輩」ドヤッ
律「納得いかない」
梓「これが現実ですよ」キリッ
律「占いで現実語るな」
5: 2012/02/21(火) 02:43:06.15 ID:7VMw3l+Lo
梓「!」ピコーン
律(碌でもないこと思いついてそう)
梓「ふんふん♪」カタカタ
律「……」コソ
姓:中野 名:律
画数:24 総格:中吉
講評:吉数。努力次第で道は開けるでしょう。
律「おい」
梓「さっきよりマシになりましたよ」
律「余計なお世話だ」
梓「これは律先輩が嫁に来るべきという天啓です」
律「やだ。名前変えたくないし」
梓「えー」
律「おめーが田井中になればいいじゃん」
梓「私だって中野のままがいいです」
律「じゃあ間をとって、田井中の田井と中野の中で田井中梓ってのはどうだ?」
梓「それなら田井中の中と中野の野で中野律でどうですか?」
律「田井中梓!」
梓「中野律!」
6: 2012/02/21(火) 02:43:48.62 ID:7VMw3l+Lo
律「お前が嫁に来ればいいだろ!」
梓「ウチで嫁っぽいことしてるのは律先輩の方じゃないですか! 炊事に掃除に洗濯に……」
律「お前がやらんからだろ!」
律「だいたいお前私のお嫁さんになりたいって言ってたじゃん!」
梓「律先輩が婿に来ればいいんです!」
律「私は女だ!」
梓「女婿です!」
律梓「む~~~~」
律梓「ふんっ!!!」
・
・
・
梓「てことがあってね、ひどいんだよ律先輩」
憂「仲良しさんだね」ニコニコ
純(とっとと結婚しろバカップル)
7: 2012/02/21(火) 02:44:20.05 ID:7VMw3l+Lo
「ゆたんぽ!」
けんか中!
梓「……」ムスッ
律「だーかーらー、悪かったって言ってるじゃん」
梓「誠意が感じられないです」
律「楽器店は明日でも行けるだろ」
梓「私は約束を忘れられたことを怒ってるんです」
律「ぬぐっ」
梓「誰かさんがあったか~~い部室で、ほっかほか~なムギ先輩の紅茶を頂いてる間」
律「うぅ……」
梓「私は正門で一人寂しく待ち続けていたんですから」
律「ご、ごめん」
8: 2012/02/21(火) 02:44:59.23 ID:7VMw3l+Lo
梓「はぁ~、今日は特に寒かったなぁ」
律「……」
梓「風が冷たくて、手と頬が痛いぐらいに冷えて」
律「……」
梓「それでも田井中先輩が来ないから、何度も何度も時計見て、事故でもあったんじゃないかと心配までして」
梓「あげくのはてに『忘れてた』だもんなぁ」
律「……悪かったよ」
梓「私は田井中先輩との約束を、ぜったい、ぜぇ~~ったい破らないのになぁ」
律「返す言葉もない」
梓「三回まわってワン」
律「クルクル……ワン!」
梓「でも許してやんない」
律「てめぇ!」
梓「逆ギレするんですか?」ギロッ
律「っ……」タジタジ
9: 2012/02/21(火) 02:45:30.61 ID:7VMw3l+Lo
梓「今日は別の布団で寝ます」
律「あっそ」
梓「……」
律「じゃ、電気消すぞ」
梓「……」
カチッ
律「おやすみ」
梓「……」
律(返事なし、か。こりゃ相当怒ってんなぁ)
律(また明日にでも謝るしかないか)
10: 2012/02/21(火) 02:46:28.41 ID:7VMw3l+Lo
ヒュー ガタガタ
律(ひぃ~、今夜はやけに寒いなぁ)ブルブル
律(……湯たんぽがいないからか)
律(こりゃ早いとこ仲直りしないと体が持たん……)
ゴソゴソ
律「……ん?」
梓「……」キュッ
律「あっちの布団で寝るんじゃないのか?」
梓「……」
律「この布団で二人は狭いぞ」
梓「うるさいです。ほっとけです」
律「へいへい」
梓「……」
律「私も抱きしめていい?」
梓「……」
律「……」ギュッ
梓「……」
律「苦しくないか?」
梓「……」フルフル
律「……許してくれたんだ」
梓「許しません」
律「あ、まだ」
梓「ただ、寒いのが嫌なだけです」
律「そうかよ」
律(素直じゃないなあ)クスッ
梓「……おやすみなさい」
律「ん、おやすみ」
11: 2012/02/21(火) 02:47:08.95 ID:7VMw3l+Lo
・
・
・
梓「zzz」
律(うぅ……寒い、寒いよ)
梓「……」ゴロン
律(こ、こいつまだ布団持ってく気か!?)
律(そうはさせるかっ)ギュッ
梓「ん~……」ゴロン
律「」
カッチコッチ カッチコッチ
梓「♪」ホカホカ
律「」ブルブル
よくあさ!
律「くしゅんっ」
梓「風邪ですか?」
律「ん、ちょっとな」ズズ
梓「だらしないなぁ、普段から鍛えてないからですよ」
律「」ムカッ
12: 2012/02/21(火) 02:48:09.72 ID:7VMw3l+Lo
「くっきー!」
梓「クッキーを作ってみました!」
律「へぇ、どれどれ」
梓「これです」スッ
律「」
律(これってクッキーか? 私の知ってるものと大分違うんだけど……)
律「な、何かすごく個性的な形だなあ」
梓「型がなかったんで生地はちぎって焼きました」
律「へ、へぇ~……てか、色がやけに黒いな。ココアパウダーでも入れたのか?」
梓「いえ、焦げちゃいました」テヘッ
律「……」
13: 2012/02/21(火) 02:49:11.13 ID:7VMw3l+Lo
梓「ね、ね、食べてみてください」
律「あ、えっと……」
梓「……律先輩のために作ったんです」
律「」キュン
律(何という卑怯者。そんなこと言われたら食べない訳にはいかない)
律(しかしこのクッキー、何をどう見ても美味しそうには見えない)
律(下手すれば、腹を壊す可能性もある)
律「う~~~ん」
梓「……」
律「……」
梓「食べてくれないんですか……?」
律「へっ」
梓「……」ウルウル←何かを訴える梓の眼差し。律は萌え氏ぬ。
律(うぅ~~~わぁーったよ!)
律(……こうなったらやるっきゃない)
律(田井中律、覚悟を決めて食べさせていただきます!)
その時の私は、戦場に向かう兵士そのものだった。
愛する者のために、命すら捨てる覚悟でいた……!
