479: 2014/01/21(火) 18:53:45 ID:1nMeTojY
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目【前編】
―――――――――――
数日後
八十稲羽総合病院 由比ヶ浜の病室
由比ヶ浜「……ゆきのん……久しぶり」
雪ノ下「……由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「私ね……」
由比ヶ浜「あの世界で……ひとつ……気がついた事が……あるの」
雪ノ下「…………」
480: 2014/01/21(火) 18:54:52 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「……私」
由比ヶ浜「誰かの……『特別』になりたかったんだって……」
雪ノ下「特別?」
由比ヶ浜「うん」
由比ヶ浜「……私……こんなにいろいろ話せる人……今まで……居なかった」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……でも……ヒッキーとゆきのんは……」
由比ヶ浜「こんな私の、どんな話も……真面目に聞いてくれた……」
由比ヶ浜「嬉しかった……」
雪ノ下「…………」
481: 2014/01/21(火) 18:55:57 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「……だから私」
由比ヶ浜「二人の『特別』になりたいって……思った……」
由比ヶ浜「それを……思い出したの……」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「それなら大丈夫」
雪ノ下「あなたは、十分『特別』よ」
雪ノ下「私にとっても……比企谷くんにとっても」
由比ヶ浜「……本当?」
雪ノ下「ええ」
雪ノ下「比企谷くんは、あなたを救おうとして」
雪ノ下「深夜のジュネスに一人で忍び込むという、考えられない無茶をしたくらいよ」
482: 2014/01/21(火) 18:56:45 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「……ヒッキーが……!?」
由比ヶ浜「そっかぁ……嬉しいな……えへへ……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……ねえ、ゆきのん」
雪ノ下「何かしら?」
由比ヶ浜「あの日……どうしてヒッキーを見送りに来なかったのか……」
由比ヶ浜「聞かせて欲しい……」
雪ノ下「!」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……バカバカしい理由よ」
雪ノ下「自分でも信じられないくらいの……」
由比ヶ浜「…………」
483: 2014/01/21(火) 18:57:52 ID:1nMeTojY
雪ノ下「……私」
雪ノ下「比企谷くんに……お別れの言葉を言いたく無かった」
由比ヶ浜「……え?」
雪ノ下「それを言ってしまったら……」
雪ノ下「もう会えなくなるんじゃないかって、最後になってしまうんじゃないかって」
雪ノ下「恐ろしかったの……」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「どうしようも無いくらい幼稚で、くだらない理由……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……ううん。 そんな事ないよ」
484: 2014/01/21(火) 18:59:17 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「私も……同じ事考えちゃったから」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「……頭じゃわかってるの」
由比ヶ浜「そんなハズないって。 ……でも」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「あの日……向こうでも元気でって……ヒッキーを見送って」
由比ヶ浜「遠く……離れていく電車を見続けてたら……怖くなった」
由比ヶ浜「もう……ヒッキーと……会えないんじゃないかって……」
雪ノ下「由比ヶ浜さん……」
由比ヶ浜「ふふふ……同じだね……ゆきのん」
由比ヶ浜「ゆきのんも……ヒッキーの事……好きなんでしょ?」
雪ノ下「っ!」///
485: 2014/01/21(火) 19:00:31 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「もう……隠し事……しない」
由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好き」
雪ノ下「由比ヶ浜さん……」
由比ヶ浜「告白も……しちゃったんだよ?……えへへ」///
雪ノ下「……え!?」
由比ヶ浜「……返事は……私が元気になってから……って事になってる」
雪ノ下「そ、そう……」
雪ノ下(……油断できないわね)
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「ゆきのん」
雪ノ下「何かしら?」
486: 2014/01/21(火) 19:01:36 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「これからも……友達でいてくれる?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「もちろんよ、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「これからもよろしくね」 ニコッ
由比ヶ浜「ゆきのん……ありがとう」
由比ヶ浜「よろしくね」 ニコッ
アハハハ…
雪ノ下(…………)
487: 2014/01/21(火) 19:02:58 ID:1nMeTojY
私は……何となく理解した気がした。
由比ヶ浜さんのあの【シャドウ】は、あくまで一面にすぎない。
でも……それは私と比企谷くんが、彼女にとって
『特別』な存在だったから。
だからこそ……ああなってしまったのだと……
488: 2014/01/21(火) 19:04:09 ID:1nMeTojY
―――――――――――
翌日の朝
通学路
里中「おはよー」
花村「おう、里中。 おはよう」
天城「おはよう、千枝」
雪ノ下「おはよう」
比企谷「おはよう」
白鐘「おはようございます、里中先輩」
りせ「おはよう、里中先輩」
里中「しっかし迷惑よねー。 この霧」
里中「原因、一体何なんだろ?」
比企谷「…………」
489: 2014/01/21(火) 19:05:15 ID:1nMeTojY
そう……今、八十稲羽では霧が晴れない、という
原因不明の異常気象に見舞われていた。
専門家も首をかしげるばかりで
通常では有り得ない現象だと言う。
以前から長い雨の後、霧が出て慣れっこになっていたが……
さすがにここの住民も不気味に思っている様だ。
490: 2014/01/21(火) 19:06:13 ID:1nMeTojY
マダム1「毎日毎日、気が滅入りますわね……」
マダム2「それが奥さん……この霧、実は有害なんじゃないかって」
マダム1「まあ……そういえばお隣のタケシちゃんも」
マダム1「外に居て気分が悪くなったとか言ってまして……」
マダム2「本当ですか? 初耳なんですけど……」
ガスマスク男「みんな気をつけろー!!」
ガスマスク男「これは毒ガスだー!!」
ガスマスク男「ウィルスだー!!」
ガスマスク男「ここに居たら、みんな氏んでしまうぞー!!」
一同「…………」
491: 2014/01/21(火) 19:07:22 ID:1nMeTojY
花村「はあ……アホくさ」
花村「せっかく事件解決したっていうのに……テンション下がるぜ」
里中「まあ今は仕方ないじゃん?」
里中「どこもかしこも霧の噂話で持ちきりになってるし」
天城「……でも」
天城「本当に何なんだろうね? この霧……」
りせ「まるで向こうの世界に居るみたい」
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……向こうの世界?)
ゴソゴソ…… スチャッ
雪ノ下「!?」
492: 2014/01/21(火) 19:08:16 ID:1nMeTojY
雪ノ下「み、みんな!」
比企谷「どうした? 雪ノ下?」
雪ノ下「メガネ! クマくんのメガネを掛けてみて!」
一同「……?」
ゴソゴソ…… スチャッ
一同「!?」
白鐘「こ……これは!?」
りせ「どうして!? 視界が開ける!」
天城「うそ……このメガネはあっちの世界でしか効果がないはず……」
493: 2014/01/21(火) 19:09:10 ID:1nMeTojY
里中「……向こうの霧が漏れてんのかな?」
一同「!?」
里中「え!? な、なんか当たりっぽかった!?」
里中「結構テキトーに言ったんだけど……」
白鐘「テレビの世界の霧が……こちら側に?」
比企谷「…………」
比企谷「推測じゃラチが開かない」
比企谷「放課後、クマに聞いてみよう」
494: 2014/01/21(火) 19:10:16 ID:1nMeTojY
―――――――――――
放課後
ジュネス フードコート
クマ「う~ん……確かに向こうの霧に似てるクマけど……」
クマ「それ以上の事は解らないクマ」
比企谷「そうか……」
白鐘「解らない事だらけですね……」
りせ「向こうの世界に何か変わった事はない?」
クマ「それもないクマ」
クマ「詳しく調べたわけじゃないクマけど……いつも通りクマ」
りせ「そっか……」
比企谷「…………」
495: 2014/01/21(火) 19:11:08 ID:1nMeTojY
比企谷(……そういや)
比企谷(事件の事をメインに考えていたが……)
比企谷(ペルソナやあの世界について調べていなかった)
比企谷(【マヨナカテレビ】もそうだが)
比企谷(何故こんな事が起こったのか、まったく分かっていない)
比企谷(状況に巻き込まれ、いつの間にか当たり前になっていたが)
比企谷(こんな怪現象……異常だよな)
496: 2014/01/21(火) 19:12:30 ID:1nMeTojY
クマ「役に立てなくてゴメンクマ……」
花村「気にすんな、クマ。 わかんねーのは俺たちも一緒だし」
花村「いつか解る様になるかも知んねーからな」
比企谷「そうとも。 何か気がついたら言ってくれ」
クマ「ヨースケ、センセイ……わかったクマ!」
里中「じゃ、由比ヶ浜さんのお見舞い行く?」
天城「あ……ごめん、千枝」
天城「今日は旅館の仕事があって……」
比企谷「という事は雪ノ下も?」
雪ノ下「ええ……由比ヶ浜さんにごめんなさい、と伝えておいてくれるかしら?」
比企谷「わかった」
497: 2014/01/21(火) 19:13:54 ID:1nMeTojY
八十稲羽総合病院
由比ヶ浜の病室
クマ「ユイちゃん、来たクマよ~」
由比ヶ浜「クマくん……いらっしゃい」
由比ヶ浜「みんなも……」
比企谷「今日な。 雪ノ下と天城、旅館で仕事があるんだそうだ」
比企谷「謝っといてくれと頼まれた」
由比ヶ浜「そっか……忙しいんだね……」
花村「よし、こんなもんかな。 花瓶の花、変えといたぜ」
クマ「おお、キレイなお花クマ」
498: 2014/01/21(火) 19:15:43 ID:1nMeTojY
りせ「へえ……花村先輩、気が利くじゃない」
白鐘「花なんていつ買ったんですか?」
花村「ジュネスにちょっと寄ってな」
比企谷「…………」
比企谷「……これ、桔梗(ききょう)か?」
花村「お? 知ってんのか、比企谷」
比企谷「…………」
花村「それでどうかな? 由比ヶ浜さん?」
由比ヶ浜「ありがとう……花村くん……」
由比ヶ浜「とってもキレイ……」
花村「へへっ。 気に入ってくれたなら、こっちも嬉しいぜ!」
クマ「ユイちゃん、聞いて欲しいクマ~」
クマ「今日もアルバイト、大変だったクマ!」
499: 2014/01/21(火) 19:16:53 ID:1nMeTojY
―――――――――――
待合室
比企谷「……ふう」
菜々子「あ、お兄さん」
比企谷「ん? ああ、菜々子ちゃん」
比企谷「お父さんのお見舞いかな?」
菜々子「うん! お父さん、菜々子にはちゃんと手を洗えって、言うけど」
菜々子「病院じゃ時々サボってるみたいなの」
菜々子「ずるいよね!」
比企谷「ははは…」
500: 2014/01/21(火) 19:18:25 ID:1nMeTojY
菜々子「……でもね。 ちょっとずつ元気になてて」
菜々子「菜々子、嬉しいんだ!」
比企谷「そう……良かったね」
菜々子「うん!」
菜々子「お兄さんは? お怪我、まだ治らないの?」
比企谷「……俺の方はもう大丈夫」
比企谷「けど……ほら、覚えてるかな?」
比企谷「夏祭りの時のお姉さん」
菜々子「茶色い髪の人?」
比企谷「そう」
比企谷「で、その人、ちょっと怪我しちゃって……お見舞いに来たんだ」
菜々子「! ……そうだったの」
501: 2014/01/21(火) 19:19:34 ID:1nMeTojY
>>500修正↓
502: 2014/01/21(火) 19:21:08 ID:1nMeTojY
菜々子「……でもね。 ちょっとずつ元気になってて」
菜々子「菜々子、嬉しいんだ!」
比企谷「そう……良かったね」
菜々子「うん!」
菜々子「お兄さんは? お怪我、まだ治らないの?」
比企谷「……俺の方はもう大丈夫」
比企谷「けど……ほら、覚えてるかな?」
比企谷「夏祭りの時、菜々子ちゃんと話したお姉さん」
菜々子「茶色い髪の人?」
比企谷「そう」
比企谷「で、その人、ちょっと怪我しちゃって……お見舞いに来たんだ」
菜々子「! ……そうだったの」
503: 2014/01/21(火) 19:22:54 ID:1nMeTojY
……実を言えば不安を感じている事がある。
由比ヶ浜は意識を取り戻したというのに一向に良くなる気配がない。
気がついてから10日くらい経つが、今だに起き上がる事すらままならず
酸素吸入器を外したり、付けたり、を繰り返している……
みんな……クマですら薄々感じているが
言葉にはしていない。
504: 2014/01/21(火) 19:23:49 ID:1nMeTojY
比企谷(真犯人の生天目とかいう奴も同じ状況だとか……)
比企谷(そのせいでまだ取り調べも行われていない)
比企谷(この前、足立さんがまたうっかり口を滑らせてそう言っていた)
比企谷(……日本の警察大丈夫か?と少し思ってしまったな)
菜々子「…………」
菜々子「あのっ、お兄さん!」
比企谷「ん?」
菜々子「菜々子もお見舞いしたい!……です」
比企谷「ああ……そうだね。 きっと由比ヶ浜も喜ぶと思う」
比企谷「ありがとう、菜々子ちゃん」
菜々子「えへへ」///
505: 2014/01/21(火) 19:25:15 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜の病室
クマ「およ? センセイ、その子は誰クマ?」
比企谷「かいつまんで説明するが」
比企谷「夏祭りの時知り合った堂島さんの娘さんだ」
比企谷「堂島さんもこの病院に入院してて、偶然再会した」
比企谷「由比ヶ浜の事を話したら、お見舞いしたいと言うので来てもらった」
菜々子「ど、堂島菜々子ですっ」///
花村「おう! 菜々子ちゃんか、いい名前だな。 よろしく!」
里中「よろしくね、菜々子ちゃん」
白鐘「よろしく」
りせ「よろしくねっ!」
506: 2014/01/21(火) 19:26:21 ID:1nMeTojY
クマ「菜々子ちゃん、大歓迎するクマ!」
クマ「よろしくクマね~」
菜々子「うん!」
菜々子「こんにちは、お姉さん」
由比ヶ浜「……?」
比企谷「由比ヶ浜、覚えてるか?」
比企谷「夏休みの夏祭り……」
由比ヶ浜「…………」
507: 2014/01/21(火) 19:27:10 ID:1nMeTojY
由比ヶ浜「……あ、思い出した」
由比ヶ浜「足を怪我してた女の子……だったね……」
菜々子「はい。 あの時はありがとう、お姉さん」
菜々子「菜々子、元気になれました!」
由比ヶ浜「そっか……良かった……」
菜々子「お姉さんも早く元気になってください」
由比ヶ浜「うん……そしたら……」
由比ヶ浜「一緒に……遊ぼうね……」
菜々子「うん!」
一同「…………」
508: 2014/01/21(火) 19:28:12 ID:1nMeTojY
―――――――――――
帰り道
テク テク テク…
花村「…………」
比企谷「…………」
クマ「…………」
りせ「…………」
白鐘「…………」
里中「…………」
509: 2014/01/21(火) 19:29:26 ID:1nMeTojY
里中「あ……えと、あたし、こっちだから」
比企谷「お、おう」
花村「またな、里中」
里中「うん。 じゃ、また明日」
タッ タッ タッ…
りせ「じゃあ……あたしもここで」
花村「ああ。 俺たちも行くか……クマ」
クマ「わかったクマ……」
花村「じゃあな、比企谷、白鐘」
比企谷「おう……」
白鐘「はい。 また明日……」
510: 2014/01/21(火) 19:30:23 ID:1nMeTojY
比企谷「…………」
白鐘「…………」
テク テク テク
白鐘「あ、あのっ」
比企谷「ん?」
白鐘「良かったら……夕食を一緒に取りませんか?」
比企谷「……いきなりだな」
比企谷「何か話したい事でもあるのか?」
白鐘「……そういう訳じゃありません」
白鐘「それとも、そういう『何か』が無いと 僕との食事は嫌ですか?」
比企谷「そうは言ってないだろ……」
白鐘「なら、問題は無いですよね?」
比企谷「……白鐘。 お前、雪ノ下に毒されてないか?」
511: 2014/01/21(火) 19:31:36 ID:1nMeTojY
大衆食堂 愛屋
オマチー
白鐘「いただきます」
比企谷「いただきます」
ズルルッ… ズルッ ズルッ…
白鐘「うん。 美味しいですね」
比企谷「ああ」
白鐘「先輩のそれ……トッピングは何ですか?」
比企谷「チャーシューを多めにコーンともやし」
白鐘「美味しそうですね」
比企谷「やらないぞ」
白鐘「ははは」 クスッ
512: 2014/01/21(火) 19:32:39 ID:1nMeTojY
白鐘「…………」
白鐘「いいですね、こういうの。 やってみて良かった」
比企谷「ん?」
白鐘「他愛のない会話ってやつです」
比企谷「…………」
比企谷「別に俺じゃなくても良かっただろ……」
白鐘「いえ」
白鐘「比企谷先輩『と』が……いいんです」///
比企谷「そうなのか?」
白鐘「ええ……」
513: 2014/01/21(火) 19:33:35 ID:1nMeTojY
白鐘「他の皆さんもそうですけど」
白鐘「事件絡みでしか話をしていない様な気がして……」
白鐘「そういうのじゃない、何か……明日の天気とか、普通の話題で」
白鐘「前々から話をしてみたかったんです」
比企谷(……尚の事、ぼっち歴の長い俺じゃない方がいいと思うが)
比企谷「そうか。 お役に立てて光栄だ」
白鐘「ははは」
白鐘「ところで……比企谷先輩は料理とかするんですか?」
比企谷「まあ……たしなむ程度だな」
白鐘「得意料理とか、あるんですか?」
比企谷「俺の味噌汁は、妹の小町もポイン……評判がいい」
514: 2014/01/21(火) 19:37:43 ID:1nMeTojY
白鐘「妹さんが居るんですか」
比企谷「言っとくが、俺に似てなくて とびきり可愛いぞ」
白鐘「比企谷先輩に似ててもきっと可愛いですよ」
比企谷「……お世辞だと分かるが、喜んでおく」
白鐘「お世辞なんかじゃないです」
比企谷「…………」
比企谷「俺ばっか聞かれるのもなんだし」
比企谷「白鐘の事、聞いていいか?」
白鐘「ええ。 体のサイズ以外で答えられる範囲なら」
比企谷「……ちいっ」
白鐘「そのくらいはさすがに予想してますよ、比企谷先輩」 クスッ
比企谷「……やっぱり雪ノ下に毒されてるだろ、白鐘」
ハハハ……
515: 2014/01/21(火) 19:38:43 ID:1nMeTojY
白鐘「…………」
白鐘(僕は……ずるい人間だ)
白鐘(由比ヶ浜さんがあんな状態だというのに……)
白鐘(…………)
白鐘(でも)
白鐘(比企谷先輩が元気になれる存在でありたい)
白鐘(彼の……大切な存在になりたい)
白鐘(…………)
白鐘(勝ち目は……薄いのかもしれないけど)
白鐘(それでも僕は、僕の心は、そうしたいと思っている……)
白鐘(……比企谷先輩)///
516: 2014/01/21(火) 19:39:54 ID:1nMeTojY
―――――――――――
数日後の放課後
ジュネス前
菜々子「あ! お兄さん!」
比企谷「菜々子ちゃん? それに……」
鳴上「またお会いしましたね。 鳴上です」
比企谷「どうも、比企谷です」
比企谷(……今日は平日なのに。 何で居るんだ?)
鳴上「病院に行く途中なんですが」
鳴上「伯父さんの日用品もついでにと思ってジュネスに……」
菜々子「あのね、お兄さん!」
517: 2014/01/21(火) 19:42:05 ID:1nMeTojY
菜々子「菜々子、お姉さんが早く元気になる様にと思って、お兄ちゃんに相談したら」
菜々子「”せんばづる”っていうのを作ってくれたの!」
菜々子「ほら!」
バッ!
比企谷(……どう見ても50羽くらいしか居ないが)
比企谷「そうか……ありがとう、菜々子ちゃん、鳴上……さん」
比企谷「これで由比ヶ浜、すぐに良くなると思う」
菜々子「えへへ!」
菜々子「菜々子もね、ちょっとだけど折ったんだよ?」
比企谷「どれかな?」
菜々子「えっとね……これとこれと……これ!」
比企谷「うん。 とっても綺麗に出来てる。 菜々子ちゃん上手だね……」
518: 2014/01/21(火) 19:43:49 ID:1nMeTojY
―――――――――――
ジュネス店内
比企谷「そうですか……菜々子ちゃんが電話を」
鳴上「ええ」
鳴上「菜々子……『お姉さん』の為に何かしたいって相談されたんです」
鳴上「最初、『お姉さん』って誰?と思いました」 クスッ
比企谷「でしょうね」 クスッ
鳴上「事情を聞いて、それなら……と思いついたんですが」
鳴上「時間がなくて あの有様です……」
比企谷「いえ、菜々子ちゃんのその気持ちが嬉しいですよ」
比企谷「わざわざ八十稲羽に来てくれた鳴上さんもね」
519: 2014/01/21(火) 19:45:10 ID:1nMeTojY
鳴上「俺は、菜々子の力になりたかっただけです」
比企谷「たとえそうだとしても」
比企谷「お礼をいいます。 ありがとう」
鳴上「どういたしまして」 クスッ
鳴上「……早く良くなるといいですね」
比企谷「……ええ」
??「おっ……比企谷」
比企谷「花村」
花村「よう! 偶然だな。 これからお見舞いか?」
雪ノ下「私達もこれからな……?」
520: 2014/01/21(火) 19:46:16 ID:1nMeTojY
菜々子「こ、こんにちは……」
鳴上「……こんにちは」
里中「あ……ど、どうも」
花村「比企谷、こちらは?」
比企谷「ああ、花村達は知らないんだよな……」
―――――――――――
天城「そういう事だったの」
鳴上「初めまして。 鳴上です」
菜々子「堂島菜々子ですっ」///
雪ノ下「こんにちは、菜々子ちゃん」
クマ「ナナちゃん、ありがとうクマ……」
クマ「きっとユイちゃん、これで良くなるクマよ!」
菜々子「~~~っ」///
521: 2014/01/21(火) 19:47:28 ID:1nMeTojY
りせ「……ねえ」
りせ「あたし達も折らない? 折り鶴」
里中「おおっ! いいアイデアじゃん!」
白鐘「僕たちも作りましょう! 千羽鶴」
鳴上「あ……それなら」
鳴上「この千羽鶴に継ぎ足しますか?」
比企谷「いいんですか?」
鳴上「ええ。 構わないよな? 菜々子」
菜々子「うん!」
花村「よし! じゃ、俺、折り紙買ってくるわ!」
522: 2014/01/21(火) 19:48:43 ID:1nMeTojY
―――――――――――
ジュネス フードコート
クマ「出来たクマ!」
花村「……お前、何を折ったんだ?」
クマ「え? これじゃないクマ?」
花村「かたち! 明らかに折り鶴じゃねーだろ!」
クマ「クマ……」
比企谷「……やっこさんか?」
雪ノ下「折り紙の説明部分、途中から隣のを見たのね」
比企谷「それでいてこの形にするって、ある意味すげーな……」
523: 2014/01/21(火) 19:49:49 ID:1nMeTojY
りせ「よし! 完成!」
天城「こっちも折れたよ」
里中「出来た……けど」
里中「あたしの……ぶかっこうだなぁ」
天城「千枝、こういうのは気持ちがこもってればいいんだよ」
里中「うううっ……やっぱり作り直すっ!」
菜々子「できたよ、お兄ちゃん!」
鳴上「うん。 上手に出来たな、菜々子」
菜々子「えへへっ」///
雪ノ下「鳴上……くんの折り鶴、とっても綺麗に折れているわね」
鳴上「それほどでも」
524: 2014/01/21(火) 19:50:50 ID:1nMeTojY
花村「謙遜は良くないって」
里中「普段から折ってるとか?」
鳴上「…………」
鳴上「実は、日本折り鶴選手権大会、準優勝してます」
天城「へえ……だからこんなに綺麗に折れるんだ」
りせ「納得の出来だよね」
クマ「およよ……クマも頑張って優勝を狙うクマ!」
花村「無理に決まってんだろうが、クマ」
鳴上「…………」
鳴上(どうしよう……冗談だったのに)
525: 2014/01/21(火) 19:51:48 ID:1nMeTojY
―――――――――――
比企谷「……こんなものかな」
菜々子「うわぁ……立派になったね! お兄ちゃん!」
鳴上「そうだな、菜々子」
里中「ううっ……やっぱりあたしが折ったの、悪い意味で目立ってるじゃん」///
比企谷「なかなかどうして。 いい味になってると思うぞ」
天城「そうだよ、千枝」
白鐘「手作り感が溢れてて、いいと思いますよ?」
里中「そ、そう?」
526: 2014/01/21(火) 19:53:20 ID:1nMeTojY
りせ「まあ、これで力不足に思うのなら」
りせ「別のところで頑張ればいいと思うな!」
里中「別のところ?」
りせ「例えば……由比ヶ浜さんの退院祝いにケーキ作るとか!」
天城「りせちゃん、それいいアイデアだね!」
里中「それなら自信あるじゃん!」
花村「止・め・な・さ・いっ!」
花村「退院した由比ヶ浜さん、病院に送り返す気かっ!?」
里中「それどういう意味よ!?」
比企谷「キーワードは林間学校、物体X、オムライス……」
天城「あ、あれから、時間、随分経ってるし!」
りせ「れ、練習だってしてるもんっ!」
527: 2014/01/21(火) 19:54:24 ID:1nMeTojY
雪ノ下「みんな、その辺にしておきなさい」
雪ノ下「折り鶴折ってたから、もうこんな時間よ」
里中「わっ!……本当だ、急いだ方がいいね」
クマ「どおりでお腹すいたクマ……」
花村「お前は年がら年中腹減らしてるだろ」
比企谷「よし。 そろそろ行くか」
天城「そうだね」
白鐘「行きましょう」
鳴上「菜々子、手を離さないようにな」
菜々子「うん! お兄ちゃん!」
528: 2014/01/21(火) 19:55:21 ID:1nMeTojY
―――――――――――
八十稲羽 総合病院
由比ヶ浜の病室前
バタ バタ…
クマ「クマ?」
比企谷「…………」
花村「お、おい……なんか」
里中「随分慌ただしいね……由比ヶ浜さんの病室」
りせ「…………」
天城「……まさか」
雪ノ下「…………」
白鐘「…………」
529: 2014/01/21(火) 19:56:24 ID:1nMeTojY
菜々子「お兄ちゃん?」
鳴上「菜々子……今は静かにしていよう。 な?」
菜々子「う、うん……」
看護師「!!」
看護師「あなた達は……」
一同「…………」
看護師「…………」
看護師「……由比ヶ浜さん、容態が急変したの」
一同「…っ!!」
530: 2014/01/21(火) 19:57:38 ID:1nMeTojY
看護師「今、全力を尽くして治療にあたっています」
看護師「心配に思うだろうけど、邪魔をしないでね」
看護師「じゃ……」
タッ タッ タッ…
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
里中「うそ……」
天城「こんなの……こんなのって……」
白鐘「…………」
クマ「およよ……ユイちゃん……」
花村「……大丈夫……きっと、大丈夫だ……きっと……」
りせ「頑張って……由比ヶ浜さん……!」
531: 2014/01/21(火) 19:58:43 ID:1nMeTojY
―――――――――――
チッ チッ チッ…
比企谷「…………」
比企谷「…………」 チラッ
22:24(ケータイのデジタル時計)
比企谷(……あれから、もう3時間か)
鳴上「…………」
鳴上「菜々子。 お父さんの病室に行こう?」
菜々子「やだっ……」
菜々子「菜々子、お姉さんに”せんばづる”渡すまで、ここに居るっ」
鳴上「菜々子……」
532: 2014/01/21(火) 20:00:14 ID:1nMeTojY
ガチャ…
一同「!!」
看護師「…………」
看護師「君……確か、ヒッキー?とか言われてたね」
比企谷「……はい」
看護師「…………」
看護師「由比ヶ浜さんのご両親……間の悪い事に」
看護師「今日、どうしても外せない用事で遠出してたの」
比企谷「…………」
533: 2014/01/21(火) 20:01:34 ID:1nMeTojY
看護師「……連絡は入れておいたけど」
看護師「たぶん……厳しいと思う」
一同「……!!」
看護師「…………」
看護師「本来はダメなんだけど……担当の先生も」
看護師「誰か一人くらいなら見て見ぬふりしてくれるって……」
比企谷「…………」
里中「……っ」
天城「……う…そ……」
りせ「……そん……な」
白鐘「由比ヶ浜……さん……」
クマ「…………」
534: 2014/01/21(火) 20:02:43 ID:1nMeTojY
比企谷「…………」
花村「……比企谷」
比企谷「っ!」 ビクンッ
花村「早く…行けよ……由比ヶ浜さん……ぐっ……待ってるぞ」
比企谷「花村……」
菜々子「待って、お兄さんっ」
菜々子「これ……!」
比企谷「…………」
比企谷「……ありがとう、菜々子ちゃん」
比企谷「必ず渡す」
菜々子「うんっ」 グスッ…
鳴上「…………」
535: 2014/01/21(火) 20:04:09 ID:1nMeTojY
―――――――――――
看護師「由比ヶ浜さん、聞こえる?」
