1: 2022/04/01(金) 00:35:30.01 ID:TaI0ide0.net
エイプリルフールということで、嘘から始まるナンセンスレOコメディです。

キャラ崩壊、セリフ改変、本編感動シーンのパロディ化など「あんまりなんじゃない」な表現が多く含まれます……苦手な方はご注意下さい。

2: 2022/04/01(金) 00:36:22.65 ID:TaI0ide0.net
四月一日・生徒会室

かのん「恋ちゃん、いるー?」

恋「おや、かのんさん……生徒会室までいらっしゃるとは珍しいですね。どうしました?」

かのん「いや、今度借りたい機材があってさ……それの申請書をもらいに来たんだけど」

恋「もう、それでしたら私に頼んでくれれば良いではありませんか。 水くさいですよ、かのんさん」

3: 2022/04/01(金) 00:37:00.32 ID:TaI0ide0.net
かのん「いやぁ、友達だからってそういう所をなあなあにしちゃうのも良くないかなー……って」

恋「ふふっ、かのんさんってば意外と生真面目なところがありますものね」

かのん「もう「意外と」は余計だってば」

恋「ああ、ごめんなさい……それで、書類はこれですね。 必要な所に記入をして、一週間前までに提出してもらえれば大丈夫ですよ」

4: 2022/04/01(金) 00:37:43.83 ID:TaI0ide0.net
かのん「分かった、ありがとね……そうそう恋ちゃん」

恋「はい、なんでしょう?」

かのん「恋ちゃんってイチゴ好きだったよね」

恋「ええ、好きですよ? イチゴがどうかしましたか?」

6: 2022/04/01(金) 00:40:18.45 ID:TaI0ide0.net
かのん「いやぁ……それが今朝ね、お父さんの知り合いから高級イチゴをもらっちゃってさ……一粒で千円単位のすっごいのなんだけど、恋ちゃんも食べたいよね?」

恋「ひ、一粒で千円単位のイチゴ……ですか!?」

かのん「そうなんだよ……もうさ、普通の紙箱とかじゃなくて桐箱に入ってるの。ふたに墨で銘柄とか書いてあったりして……」

恋「そ、それでそのイチゴというのは……ど、どこの銘柄なのですか……!?」

かのん「えっ? あ、えーとね……いや、お母さんがすぐ冷蔵庫に入れちゃったからよく見なかったんだけど……たしか……」

恋「たしか……?」

かのん「なんて言ったかなぁ……たしか「のか」がついてたような……」

恋「もしや福岡の「とよのか」ですか!? 最近では「あまおう」に主力の座を奪われたとはいえ、ととのった形と食味の良さ、そして華やかな香りで一世を風靡したあの……!」

かのん「いやぁ、福岡じゃなかったような気がするんだよねぇ……」

7: 2022/04/01(金) 00:41:27.94 ID:TaI0ide0.net
恋「では佐賀の「さがほのか」でしょうか!? 固く引き締まりシャキッとした果肉に、酸味が少なく口いっぱいに甘味の広がる……!」

かのん「あー、九州じゃなかったようなー……」

恋「では栃木の「とちおとめ」でしょうか!? 関東では圧倒的なシェアを誇り、整った形に甘さと酸味のバランスも良く、一口頬張れば汁気がたっぷりとあふれ出してくる、あの……!」

かのん「さ、さすがに詳しいね……いや、だけど栃木でもなかったはずなんだよねぇ……」

恋「ああもう……じらさないで下さい、かのんさん!」

かのん「えーっと……(確かイチゴの品種って「〇〇おとめ」だったはず……)たしか「ナントカおとめ」って名前だったような……あ、そうそう「ふさおとめ」だ……お母さんが「ふさおとめ」って言ってた!」

