1: 2008/11/04(火) 19:27:29.56 ID:mmLhqRTc0
キョン「何言ってるんだよ。ハルヒ、ドア越しに居るんだろ?

キョン「早く部室の鍵を開けてくれ。じゃないと入れないだろ?」

ドンドン!

ハルヒ「合言葉がないと入れません」

キョン「なんだよそれは?」

ハルヒ「部室に入るパスワードです。それを言わない限り部室には入れません」

4: 2008/11/04(火) 19:30:22.68 ID:mmLhqRTc0
キョン「悪ふざけなのか?」

ハルヒ「違います」

キョン「く・・・」

キョン「わかったよ、今当ててやるからな・・・」

5: 2008/11/04(火) 19:32:36.52 ID:mmLhqRTc0
キョン「ええっとだな・・・『SOS』!」

ハルヒ「違います」

キョン「そりゃそうだな。単純すぎる・・・」

キョン「じゃあ『宇宙人』!」

ハルヒ「・・・」

キョン「『未来人』!」

ハルヒ「・・・」

キョン「『異世界人』!」

ハルヒ「・・・」

9: 2008/11/04(火) 19:35:43.39 ID:mmLhqRTc0
ハルヒ「全部違います」

キョン「くそ・・・違うか」

キョン「じゃあこれならどうだ!?

キョン「『涼宮ハルヒ』!」

ハルヒ「ぶっぶー」

キョン「おかしいな、お前のことだから自分を誇示するようなパスワードかと思ったんだが・・・」

15: 2008/11/04(火) 19:39:15.69 ID:mmLhqRTc0
みくる「あれキョン君、こんなところでどうしたんですか?」

キョン「あ、朝比奈さん・・・。実はハルヒの奴が合言葉を言わないとこの部屋に入れてくれないみたいで」

みくる「え、そんな・・・」

キョン「朝比奈さんも何か心当たりあるもの挙げてくれませんか?」

みくる「う~ん・・・そういわれてもぉ・・・」

16: 2008/11/04(火) 19:42:47.53 ID:mmLhqRTc0
みくる「あのぉ~もしかして『恋のミクル伝説』じゃありませんか?」

キョン「おお、それならありうる・・・。なにせあの映画はハルヒのお気に入りですからね」

キョン「おい、どう何だハルヒ!?」

ハルヒ「残念ながら大ハズレです」

キョン「くぅ・・・段々腹立ってきたぞ・・・」

18: 2008/11/04(火) 20:00:44.73 ID:mmLhqRTc0
ハルヒ「合言葉がないと入室は許可できません」

キョン「ぬぬ・・・」

キョン「・・・」

キョン「お!こんなのはどうだハルヒ?」

キョン「『ハルヒ氏ね』!!」

みくる「キョ、キョン君・・・!?」

21: 2008/11/04(火) 20:04:55.09 ID:mmLhqRTc0
ハルヒ「・・・」

ハルヒ「ち、違います・・・」

キョン「そうか。じゃあ『ハルヒは万年処O』!!」

ハルヒ「くく・・・違います!」

キョン「そんじゃこれだな?『ブスハルヒ』!!!!」

25: 2008/11/04(火) 20:10:35.06 ID:mmLhqRTc0
みくる「あ、あ、あ、あのぉ~・・・キョン君。それはちょっとひどいんじゃ・・・?」

キョン「何言ってるんですか?合言葉を試してるだけですよ、朝比奈さん」

みくる「でも涼宮さんの暴言にしか聞こえないですよぉ・・・」

キョン「いいじゃないですか~。スカッとしますよ!」

キョン「朝比奈さんもどうです?今までのハルヒの積年の恨みを晴らしてみては?」

みくる「・・・」

27: 2008/11/04(火) 20:14:21.53 ID:mmLhqRTc0
みくる「じゃあ・・・」

みくる「す、す・・・」

キョン「さあ、勇気を出して!合言葉かもしれないんですから!」

みくる「『涼宮さんの変態』!!」

キョン「おおおー!」

キョン「どうだい、ハルヒ君?」

ハルヒ「・・・・・・ハズレ」

キョン「だそうみたいです、朝比奈さん。そしたらもっと言わなきゃいけないですね」

みくる「あは・・・あはは、そうですねぇ~!!」

33: 2008/11/04(火) 20:53:58.66 ID:xjClQ+xC0
朝比奈「『涼宮さんの―――』」

朝比奈さんは日ごろの鬱憤を晴らすかの如く、今の状況を楽しんでいる。
そこに古泉が合流する。

古泉「どうしたんですか、みなさん。」

古泉は少しニヤけた顔で俺達に聞いた。
俺は古泉に今の状況と今ならハルヒに何でも言えるという事を伝え、古泉も何か言うよう勧めた。
古泉「後が怖い、やめておきましょう。」