看護師「ヒッキー?君、来てくれたよ?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……ヒッ……キー……?」
比企谷「由比ヶ浜……ここだ。 ここに居るぞ」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……ヒッ……キー……」
比企谷「……っ」
比企谷「由比ヶ浜……これ見ろよ」
536: 2014/01/21(火) 20:05:26 ID:1nMeTojY
比企谷「菜々子ちゃん……いや、みんなで……」
比企谷「お前が元気になる様にって……作ったんだ」
由比ヶ浜「…………」
ああ……ヒッキーの手だ
ヒッキー……私の手、握ってる
あったかいなぁ……
537: 2014/01/21(火) 20:06:53 ID:1nMeTojY
比企谷「わかるだろ? みんなお前を……待ってるんだよ」
比企谷「それに……ほら、約束」
比企谷「元気になったら、俺に何か言うんだろ?」
由比ヶ浜「…………」
お父さんとお母さんにも会いたかったけど……
最後があなたで……私……嬉しい……
538: 2014/01/21(火) 20:07:51 ID:1nMeTojY
比企谷「約束しただろっ……約束っ……うっ……」
比企谷「頼むから……守ってくれよ……」
比企谷「由比ヶ浜っ……なあっ……!」
由比ヶ浜「…………」
……ごめんね、ヒッキー
約束……守れなくて……
539: 2014/01/21(火) 20:09:18 ID:1nMeTojY
………………
……やだ
540: 2014/01/21(火) 20:10:15 ID:1nMeTojY
こんなの……嫌だよ……
541: 2014/01/21(火) 20:11:15 ID:1nMeTojY
せっかく……ヒッキーの『特別』になれたのに……
告白の返事も聞いてないのに……
氏にたくないよっ……
542: 2014/01/21(火) 20:12:18 ID:1nMeTojY
これで終わりなんて……あんまりだよっ……
ヒッキー……
543: 2014/01/21(火) 20:13:24 ID:1nMeTojY
私…………もっと…………あなたと……
たくさん…………お話して…………
544: 2014/01/21(火) 20:14:42 ID:1nMeTojY
そん…な………………まい………にち…………を……
すご………………し………………た………………
545: 2014/01/21(火) 20:15:28 ID:1nMeTojY
………………………………………………
546: 2014/01/21(火) 20:16:24 ID:1nMeTojY
ピ―――――――――――――――――――――…………
547: 2014/01/21(火) 20:17:09 ID:1nMeTojY
比企谷「……っ!!!」
比企谷「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……由比……ヶ浜?」
比企谷「…………」
比企谷「由比ヶ浜……」
比企谷「由比ヶ浜っ……」
比企谷「……っ」
比企谷「由比…ヶ浜ぁっ……!」
548: 2014/01/21(火) 20:18:22 ID:1nMeTojY
乾いた電子音が響く中
由比ヶ浜が俺の呼びかけに答える事は……
549: 2014/01/21(火) 20:19:10 ID:1nMeTojY
もう……無かった……
557: 2014/01/29(水) 19:23:26 ID:9X8ZOpRs
―――――――――――
コッ コッ コッ…
堂島「……ん?」
天城「……ううっ……ぐっ……」
里中「…………こんなの……ぐくっ……」
白鐘「……っ…………っ……」
りせ「あんまり、だよ……ひっく………ううっ…」
雪ノ下「…………」
クマ「ユイちゃん………ユイちゃん………」
花村「……ぐっ……うくっ………うあっ……」
堂島「…………」
558: 2014/01/29(水) 19:25:19 ID:9X8ZOpRs
堂島「……悠」
鳴上「! ……伯父さん」
菜々子「!」
菜々子「お父……さん」
菜々子「お父さん、お父さんっ」
ギュッ…
菜々子「うあああああんっ…! お姉さんっ……お姉さんがっ……」
堂島「菜々子……」
鳴上「…………」
鳴上「……今は、そっとしておきましょう」
堂島「……そうだな。 俺の病室に行こう」
559: 2014/01/29(水) 19:27:15 ID:9X8ZOpRs
由比ヶ浜の病室
比企谷「…………」
看護師のテキパキとした動きで酸素吸入器が外される。
もうピクリとも動かなくなった由比ヶ浜から……
さっきまで悲しかったはずなのに……
不思議と……もう涙は溢れてこない。
比企谷「…………」
560: 2014/01/29(水) 19:29:03 ID:9X8ZOpRs
比企谷「……看護師さん」
看護師「……はい?」
比企谷「これ……千羽づ……百羽とちょっと鶴」
比企谷「由比ヶ浜に持たせてもいいですか?」
看護師「ええ……どうぞ」
比企谷「……ありがとうございます」
俺は、由比ヶ浜の胸の辺りに百羽とちょっと鶴を置き
それに由比ヶ浜の両手を添えた。
比企谷「…………」
561: 2014/01/29(水) 19:31:05 ID:9X8ZOpRs
何かを言おうと思ったが思いつかず……
そのまま静かに……俺は由比ヶ浜の病室を後にした。
562: 2014/01/29(水) 19:32:26 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「…………」
白鐘「比企谷先輩……」
比企谷「…………」
比企谷「……みんな、今日はもう帰……」
ハナセー ハナシヤガレッ
比企谷「!?」
里中「今の声……花村?」
コロシテヤルッ ブッコロシテヤルッ
天城「ええ!?」
563: 2014/01/29(水) 19:33:44 ID:9X8ZOpRs
りせ「ど、どうしちゃったの!? 花村先輩!?」
比企谷「!」
比企谷「あいつ……まさか生天目の病室に!?」
一同「!?」
里中「生天目!? あいつ、この病院に居たの!?」
天城「じゃ、じゃあ頃してやるって……」
りせ「そ、それって、ヤバイんじゃ!?」
白鐘「ともかく、現場に向かいましょう!」
ダダダッ……
クマ「…………」
564: 2014/01/29(水) 19:34:51 ID:9X8ZOpRs
由比ヶ浜の病室
クマ「…………」
クマ「ユイちゃん……」
クマ「…………」
クマ「ごめんね……何の力にもなれなくて……」
クマ「クマ……できる事なら、何でもやってあげたかった」
クマ「でも……クマに出来る事は……大抵みんな出来てて……」
クマ「……っ」
クマ「ごめん……ねっ……」
クマ「クマ……役立たずで……本当にごめんねっ……」
クマ「……ううっ……ごめ、ん……ね……ユイちゃんっ……」
565: 2014/01/29(水) 19:35:50 ID:9X8ZOpRs
本当に……ごめんなさい……
566: 2014/01/29(水) 19:37:09 ID:9X8ZOpRs
―――――――――――
生天目の病室前
花村「何でだよっ!?」
花村「何であいつが生きてて……」
花村「由比ヶ浜さんが氏ななきゃならないんだよっ!?」
花村「山野アナだって小西先輩だって頃してるのはあいつなのに……」
花村「どうしてなんだよっ!!」
警官1「おとなしくしろっ!」
警官2「公務執行妨害、現行犯で確保する!!」
花村「放せ! 放しやがれっ!」
里中「! は、花村……」
天城「お巡りさん! 待ってください!」
天城「事情が……事情があるんです!!」
567: 2014/01/29(水) 19:38:21 ID:9X8ZOpRs
警官1「残念だが見逃す訳にはいかん」
警官1「理由はどうあれ『ブッ頃す』などと物騒な事も言ってるしな」
警官2「ほら立て!」
花村「ぐっ……」
花村「……ううっ……由比…ヶ浜さん…………」
警官1「……ちっ」
警官1「そっち持ってくれ。 引きずってでも連れて行く」
警官2「わかった」
ズルズルズル…
一同「……っ」
568: 2014/01/29(水) 19:40:24 ID:9X8ZOpRs
りせ「…………」
りせ「……どうしてよ」
りせ「どうして生天目は生きてるの!?」
雪ノ下「久慈川さん……」
里中「……あたしだって」
里中「気持ちは花村と同じだよっ……!」
里中「こんなの……こんなのって……無いじゃん!」
天城「千枝……」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
カタンッ……!
一同「!?」
569: 2014/01/29(水) 19:41:29 ID:9X8ZOpRs
里中「何? 今の音?」
白鐘「……生天目の部屋の方から聞こえましたね」
比企谷「確かにな」
白鐘「行ってみませんか?」
一同「!?」
白鐘「……今なら見張りの警官は居ませんし」
白鐘「せっかく出来たチャンスです。 入るべきだと思うのですが」
一同「…………」
比企谷「虎穴に入らずんば虎子を得ず……か」
比企谷「行ってみよう」
570: 2014/01/29(水) 19:42:36 ID:9X8ZOpRs
生天目の病室
ヒュウウウウウ……
生天目「はあ……はあ……」
生天目「……ぐっ……く……」
比企谷「生天目……」
生天目「!?」
白鐘「……やれやれ。 どうやら窓から逃げるつもりだった様ですね」
生天目「う……ううっ……」
里中「どこまで卑怯なの……」
天城「もういい加減、観念しなさいよ……!」
比企谷「…………」
571: 2014/01/29(水) 19:44:00 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「あなたのせいで、由比ヶ浜さんはっ……!」
りせ「絶対に……許さない……!」
比企谷「……ここから逃げ出して どうするつもりだったんだ?」
比企谷「生天目……」
生天目「…………」
比企谷「また――」
生天目「ひっ」
比企谷「被害者を増やすつもりだったのかっ……! 生天目っ…!」
生天目「ち、違――」
……ピウィ~……
一同「!?」
572: 2014/01/29(水) 19:45:33 ID:9X8ZOpRs
里中「み、見て! 【マヨナカテレビ】が……!」
雪ノ下「夜中の0時……でも」
天城「どうして!? 今日、雨降ってないのに……」
テレビ『……救済は失敗だ』
白鐘「生天目!?」
比企谷「それも鮮明な映像……本人はここに居るのに……?」
りせ「何が起こってるの!?」
テレビ『お前達に邪魔されたせいだ……』
一同「!?」
573: 2014/01/29(水) 19:46:56 ID:9X8ZOpRs
里中「……なにそれ。 あたし達の事!?」
テレビ『だが……俺はこれからも救済を続ける』
テレビ『今回は失敗に終わったが、法律は俺を裁けない……』
テレビ『どうせすぐに釈放されるからな!!』
一同「!!」
生天目「!?」
テレビ『ふふふ……誰も俺を止められない』
テレビ『止めようとしても無駄だ。 俺は何度でも繰り返して救済するのだから』
テレビ『それでも止めたいのなら好きにすればいい』
テレビ『ふふふ……は―――っはっはっはっ……!』
ブツンッ!
一同「…………」
574: 2014/01/29(水) 19:48:07 ID:9X8ZOpRs
比企谷「……好きにしろ」
比企谷「か……」
生天目「ひ、ひいっ!」
白鐘「……それにしても意外でした」
白鐘「生天目の病室に こんな大きなサイズのテレビがあったなんて……」
白鐘「大人でも……充分入れそうですよね」
生天目「!!」
里中「ちょっ……ちょっと待って」
里中「それって……!?」
575: 2014/01/29(水) 19:49:50 ID:9X8ZOpRs
白鐘「生天目は逃げようとしてましたし……」
白鐘「行方不明になっても不思議はありませんよ」
天城「し、白鐘くん! 何を言ってるのかわかってるの!?」
雪ノ下「あなたこそわかっているのかしら? 天城さん」
天城「え……?」
雪ノ下「今、【マヨナカテレビ】の生天目が言ってたわ」
雪ノ下「『法律は俺を裁けない』と……」
天城「そ、それは……」
雪ノ下「実際その通りよ」
雪ノ下「テレビに入れて頃しました……何て供述」
雪ノ下「どうやって裁くのかしら?」
天城「…………」
576: 2014/01/29(水) 19:51:02 ID:9X8ZOpRs
りせ「で、でも……! だからって……」
白鐘「考え方を変えればいいんですよ」
白鐘「僕たちは生天目を頃すわけじゃない」
白鐘「テレビに入れるだけ……それだけです」
白鐘「後は彼次第にすぎません。 自分の【シャドウ】に殺されるかどうかは、ね……」
りせ「だけど……あそこからは、自力で出られないんだし」
りせ「結果は同じじゃない!!」
生天目「う、うわあああっ」 ダダッ!
ガシッ!
比企谷「…………」
577: 2014/01/29(水) 19:52:31 ID:9X8ZOpRs
生天目「や、やめてくれぇ……」
里中「ひ、比企谷くんっ……」
天城「いくら何でもやりすぎだよっ! こんなのっ!」
雪ノ下「……そう思うのなら」
雪ノ下「ここから出て行きなさい」
りせ「!?」
雪ノ下「かかわり合いになりたくないのなら、今の内よ」
雪ノ下「早く病室から去るといいわ」
白鐘「それに時間もありませんしね」
白鐘「これは花村先輩が連行される事で出来た、貴重な時間です」
白鐘「チャンスは今しかない」
578: 2014/01/29(水) 19:53:35 ID:9X8ZOpRs
生天目「ち、違うんだぁぁ……!」
生天目「さっきの……テレビが言ってた事は……」
生天目「でたらめなんだぁぁ……!」
里中「チャ、チャンスとか、そんな事を言いたいんじゃなくて!」
天城「こんなの……やり方としておかしいって言いたいの!」
りせ「お願い、比企谷先輩!」
りせ「考え直して!」
比企谷「…………」
ズル ズル ズル…
生天目「僕はただ……救いたかっただけなんだぁぁ……」
生天目「出来る事をやっていただけなんだぁぁ……」
579: 2014/01/29(水) 19:54:34 ID:9X8ZOpRs
比企谷「…………」
……ざけんな
何が救うだ。 お前のせいで由比ヶ浜は……!
俺を好きだと言ってくれた由比ヶ浜はっ……!
由比ケ浜はっ!!
比企谷「……っ」 ギリッ!
580: 2014/01/29(水) 19:55:33 ID:9X8ZOpRs
??「……本当にそれでいいのか?」
比企谷「!?」
白鐘「……あなたは」
雪ノ下「鳴上……くん」
鳴上「もう一度言う」
鳴上「本当にそれでいいのか?」
比企谷「…………」
581: 2014/01/29(水) 19:56:51 ID:9X8ZOpRs
白鐘「部外者は黙っててください」
鳴上「それは否定しない。 だが……」
鳴上「だからこそ、今の君たちは」
鳴上「弱った病人を寄ってたかって嬲(なぶ)っている様にしか見えない」
比企谷「…………」
白鐘「……比企谷先輩、気にする事はありません」
白鐘「たとえ見られたとしても、誰も彼の話を信じないでしょう」
白鐘「与太話で済まされる問題です」
雪ノ下「その通りよ、比企谷くん」
雪ノ下「そして迷っている時間はもう無いわ」
582: 2014/01/29(水) 19:57:59 ID:9X8ZOpRs
比企谷「…………」
比企谷「…………」
――本当にこれでいいのかい?――
比企谷「……生天目」
生天目「……はあ……はあ……?」
比企谷「お前は……由比ヶ浜を」
比企谷「いや、他の被害者も含め、本当の意味で救おうとしたのか?」
生天目「あ、ああ! その通りだっ……」
比企谷「…………」
585: 2014/01/29(水) 20:02:56 ID:9X8ZOpRs
――何かが――
――引っかかっているんだろう?――
比企谷「……っ!」
パッ……ドサッ……
生天目「ぐっ……はああああ……」
586: 2014/01/29(水) 20:04:10 ID:9X8ZOpRs
白鐘「!?」
雪ノ下「比企谷くん、何をしているの!?」
白鐘「今しか無いんですよ!?」
比企谷「……落ち着け、二人共」
白鐘「!」
雪ノ下「!」
比企谷「今の俺たちは……冷静じゃない」
比企谷「いや、冷静になれない」
一同「…………」
比企谷「少し時間を置いた方がいい……」
比企谷「その上で、生天目に話を聞くのが、一番いいと思う」
587: 2014/01/29(水) 20:05:49 ID:9X8ZOpRs
里中「うん……あたし、その意見に賛成」
天城「そうだよ、それでこそ比企谷くんだよ」
雪ノ下「……!」
りせ「よくよく考えたら……生天目に動機とか聞いてないもんね」
白鐘「……!」
比企谷「…………」
比企谷「……これでいいか? 鳴上…さん」
鳴上「…………」
鳴上「そういえば……俺は何をしにここへ来たんだ?」
比企谷「は?」
―――――――――――
588: 2014/01/29(水) 20:07:19 ID:9X8ZOpRs
深夜
ひと気の無い待合室
比企谷「……花村の事でしたか」
鳴上「ええ」
鳴上「俺は騒ぎを聞いて、それを伯父さんに伝えて」
鳴上「伯父さん、警官を説得して彼を自宅に返すよう指示したそうです」
鳴上「俺はそれを伝えにあそこへ……」
比企谷「そうだったんですか」
比企谷「堂島さんに後でお礼を言っておかないと……」
比企谷「わざわざすみませんでした」
鳴上「いえ」
589: 2014/01/29(水) 20:08:26 ID:9X8ZOpRs
鳴上「それじゃ……俺はこれで」
比企谷「はい。 お疲れ様でした」
テク テク テク…
比企谷「…………」
比企谷「じゃ……俺たちも帰ろう」
比企谷「いろいろあって疲れた……ゆっくり休んでくれ」
一同「…………」
里中「そうだね……確かに疲れたじゃん」
天城「うん……」
りせ「そういやクマ。 ずいぶん静かだけど、どうしたの?」
590: 2014/01/29(水) 20:09:50 ID:9X8ZOpRs
シーン……
雪ノ下「……え?」
里中「あれ?」
天城「クマくんが……居ない!?」
りせ「いつから居なくなってたの!?」
白鐘「ともかく、探してみましょう」
比企谷「だな」
―――――――――――
雪ノ下「居た?」
里中「ダメ……由比ヶ浜さんの病室にも居なかった」
りせ「どこに行ったのよ……クマ」
591: 2014/01/29(水) 20:11:43 ID:9X8ZOpRs
白鐘「先に帰ったんでしょうか?」
比企谷「その可能性はあるな……」 ピッピッピッ…
比企谷「……だめか。 花村のケータイ、通じねぇ」
天城「そう……」
比企谷「…………」
比企谷「みんな、もう遅い。 今日はここまでにしよう」
比企谷「クマの事は心配だが……花村も もう休んだのかもしれん」
比企谷「明日にしよう……」
一同「…………」
592: 2014/01/29(水) 20:13:00 ID:9X8ZOpRs
りせ「ううー! 寒い寒いっ!」
天城「外……こんなに冷え込んでたんだ」
里中「もうすっかり冬だね……」
ガスマスク男「霧がー! これは毒だー! 逃げろー!!」
一同「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……あ」
白鐘「降ってきましたね……雪」
白鐘「通りで冷える訳です……」
里中「…………」
里中「それじゃ……行こ、雪子」
天城「うん、千枝。 じゃまた明日……」
593: 2014/01/29(水) 20:14:21 ID:9X8ZOpRs
りせ「…………」
りせ「……それじゃあたしも帰ります」
りせ「また明日……」
タッ タッ タッ…
白鐘「…………」
白鐘「あの、比企谷先輩……」
比企谷「……ん?」
白鐘「…………」
白鐘「また今度、どこかで暖かいものでも食べませんか?」
比企谷「……そうだな。 考えとく」
白鐘「…………」
白鐘「では、楽しみにしておきます」
白鐘「お休みなさい……」
594: 2014/01/29(水) 20:19:12 ID:9X8ZOpRs
スタ スタ スタ…
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……それじゃ、比企谷くん」
比企谷「ああ……また明日な」
雪ノ下「……ええ」
テク テク テク…
比企谷「…………」
比企谷「…………」
テク テク テク…
595: 2014/01/29(水) 20:28:12 ID:9X8ZOpRs
―――――――――――
????
キュム キュム キュム…
クマ「ここは……どこクマ?」
キュム キュム キュム…
クマ「…………」
クマ「クマは……どうしてこんな所に?」
クマ「…………」
クマ「まるで……あの時みたいクマ……」
キュム キュム キュム…
クマ「……あの時?」
クマ「!!」
596: 2014/01/29(水) 20:29:35 ID:9X8ZOpRs
クマ「…………」
クマ「……思い出したクマ」
クマ「クマは……クマは……」
クマ「…………」
クマ「は……ははは……」
クマ「滑稽クマ……どうしてこんな事、今思い出したクマ……」
クマ「…………」
クマ「ごめんね……ユイちゃん、みんな……センセイ……」
クマ「もう……クマは……みんなと一緒に居られないクマ……」
クマ「…………」
597: 2014/01/29(水) 20:30:28 ID:9X8ZOpRs
さようなら……みんな……
さようなら……
……トクン
598: 2014/01/29(水) 20:32:01 ID:9X8ZOpRs
―――――――――――
鮫川河川敷公園
比企谷「…………」
比企谷(……もし)
比企谷(鳴上があの時来なければ……)
比企谷(俺は……どうしていた?)
比企谷(…………)
比企谷(いや……たとえ鳴上が何か言おうとも)
比企谷(生天目をテレビに放り込むべきじゃなかったのか……)
比企谷(…………)
比企谷(俺は……)
599: 2014/01/29(水) 20:34:15 ID:9X8ZOpRs
比企谷(…………)
由比ヶ浜「一昨日から、天城屋自慢の『美人の湯』に入り続けてるの!」
由比ヶ浜「だから、結構綺麗になったでしょ?」
比企谷(…………)
由比ヶ浜「来年の今頃は……きっとまた元通りだよね?」
由比ヶ浜「来年の春、二人とも総武高校に帰ってきて、あの部室で」
由比ヶ浜「ゆきのんがいて、ヒッキーがいて」
由比ヶ浜「そして、私がいて……」
600: 2014/01/29(水) 20:35:16 ID:9X8ZOpRs
比企谷(…………)
由比ヶ浜「うわあ……! ヒッキーに美人さんだって褒められた!」
由比ヶ浜「ね、ね! もう一回、言ってよ! ヒッキー!」
比企谷(…………)
由比ヶ浜「でさ! もうびっくりだよ!」
由比ヶ浜「まさかヒッキーの学校が修学旅行でここに来るなんて!」
由比ヶ浜「えへへー。 それにしてもここ、変わってないでしょ?」
由比ヶ浜「今すぐにでも部活動できる気がしない?」
601: 2014/01/29(水) 20:36:59 ID:9X8ZOpRs
比企谷(…………)
由比ヶ浜「心配してくれてありがとう」
由比ヶ浜「じゃ、この話はもうおしまい!」
由比ヶ浜「天気もいいし、どっか遊びに行こうよ! 三人で!」
比企谷(…………)
司会「ところで、アピールしたい人って誰なのかな?」
由比ヶ浜「ま、まあ、とても鈍い人、とだけ言っておきます」///
602: 2014/01/29(水) 20:38:36 ID:9X8ZOpRs
比企谷(…………)
由比ヶ浜「ヒッキーにこんな自分を……見せたくなかった……!」
由比ヶ浜「私……ぐすっ……ヒッキーには……」
由比ヶ浜「綺麗な……うぐっ……自分を……見ていて欲しかった……」
由比ヶ浜「それだけ……ひっく……それだけ……だったの……」
比企谷(……っ)
由比ヶ浜「私……ヒッキーの事……好きだよ……」
由比ヶ浜「えへへ……やっと……言えた……」
由比ヶ浜「気持ち……伝えられた……嬉しい……」
603: 2014/01/29(水) 20:40:03 ID:9X8ZOpRs
サクッ サクッ サクッ…
604: 2014/01/29(水) 20:42:16 ID:9X8ZOpRs
比企谷「……!」
比企谷「雪ノ下……」
いつの間にか……少し積もっていた雪で
彼女の足音に俺は気がついた。
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
どうしてここに? 何をしに?
いくつか疑問が浮かんだが……俺は、それを口にしなかった。
605: 2014/01/29(水) 20:43:45 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……なあ、雪ノ下」
雪ノ下「……うん」
比企谷「あの時……テレビの世界での由比ヶ浜」
雪ノ下「うん」
比企谷「俺……初めて由比ヶ浜の泣き顔を見た」
雪ノ下「…………」
比企谷「それまで……俺は由比ヶ浜って、笑ってる所しか思い出せなくて」
比企谷「いつもニコニコしてて、笑顔しか出来ないのか?とか思ったりもした」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
606: 2014/01/29(水) 20:45:27 ID:9X8ZOpRs
比企谷「……そんな訳ないよな」
比企谷「あいつがどうして いつも笑っていたのか……結局わからなくて」
比企谷「わからないままに……なって……」
雪ノ下「…………」
比企谷「初めて見た泣き顔は……俺が……原因、で……」
比企谷「なのに……あいつ……ぐくっ……俺を……こんな俺を……っ」
雪ノ下「……っ」
比企谷「……もう……ぐっ……謝る……こ、と……も……ひぐっ……」
比企谷「できなく……なって……ぐっ……」
雪ノ下「…………」
比企谷「俺……ぐっ……俺は……ひぎっ……俺はっ……!」
比企谷「……うぐっ……ぐっ……はっ……っ……あぐっ……」
607: 2014/01/29(水) 20:47:04 ID:9X8ZOpRs
ギュッ……
比企谷「……ひぐっ……うっ……うぐっ……ぎっ……ぐっ……」
雪ノ下「…………」
……こんなのは
こんなやり方は、ずるいと思う
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜さんが居なくなって……そんな際に出来た
比企谷くんの心の穴を、隙を、埋めるみたいな行動……
雪ノ下「…………」
608: 2014/01/29(水) 20:51:53 ID:9X8ZOpRs
でも
609: 2014/01/29(水) 20:54:47 ID:9X8ZOpRs
こんな状況の比企谷くんを……放っておけなかった
支えてあげたかった
抱きしめてあげたかった
温めてあげたかった
610: 2014/01/29(水) 20:56:05 ID:9X8ZOpRs
ひとりに……しておきたくなかった……
611: 2014/01/29(水) 20:57:26 ID:9X8ZOpRs
―――――――――――
翌日の午前中
足立宅
比企谷「…………」
比企谷(……もう昼前かよ)
比企谷(…………)
比企谷(足立さん……俺を起こさなかったのか)
比企谷(…………)
ガラッ…
比企谷「……ん? 書置きがある」
612: 2014/01/29(水) 20:58:55 ID:9X8ZOpRs
比企谷くんへ
おはよう、比企谷くん。
事情は堂島さんから聞いたよ。 大変だったね……。
深夜に帰って来たし、疲れていると思ったから起こさないでおいた。
何なら今日は、学校休んでもいいと思う。
今は、ゆっくりした方がいいよ。 うん。
今夜は僕が食事を作るからね。 それじゃ、行ってきます。
足立
613: 2014/01/29(水) 20:59:59 ID:9X8ZOpRs
比企谷「…………」
比企谷(……学校……か)
比企谷(…………)
比企谷(花村やクマの事もある)
比企谷(行かないとな)
―――――――――――
昼休み
教室
比企谷「……おそよう」
里中「! 比企谷くん……」
614: 2014/01/29(水) 21:01:14 ID:9X8ZOpRs
花村「比企谷……」
天城「比企谷くん……」
雪ノ下「何かしら、その挨拶」
一同「……え?」
雪ノ下「もしかして、『おはよう』のお昼バージョンとかいう」
雪ノ下「程度の低いボキャブラリーじゃないでしょうね?」
比企谷「…………」
比企谷「……何でいきなり俺は批判されてるんだよ?」
雪ノ下「あなたが、くだらない事を言うからに決まってるでしょう?」
比企谷「否定はしないがな……暗い気分を何とかしようと軽くボケただけで」
雪ノ下「だったら、スワヒリ語とかで挨拶した方が面白いと思うわ」
615: 2014/01/29(水) 21:03:02 ID:9X8ZOpRs
里中(…………)
天城(…………)
花村(…………)
比企谷「……っとすまん、みんな」
里中「え? い、いや、そんな事ないじゃん?」
天城「ちょっと驚いたけどね」
天城(いつも通りすぎて……)
花村(……立ち直り早すぎだろ)
比企谷「今、話せるか? 花村?」
616: 2014/01/29(水) 21:05:55 ID:9X8ZOpRs
花村「あ、ああ。 クマの事だな?」
花村「けど……その前に謝っとくわ」
花村「心配かけて悪かった……」
比企谷「…………」
比企谷「もういいさ。 それにあれは俺よりも鳴上…さんや堂島さんに」
比企谷「礼を言った方がいいと思う」
花村「その辺は里中達から聞いた。 放課後、病院に行って堂島さんに会うつもりだ」
比企谷「そうか……」
花村「じゃ、クマの事だが……結論から言う」
花村「完全に行方不明状態だ」
比企谷「!?」
花村「俺の家に戻った形跡はない」
花村「ここのところ少し様子がおかしかったし……由比ヶ浜さんの事、ショックで」
花村「あの世界に帰っちまったのかもしれねぇ」
617: 2014/01/29(水) 21:07:35 ID:9X8ZOpRs
比企谷「……ありえるな」
比企谷「だが……もしあの世界に帰っていなかったら、少し困った状況だな」
里中「と言うと?」
比企谷「あの世界……自由に行き来 できないかもしれん」
一同「!!」
里中「そうだった……あの世界から帰る出入り口出せるの」
里中「クマくんだけだもんね……」
天城「いつでも使えるようにって、出しっぱなしには してくれてるでしょ?」
花村「まあな。 けど、どんなイレギュラーがあるか、分かったもんじゃねぇ……」
花村「おいそれとは、行きにくいな」
618: 2014/01/29(水) 21:09:02 ID:9X8ZOpRs
比企谷「ともかく、クマは大事な仲間だ」
比企谷「必ず探し出す」
一同「……!?」
一同(比企谷(くん)が……『仲間』って言った!?)