8: 2022/04/01(金) 00:42:23.28 ID:TaI0ide0.net
恋「はぁぁ……かのんさん」

かのん「なに、恋ちゃん?」

恋「一ついいことを教えてあげます」

かのん「う、うん……」

恋「確かに「〇〇おとめ」と言ったイチゴの銘柄はたくさんあります、ですが「ふさおとめ」はお米の品種です」

かのん「あ、そうだったっけ……おっかしーなー、うちで使ってるお米と記憶がごっちゃになっちゃったのかなー?」

9: 2022/04/01(金) 00:42:42.66 ID:TaI0ide0.net
恋「……」

かのん「……」

恋「かのんさん」

かのん「ごめん恋ちゃん、エイプリルフールだからちょっと嘘でもつこうって思って……でもあんまりにも食いつきが良かったから切り出せなくなっちゃって……!」

10: 2022/04/01(金) 00:43:24.12 ID:TaI0ide0.net
恋「ふぅ……おおかたそんなことだろうと思いました(とはいえ私だけだまされたのでは面白くありませんね、ここは一つあり得ないような嘘をついてみるとしましょうか……)」

かのん「ごめんっ、恋ちゃん!」

恋「いえ、いいんですよ……どうもわたくしは昔からウソを見抜くのが上手ではないようですし。この間までサヤさんや理事長にまでだまされていたくらいですから」

かのん「……どういうこと?」

11: 2022/04/01(金) 00:44:22.20 ID:TaI0ide0.net
恋「ああ、そういえばまだ言っていませんでしたが……実はわたくし、本当は理事長とお母様の間に生まれた娘なのですよ」

かのん「へぇー、そうなんだ……って、えぇっ!?」

恋「ええ(ふふっ、驚いていますね。ですが高級イチゴの嘘でぬか喜びをしてしまった私の気持ちはこんなものでは収まりません、ここはうんと話をふくらませて……)」

かのん「いや、待って待って……だって恋ちゃんには海外で働いているお父さんがいて、そのお父さんが資金を出してくれたから結ヶ丘も廃校にならなくて済んだって……!」

恋「ええ、そこまでは合っています」

かのん「いや、じゃあ恋ちゃんの両親は恋ちゃんのお父さんとお母さんで合ってるはずじゃ……」

恋「いえ。それが実は、私が生まれる前に……」

12: 2022/04/01(金) 00:48:20.93 ID:TaI0ide0.net
…十数年前・神宮音楽学校の同窓会…

理事長「花、久しぶりね♪」

…ホテルの宴会場に集まった「神宮音楽学校」の卒業生と当時の教員たち……ビュッフェスタイルの立食パーティの形を取っている会場には軽いクラシック音楽が流れ、おしゃれなパーティ用ブレザーやカクテルドレス、また数人のOGと元教員の何人かは着物でおめかしをしていて、身に付けているアクセサリーの真珠やプラチナが会場の照明を反射し、きらきらと会場を彩っている……メイクも上手になったOGたちは、どことなく当時の印象をとどめている顔もあれば、ぐっと大人の女性らしい雰囲気に変わった顔までさまざまで、それぞれ恩師や仲の良かった同級生と出会うたびに「私の事を覚えてる?」と尋ねあい、ある程度は節度を保ちながらも、学生に戻ったかのようにはしゃいでいる……その中に「学生アイドル部」として学校を盛り上げた花の姿を見つけ、理事長は皿を片手に持ったまま近寄った…

花「ええ……貴女も元気そうで何よりね」

理事長「おかげさまでね。 それで、ご主人とはうまくやってる?」

花「……えぇ、まぁ」お皿にもほとんど料理を載せないまま、少し淋しそうな笑みを浮かべている……

13: 2022/04/01(金) 00:53:54.64 ID:TaI0ide0.net
理事長「あら、浮かない顔だこと……良かったら話を聞くわよ?」

花「ありがとう。 ……それが「結婚した」とは言うものの、実際はお互いの家族が決めた政略結婚みたいなものだから、あんまり新婚っていう気持ちがわかなくって」

理事長「そうだったの……でもいい人なんでしょう?」

花「どうなのかしら。何しろ出張に次ぐ出張でほとんど顔も合わせていないくらいだから……広いお屋敷も家族がいないと淋しいものなのね」

理事長「あらあら、すっかりブルーな気分みたいねぇ……そういう時は、美味しいものを食べて、お酒を飲んで、ぱーっと浮かれ騒ぐのが一番よ。 ほら、シャンパンでもどう?」ローストビーフを取り分けて、それからテーブルに置いてあるグラスのシャンパンを手渡した……

