1: 2013/11/21(木) 20:40:28 ID:DRRcoWqQ

8: 2013/12/01(日) 22:39:38 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


翌日の朝

通学路


     テク テク…

比企谷「…………」

比企谷(……くそっ)

比企谷(どう考えても……この文面)

比企谷(犯人からと考えるのが自然だ)

比企谷(…………)

比企谷(どうしてだ?)

比企谷(どうして俺の住所がわかる?)

比企谷(どうして俺が、俺達が、救出活動していると)

比企谷(知っている……!?)

9: 2013/12/01(日) 22:41:37 ID:.6wSgO8Y

比企谷(…………)

比企谷(俺の考えじゃ身近に犯人が居るとしか思えないが……)

比企谷(だとしても……誰だ?)

比企谷(…………)

比企谷(……花村達の中の誰かか?)

比企谷(確かにペルソナや【マヨナカテレビ】、そして、俺の住所を知っている)

比企谷(だが……だとしても、やはり動機が全くわからない)

比企谷(山野アナや小西早紀をあいつらが頃しても何の得にもならん……)

比企谷(…………)

10: 2013/12/01(日) 22:42:47 ID:.6wSgO8Y

八十神高校・校門付近


比企谷「…………」


??「……おはようございます」


比企谷「うわぁ!?」

白鐘「えっ!?」

白鐘「す、すみません……驚かせるつもりじゃなかったんですが」

比企谷「し、白鐘……か」 フウ…

比企谷「すまん……少し考え事をしててな」

白鐘「そうでしたか」

11: 2013/12/01(日) 22:43:55 ID:.6wSgO8Y

里中「おはよう! 比企谷くん!」

天城「おはよう」

雪ノ下「……おはよう」

花村「よう! おはよう、比企谷」

花村「どうした? こんな所で?」

比企谷「いや、何でもない」

白鐘「おはようございます、先輩方」

里中「ああ、白鐘くん。 おはよう」

天城「あれ? 白鐘くん、男の子の格好のままなの?」

白鐘「……迷ったんですけどね」

白鐘「もう周知の事実になっていますが」

白鐘「いきなりガラリと変わるのは、やっぱり難しいので……」

天城「そうだよね」

12: 2013/12/01(日) 22:44:55 ID:.6wSgO8Y

比企谷「まあ、スカート姿もいつか見たい気もするがな」

花村「だな。 可愛い顔してるし♪」

白鐘「~~っ」///

雪ノ下「その辺りにしておきなさい、工口ザルコンビ」

花村「……何か、今日の雪ノ下さん いつも以上にキツイな」

比企谷「この程度、想定の範囲内だ」

雪ノ下「まったく……」


里中(意外な伏兵だもんね……)

天城(由比ヶ浜さんの反応も見たいなぁ……)

13: 2013/12/01(日) 22:46:23 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


放課後

屋上


白鐘「お待たせしました、比企谷先輩」

比企谷「いや。 こっちこそ急に呼び出してすまん」

白鐘「それで、僕に話したい事って何でしょう?」///

比企谷「……これを見てくれ」つ(手紙)

白鐘「手紙……ですか?」

     ガサ ガサ…

白鐘「!? こ、これは!?」

比企谷「昨日、俺の住処の郵便受けに入っていた」

比企谷「どう思う?」

白鐘「…………」

14: 2013/12/01(日) 22:47:33 ID:.6wSgO8Y

白鐘「犯人からの警告文……と見るのが妥当でしょう」

比企谷「だよな」

比企谷「正直、背筋が寒くなったが……お前に頼みたい事があってな」

白鐘「頼み?」

比企谷「鑑識作業だ」

比企谷「警察を頼れない以上、お前のツテを頼りたい」

白鐘「なる程……そういう事ですか」

白鐘「確かに指紋とか調べておきたいですね」

白鐘「わかりました。 お爺さまに相談してみます」

比企谷「頼む」

15: 2013/12/01(日) 22:49:37 ID:.6wSgO8Y

比企谷「それから、この事はみんなに内緒にしておいてくれ」

白鐘「……え?」

白鐘「まさか……先輩方の中に犯人が居るとでも?」

比企谷「…………」

白鐘「…………」

白鐘「……そうですね。 確かに状況的には一番考えられる可能性です」

白鐘「しかし」

白鐘「僕はむしろ、オープンにすべきだと思います」

比企谷「……何故だ?」

白鐘「まず、この手紙を送ってきた犯人の心理状態」

白鐘「一見、高みから見下ろすかの様に警告していますが」

白鐘「僕は逆に、みなさんの活動が犯人を確実に追い詰めているから」

白鐘「この様な手段に出たのではないか?と思うからです」

比企谷「…………」

16: 2013/12/01(日) 22:51:21 ID:.6wSgO8Y

白鐘「言ってみれば、犯人は焦りを感じている」

白鐘「オープンにする事で、さらに犯人は苛立ちを募らせ」

白鐘「とんでもないボロを出すかもしれません」

比企谷「…………」

白鐘「それともう一つ」

白鐘「仲間内で、特に事件に関しての隠し事は良くないですよ」

比企谷「……は?」

白鐘「仮にこのまま秘密にして、それが突然露見した時」

白鐘「僕と比企谷先輩の信頼は大きく失墜するでしょう」

白鐘「そういったリスクを孕む事になります」

比企谷「……なる程」

比企谷「俺たちの中で疑心暗鬼になるのは避けたいな」

17: 2013/12/01(日) 22:52:32 ID:.6wSgO8Y

比企谷「良くわかった、白鐘」

白鐘「いえ……」

白鐘「…………」

白鐘「二人だけの秘密、というのもやってみたかったですけど……」/// ボソッ

比企谷「ん?」

白鐘「な、何でもありません!」///

比企谷「?」

白鐘「……そうだ」

比企谷「ん?」

白鐘「実は、僕の方でも先輩達にお願いしたい事があるんです」

比企谷「お願いしたい事?」

18: 2013/12/01(日) 22:53:51 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


数日後

八十稲羽・総合病院


花村「健康診断……ねぇ」

白鐘「はい」

白鐘「あの世界が、人体にどんな影響を与えるのか未知数です」

白鐘「こちらで出来る限り調べておいた方がいいと思ったので」

里中「言われるまで考えた事もなかったじゃん……」

天城「そういえば最初の頃、気分が悪くなってたしね」

比企谷「まったくもって目からウロコだったな……」

19: 2013/12/01(日) 22:55:13 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


白鐘「皆さん、お疲れ様でした」

白鐘「いろいろと結果が出ましたよ」

花村「何か聞くのが怖ぇーな……」

白鐘「花村先輩、安心してください」

白鐘「僕を含めて、こちらの世界の人間に異常は見受けられませんでした」

里中「良かった~」

天城「ホッとしたね、千枝」

りせ「……ちょっと待って」

雪ノ下「『こっちの世界の人間』は?」

比企谷「クマに何か問題があったのか?」

クマ「ク、クマー!?」

20: 2013/12/01(日) 22:57:31 ID:.6wSgO8Y

白鐘「いえ……異常、というより」

白鐘「『何も分からない』事がわかった……という所でしょうか」

白鐘「これを見てください。 クマくんのレントゲン写真です」

     スッ…

里中「……何これ? 真っ白じゃん」

天城「どういう事?」

白鐘「担当の医師も首を傾(かし)げていました」

白鐘「機械の故障等ではなく、何度撮ってもこうなってしまうんだそうです」

比企谷「……まあ、クマの生まれは謎だしな」

雪ノ下「このくらいで驚かなくなったわ……」

21: 2013/12/01(日) 22:59:14 ID:.6wSgO8Y

白鐘「クマくんに関しては、触診等で異常は見つかっていませんので」

白鐘「まあ大丈夫でしょう」

クマ「クマ、全然平気クマよ~」

りせ「……ところで、レントゲン写真って勝手に持ってきていいの?」

白鐘「後で返しておきます。 問題ありません」

りせ「ふう~ん」

りせ「じゃあさ! みんなの検査結果も教えてよ!」

天城「え?」

花村「おっ! いいねぇ~」

花村「ぜひスリーサイズ的なの頼むぜ、白鐘!」

里中「ちょ!? 何言ってるの、花村!!」///

雪ノ下「白鐘くん、今すぐ返してきn」///

りせ「いいじゃない、スリーサイズくらい……えいっ」

白鐘「あ」

22: 2013/12/01(日) 23:00:38 ID:.6wSgO8Y

りせ「……!?」

りせ「ちょっと……白鐘くんの」

りせ「これ、計り間違いって事はないよね?」

白鐘「は?」

りせ「見た目からは全然合っていないと思うんだけど……」

花村「お、おい! それ、どっちの意味だ!?」

白鐘「と、ともかく!」/// バッ!

りせ「あ」

白鐘「みなさんの体に異常はありませんでしたから」///

白鐘「これは返しておきます!」///

    タッ タッ タッ…

23: 2013/12/01(日) 23:01:31 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


白鐘「それでは、頭を切り替えて」

白鐘「比企谷先輩、お願いします」

比企谷「……おう」

比企谷「あー ……結論から言うと」

比企谷「俺宛に脅迫文が届いた」


一同「!?」


里中「それ、どういう事!?」

天城「犯人から……って事なの?」

花村「……どんな内容だったんだ?」

比企谷「今から説明する」

24: 2013/12/01(日) 23:03:08 ID:.6wSgO8Y

比企谷「手紙の内容は、一言だけ」

比企谷「カタカナで”コレイジョウ タスケルナ”とタイプ打ちされていた」

花村「これ以上助けるな……か」

雪ノ下「手紙を見せてもらえるかしら?」

比企谷「すまん、白鐘に鑑識作業を依頼して預けている」

白鐘「警察はあてになりませんので……賢明な判断だと思います」

りせ「そっか」

クマ「カンシキサギョウって何クマ?」

里中「指紋とか調べる作業の事」

クマ「シモン??」

比企谷「簡単に言えば、犯人の匂いが残っていないか調べる作業だ」

クマ「クマもお手伝いするクマ!」

比企谷「気持ちだけもらっとく、クマ」

25: 2013/12/01(日) 23:04:22 ID:.6wSgO8Y

比企谷「……さて」

白鐘「いい機会ですので、これまでの事件を振り返ってみましょう」

白鐘「まず、最初の事件」

白鐘「山野真由美アナの殺人事件ですね」

里中「……すべての始まりだよね」

花村「だな……」

白鐘「警察の調べで当時、山野アナは議員秘書の生田目太郎氏との不倫報道で」

白鐘「相当参っていた」

白鐘「そこで身を隠す様に天城屋旅館に宿泊……」

白鐘「しかし、霧の午前中に宙吊り状態で通りかかった女子高生に遺体となって発見される」

花村「…………」

26: 2013/12/01(日) 23:07:33 ID:.6wSgO8Y

比企谷「テレビでその不倫相手の生天目が怪しいとか言ってたな」

白鐘「ええ。 しかし……」

白鐘「彼のアリバイは、テレビの世界を知った後でも崩せません」

白鐘「山野アナが亡くなった時、生天目は議員秘書を辞める為の事後処理で」

白鐘「八十稲羽に居ませんでした」

白鐘「そして何より動機がない」

天城「本妻の柊みすずとの仲は冷え切ってて……って話だったよね?」

白鐘「その通りです」

白鐘「後、わざわざこんな事件を引き起こしても彼に何の得もありません」

白鐘「不倫報道で、もうすでに社会的制裁は受けていたにもかかわらず」

白鐘「さらに事件を起こすとは考えにくい」

27: 2013/12/01(日) 23:10:18 ID:.6wSgO8Y

りせ「そういえば、生天目はその後、どうなったの?」

白鐘「八十稲羽の実家の家業を継いだそうです」

りせ「ふうん……」

白鐘「次に第二の殺人事件ですが」

白鐘「先の山野アナの遺体の第一発見者、小西早紀さん」

花村「…………」

白鐘「警察の調べでは山野アナはもちろん、生天目とも柊みすずとも特に接点はなく」

白鐘「動機は不明のまま、遺体の状況から同一犯として捜査されました」

白鐘「しかし……結果はみなさんが知る通りです」

里中「……やっぱり、犯人の動機がわからないと難しいよね」

白鐘「そして、表立ってはいませんが」

白鐘「失踪事件が相次ぎます」

28: 2013/12/01(日) 23:11:45 ID:.6wSgO8Y

白鐘「僕はまだ確認していませんが……」

白鐘「【マヨナカテレビ】に映し出された人間が次々に誘拐される」

天城「最初に私と千枝、そして雪ノ下さんと りせちゃんに白鐘くん」

白鐘「そうです」

白鐘「それにしても驚きました。 久慈川さんも誘拐されていたんですね……」

比企谷「それについては謝る」

比企谷「俺が警察の人間に目を付けられていたんでな……穏便に済ませたかったんだ」

白鐘「まあ仕方ないです」

白鐘「みなさんから見たら、僕も怪しい人物でしたでしょうしね」

雪ノ下「そして……久保美津雄の模倣殺人」

白鐘「ええ……」

29: 2013/12/01(日) 23:13:14 ID:.6wSgO8Y

白鐘「彼はみなさんが身柄を確保して警察が取り調べをし」

白鐘「諸岡さんと先の二つの殺人も自分がやったと自供……」

白鐘「ですが、彼の供述は諸岡さん以外は曖昧で、信用に足らず」

白鐘「僕の推理ともかけ離れている為、一連の事件とは無関係でしょう」

白鐘「何故、諸岡さんを頃し、先の二件の事件の犯人だと名乗り出たのかは」

白鐘「本人が謎の氏を遂げているので、もうわかりませんが……」

里中「謎の……氏?」

里中「!」

里中「それだ! あたしがずっと引っかかってたの!」

花村「どういう意味だ?」

30: 2013/12/01(日) 23:15:14 ID:.6wSgO8Y

里中「久保美津雄は、どうしてテレビの世界に入ったの?」

雪ノ下「自暴自棄になっていただけじゃ?」

里中「それは否定できないけど……テレビの中に入れたって事は」

里中「少なくとも『テレビに人を入れると氏ぬ』事は知ってたって事じゃん?」

里中「氏にたがってた様には見えなかったし……それに」

里中「先の二つの事件、どうして供述が曖昧になるの?」

白鐘「!!」

白鐘「…………」

白鐘「確かに妙ですね……僕は警察の調書にも目を通しましたが」

白鐘「殺害方法や日時等の矛盾ばかりで、テレビに関する供述は一切なかった」

白鐘「彼は、今回の事件とは無関係だと思っていましたが……」

白鐘「別の意味で、そうではない可能性も出てきましたね」

31: 2013/12/01(日) 23:19:34 ID:.6wSgO8Y

比企谷「新たな謎、か……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「久保美津雄は……テレビの事は一切知らなかった」

雪ノ下「だとしたら」

雪ノ下「真犯人に『入れられた』のかしら?」


一同「!!」


白鐘「……なる程。 そう考えるとしっくりします」

白鐘「しかし、そうなると またしても矛盾が出てきますね」

花村「と言うと?」

32: 2013/12/01(日) 23:20:56 ID:.6wSgO8Y

白鐘「彼もまた、諸岡さんと同じく」

白鐘「事前にテレビ報道されていません」


一同「……あ!」


里中「そっか……白鐘くんの法則から外れちゃうんだね」

天城「結局……いつもの通りになっちゃうのか」

比企谷「犯人の動機。 それさえわかればな……」

白鐘「いえ。 そんな事はありませんよ」

りせ「え?」

白鐘「確かに僕の言った法則から外れますが……推測にすぎませんし」

白鐘「それに、いいヒントになるかもしれません」

里中「ヒント?」

33: 2013/12/01(日) 23:21:52 ID:.6wSgO8Y

白鐘「ええ。 あくまで可能性ですが」

白鐘「久保美津雄の足取りを追っていけば、あるいは……」

花村「なるほど!」

花村「どこで居なくなったか調べれば、犯人につながるかもしれねぇな!」


     オオー!


りせ「かなり有力な手がかりになるかも!」

天城「これは、ひょっとしたらひょっとする?」

里中「言い出したあたしが言うのも何だけど……」

里中「意外な人物がキーマンになりそうだね!」

比企谷「…………」

34: 2013/12/01(日) 23:22:58 ID:.6wSgO8Y

比企谷(……見たところ)

比企谷(怪しい反応を見せる奴は、居ないみたいだな) ホッ…

比企谷(…………)

比企谷(……何ホッとしてるんだ、俺は)


白鐘「それでは、今日はこの辺で終わりにしましょう」

白鐘「脅迫文と久保美津雄について、何か分かり次第 連絡します」

花村「何かすまねぇな、白鐘」

白鐘「いえ……そもそも僕が犯人をしっかり目撃しておけば良かったんですから」

里中「それはしょうがないじゃん? 女の子なんだし」

天城「そうだね。 得体の知れない犯人が相手だもの」

花村「だな」

35: 2013/12/01(日) 23:24:14 ID:.6wSgO8Y

花村「普段からは想像もできねーが、怖くて注意力散漫になったってのも」

花村「可愛いって思えるってもんだぜ」

白鐘「~~~っ」///

花村「お前もそう思うだろ? 比企谷」

比企谷「ギャップ萌えってやつか」

比企谷「まあわからなくはない」

雪ノ下「あら……意外な性癖ね、工口ガヤくん」

比企谷「性癖言うな。 俺が異常者みてーに思われるだろ」

雪ノ下「ごめんなさい。 ついうっかり本音が」

比企谷「あのなぁ……」

白鐘「さ、さあ! もう帰りましょう! みなさん!」///

36: 2013/12/01(日) 23:25:35 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


夕方

ジュネス 惣菜コーナー


     ただ今、ジュネス八十稲羽店では

     お客様の日頃のご愛好を感謝して、50万人キャンペーンを開催しております。

     当店のレジにてカウントしており、50万人目のお客様には

     素敵なプレゼントをご用意して……


比企谷「……今日は何を食うかな」

比企谷「…………」

比企谷「最近、野菜をあまり食べてない。 野菜中心にするか……」

37: 2013/12/01(日) 23:27:20 ID:.6wSgO8Y

足立宅


足立「ただいま~」

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

足立「あー疲れたぁ。 今日のメニューは何かな?」

比企谷「レタス、キュウリのサラダと、キャベツのみじん切り」

比企谷「けんちん汁に納豆とメインのサンマの塩焼きです」

足立「へえ。 今日はヘルシーだね」

足立「あれ? サラダなのにトマトが無い?」

比企谷「詳しくは知りませんが、トマトとキュウリの食べ合わせは」

比企谷「お互いの栄養の吸収を妨げるんだそうです」

足立「そうなの? 全然知らなかったよ」

38: 2013/12/01(日) 23:28:56 ID:.6wSgO8Y

比企谷「まあ俺もテレビの受け売りですが」

足立「ははは、そうなんだ」

足立「じゃ、いただきます」

比企谷「いただきます」


―――――――――――


数日後の放課後

教室


里中「もうすぐ中間試験かぁ……」

花村「何でお前は憂鬱になる発言をするんだよ……」

39: 2013/12/01(日) 23:30:25 ID:.6wSgO8Y

花村「あ~あ。 今度赤点取ったら、親父に小遣下げられるぅ……」

里中「そんな訳で雪子、また教えてくれない?」

天城「じゃあ……今度はみんなで勉強会を開く?」

花村「おおっ!? マジかよ!?」

天城「比企谷くんと雪ノ下さんもどうかな?」

雪ノ下「ええと……」

比企谷「喜んで参加しよう」


一同「え」


比企谷「何その反応。 傷つくんですけど」

雪ノ下「……どんな下心があるのかしら?」

41: 2013/12/01(日) 23:31:44 ID:.6wSgO8Y

比企谷「ある訳ないだろ。 100%善意でボランティアだ」

雪ノ下「今年のインフルエンザ、早くも大流行してるのね」

比企谷「お前は俺をなんだと思って」

里中「ままま! 素直に喜んであげるから、比企谷くん!」

花村「天変地異の前触れかも知んねーが……」

花村「歓迎するぜ!」

比企谷「喜んでもらえて何よりだ」 ニタァ…


天城(……あれ?)

里中(今一瞬、すっごい悪い顔した様な……)

雪ノ下(やっぱり何か企んでいる?)

42: 2013/12/01(日) 23:34:22 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


数日後の休日

天城屋の一室


花村「比企谷っ! 俺が悪かった!」

花村「もう勘弁してくれ!」

比企谷「馬鹿言うな。 まだ試験範囲の半分位だぞ?」

花村「休憩っ! 頼むから休憩を入れてくれっ!!」

比企谷「最初に言っただろ。 各教科が終わったら10分の休憩だと」

花村「そりゃそうだが……制限時間内に答えられないと」

花村「女子の前で、工口本の隠し場所全面公開は酷すぎるだろ!?」

43: 2013/12/01(日) 23:35:55 ID:.6wSgO8Y

比企谷「教科書を見ながらなら乗った!と、言ったじゃねーか」

比企谷「答えた問題数×50円を俺は払わされるんだ……十分だろ?」 ニタァ…

花村「どう考えても割に合わねぇ……つか、なんでタイトルまで知ってるんだよ!?」

比企谷「第8問」

花村「ちくしょおおおおおおっ!!」


雪ノ下「……そんなもの聞かされる私たちの身にもなって欲しいわ」///

里中「……まったくじゃん」///

天城「……勉強にはなるけど。 いろんな意味で」///

白鐘「……比企谷先輩はどうやってそんな情報を」///

りせ「……クマくんに手伝ってもらった……とか?」///

白鐘「ああ……時々花村先輩の家に泊まってるとか言ってましたね」///

44: 2013/12/01(日) 23:37:25 ID:.6wSgO8Y

比企谷「ブッブー。 外れ」

比企谷「それでは……おおっと、早くもふた桁の大台です」

比企谷「タイトル『お姉さんの谷間でイって♥』の隠し場所は……」

花村「うわああああああああああああああああああああああああああっ!!」


雪ノ下(また姉モノ……)///

里中(巨Oもあったけど……)///

天城(年上が好みなのね……)///

白鐘(隠し場所もベッド周辺ばかりだし……)///

りせ(言い逃れできないくらい使ってるんだろうなぁ……)///

45: 2013/12/01(日) 23:38:40 ID:.6wSgO8Y

     ガラッ

陽乃「みんな、勉強お疲れ様」

陽乃「飲みのも持ってきたわ」

天城「ありがとうございます、陽乃さん」

陽乃「どう? はかどってる?」


花村「」 チーン…


陽乃「……花村くん、どうしたの?」

里中「そ、そっとしておいてあげてください」///

天城「その内にいつもの調子に戻ると思いますから……」///

陽乃「どうしてみんな顔が赤いの?」

雪ノ下「ちょっと部屋の温度が高いだけよ、姉さん」///

雪ノ下「あと、今後は花村くんに近づかない方がいいと思うわ」///

陽乃「???」

46: 2013/12/01(日) 23:40:15 ID:.6wSgO8Y
>>45修正↓

47: 2013/12/01(日) 23:41:23 ID:.6wSgO8Y

     ガラッ

陽乃「みんな、勉強お疲れ様」

陽乃「飲みもの持ってきたわ」

天城「ありがとうございます、陽乃さん」

陽乃「どう? はかどってる?」


花村「」 チーン…


陽乃「……花村くん、どうしたの?」

里中「そ、そっとしておいてあげてください」///

天城「その内にいつもの調子に戻ると思いますから……」///

陽乃「どうしてみんな顔が赤いの?」

雪ノ下「ちょっと部屋の温度が高いだけよ、姉さん」///

雪ノ下「あと、今後は花村くんに近づかない方がいいと思うわ」///

陽乃「???」

48: 2013/12/01(日) 23:42:35 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――




天城屋 玄関ロビー


天城「それじゃみんな」

花村「……おう」

里中「シャキっとするじゃん、花村」

花村「……無理」

白鐘「……ですよね」

りせ「お世話になりました!」

比企谷「じゃあな」

雪ノ下「うん」

49: 2013/12/01(日) 23:43:35 ID:.6wSgO8Y

陽乃「ああ、比企谷くん。 ちょっと待ってくれる?」

雪ノ下「え?」

比企谷「何か用ですか?」

陽乃「安心して。 少し話したいだけだから」

比企谷「はあ……」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「それで? 話って?」

陽乃「…………」

陽乃「ペルソナ」

比企谷「……!?」

50: 2013/12/01(日) 23:45:02 ID:.6wSgO8Y

陽乃「――って、夏休みの時、ケータイを切る間際、言ってたわよね?」

比企谷「……そうでしたっけ?」

陽乃「それで、ね」

陽乃「クラブの時、酔っていたけど……天城さんも同じ事を言ってたの」

比企谷「…………」

陽乃「…………」

陽乃「これは偶然なのかしら?」

比企谷「…………」

比企谷「……いいえ」

陽乃「……そう」

陽乃「正直に答えてくれてありがとう」

51: 2013/12/01(日) 23:45:56 ID:.6wSgO8Y

陽乃「話はそれだけよ」

比企谷「え?」

陽乃「私なりにこの言葉の意味を調べてみたんだけど……」

陽乃「心理学用語って事くらいしか分からなかったわ」

比企谷「…………」

陽乃「私は」

陽乃「あの『約束』を守ってくれるのなら、もうそれでいい」

陽乃「……でも」

陽乃「いつか、話せる様になったら聞かせてね?」

比企谷「…………」

比企谷「前向きに検討します」

陽乃「ふふっ……日本語って、時々ずるいと思う」

比企谷「…………」

52: 2013/12/01(日) 23:47:37 ID:.6wSgO8Y



     せっかく花村で解消したストレスがまた戻ってしまった気がする……

     あのクラブでのひと時は、楽しかった感覚しかないが

     どうやら色々やらかしたみたいだ。



     事件については、あまり進展は無かったものの

     手がかりになるかもしれない事柄ができて、収穫はあったと思う。



     そういや中間試験が明けたら、文化祭、という

     これまたぼっちにとって迷惑なイベントが控えていたっけな。

     まあ総武高校の時みたいな厄介事が起こらない事を祈るほかないのだが……



53: 2013/12/01(日) 23:48:42 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下「姉さん……やっぱりあなたは油断のならない人だわ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(それにしても)


陽乃「あの『約束』を守ってくれるのなら、もうそれでいい」


雪ノ下(約束……比企谷くんと?)