比企谷「……どうした?」
里中「ん!? い、いや、何でもございません事ですよ!?」
比企谷「……馬鹿にしてるのか?」
天城「そ、それより、お昼どうする?」
花村「そういや、もうこんな時間か。 俺は購買のパン、買ってく」
ドンッ!!
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「……何でしょう。 雪ノ下さん」
619: 2014/01/29(水) 21:10:22 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「お、お弁当……作りすぎてね(棒)」///
雪ノ下「捨てるのも、もったいないし(棒)」///
雪ノ下「よ、よよよ、良かったら……いるかしら?(棒)」///
里中(何この大きな重箱……)
花村(……どう見ても作りすぎってレベルじゃねーだろ)
天城(今朝、厨房(ちゅうぼう:台所の事)で何かしてると思ったら……)
天城(昨夜、私より遅く帰ってきて、ほとんど寝てないハズなのに)
比企谷「…………」
比企谷「……そうだな」
比企谷「ありがたく貰おう」
620: 2014/01/29(水) 21:11:20 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「!!」///
雪ノ下「そ、そう……」///
雪ノ下「良かった……」///
里中(えええええええっ!? 比企谷くん、いつものツッコミは無しなの!?)
花村(おいおいおいっ!? こんなデレッデレな雪ノ下さん、初めて見るんですけど!?)
天城(雪ノ下さん……可愛い……)
雪ノ下「じゃ、広げるわね」
比企谷「ああ。 そうだ、せめてお茶くらいは用意しよう」
雪ノ下「それもここにあるわ」
比企谷「至れり尽くせり、だな……」
621: 2014/01/29(水) 21:12:25 ID:9X8ZOpRs
ピピピッ……ピピピッ……
比企谷「っと、すまん。 電源を切り忘れてたか……」 ピッ
比企谷「はい、比企谷です」
比企谷「…………」
比企谷「ああ、足立さん。 今朝はどうも」
比企谷「それで? どうしたんですか?」
比企谷「……はい……はい」
比企谷「…………」
比企谷「!!!!!!!!」
比企谷「ほ、本当なんですか!? それ!?」
622: 2014/01/29(水) 21:13:30 ID:9X8ZOpRs
雪ノ下「比企谷くん?」
花村「どうしたんだ?」
里中「足立って……比企谷くんの保護者の刑事さんだよね?」
天城「すごく驚いたみたいだけど……何かあったのかな?」
―――――――――――
623: 2014/01/29(水) 21:14:19 ID:9X8ZOpRs
――ああ、僕も驚いたよ――
――こんな事ってあるんだねぇ――
比企谷「タクシー!!」
比企谷「ちっ……! 乗ってやがったか!」
624: 2014/01/29(水) 21:15:05 ID:9X8ZOpRs
――たまたま仕事の報告をしに病院に行って――
――堂島さんから聞いたんだよ――
雪ノ下「比企谷くん、こっち! 捕まえたわ!」
比企谷「!! よし!」
625: 2014/01/29(水) 21:16:13 ID:9X8ZOpRs
――堂島さん、早く君に知らせてやれって言ってね――
――もちろん言われなくてもするつもりだったけどさ――
比企谷「八十稲羽総合病院までお願いします!」
花村「それも超特急で!」
626: 2014/01/29(水) 21:16:55 ID:9X8ZOpRs
――良かったね、比企谷くん――
――できるだけ早く会いに行ってあげなよ?――
比企谷(早く……早く……!!)
里中「ちょっとは落ち着くじゃん? 比企谷くん……」
天城「こればっかりはしょうがないよ、千枝」
627: 2014/01/29(水) 21:17:52 ID:9X8ZOpRs
――きっと――
――首を長くして待っていると思うから――
比企谷「着いたっ!」
ダダッ!!
雪ノ下「運転手さんありがとう。 これで……」つ金カード
雪ノ下「……え? 使えない!?」
628: 2014/01/29(水) 21:18:47 ID:9X8ZOpRs
――由比ヶ浜さん――
比企谷(由比ヶ浜っ!)
看護師「! 廊下を走っちゃダメ!!」
白鐘「す、すみません!」
りせ「お小言は後で聞きますから!」
629: 2014/01/29(水) 21:19:44 ID:9X8ZOpRs
由比ヶ浜の病室
比企谷「はあっはあっ……!」
ガララッ
比企谷「ゆ、由比ヶ浜っ……!」
ピッ ピッ ピッ…
比企谷「!!」
比企谷「由比…ヶ浜……っ!」
630: 2014/01/29(水) 21:20:38 ID:9X8ZOpRs
心地よいリズムで心臓の鼓動を示す電子音……
酸素吸入器越しに聞こえるぐぐもった呼吸の音……
由比ケ浜が……生きている事をしっかりと伝えていた……!
比企谷「…………」
比企谷「……っ」
比企谷「……うっ……ううううっ……ああっ……っ!」
比企谷「由比…ヶ浜ぁ……ぐっ……良かった……ぐくっ……」
比企谷「心配……がげさせっ…やがっでぇ……!」
631: 2014/01/29(水) 21:22:04 ID:9X8ZOpRs
花村「生きてる……生きてるぞ……! 由比ヶ浜さんっ!」
花村「ぐっ……よ……良かった……あぐっ……良かった……!!」
りせ「こんな事って……あるんだね……っ」
りせ「良かった……本当に……良がっだぁ……ひっく……」
天城「夢じゃないよね……っ! 現実だよねっ……千枝……」
里中「うんっ……! 現実じゃん……! 生きてるじゃん……由比ヶ浜さんっ!」
白鐘「まったく……こんな一大事な時に………ぐっ………」
白鐘「どこに……行ったんですかっ……うっ……クマくん……っ!」
雪ノ下「……由比ヶ浜さん……良かった……っ……」
雪ノ下「もし……また勝手に……ぐっ……居なくなったら……」
雪ノ下「絶交……するんだからっ……ひっく……」
632: 2014/01/29(水) 21:23:47 ID:9X8ZOpRs
看護師「良かったね……みんな」
看護師「きっと、みんなの思いが通じたんだと思う」
看護師「彼女が生きている事を見つけたのは、ご両親だけど……」
看護師「キッカケはね、由比ヶ浜さんの胸に置かれた千羽鶴だったのよ」
比企谷「……え?」
看護師「ご両親……千羽鶴がね、微妙に動いているのに気がついて」
看護師「それで確かめてみたら、心臓が動いてる事がわかったって言ってたわ」
比企谷「!!」
看護師「あれが無かったらどうなっていた事か……」
看護師「由比ヶ浜さんのご両親、今は疲れて仮眠室で眠ってるけど」
看護師「君たちに会って、ぜひ、お礼を言いたいって言ってたわよ」
比企谷「そうですか……」
633: 2014/01/29(水) 21:25:40 ID:9X8ZOpRs
ともあれ由比ヶ浜は無事だった。
さらに驚くべき事に、短い時間だが意識も戻ったらしく
言葉も少し交わし、しかも容態は以前より安定しているとの事。
医者も首をかしげている状態で、詳しい検査をしないといけないが
後遺症も無く治るかもしれないそうだ……本当に良かった。
634: 2014/01/29(水) 21:27:02 ID:9X8ZOpRs
この後、花村と一緒に会う堂島さんに……
いや、堂島さんだけじゃなく
菜々子ちゃんや鳴上さんにもお礼を言わないといけないな。
由比ヶ浜が生き返ったのは、『奇跡』なのかもしれない。
けど……『生きている』のは……上手く言えないが
由比ヶ浜を想う、いろんな人の気持ちがあったからだ……と
635: 2014/01/29(水) 21:28:55 ID:9X8ZOpRs
俺は柄にもなく、そう思った。
643: 2014/02/06(木) 19:40:39 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
宵の口
病院の待合室
比企谷「ふう……疲れた」
里中「そろそろお腹すいてきたね……」
天城「そうだね、千枝」
花村「由比ヶ浜さんのご両親……すげぇ喜び様だったな」
白鐘「あそこまで感謝されると、少々恥ずかしくもなりますけどね……」///
りせ「でも、本当に良かった……由比ヶ浜さん生き返って」
雪ノ下「ええ……」
比企谷「…………」
644: 2014/02/06(木) 19:41:30 ID:JUzy8MVE
比企谷「……よし」
比企谷「いい具合に頭も冷えただろう」
比企谷「ここいらで事件の事について話さないか?」
天城「そうだね。 それがいいかも」
里中「事件か……でも犯人は生天目で決まりなんでしょ?」
白鐘「ええ、警察はそういう方向で進めているみたいです。 が……」
白鐘「僕も色々と調べてみたんですが、最初の二件」
白鐘「山野真由美と小西早紀の殺害。 やはり彼のアリバイは崩せそうにありません」
白鐘「供述に何ら不自然さはなく、何よりも動機がない」
雪ノ下「……不倫がバレそうになって、頃した、とかじゃないの?」
白鐘「事件当時、生天目は本妻の柊みすずとの仲は冷え切ってて」
白鐘「何よりも山野アナとの事は、もう彼女にバレていました」
645: 2014/02/06(木) 19:42:53 ID:JUzy8MVE
白鐘「言葉は悪いですが……この場合、本妻を頃す方が自然です」
花村「人頃しを『救済』なんて言ってる奴だぜ?」
花村「これなら、動機として十分だろ」
白鐘「その可能性は僕も考えました」
白鐘「しかしそれだと、二件目の小西早紀以降の動機としては不自然です」
りせ「山野アナを好きで頃した……『救済』したなら」
りせ「【マヨナカテレビ】に映っただけの人物を『救済』するのは、無理があるよね」
花村「だったら最初は頃すつもりじゃなく、テレビに入れただけかもな」
白鐘「それだと尚の事おかしくなります」
白鐘「好きな人を実験台に……という事ですし、確実性がありません」
比企谷「……生天目には、山野アナを頃す動機が極めて薄いって事か」
646: 2014/02/06(木) 19:44:11 ID:JUzy8MVE
白鐘「しかし……生天目の日記には、二件の被害者の名前と住所が書かれていました」
白鐘「一体どういう事なのか……」
花村「だぁ~もう! こんがらがってきた!」
雪ノ下「何か……何か見落としてないかしら?」
白鐘「そうですね……後は」
白鐘「比企谷先輩に送りつけられた警告状くらいですか」
里中「ああ、あったね。 そういうの」
天城「結構前の話だよね?」
りせ「どんな内容だったけ?」
白鐘「一通目は、カタカナで”これ以上助けるな”……」
白鐘「二通目は……」
647: 2014/02/06(木) 19:45:47 ID:JUzy8MVE
里中「ん?」
雪ノ下「二通目?」
天城「二通目なんてあったの?」
白鐘・花村・比企谷「……あ」
―――――――――――
雪ノ下「……まったく」
白鐘「……すみません」
比企谷「悪かった……由比ヶ浜がさらわれた当日で、慌ただしかったんでな……」
花村「由比ヶ浜さんが帰ってから……という話だったんだよ」
里中「まあそれは、肉丼でも奢ってもらって忘れてあげるじゃん」
花村「確定かよ! 何もなしで忘れてくれよ!」
天城「それで? どんな内容だったの?」
648: 2014/02/06(木) 19:47:48 ID:JUzy8MVE
白鐘「は、はい。 二通目は」
白鐘「これも一通目同様カタカナで」
白鐘「”今度こそ止めないと、大事な人が入れられて殺されるよ”です」
比企谷「!!」
比企谷「……おかしいぞ、白鐘」
白鐘「え?」
比企谷「殺害を『救済』と言ってる人物が」
比企谷「『殺される』なんて警告状に書くか?」
白鐘「!」
雪ノ下「もう一つおかしいわ」
雪ノ下「どうして『殺されるよ』なの?」
雪ノ下「犯人の立場なら、入れて『頃すよ』じゃないの?」
649: 2014/02/06(木) 19:48:53 ID:JUzy8MVE
一同「!!」
里中「……まさか」
天城「これって……」
白鐘「……久保美津雄の事件以外は、すべて同一犯だと思い込んでいました」
白鐘「しかし……最初の二件」
白鐘「別の誰かがやっているとしたら……!」
比企谷「…………」
比企谷(…………)
比企谷(俺は、これにずっと引っ掛かっていたのだろうか?)
比企谷(それにしても……犯人はいったい誰なんだ?)
650: 2014/02/06(木) 19:50:25 ID:JUzy8MVE
白鐘(…………)
白鐘(……まさか)
比企谷「……?」
比企谷「どうした? 白鐘?」
白鐘「!」
白鐘「い、いえ。 何でもありません」
比企谷「?」
白鐘「それよりも、これはいよいよ生天目から事情を聞く必要が出てきました」
花村「だな」
花村「堂島さんに頼んでみるか?」
白鐘「……正直、あまり期待できないと思いますが」
白鐘「一応相談だけはしてみましょう」
651: 2014/02/06(木) 19:52:47 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
????
イゴール「……ようこそ、ベルベット・ルームへ」
イゴール「いかがお過ごしですかな?」
イゴール「…………」
イゴール「……左様にございますか」
イゴール「お客様との旅路も随分と長くなってまいりましたが」
イゴール「この見通しの効かない霧の中で」
イゴール「同じ方向に向かおうとする お仲間もお持ちの様でございますな」
イゴール「さて……」
イゴール「正直なところ、謎は解けそうでございますか?」
イゴール「…………」
652: 2014/02/06(木) 19:54:06 ID:JUzy8MVE
イゴール「ほお……」
イゴール「…………」
イゴール「なる程……」
イゴール「一応の進展はあったが、新たな謎が……ふむ」
マーガレット「霧はその濃さを増し、見えていた道すらも覆い隠す……」
マーガレット「困難の度合いが、さらに加速したみたいです」
イゴール「……いかがでしょう? お客様」
イゴール「これまでは前を向き、前ばかりを見てまいりましたが」
イゴール「ここは一度、立ち止まって」
イゴール「過去を振り返ってみるのも一案ではございませぬかな?」
イゴール「……む?」
653: 2014/02/06(木) 19:55:08 ID:JUzy8MVE
ロロロロロッ……… キキィッ
マーガレット「ただいま、進行方向を確認中です」
マーガレット「しばらく、この場にて停車いたします」
イゴール「ほう……」
イゴール「まさかこの様な事になるとは……」
イゴール「これはやはり、一度振り返るべき……なのやもしれませぬな」
イゴール「…………」
イゴール「いずれにしてもお客様に残された時間は」
イゴール「だいぶ少なくなってまいりました」
イゴール「その事だけは、お忘れなき様、お願いいたします……」
654: 2014/02/06(木) 19:56:03 ID:JUzy8MVE
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……そろそろお目覚めの時刻にございますな」
イゴール「それでは、いずれまた」
イゴール「夢の中にて、お会い致しましょう……」
マーガレット「またね。 お客様」
マーガレット「ふふふ……」
655: 2014/02/06(木) 19:57:44 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
翌日 休日の午前中
生天目の病室前
白鐘「……意外でしたね」
比企谷「……俺もそう思う」
花村「誰かさんと同じで、素直じゃなかったけどな」
比企谷「言われてるぞ、雪ノ下」
雪ノ下「……前にもこういうやり取り、あった気がする」
りせ「デジャヴってやつ?」
里中「それはいいから早く入ろうじゃん?」
天城「そうだよ。 堂島さん、せっかく警備の隙を教えてくれたんだし」
比企谷「そうだな。 時間は限られてる」
比企谷「入るぞ」
656: 2014/02/06(木) 19:59:09 ID:JUzy8MVE
生天目の病室
生天目「!!」
生天目「き、君たちは……!」
白鐘「落ち着いてください、生天目さん」
白鐘「先日は失礼しました……僕たちは頭を冷や」
生天目「僕が救ってきた子達だ……」
一同「!?」
雪ノ下「何を言――」
比企谷「落ち着くんだ、雪ノ下」
雪ノ下「…………」
657: 2014/02/06(木) 20:00:28 ID:JUzy8MVE
比企谷「生天目…さん」
比企谷「あなたとは、今回で合計三回会っていますが?」
生天目「え!?」
―――――――――――
生天目「……そうか」
生天目「あの世界で僕を追ってきたのも君達だったのか……」
生天目「霧が酷くて顔すらわからなかったんだよ」
天城「時々忘れそうになるけど、クマくんのメガネ無しじゃ仕方ないよね」
里中「二回目はこの病室だけど、暗かったからか……」
比企谷「…………」
比企谷「生天目さん。 改めて言います」
比企谷「話を聞かせてください」
658: 2014/02/06(木) 20:01:24 ID:JUzy8MVE
生天目「僕の話を?」
比企谷「ええ」
生天目「……信じてくれるのか?」
比企谷「おそらく、あなたの話を理解できるのは」
比企谷「ここに居る俺達だけだと思います」
生天目「…………」
生天目「…………」
生天目「……わかった。 聞いてくれ」
生天目「僕が最初……この事件に関わったのは」
生天目「真由美の【マヨナカテレビ】を見てからだ……」
659: 2014/02/06(木) 20:03:21 ID:JUzy8MVE
生天目は話し始めた。
山野アナとの不倫報道で一時的に八十稲羽の実家へと
身を寄せていた生天目は、前々から噂で知っていた【マヨナカテレビ】を
酒に酔いながら興味本位で試してみた。
そこに映し出されたのが山野真由美。
テレビに入れる事に気がついたのもこの時で、状況としては
俺に似ている感じだった。
660: 2014/02/06(木) 20:05:47 ID:JUzy8MVE
あれは悪い夢だ……そう思いながら実家を後にし
数日後、議員秘書の退職やらの事務手続きをしている最中に
彼女の氏を知る事になる。
生天目は物凄いショックを受けたが……
【マヨナカテレビ】の謎についてふと考える様になり
それ以降の【マヨナカテレビ】を注視する様になった。
そして映し出されたのが……
二人目の被害者となる小西早紀だった。
661: 2014/02/06(木) 20:09:05 ID:JUzy8MVE
生天目は、身の回りに気を付ける様に彼女を説得するが
小西早紀は聞く耳を持たず……結局、山野アナと同じ運命をたどった。
なりふり構わず、警察にも相談したが
やはり相手にしてもらえず……彼は、ある決断を下す。
そうだ……テレビの中なら、誰にも手出しできない。
あそこなら安全だ。 ほとぼりが冷めたら出してあげればいい。
実家の運送業と組み合わせれば、問題なくこなせるはず。
この力は、その為に備わったのだ……と。
662: 2014/02/06(木) 20:11:15 ID:JUzy8MVE
一同「…………」
りせ「じゃあ……本当に救おうとして……」
花村「実際、テレビに入れたら人が氏ななくなったんだし」
花村「自分は被害者を救えている、と、思ったってわけか……」
天城「でも、それなら何故、【マヨナカテレビ】に映っていない千枝を?」
生天目「……申し訳ないと思った」
生天目「しかし、彼女は君から離れようとしなかったし」
生天目「場所的にも時間的にも、そして初めてだったから僕の心に余裕が無かった……」
一同「…………」
生天目「だけど……」
663: 2014/02/06(木) 20:14:24 ID:JUzy8MVE
生天目「刑事さんに追われて、逃げる為にテレビに入った時」
生天目「自分のやってきた事に……疑問を感じた」
生天目「まさか、自力では出る事すら出来ない場所だったなんて……!」
一同「……」
生天目「……実に滑稽だな」
生天目「無意識でヒーロー気取りだったんだよ、僕は……」
比企谷「…………」
生天目「…………」
生天目「……今更、謝られても困ると思うが、謝らせてくれ」
生天目「すまなかった……」
664: 2014/02/06(木) 20:17:14 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
待合室
比企谷「……警告状の事も知らない様だったな」
花村「あいつの言葉を信じるならな」
白鐘「状況的にも心情的にも理解できる内容です」
白鐘「正直、歯車がカチリと噛み合った気がしますよ」
花村「…………」
里中「なんか……モヤモヤする」
里中「結局、最初の二人を頃した犯人は誰なの?」
雪ノ下「そうよね……しかも向こうは、こちらの動きを知っている感じだし」
りせ「薄気味悪い……」
白鐘「…………」
665: 2014/02/06(木) 20:18:24 ID:JUzy8MVE
比企谷「よし。 今日はここまでにしよう」
比企谷「こうなったら無茶かもしれないが、新しい何かを見つけるしかない」
天城「新しい何か……って、半年以上も前の事件の?」
比企谷「そういう事だな」
花村「目撃者が居たとしても忘れてるんじゃねーのか?」
比企谷「まあ正直、俺もそう思う……が」
比企谷「時には原点に返ってみるのも一つの方法じゃないかと思うんだ」
里中「つまり……どうすればいいの?」
比企谷「聞き込み……くらいしか思いつかないが」
比企谷「他にいい方法があるか?」
666: 2014/02/06(木) 20:19:27 ID:JUzy8MVE
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……まあ、ベスト、という方法ではないけど」
雪ノ下「やるしかなさそうね……」
花村「まあいいんじゃね? 出来る事が無いよりずっといいと思うぜ!」
里中「ようし。 こうなったら、やれるだけやってみようじゃん!」
天城「うん、千枝」
りせ「ついで、と言ったら可哀想だけど……クマも探してみたいし」
りせ「ちょうどいいかも♪」
比企谷「よし……じゃ、明日から始めよう」
比企谷「それでいいか? 白鐘?」
白鐘「……そうですね」
白鐘「それでいいと思います。 そうしましょう」
雪ノ下「……?」
667: 2014/02/06(木) 20:20:35 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
夜
足立宅
足立「ただいまー」
比企谷「お帰りなさい、足立さん」
比企谷「夕飯の準備、出来てますよ」
足立「いつもありがとう、比企谷くん。 助かるよ」
足立「おっ、今日は鍋焼きうどんか。 いいねぇ~」
比企谷「こういうのが、美味しい季節になりましたね」
668: 2014/02/06(木) 20:21:55 ID:JUzy8MVE
足立「いただきます」
比企谷「いただきます」
ズルッ… ズルルッ…
足立「アツッ! ハフハフッ……くぅ~! 美味い!」
比企谷「温まりますね」
足立「だね。 それにとってもダシが効いてるよ」
比企谷「ありがとうございます」
足立「そういえば、由比ヶ浜さんどうだった?」
比企谷「看護師さんの話だと、明日にも酸素吸入器がいらなくなるだろうと……」
足立「そうかい……本当に良かったね」
比企谷「ええ……」
669: 2014/02/06(木) 20:22:59 ID:JUzy8MVE
足立「こっちもね、ようやく事件解決しそうだし」
足立「この街もやっと元の静かな町になりそうだ」
比企谷「……やっぱり犯人は生天目なんですか?」
足立「ん? ああ、詳しくは言えないけど」
足立「その通りだよ」
比企谷「そうですか……」
足立「後は、この霧……早く無くなるといいんだけどね」
足立「テレビじゃ研究中、調査中、と繰り返すばかりだし」
比企谷「全くですね」
670: 2014/02/06(木) 20:23:37 ID:JUzy8MVE
足立「ごちそうさま」
比企谷「ごちそうさまでした」
足立「さて、お腹が膨れたところで、お風呂を沸かそうかな」
比企谷「沸かしてありますよ」
比企谷「どうぞ、先に入ってください」
足立「相変わらず、気が利くねぇ~」
足立「君が女の子だったら、いいお嫁さんになるよ!って褒めるところだ」
比企谷「ははは……」
足立「それじゃ、先に入らせてもらうよ?」
比企谷「どうぞ」
スタ スタ スタ…
比企谷「…………」
比企谷(やっぱり警察は、そういう方向で進めるつもりか……)
比企谷「ふう……」
671: 2014/02/06(木) 20:25:05 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
????
ん?
ここは……?
ああ……あれか
ベルベットルームか
672: 2014/02/06(木) 20:26:49 ID:JUzy8MVE
…………
イゴールとマーガレットが居ない……
どういう事だろう?
673: 2014/02/06(木) 20:27:39 ID:JUzy8MVE
クマ「…………」
クマ「……?」
クマ「ここは……? どこクマ?」
クマ?