花「ありがとう……」

理事長「いいのよ♪ 学生の時から、お互い困ったことがあったら何でも相談しあっていた仲じゃない」

花「ええ、そうだったわ」

14: 2022/04/01(金) 01:00:11.08 ID:TaI0ide0.net
…二次会の後…

理事長「はー、おかしかった……花、貴女は楽しめた?」

花「ええ、おかげでとっても楽しかったわ。 まるで当時に戻ったみたい……でも、少し飲み過ぎちゃった///」乾杯の時のシャンパンやワイン、そしておしゃれなカクテルと、つい飲み過ぎてしまった花は頬を火照らせ、あまり履き慣れていないハイヒールのせいで少しよろめいている……

理事長「あら、確かに足元がおぼつかないわね……それじゃあ家まで送るわよ」

花「でも、わざわざ送らせちゃったら悪いし」

理事長「何言ってるの、私と花の仲じゃない。 今さら遠慮なんてしないでちょうだい」

花「ありがと……それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ///」

理事長「ええ♪」

15: 2022/04/01(金) 01:03:25.25 ID:TaI0ide0.net
…葉月邸…

理事長「……じゃあ、私はこれで」門の前まで来ると、花の代わりに持っていたハンドバッグを渡して帰ろうとする……

花「ねえ、せっかくここまで来てくれたんだし……ちょっとだけ上がっていって、おしゃべりでもしない?」

理事長「でももう遅い時間だし、終電がなくなっちゃうから……」

花「大丈夫よ、いざとなったらタクシーでも拾えばいいじゃない。お金は私が出すわ」

理事長「お金のことなら気にしなくたっていいの……ただ、迷惑じゃないかって思って」

花「迷惑だなんて……むしろ大歓迎よ」

理事長「そう? それじゃあせっかくのお誘いだし、ちょっとだけ上がらせてもらおうかしら」

花「本当? 嬉しい……♪」無邪気な笑みを浮かべていそいそと理事長を招き入れる……

16: 2022/04/01(金) 01:06:26.62 ID:TaI0ide0.net
理事長「……それにしても立派なお屋敷ねえ。 でも確かに、ここに一人っきりじゃあ淋しいでしょうね」

花「そうなの……せめて子供がいたらと思うのだけど」

理事長「それか大きなワンちゃんでもいたら、きっとにぎやかでしょうね……っとと」

…磨き上げられた床でスリッパが滑り、酔いもあって大きくよろめいた理事長……バランスを保とうとしたもののたたらを踏み、そのまま花にしがみついてしまう…

花「きゃっ……大丈夫?」

理事長「ええ、なんとか。バレエダンサーみたいな脚の開き具合だったけど」

花「転ばなくて良かったわ……貴女に何かあったらと思うと、私……」

…シャンパンで上気した花の顔がゆっくりと近づき、鮮やかなストロベリーレッドの口紅を引いたみずみずしい唇が迫ってくる……おしゃれな白いドレスからのぞく胸元からはほんのりと甘いパルファム(香水)の香りと、火照った体の熱がかすかに立ちのぼり、綺麗にセットしてあった髪が少し乱れて、垂れ下がった髪の房が理事長の頬をくすぐった…

理事長「ええ、ありがとう……でも大丈夫だから///」

17: 2022/04/01(金) 01:08:09.27 ID:TaI0ide0.net
花「そう、良かった。 ああ、さすがに酔っちゃったみたい……頭がくらくらするの」

