4: 2022/06/22(水) 21:33:53.12 ID:rXnYEDib.net
「水中撮影?」

聞きなれない単語が出てきたので聞き返すと、璃奈ちゃんはうなずいた。

真剣な表情でお願いしてきたから何かと思った。

最近興味を持ったジャンルらしい。

「もちろんモデル料は出す」

そう言って見せられた金額は、いつもの雑誌の撮影と比べると少なく──でも高校生がぽんと出すような数字じゃない。

「そんなの、受け取れないわ」

当然、私は貰うのを断った。友達に撮られるのに金銭関係を作るなんて……。

5: 2022/06/22(水) 21:34:34.01 ID:rXnYEDib.net
「ううん。ちゃんと果林さんに仕事として依頼する」

「それに……苦しいことになると思うから」

苦しい?

まあ、水中で撮影というなら自由に息はできないだろうから苦しくもなるでしょう。

だけど私は小さい頃から海でよく泳いでいたから、肺活量は人より多めなはず。

6: 2022/06/22(水) 21:35:19.21 ID:rXnYEDib.net
結局、璃奈ちゃんがなかなか折れなくて、モデル代は食事をおごってもらうことでまとまった。

私自身撮られるのは好きだし、璃奈ちゃんがどんな風に撮ってくれるのかは興味もある。

水中撮影というのも、未知の世界で気になるし。

一体どんな感じになるんだろう……。

まあ、璃奈ちゃんが相手だし、心配はない──わよね?

8: 2022/06/22(水) 21:36:07.19 ID:rXnYEDib.net
「いらっしゃい」

撮影の日。どこかのプールにでも行くのかと思ったら、そのまま璃奈ちゃんの部屋に通された。

何か準備でもあるの?と思ったけど、その理由はすぐに分かった。

「なにこれ……」

目の前あるのは人が入れそうな大きな水槽──というかこれから私が入ることになるものなんでしょうね。

「果林さんに入ってもらうプール」

まあ……予想通り。どうやってこんなものを用意したのかとか聞きたいことはあるけど、璃奈ちゃんのすることにいちいち驚いてられないわ。

9: 2022/06/22(水) 21:36:57.50 ID:rXnYEDib.net
「服装は?水着?」

璃奈ちゃんに聞いてみる。

水中ということで、一応自分の水着と替えの服を持ってきてはいるけれど。

「これを着てほしい」

渡されたのはシンプルな黒のビキニ。サイズも──私にピッタリだ。

「これ、璃奈ちゃんが買ったの?」

この子が明らかにサイズの合わない水着を買うところを想像して少し笑ってしまう。

……と思ったらネット通販で買ったらしい。試着の必要がないなら確かにそのほうが便利だろう。

10: 2022/06/22(水) 21:37:44.02 ID:rXnYEDib.net
水着を着て鏡の前に立ってみる。

うん、プロポーションに問題なし。

そういえば……水着での撮影は初めてね。

セクシーを売りにはしてるけど、水着でアピールは学生としてどうなのかって言われたりしちゃうから。

今日はこの姿で悩殺──は難しそうな相手かしら。

11: 2022/06/22(水) 21:38:14.47 ID:rXnYEDib.net
水槽の横にある梯子を登って上から入る。

私が手足を伸ばしても両側の壁には届かなそうだし、深さも私の身長以上にあるからかなり大きい。

ビデオカメラもセットされて、準備オーケーね。

「じゃあ、始めましょうか」

璃奈ちゃんがうなずくのを確認してから、息を吸い込んで──潜る。

12: 2022/06/22(水) 21:38:47.85 ID:rXnYEDib.net
璃奈ちゃんが出すボードに書いてあるポーズをとっていく。

よくあるグラビアポーズ。だけど水中だとバランスがとりにくいわね……。

3つ目のポーズをとったあたりでそろそろ苦しくなってきた。璃奈ちゃんが次のボードを書いている間に一旦息継ぎを──え!?

いつの間にか上には透明な蓋があった。

どうして──。

手で押し上げようとしても動かない。というか足を踏ん張れないから力が入らない……。

13: 2022/06/22(水) 21:39:31.07 ID:rXnYEDib.net
開けて!

声は出せないから、ガラスの壁を叩いて璃奈ちゃんに伝える。

璃奈ちゃんがこちらを見たので必氏で壁を叩きながら上を指差す。

その間にどんどん空気が口から出ていった。

早く!早く開けて!

璃奈ちゃんは私の方を見たまま動かない。

何で!気づいてないわけがないでしょう。

もう、息が──。

14: 2022/06/22(水) 21:40:13.80 ID:rXnYEDib.net
大きく息を吐いてしまって、あわてて両手で口をふさぐ。

戸惑いと、恐怖と──。

その時、璃奈ちゃんの手が動いて……何かのスイッチを押した?