そう言って古泉は手に鞄をぶら下げたまま足早にどこかへ行ってしまった。
その後も朝比奈さんと俺のハルヒに対する悪口攻撃は続いた。
そして一通り言い終え、少しの沈黙の後、ドアの向こうから小さな声が漏れ出してきた。

ハルヒ「じゃあヒントをあげるわ。合言葉は今私が手に持っているものよ。」

手に持っているものか・・・湯のみかなんかか?まあハルヒもそろそろ可愛そうになってきたし、やめてやるか。
キョン「もういいから開け―――」 しかしその言葉は途中でかき消された。
ハルヒ「チャンスは一回よ。」 あまりの真剣な声に少し驚く。
キョン「えっと・・・。じゃあ湯のみ・・・か?」
答えた後、ドアの向こうから聞こえたのはドサッという鈍い音。少ししてドアが開かれる。
そこには長門が立っていた。キョン「おい、いたなら・・・。」
言葉を失う。足元にはハルヒが血まみれの手にカッターナイフを持って倒れていた。
キョン「おい、長門、なぜ止めなかった!!」声を荒げる。朝比奈さんは半狂乱でハルヒを抱きかかえた。
長門は微笑を浮かべながら言った。
「私の役目は観測だから。」 


36: 2008/11/04(火) 21:47:12.17 ID:eXjK7tLO0
その日の夜だった。
涼宮さんが事切れたという勃然とした報せが、僕の元へと舞い込んできたのは。
携帯電話を握りしめ、機関からの通達を呆然と受けていた僕は、
突き付けられた事実を現実と認め切れず、相槌すら打てないままに黙聴していた。

「では、今後の動向に注意を払って行動してくれ。
 我々には彼女が倒れた今、次に何が起こるかの予測すらできない。
 君も今までと同じくSOS団員としての役目を貫き、事態の把握と観察に加わってくれ」

あっけなく切れた通信。
そして僕は一人、自室に取り残された。

何故だ。
何故、涼宮さんは突然にして命を絶ってしまわれたんだ。

37: 2008/11/04(火) 21:57:59.78 ID:eXjK7tLO0
秋晴れに伴う心地の良い涼風。
などと余裕ある心持でいられたのは昨日までの話で、
放課となりSOS団室へと向かう僕の心境は降り注ぐ秋雨のように荒れ、
その勢いを誇示するかのように扉を開くなり、同時に一声を叩き付けた。

「昨日僕が帰宅した後、涼宮さんに何があったのか御聞かせ願えますか?」

辛うじて演技を保つ。
下地を出してはいけないというこれまでに学んできた習癖によって、なんとかそれが可能な状態。
その逸った心を抑えつける。
いらぬ動揺は事実を歪曲させてしまう。
今は情報収集が先だ。

「まあ、座れよ」

彼がぽつりと呟き、僕は団長が不在となった室内で自身の指定席へと腰を据えた。
ぎらつく眼光を、極力抑えるよう自制に努めながら。

39: 2008/11/04(火) 22:07:52.34 ID:eXjK7tLO0
終始、俯き加減に語る彼から、ことの顛末を伺った。
話の最中、朝比奈さんは無言のまま椅子に腰掛けており、
長門さんは無風の旗といったような表情を保ったまま。
その彼女に、いいようのない怒りを抱きそうになる。

観察、だって?
顎しゃくり一寸で助けられる立場と力を持ちながら、人ひとりが氏にゆく様を、観察だと?