クマ「!?」
クマ「センセイ!?」
クマ……どこに行ってたんだ
みんな心配している
クマ「…………」
674: 2014/02/06(木) 20:29:22 ID:JUzy8MVE
クマ「センセイ……」
クマ「クマ、やっと……自分が何者か思い出したクマ」
クマ「クマは……クマは……」
クマ「ただの【シャドウ】だったクマ……」
クマ「…………」
クマ「……ある日」
クマ「一匹の【シャドウ】に意識が芽生えたクマ」
クマ「そいつは一人で居る事に疑問を感じ……寂しくて、悲しくて、考えて」
クマ「可愛い存在になれば、誰か来た時、気に入ってもらえると思って」
クマ「今のクマの外見になったクマ……」
675: 2014/02/06(木) 20:30:41 ID:JUzy8MVE
クマ「そして……」
クマ「いつしかクマは【シャドウ】である事を忘れて」
クマ「センセイ達に出会ったクマ……」
クマ「…………」
クマ「……もう、みんなのそばには居られないと思ったクマ」
クマ「クマは……みんなを傷つけてきた【シャドウ】と同じ存在……」
クマ「だから……クマは」
クマ「…………」
クマ「センセイ、みんなによろしく言っといて欲しいクマ」
クマ「ごめんなさいって……」
クマ「今まで騙しててごめんなさいって……」
クマ「ユイちゃんも救えなくて、ごめんなさいって……!」
676: 2014/02/06(木) 20:32:37 ID:JUzy8MVE
…………
クマ
クマ「…………」
由比ヶ浜は、生きているぞ
クマ「!?」
クマ「ほ、本当クマ!?」
ああ……みんなで作った千羽鶴
お前も手伝って作った、千羽鶴が役に立ってな
クマ「……!!」
677: 2014/02/06(木) 20:34:15 ID:JUzy8MVE
クマ「……っ」
クマ「よ……良かった……!」
クマ「良……がっだ、クマ……ぐっ……」
クマ「えっ……えっ……ユイちゃん……ユイちゃん……」
クマ「生きてて……ぐすっ……良がっだぁ……ぐすっ……」
クマ「あああっ……良が……っだ……あああっ……」
―――――――――――
イゴール「……ようこそ、ベルベット・ルームへ」
イゴール「…………」
イゴール「まあ……細かい事はよろしいでしょう」
イゴール「それにしても奇妙な事象でございます……お客様」
678: 2014/02/06(木) 20:35:08 ID:JUzy8MVE
イゴール「本来」
イゴール「このベルベット・ルームに【シャドウ】と呼ばれる存在は」
イゴール「入る事が出来ないのでございますが……」
イゴール「あれほどの強き自我……あの【シャドウ】は」
イゴール「【シャドウ】ではない別の『何か』やもしれませぬな」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……これは失礼」
イゴール「謝罪いたしましょう」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……ありがとうございます」
679: 2014/02/06(木) 20:36:12 ID:JUzy8MVE
イゴール「しかしながら……」
イゴール「これはやはり、お客様の持つ”ワイルド”の力が」
イゴール「大きく関係している可能性がございます」
イゴール「まことに……希少な体験をさせていただいておりまする」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……そうおっしゃられても答え様がございませぬ」
イゴール「そうでございますな。 お客様風に言うのならば」
イゴール「『企業秘密』という事にございます」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……結構」
680: 2014/02/06(木) 20:38:04 ID:JUzy8MVE
イゴール「おお……そろそろお目覚めの時刻にございますな」
イゴール「今回は慌ただしく、大したおもてなしも出来ず」
イゴール「まことに恐縮でございました」
イゴール「お客様の進む道に光あらん事を……」
イゴール「それでは、いずれまた」
イゴール「夢の中にてお会い致しましょう……」
―――――――――――
翌日 休日の午後
大衆食堂 愛屋
花村「あ~……疲れた」
里中「収穫……無かったじゃん」
天城「あれから随分たってるもの……仕方ないよ」
681: 2014/02/06(木) 20:39:50 ID:JUzy8MVE
比企谷「やっぱり時間が経ちすぎてるから無理か……」
雪ノ下「こんなに時間が過ぎてからの新たな目撃情報なんて」
雪ノ下「出る事の方が奇跡と言えるわ」
りせ「後……クマも居ないね」
りせ「どこに行ったのかな……」
白鐘「心配なところですね……」
一同「…………」
白鐘「……ちょっと、外の空気を吸ってきます」
ガララッ……
花村「白鐘も行き詰まってるみたいだな……」
雪ノ下「…………」
682: 2014/02/06(木) 20:41:27 ID:JUzy8MVE
雪ノ下「私もちょっと外の空気を吸ってくるわ」
比企谷「おう」
ガララッ……
比企谷「…………」
比企谷(そうだ、肉丼、持ち帰りで頼もう)
比企谷「すみません、持ち帰りで肉丼二つお願いします」
アイヨー
―――――――――――
白鐘「…………」
雪ノ下「……白鐘くん」
白鐘「……雪ノ下先輩」
雪ノ下「…………」
683: 2014/02/06(木) 20:42:50 ID:JUzy8MVE
雪ノ下「……単なる私の”カン”なのだけれど」
雪ノ下「もしかしたら」
雪ノ下「犯人に心当たりがあるんじゃないの?」
白鐘「!!」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
白鐘「……ええ」
雪ノ下「!」
雪ノ下「…………」
白鐘「…………」
684: 2014/02/06(木) 20:43:49 ID:JUzy8MVE
雪ノ下「どうして言わないのかしら?」
白鐘「…………」
雪ノ下「……それとも」
雪ノ下「『言えない』のかしら?」
白鐘「…………」
白鐘「……鋭いですね、雪ノ下先輩」
雪ノ下「誰に対して『言えない』の?」
白鐘「…………」
白鐘「……そうですね」
白鐘「このまま抱え込んでいても仕方ありません。 みなさんの前で話す事にします」
白鐘「比企谷先輩を除いた状態で、ですが……」
雪ノ下「!?」
685: 2014/02/06(木) 20:44:58 ID:JUzy8MVE
夕方
足立宅
比企谷「ただいまー」
シーン…
比企谷(足立さん、さすがにまだか)
比企谷(レンジでチンだな、肉丼)
比企谷(…………)
比企谷(……それにしても最後)
比企谷(白鐘と雪ノ下、妙な雰囲気だったが……)
比企谷(…………)
比企谷(考えすぎだな……たぶん)
比企谷(…………)
686: 2014/02/06(木) 20:46:16 ID:JUzy8MVE
同時刻
天城屋 雪ノ下の部屋
白鐘「――というのが、僕の考えです」
一同「…………」
里中「う~ん……別に白鐘くんを疑う訳じゃないけど」
天城「意外すぎる人物だよ、それ」
花村「あの人にそれが出来る度胸、ある様には思えねぇけど……」
りせ「それに動機。 頃す理由が無いじゃない」
雪ノ下「…………」
687: 2014/02/06(木) 20:47:22 ID:JUzy8MVE
白鐘「……僕も最初、どうかと思いました」
白鐘「しかし、生天目が真犯人でないと確信が持てた事と」
白鐘「今回の振り返ってみての聞き込み捜査で」
白鐘「全ての条件をクリアできるのは彼しか居ない、との結論に至りました」
里中「全ての条件?」
白鐘「今から説明します」
白鐘「まず、僕が一番最初に疑問に思ったのは……」
雪ノ下(…………)
雪ノ下(比企谷くん……)
雪ノ下(どうか、無事でいて……!)
688: 2014/02/06(木) 20:48:14 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
翌日の朝
教室
里中「おはよう!」
花村「おう、おはよう里中」
天城「おはよう千枝。 今朝は寒かったね」
里中「うん……比企谷くんは?」
花村「まだ来てない」
里中「そう……」
ガララッ
比企谷「おはよう」
雪ノ下「!」
689: 2014/02/06(木) 20:49:16 ID:JUzy8MVE
雪ノ下「比企谷くん……」
比企谷「……?」
里中「ああ、来たね。 比企谷くん」
天城「おはよう、比企谷くん」
花村「おはよう、比企谷」
雪ノ下「……おはよう」
比企谷「お、おう……」
雪ノ下「比企谷くん」
雪ノ下「どうしても話したい事と、やってもらいたい事が出来たの」
雪ノ下「詳しくは昼休み、屋上で話すわ」
比企谷「…………」
690: 2014/02/06(木) 20:53:35 ID:JUzy8MVE
昼休み
屋上
比企谷「」
比企谷「なっ――」
雪ノ下「落ち着いて、比企谷くん」
雪ノ下「あらかじめ言っておいたけど……あくまで状況的に怪しい、というだけよ」
雪ノ下「確証はないわ」
比企谷「…………」
白鐘「……すみません、比企谷先輩」
白鐘「少し迷ったのですが……彼の疑いを晴らす、という意味も含め」
白鐘「ぜひ、協力してください。 お願いします」
比企谷「…………」
691: 2014/02/06(木) 20:54:46 ID:JUzy8MVE
放課後
八十稲羽 総合病院
白鐘「……よりによってここですか」
比企谷「……堂島さんに何か報告があるってさ」
里中「じゃあ、まずは堂島さんの病室?」
天城「妥当なところだね」
雪ノ下「ともかく、行きましょう」
りせ「真犯人と決まったわけじゃないし」
花村「同感。 正直、半信半疑なんだよな……」
比企谷「…………」
692: 2014/02/06(木) 20:55:46 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
3階フロア付近
里中「堂島さん、居なかったね」
花村「だいぶ動ける様になったんだな」
天城「それにしても……どこに行ったんだろう」
比企谷「…………」
比企谷「もう一度、ケータイ掛けてm」
??「あれぇ? 君たちは?」
一同「!!」
693: 2014/02/06(木) 20:56:53 ID:JUzy8MVE
足立「やっぱり比企谷くんと みんなか。 由比ヶ浜さんのお見舞いかい?」
足立「そういえばさっきの電話、何だったの?」
比企谷「…………」
比企谷「足立さん」
比企谷「いくつか聞きたい事があります」
足立「聞きたい事? 何だい?」
比企谷「最初の……山野アナの事件当夜」
比企谷「どこに居ましたか?」
足立「え……?」
比企谷「答えてください、足立さん」
694: 2014/02/06(木) 20:58:08 ID:JUzy8MVE
足立「ど、どこって言われても……ええっと」
足立「確か、あの日は……山野アナの警護をって事で」
足立「何人かの警官と一緒に天城屋に居たと思うけど……」
比企谷「…………」
白鐘「では……」
白鐘「第二の被害者、小西早紀さんとの面識はありますか?」
足立「そ、そりゃあるよ。 山野アナの遺体の第一発見者だし……」
足立「事情聴取をした事もあるからね」
一同「…………」
足立「ちょ……ちょっと何なの? この雰囲気……」
足立「僕はこう見えても忙しいんだからね?」
足立「君たちも由比ヶ浜さんのお見舞いなら、さっさと済ませて帰っ」
695: 2014/02/06(木) 20:59:21 ID:JUzy8MVE
??「おい、足立」
比企谷「!」
足立「あ、堂島さん……どこに行ってたんですか」
足立「さっきから探していたんですよ?」
堂島「ん? またお前らか……まあいい」
堂島「それよりも足立、生天目はどこに行った?」
堂島「ヤツにはまだ聞きたい事がある」
足立「その事で報告しようと探してたんですよ」
足立「生天目は搬送しましたんで……」
堂島「なんだと!? どういう事だ!? 誰の命令でそんな事をした!?」
足立「うわっぷ! そ、そんなの上からに決まっているじゃないですか」
696: 2014/02/06(木) 21:00:30 ID:JUzy8MVE
足立「生天目、ようやく話せる状態に回復したんですし」
足立「これから立件に向けての判断だと思いますよ?」
堂島「くっ……!」
足立「まだ怪我は治りきってないんですから」
足立「事件の事はしばらく忘れて、安静にしていてください」
堂島「…………」
堂島「……ところで」
堂島「君らは何をしにここへ?」
比企谷「足立さんに話があってここに来ました」
足立「って、さっき答えてあげたでしょ?」
白鐘「まだまだこれからですよ」
697: 2014/02/06(木) 21:01:38 ID:JUzy8MVE
白鐘「そうだ、堂島さん」
堂島「ん?」
白鐘「小耳に挟んだのですが、最初、比企谷先輩を疑っていたそうですね?」
堂島「……まあな」
白鐘「これは想像ですが、足立さんに『監視』を頼んだ事はありますか?」
堂島「……痛いとこ突いてくるな」
堂島「だが、その通りだ」
白鐘「いつごろの話ですか?」
堂島「あれは……確か暑くなり始めた頃で……そうだ」
堂島「久慈川りせが この街に来た辺りだと思う」
白鐘「なる程」
698: 2014/02/06(木) 21:03:04 ID:JUzy8MVE
白鐘「では、足立さん」
白鐘「この手紙の事は ご存知ですか?」
足立「手紙? いちいち覚えていないよ」
白鐘「そうですか」
白鐘「堂島さんに監視しておく様 言われた」
白鐘「比企谷先輩宛の、しかも封のされていない手紙を手渡しておいて、ですか?」
白鐘「僕だったら、気になって仕方ないですけど?」
足立「…………」
白鐘「それから……」
白鐘「この手紙、比企谷先輩の依頼を受けて」
白鐘「お祖父様のツテで鑑識作業をした結果」
白鐘「僕と比企谷先輩、それにあなたの指紋が検出されました」
699: 2014/02/06(木) 21:04:03 ID:JUzy8MVE
足立「お、おいおい……」
足立「それはやりすぎだと思うんだけど……」
花村「……横からすまん」
花村「それのどこがおかしいんだ?」
花村「足立さんが手渡したなら、別に不自然じゃ無いだろ?」
白鐘「『中身』に付着していても……ですか?」
花村「!?」
堂島「……どうなんだ? 足立?」
足立「…………」
足立「……わかりました、白状します」
足立「ああ、確かに僕はその手紙の『中身』に『触れた』よ」
700: 2014/02/06(木) 21:05:03 ID:JUzy8MVE
一同「!」
足立「でも誓って内容は読んでいない」
足立「そりゃ気にはなったけど……ギリギリのところで踏みとどまったんだ」
足立「堂島さんには申し訳ないけど、やっぱり比企谷くんに悪いと思ってね」
一同「…………」
白鐘「……なる程」
白鐘「確かに筋は通ってますね」
足立「ははは……疑いは晴れたかい?」
足立「じゃ、僕はもう行くよ?」
白鐘「待ってください。 手紙に関しては、まだあります」
足立「もう勘弁してよ……」
701: 2014/02/06(木) 21:06:01 ID:JUzy8MVE
白鐘「足立さん……あなたはこの手紙を」
白鐘「どこで手に入れましたか?」
足立「どこって……」
足立「そんなの郵便受けからに決まってるじゃないか」
白鐘「……それは本当ですか?」
足立「嘘なんかつかないよ」
白鐘「そうですか……」
白鐘「でもそうなると、おかしいですね」
足立「何がさ?」
白鐘「この手紙……『キレイ』なんですよ」
足立「……は?」
702: 2014/02/06(木) 21:07:51 ID:JUzy8MVE
白鐘「その事に気がついたのは、つい最近なんですがね」
白鐘「足立さんのアパートの郵便受け、蓋の部分、少し錆びてるんですよ」
足立「……!」
白鐘「実験もしてみました」
白鐘「これと同じ封筒が投函されたらどうなるか」
白鐘「……その結果がこれです」
一同「……?」
里中「別に汚れてないじゃん?」
白鐘「見た目は確かに」
白鐘「しかし、鑑識の結果はそうじゃありません」
白鐘「この実験に使われた全ての封筒に微量のステンレス材と酸化鉄粉……」
白鐘「つまり『錆』が検出されたんです」
703: 2014/02/06(木) 21:09:01 ID:JUzy8MVE
足立「………っ」
白鐘「しかし……この手紙には、それが全く無い」
白鐘「説明してもらえますか? 足立さん」
足立「し、知らない……」
白鐘「そうですか」
白鐘「手紙意外にもあるんですよ? 疑問点は」
足立「……!」
白鐘「僕は久保美津雄の足取りを 結構な時間をかけて調べてきました」
白鐘「すると……」
白鐘「失踪する直前、最後の目撃情報は」
白鐘「八十稲羽警察署なんですよ……足立さん」
704: 2014/02/06(木) 21:10:22 ID:JUzy8MVE
足立「…………」
堂島「……どういう事だ? 白鐘」
堂島「久保美津雄に何かあるのか?」
白鐘「……実は、久保美津雄は」
白鐘「一度警察に自首していたんです」
比企谷「!?」
花村「それってマジか!?」
白鐘「ええ」
白鐘「その時、対応した警官は まともに取り合わなかったそうですが……」
白鐘「たまたま近くに居た、若い刑事が『僕が話を聞きます』と言って」
白鐘「彼を連れて行ったそうです」
705: 2014/02/06(木) 21:12:11 ID:JUzy8MVE
堂島「……おい、足立」
足立「! ど、堂島さん……」
堂島「黙っていないで答えたらどうだ?」
堂島「俺も興味がある」
足立「し、知りませんよ、僕は……」
雪ノ下「はっきり言いましょうか? 足立さん」
雪ノ下「この事件の真犯人。 あなたなんじゃないですか?」
足立「っ!」
足立「違うっ!」
足立「その警告状の事も、久保美津雄の事も全部生天目の仕業で!」
足立「あいつが、みんな入れて頃したに決まってるっ!!」
一同「!!?」
706: 2014/02/06(木) 21:13:31 ID:JUzy8MVE
足立「はあ……はあ……」
堂島「……おい、足立」
堂島「『警告状』って何だ?」
足立「」
堂島「それに『入れた』……? お前、手口について何か知っているのか?」
足立「そ、それは……」
比企谷「……足立さん」
足立「! ひ、比企谷くん……」
比企谷「俺……ずっと何かが引っかかっていましたけど」
比企谷「今、それが何か……やっとわかりました」
707: 2014/02/06(木) 21:16:36 ID:JUzy8MVE
比企谷「白鐘が生天目の日記に記されている 被害者の名前を読み上げていった時……」
足立「そりゃすごい。 生天目で決まりだね……」
比企谷「と……言ってましたけど」
比企谷「何が『決まり』なんですか?」
足立「え……」
比企谷「なぜ、疑問が沸かなかったんですか?」
比企谷「久慈川の事で」
足立「っ!」
一同「!」
708: 2014/02/06(木) 21:19:41 ID:JUzy8MVE
りせ「……そうよ、あたしが失踪した事。 警察に通報されてないはず!」
足立「…………」
比企谷「あの時……あの時点で」
比企谷「久慈川が一連の事件に関係していると知っているのは、俺たちと……」
比企谷「俺たちを見ていたであろう『何者か』だけです」
比企谷「足立さん……!」
足立「し、知らないっ……僕はそんな事……」
足立「知らないって言ってるだろ!!」
ダダダッ!
雪ノ下「きゃあっ!」
りせ「ひゃ!」
709: 2014/02/06(木) 21:20:28 ID:JUzy8MVE
比企谷「雪ノ下! 久慈川! 大丈夫か!?」
雪ノ下「ええ……」
りせ「大丈夫……」
花村「なんてこった……大当たりかよ!」
堂島「くっ……! 足立の奴……!」
白鐘「堂島さん、彼は僕たちが追います!」
里中「行くよ! 雪子!」
天城「うん! 千枝!」
710: 2014/02/06(木) 21:21:35 ID:JUzy8MVE
―――――――――――
空き病室
ガララッ
花村「はあっはあっ……」
花村「……あれ?」
里中「逃げるなー! ……って?」
天城「居ない?」
りせ「確か……こっちに逃げてきたよね?」
白鐘「……!!」
白鐘「テレビ……」
雪ノ下「……そういう事なのね」
比企谷「…………」
711: 2014/02/06(木) 21:22:51 ID:JUzy8MVE
そこは袋小路の空き病室。
作りそのものは生天目の病室と同じだが、窓が無い。
そしてポツンと置かれたテレビ……
導き出される結論は、一つしかなかった。
722: 2014/02/16(日) 08:36:21 ID:2RSTM696
―――――――――――
由比ヶ浜の病室
ヒュウウウウウ……
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……?」
由比ヶ浜「……クマくん?」
クマ「ユイちゃん……生きてるクマ……」
クマ「本当に良かった……!」
由比ヶ浜「……クマくん、久しぶり」
由比ヶ浜「元気だった?」
クマ「……うん。 元気クマ……」
723: 2014/02/16(日) 08:37:22 ID:2RSTM696
由比ヶ浜「良かった……」
由比ヶ浜「全然会いに来てくれないから……嫌われちゃったのかと思った」
クマ「そんな事、ある訳ないクマ!」
由比ヶ浜「うん……そうだよね……クマくんは」
由比ヶ浜「そうでなくっちゃね」 クスッ
クマ「……!」
由比ヶ浜「ヒッキーに聞いたよ……千羽鶴、クマくんも手伝ってくれたんだよね?」
由比ヶ浜「私、すごく嬉しかった……」
由比ヶ浜「ありがとう」
クマ「…………」
由比ヶ浜「……クマくん?」
724: 2014/02/16(日) 08:37:53 ID:2RSTM696
クマ「! ごめんクマ……ちょっと考え事しちゃってて」
由比ヶ浜「そっか……ふふふ」
クマ「…………」
クマ「クマ……もう行かないと」
由比ヶ浜「うん……わかった」
由比ヶ浜「また、会いに来てね?」
クマ「もちろんクマ!」
アハハ…
クマ(…………)
クマ(そうクマ……クマは確かに【シャドウ】クマ)
クマ(でも、それがどうしたクマ!)
クマ(クマは……『クマ』クマ!!)
クマ(クマにしか出来ない事は、きっとあるクマ!)
725: 2014/02/16(日) 08:39:52 ID:2RSTM696
待合室
比企谷「…………」
雪ノ下「……?」
雪ノ下「どうしたの? 比企谷くん?」
比企谷「……何でもない」
白鐘「みなさん、お待たせしました」
花村「堂島さん、何か言ってたか?」
白鐘「こちらが言うまでもなく、すでに行動されてました」
白鐘「この街を検問封鎖するつもりの様です……が」
里中「が?」
白鐘「容疑者が刑事、という事でなかなか上手くいってないみたいです」
726: 2014/02/16(日) 08:41:01 ID:2RSTM696
一同「…………」
花村「やれやれ……警察は身内に甘いって聞くけど」
花村「こんな形で、知る事になるなんてな……」
白鐘「そのおかげでこちらも助かっている側面があるので」
白鐘「痛し痒しですね……」
天城「ともかく、私達がやる事は一つだよね?」
白鐘「ええ」
白鐘「あの世界に行って、足立さんの身柄を確保する。 それだけです」
白鐘「ただ……その前に」
比企谷「クマを見つけないとな」
白鐘「ええ、その通りです。 比企谷先輩」
727: 2014/02/16(日) 08:42:19 ID:2RSTM696
花村「だな」
花村「問題は、どこを探せばいいか……」
花村「確か、この病院で居なくなったんだよな?」
比企谷「ああ。 居なくなった当日はもちろん」
比企谷「由比ヶ浜の見舞いの度、聞き込みをしたりもしたが……」
雪ノ下「結局……見つからなかった」
りせ「……クマ、どこに行ったのよ」
??「……あのー」
一同「……え!?」
比企谷「クマ!」
728: 2014/02/16(日) 08:43:17 ID:2RSTM696
花村「ちょ……今、お前の事話してたっつーの!」
花村「どこほっつき歩いてたんだ!」
クマ「ご、ごめん……クマ」
りせ「バカ! 凄く心配したんだから!」
りせ「あたし達に黙って居なくならないでよ!」
里中「まったく、尺の都合みたく、ひょっこり帰ってきてくれちゃって」
天城「千枝……メタな発言は……ね?」
比企谷「お帰り、クマ」
比企谷「待ってたぞ」
クマ「! センセイ……」
クマ「…………」
クマ「みんな心配かけてごめんクマ」
729: 2014/02/16(日) 08:44:49 ID:2RSTM696
クマ「でも……ひとつ、言わないといけない事があるクマ」
雪ノ下「言わないといけない事?」
―――――――――――
クマ「――って事で」
クマ「クマは……【シャドウ】だったクマ」
里中「へえ……そうだったんだ」
花村「……で?」
花村「【シャドウ】だと何か問題あるのか?」
クマ「へ?」
天城「まあ正直言うと……クマくんのがらんどうとか見てるし」
雪ノ下「いきなり人間生やしたりしてるのを目の当たりにしてるから」
雪ノ下「そのくらいの事で、驚かないわ」
730: 2014/02/16(日) 08:46:01 ID:2RSTM696
白鐘「それに君にはちゃんと『自我』があります」
白鐘「【シャドウ】だとしても他の【シャドウ】とは、『違う存在』ですよ」
クマ「…………」
りせ「それよりもクマ、もう勝手にどこかへ行かないでよ……」
りせ「あんたが居なくなって本当に心配したんだからね?」
クマ「りせちゃん……」
クマ「……う……ううっ……」
クマ「クマは……クマは……!」
クマ「本当に果報者クマァ~!!」
花村「へへっ……ま、これで全員揃ったな!」
比企谷「そうだな」
731: 2014/02/16(日) 08:47:14 ID:2RSTM696
比企谷「クマ……帰ってきたばかりで済まないが」
比企谷「やらなければいけない事がある。 手伝ってくれ」
クマ「もちろんクマ!」
―――――――――――
クマ「アダっちーが!?」
白鐘「ええ……」
白鐘「そして今、彼はおそらくテレビの中に居ます」
クマ「わかったクマ!」
クマ「クマ、頑張るクマ!」
白鐘「頼みます」
比企谷「…………」
732: 2014/02/16(日) 08:48:30 ID:2RSTM696
―――――――――――
テレビの中の世界
※ りせとクマ、足立を捜索中
比企谷「……白鐘」
白鐘「はい?」
比企谷「いつぐらいから足立さんが怪しいと思ったんだ?」
白鐘「…………」
白鐘「……小さなものも含めるのなら」
白鐘「最初の警告状の鑑識結果が出た時からです」
比企谷「…………」
733: 2014/02/16(日) 08:50:18 ID:2RSTM696
白鐘「それがはっきりとした『疑い』に変わったのは」
白鐘「生天目と話をして、最初の二件の犯人でないと分かった時で……」
白鐘「『確信』に変わったのは、改めて聞き込みをした後です」
比企谷「……無駄足だったのにか?」
白鐘「はっきりとした『条件』を立てるキッカケになったので」
比企谷「条件?」
白鐘「ええ」
白鐘「あの捜査で、真犯人は『見えていない人物』だとはっきりしました」
白鐘「いえ、生天目と同様、『見えても気にならない人物』という事が……」
比企谷「…………」
白鐘「後は消去法です」
734: 2014/02/16(日) 08:51:35 ID:2RSTM696
白鐘「最初の二件の被害者と面識があって」
白鐘「僕たちの行動をある程度、監視する事ができて」
白鐘「それを僕らや、一般の人が見ても怪しく思われない人物……」
比企谷「…………」
比企谷「……なる程、名推理だな」
白鐘「いえ……」
雪ノ下「比企谷くん、白鐘くん」
雪ノ下「足立さんの居場所、わかったそうよ?」
白鐘「そうですか……いよいよですね」
白鐘「行きましょう、比企谷先輩」
比企谷「ああ」
雪ノ下「…………」
735: 2014/02/16(日) 08:52:57 ID:2RSTM696
―――――――――――
花村「……おい、ここって」
里中「ここ、一番最初にあたしと花村、比企谷くんが迷い込んだ部屋じゃん……」
比企谷「……例の自殺現場みたいな場所か」
雪ノ下「!」
雪ノ下「比企谷くん、あれ!」
足立「…………」
比企谷「……足立さん」
足立「はあ……」
足立「とうとうこんな所まで追ってきたのか……」
足立「鬱陶しい連中だな、まったく」
736: 2014/02/16(日) 08:54:05 ID:2RSTM696
一同「…………」
白鐘「足立さん……いえ」
白鐘「足立透」
足立「…………」
白鐘「あなたを山野真由美および小西早紀、両名を殺害した容疑で」
白鐘「身柄を確保します」
足立「…………」
花村「……何とか言ったらどうだ?」
足立「…………」
足立「……ク……ククク……」
737: 2014/02/16(日) 08:55:12 ID:2RSTM696
足立「アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
一同「!?」
花村「何がおかしい!? なに笑ってるんだよ!?」
足立「ククク……だってさ……」
足立「もうすぐ向こうの世界が終わるっていうのに」
足立「のんきに『確保』とか言ってるからさ!」
一同「……は?」
天城「言ってる事が、全然わからない……」
里中「はんっ! 能書きはいいわよ!」
里中「詳しくは捕まえてから――」
738: 2014/02/16(日) 08:56:07 ID:2RSTM696
りせ「……待って」
里中「何で止めるのよ?」
りせ「こいつ……『本物』じゃない」
りせ「私のペルソナでも、かろうじて解るくらいの『幻影』だわ!」
一同「!?」
足立「へえ! すごいすごい!」
足立「よく分かったね~……感心するよ」
花村「へっ……そんな人を小馬鹿にした態度は、比企谷で免疫付いてるぜ!」
りせ「その通り!」
里中「さっさと観念するじゃん!」
比企谷「……ちょっと待てお前ら」
739: 2014/02/16(日) 08:57:21 ID:2RSTM696
足立「しつこいね~……君たち」
足立「ま……そんなに捕まえたいなら、こっちに来ればいい」
足立「いろいろと、教えてあげない事もないさ……」
足立「どうせ無駄になるんだけどね」
ハハハハハハハハハハハ……
ズオンッ……
バキャンッ!!
一同「!!!」
740: 2014/02/16(日) 08:58:15 ID:2RSTM696
足立さんは……いや、足立の『幻影』は、突然
この奇妙な部屋のベランダの方へと歩き出すと、異変が起こった。
『幻影』の足立の前に『道』が唐突に現れ
……『道』というのは正しくないかもしれないが
ともかく、その現れた『奇妙な通路』へと高笑いしながら、消えていった……
741: 2014/02/16(日) 08:59:12 ID:2RSTM696
里中「……待てコラー!」
ダダダッ!