理事長「大丈夫?」

花「ううん、あんまり大丈夫じゃないかも……せっかく上がってもらったのに悪いけれど、もう休むことにするわ」

理事長「それがいいわよ、それじゃあ私はそろそろ……」

花「……ごめんなさい、ちょっと寝室まで支えて行ってくれないかしら」

理事長「分かったわ、それじゃあそれが済んだら帰るわね」

花「ええ……♡」

18: 2022/04/01(金) 01:11:30.59 ID:TaI0ide0.net
…寝室…

理事長「はい。到着しましたよ、お姫様」

花「うん、ありがとう……」そう言いつつ、首に回した腕を放そうとしない……ドレスの薄い生地越しにお互いの鼓動と、柔らかな体の感触が伝わってくる……

理事長「もう、腕を放してくれないと帰れないでしょ……///」

花「ねえ……本当にこのまま帰っちゃうの?」

理事長「そうじゃないと明日に差しつかえるし、正直なところ、このまま貴女といると間違いを起こしちゃいそうで……んっ!?」

花「私ね、貴女と間違いを起こしたいの……学生の時、あの屋根裏部屋みたいな部室でしたときみたいに……♡」

理事長「……もう、せっかく我慢しようと思ったのに……花、あなたが悪いんだからね♡」そう言うなり、ベッドに花を押し倒した……

花「あんっ♡」

19: 2022/04/01(金) 01:23:58.25 ID:TaI0ide0.net
理事長「んむっ、ちゅ……あむっ♡」

花「んっ、ちゅぅ……ちゅぷ♡」

理事長「んんっ、んちゅ……っ♡」

…まるでお姫様のような天蓋付きベッドの柔らかいマットレスの上で、お互いに脚を絡ませあって長いキスを交わす理事長と花……花の熱っぽい瞳と濡れた唇、それに理事長のことをぎゅっと抱きしめて離そうとしない火照った体……そのふくよかな胸と硬くなった先端が理事長の胸と触れあい、熱を帯びたふとももがぎゅっと脚を挟んでくる…

花「んんっ、んんぅ……ちゅぅ、ちゅっ♡」

理事長「ぷはぁ……はー……はーっ♡」ようやく唇を離すと、激しく空気を吸い込んだ……

花「……もっと♡」ちゅっ、ちゅる……っ♡

理事長「ん、あふっ……んくぅ……っ♡」

20: 2022/04/01(金) 01:25:05.33 ID:TaI0ide0.net
恋「……と言うことがありまして」

かのん「えっ、ええっ……!?」

恋「それからお母様と理事長はまるで理性のタガが外れたかのようにお互いをむさぼりあい……」

かのん「いや、待って待って! あの理事長が、恋ちゃんのお母さんと!?」

恋「そうです」

22: 2022/04/01(金) 01:47:02.19 ID:TaI0ide0.net
かのん「いや、たしかに仲が良いのは写真を見ても分かったけど……それにしたってどうして……」

恋「ええ、そもそもの始まりはお母様が「学生アイドル部」で活動していた頃の事だったようですが……」

…神宮音楽学校・放課後…

花「ふぅ、疲れた……学生アイドルって楽しいけれど、やっぱり体力が必要ね」練習終わりの汗をタオルで拭いつつ、部の仲間が散らかした机の上のごちゃごちゃに眉をひそめた……

花「まったくもう……誰かしら、こんな所に雑誌なんて散らかして……っ!?」

…机の上に放り出してあった雑誌には「禁断のセカイ」とあり、凜々しい女の子が可愛らしい女の子を抱き寄せ、頬を染め向かい合っているイラストが描かれている……

花「……ちょ、ちょっとだけなら///」左右を見回して人気がないことを確かめると、慎重に雑誌を取り上げた……

花「ごくり……」

…最初は恐る恐るページをめくっていたが、そのうちに目を輝かせ、むさぼるように読み始めた…

花「まぁ、これは……♡」

理事長「花、いるー?」

花「ひゃあっ!?」

理事長「なんだ、いるじゃない……って、どうしたの? 顔が真っ赤じゃない……熱でもあるの?」

花「あ、あわわ……///」

理事長「ほら、額を出して……って、花?」

花「……ん///」恥じらうように体をこわばらせ、目を閉じ、唇を近づけて待っている……

理事長「え……///」まさかの反応に一瞬ためらったが、ごくりと一つ生唾を飲むと、次第に唇を近づける……

花「……ちゅ///」

理事長「んちゅ……///」

23: 2022/04/01(金) 01:53:00.83 ID:TaI0ide0.net
恋「それをきっかけに二人は卒業までの間にすっかり抜き差しならない間柄となってしまい、お母様が結婚した後もお互いに想いを抱き続け……それが単調な生活の中でふくらみ、同窓会の事をきっかけとして一気に燃え上がった、というわけなのです」