14: 2012/02/21(火) 02:50:05.38 ID:7VMw3l+Lo
律「」ヒョイ
梓「あっ」
パクッ
律「むぐぅ!?」
梓「り、律先輩っ?」
律「……」
梓「……」
律「く、くくっ……」
梓「?」
パッサパサ!
パッサパサ!
口のなかパッサパサ!
口の中
パッサパサだよ!
パッサパサだよ!
パッサパサだよどーしてくれんだアズサちゃん!
口 の 中 パ ッ サ パ サ だ よ パ ッ サ パ サ//
この日以来、私は梓に少なくとも料理の出来については正直に言おうと決意した。
15: 2012/02/21(火) 02:50:49.84 ID:7VMw3l+Lo
「しりしか!」
部室
唯「りっちゃんってMだよね」
律「ぶっっ!!」
紬「Mというより受けかしら」
律「ムギさん何言ってんすか」
澪「何を今更」
律「黙らんかいっ」
16: 2012/02/21(火) 02:51:23.88 ID:7VMw3l+Lo
澪「冗談は置いて、唯はどうして急に?」
唯「いつもあずにゃんに振り回されてるイメージがあるから」
澪「あ、分かる」
紬「恐妻家って感じがするわね」
律「それって普通に尻に敷かれてるって言えないのかよ」
唯「あー」
紬「」ポンッ
律「納得するな! てか尻に敷かれてもない!」
唯「えー嘘だぁ」
律「嘘じゃねーし!」
17: 2012/02/21(火) 02:51:57.80 ID:7VMw3l+Lo
澪「私はいつも振り回されてる側だったけど」
律「ほら見ろ」
唯紬「じー」
澪「でも、律は梓の尻には敷かれてるのかもな」
律「なっ!?」
唯「やっぱり」
紬「イメージ通り」
律「どういう意味だ!」
18: 2012/02/21(火) 02:52:30.87 ID:7VMw3l+Lo
律「だいたい、家では亭主関白なんだぞ」
紬「へー」シラー
唯「分かってるよ」ウンウン
律「むかつくっ」
澪(亭主関白って)
律「怠け者の梓を私がちゃんと躾けて……」
唯「そうだよね、りっちゃんはりっちゃんだよ」ガシッ
律「人の話を聞けい!」
19: 2012/02/21(火) 02:52:59.79 ID:7VMw3l+Lo
ガチャッ
梓「あ、みなさんこんにちは」
律「」ビクゥ
澪「おっす」
紬「あら、梓ちゃん」
唯「あずにゃん!」ダキッ
梓「ちょっ、唯先輩!」
律「」コソコソ
澪「どうしたの?」
梓「律先輩に用が……」
唯「うぅ~ん、あずにゃん分補給」スリスリ
梓「……あの、唯先輩」
紬「唯ちゃん、後で私も」
唯「ダメだよ、あずにゃんは私のなんだから」
梓「唯先輩のものになった覚えはありませんっ」
20: 2012/02/21(火) 02:53:30.10 ID:7VMw3l+Lo
澪「おい、恋人をとられるぞ」
律(う、うっせーかくまえ)カクレカクレ
唯「あずにゃ~ん」ギュウウ
梓「すいません、唯先輩。少し離れてもらえますか?」
唯「は、はい」
梓「……」ギロギロ
唯「あ、あずにゃんが恐いよぉ」ブルブル
紬「よしよし」
梓「あの、律先輩はどこに?」
律「」ガクガク
澪「ここに」ヒョイ
律「澪てめえ!」
21: 2012/02/21(火) 02:54:05.07 ID:7VMw3l+Lo
梓「そんな所にいたんだ」
律「あ、梓これはだなぁ……」
梓「何ですか?」
律「そのぅ……」
梓「その、何ですか?」
律「アワワ…」
唯「おおっ、修羅場」
澪「唯はこっち」
唯「はーい」
紬「高見の見物ね」
「あなたって人はっっ!!!!!」
唯「」ビクッ
紬「」ギクッ
澪「」ドキッ
22: 2012/02/21(火) 02:54:36.65 ID:7VMw3l+Lo
律「ひ、ひいぃっ」
梓「次の講義必修でしょ!? またサボるつもりですかっ?!」
律「ち、ちげーよ! この後ちゃんと……」
梓「じゃあ何で隠れてたんですか?」
律「そ、それはだなぁ」
律(誰か助け船を……)チラッ
唯「今日の晩ご飯は何かなぁ」
澪「あ、ムギ。新しい歌詞ができたんだけど」
紬「わぁ~、すっごく素敵」
律「……」
梓「話を聞いてますか!?」
律「はひぃ!」
23: 2012/02/21(火) 02:55:21.46 ID:7VMw3l+Lo
梓「もういいです、早く行きますよ」グイッ
律「ちょ、そんな首ねっこ掴まなくても」
梓「うるさい」
律「はい」
梓「みなさん」
唯紬澪「はい」ビシッ
梓「お騒がせしました、失礼します」ニコッ
唯紬澪「はいっ」
24: 2012/02/21(火) 02:56:05.49 ID:7VMw3l+Lo
梓「ほら、早くしないと遅れますよ」グイッ
律「分かった、分かったから」
梓「そんなんだから去年単位落とすんです」
律「ごめんなせぇ……ごめんなせぇ……」ズルズル
梓「一緒に受けてくれって泣きついてきたのはそっちじゃないですか」
律「おら……反省してるだ……」ズルズル
梓「今年落としたら本当に留年しますよ。私と同じ学年になってもいいんですか?」
律「それだけは……ご勘弁を……」ズルズル
25: 2012/02/21(火) 02:57:13.48 ID:7VMw3l+Lo
澪「……」
唯「……」
紬「……」
澪「リードで引っ張られる犬みたい」
唯紬「ぷっ」
唯「あれってどう見ても尻に敷かれてるよね」
澪「うん」
紬「でも、あんな感じの方がりっちゃんらしくていいと思うな」
唯「うん、そうだよね」
澪「梓がしっかり者だから、安心して律を任せられるしな」
紬「あ、幼なじみ発言」
唯「あずにゃんに嫉妬?」
澪「ばか言え」
26: 2012/02/21(火) 02:57:47.17 ID:7VMw3l+Lo
純「梓は?」モグモグ
憂「次講義があるんだって」
純「はれ? なんかめぼしい授業あったっけ」
憂「律さんに付き合って受けてるって言ってたよ」
純「へぇ、仲がいいことで」
憂「あ、ちょうどあそこに」
純「ホントだ。おー……ぃいっ?」
27: 2012/02/21(火) 02:58:15.34 ID:7VMw3l+Lo
梓「まったく、公務員試験受けるんじゃないんですかっ?」
律「そっちの勉強はちゃんとしてるっての!」ズルズル
梓「信用できないです」
律「恋人の言うことぐらい信用しろ!」
梓「信用される恋人になってください」
律「ごめんなさい」
梓「ばかっ」
律「……」ズルズル
28: 2012/02/21(火) 02:58:54.85 ID:7VMw3l+Lo
「あれってウチの軽音部のカップル?」
「そうだよ、ツインテとカチューシャの子でしょ?」
「お熱いねぇ、冬真っ盛りなのに」
「羨ましい、こっちはクリスマスも独り身だっての」
「まあまあ」
純「……」
憂「……」
純「見なかったことにしよう」
憂「あはは…」
梓「ちょっと律先輩、ちゃんと自分で歩いてくださいよ!」
律「だったら首はなしてくれよ!」
34: 2012/02/22(水) 20:44:51.82 ID:4D/2cMJVo
「ひめごと!」
よる!