「落ち着け古泉」

僕の視線を遮るように、彼が割り入って来た。
慌てて息を吐く。
平静を保たなくては。

「ともかく、そういうことだ」

そういうことだ?
自分達が何をしたのかを自覚出来ているのか問い詰めてやりたい。
しかし出来ない。許されない。
僕に課せられている今現在の役目は、事態の情報を収集することだからだ。
だから爪が食い込むほどに握り締め、震えている拳はポケットの中に収めておくべきなのだ。

41: 2008/11/04(火) 22:17:16.07 ID:eXjK7tLO0
彼曰く、

「合い言葉の問答が始まるより以前に、目だったサインは感じられなかった」

それ故に痛烈な言葉を浴びせ掛けてしまい、それが引き金になったのかもしれない、と。
ならば現場の内で見届けていた長門さんに訊ねるのが当然の流れというものであり、
僕も即座に訊ねてみたわけであるが、

「涼宮ハルヒは自身の手に持ったカッターナイフで頸動脈を寸断。
 氏因は大量出血に伴う失血性ショック氏」

ただ物理な状況だけを監視カメラのような正確さで描写していき、
あとは「もう用は済んだ?」と言わんばかりに無表情。
それにより僕は、再び膨れあがりそうになった感情をまたも抑え付けなければならなくなった。

「僕は所用がありますので」

努めて静かに告げ、椅子から重い腰を上げる。
所用などない。むしろ今の僕の役目を言えば、この場に残り聞き込みを行うべきが本来の所用である。
けれども僕は、その場に留まることが出来なかった。

あのままいけば、必ず誰かに当たり散らしていたはずだからだ。

43: 2008/11/04(火) 22:25:17.97 ID:eXjK7tLO0
放課となってから幾許かの時が流れた学食には人の流れがない。
部活動に従事しているものはそれぞれの目的を元に活動場所へと赴き、
そういった志のない帰宅部の生徒達は足早に帰宅し、
本日残された時間を満喫すべく画策している時間帯であるからだ。
そのようななかで僕がこの場を選んだのは、一人心を静める為と、
それを助ける役割を担う温かなコーヒーを自動販売機で買い求める為だ。

「どうしてこんなことに……」

自動販売機に訊ねたところで答えなど返ってくる筈もなく、
代わりに送られたのは無機的に缶を吐きだす味気のない一音だった。
缶コーヒーを拾い上げ、一人きりで近場の椅子に腰掛ける。
そして僕は、故人となってしまった意中の相手へと想いを馳せていった。

46: 2008/11/04(火) 22:35:13.91 ID:eXjK7tLO0
思えば彼女は、僕と似ていた。
与えられた役目を守るため、ただ只管に笑顔と気遣いを担わされていた僕。
逆に、周りのものに全ての役目を担わせ、ただ只管に笑顔を振りまく彼女。

立場は逆。けれども似ていた。
僕は気付いていた。
彼女が、自身に課せられた役目を掴み掛けていたことに。
そしていつしか、今まで自身が行ってきた破天荒な振る舞いが、
これからも続けていかねばならない役目へと、摩り替わり始めていたことに。
言い換えればSOS団の存在する意味と、そこに集まった形ばかりの仲間達の本質、正体に、
彼女は勘付いていたのだ。
このことについては演技を役目とされていた僕だからこそ悟れた一端なのかもしれない。
だからこそ彼女の笑顔に、一滴の翳りが入っていたことも。
無論、僕の思い違いという可能性は否めないが。

そう。
僕と彼女の立場は逆だった。
なのに、彼女と僕の本質的な部分は相似していたともいえる。
いや、少なくとも僕はそう感じていた。

だからこそ僕は、彼女に惹かれた。

48: 2008/11/04(火) 22:44:18.07 ID:eXjK7tLO0
涼宮さんに、一体何があったんだ。

役目の重さに耐えきれず、自ら潰れてしまったのか?
ならば僕や彼に相談するか、何かしらのサインを示してくれても良かったはずのに。

或いはそれが出来なかった?
だとすればSOS団と自身の立場という壁に、彼女が思い悩んでしまったのか?
しかしそれにしてはあまりに急展開過ぎる。
なにが起こるにしても、予兆となるものが現れるのが世の常というものだ。
特に涼宮さんに至っては、世界に変異が訪れる前に、閉鎖空間の出現量が増えるようにね。
だがそれすらもなかった。
だからこそ僕は彼女を守り通せなかった。
危険を感知することすらできなかった。
副団長という立場にありながらだ。