雪ノ下(いったいどんな約束を……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(まさか……姉さんも比企谷くんの事を?)

54: 2013/12/01(日) 23:49:55 ID:.6wSgO8Y


―――――――――――


由比ヶ浜の家


     ルルルルル……ルルルルル……

由比ヶ浜「あ、さいちゃん? 私、結衣だよ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん……メール、やっぱり少ないよね」

由比ヶ浜「それで……どう?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「そっか! 良かった!」

由比ヶ浜「これでお互い目標金額達成だね!」

由比ヶ浜「え? ああ、宿泊先は任せて。 ちゃんと予約しとくから」

55: 2013/12/01(日) 23:51:10 ID:.6wSgO8Y

由比ヶ浜「それにしてもヒッキー酷いよね。 文化祭の事、黙ってるんだもん」

由比ヶ浜「天城さんが教えてくれなかったら、せっかくのチャンスを台無しにしてた」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……さいちゃんは優しすぎるよ」

由比ヶ浜「こういう時は、ガツン!と言わないとね!」

由比ヶ浜「あはは……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……うん。 私、頑張る」

由比ヶ浜「今度こそ絶対にヒッキーに気持ち……伝える」///

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ありがとう、さいちゃん。 じゃ……」

56: 2013/12/01(日) 23:52:51 ID:.6wSgO8Y

     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「負けないもん」

由比ヶ浜「私、ゆきのんに……負けないもん」

由比ヶ浜「私……」




     ――ヒッキーの事が……好き――





77: 2013/12/09(月) 20:53:11 ID:I56gMe3M


―――――――――――


中間試験最終日の放課後

通学路


比企谷「ふう……ようやく中間試験、終わったな」


一同「…………」


比企谷「……みんなどうした?」

雪ノ下「どうしたもこうしたもないわ、工口ガヤくん」

比企谷「は?」

里中「今回、さ……あたしや花村のテストの出来、結構良かったじゃん?」

里中「それ自体はいい事なんだけどね……」

比企谷「何が気に入らないんだよ?」

78: 2013/12/09(月) 20:54:22 ID:I56gMe3M

天城「その……いくつかテストの回答で……」///

天城「花村くんの……アレな本のタイトルも一緒に思い出しちゃって……」///

雪ノ下「そんな生易しいレベルじゃないわ」

雪ノ下「答えと一緒にインプットされてしまってる」

花村「…………」

比企谷「ほほう」

比企谷「マゼラン」

里中「……『破れたパンストと生足』」

比企谷「交感神経と副交感神経」

天城「……『姉ちゃんとやろう!』」

比企谷「太陽王」

雪ノ下「……『揉みしだかれた巨O』」

79: 2013/12/09(月) 20:55:33 ID:I56gMe3M

比企谷「ははは、こりゃ面白い」

里中「笑い事じゃないっての!」///

花村「な、なあ……俺のライフをゴリゴリ削るの止めてくんない?」

花村「それより文化祭の話とかしようぜ?」

雪ノ下「そうね」

雪ノ下「早く工口村くんの下世話なエピソードを忘れたいし」

花村「ぜひそうしてくれ……」

花村「でだ。 クラスの出し物、何にするか考えたか?」

里中「ぜーんぜん。 花村は?」

花村「俺も同じ。 この際、ウケ狙いでもしてみるか、とか思ってる」

雪ノ下「……そういう思いつきみたいなのが、案外選ばれたりして」

比企谷「な訳ねーだろ……」

80: 2013/12/09(月) 20:56:47 ID:I56gMe3M

翌日

教室


委員長「――という訳で、投票の結果」

委員長「このクラスは『合コン喫茶』をやる事になりました」

     オオー  マサカエラバレルトハ

     デモー チョット興味アルッテイウカー

花村「……マジかよ」

比企谷「……お前は預言者か?」

雪ノ下「……余計な事は言わない方がいいって、初めて思ったわ」

天城「ま、まあ、私も興味本位で一票入れちゃって……」

里中「決まったもんはしょうがないじゃん?」

里中「後はやるだけっしょ」

花村「だな。 それに里中達は、もう一つ頑張らねぇとな!」 ニヤニヤ

里中「は? なに言ってんの? 花村?」

81: 2013/12/09(月) 20:58:11 ID:I56gMe3M

一階 掲示板前


     ☆ ミス、八高コンテスト ☆

     参加者募集!!

     自薦他薦は問いません!!



     参加希望者欄


     里中千枝

     天城雪子

     雪ノ下雪乃

     久慈川りせ

     白鐘直斗


82: 2013/12/09(月) 20:59:18 ID:I56gMe3M



     ウワー  ミスコン出ルッテ、ドンダケ自分二自信アルンダロー

     ナイヨネー  マジヒクワー



里中「」

天城「」

雪ノ下「」

白鐘「」

りせ「あ。 あたしの名前まである」

83: 2013/12/09(月) 21:00:13 ID:I56gMe3M

昼休み

屋上


里中「キエェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」

     ドゴォ!

花村「ぶべれあっ!?」

里中「何であたしらの名前、勝手に書いた!?」

花村「だ、だって、天城や雪ノ下さん、告られまくる程人気だし」

花村「元アイドルに探偵王子まで居て、こんなイベントに不参加なんて」

花村「マジありえねーだろ!?」

84: 2013/12/09(月) 21:01:17 ID:I56gMe3M

里中「あたしは関係ないじゃん!!」

里中「…………」

里中「……ん?」

花村「へ?」

里中「悪かったな、関係なくてェェッ!」

     バゴォッ!!

花村「ぎゃあああああああああああああっ!!」

85: 2013/12/09(月) 21:02:13 ID:I56gMe3M

雪ノ下「……困った事になったわね」

天城「今からでも棄権できないかな……」

白鐘「…………」

白鐘「……あ、あのっ」///

比企谷「ん?」

白鐘「比企谷先輩は……僕に参加して欲しいですか?」///


一同「!?」


比企谷「何で俺に聞くんだよ……」

白鐘「そ、その……参考までに、と思って……」///

比企谷「…………」

87: 2013/12/09(月) 21:04:31 ID:I56gMe3M

比企谷「まあ……どちらかといえば、参加して欲しいかな」


白鐘「!!」///

一同「!!」


比企谷「せっかくの文化祭だし。 楽しめる奴は楽しんだらいいと思うぞ」

白鐘「そうですね! せっかくなんだし……」///

白鐘「ぼ、僕、頑張ってみます!」///

比企谷「そうか。 頑張れよ」

白鐘「はい!」///

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

花村(ナイス、比企谷!)

里中(うわぁ……雪ノ下さんから黒いオーラが見えるじゃん)

りせ(ちゃくちゃくとフラグ立ててるなぁ……)

88: 2013/12/09(月) 21:05:32 ID:I56gMe3M


―――――――――――


放課後

屋上


白鐘「ああ、比企谷先輩。 お呼びだてしてすみません」

比企谷「いや……それで?」

白鐘「例の手紙の事なんですが」

比企谷「何か分かったのか?」

白鐘「とりあえず3人分の指紋が検出されました」

白鐘「その内の一つは僕です」

白鐘「後、誰がこの手紙に触れたか、分かりますか?」

比企谷「……俺と足立さんだ」

89: 2013/12/09(月) 21:06:29 ID:I56gMe3M

白鐘「…………」

白鐘「やはり足が付くようなものは、残してないみたいですね……」

比企谷「まあ……俺でも気をつけるわな」

白鐘「一応確認の為に比企谷先輩と足立さんの」

白鐘「指紋サンプルをお願いしてもいいですか?」

比企谷「わかった」

比企谷「……けど、あんまり気分のいいものじゃないな」

白鐘「お手数をおかけします」

白鐘「それからもう一つ聞きたいのですが……」

     バァーン!!

花村「比企谷! 大変だ!」

91: 2013/12/09(月) 21:08:15 ID:I56gMe3M

比企谷「どうしたんだ? 花村?」

花村「いいからちょっと来い!」 グイッ

比企谷「お、おい!?」

白鐘「あ……」

     ドドドドドドド…

白鐘「…………」

白鐘「……また今度聞けばいい……か」


―――――――――――


92: 2013/12/09(月) 21:09:40 ID:I56gMe3M

一階 掲示板前


     ☆ ウホッ!八高女装コンテスト ☆


     女の服は女だけのモノじゃねえ!

     自分を開放してみようぜ!

     自薦他薦は問わねぇ!

     参加者大募集!!



     参加希望者欄


     巽完二

     花村陽介

     比企谷八幡


93: 2013/12/09(月) 21:11:06 ID:I56gMe3M


     ウワァ…… アリエネェ…… 参加者出ルトハナ……

     マジヒクワー


比企谷「」

花村「…………」

比企谷「花村……」

花村「おう……」

比企谷「こんなコンテスト、いつ出来たんだ?」

比企谷「少なくとも今朝まで見た記憶ないんだが……」

花村「俺だって知らねーよ!」

比企谷「……ともかく、里中達を問い詰めるぞ」

花村「だな!」

94: 2013/12/09(月) 21:12:39 ID:I56gMe3M

教室


花村「里中! ありゃどういう事だ!?」

里中「はあ? 何の事?」

花村「何あっさり流してんだよ! そもそも勝手に俺らの名前書くなよ!」

里中「花村だってあたしらの名前勝手に書いたじゃん……」 ゴゴゴ…

花村「お前、女装だぞ!? 女装!!」

花村「恥ずかしさのレベル、ダンチじゃねーか!!」

比企谷「後、何で俺もとばっちりを受けるんだよ?」

比企谷「同情はするが、勝手に名前を書いたのは花村だ……」

雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…

比企谷「……何となく理解した」

95: 2013/12/09(月) 21:14:08 ID:I56gMe3M

天城「まあそんな訳で、お互い頑張ろうね♪」

りせ「お化粧はあたし達に任せて♥」

比企谷「マジっすか……」

花村「はあ……こんなイベントに全員参加って、どんな軍団だよ……?」

花村「つか、あのコンテスト、誰が企画したんだ……恨むぜ」

里中「そういや いつの間にか出来てたじゃん?」

雪ノ下「実行委員会の誰かじゃないの?」


―――――――――――


完二「っえくしっ!!」

完二「さぁて……忙しくなってきたぜ!」

96: 2013/12/09(月) 21:15:53 ID:I56gMe3M


―――――――――――


文化祭当日 午前中

八十神高校・校門付近


由比ヶ浜「やっはろー!」

戸塚「あ、八幡! 会いたかったよ」

比企谷「」

比企谷「由比ヶ浜に戸塚!?」

由比ヶ浜「……そりゃ驚かそうと思って黙って来たけど」

由比ヶ浜「いくらなんでも驚きすぎじゃない? ヒッキー?」

比企谷「……今、冗談じゃなく心臓が止まったと思った」

比企谷「つか、止まって病院に担ぎ込まれてぇ……」

由比ヶ浜「何言ってるの?」

97: 2013/12/09(月) 21:17:16 ID:I56gMe3M

天城「あ! 由比ヶ浜さん、戸塚くん!」

天城「ようこそ、八十神高校・文化祭に!」

里中「楽しんでってね!」

由比ヶ浜「天城さんに里中さん! 久しぶり!」

戸塚「こんにちは」

天城「それじゃ比企谷くん。 そろそろ教室に行かないと」

比企谷「分かってる。 ……俺のクラス合コン喫茶やってるんだが」

比企谷「気が向いたら来てくれ」

由比ヶ浜「もっちろん!」

戸塚「すぐにでも行くよ、八幡!」

比企谷(……出来れば来ない方がいいんだが)

98: 2013/12/09(月) 21:18:36 ID:I56gMe3M


―――――――――――


花村「…………」

雪ノ下「…………」

     シーン…

雪ノ下「……お客さん、来ないわね」

花村「と、ともかく、客引きはしないとな」

花村「……ご、合コン喫茶、やってまーす(棒)」

雪ノ下「たぶん、それなりに楽しいと思いまーす(棒)」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

花村(……いろんな意味で間がもたねぇよ)

雪ノ下(……どうしたものかしら)

99: 2013/12/09(月) 21:19:40 ID:I56gMe3M

里中「おーい花村、調子はどう?」

花村「……見ての通りだ」

天城「ガラガラ……」

雪ノ下「宣伝が足りないのかしら?」

比企谷「明らかに『合コン』が付くからだろ……」

由比ヶ浜「合コン?」

花村「お!? 由比ヶ浜さん!?」

花村「それに戸塚……くん」

戸塚「どうも、花村くん」 ニコッ

花村(……今だに同性とは思えない)

花村「っと! それよりも、だ!」

100: 2013/12/09(月) 21:21:00 ID:I56gMe3M

花村「いらっしゃいませ!」

由比ヶ浜「えへへ、どうも~」

戸塚「ところで……ここはどんな事をするお店なの?」

雪ノ下「……合コン?」

比企谷「確かにそうだが、身も蓋もねぇな……」

由比ヶ浜「それで、合コンって何をどうするの?」


一同「…………」


由比ヶ浜「あれ?」

花村「……そういや、合コンってどうするんだ?」

里中「あたしが知る訳ないっしょ」

天城「クラブ?でやってたのがそうじゃないの?」

比企谷「今頃になって致命的な欠陥が見つかるとはな……」

101: 2013/12/09(月) 21:22:19 ID:I56gMe3M

雪ノ下「合コン……合同コンパの略で」

雪ノ下「元々は男女合同で、という趣旨が盛り込まれたコンパの事」

雪ノ下「コンパの語源は『仲間』を指すドイツ語の「kompanie」や」

雪ノ下「英語の「campany」が元になったと言われてるけど」

雪ノ下「懇親(こんしん)パーティーの略でそうなった、という説もあるわ」


一同「…………」


比企谷「……で、どうやるんだ?」

雪ノ下「……さあ?」

花村「そこ、肝心なとこー!」

由比ヶ浜「と、とりあえず、みんなでワイワイ楽しくやったらいいんじゃない?」

102: 2013/12/09(月) 21:23:38 ID:I56gMe3M

里中「そ、そうなんじゃん?」

天城「間違ってはいないと思う」

花村「じゃ、じゃあ、サクラの意味も込めて、俺たちでやってみね?」

花村「とりあえず男女に分かれて座ろうぜ!」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

花村「…………」

比企谷「…………」

戸塚「…………」


里中「…………」

天城「…………」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「…………」

103: 2013/12/09(月) 21:24:54 ID:I56gMe3M

花村(……どうすんだよ、この空気)

比企谷(戸塚……相変わらず可愛いな)///

戸塚(こういう時は、どうしたらいいんだろう……)


里中「ええと……ご趣味は?」///

里中(何か、すごく恥ずかしい……)///


花村「ナイス! 里中!」

花村「俺は最近バイクが欲しく」

里中「はい次」

花村「扱い酷すぎるだろ!?」

比企谷「……ゲーム?」

雪ノ下「どうして疑問形?」

戸塚「ぼ、僕は、テニスシューズに凝ってるかな……」

104: 2013/12/09(月) 21:26:41 ID:I56gMe3M

花村「よし! んじゃ、今度はこっちからな!」

花村「この中で彼氏にしたいと思うのは?」


雪ノ下「……!」///

由比ヶ浜「……!」///

里中「えー?」

天城「居ない場合はどう答えたらいいの?」

花村「……純真な男心をこれでもか、ってくらいズタズタにすんなよ」


??「……比企谷先輩です」


一同「!!?」


105: 2013/12/09(月) 21:27:54 ID:I56gMe3M

比企谷「白鐘……」

白鐘「ちょっと様子を見に……それと、あ、あくまで、その中で、という意味ですから」///

比企谷「へいへい」

由比ヶ浜「ちょ、ちょっとヒッキー!?」

由比ヶ浜「男の子に言われて気持ち悪くないの!?」

戸塚「…………」

白鐘「混乱させてすみません……こんな服装ですが」

白鐘「僕は女なんです」

由比ヶ浜「え」

戸塚「え」

106: 2013/12/09(月) 21:30:11 ID:I56gMe3M

由比ヶ浜(ゆ、ゆきのん! これどういう事!?)

雪ノ下(……私に言われても困るのだけど)

雪ノ下(見ての通り、としか……)

由比ヶ浜(ええ――!?)

由比ヶ浜(クラブで会った時は、全然そんな感じじゃなかったよね!?)

雪ノ下(……いろいろあったのよ)


白鐘「どうも。 改めまして」

白鐘「白鐘直斗です」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「どうも。 前の学校でヒッキーと『仲良く』部活していた」

由比ヶ浜「由比ヶ浜結衣です」 ニコッ

白鐘「……」 ピクンッ

比企谷「……ん?」

107: 2013/12/09(月) 21:32:00 ID:I56gMe3M

白鐘「そうだったんですか」

白鐘「僕も比企谷先輩と、『今』現在進行形で『仲良く』させてもらっています」 ニコッ

雪ノ下「……」 ピクンッ

比企谷「おい? どうしたんだ?」

雪ノ下「私は向こうでもこちらでも『知っている間柄』だけどね」 ニコッ

由比ヶ浜「……」 ピクンッ

白鐘「……」 ピクンッ


花村(ついにこの日が来ちまったか……)

里中(見事なまでの三すくみ状態)

天城(ゾクゾクしてきた♪)

108: 2013/12/09(月) 21:33:14 ID:I56gMe3M



由比ヶ浜「えへへへへへへへ」 ゴゴゴ…

白鐘「ははははははは」 ゴゴゴ…

雪ノ下「ふふふふふふふふ」 ゴゴゴ…



戸塚「は、八幡……何か三人、怖い」

比企谷「大丈夫だ、戸塚」

比企谷「俺がついている」


花村(……こいつ殴りてぇ)

里中(どうなっても知らないよ……)

天城(後ろから刺されないといいけど)

109: 2013/12/09(月) 21:35:02 ID:I56gMe3M


―――――――――――


比企谷「――という訳で」

雪ノ下「端折りすぎよ、比企谷くん」

比企谷「話が進まねーから、いいんだよ……」

比企谷「『合コン』の位置を変えてみた」

白鐘「喫茶合コン……」

花村「おお、これなら店の名前っぽくていいかもな」

里中「少しはお客さんも来るっしょ」

天城「いいアイデアだと思う」

雪ノ下「後は引継ぎを済ませるだけね」

110: 2013/12/09(月) 21:36:31 ID:I56gMe3M

比企谷「まあ、足りなくなる心配は無いだろうが……」

比企谷「飲み物とかの補充はジュネスで、だったな?」

花村「ああ」

里中「そういや今、ジュネスでキャンペーンやってたね」

里中「あれどうなったの?」

天城「50万人キャンペーンだったっけ?」

花村「オヤジの話だと、今日中には出るんじゃねーの?って感じだったな」

花村「50万人目」

雪ノ下「そうなの」

由比ヶ浜「へえ~こっちのジュネスでそんなのやってるんだ」

戸塚「後で行ってみる?」

由比ヶ浜「まあ機会があれば、かな」 クスッ

111: 2013/12/09(月) 21:37:29 ID:I56gMe3M

里中「さて」

里中「男性陣の諸君?」

比企谷「……わかってる」

花村「……もうそんな時間かよ」

由比ヶ浜「? どうしたの? ヒッキー達?」

雪ノ下「これから楽しいショーに出演するのよ」

戸塚「ショー?」

天城「それは後のお楽しみって事で♪」

由比ヶ浜「?」

戸塚「?」

112: 2013/12/09(月) 21:38:42 ID:I56gMe3M


―――――――――――


体育館


司会「さぁて、やってまいりました!」

司会「八十神高校始まって以来のクレイジーな企画!」

司会「それは……女装コンテストだー!」


     ワ――!


司会「正直、地獄絵図しか想像できないが、覚悟はいいかー!?」


     オオ――!


司会「OK! いい返事だ!」

113: 2013/12/09(月) 21:39:56 ID:I56gMe3M

由比ヶ浜「」

戸塚「」

由比ヶ浜「女装コンテスト!?」

雪ノ下「ええ」

由比ヶ浜「……ヒッキー、よく出る気になったね」

雪ノ下「まあ半ば、とばっちりを受けたとも言えるけど」

里中(……半ばじゃなく、100%とばっちりだと思うじゃん)

戸塚「それじゃ八幡は、強引に参加させられてるって事!?」

雪ノ下「そうなるかしら?」

戸塚「そんな……!」

天城「そろそろ始まるよ」

114: 2013/12/09(月) 21:41:33 ID:I56gMe3M

司会「それでは、さっそくエントリーナンバー1番!」

司会「この女装コンテスト企画提案者にして八十稲羽の生んだ野生児!」

司会「今年入学したばかりの一年生、巽完二ちゃんだ~!!」


     ババンッ!!


完二「ウッス!!」


     ウゲェェッ……!! コレハ酷イ……!


由比ヶ浜「……うっ」

里中「気持ち悪い……」

雪ノ下「あんな筋骨隆々の女の子が居る訳ないじゃない……」

天城「……足のムダ毛処理くらいしてよね」

りせ「しかも露出の高いカクテルドレス……のっけから酷いわね……」

115: 2013/12/09(月) 21:43:09 ID:I56gMe3M

司会「そ、それではつ……って!? ちょ、マイク」

完二「いいからちょっと貸せ!」

完二「俺ァよ、このコンテストを企画したモンだ」

完二「なんでかっつーと……自分をいろいろ変えたかったからでよ」

完二「実は……そう俺に決意させた奴が身近に居て」

完二「そいつに一言言いてぇんだ!!」///


里中「え?」

天城「もしかして……告白!?」///

由比ヶ浜「身近な人って、誰の事だろう?」

雪ノ下「久慈川さんじゃない? 同じ一年生だし」

116: 2013/12/09(月) 21:44:47 ID:I56gMe3M

りせ「や、やめてくださいよ!?」

りせ「あんなの全然好みじゃないし!!」

里中「嫌なら断ったらいいじゃん」

天城「深く考える必要もないと思う……」


完二「そいつはよ……ついこの前、すげぇ事暴露されたにもかかわらず」

完二「平然と自分を貫いていやがった」

完二「俺もそうなりてぇ……男とか女とかじゃなく」

完二「そんな一本筋の通った生き方の出来る人間になりてぇと」

完二「俺ぁ思ったんだ!」


一同「…………」


完二「だから、この女装はお前に対する敬意としてやった!!」


一同(えー……?)


117: 2013/12/09(月) 21:46:15 ID:I56gMe3M

完二「白鐘直斗!」


白鐘「え? 僕?」


完二「お、お前の事が、す、す、す、好きだァ――!!」///

完二「俺と、つ、つ、つ、付き合ってくれ!!」///


白鐘「お断りします」 キッパリ


完二「」 ガ―――――――――――ンッ!!

完二「……うおおおおおおおおおおおおっ!!」(号泣)


     シーン…


司会「……さ、さて、お、思わぬハプニングがありましたが」

司会「続いてまいります!」

118: 2013/12/09(月) 21:48:23 ID:I56gMe3M

里中「……まあ仕方ないじゃん?」

天城「……女装した姿で告白されても」

雪ノ下「……見れる姿ならともかく」

由比ヶ浜「……さすがに無理」

りせ「あたしでなくて良かった……」

白鐘「非常識にも程がありますよ……」

119: 2013/12/09(月) 21:49:38 ID:I56gMe3M

司会「エントリーナンバー2番!」

司会「顔はイケメン、口を開けばがっかり王子!」

司会「ジュネス八十稲羽店・店長の息子!」

司会「花村陽介ちゃんだー!」


     ババンッ!


花村「ど、どうも……」


     ウワッ……コレ、ナンカ居ソウデ怖イ……!

     花村先輩……イイセン行クト思ッタノニ……


花村(帰りたい……) シクシク…

120: 2013/12/09(月) 21:50:53 ID:I56gMe3M

里中(元は悪くないんだけどなー)

天城(やっぱりどう見てもオカマっぽくなるね……)

由比ヶ浜(微妙に私の髪型に似てる……何か、イヤだなぁ)

雪ノ下(まあさっきのよりマシ、ってところかしら)

りせ(コーディネイトが良くなかったかなぁ。 ミニスカ、いけると思ったんだけど)

白鐘(磨けば光るかも?)

121: 2013/12/09(月) 21:52:14 ID:I56gMe3M

司会「予想通り地獄絵図となってきたが、続けていくぜー!」

司会「エントリーナンバー3番!」

司会「良く言えばクール! 悪く言えばふてぶてしいその目つき!」

司会「この春、都会から転校してきた比企谷八幡ちゃんだー!」


     ババンッ!


比企谷「……もうどうでもいい」


     ヨリニモヨッテ黒髪ロングノカツラカヨ……

     ドウ見テモ、ガタイノイイ サダ○二シカ見エネェ……


比企谷(久しぶりに軽く氏にたくなった……) シクシク…

122: 2013/12/09(月) 21:53:16 ID:I56gMe3M

里中(こっちも悲惨ねー)

天城(カツラも手伝って、ふてぶてしさがえらい事に……)

由比ヶ浜(ヒ、ヒッキー、頑張ってる!)///

雪ノ下(……何かに目覚めてしまいそう)///

りせ(こっちも元は悪くないのになー)

白鐘(イケてます! 比企谷先輩!)///

123: 2013/12/09(月) 21:54:35 ID:I56gMe3M

司会「さぁて、不気……勇気ある参加者はこれで全部だ」

司会「後は投票を残すのみ……」


     ビー! ビー! ビー!