律「あっ、そこっ……」
梓「痛くないですか?」
律「うん、大丈夫だから……続けて」
梓「はい、それじゃ……」
律「ぁん、あずさぁ」
梓「ふふっ、律先輩のここってちっちゃいんですね」
律「う、うるさいっ」
梓「最近忙しくてゆっくりできませんでしたもんね。最初は優しくしてあげます」
律「あぅっ……」
梓「じゃあ、いきますよ」
律「ひぃぅ……」
梓「ちょっと痛いかもしれませんけど、我慢してくださいね」
梓「すぐに気持ちよくなりますから♪」
律「いっ、ちょ……たんまっ」
梓「ダメです」ニコッ
律「あっ……」
梓「痛がってる先輩も可愛い」
律「こ、このドS……」
梓「律先輩のせいですよ?」
律「ひゃっ……」
梓「もう少しの我慢だから」
律「うっ……あぁぁ」
梓「よしよし、大丈夫」
律「あ、梓……あうぅ……」ギュッ
律「ああぁぁぁっ…………」
梓「はい、お疲れさま」
35: 2012/02/22(水) 20:45:38.40 ID:4D/2cMJVo
律「ふー、さんきゅ」
梓「どういたしまして」
律「じゃあ今度は梓の番だな」
梓「優しくしてくださいね」
律「さて、それはどうでしょう」
梓「あっ……律先輩」
・
・
・
梓「♪」
律「……」カキカキ
梓「おちつきますー」
律「やっぱ耳かきは他人にやってもらうのが一番だよな」
梓「同感です」
36: 2012/02/22(水) 20:46:14.73 ID:4D/2cMJVo
「こそあど!」
お昼!
純「それでね、先輩がさー」モグモグ
梓「ふんふん」チュー
律「お、梓」
梓「あっ、律先輩!」パアァ
純「ども、こんにちは」
梓「奇遇ですね」ニコニコ
純(梓があからさまにゴキゲンに……)
律「須々木さんとお昼か」
梓「はい! 律先輩は?」
律「私はみんなと部室で」
純(ナチュラルに名前間違えられたような気がするけど気にしない)
37: 2012/02/22(水) 20:46:49.48 ID:4D/2cMJVo
律「……」ジー
純「?」
梓「どうかしました?」
律「冷蔵庫のそれ切れてたよな」
純(それ?)
梓「あっそういえば買い忘れてたような」
純(はい二人の会話来ましたー)
律「帰りにあそこ寄ってくか」
純(あそこ?)
梓「そうですね、あれも買いたかったことですし」
純(あれ?)
律「まったく、好きだなぁ」
梓「元気の源です」
純(あれ? それ? これ?)
純(………どれ?!)
38: 2012/02/22(水) 20:47:15.93 ID:4D/2cMJVo
律「じゃ、時間になったらいつもの所で」
純(いつどこで?)
梓「はい、了解です!」
純(私は全く了解してません)
律「ごめんな、邪魔しちゃって」
純「あ、いえ。大丈夫です」
律「それじゃ、また」
純「あ、はい」
梓「はーい」バイバイ
39: 2012/02/22(水) 20:47:58.19 ID:4D/2cMJVo
純「……」
梓「ごめんね、それで何の話してたっけ?」
純「解説ぷりーず!!」
梓「へっ?」
純「さっき律先輩と何話してたのさ!」
梓「何って普通に……」
純「ぜんぜん普通じゃない!」
梓「え? え?」
純「これだのそれだのあれだの!」
梓「あー」
40: 2012/02/22(水) 20:48:49.86 ID:4D/2cMJVo
-----
律『冷蔵庫のそれ(牛乳)切れてたよな』
梓『あっそういえば買い忘れてましたね』
律『帰りにあそこ(近所のスーパー)寄ってこっか』
梓『そうですね、あれ(たい焼きアイス一箱六個入り三百円也)も買いたかったことですし』
律『まったく、好きだなぁ』
梓『元気の源です』
律『じゃ、時間(午後五時。曜日によって変動する)になったらいつもの所(正門前)で』
梓『了解です!』
-----
41: 2012/02/22(水) 20:49:33.16 ID:4D/2cMJVo
梓「って感じだけど」
純「どうして分かる」
梓「どうしてって、何となく」
純「何となくって」
梓「ほら、憂も唯先輩とツーカーの仲だったりするじゃん」
純「……」
梓「一緒に住んでるとそうなるんじゃない? 普通だよ」
純「だから普通じゃない!」
梓「何怒ってんの」
純(羨ましいの! このバカップルめ!!)