「くそっ」

失態だ。
缶を床に叩きつけたところでどうにもならない。
ただ、渇いた音が残響を呈すだけ。
わかっている。
なのにそうでもしなきゃ、僕を保てそうにない。

50: 2008/11/04(火) 22:55:42.41 ID:eXjK7tLO0
殺されたも同然だ。
近くにいながらにして微塵の手立てすらも打たなかったSOS団員達に。
もちろんそこには僕も含まれている。
けれどもこの場合、その重科を背負うべきなのは、
長門さんや朝比奈さん達ではないのだろうか。

長門さんはあらゆる手を用いて止めさせることは可能だった。
なのに見捨てた。
朝比奈さんにしても同様、今の事象を既知としているのであれば、それは可能だったはず。
なのに見頃した。

ほら、殺されたも同然じゃあないか。

涼宮さんは殺された。
苦楽を共にしてきた仲間だと僕が勝手に思い込んでいた、SOS団員達に。

54: 2008/11/04(火) 23:05:56.19 ID:eXjK7tLO0
床に転がり寝転がっていたコーヒー缶を、怒りと共に蹴り飛ばす。
カラランと呻くような音で舞ったそれが壁を跳ね、床を跳ね、
もがくように転がって離れた位置にある学食テーブルの下へと逃げて行った。
僕はそれを追いこむように歩み寄っていく。

蹴り足りない。
僕の気持はその程度では収まらない。
テーブルが立ちふさがる。
邪魔だ。
投げ捨てるように強引にどかす。

そして露わになった缶。
ところどころが窪み、許しを乞うように痛々しいその様。
それを目にしていると、益々怒りが湧いてくる。

またも感情露わに、僕が缶を蹴り飛ばしてやろうと睨みつけた時……。
ふと、缶が転がった。
コ口リコ口リと何かの力で導かれるように進んでいく。

何も力は与えていない筈なのにどうして?
怪訝に思いながらも誘われるようにそれを目で追って行った先。
そこにそれがあった。

朱色に染まったカッターナイフ。
それが忽然と、ただ寂しそうに落ちていた。

57: 2008/11/04(火) 23:46:14.10 ID:eXjK7tLO0
天啓を受けた、とはこういう場合を指すのだろうか。
僕がこれに行き当たるということが定められていたかのように、
或いは誰かの意志で僕がここへと導かれたかのように、
とかく僕は、これを拾い上げなければならなかったのだ。

全ては必然だ。

僕はカッターナイフを壁際の暗がりから救い出し、
窓辺から射し込んでくる西日へと透かしあててみた。
とても綺麗で魅力的だ。
赤に濡れている刃が雲一つない秋空からの光によって息衝き、
ゆえに生前の彼女を暗示するほどの生命力を醸し出し、
それを眺めているだけで僕の心が躍動していくような錯覚を抱かせるほどに。

涼宮さんは、まだ居てくれたのか。
僕に別れ告げる為に、形を変えてしまえどこの場で伏在してくれていたのだ。
きっと、僕だけに見つけ出して貰う為に。
僕は袖をまくり、左手首の内に刃を滑らせた。
熱さにも似た心地よい痛みのあと、濡れた刃と同色の血筋が僕の手首に浮かび、
悠々と血玉を作りあげてから、やがて床へと垂れ落ちていった。

「あとは、僕に任せてください」

引き継がなければ。彼女の意志を。
彼女が成しえなかった、彼女の役目を。
もう彼女は口を開くことができないけれど、これは僕と彼女、二人だけの団長交代式なのだ。
つまり、これから僕が何をしようとも。それは始めから、彼女の意志によって定められていたことなのだ。

全ては、必然だ。

68: 2008/11/05(水) 02:47:03.85 ID:fFoKhnFJ0
それから数日後のことだ。
暫く姿をみせなかった古泉の野郎が、
団室で茶を啜っていた俺の前へと爽やか笑顔を携えつつ現れ、
加えて突拍子もない提案を放ってきたのは。
奴はお決まりの挨拶の後、こう言ったのだ。

「涼宮さんへの追悼の意も込めて、週末の連休は我々SOS団員総出でツアーへと赴きましょう。
 生前の涼宮さんが兼ねてから計画していた、あの渓谷の館へとね」

真面目一徹な表情で語る古泉を見て、俺は思わず苦笑交じりに返したね。

「久方ぶりに顔を見せたかと思えば、なんだそりゃ。
 どうせ孤島、雪山に続くミステリーツアー第三弾という腹積もりなのだろう?」
「ええ、その通り。涼宮さんが計画半ばにして倒れられた今、
 彼女の念願を成就させるのは副団長である僕の役目ともいうもの。なあに、ご心配なさらないでください。
 今回は僕の方も数々の趣向を凝らしておりますので、
 以前のものとは比べものにならないほどの恐怖と戦慄を提供させて頂きますよ」