上を見てみると……蓋が──ない。

急いで水面に顔をだす。

15: 2022/06/22(水) 21:41:00.75 ID:rXnYEDib.net
「はっ……はぁっ……」

ようやく──息ができる……。

溺れるかと思った。

水槽のへりに手をかけて呼吸を整える。

そして──そのまま璃奈ちゃんをにらみつけてしまう。

17: 2022/06/22(水) 21:41:35.24 ID:rXnYEDib.net
「ごめんなさい。説明不足だった」

璃奈ちゃんから謝罪の後、いくつか動画を見せてもらった。

そこに映ってるのはどれも水中に長い時間潜ってる人ばっかり。

苦しそうにしながら、必氏で息をこらえている。

璃奈ちゃんはこういう動画を見つけて──興奮したと。

そういえば……交渉中にギリギリまで我慢してもらうって言ってたような……。

18: 2022/06/22(水) 21:42:25.65 ID:rXnYEDib.net
「果林さんが想定してなかったなら無理はさせられない。諦める」

その言葉でプライドに火が付いた。

私じゃ役不足と言われたみたいで。

あれ、役者不足だっけ?どっちだったかしら。

どっちでもいい。一度引き受けたんだから最後までやって見せる。

璃奈ちゃんだって限度はわかってるだろう。

19: 2022/06/22(水) 21:43:13.16 ID:rXnYEDib.net
もう一度水槽の中に入る。

璃奈ちゃんの方を見るとはっきりとスイッチを押していた。

そして、上を確認するとまた蓋が閉まっていた。

はっきりと閉じ込められたとわかったらドキドキする。

このまま出られなかったらどうしようという不安もある。

大丈夫──すぐに出してもらえるはず。

璃奈ちゃんはポーズ指定を書き始めた。

20: 2022/06/22(水) 21:44:06.62 ID:rXnYEDib.net
順番にこなして4つ目のポーズ。

だいぶ苦しい。

モデルをやってるから表情作りは得意だけど、今はそんな余裕はない。

多分ひきつった顔になっちゃってると思う。

おなかがぴくぴく動くのを感じる。

璃奈ちゃんはうなずいて次を書き始める。

22: 2022/06/22(水) 21:45:02.26 ID:rXnYEDib.net
あと1つ。

璃奈ちゃんがそう書いたボードを出した。

そんなの書かなくていいから。早く次の指示を出して!

待ってる時間が一番きつい──。

水を吸っちゃわないように、必氏で息をこらえる。

23: 2022/06/22(水) 21:45:53.48 ID:rXnYEDib.net
5つ目のポーズを決める。

もう限界──早く息させて。

ここまで息を我慢したのは初めてだと思う。

璃奈ちゃんがうなずいてスイッチを押した瞬間、急いで浮上する。

ぐっ……。

頭を思いっきりぶつけた。

その反動で水を飲んでしまう。

24: 2022/06/22(水) 21:46:27.02 ID:rXnYEDib.net
「げほっ……こほっ……」

何も考えられず、気が付いたらちゃんと呼吸できていた。

多分ぶつけた後にもう一度上がろうとしたんだろうけど…

「果林さん、すごい」

璃奈ちゃんが近づいて頭をなでてくれる。

褒めてるのか、ぶつけたところをさすってるのかわからないけど……年下の子になでられるのは変な気分──こういうのも悪くないわね。

25: 2022/06/22(水) 21:47:18.88 ID:rXnYEDib.net
もう1回ポージングの撮影をしてから、今度は体操の動きを入れてみることに。

屈伸、前後屈──くふっ。

やばい、身体をそらしたときに結構息が漏れちゃった……。

一旦上がってやり直しを──と合図をしたら璃奈ちゃんは首を横に振った。

そうだった。私を苦しめるのが目的だったんだっけ……。

だったら開き直るしかない。逆に時間が短くてすむかも?

26: 2022/06/22(水) 21:48:04.46 ID:rXnYEDib.net
次は開脚からの前屈。きつい。

動きが大きい分、さっきより消費が激しい気がする。

そしてY字バランス。

地面の上ならどうってことないけど、浮力があるからバランスがとりにくい。

空いている手で泳ぐようにバランスをとる。

もう限界……そろそろ終わりよね?

27: 2022/06/22(水) 21:48:47.23 ID:rXnYEDib.net
璃奈ちゃんが両手を広げた。

そこから指を1つずつ曲げていく。

まさか──カウントダウン?

うそでしょ……。

こんなにギリギリなのに。

おなかが大きくひくひくと前後に動いちゃう。

1秒1秒が長く感じる。

28: 2022/06/22(水) 21:49:31.29 ID:rXnYEDib.net
璃奈ちゃんが立てている指が3本まで減った。

あと少し。

残っていた少ない空気を一気に吐き出す。

もうまともにバランスをとってられるような状態じゃない。

早く。早く──。

29: 2022/06/22(水) 21:50:29.60 ID:rXnYEDib.net
無事に呼吸ができて、ふらつきながら水槽から出ると璃奈ちゃんから聞かれた。

「見る?」

今撮った映像を……ということだろう。

どんな感じになっているのか気になるから見せてもらう。

素人による固定カメラでの撮影。当たり前だけどチープ感はある。

後半になると表情も崩れてるし、悶えるような動きもしてて……恥ずかしかった。

でも……自画自賛だけど、セクシーでいい感じかも?

30: 2022/06/22(水) 21:51:03.83 ID:rXnYEDib.net
「撮るのはこれでおしまい?」

映像を見終わってから確認する。

「うん。ありがとう、果林さん。おかげでいいのが撮れた」

璃奈ちゃんは満足したようね。

「ところでこの映像はどうするの?」

「あ、果林さんの動画はどこかに公開したりはしないよ。私が1人で見るだけ」

まあ、こんなものを後悔されても困るもの。

「これを見て……璃奈ちゃんは何するの?」

「……」

璃奈ちゃんの顔が赤く染まった。

ふふ、1人で何するのかしら──。

31: 2022/06/22(水) 21:51:30.88 ID:rXnYEDib.net
おしまい

32: 2022/06/22(水) 21:53:52.57 ID:Lh7Dqr3L.net
愛さんがこれ知ったら二重の意味で脳破壊されそう

38: 2022/06/22(水) 22:36:07.12 ID:M/H5hBMz.net
愛さんの脳はボロボロ

引用元: 璃奈「果林さんの水中撮影をしたい」