42: 2012/02/22(水) 20:49:59.33 ID:4D/2cMJVo
「むねくら!」
かぽーん
律「背中洗うぞー」
梓「お願いします」
律「」ワシャワシャ
梓「泡あわ~♪」
律「力加減はどうですかお嬢様」ワシャワシャ
梓「ちょうどいいですよ」
律「かしこまりました」ワシャワシャ
43: 2012/02/22(水) 20:50:26.11 ID:4D/2cMJVo
律「そんじゃお湯かけるぞ」バシャーン
梓「ひゃぅっ」
律「きゅきゅっとな」ゴシゴシ
梓「にゃあっ」
律「うし、ぴかぴかだ」
梓「ありがとうございます。今度は私が流しますね」
律「頼んだ!」
梓「……」ワシャワシャ
律「おぉう」
梓「……」ワシャワシャ
律「うむ、至福のたいむ」
梓「……」ピタッ
律「?」
44: 2012/02/22(水) 20:51:21.01 ID:4D/2cMJVo
梓「……」
律「どした?」
梓「相変わらずのちっぱいですね」
律「んだと! お前に言われたくないわい!」
梓「いーえ、私の方が大きいです」
律「何を!? それじゃ比べてみるかっ?」
梓「お望みのままに。やってやるです!」
律「おるぁっ!」ペタッ
梓「ふんっ!」ピター
律「……」
梓「……」
45: 2012/02/22(水) 20:52:20.41 ID:4D/2cMJVo
律「なあ、梓。こういうの何て言うんだっけ」
梓「どんぐりの背比べってやつですよ」
律「ああ、それそれ」
梓「りつあずの胸比べ」
ヒュー
律梓「……」
律「むなしい」
梓「むねなし」
律梓「」クシュンッ
律「……」
梓「……」
律「風呂、入るか」
梓「そうですね」
46: 2012/02/22(水) 20:53:56.21 ID:4D/2cMJVo
「としつき!」
河原
律「……ふんっ」
ヒュルルルル… ポシャン
澪「……」
律「……」
澪「それっ」
ヒュルルルル… ……ポシャンッ
澪「……」
律「……」
澪「ふふ、私の方が飛んだ」
律「何威張ってんだか」
47: 2012/02/22(水) 20:54:29.20 ID:4D/2cMJVo
澪「知ってるか?」
律「何をー」
澪「もうすぐ今年も終わりらしいぞ」
律「へぇ~、道理で日の入りが早いわけだ」
澪「……」
律「それが?」
澪「もう一年経っちゃうんだなって」
律「うん、そうだな」
澪「大学生の時間の経ち方って早い」
律「何でだろな。高校時代と同じぐらい充実してると思うのに」
澪「残りの時間なんて、多分あっという間」
律「……」
澪「……」
48: 2012/02/22(水) 20:55:39.09 ID:4D/2cMJVo
シュッ
ヒュルルルル… ポチャンッ
澪「じゃあ、これは知ってる?」
律「今度は何だよ」
澪「地元のお肉屋さん、店畳むんだってさ」
律「……そうなんだ」
澪「やっぱり知らなかったのか」
律「実家から情報入ってこないんだから仕方ないだろ」
澪「ごめんごめん、そうだったな」
律「……なーんか寂しいや」
澪「よく二人してコロッケ買いに行ったな」
律「あっこのメンチカツ美味しかったのになぁ」
澪「……」
律「……」
澪「今度さ、最後に一回行かない?」
律「わざわざコロッケ食べに桜ヶ丘帰るのか?」
澪「うん」
律「あんまりあっち行きたくないんだけど」
澪「ダメ?」
律「……」
澪「……」シュン
律「あー分かったよ、今度一緒に行こ」
澪「……うん!」
49: 2012/02/22(水) 20:56:10.43 ID:4D/2cMJVo
シュッ
ヒュルルルル… ポシャッ
澪「こうやって二人で話すのも久しぶり」
律「お互いなんだかんだで忙しいもんね」
澪「律は梓にべったりだしな」
律「あら、もしかして妬いてらっしゃる?」
澪「別に」キッパリ
律「あ、そう」
50: 2012/02/22(水) 20:56:53.60 ID:4D/2cMJVo
シュッ
ヒュルルルル… ポチャンッ
澪「最近さ」
律「うん」
澪「梓、きれいになったな」
律「きれい、なのかな……可愛いけどさ」
澪「いや、大人っぽくなったよ」
律「そうか?」
澪「そうだよ、ちゃんとよく見てみろ」
律「毎日嫌ってほど顔合わせてるし」
澪「近くにいるとかえって気づかないんだよ」
律「そういうもんかな」
澪「灯台下暗しってさ」
律「……」
51: 2012/02/22(水) 20:57:47.08 ID:4D/2cMJVo
澪「……」
律「……」
澪「いつから梓のこと好きになったんだっけ?」
律「いつの間にか」
澪「ふぅん」
律「はじめはあんまり仲良くなかったような気がするけど」
澪「そういえば、そうだった」
律「気づいたら、大切になっててさ」
澪「……」
律「大切な後輩が、もっともっと大切になって」
澪「……」
律「そしたら、いつの間にか」
澪「律らしいや」
律「どういう意味だ」
澪「誉めてるんだよ」
律「そりゃどうも」
52: 2012/02/22(水) 20:58:40.11 ID:4D/2cMJVo
澪「でも、ちゃんと想いが通じてよかったな」
律「……うん」
律「ずっと片思いだと思ってたから、オッケーもらった時は正直信じられなかった」
澪「……」
律「みお?」
澪(鈍感)
律「なんだよその顔は」
澪「呆れて物も言えないの」
律「はぁ?」
53: 2012/02/22(水) 21:00:24.77 ID:4D/2cMJVo
澪「そういえば、ご飯の用意とか大丈夫なの?」
律「今日は梓の当番でさ」
澪「へぇ、梓の手料理か」
律「ちゃんと見張っておかないとすぐ失敗するんだ」
澪「今度食べさせてもらおうかな」
律「ダメ」
澪「何で」
律「あいつの飯は、まだまだ誰かに食べさせられるレベルじゃないのっ」
澪「ふぅん」
律「……」
澪「そんなこと言って、他の人に食べさせたくないんだろ」
律「なっ!? 違うし!」アタフタ
澪「分かりやすい」
律「違うっての!!」
澪「相変わらずだな」クスッ
律「むぅ~~~」
54: 2012/02/22(水) 21:01:02.57 ID:4D/2cMJVo
チャララーララ チャラララララー
澪「……」
律「……」
澪「そろそろ寮に帰らなきゃ」
律「そうだな、もうこんな時間だし」
澪「あっちに行く日決めたいから、空いてる日メールして」
律「了解」
澪「じゃ、また」
律「うん、ばいばい」
55: 2012/02/22(水) 21:01:51.32 ID:4D/2cMJVo
律(……)
律(今日梓何を作ってくれるんだろ)
律(……失敗しないように見張っとかないと)
律(……)
律(何でかよく分からないけど)
律(早くあいつに会いたい)
56: 2012/02/22(水) 21:02:35.31 ID:4D/2cMJVo
「りーつせーんぱーい!!」
律(この声は……)
律「おっす、あず……」
律「!」ドキッ
振り向いた先に見えたのは、髪を下ろした梓だった。
いつもと変わらない笑顔で近づいてくる恋人は
いつもとちょっぴり雰囲気が違って、可愛いというより――
57: 2012/02/22(水) 21:03:14.12 ID:4D/2cMJVo
梓「奇遇ですね、今帰りですか?」ニコニコ
律「……」
梓「律先輩?」
律「お前、その髪」
梓「あ、ちょっとイメチェンしてみようかなって」
律「なんだ、結び忘れたのかと思った」
梓「むっ、失礼な」
律「……」
梓「澪先輩にそっくりで綺麗でしょ?」
律「体型は似ても似つかないのにな」
梓「よし殴る」
律「どおどお」
梓「もうっ」
律「……」
律「まあ、でもさ、その……なんて言うか」
梓「?」
律「……似合ってるよ」
梓「えへへ、ありがと」
律「……」
58: 2012/02/22(水) 21:04:03.36 ID:4D/2cMJVo
律(澪の奴が変なこと言うから意識しちゃうじゃん)ドキドキ
梓「今日も寒かったね」
律「……」
梓「早く暖かくならないかなぁ。春が待ち遠しいです」
律「……」
律(てか、梓って……)
梓「そういえば、今日商店街で黒猫を見かけたんですよ」
律「……」
梓「何となくあずにゃん二号に似てるから、さんごうって名付けました……って」
律「……」
梓「律先輩?」
律「……」
梓「ねえ、律先輩」
律「……」
律(こんなに美人だったっけ……?)