白鐘「くっ……! 追いかけましょう!」
花村「おう!」
―――――――――――
禍津(マガツ)稲羽市
比企谷「……!?」
雪ノ下「何……ここ?」
742: 2014/02/16(日) 09:05:21 ID:2RSTM696
……そこは最初、どこだか分からなかった。
それも当然で、まるで大規模な爆撃後の街みたいで
知っている風景とは余りにも懸け離れていたからだ。
743: 2014/02/16(日) 09:07:01 ID:2RSTM696
天城「ここ……商店街じゃない?」
里中「ホントだ……変わり果ててるけど」
花村「どういう事だ?」
花村「足立の影響でここが出来たんだろうけど……」
花村「あいつ、こんな世界を望んでいるのか?」
比企谷「…………」
りせ「……この世界、今までと違う」
りせ「何て言うか……あいつに、足立に、完全にコントロールされてる感じがする」
クマ「およよ……クマにも少し分かるクマ!」
白鐘「……どうやら、一筋縄では行かない様ですね」
744: 2014/02/16(日) 09:07:52 ID:2RSTM696
比企谷「…………」
影・透『クックックッ……どうだい、この世界は?』
影・透『気に入ってもらえたかな?』
白鐘「! 足立……」
花村「気に入るわけねーだろ!」
花村「ペル……」
りせ「待って! 花村先輩!」
花村「! あいつも幻影か……」
影・透『ふん……少しは学習能力があるみたいだね』
里中「いい加減にしなさい!」
里中「そもそも何で山野アナとか頃しちゃったのよ!?」
745: 2014/02/16(日) 09:08:57 ID:2RSTM696
影・透『……頃した?』
影・透『おいおい……僕はテレビに『入れた』だけだよ?』
影・透『勝手に人を殺人者にしないでくれ』
白鐘「……では、言い方を変えましょう」
白鐘「なぜ、被害者をテレビに入れたんですか?」
影・透『……はあ。 都会でエリートになるはずが』
影・透『何の冗談か、こんな片田舎に飛ばされて……』
影・透『退屈で退屈で、他に楽しみもないから』
影・透『テレビばっか見てたんだよ……』
746: 2014/02/16(日) 09:10:21 ID:2RSTM696
影・透『なのにあの女……こっそり応援してやってたのに』
影・透『不倫なんかしてやがった……!』
比企谷「……は?」
影・透『まあ……テレビに『入れた』のは』
影・透『たまたま天城屋にあった大きなテレビに触れ、揉み合った末の偶然だけどね』
影・透『汚れた女には、ちょうどいい末路さ……ククク』
天城「うそ……まさかウチの旅館のテレビで落としていたなんて!」
花村「……おい」
花村「じゃあ小西先輩はどうなんだ……?」
花村「山野アナが氏んだ事で、テレビに入れると氏ぬってわかったはずだろ!?」
影・透『まあ、危ないな、とは思ったよ?』
影・透『けどさぁ……あのガキも生意気だったんだよねー』
747: 2014/02/16(日) 09:11:22 ID:2RSTM696
影・透『せっかくこっちが『大人の付き合い方』を教えてやろうとしたら』
影・透『いきなり僕をひっぱたいてさ……』
花村「っ!?」
影・透『ついムカついて、落としちゃったんだよねー』
影・透『あ、でもこれって『正当防衛』だよね?』
影・透『あはははははははははは!』
花村「……てんめぇ!!」
ブンッ! スカッ…
影・透『何やってんのさ……ここに居る僕は幻影だって』
影・透『さっきその娘が言ってただろ? バカなの?』
748: 2014/02/16(日) 09:12:39 ID:2RSTM696
花村「くそがぁ!」
比企谷「落ち着け、花村」
影・透『やれやれ、これだからガキは嫌いなんだ……』
影・透『まあ、しばらくこいつらと遊んでるといい』
ドオオオオンッ!!
一同「!?」
白鐘「【シャドウ】が!?」
クマ「こっちに襲いかかってくるクマ!?」
雪ノ下「くっ……!」
749: 2014/02/16(日) 09:14:01 ID:2RSTM696
影・透『どうやらさ、僕はこの世界に気に入られたみたいでね……』
影・透『化け物どもも僕を襲わないし、それどころか』
影・透『僕の意のままに動いてくれる!』
影・透『アハハハハハハハハ……』
花村「くそっ! 待ちやがれっ!」
白鐘「花村先輩! 今は周りの【シャドウ】を倒す事を考えましょう!」
白鐘「ペルソナ!」
―――――――――――
里中「これで……最後っ!」
シュウウウウウ……
比企谷「よし……追いかけるぞ!」
750: 2014/02/16(日) 09:16:07 ID:2RSTM696
比企谷「……足立さん」
影・透『お? もう来たのかい……意外と早かったね』
比企谷「…………」
比企谷「さっきの話の続きですけど」
比企谷「久保美津雄をテレビに入れたのもあなたですね?」
影・透『ああ……その通りさ』
影・透『あのクソガキ、諸岡頃しの犯行はもちろん』
影・透『他の殺人まで自分だって、結構早い段階で自首してきたんだよ……』
影・透『まさか進んで他の罪を被ろうとする奴がいるなんて、想像もしてなかった』
751: 2014/02/16(日) 09:18:09 ID:2RSTM696
比企谷「……なぜ、久保を犯人に仕立て上げなかった?」
影・透『ま……簡単に言えば、『つまらなくなる』からさ』
一同「……!?」
影・透『実はね』
影・透『生天目の奴、小西って小娘が氏んだ後、警察に電話してきてさ』
影・透『よりにもよって、この僕が相手しちゃったんだよ! 笑えるだろ?』
一同「…………」
影・透『その電話で、生天目の奴が僕と同じ能力者って事が分かってね』
影・透『で、警察は頼りにならない事と、自分で何とか出来るんじゃない?と……』
影・透『少ーし、背中を押してやったのさ』
752: 2014/02/16(日) 09:19:38 ID:2RSTM696
影・透『そしたらあいつ、さっそく行動に移した!』
影・透『もうね! 楽しかったよ!』
影・透『君らが助ければ、助けるほど、生天目は犯行を繰り返す!』
影・透『お互い善意でやっているのに、結果は壮大なイタチごっこ!』
影・透『見てて飽きなかったよ!』
一同「…………」
影・透『……けどお前ら、ウザく久保の奴を助けてくれちゃって』
影・透『これでおしまいか……なんて思って悲しかったな、あの時は』
影・透『ま、久保の奴は勝手にくたばってくれたし』
影・透『生天目は『救済』を続けてくれたから、結果オーライだったけどね』
753: 2014/02/16(日) 09:20:40 ID:2RSTM696
里中「……最っ低!」
天城「人の命を何だと思ってるの!?」
花村「てめぇだけは、絶対許さねぇ……!」
影・透『何怒ってるのさ?』
影・透『世の中、楽しい事がなきゃ意味が無いだろう?』
影・透『こっちの身にもなってくれよ……』
クマ「ムキー! アダッちーの言ってる事、むちゃくちゃクマ!」
雪ノ下「あなたの楽しみの為だけに……どれだけの人が傷ついたと思ってるの!?」
白鐘「自分が『される』立場だとしても、同じ事が言えるんですか!?」
影・透『さてね……ただ』
影・透『僕にはそれが出来たし、面白かったからやった』
754: 2014/02/16(日) 09:21:48 ID:2RSTM696
影・透『それだけさ』
ドオオオオンッ!!
一同「!?」
花村「くそっ! またかよ!」
白鐘「いえ……今回の方が数も多いし、強い!」
里中「……でも、やる事は同じよ!」
里中「ペルソナ!」
―――――――――――
クマ「これで終わりクマ!」
シュウウウウウ……
花村「よし……追いかけるぞ!」
755: 2014/02/16(日) 09:23:09 ID:2RSTM696
影・透『……へえ、あれも突破したのかい』
影・透『ちょっと見くびってたかな?』
比企谷「…………」
比企谷「……足立さん」
比企谷「向こうの世界が終わる……とか言ってましたけど」
比企谷「どういう意味ですか?」
影・透『どういう意味も何も、そのままの意味さ』
影・透『向こうの世界は……『現実』は……』
影・透『もうすぐこっちの世界と一緒になって、人間は【シャドウ】になるんだよ』
一同「!?」
756: 2014/02/16(日) 09:26:18 ID:2RSTM696
花村「何言ってるんだ? こいつ……」
比企谷「……霧か」
白鐘「!」
白鐘「……まさか、本当にこっちの霧が漏れているとでも?」
比企谷「そこまではわからんが、クマの眼鏡が通じている」
比企谷「何かの前兆現象かも……とは思っていた」
白鐘「前兆現象……」
影・透『クックックッ……察しがいいね? 比企谷くん』
影・透『でも、さすがにどうしてこんな事が起こるか?までは』
影・透『解らないみたいだね』
757: 2014/02/16(日) 09:28:25 ID:2RSTM696
花村「はあ? お前が何かしてるからじゃねーのか?」
影・透『バカ言うなよ……僕個人でこんな事出来る訳ないだろ?』
影・透『これはさ……』
影・透『みんなが望んでいる事だからさ!』
一同「!?」
里中「……何言ってるの?」
天城「みんな……って、向こうの世界の人達って事?」
りせ「みんなが【シャドウ】になりたがっている……とでも言いたいの!?」
りせ「そんな訳ないじゃない!!」
758: 2014/02/16(日) 09:29:52 ID:2RSTM696
影・透『やれやれ……』
影・透『あのね……君らは自分の【シャドウ】を見てきたんだろう?』
影・透『それを見て、生き生きしている様には思わなかったかい?』
影・透『クソな世の中で抑圧してきた感情……抑えてきた欲望』
影・透『それらが解放されたら、気持ちいいに決まってるだろ?』
影・透『そういうのを押さえ付け様とするから、お前ら【シャドウ】に襲われるんだよ』
花村「だからって、みんながみんな、『現実』を無くしたい訳じゃねーだろ!」
里中「【シャドウ】になりたい訳でもない!」
影・透『いいや? そんな事はないさ』
影・透『みんな『言わない』だけで、本当は解放されたがっている』
影・透『だから、こんな世界が……人間の意志が反映される世界が出来たんだよ』
759: 2014/02/16(日) 09:31:41 ID:2RSTM696
白鐘「……それは僕たち同様、あなたの勝手な解釈にすぎません」
白鐘「仮にそうだとしても……」
白鐘「あなたは、それを『逃げ』の手段に使っているだけだ」
影・透『……何?』
花村「はっきり言うぜ?」
花村「お前は この世界に選ばれたんでも 迎えられたんでもねえ」
花村「切羽詰っている ただの犯罪者だ」
影・透『……ケツの青いガキが、生意気言うんじゃねぇ!!』
りせ「はん! そのケツの青いガキにここまで追い詰められて」
りせ「恥ずかしくないの?」
760: 2014/02/16(日) 09:33:02 ID:2RSTM696
影・透『うるせえよ……』
影・透『世間てやつを何にも知らねぇひよっ子どもが……!』
白鐘「否定はしませんよ」
白鐘「ですが世間を知っているあなたは、刑事でありながら」
白鐘「犯罪者になってしまっている。 無様ですね」
影・透『刑事ね……別になりたくてなった訳じゃない』
影・透『拳銃が撃てるから、とりあえずなってみただけさ』
一同「…………」
影・透『ところがねぇ……これが大失敗だった訳よ。 分かる?』
影・透『周りはバカばっかりだし、面白くも何ともない』
761: 2014/02/16(日) 09:34:21 ID:2RSTM696
影・透『君らもね、こんなところに来てまで何がしたい訳?』
影・透『何の得にもならないし、犯人が生天目だろうが、僕だろうが』
影・透『世間てやつは、特に気に止める訳でもない』
一同「…………」
影・透『まさに無駄。 人生の無駄な訳よ……分かってるんだろ?』
影・透『それよりもさ、勉強を頑張った方がいいと思うよ?』
影・透『そしていい大学を出て、就職して、可愛い奥さんや』
影・透『かっこいい旦那さんを見つけて結婚して、ハッピーになる事を目指しなよ』
影・透『それが君らの為さ!』
一同「…………」
影・透『これ、経験談から言ってる訳。 分かるー?』
影・透『それとも他にやる事ないのかなー?』
762: 2014/02/16(日) 09:36:03 ID:2RSTM696
一同「…………」
影・透『あ、だからこんなにくだらない事を続けられる訳か……』
影・透『頑張って犯人捕まえようぜー!!』
影・透『ハハハハハハハハハハッ! 超ウケる! 面白すぎだよ、君たち!!』
一同「……はあ」
影・透『…………』
影・透『……何、溜息ついてんだ?』
白鐘「決まっているでしょ?」
白鐘「みんな呆れているんですよ」
影・透『呆れている……だと?』
763: 2014/02/16(日) 09:37:25 ID:2RSTM696
影・透『これだからケツの青いガキは嫌なんだ……』
影・透『社会の、それもほんの一部を知っただけで』
影・透『全部知った気になっていやがる』
影・透『世の中、ホントにクソだよな……』
雪ノ下「……それがわかっていながら」
雪ノ下「なぜ向き合おうとしないのかしら?」
影・透『…………』
雪ノ下「あなたの言う、ケツの青いガキにだって出来た事すら、出来ていないのに」
雪ノ下「よくもまあ人生が語れたものね……」
764: 2014/02/16(日) 09:38:58 ID:2RSTM696
影・透『……うるせぇ』
比企谷「足立さん。 すみませんでした」
影・透『……はあ?』
比企谷「俺がここに来た時……彼女が居るんでしょ?みたいな事、言いましたけど」
比企谷「あれのせいで今回の事件起こしたんですよね?」
雪ノ下「……いくら何でもそんなわけ無いでしょ」
比企谷「そうなんですか? 悔しかったんじゃないんですか?」
比企谷「ケツの青いガキである ひよっ子の俺に」
比企谷「自慢できる『何か』が何も無くて、焦ってしまったんじゃないんですか?」
影・透『……っ!』
765: 2014/02/16(日) 09:40:27 ID:2RSTM696
影・透『そんな訳あるかっ!』
影・透『お前ホントウザイッ! 初めて会った時から全然気に入らなかった!』
影・透『そうやって知ったかぶりする所も、何だかんだで僕を見下している所も』
影・透『暗に俺はお前よりマシだって見せつけてくる所もっ!』
影・透『全部全部ウザイんだよっ!!』
一同(…………)
一同(……なんか、当たりっぽい?)
影・透『……頃してやる』
影・透『頃してやるぞ、お前ら……!』
影・透『……っ! ……おおおおおおおおおおおおっ!!』
766: 2014/02/16(日) 09:41:18 ID:2RSTM696
影・透『マガツ……イザナギッ!!』
一同「!?」
花村「ペルソナ!?」
里中「それも……イザナギ!?」
白鐘「どういう事か分かりませんが、応戦しましょう!」
ドドドドドドドドドドッ!!
天城「今度は何!?」
767: 2014/02/16(日) 09:43:27 ID:2RSTM696
刈り取る者『…………』
刈り取る者『…………』
刈り取る者『…………』
比企谷「【シャドウ】だと!? それも超ド級にでかいのが3体!」
りせ「……この3体、並の強さじゃない!」
りせ「みんな、気をつけて!!」
雪ノ下「くっ……!」
クマ「このくらい何でもないクマ!」
影・透『クククッ……!』
影・透『もう泣いて謝っても許さないからな……』
影・透『ガキは黙って氏ねばいいんだよ!!』
768: 2014/02/16(日) 09:44:24 ID:2RSTM696
そこからは、まさに氏闘だった。
足立のペルソナ?はもちろん、呼び出した【シャドウ】の強さも相まって
お互い総力戦となった。
……どのくらい経った頃か。
足立の呼び出した【シャドウ】の1体が打ち倒され
そこから流れはこちらに傾いた。
残りの【シャドウ】を各個撃破し、残るは足立のペルソナ?のみとなり
残った火力を総動員する。
そして……
769: 2014/02/16(日) 09:45:48 ID:2RSTM696
比企谷「イザナギッ!!」
ズバッ!!
影・透『わああああああああああああああああああああああああああっ!!』
シュウウウウウ……
比企谷「ハアッ…ハアッ……」
花村「……お、終わった……か?」
里中「つ、強かったじゃん……」
白鐘「骨が折れましたね……」
770: 2014/02/16(日) 09:47:33 ID:2RSTM696
足立「……へ…………」
足立「………へ……へへ…へへへ……」
足立「……んだよ……これ……」
足立「……つまんねぇの……」
比企谷「…………」
比企谷「あだh」
ズドンッ!
足立「ぐおえっ!?」
比企谷「」
一同「」
771: 2014/02/16(日) 09:48:48 ID:2RSTM696
ズドンッ! ズドドンッ!!
里中「こ……これって!?」
天城「生天目の時と同じ!?」
そう。 俺たちは足立に起こった出来事に見覚えがあった。
人間に【シャドウ】が入り込み、同化していく現象……
由比ヶ浜をさらった、生天目に起きた事柄と非常に酷似していた。
だが……
足立?『……人は、すべからく【シャドウ】となる』
一同「!?」
772: 2014/02/16(日) 09:49:38 ID:2RSTM696
足立?『現実と虚構、双方の世界は一つとなり』
足立?『二度と晴れぬ霧に覆い尽くされるだろう……』
足立?『永遠に……』
花村「あ……あいつ……何言ってんだ!?」
里中「意味わかんない上に……何か、声、違くなかった!?」
ボフンッ!!
天城「きゃあっ!」
比企谷「くっ!」
雪ノ下「霧が……突然、濃くなった!?」
クマ「何が起こったクマ!?」
773: 2014/02/16(日) 09:51:08 ID:2RSTM696
……そいつは、少しずつ姿を現していった。
??????『私は……霧をすべし、人の意によって生み出されしモノ』
初めは、巨大なウニ?と思ったが……
それは大きな間違いだった。
??????『現実と虚構の重なりし世界に』
??????『秩序をもたらし君臨するモノ……』
そこにあるのは、禍々しくも巨大な目玉―――
774: 2014/02/16(日) 09:52:21 ID:2RSTM696
??????『我が名は、アメノサギリ』
……霧の中から姿を現したそいつは
アメノサギリ、と名乗った――
比企谷「アメノサギリ……」
花村「ゲームで言うところのラスボスってとこか……」
里中「じゃあ……あいつが諸悪の根源って事?」
775: 2014/02/16(日) 09:53:40 ID:2RSTM696
アメノサギリ『我が望みは人の望み』
アメノサギリ『虚ろの森より生まれし虚構は人々を魅了し』
アメノサギリ『人は更に虚構を求め、欲し、この世界は少しずつ広がっていった』
比企谷「……!?」
白鐘「広がって……? バカな、人が望んだから、この世界は広がったと言うのか!?」
アメノサギリ『人々はやがて虚構にのみ、熱狂し、望み』
アメノサギリ『現実に目を向けなくなっていった……』
アメノサギリ『故に』
アメノサギリ『私は虚構の世界を 現実と結びつける決断をした』
一同「!?」
776: 2014/02/16(日) 09:54:55 ID:2RSTM696
りせ「何言ってるの……!?」
りせ「人間が現実に目を向けないわけ無いでしょ!?」
天城「その通りよ! コノハナサクヤ!」
ドオオオオオオオンッ!!
アメノサギリ『その力とて、我が与えたもの……』
アメノサギリ『そなたらは、大衆を熱狂させる窓……見たいものを見せる』
アメノサギリ『良い役者であった』
花村「なっ!? 役者!?」
比企谷「『窓』……見たいものを見せる……?」
比企谷「!!」
比企谷「【マヨナカテレビ】の事か!?」
777: 2014/02/16(日) 09:56:07 ID:2RSTM696
雪ノ下「どういう意味なの?」
比企谷「……つまり」
比企谷「【マヨナカテレビ】は、『見たいと思った事』が見える現象だった」
比企谷「という事だと思う……」
一同「!?」
里中「ちょ、ちょっと待ってよ、比企谷くん」
里中「それじゃみんなが望んだから雪子達が映ったって事!?」
天城「……被害者は全員報道されている人物なのは」
天城「映った人達に『何か起これ』という気持ちがより強かったから!?」
白鐘「……確かにそれだと説明がつきますね」
778: 2014/02/16(日) 09:57:15 ID:2RSTM696
白鐘「不思議に思っていました。 生天目の【マヨナカテレビ】」
白鐘「あの時、テレビに映った生天目は……」
白鐘「僕たちが『生天目が犯人だ』と思い込んだ結果」
白鐘「映し出されたもの、という事だったのか……!」
花村「ふざけんなっ! ジライヤ!」
ゴオオオオオオオオッ!!
花村「人々が望んだ!? この世界を!?」
花村「だったら俺たちは何なんだよ!?」
花村「こんな世界なんて望んでいねーっての!!」
アメノサギリ『そう……』
779: 2014/02/16(日) 09:58:25 ID:2RSTM696
アメノサギリ『それだけが誤算であった』
アメノサギリ『本来は自身を頃す存在の【シャドウ】を次々と克服し、制御し』
アメノサギリ『自らの力へと変えるその『素養』……』
アメノサギリ『大多数の意見とは違う、強き意志を持つ存在……』
雪ノ下「なら……もう一度考え直してくれないかしら?」
アメノサギリ『故に』
アメノサギリ『私はお前達を試さねばならない』
一同「!?」
雪ノ下「人の話を聞きなさい!!」
比企谷「……気持ちは分かるが、無理っぽいな」
780: 2014/02/16(日) 09:59:39 ID:2RSTM696
アメノサギリ『『虚ろの森』に消えるのはどちらの意志か?』
アメノサギリ『そなたらの力……』
アメノサギリ『我に見せるがよい』
グオオオッ!!
花村「くそったれが!」
花村「そんなに言うなら見せてやるぜ! 一つ目バ○キ○マン!!」
天城「あ、そういえば声、似てるね」
比企谷「メタ発言は置いといて、もう少し緊張しろ」
りせ「来るよ!」
781: 2014/02/16(日) 10:01:19 ID:2RSTM696
かくして、アメノサギリとの戦いが始まった。
だが、すでに足立との戦いで疲弊していた俺たちにとって
かなり劣勢だと言える。
しかもこいつ、全体攻撃がかなりきつい。
回復が追いつかない。
……正直、逃げ出したい気分だった。
782: 2014/02/16(日) 10:02:26 ID:2RSTM696
ゴウッ!!
花村「ぐああああっ!!」
里中「花村!! ……んのおおおっ!」
里中「トモエ!!」 ゴッドハンド!
ドガアッ!!
比企谷「ハアッ…ハアッ……」
比企谷「大丈夫か、雪ノ下?」
雪ノ下「ええ……何とか……くっ」
783: 2014/02/16(日) 10:03:30 ID:2RSTM696
クマ「ペルクマ―――!!」 ブフダイン!!
天城「はあっはあっ……コノハナサクヤッ!」 アギダイン!!
白鐘「比企谷先輩、少し休んでいてください!」
白鐘「スクナヒコナ!」
比企谷「……すまん、白鐘……」
比企谷(…………)
比企谷(……とは言うものの)
比企谷(このままじゃジリ貧だ……!)
比企谷(どうする……!? どうすればいいんだ!!)
雪ノ下「ふ……」
雪ノ下「ふ……ふふっ……」
比企谷「……おい」
比企谷「何、笑ってるんだよ……さすがに引くぞ、それ」
784: 2014/02/16(日) 10:04:31 ID:2RSTM696
雪ノ下「ごめんなさい……」
雪ノ下「ちょっと懐かしくなって」
比企谷「……?」
雪ノ下「あの時……ほら、久慈川さんの【シャドウ】と戦った時」
雪ノ下「何だか今の状況、似ているな、とか思ってしまって……」
比企谷「ああ……あの時、久慈川の【シャドウ】に追い詰められて」
比企谷「俺と雪ノ下で盾になろうとしたっけな……」
雪ノ下「クマくんが謎の力を発揮してくれたおかげで」
雪ノ下「私たち……今、ここに居るのよね」
比企谷「そうだな……」
比企谷「…………」
比企谷「!!」
785: 2014/02/16(日) 10:05:45 ID:2RSTM696
比企谷「……そうだ」
比企谷「もしかしたら!」
雪ノ下「比企谷くん?」
花村「はあっはあっはあっ……」
花村「くそっ……いい加減、くたばってくれっての!」
白鐘「何です? 花村先輩……」
白鐘「もうグロッキーですか?」
花村「そう言うお前の膝も笑ってるじゃねーか……」
白鐘「なあに……まだまだ戦えますよ」
里中「はあっはあっ……」
天城「くっ……はあっ……はあっ……」
786: 2014/02/16(日) 10:07:32 ID:2RSTM696
アメノサギリ『……なかなかに面白き戦いであった』
アメノサギリ『そろそろ終焉とさせてもらおう』
比企谷「イザナギ!」
ドガッ!
アメノサギリ『…………』
アメノサギリ『何とも力無き一撃……弱き者よ』
比企谷「ああ。 その通りだよ」
比企谷「卑怯者のアメノサギリさん」
787: 2014/02/16(日) 10:09:08 ID:2RSTM696
アメノサギリ『…………』
比企谷(……久慈川)
比企谷(あいつをモニタリングしてるか?)
りせ(う、うん……)
比企谷(そうか。 これから一つ、仕掛けてみる)
りせ(え……!?)
比企谷(もちろん上手く行くかは、わからんがな……)
比企谷(何か弱点が見えたら指示してくれ)
りせ(わかったよ、比企谷先輩)
アメノサギリ『……聞き捨てならぬな、弱き者よ』
アメノサギリ『我は常に公平に『人の意志』を見てきた』
788: 2014/02/16(日) 10:10:28 ID:2RSTM696
比企谷「なら聞くが」
比企谷「お前、なぜクマの【シャドウ】に干渉した?」
比企谷「あの時感じた違和感……お前の力が働いたから、おかしいと思えたんだ」
一同「……!?」
アメノサギリ『…………』
アメノサギリ『くだらぬ質問だ』
アメノサギリ『我が望みは人の望み』
アメノサギリ『大衆がそれを望んだ故に行動したまで』
比企谷「大衆が? 【マヨナカテレビ】にも映っていないクマの【シャドウ】を?」
比企谷「どう考えても少数派だろ、そんなの」
789: 2014/02/16(日) 10:12:03 ID:2RSTM696
クマ「……クマ、何か馬鹿にされてるクマ?」
花村「気のせいだ」
里中「うん。 気のせい 気のせい」
アメノサギリ『…………』
比企谷「俺の考えはこうだ」
比企谷「お前……クマが羨ましかったんだろ?」
一同「……え?」
アメノサギリ『…………』
比企谷「もっとはっきり言うと……」
790: 2014/02/16(日) 10:13:32 ID:2RSTM696
比企谷「自分と同じ異形の存在でありながら」
比企谷「人と仲良くしている……できているクマに」
比企谷「嫉妬していたんだろ?」
アメノサギリ『…………』
花村「……正直、トンデモ説に聞こえる」
里中「……うん」
天城(まあ……ちょっと休めるからいいけど)
白鐘「…………」
791: 2014/02/16(日) 10:14:51 ID:2RSTM696
比企谷「だからお前はクマに干渉した」
比企谷「同じ異形の存在であるクマ……」
比企谷「憎くて憎くて、何とか消してやろう、元の【シャドウ】に戻してやろう」
比企谷「そう考えてな」
アメノサギリ『…………』
比企谷「とんだペテンだな」
比企谷「我が望みは人の望み? 笑わせる」
比企谷「そんな事を言いながら、お前は自分の欲望に負けた」
比企谷「ただのエセジャッジメンだ」
792: 2014/02/16(日) 10:17:06 ID:2RSTM696
アメノサギリ『…………』
アメノサギリ『……お……おお』
アメノサギリ『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
りせ「…………」
りせ「……!!」
りせ「あいつの……目ん玉の下の辺り……!」
りせ「防御が薄くなってる!!」
一同「!!」
花村「よし! 残った力……全部くれてやらぁ!!」
里中「はあああああああああ……!!」
793: 2014/02/16(日) 10:18:13 ID:2RSTM696
アメノサギリ『我は……アメノサギリ……』
アメノサギリ『我が望みは……人の望み……』
アメノサギリ『……人の望み……? 何故?……』
アメノサギリ『我は……人の意によって……? 何故?』
白鐘「……スクナヒコナ!!」
クマ「キントキドウジ!!」
天城「コノハナサクヤ!!」
雪ノ下「イザナミ!!」
比企谷「……今度は、もっと可愛い姿で生まれてくるんだな」
比企谷「イザナギ!!」
794: 2014/02/16(日) 10:19:10 ID:2RSTM696
アメノサギリ『我は……我は……?』
アメノサギリ『我が……望みは……?』
アメノサギリ『お……ああ……あ…………あお……』
ドゴォ―――――――――――ンッ!!