司会「おおっと!? ここでまたしてもハプニングか!?」

司会「……!!」

司会「なんと!」

司会「こんなクレイジーな企画に飛び入り参加したい、という」

司会「勇者が二人も現れたぞ!」


一同「!?」


124: 2013/12/09(月) 21:55:56 ID:I56gMe3M

司会「もう出し惜しみは無しだ!」

司会「二人同時にカモン! ウェルカム!」


     ババンッ!


クマ「ププッピドゥ~♪」 スキップ♪ スキップ♪

クマ「ハートをぶち抜くぞ♥」 ズギューン♪

戸塚「こ、こんにちは……」///


     オオ―――――――――――!!


比企谷「」

花村「」

完二「」

125: 2013/12/09(月) 21:57:05 ID:I56gMe3M

里中「」

天城「」

由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

りせ「」

白鐘「」


     スゲェ!! アレ……ホント二男ノ子!?

     イケル……俺、アノ子達ナライケル!!


司会「これは予想外だ!」

司会「どう見ても可憐な少女にしか見えない、恐ろしいまでの男の娘が二人も現れた!」

126: 2013/12/09(月) 21:58:51 ID:I56gMe3M

比企谷「……戸塚」///

戸塚「八幡……」///

戸塚「やっぱり……八幡にだけ恥ずかしい事させたくなかったし」///

比企谷「」///


花村(…………)

花村(……比企谷)

比企谷(……なんだ花村)

花村(俺、ヤバイもんに目覚めそうだ……)///

比企谷(そうか……お前も理解してきたか)

比企谷(とつかわいいを……)///


戸塚「?」///

127: 2013/12/09(月) 22:00:29 ID:I56gMe3M


―――――――――――


司会「さぁーて、投票の集計も終わり、結果発表の時間だ!」

司会「大方の予想通り、飛び入り二人の争いとなった!」

司会「息詰まるデッドヒートを制したのは……」

     ジャカジャカジャカジャカジャカジャカ……

     ジャン!!

司会「クーマーだ、ちゃんだァ!!」

クマ「ウッホホーイ♪」


戸塚「あはは……負けちゃったね、八幡」///

比企谷「気にするな戸塚……俺の中では」

比企谷「お前がナンバー1だ」///

戸塚「ふ、複雑だけど、ありがとう八幡」///

128: 2013/12/09(月) 22:01:57 ID:I56gMe3M

里中(……なんて言うか、あたし、あの子に勝てる要素あるのかしら?)

里中(いろんな意味で……)

天城(あのレベルは女の子でもなかなか居ない……)

由比ヶ浜(改めて、さいちゃんは可愛いって思う)

雪ノ下(一番の強敵は、あの子の様な気がする……)

りせ(クマはともかく……いろんな意味であの戸塚、という男の娘に)

りせ(票は入れたくないって思った女子は多いかも……)

白鐘(ひ、比企谷先輩……僕、頑張ります!)

129: 2013/12/09(月) 22:04:37 ID:I56gMe3M

司会「優勝おめでとうございます、熊田さん」

司会「賞品の代わりとして、この後行われる」

司会「ミス・八高コンテストの特別審査員をしていただきます!」

司会「何か一言、ありますか?」

クマ「ふっふっふっ……クマはこの時を待っていたクマ」

クマ「特別審査員の称号にかけて! クマは宣言するクマ!」

クマ「次のコンテストは、水着審査を開くクマ――!!」


     オオ―――――――――――!!


花村「ナイスだぜ! クマ吉!」

比企谷「後でどうなるのか、楽しみだな」

戸塚「みんな楽しそうだね♪」

130: 2013/12/09(月) 22:06:07 ID:I56gMe3M

里中「何言ってるの……あいつ……!」 ゴゴゴ…

天城「一度、徹底的に締めないとダメみたいだね……」 ゴゴゴ…

雪ノ下「天城さん。 その時は私も手伝わせて……」 ゴゴゴ…

由比ヶ浜「…………」

りせ「水着かぁ。 久しぶりだなぁ」

白鐘(……が、頑張るんだ、僕っ!)///

131: 2013/12/09(月) 22:14:34 ID:I56gMe3M


―――――――――――


司会「OK、野郎ども!」

司会「次はお待ちかねの……ミス・八高コンテスト!」

司会「しかも、水着で、だ――!」


     オオ――!!


司会「それじゃ、サクッと始めるぜ!」

司会「エントリーナンバー1番!」

司会「そこに漂うは健康美! 実は隠れファンも多いと噂の」

司会「里中千枝ちゃんだ――!」

132: 2013/12/09(月) 22:16:02 ID:I56gMe3M

里中「ど、どうも……」///

里中「す、好きな食べ物は、プディングですっ」///


花村「嘘つけ! 肉だろ! 肉!」


里中(花村ァ……後で顔面靴跡の刑っ)///


花村「……とか言ったけど」

花村「あいつのくびれたウェストは引き締まってていいな」

比企谷(腹筋は硬そうだな……)

戸塚「うん! かっこいいね!」

133: 2013/12/09(月) 22:18:00 ID:I56gMe3M

司会「それじゃどんどん行ってみよう!」

司会「エントリーナンバー2番!」

司会「ここ八十稲羽の老舗旅館・天城屋の跡取り娘! しかしそれを差し引いても告る奴多数!」

司会「魅力あふれる大和撫子!」

司会「天城雪子ちゃんだ――!」


天城「……えと……そ、そのっ……」///

天城「なんか……すみませんっ……」///


花村「いやいや。 抜群、とは言えないが」

花村「なかなかいいものを持ってるぜ♪」

比企谷(恥じらう姿は、結構萌えるものだな)

戸塚(僕もあんなだったのかな……)

134: 2013/12/09(月) 22:19:26 ID:I56gMe3M

司会「続きましてエントリーナンバー3番!」

司会「都会から女将修行に八十稲羽へ来た美少女!」

司会「醸し出す雰囲気は、その名に負けじ劣らじの絶対零度!」

司会「雪ノ下雪乃ちゃんだ――!」


雪ノ下「…………」///

雪ノ下「わ、私を……見なさいっ……」///

雪ノ下(比企谷くんっ)///


花村「おっほー♪ 大胆な事言ってくれるじゃねーか♪」

花村(……まあ、比企谷に向けた一言だろうけど)

比企谷(相変わらず、雪ノ下の肌は白いな……)///チラッ チラッ

戸塚(雪ノ下さんは細いなぁ……)

135: 2013/12/09(月) 22:20:42 ID:I56gMe3M

司会「いいよいいよ~乗ってきたぜ!」

司会「続いてエントリーナンバー4番!」

司会「ついこの前までは高嶺の花! 『テレビ』という画面の中の存在!」

司会「八十稲羽に舞い降りた、元女子高生アイドル!」

司会「久慈川りせちゃんだ――!」


りせ「…………」

りせ(……なんか、懐かしいな。 こんなふうにステージに立つの)

りせ(……) クスッ

りせ「みんなー! りせちーだよー!」


     オオ―――――――――――!!


136: 2013/12/09(月) 22:22:26 ID:I56gMe3M

花村「さっすが元アイドル。 こういうのはお手のもんだな」

花村「つか、やっぱ可愛いなー。 りせちー」///

比企谷「俺はお前のミーハーっぷりに呆れているがな」

戸塚「りせちーじゃしょうがないと思うよ、八幡」

戸塚「最近はかなみん……真下かなみの人気が凄いけど」

戸塚「今だにりせちーの方がいい、という」

戸塚「根強いりせちーファンが復帰を待ち望んでいるし……」

比企谷「へえ……」

137: 2013/12/09(月) 22:23:49 ID:I56gMe3M

司会「んんっ! やっぱり、りせちーの人気はすごい!」

司会「しかし! 次の参加者も知名度は負けていないぞ!」

司会「エントリーナンバー5番!」

司会「八十稲羽で起きた怪事件の解決に貢献した少年探偵!」

司会「実は自身も大きな秘密を抱えていた! 正直、こっちの方が嬉しいけどね!」

司会「体は乙女! 頭脳は優秀! 少年探偵改め、男装美少女探偵の」

司会「白鐘直斗ちゃんだ――!」


白鐘「……う……そ、その……」///


     オオ―――――――――――!!

     オ、オイ、……男ノ格好カラハ解ラナカッタケド……

     スゲェ……巨O……


白鐘「」///

138: 2013/12/09(月) 22:24:54 ID:I56gMe3M


完二「ウヴォアァッ!!」


     ブシュウ!!

     誰カ鼻血吹イテ倒レタゾ!


花村「おお~確かに絶景だが……そこまでかぁ?」

比企谷「……挟めそうだな」

戸塚「八幡、何を?」

139: 2013/12/09(月) 22:26:20 ID:I56gMe3M

司会「さて、これで参加者は全員揃った!」

司会「野郎ども、目の保養はしっかりしたよな? じゃ、後は投票を……」


     ビー! ビー! ビー!


司会「おおっと!? またまたハプニング!?」

司会「今年はやけに多いぜ!」

司会「なになに……」

司会「…………」

司会「なんと!? こいつは驚きだ!」

司会「男装コンテストに続き、ここでも飛び入り参加者が現れたぞ!」


     オオ―――――――――――!!


司会「こいつは野郎共にとって嬉しいハプニングだ!」

140: 2013/12/09(月) 22:27:33 ID:I56gMe3M

花村「そりゃまた変わった女の子が居たもんだ」

花村「可愛いといいけどな♪」

比企谷「どうだか」

比企谷「おおかた罰ゲームとか、そんなたぐいで」

比企谷「強制出場させられたんだろうよ……」

戸塚「は、八幡……」

花村「うわぁ……でも確かにありそうだな」

花村「可愛い娘は、期待薄か……?」

141: 2013/12/09(月) 22:28:48 ID:I56gMe3M

司会「それじゃ紹介するぜ!」

司会「今日、都会からわざわざ八十稲羽に居る友達に会いに来た女の子!」


花村「……え?」

比企谷「……は?」

戸塚(……そういえば、いつの間にか居ない)


司会「おおっと、これは言ってもいいのかぁ!?」

司会「ある人に自分をアピールする為に飛び入り参加を決めたそうだ!」

司会「くそっ! いったい誰なんだぁ? そいつは!!」


里中「……ん?」

天城「……それって」

雪ノ下「……まさか」

りせ「……ひょっとして」

白鐘「?」

142: 2013/12/09(月) 22:30:24 ID:I56gMe3M

司会「それでは、登場してもらおう!!」

司会「由比ヶ浜結衣ちゃんだ――!」


     ババンッ!


由比ヶ浜「えへへ……」///

由比ヶ浜「こ、こんにちは~」///


     オオ――! ンダヨ……結構可愛イ娘ジャネーカヨ……

     イッタイ誰ナンダヨ……アピールシタイッテ……


花村(おいおい……マジかよ。 マジもんじゃねーかよ……)

比企谷(…………)

戸塚(…………)

143: 2013/12/09(月) 22:32:19 ID:I56gMe3M

司会「いやぁ飛び入り参加、ありがとう!」

司会「おかげで凄く盛り上がってるよ!」

由比ヶ浜「い、いえ」///

司会「ところで、アピールしたい人って誰なのかな?」

由比ヶ浜「ま、まあ、とても鈍い人、とだけ言っておきます」///

司会「くうぅ~! そいつが羨ましぃ~!」

司会「マジで爆発しろっ!!」


     ドッ ハハハハ……


司会「それじゃ、投票、行ってみよう!!」

144: 2013/12/09(月) 22:34:00 ID:I56gMe3M


―――――――――――


司会「集計結果が出たぞ!」

司会「今年は稀に見る票が割れた結果となったが」

司会「3位と4位の差がやや大きいくらいで、本当に僅差だった!」

司会「それじゃ、発表するぞ!」

司会「ミス・八高コンテスト、優勝者は……」


     ジャカジャカジャカジャカジャカジャカ……


145: 2013/12/09(月) 22:35:12 ID:I56gMe3M

里中(……まあ、最初から期待してないじゃん)

天城(周りが強すぎ……)

雪ノ下(人前で水着姿になるなんてね……はあ)

りせ(飛び入りはインパクトあるしなぁ)

白鐘(優勝はどうでもいいけど……)

白鐘(由比ヶ浜さんには負けたく……無理かなぁ)

由比ヶ浜(ヒッキー、見てくれたかな……?)///

146: 2013/12/09(月) 22:36:52 ID:I56gMe3M





     ジャン!!





147: 2013/12/09(月) 22:37:56 ID:I56gMe3M

司会「白鐘直斗ちゃんだ――!!」


     オオ―――――――――――!!


白鐘「」

白鐘「ええ!?」

司会「優勝おめでとう!」

白鐘「あ、ありがとうございますっ」///


里中「あ~あ、やっぱりか」

天城「ふふ、でも納得かも」

雪ノ下「負け惜しみでも何でもないけど」

雪ノ下「胸のインパクトが衝撃だったのね」

りせ「まあ、しょうがないっか」

由比ヶ浜「私は出るだけでいいから、気にしないもん♪」

148: 2013/12/09(月) 22:39:44 ID:I56gMe3M

雪ノ下「ところで由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ん?」

雪ノ下「その水着……どうしたの?」

雪ノ下「クマくんが用意したものじゃないわよね?」

由比ヶ浜「あはは……」

由比ヶ浜「実は、ジュネスで水着買おうと思って行ったんだけど」

由比ヶ浜「季節のせいか、いいの売ってなくて……」

由比ヶ浜「しょうがないから、水着っぽく見える柄のタオルやら布やらを買って」

由比ヶ浜「それをピン止めして……」

     パキンッ

     ハラリ……

雪ノ下「」

由比ヶ浜「」

149: 2013/12/09(月) 22:41:07 ID:I56gMe3M

花村「」

比企谷「」

戸塚「」


里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」

クマ「」

司会「」


     ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


由比ヶ浜「キャアアアアアアアアアアッ!!」///

150: 2013/12/09(月) 22:42:34 ID:I56gMe3M



     ……何なんだこの展開は?

     現実にこんな事起きる訳ねーだろ。

     夢だ。 間違いなく夢だ。



     そう思いつつも……形の良い、豊かな生オッ○イを

     俺はしっかりと記憶に焼き付けていた……



164: 2013/12/16(月) 21:02:31 ID:29iWkTCo


―――――――――――


夕方

教室


由比ヶ浜「……うう……もうお嫁に行けない……」

天城「だ、大丈夫だよ、由比ヶ浜さん」

里中「ちょっ、ちょっとした事故じゃん?」

りせ「そ、そうですよ!」

雪ノ下(……明らかに私より大きかった)

白鐘(あれも比企谷先輩へのアピールかと思ってた……)///

165: 2013/12/16(月) 21:03:38 ID:29iWkTCo

花村「ま、まあ、何はともあれ、文化祭は無事に終わったな!」///

比企谷「……だな」///

クマ「とっても楽しかったクマ!」

戸塚(ハプニングだらけだった気もするけど……)

戸塚「あ、そうだ、八幡」

比企谷「ん?」

戸塚「今日は八幡のところに泊めてくれないかな?」

比企谷「」

由比ヶ浜「」


一同「」


由比ヶ浜「さ、さいちゃん! もう天城屋に予約取ってあるんだけど!?」

166: 2013/12/16(月) 21:05:16 ID:29iWkTCo

戸塚「うん、わかってるんだけど……」

戸塚「やっぱり女の子と一緒の部屋に泊まるのは、ちょっと……」///

由比ヶ浜「だ、大丈夫だし! ヒッキーと一緒の方が良くないよ!」


里中(由比ヶ浜さん、戸塚くんと同じ部屋に泊まるつもりだったの……)

天城(それにしても戸塚くんの方が正論なんだけど)

花村(何でか、由比ヶ浜さんの方が正しいと思えてしまう……)


戸塚「まあ、八幡が嫌だって言うのなら予定通りにするけど……」

比企谷「……え?」

由比ヶ浜「も、もちろん、ダメだよね? 急すぎる話だし!」

比企谷「…………」

167: 2013/12/16(月) 21:06:18 ID:29iWkTCo

比企谷(ちょっと待て?)

比企谷(これどちらを選択しても詰んでなくね?)

比企谷(……いやいや、倫理的にも道義的にも)

比企谷(戸塚を俺のところに泊めるのが正しいよな?)

比企谷(…………)

比企谷(だけどその場合、明日の朝までとつかわいいをしゃぶりつく……) ハアハア…

比企谷(いやいやいやいやいやっ! 何を考えているんだ、俺はっ!)///

比企谷(そんな事はしねぇ! 俺は紳士になれるッ……ハズ)///


雪ノ下(……氏んだ魚のような目が泳いでいるわね)

りせ(……何かやらしい事考えてるっぽいなー)

白鐘(……比企谷先輩?)

168: 2013/12/16(月) 21:07:27 ID:29iWkTCo

比企谷「…………」

比企谷「……そ、そうだな、やっぱり男女一緒ってのは良くな――」

クマ「じゃあ、センセイも天城屋にお泊りすればいいクマ!」

比企谷「え」

戸塚「え」

由比ヶ浜「クマくん、それナイスアイデアだよ!」

由比ヶ浜「ヒッキーも一緒に泊まれば問題ないよね!」

雪ノ下「ちょっ、ちょっと待ちなさい、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「いくらなんでも比企谷くんと小人数で同じ部屋に泊まるなんて」

雪ノ下「何をされるかわかったものじゃないわ!」

比企谷「雪ノ下、俺をそこらの性犯罪者みたいに言うな……」

169: 2013/12/16(月) 21:08:56 ID:29iWkTCo

里中「まあまあ雪ノ下さん」

里中「これまでも何度か一緒だったけど前科なしだし」

天城「わりと可愛い寝顔してるしね」

由比ヶ浜「……え? どうゆう事? 寝顔?」

雪ノ下(ヤブヘビだったわ)

りせ「ねえ! それならさ!」

りせ「打ち上げも兼ねて、みんなで泊まらない?」

花村「おっ、こいつはひょうたんから駒だが、いい考えだな!」

花村「いつか行きたいな、とは思ってたし!」

クマ「ウッホホーイ♪ オンセン、ゲイシャ、フジヤマ、クマー!」

由比ヶ浜「ねえ、ゆきのん。 寝顔って?」

雪ノ下「そ、そうと決まったら、さっそく準備しないとね、天城さん!」

天城「そうだね、雪ノ下さん」

170: 2013/12/16(月) 21:09:53 ID:29iWkTCo


―――――――――――




天城屋 玄関ロビー


一同「今晩は~」


天城「いらっしゃいませ、みんな」

雪ノ下「ようこそ天城屋へ」

花村「くぅ~! 営業スマイルだとわかってても こういうのはいいな! 比企谷!」

比企谷「否定はしない」

りせ「相変わらず素直じゃないんだから」

171: 2013/12/16(月) 21:11:19 ID:29iWkTCo

比企谷(……結局)

比企谷(由比ヶ浜と戸塚が予約した部屋に女性陣)

比企谷(そして俺たち男には新しい部屋を借りて宿泊する事になった)

比企谷(……何故か戸塚は雪ノ下の部屋を一人で使う事になり)

比企谷(ホッとした様な、ガッカリした様な、妙な気分だ……)


陽乃「おっ、みんな来たわね♪」

陽乃「もうすぐご飯だから、ちょっと待っててね」


一同「は~い」


比企谷「じゃ、荷物置きに行くか。 大してないけど」

花村「ほら、クマはこっちだ」 ガシッ

クマ「およよ、放すクマよ、ヨースケ~」

172: 2013/12/16(月) 21:12:45 ID:29iWkTCo


―――――――――――


花村「はぁ~食った、食ったァ」

花村「やっぱり老舗旅館だけあって旨いメシだったな、比企谷!」

比企谷「…………」

花村「?」

花村「比企谷? どうした?」

比企谷「! ……いや」

比企谷「この部屋、何か結構いい部屋だと思って」

花村「おう! 確かに!」

花村「見るからに上品でゆったりしてて、上等な部屋だって分かるな!」

花村「こんな部屋を格安で貸してくれるなんて、天城も太っ腹だぜ!」

比企谷「…………」

173: 2013/12/16(月) 21:13:39 ID:29iWkTCo

クマ「センセイ~そろそろオンセンに行かないクマか?」

比企谷「……そうだな」

比企谷「とりあえず汗を流しに行くか」

花村「今の時間帯、露天風呂は男湯だったかな?」


―――――――――――


露天風呂


里中「はぁ~……気持ちいい~」///

りせ「こうやって手足を伸ばせるのは、やっぱりいいなぁ」///

由比ヶ浜「広いお風呂っていいよねぇ~」///

174: 2013/12/16(月) 21:14:29 ID:29iWkTCo

雪ノ下「…………」 ジー

白鐘「…………」///

白鐘「……あの、雪ノ下先輩」///

雪ノ下「何かしら?」

白鐘「僕の胸を凝視するの、止めてもらえませんか?」///

雪ノ下「あら、ごめんなさい。 つい」

白鐘「ははは……」///

りせ「えいっ!」

白鐘「わひゃ!?」///

りせ「うわぁ……すごいボリューム」 モミモミ

白鐘「く、久慈川さんっ」///

175: 2013/12/16(月) 21:15:27 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「お肌も綺麗だよね~」 ツンツン

天城「うん。 スベスベ」 サワサワ

白鐘「~~~っ」///

りせ「雪ノ下先輩の肌は白いなぁ」

雪ノ下「え?」

由比ヶ浜「私もそう思うよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「日焼け止めとか、いつも塗ってるの?」

雪ノ下「積極的に外に出てないだ……ひゃっ!?」///

りせ「でもこっちはまだ小ぶり~♪」 モミモミ

雪ノ下「っ! く、久慈川さんだって、そんなに大きくないじゃないっ」///

里中「そうよ! 大きければいいってモノじゃないじゃん!」

天城(……コメントしづらいよ、千枝)

176: 2013/12/16(月) 21:16:28 ID:29iWkTCo

露天風呂 脱衣場


     ガララッ

比企谷「!?」

比企谷「と……戸塚!?」///

戸塚「あ、八幡」

比企谷「な、なんで、こんなところに!?」///

花村「どうした? 比企谷……!?」

クマ「クマ!?」

比企谷「と、ともかく! 胸を隠せ!」///

戸塚「え? どうして?」

比企谷「いいから!」///

177: 2013/12/16(月) 21:17:48 ID:29iWkTCo

花村(……もし)

花村(神様ってのが居んのなら、相当のひねくれもんだろうなぁ……)

花村(何でこの外見で男なんだよ……マジありえねぇだろ……)

クマ(こっちの世界は刺激がいっぱいクマ)


比企谷「……ふう」

戸塚「それじゃ、入ろっか? 八幡」

比企谷「……おう」///

花村「……よ、よろしく」///

クマ「みんなで仲良く入るクマ!」

クマ「ウッホホーイ♪」

178: 2013/12/16(月) 21:19:29 ID:29iWkTCo

雪ノ下「…………」

雪ノ下(そういえば姉さん、遅いわね?)

雪ノ下(あんなに一緒に入りたがっていたのに……)


里中「ね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ん?」

里中「ここに……八十稲羽に来るのって」

里中「比企谷くんに会う為……だよね?」

雪ノ下「!」

白鐘「!」

由比ヶ浜「……うん」///

179: 2013/12/16(月) 21:20:40 ID:29iWkTCo

里中「気に障ったらごめんね?」

里中「正直、あたしには比企谷くんの良さが分かんなくてさ」

里中「どこがいいの?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ヒッキーはね、いつも憎まれ口を言うけど」

由比ヶ浜「間違った事は全然言わない」

由比ヶ浜「……自分の事を除いて」

雪ノ下「…………」

天城「どういう……意味?」

由比ヶ浜「時々ね」

由比ヶ浜「問題の解決をする際、自分を悪者にしちゃうんだ、ヒッキー」

りせ「悪者?」

180: 2013/12/16(月) 21:21:36 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「見た目で何でもないってフリしてるけど」

由比ヶ浜「そんな訳ない」

由比ヶ浜「私は……きっと誰よりも心の痛みを知っているから」

由比ヶ浜「ああいう態度を取るんだと思う」

雪ノ下「…………」

里中「つまり、母性本能をくすぐられた、って感じ?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ううん。 上手く言えないけど、違うと思う」

由比ヶ浜「ただ……ヒッキーのそばに居たいな、というのは確かかな」///

りせ「ふうん。 だってさ? 白鐘くん」

白鐘「っ!?」///

白鐘「き、急に僕に降らないでくださいっ」///

181: 2013/12/16(月) 21:23:10 ID:29iWkTCo

天城「いまさら隠さなくてもいいじゃない♪」

天城「白鐘くんは比企谷くんのどこがいいの?」

白鐘「あ、あのっ……そのっ……」///

白鐘「こ、こういう事、は、初めてなので……う、上手く言えなくて……」///

白鐘「ただ……僕も、その」///

白鐘「比企谷先輩のとなりに居たいかなって……」///

里中「おお~言い切ったね、白鐘くん♪」

天城「見てるこっちまで恥ずかしくなってきた……」///

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ねえ、ゆきのんは?」

雪ノ下「え?」

182: 2013/12/16(月) 21:24:12 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「ゆきのんは、ヒッキーの事……どう思ってるの?」

雪ノ下「!?」


里中(おおっ……由比ヶ浜さん、攻め込んだ!)

天城(私達にはもうバレてるけど、雪ノ下さん、こういうの認めないっぽいし)

天城(どう答えるんだろう……?) ワクワク

りせ(これだけの証人の前で、うかつな事は言えないよね)

白鐘(……この人も僕の知らない比企谷先輩を知っている人)

白鐘(どんな事を語ってくれるのだろう……)


雪ノ下「…………」

雪ノ下「……由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「うん」

雪ノ下「私は――」

183: 2013/12/16(月) 21:25:33 ID:29iWkTCo




??「ウッホホーイ♪」

??「クマかき、披露するクマ~♪」






     バッシャーン!!