59: 2012/02/22(水) 21:04:43.14 ID:4D/2cMJVo
梓「律先輩ってば!」
律「わっ……どうかした?」
梓「ちゃんと話聞いてます?」
律「ご、ごめ。ぼっとしてた」
梓「もうっ」
律「……」
律「あいつの言うとおりだな」
梓「へっ」
律「灯台下暗し」
梓「……どうしたんですか、さっきから変ですよ?」
律「んにゃ、何でもないよ」
梓「ふぅん」
律「それよりさ」
梓「はい」
律「……手、つないでいい?」
60: 2012/02/22(水) 21:05:43.20 ID:4D/2cMJVo
梓「……」
律「……」
梓「え、ええっと。具合でも悪いんですか?」
律「なんだよ、ダメなのか?」
梓「いえ、いつもそんなこと言わないから……」
律「私らしくないってか?」
梓「はい、まぁ」
律「悪かったな」
梓「……」
律「どうせ私らしくねーし」
梓「自分で言ったんじゃないですか」
律「……」プイッ
梓「……」
梓「……クスッ」
キュッ
律「!」
61: 2012/02/22(水) 21:06:07.33 ID:4D/2cMJVo
梓「律先輩の手、あったかいですね」
律「お前の手は冷たい」
梓「むっ……手が冷たい人は心が温かいんですよ」
律「じゃ私の心は冷たいってか」
梓「はい」
律「ちぇっ」
梓「なんて、冗談ですよ」
律「……」
梓「律先輩は心も温かいです」
律「……」
62: 2012/02/22(水) 21:07:08.76 ID:4D/2cMJVo
律「それで、いつまで髪下ろしてるんだ」
梓「しばらくこのままでいようかと」
律「だめ」
梓「えー、何でですか」
律「何でも」
梓「……?」
律「……」
律(似合ってるからだよ)
63: 2012/02/22(水) 21:08:01.78 ID:4D/2cMJVo
律(ずっと可愛い後輩だと思ってたけど)
律(気づかないうちに、こんなにきれいになってたんだな)
梓「そうだ、今日はカレーにしますね」
律「変な隠し味入れんなよ」
梓「入れませんよ」ムー
律「冗談だって、楽しみにしてる」
梓「はい!」
64: 2012/02/22(水) 21:08:44.89 ID:4D/2cMJVo
律「……」
梓「……」
律「なんかさ」
梓「?」
律「時間が経つのって早いな」
梓「ぷふ、律先輩じじ臭い」
律「うっせ」
こんなに美人で温かい恋人がいて、私はとても幸せだ。
69: 2012/02/25(土) 01:29:21.78 ID:83Ja6hX1o
「ねぎなべ!」
律「なん↑でなん↓だろ、気になるネギ♪ 君へのこの思い鍋にして~♪」
梓(帰ってきて早々超ゴキゲン……)
律「おっす梓! 聞いてくれよネギがすごく安くてさ」ニギニギ
梓「分かったから私の髪にぎらないでください」
律「へっへ~、今日はネギ鍋だよん♪」
梓「あ、嬉しい」
律「今日でようやく冬休み突入だからな。軽くお祝いと行こうぜ!」
梓「はい!」
「ネギ鍋ふっふ~♪ 熱々ふっふ~♪」
梓(相変わらず、こういう時には子供みたくはしゃぐんだから)クスッ
「……!? ぬおおぉぉぉっぅいえぅぁっ!!!??」
梓「!? ど、どうしたんですか律先輩っ?」
律「なん↑でなん↓だろ、気になるネギ♪ 君へのこの思い鍋にして~♪」
梓(帰ってきて早々超ゴキゲン……)
律「おっす梓! 聞いてくれよネギがすごく安くてさ」ニギニギ
梓「分かったから私の髪にぎらないでください」
律「へっへ~、今日はネギ鍋だよん♪」
梓「あ、嬉しい」
律「今日でようやく冬休み突入だからな。軽くお祝いと行こうぜ!」
梓「はい!」
「ネギ鍋ふっふ~♪ 熱々ふっふ~♪」
梓(相変わらず、こういう時には子供みたくはしゃぐんだから)クスッ
「……!? ぬおおぉぉぉっぅいえぅぁっ!!!??」
梓「!? ど、どうしたんですか律先輩っ?」
70: 2012/02/25(土) 01:29:54.21 ID:83Ja6hX1o
律「」ずう~ん
梓(打って変わって超ブルーモード……)
律「あずさぁ」
梓「何かあったんですか?」オソルオソル
律「これ……」
梓「ネギが何か?」
律「ニラだった」
梓「……」
律「……」
梓「ぷっ」
律「笑うな!」
梓「だって……くすくす……ニラとネギを……ぷっ」
律「ぬわっっかのおぉっ!!」
71: 2012/02/25(土) 01:30:43.37 ID:83Ja6hX1o
「めもりー!」
ゴチャ…
梓「……」
梓「あーもうっ、どうして部屋って掃除してもすぐに汚くなるんだろう」
梓「……」チラッ
カッチコッチ カッチコッチ
梓「律先輩の帰りはまだだよね」
梓「よーし、ちょっと早いけど年末の大掃除しちゃおう!」
72: 2012/02/25(土) 01:31:09.96 ID:83Ja6hX1o
梓「ゴミは一つにまとめて」
梓「えっとこの書類はもういらないっと」
梓「このノートのコピーは……律先輩のだけど多分要らないよね」
梓「思い切ってこの服も捨てちゃおうっ」
梓「そういえばこれ、初めてのデートのときに着ていった服だっけ」
梓「……」
梓「やっぱり取っておこう」
73: 2012/02/25(土) 01:31:48.21 ID:83Ja6hX1o
梓「テーブルの下も掃除しなきゃ」
梓「うわ、律先輩のペンケースから筆記具が飛び出してるし」
梓「もう、こういう所がずぼらなんだから」ブツブツ
梓「あっ……これって」
梓「律先輩、まだ持っててくれたんだ」
梓「すっかりボロボロになっちゃって」
梓「ここまで大切にしてもらえば、この子も本望だよね」