花村「はあっはあっ……どうだ!?」
里中「やった……の?」
天城「…………」
白鐘「!」
白鐘「あれを見てください!」
795: 2014/02/16(日) 10:20:08 ID:2RSTM696
アメノサギリ『…………』
アメノサギリ『……私は……アメノサギリに……あらず……』
アメノサギリ?『人の子よ……』
アメノサギリ?『我も……また…………』
アメノサギリ?『……矮小……なる…………存……在……』
シュウウウウウ……
一同「!!」
花村「よっしゃああああっ!!」
りせ「勝った……勝ったのよね!? あたし達!!」
クマ「さっすがセンセイクマ!」
796: 2014/02/16(日) 10:21:29 ID:2RSTM696
比企谷「……ふう。 正直、こんなに上手く行くとは思わなかったがな……」
比企谷「…………」
比企谷(……これで)
比企谷(終わったのだろうか……)
……ドサッ
比企谷「……ん?」
比企谷「!! ……足立……さん」
足立「…………」
一同「…………」
比企谷「…………」
797: 2014/02/16(日) 10:22:53 ID:2RSTM696
比企谷「大丈夫ですか? 足立さん」
足立「…………」
足立「……行けよ。 もう僕はダメそうだ……」
足立「どうせ……帰るところも……無いだろうし……」
足立「ここで【シャドウ】にでも食われてやるさ……」
比企谷「…………」
比企谷「……そうですか」
比企谷「それじゃ俺は行きます」
一同「!?」
花村「おい、比企谷。 そりゃねーだろ……」
798: 2014/02/16(日) 10:24:03 ID:2RSTM696
白鐘「僕たちは、ようやく犯人にたどり着いたんですよ?」
白鐘「彼を連れて帰り、ちゃんと罪を償わせないと……」
比企谷「ああ。 それも正しい意見だ」
比企谷「だが……俺は足立さんの『意志』を尊重する」
白鐘「……意志ですか?」
比企谷「足立さんは正しいよ」
比企谷「あっちの……現実の世の中は、確かにクソだ。 変え様がない」
一同「…………」
比企谷「本人が、それに耐える事が出来ないと言っている以上」
比企谷「無理やり連れて帰っても苦痛なだけだ」
足立「…………」
799: 2014/02/16(日) 10:25:28 ID:2RSTM696
比企谷「足立透という存在は、その程度の『価値』しかない」
比企谷「居ても居なくても世の中は回っていく……だから気にするな」
一同「」
足立「…………」
足立「……おい」
比企谷「何ですか?」
足立「お前……本当にムカつくガキだな……」
比企谷「だったら何です?」
比企谷「あなたはここで氏ぬ事を選んだ、ただの負け犬でしょう?」
足立「……っ」
800: 2014/02/16(日) 10:27:06 ID:2RSTM696
グ……ググッ……グググッ……
足立「はあ……はあ……」
比企谷「どうしたんですか? 立ち上がって?」
足立「……ぐっ……くっ……」 ヨロ…
足立「この……野郎ッ!」
ブンッ ガスッ!
比企谷「…………」
足立「はあ……はあ……」
比企谷「……それで?」
足立「!」
比企谷「…………」
比企谷「確認のため、一応聞きますけど」
比企谷「これからどうしますか? 足立さん?」
801: 2014/02/16(日) 10:28:16 ID:2RSTM696
足立「…………」
足立「……生きてやる」
足立「生きて、生き抜いて……」
足立「必ず……お前を……後悔させてやる!」
比企谷「……いいんですか?」
比企谷「向こうの世の中はクソで、あなたにとっては、更に生きにくくなっていますよ?」
足立「……乗り越えてやる」
足立「どんなに……クソであっても……な!」
一同「…………」
比企谷「そうですか……」
802: 2014/02/16(日) 10:29:29 ID:2RSTM696
比企谷「足がおぼつかない様ですが、手を貸しましょうか?」
足立「…………」
足立「……要らないよ」
足立「…………」
足立「ああ……そうとも、要らないんだよ……」
足立「僕は……」
足立「ひとりで……歩いていけるさ」
803: 2014/02/16(日) 10:30:59 ID:2RSTM696
足立さんは、出口に向かって歩き始めた。
途中、何度も転び、擦り傷が増えていったが
俺たちの手を借りる事は最後までしなかった。
……どのくらいの時間が経過したのか分からないが
ジュネスの家電売り場に出た時、店内は真っ暗で閉店しているのがわかった。
そして、すぐさま駆けつけてくる警備員……お世話になります。
804: 2014/02/16(日) 10:32:19 ID:2RSTM696
俺たちは事情を話し、堂島さんにも連絡。
足立さんは、一連の事件の容疑者として扱われるが
その前に監視付きで病院へ治療に行く事になった。
俺たちは……救急車で運ばれる足立さんを見送った後
霧が無くなり、星空が見えている事に 初めて気がつき
ようやく、何もかもが終わったのだと……実感したのだった。
805: 2014/02/16(日) 10:34:01 ID:2RSTM696
―――――――――――
比企谷「…………」
雪ノ下「比企谷くん」
比企谷「ん? 雪ノ下か……」
雪ノ下「あなたの説得方法、いつ見てもヒヤヒヤさせられる」
比企谷「……性分てやつだ、たぶん」
雪ノ下「月並みな言い方だけど……」
雪ノ下「命がいくつあっても足りないと思うやり方だわ」
雪ノ下「こっちの身にもなって欲しい……」
比企谷「…………」
比企谷「……心配かけて悪いな」
806: 2014/02/16(日) 10:34:54 ID:2RSTM696
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……ねえ」
雪ノ下「本当に帰るのかしら? 足立さんのアパートに……」
比企谷「他に行くところがない」
雪ノ下「あるじゃない」
比企谷「天城屋か?」
雪ノ下「分かっているのなら、来ればいいと思うのだけど?」
比企谷「…………」
比企谷「いいんだ。 ちょっと考えたい事もあるしな」
比企谷「じゃ……」
雪ノ下「あ……」
雪ノ下「…………」
807: 2014/02/16(日) 10:35:58 ID:2RSTM696
この時――
私は、比企谷くんに 少し違和感を感じていた。
後々、分かる事になるのだけど……
彼がこの事件の解決によって受けた、心の傷は
とても深いという事に
808: 2014/02/16(日) 10:36:52 ID:2RSTM696
私は……まったく気がついていなかった。
809: 2014/02/16(日) 10:43:53 ID:2RSTM696
というところで、今日はここまでです。ちょっと長くなりました。
3スレ目……行ってもいいと言ってくれる読者が居てくれる。
私、もう、何も怖くないっ! ありがとうございますw
でも、裏十文字(P4U)は無理っw
後、ここからP4・はまち共に改変が酷くなってまいります。
受け入れてもらえるか、ちょっと不安……それでは、また。
3スレ目……行ってもいいと言ってくれる読者が居てくれる。
私、もう、何も怖くないっ! ありがとうございますw
でも、裏十文字(P4U)は無理っw
後、ここからP4・はまち共に改変が酷くなってまいります。
受け入れてもらえるか、ちょっと不安……それでは、また。
816: 2014/02/25(火) 19:58:44 ID:EHXoStsY
―――――――――――
数日後の放課後
教室
キーン コーン カーン コーン
花村「ふう……今日も終わったか」
里中「もうすぐ期末試験かぁ……」
花村「そういや、今年ももうすぐ終わりなんだな……」
花村「いろいろあったなぁ。 今年は」
天城「ホントだね」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
817: 2014/02/25(火) 19:59:54 ID:EHXoStsY
雪ノ下「比企谷くん」
比企谷「ん?」
雪ノ下「今日の由比ヶ浜さんのお見舞いなんだけど……」
比企谷「ああ……悪いんだが」
比企谷「今日はちょっと用事があってな」
雪ノ下「そうなの?」
比企谷「由比ヶ浜にもすまない、と、言っておいてくれ」
雪ノ下「わかったわ」
比企谷「じゃあな……」 ガタタ…
テク テク テク…
雪ノ下「…………」
818: 2014/02/25(火) 20:00:56 ID:EHXoStsY
里中「あれ? 比企谷くん、帰っちゃったの?」
雪ノ下「ええ……用事があるとか」
里中「そうなんだ?」
天城「まあ……いろいろあるよね」
天城「今は仕方ないと思う」
雪ノ下「…………」
花村「んじゃ、そろそろ由比ヶ浜さんのお見舞いに行きますか!」
里中「うん!」
天城「もう起き上がれる様になったんだよね……」
里中「霧が晴れてから、どんどん良くなってるじゃん!」
アハハ……
雪ノ下「…………」
819: 2014/02/25(火) 20:02:03 ID:EHXoStsY
八十稲羽 総合病院
由比ヶ浜「みんな、いらっしゃい!」
花村「おじゃましまーす!」
クマ「ユイちゃん、今日も来たクマよ~」
里中「今日はおやつにと思って、果物 買ってきたじゃん」
クマ「クマも選んだクマ!」
由比ヶ浜「ありがとう。 そんなに気を使わなくていいのに」
里中「もっちろん、あたしらも食べたいな~なんて……」///
天城「そういう訳なの」 クス
由比ヶ浜「ああ。 そうなんだ」 クスッ
由比ヶ浜「じゃ、みんなで食べよう!」
820: 2014/02/25(火) 20:02:45 ID:EHXoStsY
アハハ…… フフフ……
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……ゆきのん?」
雪ノ下「! ……ごめんなさい、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「ちょっとボーっとしてたわ」
由比ヶ浜「ううん……それよりも」
由比ヶ浜「今日、ヒッキーは?」
雪ノ下「何か、用事があるって……」
由比ヶ浜「そっか……」
由比ヶ浜「ま、そういう日もあるよね!」
雪ノ下「…………」
821: 2014/02/25(火) 20:03:33 ID:EHXoStsY
八十稲羽警察署
比企谷「すみません」
比企谷「こちらでお世話になってる、足立透の面会をお願いした親戚の者ですが……」
―――――――――――
面会室
比企谷「……どうも、足立さん」
足立「…………」
比企谷「…………」
比企谷「これ、足立さんのご両親に頼まれた当座の着替えです」
足立「……!」
比企谷「…………」
822: 2014/02/25(火) 20:04:15 ID:EHXoStsY
比企谷「明日、お二人で会いに来るそうです」
足立「…………」
比企谷「伝言があります」
比企谷「『時間が掛かってすまない』」
比企谷「『私達も向き合う覚悟を決めた』」
比企谷「……だ、そうです」
足立「…………」
比企谷「…………」
比企谷「それじゃ……俺はこれで」
足立「…………」
823: 2014/02/25(火) 20:05:07 ID:EHXoStsY
足立「……笑ってるんだろ」
比企谷「……は?」
足立「惨めな僕を見て、心の中で笑っているんだろ?」
比企谷「…………」
比企谷「いいえ」
足立「嘘なんてつかなくていい」
足立「そうやって僕を見下して、さぞかし満足なんだろ?」
足立「そうなんだろ?」
比企谷「…………」
比企谷「そう見えるのなら……そうなんでしょう」
足立「…………」
比企谷「……でも」
比企谷「俺は知っていますよ」
824: 2014/02/25(火) 20:06:03 ID:EHXoStsY
比企谷「足立さんが料理作るの、結構上手なのを」
足立「……!?」
比企谷「炒め物は特に美味しかったです」
比企谷「それじゃ……また」
足立「…………」
ガチャ…… キィ パタン……
足立「…………」
足立「……本当に」
足立「ムカつくガキだよ、君は……」
―――――――――――
比企谷「…………」
825: 2014/02/25(火) 20:06:55 ID:EHXoStsY
あれから数日が過ぎた。
俺は、足立さんの家族と、自分の家族に事情を話したりして
それなりに忙しかった。
雪ノ下にも言われたが
俺の家族は、さっさと足立さんの部屋を出て、新しい部屋に住め、と
結構強めに言われた。
826: 2014/02/25(火) 20:07:59 ID:EHXoStsY
まあ、手続きが面倒なのと、来年の三月にあそこから出て行くし
俺が少し辛抱すれば済む問題だ、と、説得した。
もちろん足立さんの両親やアパートの大家も了承済みである。
……足立さんと従兄弟の関係であるウチの母親のショックは
それなりに大きかったみたいで、電話越しでもそれが分かる程だった。
正直、普段のあの人からは想像もしていなかった……
827: 2014/02/25(火) 20:09:00 ID:EHXoStsY
そんな訳で、俺は今も足立さんの部屋にいる。
後は学校に学費や保護者関連の事で相談しなければならないが
この事案だけは、少々気が重かった。
ただの取り越し苦労で済めばいいが、一応、不吉な予測は立ててある。
それが現実化しなければ御の字だが……
常に最悪の事を考えて行動しなくてはならない。
なにしろ俺は……
828: 2014/02/25(火) 20:09:40 ID:EHXoStsY
―――――――――――
????
イゴール「ようこそ……ベルベット・ルームへ」
イゴール「ふふふ……まさに節目の年を迎えられたお客様にとって」
イゴール「素晴らしい一年となりましたな……」
イゴール「…………」
イゴール「……ふむ?」
イゴール「…………」
イゴール「……なる程」
イゴール「その様な捉え方も、確かに真理と言えますな……」
829: 2014/02/25(火) 20:10:47 ID:EHXoStsY
イゴール「しかし……」
イゴール「わたくしめ共から見れば、お客様は」
イゴール「かかり来る幾多の霧を独自の解釈で払い、真実へとたどり着いた」
イゴール「真(まこと)に稀有な存在……到達者にございます」
マーガレット「お客様」
マーガレット「あなたは、傷つきながらも人との絆を紡ぎ」
マーガレット「それを”力”としているのです」
マーガレット「失礼ながら……それを見ないでいるのは」
イゴール「……マーガレット」
イゴール「口を慎みなさい」
マーガレット「…………」
マーガレット「申し訳ありません、我が主。 お客様」
830: 2014/02/25(火) 20:11:41 ID:EHXoStsY
イゴール「失礼しました、お客様……謝罪いたします」
イゴール「…………」
イゴール「……ふふふ、ありがとうございます」
イゴール「さて……」
イゴール「本日のご要件でございますが……」
ヒィイイイイイイン……
イゴール「これは……お客様が歩まれた、旅路で得られたモノ……」
イゴール「お客様の独自解釈と、何者にも惑わされず真実を見抜き」
イゴール「わたくし共も含めた、人との絆と”力”の結晶……『宝珠』にございます」
イゴール「今後、お客様の歩む道をささやかながらも照らし」
イゴール「良き道しるべともなりましょう……」
イゴール「どうぞ、お納めください」
831: 2014/02/25(火) 20:12:55 ID:EHXoStsY
イゴール「…………」
イゴール「……ふふふ、結構」
イゴール「それではお客様……最後になりますが」
イゴール「わたくし共と過ごした旅路は、ほんの一瞬にございます」
イゴール「節目の年を超えられた お客様の旅路は、まだまだこれからも続きましょう」
イゴール「歩まれる道に光溢れん事を祈りまする……」
マーガレット「どうかお気をつけて」
イゴール「ふふふ……行ってらっしゃいませ」
832: 2014/02/25(火) 20:13:43 ID:EHXoStsY
―――――――――――
期末試験後の放課後
ジュネス バックヤード
花村「おう、比企谷」
花村「どうしたんだ? 何か話しだって?」
比企谷「ああ」
比企谷「ちょっと言いたい事があってな」
花村「言いたい事?」
比企谷「…………」
比企谷「由比ヶ浜、明日、退院するそうだ」
833: 2014/02/25(火) 20:14:34 ID:EHXoStsY
花村「おお! そうなのか!」
花村「本当に良かったぜ!」
比企谷「で、だ……」
花村「はは、そういう事か!」
比企谷「?」
花村「アレだろ? 由比ヶ浜さんの退院パーティ!」
花村「開くんだろ?」
比企谷「……ああ」
花村「里中、こういうの好きだもんなぁ」
花村「わかったぜ、場所と日時、言いに来たんだな?」
比企谷「……それは合っているが、目的は違う」
花村「どういう意味だ?」
834: 2014/02/25(火) 20:15:29 ID:EHXoStsY
比企谷「…………」
比企谷「お前、由比ヶ浜の事、好きなんだろ?」
花村「…………」
花村「何言ってるんだよ……いきなり」
花村「そりゃ好きだけど、別に告白したいとかじゃ……」
比企谷「桔梗(ききょう)の花だ」
花村「!」
比企谷「以前、由比ヶ浜の見舞いの時」
比企谷「桔梗(ききょう)の花を選んでいた」
花村「…………」
比企谷「桔梗(ききょう)の花言葉は、「気品」「誠実」「従順」……そして」
比企谷「「変わらぬ愛」……」
835: 2014/02/25(火) 20:16:11 ID:EHXoStsY
花村「…………」
比企谷「……まあ」
比企谷「花村がそれでいいのなら、俺がとやかく言う事じゃないがな」
花村「…………」
花村「……何でだ?」
比企谷「?」
花村「何で今頃、そんな事言うんだ?」
花村「由比ヶ浜さん、もうお前に告ってるんだぞ?」
花村「いまさら俺が告白しても撃沈確定じゃねーか……」
比企谷「…………」
比企谷「まあ、一言で言うなら……仕返しだ」
花村「!?」
836: 2014/02/25(火) 20:17:10 ID:EHXoStsY
比企谷「お前は夏にこう言ってたな?」
花村「お前……いつまでもこのままでいられると思ってるのか?」
花村「『ある日』ってのは唐突に来るもんだぜ……」
花村「……っ」
比企谷「おまけに捨て台詞でこんな事も」
花村「どうするのかは、お前次第……」
花村「俺みたいに後悔する事が無い事を祈ってるぜ」
花村「…………」
比企谷「…………」
837: 2014/02/25(火) 20:18:04 ID:EHXoStsY
比企谷「由比ヶ浜……もう帰っちまう」
比企谷「時間はあまり無い」
比企谷「それを言いたかった」
花村「…………」
花村「……お前は、比企谷はいいのか?」
花村「俺が由比ヶ浜さんに告っても……」
比企谷「…………」
比企谷「正直、よく解らん」
花村「はあ?」
比企谷「どうでもいいって訳じゃない」
比企谷「俺も迷いながら、今の決断を下した」
比企谷「それが正しいんじゃないか?と思ってな……」
花村「…………」
838: 2014/02/25(火) 20:18:41 ID:EHXoStsY
花村「……そうかよ」
花村「ま……言いたい事はわかった」
比企谷「……そうか」
花村「…………」
花村「比企谷」
比企谷「ん?」
花村「俺も妙で、変な気持ちだが……言いたくなったから言っておく」
花村「ありがとうな」
比企谷「…………」
比企谷「どういたしまして」
839: 2014/02/25(火) 20:19:34 ID:EHXoStsY
―――――――――――
翌日の午後
堂島宅
一同「退院、おめでとう!」
パンッ パンッ パパンッ
由比ヶ浜「えへへ……みんな、ありがとう!」
菜々子「菜々子、とっても嬉しい!」
堂島「おめでとう」
鳴上「おめでとうございます」
クマ「クマ! 本当に良かったクマ!」
花村「いや~まったくだぜ!」
比企谷「……これでアレが無ければな」
840: 2014/02/25(火) 20:21:02 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜の退院祝いは、足立さんの事もあって
堂島さんが自宅の居間を提供してくれた。
菜々子ちゃんと鳴上さんも由比ヶ浜の退院を祝いたがっていたそうなので
渡りに船だったとか。
まあ、そこはいいだろう。
問題は里中達が祝いのケーキを作る!と言い出して
新たな犠牲者を増やそうとしている事だ。
841: 2014/02/25(火) 20:21:51 ID:EHXoStsY
里中「お待たせ~」
ドドンッ!!
比企谷「…………」
花村「…………」
菜々子「うわぁ、おっきい!」
堂島「これはすごいな」
鳴上「大きいのはいい事だ」
比企谷「……どうしてか、白色彗○帝国の要塞に見える」
花村「……俺はドラ○ュラの城に思える」
里中「外野、うるさいじゃん」
842: 2014/02/25(火) 20:22:54 ID:EHXoStsY
鳴上「?」
天城「それはともかく、食べてみて?」
菜々子「うん!」
花村「わー!! 待って!」
花村「せめて最初の犠牲者は、菜々子ちゃん以外で!」
雪ノ下「じゃあ花村くん、どうぞ」
花村「なんでだよ!?」
比企谷「安心しろ。 骨は拾ってやる」
花村「ううう……」
鳴上「……何がそんなに嫌なのか分かりませんが」
鳴上「俺から行きましょうか?」
843: 2014/02/25(火) 20:23:43 ID:EHXoStsY
花村「!」
比企谷「!」
比企谷「い、いや……鳴上さんにトップ犠牲者をやらせる訳には」
鳴上「さん付けは、もういいですよ」 クスッ
花村「そ、そう? じゃあ鳴上……俺らもさん付けは無しってことで」
比企谷「改めてよろしく」
鳴上「ああ。 花村、比企谷」
ハハハ……
里中「さて、美しい友情が深まったところで」
里中「切り分けたケーキどうぞ、鳴上くん!」
鳴上「ありがとう」
花村「ちょ、おま!? いつの間に!?」
844: 2014/02/25(火) 20:24:23 ID:EHXoStsY
鳴上「いただきます」
比企谷「ああ……」
パクッ モグモグ……
鳴上「うん、美味しい」
花村「え」
比企谷「え」
鳴上「みんなもどうぞ。 美味いですよ?」
花村「……お世辞、言わなくてもいいんだぞ?」
比企谷「まさかの味覚障害……とか?」
里中「さっきから失礼すぎでしょ」
白鐘「とにかく、お二人も食べてみてください」
845: 2014/02/25(火) 20:25:08 ID:EHXoStsY
花村・比企谷「…………」
パクッ モグモグ……
花村・比企谷「!!」
花村・比企谷「美味い!?」
里中「ふふ~ん♪ どんなもんでしょ?」
天城「少しは見直してくれたかな?」
花村「信じらんねぇ! 真面目に美味いじゃねーか!」
比企谷「奇跡って……本当にあるんだな」
りせ「相変わらず素直じゃないなぁ、比企谷先輩」
雪ノ下(……まあそう言いたくなる気持ちも分かるけど)
白鐘(ケーキの材料を買う段階でスパイスとか魚介類を選ぼうとしますし)
白鐘(スポンジも4回目にして、やっとまともに焼けましたから……)
846: 2014/02/25(火) 20:25:52 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「うわぁ! 本当に美味しいよ、みんな!」
里中「うん、どんどん食べてね!」
菜々子「美味しい!」
堂島「良かったな、菜々子」
菜々子「うん!」
クマ「ムホホ! 美味しいクマ!」
アハハハハハ……
―――――――――――
比企谷「……お? もうこんな時間か……」
比企谷「みんな、そろそろ遅い時間だぞ?」
847: 2014/02/25(火) 20:26:32 ID:EHXoStsY
里中「わ! ホントだ……もうこんな時間じゃん」
天城「楽しかったからあっという間だったね、千枝」
花村「だな。 もうそろそろ帰らないと……」
クマ「えー……」
由比ヶ浜「えー……」
菜々子「えー……」
比企谷「おい由比ヶ浜……小学生とクマに同調するなよ」
由比ヶ浜「だって楽しいんだもん」
クマ「そう! その通りクマ!」
菜々子「うん!」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「また、みんなで集まってパーティを開きましょう? 由比ヶ浜さん」
848: 2014/02/25(火) 20:27:43 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「! ……ゆきのん」
雪ノ下「この先、みんなもいろいろあって時間も取れなくなって」
雪ノ下「簡単に会えなくなるかもしれない」
雪ノ下「でも……私もまた、みんなで集まりたいって思ってるから」
一同「…………」
里中「……うん」
里中「また、みんなで集まろうじゃん!」
里中「これで終わりなんて、絶対いやだもん!」
天城「うん! 私もだよ、千枝」
りせ「そうだよ! その通りだよ!」
849: 2014/02/25(火) 20:28:22 ID:EHXoStsY
菜々子「菜々子もおんなじだよ!」
クマ「クマも! クマも!」
白鐘「当たり前ですよ」 クスッ
鳴上「……俺も居ていいのか?」
花村「もちろんだぜ、鳴上!」
堂島「その時は、また場を貸そう」
堂島「出来る限り、としか言えないがな」
比企谷「十分ですよ、堂島さん」
ハハハハ……
―――――――――――
850: 2014/02/25(火) 20:29:21 ID:EHXoStsY
里中「それじゃ、みんな。 またね!」
花村「おう! 里中。 じゃあな! クマも行くぞ!」
クマ「クマ!」
天城「またね、千枝、花村くん、クマくん」
雪ノ下「じゃ、由比ヶ浜さん。 天城屋へ戻りましょう?」
由比ヶ浜「うん! 菜々子ちゃん、鳴上くん、堂島さん」
由比ヶ浜「今日はありがとうございました!」
菜々子「またね! 結衣お姉さん!」
鳴上「また、いつか」
堂島「また来た時は遠慮なく訪ねてくれ。 菜々子も喜ぶしな。 歓迎する」
由比ヶ浜「はい! それじゃ、また!」
851: 2014/02/25(火) 20:30:07 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「ヒッキーもまたね!」
比企谷「ああ」
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「…………」
比企谷「堂島さん」