女性陣「!!?」

184: 2013/12/16(月) 21:27:20 ID:29iWkTCo

クマ「ぷはぁっ!」

クマ「……クマ?」


由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」


??「おいおい、他のお客さんに迷惑かけんなよ? クマ?」

???「……ん?」

??「あれ?」

185: 2013/12/16(月) 21:28:35 ID:29iWkTCo

里中「あ、あ、あ、あんたらー!?」///

花村「ななななななな、何でお前らが!?」///

里中「それこっちのセリフ!」///

雪ノ下「と、ともかく、早く出て行きなさいっ」///

     ブンッ  パコーン!

クマ「痛っ! クマー!?」

比企谷「い、いくらなんでも木桶投げるとか危ねぇだr」

比企谷「痛ぇ!」

戸塚「ど、どうしよう!? 八幡!」

花村「早いとこ決め……あだっ! ひ、ひいっ!」

比企谷「状況は最悪だ……だがっ!」

186: 2013/12/16(月) 21:29:52 ID:29iWkTCo



     ……えっとね?

     普段ならね? こんな行動、取ったりしないと思うんですよ?

     でもね? 直前にあった、戸塚との出来事なんかで

     いろいろテンションが上がってたのかな?とかいう言い訳もあるんですよ?



     ……まあ、はっきり言えば

     いや、ぶっちゃけると……



187: 2013/12/16(月) 21:30:58 ID:29iWkTCo




     俺もどうしようもない男だったって事なんですよ……




188: 2013/12/16(月) 21:32:16 ID:29iWkTCo




比企谷「勇気を出して、この場に踏みとどまるっ!!」




花村「おうっ!!」

戸塚「わ、わかったよ、八幡!」

クマ「クマ!!」


由比ヶ浜「」

雪ノ下「」

里中「」

天城「」

りせ「」

白鐘「」

189: 2013/12/16(月) 21:33:31 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「バ、バカー! ヒッキーのエOチ、スケベ、変態っ!」///

雪ノ下「こんな所で本性を表すなんて、最低よっ!」///

里中「でてけっ! でてけっー!」///

天城「信じられないっ!」///

りせ「この覗き魔! ド変態っ!」///

白鐘「いくらなんでもやりすぎですっ!」///

     ヒュン ヒュン ブオッ

花村「あだっ! 痛てっ!」

比企谷「おがっ! うぐぐっ……!」

花村「って! お、おい! 比企谷!」

花村「この勇気にどれほどの価値があるんだよ!?」

191: 2013/12/16(月) 21:35:37 ID:29iWkTCo

比企谷「す、すまん! 俺がどうかしてた!」

比企谷「撤退! 撤退するぞ!」

クマ「ひ、ひぃぃぃ!」

戸塚(……どうして僕は狙われないんだろう?)

     ダダダダダダッ……

里中「はあっはあっ、思い知ったか!」///

由比ヶ浜(……ヒッキーと二人きりでなら、見せてあげたのに)///

雪ノ下「まったく……ああも堂々と痴漢行為をするなんて」///

天城「……あ!」

りせ「え!? どうしたんですか!?」

天城「……露天風呂、今の時間って」

天城「男湯だった……」

一同「!?」

192: 2013/12/16(月) 21:36:31 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「……という事は」

由比ヶ浜「ヒッキー達は悪くなかったって事?」

雪ノ下「……そうなるわね」

白鐘「……悪い事しましたね」

里中「いやいやいや! その後、チャンスとばかりに居座ろうとしたじゃん!?」

天城「ま、まあ、男の子だし……」///

りせ「理解出来なくないけど、やましい心が無かった訳じゃないでしょ?」

白鐘「…………」

白鐘「……それはそうと、見られたのかな」///

由比ヶ浜「……」///

雪ノ下(……今、コンテストの時の由比ヶ浜さんの気持ちが、わかった気がする)///

193: 2013/12/16(月) 21:37:45 ID:29iWkTCo

室内大浴場

現在 女湯


陽乃「…………」

陽乃「……雪乃ちゃん、遅いわね?」


―――――――――――


比企谷達の部屋


花村「……はあ」

クマ「イタタ……酷い目に会ったクマ……」

比企谷「このアザ……しばらく残りそうだな……痛つつ」

花村「…………」

194: 2013/12/16(月) 21:39:06 ID:29iWkTCo

花村「……ところでよ」

比企谷「……なんだ?」

クマ「……何クマ?」

花村「見たか?」

比企谷「いや……」

クマ「湯気が凄くて、お顔がやっと分かるくらいだったクマ……」

花村「はあ……なんだよ、この仕打ち……」

花村「脱衣場出る時、看板見たら、やっぱり男湯だったのに……」

比企谷「謝罪と賠償を要求したいな」

花村「あいつらがそんな要求に従ってくれるかよ……」


     ……ぉ…………ぁ…………


195: 2013/12/16(月) 21:40:07 ID:29iWkTCo

花村「…………」

比企谷「…………」

クマ「…………」

花村「……ええと、そうだ! トランプでもするか?」

クマ「今、何か聞こえなかったクマ?」

花村「はあ? 何の事だ? お、俺には、聞こえなかったぞ?」

比企谷「…………」


     ……はぁ……うぐっ……おっ……


クマ「……は、はっきり、聞こえちゃったクマよ」

比企谷「……そういえば」

花村「な、何だよ? 比企谷。 なーんも気づく様な事、無いと思うけど!?」

196: 2013/12/16(月) 21:41:05 ID:29iWkTCo

比企谷「山野アナが最後に目撃されたのって……天城屋なんだよな?」

花村「そ、それが、ど、どうしたって、言うんだよ?」

比企谷「この部屋……山野アナが泊まった部屋なんじゃ……」

花村「あー! 言っちゃった!」

花村「その事、上手ーく スルーしようと思ってたのに!」


     ぁあっ……はぁ…………うっ……


クマ「ま、また、聞こえたクマ~!!」

花村「ひいいいっ!」

比企谷「…………」

比企谷「……おい」

197: 2013/12/16(月) 21:42:25 ID:29iWkTCo

花村「な、なんだよ?」

比企谷「おかしくないか?」

花村「……何がだ?」

比企谷「さっきから聞こえるこの声……男の声っぽくないか?」

クマ「クマ?」

花村「…………」

花村「も、もしかして……」

比企谷「……おう」

花村「じょ、成仏できない山野アナの霊が」

花村「寝ている男を金縛りか何かで……」

比企谷「……」

クマ「……」

198: 2013/12/16(月) 21:43:22 ID:29iWkTCo

比企谷「ば、バカ言うなよ」

比企谷「第一、それならこの部屋の俺たちを……」


     ………う………あぁ……は……


クマ「ひいいいいいいっ!!」

花村「と、とにかく、こんな部屋じゃ、安心して寝れねーよ!」

クマ「こ、こうなったら、みんなの所に行くクマ!」

花村「えっ!?」

花村「さすがにそれはマズイだろ?」

比企谷「もう手足縛られたくないしな……」

199: 2013/12/16(月) 21:44:24 ID:29iWkTCo

比企谷「と、ともかく、だ」

比企谷「この声の正体を確かめるぞ」

花村「マ、マジかよ……」

クマ「センセイ、それは怖いクマ……」

比企谷「先人は良いことわざを残してくれている」

比企谷「幽霊の、正体見たり枯れ尾花ってな」

クマ「どういう意味クマ?」

花村「幽霊だと思ったが、よく見たらただの枯れた花だったっつー話だよ」

クマ「ほうほう。 勉強になるクマ」

比企谷「……まあ、最悪。 戸塚の部屋に逃げ込む事も考えておこう」

花村「……だな」

クマ「わかったクマ!」

200: 2013/12/16(月) 21:45:28 ID:29iWkTCo


―――――――――――


天城屋 玄関ロビー付近


     サアアアアア……

由比ヶ浜「…………」

??「……外、雨が降ってきたみたいだね」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜「さいちゃん……」

戸塚「良かったら、お茶でもどう?」

由比ヶ浜「うん。 もらおうかな」

201: 2013/12/16(月) 21:47:00 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「さいちゃん、さっきはごめんね?」

由比ヶ浜「なんか天城さん、時間を間違えてたみたいで……」

戸塚「ああ……そうだったの」

戸塚「僕はいいけど……八幡達、ボコボコだったからね」

戸塚「彼らに謝った方がいいかな」 クスッ

由比ヶ浜「うん。 明日にでも謝っておく」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「雨……やまないかな」

戸塚「天気予報じゃ無理っぽい感じだったね……」

戸塚「どうする? 高台……だったっけ?」

戸塚「告白する場所」

由比ヶ浜「……うん」///

202: 2013/12/16(月) 21:48:11 ID:29iWkTCo

由比ヶ浜「私、八十稲羽で他にいい場所知らないし」

由比ヶ浜「晴れてくれたら、最高だと思うんだけどな……」

戸塚「延期する?」

由比ヶ浜「ううん。 それはイヤ」

由比ヶ浜「……今言わないと、もうずっと言えない気がするし」

戸塚「そっか……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ヒッキー、雨降ってても来てくれるかなぁ」

戸塚「この旅館とかじゃダメなの?」

由比ヶ浜「……二人きりになりたいんだ、私」

由比ヶ浜「ゆきのんやここのみんなに邪魔されない場所で」

戸塚「…………」

203: 2013/12/16(月) 21:49:08 ID:29iWkTCo

戸塚「もう遅い時間だね」

戸塚「そろそろ休んだ方がいいかも」

由比ヶ浜「そうだね」 クスッ

戸塚「…………」

戸塚「ありきたりな事しか言えないけど」

戸塚「頑張ってね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「さいちゃん……ありがとう」

由比ヶ浜「私、頑張るよ!」


―――――――――――


204: 2013/12/16(月) 21:50:02 ID:29iWkTCo

比企谷(……この部屋か)


     はあっ……はあっ……ううっ……


花村(……マジで苦しそうな声出してるな)

クマ(隣の部屋だとは思わなかったクマ……)

比企谷(…………)

比企谷(よ、よし……)

比企谷(ふすまを……少し開けるぞ)

花村(お、おう……)

クマ(い、いったい、何が起こっているクマ……!?)

205: 2013/12/16(月) 21:51:11 ID:29iWkTCo


     スススッ……


完二「はあっ……はあっ……」

完二「直斗……なお……うっ……」


     ピシャ


比企谷「…………」

花村「…………」

クマ「」

比企谷「花村」

花村「おう」

比企谷「ゲロ袋、持ってないか?」

花村「奇遇だな。 俺も同じ事、お前に聞こうと思ったんだ」

クマ「」

206: 2013/12/16(月) 21:52:49 ID:29iWkTCo

比企谷「クマも気絶してるし、とりあえず」

比企谷「戸塚の部屋に行って、癒してもらおうと思う」

花村「ああ……いいな、それ」

花村「今見た事、忘れさせてくれるのは、それくらいだよな」

比企谷「行こうぜ」

花村「おう」



     そこから言葉はいらなかった

     今は、何よりもとつかわいいを味わいたい

     それしか思い浮かばなかった……



207: 2013/12/16(月) 21:54:56 ID:29iWkTCo



―――――――――――





     サアアアアア……






208: 2013/12/16(月) 21:56:21 ID:29iWkTCo

深夜

八十稲羽 某所


     ……ピウィ~……

???「……映った」

???「…………」

???「!」

???「この娘は……八十稲羽在住じゃないのに」

???「なんて事だ……」

???(…………)

???(良かった……【マヨナカテレビ】の法則性に気がついていて)

???(……必ず、救ってあげるからね)

???(由比ヶ浜結衣さん……ふふふ)

209: 2013/12/16(月) 21:57:30 ID:29iWkTCo





     ふふふふふふふふふふ……





225: 2013/12/30(月) 16:38:37 ID:momoHeLU


―――――――――――


????


マーガレット「ようこそ、ベルベット・ルームへ」

マーガレット「申し訳ありません」

マーガレット「我が主イゴールは、ただいま所用で席を外しております」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふ……そうね」

マーガレット「確かにこちらからお呼びする事は多いけど」

マーガレット「たまにお客様の様に」

マーガレット「自分の意志とは無関係に来房される方は居るのよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「力(ちから)……?」

マーガレット「ああ、『ワイルド』の事?」

226: 2013/12/30(月) 16:39:47 ID:momoHeLU

マーガレット「そうね。 そうかもしれない」

マーガレット「でも、大抵は……大きな迷いや悩みを抱え込んだ時」

マーガレット「意思を持たぬ来房者となる事が多いわ」

マーガレット「ここは……そういう場所なのよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「そう。 心当たりは無いのね」

マーガレット「なら」

     パラララ……

マーガレット「占いでもどうかしら?」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふ、お客様ならそう言うと思ったわ」

227: 2013/12/30(月) 16:41:04 ID:momoHeLU

     サッサッサッ……

マーガレット「…………」

マーガレット「……これは」

マーガレット「…………」

マーガレット「…………」

マーガレット「ええ……良くない結果だったわ」

マーガレット「知らない方がいい」

マーガレット「…………」

マーガレット「気になる?」

マーガレット「…………」

マーガレット「……あなたに不幸が訪れるわ」

マーガレット「でもそれは……あなたを成長させる出来事かもしれない」

228: 2013/12/30(月) 16:42:16 ID:momoHeLU

マーガレット「…………」

マーガレット「そうね……『たかが』占いよ」

マーガレット「気にするだけ無駄よね」

マーガレット「でも……どこかで引っかかってしまう」

マーガレット「それが人間というもの……」

マーガレット「…………」

マーガレット「あら? そろそろお目覚めの時刻の様ね」

マーガレット「霧で覆われたお客様の進む道に」

マーガレット「少しでも光が差し込むよう、祈ります」

マーガレット「どうかお気を付けて」

229: 2013/12/30(月) 16:43:18 ID:momoHeLU


―――――――――――


翌日の朝

雪ノ下の部屋


     コン コン

雪ノ下「戸塚くん? 朝食の準備ができたんだけど」

雪ノ下「起きてるかし……?」

     ヤベッ ユキノシタダ! マズイッ カクレナイト!

雪ノ下「…………」

     ガチャ

比企谷「」

花村「」

クマ「」

雪ノ下「……どういう事か、説明してもらえるかしら?」

230: 2013/12/30(月) 16:44:17 ID:momoHeLU


―――――――――――


戸塚「――という訳で」

戸塚「よく分からないけど、怖い思いしたみたいなんだ」

雪ノ下「……呆れて開いた口が塞がらないわ」

比企谷「反論はしねぇよ……」

花村「思い出したくないから、それへのツッコミは無しの方向で」

クマ「……お願いクマ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「まあ、いいけど」

231: 2013/12/30(月) 16:45:31 ID:momoHeLU

雪ノ下「それよりも……」

比企谷「ん?」

雪ノ下「私の部屋を荒らしたりしてないでしょうね?」

比企谷「してねーよ……」

戸塚「大丈夫だよ、雪ノ下さん」

戸塚「みんな大人しい感じだったから」

雪ノ下「……ならいいけど」

花村(……そういや、この部屋)

花村(雪ノ下さんの住んでる部屋なんだっけ……)

クマ「わお」

クマ「という事は~この部屋はユキノンの秘密がいっぱいクマね!」

     ガラッ

クマ「おおっこれはぷりち~なパン」

     ゴスッ!

232: 2013/12/30(月) 16:46:23 ID:momoHeLU


―――――――――――


天城屋 廊下


白鐘「ふぁ……」

完二「……!」

完二「な、直斗……!?」

白鐘「え?」

白鐘「……巽完二くん。 君もここに宿泊してたのか」

完二(……気まずい。 昨夜あんな事したし……)///

白鐘「…………」

233: 2013/12/30(月) 16:47:35 ID:momoHeLU

白鐘「……少し呆れ……驚きましたけど」

白鐘「君は凄いですね」

完二「……は?」

白鐘「コンテストのステージ、しかも大勢の目の前で」

白鐘「告白したんですから」

完二「…………」///

白鐘「実は……僕も真似をしようかと、少し思いました」

完二「!」

完二「……つーことは、誰か好きな奴が居るって事か?」

白鐘「……ええ」///

白鐘「もっとも、ステージに立って、たくさんの人の目を見た時に」

白鐘「もうそれどころでは無くなりましたけど……」

白鐘「でもそのおかげで、君の凄さに気がつきました」

234: 2013/12/30(月) 16:49:00 ID:momoHeLU

完二「そうか……」

完二「けど、俺ァそんなに凄い奴じゃねぇよ」

完二「なんつーか……自分のモヤモヤした気持ちに」

完二「踏ん切りをつけたかっただけなんだ」

白鐘「…………」

完二「俺にもいろいろあってよ」

完二「ああいう行動に出たのも自分の逃げ場を無くすっつーか」

完二「とことんまで自分自身を追い詰めて、何が何でもやり通すんだって」

完二「ハンパな俺と決別したかったってのが、根底にある」

完二「結局のところ、俺ァ、自分の事しか考えてねぇんだよ……」

白鐘「……そうですか」

235: 2013/12/30(月) 16:50:00 ID:momoHeLU

完二「…………」

完二「でもよ」

白鐘「はい?」

完二「スッキリしたぜ」

白鐘「…………」

完二「俺のやり方は間違っていたかもしんねぇ」

完二「けど、やりたい様にやって、精一杯ぶつかって、お前に断られた」

完二「だから……また変に思われるかもしれねーが、良かったと思っている」

完二「ありがとうな」

白鐘「…………」

完二「じゃあな。 直……白鐘」

完二「誰かしらねーが、お前の想い。 届く事を祈ってるぜ」

白鐘「巽くん……ありがとう」

236: 2013/12/30(月) 16:50:52 ID:momoHeLU


―――――――――――


午前中

天城屋 玄関ロビー付近


     オ届ケ物デース

     ハーイ、少々オ待チ下サイ

由比ヶ浜「あ、ヒッキー」

比企谷「何だ? 由比ヶ浜?」

由比ヶ浜「あのね……ちょっと時間が欲しいの」

比企谷「時間? 何でだ?」

237: 2013/12/30(月) 16:51:59 ID:momoHeLU

由比ヶ浜「話がしたいの」

由比ヶ浜「……二人きりで」

比企谷「…………」

比企谷「どこでだ?」

由比ヶ浜「高台」

比企谷「……この雨の中でか?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」

比企谷「…………」

比企谷「……わかった、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜「あ、ありがとう! ヒッキー!」

238: 2013/12/30(月) 16:53:11 ID:momoHeLU

比企谷「けど、荷物を自宅に置いてきてからでいいか?」

由比ヶ浜「うん! もちろんだよ、ヒッキー!」

由比ヶ浜「後で連絡をくれたらいいから!」

由比ヶ浜「でも……今日中にお願いね?」

比企谷「わかった」


花村「お? 比企谷、もう帰る準備終わったのか」

比企谷「ああ」

里中「もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」

戸塚「そうだよ、八幡」

比企谷「そうしたいのは山々だが、昨日突然ここに泊まる事が決まったしな」

比企谷「足立さんに顔くらいは見せておこうと思って」

239: 2013/12/30(月) 16:54:29 ID:momoHeLU

りせ「へぇ……比企谷先輩、意外に気を遣うのね」

比企谷「そんなんじゃない。 行方不明事件の事もあるし」

比企谷「警察に勘ぐられない様、念のためだ」

りせ「ああ……納得」


由比ヶ浜(……夏休みの時、少し事情を聞いたけど)

由比ヶ浜(何となくヒッキーらしくないな、と、思ったっけ)


花村「……つー事は、俺らも長居は良くねぇな」

里中「……だね」

里中(あたしなんて一度連れ去られてるし)

りせ「しょうがない。 あたしも一度、戻ろっか」

白鐘「ですね」

240: 2013/12/30(月) 16:56:27 ID:momoHeLU

クマ「クマは、もうしばらくここに居るクマよ~」

クマ「ユイちゃん、サイちゃんと、いっぱい遊ぶクマ!」

比企谷「……すまないな、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ううん。 大丈夫だよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「クマくんと遊ぶの楽しいし♪」

クマ「ユイちゃんは天使クマ~」

雪ノ下「暴走しないよう、見張っておくわ」

天城「私もね」

比企谷「任せる。 じゃ……」

由比ヶ浜「うん、ヒッキー」

雪ノ下「……?」

241: 2013/12/30(月) 16:57:14 ID:momoHeLU


―――――――――――


足立宅


     サアアアアア……

比企谷「ただいま戻りました」

足立「あれ? 比企谷くん?」

足立「もう帰ってきたのかい?」

比企谷「ええ。 と言っても荷物を置きに来ただけですけど」

比企谷「この後、文化祭打ち上げ会パート2があるとか」

足立「ははは、賑やかな友達だったものねぇ……さぞ楽しそうだ」

比企谷(足立さん、遠くを見る様な目で言われても……)

比企谷(ここで食事した時の事、根に持ってるのかもな)

242: 2013/12/30(月) 16:58:18 ID:momoHeLU

足立「あっ、そうそう」

足立「君宛てにまた手紙が届いてるよ」

比企谷「…………」

比企谷「……そうですか」

足立「はいこれ」

比企谷「……どうも」

比企谷「じゃ、俺、出かけますので」

足立「もう? 手紙も見ないのかい?」

比企谷「道すがら読みますので。 では、行ってきます」

     ガチャ キィ……パタン

足立「…………」

243: 2013/12/30(月) 16:59:06 ID:momoHeLU


―――――――――――





     コ ン ド コ ソ

     ヤ メ ナ イ ト  ダ イ ジ ナ

     ヒ ト ガ イ レ ラ レ テ

     コ ロ サ レ ル ヨ





比企谷「…………」

比企谷(明らかに犯人からのものだな……)

比企谷「…………」

比企谷(さて……どうするか)

244: 2013/12/30(月) 17:00:07 ID:momoHeLU

比企谷「…………」

     ピッ ポッ パッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「白鐘か?」

比企谷「ぶしつけで悪いが、今どこに居る?」

比企谷「…………」

比企谷「自宅に向かっているところ……そうか」

比企谷「悪いんだが、これから会えないか?」

比企谷「例の警告状。 二通目が届いてた」

比企谷「…………」

比企谷「すまんな」

245: 2013/12/30(月) 17:01:17 ID:momoHeLU

比企谷「……駅近くの喫茶店○○」

比企谷「わかった。 そこで待ち合わせよう」

比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「……由比ヶ浜に連絡しておかないと」


―――――――――――


由比ヶ浜「ヒッキー!」

由比ヶ浜「うん……うん……」

由比ヶ浜「……え……急用が入った?」

由比ヶ浜「……そっか」

246: 2013/12/30(月) 17:02:17 ID:momoHeLU

由比ヶ浜「う、ううん。 大丈夫だよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「打ち上げが終わって、夕方くらい?」

由比ヶ浜「うん! それでいいよ、ヒッキー」

由比ヶ浜「私、明日までここに居るし」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん。 じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「…………」


戸塚「今の……八幡から?」

由比ヶ浜「ひゃあっ!?」

247: 2013/12/30(月) 17:04:03 ID:momoHeLU

由比ヶ浜「さ、さいちゃん……」

戸塚「ごめん。 脅かすつもりじゃなかったんだけど」

戸塚「それで、八幡からなの?」

由比ヶ浜「……うん」

戸塚「そっか……いよいよだね」

由比ヶ浜「ううっ、何か、緊張してきた」

戸塚「大丈夫だよ、由比ヶ浜さん」

戸塚「ことわざにもあるじゃない」

戸塚「案ずるよりも産むが易しって」

由比ヶ浜「……うん。 そうだね、さいちゃん」

由比ヶ浜「よぉーし! 頑張るぞ!」

戸塚「うんうん」 ニコッ

248: 2013/12/30(月) 17:05:18 ID:momoHeLU

駅近くの喫茶店○○


白鐘「……これが例の手紙ですか」

白鐘「…………」

白鐘「ふざけた内容だ……」

比企谷「全く同意見だ」

比企谷「だが、油断のならない相手でもある」

白鐘「……ええ」

白鐘「ともかく、これも鑑識作業を依頼しておきましょう」

白鐘「そうだ……聞いておきたい事があるのですが」

比企谷「何だ?」

249: 2013/12/30(月) 17:06:26 ID:momoHeLU

白鐘「足立さんは、この手紙にも触れたんですか?」

比企谷「ああ。 手渡されたからな」

比企谷「それがどうかしたのか?」

白鐘「いえ……きっと考えすぎですね」

白鐘「この手紙、前のも含めて封がなされていませんし」

比企谷「……?」

白鐘「それではこれで」

白鐘「お爺様にこの手紙を渡したら、僕もすぐに打ち上げに参加しますので」

比企谷「あ、ああ……」

比企谷「ここの会計は任せろ。 俺が払っておく」

白鐘「すみません、ご馳走になります」

白鐘「じゃ……」

250: 2013/12/30(月) 17:07:45 ID:momoHeLU


―――――――――――


花村「はい、もしもし……比企谷?」

花村「…………」

花村「!」

花村「警告状……二通目の」

花村「…………」

花村「ああ、わかった。 里中達にそれとなく伝えておく」

花村「この後の打ち上げで由比ヶ浜さん達にバレねー様に……あん?」

花村「…………」

花村「……ああ、確かに言わねー方がいいかもなぁ」

花村「う~ん……でも言っておかねーと、後々揉めそうな気もすんなぁ」

251: 2013/12/30(月) 17:08:45 ID:momoHeLU

花村「…………」

花村「敵を騙すにはまず味方から、ね……」

花村「なんか使い方間違ってる気もするが、言わんとする事はわかる」

花村「OK、比企谷」

花村「由比ヶ浜さん達が帰ったらその話をしよう」

花村「…………」

花村「ああ、白鐘は遅れるのな」

花村「了解だ」

花村「じゃ、昼飯食ったらジュネスでな!」

     ブッ…… ツー ツー

花村「さて、早いとこ俺も出かける準備しとかないと……」

252: 2013/12/30(月) 17:09:51 ID:momoHeLU



     打ち上げ会パート2は、カラオケだった。

     ……ぼっちの俺にとって、いい思い出はないが

     まあ、雪ノ下もそわそわしていて、どうにも慣れていないっぽい。



     後ろ向きに前向きだが、ちょっと安心していたりする……



253: 2013/12/30(月) 17:10:47 ID:momoHeLU


―――――――――――


数時間後

カラオケルームの一室


花村「はぁ~歌った歌ったぁ」

戸塚「みんな上手だね」

里中「やっぱりアニソンは80年代が最強っしょ!」

由比ヶ浜「白鐘くんも上手いよね」

白鐘「ど、どうも……」///

クマ「クマの歌も褒めるクマよ~!」

天城「楽しかったね♪」

りせ「また今度集まった時も来ようよ!」


比企谷(……やっと終わった)

雪ノ下(……疲れた)

254: 2013/12/30(月) 17:11:37 ID:momoHeLU

比企谷(みんな意外とアニソンとか抵抗なくて驚いたが……)

比企谷(どうにもこの雰囲気は慣れないな)

比企谷(久しぶりに自分がぼっちだと再認識した……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(でも……)

雪ノ下(何となく、この環境に馴染んできている気もする)


比企谷「それじゃそろそろお開きって事でいいか?」

比企谷「もう夕方だ」

花村「おう! そうだな、比企谷」

花村「お前の歌も良かったぜ!」

比企谷「そ、それは何より……」///

255: 2013/12/30(月) 17:12:36 ID:momoHeLU

里中「じゃあね、みんな!」

りせ「また明日!」

クマ「バイバイ、クマー!」

比企谷「…………」


由比ヶ浜(じゃあヒッキー。 えと……18:00くらいに高台で)

比企谷(18:00? 今から二時間後かよ……)

由比ヶ浜(文句言うなし!)