かのん「いや、まさかそんな……」

恋「本当ですよ……ちなみに家の玄関では「お帰りなさい。お風呂にする?ご飯にする?それとも私?」と新婚さんのようなやりとりをし……」

かのん「うん、まぁ定番だけどそれはやりたいよね……私だってちぃちゃんとやりたいし」

恋「かのんさんたちがチビから逃げ回っていた廊下ではいちゃいちゃしながらキスをして……」

かのん「まぁそういう仲ならそうだろうね」

恋「かのんさんが作曲をするといいながらゴロゴロしていたベッドでは毎晩レOえOちに励み……」

かのん「え゛っ゛……!?」

恋「ええ、さらにあろうことか子供まで……」

かのん「子供!? ……そ、それが恋ちゃんだったわけ?」

恋「いいえ、わたくしよりも先に女の子がもう一人……」

24: 2022/04/01(金) 01:53:45.90 ID:TaI0ide0.net
かのん「それじゃあ恋ちゃんのお姉ちゃん!? いやでも、恋ちゃんの家にお姉ちゃんなんていなかったけど……」

恋「いえ……実はサヤさんが私のお姉ちゃんです」

かのん「え゛え゛っ!?」

恋「……かのんさんはおかしいと思いませんでしたか? 私がいつもサヤさんのことを「サヤさん」としか呼ばないことを」

25: 2022/04/01(金) 01:54:24.64 ID:TaI0ide0.net
かのん「い、言われてみれば確かに……」

恋「あれはサヤさんの名字が私と同じであることを知られないためだったのです……それと以前、私の家でサヤさんに「もうあなたを雇っておけなくなったので……」というやり取りがあったのを覚えていますか?」

かのん「あったね。でもサヤさんは退職金もお給料もいらないから、ずっと一緒にいさせてほしいって……」

恋「ええ……あれはかのんさんたちにわたくしとお姉ちゃんの関係を疑われないために打ったお芝居です」

27: 2022/04/01(金) 01:55:24.99 ID:TaI0ide0.net
かのん「そ、そうだったんだ……でも確かに考えてみればつじつまが合うよね。 だって暮らし向きが厳しいはずの恋ちゃん家でメイドさんが雇っておけるはずないし」

恋「その通りです。 とにもかくにも、お母様と理事長は爛れた関係を続けてしまい、あまつさえ二人目である私まで……」

かのん「なんか本当に「禁断のセカイ」だね……」

恋「まったくです……おまけにお母様は私が幼い頃、理事長とあまりにも盛り上がりすぎて、そのまま本当に昇天してしまったのです」

かのん「うわぁ……それはいくらなんでもあんまりなんじゃない?」

恋「はい。 当然ながら事情を知ったお父様は激怒され、手切れ金の代わりとして屋敷は好きにしていいが、今後一切お金を出すようなことはしない……理事長にそう告げたと聞いております」

28: 2022/04/01(金) 01:56:17.47 ID:TaI0ide0.net
かのん「そりゃそうだよ。いくらお互いに好きだったからって、仮にも結婚した人から相手を取っちゃうなんて」

恋「そうですね……その結果、理事長とお母様の間違いの元となった学生アイドル部の思い出はいずれもしまい込まれ、幼かったわたくしはスクールアイドルを嫌うよう誤った記憶を刷りこまれたのです。また理事長も私が好奇の目にさらされたり詮索されたりしないよう、私とサヤさんの親である事はひた隠しにして……私の事をよそよそしい態度で「葉月さん」としか呼ばないのもそのためなんです」

かのん「なるほど……それで恋ちゃんもスクールアイドルに対して批判的だったんだね」

恋「ええ……あの時は知らなかったとはいえ、厳しい言葉を投げかけてしまって申し訳ありません」

かのん「ううん、そんな事情があったんじゃ仕方ないよ……」

29: 2022/04/01(金) 01:56:57.58 ID:TaI0ide0.net
恋「そう言ってもらえると助かります……そして私は子供の頃から人一倍お堅い人間になるよう教育されてきました」

かのん「うんうん、確かに堅物だったよね」

恋「ええ。しかしながらわたくしはどこか心の奥底で、妙なモヤモヤを抱えていました……そして、かのんさんたちがあの思い出のアルバムを見つけ出してくれたおかげで全てが変わったのです」