堂島「……ああ、わかっている」
堂島「すまないが悠、菜々子と一緒に席を外してくれ」
鳴上「わかりました」
鳴上「菜々子?」
菜々子「うん、お兄ちゃん」
スタ スタ スタ…
堂島「…………」
比企谷「…………」
852: 2014/02/25(火) 20:31:09 ID:EHXoStsY
堂島「……いい友人達だな」
比企谷「ええ」
堂島「それで、だが……足立の奴な」
比企谷「…………」
堂島「取り調べにも素直に応じているし、正直、殺害の方法以外で」
堂島「不審な点は見つかっていない」
堂島「立件は可能だろうが……裁判でどうなるかは分からん」
比企谷「…………」
堂島「警察は身内のしでかした事件なだけに」
堂島「余り派手な発表はしないだろう」
比企谷「……そうですか」
853: 2014/02/25(火) 20:31:50 ID:EHXoStsY
堂島「ただ……」
比企谷「ただ?」
堂島「…………」
堂島「……俺の思い過ごしなのかもしれんが」
堂島「足立の奴……両親と面会してから様子がおかしい気がする」
比企谷「…………」
堂島「どこがどう……という訳じゃないんだがな」
比企谷「……そうですか」
堂島「…………」
堂島「君は足立の部屋に住む事を決めたそうだが」
堂島「本当にいいのか?」
堂島「保護者代理を引き受けたんだ。 俺の家に来てもいいんだぞ?」
854: 2014/02/25(火) 20:32:49 ID:EHXoStsY
比企谷「いえ。 そのご好意だけで十分です」
比企谷「来年の三月までですから……気にしないでください」
堂島「…………」
比企谷「足立さんの様子……心配ですね」
比企谷「近いうちにまた面会に行きますので」
比企谷「その時は、またよろしくお願いします」
堂島「あ、ああ……」
比企谷「……それじゃ、俺、帰ります」
比企谷「今日はありがとうございました」
堂島「…………」
855: 2014/02/25(火) 21:15:31 ID:EHXoStsY
―――――――――――
翌日の朝
天城屋 玄関ロビー
花村「よう! 天城」
天城「あれ? 花村くん?」
天城「どうしたの? こんな朝に……」
花村「ハハハ……ちょいとヤボ用ってやつさ」
花村「で、だ。 天城に折り入って頼みたい事があってよ……」
天城「頼みたい事?」
花村「……由比ヶ浜さんを呼び出して欲しいんだ。 それも出来れば内密に」
天城「!」
花村「頼む、天城……」
天城「…………」
856: 2014/02/25(火) 21:16:47 ID:EHXoStsY
―――――――――――
天城屋 個室
由比ヶ浜「やっはろー! 花村くん!」
花村「ああ、由比ヶ浜さん」
花村「わざわざごめんな……」
由比ヶ浜「ううん。 それで? 話って何かな?」
花村「あ~……それなんだけど」
由比ヶ浜「うん」
花村「…………」
花村「俺さ」
857: 2014/02/25(火) 21:17:33 ID:EHXoStsY
花村「由比ヶ浜さんの事……好きなんだ」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……うん?」
由比ヶ浜「ええええええええっ!?」///
花村「ハハハ……予想通りの反応だな」
由比ヶ浜「って! 花村くん!」
由比ヶ浜「そういう冗談は女の子、一番嫌がるんだからね!?」
花村「……冗談なんかじゃないよ」
由比ヶ浜「え……」
858: 2014/02/25(火) 21:18:28 ID:EHXoStsY
花村「最初はさ、ああこの娘、比企谷の事 好きなんだなってのが丸わかりで」
花村「応援したいな、くらいに思ってた」
由比ヶ浜「~~~っ」///
花村「でもさ……」
花村「いつくらいからかな?……もうよく分かんねぇけど」
花村「比企谷を見る由比ヶ浜さんの目を」
花村「俺にも向けて欲しいって、思う様になった」
由比ヶ浜「…………」
花村「けど……俺は由比ヶ浜さんの気持ちを知ってたから」
花村「表面上は応援するスタンスを取る事にして、自分の心を騙した」
花村「それが一番いいと思ってさ……」
由比ヶ浜「…………」
859: 2014/02/25(火) 21:20:02 ID:EHXoStsY
花村「俺……いつもおちゃらけて、軽口叩いていたけど」
花村「君と話す時は ちょっと辛かったんだぜ?」
花村「だから……キッカケもあったけど、自分の気持ちにウソつくのやめる事にした」
由比ヶ浜「…………」
花村「もう一度言うな?」
花村「俺は、由比ヶ浜さんの事、好きだ」
由比ヶ浜「…………」
花村「…………」
由比ヶ浜「……ごめん……なさい」
花村「……うん」
由比ヶ浜「…………」
860: 2014/02/25(火) 21:21:02 ID:EHXoStsY
花村「じゃあさ、少し意地悪するけど」
花村「理由を聞かせて欲しい」
由比ヶ浜「っ!?」
花村「頼むよ。 今後の参考にしたいしさ」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……花村くんは、悪くないと思う」
由比ヶ浜「でも、私は……私には、ヒッキーが」
花村「おっと、そうじゃない。 比企谷を使うのは反則」
由比ヶ浜「え……」
花村「俺が聞きたいのは」
861: 2014/02/25(火) 21:22:31 ID:EHXoStsY
花村「由比ヶ浜さんが俺をどう思っているのか、なんだよ」
由比ヶ浜「!!」
花村「それも出来るだけストレートに……そう!」
花村「あの世界の【シャドウ】みたいに思った事、言って欲しい」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……私」
由比ヶ浜「花村くんの事は……そんなに気にして無かった」
花村「…………」
由比ヶ浜「正直、告白されて一番最初に思った事は」
由比ヶ浜「困ったな……だった」
花村「……そっか」
由比ヶ浜「で、でも、それは『嫌い』って意味じゃなくて!」
由比ヶ浜「何て言うか、その、上手く言えないけど、嫌って訳じゃな」
862: 2014/02/25(火) 21:23:13 ID:EHXoStsY
花村「由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「! ……う、うん」
花村「…………」
花村「ありがとう。 もういいよ」
由比ヶ浜「…………」
花村「困らせてごめん……でも、俺にとって必要な事だったんでね」
由比ヶ浜「花村くん……」
花村「時間取らせて悪かった。 帰る準備してたんだろ?」
由比ヶ浜「う、うん……」
花村「じゃ……また駅で。 必ず見送りに行くから」
由比ヶ浜「え……あ、うん」
863: 2014/02/25(火) 21:24:19 ID:EHXoStsY
―――――――――――
花村「…………」
天城「……花村くん」
花村「! ……天城か」
天城「これ……使う?」つ(ハンカチ)
花村「…………」
花村「いや……気持ちだけ貰っておく。 ありがとうな」 ゴシゴシ…
天城「ううん」
花村「…………」
花村「もしかして、聞いてた……とか?」
天城「えっと……やっぱり、その、気になって」///
花村「うわ……」///
864: 2014/02/25(火) 21:25:46 ID:EHXoStsY
花村「……つーか、盗み聞きとか、感心しねーな」
里中「アハハ……ごめん、花村」
陽乃「ごめんねー花村くん」
雪ノ下「……私は、一応反対したんだけど」
りせ「てへへ……」
白鐘「……すみません、花村先輩」
花村「」
花村「ちょ!マジかよ!? 俺の玉砕、全面公開なわけ!?」///
花村「なんで白鐘とかまで居んの!?」///
865: 2014/02/25(火) 21:26:54 ID:EHXoStsY
里中「ままま、男は細かい事、気にしないじゃん?」
花村「するっての!」///
花村「ああもう……カッコ悪すぎんだろ、こういうの……」///
天城「そんな事ないよ、花村くん」
天城「上手く言えないけど……ちょっとカッコよかった」
花村「マジで!?」
りせ「そういうのはカッコ悪いと思います」
陽乃「女の子はね……形はどうあれ」
陽乃「真剣に『好き』って言われると、案外コロッと落ちちゃったりするものなの」
陽乃「さっきの花村くんは、なかなかいい線いってたわよ?」
花村「そ、そうですか……」
866: 2014/02/25(火) 21:27:37 ID:EHXoStsY
白鐘「その……大丈夫ですか?」
花村「…………」
花村「……今のところはな」
花村「なんか水を差されて、それどころじゃねーって気もするけど」
花村「俺的にはスッキリした……と思う」
里中「そっか……」
花村(…………)
花村(何て言うか……ずっと貰いたかった『返事』を聞かせてもらった気がする)
花村(言いたくても言えなかった気持ちに対する答えを、やっと……)
花村(…………)
花村(小西先輩……俺)
花村(もう、大丈夫だと思います)
867: 2014/02/25(火) 21:28:40 ID:EHXoStsY
―――――――――――
足立宅
ピンポーン
比企谷「ん?」
比企谷「はーい」
ガチャ
比企谷「! 由比ヶ浜……」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「どうした? まだ出発の時間には早くないか?」
由比ヶ浜「……約束」
比企谷「…………」
868: 2014/02/25(火) 21:29:38 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「約束、したでしょ? ヒッキー」
比企谷「…………」
比企谷「忘れてた訳じゃない」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……とりあえず、上がるか?」
由比ヶ浜「……うん」
―――――――――――
比企谷「ほら、こんなものしかないが……お茶」
由比ヶ浜「ありがとう」 ズズッ…
由比ヶ浜「うん、おいしい」
比企谷「…………」
869: 2014/02/25(火) 21:30:38 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「ふう……」
由比ヶ浜「まず、私から言っておくね?」
比企谷「おう」
―――――――――――
比企谷「『特別』……ね」
由比ヶ浜「うん」
比企谷「…………」
比企谷「嬉しくもあるし、ありがとう……と、言うのも変な感じだな」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……で、どうなのかな?」
由比ヶ浜「私の……告白への返事」///
870: 2014/02/25(火) 21:31:55 ID:EHXoStsY
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……もう少し」
比企谷「もう少し待ってくれないか? 由比ヶ浜……」
由比ヶ浜「え……」
比企谷「今の俺……いろいろありすぎて、心の整理がつかなくてな」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「言い訳に聞こえるだろうけど……」
比企谷「今は、そういう事を考える余裕が」
由比ヶ浜「そんなの納得できないっ!」
比企谷「…………」
871: 2014/02/25(火) 21:32:40 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「私……私っ! いつまでもこんな宙ぶらりんの状態、嫌だよ!」
由比ヶ浜「はっきりして! 私か、ゆきのんか! それともあの白鐘って娘か!」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「私……もう帰っちゃうんだよ?」
由比ヶ浜「またしばらく……会えなくなるんだよっ……?」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「私……うっ……メールとかで……っ……」
由比ヶ浜「断りの返事なんて……受けたくないよっ……!」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「うっ……ぐすっ……ひっく……」
比企谷「…………」
872: 2014/02/25(火) 21:33:34 ID:EHXoStsY
比企谷「……約束する」
由比ヶ浜「……ぐすっ……?」
比企谷「どんな答えになろうとも、必ず、由比ヶ浜に直接言う、と」
比企谷「約束するから」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「……わかった」
比企谷「すまない、由比ヶ浜……」
比企谷「本当にすまない……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……?」
873: 2014/02/25(火) 21:34:46 ID:EHXoStsY
―――――――――――
八十稲羽駅 ホーム
里中「向こうでも元気でね、由比ヶ浜さん」
天城「またね、由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「ありがとう、里中さん、天城さん」
クマ「さみしくなるクマ……」
りせ「その気になれば、いつでも会いに行けるよ、クマ!」
白鐘「どうか、お元気で」
由比ヶ浜「うん!」
陽乃「もうすぐ冬休みなんだから、もっと居たらいいのに……」
雪ノ下「姉さん。 無理は言わないで」
由比ヶ浜「あはは……」
874: 2014/02/25(火) 21:35:37 ID:EHXoStsY
花村「えっと……元気でね、由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「う、うん……」
比企谷「由比ヶ浜……」
由比ヶ浜「! ヒッキー……」
比企谷「これ……」 ゴソゴソ…
比企谷「慌てて作ったんだが……良かったら食ってくれ」
比企谷「ただのおにぎりだけど、ご両親の分もある」
由比ヶ浜「ありがとう、ヒッキー。 美味しく食べさせてもらうね」
比企谷「またな」
由比ヶ浜「うん」
875: 2014/02/25(火) 21:36:33 ID:EHXoStsY
まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします
黄色い線の内側へと……
由比ヶ浜「……ゆきのん!」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「ヒッキーの様子……しっかり見てて」
雪ノ下「!」
雪ノ下「……どういう意味かしら?」
由比ヶ浜「……わからない。 でも」
由比ヶ浜「今のヒッキー、何か、変……」
雪ノ下「…………」
876: 2014/02/25(火) 21:37:27 ID:EHXoStsY
由比ヶ浜「お願い、ゆきのん」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「わかったわ」
由比ヶ浜「何か分かったら、連絡して欲しい」
雪ノ下「それもわかったわ」
由比ヶ浜「絶対だよ、ゆきのん……!」
由比ヶ浜「それじゃ、みんな!」
由比ヶ浜「またね!」
里中・天城「うん! またね!」
クマ「ユイちゃん、またね、クマー!」
りせ「由比ヶ浜さん、また会おうね!」
白鐘「いつかまた!」
877: 2014/02/25(火) 21:38:17 ID:EHXoStsY
プシュー バタン☆
ガタンゴトン ガタンゴトン…
比企谷「……行っちまったな」
雪ノ下「ええ……」
比企谷「ところで最後、何かヒソヒソ話していたけど……」
雪ノ下「他愛のない話よ」
比企谷「……そうかよ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下(任せておいて、由比ヶ浜さん)
878: 2014/02/25(火) 21:39:17 ID:EHXoStsY
―――――――――――
翌日
八十稲羽警察署 面会室
比企谷「どうも、足立さん」
足立「……また君か」
比企谷「俺ですみませんね」
比企谷「これ、差し入れです。 後で食べてください」
比企谷「中身はたい焼きです」
足立「……そうかい」
比企谷「足りないものや欲しいものはありますか?」
比企谷「また持って来ます」
足立「来なくていいよ……鬱陶しい」
879: 2014/02/25(火) 21:39:58 ID:EHXoStsY
比企谷「…………」
足立「…………」
比企谷「……足立さん、ご両親とはどんな話をされました?」
足立「君には関係ない」
比企谷「…………」
足立「…………」
比企谷「……俺の母親」
比企谷「相当ショックを受けていました」
足立「……!」
比企谷「あの透ちゃんが!?と、信じられない様子でした」
足立「…………」
880: 2014/02/25(火) 21:40:54 ID:EHXoStsY
比企谷「…………」
比企谷「……そういうの」
比企谷「疲れますよね……」
足立「……っ」
比企谷「……足立さんは」
比企谷「拳銃が打てるから、という理由で刑事になったと言ってましたけど」
比企谷「どうして『警官』を選ばなかったんですか?」
足立「…………」
比企谷「詳しく知りませんけど……」
比企谷「刑事になるのって、結構難しいって聞きます」
足立「…………」
比企谷「…………」
882: 2014/02/25(火) 21:44:26 ID:EHXoStsY
比企谷「……それじゃ足立さん」
比企谷「今日はこれで」
比企谷「また来ます」
足立「…………」
ガチャ……キィ…… パタン
足立「…………」
足立「……クソッ」
883: 2014/02/25(火) 21:48:57 ID:EHXoStsY
―――――――――――
数日後 クリスマスイヴ
ジュネス
花村「いらっしゃいませー!」
クマ「いらっしゃいクマー!」
―――――――――――
花村「ふー……やっと休憩だぜ」
クマ「ヨースケ、ここのところ やたらと忙しいけど」
クマ「どうしてクマ?」
884: 2014/02/25(火) 21:50:00 ID:EHXoStsY
花村「あー年末商戦って言って……どう説明すっかな?」
花村「ともかく年に何回か、お客さんが物凄く買い物したくなるっ!みたいな」
花村「そういう気分の時が来るんだよ」
クマ「およよ~ビックウェーブってやつクマね?」
花村「……何でそんな言葉知ってんのかは置いといて、まあそういう事だ」
クマ「ユキちゃん達が忙しいのも同じクマか?」
花村「おう。 天城屋も書き入れ時ってやつで」
花村「まあだいたい同じだな」
クマ「ふむふむ~勉強になるクマ!」
885: 2014/02/25(火) 21:51:08 ID:EHXoStsY
花村「…………」
花村(……とは言え)
花村(比企谷は何が忙しいんだ……?)
花村(久慈川は店やってるからともかく)
花村(里中は天城の手伝いするって言ってたし)
花村(白鐘にもバイト断られるとは思わなかったな……はあ)
花村(……ま、くよくよ考えても仕方ねーか)
花村「うし、そろそろ店に戻るぞ、クマ」
クマ「わかったクマ!」
886: 2014/02/25(火) 21:52:13 ID:EHXoStsY
―――――――――――
夜
足立宅の玄関前
白鐘(……ついに来た)
白鐘(花村先輩と話をして……今日)
白鐘(他のみなさんは忙しく、時間がない事は調べてある)
白鐘(…………)
白鐘(卑怯なのは分かってる……でも)
白鐘(こんなチャンスは、もう来ないかもしれない!)
白鐘(覚悟を決めるんだ、白鐘直斗!)///
887: 2014/02/25(火) 21:52:51 ID:EHXoStsY
白鐘「…………」
白鐘「……よしっ」///
ピンポーン
白鐘「…………」
はーい
白鐘「!」
ガチャ…
比企谷「お? 白鐘?」
白鐘「こ、今晩は、です。 比企谷先輩……」///
888: 2014/02/25(火) 21:53:48 ID:EHXoStsY
比企谷「どうした? こんな夜に」
白鐘「え!? そのっ……きょ、今日は、クリスマスイヴだし……」///
白鐘「比企谷先輩と……祝いたいかなって……思って、その……」///
比企谷「…………」
比企谷「お前だけか?」
白鐘「え?」
比企谷「……いや、何でもない」
比企谷「入ってくれ」
白鐘「は、はい」
比企谷「とりあえず上着脱いで、そこのコタツにでも座っててくれ」
比企谷「ハンガーはそこな」
白鐘「わ、わかりました」
889: 2014/02/25(火) 21:56:03 ID:EHXoStsY
白鐘(…………)
白鐘(ここが……比企谷先輩の住処)
白鐘(…………)
白鐘(あ……これ、冬休みの宿題……かな?)
白鐘(…………) パラパラ…
白鐘(……もうほとんど終わってるっぽい)
白鐘(勉強家なんだな……)
比企谷「待たせたな」
比企谷「ほら、コーヒー」
白鐘「あ、わざわざすみません。 いただきます」
890: 2014/02/25(火) 21:57:10 ID:EHXoStsY
比企谷「…………」
比企谷(クリスマス……か)
白鐘「ふう……あ、えと……これ」
トン……
白鐘「買ってきたものですみませんが……」
白鐘「チキンとケーキです」
比企谷「お……美味そうだな」
白鐘「ハハハ……そうですね」
白鐘「ハハ……」
891: 2014/02/25(火) 21:58:28 ID:EHXoStsY
比企谷「……白鐘?」
白鐘「……すみません」
白鐘「僕は、こういうの……慣れてなくて」
比企谷「…………」
白鐘「幼い頃から探偵方面ばかりに興味が向いて」
白鐘「こういう……クリスマスパーティとかには無関心で、ほとんど参加した事がなくて」
白鐘「どうやったらいいのか……よくわかりません」
比企谷「…………」
比企谷「気にするな」
比企谷「俺も家族以外とは似た様なもんだし」
比企谷「詳しい作法なんて知りもしない」
白鐘「比企谷先輩……」
892: 2014/02/25(火) 22:00:06 ID:EHXoStsY
比企谷「とりあえず、メリークリスマスって言って、後は飲み食いすればいいと思う」
比企谷「……たぶん」
白鐘「ふふふっ」///
白鐘「やっぱり……勇気を出して、ここに来て良かった」///
比企谷「……勇気?」
白鐘「もし……他の人が居たら止めようかな、とも思ったんですけど……」///
白鐘「思い切ろうと思います」///
比企谷「…………」
白鐘「スーハー……スーハー……」
白鐘「ふう……」
比企谷「…………」
白鐘「……比企谷先輩」
白鐘「僕は、あなたの事が……」
893: 2014/02/25(火) 22:01:29 ID:EHXoStsY
白鐘「好きです」///
比企谷「…………」
白鐘「い、いきなりすぎ……ですよね」///
白鐘「でもっ……ウソとか、遊びとかじゃなくて」///
白鐘「本気で、恋人なりたい、という意味で」///
白鐘「僕は……あなたの事が好きなんですっ」///
比企谷「…………」
白鐘「…………」///
比企谷「…………」
白鐘「…………」///
比企谷「……白鐘」
白鐘「は、はいっ」///
894: 2014/02/25(火) 22:02:17 ID:EHXoStsY
比企谷「その……な」
比企谷「今は……俺、いろいろあって」
比企谷「…………」
比企谷「うん、戸惑ってる……という状態だ」
白鐘「え……」
比企谷「最低だよな……せっかく白鐘が勇気を出して言ってくれたのに」
比企谷「今の俺……どうしたらいいか、わからないんだ……」
白鐘「…………」
比企谷「すまん、白鐘」
比企谷「しばらく考えさせて欲しい」
白鐘「そ……そう…ですか」
白鐘「…………」
895: 2014/02/25(火) 22:02:59 ID:EHXoStsY
白鐘「じゃ、じゃあチキンでも食べますか?」
比企谷「そうだな」
比企谷「メリークリスマス」
白鐘「メリークリスマス」
―――――――――――
比企谷「送っていく、白鐘」
白鐘「……いえ」
白鐘「それ程遠くありませんし、大丈夫です」
比企谷「……そうか。 気をつけてな」
白鐘「どうも。 それでは、失礼します」
896: 2014/02/25(火) 22:03:47 ID:EHXoStsY
白鐘「…………」
白鐘(……おかしいな)
白鐘(何故……こんなに気持ちが沈んでいるんだろう)
白鐘(…………)
白鐘(はぐらかされた……とは思うけど)
白鐘(それ以上に、何か……)
白鐘(何かが……)
白鐘(…………)
白鐘(…………) ピッピッピッ…
ルルルルル……ルルルルル……ガチャ
白鐘「あ、もしもし。 夜分すみません、白鐘です」
897: 2014/02/25(火) 22:05:43 ID:EHXoStsY
白鐘「突然ですみませんが、会って話せませんか?」
白鐘「ああ、もちろん今日でなくても構いません。 時間のある時で……」
白鐘「はい……はい……」
白鐘「…………」
白鐘「来年……そうですか……」
白鐘「あ、いえ、それでも構いません」
白鐘「雪ノ下先輩もお忙しいでしょうし……はい」
白鐘「…………」
白鐘「わかりました。 1月3日の午後、天城屋で……」
白鐘「それでは……」 ピッ…
白鐘「……ふう」
白鐘「…………」
898: 2014/02/25(火) 22:06:24 ID:EHXoStsY
僕は……焦りすぎたんだろうか……
それとも、気持ちを押し付けすぎたんだろうか……
どうしてか……あの世界、テレビの中の世界の
見通しが効かない霧が自分にかかってしまった様な……
そんな錯覚を僕は感じていた。
912: 2014/03/11(火) 23:22:42 ID:N8VV3MnI
―――――――――――
大晦日の夜
足立宅
コン コン
比企谷「……はーい」
ガチャ…
花村「よう! 比企谷!」
花村「初詣に行こうぜ!」
クマ「センセイも行くクマよ~」
比企谷(……正直、明日にしようと思ってたんだけどな)
比企谷「わかった」
比企谷「つか、来るなら連絡してくれよ……」
花村「いーじゃねーかよ、これくらい」
913: 2014/03/11(火) 23:23:48 ID:N8VV3MnI
辰姫神社
ゴ~ン…… ゴ~ン……
比企谷「除夜の鐘か……」
花村「結構人が来てるな」
クマ「夜店も開いてるクマ!」
……ワ~!! ハッピーニューイヤー!!