由比ヶ浜「じゃあね! ヒッキー!」

雪ノ下「……何を耳打ちしたの? 由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「ふふふ、内緒!」

雪ノ下「…………」

256: 2013/12/30(月) 17:13:41 ID:momoHeLU

白鐘「それじゃ、僕もこれで失礼します」

比企谷「ああ」

白鐘「何か分かり次第、連絡しますので……では」

比企谷「…………」


     サアアアアア……


比企谷「…………」

比企谷「雨……止みそうもないな」

比企谷「…………」

比企谷(由比ヶ浜……二人きりで話って、何だろう?)

257: 2013/12/30(月) 17:15:05 ID:momoHeLU



     落ち着け。

     思わせぶりな事だと感じても、それは俺の思い込みだ。

     可能性を考えろ。



     1、愛犬サブレの事

     2、実は戸塚に彼氏が出来そう

     3、花村との仲を取り持って欲しい



     ……だいたいこんなところか。

     そうだ、3の理由ならコンテストの由比ヶ浜の言動も説明がつく。

     そういう事だったか……。



258: 2013/12/30(月) 17:16:20 ID:momoHeLU



     …………もう、何度目だろうか。

     どうして、俺はこうも勘違いしてしまうのだろう。

     期待なんてするな。






     これからもずっと――






―――――――――――


259: 2013/12/30(月) 17:17:30 ID:momoHeLU

天城屋 廊下


由比ヶ浜「ふう……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん?」

雪ノ下「もうお風呂に入ったの?」

由比ヶ浜「あ、ゆきのん」

由比ヶ浜「うん。 ちょっと気持ち悪かったから」

雪ノ下「湯冷めには気をつけてね」

雪ノ下「夕食は19:00くらいになるから」

由比ヶ浜「うん、わかったよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「それまでには帰るから……」

雪ノ下「? どこかに出かけるの? この雨の中?」

由比ヶ浜「!」

260: 2013/12/30(月) 17:18:37 ID:momoHeLU

由比ヶ浜「あ、うん。 ジュネスに、ちょっと……」

雪ノ下「そうなの?」

由比ヶ浜「景品取りに行かなくちゃならなくて」

雪ノ下「景品?」

由比ヶ浜「それがさ、ほら昨日のコンテスト」

由比ヶ浜「ジュネスで買い物したら50万人目になっちゃってさー」

雪ノ下「初耳ね」

由比ヶ浜「急いでいた事もあって景品の受け取りは明日にします」

由比ヶ浜「って、いう事にしてもらったんだ……」

雪ノ下「そういう事だったの」

261: 2013/12/30(月) 17:19:38 ID:momoHeLU

雪ノ下「私も付き添いましょうか?」

由比ヶ浜「だ、大丈夫だよ!」

由比ヶ浜「結構大きな荷物なんで、宅配にしてもらうつもりだから」

由比ヶ浜「一人でも問題ないって!」

雪ノ下「そう……」

雪ノ下(だったらなおの事、後でお風呂に入ったらいいのに)

雪ノ下「本当に湯冷めには気をつけてね、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「あ、うん。 ありがとう、ゆきのん」

由比ヶ浜「じゃ、行ってくるね!」

雪ノ下「ええ」

     タッ タッ タッ…

雪ノ下「…………」

262: 2013/12/30(月) 17:20:24 ID:momoHeLU

由比ヶ浜「ふぅ~……」

由比ヶ浜「危ない危ない……あやうく感づかれるところだった」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜(えへへ……)

由比ヶ浜(これからヒッキーに告白するんだもん)

由比ヶ浜(だから、一番綺麗な私を見て欲しいんだよね)

由比ヶ浜(さて、部屋に戻って髪の毛乾かして、お化粧して)

由比ヶ浜(出かけるぞ!)///

263: 2013/12/30(月) 17:22:14 ID:momoHeLU

足立宅


比企谷「…………」

比企谷(……そろそろか)

     ガラッ

比企谷「足立さん」

足立「ん? どうしたんだい?」

比企谷「俺、ちょっと出かけてきます」

足立「出かける? こんな雨の中でかい?」

比企谷「いろいろありましてね……」

比企谷「すみませんが今日の夕食、ジュネスで買ってきた弁当です」

比企谷「遅くなるつもりはありませんが、お腹がすいたら温めて先に食べて下さい」

足立「そうかい、わかったよ。 君も気をつけてね」

比企谷「はい。 行ってきます」

264: 2013/12/30(月) 17:23:30 ID:momoHeLU

白鐘宅


白鐘「さて、昨日の報道番組の録画を確認しなくちゃ」

―――――――――――

白鐘「……ふう」

白鐘「今のところ、この街の住人に関する報道はされてないな」

     ピッ

白鐘(……そういえば、昨日の【マヨナカテレビ】を確認していなかった)

白鐘(先輩達の言う条件に合致していた状況だったけど)

白鐘(文化祭の疲れもあって、睡魔に勝てなかった……)

     ……ジュネス八十稲羽店で行われていた50万人キャンペーンですが

白鐘「!!」

白鐘「…………」

白鐘「こ、これは!?」

265: 2013/12/30(月) 17:24:27 ID:momoHeLU

白鐘「ともかく、比企谷先輩に連絡を!」

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

     お客様のお掛けになった電話番号は、現在、電源を切った状態か、電波の……

白鐘「くそっ!」 ブッ

     ルルルルル……ルルルルル……

白鐘「ダメだ、繋がらない!」

白鐘「……なら!」

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

白鐘「もしもし! 天城先輩ですか!?」

266: 2013/12/30(月) 17:25:30 ID:momoHeLU

天城「どうしたの? 白鐘くん」

天城「…………」

天城「由比ヶ浜さん?」

天城「ごめんなさい。 私、夕食の準備に忙しくて……」

天城「…………」

天城「……えっ!?」

天城「…………」

天城「う、うん! 雪ノ下さんにも聞いてみる!」

天城「一度切るね?」

    ブッ…

天城「大変……雪ノ下さん!」

267: 2013/12/30(月) 17:26:26 ID:momoHeLU

花村「マジかよ!?」

花村「…………」

花村「わかった、白鐘」

花村「オヤジに確認したら、クマ連れて天城屋に行く」

花村「……ああ、出来るだけ急ぐ。 じゃあな」

     ブッ

クマ「ヨースケ、どうしたクマ?」

花村「…………」

花村「由比ヶ浜さん、誘拐されるかもしれねぇ……」

クマ「ユイちゃんが!?」

クマ「どどどどど、どういう事クマよ!?」

268: 2013/12/30(月) 17:27:11 ID:momoHeLU

りせ「昨日、小さい報道だったけど、テレビに映ってた!?」

りせ「で、でも、由比ヶ浜さんは、八十稲羽の住人じゃないのに!」

りせ「…………」

りせ「そ、そうだね、今は由比ヶ浜さんの安否確認が先よね!」

りせ「わかったよ、白鐘くん!」


―――――――――――


白鐘「くそっ……間が悪かったとしか」

白鐘「…………」

白鐘(いや……これは『油断』だ)

白鐘(今回の事件はまだ続いていると、犯人は野放し状態だと)

白鐘(あれ程言い続けていたのにっ!!)

269: 2013/12/30(月) 17:27:53 ID:momoHeLU


―――――――――――


高台

屋根付きベンチ


     サアアアアア……

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」 チラッ

     18:32(ケータイのデジタル時計)

比企谷(……遅いな、由比ヶ浜)

270: 2013/12/30(月) 17:29:13 ID:momoHeLU

比企谷(…………)

比企谷(バスの時間、間違えたのだろうか?)

比企谷(…………)

比企谷(……ケータイ、圏外だし)

比企谷(どうしたもんかな……)

比企谷(…………)

比企谷(まあ、バスの最終便まで待ってやるか)

比企谷(…………)

比企谷(寒っ……)

比企谷(どんな話か知らねぇが、あったかいモノ奢ってもらうからな)

比企谷(由比ヶ浜)

271: 2013/12/30(月) 17:30:05 ID:momoHeLU

天城屋


白鐘「さっきから何度も掛けているんですが……」

白鐘「比企谷先輩とも連絡が取れません」

里中「どうして!?」

里中「比企谷くんは、報道されていないんでしょ!?」

白鐘「落ち着いてください、里中先輩」

白鐘「足立さんにも連絡を入れたんですが……」

白鐘「何か用があって出かけたみたいなんです」

花村「こんな雨の中でか?」

白鐘「ええ。 足立さんも不思議に思ったそうですが……」

白鐘「それ程時間は掛けないつもりだった様です」

雪ノ下「…………」

272: 2013/12/30(月) 17:31:05 ID:momoHeLU

花村「それからオヤジに確認してみたが」

花村「由比ヶ浜さん、17:30くらいに店に来たそうだ」

花村「キャンペーンの景品受取証にサインして、宅配業者に荷物を運んでもらったらしい」

花村「そこからの足取りがわからねぇ……」

白鐘「そうですか……」

花村「……後な」

白鐘「はい?」

花村「関係ないと思うが由比ヶ浜さん、やけにオシャレしていたとか」

花村「対応した店員がそんな事言ってたらしい」

白鐘「…………」

白鐘「……まさか」

273: 2013/12/30(月) 17:32:04 ID:momoHeLU

りせ「誰かと会うつもりだった?」

花村「誰かって……誰だよ?」

花村「由比ヶ浜さんがオシャレして会いたい奴なんて」

花村「比企谷以外、この街に誰が居んだよ?」


一同「!?」


花村「どうした? お前ら?」

天城「……花村くん、その通りだよ」

天城「由比ヶ浜さん、比企谷くんに会いに行ったんだよ!」

花村「!!」

花村「そ、それじゃ……比企谷の奴」///

花村「今頃、大人の階段登ってる最中」///

     ゴスッ! バキッ!

274: 2013/12/30(月) 17:33:16 ID:momoHeLU

白鐘「……ともあれ、由比ヶ浜さんの目的は分かりました」

白鐘「問題は……」

里中「どこで会う約束をしたか……だね?」

雪ノ下「私……心当たりがある」


一同「!?」


天城「どこなの? 雪ノ下さん」

雪ノ下「そうじゃなくて……正確には」

雪ノ下「場所を知ってそうな人物を知っている、という意味よ」


―――――――――――


275: 2013/12/30(月) 17:34:05 ID:momoHeLU

戸塚「……ごめん。 知らない」

雪ノ下「……そう」

戸塚「…………」


戸塚(……どうか許して、雪ノ下さん)

戸塚(由比ヶ浜さんにもう少し時間をあげて)

戸塚(彼女が納得するまで、八幡と居させてあげて……)

戸塚(…………)

戸塚(たぶん……八幡は……)

戸塚(…………)


雪ノ下「戸塚くん。 どんな些細な事でもいいの」

雪ノ下「何か思い出したら、声をかけて欲しい」

戸塚「…………」

276: 2013/12/30(月) 17:34:53 ID:momoHeLU

戸塚「……うん。 わかった」

雪ノ下「お願いね。 じゃ……」

戸塚「…………」

戸塚(雪ノ下さんも必氏だな……)

―――――――――――

雪ノ下「……ごめんなさい」

白鐘「……そうですか。 いえ、気にしないでください」

りせ「こうなったら手分けして探すしかないかも……」

白鐘「そうですね。 ですが冷静に行きましょう」

白鐘「少なくとも比企谷先輩はそうするハズです」

277: 2013/12/30(月) 17:36:04 ID:momoHeLU

花村「だな」

花村「それに誘拐されたと決まった訳でもない」

花村「案外『やっはろー』って、ひょっこり帰ってくるかもしんねーし」

白鐘(……正直、希望的観測は良くないと思いますが)

白鐘「では、ここ天城屋を拠点として二人ずつ組んで捜索を行いましょう」

白鐘「連絡係としてここに残る人を一人、残りは捜索という事で」

雪ノ下「……私が残るわ」

雪ノ下「戸塚くんが何かを思い出すかもしれないし」

雪ノ下「私のケータイ番号は、比企谷くん、由比ヶ浜さん、どちらも登録してる」

白鐘「そうですね、適任だと思います」

白鐘「搜索の皆さんは30分に一度は雪ノ下先輩に連絡を入れてください」

白鐘「それから、外は雨です」

白鐘「ケータイが通じない事から比企谷先輩達は屋内の、それも地下に居る可能性が高い」

白鐘「この条件に該当する喫茶店、飲食店などを重点的に当たってみてください」

278: 2013/12/30(月) 17:36:47 ID:momoHeLU

里中「よし! そうと決まったら行くよ! 雪子!」

天城「うん! 千枝!」

花村「行くぜ、クマ吉!」

クマ「クマの鼻センサーの力、見せてやるクマ!」

りせ「行くよ、白鐘くん!」

白鐘「ええ、行きましょう!」

     タッ タッ タッ…

雪ノ下「みんな、気をつけて……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(……どこに行ったのよ、由比ヶ浜さん)

雪ノ下(比企谷くん……!)

279: 2013/12/30(月) 17:37:34 ID:momoHeLU



―――――――――――





     サアアアアア……






280: 2013/12/30(月) 17:38:14 ID:momoHeLU

高台


比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」 チラッ

     20:14(ケータイのデジタル時計)

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

281: 2013/12/30(月) 17:38:58 ID:momoHeLU



     ……俺、何してるんだろう?

     最終バスは、とっくの昔に行った後だ。



比企谷「…………」



     けど、由比ヶ浜は、約束を破る奴じゃない

     そう思って、ここに居る。



比企谷「…………」

282: 2013/12/30(月) 17:39:37 ID:momoHeLU



     由比ヶ浜に何かあったとしても

     戸塚とか、誰かしらにそれを伝える様に言う。



比企谷「…………」



     ……そういう奴だと

     俺は思っていた。



比企谷「…………」

283: 2013/12/30(月) 17:40:16 ID:momoHeLU





     どうやら……





     そうじゃなかった……って事、なんだろうな……






比企谷「……っ」 ギリッ…

284: 2013/12/30(月) 17:41:10 ID:momoHeLU

     サアアアアア……

比企谷「…………」

     20:34(ケータイのデジタル時計)

比企谷「……帰るか」

比企谷「…………」

比企谷「……もう、十分だよな」

比企谷「…………」

     サアアアアア……

比企谷(バスで約15分……)

比企谷(平均時速40キロとして……だいたい10キロ)

比企谷(歩きだと二時間くらいか……)

285: 2013/12/30(月) 17:42:04 ID:momoHeLU

比企谷(…………)

比企谷(それもいいか)

比企谷(ぼっちには……慣れている)


     トボ トボ トボ…


―――――――――――


天城屋

由比ヶ浜と戸塚の部屋


戸塚「…………」

戸塚(もうすぐ22:00……)

戸塚(いくらなんでも遅すぎる……)

286: 2013/12/30(月) 17:42:51 ID:momoHeLU

雪ノ下「もしもし……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ええ、まだ帰って来てないわ」

雪ノ下「比企谷くんは?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……うん。 他の人達も同じよ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「わかったわ、それじゃ」

     ブッ…… ツー ツー

雪ノ下「…………」

287: 2013/12/30(月) 17:43:37 ID:momoHeLU

戸塚「……雪ノ下さん」

雪ノ下「!?」

雪ノ下「戸塚……くん」

雪ノ下「! 何か、思い出したの!?」

戸塚「…………」

戸塚「ごめんなさい、雪ノ下さん」

戸塚「実は――」

288: 2013/12/30(月) 17:44:48 ID:momoHeLU

白鐘「高台!?」

白鐘「そうか……うかつだった!」

白鐘「確かにあそこなら圏外ですし、時間帯的にも天候的にも」

白鐘「誰にも邪魔されないで済む……!」

白鐘「…………」

白鐘「わかりました雪ノ下さん」

白鐘「僕と久慈川さんは、これからタクシーで高台に向かいます」

白鐘「比企谷先輩と入れ違いになるかもしれませんが」

白鐘「それを考慮して、今から一時間後には必ず戻ります」

白鐘「捜索に当たっている皆さんにも連絡して、一度天城屋に集まりましょう!」

白鐘「では……」

     ブッ…… ツー ツー

白鐘「久慈川さん!」

りせ「わかってる! タクシー!」

289: 2013/12/30(月) 17:45:34 ID:momoHeLU


―――――――――――


比企谷「……ふう」

比企谷「やっと麓(ふもと)まで降りてきた……」

比企谷「…………」

     ピピロピンッ♪

比企谷「ん?」

比企谷「…………」

比企谷「!?」

比企谷(何だ、これ……)

比企谷(白鐘達からの着信が……こんなに)

比企谷(…………)

290: 2013/12/30(月) 17:46:20 ID:momoHeLU

比企谷(ともかく、留守録を……) ピッ

比企谷(…………)


白鐘『もしもし、比企谷先輩! 大変です!』

白鐘『由比ヶ浜さんが誘拐されるかもしれません!』


比企谷「!?」


白鐘『ともかく、連絡をください! 詳しい話はその時にします!』


比企谷「…………」

比企谷「…………」 ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……

291: 2013/12/30(月) 17:47:22 ID:momoHeLU

比企谷「クソッ!」

比企谷「今度はそっちに繋がらねぇのかよ!」

比企谷「…………」

比企谷「!」

比企谷「そうだ、他の連中なら……!」

比企谷「…………」 ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「雪ノ下!」

雪ノ下『比企谷くん!?』

雪ノ下『高台に……』

比企谷「今、白鐘の留守録を聞いたところだ」

比企谷「由比ヶ浜が誘拐されそうだってな……何が起きている!?」

292: 2013/12/30(月) 17:48:30 ID:momoHeLU

雪ノ下『…………』

雪ノ下『由比ヶ浜さん、昨日テレビに映っていて……まだ帰ってこないの』

比企谷「っ!!」

雪ノ下『白鐘くんから連絡を受けて、私達が由比ヶ浜さんを探し始めたのが19:00くらいよ』

雪ノ下『状況から、あなたに会いに行ったとは推測できたけど……』

比企谷「…………」

雪ノ下『そして、ついさっき、戸塚くんから』

雪ノ下『あなた達が高台で話し合う約束をしていたと聞いたの』

比企谷「…………」

雪ノ下『入れ違いになってしまったけど、白鐘くんはあなたを迎えに高台へ行って』

雪ノ下『捜索に当たってるみんなを一度、天城屋で集めてくれと頼まれたわ』

比企谷「…………」

293: 2013/12/30(月) 17:49:28 ID:momoHeLU

雪ノ下『……もうすぐ、【マヨナカテレビ】の時間よ』

雪ノ下『由比ヶ浜さんが誘拐されたかどうか、わかるわ』

雪ノ下『比企谷くんも天城屋に来て』

比企谷「…………」

比企谷「……いや」

比企谷「待つ必要はない」

雪ノ下『え? 比企谷くん、それはどう言う意味……』

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

比企谷「……待ってろ、由比ヶ浜」

294: 2013/12/30(月) 17:50:16 ID:momoHeLU


―――――――――――


天城屋


白鐘「連絡はあったのにまだ来てないんですか!?」

雪ノ下「……ごめんなさい」

白鐘「! ……いえ、こちらこそ取り乱してすみません」

白鐘「どこから掛けてきたか、言ってましたか?」

雪ノ下「いいえ……全くわからない」

花村「ったく、普段は冷静なくせに」

花村「こんな大事な時にスタンドプレーかよ……」

白鐘「…………」

白鐘「待つ必要はない……」

白鐘「……!!」

白鐘「まさか!?」

295: 2013/12/30(月) 17:51:04 ID:momoHeLU



―――――――――――







     サアアアアア……







296: 2013/12/30(月) 17:52:12 ID:momoHeLU

八十稲羽警察署 取調室


堂島「…………」

比企谷「…………」

堂島「……こんな形で君と出会う筝になるとはな」

堂島「ジュネス八十稲羽店への不法侵入、及び器物損壊に」

堂島「警備員への暴行……」

堂島「……正直、こんな事をしでかす奴だと思わなかったが」

比企谷「…………」

堂島「…………」

堂島「まあいい」

堂島「被害自体は大した事はない。 これらの件は穏便に済ませる事が出来る」

堂島「足立の親戚でもあるし、補導歴は正直つけたくない」

297: 2013/12/30(月) 17:53:14 ID:momoHeLU

比企谷「…………」

堂島「……ただし」

堂島「知っている事は、全部、話してもらうぞ」

堂島「比企谷八幡くん」

比企谷「…………」

堂島「…………」

堂島「だんまりか」

堂島「ま……先は長いんだ」

堂島「ゆっくり考えるのもいいだろう」

堂島「しばらく、頭を冷やすくらい待ってやる」

     ガチャ……キィ……パタン カチリ☆(鍵閉め)

比企谷「…………」

298: 2013/12/30(月) 17:54:20 ID:momoHeLU

比企谷「…………」

比企谷(……くそっ)

比企谷(こんな筝になるなんてな……)

比企谷(…………)


     ……ピウィ~……


比企谷(!!)

比企谷(【マヨナカテレビ】か……!)


     取調室に備え付けられていた小さなテレビに

     予測はしていたが、映って欲しくないものが映し出されてゆく……


比企谷「……由比……ヶ浜」

299: 2013/12/30(月) 17:55:23 ID:momoHeLU

比企谷「…………」

比企谷「……っ」

比企谷「くそっ……くそっ!」

比企谷「くそったれがああぁぁっ!!」





     【マヨナカテレビ】は、鮮明な映像で由比ヶ浜を映し出し、そして

     俺にとって、長い夜が始まった――





308: 2014/01/05(日) 09:49:51 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


天城屋


白鐘「どうでした? 花村先輩」

花村「…………」

花村「白鐘の予測通りだ」

白鐘「……そうですか」

花村「ただ、比企谷は保護者の事を最後まで言わなかったらしい」

花村「オヤジ達は、仕方なく警察に引き渡したそうだ」

りせ「比企谷先輩……足立さんに迷惑かけたくなかったのかな」

花村「さあな……けど、オヤジに無理言って、被害届は取り消す様に頼んだ」

花村「明日になるが、これで警察からは解放されるだろう」

309: 2014/01/05(日) 09:50:45 ID:IZPNVGg.

白鐘「明日……ですか」

花村「……気持ちはわかる」

花村「けど、今回の件は比企谷の方が100%悪い」

花村「俺に出来る事は、これが精一杯だ」

雪ノ下「…………」

天城「白鐘くん」

白鐘「はい?」

天城「由比ヶ浜さん……映ったわ」

天城「【マヨナカテレビ】に……」

里中「しかも鮮明な映像でね」

白鐘「……という事は」

白鐘「彼女はもうテレビの中、という事ですか……」

りせ「うん……そうなる」

310: 2014/01/05(日) 09:52:03 ID:IZPNVGg.

クマ「およよ……ユイちゃん」

クマ「…………」

クマ「クマ……センセイの気持ち、ちょっとだけわかるクマ」

雪ノ下「え?」

クマ「ユイちゃん、きっと一人ぼっちで怖い思い、してるクマ」

里中「まあ……あたしらもそれはわかるじゃん?」

クマ「ユイちゃんは……チエちゃん達とは全く違うクマ」

クマ「だって、さらわれるかもしれない事を」

クマ「事前に言われていないクマよ……きっと恐ろしく思ってるクマ」


一同「!」


311: 2014/01/05(日) 09:53:35 ID:IZPNVGg.

白鐘「……そうか」

白鐘「同じなんだ……」

天城「同じって……何が?」

白鐘「…………」

白鐘「先の事件で亡くなった二人と状況が……」


一同「!?」


里中「ど、どう言う意味!?」

白鐘「あの世界は、放り込まれた人間の心の一部が【シャドウ】となり」

白鐘「自分を頃してしまうと推測しています」

花村「確証は無いけどな」

312: 2014/01/05(日) 09:55:28 ID:IZPNVGg.