梓「懐かしいなあ。まだ律先輩と付き合う前のことだっけ」
梓(あれからもうどれぐらい経つんだろう)
梓(………)
梓(………………)
74: 2012/02/25(土) 01:32:32.45 ID:83Ja6hX1o
-----
入試本番直前――
憂「週末、いよいよだね」
純「ジャズ研の先輩も追い込みに入ってるよ」
憂「お姉ちゃんは相変わらず、マイペースにやってる」
純「あの人らしいや」
梓(……そっか、もう今週か)
梓(律先輩、大丈夫なのかな……)
75: 2012/02/25(土) 01:32:55.73 ID:83Ja6hX1o
梓「……」
憂「梓ちゃん?」
梓「……」
憂「?」フリフリ
純「あずさー!」
梓「わっ、急に大声出さないでよ!」
純「梓がぼーっとしてたんじゃん」
梓「えっ、そうだった? ごめん……」
憂「」チラッ
純「」チラッ
純「……律先輩のこと考えてた?」
梓「な、何でそこで律先輩が出てくるの」
純「梓がもの憂げな顔見せるのって大体あの人絡みだから」
梓「うー……」
76: 2012/02/25(土) 01:33:24.69 ID:83Ja6hX1o
梓「……律先輩、ギリギリらしいからさ」
憂「お姉ちゃんも大変みたいだけど」
梓「唯先輩はいざという時に力を発揮するタイプの人だし、そんなに心配ないと思う」
梓「澪先輩とムギ先輩ももちろんね」
純「じゃあ、一番危ないのは……」
憂「……」
梓「今必氏に勉強してるけど、やっぱり不安で一杯みたい」
純「そっか」
梓「でも私は見てることしかできないから……」
純「梓……」
77: 2012/02/25(土) 01:34:02.34 ID:83Ja6hX1o
憂「……」
憂「梓ちゃんにしかできないことがあるよ」
梓「えっ?」
憂「律さんが今一番必要としてることをしてあげられるのは、梓ちゃんだよ」
梓「な、何を急に」
憂「だって梓ちゃん、ずっと律さんのことっ……」
梓「……」
憂「ご、ごめん。取り乱しちゃった」
梓「う、うぅん」
純「私は憂に同意。律先輩のこと、見てきたんでしょ?」
純「きっと、梓にしかできないことがあるはずだよ」
梓「……二人とも」
78: 2012/02/25(土) 01:34:28.78 ID:83Ja6hX1o
梓「私にしかできないこと……」
梓(私には律先輩の応援ぐらいしかできない)
梓(……でも、応援ならできるんだ!)
梓「うん!」
79: 2012/02/25(土) 01:34:55.36 ID:83Ja6hX1o
~~
梓母「梓、裁縫道具なんかどうするの?」
梓「ちょっとね」
梓母「もしかして花嫁修業かしら?」
梓「ち、ちがうもん!」
梓母「へぇ~~」
梓「知らないっ」
梓「う~ん」
梓「ぜんぜん上手くいかない……」
梓「う~~、こんな下手なの渡せないよ」
梓「もっと家庭科の授業まじめに受けとくべきだったなぁ……」
80: 2012/02/25(土) 01:35:23.95 ID:83Ja6hX1o
~~
梓「憂、針仕事ってできる?」
憂「うん、よくお姉ちゃんのボタンとか縫ってあげてるよ」
梓「じゃ、じゃあ少し教えてほしいんだけど」
憂「いいけど、何を?」
梓「えっとね……」
81: 2012/02/25(土) 01:35:52.05 ID:83Ja6hX1o
~~
部室
唯「あずにゃんどうしたの、その絆創膏」
梓「あ、ちょっと切っちゃいまして」アセアセ
律「気をつけろよー、指はギタリストの命なんだから」
梓「はい、大丈夫です」
紬「……」
紬「梓ちゃん」コソッ
梓「はい、何ですか?」
紬「りっちゃん、きっと喜ぶわ♪」
梓「はい! ……って」
紬「」ニコニコ
梓(何で知ってるんだろう……)
紬「詳しいことは分からないけど、りっちゃんのために何かしてるんだろうなって」
梓「ひ、人の心読まないでくださいっ!」
82: 2012/02/25(土) 01:36:23.87 ID:83Ja6hX1o
~~
梓「こんな感じかな」
憂「うん、律さんにそっくり……あ、ここほつれてるよ」
梓「へっ? どこどこ?」
純「二人して何こそこそやってるの?」
梓「何でもないよ。ね、憂?」
憂「うん」
純「……仲間はずれですか」
梓「べ、別にそういう訳じゃなくて」
純「……」シクシク
梓「あーもう、絶対内緒だからね!」
純「なるほど、そういうことか」
憂「純ちゃんもジャズ研の先輩にどう?」
純「だめだめ、私手先が壊滅的に不器用だし。それに今日明日じゃなあ」
梓「先輩不孝者」
純「うるさいっ」
83: 2012/02/25(土) 01:38:29.24 ID:83Ja6hX1o
~~
梓母「あずさー、ごはんよー!」
梓「すぐ行くから!」
梓「……」セッセッセ
梓「あと少し……痛っ」
梓「」フーフー
梓(焦らない、焦らない)
梓「ここを通せば……」
梓「……よし、完成っ!」
84: 2012/02/25(土) 01:39:02.54 ID:83Ja6hX1o
・
・
・
当日
憂「お姉ちゃん、もうすぐ駅だよ!」
唯「うー……緊張するよぉ」
紬「大丈夫よ。あんなに勉強したじゃない」
律「試験会場であがるなよー?」
澪「お前もだぞ、律」
律「うっ……分かってるよ」
梓「……」
梓(緊張するよぉ……)ドキドキ
85: 2012/02/25(土) 01:39:23.69 ID:83Ja6hX1o
澪「それじゃ梓、憂ちゃん。この辺で」
紬「お見送りありがとう♪」
憂「あの、みなさん! 実は……」
唯「ほぇ?」
律「どうした憂ちゃん」
憂「皆さんに……お守りを作ってきまして」
律澪(す、すごく効きそう!)