比企谷「そういやカウントダウン見逃した」
花村「ま、いいんでね? それくらい」
花村「明けましておめでとう、比企谷、クマ!」
クマ「明けましておめでとうクマ!」
比企谷「明けましておめでとう、花村、クマ」
914: 2014/03/11(火) 23:24:57 ID:N8VV3MnI
ガランガランガランッ…… パンッパンッ
比企谷「…………」
花村「…………」
クマ「…………」
―――――――――――
クマ「ヨースケは何を願ったクマ?」
花村「ん? もっちろん、恋愛成就だ!」
クマ「れんあいじょうじゅ??」
比企谷「彼女作りたいって意味だ」
クマ「ヨースケはそればっかりクマね」
花村「うっせーよ!? そう言うクマは毎日腹一杯 飯食いたい、とかなんだろ!!」
クマ「むっふっふっ……違うクマ!」
915: 2014/03/11(火) 23:26:03 ID:N8VV3MnI
花村「はあ? んじゃ何だよ?」
クマ「いつまでも、みんなが仲良く暮らせますように……クマ!」
花村「…………」
比企谷「…………」
クマ「どうしたクマ?」
花村「……いや。 なんつーか」
花村「ちょっと自己嫌悪だわ……」
比企谷「……純粋な分、結構来るな」
クマ「?」
花村「そういう比企谷はどんな願いをしたんだよ?」
比企谷「…………」
916: 2014/03/11(火) 23:27:39 ID:N8VV3MnI
比企谷「……まあ」
比企谷「クマと似た様なもんかな」
花村「お前……それはズルくね?」
比企谷「喋る喋らないは自由意思だろ」
クマ「ヨースケ、負けを認めるクマ」
花村「クマ吉に言われると、もの凄くへこむぜ……」
比企谷「ははは……」
比企谷「…………」
917: 2014/03/11(火) 23:28:21 ID:N8VV3MnI
――俺以外のみんなが、幸せになりますように――
918: 2014/03/11(火) 23:30:57 ID:N8VV3MnI
―――――――――――
1月3日の午後
天城屋 雪ノ下の部屋
雪ノ下「はい、白鐘くん。 お茶」
白鐘「すみません。 いただきます」 ズズッ…
白鐘「ふう……」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「それで、話って何かしら?」
白鐘「…………」
白鐘「雪ノ下先輩は、最近の比企谷先輩をどう思いますか?」
雪ノ下「……!」
919: 2014/03/11(火) 23:31:55 ID:N8VV3MnI
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……実は」
雪ノ下「少し違和感を感じていたの」
白鐘「!」
白鐘「……どんな風に、ですか?」
雪ノ下「上手く言えないわ……それに」
雪ノ下「旅館の仕事が忙しくて、ここのところ比企谷くんに会えていないし」
920: 2014/03/11(火) 23:33:07 ID:N8VV3MnI
白鐘「そうですか……」
雪ノ下「でも」
雪ノ下「由比ヶ浜さんから、比企谷くんの様子を見てて欲しいと頼まれているの」
白鐘「!」
白鐘「由比ヶ浜さんが?」
雪ノ下「ええ」
雪ノ下「見送りの別れ際にね」
白鐘「…………」
921: 2014/03/11(火) 23:34:21 ID:N8VV3MnI
雪ノ下「……白鐘くんも何かおかしいと思える節(ふし)があるのかしら?」
白鐘「…………」
白鐘「……白状します」
雪ノ下「? 白状?」
白鐘「実は……去年のクリスマスイヴ」
白鐘「僕は比企谷先輩の家に行って……こ、告白しました」///
雪ノ下「!?」
白鐘「――でも」
雪ノ下「……?」
白鐘「比企谷先輩は……何て言うか……」
白鐘「『無関心』だった様に思えたんです」
雪ノ下「無関心……」
922: 2014/03/11(火) 23:35:23 ID:N8VV3MnI
白鐘「あえて言葉にしましたが、そんな印象だった、というだけです」
白鐘「普段から感情を表に出さない人でしたけど……」
白鐘「どうにも言い知れない雰囲気でした」
雪ノ下「……そう」
白鐘「ただの勘違いならそれでいいんですが……」
白鐘「どうしたらいいのか、わからなくなったので話そうと思った次第です」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……ところで」
白鐘「はい」
雪ノ下「告白の返事はどうなったのかしら?」
白鐘「!!」///
923: 2014/03/11(火) 23:36:21 ID:N8VV3MnI
白鐘「……そのっ」///
白鐘「比企谷先輩は、い、今言った状態でしたので……正しいかどうかは」///
雪ノ下「いいから。 聞かせてくれる?」
白鐘「…………」///
白鐘「か、考えさせて欲しい、と……」///
雪ノ下「……そう」
雪ノ下「…………」
白鐘「……?」
白鐘「雪ノ下先輩?」
雪ノ下「何かしら?」
白鐘「その……」
白鐘「僕が比企谷先輩に告白した事……ショックじゃないんですか?」
924: 2014/03/11(火) 23:37:42 ID:N8VV3MnI
雪ノ下「…………」
雪ノ下「そうね……ショックと言えば、確かにそうだけど」
雪ノ下「白鐘くんが考えている方向じゃないわ」
白鐘「……え?」
雪ノ下「それに……由比ヶ浜さんからも告白したって聞かされてるし」
白鐘「はあ!?」
白鐘「い、いつの話ですか!? それ!?」
雪ノ下「生田目から助けて、意識を取り戻して数日後くらいよ」
白鐘「」
白鐘「そ、そんなに前から……」
雪ノ下「早い者勝ち、という訳でもないし」
雪ノ下「彼女の性格を考えると、比企谷くんからOKの返事を受けたら」
雪ノ下「絶対、私に報告すると思う」
925: 2014/03/11(火) 23:38:35 ID:N8VV3MnI
雪ノ下「けど、それは無いから……たぶん、彼女も返事をもらっていないと推測できるわ」
白鐘「…………」
白鐘「……ずいぶん冷静ですね」
雪ノ下「…………」
白鐘「こんな事……僕が言うのもおかしいですけど」
白鐘「あなたは、告白しないんですか?」
雪ノ下「…………」
白鐘「…………」
雪ノ下「……いずれにしても」
雪ノ下「比企谷くんの様子、何かおかしいのは共通した認識、という事でいいかしら?」
白鐘「……ええ」
926: 2014/03/11(火) 23:39:50 ID:N8VV3MnI
雪ノ下「となると……後はどう対処するのか、ね」
白鐘「…………」
雪ノ下「……状況は違うけど」
雪ノ下「夏休みにした方法はどうかしら?」
白鐘「どんな方法ですか?」
―――――――――――
白鐘「なる程……遊び倒す、ですか」
雪ノ下「花村くんが企画したから、少々不安だったけど」
雪ノ下「結果的に上手くいったわ」
白鐘「なら、反対する理由はありませんね」
927: 2014/03/11(火) 23:41:12 ID:N8VV3MnI
白鐘「問題は比企谷先輩が来てくれるかどうか……」
白鐘「あと、僕はレジャー関連に詳しくないので、お役に立てそうもありません」
雪ノ下「その辺りは天城さんに相談してみるわ」
雪ノ下「花村くん達にも声をかけてみましょう」
白鐘「そうですね」
白鐘「ふふ……何だか上手く行きそうな気がしてきました」
雪ノ下「本当に手間がかかる人よね。 比企谷くんて……」
白鐘「……でも、とても温かい人です」
白鐘「素直ではありませんが」 クスッ
雪ノ下「そうよね」 クスッ
雪ノ下「それじゃ、そういう方向で話を進めておくわ」
白鐘「お願いします」
928: 2014/03/11(火) 23:42:23 ID:N8VV3MnI
―――――――――――
面会室
比企谷「どうも、足立さん」
足立「……また君か」
比企谷「今日は差し入れ無しです」
比企谷「すみませんね」
足立「まあいいよ」
足立「取り調べばかりで退屈ではあるしね」
足立「君がこんなにしつこい奴だとは思わなかったけど」
比企谷「…………」
929: 2014/03/11(火) 23:43:14 ID:N8VV3MnI
足立「で? 今日は何を話すんだい?」
比企谷「特に決めていませんよ」
足立「……は?」
比企谷「俺がここに来る理由は」
比企谷「あなたという人間を知るためです」
足立「…………」
足立「どういう意味だ?」
比企谷「そのままの意味です」
比企谷「深くも何ともない」
足立「……ふうん」
比企谷「…………」
930: 2014/03/11(火) 23:44:19 ID:N8VV3MnI
足立「僕という人間、ね……」
足立「参考までに聞くけど、今の時点でどう判断してるんだい?」
比企谷「…………」
比企谷「夜中に泣いているんじゃないですか?」
足立「…………」
足立「……そんな訳無いだろ」
足立「僕はそこまでガキじゃない」
比企谷「……そうですか」
足立「何? 心理カウンセラーにでも成るつもりなのかい?」
比企谷「…………」
931: 2014/03/11(火) 23:45:43 ID:N8VV3MnI
比企谷「ただの経験談です」
足立「……は?」
比企谷「俺は子供の頃……まあ今も子供ですが」
比企谷「学校をサボってブラブラした事があります」
足立「…………」
比企谷「当然、後で親に怒られました」
比企谷「俺は俺で……ちゃんと理由があったんですけどね」
比企谷「聞いてくれませんでした」
足立「…………」
比企谷「そこで俺は悔しさもあって悪ぶってみたんです」
比企谷「テレビで見た、不良みたく……」
比企谷「もちろんもっと怒られました」
足立「…………」
932: 2014/03/11(火) 23:46:33 ID:N8VV3MnI
比企谷「今なら……それは当たり前だと思う事ができますけど」
比企谷「当時の俺は、少しふざけただけなのに……」
比企谷「どうしてこんなに怒られるのか、全くわかりませんでした」
足立「……あのねぇ」
足立「そんな幼少期の君と、今の僕を同一視しないで欲しいね」
比企谷「……そうですか」
比企谷「それならいいんです」
足立「…………」
比企谷「……俺は、あの時」
比企谷「親ですら自分を理解しようとしてくれないと思って」
比企谷「夜、泣きました」
足立「っ!!」
933: 2014/03/11(火) 23:47:52 ID:N8VV3MnI
比企谷「…………」
足立「…………」
比企谷「それじゃ、今日はこの辺で」
ガタタ……
足立「…………」
足立「……待ちなよ」
比企谷「……何ですか?」
足立「…………」
足立「どんな理由だった?」
足立「どんな理由で学校をサボったんだ?」
比企谷「…………」
934: 2014/03/11(火) 23:48:50 ID:N8VV3MnI
比企谷「いつもじゃない時間を過ごしたかったんです」
足立「…………」
比企谷「自分は……みんなと違う事をしている」
比企谷「自分は誰とも違って、自由でいられる」
比企谷「それを実感したかった」
足立「…………」
足立「……で?」
足立「実感出来たのかい?」
比企谷「多少は……という感じでした」
935: 2014/03/11(火) 23:49:43 ID:N8VV3MnI
足立「ぷっ……そうかい」
足立「それは高くついたね……」
比企谷「ええ」
比企谷「それじゃ……」
パタン……
足立「…………」
足立「……誰とも違って……か」
足立「…………」
936: 2014/03/11(火) 23:50:52 ID:N8VV3MnI
比企谷「…………」
ピピピ…… ピピピ……
比企谷「……ケータイか」 ガチャ
比企谷「はい、もしもし」
比企谷「……花村か」
比企谷「…………」
比企谷「は? スキー?」
比企谷「いきなりだな、おい……」
比企谷「けど……俺は今、忙しくてな……は?」
比企谷「…………」
比企谷「……日帰り……マジっすか」
937: 2014/03/11(火) 23:51:54 ID:N8VV3MnI
比企谷「…………」
比企谷「……わかったよ」
比企谷「明後日の朝、天城屋の前ね」
比企谷「…………」
比企谷「道具は全部レンタルか……それはありがたい」
比企谷「しかし、今シーズン中なのに よくレンタル受けれたな?」
比企谷「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……ああ、陽乃さんね。 納得」
比企谷「たぶん引率でついてくるんだろ?」
比企谷「…………」
比企谷「カンじゃない。 経験則だ」
938: 2014/03/11(火) 23:52:50 ID:N8VV3MnI
比企谷「ともかく要件はわかった」
比企谷「じゃ、当日会おう……」
ブッ…… ツー ツー
比企谷「ふう……」
比企谷「…………」
比企谷(……まだまだって事か)
比企谷(…………)
比企谷(どうしたもんかな)
比企谷「はあ……」
939: 2014/03/11(火) 23:54:01 ID:N8VV3MnI
―――――――――――
スキー当日の朝
材木座「久しぶりであるな! 同志、比企谷!」
比企谷「」
比企谷「材木座!? 何で八十稲羽に居るんだよ!?」
材木座「吾輩だけでは無いぞ!」
比企谷「え」
葉山「やあ、ヒキタニ君! 久しぶりだね」
川崎「久しぶり」
小町「やっほー! お兄ちゃん、久しぶり!」
比企谷「」
小町「どうしたの? お兄ちゃん。」
小町「大事な妹の事、忘れちゃった訳じゃないよね?」
940: 2014/03/11(火) 23:55:00 ID:N8VV3MnI
比企谷「……ちょっと待ってくれ」
比企谷「今、俺の中で、ものすごい大混乱が起きている……」
比企谷「とりあえず……材木座達はまだしも」
比企谷「小町は何でここに居るんだ? お兄ちゃんは聞いていませんよ?」
小町「言ってないから当たり前だね♪」
比企谷「……その笑顔、なんとなく怖いんですけど」
花村「よっしゃ! サプライズ成功だぜ!」
比企谷「お前か、元凶は……」
陽乃「もちろん脚色は私♪」
比企谷「…………」
941: 2014/03/11(火) 23:56:01 ID:N8VV3MnI
比企谷「まあ、いいです」
比企谷「それじゃ行きましょうか?」
小町「え?」
比企谷「何だよ?」
小町「う、ううん……」
比企谷「多分だが……おふくろの性格からして」
比企谷「俺の様子見をするついでってところだろ?」
小町「……うん」
小町(それはそうだけど……それでも私を心配するのがお兄ちゃんなのに)
小町(小町的にはポイントダダ下がりだよ……)
比企谷「……まさかと思うが」
比企谷「由比ヶ浜や戸塚まで居ないだろうな?」
川崎「……いちおう二人も誘ったんだけどね」
川崎「二人共、今回は遠慮するってさ」
942: 2014/03/11(火) 23:57:09 ID:N8VV3MnI
比企谷「そうか」
川崎「……?」
川崎「何だい? その態度」
比企谷「は?」
川崎「まるで二人が来なくて良かった、みたいに取れるんだけど?」
雪ノ下「川崎さん」
川崎「……雪ノ下さん」
雪ノ下「突然だったから説明不足だけど」
雪ノ下「いろいろあったの。 私達……」
川崎「…………」
川崎「そうかい」
943: 2014/03/11(火) 23:58:11 ID:N8VV3MnI
川崎「ま、こっちはスキーができれば文句はないよ」
雪ノ下「ごめんなさい」
川崎「もういいって」
川崎「初顔合わせも多いし、挨拶してくる」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……で?」
比企谷「後は誰が来るんだ?」
雪ノ下「鳴上くんと菜々子ちゃんよ」
比企谷「ああ……冬休みだし、鳴上、こっちで過ごすつもりか」
比企谷「納得……」
雪ノ下「…………」
944: 2014/03/11(火) 23:59:12 ID:N8VV3MnI
―――――――――――
比企谷「ところで葉山」
葉山「ん?」
比企谷「取り巻きの連中はどうした?」
葉山「>>1がよく知らないから出したくなかったみたいだ」
比企谷「メタ発言は止めろ!」
葉山「はは、冗談だよ」
葉山「僕らだって、いつもつるんでいる訳じゃない」
葉山「冬休みはそれぞれで過ごしてる。 それだけさ」
葉山「僕がここに来たのは、川崎さんや材木座くんに誘われたのと」
葉山「君と雪ノ下さんがどうしてるのか、気になったからだ」
945: 2014/03/12(水) 00:00:12 ID:RMKyMrQw
比企谷「雪ノ下はともかく、俺の心配なぞお前はしてないだろ」
葉山「……それはちょっと心外だね」
葉山「君がここに転校する時、送別会に参加した一人としては」
比企谷「…………」
葉山「まあ……強いて言うなら」
葉山「『今』心配になったかな?」
比企谷「俺の言ってる事、間違ってないじゃねーか」
葉山「ははは……まあいいじゃないか」
葉山「みんなで仲良くスキーを楽しもう?」
比企谷「…………」
946: 2014/03/12(水) 00:01:34 ID:RMKyMrQw
ゲレンデ
菜々子「うわあ! 真っ白だね、お兄ちゃん!」
鳴上「そうだな、菜々子」
菜々子「菜々子、雪だるま作りたい!」
鳴上「ああ、いいぞ」
小町「小町も手伝おうか?」
菜々子「え!? いいの?」
小町「うん! 小町的に菜々子ちゃんポイント高いからいいよ!」
菜々子「え? ええと……?」
比企谷「あー気にしないでくれ。 菜々子ちゃんの事、気に入ったという意味だから」
947: 2014/03/12(水) 00:02:46 ID:RMKyMrQw
鳴上「そういう事ならお願いしよう」 ニコッ
小町「は、はいっ」///
比企谷「……小町? お兄ちゃん的に不安な反応なんですけど?」
小町「もうっ! ゴミぃちゃん、手伝わないならあっちに行っててよ!」///
比企谷「久しぶりの兄妹再会&会話なのに……お兄ちゃんショックです」
材木座「同志比企谷! 吾輩も手伝おうぞ!」
クマ「クマも手伝うクマ!」
材木座「吾輩は幼女の味方であるからな!」
比企谷「お前はどっか行ってろ、材木座」
材木座「何たる扱いっ! 同志比企谷は今、ツン期であるのか!?」
比企谷「お前に対してデレる事なぞ一生ない!!」
948: 2014/03/12(水) 00:04:27 ID:RMKyMrQw
雪ノ下「…………」
白鐘「…………」
里中「どう? 比企谷くん、元気になってる?」
雪ノ下「! 里中さん……」
白鐘「……まだわかりません」
天城「そうなの?」
里中「こう言っちゃなんだけど……あたしはいつも通りに見えるけどなー」
白鐘「……それならそれで、いいんですけどね」
天城「具体的に、どう元気がないのかな?」
川崎「……そいつはちょっと違うな」
957: 2014/03/12(水) 17:59:05 ID:RMKyMrQw
里中「! ええと……川崎…さん、だっけ?」
天城「違うって、どういう事かな?」
川崎「横からごめん」
川崎「あくまであたしの意見だけど……あいつ」
川崎「どことなく諦めてる印象がある」
雪ノ下「!」
白鐘「!」
里中「諦めてる?」
天城「どういう事かな?」
川崎「……そこまではね。 ただ」
川崎「雪ノ下さんが何を心配しているのかは、わかった気がする」
雪ノ下「川崎さん……」
白鐘(諦めている……)
958: 2014/03/12(水) 17:59:47 ID:RMKyMrQw
花村「くう~!!」
花村「やっぱいいよな、スキー場!!」
里中「うわ、突然出てこないでよ花村」
花村「へへっ! なんつーの?」
花村「水着とか浴衣もいいけど、スキーウェアって」
花村「女の子の可愛さが すげーアップする感じだしな!」
川崎「……ウザッ」
花村「え?」
川崎「まあ、挨拶の時から思ってたけど」
川崎「そういうの止めた方がいいよ、あんた」
花村「……えーと」
959: 2014/03/12(水) 18:00:48 ID:RMKyMrQw
里中「まあまあ、川崎さん」
里中「花村は元からこういう性格で、慣れは要るけど」
里中「基本、いい奴じゃん?」
天城「言いたい事はわかるけど……多めに見てあげて欲しいな」
川崎「…………」
川崎「そうかい。 そいつは悪かったね」
川崎「じゃ……あたしは一足先に頂上に行ってるから」
スタ スタ スタ…
花村「…………」
花村「なんつーか、女比企谷って気がする……」
里中「それはさすがに言いすぎじゃん?」
天城「気持ちはわかるけどね」
960: 2014/03/12(水) 18:01:54 ID:RMKyMrQw
雪ノ下「みんな、気を悪くしないで」
雪ノ下「正直、人当たりがいい人ではないけど」
雪ノ下「悪い人じゃない」
花村「わかってるって、雪ノ下さん」
花村「何だかんだ言いながら、比企谷を元気づける・イン・スキーに」
花村「はるばる来てくれたんだしな!」
雪ノ下「…………」
雪ノ下(実を言えば……彼女が来てくれるなんて意外だった)
雪ノ下(それに由比ヶ浜さんと戸塚くん……)
雪ノ下(確かにいろいろあったけど、断られるとは思わなかった)
雪ノ下(ここに来づらい、という理由はわかるのだけど……)
961: 2014/03/12(水) 18:03:10 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
川崎「比企谷」
比企谷「ん?」
川崎「ちょっと話がある」
比企谷「何だ? 昼飯食い足りなかったか?」
川崎「……お前、由比ヶ浜と何があった?」
比企谷「…………」
川崎「…………」
比企谷「別になn」
川崎「あたしが今回ここに来たのは、由比ヶ浜の様子がおかしかったからだ」
比企谷「…………」
比企谷「どんな風にだよ?」
962: 2014/03/12(水) 18:05:01 ID:RMKyMrQw
川崎「知らん」
比企谷「あのなぁ……」
川崎「あたしが気になったのは、誘った時」
川崎「今回の事を予想してたみたいだったって事」
比企谷「…………」
川崎「……まあ」
川崎「あまり深く突っ込むのは止めとくけど」
川崎「みんなお前を心配してるって自覚しろ」
比企谷「……わかった」
川崎「……?」
川崎「やけに素直だね」
963: 2014/03/12(水) 18:06:10 ID:RMKyMrQw
比企谷「俺はいつも素直だろ」
川崎「面白くない冗談は止めな」
比企谷「話はそれだけか?」
川崎「…………」
川崎「ああ……」
比企谷「じゃ……そろそろ行こうぜ」
川崎「…………」
川崎(……けっ。 胸クソ悪いね)
川崎(まるで……)
川崎(…………)
964: 2014/03/12(水) 18:07:06 ID:RMKyMrQw
昔のあたしみたいだよ……
965: 2014/03/12(水) 18:09:41 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
夕方
天城屋 玄関ロビー
天城「みなさん、お疲れ様でした」
雪ノ下「今宵は、天城屋にてどうぞおくつろぎ下さい」
オオー!
材木座「何たる僥倖(ぎょうこう)!! 何という破壊力!!」
材木座「これ程の和服美少女女将が二人も同時に存在するとはっ!!」
材木座「吾輩のインスピレーションが極限にまで高まっておるぞ! 同志比企谷!」
比企谷「さよけ」
966: 2014/03/12(水) 18:10:31 ID:RMKyMrQw
小町「うわぁ……! 二人共大和撫子みたいで、とっても綺麗です!」
小町「あ、今の小町的にポイント高い」
菜々子「お姉さん達、本当に綺麗だね! お兄ちゃん!」
鳴上「そうだな、菜々子」
クマ「ムホホッ! 今日もお泊りクマ!」
967: 2014/03/12(水) 18:11:39 ID:RMKyMrQw
葉山「これはこれは……眼福だね」
花村「まったくだな。 里中ももう少しおしとy」
里中「……顔面靴跡の刑を喰らいたい?」
花村「さ、里中も充分可愛いって!」
葉山(……この人は、材木座くんと違うタイプの残念な人だな)
川崎(……がっかりイケメンってとこか)
陽乃「いらっしゃい、みんな」
陽乃「お部屋に案内するわ」
白鐘「お世話になります」
968: 2014/03/12(水) 18:12:46 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
夕食後
比企谷「小町。 それで、母さん達の様子はどうなんだ?」
小町「ん? 普通だよ?」
比企谷「そうか……」
小町「……『普通』を上手く演じてるかな」
比企谷「!」
小町「…………」
小町「正直言うとね……」
小町「二人共、落ち着きが無くなってる感じしてる」
小町「私にバレてないって思ってるみたいだけど……そういうのって」
小町「分かっちゃうものだよね」
比企谷「…………」
969: 2014/03/12(水) 18:13:56 ID:RMKyMrQw
小町「お兄ちゃん」
比企谷「ん?」
小町「お兄ちゃんは、どうして……小町達のところに帰らないの?」
比企谷「…………」
比企谷「説明しただろ」
比企谷「前々から決まってた予定を変える必要はないって」
小町「…………」
比企谷「俺が少し我慢すればいいだけ……あと2ヶ月とちょっとだ」
小町「……おかしいよ」
比企谷「小町?」
小町「お兄ちゃん、絶対おかしい!」
小町「気持ち悪いでしょ!? 普通!」
小町「酷い事した人が住んでたんだよ!? 何で平気なの!?」
970: 2014/03/12(水) 18:15:05 ID:RMKyMrQw
比企谷「落ち着け、小町……」
比企谷「住処なんてものは、そこらの道具と同じだ。 値段が高いけどな」
比企谷「悪い奴に使われたからといって機能が損なわれる訳じゃない」
比企谷「だから、これでいいんだよ」
小町「…………」
小町「……違う」
比企谷「小町……」
小町「小町、お兄ちゃんの言ってる事、わかんないよ!!」
ダッ!
比企谷「…………」
比企谷「ふう……」
971: 2014/03/12(水) 18:15:57 ID:RMKyMrQw
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「!」
比企谷「……雪ノ下か」
雪ノ下「妹さんと何を話したの?」
比企谷「…………」
比企谷「俺、帰るわ」
雪ノ下「……え!?」
比企谷「今日は楽しかったって」
比企谷「花村達によろしく言っといてくれ」
比企谷「じゃあな」
雪ノ下「ま、待ちなさい、比企谷……」
972: 2014/03/12(水) 18:16:56 ID:RMKyMrQw
宿泊客「あのー、女将さん」
宿泊客「このお土産っておいくらですか?」
雪ノ下「!」
雪ノ下「あ、はい。 こちらは――」
雪ノ下(…………)
雪ノ下(どうしたのよ……比企谷くん)
雪ノ下(あなたは、いったい何がどうなってしまったの!?)
雪ノ下(何かを抱え込んだの?)
雪ノ下(どうして言ってくれないの……)
雪ノ下(どうして……)
雪ノ下(…………)
973: 2014/03/12(水) 18:17:53 ID:RMKyMrQw
そんな事を考えながら……私は
今までの比企谷くんもそうだった事を思い出していた。
そう……比企谷くんは、いつも通り。
彼は、いつも自分の考えを話さない。
もっと正確に言うと、真意を話さない。
誰に相談する事なく、行動に移している。
974: 2014/03/12(水) 18:18:48 ID:RMKyMrQw
どんな結果になるのか、わかっていながら……
975: 2014/03/12(水) 18:19:36 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
翌日の朝
天城屋 玄関ロビー付近
川崎「巽屋?」
天城「ええ」
天城「昨年末くらいからお試しにどう?と置いてある商品だよ?」
里中「おはよー雪子……って」
里中「川崎さん? どうしたの?」
天城「これだよ、千枝」
里中「ぬいぐるみがどうかしたの?」
976: 2014/03/12(水) 18:20:38 ID:RMKyMrQw
川崎「違う、編みぐるみ!」
里中「へ?」
川崎「それも……これ手作りだよ」
川崎「恐ろしいくらいキメ細やかに編まれて……すごい、としか言い様がない!」
天城「それでね、これどこから仕入れたの?って尋ねられて……」
里中「そういう事」
川崎「一体どんな奴が作ってるのか気になってね」
川崎「ぜひ、会って話がしたいんだ」
里中「ふうん……でも、確かに可愛いね、これ」
川崎「で、続きなんだけど……」
雪ノ下「あら、川崎さん?」
白鐘「どうかしたんですか?」
977: 2014/03/12(水) 18:21:58 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
白鐘「そうですか……巽屋に」
里中「菜々子ちゃんや小町ちゃんも喜びそうだよね」
天城「みんなも誘ってみる?」
川崎「あたしは早く行きたいんだけど……」
雪ノ下「それじゃあ……私が案内するわ」
川崎「ホント!? 助かるよ!」
白鐘「僕も付き合います。 ちょうどチェックアウトを済ませたところなので」
白鐘(比企谷先輩の住処は巽屋の先だし……)
川崎「それじゃ行こう!」
978: 2014/03/12(水) 18:22:47 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
巽屋
完二「ウッス、いらっしゃ……って!?」
白鐘「どうも、巽くん」
完二「ひ、久しぶり、だな……」///
川崎「?」
雪ノ下「…………」
完二「ところで……どうした? うちに何か用か?」
白鐘「ああ、それなんですが」
白鐘「こちらの……川崎さん、という方が、ここの編みぐるみを気に入ったみたいで」
川崎「単刀直入に言うよ?」
川崎「あたし、これを作った奴と話がしたいんだ! ぜひ、紹介して欲しい!」
979: 2014/03/12(水) 18:23:56 ID:RMKyMrQw
完二「お? ああ、いいぜ」
川崎「ほ、本当か!? やった!」
雪ノ下「良かったわね、川崎さん」
川崎「ああ!」
完二「…………」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
川崎「…………」
川崎「……おい?」
完二「ああ?」
川崎「どうして呼びに行かないんだ?」
980: 2014/03/12(水) 18:25:03 ID:RMKyMrQw
完二「何でそんな事しなくちゃならないんだよ?」
川崎「はあ!?」
川崎「今、作った奴と話をさせてくれるって言っただろ!?」
完二「おう」
川崎「だったらさっさと呼んで来いっての!」
完二「何でだよ?」
川崎「……あんた、あたしをおちょくてんのか?」
完二「だぁら、それならここに居んだろ」
完二「てめーの目の前に居る、この俺だ。 それ作ったの」
白鐘「え」
雪ノ下「え」
川崎「え!?」
981: 2014/03/12(水) 18:26:01 ID:RMKyMrQw
完二「……ま、そういう反応」
完二「慣れちゃあいるが……これでも結構傷つくんだぜ?」
白鐘「! す、すみません」
雪ノ下「ごめんなさい……」
川崎「悪かった……」
完二「…………」
完二「もういい」
完二「で? 俺と何を話したいんだ?」
―――――――――――
川崎「そうか……そんなやり方があったんだね」
完二「コツをつかむまでが難しいが、あんたくらいやってれば」
完二「難しくはねぇと思うぜ?」
川崎「ありがとう。 とても参考になる」
982: 2014/03/12(水) 18:26:54 ID:RMKyMrQw
雪ノ下「どうやら話が弾んでるみたいね」
白鐘「そのようですね」 クスッ
白鐘「…………」
白鐘「!!」
白鐘(あれは……玄関の外で歩いているのは)
白鐘(比企谷先輩!?)
白鐘「……すみません、雪ノ下先輩」
白鐘「僕はこれで席を外してもいいでしょうか?」
雪ノ下「ええ。 構わないわ」
白鐘「それでは、失礼します」
983: 2014/03/12(水) 18:27:36 ID:RMKyMrQw
ガララッ…
白鐘「ふう……」
白鐘(比企谷先輩……紙袋を下げていたな)
白鐘(いったいどこに向かっているんだろう?)
白鐘(…………)
白鐘(マナー違反だけど……最近の様子もおかしいし)
白鐘(尾行してみるか……)
―――――――――――
白鐘「」
白鐘(警察署!?)
白鐘(どうして……こんなところに……)
白鐘(…………)
984: 2014/03/12(水) 18:28:53 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
面会室
比企谷「どうも。 足立さん」
足立「やあ、比企谷くん」
比企谷「…………」
比企谷「これ……足立さんのご両親に頼まれて持ってきました」
比企谷「紙袋の中身は着替えと好物の煮物だそうです」
足立「煮物……サバの味噌煮かい?」
比企谷「さあ……俺は中身を見ていませんので」
足立「そう」
足立「…………」
985: 2014/03/12(水) 18:30:04 ID:RMKyMrQw
比企谷「好物じゃないんですか?」
足立「ああ」
足立「魚の煮物って独特の匂いがあるからね……好きじゃない」
比企谷「…………」
足立「うちの親、僕の魚嫌いを何とか直したくて、いろいろ作ったんだ」
足立「僕はいちいち試しに食べさせられるのが嫌になって」
足立「比較的食えるサバの味噌煮を食ってやったのさ」
比企谷「…………」
足立「それ以来 魚といえば、サバの味噌煮、サバの味噌煮……」
足立「いつの間にか、僕の好物になったってわけ」
比企谷「…………」
986: 2014/03/12(水) 18:31:00 ID:RMKyMrQw
比企谷「では……何が好きなんですか?」
足立「…………」
足立「ロールキャベツかな……」
足立「ちょっと変な食べ方だけど、ケチャップを付けて食べると最高に旨い」
比企谷「有りますよね、そういうの」
足立「ははは……」
足立「…………」
比企谷「…………」
比企谷「それじゃ、そろそろ行きます」
足立「ああ……」
足立「…………」
足立「比企谷くん」
比企谷「はい?」
987: 2014/03/12(水) 18:32:02 ID:RMKyMrQw
足立「なんだか疲れた顔をしているね?」
比企谷「大丈夫です」
比企谷「昨日、日帰りスキーに行って来ただけですから」
足立「ああ……あの賑やかな連中とか。 納得」
足立「青春してるね」
比企谷「…………」
比企谷「じゃ……また来ます」
キィ…… パタン
足立「…………」
足立「本当に物好きだね……君は」
988: 2014/03/12(水) 18:33:08 ID:RMKyMrQw
―――――――――――
新学期 初日の朝
通学路
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……結局)
雪ノ下(あれから比企谷くんと まともに話せずじまい)
雪ノ下(川崎さん達の見送りには来たけど……)
雪ノ下(妹さんと仲直りした事以外、取り立てて目立った事柄はなかった)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(どうすればいいのだろう……)
雪ノ下(…………)
989: 2014/03/12(水) 18:33:54 ID:RMKyMrQw
教室
花村「うーすっ! おはよう、里中、天城、雪ノ下さん」
里中「おはよう、花村」
天城「花村くん、おはよう」
雪ノ下「おはよう」
花村「比企谷は……まだか」
里中「うん。 まだじゃん」
天城「結局……比企谷くん、元気になったのかな?」
花村「元気も何も、俺が見た限りじゃ、いつも通りの比企谷だと思うけどな」
雪ノ下「…………」
里中「お? 噂をすれば……」
990: 2014/03/12(水) 18:35:11 ID:RMKyMrQw
比企谷「おはよう、花m……」
シ―――ン……
天城「え?」
花村「ん?」
里中「どうしたの? みんな?」
雪ノ下「……?」
オイ……アイツダロ? レイノ殺人犯ノ……
一同「!?」
比企谷「…………」
991: 2014/03/12(水) 18:36:24 ID:RMKyMrQw
ザワ…… ザワ……
花村「お、おい……何だよ、この雰囲気」
花村「いい加減に……!?」
比企谷「…………」
俺は、怒鳴ろうとする花村を手で合図して静止させた。
里中「…………」
天城「…………」
雪ノ下「…………」
ザワ…… ザワ……
比企谷「…………」
992: 2014/03/12(水) 18:37:11 ID:RMKyMrQw
来るべきものが来た。 それだけだ。
狭い街だし、人の口に戸は立てられない以上
起こって欲しくはなかったが、こうなる予測はしていた。
993: 2014/03/12(水) 18:38:37 ID:RMKyMrQw
俺は、殺人犯と親戚であり、同居人だったのだから……
994: 2014/03/12(水) 18:44:37 ID:RMKyMrQw
これで、今回の分は終わりです。
欝展開であり、慣れないキャラ使いまくってしょーもないミスしたりと
散々でした……次回はこういう事がないといいのですが。
改めて次スレのURL貼っておきます。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/" >http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/
残りは埋めちゃってくれて構いませんので。
それではまた。
欝展開であり、慣れないキャラ使いまくってしょーもないミスしたりと
散々でした……次回はこういう事がないといいのですが。
改めて次スレのURL貼っておきます。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/" >http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/
残りは埋めちゃってくれて構いませんので。
それではまた。
995: 2014/03/12(水) 21:10:11 ID:aapsth7o
乙サマー
996: 2014/03/12(水) 21:14:56 ID:OMxmOI.Y
乙ー
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