白鐘「しかし……もし」

白鐘「本人の『恐怖感』が深く関わっているとしたら……」

里中「そ、そんな事、あるの!?」

天城「……わからないよ、千枝」

天城「でも、言いたい事はわかるよ、白鐘くん」

天城「私も放り込まれた時、寸前まで千枝がそばに居てくれたけど……」

天城「誘拐されるかもしれない事は聞いてなかったから、あの世界で目が覚めた時」

天城「もの凄く不安に思った」

雪ノ下「…………」

花村「……なる程、ね」

花村(比企谷は理屈こね回す奴だからありえそうだけど……)

花村(そう思いたいんだろうな……白鐘)

313: 2014/01/05(日) 09:56:41 ID:IZPNVGg.

白鐘「ともかく一度、警察署に行ってみましょう」

白鐘「無駄になるかもしれませんが、花村先輩も居ます」

白鐘「事情を話せば、比企谷先輩を返してもらえるかもしれません」

花村「確かにそうだな」

花村「ひょっとしたら足立さんが居るかも知んねーし」

花村「案外、すぐ返してくれるかもな!」

りせ「うん、大丈夫だよ! きっと!」

里中「そうと決まったら行こう!」

天城「そうだね! 千枝!」

クマ「待っててクマよ、センセイー!」

雪ノ下「…………」

314: 2014/01/05(日) 09:57:37 ID:IZPNVGg.

雪ノ下(……比企谷くん)

雪ノ下(本当にあなたらしくない……こんなの)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(それだけ大事……ううん)

雪ノ下(そういう事をさせてしまう程の人、という事なのね)

雪ノ下(あなたにとって……由比ヶ浜結衣、という人は……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(私の価値は……?)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(……最低ね、私)

雪ノ下(少なくとも、今考えるべき事じゃないわ)

雪ノ下(今は……)

315: 2014/01/05(日) 09:58:34 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


八十稲羽 警察署


足立「……堂島さん」

堂島「来たか……足立」

足立「本当なんですか? 比企谷くんが盗みに入ったって……」

堂島「詳しくはわからん」

堂島「ジュネスの警備員は窃盗目的で侵入した、と言ってるがな」

堂島「身体検査の結果、何も盗んでいないし」

堂島「本人がだんまりを決め込んでいるので、良くわからない、というのが」

堂島「今の状況だ」

足立「…………」

316: 2014/01/05(日) 09:59:38 ID:IZPNVGg.

堂島「ジュネスにたいした被害はない」

堂島「だから穏便に済ませる事は可能だろう」

堂島「……だがな、こっちにも知りたい事がある」

足立「…………」

堂島「もう分かっていると思うが……」

堂島「それを聞き出すのが、お前を呼んだ理由だ」

足立「…………」

堂島「一応、お前は保護者だ。 それに接してきた時間も長い」

堂島「腹を割って話せるのはお前だけだろう」

堂島「頼んだぞ」

足立「……分かりました」

317: 2014/01/05(日) 10:00:27 ID:IZPNVGg.

取調室


比企谷「…………」

足立「…………」

足立「……比企谷くん」

足立「黙ってちゃ分からないよ」

比企谷「…………」

足立「……もう一度聞くからね?」

足立「どうしてこんな事をやったんだい?」

比企谷「…………」

318: 2014/01/05(日) 10:01:33 ID:IZPNVGg.



     ……本当にその通りだ。

     どうして俺は、こんな事をしでかしてしまったんだ?

     たとえあの世界に行けたとしても、クマや久慈川が居ないんじゃ

     由比ヶ浜の存在の有無や、こっちの世界に帰る事もできない。

     そもそも由比ヶ浜の居場所すらわからない。



     俺は……何をしていたんだ?

     いつの間にか、自分一人で何でもやっている気になっていたのか?



319: 2014/01/05(日) 10:02:59 ID:IZPNVGg.




     ……違う



     ただ…… 俺は……



     由比ヶ浜を……




320: 2014/01/05(日) 10:05:16 ID:IZPNVGg.

警察署 玄関ロビー付近


堂島「……ん?」

堂島「何か騒がしいな……?」


白鐘「! 堂島さん!」

堂島「白鐘?」

堂島「……こんな時間に何をしている」

堂島「それもこんな大勢で」

白鐘「堂島さん。 比企谷先輩を解放してもらえませんか?」

堂島「…………」

白鐘「無茶を言っているのは承知の上です」

白鐘「ジュネスの被害届は、明日には……いえ、もう今日ですね」

白鐘「取り消してもらえるよう、お願いしてあります」

花村「それはジュネス八十稲羽店・店長の息子の俺が保証します」

321: 2014/01/05(日) 10:06:33 ID:IZPNVGg.

堂島「……ほう」

堂島「だったら、取り消されるまでは大人しくしていろ」

堂島「それがルールというものだ」

白鐘「それはわかっています。 だからこそ、そこを曲げて……」

堂島「警察というものは、そんな理屈では動かん」

堂島「さあもう帰れ。 子供が出歩いていい時間じゃない」

白鐘「…………」

白鐘「堂島さん……」

堂島「ん?」

322: 2014/01/05(日) 10:07:32 ID:IZPNVGg.

白鐘「あなたの考えは解っています」

白鐘「比企谷先輩から、今回の事件の情報を知りたい」

白鐘「そういう事なのでしょう?」

堂島「…………」

白鐘「それならば、僕たちがある程度できますし、それに……」

白鐘「新たな事件が起きてしまっている」

堂島「……何?」

白鐘「天城先輩」

天城「刑事さん。 私、天城屋の女子高生女将の……」

堂島「失踪騒ぎの被害者、天城雪子……だったな」

天城「…………」

天城「実は……うちの店に宿泊しているお客様の一人が」

天城「まだ帰って来てません」

堂島「!?」

323: 2014/01/05(日) 10:09:01 ID:IZPNVGg.

白鐘「僕の推理で、犯人の動機こそわからないものの」

白鐘「被害者の共通点として、行方不明になる直前」

白鐘「必ず八十稲羽に居て、テレビ報道されている人物である、という事を掴んでいます」

堂島「…………」

白鐘「当該の被害者は昨日……いえ、一昨日」

白鐘「小さくではありましたが、ジュネスのキャンペーン当選者として」

白鐘「宿泊先と共に報道されていたんです」

堂島「…………」

堂島「いいだろう、話を聞こう」

324: 2014/01/05(日) 10:10:10 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


堂島「今日……いや、昨日の夕方から足取りが……」

白鐘「そうです」

白鐘「事情は割愛しますが、行方不明になってる由比ヶ浜結衣さんは」

白鐘「比企谷先輩と会う約束をして、そのさなかに誘拐された可能性が高い」

里中「あたし達も街中を探し回りました」

りせ「でも、それ以降で彼女らしき人を見かけた、という人は居なくて……」

堂島「…………」

堂島「話を聞く限りでは、ジュネスを出てから……という事になるな?」

白鐘「そうです」

堂島「なら……ジュネスの防犯ビデオが役に立つかもしれない」

白鐘「え?」

堂島「比企谷の身柄引渡しの際、店側が証拠として」

堂島「一週間分の録画を提出している」

325: 2014/01/05(日) 10:11:36 ID:IZPNVGg.

堂島「被害者に最後に会った奴には事情を聞くべきだろう」

堂島「そいつが分かるかもしれない」

花村「俺が聞いた話じゃ、17:30くらいに」

花村「由比ヶ浜さんはジュネスに来ています」

堂島「よし、こっちに来い……本来は一般人には見せられんが」

堂島「俺はその由比ヶ浜という被害者の顔を知らんからな」

雪ノ下(一度だけ……夏休みにチラッと見ただけだから覚えてないのね)

堂島「ただし、気がついた事があれば何でも話せ。 いいな?」


一同「はい!」


堂島「……ったく」

326: 2014/01/05(日) 10:13:13 ID:IZPNVGg.

りせ「居た! ほら、この髪型、絶対由比ヶ浜さんだよ!」

花村「どれどれ……おう、確かに由比ヶ浜さんだな」

白鐘「カウンターで景品受け取りのサインをしているところですね」

堂島「この娘が被害者か?」

白鐘「ええ……」

堂島「ふむ……」

里中「うわ、結構大きな箱だね」

天城「景品って中身は何なの?」

花村「確か、大きめのテレビだったと思う。 それと商品券10万円」

天城「ふうん」

クマ「あ、宅配の人クマ」

里中「割と背の高い男の人じゃん」

白鐘「ただ……顔までは良くわかりませんね」

327: 2014/01/05(日) 10:14:36 ID:IZPNVGg.

堂島「……ん?」

白鐘「堂島さん?」

堂島「…………」

堂島「こいつは……?」

白鐘「……何かに気がついたんですか?」

堂島「ちょっと待て、別角度のカメラ映像で確かめる」

     ウィーン……

堂島「…………」

堂島「!!」

里中「……あれ?」

りせ「この宅配の人……どこかで見た事がある様な……?」

堂島「……間違いない」

328: 2014/01/05(日) 10:15:39 ID:IZPNVGg.



堂島「こいつは、生天目だ」



一同「!?」



花村「生天目って……確か山野アナの不倫相手の!?」

里中「どういう事……!?」

天城「でも、この人は動機も無いし、アリバイも硬いって話じゃなかった?」

白鐘「その通りです」

白鐘「しかし……」

堂島「ああ。 事件関係者である事は間違いない」

堂島「そいつが……新たな行方不明被害者と最後に会っていた」

堂島「十分怪しいな……」

329: 2014/01/05(日) 10:16:54 ID:IZPNVGg.

堂島「…………」

堂島「よし」

堂島「比企谷については、俺の責任で特別に解放を認めよう」


一同「!」


堂島「一階奥の取調室に足立と居る」

堂島「足立に連絡しておくから迎えに行ってやれ」

白鐘「! 堂島さん、ありがとうござ……」

堂島「だが、ここからは警察の仕事だ」

堂島「お前たちは比企谷と一緒にまっすぐ家へ帰れ」

堂島「わかったな?」

白鐘「……わかりました」

330: 2014/01/05(日) 10:18:04 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


足立「はい……はい……」

足立「分かりました」

     ブッ…… ツー ツー

足立「……ふう」

比企谷「…………」

足立「比企谷くん。 釈放だってさ」

比企谷「…………」

比企谷「……え?」

足立「もうすぐここに君の友達が迎えに来る」

足立「感謝するんだね……彼らのおかげで堂島さん、折れたみたいだ」

331: 2014/01/05(日) 10:18:57 ID:IZPNVGg.

比企谷「…………」

比企谷「そうですか」

足立「ともかく、今日のところは大人しく帰るんだ。 タクシーを捕まえてくる」

足立「事情はまた今度聞く事にするから」

比企谷「…………」

比企谷「……すみません」

―――――――――――

特捜隊一同「…………」


比企谷「…………」

比企谷「……みんな、すまん」

332: 2014/01/05(日) 10:20:28 ID:IZPNVGg.

花村「……いいさ、このくらい」

花村「ジュネスに行こう。 由比ヶ浜さん、助けるぞ」

比企谷「ああ……言われるまでもない」

りせ「それにしても……犯人、生天目っぽいね」

白鐘「実家の家業を継いだとは聞いていましたが……」

白鐘「運送業だったとは……うかつでした」

白鐘「僕の犯行時、時間的感覚から」

白鐘「僕の家のテレビに放り込んだものと思ってましたが」

白鐘「考えてみれば、人が放り込める程の大きさのテレビが都合よく」

白鐘「被害者の家にあるわけがない」

天城「運送用のトラックにテレビを載せて、そこに放り込んでいたのね……」

里中「おまけに運送のトラックじゃ怪しまれる心配もないし」

雪ノ下「だからこそ、白昼堂々と犯行を重ねられたのね」

333: 2014/01/05(日) 10:21:15 ID:IZPNVGg.

     ツカ ツカ ツカ…

足立「おまたせ。 タクシー来たよ」

足立「じゃ、気をつけて帰るんだ。 いいね?」

比企谷「……わかっています」

足立「うん。 さて、僕も堂島さんに続くかな」


―――――――――――


     サアアアアア……


比企谷「運転手さん、ジュネスの前までお願いします」

運転手「はい」

比企谷「…………」

334: 2014/01/05(日) 10:22:23 ID:IZPNVGg.



     静かだ……。

     タクシーのエンジン音すら感じられないくらいに……。

     俺の乗るタクシーには雪ノ下と白鐘、そして久慈川が乗っている。



     花村もそうだが、俺を攻めるでもなく、問い詰めるでもなく……

     何とも言えない雰囲気になっていた。



     しかし



335: 2014/01/05(日) 10:23:20 ID:IZPNVGg.

運転手「……ん?」

運転手「事故……かな?」


     そんな空気を読めない運転手が、それを破った。


白鐘「……!?」

白鐘「運転手さん、止めてください!」

運転手「!? は、はい……」

     キキィッ……

白鐘「これは……!」

白鐘「堂島さん! 大丈夫ですか!?」

比企谷「!?」

336: 2014/01/05(日) 10:25:51 ID:IZPNVGg.

りせ「こ、これ、どういう事!?」

雪ノ下「!」

雪ノ下「このトラック……もしかしたら生天目の!?」

比企谷「……よくわからんが」

比企谷「生天目の奴、堂島さんから逃げ様として両方共事故ったってところか……」

堂島「し、白鐘……か……?」

白鐘「堂島さん、あまり喋らないで……今、救急車を呼びます!」

     ブロロロロロ……キキィッ

足立「!?」

足立「ど、堂島さん!?」

足立「大丈夫ですか!?」

白鐘「落ち着いてください、足立さん。 今、救急車を呼んだところです」

白鐘「しばらく見ててもらえますか?」

337: 2014/01/05(日) 10:27:28 ID:IZPNVGg.

足立「あ、ああ……」

白鐘「比企谷先輩、生天目は居ましたか?」

比企谷「いや……見当たらないな」

りせ「もう逃げちゃった?」

雪ノ下「! 比企谷くん!」

比企谷「どうした、雪ノ下?」

雪ノ下「これを……トラックの荷台を見て!」

比企谷「……!!」

りせ「テレビ……それも、人が入れそうなくらい大きな画面の!」

比企谷「……それに、この荷台の足跡」

比企谷「奴は、生天目は、テレビの中へ逃げ込んだのか……!」

340: 2014/01/05(日) 10:32:31 ID:IZPNVGg.

雪ノ下「落ち着きなさい比企谷くん」

雪ノ下「ここからは、ダメだから」

比企谷「…………」

比企谷「わかっている。 雪ノ下……」


白鐘「……こ、これは!?」


比企谷「どうした? 白鐘」

白鐘「……生天目の日記です。 運転席に落ちていました」

白鐘「これには殺害された、山野真由美、小西早紀は元より」

白鐘「天城先輩、雪ノ下先輩、久慈川さんに僕、そして由比ヶ浜さんの」

白鐘「名前と居場所が記されています」

白鐘「だけど……久保の犯行である、諸岡さんの名前は見当たらない」

341: 2014/01/05(日) 10:33:35 ID:IZPNVGg.

足立「そりゃすごい。 生天目で決まりだね……」

白鐘「ええ……動機までは、わかりませんが」

白鐘「!」

白鐘「今日……いえ、昨日の日付に何か文章が書いてあります」


     まさかと思ったが、法則の通り映ってしまった。

     この街の住人じゃない、それもこんなに若い女の子が……

     必ず救う。 それが僕の使命なんだから。


比企谷「……っ」 ギリッ…

比企谷「……救う、だと?」

比企谷「ふざけやがってっ……」

雪ノ下「…………」

342: 2014/01/05(日) 10:34:32 ID:IZPNVGg.

     ピーポー ピーポー

白鐘「足立さん」

白鐘「救急車も来たみたいですし……ここはお任せしてもいいでしょうか?」

足立「あ、ああ……いろいろごめんね」

足立「後は任せてくれ」

白鐘「すみません、足立さん。 では……」


―――――――――――


テレビの世界


花村「さぁーて、由比ヶ浜さん、助けに行こうぜ!」

比企谷「……その前に花村。 ちょっと聞きたい事がある」

343: 2014/01/05(日) 10:36:00 ID:IZPNVGg.

花村「何だよ比企谷? 実に信ぴょう性の高い理由だっただろ?」

比企谷「ざけんな」

比企谷「何で俺が、無くした工口本探しにジュネスへ忍び込んだ事になってるんだよ!?」

花村「訳も話さず、かたくなに黙ってる男子高校生が忍び込んだ理由として」

花村「至極納得できる恥ずかしい理由だろうが♪」

比企谷「あの残念、というか、哀れみを込めた警備員の目」

比企谷「当分忘れられそうにない……」

花村「まあ深夜のジュネスにあっさり入れたんだし、抑えとけ」

雪ノ下「……その工口本を探す、という目的でジュネスに入れたけど」

雪ノ下「私たち女子がどう見られたのか、気になるところね」

天城「……警備員の人、何であんな目をしていたのか、わかった気がする」

344: 2014/01/05(日) 10:37:08 ID:IZPNVGg.

白鐘「みなさん、冗談はそのくらいで」

白鐘「ここには重要参考人である生天目も入り込んでいます」

白鐘「十分な警戒が必要でしょう」

里中「そうだね!」

里中「生天目~、顔面靴跡の刑にしてやるっ!」

クマ「クマも手伝うクマ! ボコボコにしたるクマ~!!」

りせ「…………」

りせ「……!!」

りせ「見つけた! 由比ヶ浜さん!」

比企谷「よし……行くぞ!」

345: 2014/01/05(日) 10:38:09 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


総武高校? 校庭付近


比企谷「ここは……」

雪ノ下「間違いないわ。 総武高校ね」

里中「この前の修学旅行で行った、比企谷くん達の母校……」

天城「という事は……」

花村「ああ……間違いなく、由比ヶ浜さんの影響が出ている」

クマ「待ってて、ユイちゃん。 今、迎えに行くクマよ!」

りせ「!?」

りせ「あそこ! 校庭のど真ん中に誰かいるよ!」

346: 2014/01/05(日) 10:39:17 ID:IZPNVGg.

     タッ タッ タッ…

白鐘「生田目太郎……」

生天目「!!」

生天目「と、とうとう……こんなところまで、追って来たのか!?」

生天目「連続殺人事件の犯人め!!」


一同「!?」


花村「はあ!? 何言ってやがる!!」

花村「それはお前だろうが!!」


生天目「僕は救っていただけだ!!」

生天目「お前たち、凶悪犯から被害者を守るために!!」

347: 2014/01/05(日) 10:40:46 ID:IZPNVGg.

里中「こいつ……何言ってるの!?」

里中「あたしも雪子も、他のみんなも、氏ぬところだったんだよ!?」

天城「あなたの救うって、もしかしたら頃す、という意味なの!?」


生天目「違う!」

生天目「僕は……守りたかったんだ……」

生天目「救えなかった、大切な人の為にも!!」

生天目「だから、僕が救済を始めたんだ!!」


花村「支離滅裂だな……」

比企谷「……全くだ」

348: 2014/01/05(日) 10:41:58 ID:IZPNVGg.

比企谷「だが、生天目」

比企谷「お前は間違っている」


生天目「!?」


比企谷「お前の言う『救済』とやらに被害者の同意は入っていない」

比企谷「被害者は有無を言う事も出来ず、ここに入れられた」

比企谷「そういうのを世間一般では『拉致監禁』という犯罪でしかないんだよ」


生天目「う、うるさい!!」

生天目「誰も……僕の言う事を信じない……」

生天目「目の前に居る被害者を救済するには……これしか無かったんだ!!」


白鐘「……平行線、ですね」

白鐘「ともかく、生田目太郎。 大人しく捕まって、由比ヶ浜さんを返してください」

白鐘「これ以上罪を重ねるのは無意味です」

349: 2014/01/05(日) 10:42:53 ID:IZPNVGg.


生天目「い、いやだ……」

生天目「僕は、これからも誰かを救い続ける、救済者なんだ……!」


クマ「……クマ?」

りせ「みんな気をつけて! 様子がおかしいよ!」


生天目「あの娘は、渡さない……!」

生天目「僕は……僕は……ボク、ハ……!」


     ズウウウウウウウンッ……

     ズドンッ!!


生天目「ぐえあっ!?」


一同「」


350: 2014/01/05(日) 10:43:53 ID:IZPNVGg.

比企谷「【シャドウ】が、生天目に襲いかかってる!?」

りせ「……!」

りせ「…………」

りせ「ち、違う……」

花村「違うって、何が違うんだよ?」


     ズドンッ! ズドドンッ!


りせ「生天目自身が、【シャドウ】と『同化』してる!」

里中「えええええっ!?」

天城「どういう事なの!?」

りせ「あたしにもわかんないよ!!」

351: 2014/01/05(日) 10:44:47 ID:IZPNVGg.


影・太郎『救う……みんな救うんだ……!』

影・太郎『邪魔を……するなああぁぁぁっ!!』


白鐘「くっ……!」

白鐘「ともかく、応戦するしかありません!」

白鐘「スクナヒコナ!」

里中「だね! トモエ!」

比企谷「イザナギ!」

雪ノ下「イザナミ!」

花村「ジライヤ!」

クマ「キントキドウジ!」

りせ「全力で援護するよ!」

352: 2014/01/05(日) 10:45:24 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「………う……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……?」

由比ヶ浜「ここは?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「部室……あれ?」

由比ヶ浜(私、確かジュネスで景品を受け取って……)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(そこからの記憶が……ない)

353: 2014/01/05(日) 10:46:40 ID:IZPNVGg.


     ようやく、目が覚めたみたいね


由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「誰!?」


影・結衣『やっはろー。 グッモーニン!』

影・結衣『ふふふ……』


由比ヶ浜「……な、何なの?」

由比ヶ浜「あなたは、いったい何なの!?」


影・結衣『まあいいじゃない。 それよりもさ』

影・結衣『ヒッキーの話しない?』


354: 2014/01/05(日) 10:48:49 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「え……」


影・結衣『あなたが好きで好きで、大好きすぎて』

影・結衣『頃してしまいたいくらい恋焦がれてるヒッキーの事だよ!』


由比ヶ浜「なっ……そ、そんな事、私、思ってない!」


影・結衣『ふうん。 ま、あくまで『好きだから』の延長だもんね』

影・結衣『ゆきのんと違って』


由比ヶ浜「……!!」

355: 2014/01/05(日) 10:50:50 ID:IZPNVGg.

     ガララッ!

比企谷「大丈夫か!? 由比ヶ浜!」

雪ノ下「由比ヶ浜さん!」


由比ヶ浜「!!!」

由比ヶ浜「ヒッキー……ゆきのん……」


花村「とりあえず、元気そうだな」

里中「けど……」

天城「【シャドウ】が……!」

白鐘「……ここからは、比企谷先輩に任せましょう」

りせ「きっと、大丈夫……だよね?」

クマ「クマ! センセイはやってくれるクマ!」

356: 2014/01/05(日) 10:52:09 ID:IZPNVGg.


影・結衣『へえ……ちょうどいい所にゆきのん来てくれたね』

影・結衣『いっその事、ここでゆきのん頃しちゃいなよ!』



雪ノ下「!?」

比企谷「!?」


由比ヶ浜「な、何、言ってるのよ!?」


影・結衣『前々から気に入らなかったんでしょ?』

影・結衣『だってゆきのん、ヒッキーを見送りにも来なかったくせに』

影・結衣『ちゃっかり八十稲羽に転校しててさ……』


由比ヶ浜「や、止めて……止めてよ!」

357: 2014/01/05(日) 10:53:27 ID:IZPNVGg.


影・結衣『なにそれ、意味わかんない』

影・結衣『興味ないフリして、こっそりヒッキーを盗ろうとするヤな女なんだよ?』

影・結衣『さっさと頃してしまえば、楽勝だって思ってたでしょ?』


由比ヶ浜「違う! そんな事、考えてないもん!」


影・結衣『ふふふ……そんな事言って』

影・結衣『八十稲羽に来るたび、ゆきのんとヒッキー、どんどん仲良くなっていくの』

影・結衣『歯ぎしりして悔しがっていたじゃない』


358: 2014/01/05(日) 10:54:33 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「違う違う違う! 違う!」


影・結衣『まだそんな事、言うんだ? それにヒッキーも酷いよね……』

影・結衣『修学旅行でこっちに来た時ですら邪魔者扱いするし』

影・結衣『言わなくても察して欲しいよね』


由比ヶ浜「止めて……もう、止めてよ!」

由比ヶ浜「あなた、いったい誰なの!? 何で、そんな事言うの!?」

359: 2014/01/05(日) 10:56:16 ID:IZPNVGg.


影・結衣『私? ふふふ……私はあなただよ、由比ヶ浜結衣』


由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「な、何を言って――」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、ごめんなさい」

由比ヶ浜「むぐっ!?」

雪ノ下「今、説明するから」

比企谷「……由比ヶ浜、落ち着いて聞いてくれ」

比企谷「あれは……お前なんだ」

由比ヶ浜「!?」

     ――なんで――

比企谷「混乱するだろうが、ここはそういう世界なんだ」

360: 2014/01/05(日) 10:57:17 ID:IZPNVGg.

比企谷「自分の中の最も嫌な部分、暗い気持ち……」

比企谷「そういった、人の負の一面が具現化してしまう」

由比ヶ浜「…………」

     ――なんで、そんな事言うの?――

雪ノ下「……私にもああいうのがあった」

雪ノ下「そこに居るみんなも色々と抱えていて、それぞれでそれを受け入れてきた」

雪ノ下「誰でも同じなの。 みんなそういう自分が居るの」

雪ノ下「だから……恥ずかしいけど、後ろめたい事じゃない」

由比ヶ浜「…………」

     ――それは――

     ――ゆきのんだから、じゃないの?――

雪ノ下「由比ヶ浜さん。 詳しくは後で話すわ」

361: 2014/01/05(日) 10:58:09 ID:IZPNVGg.

比企谷「自分の心と向き合ってくれ、由比ヶ浜」

雪ノ下「……いい? 由比ヶ浜さん」

雪ノ下「口から手を離すわよ?」

     スッ…

由比ヶ浜「……はっ」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


影・結衣『茶番はおしまい?』


由比ヶ浜「うん……最初からわかってるよ」

362: 2014/01/05(日) 10:59:13 ID:IZPNVGg.