86: 2012/02/25(土) 01:39:52.20 ID:83Ja6hX1o
憂「ムギさん、がんばってください」
紬「ありがとう、とても嬉しいわ」
憂「澪さん、普段通りにやれば大丈夫ですよ」
澪「はは……ありがとう。頑張るよ」
憂「……お姉ちゃん、絶対大丈夫だからね」
唯「憂ぃ……ありがとう」
憂「もう、お姉ちゃん。泣かないの」ギュッ
唯「うい~~」ギュウ
憂「よしよし」
唯「お姉ちゃん、頑張るからね!」
憂「うん!」
律「姉妹愛だな」
紬「~♪」ニコニコ
87: 2012/02/25(土) 01:40:18.39 ID:83Ja6hX1o
憂「では皆さん、頑張ってください!」
律「う、憂ちゃん私のは?」
憂「ごめんなさい、忘れてました」テヘッ
律「ひどっ!」
憂「冗談ですよ、律さんにもちゃんとあります」
憂「私からじゃありませんけどね」チラッ
律「へっ?」
梓「……!」ピクッ
律「あ、梓?」
梓「……」モジモジ
88: 2012/02/25(土) 01:40:59.70 ID:83Ja6hX1o
澪「あぁ、なるほど」
紬「キマシタワー」
唯「モテる男は羨ましいですなあ」
律「私は女だ!」
憂「それじゃ私たちは退散しますか」
澪「先に駅行ってるから。遅れるんじゃないぞ?」
紬「りっちゃん、頑張って♪」
唯「りっちゃん隊員、ご武運を!」
律「お、おいお前ら!」
梓「……」ドキドキ
89: 2012/02/25(土) 01:41:25.79 ID:83Ja6hX1o
律「行っちゃった」
梓「……」
律「何なんだよ、全く」
梓「……」
律「なあ、梓」
梓「……」
律「……あの、梓さん?」
梓「にゃっ!? ご、ごめんなさい、ぼっとしてました」
律「い、いや大丈夫だけど」
90: 2012/02/25(土) 01:41:51.97 ID:83Ja6hX1o
梓「……」
律「……」
梓「あの、律先輩」
律「な、何?」
梓「……これ!」
梓「一生懸命作りました」
梓「見栄えは悪いけど……受け取ってください!」
律「梓……」
91: 2012/02/25(土) 01:42:26.81 ID:83Ja6hX1o
律「梓が作ってくれたんだ」
梓「は、はい」
律「これ、私の顔か?」クスッ
梓「あ、あの、下手くそで、その、ごめんなさいっ」
律「ううん、嬉しい」
梓「本当は、みんなの分もつくるつもり、だったんですけど、」
梓「私、元が不器用で、律先輩のだけでも、満足に作れなくて……結局憂に頼っちゃって」
律「……」
梓「私は、こんなことぐらいしか、できないのに、それすらも満足にできなくてっ」
律「……」
梓「ごめんなさい……余計な話に時間とらせちゃいました」
律「……」
梓「それじゃ、がんばって……」
92: 2012/02/25(土) 01:43:03.18 ID:83Ja6hX1o
律「梓」
梓「!」ビクッ
律「あーずさ」
梓「な、何ですか?」
律「……」ギュッ
梓「っ!?」
律「しばらくこうさせて」
梓「は、はい」
律「……」
梓「……」ドキドキ
93: 2012/02/25(土) 01:43:41.38 ID:83Ja6hX1o
律「ありがとな、こんな私のために」
梓「そんな、私は別に」
律「実はさ、結構……ってか、すごく不安だった」
律「成績とか全然足りてないしさ。私一人だけ落ちたらどうしようって」
律「てか、そうなるんじゃないかって」
梓「……」
律「でも、梓のおかげで勇気出た」
律「ありがと」
梓「……はい」
94: 2012/02/25(土) 01:44:36.95 ID:83Ja6hX1o
律「……」
梓「……」
律「そろそろ、か」ポンッ
梓「……」
律「梓」
梓「はい」
律「私、絶対合格するから」
梓「はい」
律「梓に真っ先に連絡するから」
梓「はいっ」
律「絶対梓に、いい報告するから」
梓「……待ってます」
95: 2012/02/25(土) 01:45:21.38 ID:83Ja6hX1o
律「じゃ、ちょっくら頑張ってきますか」
梓「……」
梓「律先輩!」
律「ん?」
梓「行ってらっしゃい!」
律「……うん、行ってきます」
96: 2012/02/25(土) 01:45:54.27 ID:83Ja6hX1o
梓「……」
憂「渡せた?」
梓「うん、ちゃんと」
憂「そっか。よかった」
梓「憂には色々してもらったね。ありがと」
憂「私は何もしてないよ。頑張ったのは梓ちゃん」
梓「……ううん、憂には本当に感謝してるから」
憂「えへへ、どういたしまして」
97: 2012/02/25(土) 01:46:39.86 ID:83Ja6hX1o
梓「ねえ憂」
憂「うん?」
梓「私、決めた」
梓「受験が終わって、律先輩が落ち着いたら……言ってみる」
憂「そっか」
梓「断られちゃうかもしれないけど、伝えるだけ伝えてみる」
憂「きっと上手くいくよ」
憂「だって梓ちゃん、ずっと律さんのこと見てきたんだから」
梓「そう言ってもらえると安心する」
憂「頑張ってね」
梓「……うん」
98: 2012/02/25(土) 01:47:18.42 ID:83Ja6hX1o
-----
梓「懐かしいなあ」
梓「そっか律先輩ずっと持っててくれたんだ」
梓「……えへへ」
梓「って、物思いに耽っていたらもうこんな時間!?」
梓「早いところ大掃除終わらせなきゃっ」
「ただいまーっ」
梓「わわ、律先輩帰ってきちゃった」アタフタ
「あずさー?」
梓「はーい、お帰りなさーい!」
99: 2012/02/25(土) 01:48:06.34 ID:83Ja6hX1o
律「あれ、部屋がきれいになってるような」
梓「ちょっと年末の大掃除を」
律「そっか、もうそんな季節か」
梓「……」ニコニコ
律「何でにやけてんの?」
梓「時間が経つのは早いですね」
律「今年もあと少しだもんな」
梓「りーつせーんぱいっ」ギュッ
律「おわっ!?」
ご存じの通り、この後私の想いはちゃんと実を結ぶことになるのですが。