数週間前、古泉が用意したパンフレット片手にハルヒが満面の笑みで語っていたが、
その目的の地とはとある山奥、切り立った崖に囲まれた盆地に存在している古びた館のことで、
辺りには弟切草が咲き乱れているという素晴らしいシチュエーションだとのことだ。
ちなみに弟切草の花言葉は復讐だとハルヒが自信気に付けたしていたっけな。

「如何でしょう?」

古泉がずいと押してくる。

69: 2008/11/05(水) 02:51:04.57 ID:fFoKhnFJ0
さてどうしたものか。
俺はというと、そろそろ古泉のことが気の毒になり始めていた。
こいつは騙すことに長けてはいても、案外騙されることに関しては疎いのかもしれない。
その気後れから生じた迷いで俺が長門のほうを窺ってみると、
長門もまた微妙な迷いを周囲の空気の流れに介して俺へと訴え掛け、
朝比奈さんもお茶がなみなみと入った湯呑みを落ち着きなく揺らしていることから、俺と同じ胸中にあることを悟った。
そうか、皆もそう思うか。
ならば潮時だ、古泉に告げてやろう。

「古泉、一つ訊ねてもいいか?」
「なんでしょうか」
「犯人の目星は付いたのか?」

それまで微笑みという成分をコピーアンドペーストしていた古泉の表情が、
一転、豆鉄砲でも食らったというものへと変貌した。

「それは一体、どのような意味で?」
「ハルヒをやった奴だよ。というよりそもそも、今回一連の騒動の正体についてだ」

古泉が石と化した。
おい、半端な笑顔が気持ち悪いぞ。

「まさか、これは……」

古泉がギチギチとした様子で口を開きかけた時、

「おっ待たせー!」

元凶のお出ましとなった訳だ。

70: 2008/11/05(水) 02:58:25.12 ID:fFoKhnFJ0
「って、古泉くん? 久しぶりじゃないの!」

言うなり、ハルヒが古泉の背中を叩く叩く。
そりゃもう日向で棚引く布団のようにだ。
古泉、絶句。嗚呼、悲しいかな純朴とは。

「探偵役の古泉くんがあまりにも行動してくれないから、
 流石の私も飽きて普通に学校へと通っちゃってたわよ」

ハルヒは腰に手を当てて朝比奈さんへとお茶の提供を促し終わると、
指定席へとつくなり、にんまりとした笑みを古泉へと注ぎ始めた。
ようやくにして事態を把握できたのだろう、古泉が呟いた。

「ということは、これ自体がミステリーの寸劇だったと?」
「その通り! だって、あたし達がいつも騙される側ばかりじゃつまらないし、
 逆に古泉くんも騙してばかりじゃ楽しめないでしょう?」

古泉のために補足しておくと、裏では長門が暗躍していたらしい。
俺が知る由もないが、ハルヒの思惑通りに事を進める為には、それなりの撹乱は施していた筈であろう。

「ハハハ……」

かすれ声で呻いた古泉は次のように締めくくった。

「ミステリーツアーの計画も、どうやら一から練り直しですね……」

あ、これお返ししておきます。
古泉はそう言い残し、朱に染まったカッターナイフを身代わりとばかりに置くと、早々に部室から退場していった。
その力ない背中を見送っていた俺は、思い詰めた古泉が取り返しの付かない行動に出なくて良かったのかもな、
などと朝比奈さんプレゼンツの玉露を啜りつつ、極めて他人事のように溜息をついていた。

71: 2008/11/05(水) 03:02:41.94 ID:fFoKhnFJ0
おわり

投げっ放しのバッドエンドでは古泉に気の毒だということで一応救済
支援してもらったのにすまんかった
そいじゃおやすみ

72: 2008/11/05(水) 03:08:56.65 ID:eGCvwN2h0
うん。こっちの方がいいなw
あとやっぱブランクきついな。うん。突っ込むのやめとくよ

73: 2008/11/05(水) 03:09:26.43 ID:NingErxN0
面白かったぞ

引用元: ハルヒ「合言葉をどうぞ」