由比ヶ浜「あなたは……私じゃないって!!」




比企谷「!」

雪ノ下「!」

一同「!」


     ズウウウウウウウウウンッ……!


影・結衣『ふふふふふふ……』

影・結衣『あはははははははははははははははははははははははははははっ!!』


     ドンッ!!


363: 2014/01/05(日) 11:00:35 ID:IZPNVGg.


由比ヶ浜「」 ドサッ…


影・結衣?『我は影……真なる我……』

影・結衣?『……ふふふ……頃してやる』

影・結衣?『ゆきのんんんんんんっ!!』


     グワッ!!


雪ノ下「!!」


     ガシッ!!


比企谷「大丈夫か? 雪ノ下」

雪ノ下「……ええ」

364: 2014/01/05(日) 11:01:32 ID:IZPNVGg.


影・結衣?『……なんで邪魔するの……ヒッキー』

影・結衣?『私はこんなにもヒッキーの事、大事に想ってきたのに……』

影・結衣?『どうして……私を見てくれないのぉぉぉぉっ!!』


     グワッ!! ガギィッ!!


比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


     ……正直。 キツイと思った。


花村「比企谷! 今は【シャドウ】の暴走を止める事を考えろ!」

白鐘「そうです! あれは由比ヶ浜さん全ての意見じゃありません!」

365: 2014/01/05(日) 11:02:30 ID:IZPNVGg.



     ……んな事は頭でわかってる。



天城「由比ヶ浜さん、今、助けてあげるから!」

里中「だから……ちょっとだけ我慢して!」

クマ「ユイちゃん、頑張るクマ!」

りせ「サポートは任せて!」



     でもよ……由比ヶ浜の【シャドウ】は……

     泣きながら雪ノ下だけを狙ってくるんだぜ?



比企谷(由比ヶ浜……)

366: 2014/01/05(日) 11:03:41 ID:IZPNVGg.



     強いか、弱いか、で言えば

     由比ヶ浜の【シャドウ】は弱い方だろう。

     先に戦ったハイブリット【シャドウ】生天目の方が圧倒的に強い。



     しかし……精神的なダメージは、こちらの方が大きかった。

     由比ヶ浜の一面にすぎない、としても……

     雪ノ下を頃したい程憎んでいるのは間違いない。



367: 2014/01/05(日) 11:04:49 ID:IZPNVGg.







     そんな事が……分かってしまったのだから







368: 2014/01/05(日) 11:05:51 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


影・結衣『…………』


花村「……終わったな」

花村(けど……)

白鐘(……比企谷先輩)

天城(由比ヶ浜さん……ここまで雪ノ下さんの事を……)

里中(これだけが由比ヶ浜さんの気持ちじゃないって、わかってても……)

りせ(辛い……)

クマ(ユイちゃん……)


由比ヶ浜「……う、ううん」


比企谷「気がついたか……由比ヶ浜」

雪ノ下「由比ヶ浜さん……」

369: 2014/01/05(日) 11:06:59 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「ヒッキー……?」

由比ヶ浜「!!」


影・結衣『…………』


由比ヶ浜「ち、違うの! あれは……!」

比企谷「落ち着け、由比ヶ浜」

比企谷「さっきも言ったが、あれはお前の一面にすぎない」

比企谷「由比ヶ浜の全てがああじゃないとわかっている」

比企谷「だから……」

由比ヶ浜「全然わかんないよ! ヒッキー!」

比企谷「!?」

雪ノ下「!?」

370: 2014/01/05(日) 11:08:21 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「わ、私が……ゆきのんを頃したい、なんて……」

由比ヶ浜「思うわけないし!」

比企谷「ゆ、由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「あ、あんなのが私なわけ、ないって……!」

由比ヶ浜「ね、ヒッキー? そうでしょ!?」

由比ヶ浜「私は――」

由比ヶ浜「あんな事、考える人間じゃないっ!」


影・結衣『…………』


     シュウウウウウ……


一同「!!!!!!」

371: 2014/01/05(日) 11:09:31 ID:IZPNVGg.

花村「ひ、比企谷!! やべぇ!!」

里中「由比ヶ浜さんの【シャドウ】が……!」

天城「【シャドウ】が、崩れて消え始めてる!?」

白鐘「ど、どうしたんですか? みなさん?」

白鐘「何かまずいんですか?」

りせ「前の……久保の時もこうだったの!」

りせ「自分と向き合わなかった久保の【シャドウ】は、少しずつ崩れながら消えていって……」

りせ「その時こそ何でもない感じだったけど、数日後……」

白鐘「!!」

白鐘「拘置所内での謎の変氏! まさかあれは!?」

372: 2014/01/05(日) 11:10:21 ID:IZPNVGg.

クマ「ユユユユユ、ユイちゃん! ダメクマよ!」

クマ「自分と向き合うクマ!」

花村「そ、そうだぜ! 由比ヶ浜さん!」

花村「みんな同じなんだ! 俺の【シャドウ】もそりゃ酷いもんで……」

由比ヶ浜「っ! み、みんなまで、私があんな事を考える人だと思ってるの!?」

由比ヶ浜「酷いよ! あんなの、私じゃないのに!!」


     シュウウウウウ……


影・結衣『………


雪ノ下(……どうしたら)

雪ノ下(どうしたら、いいの!?)

雪ノ下(たぶん……私が何か言っても逆効果)

雪ノ下(由比ヶ浜さんっ……!!)

373: 2014/01/05(日) 11:11:15 ID:IZPNVGg.

比企谷「…………」



     ……これしかないな。 たぶん



比企谷「…………」



     なんで……俺は、こんな事思いつけるんだろうな?



374: 2014/01/05(日) 11:11:57 ID:IZPNVGg.

比企谷「…………」



     考えてもしかたねぇか……



比企谷「…………」



     ぼっちには慣れているし……な



比企谷「…………」 クスッ…

375: 2014/01/05(日) 11:13:04 ID:IZPNVGg.

里中「ゆ、由比ヶ浜さん、落ち着いて!」

由比ヶ浜「うるさいよっ! みんな、みんな……酷いっ!」


比企谷「そうか……残念だな、由比ヶ浜」


由比ヶ浜「……え?」

由比ヶ浜「ざ、残念って……どう言う意味? ヒッキー?」

比企谷「そのままの意味だ」


雪ノ下「……!」

雪ノ下(比企谷くん、まさかあなた!?)

376: 2014/01/05(日) 11:13:56 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「そのままって……訳わかんないよ!」

比企谷「だろうな」

比企谷「由比ヶ浜は俺を……俺たちを信用していないから、当然だな」


由比ヶ浜「!?」

一同「」


花村「ひ、比企谷、何を――」

白鐘(花村先輩……気持ちはわかりますが、もう時間がありません)

白鐘(比企谷先輩を信頼しましょう)

花村(…………)

花村(……わかった)

377: 2014/01/05(日) 11:14:59 ID:IZPNVGg.


影・結衣『…


     シュウウウウウ……


由比ヶ浜「し、信用してないって……」

比企谷「何度も言うが、あれはお前なんだ」

比企谷「俺たちは経験でそれを知っている。 由比ヶ浜がどれだけ否定しようともな」

由比ヶ浜「……っ」

比企谷「だが、それでもお前は違うと言い張る。 何故か?」

比企谷「【シャドウ】を認めてしまったら、俺たちがお前を嫌悪すると思っているからだ」

由比ヶ浜「ち、ちがっ――」

比企谷「残念だな」

378: 2014/01/05(日) 11:16:10 ID:IZPNVGg.

比企谷「花村たちはともかく、俺と雪ノ下は」

比企谷「総武高校で過ごした時間がある。 多少は信頼関係を築いていると思ってた」

比企谷「だが……そうじゃなかったんだな? 由比ヶ浜?」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「はあ……やっぱり、か……」

比企谷「由比ヶ浜は所詮、俺をその程度にしか見てな……」


由比ヶ浜「……違う」


比企谷「……何が違うんだよ?」

由比ヶ浜「私は……ヒッキーの事、信頼してないんじゃない」

由比ヶ浜「ただ――」

比企谷「ただ?」

379: 2014/01/05(日) 11:16:57 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「ヒッキーに……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ヒッキーにこんな自分を……見せたくなかった……!」

由比ヶ浜「私……ぐすっ……ヒッキーには……」

由比ヶ浜「綺麗な……うぐっ……自分を……見ていて欲しかった……」

由比ヶ浜「それだけ……ひっく……それだけ……だったの……」


一同「…………」


比企谷「…………」 チラッ

380: 2014/01/05(日) 11:18:12 ID:IZPNVGg.


影・結


     シュウウウウウ……


比企谷(くそっ……! まだ止まらねぇ!)


比企谷「――由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ぐすっ……えぐっ……ひっく……?」

比企谷「汚い自分と向き合った奴ってどう思う?」

比企谷「端的に言うと、花村たちって、汚い奴に見えるか?」

由比ヶ浜「ひぎっ……ぐっ……見え……ない」

比企谷「なら……由比ヶ浜も大丈夫だ」

比企谷「認めてやれ……綺麗じゃない自分を」

比企谷「そして、俺を信頼していると証明してみてくれ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「…………」

381: 2014/01/05(日) 11:19:02 ID:IZPNVGg.


影・糸


     シュウウウウウ……


比企谷(……早く、早くしろ! 由比ヶ浜!)

雪ノ下(由比ヶ浜さん……!)

花村(ああもう……! くそっ!)

里中(認めちゃえば、なんて事ないんだからっ!)

天城(お願い、由比ヶ浜さん!)

白鐘(間に合って……どうか!)

りせ(急いで……!)

クマ(およよよよよよよよよっ!!)

382: 2014/01/05(日) 11:19:57 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「……そうだよ」

比企谷「!!」

由比ヶ浜「私……ゆきのんに……居なくなって欲しかった!!」


影・'  ピタッ


一同「!!」

一同(消えるのが、止まった!!)


由比ヶ浜「全部……全部! あいつが言ってた通りっ!」

由比ヶ浜「なんで!? どうして、いつもゆきのんばっかり、ヒッキーのそばにいられるの!?」

由比ヶ浜「おかしいよ、こんなのっ……」

雪ノ下「……っ」

383: 2014/01/05(日) 11:20:53 ID:IZPNVGg.

由比ヶ浜「私……私の方、が……」

由比ヶ浜「絶対……頑張って、る……の……に……」

由比ヶ浜「」 ガクッ…


比企谷「……!?」

比企谷「由比ヶ浜!?」



     ――ああ、そっか――

     ――私、何になりたいのか――

     ――やっとわかった――



雪ノ下「由比ヶ浜さん! 返事して!」

384: 2014/01/05(日) 11:22:00 ID:IZPNVGg.



     ――そうだね――

     ――確かにあなたは私で――

     ――私はあなただったんだ――



里中「!」

里中「見て! 由比ヶ浜さんの【シャドウ】!!」



     ヒィイイ……イイイ……インッ……



花村「ペ、ペルソナ……?」

天城「なんだか……弱々しい感じ」

白鐘「間に合った……のか?」

385: 2014/01/05(日) 11:23:04 ID:IZPNVGg.

りせ「ヒミコ!」

りせ「…………」

りせ「!?」

りせ「な、なんで!? どうして!?」

比企谷「どうした、久慈川!?」

りせ「由比ヶ浜さん、信じられないくらい衰弱してる!!」

りせ「血圧、脈拍……心臓の鼓動まで弱くなってるよ!!」


一同「!?」


比企谷「ど、どういう事だ!? おい!?」

386: 2014/01/05(日) 11:24:05 ID:IZPNVGg.

白鐘「詮索は後回しです!」

白鐘「急いでこの世界を出て、病院に向かいましょう!」

花村「そ、そうだな! それがいい! つか、それしかねぇ!」

里中「ついでに生天目も連れて行かないと……!」

天城「そういえば、あの人も弱ってたっけ……」

クマ「とにかく急ぐクマー!!」


―――――――――――


387: 2014/01/05(日) 11:25:14 ID:IZPNVGg.



     テレビの世界を出た後

     俺たちはすぐ救急車を呼び、由比ヶ浜と生天目を病院へかつぎ込んだ。



     ここからは……俺たちにどうする事も出来無い。

     ICU(集中治療室)へ運ばれる由比ヶ浜を見送りながら

     俺は……由比ヶ浜の回復を願った。



388: 2014/01/05(日) 11:26:04 ID:IZPNVGg.


―――――――――――


足立宅


     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「もしもし……戸塚か?」

比企谷「ああ、見つかった……」

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……それがな、手放しじゃ喜べないんだ」

比企谷「由比ヶ浜……相当衰弱してて……」

比企谷「今、八十稲羽総合病院に居る」

比企谷「…………」

389: 2014/01/05(日) 11:26:55 ID:IZPNVGg.

比企谷「……お前のせいじゃない」

比企谷「…………」

比企谷「……そうか」

比企谷「…………」

比企谷「なら……ひとつ、頼まれてくれないか?」

比企谷「由比ヶ浜の家族に……この事を伝えて欲しい」

比企谷「この電話を切った後、病院の連絡先をメールしておく」

比企谷「……嫌な事させて……すまん」

比企谷「…………」

比企谷「ああ……言われなくても休むさ」

比企谷「もう……限界だからな……」

390: 2014/01/05(日) 11:27:59 ID:IZPNVGg.

比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」 ピッピッピッ…

     ピピロピンッ♪

比企谷「……これでよし」

比企谷「…………」

     ドサッ…

比企谷「…………」

391: 2014/01/05(日) 11:29:51 ID:IZPNVGg.








     疲れた……







398: 2014/01/13(月) 05:14:38 ID:OamLDi8k
     

―――――――――――


テレビ『次のニュースです』

テレビ『八十稲羽市で起こった連続殺人事件ですが』

テレビ『警察はようやく重要参考人の身柄を確保した、と発表しました』

テレビ『先ごろ捕らえられ、拘置所内で謎の変氏体となった未成年の容疑者は』

テレビ『地元高校教師、諸岡金四郎さんの殺害のみである可能性が高いとし』

テレビ『誤認逮捕ではないが、真相を取り違えるところであった、と』

テレビ『やや、危うさをうかがわせる内容のコメントを行っております』

テレビ『また』

テレビ『身柄を確保した重要参考人ですが』

テレビ『衰弱が激しく意識も回復していない為、現在、病院に入院している、との事です』

テレビ『続きまして……』

399: 2014/01/13(月) 05:15:43 ID:OamLDi8k


―――――――――――


放課後

学校の屋上


里中「はあ……」

天城「…………」

天城「あれから……もう二週間くらいになるね」

里中「……うん」

天城「…………」

里中「…………」

400: 2014/01/13(月) 05:16:47 ID:OamLDi8k

里中「由比ヶ浜さん……まだ意識が無いんだってね」

天城「……早く、元気になって欲しい」

里中「それはあたしもそう思うじゃん」

里中「けど……」

天城「うん?」

里中「…………」

里中「今回ばかりは、比企谷くんに愛想が尽きた」

天城「千枝……」

里中「そりゃあね? 時間もなかったし、あたしには説得する自信も考えも浮かばなかった」

里中「でも、あんな……由比ヶ浜さんの心を追い詰めるみたいなやり方」

里中「納得できない」

天城「…………」

401: 2014/01/13(月) 05:17:39 ID:OamLDi8k

里中「後出しジャンケンだけど……」

里中「もっと……由比ヶ浜さんの気持ちを考えて」

里中「そんなお前でもいい!とか、二人で一緒に受け入れよう!とか」

里中「やり様はあったと思うじゃん?」

天城「…………」

天城「……かもしれない」

天城「でも、比企谷くんも辛くない訳ないよ、きっと」

里中「…………」

里中「だとしても」

里中「あたしはもう、比企谷くんとは当分顔を合わせたくない」

天城「千枝……」

402: 2014/01/13(月) 05:18:30 ID:OamLDi8k

里中「ともかく」

里中「真犯人の生天目は捕まったんだし……」

里中「もう事件の事、早く忘れてしまいたいじゃん」

天城「…………」

天城「……うん」

天城「それは……私もわかる気がする」

里中「はぁ~あ……」

里中「何でうちらの学校、席替えないんだろう?」

里中「雪ノ下さんと代わってもらおうかな……」

天城「…………」

403: 2014/01/13(月) 05:19:14 ID:OamLDi8k

ジュネス バックヤード


花村「おーい、クマ」

花村「一息入れようぜ」

クマ「わかったクマ!」

―――――――――――

クマ「今日もお客さんいっぱいクマね~」

花村「売り上げ的には横ばいらしいけどな」

クマ「…………」

花村「…………」

クマ「ユイちゃん……元気になるクマよね?」

花村「たりめーだ」

404: 2014/01/13(月) 05:20:06 ID:OamLDi8k

クマ「…………」

クマ「ヨースケ、センセイはどうしてるクマ?」

花村「ふつーに学校に来て、ふつーに授業受けて」

花村「ふつーに帰ってるぜ」

クマ「…………」

クマ「本当クマ?」

花村「嘘ついてどーすんだよ」

クマ「…………」

クマ「ヨースケ、クマは頭悪いから……よくわからんクマけど」

クマ「クマ……どうしてか、センセイと顔を合わせづらいクマ」

花村「…………」

クマ「どうしたらいいクマ?」

405: 2014/01/13(月) 05:20:53 ID:OamLDi8k

花村「…………」

花村「……俺にもわかんねぇ」

花村「けど今は……しょうがねぇと思う」

花村「由比ヶ浜さん、元気になったら……きっといい方向に変わるさ」

花村「たぶんだけどな」

クマ「…………」

クマ「そうクマね」

クマ「ユイちゃん元気になったら、センセイもクマ達もきっと変われるクマ!」

花村「ああ」

花村「…………」

406: 2014/01/13(月) 05:21:43 ID:OamLDi8k

鮫川 河川敷公園

ベンチ


白鐘「ふう……」

??「お疲れ様、白鐘くん」

白鐘「え?」

白鐘「……久慈川さん」

りせ「隣、いい?」

白鐘「どうぞ」

     ストンッ

りせ「まだ事件の事、調べてるの?」

白鐘「ええ」

407: 2014/01/13(月) 05:22:39 ID:OamLDi8k

白鐘「詳しくは、生天目が目を覚ましてからですが」

白鐘「どうにも腑に落ない事がいくつかあって……」

りせ「そう……相変わらず熱心ね」

白鐘「……ただのわがままです」

白鐘「どう言えばいいのか……ほら、ジグソーパズルがあるとしますね?」

りせ「うん」

白鐘「徐々に出来上がっていくけど、あと数ピース足りない」

白鐘「……いえ、そうじゃなくて」

白鐘「似通ったピースがいくつかあって、それがどれもピッタリとハマらない」

白鐘「何だか……そんな気がするんです」

408: 2014/01/13(月) 05:23:50 ID:OamLDi8k

りせ「ふうん……」

白鐘「…………」

白鐘「久慈川さんは……比企谷先輩と何か話しましたか?」

りせ「……ううん」

白鐘「そうですか……」

りせ「由比ヶ浜さんの気持ちを考えると……なんか、後味悪くて」

白鐘「…………」

りせ「由比ヶ浜さん、一番好きな人に一番見られたくない自分を見られて」

りせ「一番言われたくない事……聞かされたんじゃないのかな?」

白鐘「…………」

りせ「白鐘くんは、あの時の比企谷先輩 どう思ってるの」

白鐘「…………」

白鐘「……難しい質問ですね」

409: 2014/01/13(月) 05:24:43 ID:OamLDi8k

白鐘「僕も他に方法はあったんじゃないか?と、自問自答しますし」

白鐘「自分が彼女の立場になってあれを言われたら……と考えると、恐ろしくなります」

りせ「…………」

白鐘「でも……」

りせ「でも?」

白鐘「あんなに時間が差し迫った状況で……」

白鐘「即座に、躊躇なく、あの行動を取れたのは彼だけです」

白鐘「そこは尊敬してますよ」

りせ「…………」

りせ「あたしは逆かな」

りせ「躊躇なく、あんな言葉を言えるなんて……」

白鐘「…………」

410: 2014/01/13(月) 05:25:43 ID:OamLDi8k

八十稲羽総合病院

待合室


比企谷「…………」

比企谷(今日も変化なし……か)

比企谷(…………)



     あれから……連絡を受けた由比ヶ浜の両親は

     仕事の関係もあって、母親が単身八十稲羽に来て暮らしつつ

     由比ヶ浜の世話をしている。



411: 2014/01/13(月) 05:26:45 ID:OamLDi8k



     由比ヶ浜の病状はずっと思わしくなく……

     動かせる状態では無いからだ。



     警察から事情を聞いて、誘拐された結果こうなったと知ると

     父親は犯人に会わせろ、と、すごい剣幕だったとか。

     ……当然だよな。



412: 2014/01/13(月) 05:27:37 ID:OamLDi8k



     俺や花村達は、母親と面識ができ

     いつでも、毎日でも、見舞いに来てやってくれと頼まれている。

     ……父親の方は、俺たち男連中を快くは思わなかったみたいだが。



     それでも一応許可はしてくれた。

     頻繁に訪れるのは、さすがに迷惑なので3~4日に一度くらいにしている。

     後は……



413: 2014/01/13(月) 05:28:24 ID:OamLDi8k

比企谷「…………」

比企谷(早く……目を覚ましてくれ由比ヶ浜)

比企谷(あれが最後なんて、無しだからな……)

比企谷(…………)

比企谷(じゃ、またな、由比ヶ浜)


―――――――――――


414: 2014/01/13(月) 05:29:41 ID:OamLDi8k

翌日の放課後

教室


比企谷「…………」

     ガタッ… スタ スタ スタ…

天城「…………」

里中「……ふう」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

里中「じゃ、雪子。 帰ろっか?」

天城「うん、千枝」

     ガタタッ…

雪ノ下「――ちょっと待ってもらえないかしら?」

415: 2014/01/13(月) 05:30:35 ID:OamLDi8k

里中「え?」

天城「雪ノ下さん? どうしたの?」

雪ノ下「良かったら、花村くんも……できればクマくんも呼んで欲しい」

花村「……はあ?」

花村「まあ……俺は構わないけど」

花村「比企谷はいいのか?」

雪ノ下「ええ」

雪ノ下「後、久慈川さんと白鐘くんは、もう誘ってあるわ」

里中「へえ……なんか意外」

天城「千枝、失礼だよ、それ」

花村「それで、雪ノ下さん。 いったい何をするつもりだ?」

416: 2014/01/13(月) 05:31:18 ID:OamLDi8k

雪ノ下「…………」

雪ノ下「大した事じゃないわ」

雪ノ下「ただ……それを話し合いたいの」


一同「…………」


―――――――――――


ジュネス フードコート


里中「話し合いねぇ……」

天城「千枝……さっきから態度悪いよ?」

里中「わざとよ」

里中「どうせ比企谷くんの事なんでしょ? 雪ノ下さん?」

417: 2014/01/13(月) 05:32:11 ID:OamLDi8k

雪ノ下「ええ。 その通りよ」

里中「なら、あたしはもう話す事無いじゃん」

里中「はっきり言って、もう比企谷くんと関わり合いたくない」

花村「……おいおい。 えらく嫌われたもんだな、比企谷も」

里中「だって許せないし! あんなやり方!」

里中「由比ヶ浜さん……可哀想すぎる!」

りせ「あたしも同じ意見……いくら助ける為と言われても」

りせ「由比ヶ浜さんを試して、追い詰めるみたいな あのやり方……ないよ」

白鐘「しかし……時間的余裕はありませんでした」

白鐘「確かに褒められた説得の仕方ではありませんが」

白鐘「彼女の命を救う行動に出れたのは、比企谷先輩だけです」

418: 2014/01/13(月) 05:33:31 ID:OamLDi8k

里中「なによ、白鐘くん。 えらく持ち上げるね? 比企谷くんの事」

里中「やっぱり惚れてるから嫌なトコは見えないんだ?」

白鐘「……客観的な事実を言ってるだけです」

里中「客観的ぃ? どう見てもベタ惚れ補正入ってるじゃん」

白鐘「……あなたの言いたい事はわかりますよ?」

白鐘「由比ヶ浜さんの様に心の内を見透かされたくないのでしょう?」

里中「な、何ですって!?」

クマ「お、およよ、止めるクマよ~」

クマ「二人とも落ち着くクマ……」

里中「…………」

白鐘「…………」

419: 2014/01/13(月) 05:34:03 ID:OamLDi8k

花村「はあ……どうすりゃいいんだよ、こんなの」

天城「…………」

天城「雪ノ下さんは……どう思ってるのかな? 今回の比企谷くんの事」


一同「!」


雪ノ下「…………」

雪ノ下「私は……少しおかしな言い方になるけど」

雪ノ下「比企谷くんらしくも比企谷くんらしくなかった」

雪ノ下「と、思ってる」

花村「……はあ?」

里中「なにそれ? 全然意味わからないじゃん?」

420: 2014/01/13(月) 05:36:34 ID:OamLDi8k

雪ノ下「……例えば」

雪ノ下「ジュネスに一人、忍び込もうとした事」

雪ノ下「あれは……比企谷くんらしくない」

花村「ああ、それは俺も思ったな」

クマ「センセイはユイちゃんを凄く心配しただけクマよ」

クマ「おかしくも何ともないクマ」

りせ「凄く……心配」

白鐘「…………」

天城「もしかして……比企谷くん、由比ヶ浜さんの事」

里中「まあ、あれだけアタックされれば分かんなくないじゃん?」

421: 2014/01/13(月) 05:37:36 ID:OamLDi8k

雪ノ下「でも」

雪ノ下「一転して、由比ヶ浜さんの命を救う為とはいえ」

雪ノ下「冷静かつ的確に説得していた」

里中「そんなの好きな人の為なら当然でしょ?」

里中「どんな形でも生き残ってて欲しいと思うのが普通……」

里中「……あれ?」

雪ノ下「そう」

雪ノ下「比企谷くんが由比ヶ浜さんの事を想っている」

雪ノ下「そういう前提があれば、確かにその通り」

雪ノ下「でも……それでいてあんな事、冷静に言えるのかしら?」

花村「……比企谷らしいっちゃらしいが」

花村「由比ヶ浜さんを『好き』だったなら……もう少しリアクションありそうだよな」

りせ「それ以前に『由比ヶ浜の事が好きだ』とか言えば済む話だもんね」

422: 2014/01/13(月) 05:38:44 ID:OamLDi8k

里中「…………」

雪ノ下「……みんなは」

雪ノ下「ああ、花村くんとクマくんは知らないだろうけど」

雪ノ下「露天風呂で由比ヶ浜さんが言ってた事、覚えてる?」

りせ「え……?」

天城「確か……」


由比ヶ浜「時々ね」

由比ヶ浜「問題の解決をする際、自分を悪者にしちゃうんだ、ヒッキー」


一同「!!」

白鐘「…………」

白鐘「……ま、まさか!?」

423: 2014/01/13(月) 05:39:38 ID:OamLDi8k

里中「まさかって、何が?」

白鐘「…………」

白鐘「……言葉にするのは良くありませんが」

白鐘「仮に……このまま由比ヶ浜さんが……その……したとします」

白鐘「そうなったら……僕たちの中で非難は誰に集中すると思いますか?」

里中「……!!」

天城「そんな……!?」

りせ「比企谷先輩は、そこまで考えていたの!?」

花村「…………」

花村(……気に入らねぇな、比企谷)

花村(そんなのはよ……)

424: 2014/01/13(月) 05:40:48 ID:OamLDi8k

白鐘「実際、医療現場ではままあります」

白鐘「医師は全力を尽くしても、亡くなった患者の遺族にはそれがわかりません」

白鐘「それゆえに……」

里中「だ、だけど……それは勝手な思い込みじゃん?」

里中「そうだっていう証拠は……」

天城「千枝」

里中「な、何よ、雪子……」

天城「あの時……露天風呂で由比ヶ浜さん、もう一つ言ってたよ?」

里中「もう一つ?」

425: 2014/01/13(月) 05:41:50 ID:OamLDi8k


由比ヶ浜「見た目で何でもないってフリしてるけど」

由比ヶ浜「そんな訳ない」

由比ヶ浜「私は……きっと誰よりも心の痛みを知っているから」

由比ヶ浜「ああいう態度を取るんだと思う」


里中「!!」

天城「……すごいよね、由比ヶ浜さん」

天城「比企谷くんの事、本当に好きなのが良くわかる」

天城「ずうっと、彼の事見てて、理解しようと頑張ってたんだって」

里中「……っ」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

クマ「センセイ……」

里中「…………」

426: 2014/01/13(月) 05:42:44 ID:OamLDi8k

里中「……あたし、どうしたらいいの?」

里中「結構シカトとかしちゃってるんですけど……」

天城「千枝。 その事については謝ろう? 無視してゴメンって」

天城「私も一緒に行くから」

りせ「あたしは普通に会えばいいかな?」

りせ「……それとも謝ったほうがいい?」

白鐘「久慈川さん、比企谷先輩は受け入れてくれる人です」

白鐘「大丈夫ですよ」

白鐘「良かったら、僕が付き添いますが?」

りせ「うん! お願い!」

     アハハ……

427: 2014/01/13(月) 05:43:55 ID:OamLDi8k

雪ノ下「…………」

雪ノ下(これで、みんなのわだかまりは溶けたかしら……?)