それはまた、別のお話。
100: 2012/02/25(土) 01:48:48.62 ID:83Ja6hX1o
「ねんまつ!」
梓「もーいーくつねーるーとー おーしょーおーがーつー♪」
律「つっても明日だけどな」
梓「大晦日の恒例、紅白を見ましょう!」
律「えーガキ使見ようぜ」
梓「やですよ、紅白見ないと明日の話題についていけなくなるんだから」
律「ガキ使見ないと年越した気分になんないの」
梓「紅白!」
律「ガキ使!」
律梓「う~~~」
律梓「じゃーんけーん」
律梓「ぽん!」
101: 2012/02/25(土) 01:50:00.49 ID:83Ja6hX1o
律「……」ブスー
梓「大晦日はコタツで紅白に限ります」
律「歌番組なんざ毎週見れるだろうに」
梓「じゃんけん弱い人の負け惜しみが聞こえるなー」
律「なんで私はあそこでグーを……」ブツブツ
梓「顔に出てるんですよ」
律「ちくしょう、ちくしょう……」
梓「CMの間は変えてあげますから」
律「うるへー!」
102: 2012/02/25(土) 01:50:49.65 ID:83Ja6hX1o
・
・
・
梓「おそば美味しかったです」ポンポン
律「お粗末さん」
ボーン ボーン
梓「今年もあと数分かぁ」
律「色々あったな」
梓「律先輩と一緒に暮らし始めて、もう大分経つんですね」
律「だな」
梓「はぁ、高校を卒業したのがずっと前だなんて」
律「……」
梓「……何だかこの時間ってしんみりします」
律「寂しい感じがするよな」
梓「そっち行っていいですか?」
律「ん、おいで」
梓「……」ゴソゴソ
103: 2012/02/25(土) 01:51:42.87 ID:83Ja6hX1o
梓「……」ギュッ
律「よしよし」
梓「ずっとこうしていたいです」
律「今夜はこのまま寝ちゃうか」
梓「はい」
律「……」
梓「……」
梓「律先輩」
律「んー」
梓「……どこにも行かないでくださいね」
律「なんだよ急に」
梓「時々、思うんです。律先輩と離ればなれになっちゃったらどうしようって」
律「……」
梓「もう独りぼっちは嫌だもん」キュウ
律「梓」
梓「……」
104: 2012/02/25(土) 01:53:07.09 ID:83Ja6hX1o
律「どこにも行かないって」
梓「……」
律「私はお前が大事なんだから」
梓「……」
律「こんな可愛い後輩、独りぼっちにさせるもんか」
梓「……」
律「約束する」
ポーン
律「ほら、年明けたぞ……って」
梓「……」スースー
律「寝てるしっ……せっかく人が真面目な話をしたってのに」
律(つか、なんか既視感)
梓「……」スヤスヤ
律「……」
律「まいっか、私も寝よ」
律「おやすみ」ギュッ
105: 2012/02/25(土) 01:53:56.99 ID:83Ja6hX1o
「しんねん!」
梓「律先輩、律先輩」ユッサユッサ
律「……んぁ」
梓「朝ですよー」
律「ふあぁ……おはよ」
梓「新年明けましておめでとうございます!」
律「ん、おめでと」
106: 2012/02/25(土) 01:54:51.68 ID:83Ja6hX1o
律「いつも寝坊助なのに今日は早起きだな」
梓「今年からは早寝早起きを心がけることにしました」
律(持って三が日までだな)
律「お、年賀状来てる」
梓「澪先輩、唯先輩、ムギ先輩、憂と純……」
律「さわちゃんに、和からも」
梓「ふふっ……えへへー」ニヘラ
律「ご機嫌だな。年明けだからか?」
梓「違いますよ、ここ」
律「宛名欄がどうかした?」
梓「私と律先輩の名前がセットで書かれてるのが嬉しくて」ニコニコ
律(新年早々幸せな奴)
107: 2012/02/25(土) 01:55:33.22 ID:83Ja6hX1o
律「じゃ選別すっぞ」
梓「はーい」
律「これは私宛てで、こっちは梓宛て……」
律(お、梓のお母さんから……)
律(梓を今年もお願いします、か)
律(了解しましたっと)
梓「どうかしました?」
律「んにゃ、ちょっとな」
梓「ふぅん……?」
108: 2012/02/25(土) 01:56:23.28 ID:83Ja6hX1o
梓「ふー、こっちの選別は終わりましたよ」
律「お疲れさん。終わったらお雑煮作るか」
梓「わぁ、楽しみです」
律「もう少しだからちょっと待ってろ」
梓「はーい」
律「これは私宛て……」
律「……っておい」
梓「誰からですか?」ヒョコッ
律「お前だよ」
梓「あ、私の年賀状!」
律「いやいや一緒に住んでるのに」
梓「えへへ、この写真いい笑顔で写ってますね」
律「自分で言うな」
109: 2012/02/25(土) 01:57:33.37 ID:83Ja6hX1o
律「それで、梓さん」
梓「はい」
律「宛名が『中野律』ってどういうことだよ」
梓「律先輩は中野家の婿になるんですから」
律「まだそのネタ引きずってたのね」
律梓「今年もよろしく!」
110: 2012/02/25(土) 02:02:06.51 ID:83Ja6hX1o
以上で終わります
全く関係ありませんが、映画では律が梓の頭をぽんってするシーンが好きです
という所で、ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました
また機会があれば二人の話を書きたいなと思います
それではまた……律梓に幸あれ!
全く関係ありませんが、映画では律が梓の頭をぽんってするシーンが好きです
という所で、ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました
また機会があれば二人の話を書きたいなと思います
それではまた……律梓に幸あれ!
111: 2012/02/26(日) 02:52:42.21 ID:a6zwXbGy0
乙
引用元: 梓「ふんまつ?」律「年まつ!」
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