かのん「え、ちょっと待って……」

30: 2022/04/01(金) 01:57:34.80 ID:TaI0ide0.net
恋「あのアルバムに写っていたお母様と理事長の満面の笑みを見て、わたくしは感動のあまり涙しました……その後、わたくしはもっとお母様の思い出を見つけたくて、自分でもあちこち探してみたのですよ」

かのん「……なんかいやな予感」

恋「そしてついに見つけたのです、お母様と理事長の「禁断のセカイ」が詰め込まれた思い出の箱を……!」

かのん「やっぱり……」

31: 2022/04/01(金) 02:00:05.01 ID:TaI0ide0.net
恋「最初に見つけてアルバムのページをめくったときは、あまりのことに頭の神経がショートするかと思いました……しかし人間というのは適応するものですね、すぐ慣れました」

かのん「そんなのは慣れちゃだめだよ……」

恋「そして私ははっきりと理解したのです。お母様が言っていた「恋ちゃん、学生アイドルって楽しいわよ♡」というあの言葉の意味が……」

かのん「あー、私そろそろ練習に戻らなくちゃ……」

32: 2022/04/01(金) 02:01:28.75 ID:TaI0ide0.net
恋「そう「練習」といえば、ダンスの練習をしている時なんて……皆さんが魅惑的すぎて誘惑まみれなんですよ」

かのん「……」

恋「春はクゥクゥさん……白く滑らかなうなじの、少し髪をかき上げて汗を拭っているところ、紫だちたる髪の細く張りついたところなどは、もうホイップクリームみたいにぺろぺろしたいです」

かのん「なんか始まった……」

恋「夏は千砂都さん……月のようにまんまるなお団子も可愛いですが、たまに髪をほどいているときの大人びた雰囲気……それに短いウェアからのぞく引き締まったお腹と、わずかにみえるおへそ、ショートパンツから伸びた脚もいいものです」

かのん「そうそう、ちぃちゃんのお腹ってきゅって引き締まってて……いや、おかしいよ」

恋「秋はすみれさん……あの自己主張の激しい体つきに、サイハイソックスからはちきれそうなふともも……残暑で汗のしずくが飛び散ったときなど、あの滑らかな表面を流れていきそうで、本当にギャラクシーです」

かのん「まぁ、ちょっと分かる……」

恋「そして冬はかのんさん。黒タイツに包まれたかのんさんの脚の、そのすべすべなライン……踊っているときに後ろから見ると分かる、意外としっかりしたヒップの張り……」

かのん「……まさかそんな風に見られているなんて思わなかったけどね」

33: 2022/04/01(金) 02:04:48.74 ID:TaI0ide0.net
恋「それにしてもかのんさん……かのんさんはとても素敵です。そのつやつやしたオレンジ色の髪に、きれいな瞳、唇も艶めいていて……そんなに可愛いお顔をして、わたくしを惑わせるつもりですか」

かのん「い、いや、別にそういうつもりじゃ……」

恋「……あまつさえ他の誰もいないときに生徒会室までやって来て……これではまるで誘っているのと変わりないではありませんか♡」

かのん「いや、誘ってないよ……誘ってないから!」

恋「……まったく、かのんさんは自分が可愛くて、おまけに誘い受けのネコに見えるという自覚がたりません……今後は気を付けるようにわたくしが手取り足取り教えて差し上げます♡」椅子から立ち上がると机を回ってきて、くいと親指でかのんのあごを押し上げて顔を上向かせ、机に体を押しつける……

かのん「あ、あ……っ///」のしかかってくるように上からのぞき込んでくる恋の瞳を見て、ごくりと生唾を飲み込む……

恋「ふふっ、なーんて。 びっくりしたでしょう、エイプリルフー……」

かのん「し、失礼しましたっ!」振りほどくようにして生徒会室を飛び出していった……

恋「あっ、かのんさん……っ!」

34: 2022/04/01(金) 02:07:10.29 ID:TaI0ide0.net
…廊下…

かのん「……まさか理事長と恋ちゃんのお母さんがねぇ///」

可可「かのん、理事長がどうかしたのデスカ?」後ろからやってきて、ひょいと肩越しに顔を出した……

かのん「あ、クゥクゥちゃん……いや、実はかくかくしかじかで……」

可可「アイヤー……まさかレンレンにそんな過去があったトハ……」

かのん「だよねぇ……」

千砂都「うぃっすー♪ 恋ちゃんがどうかしたの?」

可可「あ、千砂都……実はかのんがレンレンから聞いた話なのデスガ……」

千砂都「……はぁー、それで恋ちゃんってば私がダンスの練習をしてるときにあんなに挙動不審だったんだ……あの時は女の子が好きなのにまだ自分の気持ちに気付いてなかったんだね、なんか納得」