雪ノ下(比企谷くん……本当に馬鹿な人ね)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(そして由比ヶ浜さん……)

雪ノ下(あなたは……すごい人だわ)


花村「じゃ……今度の休みにでも比企谷込みで」

花村「みんなして由比ヶ浜さんのお見舞いなんてどうだ?」

里中「おお! 花村にしちゃいいアイデアじゃん!」

天城「私は大賛成だよ!」

りせ「いいね! あたしも乗った!」

白鐘「僕も賛成です。 ぜひそうしましょう!」

428: 2014/01/13(月) 05:44:48 ID:OamLDi8k

ジュネス


比企谷「…………」

比企谷「……よし」

比企谷「今晩は水炊きで行こう」

比企谷「鍋焼きうどんも捨てがたいが……」

比企谷「寒くなってきたし、ちょうどいいだろ」

比企谷「…………」

比企谷(……独り言)

比企谷(多くなった気がする……)

429: 2014/01/13(月) 05:45:32 ID:OamLDi8k


―――――――――――


翌日の昼休み

教室


里中「比企谷くん、ゴメン!」

比企谷「……は?」

天城「この通り謝ります……ごめんなさい」

比企谷「……ちょっと待ってくれ。 何の事だ?」

里中「いやぁ~……ホラ? シカトしちゃってゴメン……みたいな?」

比企谷「…………」

比企谷「別に気にしてないが?」

里中「うん。 比企谷くんならそう言うと思ったじゃん」

天城「そうだね、千枝」

430: 2014/01/13(月) 05:46:19 ID:OamLDi8k

比企谷「いや、だから……なんn」

里中「もういいんなら、問題ないっしょ?」

天城「うんうん」

比企谷「…………」

里中「じゃ、そういう事で」

里中「明日の休日、みんなで由比ヶ浜さんをお見舞いに行こう!」

比企谷「……へ?」

里中「うん! 決まり!」

天城「時間は後で連絡するから」

比企谷「お? おう……」

里中「んじゃ、雪子。 購買にお昼買いに行こっか!」

天城「わかったよ、千枝」

     アハハ……

431: 2014/01/13(月) 05:47:14 ID:OamLDi8k

比企谷「…………」 唖然…

比企谷「…………」

比企谷「……おい、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「……何かしただろ?」

雪ノ下「証拠でもあるのかしら?」

比企谷「今の二人、明らかに妙なテンションだったよな?」

雪ノ下「だからどうしてそれが私に関係していると?」

比企谷「ぐっ……証拠は……」


花村(……なんか久しぶりだな。 こういうの) クスッ

432: 2014/01/13(月) 05:48:33 ID:OamLDi8k


―――――――――――


数日後の休日

八十稲羽総合病院


     バタ バタ…

比企谷「……?」

比企谷「なんか……由比ヶ浜の病室、忙しそうだな?」

看護師「あら? あなたたちは……」

花村「あ、どうも」

里中「あたしら、由比ヶ浜さんのお見舞いに来たんですけど……」

看護師「そう! ちょうど良かったわ」

433: 2014/01/13(月) 05:49:37 ID:OamLDi8k

白鐘「と言うと?」

看護師「ついさっきね、患者さん……目を覚ましたの!」


一同「!!」


看護師「親御さんに連絡を入れたんだけど……すぐには来られないみたい」

看護師「でも、あなた達の事は聞いてあるわ」

看護師「お見舞いに来たら、病室に入れてあげてくださいって!」

天城「由比ヶ浜さん……良かった……本当に良かった!」

クマ「ウッホホーイ! 良かったクマー!」

看護師「こらこら。 騒いじゃダメだからね?」

クマ「ク、クマ……」

434: 2014/01/13(月) 05:50:22 ID:OamLDi8k

看護師「彼女、目を覚ましたばかりだし」

看護師「弱っている状態だから短い時間でなら許可します」

看護師「嬉しい気持ちはわかるけど、騒がない様にね?」


一同「わかりました」


看護師「よろしい」

看護師「じゃ、彼女に会ってあげて?」


雪ノ下「…………」


435: 2014/01/13(月) 05:51:40 ID:OamLDi8k

比企谷「由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「……ヒッキー」

比企谷「心配したぞ……」

比企谷「今は無理せずゆっくり休んで体を治すんだ」

比企谷「わかったな?」

由比ヶ浜「……うん……わかってるよ」

比企谷「ほら、みんなもそこに居るぞ」

クマ「ユイちゃん、クマクマよ~」

里中「由比ヶ浜さん、早く元気になろうね」

天城「元気になったら、また温泉に入りましょ」

花村「おう! その時はぜひ俺も一緒に……」

白鐘「何を言ってるんですか……花村先輩」

りせ「こんな時まで下品な冗談言わないでくださいよ……」

花村「ハハハ……」

由比ヶ浜「…………」 クスッ

436: 2014/01/13(月) 05:52:43 ID:OamLDi8k

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ゆきのんは……?」

比企谷「!」

花村「え?」

里中「そ、そういや……居ないね?」

天城「探して来ようか?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ううん……また……今度でいい」

りせ「そ、そっか……」

白鐘(雪ノ下先輩……そうですよね)

437: 2014/01/13(月) 05:53:59 ID:OamLDi8k

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ねえ……みんな……」

クマ「はいはい。 なにクマ?」

由比ヶ浜「……ヒッキーと……二人だけで……話したい」


一同「!」

比企谷「!」


看護師「ゆ、由比ヶ浜さん。 さすがにそれは……」

由比ヶ浜「……お願い……します」

看護師「…………」

看護師「……しょうがないわね」 フウッ…

看護師「ええと……ヒッキー?とか呼ばれてた男の子」

看護師「何か異常があったら、そこのブザーを押してね?」

比企谷「……わかりました」

438: 2014/01/13(月) 05:54:55 ID:OamLDi8k


―――――――――――


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ヒッキー」

比企谷「なんだ?」

由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好きだよ……」

比企谷「…………」


     ああ……


由比ヶ浜「……驚いた?」

比企谷「……まあな」

439: 2014/01/13(月) 05:55:58 ID:OamLDi8k

由比ヶ浜「そっか……」

由比ヶ浜「えへへ……やっと……言えた……」

由比ヶ浜「気持ち……伝えられた……嬉しい……」


     とうとう……言われた……


比企谷「…………」

由比ヶ浜「……返事は……言わなくて……いいから……」

比企谷「……え?」

由比ヶ浜「答え……イエスでもノーでも……」

由比ヶ浜「今の私じゃ……耐えられそうにないから……」

比企谷「…………」

比企谷「……そうか」

440: 2014/01/13(月) 05:57:10 ID:OamLDi8k

由比ヶ浜「ふふふ……」

由比ヶ浜「元気に……なった時の……楽しみにしておく……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ねえ……ヒッキー」

由比ヶ浜「私……ひとつ……あの世界で……わかった事があるの……」

比企谷「なんだ?」

由比ヶ浜「ふふふ……内緒……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……私が……元気になったら……」

由比ヶ浜「……教えてあげる」

比企谷「そうかよ……約束だからな?」

比企谷「絶対、守れよ?」

由比ヶ浜「……うん」

441: 2014/01/13(月) 05:58:12 ID:OamLDi8k

由比ヶ浜「ふう……何だか……疲れちゃった……」

比企谷「なら、ゆっくり休めばいい」

由比ヶ浜「……うん……そうする……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「そだ……ゆきのんに……伝えて……」

比企谷「何てだ?」

由比ヶ浜「……話……したいって……」

比企谷「わかった。 伝えとく」

由比ヶ浜「じゃ……またね……」

比企谷「ああ。 またな、由比ヶ浜」

442: 2014/01/13(月) 05:59:11 ID:OamLDi8k


―――――――――――


比企谷「待たせたな……って」

比企谷「ほかの連中は?」

花村「雪ノ下さんを探しに行って」

花村「この病院の食堂にいるって、さっき電話があった」

比企谷「そうか……」

花村「…………」

花村「聞くだけ野暮かもしんねーが」

花村「どんな話をしたんだ?」

443: 2014/01/13(月) 06:00:04 ID:OamLDi8k

比企谷「悪いがそれは言えない」

比企谷「けど……」

花村「けど?」

比企谷「約束をした」

比企谷「元気になったら、ある事を聞かせてやるってさ……」

花村「そっか……」

花村「そいつは楽しみだな」

比企谷「……ああ」

比企谷「何が何でも守ってもらうつもりだ」

444: 2014/01/13(月) 06:02:11 ID:OamLDi8k



??「……あれぇ? 君たちは……」



比企谷「?」

比企谷「足立さん?」

足立「やっぱり比企谷くん達か」

足立「どうしたんだい? こんな所で?」

花村「そりゃこっちのセリフですよ……足立さんこそどうしてこんなところに?」

花村「ちなみに俺達は友達の見舞いです」

足立「あ~……あの由比ヶ浜って娘さんの……納得」

比企谷「それで? 足立さんは?」

445: 2014/01/13(月) 06:03:37 ID:OamLDi8k

足立「ああ、僕はこの上の階に居る生天目の様子を……」

足立「あ!!」

比企谷「…………」

花村「…………」

足立「い、今の無し。 無しだからね!?」

比企谷「……ええ」

花村「……わかってますよ」

足立「あはは……」

足立「その……様子を見た帰りに堂島さんの見舞いをしておこうと思ったら」

足立「迷っちゃってね……」

足立「この階だと思ったんだけどなぁ……じゃ!」

     スタ スタ スタ…

446: 2014/01/13(月) 06:04:31 ID:OamLDi8k

花村「そういや……あいつもこの病院にかつぎ込んだんだっけ」

比企谷「……由比ヶ浜とは状況が違うが」

比企谷「衰弱の度合いは少しマシって程度だった」

比企谷「由比ヶ浜同様、動かせられないんだろう……」

花村「ちっ……胸糞悪ぃぜ」

花村「殺人犯が入院してる病院に由比ヶ浜さんが居るなんてな」

比企谷「…………」

比企谷「落ち着け、花村」

比企谷「今は……仕方ない」

花村「…………」

447: 2014/01/13(月) 06:05:23 ID:OamLDi8k

花村「なあ、比企谷」

比企谷「ん?」

花村「ちょっと付き合え」

比企谷「どこにだ?」

花村「そうだな……鮫川河川敷辺りがいい」

比企谷「……何の用だ?」

花村「俺も少しお前と話がしたい」

花村「それだけだ」

比企谷「…………」

比企谷「わかった」

448: 2014/01/13(月) 06:06:12 ID:OamLDi8k

河川敷公園


比企谷「で? 話って何だ?」

花村「…………」

花村「お前……いつまでそうやってるつもりだ?」

比企谷「は?」

花村「いつまで……『何でもない』ってフリをしているつもりだ?」

比企谷「…………」

比企谷「何を言ってるのか、わからないな」

花村「…………」

花村「そうかよ」

花村「なら――」

449: 2014/01/13(月) 06:07:13 ID:OamLDi8k

     バキッ!

比企谷「ぐっ……!」

花村「こっち(拳)で話し合うしかないな」

比企谷「……花村ァ」

花村「けっ……」

花村「反吐が出んだよ……お前のその態度にはな」

花村「クール気取ってんのか、かっこいいとでも思ってんのか知らねぇが」

花村「いっつもムカついてんだよ」

比企谷「……そんなのは俺の勝手だろうが」

比企谷「お前こそなんだ、これは?」

比企谷「いきなりくだらねぇ青春ヤローになりやがって……」

比企谷「反吐が出るのは俺の方だっての」

450: 2014/01/13(月) 06:08:28 ID:OamLDi8k

花村「俺は夏に忠告したよな?」

花村「由比ヶ浜さん、ないがしろにするなって」

比企谷「……っ!」

花村「で? 結果がこれかよ……」

花村「由比ヶ浜さん、何でボロボロになって病院に入院してんだ……?」

花村「なあっ? 比企谷ぁっ!!」

     ボグッ!

比企谷「ぐはっ!」

花村「答えろよ、比企谷……」

花村「お前のせいなんだぞ? 由比ヶ浜さんがああなったのは!!」

比企谷「…るせぇぇぇぇぇぇっ!!」

     バキッ!

花村「がっ!!」

451: 2014/01/13(月) 06:09:11 ID:OamLDi8k

比企谷「お前に俺の何がわかるっ!?」

比企谷「こうなるってわかってりゃ!! 由比ヶ浜にさっさと嫌われてやった!!」

     ゴスッ!

花村「ぐおっ!」

比企谷「はあっはあっ……」

花村「…………」

花村「……けっ」

比企谷「…………」

花村「どうした、比企谷? それで終わりか?」

比企谷「…………」

比企谷「……花村ァ」 ギリッ…!

452: 2014/01/13(月) 06:10:11 ID:OamLDi8k



―――――――――――



花村「はあ……はあ……」

比企谷「ぜえ……ぜえ……」

花村「けっ……ゲームばっかやってる割に 結構重いパンチ打ってくんのな……お前」

花村「一瞬お花畑が見えたっつーの……」

比企谷「……お前こそ肘打ちは反則だろ」

比企谷「アゴの骨……折れたかと思ったっての……」

花村「…………」

比企谷「…………」

453: 2014/01/13(月) 06:11:13 ID:OamLDi8k

花村「……比企谷」

比企谷「……何だ?」

花村「悪かった」

比企谷「……だったら最初から言うな」

花村「けどよ……」

比企谷「…………」

花村「由比ヶ浜さんの為に……もう少し怒ってやれないのか?」

比企谷「……!」

花村「俺が言いたい事は……そういう事なんだよ……」

比企谷「…………」

花村「気づいてんだろ。 由比ヶ浜さん、お前の事好きだって……」

比企谷「……さっき本人から聞いた」

454: 2014/01/13(月) 06:12:13 ID:OamLDi8k

花村「いきなり惚気んな」

比企谷「事実を言ってるだけだ」

花村「……で? どう答えたんだよ?」

比企谷「由比ヶ浜が、元気になったら聞かせてくれってさ……」

花村「…………」

花村「……そうか」

比企谷「…………」

花村「なあ……最後にひとつだけ聞かせてくれねぇか?」

比企谷「何だ」

花村「あの時……由比ヶ浜さん助けようとジュネスに忍び込んだ時」

花村「何を考えていた?」

455: 2014/01/13(月) 06:13:11 ID:OamLDi8k

比企谷「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……わかんねぇ」



     ……いや、本当は罪滅ぼしの意識があったのかもしれない。



     事情を知らなかったとはいえ、俺は由比ヶ浜の心配より

     裏切られた、というショックの方が大きかった……

     そんな気持ちをごまかす為にそういう行動に出たのかもしれない。



花村「…………」

比企谷「……けど」

456: 2014/01/13(月) 06:14:00 ID:OamLDi8k

花村「けど?」

比企谷「由比ヶ浜を……テレビの中で、ひとりのままにしておきたくなかった」

比企谷「それだけはよく覚えてる」



     それは間違いなく本心だ。



花村「…………」

花村「……そうかよ」

花村「やっぱりお前って、素直じゃねーな」

比企谷「ほっとけ」

457: 2014/01/13(月) 06:14:48 ID:OamLDi8k

花村「…………」

比企谷「…………」

花村「……フ」

比企谷「……ふ」


     ハハハハハ……


花村「何笑ってんだよ……」

比企谷「知るか……んな事」

花村「……ま。 俺はいろいろスッキリできたわ」

比企谷「そうかよ……良かったな」

花村「病院……戻るか」

比企谷「……そうだな」

458: 2014/01/13(月) 06:15:46 ID:OamLDi8k



     ……まさか自分がこんな青春臭い事する羽目になるとは思わなかった。

     妹の小町が聞いたら、「小町的にはポイント高い」とか言うかもな。



     俺と花村の顔は病院に戻った時、いい具合に腫れ上がったみたいで

     里中達に驚かれた。

     そのまま病院で治療を受けたのは言うまでもないが

     なぜか……クマ以外は理由を聞く事はなかった。

     ……不思議に思った。



459: 2014/01/13(月) 06:16:57 ID:OamLDi8k

待合室


比企谷「……痛つつ」

比企谷(今頃痛くなってきた……)


???「あれ……? お兄さんって、もしかして?」


比企谷「……?」

比企谷(この女の子……どこかで見たな?)


??「どうした? 菜々子」

菜々子「お兄ちゃん」

460: 2014/01/13(月) 06:18:20 ID:OamLDi8k

比企谷「……菜々子?」

比企谷「!」

比企谷「もしかして……堂島さんの?」

菜々子「あ! やっぱり、夏祭りの時のお兄さんだ!」

??「知っている人なのか? 菜々子」

菜々子「うん!」


比企谷(そうだ……堂島さんもここに入院してるんだっけ)

比企谷(足立さん、そう言ってたな)

比企谷(という事は、堂島さんのお見舞いに兄弟揃って来たってトコか)


比企谷「……どうも。 比企谷八幡、と言います」

??「あ……初めまして。 俺は鳴上悠って言います」

461: 2014/01/13(月) 06:19:16 ID:OamLDi8k

比企谷「鳴上……?」

鳴上「……菜々子の従兄弟になります」

鳴上「いろいろ事情があって……」

比企谷「そうですか……」

菜々子「お兄さんのお怪我、大丈夫?」

比企谷「うん。 ちょっと痛いけど大丈夫」

菜々子「良かったぁ……」

鳴上「菜々子、お父さんの所へ行っておいで」

菜々子「え? お兄ちゃんは?」

鳴上「俺もすぐに行くから」

菜々子「うん。 わかった」

462: 2014/01/13(月) 06:20:20 ID:OamLDi8k


     タッ タッ タッ…

鳴上「菜々子とはどうして?」

比企谷「あの子も言ってましたが、夏祭りの時……」


―――――――――――


鳴上「そうでしたか……」

比企谷「…………」

比企谷「菜々子ちゃん……お母さんが居ないんですか」

鳴上「ええ……」

鳴上「1~2年くらい前、ひき逃げにあって……」

比企谷「…………」

鳴上「伯父さんから連絡を受けて、俺の母親がしばらく預かろうと言ったんですが」

鳴上「菜々子は、納得しませんでした」

463: 2014/01/13(月) 06:21:41 ID:OamLDi8k

鳴上「それで俺の母親、じゃあ八十稲羽で菜々子の面倒を見よう、という事になって」

鳴上「それに落ち着いたんです」

比企谷「……大変ですね」

鳴上「事情を聞いて今日から三連休だし」

鳴上「俺の母親の手伝いがてら菜々子の遊び相手にでも……と思ってここに来ました」

比企谷「偉いですね」

鳴上「……正直言うと、軽い気持ちもあったんですよ」

鳴上「俺自身の気分転換も兼ねて、という……」

比企谷「…………」

鳴上「でも……菜々子を見て、上手く言えませんが」

鳴上「無理しているんじゃないのか?と思いました」

比企谷「…………」

464: 2014/01/13(月) 06:22:38 ID:OamLDi8k

鳴上「本当は泣きたいだろうに……俺や俺の母親に気を使って泣けないんじゃないのか?」

鳴上「そんな風に感じました」

比企谷「…………」

鳴上「俺に……何ができるのかわからない」

鳴上「けど……」

鳴上「俺の目の前で泣いてくれる様になってくれたらな、と思っています」

比企谷「…………」

比企谷「……そうですか」

鳴上「それじゃ……俺、行きます」

鳴上「お大事に」

比企谷「いえ……そちらもお大事に」

鳴上「どうも」

465: 2014/01/13(月) 06:23:34 ID:OamLDi8k

比企谷「…………」



鳴上「俺の目の前で泣いてくれる様になってくれたらな、と思っています」



比企谷「…………」

比企谷「…………」



花村「お前……いつまでそうやってるつもりだ?」

花村「いつまで……『何でもない』ってフリをしているつもりだ?」



比企谷「…………」

比企谷(……花村)

466: 2014/01/13(月) 06:24:45 ID:OamLDi8k



     見た目、俺とそう変わらない歳くらいなのに

     不思議な雰囲気を持った人物だった。




     ……俺は、少しだけ花村に感謝した。





467: 2014/01/13(月) 06:25:38 ID:OamLDi8k

夕方

大衆食堂 愛屋


     オマチー

花村「ま! 何はともあれ、由比ヶ浜さん意識が回復して良かったぜ!」

白鐘「ええ。 本当に良かった」

天城「早く元気になるといいね!」

     アハハ…

クマ「…………」

比企谷「……どうした? クマ?」

クマ「…………」

クマ「クマは……まだここに居てもいいクマ?」

468: 2014/01/13(月) 06:26:47 ID:OamLDi8k

里中「急に何?」

クマ「クマ……最初の頃、センセイとヨースケに頼んだクマ」

クマ「クマの世界に人間を落としてる犯人を捕まえてって……」


一同「…………」


クマ「もうその約束は果たされたクマ」

クマ「だから、クマ、向こうの世界に帰らないといけないけど……」

クマ「それはユイちゃんが元気になるのを確かめてからにしたいクマ」

クマ「それでもいいクマか?」

りせ「何言ってるのよ、クマ」

花村「いいも何もねえよ。 好きなだけ居ればいいさ」

比企谷「ああ。 たぶん由比ヶ浜もそう言うと思うぞ」

469: 2014/01/13(月) 06:27:26 ID:OamLDi8k

クマ「およよ……みんな……!」

クマ「ありがとうクマ!」

里中「お礼なんていいって」

里中「由比ヶ浜さんが元気になっても、ずっと居たらいいじゃん」

里中「ね! 雪子!」

天城「うん! 千枝!」

クマ「いつかストリップも拝むクマ!」

雪ノ下「それはもう忘れなさい!」

雪ノ下「まったく……」

     ハハハ…

比企谷「…………」 クスッ

470: 2014/01/13(月) 06:28:24 ID:OamLDi8k



     ようやく。

     俺はようやく、この事件は終わったのだと

     思える様になっていた。



471: 2014/01/13(月) 06:32:31 ID:OamLDi8k
今日はここまでです。
次回……私にとっても正念場。書くのが辛い……

473: 2014/01/13(月) 16:25:51 ID:AdazqneM

疑う事をやめるとはらしくありませんな

474: 2014/01/16(木) 22:58:57 ID:Xshz85ws
乙!

475: 2014/01/17(金) 00:12:12 ID:BdWDjwJQ
最後まで突っ走ってくれ!

乙!

引用元: 比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目