すみれ「誰が挙動不審なの?」

千砂都「あ、すみれちゃん……いや、実はね……」

すみれ「へぇ……まぁあるったらあるでしょうね、そういうこと。 ショウビジネスの世界でも時々聞くもの」

35: 2022/04/01(金) 02:08:56.01 ID:TaI0ide0.net
女生徒「すみれちゃん、何をショウビジネスの世界で時々聞くの?」

すみれ「あぁ……いや、まぁ女の子同士で関係を持っちゃって、あまつさえ子供まで……って話よ」

女生徒「えー、なにそれなにそれ! さっすがすみれちゃん、芸能界にいるとそんな話まで見聞きしちゃうんだ!?」

すみれ「まぁね、ショウビジネスの世界にいると色んな話を聞くものよ。例えばね……」

女生徒「うわぁ、そんなことがあったんだ……せっかくだからSNSで友達にも教えちゃおう///」

36: 2022/04/01(金) 02:10:05.00 ID:TaI0ide0.net
恋「はぁ……はぁ……かのんさんは走るのが速いですね……」

女生徒B「あっ、葉月さん……///」

恋「こんにちは……あの、かのんさんを見ませんでしたか?」

女生徒B「あっ、えっと……澁谷さんなら向こうに走っていったけど///」

恋「そうですか、ありがとうございます」

女生徒B「う、うん……///」

37: 2022/04/01(金) 02:15:31.58 ID:TaI0ide0.net
女教師「……澁谷さんなら部室の方に駆けていったわよ……ところで葉月さん、音楽室でピアノの練習でもしていかない?」

恋「申し訳ありません、少し急いでおりますので」

女教師「そう、それじゃあ時間があるときに……ね♡」

恋「……どうも先ほどから生徒や先生がわたくしに接してくる時の様子がおかしいですね。一体どうしたと言うのでしょう?」

校内放送「葉月さん、葉月恋さん。大至急理事長室まで来て下さい」

恋「ああ、こんな時に限って……仕方ありません、かのんさんには後でエイプリルフールだったことを伝えるとしましょう」

38: 2022/04/01(金) 02:33:05.25 ID:TaI0ide0.net
…理事長室…

恋「失礼します」

理事長「葉月さん……これは一体どういう事ですか?」

恋「何がですか?」

理事長「このSNSの画面を見てごらんなさい」そういって理事長が差し出したスマホの画面にはコメントが飛び交っている……

恋「え……そんな、あわわ……」

理事長「葉月さん、どういうつもりです?」

恋「いえ、これはその……エイプリルフールでちょっと嘘をついたら、思っていたよりも話が大きくなってしまって……」

39: 2022/04/01(金) 02:35:08.84 ID:TaI0ide0.net
理事長「……まったく、これでは今まで隠しておいた意味がなくなっちゃうじゃない」

恋「えっ?」

理事長「本当にあなたは困った子ね……恋ちゃん」

恋「れ、恋ちゃん?」

理事長「でも良い機会だわ、これでやっと堂々と母娘であることを名乗れるもの……サヤちゃんにも苦労をかけたし、これからは三人で仲良く暮らしましょうね」

恋「……あの、エイプリルフールですか?」

理事長「まさか、ノンフィクションよ……恋ちゃん♡」



おしまい

40: 2022/04/01(金) 02:41:01.37 ID:TaI0ide0.net
あとがき

エイプリルフールと、ことわざの「嘘から出たまこと」から思いついたもので、花×理事長はあまり見かけないので書いてみました。今後も機会があればマイナーカプで書いてみたいと思います。

引用元: 恋「ずっとだまっていましたが……実はわたくし、理事長とお母様の娘なのです」かのん「ええっ!?」